(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090204
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】乳房撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20240627BHJP
A61B 6/06 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A61B6/00 330Z
A61B6/06 330
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205935
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 崇史
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA10
4C093AA11
4C093CA07
4C093DA06
4C093EB12
4C093EB13
4C093EB17
4C093EB20
4C093EB26
(57)【要約】
【課題】グリッドの変更作業を容易にすることが可能な乳房撮影装置を提供する。
【解決手段】被検者の乳房が載置され、乳房を透過した放射線が入射する撮影面を有し、撮影面を透過した放射線を検出する検出器が収容される撮影台を備え、撮影台は、放射線が乳房を透過することによって生じる散乱線を除去する散乱線除去グリッドを、内部に着脱自在に装着可能であり、撮影台において、被検者の胸壁が位置する胸壁側と胸壁の反対側とを結ぶ方向を前後方向とし、前後方向と直交する方向を左右方向とした場合において、撮影台には、散乱線除去グリッドの着脱用の開口が、撮影台の左側面及び右側面の少なくともいずれかに設けられている乳房撮影装置。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の乳房が載置され、前記乳房を透過した放射線が入射する撮影面を有し、前記撮影面を透過した前記放射線を検出する検出器が収容される撮影台を備え、
前記撮影台は、前記放射線が前記乳房を透過することによって生じる散乱線を除去する散乱線除去グリッドを、内部に着脱自在に装着可能であり、
前記撮影台において、前記被検者の胸壁が位置する胸壁側と前記胸壁の反対側とを結ぶ方向を前後方向とし、前記前後方向と直交する方向を左右方向とした場合において、前記撮影台には、前記散乱線除去グリッドの着脱用の開口が、前記撮影台の左側面及び右側面の少なくともいずれかに設けられている
乳房撮影装置。
【請求項2】
前記開口が、前記撮影台の前記左側面及び前記右側面の両方に設けられている
請求項1に記載の乳房撮影装置。
【請求項3】
前記散乱線除去グリッドは、前記放射線を透過する複数の透過部と前記放射線を吸収する複数の吸収部とが交互に配列され、前記透過部と前記吸収部との境界線が一方向に延びるグリッドであり、
前記境界線が延びる方向が前記左右方向に平行な姿勢で前記散乱線除去グリッドを前記撮影台の内部に配置することが可能である
請求項1に記載の乳房撮影装置。
【請求項4】
前記撮影台の内部には、前記散乱線除去グリッドを前記検出器の検出面と対面する対面位置に固定する第1固定機構が設けられている
請求項1に記載の乳房撮影装置。
【請求項5】
前記第1固定機構は、前記散乱線除去グリッドに設けられた凹部と係合可能な突起を含む
請求項4に記載の乳房撮影装置。
【請求項6】
前記撮影台の内部には、前記検出器を支持する支持部材であって、前記検出面の周囲の少なくとも一部に配置された支持部材が設けられ、
前記突起は、前記支持部材において、前記検出面の法線方向に沿って突出する態様で設けられている
請求項5に記載の乳房撮影装置。
【請求項7】
前記支持部材は、前記検出器の前記胸壁側には設けられていない
請求項6に記載の乳房撮影装置。
【請求項8】
前記撮影台の内部には、前記開口から挿入された前記散乱線除去グリッドと係合することにより前記散乱線除去グリッドを前記検出器の検出面と対面する対面位置に案内するガイド部が設けられている
請求項1に記載の乳房撮影装置。
【請求項9】
前記ガイド部は、前記左右方向から前記散乱線除去グリッドを受け入れ可能なガイドレールであり、
前記ガイドレールは、前記前後方向及び前記左右方向において前記放射線の検出範囲外に設けられている
請求項8に記載の乳房撮影装置。
【請求項10】
前記検出器の検出面と対面する対面位置に前記散乱線除去グリッドを固定する第2固定機構であって、撮影台の外部に設けられた第2固定機構を有している
請求項1に記載の乳房撮影装置。
【請求項11】
前記散乱線除去グリッドには、把持部材が設けられている
請求項1に記載の乳房撮影装置。
【請求項12】
前記散乱線除去グリッドを外部グリッドとした場合において、前記撮影台には、前記外部グリッドとは別の散乱線除去グリッドとして、前記撮影台内に内蔵される内蔵グリッドが設けられており、
前記内蔵グリッドは、前記撮影台内において、前記検出器の検出面と対面する対面位置と、前記対面位置から退避する退避位置との間で移動可能であり、
前記外部グリッドは、前記内蔵グリッドが退避位置に移動した状態で、前記撮影台内に挿入される
請求項1に記載の乳房撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乳房撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、グリッドを構成する放射線透過体及び放射線不透過体を、乳房の胸壁に対して略平行となるように延在して配設し、放射線源から出力された放射線をグリッドを介して固体検出器に照射することで、乳房の放射線画像を撮像する乳房撮影装置が記載されている。
【0003】
特許文献2には、複数の隔壁を有する散乱防止グリッドは、複数の隔壁の各隔壁が、X線撮像デバイスを使用した対象の撮像の間、対象の冠状面と実質的に平行な方向に沿って延びるように、X線撮像デバイスに対して位置付けられるように構成され得るX線撮像デバイスが記載されている。X線撮像デバイスは、対象の胸部の撮像のためにトモシンセシスモードで動作可能であり、胸部プラットフォームとX線検出器との間に配置される散乱防止グリッドを含み得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-237631号公報
【特許文献2】特表2016-515877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乳房撮影装置では、通常の撮影の他、バイオプシのためのステレオ撮影、又はトモシンセシス撮影といった複数の撮影モードで乳房の撮影が行われる場合がある。しかしながら、撮影台に標準で内蔵されている散乱線除去グリッドは、様々な撮影モードに適したものではなく、撮影モードに応じて散乱除去グリッドを変更することが求められていた。
【0006】
本開示の技術は、グリッドの変更作業を容易にすることを実現可能な乳房撮影装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の技術に係る第1の態様は、被検者の乳房が載置され、乳房を透過した放射線が入射する撮影面を有し、撮影面を透過した放射線を検出する検出器が収容される撮影台を備え、撮影台は、放射線が乳房を透過することによって生じる散乱線を除去する散乱線除去グリッドを、内部に着脱自在に装着可能であり、撮影台において、被検者の胸壁が位置する胸壁側と胸壁の反対側とを結ぶ方向を前後方向とし、前後方向と直交する方向を左右方向とした場合において、撮影台には、散乱線除去グリッドの着脱用の開口が、撮影台の左側面及び右側面の少なくともいずれかに設けられている乳房撮影装置である。
【0008】
本開示の技術に係る第2の態様は、開口が、撮影台の左側面及び右側面の両方に設けられている第1の態様に係る乳房撮影装置である。
【0009】
本開示の技術に係る第3の態様は、散乱線除去グリッドは、放射線を透過する複数の透過部と放射線を吸収する複数の吸収部とが交互に配列され、透過部と吸収部との境界線が一方向に延びるグリッドであり、境界線が延びる方向が左右方向に平行な姿勢で散乱線除去グリッドを撮影台の内部に配置することが可能である第1の態様に係る乳房撮影装置である。
【0010】
本開示の技術に係る第4の態様は、撮影台の内部には、散乱線除去グリッドを検出器の検出面と対面する対面位置に固定する第1固定機構が設けられている第1の態様に係る乳房撮影装置である。
【0011】
本開示の技術に係る第5の態様は、第1固定機構は、散乱線除去グリッドに設けられた凹部と係合可能な突起を含む第4の態様に係る乳房撮影装置である。
【0012】
本開示の技術に係る第6の態様は、撮影台の内部には、検出器を支持する支持部材であって、検出面の周囲の少なくとも一部に配置された支持部材が設けられ、突起は、支持部材において、検出面の法線方向に沿って突出する態様で設けられている第5の態様に係る乳房撮影装置である。
【0013】
本開示の技術に係る第7の態様は、支持部材は、検出器の胸壁側には設けられていない第6の態様に係る乳房撮影装置である。
【0014】
本開示の技術に係る第8の態様は、撮影台の内部には、開口から挿入された散乱線除去グリッドと係合することにより散乱線除去グリッドを検出器の検出面と対面する対面位置に案内するガイド部が設けられている第1の態様に係る乳房撮影装置である。
【0015】
本開示の技術に係る第9の態様は、ガイド部は、左右方向から散乱線除去グリッドを受け入れ可能なガイドレールであり、ガイドレールは、前後方向及び左右向において放射線の検出範囲外に設けられている第8の態様に係る乳房撮影装置である。
【0016】
本開示の技術に係る第10の態様は、検出器の検出面と対面する対面位置に散乱線除去グリッドを固定する第2固定機構であって、撮影台の外部に設けられた第2固定機構を有している第1の態様に係る乳房撮影装置である。
【0017】
本開示の技術に係る第11の態様は、散乱線除去グリッドには、把持部材が設けられている第1の態様に係る乳房撮影装置である。
【0018】
本開示の技術に係る第12の態様は、散乱線除去グリッドを外部グリッドとした場合において、撮影台には、外部グリッドとは別の散乱線除去グリッドとして、撮影台内に内蔵される内蔵グリッドが設けられており、内蔵グリッドは、撮影台内において、検出器の検出面と対面する対面位置と、対面位置から退避する退避位置との間で移動可能であり、外部グリッドは、内蔵グリッドが退避位置に移動した状態で、撮影台内に挿入される第1の態様に係る乳房撮影装置である。
【発明の効果】
【0019】
本開示の技術は、グリッドの変更作業を容易にすることが可能な乳房撮影装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】乳房撮影装置の構成の一例を示す外観斜視図である。
【
図2】乳房撮影装置に保護カバー及び生検ユニットが着脱される様子の一例を示す外観斜視図である。
【
図3】乳房撮影装置の構成の一例を示す外観側面図である。
【
図4】乳房撮影装置の構成の一例を示す外観正面図である。
【
図5】挿入グリッドが撮影台に挿入される様子の一例を示す外観斜視図である。
【
図6】挿入グリッドが撮影台に挿入される様子の一例を示す外観平面図である。
【
図7】乳房撮影装置における放射線が照射される様子の一例を示す外観側面図である。
【
図8】乳房撮影装置におけるグリッドの使い分けをまとめた図である。
【
図9】乳房撮影装置においてアームが回転した状態で挿入グリッドが撮影台に挿入される様子の一例を示す外観正面図である。
【
図10】比較例として乳房撮影装置の構成の一例を示す外観側面図である。
【
図11】比較例として乳房撮影装置の構成の一例を示す外観正面図である。
【
図12】固定機構のその他の例を示す外観斜視図である。
【
図13】固定機構のその他の例を示す外観側面図である。
【
図14】案内部によって挿入グリッドが案内される様子の一例を示す外観平面図である。
【
図15】案内部によって挿入グリッドが案内される様子の一例を示す外観側面図である。
【
図16】固定機構のその他の例を示す外観平面図である。
【
図17】固定機構のその他の例を示す外観側面図である。
【
図18】挿入グリッドのその他の例を示す外観平面図である。
【
図19】挿入グリッドのその他の例を示す外観平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本開示の実施形態を詳細に説明する。
【0022】
なお、以下の説明では、説明の便宜上、乳房撮影装置10の高さ方向、幅方向及び前後方向(奥行方向ともいう)をX、Y及びZの3つの矢印で示す。まず、高さ方向を矢印Zで示し、矢印Zが指し示す矢印Z方向を乳房撮影装置10の上方向とし、その逆方向を下方向とする。高さ方向は鉛直方向である。幅方向を、矢印Zと直交する矢印Xで示し、矢印Xが指し示す方向を乳房撮影装置10の右方向とし、その逆方向を左方向とする。前後方向を、矢印Z及び矢印Xと直交する方向を矢印Yで示し、矢印Yが指し示す方向を乳房撮影装置10の前方向とし、その逆を後方向とする。すなわち、乳房撮影装置10においてスタンド20側が後方向であり、その反対側の被検者Aが立つ側(
図2参照)が前方向である。また、以下において、上側、下側、左側、右側、前側、及び後側といった側を用いた表現も方向を用いた表現と意味は同じである。
【0023】
また、本実施形態において、「鉛直方向」とは、完全な鉛直方向の他に、本開示の技術が属する技術分野で一般的に許容される誤差であって、本開示の技術の趣旨に反しない程度の誤差を含めた意味合いでの鉛直方向を指す。また、「水平方向」についても同様であり、完全な水平方向の他に、本開示の技術が属する技術分野で一般的に許容される誤差であって、本開示の技術の趣旨に反しない程度の誤差を含めた意味合いでの水平方向を指す。
【0024】
また、本実施形態において、「一致」とは、完全な一致の他に、本開示の技術が属する技術分野で一般的に許容される誤差であって、本開示の技術の趣旨に反しない程度の誤差を含めた意味合いでの一致を指す。
【0025】
<第1実施形態>
図1及び
図2に示すように、第1実施形態に係る乳房撮影装置10は、被写体となる被検者Aの乳房Mに放射線を照射して、乳房Mの放射線画像を撮影する放射線撮影装置である。放射線は一例としてX線であるが、γ線でもよい。被検者Aは、乳房撮影装置10に対して前側に位置する。乳房撮影装置10は、本開示の技術に係る「乳房撮影装置」の一例である。
【0026】
乳房撮影装置10は、図示しないコンソールに接続されている。コンソールは撮影オーダに応じて乳房撮影装置10を設定する設定機能の他、乳房撮影装置10が撮影した放射線画像を取得して、取得した放射線画像を表示する機能を有する。コンソールは、LAN(Local Area Network)等のネットワーク(図示せず)を介して、画像データベースサーバ(図示せず)と通信可能に接続されている。
【0027】
乳房撮影装置10は、スタンド20とアーム21とを有する。スタンド20は、放射線撮影室の床面に設置される台座20Aと、台座20Aから高さ方向に延びる支柱20Bとで構成される。アーム21は、左側から見た形状が略C字状であり、支柱20Bに回転軸を介して連結されている。アーム21は、支柱20Bに対して高さ方向に移動可能であることにより、被検者Aの身長に応じた高さ調節が可能である。また、アーム21は、支柱20Bに垂直な回転軸回りに回転可能である。
【0028】
アーム21は、線源収容部22、本体部23、及び撮影台24で構成される。線源収容部22には放射線源25が収容されている。線源収容部22は、例えば、前後方向に長手方向を有する筐体構造を有している。撮影台24には、被検者Aの乳房Mが載置される。撮影台24には放射線検出器26が収容されている。本体部23は、線源収容部22と撮影台24とを一体的に接続する。本体部23は、線源収容部22と撮影台24とを対向する位置に保持する。本体部23の両側には、被検者Aが把持するための手すり27が設けられている。
【0029】
撮影台24には、被検者Aの乳房Mが載置される。撮影台24は、乳房Mを透過した放射線が入射する撮影面24Aを備える。撮影台24には放射線検出器26が収容されている。撮影台24は、本開示の技術に係る「撮影台」の一例である。
【0030】
放射線源25は、撮影台24に載置された乳房Mに向けて放射線を照射する。放射線源25から出射された放射線は、圧迫板30を透過した後、乳房Mに入射する。放射線検出器26は、乳房Mを透過した放射線を検出して放射線画像を出力する。放射線検出器26は、FPD(Flat Panel Detector)と呼ばれる。放射線検出器26は、放射線を可視光に変換するシンチレータを有し、シンチレータが発する可視光を電気信号に変換する間接変換型でもよいし、放射線を直接電気信号に変換する直接変換型でもよい。放射線検出器26は、本開示の技術に係る「検出器」の一例である。
【0031】
放射線源25と撮影台24との間には、照射野限定器31が設けられている。照射野限定器31はコリメータとも呼ばれ、撮影台24への放射線の照射野を規定する。
【0032】
線源収容部22には、フェイスガード32が取り付けられている。フェイスガード32は、放射線が透過しない材料で形成、又はコーティングされており、被検者Aの顔を放射線から防護する。
【0033】
撮影台24と照射野限定器31との間には、乳房Mを撮影台24との間に挟んで圧迫する圧迫板30が設けられている。圧迫板30は、放射線が透過する材料で形成されている。圧迫板30は、撮影台24と対向する位置に配置されている。本実施形態では、圧迫板30を、上面側が開口された箱形状としている。
【0034】
移動機構35は、放射線源25と撮影台24との間で移動可能に圧迫板30を支持している。また、可動部34は、圧迫板30と移動機構35との間に配置されている。可動部34は、移動機構35に設けられたレール28に摺動自在に保持されている。レール28は、上下方向に延伸している。
【0035】
移動機構35は、例えば、モータ(図示せず)、モータドライバ(図示せず)及び、送りねじ機構(図示せず)を含んでいる。モータは、モータドライバが出力する電気的な駆動信号に応じて回転し、送りねじ機構を介して、圧迫板30を移動させる。
【0036】
圧迫板30は、一対の支持アーム33を介して可動部34に取り付けられている。可動部34は、移動機構35によって、圧迫板30と一緒に上下方向に移動する。上下方向は、機能的には、圧迫板30が撮影台24に向かう方向(すなわち、下方向)と、及び圧迫板30が撮影台24から離れる方向(すなわち、上方向)である。このように、圧迫板30は、撮影台24との間隔を変化させる態様で移動可能に構成されている。
【0037】
乳房撮影装置10には、生検ユニット39が取り付けられている。生検ユニット39は、生体組織採取検査を行うために、乳房M内の組織を採取するユニットである。生検ユニット39は、本体部40、調整部41、針保持部42、及び穿刺針43を備えている。調整部41は、本体部40に対して移動可能であり、これにより、穿刺針43の乳房Mに対する挿入位置、挿入角度および挿入量が調整される。針保持部42は、穿刺針43を保持する。穿刺針43は、例えば外針と内針の二重構造となっている。このような穿刺針43による組織採取の手順は一例として次のとおりである。穿刺針43が乳房Mに挿入し、穿刺針43の先端部分が採取対象の組織の位置に到達した状態で、内針を外針から突出させ、内針に形成された組織採取領域に組織を採取する。内針に組織を採取後、内針を外針内に収容し、穿刺針43を乳房Mから引き抜く。これにより、乳房M内の採取対象の組織が採取される。また、圧迫板30には、底面に開口が設けられており、穿刺針43は、開口を介して乳房Mに挿入される。
【0038】
生検ユニット39を用いて生検が行われる場合、撮影台24上には保護カバー37が載置される。保護カバー37は、穿刺針43から撮影面24Aを保護する。すなわち、保護カバー37によって、穿刺針43による撮影面24Aへの接触が抑制される。保護カバー37は、平板状の保護部材37A及び保護部材37Aの前端から屈曲した前壁37Bを備える。保護部材37Aの上に乳房Mが載置される。保護部材37Aは、放射線を透過可能な材料(例えば、アクリル樹脂等)からなる。保護部材37Aの大きさは、乳房Mを支持できる範囲の大きさを有しており、保護部材37Aの板厚は、乳房Mを支持可能な強度を有している。
【0039】
図2に示すように、生検ユニット39及び保護カバー37は、生検が行われる場合に、乳房撮影装置10に取り付けられる。換言すれば、生検ユニット39及び保護カバー37は、乳房撮影装置10に着脱可能とされている。保護カバー37は、乳房撮影装置10の撮影台24に対して、例えば、マグネットを用いた磁気的吸着を利用することで取り付けられる。具体的には、保護カバー37にマグネットが取り付けられ、撮影台24に設けられた着磁板にマグネットが磁気的に吸着することで、保護カバー37が撮影台24に取り付けられる。なお、これはあくまでも一例にすぎず、例えば、粘着シートを介して保護カバー37が撮影台24に取り付けられてもよいし、保護カバー37の一部が撮影台24に設けられたくぼみに嵌ることで、保護カバー37が撮影台24に取り付けられてもよい。
【0040】
生検ユニット39は、保護カバー37が撮影台24に取り付けられた後、撮影台24に載置される。具体的には、生検ユニット39の本体部40が、保護カバー37の後端部37Cの上方に載置される。なお、生検ユニット39は、保護カバー37が撮影台24に取り付けられている場合のみ作動するように制御されてもよい。
【0041】
また、圧迫板30についても生検ユニット39用の圧迫板であり、生検が行われない場合の乳房撮影用の圧迫板(図示省略)と交換することで、乳房撮影装置10に取り付けられる。
【0042】
図3に示すように、例えば、生検が行われる場合、圧迫板30によって乳房Mが圧迫された状態で、穿刺針43が乳房M内に挿入される。この場合、乳房Mの採取対象となる組織(例えば、病変組織)の位置を正確に特定することが求められる。このため、後述するように、生検を行う場合には、乳房Mにおける採取対象となる組織の位置を3次元的に特定するために、撮影台24に対する照射角度が異なる左右の2方向から放射線Rを乳房に向けて照射するステレオ撮影が行われる場合がある。
【0043】
ここで、撮影台24の内部には、内蔵グリッド45のように、散乱線除去グリッドが内蔵されている場合がある。散乱線除去グリッドは、周知のように、放射線Rが乳房Mを透過することによって生じた散乱線を除去する。内蔵グリッド45は、撮影台24の内部において、放射線検出器26よりも放射線源25側に配置されている。内蔵グリッド45は、平板状の部材であり、放射線Rを透過する吸収部46及び放射線Rを吸収する透過部47を備えている。吸収部46及び透過部47は、交互に配列され、吸収部46及び透過部47の境界線48は、前後方向(すなわち、撮影面24Aにおいて被検者Aの胸壁側と反胸壁側を結ぶ方向)に延びる状態に、撮影台24の内部に配置されている。換言すれば、吸収部46及び透過部47は、左右方向に交互に配列されている。
【0044】
吸収部46の材料としては、例えば鉛の薄膜等が挙げられる。また、透過部47の材料としては、例えば、アルミニウム、紙、及び炭素繊維等が挙げられる。
【0045】
ステレオ撮影が行われる場合、乳房撮影装置10では、内蔵グリッド45が、撮影台24の内部において反胸壁側(すなわち、本体部23側)へ移動した状態で撮影が行われる。内蔵グリッド45は、管球25Aの移動方向と直交する方向に吸収部46及び透過部47の境界線48が延びている。そのため、内蔵グリッド45を用いて、管球25Aを移動させて撮影すると、放射線Rの線束の中心軸と境界線48とが直交することになるため、放射線のケラレが多くなるためである。
【0046】
そこで、ステレオ撮影においては、内蔵グリッド45に代えて、撮影台24に外部から挿入される散乱線除去グリッドである挿入グリッド44が用いられる。挿入グリッド44は、撮影台24の外部から挿入される散乱線除去グリッドの意味であり、ここでは、撮影台24に内蔵された内蔵グリッド45と区別するために用いる。挿入グリッド44は、内蔵グリッド45と同じく吸収部46及び透過部47を備えている。挿入グリッド44において、吸収部46及び透過部47は、交互に配列され、吸収部46及び透過部47の境界線48は、左右方向に延びている。換言すれば、吸収部46及び透過部47は、前後方向に交互に配列されている。これにより、挿入グリッド44において、放射線Rの線束の中心軸と境界線48の延びる方向とがほぼ一致するので、ステレオ撮影において、放射線のケラレの発生が抑制される。吸収部46は、本開示の技術に係る「吸収部」の一例であり、透過部47は、本開示の技術に係る「透過部」の一例である。境界線48は、本開示の技術に係る「境界線」の一例である。挿入グリッド44は、本開示の技術に係る「散乱線除去グリッド」及び「外部グリッド」の一例である。内蔵グリッド45は、本開示の技術に係る「内蔵グリッド」の一例である。
【0047】
内蔵グリッド45は、撮影台24内において、放射線検出器26の検出面26Aと対面する対面位置と、対面位置から退避する退避位置との間で移動可能とされている。
図3に示す例では、内蔵グリッド45が、撮影台24の内部において、放射線検出器26よりも後方の位置である退避位置に移動している。そして、挿入グリッド44が、対面位置に配置されている。検出面26Aは、本開示の技術に係る「検出面」の一例である。
【0048】
図4に示すように、乳房撮影装置10は、造影撮影を行う機能を有している。造影撮影に用いられる造影剤としては、k吸収端が33keVのヨードを用いた造影剤(以下、単に「造影剤」という)が一般的に用いられる。乳房撮影装置10は、造影剤が投与された乳房Mを被写体として、造影剤のk吸収端よりも低い第1のエネルギーの放射線Rを照射させて放射線検出器26により低エネルギー画像を撮影し、また造影剤のk吸収端よりも高い第2のエネルギーの放射線Rを照射させて放射線検出器26により高エネルギー画像を撮影する。具体的な第1のエネルギー及び第2のエネルギーは、造影剤のk吸収端に加え、さらに乳房撮影装置10の仕様、所望とする放射線画像の画質、及び被検者の被曝の観点等から定められ、一般的に、22keV~49keVであることが好ましい。
【0049】
造影剤と乳腺等の組織では、放射線Rの吸収特性が異なっている。そのため、上記のようにして撮影された高エネルギー画像には、乳腺や脂肪等の体組織が写っている他、造影剤が明瞭に写っている。また、低エネルギー画像には、造影剤がほとんど写っておらず、乳腺等の体組織が明瞭に写っている。従って、低エネルギー画像と高エネルギー画像との差分を示す差分画像は、乳腺構造が除去され造影剤が明瞭に写った画像とすることができる。このような撮影を造影エネルギーサブトラクション撮影と称する。
【0050】
さらに、上記したように、生検に際しては、乳房M内の生検対象となる組織の位置を3次元的に把握するために、ステレオ撮影が行われることがある。ステレオ撮影では、放射線Rの照射位置を左右方向において変化させることにより、放射線Rの照射角度を変えて複数回の撮影が行われる。ステレオ撮影における左右方向のそれぞれの照射角度において、異なるエネルギーの放射線Rによる撮影(すなわち、造影エネルギーサブトラクション撮影)が行われる。これにより、画像内において生検対象となる組織が明瞭になり、さらに3次元的な位置が把握しやすくなる。
【0051】
乳房Mが圧迫板30と保護カバー37との間で圧迫された状態でステレオ撮影が行われる。撮影台24の撮影面24Aと放射線検出器26との間には、挿入グリッド44が設けられている。挿入グリッド44によって散乱線が除去された放射線Rが放射線検出器26に入射する。左右方向のそれぞれの照射角度において高エネルギー画像及び低エネルギー画像が得られる。そして、ステレオ撮影によって、乳房M内の生検対象となる組織の3次元的な位置が把握された後、穿刺針43が乳房Mに挿入されて、生検対象となる組織が採取される。
【0052】
図5に示すように、挿入グリッド44は、撮影台24の左右方向のいずれかから挿入される。撮影台24の左側面24Bには、開口36Aが形成されている。また、撮影台24の右側面24Cには、開口36Bが形成されている。開口36A及び開口36Bは、撮影台24の内部に形成された空間Kに通じており、挿入グリッド44は、開口36A又は開口36Bを介して空間Kに挿入される。空間Kは、内蔵グリッド45が、撮影台24の内部において、後方へ移動することによって形成される。なお、開口36A及び36Bは、常に開いている態様でなくてもよく、例えば、図示しないカバーが必要に応じて開閉される態様であってもよい。開口36A及び36Bは、本開示の技術に係る「開口」の一例である。左側面24Bは、本開示の技術に係る「左側面」の一例であり、右側面24Cは、本開示の技術に係る「右側面」の一例である。
【0053】
ここで、乳房撮影装置10の前側には被検者Aが位置している。被検者Aの右の乳房Mに対して撮影が行われる場合、被検者Aは、乳房撮影装置10に正対した位置から乳房撮影装置10の左側を向くように位置する。この場合、ユーザは、乳房撮影装置10の左側から挿入グリッド44を挿入する。一方、被検者Aの左の乳房Mに対して撮影が行われる場合、被検者Aは、正対した位置から乳房撮影装置10の右側を向くように位置する。この場合、ユーザは、乳房撮影装置10の右側から挿入グリッド44を挿入する。このように、撮影台24の左右方向の両側から挿入グリッド44が挿入可能とされているので、被検者Aの姿勢に合わせて挿入グリッド44の挿入方向を変えることができる。
【0054】
挿入グリッド44は、グリッド本体44Aと、把持部44B及び44Cと、凹部44Dとを備えている。グリッド本体44Aには、上述した吸収部46及び透過部47が形成されている。把持部44B及び44Cは、挿入グリッド44が撮影台24の内部に挿入される場合にユーザによって把持される部位である。把持部44B及び44Cは、本開示の技術に係る「把持部材」の一例である。
図5に示す例では、把持部44B及び44Cは、挿入グリッド44が撮影台24に挿入される左右方向において、グリッド本体44Aの両端部に取り付けられている。凹部44Dは、後述する固定機構としての突起と係合する凹みであり、グリッド本体44Aと把持部44B及び44Cとの間に設けられている。
図5に示す例では、凹部44Dが4つ設けられている例が示されている。
【0055】
図6に示すように、撮影台24の内部に挿入グリッド44が挿入される場合、先ず、内蔵グリッド45が撮影台24の内部において、後方へ移動する。これにより、撮影台24の内部に空間Kが形成される。そして、挿入グリッド44が左右方向から撮影台24の内部へ挿入される。
図6に示す例では、撮影台24の右側から挿入グリッド44が挿入される例が示されている。撮影台24の内部には、挿入グリッド44を撮影台24の内部において、予め定められた位置(例えば、挿入グリッド44を放射線検出器26の検出面と対面する位置)に固定するための固定機構50が設けられている。固定機構50は、本開示の技術に係る「第1固定機構」の一例である。
【0056】
固定機構50は、4つの突起51を備えている。4つの突起51は、挿入グリッド44の凹部44Dに対応する位置に設けられ、凹部44Dと係合することで挿入グリッド44を撮影台24の内部に固定する。これにより、挿入グリッド44は、撮影台24の内部において、放射線検出器26の検出面26A(
図3参照)と対面する位置に位置決めされる。突起51は、本開示の技術に係る「突起」の一例であり、凹部44Dは、本開示の技術に係る「凹部」の一例である。
【0057】
なお、ここでは、4つの凹部44Dと対応する4つの突起51が係合する例を挙げているが、これはあくまでも一例過ぎない。凹部44D及び突起51の数は、挿入グリッド44を固定する際の位置決め精度、及び挿入グリッド44の挿入及び引き出し作業において、ユーザに求められる力等に応じて適宜設定され得る。また、凹部44D及び突起51の配置、及び形状についても同様に、挿入グリッド44を固定する際の位置決め精度、及び挿入グリッド44の挿入及び引き出し作業において、ユーザに求められる力等に応じて適宜設定され得る。
【0058】
保護カバー37の保護部材37Aにおいて、後端部37Cには、円弧状の切り欠き37C1が設けられている。また、生検ユニット39の本体部40には、一対の土台40Aが設けられている。土台40Aは、円柱状を有しており、切り欠き37C1は、土台40Aの外周に応じた形状となっている。保護カバー37が撮影台24に載置された後、生検ユニット39が上方から撮影台24上に載置される。この場合、土台40Aが切り欠き37C1に対応する位置に置かれる。この結果、保護カバー37が前後方向又は左右方向に移動しても、切り欠き37C1が土台40Aに接触するので、保護カバー37の位置が大きくずれることが抑制される。なお、土台40Aの外周と切り欠き37C1の内周との間には、間隙が設けられており、保護カバー37が多少移動することが許容されている。これにより、保護カバー37の移動に伴って、生検ユニット39が移動することが抑制されるので、生検ユニット39に設けられた穿刺針43の位置がずれることが抑制される。
【0059】
図7に示すように、対面位置において挿入グリッド44は、撮影台24上における最も胸壁側(すなわち、前側)の位置とされている。例えば、挿入グリッド44の前端面44A1と撮影台24の前端面24Dとが一致する位置に、挿入グリッド44が配置されている。管球25Aの焦点位置は、撮影台24の前端面24Dの上方に配置されている。これにより、撮影台24に載置された乳房Mに対して胸壁側まで撮影することができる。そして、挿入グリッド44が撮影台24の最も胸壁側まで位置していることで、撮影対象となる乳房Mの胸壁側まで散乱線の除去を行うことができる。
【0060】
また、挿入グリッド44は、いわゆる集束グリッドである。すなわち、挿入グリッド44において、吸収部46と透過部47の複数の境界面は平行ではなく、複数の境界面をそれぞれ延長した面は、管球25Aの焦点位置Fを通り、境界面と平行な1本の直線に集束する態様で、傾斜している。本例においては、管球25Aの焦点位置Fは、挿入グリッド44の前端面44A1側に配置されるため、前端面44A1から後方へ行くに従って、複数の境界面の傾斜角度が徐々に大きくなっている。挿入グリッド44を、このような集束グリッドとすることで、複数の境界面が平行な平行グリッドと比較して、放射線Rのケラレがより抑制される。
【0061】
図8に本実施形態に係る乳房撮影装置10における撮影モードと使用されるグリッドについて整理した。
図8に示すように、放射線源25が撮影台24と鉛直方向において対向する位置にある場合の撮影(すなわち、通常撮影)では、内蔵グリッド45が使用される。内蔵グリッド45は、上述したように、撮影台24の内部に内蔵されている。内蔵グリッド45において、吸収部46及び透過部47の境界線48は、前後方向に延びている。
【0062】
一方で、ステレオ撮影の場合は、撮影台24の内部に挿入された挿入グリッド44が用いられる。挿入グリッド44は、撮影台24の内部に挿入されることで、撮影面24Aと放射線検出器26との間に設けられている。挿入グリッド44において、吸収部46及び透過部47の境界線48は、左右方向(本例では、管球25Aの移動方向)に延びている。このように、撮影モードに適した散乱線除去グリッドを選択することが可能となる。
【0063】
以上説明したように、本第1実施形態に係る乳房撮影装置10では、撮影台24の側面に開口36A及び36Bが設けられている。挿入グリッド44が撮影台24の左右方向の少なくともいずれかから挿入可能とされるので、被検者Aが撮影台24の前側に位置している状態でも、挿入グリッド44を撮影台24の内部に挿入できる。これにより、グリッド挿入用の開口が設けられていない場合と比較して、散乱線除去グリッドの変更作業を容易にできる。
【0064】
また、例えば、撮影台24の内部に挿入グリッド44を配置できるので、撮影台24の外部にグリッドが配置される場合と比べて、放射線検出器26の検出面26Aの近くに挿入グリッド44を配置できるため、散乱線除去効果が向上する。
【0065】
また、本第1実施形態に係る乳房撮影装置10では、撮影台24の左側面24Bに開口36Aが設けられ、右側面24Cに開口36Bが設けられている。これにより、挿入グリッド44が撮影台24の左右方向の何れの方向からも挿入可能とされるので、被検者Aの体の向きに応じて挿入する方向を変えることができる。これにより、挿入グリッド44を挿入するための開口が撮影台24の片側にしかない場合と比較して、散乱線除去グリッドの変更作業を容易にできる。
【0066】
また、例えば、
図9に示すように、アーム21をスタンド20に対して回転させた状態で撮影が行われる場合がある。この場合、アーム21のスタンド20に対する角度が、例えば、90度であると、撮影台24の左右側面のうちの一方が上側に位置し、他方が下側に位置する。この状態で、挿入グリッド44を撮影台24の内部に挿入する場合には、上側から挿入した方が、下側から挿入するよりも挿入作業が容易になる。
図9に示す例では、左右側面の内の上側となった左側面24Bから挿入グリッド44を挿入することができる。本構成では、撮影台24の左側面24Bに開口36Aが設けられ、また右側面24Cに開口36Bが設けられている。これにより、アーム21がスタンド20に対して回転した状態でも、挿入グリッド44の挿入が容易になる。
【0067】
また、本第1実施形態に係る乳房撮影装置10では、挿入グリッド44は、ステレオ撮影に適した散乱線除去グリッドである。すなわち、生検を行う場合は、乳房M内の生検対象となる組織の位置を3次元的に把握するために、ステレオ撮影が行われることがある。ステレオ撮影では、放射線Rの照射位置を左右方向において変化させることにより、放射線Rの照射角度を変えて複数回の撮影が行われる。本構成によれば、挿入グリッド44の吸収部46及び透過部47の境界線48が延びる方向が左右方向に平行な姿勢で挿入グリッド44を配置できる。このため、境界線48が延びる方向が前後方向に平行な姿勢で配置する場合と比べて、放射線源25から撮影面24Aに向けて斜めに入射する有効な放射線R(散乱線以外の放射線)のケラレを抑制することができる。なぜならば、挿入グリッド44が、境界線48の延びる方向が前後方向に平行な姿勢で配置される場合は、境界線48と平行に延びる吸収部46と管球25Aの焦点と撮影面24Aとを結ぶ放射線Rの線束の中心軸とが交差するためである。すなわち、管球25Aの移動方向と吸収部46の延びる方向が直交するので、管球25Aから照射される放射線Rに対して吸収部46によるケラレが発生する。
【0068】
さらに、生検に際しては、新生血管が密集する生検対象が強調された乳房画像を取得するために、ステレオ撮影と造影エネルギーサブトラクション撮影とを組み合わせた撮影を行う場合がある。本構成は、このような場合に特に有効である。というのも、造影エネルギーサブトラクション撮影では、異なるエネルギーの放射線で撮影した2つの画像の差分を取るため、コントラストが低下しやすい。本構成では、挿入グリッド44を用いることにより、散乱線の入射が抑制されるので、コントラストの低下を抑制することができる。なお、コントラストの低下を抑制する方法として、画像補正処理において、放射線検出器26が出力する信号のゲインを上げることも考えられるが、ゲインを上げるとノイズも増加するため、挿入グリッド44による方法が好ましい。
【0069】
例えば、比較例として
図10に示すように、挿入グリッド44を用いず、内蔵グリッド45を退避させた状態で、ステレオ撮影と造影エネルギーサブトラクション撮影とを組み合わせた撮影を行う場合を考える。この場合、内蔵グリッド45は退避しているので、管球25Aの移動方向と境界線48延びる方向との直交に起因した放射線Rのケラレは生じない。一方、
図11に示すように、挿入グリッド44が用いられないので、乳房Mを透過した放射線Rに起因した散乱線がそのまま放射線検出器26に入射する。この結果、乳房画像におけるコントラストが低下する。上述したように、造影エネルギーサブトラクション撮影では、異なるエネルギーの放射線で撮影した2つの画像の差分を取るため、コントラストが低下しやすいので、さらに乳房画像におけるコントラストが低下することになる。この結果、乳房Mにおける生検対象となる組織の位置を把握することが困難になる。本構成では、挿入グリッド44を用いることにより、散乱線の入射が抑制されるので、コントラストの低下を抑制することができる。
【0070】
また、比較例に係る通常のバイオプシ用の保護カバーでは、散乱線除去グリッドを設けることが想定されていない。このため、仮に撮影台24に外付けするグリッドがあったとしても、保護カバーによって撮影台24が既に覆われているため、散乱線除去グリッドを撮影台24に配置することができない。本構成では、挿入グリッド44が撮影台24の側面から挿入可能とされているので、保護カバー37を用いながら挿入グリッド44による散乱線の除去の効果を得ることができる。
【0071】
また、本第1実施形態に係る乳房撮影装置10では、撮影台24の内部に固定機構50が設けられている。固定機構50は、挿入グリッド44を放射線検出器26の検出面26Aと対面する位置に固定する。これにより、挿入グリッド44が固定されない場合と比較して、挿入グリッド44の位置決め精度が向上する。
【0072】
また、例えば、固定機構50が撮影台24の外部に設けられる場合と比較して、撮影台24の内部に固定機構50が設けられているので、乳房撮影装置10の意匠性が向上する。
【0073】
また、本第1実施形態に係る乳房撮影装置10では、固定機構50は、挿入グリッド44に設けられた凹部44Dと係合可能な突起51を含んでいる。挿入グリッド44が撮影台24の内部へ挿入されると、挿入グリッド44に設けられた凹部44Dに、撮影台24の内部に設けられた突起51が係合する。これにより、挿入グリッド44が撮影台24の内部で固定される。本構成では、乳房撮影装置10側に突起51を設けているので、挿入グリッド44側に突起51を設ける構成と比較して、開口36A及び36Bの開口面積を小さくできる。すなわち、挿入グリッド44が開口36A及び36Bを通過する場合に、挿入グリッド44から突出した箇所がない分、開口36A及び36Bの開口面積を小さくできる。
【0074】
また、本第1実施形態に係る乳房撮影装置10では、挿入グリッド44には、把持部44B及び44Cが設けられている。これにより、把持部44B及び44Cが設けられていない場合と比較して、挿入グリッド44を撮影台24の内部に挿入したり、又は、挿入グリッド44を撮影台24の内部から取り出したり作業が容易になる。
【0075】
また、本第1実施形態に係る乳房撮影装置10では、挿入グリッド44が、内蔵グリッド45が退避位置に移動した状態で、撮影台24の内部に挿入される。内蔵グリッド45が退避することで生じた空間Kに挿入グリッド44が挿入されるので、撮影台24の内部に別途空間Kを形成する必要がなくなり、撮影台24の小型化が可能になる。
【0076】
なお、上記第1実施形態では、固定機構50が突起51を有し、挿入グリッド44に設けられた凹部44Dと突起51とが係合することで、挿入グリッド44が撮影台24の内部に固定される形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。固定機構50は、挿入グリッド44を撮影台24の内部に固定できればよく、例えば、固定機構50がマグネットを有し、挿入グリッド44に設けられた着磁板とマグネットとが磁気的に吸着することで、挿入グリッド44が固定される態様であってもよい。
【0077】
<第2実施形態>
上記第1実施形態では、固定機構50の有する突起51が、撮影台24内部の空間Kの内壁から突出している形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。本第2実施形態では、突起51Aは、放射線検出器26を支持する支持部材54から突出している。
【0078】
図12に示すように、撮影台24の内部において、放射線検出器26は、支持部材54によって支持されている。支持部材54は、放射線検出器26の検出面26Aの周囲の少なくとも一部に配置されている。
図12に示す例では、支持部材54は、放射線検出器26の検出面26Aの周囲のうち右側、左側、及び後ろ側の三方に配置されている。換言すれば、支持部材54は、放射線検出器26の前側(すなわち、被検者Aの胸壁側)には設けられていない。支持部材54は、本開示の技術に係る「支持部材」の一例である。
【0079】
具体的には、支持部材54は、右側部54A、左側部54B、及び後側部54Cを備えている。右側部54Aは、検出面26Aの周囲のうちの右側を支持し、左側部54Bは、検出面26Aの周囲のうちの左側を支持し、さらに、後側部54Cは、検出面26Aの周囲のうちの後ろ側を支持している。図示していないが、支持部材54は、撮影台24内部の空間Kの内壁に固定されている。このように、支持部材54は、放射線検出器26を支持している。支持部材54は、例えば、金属製である。
【0080】
支持部材54には、突起51Aが設けられている。突起51Aは、検出面26Aの法線方向(
図12に示す例では、Z方向)に沿って突出している。突起51Aは、撮影台24の内部において、挿入グリッド44に設けられた凹部44Eと係合する。
図12に示す例では、突起51Aは、右側部54A及び左側部54Bに一つずつ設けられており、円柱状を成している。挿入グリッド44には、突起51Aに対応した位置に凹部44Eが形成されている。撮影台24の内部において、対面位置に配置された挿入グリッド44が、放射線検出器26及び支持部材54に向かって上方から下方へ移動する。これにより、
図13に示すように、突起51Aが凹部44Eに係合する。これにより、挿入グリッド44が撮影台24の内部において固定される。突起51Aは、本開示の技術に係る「突起」の一例であり、凹部44Eは、本開示の技術に係る「凹部」の一例である。
【0081】
以上説明したように、本第2実施形態に係る乳房撮影装置10では、固定機構50は、支持部材54に設けられた突起51Aを含んでいる。支持部材54は、放射線検出器26の周囲の少なくとも一部に配置され、放射線検出器26を支持する部材である。これにより、突起51Aを支持する支持構造を撮影台24の内部に別途設ける場合と比較して、撮影台24の内部の構造の簡素化が実現できる。
【0082】
また、散乱線除去グリッドは、検出面26Aになるべく近づけて配置した方が、散乱除去効果が高い。突起51Aを支持する専用の支持構造を別途設ける場合は、散乱線除去グリッドを検出面26Aに近づける場合に専用の支持構造が障害となる場合もある。突起51Aは、支持部材54に設けられており、さらに、検出面26Aの法線方向に沿って突出している。これにより、本構成における突起51Aの設置個所及び設置態様以外で設ける場合と比較して、挿入グリッド44を放射線検出器26に近づけやすい。
【0083】
また、本第2実施形態に係る乳房撮影装置10では、支持部材54は、放射線検出器26の被検者Aの胸壁側には設けられていない。このため、放射線検出器26を胸壁側(すなわち、前側)に寄せて配置することができる。挿入グリッド44は、放射線検出器26の位置に合わせて、対面位置に配置される。そのため、放射線検出器26の位置に合わせて挿入グリッド44も胸壁側に寄せることができる。これにより、乳房撮影において、胸壁側の撮影範囲を広げることができる。
【0084】
なお、上記第2実施形態において、円柱状の突起51Aが右側部54A及び左側部54Bに一つずつ設けられる形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。突起51Aの形状(例えば、半球状等)、数、及び配置箇所は、挿入グリッド44の位置決め精度等によって適宜設定され得る。
【0085】
また、上記第2実施形態において、支持部材54が、放射線検出器26の検出面26Aの周囲を三方から支持している形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、支持部材54は、放射線検出器26の周囲をすべて支持している枠形状でもよいし、放射線検出器26の後ろ側のみを支持している態様であってもよい。
【0086】
<第3実施形態>
上記第1実施形態では、ユーザの操作によって挿入グリッド44が対面位置に配置される形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。本第3実施形態では、撮影台24の内部において、挿入グリッド44を対面位置に案内するガイド部56が設けられている。
【0087】
図14に示すように、撮影台24の内部には、ガイド部56が設けられている。ガイド部56は、挿入グリッド44と係合することにより、挿入グリッド44を対面位置に案内する。
図14に示す例では、ガイド部56は、ガイドレール56A及び56Bを備えている。ガイドレール56A及び56Bは、撮影台24の内部において、左右方向に沿って配置されたレール部材である。ガイドレール56Aは、挿入グリッド44が撮影台24の内部に挿入される場合に、挿入グリッド44の後ろ側を支持している。また、ガイドレール56Bは、挿入グリッド44が撮影台24の内部に挿入される場合に、挿入グリッド44の前側を支持している。ガイド部56は、本開示の技術に係る「ガイド部」の一例であり、ガイドレール56A及び56Bは、本開示の技術に係る「ガイドレール」の一例である。
【0088】
ガイドレール56A及び56Bは、挿入グリッド44が対面位置にある場合に、グリッド本体44Aとは係合していない。換言すれば、ガイドレール56A及び56Bは、放射線の検出範囲には、設けられていない。
【0089】
図15に示すように、ガイドレール56Aは、横断面視L字状(すなわち、左右方向から見た場合にL字状)を有している。ガイドレール56Aは、空間Kにおいて、後ろ側の内壁に取り付けれている。ガイドレール56Aの一端部56A1は、挿入グリッド44の後ろ側を下方から支持している。また、ガイドレール56Bは、板状部材であり、空間Kの前側の内壁に取り付けられている。ガイドレール56Bは、挿入グリッド44の前側を下方から支持している。このように、ガイドレール56A及び56Bは、挿入グリッド44を左右方向から受け入れ可能とされており、ガイドレール56A及び56Bによって、挿入グリッド44が対面位置まで案内される。
【0090】
以上説明したように、本第3実施形態に係る乳房撮影装置10では、撮影台24の内部には、開口36Aから挿入された挿入グリッド44を対面位置に案内するガイド部56が設けられている。ガイド部56によって挿入グリッド44が案内されることで、挿入グリッド44を撮影台24の内部に挿入したり、取り出したりする作業が容易になる。
【0091】
また、例えば、ガイド部56によって挿入グリッド44が案内されることで、挿入グリッド44が、放射線検出器26と接触することが抑制される。これにより、放射線検出器26の検出面26Aの損傷が抑制される。
【0092】
また、本第3実施形態に係る乳房撮影装置10では、ガイド部56は、左右方向から挿入グリッド44を受け入れ可能なガイドレール56A及び56Bを含んでいる。そして、ガイドレール56A及び56Bは、放射線の検出範囲外に設けられている。これにより、乳房撮影の際に、ガイドレール56A及び56Bが放射線画像に写り込むことが抑制される。
【0093】
なお、上記第3実施形態では、ガイド部56がガイドレール56A及び56Bである形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。ガイド部56は、撮影台24の内部において、挿入グリッド44を対面位置に案内可能であればよく、例えば、撮影台24の内部に設けられた複数のロールによって挿入グリッド44が案内される構成であってもよい。
【0094】
また、上記第3実施形態では、ガイドレール56Aが横断面視L字形状のレールであり、ガイドレール56Bが板状部材のレールである形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。ガイドレール56A及び56Bの形状、長さ、及び配置についても特に限定されず、挿入グリッド44を左右方向から受け入れ可能なレールであればよい。
【0095】
<第4実施形態>
上記第1実施形態では、固定機構50は、撮影台24の内部に設けられた突起51を備え、突起51が挿入グリッド44に設けられた凹部44Dと係合することにより、挿入グリッド44が撮影台24の内部に固定される形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。本第4実施形態では、固定機構58が撮影台24の外部に設けられている。
【0096】
図16に示すように、固定機構58は、対面位置に挿入グリッド44を固定する。固定機構58は、撮影台24の外部に設けられている。具体的には、固定機構58は、撮影台24の左側面24B及び右側面24Cに設けられている。固定機構58は、本開示の技術に係る「第2固定機構」の一例である。
【0097】
図17に示すように、固定機構58は、クリップ58Aである。クリップ58Aは、撮影台24の側面に設けられており、挿入グリッド44のうちの撮影台24の外部に露出している部分を上下方向から挟む。これにより、挿入グリッド44が撮影台24に対して固定される。
【0098】
以上説明したように、本第4実施形態に係る乳房撮影装置10では、挿入グリッド44が撮影台24の内部で固定される。固定機構58は、挿入グリッド44を放射線検出器26の検出面26Aと対面する位置に固定する。これにより、挿入グリッド44が固定されない場合と比較して、挿入グリッド44の位置決め精度が向上する。
【0099】
また、例えば、固定機構58が撮影台24の内部に設けられる場合と比較して、本構成では、固定機構58が撮影台24の内部の構造の簡素化が実現される。
【0100】
なお、本第4実施形態では、固定機構58が、クリップ58Aである形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。固定機構58は、撮影台24の外部において、挿入グリッド44を固定可能な構成であれば、特に限定されず、例えば、撮影台24の外部に設けられた吸引機構によって挿入グリッド44が吸着されて固定されてもよい。また、撮影台24の外部に設けられたマグネットが、挿入グリッド44に取り付けられ着磁板と磁気的に吸着することで、挿入グリッド44が固定されてもよい。
【0101】
(第1変形例)
上記第1実施形態~第4実施形態では、挿入グリッド44が撮影台24に挿入された状態で、把持部44B及び44Cが、左右方向に沿って延びたままである形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。本第1変形例では、把持部44B及び44Cが左右方向に延びた状態から鉛直方向に沿った状態に折り畳むことが可能となっている。
【0102】
図18に示すように、挿入グリッド44の把持部44Bは、回転軸44B1を備えている。回転軸44B1は、把持部44Bのうちの撮影台24から突出した部位において、最も撮影台24側の位置に設けられている。回転軸44B1は、前後方向に沿って延びる軸部材である。把持部44Bのうちの撮影台24から突出した部位は、回転軸44B1を中心に回転自在とされている。把持部44Bは、挿入グリッド44が撮影台24に挿入された状態で、左右方向に延びた状態である。そして、把持部44Bのうちの撮影台24から突出した部位が、回転軸44B1を中心に下方へ回転することで、把持部44Bが鉛直方向に沿って延びた状態となる。すなわち、把持部44Bが折り畳まれる。なお、図示しないが把持部44Cについても把持部44Bと同様な回転機構が設けられており、折り畳みが可能となっている。なお、把持部44B及び44Cは、回転軸44B1を介した回転を規制するロック機構を備えていてもよい。これにより、把持部44B及び44Cが、折り畳まれた状態及び左右方向に延びた状態のいずれかで固定される。
【0103】
以上説明したように、本第1変形例では、把持部44Bが折り畳み可能となっている。このため、挿入グリッド44を撮影台24の内部に挿入しても、挿入グリッド44のうちの撮影台24から突出した部位が、外部(例えば、ユーザ、被検者、又は周辺装置)と接触することが抑制される。
【0104】
なお、本第1変形例では、把持部44B及び44Cが折り畳み可能である形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、把持部44B及び44Cが、グリッド本体44Aと着脱可能であってもよい。
【0105】
なお、上記実施形態では、ユーザの操作によって挿入グリッド44が撮影台24の内部に挿入され、位置決めがされる形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。挿入グリッド44の撮影台24の内部における位置が、撮影台24の内部に設けられたセンサによって検出されてもよい。例えば、センサとして磁力センサが設けられており、挿入グリッド44に取り付けられた磁性体に起因した磁界の変化を検出することで、挿入グリッド44が対面位置にあることが検出されてもよい。
【0106】
また、上記実施形態において、放射線検出器26の検出面26Aに保護膜が形成されていてもよい。保護膜は、一般に放射線に対する透過性が高い材料(例えば、炭素繊維強化樹脂)から形成される。放射線検出器26の検出面26Aに保護膜が形成されていることで、挿入グリッド44が検出面26Aに直接接触することが抑制され、検出面26Aの破損が抑制される。
【0107】
また、上記実施形態では、撮影台24が開口36A及び36Bを有し、挿入グリッド44が撮影台24の左右方向の両側から挿入可能な形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。
図19に示すように、挿入グリッド44が、撮影台24の左右方向の片側(
図19に示す例では、右側)からのみ挿入可能であっても、本開示の技術は成立する。
【0108】
また、上記実施形態では、内蔵グリッド45が退避することで撮影台24の内部に形成される空間Kに挿入グリッド44が挿入される形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、内蔵グリッド45が収容される空間とは別の空間Kが撮影台24の内部に形成されており、空間Kに挿入グリッド44が挿入される態様であってもよい。
【0109】
また、上記実施形態において、ステレオ撮影と造影エネルギーサブトラクション撮影とを組み合わせた撮影が行われる形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、ステレオ撮影のみが行われる形態であってもよい。
【0110】
また、上記実施形態において、放射線源25が左右方向に移動することにより、ステレオ撮影が行われる形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、放射線源25が、左右方向に沿って配列された複数の管球25Aを備えており、各管球25Aから放射線Rを照射する、いわゆるマルチ線源であってもよい。マルチ線源では、複数の管球25Aが左右方向に配列されているため、例えば、左右方向の両端の管球25Aを用いることにより、ステレオ撮影を行うことが可能である。
【0111】
また、上記実施形態において、生検が行われる場合のステレオ撮影を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、乳房Mの断層画像を得るために、照射角度が異なる複数の照射位置から乳房Mを撮影する、いわゆるトモシンセシス撮影であってもよい。トモシンセシス撮影によって得られた複数の照射位置からの乳房Mの投影画像は、画像再構成処理に供されて、乳房Mの断層画像の生成に利用される。
【0112】
また、上記実施形態において、生検のための放射線撮影が行われる形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、生検を伴わない通常の放射線撮影が行われてもよい。この場合、生検ユニット39と保護カバー37とは用いられず、撮影台24に載置された乳房Mに対して放射線撮影が行われる。例えば、挿入グリッド44は、内蔵グリッド45と境界線48の延びる方向が同じであるが、内蔵グリッド45とグリッド密度が異なっている。ユーザは、グリッド密度の異なる条件で放射線撮影を行うために挿入グリッド44を挿入する。
【0113】
また、上記実施形態において、挿入グリッド44が一つ用意されている形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、グリッド密度の異なる複数の挿入グリッド44が用意され、複数の挿入グリッド44が交換されてもよい。
【0114】
以上に示した記載内容及び図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、及び効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、及び効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容及び図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことは言うまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容及び図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
【0115】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【0116】
上記実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0117】
<付記1>
被検者の乳房が載置され、上記乳房を透過した放射線が入射する撮影面を有し、上記撮影面を透過した上記放射線を検出する検出器が収容される撮影台を備え、
上記撮影台は、上記放射線が上記乳房を透過することによって生じる散乱線を除去する散乱線除去グリッドを、内部に着脱自在に装着可能であり、
上記撮影台において、上記被検者の胸壁が位置する胸壁側と上記胸壁の反対側とを結ぶ方向を前後方向とし、上記前後方向と直交する方向を左右方向とした場合において、上記撮影台には、上記散乱線除去グリッドの着脱用の開口が、上記撮影台の左側面及び右側面の少なくともいずれかに設けられている
乳房撮影装置。
<付記2>
上記開口が、上記撮影台の上記左側面及び上記右側面の両方に設けられている
付記1に記載の乳房撮影装置。
<付記3>
上記散乱線除去グリッドは、上記放射線を透過する複数の透過部と上記放射線を吸収する複数の吸収部とが交互に配列され、上記透過部と上記吸収部との境界線が一方向に延びるグリッドであり、
上記境界線が延びる方向が上記左右方向に平行な姿勢で上記散乱線除去グリッドを上記撮影台の内部に配置することが可能である
付記1又は付記2に記載の乳房撮影装置。
<付記4>
上記撮影台の内部には、上記散乱線除去グリッドを上記検出器の検出面と対面する対面位置に固定する第1固定機構が設けられている
付記1から付記3のうちのいずれか一つに記載の乳房撮影装置。
<付記5>
上記第1固定機構は、上記散乱線除去グリッドに設けられた凹部と係合可能な突起を含む
付記4に記載の乳房撮影装置。
<付記6>
上記撮影台の内部には、上記検出器を支持する支持部材であって、上記検出面の周囲の少なくとも一部に配置された支持部材が設けられ、
上記突起は、上記支持部材において、上記検出面の法線方向に沿って突出する態様で設けられている
付記5に記載の乳房撮影装置。
<付記7>
上記支持部材は、上記検出器の上記胸壁側には設けられていない
付記6に記載の乳房撮影装置。
<付記8>
上記撮影台の内部には、上記開口から挿入された上記散乱線除去グリッドと係合することにより上記散乱線除去グリッドを上記検出器の検出面と対面する対面位置に案内するガイド部が設けられている
付記1から付記7のうちのいずれか一つに記載の乳房撮影装置。
<付記9>
上記ガイド部は、上記左右方向から上記散乱線除去グリッドを受け入れ可能なガイドレールであり、
上記ガイドレールは、上記前後方向及び上記左右方向において上記放射線の検出範囲外に設けられている
付記8に記載の乳房撮影装置。
<付記10>
上記検出器の検出面と対面する対面位置に上記散乱線除去グリッドを固定する第2固定機構であって、撮影台の外部に設けられた第2固定機構を有している
付記1から付記9のうちのいずれか一つに記載の乳房撮影装置。
<付記11>
上記散乱線除去グリッドには、把持部材が設けられている
付記1から付記10のうちのいずれか一つに記載の乳房撮影装置。
<付記12>
上記散乱線除去グリッドを外部グリッドとした場合において、上記撮影台には、上記外部グリッドとは別の散乱線除去グリッドとして、上記撮影台内に内蔵される内蔵グリッドが設けられており、
上記内蔵グリッドは、上記撮影台内において、上記検出器の検出面と対面する対面位置と、上記対面位置から退避する退避位置との間で移動可能であり、
上記外部グリッドは、上記内蔵グリッドが退避位置に移動した状態で、上記撮影台内に挿入される
付記1から付記11のうちのいずれか一つに記載の乳房撮影装置。
【符号の説明】
【0118】
10 乳房撮影装置
20 スタンド
20A 台座
20B 支柱
21 アーム
22 線源収容部
23 本体部
24 撮影台
24A 撮影面
24B 左側面
24C 右側面
24D 前端面
25 放射線源
25A 管球
26 放射線検出器
27 手すり
28 レール
30 圧迫板
31 照射野限定器
32 フェイスガード
33 支持アーム
34 可動部
35 移動機構
36A,36B 開口
37 保護カバー
37A 保護部材
37B 前壁
37C 後端部
37C1 切り欠き
39 生検ユニット
40 本体部
40A 土台
41 調整部
42 針保持部
43 穿刺針
44 挿入グリッド
44A グリッド本体
44A1 前端面
44B,44C 把持部
44B1 回転軸
44D,44E 凹部
45 内蔵グリッド
46 吸収部
47 透過部
48 境界線
50 固定機構
51,51A 突起
54 支持部材
54A 右側部
54B 左側部
54C 後側部
56 ガイド部
56A,56B ガイドレール
56A1 一端部
58 固定機構
58A クリップ
A 被検者
F 焦点位置
K 空間
R 放射線
M 乳房
X,Y,Z 矢印