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特開2024-90116デポラライザ、デポラライザの調整方法、およびデポラライザの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090116
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】デポラライザ、デポラライザの調整方法、およびデポラライザの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/126 20060101AFI20240627BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20240627BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
G02B6/126
G02B6/42
G02B6/12 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205785
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 礼高
(72)【発明者】
【氏名】梶 敦次
(72)【発明者】
【氏名】長島 和哉
【テーマコード(参考)】
2H137
2H147
【Fターム(参考)】
2H137AA17
2H137AB11
2H137BA31
2H137BA48
2H137BA52
2H137BA53
2H137BB12
2H137BC41
2H137BC44
2H137CA12E
2H137CA42
2H147AA00
2H147AB05
2H147AB11
2H147AB21
2H147AB32
2H147AC17
2H147BB02
2H147BD02
2H147BD15
2H147BE01
2H147BE03
2H147BG08
2H147CA22
2H147CA23
2H147EA13C
2H147EA14A
2H147EA14B
2H147EA14C
2H147EA32A
2H147EA35A
2H147GA00
2H147GA10
(57)【要約】
【課題】小型化が容易であり、特性の低下が抑制されたデポラライザならびにその調整方法および製造方法を提供する。
【解決手段】デポラライザは、光導波路で構成され、入力された光を少なくとも第1光と第2光とに分岐して出力するスプリッタと、複数の曲線光導波路を含む光導波路で構成され、第1光に、第2光に対する群遅延時間差を与えて出力する遅延付与部と、第1光および第2光のいずれか一方の偏波状態を、当該偏波状態と直交する偏波状態に変換して出力する偏波変換部と、光導波路で構成され、遅延付与部および偏波変換部を通過した第1光と第2光と、または遅延付与部を通過した第1光と偏波変換部を通過した第2光と、を合波して出力するカプラと、スプリッタとカプラとを光学的に接続して第2光を導波する接続光導波路と、を備え、スプリッタ、遅延付与部、偏波変換部、カプラ、および接続光導波路が、一つの光導波路回路基板上に集積されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路で構成され、入力された光を少なくとも第1光と第2光とに分岐して出力するスプリッタと、
複数の曲線光導波路を含む光導波路で構成され、前記第1光に、前記第2光に対する群遅延時間差を与えて出力する遅延付与部と、
前記第1光および前記第2光のいずれか一方の偏波状態を、当該偏波状態と直交する偏波状態に変換して出力する偏波変換部と、
光導波路で構成され、前記遅延付与部および前記偏波変換部を通過した前記第1光と前記第2光と、または前記遅延付与部を通過した前記第1光と前記偏波変換部を通過した前記第2光と、を合波して出力するカプラと、
前記スプリッタと前記カプラとを光学的に接続して前記第2光を導波する接続光導波路と、
を備え、前記スプリッタ、前記遅延付与部、前記偏波変換部、前記カプラ、および前記接続光導波路が、一つの光導波路回路基板上に集積されている
デポラライザ。
【請求項2】
前記スプリッタおよび前記カプラの少なくとも一方は、2つの入力ポートと2つの出力ポートとを有する
請求項1に記載のデポラライザ。
【請求項3】
前記カプラは、2つの入力ポートと2つの出力ポートを有し、前記2つの出力ポートの一方が受光器に接続される
請求項1に記載のデポラライザ。
【請求項4】
前記スプリッタの分岐比および前記カプラの合波比の少なくとも一方が変更可能である
請求項1に記載のデポラライザ。
【請求項5】
前記スプリッタは、3つの出力ポートを有し、入力された光を前記第1光と前記第2光と第3光とに分岐して出力し、
前記第3光を、前記偏波変換部に通過させて、前記カプラを経由させずに前記デポラライザから出力する通過光導波路を備える
請求項1に記載のデポラライザ。
【請求項6】
前記偏波変換部は、前記遅延付与部を構成する光導波路の途中に設けられており、前記第1光の偏波状態を、当該偏波状態と直交する偏波状態に変換して出力する
請求項1に記載のデポラライザ。
【請求項7】
前記光導波路回路基板には、前記遅延付与部を構成する光導波路を横断するように第1スリットが設けられるとともに、前記接続光導波路を横断するように第2スリットとが設けられており、
前記偏波変換部は、偏波回転素子であり、前記偏波回転素子は、前記第1スリットまたは前記第2スリットに挿入されている
請求項1に記載のデポラライザ。
【請求項8】
前記スプリッタには直線偏波を有する光が入力され、
前記スプリッタの前段、前記遅延付与部の後段であって前記カプラの前段、および前記偏波変換部の後段であって前記カプラの前段、の少なくとも一つに配置された、前記スプリッタに入力される前記光の直線偏波と同じ直線偏波または前記光の直線偏波と直交する直線偏波を有する光を選択的に通過するポラライザを備える
請求項1に記載のデポラライザ。
【請求項9】
前記カプラは偏波合成器である
請求項1に記載のデポラライザ。
【請求項10】
前記複数の曲線光導波路の曲率符号と屈曲角度との積の総和は零である
請求項1に記載のデポラライザ。
【請求項11】
前記遅延付与部を構成する光導波路は、第1遅延光導波路と、入力された光に対して前記第1遅延光導波路よりも実効屈折率が高い第2遅延光導波路とを有する
請求項1に記載のデポラライザ。
【請求項12】
前記第2遅延光導波路の導波路コア幅が、前記第1遅延光導波路の導波路コア幅よりも広い
請求項11に記載のデポラライザ。
【請求項13】
前記遅延付与部を構成する光導波路は、前記第1遅延光導波路と前記第2遅延光導波路とを接続し、導波路コア幅が連続的に変化する第3遅延光導波路を備える
請求項12に記載のデポラライザ。
【請求項14】
光学的に接続された前記スプリッタ、前記遅延付与部、前記偏波変換部、および前記カプラの組を複数備え、複数の前記遅延付与部を構成する光導波路が、屈曲しながら並走する
請求項1に記載のデポラライザ。
【請求項15】
光学的に接続された前記スプリッタ、前記遅延付与部、および前記カプラの組を複数備え、各組は共通の前記偏波変換部と光学的に接続しており、複数の前記遅延付与部を構成する光導波路が、屈曲しながら並走する
請求項1に記載のデポラライザ。
【請求項16】
入力された光を、複数の前記スプリッタのいずれかに出力する入力側光スイッチを備える
請求項14または15に記載のデポラライザ。
【請求項17】
複数の前記カプラのいずれかから入力された光を出力する出力側光スイッチを備える
請求項16に記載のデポラライザ。
【請求項18】
請求項1に記載のデポラライザの調整方法であって、
前記スプリッタの分岐比および前記カプラの合波比の少なくとも一方が変更可能であり、
前記デポラライザに光を入力する工程と、
前記デポラライザから出力された光を受光する工程と、
前記受光した光の強度に応じて、前記スプリッタの分岐比または前記カプラの合波比を調整する工程と、
を備える
デポラライザの調整方法。
【請求項19】
前記スプリッタ、前記遅延付与部、前記偏波変換部、前記カプラ、および前記接続光導波路を形成する工程と、
請求項18に記載のデポラライザの調整方法を実行する工程と、
を備える
デポラライザの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デポラライザ、デポラライザの調整方法、およびデポラライザの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
入力された光の偏光度を低くするデポラライザの技術が開示されている(特許文献1、2)。上記の特許文献では、光に群遅延時間差(Differential Group Delay:DGD)を与える手段や、光を分岐するスプリッタや、光を合波するカプラにおいて、パンダファイバのような偏波保持光ファイバや、PLC(Planar Lightwave Circuit:平面光波回路)が有する導波路コアのような光導波路が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07-159632号公報
【特許文献2】特開2013-152295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光にDGDを与える手段として偏波保持光ファイバを用いる場合、十分なDGDを与えるために必要な偏波保持光ファイバの長さが長いので、デポラライザの小型化が困難な場合がある。また、上記の特許文献では、デポラライザに、偏波保持光ファイバ同士の接続点や、偏波保持光ファイバと光導波路との接続点が多く含まれている。しかしながら、このような接続点では、偏波主軸同士の角度ずれが生じる場合があるので、デポラライザにおいて偏波保持性を高く保つべき部分での偏波保持性が低下してしまう場合がある。偏波保持性とは、入力した偏波を維持したまま出力する特性である。したがって、デポラライザに接続点が含まれていると、デポラライザの特性が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、小型化が容易であり、かつ特性の低下が抑制されたデポラライザ、デポラライザの調整方法、およびデポラライザの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様は、光導波路で構成され、入力された光を少なくとも第1光と第2光とに分岐して出力するスプリッタと、複数の曲線光導波路を含む光導波路で構成され、前記第1光に、前記第2光に対する群遅延時間差を与えて出力する遅延付与部と、前記第1光および前記第2光のいずれか一方の偏波状態を、当該偏波状態と直交する偏波状態に変換して出力する偏波変換部と、光導波路で構成され、前記遅延付与部および前記偏波変換部を通過した前記第1光と前記第2光と、または前記遅延付与部を通過した前記第1光と前記偏波変換部を通過した前記第2光と、を合波して出力するカプラと、前記スプリッタと前記カプラとを光学的に接続して前記第2光を導波する接続光導波路と、を備え、前記スプリッタ、前記遅延付与部、前記偏波変換部、前記カプラ、および前記接続光導波路が、一つの光導波路回路基板上に集積されているデポラライザである。
【0007】
前記スプリッタおよび前記カプラの少なくとも一方は、2つの入力ポートと2つの出力ポートとを有してもよい。
【0008】
前記カプラは、2つの入力ポートと2つの出力ポートを有し、前記2つの出力ポートの一方が受光器に接続されてもよい。
【0009】
前記スプリッタの分岐比および前記カプラの合波比の少なくとも一方が変更可能であってもよい。
【0010】
前記スプリッタは、3つの出力ポートを有し、入力された光を前記第1光と前記第2光と第3光とに分岐して出力し、前記第3光を、前記偏波変換部に通過させて、前記カプラを経由させずに前記デポラライザから出力する通過光導波路を備えてもよい。
【0011】
前記偏波変換部は、前記遅延付与部を構成する光導波路の途中に設けられており、前記第1光の偏波状態を、当該偏波状態と直交する偏波状態に変換して出力してもよい。
【0012】
前記光導波路回路基板には、前記遅延付与部を構成する光導波路を横断するように第1スリットが設けられるとともに、前記接続光導波路を横断するように第2スリットとが設けられており、前記偏波変換部は、偏波回転素子であり、前記偏波回転素子は、前記第1スリットまたは前記第2スリットに挿入されていてもよい。
【0013】
前記スプリッタには直線偏波を有する光が入力され、前記スプリッタの前段、前記遅延付与部の後段であって前記カプラの前段、および前記偏波変換部の後段であって前記カプラの前段、の少なくとも一つに配置された、前記スプリッタに入力される前記光の直線偏波と同じ直線偏波または前記光の直線偏波と直交する直線偏波を有する光を選択的に通過するポラライザを備えてもよい。
【0014】
前記カプラは偏波合成器でもよい。
【0015】
前記複数の曲線光導波路の曲率符号と屈曲角度との積の総和は零でもよい。
【0016】
前記遅延付与部を構成する光導波路は、第1遅延光導波路と、入力された光に対して前記第1遅延光導波路よりも実効屈折率が高い第2遅延光導波路とを有してもよい。
【0017】
前記第2遅延光導波路の導波路コア幅が、前記第1遅延光導波路の導波路コア幅よりも広くてもよい。
【0018】
前記遅延付与部を構成する光導波路は、前記第1遅延光導波路と前記第2遅延光導波路とを接続し、導波路コア幅が連続的に変化する第3遅延光導波路を備えてもよい。
【0019】
光学的に接続された前記スプリッタ、前記遅延付与部、前記偏波変換部、および前記カプラの組を複数備え、複数の前記遅延付与部を構成する光導波路が、屈曲しながら並走してもよい。
【0020】
光学的に接続された前記スプリッタ、前記遅延付与部、および前記カプラの組を複数備え、各組は共通の前記偏波変換部と光学的に接続しており、複数の前記遅延付与部を構成する光導波路が、屈曲しながら並走してもよい。
【0021】
入力された光を、複数の前記スプリッタのいずれかに出力する入力側光スイッチを備えてもよい。
【0022】
複数の前記カプラのいずれかから入力された光を出力する出力側光スイッチを備えてもよい。
【0023】
本発明の一態様は、前記デポラライザの調整方法であって、前記スプリッタの分岐比および前記カプラの合波比の少なくとも一方が変更可能であり、前記デポラライザに光を入力する工程と、前記デポラライザから出力された光を受光する工程と、前記受光した光の強度に応じて、前記スプリッタの分岐比または前記カプラの合波比を調整する工程と、を備えるデポラライザの調整方法である。
【0024】
本発明の一態様は、前記スプリッタ、前記遅延付与部、前記偏波変換部、前記カプラ、および前記接続光導波路を形成する工程と、前記デポラライザの調整方法を実行する工程と、を備えるデポラライザの製造方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、小型化が容易であり、かつ特性の低下が抑制されたデポラライザを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、実施形態1に係るデポラライザの模式図である。
図2図2は、実施形態2に係るデポラライザの模式図である。
図3図3は、実施形態3に係るデポラライザの模式図である。
図4図4は、実施形態4に係るデポラライザの模式図である。
図5図5は、図4におけるA-A線断面図、B-B線断面図、C-C線断面図である。
図6図6は、実施形態5に係るデポラライザの模式図である。
図7図7は、実施形態6に係るデポラライザの模式図である。
図8図8は、実施形態7に係るデポラライザの模式図である。
図9図9は、実施形態8に係るデポラライザの模式図である。
図10図10は、実施形態9に係るデポラライザの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、図面を参照して実施形態について説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付し、重複説明を適宜省略している。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0028】
(実施形態1)
[デポラライザの構成]
図1は、実施形態1に係るデポラライザの模式図である。デポラライザ100は、スプリッタ110と、遅延付与部120と、偏波変換部130と、カプラ140と、接続光導波路150と、を備えている。スプリッタ110と、遅延付与部120と、偏波変換部130と、カプラ140と、接続光導波路150とは、光導波路回路基板101上に集積されている。
【0029】
光導波路回路基板101は、PLCであり、対向する端面101aと端面101bとを有する。光導波路回路基板101は、光導波路である導波路コアと、導波路コアを取り囲むクラッドと、導波路コアとクラッドとが表面に形成されている基板とを備えている。
【0030】
基板は、たとえばシリコン基板やガラス基板である。クラッドは、石英系ガラス材料で構成されている。導波路コアは、クラッドの屈折率よりも高い屈折率を有する石英系ガラス材料で構成されている。このような屈折率が高い石英系ガラス材料として、たとえば屈折率を高めるドーパントとしてのゲルマニア(GeO)やジルコニア(ZrO)を含む石英ガラスを用いることができる。クラッドに対する導波路コアの比屈折率差は、たとえば0.8%以上である。また、導波路コアを構成する材料が、ジルコニアを含む石英ガラスであるいわゆるSiO-ZrO系材料であれば、クラッドに対する導波路コアの比屈折率差を、たとえば4.5%以上と高くできる。
【0031】
スプリッタ110は、光導波路で構成されている。スプリッタ110は、2つの入力ポート111、112と、2つの出力ポート113、114と、特性調整手段115とを有する。スプリッタ110は、入力ポート111または入力ポート112に入力された光を、入力された光の偏波状態と同じ偏波状態を有する第1光と第2光とに分岐して2つの出力ポート113、114のそれぞれから出力する。第1光と第2光との強度比すなわちスプリッタ110の分岐比は好ましくは1:1である。
【0032】
特性調整手段115は、たとえば光導波路回路基板101の表面に形成されたヒータである。特性調整手段115は、スプリッタ110を構成する光導波路の一部を加熱することによってその部分の屈折率を変更することができる。これにより、スプリッタ110の分岐比を恒久的に変更することができる。
【0033】
スプリッタ110の構造は、特に限定されないが、たとえばマッハツェンダー光干渉計(Mach-Zehnder interferometer:MZI)の構造を有する。
【0034】
遅延付与部120は、光導波路で構成されており、具体的には、複数の曲線光導波路121、122、123、124、125、126、127、128と、これらの曲線光導波路の間に介在する直線光導波路とで構成されている。遅延付与部120は、スプリッタ110の出力ポート113に接続されている。
【0035】
カプラ140は、光導波路で構成されている。カプラ140は、2つの入力ポート141、142と、2つの出力ポート143、144と、特性調整手段145とを有する。カプラ140は、入力ポート141、142に入力された光を、それぞれの偏波状態のまま合波して、2つの出力ポート143、144のそれぞれから出力する。カプラ140の合波比は好ましくは1:1である。出力ポート143から出力する光の強度と出力ポート144から出力する光の強度との比は、特に限定されないが、たとえば80:20~99:1である。
【0036】
特性調整手段145は、たとえば光導波路回路基板101の表面に形成されたヒータである。特性調整手段145は、カプラ140を構成する光導波路の一部を加熱することによってその部分の屈折率を変更することができる。これにより、カプラ140の合波比を恒久的に変更することができる。
【0037】
カプラ140の構造は、特に限定されないが、たとえばMZIの構造を有する。
【0038】
また、光導波路回路基板101の端面101bには、出力ポート114と光学的に接続するように受光器PDが設けられている。受光器PDはたとえばフォトダイオードである。
【0039】
接続光導波路150は、スプリッタ110の出力ポート114とカプラ140の入力ポート142とを光学的に接続している。
【0040】
偏波変換部130は、入力された光の偏波方向を当該偏波状態と直交する偏波状態に変換して出力する。本実施形態では、偏波変換部130はフィルタ型のような偏波回転素子であり、たとえば1/2波長板である。偏波変換部130は、接続光導波路150の途中に設けられている。具体的には、偏波変換部130は、光導波路回路基板101に接続光導波路150を横断するように設けられたスリット101cに挿入されている。
【0041】
[デポラライザの動作]
つぎに、デポラライザ100に光Liが入力された場合の動作について説明する。なお、以下では、光Liが、偏波方向が光導波路回路基板101の基板面と平行方向であるTE偏波を有する場合を例として説明するが、光Liの偏波状態は特に限定されない。
【0042】
光導波路回路基板101の端面101a側から、光Liがスプリッタ110の入力ポート111に入力されると、スプリッタ110は光Liを第1光Li1と第2光Li2とに分岐し、2つの出力ポート113、114のそれぞれから出力する。第1光Li1と第2光Li2とはいずれもTE偏波を有する。
【0043】
接続光導波路150は、第2光Li2を導波する。接続光導波路150の途中に設けられた偏波変換部130は、第2光Li2の偏波状態を、当該偏波状態と直交する偏波状態に変換して接続光導波路150の残りの部分に出力する。具体的には、偏波変換部130によって、第2光Li2の偏波状態は、TE偏波から、TE偏波と直交するTM偏波とされる。TM偏波は、その偏波方向が光導波路回路基板101の基板面と垂直方向である。
【0044】
一方、遅延付与部120は、第1光Li1を導波して出力する。ここで、遅延付与部120は、導波の際に、第1光Li1に、第2光Li2に対するDGDを与えて出力する。これにより、第1光Li1と第2光Li2との間に位相関係が無くなる。なお、第1光Li1と第2光Li2との間の位相関係を無くすためには、接続光導波路150の光路長に対して遅延付与部120を構成する光導波路の光路長が光Liのコヒーレント長以上に長くなるようにデポラライザ100を構成することが好ましい。なお、遅延付与部120から出力される第1光Li1の偏波状態はTE偏波である。
【0045】
カプラ140は、入力ポート141、142に入力された光、すなわち遅延付与部120を通過してDGDを与えられた第1光Li1と偏波変換部130を通過し偏波状態が変換された第2光Li2とを合波して、出力ポート143から光Lo1として出力する。光Lo1はデポラライザ100の端面101bから出力される。このように出力された光Lo1は光Liがデポラライズされた光である。
【0046】
なお、カプラ140は、合波した光を出力ポート144からも光Lo2として出力する。光Lo2も光Liがデポラライズされた光である。光Lo2は受光器PDによって受光される。受光器PDは受光した光Lo2の強度に応じた電気信号を出力する。この電気信号は、たとえばデポラライザ100の光損失をモニタするために使用することができる。
【0047】
以上のように構成されたデポラライザ100では、スプリッタ110と、遅延付与部120と、偏波変換部130と、カプラ140と、接続光導波路150とが、一つの光導波路回路基板101上に集積されているので、偏波主軸同士の角度ずれが生じるような接続点を無くすことができる。これにより、デポラライザ100は、特性の低下が抑制されたものとなる。また、デポラライザ100は、DGDを与える遅延付与部120が複数の曲線光導波路を含む光導波路で構成されているので、小型化が容易である。
【0048】
また、デポラライザ100では、スプリッタ110が、2つの入力ポート111、112と2つの出力ポート113、114とを有する。したがって、図1では光Liを入力ポート111から入力しているが、デポラライズすべき光を入力ポート112から入力しても、デポラライザ100はデポラライザとして機能する。そこで、デポラライザ100は、たとえば入力ポート111は或る光源からの光Liを入力するように当該光源に接続し、入力ポート112は別の光源からの光を入力するように当該別の光源に接続するという使い方ができる。このように、デポラライザ100は、2つの光源に対して共通のデポラライザとして使用できる。
【0049】
また、デポラライザ100では、カプラ140が、2つの入力ポート141、142と2つの出力ポート143、144とを有しているので、2つの出力ポート143、144の一方を、デポラライザ100の特性のモニタに利用できる。特に、デポラライザ100では、出力ポート144が受光器PDに接続されているので、受光器PDの受光強度によって、デポラライザ100の光損失をモニタすることができる。
【0050】
なお、デポラライザ100の特性としては、出力する光Lo1の偏光度が0.1以下であることが好ましい。
【0051】
ここで、デポラライザ100において、カプラ140にて合波する第1光Li1と第2光Li2との強度比が1:1により近いほど、デポラライザ100の特性がよく、たとえば光Lo1の偏光度をより低くできる。また、デポラライザ100において、カプラ140にて合波する第1光Li1と第2光Li2との偏波状態がより直交状態に近いほど、デポラライザ100の特性がよい。
【0052】
カプラ140にて合波する第1光Li1と第2光Li2との強度比が1:1からずれる原因としては、スプリッタ110の分岐比が1:1からずれている、第1光Li1が導波する間に受ける光損失と第2光Li2が導波する間に受ける光損失とが異なる、カプラ140の合波比が1:1からずれている、などがある。
【0053】
そこで、たとえばデポラライザ100の製造工程において、スプリッタ110の分岐比を特性調整手段115によって変更したり、カプラ140の合波比を特性調整手段145によって変更したりして、カプラ140にて合波する第1光Li1と第2光Li2との強度比を1:1に近づけて、デポラライザ100の特性を改善してもよい。
【0054】
また、カプラ140にて合波する第1光Li1と第2光Li2との偏波状態が直交状態からずれる原因として、遅延付与部120に含まれる複数の曲線光導波路121~128において偏波状態がずれる場合があるという現象がある(たとえば、特許第5959505号公報や特許第7042763号公報)。
【0055】
そこで、デポラライザ100では、曲線光導波路121~128の曲率符号と屈曲角度との積の総和が零であれば、偏波状態がずれることが抑制されるので好ましい。曲率符号とは、曲線光導波路の曲率の符号であり、たとえば曲線導波路における光の導波方向が半時計回りのときに正であり、時計回りのときに負である。したがって、曲線光導波路121~123、128は曲率符号が負であり、曲線光導波路124~127は曲率符号が正である。また、屈曲角度とは、曲線導波路の弧が成す角度であり、曲線光導波路126の場合は図1に示すように角度θである。なお角度θは略90度である。
【0056】
(実施形態2)
図2は、実施形態2に係るデポラライザの模式図である。デポラライザ100Aは、実施形態1に係るデポラライザ100の構成において、光導波路回路基板101を、PLCである光導波路回路基板101Aに置き換え、スプリッタ110をスプリッタ110Aに置き換え、通過光導波路151を追加した構成を有する。スプリッタ110Aと、遅延付与部120と、偏波変換部130と、カプラ140と、接続光導波路150と、通過光導波路151とは、光導波路回路基板101A上に集積されている。
【0057】
スプリッタ110Aは、光導波路で構成されている。スプリッタ110Aは、1つの入力ポート111と3つの出力ポート113、114、116と特性調整手段115とを有する。スプリッタ110Aは、入力ポート111に入力された光を、第1光と第2光と第3光とに分岐して3つの出力ポート113、114、116のそれぞれから出力する。第1光と第2光との強度比すなわちスプリッタ110Aの出力ポート113、114についての分岐比は好ましくは1:1である。スプリッタ110Aの出力ポート113、116についての分岐比は、特に限定されないが、たとえば80:20~99:1である。
【0058】
通過光導波路151は、スプリッタ110Aの出力ポート116に光学的に接続されているとともに、カプラ140を経由せずに光導波路回路基板101Aの端面101bまで延びている。通過光導波路151は、偏波変換部130が挿入されたスリット101cが通過光導波路151を横断するように配置されている。
【0059】
つぎに、デポラライザ100Aに光Liが入力された場合の動作について説明する。なお、光Liは、TE偏波を有する場合を例として説明するが、光Liの偏波状態は特に限定されない。光導波路回路基板101Aの端面101a側から、光Liがスプリッタ110Aの入力ポート111に入力されると、スプリッタ110Aは光Liを第1光Li1と第2光Li2と第3光Li3とに分岐し、3つの出力ポート113、114、116のそれぞれから出力する。
【0060】
接続光導波路150、偏波変換部130、遅延付与部120、およびカプラ140の動作は、デポラライザ100の場合と同じである。
【0061】
通過光導波路151は、第3光Li3を、偏波変換部130に通過させて、カプラ140を経由させずにデポラライザ100Aの端面101bから出力する。
【0062】
以上のように構成されたデポラライザ100Aは、実施形態1に係るデポラライザ100と同様に、特性の低下が抑制され、かつ小型化が容易であり、カプラ140の出力ポート144をデポラライザ100Aの特性のモニタに利用でき、特性調整手段115や特性調整手段145によってデポラライザ100Aの特性を改善することができる。
【0063】
さらに、デポラライザ100Aでは、通過光導波路151が、第3光Li3を偏波変換部130に通過させて、カプラ140を経由させずにデポラライザ100Aから出力する。この場合、第3光Li3の光強度をモニタすることによって、偏波変換部130の光損失についての情報を得ることができる。偏波変換部130の光損失についての情報は、デポラライザ100Aにおいてカプラ140に入力するまでの第1光Li1の経路と第2光Li2と経路との間の光損失の差を知得することに利用したり、デポラライザ100Aの特性を推定したりすることに利用できる。
【0064】
(実施形態3)
図3は、実施形態3に係るデポラライザの模式図である。デポラライザ100Bは、実施形態1に係るデポラライザ100の構成において、光導波路回路基板101を、PLCである光導波路回路基板101Bに置き換え、スプリッタ110をスプリッタ110Bに置き換え、カプラ140をカプラ140Bに置き換え、ポラライザ161、162、163を追加した構成を有する。スプリッタ110Bと、遅延付与部120と、偏波変換部130と、カプラ140Bと、接続光導波路150と、ポラライザ161、162、163とは、光導波路回路基板101B上に集積されている。
【0065】
スプリッタ110Bは、光導波路で構成されている。スプリッタ110Bは、1つの入力ポート111と2つの出力ポート113、114と特性調整手段115とを有する。スプリッタ110Bは、入力ポート111に入力された光を、第1光と第2光とに分岐して2つの出力ポート113、114のそれぞれから出力する。第1光と第2光との強度比すなわちスプリッタ110Bの出力ポート113、114についての分岐比は好ましくは1:1である。
【0066】
カプラ140Bは、光導波路で構成されている。カプラ140Bは、2つの入力ポート141、142と、1つの出力ポート143と、特性調整手段145とを有する。カプラ140Bは、入力ポート141、142に入力された光を合波して、1つの出力ポート143から出力する。カプラ140Bの合波比は好ましくは1:1である。
【0067】
ポラライザ161は、スプリッタ110Bの前段、たとえば光導波路回路基板101Bの端面101aとスプリッタ110Bの入力ポート111との間に配置されている。具体的には、ポラライザ161は、光導波路回路基板101Bに設けられたスリット101Bdに挿入されている。ポラライザ161は、TE偏波の光を選択的に通過する。ポラライザ161は、スプリッタ110Bに入力される光の直線偏波と同じ直線偏波を有する光を選択的に通過するポラライザの一例である。
【0068】
ポラライザ162は、遅延付与部120の後段であってカプラ140Bの前段に配置されている。具体的には、ポラライザ162は、光導波路回路基板101Bに設けられたスリット101Beに挿入されている。ポラライザ162は、TE偏波の光を選択的に通過する。ポラライザ162は、スプリッタ110Bに入力される光の直線偏波と同じ直線偏波を有する光を選択的に通過するポラライザの一例である。
【0069】
ポラライザ163は、偏波変換部130の後段であってカプラ140Bの前段に配置されている。具体的には、ポラライザ163は、スリット101Beに挿入されている。ポラライザ163は、TM偏波の光を選択的に通過する。ポラライザ162は、スプリッタ110Bに入力される光の直線偏波と直交する直線偏波を有する光を選択的に通過するポラライザの一例である。
【0070】
つぎに、デポラライザ100Bに光Liが入力された場合の動作について説明する。なお、光Liは、直線偏波であるTE偏波を有する。
【0071】
光導波路回路基板101Bの端面101a側から、光Liが入力されると、光Liはポラライザ161を通過してからスプリッタ110Bの入力ポート111に入力される。スプリッタ110Bは光Liを第1光Li1と第2光Li2に分岐し、2つの出力ポート113、114のそれぞれから出力する。
【0072】
ここで、入力される光Liの偏波状態がTE偏波からずれた場合、光LiにはTE偏波の成分とTM偏波の成分とが含まれることとなる。この場合、光Liがそのままスプリッタ110Bに入力すると、デポラライザの特性が本来の特性よりも低下する場合がある。これに対して、デポラライザ100Bでは、光Liはポラライザ161を通過し、TM偏波の成分が大幅に減衰された状態でスプリッタ110Bに入力するので、デポラライザ100Bの特性の低下が抑制される。
【0073】
接続光導波路150、偏波変換部130、および遅延付与部120の動作は、デポラライザ100の場合と同じである。
【0074】
カプラ140Bは、入力ポート141、142に入力された光、すなわち遅延付与部120を通過してDGDを与えられた第1光Li1と偏波変換部130を通過し偏波状態が変換された第2光Li2とを合波して、出力ポート143から光Lo1として出力する。光Lo1はデポラライザ100Bの端面101bから出力される。このように出力された光Lo1は光Liがデポラライズされた光である。
【0075】
ここで、遅延付与部120に導波されることによって第1光Li1の偏波状態がTE偏波からずれた場合、第1光Li1にはTE偏波の成分とTM偏波の成分とが含まれることとなる。この場合、第1光Li1がそのままカプラ140Bに入力して第2光Li2と合波されると、デポラライザの特性が本来の特性よりも低下する場合がある。これに対して、デポラライザ100Bでは、第1光Li1はポラライザ162を通過し、TM偏波の成分が大幅に減衰された状態でカプラ140Bに入力するので、デポラライザ100Bの特性の低下が抑制される。
【0076】
また、偏波変換部130を通過した後の第2光Li2の偏波状態がTM偏波からずれた場合、第1光Li1にはTM偏波の成分とTE偏波の成分とが含まれることとなる。この場合、第2光Li2がそのままカプラ140Bに入力して第1光Li1と合波されると、デポラライザの特性が本来の特性よりも低下する場合がある。これに対して、デポラライザ100Bでは、第2光Li2はポラライザ163を通過し、TE偏波の成分が大幅に減衰された状態でカプラ140Bに入力するので、デポラライザ100Bの特性の低下が抑制される。
【0077】
以上のように構成されたデポラライザ100Bは、実施形態1に係るデポラライザ100と同様に、特性の低下が抑制され、小型化が容易であり、特性調整手段115や特性調整手段145によってデポラライザ100Bの特性を改善することができる。
【0078】
さらに、デポラライザ100Bでは、上述したように、ポラライザ161、162、163によって、デポラライザ100Bの特性の低下が抑制される。
【0079】
なお、本実施形態3に係るデポラライザ100Bは、ポラライザ161、162、163の全てを備えているが、ポラライザ161、162、163の少なくとも一つを備えるデポラライザであれば、デポラライザ100Bの特性の低下が抑制されるという効果が得られる。
【0080】
また、本実施形態3に係るデポラライザ100Bでは、入力される光LiがTE偏波を有するが、入力される光LiがTM偏波を有する場合は、ポラライザ161、162を、TM偏波の光を選択的に通過するように構成し、ポラライザ163を、TE偏波の光を選択的に通過するようにデポラライザを構成すればよい。これにより、デポラライザの特性の低下が抑制されるという効果が同様に得られる。
【0081】
(実施形態4)
図4は、実施形態4に係るデポラライザの模式図である。デポラライザ100Cは、実施形態1に係るデポラライザ100の構成において、光導波路回路基板101を、PLCである光導波路回路基板101Cに置き換え、遅延付与部120を遅延付与部120Cに置き換えた構成を有する。スプリッタ110と、遅延付与部120Cと、偏波変換部130と、カプラ140と、接続光導波路150とは、光導波路回路基板101C上に集積されている。
【0082】
遅延付与部120Cを構成する光導波路は、第1遅延光導波路120C1と、第2遅延光導波路120C2と、第3遅延光導波路120C3とを有する。
【0083】
図5は、図4におけるA-A線断面図、B-B線断面図、C-C線断面図である。具体的には、図5(a)がA-A線断面図、図5(b)がB-B線断面図、図5(c)がC-C線断面図である。図5(a)~(c)には、光導波路回路基板101Cの基板101f、クラッド101g、第1遅延光導波路120C1、第2遅延光導波路120C2、および第3遅延光導波路120C3が示されている。
【0084】
図5(a)、(c)に示すように、第2遅延光導波路120C2の幅である導波路コア幅は、第1遅延光導波路120C1の幅である導波路コア幅よりも広い。これにより、矢印Arで示す偏波方向を有するTE偏波の光に対して、第2遅延光導波路120C2の実効屈折率は第1遅延光導波路120C1の実効屈折よりも高い。第2遅延光導波路120C2の幅は、たとえば第1遅延光導波路120C1の幅の10倍であるが、2倍から15倍でもよい。
【0085】
また、図4図5(b)に示すように、第3遅延光導波路120C3は、第1遅延光導波路120C1と第2遅延光導波路120C2とを接続している。第3遅延光導波路120C3は、導波路コア幅が連続的に変化する。具体的には、第3遅延光導波路120C3の導波路コア幅は、第1遅延光導波路120C1から第2遅延光導波路120C2に向かって、第1遅延光導波路120C1の幅から第2遅延光導波路120C2の幅まで幅が広くなるよう連続的に変化する。
【0086】
スプリッタ110、偏波変換部130、カプラ140、および接続光導波路150の構成および動作は、デポラライザ100の場合と同じである。
【0087】
以上のように構成されたデポラライザ100Cは、実施形態1に係るデポラライザ100と同様に、特性の低下が抑制され、小型化が容易であり、カプラ140の出力ポート144をデポラライザ100Aの特性のモニタに利用でき、特性調整手段115や特性調整手段145によってデポラライザ100Aの特性を改善することができる。
【0088】
さらに、デポラライザ100Cでは、遅延付与部120Cに入力される第1光Li1の偏波状態がTE偏波である場合、第1光Li1に対して、実効屈折率がより高い第2遅延光導波路120C2においてより大きなDGDを与えることができる。その結果、遅延付与部120Cは、遅延付与部を構成する光導波路の導波路コア幅が長手方向にわたって第1遅延光導波路120C1と同じ幅である遅延付与部と比較して、同じ長さでより大きいDGDを与えることができる。言い換えれば、同じ量のDGDを与える場合、遅延付与部120Cはより短くてよいので、デポラライザ100Cはより小型化が可能である。
【0089】
また、デポラライザ100Cは、第3遅延光導波路120C3を備えるので、第1遅延光導波路120C1と第2遅延光導波路120C2との接続損失の増大を抑制できる。
【0090】
なお、デポラライザ100Cでは、第2遅延光導波路120C2の幅を第1遅延光導波路120C1の幅よりも広くすることにより、TE偏波の光に対して、第2遅延光導波路120C2の実効屈折率を第1遅延光導波路120C1の実効屈折よりも高くしている。これに対して、遅延付与部を構成する光導波路に入力される光の偏波状態がTM偏波である場合は、第2遅延光導波路の、光導波路回路基板の基板面と垂直方向における高さを、第1遅延光導波路の高さよりも高くすることにより、入力される光に対して、第2遅延光導波路の実効屈折率を第1遅延光導波路の実効屈折よりも高くすることができる。また、遅延付与部を構成する光導波路に入力される光の偏波状態がTM偏波とTE偏波とを含む状態である場合は、第2遅延光導波路の幅および高さを、第1遅延光導波路の幅および高さよりも大きくすることにより、入力される光に対して、第2遅延光導波路の実効屈折率を第1遅延光導波路の実効屈折よりも高くすることができる。
【0091】
また、遅延付与部120Cにおいても、遅延付与部120Cに含まれる複数の曲線光導波路の曲率符号と屈曲角度との積の総和は零であることが好ましい。
【0092】
(実施形態5)
図6は、実施形態5に係るデポラライザの模式図である。デポラライザ100Dは、複数のスプリッタ110-1、110-2~110-nと、複数の遅延付与部120-1、120-2~120-nと、複数の偏波変換部130-1、130-2~130-nと、複数のカプラ140-1、140-2~140-nと、複数の接続光導波路150-1、150-2~150-nと、を備えている。ここで、nは、たとえば3以上の整数である。スプリッタ110-1~110-nと、遅延付与部120-1~120-nと、偏波変換部130-1~130-nと、カプラ140-1~140-nと、接続光導波路150-1~150-nとは、PLCである光導波路回路基板101D上に集積されている。
【0093】
スプリッタ110-1~110-nは、スプリッタ110と同様の構成および機能を有する。遅延付与部120-1~120-nは、遅延付与部120と同様の構成および機能を有する。偏波変換部130-1~130-nは、偏波変換部130と同様の構成および機能を有する。カプラ140-1~140-nは、カプラ140と同様の構成および機能を有する。接続光導波路150-1~150-nは、カプラ140と同様の構成および機能を有する。
【0094】
遅延付与部120-1~120-nを構成する光導波路は、光導波路回路基板101D上で、屈曲しながら並走している。
【0095】
偏波変換部130-1~130-nは、光導波路回路基板101Dに接続光導波路150-1~150-nを横断するように設けられたスリット101Dcに挿入されている。
【0096】
スプリッタ110-1、遅延付与部120-1、偏波変換部130-1、カプラ140-1、および接続光導波路150-1は、光学接続されており、1組の単位デポラライザを構成している。同様に、他のスプリッタの一つ、遅延付与部の一つ、偏波変換部の一つ、カプラの一つ、および接続光導波路の一つも光学接続されており、1組の単位デポラライザを構成している。したがって、デポラライザ100Dには、n組の単位デポラライザが集積されている。
【0097】
デポラライザ100Dでは、n組の単位デポラライザのそれぞれに、第1光Li10、Li20~Lin0のそれぞれが入力される、それぞれの単位デポラライザが第1光Li10~Lin0のそれぞれがデポラライズされた光である光Lo10、Lo20~Lonのそれぞれを出力する。
【0098】
以上のように構成されたデポラライザ100Dでは、単位デポラライザのそれぞれが、実施形態1に係るデポラライザ100と同様の効果を奏する。また、デポラライザ100Dは、n組の単位デポラライザを備えるので、n個の光を同時にデポラライズできる。また、デポラライザ100Dは、それぞれの単位デポラライザを異なる波長帯域に適した特性のデポラライザとして構成すれば、動作波長帯域が広いデポラライザ100Dとなる。また、デポラライザ100Dでは、遅延付与部120-1~120-nを構成する光導波路が屈曲しながら並走しているので、n組の単位デポラライザが集積していながらもより小型となる。
【0099】
(実施形態6)
図7は、実施形態6に係るデポラライザの模式図である。デポラライザ100Eは、実施形態5に係るデポラライザ100Dの構成において、光導波路回路基板101Dを、PLCである光導波路回路基板101Eに置き換え、偏波変換部130-1、130-2~130-nを偏波変換部130に置き換えた構成を有する。
【0100】
偏波変換部130は、遅延付与部120-1~120-nを構成する光導波路の途中に設けられている。具体的には、偏波変換部130は、光導波路回路基板101Eに遅延付与部120-1~120-nを構成する光導波路を横断するように設けられたスリット101Ecに挿入されている。これにより、遅延付与部120-1~120-nを構成する光導波路はいずれも共通の偏波変換部130と光学的に接続している。
【0101】
偏波変換部130は、遅延付与部120-1~120-nのそれぞれを導波する第1光の偏波状態を、当該偏波状態と直交する偏波状態に変換して、遅延付与部120-1~120-nのそれぞれの残りの部分に出力する。
【0102】
一方、接続光導波路150-1~150-nのそれぞれを導波する第2光は、偏波状態を変換されないで導波される。その結果、カプラ140-1~140-nのそれぞれは、互いに直交する偏波状態の第1光と第2光とを合波する。
【0103】
以上のように構成されたデポラライザ100Eは、実施形態5に係るデポラライザ100Dと同様の効果を奏する。また、デポラライザ100Eでは、偏波変換部として共通の偏波変換部130を備えているので、デポラライザ100Dより小型となる。
【0104】
(実施形態7)
図8は、実施形態7に係るデポラライザの模式図である。デポラライザ100Fは、実施形態5に係るデポラライザ100Eの構成において、光導波路回路基板101Eを、PLCである光導波路回路基板101Fに置き換え、光導波路回路基板101Fにスリット101Ffが設けられた構成を有する。
【0105】
スリット101Ffは、光導波路回路基板101Fに接続光導波路150-1~150-nを横断するように設けられている。スリット101Ffは第2スリットの一例である。また、スリット101Ecは第1スリットの一例である。
【0106】
以上のように構成されたデポラライザ100Fは、実施形態6に係るデポラライザ100Eと同様の効果を奏する。また、デポラライザ100Fでは、遅延付与部120-1~120-nを構成する光導波路を横断するようにスリット101Ecが設けられるとともに、接続光導波路150-1~150-nを横断するようにスリット101Ffとが設けられているので、スリットに起因する光損失が、遅延付与部120-1~120-nを導波する光の経路と接続光導波路150-1~150-nを導波する光の経路とで等しくなるまたは差が小さい。これにより、各単位デポラライザのデポラライザ特性の低下が抑制される。
【0107】
なお、遅延付与部を構成する光導波路を横断するようにスリットを設けられるとともに、接続光導波路を横断するようにスリットを設ける構成の効果は、実施形態1に係るデポラライザ100のように1つの単位デポラライザを含むデポラライザに適用しても発揮される。
【0108】
また、デポラライザ100Fでは、偏波変換部が第1スリットの方に挿入されているが、偏波変換部が第2スリットの方に挿入されていてもよい。
【0109】
(実施形態8)
図9は、実施形態8に係るデポラライザの模式図である。デポラライザ100Gは、実施形態5に係るデポラライザ100Dの構成において、光導波路回路基板101Dを、PLCである光導波路回路基板101Gに置き換え、スプリッタ110-1~110-nをスプリッタ110G-1~110G-nに置き換え、カプラ140-1~140-nをカプラ140G-1~140G-nに置き換え、光スイッチ171、172を追加した構成を有する。スプリッタ110G-1~110G-nと、遅延付与部120-1~120-nと、偏波変換部130-1~130-nと、カプラ140G-1~140G-nと、接続光導波路150-1~150-nと、光スイッチ171、172とは、光導波路回路基板101G上に集積されている。
【0110】
スプリッタ110G-1~110G-nは、入力ポートが1つである以外は、スプリッタ110と同じ構成および機能を有する。カプラ140G-1~140G-nは、出力ポートが1つである以外は、カプラ140と同じ構成および機能を有する。
【0111】
デポラライザ100Gは、デポラライザ100Dなどと同様に、n組の単位デポラライザを備えている。
【0112】
光スイッチ171は、スプリッタ110G-1~110G-nの前段に設けられている。光スイッチ171は、入力された光を、スプリッタ110G-1~110G-nのいずれかに出力するように切替制御される。光スイッチ171は入力側光スイッチの一例である。
【0113】
光スイッチ172は、カプラ140G-1~140G-nの後段に設けられている。光スイッチ172は、カプラ140G-1~140G-nのいずれかから入力された光を出力するように切替制御される。光スイッチ172は出力側光スイッチの一例である。
【0114】
光スイッチ171、172は、たとえば光導波路型の多段MZIで構成されている。
【0115】
デポラライザ100Gの動作を説明する。デポラライザ100Gに光Liが入力されると、光スイッチ171は、端面101a側から入力された光Liを、切替制御によって選択された、スプリッタ110G-1~110G-nのいずれかに出力する。光Liが入力されたスプリッタを含む単位デポラライザは、入力された光Liをデポラライズし、当該単位デポラライザに含まれるカプラからデポラライズされた光Lo1を光スイッチ172に出力する。光スイッチ172は、光Lo1を端面101b側から出力する。
【0116】
以上のように構成されたデポラライザ100Gは、実施形態5に係るデポラライザ100Dと同様の効果を奏する。また、デポラライザ100Gは、それぞれの単位デポラライザを異なる波長帯帯に適した特性のデポラライザとして構成し、一つの広帯域光源(たとえば波長可変光源)に接続した場合、広帯域光源を繋ぎ替えることなく、広帯域光源から出力される広い波長帯域の光をデポラライズできる。
【0117】
(実施形態9)
図10は、実施形態9に係るデポラライザの模式図である。デポラライザ100Hは、実施形態8に係るデポラライザ100Gの構成において、光導波路回路基板101Gを、PLCである光導波路回路基板101Hに置き換え、光スイッチ172を削除した構成を有する。スプリッタ110G-1~110G-nと、遅延付与部120-1~120-nと、偏波変換部130-1~130-nと、カプラ140G-1~140G-nと、接続光導波路150-1~150-nと、光スイッチ171とは、光導波路回路基板101H上に集積されている。
【0118】
デポラライザ100Hは、入力された光Liを、n組の単位デポラライザのいずれかでデポラライズし、カプラ140G-1~140G-nのいずれかから、端面101b側に出力する。
【0119】
以上のように構成されたデポラライザ100Hは、実施形態5に係るデポラライザ100Dと同様の効果を奏する。また、デポラライザ100Hは、デポラライズする単位デポラライザに応じで出力先を変えることができる。この場合、たとえば単位デポラライザのそれぞれが、異なる波長帯帯に適した特性に設計されている場合、デポラライズする光の波長に応じて出力先を変えることができる。
【0120】
(デポラライザの調整方法および製造方法)
上記実施形態に係るデポラライザの特性を調整する調整方法について説明する。当該調整方法は、たとえば、デポラライザに光を入力する工程と、デポラライザから出力された光を受光する工程と、受光器が受光した光の強度に応じて、スプリッタの分岐比またはカプラの合波比を調整する工程と、を備える。当該調整方法によれば、デポラライザの導波路構造の形成後でもデポラライザの特性を調整することができる。
【0121】
また、上記実施形態に係るデポラライザの製造方法は、たとえば、スプリッタ、遅延付与部、偏波変換部、カプラ、および接続光導波路を形成する工程と、上記のデポラライザの調整方法を実行する工程と、を備える。当該製造方法によれば、デポラライザの導波路構造の形成後でも調整されたデポラライザを製造することができる。
【0122】
なお、上記実施形態では、スプリッタの分岐比および前記カプラの合波比の両方が変更可能であるが、少なくとも一方が変更可能でもよい。また、スプリッタおよびカプラの少なくとも一方は、2つの入力ポートと2つの出力ポートとを有していてもよい。
【0123】
また、上記実施形態において、カプラは偏波合成器(Polarization Beam Combiner:PBC)でもよい。カプラがPBCであれば、偏波状態が直交する直線偏波を有する2つの光を低損失で合波できる。また、カプラがPBCであれば、合波時に2つの光の偏光度の低下を抑制しながら合波できるので、デポラライザのデポラライズ特性の低下を抑制できる。
【0124】
また、上記実施形態では、光導波路回路基板は光導波路がガラス材料で構成されたPLCであるが、光導波路回路基板の構成材料はこれに限定されない。たとえば、導波路回路基板の構成材料は、シリコンや窒化シリコンでもよいし、インジウムリン系化合物半導体などの半導体材料でもよい。
【0125】
また、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。たとえば、実施形態4に係るデポラライザ100Cにおける遅延付与部120Cの構成を、他の実施形態のデポラライザに適用してもよい。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0126】
100、100A、100B、100C、100D、100E、100F、100G、100H :デポラライザ
101、101A、101B、101C、101D、101E、101F、101G、101H :光導波路回路基板
101a、101b :端面
101c :スリット
101f :基板
101g :クラッド
101Bd、101Be、101Dc、101Ec、101Ff :スリット
110、110A、110B、110-1~110-n、110G-1~110G-n :スプリッタ
111、112、141、142 :入力ポート
113、114、143、144 :出力ポート
115、145 :特性調整手段
116 :出力ポート
120、120C、120-1~120-n :遅延付与部
120C1 :第1遅延光導波路
120C2 :第2遅延光導波路
120C3 :第3遅延光導波路
121、122、123、124、125、126、127、128 :曲線光導波路
130、130-1~130-n :偏波変換部
140、140B、140-1~140-n、140G-1~140G-n :カプラ
150、150-1~150-n :接続光導波路
151 :通過光導波路
161、162、163 :ポラライザ
171、172 :光スイッチ
Ar :矢印
Li1、Li10~Lin0 :第1光
Li2 :第2光
Li3 :第3光
Lo1、Lo2 :光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10