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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090147
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】画像処理方法及び発光装置の検査方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/60 20170101AFI20240627BHJP
   G01M 11/00 20060101ALI20240627BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240627BHJP
【FI】
G06T7/60 150Z
G01M11/00 T
G06T7/00 610A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205843
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一森 竜造
【テーマコード(参考)】
2G086
5L096
【Fターム(参考)】
2G086EE03
5L096AA07
5L096BA03
5L096BA18
5L096CA01
5L096DA02
5L096EA02
5L096EA43
5L096FA32
5L096FA54
5L096GA08
5L096GA55
(57)【要約】
【課題】対象物の各部位の幅を求められるようにする。
【解決手段】画像処理方法は、二値化したn番目の入力画像を準備する第1工程と、n番目の入力画像をカーネルサイズが(a+nc)×bのn番目の第一カーネルで収縮処理、膨張処理してn番目の第一膨張画像を作成する第2工程と、n番目の入力画像をカーネルサイズがb×(a+nc)のn番目の第二カーネルで収縮処理、膨張処理してn番目の第二膨張画像を作成する第3工程と、n番目の第一膨張画像と、n番目の第二膨張画像との差分からn+1番目の入力画像を作成する第4工程とを有する。n+1番目の入力画像が0のみの画像又は1のみの画像になるまで、nの値を1から1ずつ増やしながら、第1工程、第2工程、第3工程及び第4工程を繰り返し、作成されたn番目の入力画像及びn+1番目の入力画像に基づいて対象物の各部位の幅を割り出す(上記においてa、b、cは自然数である)。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を含む画像を0又は1に二値化したn番目の入力画像を準備する第1工程と、
前記n番目の入力画像をカーネルサイズが(a+nc)×bのn番目の第一カーネルで収縮処理してn番目の第一収縮画像を作成し、前記n番目の第一収縮画像を前記n番目の第一カーネルで膨張処理してn番目の第一膨張画像を作成する第2工程と、
前記n番目の入力画像をカーネルサイズがb×(a+nc)のn番目の第二カーネルで収縮処理してn番目の第二収縮画像を作成し、前記n番目の第二収縮画像を前記n番目の第二カーネルで膨張処理してn番目の第二膨張画像を作成する第3工程と、
前記n番目の第一膨張画像と、前記n番目の第二膨張画像との差分からn+1番目の入力画像を作成する第4工程と、を有し、
前記n+1番目の入力画像が0のみの画像又は1のみの画像になるまで、nの値を1から1ずつ増やしながら、前記第1工程、前記第2工程、前記第3工程及び前記第4工程を繰り返し、
作成された前記n番目の入力画像及び前記n+1番目の入力画像に基づいて前記対象物の各部位の幅を割り出す工程と、を含む画像処理方法(上記においてa、b、c、nは自然数である)。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理方法であって、
前記bと前記cがそれぞれ1である画像処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の画像処理方法であって、
前記aが1である画像処理方法。
【請求項4】
請求項3に記載の画像処理方法であって、
前記第2工程において、前記n番目の第一カーネルの横方向の長さが3以上の場合に変換画素が前記n番目の第一カーネルの端部以外に位置する画像処理方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の画像処理方法であって、
前記n番目の入力画像及び前記n+1番目の入力画像を構成する画素の数に基づいて、前記対象物の平均の幅を割り出す画像処理方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1つに記載の画像処理方法であって、さらに、
前記対象物の各部位の幅に基づいて、不良モードを判定する工程を含む画像処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の画像処理方法であって、さらに、
判定された前記不良モード毎に異なる検査基準を適用して前記対象物の良否を判定する工程を含む画像処理方法。
【請求項8】
対象物を含む発光装置が写り、且つ、0又は1に二値化したn番目の入力画像を準備する第1工程と、
前記n番目の入力画像をカーネルサイズが(a+nc)×bのn番目の第一カーネルで収縮処理してn番目の第一収縮画像を作成し、前記n番目の第一収縮画像を前記n番目の第一カーネルで膨張処理してn番目の第一膨張画像を作成する第2工程と、
前記n番目の入力画像をカーネルサイズがb×(a+nc)のn番目の第二カーネルで収縮処理してn番目の第二収縮画像を作成し、前記n番目の第二収縮画像を前記n番目の第二カーネルで膨張処理してn番目の第二膨張画像を作成する第3工程と、
前記n番目の第一膨張画像と、前記n番目の第二膨張画像との差分からn+1番目の入力画像を作成する第4工程と、を有し、
前記n+1番目の入力画像が0のみの画像又は1のみの画像になるまで、nの値を1から1ずつ増やしながら、前記第1工程、前記第2工程、前記第3工程及び前記第4工程を繰り返し、
作成された前記n番目の入力画像及び前記n+1番目の入力画像に基づいて前記対象物の各部位の幅を割り出す工程と、
割り出された前記対象物の各部位の幅に基づいて前記発光装置の良否を判定する工程と、
を含む発光装置の検査方法(上記においてa、b、c、nは自然数である)。
【請求項9】
請求項8に記載の発光装置の検査方法であって、
前記発光装置の良否を判断する工程は、割り出された前記対象物の各部位の幅に基づいて不良モードを判定し、判定された前記不良モード毎に異なる検査基準を適用して前記発光装置の良否を判定する発光装置の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像処理方法及び発光装置の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードや有機EL等の発光装置が照明、バックライト等に用いられている。このような発光装置の製造工程においては、繊維等のゴミや埃といった異物の管理が重要となる。例えば、特許文献1には、3×3のカーネルサイズを持つ縮小フィルタを用いて繊維の輪郭からの距離を数値で表現した距離変換画像と、距離変換画像を細線化して骨格線のみを残した細線化画像によって繊維径の分布を推定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-174227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、対象物である繊維の輪郭近傍等の各部位の幅を求める方法について開示されていない。本開示の目的の一つは、対象物の各部位の幅を求めることができる画像処理方法及び発光装置の検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態に係る画像処理方法は、対象物を含む画像を0又は1に二値化したn番目の入力画像を準備する第1工程と、前記n番目の入力画像をカーネルサイズが(a+nc)×bのn番目の第一カーネルで収縮処理してn番目の第一収縮画像を作成し、前記n番目の第一収縮画像を前記n番目の第一カーネルで膨張処理してn番目の第一膨張画像を作成する第2工程と、前記n番目の入力画像をカーネルサイズがb×(a+nc)のn番目の第二カーネルで収縮処理してn番目の第二収縮画像を作成し、前記n番目の第二収縮画像を前記n番目の第二カーネルで膨張処理してn番目の第二膨張画像を作成する第3工程と、前記n番目の第一膨張画像と、前記n番目の第二膨張画像との差分からn+1番目の入力画像を作成する第4工程と、を有し、前記n+1番目の入力画像が0のみの画像又は1のみの画像になるまで、nの値を1から1ずつ増やしながら、前記第1工程、前記第2工程、前記第3工程及び前記第4工程を繰り返し、作成された前記n番目の入力画像及び前記n+1番目の入力画像に基づいて前記対象物の各部位の幅を割り出す工程と、を含む画像処理方法(上記においてa、b、c、nは自然数である)。
【0006】
また他の形態に係る発光装置の検査方法は、対象物を含む発光装置が写り、且つ、0又は1に二値化したn番目の入力画像を準備する第1工程と、前記n番目の入力画像をカーネルサイズが(a+nc)×bのn番目の第一カーネルで収縮処理してn番目の第一収縮画像を作成し、前記n番目の第一収縮画像を前記n番目の第一カーネルで膨張処理してn番目の第一膨張画像を作成する第2工程と、前記n番目の入力画像をカーネルサイズがb×(a+nc)のn番目の第二カーネルで収縮処理してn番目の第二収縮画像を作成し、前記n番目の第二収縮画像を前記n番目の第二カーネルで膨張処理してn番目の第二膨張画像を作成する第3工程と、前記n番目の第一膨張画像と、前記n番目の第二膨張画像との差分からn+1番目の入力画像を作成する第4工程と、を有し、前記n+1番目の入力画像が0のみの画像又は1のみの画像になるまで、nの値を1から1ずつ増やしながら、前記第1工程、前記第2工程、前記第3工程及び前記第4工程を繰り返し、作成された前記n番目の入力画像及び前記n+1番目の入力画像に基づいて前記対象物の各部位の幅を割り出す工程と、割り出された前記対象物の各部位の幅に基づいて前記発光装置の良否を判定する工程と、を含む(上記においてa、b、c、nは自然数である)。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一形態に係る画像処理方法によれば、対象物の各部位の幅を求められる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】1番目の第一カーネルの例を示す模式図である。
図1B】2番目の第一カーネルの例を示す模式図である。
図1C】3番目の第一カーネルの例を示す模式図である。
図1D】4番目の第一カーネルの例を示す模式図である。
図2A】1番目の第二カーネルの例を示す模式図である。
図2B】2番目の第二カーネルの例を示す模式図である。
図2C】3番目の第二カーネルの例を示す模式図である。
図2D】4番目の第二カーネルの例を示す模式図である。
図3】画像処理の工程を示すフロー図である。
図4】1番目の入力画像を示すイメージ図である。
図5】1番目の第一収縮画像を示すイメージ図である。
図6】1番目の第一膨張画像を示すイメージ図である。
図7】1番目の第二収縮画像を示すイメージ図である。
図8】1番目の第二膨張画像を示すイメージ図である。
図9】2番目の入力画像を示すイメージ図である。
図10】1番目の差分画像を示すイメージ図である。
図11】2番目の第一収縮画像を示すイメージ図である。
図12】2番目の第一膨張画像を示すイメージ図である。
図13】2番目の第二収縮画像を示すイメージ図である。
図14】2番目の第二膨張画像を示すイメージ図である。
図15】3番目の入力画像を示すイメージ図である。
図16】2番目の差分画像を示すイメージ図である。
図17】3番目の第一収縮画像を示すイメージ図である。
図18】3番目の第一膨張画像を示すイメージ図である。
図19】3番目の第二収縮画像を示すイメージ図である。
図20】3番目の第二膨張画像を示すイメージ図である。
図21】4番目の入力画像を示すイメージ図である。
図22】3番目の差分画像を示すイメージ図である。
図23】4番目の第一収縮画像を示すイメージ図である。
図24】4番目の第一膨張画像を示すイメージ図である。
図25】4番目の第二収縮画像を示すイメージ図である。
図26】4番目の第二膨張画像を示すイメージ図である。
図27】5番目の入力画像を示すイメージ図である。
図28】4番目の差分画像を示すイメージ図である。
図29A】異物の例を示すイメージ図である。
図29B】異物の例を示すイメージ図である。
図29C】異物の例を示すイメージ図である。
図30】実施形態1に係る画像処理システムを示す模式図である。
図31】画像処理装置の機能ブロック図である。
図32】発光装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本開示をさらに詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本開示の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
【0010】
さらに以下に示す実施形態は、本開示の技術思想の具体例を示すものであって、本開示を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本開示の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0011】
[実施形態1]
実施形態1に係る画像処理方法は、対象物の各部位の幅を求めることができる。実施形態1に係る画像処理方法は、膨張及び収縮を行うカーネルのサイズを変化させて、複数回の収縮処理及び膨張処理を行う。カーネルは、画像処理におけるフィルタ処理で用いられる係数であり、マスクやフィルタ等とも呼ばれ、一般にそのサイズを縦横の画素数で示す。実施形態1に係る画像処理方法で使用するカーネルの例を図1A図1D図2A図2Dに示す。各図において、カーネルの変換画素K1を濃色で示し、変換画素の近傍に位置する周辺画素K2を白色で示している。
【0012】
入力画像に対して収縮処理と膨張処理を組み合わせたオープニング処理を行う。実施形態1においては、横方向にカーネルサイズを大きくしながらオープニング処理を行う横方向オープニング処理と、縦方向にカーネルサイズを大きくしながらオープニング処理を行う縦方向オープニング処理と、を行う。
【0013】
実施形態1に係る画像処理方法の一例を、図3のフローチャートに基づいて説明する。ここでは、図4に示す入力画像(以下、「1番目の入力画像」と呼ぶ。)に対して、対象物の各部位の幅を測定する方法について説明する。図4に示す1番目の入力画像は、環状の部分を有する繊維のイメージ図である。
【0014】
(1回目の第1工程)
第1工程S31において、1番目(n=1)の入力画像を準備する。1回目の第1工程では、対象物を含む画像を0又は1に二値化した1番目の入力画像を準備する。本実施形態の1番目の入力画像では、対象物を1(黒)とし、対象物以外を0(白)としている。以下の画像処理では、対象物を1(黒)として対象物以外を0(白)とした処理方法を説明する。尚、対象物を0(白)として対象物以外を1(黒)としている場合には、画像処理の各工程において0(白)と1(黒)とが入れ替わる。
【0015】
(1回目の第2工程)
第2工程S32において、1番目の入力画像に対して横方向オープニング処理を行う。本明細書において、横方向オープニング処理とは、カーネルサイズが(a+nc)×bの第一カーネルを用いて入力画像の各画素に対して収縮処理と膨張処理のオープニング処理を行うことである。例えば、入力画像の左上の画素から右下の画素にかけて第一カーネルを走査しながら入力画像の全ての画素に対してオープニング処理を行う。本実施形態の1回目の横方向オープニング処理では、図1Aに示す1番目の第一カーネル1Aを用いてオープニング処理を行う。1番目の第一カーネル1Aは、カーネルサイズが上式においてa=1、b=1、c=1、n=1の2×1である。尚、a、b及びcは1以外の自然数でもよい。
【0016】
1番目の入力画像に対する横方向オープニング処理では、まず、1番目の入力画像に対して1番目の第一カーネルを用いて収縮処理を行い、1番目の第一収縮画像を作成する。次に、1番目の第一収縮画像に対して1番目の第一カーネルで膨張処理を行い、1番目の第一膨張画像を作成する。以下、本実施形態における第2工程の各処理を詳述する。
【0017】
本実施形態における収縮処理では、第一カーネルの変換画素K1が1であり、第一カーネルの周辺画素K2の少なくとも1つが0である場合には、第一カーネルの変換画素K1の値を0に変換する。また、第一カーネルの変換画素K1が1であり、第一カーネルの周辺画素K2の少なくとも1つが0である以外の場合には、第一カーネルの変換画素K1の値を変換しない。
【0018】
また、本明細書における膨張処理では、第一カーネルの変換画素K1が1である場合には、第一カーネルの周辺画素K2を全て1に変換する。また、第一カーネルの変換画素K1が0である場合には、第一カーネルの周辺画素K2を変換しない。
【0019】
まず、図4に示す1番目の入力画像に対して、1番目の第一カーネル1Aを用いて収縮処理を行う。具体的には、1番目の第一カーネルの変換画素K1が1であり、1番目の第一カーネルの周辺画素K2が0である場合には、1番目の第一カーネルの変換画素K1の値を0に変換する。このようにして、図5に示す1番目の第一収縮画像を作成する。図4の1番目の入力画像と図5の1番目の第一収縮画像を比較し易いように、図5において収縮処理によって変換された画素を灰色で示している。換言すると、図5において1から0に変換された画素を灰色で示している。尚、後述する図7図11図13図17図19図23図25においても収縮処理によって変換された画素を灰色で示している。
【0020】
次に、図5に示す1番目の第一収縮画像に対して、1番目の第一カーネル1Aを用いて膨張処理を行う。具体的には、1番目の第一カーネルの変換画素K1が1である場合には、1番目の第一カーネルの周辺画素K2を1に変換する。このようにして、図6に示す1番目の第一膨張画像を作成する。図6において、膨張処理によって変換された画素をハッチングで示している。換言すると、図6において0から1に変換された画素をハッチングで示している。尚、後述する図8図12図14図18図20においても膨張処理によって変換された画素をハッチングで示している。
【0021】
(1回目の第3工程)
一方で、第3工程S33において、1番目の入力画像に対して縦方向オープニング処理を行う。なお第2工程S32と第3工程S33は、図3に示すように並列に行ってもよいし、あるいは第2工程S32→第3工程S33のように順次行ってもよいし、あるいは第3工程S33→第2工程S32のように順次行ってもよい。また本明細書において、縦方向オープニング処理とは、カーネルサイズがb×(a+nc)の第二カーネルを用いて入力画像の各画素に対して収縮処理と膨張処理のオープニング処理を行うことである。縦方向オープニング処理では、横方向オープニング処理と同様に入力画像の全ての画素に対してオープニング処理を行う。本実施形態の1回目の縦方向オープニング処理では、図2Aに示す1番目の第二カーネル2Aを用いてオープニング処理を行う。1番目の第二カーネル2Aは、カーネルサイズが上式においてa=1、b=1、c=1、n=1の1×2である。
【0022】
1番目の入力画像に対する縦方向オープニング処理では、まず、1番目の入力画像に対して1番目の第二カーネルを用いて収縮処理を行い、1番目の第二収縮画像を作成する。本実施形態では、図4に示す1番目の入力画像に対して、1番目の第二カーネル2Aを用いて収縮処理を行う。このようにして、図7に示す1番目の第二収縮画像を作成する。
【0023】
1番目の入力画像に対する縦方向オープニング処理では、次に、1番目の第二収縮画像に対して1番目の第二カーネルを用いて膨張処理を行い、1番目の第二膨張画像を作成する。本実施形態では、図7に示す1番目の第二収縮画像に対して、1番目の第二カーネル2Aを用いて膨張処理を行う。このようにして、図8に示す1番目の第二膨張画像を作成する。
【0024】
(1回目の第4工程)
第4工程S34において、2番目の入力画像を作成する。1番目の第一膨張画像と、1番目の第二膨張画像から、2番目の入力画像を作成する。以下、本実施形態における2番目の入力画像の作成工程を詳述する。
【0025】
第4工程では、n番目の第一膨張画像と、n番目の第二膨張画像との差分処理によってn+1番目の入力画像を作成する。n+1番目の入力画像を作成する差分処理では、n番目の第一膨張画像における対象の画素及びn番目の第二膨張画像における対象の画素が1である場合には、n+1番目の入力画像における対象の画素を1とする。また、n番目の第一膨張画像における対象の画素及び/又はn番目の第二膨張画像における対象の画素が0である場合には、n+1番目の入力画像における対象の画素を0とする。尚、n番目の第一膨張画像における対象の画素と、n番目の第二膨張画像における対象の画素と、n+1番目の入力画像における対象の画素とは、各画像において同じ座標に位置する。n+1番目の入力画像を作成する差分処理では、横方向オープニング処理と同様にn番目の第一膨張画像及びn番目の第二膨張画像の全ての画素に対して処理を行う。本実施形態では、図6に示す1番目の第一膨張画像と図8に示す1番目の第二膨張画像の差分処理によって、図9に示す2番目の入力画像を作成する。
【0026】
n番目の入力画像と、n+1番目の入力画像から特定の幅を有する対象物の部分を割り出すことができる。本実施形態では、図4に示す1番目の入力画像と、図9に示す2番目の入力画像から対象物の幅が1の部分を割り出すことができる。本明細書における対象物の幅とは、入力画像に写る対象物の画素数を意味する。例えば、対象物の幅が1とは、対象物の幅が1[pix(ピクセル)]のことである。本実施形態では、1番目の入力画像と、2番目の入力画像から対象物の幅が1である部分を1(黒)とする1番目の差分画像を作成する。換言すると、1番目の入力画像と、2番目の入力画像から対象物の幅が1である画素を1(黒)とする1番目の差分画像を作成する。n番目の差分画像を作成する処理では、n番目の入力画像における対象の画素が1であり、n+1番目の入力画像における対象の画素が0である場合には、n番目の差分画像における対象の画素を1とする。また、n番目の入力画像における対象の画素が1であり、n+1番目の入力画像における対象の画素が0である以外の場合には、n番目の差分画像における対象の画素を0とする。尚、n番目の入力画像における対象の画素と、n+1番目の入力画像における対象の画素と、n番目の差分画像における対象の画素とは、各画像において同じ座標に位置する。n番目の差分画像を作成する処理では、横方向オープニング処理と同様にn番目の入力画像及びn+1番目の入力画像の全ての画素に対して処理を行う。本実施形態では、図4に示す1番目の入力画像と、図9に示す2番目の入力画像とから図10に示す1番目の差分画像を作成する。図4の1番目の入力画像と図10の1番目の差分画像を比較し易いように、図10において1番目の入力画像において1であり、かつ、1番目の差分画像において0である画素をドットで示している。尚、後述する図16図22図28においても1番目の入力画像が1であり、かつn番目の差分画像が0である画素をドットで示している。
【0027】
図3に示すように、繰り返し処理の終了条件に至った否かを判定する繰り返し判定工程S35を行う。本実施形態の繰り返し判定工程S35の終了条件は、n+1番目の入力画像において全ての画素が0のみである。n+1番目の入力画像の全ての画素が0のみになるまで、カーネルサイズを大きくして上記の第1工程S31、第2工程S32、第3工程S33及び第4工程S34を繰り返す。具体的には、nの値を1ずつ増やす工程S36に進み、nの値を1ずつ増やした上で第1工程S31に戻り、第2工程S32、第3工程S33及び第4工程S34を繰り返す。
【0028】
(2回目の第1工程)
本実施形態では、2番目の入力画像の全ての画素が0でないため、nの値を1ずつ増やす工程S36でnの値を1増やしてn=2とした上で第1工程S31である2番目の入力画像を準備する。本実施形態においては、1回目の第4工程によって2番目の入力画像を作成することで準備している。尚、本明細書において、入力画像を準備するとは、入力画像に対して収縮等の画像処理を行える状態にすることを意味する。つまり、第2工程32の前に入力画像に対して画像処理を行えるのであれば入力画像を準備していることを意味する。
【0029】
(2回目の第2工程)
2回目の第2工程では、2番目の入力画像に対して2番目の第一カーネルを用いて横方向オープニング処理を行う。本実施形態では、図9に示す2番目の入力画像に対して、図1Bに示す2番目の第一カーネル1Bを用いてオープニング処理を行う。2番目の第一カーネル1Bのカーネルサイズは、a=1、b=1、c=1、n=2の3×1である。本実施形態では、2番目の第一カーネルの横方向の長さが3であり、変換画素K1が横方向において第一カーネルの端部以外に位置している。第一カーネルの横方向の長さが3以上である場合には、変換画素K1が横方向において第一カーネルの端部以外に位置していることが好ましい。このようにすることで、変換画素K1に近い周辺画素K2を用いて収縮処理を行うことができるので、各部位の幅の測定精度を向上しやすくなる。
【0030】
2番目の入力画像に対する横方向オープニング処理では、まず、2番目の入力画像に対して2番目の第一カーネルを用いて収縮処理を行い、2番目の第一収縮画像を作成する。本実施形態では、図9に示す2番目の入力画像に対して、2番目の第一カーネル1Bを用いて収縮処理を行う。このようにして、図11に示す2番目の第一収縮画像を作成する。
【0031】
2番目の入力画像に対する横方向オープニング処理では、次に、2番目の第二収縮画像に対して2番目の第一カーネルを用いて膨張処理を行い、2番目の第一膨張画像を作成する。本実施形態では、図11に示す2番目の第一収縮画像に対して、2番目の第一カーネル1Bを用いて膨張処理を行う。このようにして、図12に示す2番目の第一膨張画像を作成する。
【0032】
(2回目の第3工程)
2回目の第3工程では、2番目の入力画像に対して2番目の第二カーネルを用いて縦方向オープニング処理を行う。本実施形態では、図9に示す2番目の入力画像に対して、図2Bに示す2番目の第二カーネル2Bを用いてオープニング処理を行う。2番目の第二カーネル2Bのカーネルサイズは、a=1、b=1、c=1、n=2の1×3である。本実施形態では、2番目の第二カーネル2Bの縦方向の長さが3であり、変換画素K1が縦方向において第二カーネルの端部以外に位置している。第二カーネルの縦方向の長さが3以上である場合には、変換画素K1が縦方向において第二カーネルの端部以外に位置していることが好ましい。このようにすることで、変換画素K1に近い周辺画素K2を用いて収縮処理を行うことができるので、各部位の幅の測定精度を向上しやすくなる。
【0033】
2番目の入力画像に対する縦方向オープニング処理では、まず、2番目の入力画像に対して2番目の第二カーネルを用いて収縮処理を行い、2番目の第二収縮画像を作成する。本実施形態では、図9に示す2番目の入力画像に対して、2番目の第二カーネル2Bを用いて収縮処理を行う。このようにして、図13に示す2番目の第二収縮画像を作成する。
【0034】
2番目の入力画像に対する縦方向オープニング処理では、次に、2番目の第二収縮画像に対して2番目の第二カーネルを用いて膨張処理を行い、2番目の第二膨張画像を作成する。本実施形態では、図13に示す2番目の第二収縮画像に対して、2番目の第二カーネル2Bを用いて膨張処理を行う。このようにして、図14に示す2番目の第二膨張画像を作成する。
【0035】
(2回目の第4工程)
2回目の第4工程では、2番目の第一膨張画像と、2番目の第二膨張画像から、3番目の入力画像を作成する。本実施形態では、図12に示す2番目の第一膨張画像と、図14に示す2番目の第二膨張画像との差分処理によって、図15に示す3番目の入力画像を作成する。
【0036】
本実施形態では図9に示す2番目の入力画像と、図15に示す3番目の入力画像から図16に示す2番目の差分画像を作成する。2番目の差分画像では、対象物の幅が2である部分が1(黒)となっている。
【0037】
繰り返し判定工程S35の終了条件に至った否かを判定する。本実施形態では、3番目の入力画像の全ての画素が0でないため、さらにnの値を1ずつ増やす工程S36でnの値を1増やして3とした上で第1工程S31に戻り、第2工程S32、第3工程S33及び第4工程S34を繰り返す。
【0038】
(3回目の第1工程)
本実施形態では、2回目の第4工程によって3番目の入力画像を作成することで準備している。
【0039】
(3回目の第2工程)
3回目の第2工程では、3番目の入力画像に対して3番目の第一カーネルを用いて横方向オープニング処理を行う。本実施形態では、図15に示す3番目の入力画像に対して、図1Cに示す3番目の第一カーネル1Cを用いてオープニング処理を行う。3番目の第一カーネル1Cのカーネルサイズは、a=1、b=1、c=1、n=3の4×1である。
【0040】
3番目の入力画像に対する横方向オープニング処理では、まず、3番目の入力画像に対して3番目の第一カーネルを用いて収縮処理を行い、3番目の第一収縮画像を作成する。本実施形態では、図15に示す3番目の入力画像に対して、3番目の第一カーネル1Cを用いて収縮処理を行う。このようにして、図17に示す3番目の第一収縮画像を作成する。
【0041】
3番目の入力画像に対する横方向オープニング処理では、次に、3番目の第一収縮画像に対して3番目の第一カーネルを用いて膨張処理を行い、3番目の第一膨張画像を作成する。本実施形態では、図17に示す3番目の第一収縮画像に対して、3番目の第一カーネル1Cを用いて膨張処理を行う。このようにして、図18に示す3番目の第一膨張画像を作成する。
【0042】
(3回目の第3工程)
3回目の第3工程では、3番目の入力画像に対して3番目の第二カーネルを用いて縦方向オープニング処理を行う。本実施形態では、図15に示す3番目の入力画像に対して、図2Cに示す3番目の第二カーネル2Cを用いてオープニング処理を行う。3番目の第二カーネル2Cのカーネルサイズは、a=1、b=1、c=1、n=3の1×4である。
【0043】
3番目の入力画像に対する縦方向オープニング処理では、まず、3番目の入力画像に対して3番目の第二カーネルを用いて収縮処理を行い、3番目の第二収縮画像を作成する。本実施形態では、図15に示す3番目の入力画像に対して、3番目の第二カーネル2Cを用いて収縮処理を行う。このようにして、図19に示す3番目の第二収縮画像を作成する。
【0044】
3番目の入力画像に対する縦方向オープニング処理では、次に、3番目の第二収縮画像に対して3番目の第二カーネルを用いて膨張処理を行い、3番目の第二膨張画像を作成する。本実施形態では、図19に示す3番目の第二収縮画像に対して、3番目の第二カーネル2Cを用いて膨張処理を行う。このようにして、図20に示す3番目の第二膨張画像を作成する。
【0045】
(3回目の第4工程)
3回目の第4工程では、3番目の第一膨張画像と、3番目の第二膨張画像から、4番目の入力画像を作成する。本実施形態では、図18に示す3番目の第一膨張画像と、図20に示す3番目の第二膨張画像との差分処理によって、図21に示す4番目の入力画像を作成する。
【0046】
本実施形態では図15に示す3番目の入力画像と、図21に示す4番目の入力画像から図22に示す3番目の差分画像を作成する。3番目の差分画像では、対象物の幅が3である部分が1(黒)となっている。
【0047】
繰り返し判定工程S35の終了条件に至った否かを判定する。本実施形態では、4番目の入力画像の全ての画素が0でないため、さらにnの値を1ずつ増やす工程S36でnの値を1増やして3とした上で第1工程S31に戻り、第2工程S32、第3工程S33及び第4工程S34を繰り返す。
【0048】
(4回目の第1工程)
本実施形態では、3回目の第4工程によって4番目の入力画像を作成することで準備している。
【0049】
(4回目の第2工程)
4回目の第2工程では、4番目の入力画像に対して4番目の第一カーネルを用いて横方向オープニング処理を行う。本実施形態では、図21に示す4番目の入力画像に対して、図1Dに示す4番目の第一カーネル1Dを用いてオープニング処理を行う。4番目の第一カーネル1Dのカーネルサイズは、a=1、b=1、c=1、n=4の5×1である。
【0050】
4番目の入力画像に対する横方向オープニング処理では、まず、4番目の入力画像に対して4番目の第一カーネルを用いて収縮処理を行い、4番目の第一収縮画像を作成する。本実施形態では、図21に示す4番目の入力画像に対して、4番目の第一カーネル1Dを用いて収縮処理を行う。このようにして、図23に示す4番目の第一収縮画像を作成する。
【0051】
4番目の入力画像に対する横方向オープニング処理では、次に、4番目の第一収縮画像に対して4番目の第一カーネルを用いて膨張処理を行い、4番目の第一膨張画像を作成する。本実施形態では、図23に示す4番目の第一収縮画像に対して、4番目の第一カーネル1Dを用いて膨張処理を行う。このようにして、図24に示す4番目の第一膨張画像を作成する。
【0052】
(4回目の第3工程)
4回目の第3工程では、4番目の入力画像に対して4番目の第二カーネルを用いて縦方向オープニング処理を行う。本実施形態では、図21に示す4番目の入力画像に対して、図2Dに示す4番目の第二カーネル2Dを用いてオープニング処理を行う。4番目の第二カーネル2Dのカーネルサイズは、a=1、b=1、c=1、n=4の1×5である。
【0053】
4番目の入力画像に対する縦方向オープニング処理では、まず、4番目の入力画像に対して4番目の第二カーネルを用いて収縮処理を行い、4番目の第二収縮画像を作成する。本実施形態では、図21に示す4番目の入力画像に対して、4番目の第二カーネル2Dを用いて収縮処理を行う。このようにして、図25に示す4番目の第二収縮画像を作成する。
【0054】
4番目の入力画像に対する縦方向オープニング処理では、次に、4番目の第二収縮画像に対して4番目の第二カーネルを用いて膨張処理を行い、4番目の第二膨張画像を作成する。本実施形態では、図25に示す4番目の第二収縮画像に対して、4番目の第二カーネル2Dを用いて膨張処理を行う。このようにして、図26に示す4番目の第二膨張画像を作成する。
【0055】
(4回目の第4工程)
4回目の第4工程では、4番目の第一膨張画像と、4番目の第二膨張画像から、5番目の入力画像を作成する。本実施形態では、図24に示す4番目の第一膨張画像と、図26に示す4番目の第二膨張画像との差分処理によって、図27に示す5番目の入力画像を作成する。
【0056】
本実施形態では図21に示す4番目の入力画像と、図27に示す5番目の入力画像から図28に示す4番目の差分画像を作成する。4番目の差分画像では、対象物の幅が4である部分が1(黒)となっている。
【0057】
繰り返し判定工程S35の終了条件に至った否かを判定する。本実施形態では、5番目の入力画像の全ての画素が0であるため、繰り返し判定工程S35の終了条件に至ったと判定して繰り返し処理を終了する。n+1番目の入力画像が0のみの画像になるまで、nの値を1から1ずつ増やしながら第1工程S31、第2工程S32、第3工程S33及び第4工程S34を繰り返すことで作成したn番目の入力画像及びn+1番目の入力画像に基づいて対象物の各部位の幅を割り出すことができる。本実施形態では、n番目の入力画像とn+1番目の入力画像に基づいて作成したn番目の差分画像により各部位の幅を割り出している。
【0058】
本実施形態における第一カーネルのカーネルサイズ(a+nc)×b、及び第二カーネルのカーネルサイズb×(a+nc)におけるa、b、cは自然数である。a、b及びcの値が小さいことによって、カーネルサイズが小さくなるので各部位の幅の測定精度を向上させることができる。このため、a=1、b=1、c=1であることが好ましい。尚、a、b及びcの値が大きいことによってカーネルサイズが大きくなるので各部位の幅を測定する時間を短縮することができる。
【0059】
本実施形態では、1番目の差分画像及び2番目の差分画像等の複数の差分画像をnの値を1ずつ増やす毎に作成していたが、入力画像の全ての画素が0になるまで第1工程、第2工程、第3工程及び第4工程を繰り返した後に、1番目の差分画像及び2番目の差分画像等の複数の差分画像を作成してもよい。
【0060】
第1工程S31、第2工程S32、第3工程S33及び第4工程S34を繰り返した結果、繰り返し判定工程S35においてn+1番目の入力画像が0のみ(又は1のみ)の画像と判定された後に、対象物の各部位の幅を出力する工程S37を有してもよい。また、対象物の各部位の幅を出力する工程S37は、入力画像の全ての画素が0(又は1のみ)になるまで第1工程、第2工程、第3工程及び第4工程を繰り返す途中で行ってもよい。
【0061】
対象物の各部位の幅を出力する工程S37では、対象物の各部位の幅に関する情報を出力する。例えば、対象物の幅毎の分布の情報を出力してもよい。1番目の差分画像及び2番目の差分画像等の複数の差分画像の画素数を出力してもよい。本実施形態では、対象物の幅が1の画素が抽出された1番目の差分画像の画素数は4[pix]である。対象物の幅が2の画素が抽出された2番目の差分画像の画素数は56[pix]である。対象物の幅が3の画素が抽出された3番目の差分画像の画素数は34[pix]である。対象物の幅が4の画素が抽出された4番目の差分画像の画素数は16[pix]である。このような対象物の幅毎の分布の情報を出力してもよい。尚、n番目の差分画像の画素数は、n番目の入力画像の画素数とn+1番目の入力画像の画素数からも求めることができる。
【0062】
また、n番目の入力画像及びn+1番目の入力画像を構成する画素の数に基づいて対象物の平均の幅を割り出す工程を有していてもよい。例えば、複数の差分画像の画素数から平均の幅を割り出すことができる。まず、差分画像の画素数を入力画像の画素数で割った第1の値を差分画像毎に求める。本実施形態では、差分画像の画素数を入力画像の画素数である120[pix]で割ることで第1の値を求めている。これにより、入力画像の対象物の画素数における差分画像毎の画素数の割合を求めることができる。次に、差分画像毎に求めた第1の値を差分画像で抽出した幅で割った第2の値を差分画像毎に求める。本実施形態では、1番目の差分画像の第1の値を抽出した幅である1で割ることで1番目の差分画像の第2の値を求めている。また、2番目の差分画像の第1の値を抽出した幅である2で割ることで2番目の差分画像の第2の値を求めている。差分画像毎に求めた第2の値を、差分画像毎に求めた第2の値の合計で割った第3の値を求める。本実施形態では、差分画像毎に求めた第2の値を、差分画像毎に求めた第2の値の合計である0.430で割ることで第3の値を求めている。これにより、対象物を1とした時の差分画像毎に抽出した幅に対する割合を求めることができる。次に、差分画像毎に求めた第3の値に差分画像で抽出した幅を掛けた合計を求めることで対象物の平均の幅を推定することができる。本実施形態では、1番目の差分画像の第3の値に1を掛けた値と、2番目の差分画像の第3の値に2を掛けた値と、3番目の差分画像の第3の値に3を掛けた値と、4番目の差分画像の第3の値に4を掛けた値と、の合計により対象物の平均の幅を推定している。尚、上記の計算方法は一例であり計算する順番を変えてもよい。本実施形態における対象物の平均の幅を推定した第1の値、第2の値、第3の値、平均の幅を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
図3のフローチャートに示すように、対象物の各部位の幅を出力する工程S37に続いて、測定対象物の各部位の幅に基づいて、不良モードを判定する工程S38を有していてもよい。不良モードとは、例えば、製品に不要な異物の種類のことである。異物には、図29Aに示すような繊維、図29Bに示すようなポリカーボネートなどの切屑、図29Cに示すようなスミア等が含まれる。例えば、対象物の幅毎の分布の情報を用いて不良モードである異物が繊維か否かを判定することができる。異物が繊維か否かを判定するために対象物の全長を上述した対象物の平均の幅で割った値が設定したしきい値より大きければ繊維と判定し、小さければ繊維以外と判定することで不良モードを判定してもよい。尚、対象物の全長の測定方法については、公知の画像処理の方法を用いることができる。例えば、横方向における対象物の長さと、縦方向における対象物の長さと、で長い方の長さを対象物の全長としてもよい。また、対象物の長さが最大になる方向における対象物の長さを、対象物の全長としてもよい。他には、1番目の入力画像に対して細線化処理を行い、幅1の線画像に変換した画像の画素数を対象物の全長としてもよい。また、不良モードを判定する工程S38に続いて、判定された不良モード毎に異なる検査基準を適用して対象物の良否を判定する工程S39を有していてもよい。例えば、不良モードが繊維か繊維以外かで対象物の良否を判定する対象物の平均の幅のしきい値を変えてもよい。
【0065】
[画像処理装置10]
このように、実施形態1に係る画像処理方法は、寸法計測や不良モードの特定など、種々の用途に利用できる。次に、画像処理方法を適用する一例として、画像処理装置を含む画像処理システム100を図30の斜視図に示す。画像処理システム100は、撮像部1と、画像処理装置10を備える。ここでは、コンベアベルトなどで搬送される半導体素子などの対象物OBを、撮像部1で撮像する。撮像部1には、CCDなどのイメージセンサを備えるカメラが好適に利用できる。この撮像部1は、撮像した画像データを、画像処理装置10に転送する。画像データの転送には、ケーブル等の物理媒体を介した有線接続の他、WiFi(商標名)やBluetooth(商標名)、ZigBee(商標名)等の電波や光を用いた無線接続が利用できる。このような画像処理システム100は、対象物の画像を撮像し、この画像に対して上述の画像処理を行うことで対象物の幅を求める。また、求めた測定対象物の幅の値に基づいて、良品の判定を行うこともできる。
【0066】
画像処理装置10は、転送された画像データを処理して、当該画像データに含まれる異物FMを抽出すると共に、抽出された異物FMの、各部位の幅を測定する。画像処理装置10は、PLCやPC、あるいはカメラに内蔵されたマイコンやASICなどが利用できる。すなわち、図30の例では撮像部1と画像処理装置10を別部材としているが、これらを統合してもよい。また画像処理装置10として、汎用のPCやタブレットに、専用の画像処理プログラムをインストールしたものを用いることもできる。あるいは、画像処理装置をFA現場などのローカルに設置せず、遠隔地に設置したサーバで画像処理装置の機能を実現するクラウドコンピューティングとすることもできる。
【0067】
図31に示す画像処理装置10は、画像取得部11と、メモリ部12と、プロセッサ部13を備える。画像取得部11は、撮像部1で撮像された画像を0又は1に二値化した二値画像等の入力画像を取得するための部材である。このような画像取得部11には、カメラ等の撮像部1と接続するための接続インターフェース、例えばHDMI(登録商標)などの画像入力インターフェースが利用できる。
【0068】
メモリ部12は、画像取得部11で取得した入力画像を一時的に保持するための部材である。
【0069】
プロセッサ部13は、メモリ部12で保持された入力画像に対して画像処理を行うための部材である。典型的には、CPUやSoC、あるいはASICやマイコンなどが利用できる。このプロセッサ部13は、対象物を含む画像を0又は1に二値化したn番目の入力画像を準備する機能(nは自然数)と、前記n番目の入力画像をカーネルサイズが(a+nc)×bのn番目の第一カーネルで収縮処理してn番目の第一収縮画像を作成する機能(a、b、cは自然数)と、前記n番目の第一収縮画像を前記n番目の第一カーネルで膨張処理してn番目の第一膨張画像を作成する機能と、前記n番目の入力画像をカーネルサイズがb×(a+nc)のn番目の第二カーネルで収縮処理してn番目の第二収縮画像を作成する機能と、前記n番目の第二収縮画像を前記n番目の第二カーネルで膨張処理してn番目の第二膨張画像を作成する機能と、前記n番目の第一膨張画像と、前記n番目の第二膨張画像との差分からn+1番目の入力画像を作成する機能と、前記n+1番目の入力画像が0のみの画像又は1のみの画像になるまで、nの値を1から1ずつ増やしながら、前記n番目の第一収縮画像の作成、n番目の第一膨張画像の作成、前記n番目の第二収縮画像の作成及び前記n番目の第二膨張画像の作成を繰り返し、作成された前記n番目の入力画像及び前記n+1番目の入力画像に基づいて前記対象物の各部位の幅を演算する機能を有する。
【0070】
この画像処理装置10は、発光装置などの製造工程において、検査段階における不良モードの特定に利用できる。例えば発光装置を撮像部1で撮像して、画像データを二値化した入力画像中から異物を抽出し、この異物の大きさ、具体的には幅及び全長を測定する。測定対象物の幅の測定は、上述した手順で行う。また測定対象物の全長の測定には、既存のアルゴリズムを適宜利用できる。この結果、不良モードを正確に判別でき、発光装置の検査工程において適切な対策を講じることが可能となる。
【0071】
(発光装置の検査方法)
上述の画像処理方法の適用した発光装置の検査方法の一例について説明する。発光装置の検査方法は、n番目の入力画像を準備する第1工程と、n番目の第一膨張画像を作成する第2工程と、n番目の第二膨張画像を作成する第3工程と、n+1番目の入力画像を作成する第4工程と、n+1番目の入力画像が0のみの画像又は1のみの画像になるまで、nの値を1から1ずつ増やしながら第1工程、第2工程、第3工程及び第4工程を繰り返すことと、作成されたn番目の入力画像及びn+1番目の入力画像に基づいて対象物の各部位の幅を割り出す工程と、割り出された対象物の各部位の幅に基づいて発光装置の良否を判定する工程と、を含む。
【0072】
例えば、図32に示す発光装置30を検査する方法として上述の画像処理方法を用いることができる。発光装置30は、発光素子21と、実装基板22と、導光板23を備える。発光素子21は、実装基板22上に配置されている。導光板23は、実装基板22上に配置されている。導光板23は貫通孔を有している。発光素子21は、導光板23の貫通孔内に配置される。尚、図32の発光装置は一例であり、公知の発光装置の検査方法に上述の画像処理方法の適用することができる。
【0073】
発光装置の検査方法では、対象物を含む発光装置が写り、且つ、0又は1に二値化した1番目の入力画像を準備する第1工程を行う。対象物は、例えば、発光装置の一部である発光素子であってもよく、発光装置に付着した異物であってもよい。本明細書において、付着した異物を含めて発光装置とする。
【0074】
上述の画像処理と同様に、1番目の入力画像を1番目の第一カーネルで収縮処理して1番目の第一収縮画像を作成する。次に、1番目の第一収縮画像を1番目の第一カーネルで膨張処理して1番目の第一膨張画像を作成する第2工程を行う。
【0075】
上述の画像処理と同様に、1番目の入力画像を1番目の第二カーネルで収縮処理して1番目の第二収縮画像を作成する。次に、1番目の第二収縮画像を1番目の第二カーネルで膨張処理して1番目の第二膨張画像を作成する第3工程を行う。
【0076】
上述の画像処理と同様に、1番目の第一膨張画像と、1番目の第二膨張画像との差分から2番目の入力画像を作成する第4工程を行う。
【0077】
上述の画像処理と同様に、n+1番目の入力画像が0のみの画像又は1のみの画像になるまで、nの値を1から1ずつ増やしながら第1工程、第2工程、第3工程及び第4工程を繰り返す。つまり、作成した2番目の入力画像が0のみの画像又は1のみの画像でなければ、nの値を1から1ずつ増やしながら第1工程、第2工程、第3工程及び第4工程を繰り返す。
【0078】
上述の画像処理と同様に、作成されたn番目の入力画像及びn+1番目の入力画像に基づいて対象物の各部位の幅を割り出す。そして、割り出された対象物の各部位の幅に基づいて発光装置の良否を判定する。例えば、対象物の幅が5以上10より小さい画素数に対する第1しきい値と、対象物の幅が10以上の画素数に対する第2しきい値と、を設けて第1しきい値と第2しきい値の両方を満たす場合に良品と判断してもよい。
【0079】
上述した画像処理と同様に不良モードを判定してもよい。また、判定された不良モード毎に異なる検査基準を適用して発光装置の良否を判定してもよい。例えば、対象物が繊維状の異物か否かを判定して、異物が繊維である場合に良品と判定する対象物の平均の幅と、異物が繊維でない場合に良品と判定する対象物の平均の幅と、が異なっていてもよい。このように不良モード毎に異なる検査基準を適用することで発光装置の歩留りを向上させやすくなる。
【0080】
画像処理方法を適用する一例として、発光装置の製造工程における検査の例を説明した。ただ本開示は画像処理方法を適用する用途を、発光装置の検査方法に限定するものではない。例えば、異物管理を求められる電子機器や食品等の検査等にも利用できる。
【0081】
本開示は、以下のような態様で実施することもできる。
【0082】
[項1]
対象物を含む画像を0又は1に二値化したn番目の入力画像を準備する第1工程と、
前記n番目の入力画像をカーネルサイズが(a+nc)×bのn番目の第一カーネルで収縮処理してn番目の第一収縮画像を作成し、前記n番目の第一収縮画像を前記n番目の第一カーネルで膨張処理してn番目の第一膨張画像を作成する第2工程と、
前記n番目の入力画像をカーネルサイズがb×(a+nc)のn番目の第二カーネルで収縮処理してn番目の第二収縮画像を作成し、前記n番目の第二収縮画像を前記n番目の第二カーネルで膨張処理してn番目の第二膨張画像を作成する第3工程と、
前記n番目の第一膨張画像と、前記n番目の第二膨張画像との差分からn+1番目の入力画像を作成する第4工程と、を有し、
前記n+1番目の入力画像が0のみの画像又は1のみの画像になるまで、nの値を1から1ずつ増やしながら、前記第1工程、前記第2工程、前記第3工程及び前記第4工程を繰り返し、
作成された前記n番目の入力画像及び前記n+1番目の入力画像に基づいて前記対象物の各部位の幅を割り出す工程と、を含む画像処理方法(上記においてa、b、c、nは自然数である)。
【0083】
[項2]
項1に記載の画像処理方法であって、
前記bと前記cがそれぞれ1である画像処理方法。
【0084】
[項3]
項1又は2に記載の画像処理方法であって、
前記aが1である画像処理方法。
【0085】
[項4]
項3に記載の画像処理方法であって、
前記第2工程において、前記n番目の第一カーネルの横方向の長さが3以上の場合に変換画素が前記n番目の第一カーネルの端部以外に位置する画像処理方法。
【0086】
[項5]
項1から4のいずれか1つに記載の画像処理方法であって、
前記n番目の入力画像及び前記n+1番目の入力画像を構成する画素の数に基づいて、前記対象物の平均の幅を割り出す画像処理方法。
【0087】
[項6]
項1から5のいずれか1つに記載の画像処理方法であって、さらに、
前記対象物の各部位の幅に基づいて、不良モードを判定する工程を含む画像処理方法。
【0088】
[項7]
項6に記載の画像処理方法であって、さらに、
判定された前記不良モード毎に異なる検査基準を適用して前記対象物の良否を判定する工程を含む画像処理方法。
【0089】
[項8]
対象物を含む発光装置が写り、且つ、0又は1に二値化したn番目の入力画像を準備する第1工程と、
前記n番目の入力画像をカーネルサイズが(a+nc)×bのn番目の第一カーネルで収縮処理してn番目の第一収縮画像を作成し、前記n番目の第一収縮画像を前記n番目の第一カーネルで膨張処理してn番目の第一膨張画像を作成する第2工程と、
前記n番目の入力画像をカーネルサイズがb×(a+nc)のn番目の第二カーネルで収縮処理してn番目の第二収縮画像を作成し、前記n番目の第二収縮画像を前記n番目の第二カーネルで膨張処理してn番目の第二膨張画像を作成する第3工程と、
前記n番目の第一膨張画像と、前記n番目の第二膨張画像との差分からn+1番目の入力画像を作成する第4工程と、を有し、
前記n+1番目の入力画像が0のみの画像又は1のみの画像になるまで、nの値を1から1ずつ増やしながら、前記第1工程、前記第2工程、前記第3工程及び前記第4工程を繰り返し、
作成された前記n番目の入力画像及び前記n+1番目の入力画像に基づいて前記対象物の各部位の幅を割り出す工程と、
割り出された前記対象物の各部位の幅に基づいて前記発光装置の良否を判定する工程と、
を含む発光装置の検査方法(上記においてa、b、c、nは自然数である)。
【0090】
[項9]
項8に記載の発光装置の検査方法であって、
前記発光装置の良否を判断する工程は、割り出された前記対象物の各部位の幅に基づいて不良モードを判定し、判定された前記不良モード毎に異なる検査基準を適用して前記発光装置の良否を判定する発光装置の検査方法。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本開示の画像処理方法及び発光装置の検査方法は、半導体の製造工程における異物の検査のための画像処理に好適に適用できる。
【符号の説明】
【0092】
100…画像処理システム
1…撮像部
10…画像処理装置
11…画像取得部
21…発光素子
22…実装基板
23…導光板
30…発光装置
OB…対象物
FM…異物
1A…1番目の第一カーネル
1B…2番目の第一カーネル
1C…3番目の第一カーネル
1D…4番目の第一カーネル
2A…1番目の第二カーネル
2B…2番目の第二カーネル
2C…3番目の第二カーネル
2D…4番目の第二カーネル
K1…カーネルの変換画素
K2…カーネルの周辺画素
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29A
図29B
図29C
図30
図31
図32