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  • 特開-シリコンウェーハの製造方法 図1
  • 特開-シリコンウェーハの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090096
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】シリコンウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20240627BHJP
   C30B 33/02 20060101ALI20240627BHJP
   H01L 21/322 20060101ALI20240627BHJP
   H01L 21/26 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
C30B29/06 502Z
C30B29/06 B
C30B33/02
H01L21/322 Y
H01L21/26 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205760
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】312007423
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100193378
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 明生
(72)【発明者】
【氏名】須藤 治生
(72)【発明者】
【氏名】南 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】早川 兼
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BA04
4G077CF10
4G077FE11
4G077FE13
4G077FE20
4G077HA12
(57)【要約】
【課題】シリコンインゴットのブロック間で生じるDZ幅のばらつきを低減すること。
【解決手段】シリコンウェーハの製造方法は、チョクラルスキー法で育成した単結晶シリコンインゴットからスライスして得たシリコンウェーハに、1300℃以上、1350℃以下で、1s以上、60s以下保持し、50℃/s以上、150℃/s以下の速度で冷却する急速昇降温熱処理(RTP)を施すシリコンウェーハの製造方法において、前記単結晶シリコンインゴットをブロックカットした際の端から得られる評価ウェーハを用いて、酸素濃度と窒素濃度の評価と、1000℃,16hの析出熱処理を施した際の深さ方向の酸素析出物の密度とサイズを予め評価しておき、製造されるシリコンウェーハの狙いの無欠陥層(DZ)幅に対して、結晶ブロック毎に適用すべきRTPの酸素分圧を前記評価から決定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョクラルスキー法で育成した単結晶シリコンインゴットからスライスして得たシリコンウェーハに、1300℃以上、1350℃以下で、1s以上、60s以下保持し、50℃/s以上、150℃/s以下の速度で冷却する急速昇降温熱処理(RTP)を施すシリコンウェーハの製造方法において、
前記単結晶シリコンインゴットをブロックカットした際の端から得られる評価ウェーハを用いて、酸素濃度と窒素濃度の評価と、1000℃,16hの析出熱処理を施した際の深さ方向の酸素析出物の密度とサイズを予め評価しておき、
製造されるシリコンウェーハの狙いの無欠陥層(DZ)幅に対して、結晶ブロック毎に適用すべきRTPの酸素分圧を前記評価から決定することを特徴とするシリコンウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記評価ウェーハの酸素濃度と窒素濃度の値を用いて、狙いのDZ幅に対する酸素分圧の適正値を点欠陥シミュレーションにて予測して前記RTPの酸素分圧前記RTPの酸素分圧を仮決定することを特徴とする請求項1に記載のシリコンウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記評価ウェーハに、前記析出熱処理を施した際の酸素析出物の深さ方向の密度とサイズを赤外線トモグラフィーで評価し、結晶中のミクロンオーダーの間隔で変化する酸素濃度ムラに起因する酸素析出物密度の低下を調査し、低下していた場合は、低下位置の酸素析出物密度から、結晶の実効酸素濃度を推定し、再度の点欠陥シミュレーションを行って酸素分圧を本決定することを特徴とする請求項2に記載のシリコンウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス用の基板として用いられるシリコンウェーハは、デバイス品質の向上を目的に、表層の無欠陥化のみならず、近年では、ウェーハの機械的強度や金属不純物を捕獲するゲッタリング能が必要とされている。このような要求に対しては、BMD(Bulk Micro Defects)と呼ばれる酸素析出物をウェーハ内部に作り込むなどの工夫がなされている。例えば、特許文献1では、シリコンウェーハに1300℃以上の急速昇降温熱処理(以下RTP)を施すことで、点欠陥である空孔をシリコンウェーハバルクに残存させることで、その後の熱処理で、空孔に起因したBMDをウェーハ中に形成させる方法が提案されている。その際、ウェーハ深さ方向のBMD密度プロファイルは、深さ方向の残留空孔濃度プロファイルに依存する。すなわち、残留空孔濃度プロファイルをコントロールすることによって、DZ(Denuded Zone)と呼ばれる表面近傍の無欠陥領域の幅も変化させることが可能である。このDZ幅は、デバイス設計において極めて重要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-204326号公報
【特許文献2】特開2017-216381号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】G. Kissinger and J. Dabrowski, Oxide Precipitation Via Coherent Seed-Oxide Phases, The Electrochemical Society 155(6) H448-H454 (2008)
【非特許文献2】Haruo Sudo, Kozo Nakamura, Susumu Maeda, Hideyuki Okamura, Koji Izunome, and Koji Sueoka, Point Defect Reactionin Silicon Wafers by Rapid Thermal Processing at More Than 1300℃ Using an Oxidation Ambient, ECS Journal of Solid State Science and Technology, 8 (1) P35-P40 (2019)
【非特許文献3】Haruo Sudo, Kozo Nakamura, Hideyuki Okamura, et al., Formationbehavior of oxygen precipitates in silicon wafers subjected to ultra-high-temperature rapid thermal process, Journal. Applied. Physics. 131, 055704 (2022)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
なお、上記先行技術文献の各開示を、本書に引用をもって組み込むものとする。以下の分析は、本発明者らによってなされたものである。
【0006】
ところで、ところで、RTP処理されたウェーハの残留空孔濃度は、結晶中の酸素濃度と窒素濃度の影響と、RTPの最高温度、保持時間、雰囲気、冷却速度の影響を受けることが知られている。一方、その後の析出熱処理において、空孔が凝集して核発生してBMD成長するが、BMD成長には結晶中の酸素濃度の影響を大きく受ける。一方、チョクラルスキー法で育成される単結晶シリコンインゴットは、結晶軸方向の酸素濃度、窒素濃度が変動しているのみならず、ミクロンオーダーの間隔で生じるストリエーション状に僅かな酸素濃度ムラがBMD成長に影響を与える。このことから、単結晶シリコンインゴットのHeadからTail部まで、作成されるウェーハで同じDZ幅とはならず、デバイスを形成した際、デバイスの特性にばらつきが発生する要因となっている。
【0007】
本発明の目的は、上述した課題を鑑み、シリコンインゴットのブロック間で生じるDZ幅のばらつきを低減することに寄与するシリコンウェーハの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシリコンウェーハの製造方法は、チョクラルスキー法で育成した単結晶シリコンインゴットからスライスして得たシリコンウェーハに、1300℃以上、1350℃以下で、1s以上、60s以下保持し、50℃/s以上、150℃/s以下の速度で冷却する急速昇降温熱処理(RTP)を施すシリコンウェーハの製造方法において、前記単結晶シリコンインゴットをブロックカットした際の端から得られる評価ウェーハを用いて、酸素濃度と窒素濃度の評価と、1000℃,16hの析出熱処理を施した際の深さ方向の酸素析出物の密度とサイズを予め評価しておき、製造されるシリコンウェーハの狙いの無欠陥層(DZ)幅に対して、結晶ブロック毎に適用すべきRTPの酸素分圧を前記評価から決定する。
【0009】
上記RTP処理は、育成したシリコンウェーハ中に含まれるGrown-in欠陥を消滅させ、かつ、ウェーハ中に空孔を残留させるために必要な処理である。冷却速度を50℃/s以上、150℃/s以下とする理由は、熱処理でウェーハ中に発生させた空孔を高濃度に残留させるためであり、150℃/sを超えるとスリップ制御が難しくなるため好ましくない。また、単結晶シリコンインゴットをブロックカットした際の端から得られる評価ウェーハを用いて、酸素濃度と窒素濃度の評価と、1000℃,16hの析出熱処理を施した際の深さ方向の酸素析出物の密度とサイズを予め評価しておき、製造されるシリコンウェーハの狙いの無欠陥層(DZ)幅に対して、結晶ブロック毎に適用すべきRTPの酸素分圧を前記評価から決定することで、結晶部位の特性に依存したウェーハのDZ幅のばらつきを小さくすることができる。
【0010】
また、上記シリコンウェーハの製造方法において、前記評価ウェーハの酸素濃度と窒素濃度の値を用いて、狙いのDZ幅に対する酸素分圧の適正値を点欠陥シミュレーションにて予測して前記RTPの酸素分圧前記RTPの酸素分圧を仮決定することが好ましい。DZ幅の結晶部位依存を極力小さくするためである。
【0011】
さらに、上記シリコンウェーハの製造方法において、前記評価ウェーハに、前記析出熱処理を施した際の酸素析出物の深さ方向の密度とサイズを赤外線トモグラフィーで評価し、結晶中のミクロンオーダーの間隔で変化する酸素濃度ムラに起因する酸素析出物密度の低下を調査し、低下していた場合は、低下位置の酸素析出物密度から、結晶の実効酸素濃度を推定し、再度の点欠陥シミュレーションを行って酸素分圧を本決定することが好ましい。ミクロンオーダーの間隔で生じるストリエーション状に僅かな酸素濃度ムラがBMD成長に影響を与えることを防ぐためである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の各視点によれば、シリコンインゴットのブロック間で生じるDZ幅のばらつきを低減することに寄与するシリコンウェーハの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明に係るシリコンウェーハの製造方法に用いられるRTP装置の一例の概要図である。
図2図2は、RTPのO2分圧とDZ幅の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。ただし、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0015】
図1は、本発明に係るシリコンウェーハの製造方法に用いられるRTP装置の一例の概要図である。図1に示すように、RTP装置10は、雰囲気ガス導入口20aおよび雰囲気ガス排出口20bを備えた反応管20と、反応管20の上部に離間して複数配置されたランプ30と、反応管20内の反応空間25にウェーハWを支持するウェーハ支持部40とを備えている。
【0016】
前記ウェーハ支持部40は、ウェーハWを直接支持する環状のサセプタ40aと、サセプタ40aを支持するステージ40bとを備えている。なお、各構成材料は、例えば、反応管20およびステージ40bは、石英からなり、サセプタ40aは、シリコンからなる。また、ランプ30は、例えば、ハロゲンランプで構成される。
【0017】
図1に示すRTP装置10を用いたウェーハWの急速加熱・急速冷却熱処理は、反応管20に設けられたウェーハ導入口(図示せず)からウェーハWを反応空間25内に導入し、ウェーハ支持部40のサセプタ40a上にウェーハWを支持し、雰囲気ガス導入口20aから後述する雰囲気ガスを導入するとともに、ウェーハW表面に対してランプ30を照射することにより行う。
【0018】
具体的には、本発明の実施形態では、チョクラルスキー法で育成した単結晶シリコンインゴットからスライスして得たシリコンウェーハに、1300℃以上、1350℃以下で、5s以上、30s以下保持し、50℃/s以上、150℃/s以下の速度で冷却する急速昇降温熱処理(RTP)を施す。このRTP処理は、育成したシリコンウェーハ中に含まれるGrown-in欠陥を消滅させ、かつ、ウェーハ中に空孔を残留させるために必要な処理である。冷却速度を50℃/s以上、150℃/s以下とする理由は、熱処理でウェーハ中に発生させた空孔を高濃度に残留させるためであり、150℃/sを超えるとスリップ制御が難しくなるため好ましくない。
【0019】
上記急速昇降温熱処理(RTP)を施すシリコンウェーハは、チョクラルスキー法(CZ法)で育成したシリコン単結晶インゴットをスライスして得られたウェーハである。CZ法によるシリコン単結晶インゴットの製造は、周知の方法にて行うことができる。具体的には、石英ルツボに充填した多結晶シリコンを加熱してシリコン融液とし、このシリコン融液の液面に種結晶を接触させて、種結晶と石英ルツボを回転させながら種結晶を引き上げ、所望の直径まで拡径して直胴部を形成し、その後、シリコン融液から切り離すことにより、シリコン単結晶インゴットを育成する。
【0020】
次に、このようにして得られたシリコン単結晶インゴットを、周知の方法により、シリコンウェーハに加工する。具体的には、シリコン単結晶インゴットを内周刃またはワイヤソー等によりブロックに分割し、これをウェーハ状にスライスした後、外周部の面取り、ラッピング、エッチング、鏡面研磨等の加工を行う。本発明の実施形態では、シリコン単結晶インゴットをブロックカットした際にブロックの端から評価ウェーハを作成する。
【0021】
本発明の実施形態では、この評価ウェーハを用いて、酸素濃度と窒素濃度の評価と、1000℃,16hの析出熱処理を施した際の深さ方向の酸素析出物の密度とサイズを予め評価しておき、製造されるシリコンウェーハの狙いの無欠陥層(DZ)幅に対して、結晶ブロック毎に適用すべきRTPの酸素分圧を決定する。
【0022】
(検証実験)
以下、RTPの酸素分圧の決定のためのRTPの酸素分圧とDZ幅の関係の実験結果について説明する。
【0023】
実験には、CZ法で育成したφ300mm単結晶シリコンを用いた。インゴットを5つのブロックに切断し、ブロックの端から得た評価用ウェーハ(RTPなし)において、ウェーハ中心部の酸素濃度(by FTIR)の測定と、窒素濃度は偏析計算にて推定した。その結果(以下Head→Tailではない)、酸素濃度と窒素濃度は、それぞれ結晶(1)1.40E18/cm3、1.99E14/cm3、結晶(2)1.17E18/cm3、2.32E14/cm3、結晶(3)1.11E18/cm3、5.37E14/cm3、結晶(4)1.20E18/cm3、6.05E14/cm3、結晶(5)1.18E18/cm3、5.22E14/cm3であった。
【0024】
続いて、評価ウェーハに、O2雰囲気下、1000℃,16hの析出熱処理を施した後、IRトモグラフィーにて深さ方向のBMD密度とサイズを調査した。その結果、結晶(2)において、深さ方向にミクロンオーダーの間隔で生じる僅かな酸素濃度ムラによって、結晶の酸素濃度から推定されるBMD密度、サイズよりも低いことが分かった。そこで、IRトモグラフィーによる、BMD密度、サイズから点欠陥シミュレーションにて実効酸素濃度を求めた結果、1.05E18/cm3と推定した。
【0025】
5つのブロックから得られた将来製品となるシリコンウェーハに、1350℃,15s, 冷却速度120℃/sのRTP処理を施した。その際、酸素分圧を1、5、15、35、50、75、100%とした。その後、1000℃, 16hの析出熱処理を施した後、IRトモグラフィーでDZ幅を評価した。結果を図2に示す。
【0026】
図2の各プロットは実測値、ライン(実線)は点欠陥シミュレーションによる計算値、ライン(点線)は結晶(2)において酸素濃度を実効酸素濃度(1.05E18/cm3)とした場合の点欠陥シミュレーションによる計算値である。
【0027】
ここで、点欠陥シミュレーションとは、酸素雰囲気中の熱処理によってウェーハの表面に酸化膜が形成され、この酸化膜とウェーハの界面に格子間シリコンが発生し、この格子間シリコンがウェーハ中に拡散し、RTPによってウェーハ中に導入された空孔と対消滅する一連の物理現象をモデル化したものである。これによって、RTP後のウェーハ深さ方向の空孔濃度プロファイルを推定することができる。
【0028】
さらに、RTP後の析出熱処理中に形成されるBMD密度は、下式で示されるようにウェーハ中の空孔濃度と酸素濃度の影響を受けることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【数1】
ただし、NはBMD密度(/cm3)、aは5.88×10-15/cm3、CvはRTP後の空孔濃度、Coxは酸素濃度、Cveqは空孔の熱平衡濃度、Coxeqは酸素の熱平衡濃度である。これによって、析出熱処理後のウェーハ深さ方向のBMD密度プロファイルを推定することができる。
【0029】
また、上記のような点欠陥シミュレーションによる深さ方向のBMD密度プロファイルと、実験で確認される深さ方向のBMD密度プロファイルの相関から、下記のような回帰式によるDZ層の幅wDZが計算できる。なお下式において、Tは処理温度、Rは降温速度、及び、Pは酸素分圧である。ただし、下記回帰式は、特定の酸素濃度を用いて導出した回帰式の例であり、実際の適用時は、実験で確認される深さ方向のBMD密度プロファイルと点欠陥シミュレーションによる深さ方向のBMD密度プロファイルの相関を用いるので、実験結果から推定された実効酸素濃度に依存したDZ層の幅wDZの回帰式が得られる。実効酸素濃度とDZ層の幅の関係については、例えば特許文献2、非特許文献2または非特許文献3を参照することができる。
【数2】
【0030】
実施例として、将来製品の狙いDZ幅70μmとした場合の従来法と本発明の差について説明する。従来法では、RTPのO2分圧は固定であり、O2分圧を50%(Ar希釈)とした場合のDZ幅のばらつきはブロック間で32μmであった。一方、本発明においては、上記の評価ウェーハの測定結果とシミュレーション結果をフィードバックし、ブロック毎に最適なO2分圧を適用(図1の〇印の分圧を各結晶ブロックで適用)することによって、DZ幅のばらつきはブロック間で11μmまで低減することが確認された。
【0031】
すなわち、本発明の方法を用いることによって、シリコンインゴットのブロック間で生じるDZばらつきが従来法の32μmから11μmまで低減することが確認できた。
【0032】
(変形例)
なお、本発明に係る適正なO2分圧のフィードバック方法については、ビックデータを使った人工知能を活用することによって、DZ幅のばらつきを更に低減できると見込まれる。
【0033】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
[付記1]
チョクラルスキー法で育成した単結晶シリコンインゴットからスライスして得たシリコンウェーハに、1300℃以上、1350℃以下で、1s以上、60s以下保持し、50℃/s以上、150℃/s以下の速度で冷却する急速昇降温熱処理(RTP)を施すシリコンウェーハの製造方法において、
前記単結晶シリコンインゴットをブロックカットした際の端から得られる評価ウェーハを用いて、酸素濃度と窒素濃度の評価と、1000℃,16hの析出熱処理を施した際の深さ方向の酸素析出物の密度とサイズを予め評価しておき、
製造されるシリコンウェーハの狙いの無欠陥層(DZ)幅に対して、結晶ブロック毎に適用すべきRTPの酸素分圧を前記評価から決定することを特徴とするシリコンウェーハの製造方法。
[付記2]
前記評価ウェーハの酸素濃度と窒素濃度の値を用いて、狙いのDZ幅に対する酸素分圧の適正値を点欠陥シミュレーションにて予測して前記RTPの酸素分圧前記RTPの酸素分圧を仮決定することを特徴とする付記1に記載のシリコンウェーハの製造方法。
[付記3]
前記評価ウェーハに、前記析出熱処理を施した際の酸素析出物の深さ方向の密度とサイズを赤外線トモグラフィーで評価し、結晶中のミクロンオーダーの間隔で変化する酸素濃度ムラに起因する酸素析出物密度の低下を調査し、低下していた場合は、低下位置の酸素析出物密度から、結晶の実効酸素濃度を推定し、再度の点欠陥シミュレーションを行って酸素分圧を本決定することを特徴とする付記2に記載のシリコンウェーハの製造方法。
【0034】
なお、引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の全開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし、選択(部分的削除を含む)が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。さらに、上記引用した文献の各開示事項は、必要に応じ、本発明の趣旨に則り、本発明の開示の一部として、その一部又は全部を、本書の記載事項と組み合わせて用いることも、本願の開示事項に含まれるものと、みなされる。
【符号の説明】
【0035】
10 RTP装置
20 反応管
20a 雰囲気ガス導入口
20b 雰囲気ガス排出口
30 ランプ
40 ウェーハ支持部
40a サセプタ
40b ステージ
図1
図2