(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090094
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】荷電粒子銃、及び荷電粒子ビーム装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/07 20060101AFI20240627BHJP
H01J 37/06 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
H01J37/07
H01J37/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205756
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪狩 朋也
(72)【発明者】
【氏名】福田 真大
(72)【発明者】
【氏名】土肥 隆
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101BB03
5C101BB04
5C101DD07
5C101DD25
5C101DD30
5C101DD38
5C101EE04
5C101EE53
5C101EE68
5C101EE70
5C101FF02
5C101GG10
5C101GG22
5C101GG26
5C101JJ07
(57)【要約】
【課題】荷電粒子ビームの量が大きくされたときの、放出荷電粒子量の不安定さや荷電粒子軌道のずれを抑制し得る荷電粒子銃、及び荷電粒子ビーム装置を提供する。
【解決手段】この荷電粒子銃は、荷電粒子を発生させる荷電粒子源と、前記荷電粒子源から荷電粒子ビームを引き出す引出電極を含む電極部と、前記電極部に電圧を導入する電圧導入部と、前記電極部の温度を調整する温度調整部とを備える。前記温度調整部は、前記電極部の状態の変化に基づき、前記電極部の温度を調整するよう構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子を発生させる荷電粒子源と、
前記荷電粒子源から荷電粒子ビームを引き出す引出電極を含む電極部と、
前記電極部に電圧を導入する電圧導入部と、
前記電極部の温度を調整する温度調整部と
を備え、
前記温度調整部は、前記電極部の状態の変化に基づき、前記電極部の温度を調整するよう構成された
ことを特徴とする荷電粒子銃。
【請求項2】
前記温度調整部は、前記電極部の電流及び電圧に基づき、前記電極部の温度を調整する、請求項1に記載の荷電粒子銃。
【請求項3】
前記温度調整部は、前記電極部の電流及び電圧と、前記電極部の温度との関係を予めテーブルとして取得し、得られた前記電極部の電流及び電圧に従い、前記電極部の温度を推定して、前記電極部の温度を調整する、請求項2に記載の荷電粒子銃。
【請求項4】
前記引出電極は複数の分割電極を備え、
前記温度調整部は、前記複数の分割電極の各々に接続される温度調整部を含む、請求項1に記載の荷電粒子銃。
【請求項5】
前記電極部は、前記引出電極と、前記引出電極に電圧を導入するために前記引出電極に接続される電圧導入電極とを含み、
前記温度調整部は、前記電圧導入電極に接続される、請求項1に記載の荷電粒子銃。
【請求項6】
前記引出電極の周囲に配置され、前記温度調整部を保持する温度調整部保持部を更に備え、
前記温度調整部は、前記引出電極と非接触な状態で前記温度調整部保持部に配置される、請求項1に記載の荷電粒子銃。
【請求項7】
前記温度調整部は、前記電極部の温度分布を光学的に検出するための検出部を備え、
前記検出部の検出結果に従い、前記電極部の温度を調整する、請求項1に記載の荷電粒子銃。
【請求項8】
前記引出電極の歪み量を計測する歪みゲージを更に備え、
前記温度調整部は、前記歪み量に従って、前記引出電極の温度を調整する、請求項1に記載の荷電粒子銃。
【請求項9】
前記引出電極の下方に配置される絞りを更に備え、
前記絞りの穴の穴径は、前記引出電極の穴の穴径よりも小さくされている、請求項1に記載の荷電粒子銃。
【請求項10】
前記絞りに印加される第1電圧と、前記引出電極に印加される第2電圧との比率は1±0.1の範囲に設定される、請求項9に記載の荷電粒子銃。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の荷電粒子銃を備えた、荷電粒子ビーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子銃、及び荷電粒子ビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体計測・検査装置市場において、ウエハの計測点数や観察面積が増加させる要請が高まっている。特に、極端紫外光を用いたEUVリソグラフィでは、ウエハ全面の観察が必須であり、荷電粒子線装置を利用した検査計測装置では、欠陥や寸法の検査に一般に数日~数十日を要する。したがって、半導体計測・検査装置においては、装置のスループットを向上させると共に、長時間に亘り安定な動作(電流変動1%以下)が求められている。
【0003】
検査計測装置のスループットの向上と長時間の安定動作の確保のためには、荷電粒子ビームを、大電流でかつ安定して放出することができる荷電粒子ビーム装置が求められる。このため、荷電粒子ビーム装置において、大電流の荷電粒子ビームを長時間に亘り安定的に放出することができる荷電粒子銃(電流変動1%以下)が求められる。このような観点から、特許文献1には、大電流の荷電粒子ビームを安定的に放出するために、引出電極の周辺を予め加熱し、これによって電子衝撃脱離(Electron Stimulated Desorption:以下ESD)ガスを防止する技術が開示されている。
【0004】
しかしながら、荷電粒子源から放出される荷電粒子ビームの量を大きくした場合、高電圧の引出電極や電流量を調節する電極に電子が照射されるため、電極に発熱が生じ、放出される荷電粒子ビームの量が不安定になるという問題がある。さらに、荷電粒子源から電極に向けて放出される荷電粒子ビームの量が変化することにより、発熱量は時々刻々と変化し、電極の熱膨張も時々刻々と変化する。このため、放出される荷電粒子の軌道がずれることが生じ得る。このように、荷電粒子ビームの量が大きくされた場合に、放出される荷電粒子量を安定とし、軌道のズレを抑制することは、従来の技術では容易ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、荷電粒子ビームの量が大きくされたときの、放出荷電粒子量の不安定さや荷電粒子軌道のずれを抑制し得る荷電粒子銃、及び荷電粒子ビーム装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る荷電粒子銃は、荷電粒子を発生させる荷電粒子源と、前記荷電粒子源から荷電粒子ビームを引き出す引出電極を含む電極部と、前記電極部に電圧を導入する電圧導入部と、前記電極部の温度を調整する温度調整部とを備える。前記温度調整部は、前記電極部の状態の変化に基づき、前記電極部の温度を調整するよう構成される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、荷電粒子ビームの量が大きくされたときの、放出荷電粒子量の不安定さや荷電粒子軌道のずれを抑制し得る荷電粒子銃、及び荷電粒子ビーム装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施の形態に係る荷電粒子ビームシステムの構成例を示す概略図である。
【
図2】第1の実施の形態の電子銃901の構成例を示す断面図である。
【
図3】引出電極102の電流量と印加電圧の積である出力[W]と、ヒータ108の温度との関係を示すテーブルの例を示す。
【
図4】引出電極102と電子源101の間の距離dを可変した時の電界解析の結果を示すグラフである。
【
図6】第2の実施の形態の電子銃901の構成例を示す断面図である。
【
図7A】第3の実施の形態の電子銃901の構成例を示す断面図である。
【
図7B】第3の実施の形態の変形例の電子銃901の構成例を示す断面図である。
【
図8】第4の実施の形態の電子銃901の構成例を示す断面図である。
【
図9】第5の実施の形態の電子銃901の構成例を示す断面図である。
【
図10】第6の実施の形態の電子銃901の構成例を示す断面図である。
【
図11】第7の実施の形態の電子銃901の構成例を示す断面図である。
【
図12】第7の実施の形態の電子銃901の構成例を示す断面図である。
【
図13】第7の実施の形態の電子銃における引出電極102と絞り820の電圧比率と、電流変化率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではない。
【0011】
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0012】
以下の実施の形態の説明では、電子ビームを使用した走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)とコンピュータシステムとで構成される荷電粒子ビームシステム(パターン計測システム)に、本開示の荷電粒子銃(電子銃ユニット)を適用した例を示す。しかし、この実施の形態は限定的に解釈されるべきではなく、例えば、ウエハの欠陥検査システム、イオンビーム等の荷電粒子ビームを使用する装置、一般的な観察装置、等に対しても、本開示は適用され得る。
【0013】
[第1の実施の形態]
図1に、第1の実施の形態に係る荷電粒子ビームシステムの構成例を示す。この例では、荷電粒子ビームシステムは測長SEM900として構成される。測長SEM900は、筐体924中において高真空に維持され得る電子銃901(荷電粒子銃)を備える。なお、本実施の形態では荷電粒子の例として電子を用いるが、他の荷電粒子を放出する荷電粒子銃についても応用可能である。
【0014】
測長SEM900は、筐体924内に、電子銃901に加え、一次電子加速電極926、電子レンズ927、絞り928、走査コイル929、電子対物レンズ930、二次電子検出器932等を備えて構成される。なお、
図1では、筐体924とその内部構造を横方向から見た断面図で記述している。
【0015】
高真空に維持された筐体924内に保持された電子銃901から、荷電粒子として電子が放出されると、放出された電子は、高圧電源925により高電圧が印加された一次電子加速電極926で加速される。電子ビーム906(荷電粒子ビーム)は、収束用の電子レンズ927で収束される。その後、電子ビーム906のビーム電流量が絞り928で調節される。その後、電子ビーム906は走査コイル929で偏向され、試料であるウエハ905(半導体ウエハ)上を二次元的に走査する。
【0016】
電子対物レンズ930は、ウエハ905が載置される静電チャック907の直上に配置される。電子ビーム906が電子対物レンズ930で絞られ、焦点合わせがなされ、ウエハ905に入射する。一次電子(電子ビーム906)が入射した結果ウエハ905で発生する二次電子931は、二次電子検出器932により検出される。検出される二次電子の量は、試料表面の形状を反映するので、二次電子の情報に基づき表面の形状を画像化することができる。
【0017】
ウエハ905は、静電チャック907上に一定の平坦度を確保しながら保持されており、X-Yステージ904上に固定される。ウエハ905は、X-Yステージ904が駆動することにより、X方向及びY方向いずれも自由に移動可能であり、ウエハ905の表面内の任意の位置を電子ビームにより計測することができるようになっている。
【0018】
X-Yステージ904は、ウエハ搬送用リフト機構933を備えている。ウエハ搬送用リフト機構933には、上下動作可能な弾性体が組み込まれている。この弾性体を用いて、ウエハ905を静電チャック907に対して着脱することができる。ウエハ搬送用リフト機構933と搬送ロボット934との連携動作により、ロード室935(予備排気室)との間でウエハ905の受け渡しを行うことができる。
【0019】
測定対象であるウエハ905を静電チャック907まで搬送する際の動作を以下に説明する。まず、ウエハカセット936にセットされたウエハ905を、ミニエン937(ミニエンバイロメント)の搬送ロボット938でロード室935に搬入する。ロード室935内は、図示しない真空排気系により真空引きおよび大気解放することができる。バルブ(図示無し)の開閉と、搬送ロボット934の動作とにより、筐体924内の真空度を実用上問題ないレベルに維持しながら、ウエハ905を静電チャック907上に搬送する。
【0020】
筐体924には、表面電位計939が取り付けられている。表面電位計939は、プローブ先端から静電チャック907またはウエハ905までの距離が適切になるように、高さ方向の位置が調節されて固定されており、静電チャック907またはウエハ905の表面電位を非接触で測定することができるようになっている。
【0021】
測長SEM900は、電子銃901を制御するコンピュータシステム920を備えてもよい。上述した測長SEM900の各構成要素は、汎用のコンピュータを用いて実現することができる。各構成要素は、コンピュータ上で実行されるプログラムの機能として実現されてもよい。
図1の例では、制御系の構成をコンピュータシステム920によって実現する。コンピュータシステム920は、少なくとも、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、メモリなどの記憶部と、ハードディスク(画像保存部を含む)などの記憶装置とを備える。さらに、例えば、コンピュータシステム920をマルチプロセッサシステムとして構成してもよい。そして、筐体924内の電子光学系の各構成要素に係る制御をメインプロセッサで実現してもよい。また、X-Yステージ904、搬送ロボット934、搬送ロボット938、および表面電位計939に係る制御をサブプロセッサで実現してもよい。また、二次電子検出器932によって検出した信号に基づいてSEM像を生成するための画像処理をサブプロセッサで実現してもよい。
【0022】
また、コンピュータシステム920は、ユーザーが指示等を入力するための入力デバイスと、これらを入力するためのGUI画面及びSEM画像などを表示する表示デバイスと、を有したものとすることができる。入力デバイスは、ユーザーによりデータや指示を入力できるものであり、例えばマウス、キーボード、音声入力装置などである。表示デバイスは、例えばディスプレイ装置である。このような入出力デバイス(ユーザーインターフェース)は、データの入力及び表示が可能なタッチパネルであってもよい。
【0023】
図2は、
図1の電子銃901の構成例を示す断面図である。この電子銃901は、チャンバ106内に載置されるショットキ電子源101(荷電粒子源)を備える。チャンバ106は、その上部にフランジ105を有する。フランジ105は、チャンバ106の上部及び絶縁ガイシ104に固定され、絶縁ガイシ104とチャンバ106との間の空間を封止するよう構成されている。これにより、チャンバ106は、複数台のイオンポンプ112によって1×10
-8~1×10
-9Paの超高真空に排気される。
【0024】
ショットキ電子源101は、熱電子放出と電界放出によって電子を放出する電子源である。ショットキ電子源101には、一例として、タングステンヘアピンの先端に取り付けた、<001>結晶方位のタングステン単結晶を用いることができる。単結晶の先端は、直径数百nmに先鋭化し、先端中央には(001)結晶面が配置され得る。タングステン単結晶の円柱中央部付近には、ジルコニウム拡散供給源が設けられる。ジルコニウム拡散供給源からのジルコニウム原子と酸素原子がタングステン単結晶先端まで表面拡散することによって、タングステン単結晶先端の(001)面の仕事関数が2.8eVに低下する。この状態で、タングステン単結晶を1600K~1900K程度に加熱することで、タングステン単結晶先端に電界を与えて電子線103を放出させることができる。
【0025】
電子線103は、タングステン単結晶先端の(001)面からだけではなく、(100)面からも放出される、これらの4つの面から放出される電子は、サイドエミッションとも呼ばれる。電子源101には、熱電子放出を抑制するための、一般にサプレッサと呼ばれる電極が取付けられている。
【0026】
電子源101は、電流電圧端子111を用いて絶縁ガイシ104に固定される。絶縁ガイシ104は、前述の通りフランジ105に固定され、フランジ105はチャンバ106に固定されている。絶縁ガイシ104には、引出電極102が取り付けられている。引出電極102は、例えばステンレス材の円筒形状の電極である。引出電極102には、高圧電源109から電流電圧端子111を介して電圧が印加され、これによって電子源101に対して例えば数kVの電圧が印加される。
【0027】
引出電極102の側面には、引出電極102の温度を所定の温度範囲に維持するためのヒータ108が設置されている。ヒータ108は、チャンバ106に取り付けられたヒータ信号用端子110を通じてコンピュータシステム107に接続される。コンピュータシステム107からの制御信号が、ヒータ信号用端子110を介してヒータ108に送信され、ヒータ108は、この制御信号に従い、発熱量を変化させることができるよう構成される。コンピュータシステム107は、電流電圧端子111を通して引出電極102にも接続され、引出電極102の電流値及び電圧値をモニタリングすることが可能にされている。
【0028】
電子源101から電子線103が放出されると、高電圧の引出電極102や、電流量を調節する電極(図示せず)に電子線103が照射される。この高電圧と大電流により電力が生じ、これらの電極(電極部)が発熱する。この発熱により電極が熱膨張し、電子源101先端や周辺にかかる電界が変化するため、放出電子量が不安定化することが生じ得る。なお、本明細書において、引出電極102、電流量の調節用の電極、サプレッサ等を一括して「電極部」と称することがある。
【0029】
コンピュータシステム107は、引出電極102に流れる電流、及び、引出電極102に印加されている電圧に基づき、ヒータ108を制御して、引出電極102の温度を所定の温度範囲に維持するよう制御する。一例として、コンピュータシステム107は、
図3に示すようなテーブルを保持しており、このテーブルに従ってヒータ108を制御する。このテーブルは、横軸に上述の電流量と印加電圧の積である出力[W]を表し、縦軸はヒータ108の温度を示している。得られた電流量と印加電圧の積を求めることで、ヒータ108の目標温度を特定し、ヒータ108を制御することができる。ヒータ108の温度の制御により、引出電極102の温度が所定の温度範囲に収まり、熱膨張による引出電極102の変位に伴う、電子源101先端やその周辺の電界の変化を抑えることができる。この結果、放出電流の不安定さや電子ビーム軌道のずれを抑制することが可能になる。引出電極102の変動温度ΔTは、引出電極102の材質の線膨張係数をα、引出電極の高さをL、引出電極102と電子源101の距離をdとした場合、ΔT≦0.008d/Lα℃以内で一定になるように制御するのが好適である。
【0030】
図4には、引出電極102と電子源101の間の距離dを可変した時の電界解析の結果を示している。電流変動を1%以下にするためには、引出電極102と電子源101との間の距離dの変化Δdを0.8%以下にする必要がある。引出電極102と電子源101の距離dの変化を0.8%以内にするためには、引出電極102の高さの変化ΔLが距離dに対して0.8%以下である必要がある。これは、温度が変化する引出電極102が、電子源101を囲う形で配置される必要があることから、高さLの円筒形状をしているためである。例えば、引出電極102にステンレス材(SUS材)を用いた場合、SUS材の線膨張係数は16×10
-6(℃
-1)であることから、L=10(mm)、d=0.5(mm)であった場合、電流変動を1%以下にするためには、引出電極102の温度変動を25℃以内で一定にする必要がある。
【0031】
ヒータ108は、引出電極102のなかで、温度勾配が最も大きい場所に配置すると最も効果が得られる。ヒータ108には、セラミックヒータや巻き線ヒータを用いることができる。巻き線ヒータを用いることにより、ヒータ108に流れる信号電流によって発生する磁場が、放出電子の軌道を曲げることを防ぐことができる。巻線ヒータは、例えばパーマロイなどの高透磁率材料で囲うようにするのが好適である。
【0032】
引出電極102の中で温度勾配が最も大きくなり得る場所は、熱の伝熱方向に垂直で、断面積が小さく、表面積が小さく、かつ、熱源に近いという条件を満たす場所であり得る。例えば、
図2に示す引出電極のように、断面積が略均一であり、局所的な表面積も略同一である引出電極では、熱源である電子源101に近い場所が、最も温度勾配が大きくなる場所であると考えられる。従って、
図2では、電子源101に近い位置にヒータ108を設置している。
【0033】
また、変形例として、ヒータ108を複数に分割して配置する方法も有効である。
図5A、
図5Bに、ヒータ108を分割して配置した場合(A~D)の構成例を示す。ヒータ108を分割することによって、各位置での熱をさらに詳細に制御することが可能となる。さらに、
図5Bに示すように、引出電極102自体も複数部分に分割することで、分割された電極に照射される電流量をモニタリングしつつ、個別に温度調整をすることも可能となる。軸ずれなどによってビーム拡がりが楕円になっている場合には不均一な熱膨張が生じ、ビーム軌道が電子源101の中心軸からずれることがあるが、分割型の電極およびヒータを用いることで、より詳細に熱膨張を均一に保つことができ、ビーム軌道のずれ補正が可能となる。
【0034】
上記の例では、
図3に示した引出電極102の温度と出力との関係に基づきヒータ108を制御することを説明したが、これに代えて、又はこれに加えて、制御テーブルや、モニタリングした電流値等の微分結果に基づきヒータ108を制御するようにすることも可能である。
【0035】
また、引出電極102の電流や電圧に代えて、又はこれに加えて、ショットキ電子源101のサプレッサ等の他の電極の電流値、電圧値を検出し、その検出結果に応じて、ヒータ108の温度を制御してもよい。
【0036】
以上の第1の実施の形態では、ヒータ108を用いて、引出電極102を加熱したが、ヒータ108は加熱機構に代えて、又はこれに加えて冷却機構を有していても良い。冷却機構の場合は、引出電極102の最も温度が高くなる部分の近くに冷却機構を配置するのが好適である。冷却機構の場合においても(加熱機構のみを有する)ヒータ108と同様に、熱の伝熱方向に垂直な断面積が小さく、表面積が小さく、かつ、熱源である電子源101に近いという条件を満たす場所に冷却機構を配置するのが好適である。
図1の測長SEM900において、ヒータ(加熱機構)と冷却機構を同時に使用する構成を採用することも可能であり、全体として電極部の温度が調整可能とされていればよい。例えば、熱耐性が低い部品が組み込まれた場合には、該当部品周辺に冷却装置を配置することが好ましい場合があり得る。
【0037】
また、別の変形例として、ヒータ108による温度の制御を、
図5Cに示すようなGUI(Graphical User Interface)画面を用いて実行してもよい。
図5Cに示すように、GUI画面は、一例として、検知された引出電極102の印加電圧の値1024、引出電極102を流れる電流の量1025、引出電極102の温度の時間微分値(dA/dt)1026、ヒータ108の温度1027、動作状態の判定結果(OK、NG等)1028等を表示するものとすることができる。また、引出電極102の温度の変化を示すグラフ1020を表示するようにしてもよい。グラフ1020は、ヒータ108の温度を所定の時間間隔でコンピュータシステム107に記録した結果に従ったものとすることができる。
【0038】
また、引出電極102の温度を推定するテーブル1019を表示することもできる。そして、このテーブル1019を微調整するために、電力量と電極温度の関係を示すテーブルの傾き1021と切片(シフト量)1022をGUI画面上で入力することも可能である。入力は、例えばコンピュータシステム920に設けられたマウスやキーボード等の入力デバイスにより行うことができる。
【0039】
また、引出電極102の温度の時間微分値1026がある閾値を超えた場合等において、電子源の放出電流が不安定であることを警告する警告表示1023をGUI画面上に表示することもできる。微分値のみならず、例えば、規定された時間内に一定回数以上の温度制御があった場合にも、警告表示1023を出して、ユーザーへ電子銃901の状態が不安定なことを知らせることができる。これにより、電子銃の状態が不安定なまま半導体パターンの検査や測長を行い、後工程にてエラーがでることを防ぐことができる。
【0040】
[第2の実施の形態]
次に、
図6を参照して、第2の実施の形態に係る荷電粒子ビームシステムの構成例を示す。この第2の実施の形態も、第1の実施の形態と同様に、荷電粒子ビームシステムは測長SEM900として構成される場合を例として説明する。第2の実施の形態の測長SEM900の全体構成は第1の実施の形態(
図1)と同一で良いので、重複する説明は省略する。
図6に示すように、この第2の実施の形態は、電子銃901の構成が第1の実施の形態と異なっている。
【0041】
この第2の実施の形態の電子銃901では、引出電極102は、引出電極102に電圧を導入するための電圧導入電極312にネジ313等により固定されて、電圧導入電極312と電気的に接続されている。電圧導入電極312は、絶縁ガイシ104の下端に固定されており、電流電圧端子111に接続されて、高圧電源109から高電圧を印加される。すなわち、この第2の実施の形態では、引出電極102は、電流電圧端子111及び電圧導入電極312を介して高電圧を印加される構造を有している。
【0042】
このように、この第2の実施の形態では、引出電極102は、電流電圧端子111との間に電圧導入電極312を有しており、いわば、電圧の印加部が、引出電極102及び電圧導入電極312に分割された構造とされている。このような分割構造が採用されることで、部品の製作や、組立てを容易にすることができる。
【0043】
引出電極102には、高圧電源109から引出電圧が印加される。引出電極102と電圧導入電極312とは、ネジ313で固定されており、両者間の接触面積は小さくされている。このため、引出電極102の温度が高くなりやすく、熱膨張しやすい。これを解決するため、この第2の実施の形態では、引出電極102を保持する電圧導入電極312にヒータ108が設置されている。これにより、電圧導入電極312が加熱され、引出電極102と電圧導入電極312の温度差を小さくするよう温度制御することができる。
【0044】
この第2の実施の形態においても、ヒータ108は、引出電極102及び電圧導入電極312の中で、温度勾配が最も大きい場所に配置することが好適である。例えば、引出電極102及び電圧導入電極312を接続するネジ313の近傍や、電極の材質が変化する境界などの近くに配置することが好適である。ヒータ108は、第1の実施の形態と同様に、チャンバ106に取り付けられた端子110を介してコンピュータシステム107に接続される。コンピュータシステム107は、引出電極102を保持する電圧導入電極312にも図示しない電流/電圧検知用配線により接続され、電圧導入電極312の電流値及び電圧値をモニタリングすることができる。
【0045】
この第2の実施の形態の測長SEM900では、電子源101から電子を放出させている間において、引出電極102及び電圧導入電極312に流れる電流、及び、引出電極102に印加されている電圧値により引出電極102が膨張し、位置ズレが生じることがあり得る。そこで、例えば
図3のように、引出電極102の温度と、電流及び電圧値の積との関係を予め求めておき、この関係に基づいて、得られた電流値及び電圧値に基づいて、ヒータ108温度を制御する。ヒータ108の温度制御により、引出電極102と電圧導入電極312の間の温度差を小さくすることができ、これにより、熱膨張による引出電極102の変位を抑制することができる。更に、電子源101先端やその周辺の電界の変化を抑えることができ、放出電流の不安定さや電子ビーム軌道のずれを抑制することができる。
【0046】
[第3の実施の形態]
次に、
図7Aを参照して、第3の実施の形態に係る荷電粒子ビームシステムの構成例を示す。この第3の実施の形態も、第1の実施の形態と同様に、荷電粒子ビームシステムは測長SEM900として構成される場合を例として説明する。第3の実施の形態の測長SEM900の全体構成は第1の実施の形態(
図1)と同一で良いので、重複する説明は省略する。
図7Aに示すように、この第3の実施の形態は、電子銃901の構成が第1の実施の形態と異なっている。
【0047】
図7Aに示すように、第3の実施の形態の電子銃901は、ヒータ108を直接引出電極102に接触させない構造とされている点で、前述の実施の形態と異なっている。具体的には、ヒータ108は、チャンバ106の内壁であって、引出電極102に非接触で近接して設けられたヒータホルダ414(温度調整部保持部)に搭載されている。ヒータ108は、引出電極102を含む各種電極には直接接触せず(非接触であり)、チャンバ106の内壁に固定されたヒータホルダ414に搭載される。ヒータ108は、前述の実施の形態と同様に、巻き線ヒータを用いたものとすることができる。
【0048】
ヒータ108の巻き線ヒータに電流を流れることによって、磁場が発生し、電子源101から放出される電子ビームの軌道を曲げる可能性がある。このため、ヒータホルダ414には、パーマロイなどの透磁率の高い金属部材を用いるのが好適である。また、チャンバ106の温度が上昇するのを防止するため、ヒータホルダ414とチャンバ106の間には、断熱材を介在させることもできる。
【0049】
図7Bに、第3の実施の形態の変形例に係る電子銃901を示す。この変形例は、チャンバ106の内壁から引出電極102の下方に延びる平板形状のヒータホルダ414を備えており、このヒータホルダ414の表面に、ヒータ108が、引出電極102と直接接触せずに配置されている。この変形例でも、ヒータ108と引出電極102との間に断熱材を介在させてもよい。
【0050】
[第4の実施の形態]
次に、
図8を参照して、第4の実施の形態に係る荷電粒子ビームシステムの構成例を示す。この第4の実施の形態も、第1の実施の形態と同様に、荷電粒子ビームシステムは測長SEM900として構成される場合を例として説明する。第4の実施の形態の測長SEM900の全体構成は第1の実施の形態(
図1)と同一で良いので、重複する説明は省略する。
図8に示すように、この第4の実施の形態は、電子銃901の構成が第1の実施の形態と異なっている。
【0051】
この第5の実施の形態の電子銃901は、引出電極102の温度計測を、サーモカメラ515で行うよう構成されている点で、前述の実施の形態と異なっている。チャンバ106に引出電極102を外部から観察するためのビューポート516が取付けられている。このビューポート516の後方にサーモカメラ515が設置され、ビューポート516を介して引出電極102を光学的に撮像し、引出電極102の温度を監視することができる。例えば、サーモカメラ515は、引出電極102の温度分布を光学的に検出するための装置の一例であり、これに限定されるものではない。例えば、サーモカメラに代えて、通常の光検出器等を用いてもよい。
【0052】
[第5の実施の形態]
次に、
図9を参照して、第5の実施の形態に係る荷電粒子ビームシステムの構成例を示す。この第5の実施の形態も、第1の実施の形態と同様に、荷電粒子ビームシステムは測長SEM900として構成される場合を例として説明する。第5の実施の形態の測長SEM900の全体構成は第1の実施の形態(
図1)と同一で良いので、重複する説明は省略する。
図9に示すように、この第5の実施の形態は、電子銃901の構成が第1の実施の形態と異なっている。
【0053】
図9に示すように、第5の実施の形態の電子銃901は、引出電極102の一部、例えば底面に接続された歪みゲージ617を備えている。この歪みゲージ617により、電子線103の照射に起因する引出電極102の歪み量を計測し、歪みが一定となるようにヒータ108の温度を制御することができる。歪みゲージ617の計測結果に加えて、前述の実施の形態と同様に、引出電極102の電流や電圧を併せて計測し、ヒータ108の温度の制御に利用することも可能である。
【0054】
[第6の実施の形態]
図10を参照して、第6の実施の形態に係る荷電粒子ビームシステムの構成例を示す。この第6の実施の形態も、第1の実施の形態と同様に、荷電粒子ビームシステムは測長SEM900として構成される場合を例として説明する。第6の実施の形態の測長SEM900の全体構成は第1の実施の形態(
図1)と同一で良いので、重複する説明は省略する。
図10に示すように、この第6の実施の形態は、電子銃901の構成が第1の実施の形態と異なっている。
【0055】
図10(a)に示すように、この第6の実施の形態の電子銃901の横方向から見た形状は、第2の実施の形態と略同一であるが、
図10(b)、(c)に示すように、引出電極102の底面の形状が第2の実施の形態とは異なっている。ショットキ電子源101の先端部分718は、拡大図である
図10(c)に示すように、八角形の形状を有している。この八角形の八面のうちの四つの面から電子が放出される。これらの4つの面から放出される電子は、サイドエミッション719とも呼ばれる。電子源101から放出される電子線のうち、引出電極102に照射されるのは、このサイドエミッション719が主である。よって、第6の実施の形態では、このサイドエミッション719が到達する引出電極102の部分Ahp(
図10(b))を、他の部分に比べ熱伝導率が高くなるよう構成している。これにより、引出電極102の温度を均一に保つことが容易になる。
【0056】
一例として、部分Ahpにおいて、引出電極102の他の部分よりも熱伝導率が高い金属膜を形成することができる。一例として、引出電極102がステンレス鋼で構成されている場合、部分Ahpの金属膜を、例えばアルミニウム合金とすることができる。または、この部分Ahpに穴又は切り欠きを形成することで、熱伝導率を他の部分に比べ高くすることも可能である。穴を設けることによって、引出電極102付近のコンダクタンスが大きくなるので、効率的に真空排気が可能となり、より電子の放出を安定化することができる。
【0057】
[第7の実施の形態]
図11を参照して、第7の実施の形態に係る荷電粒子ビームシステムの構成例を示す。この第7の実施の形態も、第1の実施の形態と同様に、荷電粒子ビームシステムは測長SEM900として構成される場合を例として説明する。第7の実施の形態の測長SEM900の全体構成は第1の実施の形態(
図1)と同一で良いので、重複する説明は省略する。
図11に示すように、この第7の実施の形態は、電子銃901の構成が第1の実施の形態と異なっている。
【0058】
この第7の実施の形態の電子銃901は、引出電極102の下方に絞り820を備えている。この絞り820は、不要なサイドエミッションが試料(ウエハ905等)に到達しないようにするものである。絞り820が設けられることにより、引出電極102の穴径が大きくされたとしても、不要な電子線が試料に到達することを抑止することができる。引出電極102の穴径を大きくすることができるので、引出電極102に照射される電子線の量が小さくなり、引出電極102の温度上昇を抑えることができる。
【0059】
なお、引出電極102の穴径が大きくなると、電子源101先端に印加される電界が小さくなる。このため、同じ電流量を得るためには、引出電極102に印加する電圧を大きくしなければならない。この時、絞り820で反射した電子が引出電極102に当たらないようにするとよい。
【0060】
引出電極102に電子線が当たらないように電子ビームを成形した場合、サイドエミッションはエネルギーのばらつきが大きく、得られる電子ビームは、フレアなどを含んだ質の悪い電子ビームとなる。このため、サイドエミッションは、試料に到達する前にカットする必要がある。ただし、電子源101から離れた位置に絞り820を配置して電子線をカットした場合、電子ビームは放射状に広がっていることから、絞り820の穴径が引出電極102の穴径と同じだった場合、電子ビームの中心軸付近のごく一部の電子ビームしか試料に到達させることができなくなり、高スループットで試料を観察することは困難となってしまう。
【0061】
一方で、絞りの穴径を大きくした場合には、コンダクタンスが良くなるので、電子銃下流のガスが吹き上がりにより、電子源101付近の圧力が高くなってしまい、電流が安定しないことに加え、電子源101から絞り820までの距離を長くしなければならず、装置の大型化につながる。
【0062】
上記の問題の解消のためには、絞り820の穴部の穴径を前記引出電極102の穴の穴径よりも小さくしつつ、絞り820を引出電極102に近付けて配置することが好適である。絞り820と引出電極102の電位差が大きい場合には、引出電極102と絞り820の間で放電が起きるため、電子源101が破損する場合がある。したがって、
図13に示すように、引出電極102の電圧と同一か、又は±10%以下の差異(比率1±0.1以内)を有する電圧を絞り820に印加し、放電を防ぎつつ電子ビームを形成することが好適である。
【0063】
上記の構成の場合、絞り820の温度が高くなり、輻射によって引出電極102も加熱されるため、
図11に示すように、絞り820にヒータ108を搭載し、絞り820の温度を調整することが好適である。ヒータ108は、引出電極102とは非接触に配置が可能であり、温度調節機構の配置の自由度が高くなる。したがって、他の実施の形態よりも効率の良い温度調整が可能であり、環境負荷を小さくすることができる。なお、ヒータ108を、絞り820に搭載することに代えて、前述の実施の形態と同様に、引出電極102に搭載することも可能である(
図12参照)。
【0064】
上記のように、絞り820への印加電圧の、引出電極102の印加電圧に対する比率を1±0.1(±10%以下)としているのは、電子線の安定化のためである。引出電極102の直下に絞り820を配置し、電圧を印加すると、絞り820により静電レンズが形成される。この静電レンズにより電子線のビーム軌道が変化してしまい、試料に照射されるプローブ電流の制御が困難になってしまう。
図13には、絞り820を配置し、引出電極102の印加電圧と絞り820の印加電圧との電圧比を横軸にプロットした際の電流変動率を示す。
図13より引出電極102と絞り820の電圧比率が1±0.1の場合には、プローブ電流の変化率が0%付近であることがわかる。したがって、電子線のビーム軌道の変化が小さく、プローブ電流を安定に保つことができる絞り820の電圧は、引出電極102の印加電圧との比率が1±0.1となるような電圧とするのが好適である。電圧比率が0.1以上となった場合にはプローブ電流の変化率は二次曲線的に増加していくため、放電のリスクが高くなりつつ、本来の電流量とは異なる電流量での制御となり、正確な検査や観察結果が得られない。
【0065】
また、このような電圧比率とすることにより、フィードバックをなくすことも可能であるため、制御性の観点からもメリットが大きい。フィードバックをなくす例としては、電子ビーム照射によって発生する電力よりも高い電力にて絞りを加熱、もしくは、冷却し、絞り820の温度変化をなくすことが挙げられる。本実施の形態は、
図4の実施の形態と組み合わせて用いてもよい。
【0066】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0067】
101…電子源、 102…引出電極、 103…電子線、 104…絶縁ガイシ、 105…フランジ、 106…チャンバ、 107…コンピュータシステム、 108…ヒータ、 109…高圧電源、 110…ヒータ信号用端子、 111…電流電圧端子、 112…イオンポンプ、 312…電圧導入電極、 313…ネジ、 414…ヒータホルダ、 515…サーモカメラ、 516…ビューポート、 617…歪みゲージ、 718…電子源先端、 719…サイドエミッション、 820…絞り、 900…測長SEM、 901…電子銃、 904…X-Yステージ、 905…ウエハ、 906…電子ビーム、 907…静電チャック、 920…コンピュータシステム、 924…筐体
925…高圧電源、 926…一次電子加速電極、 927…電子レンズ、 928…絞り、 929…走査コイル、 930…電子対物レンズ、 931…二次電子、 932…二次電子検出器、 933…ウエハ搬送用リフト機構、 934…搬送ロボット、 935…ロード室、 936…ウエハカセット、 937…ミニエン、 938…搬送ロボット、 939…表面電位計。