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特開2024-90166配管の断熱構造、配管加熱システム、断熱シート、及び断熱構造の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090166
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】配管の断熱構造、配管加熱システム、断熱シート、及び断熱構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/075 20060101AFI20240627BHJP
   F16L 59/147 20060101ALI20240627BHJP
   F16L 53/35 20180101ALI20240627BHJP
【FI】
F16L59/075
F16L59/147
F16L53/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205875
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小森 栄一
(72)【発明者】
【氏名】岡部 庸之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 章
(72)【発明者】
【氏名】福田 啓一
(72)【発明者】
【氏名】石 大作
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 敬典
(72)【発明者】
【氏名】大竹 啓記
(72)【発明者】
【氏名】堀田 航平
(72)【発明者】
【氏名】松尾 建哉
【テーマコード(参考)】
3H025
3H036
【Fターム(参考)】
3H025AA13
3H025AB01
3H025AB05
3H036AB13
3H036AB15
3H036AB18
3H036AB24
3H036AB32
3H036AC02
3H036AD04
3H036AD06
3H036AE09
(57)【要約】
【課題】、既設のヒータを維持したまま、ヒータの消費電力を低減する。
【解決手段】断熱構造50は、配管100に取り付けられているヒータ10の外側を覆い且つヒータ10との間に空気層Bを形成する第1及び第2断熱シート51A・51Bを有している。第1及び第2断熱シート51A・51Bの位置は留め部54a・54bによってヒータ10に固定されている。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管に取り付けられているヒータの外側を覆い、且つ前記ヒータとの間に空気層を形成する1又は複数の断熱シートと、
前記空気層を確保しながら前記1又は複数の断熱シートの位置を前記ヒータに対して固定する少なくとも1つの留め部と、を有している
配管の断熱構造。
【請求項2】
前記1又は複数の断熱シートは、前記少なくとも1つの留め部として、相互に脱着可能な第1留め部と第2留め部とを有し、
前記1又は複数の断熱シートの位置は、前記第1留め部と前記第2留め部が互いに取り付けられて、前記ヒータに固定されている
請求項1に記載される配管の断熱構造。
【請求項3】
前記1又は複数の断熱シートは、前記配管の周方向において互いに反対側に位置している第1の縁部と第2の縁部を有し、
前記第1留め部と前記第2留め部は、前記第1の縁部と第2の縁部とにそれぞれ取り付けられている
請求項2に記載される配管の断熱構造。
【請求項4】
前記配管は、前記配管の長さ方向において相互に接続される第1部分配管と第2部分配管と、前記第1部分配管の端部と前記第2部分配管の端部とに配置され前記第1及び第2の部分配管よりも大きな外径を有しているジョイント部とを有し、
前記1又は複数の断熱シートの内側に前記ジョイント部が位置している
請求項1に記載される配管の断熱構造。
【請求項5】
前記配管は、前記配管の長さ方向において相互に接続される複数の部分配管を含み、
前記複数の部分配管のそれぞれは、各部分配管の一方の端部と他方の端部とに、隣の部分配管と接続するための第1ジョイント部と第2ジョイント部とをそれぞれ有し、
前記1又は複数の断熱シートは、前記第1ジョイント部と前記第2ジョイント部との間に配置されている
請求項1に記載される配管の断熱構造。
【請求項6】
前記第1留め部と前記第2留め部は、面ファスナー、磁石、及びフックのうち少なくとも1つを含む
請求項2に記載される配管の断熱構造。
【請求項7】
前記少なくとも1つの留め部は、前記1又は複数の断熱シートの外側に巻かれて、前記1又は複数の断熱シートの位置を前記ヒータに固定するバンド及び紐のうち少なくとも一方を含む
請求項1に記載される配管の断熱構造。
【請求項8】
前記1又は複数の断熱シートは、前記第1留め部が設けられている前記第1の縁部を有する第1断熱シートと、前記第2留め部が設けられている前記第2の縁部を有する第2断熱シートとを含み、
前記第1断熱シートと前記第2断熱シートは、前記第1留め部と前記第2留め部とを利用して前記配管の前記周方向において接続されている
請求項1に記載される配管の断熱構造。
【請求項9】
前記第1留め部と前記第2留め部は、前記配管の径方向に突出し且つ前記配管の周方向において互いに向き合うように配置されて、取り付けられている
請求項8に記載される配管の断熱構造。
【請求項10】
前記1又は複数の断熱シートは、前記配管の長さ方向に接続される第1断熱シートと第3断熱シートとを含み、
前記第1断熱シートは、前記配管の長さ方向における第3の縁部と、前記第3の縁部に設けられている第3留め部とを有し、
前記第3断熱シートは、前記配管の長さ方向における第4の縁部と、前記第4の縁部に設けられている第4留め部とを有し、
前記第3留め部と前記第4留め部は相互に取り付けられている
請求項1に記載される配管の断熱構造。
【請求項11】
前記配管は、前記配管の長さ方向において相互に接続される第1部分配管と第2部分配管と、前記第1部分配管の端部と前記第2部分配管の端部とに配置され前記第1及び第2の部分配管よりも大きな外径を有しているジョイント部とを有し、
前記第3留め部と前記第4留め部は、前記ジョイント部の位置で互いに取り付けられている
請求項10に記載される配管の断熱構造。
【請求項12】
前記断熱シートは、多孔質シート、無機繊維シート、及び樹脂シートの少なくとも1つを含む
請求項1に記載される配管の断熱構造。
【請求項13】
前記1又は複数の断熱シートは、その内面に設けられている金属層を含む
請求項1に記載の配管の断熱構造。
【請求項14】
請求項1に記載される断熱構造と、
前記ヒータと
を含む配管加熱システム。
【請求項15】
配管を覆っているヒータとの間に空気層を確保しながら前記ヒータの外側を覆うための断熱シートであって、
前記配管の周方向において互いに反対側に位置している第1の縁部と第2の縁部と、
前記第1の縁部と前記第2の縁部とにそれぞれ設けられ、相互に脱着可能な第1留め部と第2留め部とを有している
断熱シート。
【請求項16】
配管を覆っているヒータの外側を1又は複数の断熱シートで覆い、且つ前記1又は複数の断熱シートと前記ヒータとの間に空気層を確保する第1の工程と、
前記空気層を確保しながら、少なくとも1つの留め部を利用して、前記1又は複数の断熱シートの位置を固定する第2の工程と、を有している
断熱構造の施工方法。
【請求項17】
前記1又は複数の断熱シートは、前記少なくとも1つの留め部として、相互に脱着可能な第1留め部と第2留め部とを有しており、
前記第2の工程において、前記第1留め部と前記第2留め部とを相互に取り付けて、前記1又は複数の断熱シートの位置を前記ヒータに固定する
請求項16に記載される断熱構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の断熱構造、配管加熱システム、断熱シート、及び断熱構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体やフラットパネルディスプレイの製造における成膜工程やエッチング工程などでは、様々なガスが使用され、また排ガスが発生する。それらのガスが配管の内部で凝結・析出することを防止するため、配管を覆うジャケットヒータが利用されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-292199号公報
【特許文献2】国際公開第2012/077648号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製造コストの低減や、製造に起因する環境負荷の低減のため、製造設備における消費電力を低減することが重要であり、配管に取り付けられているジャケットヒータについても、消費電力の低減が求められる。ジャケットヒータ自体の断熱材の厚さを増せば、消費電力を抑えることが可能である。しかしながら、そのためには、既に設置されているジャケットヒータを、より厚い断熱材を有するジャケットヒータに交換する必要があり、そのような交換はコストや作業性の観点では好ましくない。また、断熱材の厚さを増すことは、ヒータの施工性、及びヒータと配管とを含む装置の省スペース化の観点でも好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本開示で提案する配管の断熱構造は、配管に取り付けられているヒータの外側を覆い、且つ前記ヒータとの間に空気層を形成する1又は複数の断熱シートと、前記空気層を確保しながら前記1又は複数の断熱シートの位置を前記ヒータに対して固定し、且つ前記1又は複数の断熱シートの前記ヒータへの脱着を許容する少なくとも1つの留め部とを有している。この断熱構造は、半導体の製造設備にある配管だけでなく、その他の設備の配管に適用されてよい。
【0006】
この構造によると、既設のヒータを維持したまま、ヒータの消費電力を低減できる。空気層を利用するので、断熱シートの厚さを低減しつつ、十分な断熱性能を確保できる。
【0007】
(2)(1)の断熱構造において、前記1又は複数の断熱シートは、前記少なくとも1つの留め部として、相互に脱着可能な第1留め部と第2留め部とを有し、前記1又は複数の断熱シートの位置は、前記第1留め部と前記第2留め部が互いに取り付けられて、前記ヒータに固定されてよい。これによれば、第1留め部と第2留め部が相互に脱着可能であるので、断熱構造の施工作業を容易化できる。
【0008】
(3)(2)の断熱構造において、前記1又は複数の断熱シートは、前記配管の周方向において互いに反対側に位置している第1の縁部と第2の縁部を有してよい。前記第1留め部と前記第2留め部は、前記第1の縁部と第2の縁部とにそれぞれ取り付けられてよい。
【0009】
(4)前記配管は、前記配管の長さ方向において相互に接続される第1部分配管と第2部分配管と、前記第1部分配管の端部と前記第2部分配管の端部とに配置され前記第1及び第2の部分配管よりも大きな外径を有しているジョイント部とを有してよい。この場合、前記1又は複数の断熱シートの内側に前記ジョイント部が位置してよい。この構造によれば、空気層を容易に確保できる。
【0010】
(5)前記配管は、前記配管の長さ方向において相互に接続される複数の部分配管を含み、前記複数の部分配管のそれぞれは、各部分配管の一方の端部と他方の端部とに、隣の部分配管と接続するための第1ジョイント部と第2ジョイント部とをそれぞれ有してよい。この場合、前記1又は複数の断熱シートは、前記第1ジョイント部と前記第2ジョイント部との間に配置されてよい。
【0011】
(6)(2)の断熱構造において、前記第1留め部と前記第2留め部は、面ファスナー、磁石、及びフックのうち少なくとも1つを含んでよい。
【0012】
(7)(1)の断熱構造において、前記少なくとも1つの留め部は、前記1又は複数の断熱シートの外側に巻かれて、前記1又は複数の断熱シートの位置を前記ヒータに固定するバンド及び紐のうち少なくとも一方を含んでよい。
【0013】
(8)(1)の断熱構造において、前記1又は複数の断熱シートは、前記第1留め部が設けられている前記第1の縁部を有する第1断熱シートと、前記第2留め部が設けられている前記第2の縁部を有する第2断熱シートとを含んでよい。前記第1断熱シートと前記第2断熱シートは、前記第1留め部と前記第2留め部とを利用して前記配管の前記周方向において接続されてよい。これによると、断熱構造が適用可能な配管の構造の自由度を増すことができる。
【0014】
(9)(8)の断熱構造において、前記第1留め部と前記第2留め部は、前記配管の径方向に突出し且つ前記配管の周方向において互いに向き合うように配置されて、互いに取り付けられてよい。この構造によると、分岐配管がある場所にこの断熱構造を適用した場合でも、第1留め部と第2留め部との幅(配管の径方向での幅)を十分に確保でき、その結果、分岐配管がある場所でも2枚の断熱シートの間の隙間を低減できる。
【0015】
(10)(1)の断熱構造において、前記1又は複数の断熱シートは、前記配管の長さ方向に接続される第1断熱シートと第3断熱シートとを含んでよい。前記第1断熱シートは、前記配管の長さ方向における第3の縁部と、前記第3の縁部に設けられている第3留め部とを有してよい。前記第3断熱シートは、前記配管の長さ方向における第4の縁部と、前記第4の縁部に設けられている第4留め部とを有してよい。前記第3留め部と前記第4留め部は相互に取り付けられてよい。この構造によると、断熱構造の施工を容易化できる。
【0016】
(11)(10)の断熱構造において、前記配管は、前記配管の長さ方向において相互に接続される第1部分配管と第2部分配管と、前記第1部分配管の端部と前記第2部分配管の端部とに配置され前記第1及び第2の部分配管よりも大きな外径を有しているジョイント部とを有してよい。前記3留め部と前記第4留め部は、前記ジョイント部の位置で互いに取り付けられてよい。これによると、断熱構造の施工時に、第3留め部と第4留め部とがジョイント部によって内側から支持された状態で、第3留め部と第4留め部とを相互に取り付けることができる。その結果、施工作業を容易化できる。
【0017】
(12)(1)の断熱構造において、前記断熱シートは、多孔質シート、無機繊維シート、及び樹脂シートの少なくとも1つを含んでよい。
【0018】
(13)(1)の断熱構造において、前記1又は複数の断熱シートは、その内面に設けられている金属層を含んでよい。この構造によると、断熱性能を向上できる。
【0019】
(14)本開示で提案する配管加熱システムは、(1)に記載の断熱構造と、前記ヒータとを含む。
【0020】
(15)本開示で提案する断熱シートは、配管を覆っているヒータとの間に空気層を確保しながら前記ヒータの外側を覆うための断熱シートである。前記断熱シートは、前記配管の周方向において互いに反対側に位置している前記断熱シートの第1の縁部と第2の縁部と、前記第1の縁部と前記第2の縁部とにそれぞれ設けられ、相互に脱着可能な第1留め部と第2留め部とを有している。この断熱シートによると、同じ構造の断熱シートを複数利用することで、配管を覆うことができる。また、第1留め部と第2留め部が脱着可能であるので、施工作業を容易化できる。
【0021】
(16)本開示で提案する断熱構造の施工方法は、配管を覆っているヒータの外側を1又は複数の断熱シートで覆い、且つ前記1又は複数の断熱シートと前記ヒータとの間に空気層を確保する第1の工程と、前記空気層を確保しながら、少なくとも1つの留め部を利用して、前記1又は複数の断熱シートの位置を固定する第2の工程と、を有している。この施工方法によると、既設のヒータを維持したまま、ヒータの消費電力を低減できる。空気層を利用するので、断熱シートの厚さを低減しつつ、十分な断熱性能を確保できる。
【0022】
(17)(16)の施工方法において、前記1又は複数の断熱シートは、前記少なくとも1つの留め部として、相互に脱着可能な第1留め部と第2留め部とを有しており、前記第2の工程において、前記第1留め部と前記第2留め部とを相互に取り付けて、前記1又は複数の断熱シートの位置を前記ヒータに固定する。これによれば、第1留め部と第2留め部が相互に脱着可能であるので、施工作業を容易化できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】本開示で提案する断熱構造の例を示す斜視図である。
図1B図1Aにおける領域1bの拡大図である。
図2】断熱構造の別の例を示す斜視図である。
図3図1で示す断熱シートの展開図(平面図)である。
図4図3で示すIV-IV線で得られる断熱シートの断面図である。
図5A】配管の長さ方向に沿った切断面で得られる、断熱構造の断面図である。
図5B図5Aで示すVb領域の拡大図である。
図6】断熱構造の変形例を示す斜視図である。
図7】断熱シートの変形例を示す断面図である。
図8】断熱シートの別の変形例を示す断面図である。
図9】断熱シートのさらに別の変形例を示す概略図である。
図10】断熱シートのさらに別の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示で提案する配管の断熱構造、配管加熱システム、断熱シート、及び断熱構造の施工方法について説明する。本明細書では、一例として、図1等で示す配管加熱システム1、断熱構造50、断熱シート51A・51B、及び断熱構造50の施工方法について説明する。
【0025】
配管加熱システム1は配管100に適用される。配管100は、例えば、半導体やフラットパネルディスプレイの製造設備に設けられる配管である。半導体やフラットパネルディスプレイの製造における成膜工程やエッチング工程では、種々のガスが使用され、排ガスが発生する。配管加熱システム1は、配管100を加熱することによって、配管100の内部で供給ガスが凝結することによる効率低下、排気ガスが析出することによる配管詰まりを防止する。
【0026】
図1Aで示すように、配管加熱システム1は、配管100を覆うヒータ10と、ヒータ10の外側を覆う断熱構造50とを有している。
【0027】
[ヒータ]
ヒータ10はジャケットヒータであり、配管100を覆う筒状である。ヒータ10は、断熱材13と、断熱材13の外側を覆う外皮材11、断熱材13の内側を覆う内皮材12、及びクロス14を有している。クロス14に熱源である発熱線14aが縫い付けられている。発熱線14aは断熱材13の内側に沿って配置される。
【0028】
外皮材11及び内皮材12としては、例えば、耐熱性を有するシート(クロスを含む)を利用できる。外皮材11の材料と内皮材12の材料は同じであってもよいし、異なっていてもよい。外皮材11及び内皮材12としては、例えば、多孔質シートや、無機繊維シート、樹脂シートなど用いることができる。多孔質シートの例としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)のシートをあげることができる。無機繊維シートの例としては、ガラスクロスをあげることができる。樹脂シートは、例えば、フッ素樹脂のシートである。また、多孔質シートにシリコンやフッ素コーティングをしてもよい。
【0029】
断熱材13は、例えば難燃繊維で形成される。断熱材13の材料は、無機繊維であってもよいし、有機繊維であってもよい。無機繊維は、例えば、ガラスファイバーや、セラミックファイバー、シリカファイバーなどであってよい。有機繊維は、例えば、アラミドや、ポリアミド、ポリイミド、フッ素樹脂繊維などであってもよい。
【0030】
発熱線14aは、例えば、ニッケル-クロム系金属抵抗体である。発熱線14aはクロス14に縫い付けられている。クロス14は、例えば、ガラスクロスなどの無機繊維製シートである。発熱線14aはリード線15を介して電源に接続される。
【0031】
ヒータ10は可撓性を有してよい。すなわち、ヒータ10を構成する断熱材13、外皮材11、内皮材12、及びクロス14のそれぞれが、可撓性を有してよい。この場合、ヒータ10は、その施工工程において、配管100の外側に巻き付けられ、筒状となる。ヒータ10は可撓性を有していなくてもよい。この場合、ヒータ10は、円弧状の断面を有していてよい。そして、複数のヒータ10が配管100の外側に取り付けられ、全体として筒状のヒータを構成してよい。例えば、ヒータ10は半円柱状に形成されてよい。この場合、2つのヒータ10が配管100を挟むように配置され、全体として筒状の加熱装置を構成してよい。
【0032】
[断熱構造]
図1Aで示すように、断熱構造50は、ヒータ10の外側を覆う断熱シート51A・51Bを有している。断熱シート51A・51Bは全体として筒状であり、その内側にヒータ10及び配管100が配置されている。断熱シート51A・51Bとヒータ10との間に、空気層Bが確保されている。
【0033】
断熱シート51A・51Bは、シート基材52を有する。また、断熱シート51A・51Bは、シート基材52の内面(ヒータ10及び配管100に向く面)に形成されている金属層53を有してよい。金属層30の反射効果によって、断熱構造50の断熱性能を向上でき、ヒータ10の消費電力をさらに低減できる。また、金属層30は断熱シート51A・51Bの外側に露出しないので、金属層30が帯電することを抑えることができる。
【0034】
シート基材52は、例えば、多孔質シートや、無機繊維シート、樹脂シートなどであってよい。多孔質シートの例としては、多孔質PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)のシートを利用することができる。無機繊維シートの例としては、ガラスクロスを用いることができる。
【0035】
樹脂シートは、例えば、フッ素樹脂のシートである。フッ素樹脂の例としては、PFT(テトラフルオロエチレン-パ-フルオロアルコキシエチレン共重合体)や、FEP(テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、ETFE(テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体)、ECTFE(クロロトリフルオロエチレン-エチレン共重合体)、PVDF(ポリビニリデンフロライド)をあげることができる。樹脂シートの材料としては、ポリアミドや、ポリカーボネイト、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケルトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリメチルペンテンなどをあげることができる。
【0036】
金属層53は、例えば、金属のシート(フィルム)であってよい。金属は、例えばアルミニウムやSUSのような高反射率が高いものが望ましい。この場合、金属層53は、シート基材52の内面に糸で縫い付けられていてよい。金属層53は、シート基材52に接着剤で貼り付けられていてもよい。
【0037】
図4で示すように、シート基材52の縁部52aは、金属のシートである金属層53の縁部53aを覆うように折り返されていてよい。(以下では、縁部52aを折り返し縁部と称する。)そして、この折り返し縁部52aは、金属層53と、シート基材52の縁部52aに向き合う部分とに縫い付けられていてよい。これによって、例えば断熱構造50の施工において、金属層53の縁部53aが他の部材に引っかかることを抑え、縁部でのケガ防止を図ることができる。
【0038】
折り返し縁部52aは、例えば、断熱シート51A・51Bが巻き付けられる配管100の長さ方向における端部であってよい。これとは異なり、折り返し縁部52aは、配管100の周方向における端部であってもよい。
【0039】
上で説明したように、金属層53は、例えば金属シートで形成され、シート基材52に糸で縫い付けられる。これとは異なり、金属層53は、シート基材52に蒸着によって形成されてもよい。さらに他の例として、金属層53は、樹脂シートに蒸着によって形成されてよい。そして、この樹脂シートがシート基材52に糸で縫い付けられたり、接着剤で貼り付けられていてよい。
【0040】
断熱シート51A・51Bは可撓性を有しているとよい。すなわち、断熱シート51A・51Bは、図3で示すような平らな状態から、図1Aで示すように、ヒータ10の外面に合わせて湾曲していてよい。このような断熱シート51A・51Bを利用すれば、断熱構造50の施工作業を向上できる。
【0041】
シート基材52が、例えば、上述した多孔質PTFEのシートである場合、その厚さは0.5mm以上、5.0mm以下であってよい。また、金属層53が、例えばアルミニウムのシートである場合、その厚さは0.01mm以上、0.7mm以下であってよい。断熱シート51A・51Bをこのような厚さで構成することによって、断熱シート51A・51Bは十分な可撓性を有することができる。多孔質PTFEのシートであるシート基材52は、好ましくは、0.5mm以上、2.0mm以下である。金属のシートである金属層53は、好ましくは、0.01mm以上、0.2mm以下である。
【0042】
なお、断熱シート51A・51Bの厚さはヒータ10の厚さより小さくてよい。ヒータ10の厚さは、例えば、20mmから30mmであってよい。空気層Bの厚さは断熱シート51A・51Bの厚さより大きくてよい。空気層Bは、例えば5mmから50mmであってよい。
【0043】
[複数の断熱シート]
図1Aで示す例において、断熱構造50は、配管100の1周を2枚の断熱シート51A・51Bで覆っている。すなわち、各断熱シート51A・51Bは配管100を中心とする半円筒状であり、2枚の断熱シート51A・51Bが組み合わさって、配管100の全周を覆う筒状となっている。
【0044】
2枚の断熱シート51A・51Bは同じ構造を有してよい。すなわち、断熱シート51A・51Bのサイズ(配管100の長さ方向及び周方向での寸法)は同じであってよい。また、後述する留め部54a・54bの取付構造や、金属層53の構造も同じであってよい。これによって、断熱構造50の製造コストを低減できる。
【0045】
以下では、2枚の断熱シート51A・51Bを区別する場合に、断熱シート51Aを第1断熱シートと称し、断熱シート51Bを第2断熱シートと称する。
【0046】
なお、配管100を覆う断熱シートの枚数は、2枚でなくてもよい。1枚の断熱シートによって配管100の全周を覆ってもよいし、3枚以上の断熱シートによって配管100の全周を覆ってもよい。
【0047】
[複数の断熱シートの接続]
図1A及び図1Bで示すように、第1断熱シート51Aは、配管100の周方向において互いに反対側に位置する2つの縁部51a・51bに、留め部54a・54bをそれぞれ有している。以下では、縁部51a・51bを取付縁部と称する。第2断熱シート51Bも、配管100の周方向において互いに反対側に位置する2つの取付縁部51a・51bに、留め部54a・54bをそれぞれ有している。第1断熱シート51Aの留め部54aと第2断熱シート51Bの留め部54bは、相互に脱着可能である。すなわち、留め部54a・54bはボルトや螺子で取り付けられる部分ではない。作業者は、ドライバーやスパナなどのツールを利用することなく、留め部54a・54bを相互に取り付けたり、取り外したりできる。第1断熱シート51Aの留め部54bと第2断熱シート51Bの留め部54aも、相互に脱着可能である。第1断熱シート51Aと第2断熱シート51Bは、留め部54a・54bを利用して、配管100の周方向において接続されて、筒状となっている。
【0048】
留め部54a・54bとしては、例えば面ファスナーが利用されてよい。すなわち、留め部54a・54bは、マジックテープ(登録商標)や、ベルクロ(登録商標)であってよい。上述したように、断熱シート51A・51Bはシート基材52を有している。留め部54a・54bである面ファスナーは、シート基材52の縁部に縫い付けられたり、接着剤で貼り付けられていてもよい。
【0049】
留め部54a・54bとして面ファスナーを利用すると、留め部54a・54bは繰り返し、取り外したり、取り付けたりできる。そのため、断熱シート51A・51Bのヒータ10への脱着が許容され、断熱構造50の施工作業を簡単化できる。また、留め部54a・54bにおいて相互に取り付けられている部分の幅(配管100の径方向での幅)を調整することが可能である。その幅を調整することで、外径の異なる複数の配管や、外径が異なる複数のヒータ10に、1種類の断熱シート51A・51Bを利用できる。
【0050】
留め部54a・54bである面ファスナーは、配管100の径方向に伸びている取付縁部51a・51bだけでなく、取付縁部51a・51bから、断熱シート51A・51Bの内面(金属層53の内面)に達していてもよい。これによると面ファスナーの幅が増すので、断熱シート51A・51Bが適用可能な配管100やヒータ10のサイズについて自由度を増すことができる。
【0051】
留め部54a・54bは、各断熱シート51A・51Bの取付縁部51a・51bの一方の端部から他方の端部まで繋がっていてよい。これとは異なり、留め部54a・54bは、取付縁部51a・51bの一方の端部から他方の端部まで、断続的に設けられていてよい。すなわち、複数の留め部54a・54bが、取付縁部51a・51bに沿って並んでいてよい。
【0052】
なお、各断熱シート51A・51Bの取付縁部51a・51bには、面ファスナーに代えて、フックが留め部54aとして設けられてもよい。この場合、留め部54bはフックが引っかかる穴やフックであってよい。さらに別の例では、留め部54a・54bとして磁石が設けられてもよい。これらの場合でも、留め部54a・54bは繰り返し、取り外したり、取り付けたりできる。そのため、断熱シート51A・51Bのヒータ10への脱着が許容され、断熱構造50の施工作業を簡単化できる。
【0053】
図3で示すように、各断熱シート51A・51Bは表面51cを有している。表面51cは、配管100の外側を覆うように断熱シート51A・51Bを湾曲させたときに配管100に向く面(内面)を含む面である。表面51cに、上述した金属層53が設けられている。留め部54a・54bの双方が、表面51cに取り付けられている。
【0054】
断熱シート51A・51Bが配管100に取り付けられると、取付縁部51a・51bは、図1Bで示すように、断熱シート51A・51Bにおける筒状部分から配管100の径方向の外側に向けて突出する。そして、留め部54a・54bは配管100の周方向において互いに向き合って、互いに取り付けられている。この構造によると、例えば、図1Aで示すように、取付縁部51a・51bの間からリード線15を引き出すことが容易となる。リード線15は、例えば、ヒータ10の発熱線14aから伸びている電線や、ヒータ10の制御に用いる熱電対やサーモスタットのリード線などである。
【0055】
図2で示すように、配管100には分岐配管100bが接続していてもよい。分岐配管100bは、配管100に対して交差する方向に、配管100から伸びている。分岐配管100bは取付縁部51a・51bの間(留め部54a・54bの間)を通って配管100の径方向の外側に伸びている。
【0056】
取付縁部51a・51b及び留め部54a・54bが配管100の径方向の外側に向けて伸びているので、配管100の径方向での取付縁部51a・51bの幅と、留め部54a・54bの幅とを十分に確保することが容易となる。その結果、リード線15(図1A)の位置や、分岐配管100b(図2)の位置においても、留め部54a・54bの間の隙間を低減できる。
【0057】
なお、留め部54A・54Bの位置は、図1A等で示す例に限られない。例えば、図1A等で示す例では、表面51c(配管100の外側を覆うように断熱シート51A・51Bを湾曲させたときに配管100に向く内面を含む面)に留め部54a・54bの双方が設けられていた。これとは異なり、一方の留め部54aが表面51cに設けられ、他方の留め部54bが裏面(配管100の外側を覆うように断熱シート51A・51Bを湾曲させたときに配管100とは反対側に向く外周面を含む面)に設けられてもよい。この場合、留め部54a・54bが互いに取り付けられると、断熱シート51A・51Bのうち一方の断熱シートの一部が他方の断熱シートの内側に配置されることとなる。
【0058】
[空気層を確保するための構造]
上述したように、断熱シート51A・51Bとヒータ10の外側との間に、空気層B(図1A)が確保されている。空気層Bによって、断熱構造50の断熱性能を向上できる。
【0059】
空気層Bは、配管100が有する構造物を利用して確保されてよい。図5Aで示すように、配管100は、配管100の長さ方向において相互に接続される第1部分配管101と第2部分配管102と有している。第1部分配管101の両端部と第2部分配管102の両端部とには、ジョイント部101a・102aがそれぞれ設けられている。部分配管101・102は、ジョイント部101a・102aを介して互いに接続されている。ジョイント部101a・102aは、例えばボルトやクランプ部材によって相互に固定されている。ジョイント部101a・102aは、部分配管101・102よりも大きな径を有している。各部分配管101・102のジョイント部101a・102aは断熱シート51A・51Bの内側に位置し、断熱シート51A・51Bの内側はジョイント部101a・102aによって支持されている。これによって、部品数を増すことなく、空気層Bを確保できる。
【0060】
図5Aで示すように、断熱構造50は、ジョイント部101a・102aを取り囲むジョイント保温部21を有してよい。ジョイント保温部21は、配管100の長さ方向においてジョイント部101a・102aを挟む側部21a・21b、及び環状部21cを有している。環状部21cは、配管100の径方向におけるジョイント部101a・102aの外側を取り囲む。断熱シート51A・51Bはジョイント保温部21を取り囲むようにして、ジョイント保温部21の外側に取り付けられる。これによると、環状部21cの厚さ分だけ空気層Bを増すことができ、断熱性能をさらに向上できる。
【0061】
[配管の長さ方向での断熱シートの接続]
図5Aで示すように、断熱構造50は、配管100の長さ方向において断熱シート51A・51Bに接続される断熱シート51C・51Dを有している。第1断熱シート51Aに第3断熱シート51Cが接続し、第2断熱シート51Bに第4断熱シート51Dが接続してよい。第3及び第4断熱シート51C・51Dの構造は、第1及び第2断熱シート51A・51Bと同じであってよい。
【0062】
第3及び第4断熱シート51C・51Dの内側に、ジョイント部101a・102aが位置し、第3及び第4断熱シート51C・51Dの内側はジョイント保温部21で支持されている。これによって、部品数を増すことなく、断熱シート51C・51Dの内側にも空気層Bを確保できる。
【0063】
図5Aで示す例では、第1及び第2断熱シート51A・51Bの縁部51eと、第3及び第4断熱シート51C・51Dの縁部51fはジョイント部101a・102aの外側(配管100の径方向における外側)に位置している。第1及び第2断熱シート51A・51Bの縁部51eと、第3及び第4断熱シート51C・51Dの縁部51fは、ジョイント部101a・102aによって支持され、相互に重なり合っている。
【0064】
第1及び第2断熱シート51A・51Bと、第3及び第4断熱シート51C・51Dとの接続にも、面ファスナーが利用されてよい。図3で示すように、配管100の長さ方向における断熱シート51A・51Bの縁部51e(図3において矢印Dbで示す方向での端部)に、面ファスナーである留め部54cが取り付けられている。留め部54cは、配管100の外側を覆うように断熱シート51A・51Bを湾曲させたときに配管100とは反対側に向く面(外面)に取り付けられている(図5B参照)。縁部51eとは反対側の縁部51fには、留め部54dが取り付けられている。この留め部54dは表面51cに取り付けられている。すなわち、留め部54dは、配管100に向く面(内面)に取り付けられている。第3及び第4断熱シート51C・51Dは、第1及び第2断熱シート51A・51Bと同様に、留め部54c・54dを有している。
【0065】
図5A及び図5Bで示すように、第1及び第2断熱シート51A・51Bの縁部51eはジョイント部101a・102aの外側に位置している。第3及び第4断熱シート51C・51Dの縁部51fは、第1及び第2断熱シート51A・51Bの外側に位置している。そして、第1及び第2断熱シート51A・51Bの留め部54cと、第3及び第4断熱シート51C・51Dの留め部54dは、配管100の径方向において互いに向き合い、取り付けられている。
【0066】
この構造によると、断熱シート51A~51Dの施工時に、第1及び第2断熱シート51A・51Bの縁部51eと第3及び第4断熱シート51C・51Cの縁部51fとをジョイント部101a・102aによって支持している状態で、留め部54c・54dを相互に取り付けることができる。その結果、施工作業を容易化できる。
【0067】
[施工方法]
断熱構造50の施工方法の例を説明する。ヒータ10は配管100の外側に予め取り付けられていてよい。
【0068】
第1断熱シート51Aと第2断熱シート51Bとでヒータ10の外側を覆う。このとき、第1及び第2断熱シート51A・51Bとヒータ10との間に空気層Bを確保する。第1及び第2断熱シート51A・51Bの両端部51e・51fがジョイント保温部21の外側を覆うように、第1及び第2断熱シート51A・51Bを配置する。そして、第1断熱シート51Aの取付縁部51a(又は51b)に取り付けられている留め部54a(又は留め部54b)と、第2断熱シート51Bの取付縁部51b(又は51a)に取り付けられている留め部54b(又は留め部54a)とを相互に取り付ける。これによって、第1及び第2断熱シート51A・51Bとヒータ10との間に空気層Bが確保された状態で、第1及び第2断熱シート51A・51Bの位置がヒータ10に対して固定される。
【0069】
取付縁部51a・51b(留め部54a・54b)を、第1及び第2断熱シート51A・51Bの筒状部分から配管100の径方向の外側に向かって突出させる。留め部54a・54bを、配管100の周方向において互いに向き合わせて、相互に取り付ける。このとき、図1Aで示したリード線15や、図2で示した分岐配管100bを、留め部54a・54bの間に配置する。
【0070】
なお、配管100を取り囲む断熱シートの枚数は、1枚でもよいし、3枚以上でもよい。断熱シートの枚数が1枚である場合、この1枚の断熱シートで配管100の全周を覆い、断熱シートの両端にある留め部54aと留め部54bとを取り付ける。断熱シートの枚数が例えば3枚である場合、この3枚の断熱シートで配管100の全周を覆う。そして、断熱シートの縁部51aにある留め部54aと、隣の断熱シートの縁部51bにある留め部54bとを相互に取り付ける。
【0071】
第1及び第2断熱シート51A・51Bを取り付けた後、第3及び第4断熱シート51C・51Dとでヒータ10の外側を覆う。このとき、第3及び第4断熱シート51C・51Dの両端部51e・51fがジョイント保温部21の外側を覆うように、第3及び第4断熱シート51C・51Dを配置する。また、第3及び第4断熱シート51C・51Dの縁部51f(図5B参照)を、第1及び第2断熱シート51A・51Bの縁部51e(図5B参照)に接続する。すなわち、第1及び第2断熱シート51A・51Bの縁部51eの外側に、第3及び第4断熱シート51C・51Dの縁部51fを配置する。そして、縁部51eの留め部54cと縁部51fの留め部54dとを取り付ける。このとき、縁部51e・51fは、それらの内側にあるジョイント部101a・102aによって支持される。このような施工手順を配管100に沿って順番に行う。
【0072】
[まとめ]
以上説明したように、断熱構造50は、配管100に取り付けられているヒータ10の外側を覆い且つヒータ10との間に空気層Bを形成する第1及び第2断熱シート51A・51Bを有している。第1及び第2断熱シート51A・51Bは、配管100の周方向において互いに反対側に位置している取付縁部51a・51bを有している。取付縁部51a・51bに留め部54a・54bがそれぞれ設けられている。第1断熱シート51Aの留め部54a(又は54b)と、第2断熱シート51Bの留め部54b(又は54a)は、ドライバーやスパナなどのツールを用いることなく、脱着可能な部分である。第1断熱シート51Aの留め部54a(又は54b)と、第2断熱シート51Bの留め部54b(又は54a)が互いに取り付けられ、第1及び第2断熱シート51A・51Bはヒータ10及び配管100を覆う。
【0073】
この構造によると、既設のヒータ10を維持したまま、ヒータ10の消費電力を低減できる。空気層Bを利用するので、断熱シート51A・51Bの厚さを低減しつつ、十分な断熱性能を確保できる。また、2つの留め部54a・54bが脱着可能であるので、施工作業を容易化できる。
【0074】
第1及び第2断熱シート51A・51Bの内側に配管100のジョイント部101a・102aが位置している。この構造によれば、空気層Bを容易に確保できる。
【0075】
断熱シート51Aは、配管100の周方向において互いに反対側に位置している取付縁部51a・51bを有している。取付縁部51a・51bに、相互に脱着可能な留め部54a・54bが設けられている。この断熱シート51Aによると、同じ構造の断熱シート(すなわち、第2断熱シート51B、第3断熱シート51C、第4断熱シート51D)を複数利用することで、配管100を覆うことができる。また、留め部54a・54bが脱着可能であるので、施工作業を容易化できる。
【0076】
[変形例]
なお、本開示で提案する断熱構造等は、以上説明した例に限られない。
【0077】
例えば、図5Aで示す例とは異なり、断熱構造50は、ジョイント保温部21を有していなくてもよい。この場合、断熱シート51A~51Dは、配管100のジョイント部101a・102aの外周面に接していてよい。
【0078】
また、断熱シート51A~51Dの支持には、ジョイント部101a・102aが利用されなくてもよい。この場合、ヒータ10の外側に、断熱シート51A~51Dを支持するための専用の部材が取り付けられていてよい。例えばヒータ10の外側に環状の支持部材が取り付けられていてよい。そして、断熱シート51A~51Dはこの支持部材の外側に取り付けられてもよい。
【0079】
断熱シートの内面だけでなく、外周面にも、金属層が形成されてもよい。図6は、このような断熱シートで構成される断熱構造150の例を示す図である。以下では、断熱構造150と、断熱構造50との相違点を中心にして説明する。断熱構造150について説明の無い事項は、断熱構造50の例と同じであってよい。
【0080】
断熱構造150は、断熱シート151A・151Bを有している。断熱シート151A・151Bは、上述したシート基材52及び金属層53に加えて、金属層55を含んでいる。金属層55は、シート基材52の外周面に設けられている。金属層55は、例えば、金属のフィルム(シート)である。この場合、金属層55は、例えば、シート基材52に糸で縫い付けられたり、接着剤で貼り付けられていてよい。これとは異なり、金属層55は、金属が蒸着によって形成された樹脂シートであってもよい。この場合、この樹脂シートがシート基材52に縫い付けられたり、接着剤で貼り付けられていてよい。
【0081】
また、上述した断熱構造50においては、断熱シート51A・51Bの内側を、配管100のジョイント部101a・102aで支持し、これによって空気層Bを確保していた。これとは異なり、断熱シートに空気層を確保するための構造が形成されていてもよい。例えば、図7で示すように、断熱シート251には凸部251aが形成されてもよい。このような凸部251aは、エンボス加工によって形成されてよい。また、図8で示すように、断熱シート351はハニカム構造を有してよい。すなわち、断熱シート351は、外側シート部351bと、内側シート部351cと、それらの間に形成されるスペース部351aとを有してよい。
【0082】
図1等で示す例では、断熱シート51A・51Bは、その取付縁部51a・51bに、留め部54a・54bを有していた。しかしながら、留め部54a・54bの位置は、取付縁部51a・51bではなくてもよい。例えば、配管100の周方向における断熱シートの一方の端部に設けられた第1の留め部が、配管100の同周方向における断熱シートの途中の部分に設けられている第2の留め部に取り付けられてもよい。この場合、第1の留め部と第2の留め部は面ファスナーなどで構成され、相互に脱着可能であってもよい。この場合でも、断熱シートの施工作業を容易化できる。また、径が異なる配管やヒータについても、1種類の断熱シートを利用できる。
【0083】
また、図5Aで示すように、配管100の長さ方向における断熱シート51A・51Bの端部は、部分配管101・102のジョイント部101a・102aに達しており、ジョイント部101a・102aの外側を覆っていた。これとは異なり、断熱シートは、各部分配管101・102の両端部に設けられているジョイント部の間に配置されてもよい。図9はこのような断熱シートの例を示す概略図である。
【0084】
図9において、配管100は、第1部分配管101はその両端部にジョイント部101aを有し、第2部分配管102はその両端部102aを有している。断熱シート51Eは第1部分配管101の両端部のジョイント部101aの間に配置されている。すなわち、配管100の長さ方向における断熱シート51Eの縁部51gが、両端部のジョイント部101aの間に位置している。同様に、断熱シート51Fは第2部分配管102の両端部のジョイント部102aの間に配置されている。
【0085】
縁部51gでの断熱シート51E・51Fの径はヒータ10の外径に対応している。一方、断熱シート51E・51Fにおいて縁部51gの間の部分51hは、ヒータ10よりも大きな径を有している。従って、部分51hは、ヒータ10の外周面との間に空気層Bを形成している。部分51hとヒータ10の外周面との間には、空気層Bを確保するためのスペーサが配置されてよい。
【0086】
縁部51gは、例えば、断熱シート51Eの外側に巻かれたバンドや紐によってヒータ10に固定されてよい。これとは異なり、縁部51gの内周面に留め部(例えば、面ファスナー)が設けられ、ヒータ10の外周面にも留め部(例えば、面ファスナー)が設けられてよい。そして、縁部51gは、その留め部によってヒータ10に取り付けられてもよい。さらに他の例として、縁部51gでの断熱シート51Eの径がヒータ10の外径に対応しているために縁部51gがヒータ10の外周面に接し、このことによって断熱シート51E・51Fの位置がヒータ10に対して固定されていてもよい。
【0087】
断熱シート51E・51Fのそれぞれは1枚の断熱シートでなくてもよい。すなわち、図1A等で示したように、各断熱シート51E・51Fは、配管100の周方向で接続される複数の断熱シートで構成されてもよい。
【0088】
図1等で示す例では、断熱シート51A・51Bの取付縁部51a・51bに取り付けられている面ファスナーが、留め部54a・54bとして利用されていた。これとは異なり、留め部は、種熱シートの外側に巻き付けられるバンドや紐であってもよい。図10は、このような形態の例を示す斜視図である。この図で示す例では、1枚の断熱シート51Gが配管100の全周を覆っている。断熱シート51Gの一方の縁部51jは、断熱シート51Gの他方の縁部51kに重なっている。留め部54Aは、断熱シート51Gの外側に巻かれて、この断熱シート51Gの位置をヒータ10に対して固定するバンドである。
【0089】
なお、配管100は、周方向で並んでいる複数の断熱シートで覆われてもよい。留め部54Aはこの複数の断熱シートの外側に巻かれて、それらの位置を固定してもよい。
【符号の説明】
【0090】
1:配管加熱システム、10:ヒータ、11:外皮材、12:内皮材、13:断熱材、14:クロス、14a:発熱線、15:リード線、21:ジョイント保温部、21a・21b:側部、21c:環状部、30:金属層、50:断熱構造、51A・51B・51C・51D・51E・51F:断熱シート、51a・51b:取付縁部、51c:表面、51e・51f:縁部、52:シート基材、52a:折り返し縁部、53:金属層、53a:縁部、54a・54b・54c・54d:留め部、55:金属層、100:配管、100b:分岐配管、101・102:部分配管、101a・102a:ジョイント部、150:断熱構造、151A:断熱シート、251:断熱シート、251a:凸部、351:断熱シート、351a:スペース部、351b:外側シート部、351c:内側シート部。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10