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特開2024-90249アンテナ測定装置のキャブレーション方法、支持治具及びアンテナ測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090249
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】アンテナ測定装置のキャブレーション方法、支持治具及びアンテナ測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/10 20060101AFI20240627BHJP
   G01R 35/00 20060101ALI20240627BHJP
   G01R 29/26 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
G01R29/10 A
G01R35/00 K
G01R29/10 E
G01R29/26 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206008
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 悟史
(57)【要約】
【課題】アンテナ測定装置でのキャリブレーション処理の作業時間の短縮を図る。
【解決手段】複数のプローブアンテナと、被測定アンテナが第1ケーブルを介して接続されると共に複数のプローブアンテナが第2ケーブルを介してそれぞれ接続される測定器と、を備えるアンテナ測定装置のキャリブレーション方法であって、第1ケーブルをキャリブレーション用アンテナに接続して、キャリブレーション用アンテナを複数のプローブアンテナに対応する位置に配置し、キャリブレーション用アンテナをプローブアンテナの各々に順次対向させ、プローブアンテナの各々と測定器とを繋ぐ第2ケーブルを含む各経路の特性を順次測定し、測定の結果に基づいて、複数の経路の特性差を補正する。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプローブアンテナと、被測定アンテナが第1ケーブルを介して接続されると共に複数の前記プローブアンテナが個別の第2ケーブルを介してそれぞれ接続される測定器と、を備えるアンテナ測定装置のキャリブレーション方法であって、
前記第1ケーブルをキャリブレーション用アンテナに接続して、当該キャリブレーション用アンテナを複数の前記プローブアンテナに対応する位置に配置し、
前記キャリブレーション用アンテナを前記プローブアンテナの各々に順次対向させ、前記プローブアンテナの各々と前記測定器とを繋ぐ前記第2ケーブルを含む各経路の特性を順次測定し、
前記測定の結果に基づいて、複数の前記経路の特性差を補正する、
キャリブレーション方法。
【請求項2】
請求項1に記載のキャリブレーション方法において、
複数の前記プローブアンテナが、前記被測定アンテナを囲む仮想円に沿って円環状に並べて配置されており、
前記キャリブレーション用アンテナを、複数の前記プローブアンテナに対応する位置に配置した状態で、前記仮想円の中心位置を回転軸として回転可能とし、
前記回転軸を中心として前記キャリブレーション用アンテナを回転させることで、前記キャリブレーション用アンテナを前記プローブアンテナの各々に順次対向させる、
キャリブレーション方法。
【請求項3】
請求項1に記載のキャリブレーション方法において、
前記プローブアンテナは、水平偏波用基板に形成される水平偏波アンテナと、垂直偏波用基板に形成される垂直偏波アンテナと、を含むアンテナ部を有し、
前記キャリブレーション用アンテナとして、前記プローブアンテナの前記アンテナ部と同一構成のものを用いる、
キャリブレーション方法。
【請求項4】
請求項2に記載のキャリブレーション方法に用いられる支持治具であって、
前記キャリブレーション用アンテナが固定される軸部材と、
前記キャリブレーション用アンテナが複数の前記仮想円の周方向に沿って回転するように、前記軸部材を保持する軸保持部材と、
前記軸保持部材が所定間隔を空けて設けられる土台部と、を備える、
支持治具。
【請求項5】
請求項4に記載の支持治具において、
前記軸保持部材が、前記キャリブレーション用アンテナを前記プローブアンテナに対向させた位置で前記軸部材を固定可能なクランプ機構、を備える、
支持治具。
【請求項6】
複数のプローブアンテナと、被測定アンテナが第1ケーブルを介して接続されると共に複数の前記プローブアンテナが個別の第2ケーブルを介してそれぞれ接続される測定器と、を備えるアンテナ測定装置であって、
複数の前記プローブアンテナは、前記被測定アンテナを囲む仮想円に沿って円環状に並べて配置され、
前記第1ケーブルが接続されるキャリブレーション用アンテナと、
前記キャリブレーション用アンテナを、前記仮想円の周方向で回転可能に支持する支持治具と、を備える、
アンテナ測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載のアンテナ測定装置において、
前記支持治具は、
前記キャリブレーション用アンテナが固定される軸部材と、
前記キャリブレーション用アンテナが複数の前記仮想円の周方向に沿って回転するように、前記軸部材を保持する軸保持部材と、
前記軸保持部材が所定間隔を空けて設けられる土台部と、を備える、
アンテナ測定装置。
【請求項8】
請求項7に記載のアンテナ測定装置において、
円環状に配置された複数の前記プローブアンテナの内側を通過するように前記被測定アンテナを直線移動させる動作を実行可能なポジショナ、を備え、
前記ポジショナが、前記支持治具に支持された前記キャリブレーション用アンテナを、前記被測定アンテナに代えて搭載可能に構成される、
アンテナ測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ測定装置のキャリブレーション方法、支持治具及びアンテナ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プローブアンテナと、測定器(ネットワークアナライザ)とを備えるアンテナ測定装置が知られている。このアンテナ測定装置は、被測定アンテナ又はプローブアンテナの一方から送信される送信電磁波を被測定アンテナ又はプローブアンテナの他方で受信し、被測定アンテナ又はプローブアンテナで受信された受信電磁波に基づいてアンテナ特性を測定する(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1には、被測定アンテナを取り囲むように配置された複数の対向アンテナ(プローブアンテナ)を備えるアンテナ測定装置が記載されている。特許文献1に記載のアンテナ測定装置では、これら複数の対向アンテナによって被測定アンテナから送信される送信電磁波が受信され、対向アンテナで受信された受信電磁波に基づいて、被測定アンテナの指向性が測定される。
【0004】
特許文献2には、被測定アンテナから送信される送信電磁波を受信する複数のプローブアンテナと、複数のプローブアンテナによって受信された受信電磁波に基づいて、被アンテナから送信される送信電磁波による電磁界分布を測定する測定部と、を備える電磁波測定装置が記載されている。また特許文献2には、これら複数のプローブアンテナが、被測定アンテナの周囲に設けられる構成、より詳しくは、被測定アンテナを保持する保持部を略中心とする円弧上、または円上に設けられる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-289081号公報
【特許文献2】特開2005-502860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、被測定アンテナは、第1ケーブル(「被測定アンテナ用ケーブル」とも呼ぶ)によって測定器に接続され、複数のプローブアンテナはそれぞれ個別の第2ケーブル(「プローブアンテナ用ケーブル」とも呼ぶ)によって測定器に接続される。言い換えれば、各プローブアンテナは、各個別経路を含む別々の経路を介して測定器に接続される。そして、アンテナ測定装置でアンテナ特性を測定する場合、各経路の特性差は極力小さいことが望ましい。そこで、所定のタイミングでキャリブレーション処理を実施し、各経路の特性を測定して各経路の特性差を補正する。これにより、各経路の特性差を抑制できる。
【0007】
しかしながら、このキャリブレーション処理時には、1本の第1ケーブルと複数本の第2ケーブルとを順次着脱しながら、各経路の特性を測定していた。このため、キャリブレーション処理には、手間と時間を要していた。
【0008】
本発明の目的は、アンテナ測定装置でのキャリブレーション処理の作業時間を短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態のキャリブレーション方法は、複数のプローブアンテナと、前記被測定アンテナが第1ケーブルを介して接続されると共に複数の前記プローブアンテナが第2ケーブルを介してそれぞれ接続される測定器と、を備えるアンテナ測定装置のキャリブレーション方法であって、前記第1ケーブルをキャリブレーション用アンテナに接続して、当該キャリブレーション用アンテナを複数の前記プローブアンテナに対応する位置に配置し、前記キャリブレーション用アンテナを前記プローブアンテナの各々に順次対向させ、前記プローブアンテナの各々と前記測定器とを繋ぐ前記第2ケーブルを含む各経路の特性を順次測定し、前記測定の結果に基づいて、複数の前記経路の特性差を補正する。
【0010】
また上記キャリブレーション方法に用いられる一実施形態の支持治具は、複数の前記プローブアンテナが、前記被測定アンテナを囲む仮想円に沿って円環状に並べて配置される場合、前記キャリブレーション用アンテナが固定される軸部材と、前記キャリブレーション用アンテナが複数の前記仮想円の周方向に沿って回転するように、前記軸部材を保持する軸保持部材と、前記軸保持部材が所定間隔を空けて設けられる土台部と、を備える。
【0011】
また一実施形態のアンテナ測定装置は、複数のプローブアンテナと、前記被測定アンテナが第1ケーブルを介して接続されると共に複数の前記プローブアンテナが第2ケーブルを介してそれぞれ接続される測定器と、を備える。複数の前記プローブアンテナは、前記被測定アンテナを囲む仮想円に沿って円環状に並べて配置される。またアンテナ測定装置は、前記第1ケーブルが接続されるキャリブレーション用アンテナと、前記キャリブレーション用アンテナを、前記仮想円の周方向で回転可能に支持する支持治具と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アンテナ測定装置でのキャリブレーション処理の作業時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係るアンテナ測定装置の概略構成を示す図である。
図2】被測定アンテナ及びプローブアンテナの配置の概要構成の一例を示す斜視図である。
図3】一実施形態に係るプローブアンテナの配置を示す図である。
図4】一実施形態に係るプローブアンテナの構成の一例を拡大して示す図である。
図5】一実施形態に係る連結部の構成の一例を示す拡大図である。
図6】一実施形態に係る連結部の構成を示す断面図である。
図7】一実施形態に係る連結部の変形例を示す拡大図である。
図8】一実施形態に係る連結部の変形例を示す拡大図である。
図9】一実施形態に係る連結部の変形例を示す断面図である。
図10】一実施形態に係る被測定アンテナのブロック構成の一例を示す図である。
図11】一実施形態に係るアンテナ特性測定部のブロック構成の一例を示す図である。
図12】一実施形態に係る指向性の測定方法を説明する図である。
図13】一実施形態に係る指向性の測定方法を説明する図である。
図14】一実施形態に係るキャリブレーション処理に用いられるキャリブレーション用アンテナ及び支持治具の概略構成を示す斜視図である。
図15】一実施形態に係るキャリブレーション処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図16】一実施形態に係るキャリブレーション処理を説明する図である。
図17】一実施形態に係るキャリブレーション処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明に係るアンテナ測定装置は、被測定アンテナによって受信される受信電磁波又は被測定アンテナによって送信される送信電磁波に基づいて、被測定アンテナの特性(アンテナ特性)を測定する装置である。一実施形態として、アンテナ測定装置は、プローブアンテナから送信される送信電磁波を被測定アンテナによって受信し、被測定アンテナによって受信された受信電磁波に基づき、アンテナ特性として、例えば、指向性を測定する装置である。すなわち一実施形態として、プローブアンテナが送信アンテナとして機能し、被測定アンテナが受信アンテナとして機能する。ただしアンテナの指向性は、送信時と受信時とで可逆性が成り立ち等しくなるため、プローブアンテナを受信アンテナとして機能させ、被測定アンテナを送信アンテナとして機能させてもよい。
【0015】
なお、一実施形態として説明するアンテナ測定装置において、プローブアンテナによって送信される「送信電磁波」、および被測定アンテナで受信される「受信電磁波」は、帯域としては電波である。このため、以下の説明では、「送信電磁波」を「送信電波」と称し、「受信電磁波」を「受信電波」と称する。勿論、本発明は、電波以外の帯域の電磁波を送受信するアンテナの特性を測定するアンテナ測定装置にも適用可能なものである。
【0016】
<アンテナ測定装置の概略構成>
図1は一実施形態に係るアンテナ測定装置の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、一実施形態に係るアンテナ測定装置10は、筐体20に収容される複数個のプローブアンテナ30(30a~30o)と、被測定アンテナ(以下、単に「アンテナ」とも称する)100が搭載されるポジショナ40と、アンテナ特性測定部50と、スイッチタイミング制御部60と、測定器であるネットワークアナライザ70と、ポジショナ制御部80と、を備える。アンテナ測定装置10は、その他に、例えば、リレーユニットや、同軸切替スイッチを含んで構成されるスイッチSW1及びスイッチSW2、レール90等を備えて構成される。なお複数のプローブアンテナ30a~30oを総称してプローブアンテナ30と呼ぶ。
【0017】
各プローブアンテナ30は、プローブアンテナ用ケーブル(「第2ケーブル」とも呼ぶ)に相当するデータ線Sd1によってスイッチSW1に接続される。図1では、データ線Sd1を1本の線で示しているが、実際には、データ線Sd1は、各プローブアンテナ30a~30oのそれぞれに対応する複数本で構成される。すなわち各プローブアンテナ30は、個別に設けられる複数のデータ線Sd1によって、それぞれスイッチSW1に接続される。またスイッチSW1はデータ線Sd2によってネットワークアナライザ70に接続される。そしてSW1の回路が切り替えられることで、複数のプローブアンテナ30の一つがデータ線Sd1及びデータ線Sd2を介してネットワークアナライザ70に接続される。
【0018】
アンテナ100は被測定アンテナ用ケーブル(「第1ケーブル」とも呼ぶ)に相当するデータ線Sd3によってスイッチSW2に接続され、スイッチSW2はデータ線Sd4によってネットワークアナライザ70に接続される。このデータ線Sd3は、各プローブアンテナ30の特性測定時に共通して使用される。なおアンテナ100は、後述するようにローバンド水平偏波信号、ローバンド垂直偏波信号、ハイバンド水平偏波信号及びハイバンド垂直偏波信号を送受信可能に構成される。図1では、データ線Sd3を1本の線で示すが、一実施形態として、データ線Sd3は、上記の各信号に対応する4本で構成される。またネットワークアナライザ70はデータ線Sd5によってアンテナ特性測定部50に接続される。ポジショナ40はデータ線Sd6によってポジショナ制御部80に接続される。
【0019】
またアンテナ特性測定部50とスイッチタイミング制御部60とは制御線Sc1によって接続され、アンテナ特性測定部50とポジショナ制御部80とは制御線Sc2によって接続される。スイッチタイミング制御部60とスイッチSW1とは制御線Sc3によって接続され、スイッチタイミング制御部60とスイッチSW2とは制御線Sc4によって接続される。
【0020】
詳しくは後述するが、アンテナ特性測定部50は、アンテナ100で受信された受信電波から生成される受信電波信号に基づいてアンテナ100の特性、具体的には、アンテナ100の周方向の指向性を測定(推定)する。スイッチタイミング制御部60は、送信電波を送信するプローブアンテナ30の選択等を行うために、スイッチSW1及びスイッチSW2を適宜制御する。ネットワークアナライザ70は、例えば、アンテナ100で受信した受信電波の信号(受信電波信号)をA/D(Analog-to-digital)変換する。
【0021】
またアンテナ測定装置10は、各プローブアンテナ30とネットワークアナライザ70とを繋ぐ各経路のキャリブレーション処理時に使用されるキャリブレーション用アンテナ300と、キャリブレーション用アンテナ300を支持する支持治具350と、を備える。これらキャリブレーション用アンテナ300及び支持治具350の構成、及びキャリブレーション処理については詳しく後述する。
【0022】
<被測定アンテナ及びプローブアンテナの配置>
図2は、被測定アンテナ及びプローブアンテナの配置の一例を示す斜視図である。図3は、プローブアンテナの配置の一例を示す平面図である。また図4は、プローブアンテナの構成の一例を示す斜視図である。なお図3では、プローブアンテナの配置を見やすくするために、電波吸収部材等の図示を省略している。
【0023】
上述のようにアンテナ測定装置10は、複数個のプローブアンテナ30と、アンテナ100が搭載されるポジショナ40と、を備える。一実施形態として、アンテナ測定装置10は、図2及び図3に示すように、15個のプローブアンテナ30a~30oを備える。プローブアンテナ30a~30oは、筐体20内に円環状に並べて配置される。すなわちプローブアンテナ30a~30oは、アンテナ100を囲む仮想円VCに沿って円環状に並べて配置される(図3参照)。なお、「仮想円VC」とは、言い換えれば、円環状に配置された複数のプローブアンテナ30a~30oを繋ぐことで描かれる円であり、アンテナ100を中心する円である。したがって、アンテナ100の周囲に円環状に配置された状態で、各プローブアンテナ30からアンテナ100までの距離は略一定となる。
【0024】
ポジショナ40は、円環状に配置された複数のプローブアンテナ30(30a~30o)の内側を通過するように被測定アンテナ100を移動させる動作を実行可能に構成される。具体的には、ポジショナ40は、床面に敷設された一対のレール90上に配置され、円環状に配置された複数のプローブアンテナ30の内側で、このレール90上をレール90に沿って直線移動可能に構成される。アンテナ100は、例えば、円柱状の外形を有しており、アンテナ100の軸方向(Z方向)が略水平となるようにポジショナ40に搭載される。またアンテナ100は、その軸方向(長手方向)がレール90の敷設方向と一致するようにポジショナ40上に搭載される。
【0025】
これにより、ポジショナ40をレール90に沿って移動させることで、アンテナ100がポジショナ40と共にZ方向に沿って直線移動する。またアンテナ100は、ポジショナ40を移動させた際、アンテナ100の軸中心が複数のプローブアンテナ30で形成される円の中心(仮想円VCの中心)を通るように、ポジショナ40に搭載される。
【0026】
そして、アンテナ特性としてアンテナ100の周方向の指向性を測定する際には、詳しくは後述するがポジショナ40によってアンテナ100を移動させ、複数のプローブアンテナ30がアンテナ100の周囲に並べて配置された状態とする。その状態で、各プローブアンテナ30から順次送信された送信電波をアンテナ100で受信し、アンテナ100で受信された受信電波に基づいてアンテナ100の指向性を測定(推定)する。
【0027】
なおアンテナ100は、図2に示すように、例えば、載置台200上に載置され、この載置台200がポジショナ40に搭載される。載置台200は、複数の車輪を備えて移動可能に構成されており、アンテナ100が載置された状態で、他の場所からポジショナ40上まで移動されてポジショナ40に固定される。この載置台200の構造は、あくまで一例であり、特に限定されるものではない。またアンテナ100は、必ずしも載置台200に搭載されていなくてもよく、例えば、ポジショナ40に直接搭載されていてもよい。
【0028】
複数のプローブアンテナ30が収容される筐体20は、ポジショナ40の移動をガイドするレール90の上方に、レール90を跨いでX方向に設けられている。言い換えれば、レール90は、プローブアンテナ30が収容された筐体20内を通過するようにZ方向に敷設されている。すなわちレール90は、筐体20によって形成される空間であるトンネル部21の一方の外側から他方の外側まで連続してZ方向に敷設される。
【0029】
複数個の各プローブアンテナ30は、筐体20内に設けられる固定部材の一例である固定パネル22に固定されている。固定パネル22は、レール90の敷設方向(Z方向)に対して略直交する方向(X方向)に沿って配置されている。すなわち固定パネル22は、その表面がXY平面と一致するように配置されている。
【0030】
この固定パネル22には、略円形の貫通部23が形成されている。そして複数の各プローブアンテナ30は、この貫通部23の外周部に並べて配置され、それぞれ固定パネル22に固定されている。固定パネル22に固定された複数のプローブアンテナ30で形成される円の中心、つまり仮想円VCの中心は、貫通部23の中心と一致する。
【0031】
なお固定パネル22の下端部には、固定パネル22の一部を切り欠いた切欠き部24が形成される。この切欠き部24は、固定パネル22の下端面から貫通部23まで連続して形成される。固定パネル22に切欠き部24が形成されることで、ポジショナ40を筐体20内で直線移動させられる。すなわち切欠き部24は、ポジショナ40を移動させた際、ポジショナ40がアンテナ100と共に筐体20内を通過できる程度の大きさで形成されている。
【0032】
また筐体20内には、各プローブアンテナ30から送信される送信電波や、プローブアンテナ30の周囲で反射される反射電波を吸収するための複数の電波吸収体25が設けられる。筐体20の内面、特に、固定パネル22の周囲は、これら複数の電波吸収体25によって覆われていることが好ましい。各電波吸収体25は、筐体20の内側に向かって突出する四角錘形状、いわゆるピラミッド型に形成される。電波吸収体25は、その高さに応じて吸収する電波の最低周波数が変化する。このため、電波吸収体25の高さは、吸収させたい電波の最低周波数に合わせて適宜設定される。
【0033】
電波吸収体25は、例えば、発泡スチロールなどのビーズにグラファイトなどを含侵させた材料を四角錘形状とし、その底面にフェライトタイルを貼ることによって形成される。なお電波吸収体25の材料は、特に限定されない。電波吸収体25の材料としては、例えば、炭素材料や金属等の導電性材料を繊維状にして樹脂に練り込んだ材料、カーボン粒子等をウレタンやゴムに混合した誘電体吸収材料、フェライト等の磁性材料等が好適に用いられる。
【0034】
電波吸収体25は、筐体20の内面だけでなく、アンテナ100の周囲の床面側にも配置されることが好ましい(図2参照)。図2では、アンテナ100が筐体20の外側に位置する状態で、アンテナ100の周囲の床面側に電波吸収体25が配置された構成を示したが、実際には、アンテナ100を筐体20内に移動させた状態で、アンテナ100の周囲の床面側に電波吸収体25が配置される。要するに、電波吸収体25は、アンテナ特性の測定時(電波の送受信時)において、測定結果に影響を及ぼす可能性がある電波反射体及びその周囲に配置されることが好ましい。
【0035】
<プローブアンテナの構成例>
プローブアンテナ30の各々は、アンテナ部31を備える。アンテナ部31は、図4に示すように、電波の水平偏波と垂直偏波とを個別に送信できるよう、交差して取り付けられる水平偏波アンテナ31h及び垂直偏波アンテナ31vを備える。水平偏波アンテナ31hは水平偏波用基板32hに形成され、垂直偏波アンテナ31vは垂直偏波用基板32vに形成され、これら水平偏波用基板32hと垂直偏波用基板32vとが直交するように取り付けられる。
【0036】
ここで、アンテナ100は、円柱状の外形を有し、その中心軸方向が鉛直方向となる状態で使用される。一実施形態として、アンテナ測定装置10は、このアンテナ100を寝かせた状態で、アンテナ100の周囲の指向性を測定する。つまりアンテナ100の指向性の測定は、アンテナ100の中心軸方向が水平方向(Z方向)である状態で行われる(図2参照)。このため、各プローブアンテナ30のアンテナ部31は、アンテナ100の中心軸方向となるZ方向とは直交する面(XY面)に沿って配置される。すなわち、アンテナ部31の水平偏波用基板32hが、仮想円VCを含む平面(XY平面)に沿って配置される。言い換えれば、各プローブアンテナ30は、水平偏波用基板32hの表面がZ方向を向くように仮想円VCに沿って配置される。
【0037】
アンテナ部31を構成する水平偏波用基板32h及び垂直偏波用基板32vは、例えば、プリント基板等で形成される。水平偏波アンテナ31h及び垂直偏波アンテナ31vは、プリント基板の銅箔部分を利用したホーンアンテナによって構成される。水平偏波用基板32h及び垂直偏波用基板32vの大きさは、特に限定されないが、例えば、長さ約200mm×幅約220mmである。また、プローブアンテナ30が受信する受信電波(電磁波)の周波数帯域は、特に限定されないが、例えば、約0.7GHz~約2.2GHzである。
【0038】
なお水平偏波アンテナ31hには、同軸ケーブル33hが接続される。同様に、垂直偏波アンテナ31vには同軸ケーブル33vが接続される。これら同軸ケーブル33h,33vは、データ線Sd1(図1参照)の少なくとも一部を構成する。つまり水平偏波信号は、同軸ケーブル33hを介してネットワークアナライザ70に入力され、垂直偏波信号は、同軸ケーブル33vを介してネットワークアナライザ70に入力される。
【0039】
<プローブアンテナの配置>
また上述のように、プローブアンテナ30a~30oのそれぞれは、固定パネル22に形成された円形の貫通部23の周縁部に並べて配置されて、固定パネル22に固定される(図3参照)。これにより、複数個のプローブアンテナ30a~30oは、円環状に並べて配置される。結果的に、円形の貫通部23の中心と、複数のプローブアンテナ30a~30oで形成される円の中心(仮想円VCの中心)と、が一致する。
【0040】
一実施形態では、複数個のプローブアンテナ30は、プローブアンテナ30aとプローブアンテナ30oとの間の部分(切欠き部24に対応する部分)を除いて、等間隔に配置される。具体的には、各プローブアンテナ30は、隣接するプローブアンテナ30に対する中心角が約22.5度となる間隔で配置される。さらにプローブアンテナ30aとプローブアンテナ30oとは、両者の中心角が約45度となる間隔で配置される。
【0041】
また各プローブアンテナ30は、複数のプローブアンテナ30で形成される円(仮想円VC)の径方向外側のプローブアンテナ30の端部近傍で固定パネル22に固定される。具体的には、プローブアンテナ30は、アンテナ部31から貫通部23の径方向に延在する長板状の支持部材34を備え、この支持部材34によって固定パネル22に支持されている。つまりアンテナ部31を構成する水平偏波用基板32h及び垂直偏波用基板32vは、この支持部材34を介して固定パネル22に固定されている。支持部材34は、複数の締結部材35、例えば、ねじ等によって固定パネル22に固定されている(図5参照)。なお支持部材34は、プローブアンテナ30を支持できる剛性を有するものであれば形状は特に限定されず、例えば、柱状の部材等であってもよい。また支持部材34の材料は、特に限定されないが、水平偏波アンテナ31h及び垂直偏波アンテナ31vの高周波特性への影響が少ない材料、例えば、樹脂等であることが好ましい。
【0042】
<プローブアンテナの連結構造>
図5及び図6は、プローブアンテナの連結部を示す拡大図であり、図6は、図5のA-A線に対応する断面図である。
【0043】
図3図5及び図6に示すように、等間隔で配置されたプローブアンテナ30のそれぞれは、プローブアンテナ30で形成される円(仮想円VC)の接線方向に延在する連結部36によって、隣接するプローブアンテナ30と連結される。言い換えると、各プローブアンテナ30は、固定パネル22に形成された貫通部23の円周方向で、隣接するプローブアンテナ30と連結される。すなわち隣接する二つのプローブアンテナ30同士が、仮想円VCの接線方向に延在する連結部36によって連結される。一実施形態として、例えば、各プローブアンテナ30のアンテナ部31が、連結部36によって隣接するアンテナ部31と連結される。つまり隣接する二つのプローブアンテナ30のアンテナ部31同士が連結部36によって連結される。
【0044】
詳しくは、アンテナ100の周囲に沿って等間隔で一列に配置されたプローブアンテナ30a~30oのうち、その列の端部に位置するプローブアンテナ30aは、隣接するプローブアンテナ30bのみに連結される。同様に、列の端部に位置するプローブアンテナ30oは、隣接するプローブアンテナ30hのみに連結される。残りのプローブアンテナ30b~30nは、両側に隣接するプローブアンテナ30とそれぞれ連結される。例えば、プローブアンテナ30bは、隣接するプローブアンテナ30a,30cとそれぞれ連結される。一実施形態として、アンテナ部31を構成する水平偏波用基板32h同士が、連結部36によってそれぞれ連結される。
【0045】
この連結部36は、例えば、水平偏波用基板32hとは別部材である板状の連結板37で構成される。連結板37は、水平偏波用基板32hの一方面側に配置され、隣接するプローブアンテナ30の水平偏波用基板32hにそれぞれ固定される。すなわち連結板37は、水平偏波用基板32hのZ方向における一方の表面に取り付けられて、隣接する二つの水平偏波用基板32h同士を連結する。一例として、連結板37は、プリント基板用の絶縁基板、例えば、ガラスエポキシ基板等で形成され、固着部材38によって各プローブアンテナ30の水平偏波用基板32hにそれぞれ固着される。なお連結板37の材料は、特に限定されないが、水平偏波用基板32h及び垂直偏波用基板32vの高周波特性への影響が少ないものであることが好ましく、非導電性の材料、例えば、樹脂等が好適である。
【0046】
連結板37及び各プローブアンテナ30の水平偏波用基板32hには、固着部材38が挿通される挿通孔39がそれぞれ形成されている。この挿通孔39に固着部材38をはめ込むことで、連結板37が各水平偏波用基板32hに固着される。一実施形態として、各連結板37は、それぞれ複数、例えば、2つの固着部材38によって各水平偏波用基板32hに固着される。これにより、隣接する二つのプローブアンテナ30の水平偏波用基板32h同士が連結板37(連結部36)によって連結される。なお固着部材38の材料は、特に限定されないが、連結板37と同様、高周波特性への影響が少ない材料であることが好ましい。一実施形態として、固着部材38は、例えば、樹脂製のプッシュリベットである。
【0047】
このように各プローブアンテナ30を、水平偏波用基板32hの一方面側に配置される連結板37によって連結することで、各プローブアンテナ30を円環状に等間隔に高精度に位置決めした状態で固定パネル22に固定し易くなる。
【0048】
各プローブアンテナ30を固定パネル22に取り付ける手順は、特に限定されないが、例えば、次のような手順で行うことが好ましい。まずは、各プローブアンテナ30の支持部材34を締結部材35によって固定パネル22に仮固定する。つまり各プローブアンテナ30の水平偏波用基板32h等が多少動く程度に、支持部材34を締結部材35で固定パネル22に取り付ける。この状態で、各プローブアンテナ30の水平偏波用基板32h同士を連結板37によって連結する。その後、締結部材35をさらに締め付けることで、支持部材34を固定パネル22に本固定する。これにより、プローブアンテナ30を等間隔に高精度に位置決めした状態で固定パネル22に取り付け易くなる。したがって、プローブアンテナ30の固定パネル22への取り付け作業時間を短縮することができる。
【0049】
上述のように水平偏波用基板32h及び連結板37に形成される挿通孔39は、例えば、プリント基板加工機によって水平偏波用基板32h及び連結板37に形成される。このため挿通孔39は水平偏波用基板32h及び連結板37の所望の位置に高精度に形成できる。したがって、この挿通孔39に固着部材38を挿通し、固着部材38によって連結板37を各プローブアンテナ30の水平偏波用基板32hに固着することで、各プローブアンテナ30を等間隔で高精度に位置決めできる。
【0050】
この状態で、締結部材35を締め付けて、支持部材34を固定パネル22に固定することで、各プローブアンテナ30を等間隔に高精度に位置決めした状態で固定パネル22に取り付けられる。これにより、各プローブアンテナ30を固定パネル22に取り付ける作業に要する時間が短縮される。また各プローブアンテナ30を連結板37によって連結することで、各プローブアンテナ30の位置精度を高精度に維持しつつ、固定パネル22に対する各プローブアンテナ30の取付け構造を簡略化できる。したがって、アンテナ測定装置10の小型化を図ることができる。
【0051】
連結板37によって各プローブアンテナ30の水平偏波用基板32hが連結される位置は、特に限定されないが、一実施形態として、水平偏波用基板32hの先端部、つまり固定パネル22とは反対側の水平偏波用基板32hの端部としている。すなわち、水平偏波用基板32hは、仮想円VCの径方向外側の端部で支持部材34を介して固定され、仮想円VCの径方向内側の端部(水平偏波用基板32hの先端部)、あるいはその端部近傍で連結板37によって連結される。
【0052】
各プローブアンテナ30を構成する水平偏波用基板32hは、略矩形の基板であるため、円環状に配置された各プローブアンテナ30の隙間は、水平偏波用基板32hの先端部側ほど狭くなる。したがって、水平偏波用基板32hの先端部近傍に連結板37を配置することで、連結板37の面積を比較的小さくしても隣接するプローブアンテナ30同士を良好に固定できる。また連結板37の面積が小さくなることで材料コストを抑制できる。
【0053】
なお連結部36(連結板37)の構成は、仮想円VCの接線方向(仮想円VCの周方向)、つまりプローブアンテナ30の並び方向、で隣接するプローブアンテナ30を連結できるものであれば、特に限定されない。連結部36は、例えば、次のような構成であってもよい。
【0054】
<プローブアンテナの連結部の変形例1>
図7は、プローブアンテナの連結部の変形例を示す拡大平面図である。
上述の構成では、連結板37を、水平偏波用基板32hの先端部、つまり仮想円VCの径方向内側の水平偏波用基板32hの端部、に配置したが、連結板37の配置は特に限定されず、適宜決定されればよい。また連結板37の形状や大きさも特に限定されず、隣接する二つの水平偏波用基板32hを連結できる形状、大きさであればよく、プローブアンテナ30の間隔等に応じて適宜決定されればよい。
【0055】
例えば、図7に示すように、連結板37(連結部36)は、仮想円VCの径方向外側の水平偏波用基板32hの端部、つまり水平偏波用基板32hの固定パネル22側の端部に配置してもよい。このような構成としても、隣接する二つのプローブアンテナ30同士を連結板37によって良好に連結できる。またこの場合、支持部材34が締結部材35で固定パネル22に固定される位置と、連結板37が固着部材38によって水平偏波用基板32hに固着される位置と、が比較的近くなる。言い換えれば、各プローブアンテナ30の固定パネル22に対する固定位置と、隣接するプローブアンテナ30に対する固定位置と、が比較的近くなる。これにより、各プローブアンテナ30をより強固に固定でき、固定パネル22に固定された各プローブアンテナ30の位置ずれ等の発生が抑えられる。
【0056】
なお一実施形態として、連結板37によって隣接する二つの水平偏波用基板32h同士が連結された構成を説明したが、例えば、隣接する二つの支持部材34同士が連結板37によって連結されてもよい。この構成とした場合でも、各プローブアンテナ30を等間隔に位置決めして固定パネル22に固定し易くなる。したがって、各プローブアンテナ30を固定パネル22に取り付ける時間を短縮することができる。
【0057】
<プローブアンテナの連結部の変形例2>
図8及び図9は、プローブアンテナの連結部の変形例を示す拡大図であり、図9は、図8のB-B線に対応する断面図である。
上述の一実施形態では、連結部36が、水平偏波用基板32hとは別部材である板状の連結板37からなる構成を例示したが、連結部36の構成はこれに限定されない。例えば、図8及び図9に示すように、連結部36は、水平偏波用基板32hと一体的に形成されてもよい。この場合、各プローブアンテナ30の連結部36は、隣接するプローブアンテナ30の連結部36と、Z方向で重ねられて固着部材38によって固着される。
【0058】
このため、連結部36は、水平偏波用基板32hの厚さよりも薄く形成されることが好ましい。より詳しくは、連結部36には、隣接するプローブアンテナ30の連結部36に対向する面に、凹部36aが設けられていることが好ましい。この凹部36aは、水平偏波用基板32hの厚さの半分程度の厚みで形成されることが好ましい。これにより、連結部36を重ねた際、水平偏波用基板32hの厚さ方向(Z方向)での撓み変形を抑制できる。したがって、隣接する二つのプローブアンテナ30同士を、連結部36を介してより良好に連結できる。
【0059】
また一実施形態として、各プローブアンテナ30が一つの連結部36によって連結された構成を例示したが、勿論、隣接する二つのプローブアンテナ30は、複数の連結部36によって連結されてもよい。また一実施形態として、プローブアンテナ30が、水平偏波用基板32h及び垂直偏波用基板32vを含むアンテナ部31を備える構成を例示したが、プローブアンテナ30は、この構成に限定されない。プローブアンテナ30は、それ自体の構成に拘わらず、隣接する二つのプローブアンテナ30が、仮想円VCの接線方向に延在する連結部36を介して連結されることで、上述した作用効果が得られる。
【0060】
<被測定アンテナの構成例>
図10は、被測定アンテナの構成の一例を示すブロック図である。一実施形態として、アンテナ測定装置10の測定対象であるアンテナ100は、例えば、共用アンテナであり、図10に示すように、電波送受信部110と、被測定アンテナ入出力部130と、を含む。なお、この例では、被測定アンテナ入出力部130は、例えば、コネクタで実現されてアンテナ100の一部を構成するが、例えば、配線で実現され、アンテナ100の一部を構成しない場合もある。
【0061】
電波送受信部110は、ローバンド送受信素子部111及びハイバンド送受信素子部112を備える。ローバンド送受信素子部111とハイバンド送受信素子部112とでは、送受信する電波の周波数帯域が異なる。ハイバンド送受信素子部112で送受信する電波の周波数帯域は、ローバンド送受信素子部111で送受信する電波の周波数帯域よりも高い。このように電波送受信部110がローバンド送受信素子部111とハイバンド送受信素子部112とを備えることで、アンテナ100は、比較的広い周波数範囲で電波の送受信を行うことができる。なおローバンド送受信素子部111で送受する電波の周波数帯域は、ハイバンド送受信素子部112で送受信する電波の周波数帯域の一部と重なっていてもよい。
【0062】
ローバンド送受信素子部111及びハイバンド送受信素子部112で送受信する電波の各周波数帯域は、特に限定されず、適宜設定されればよい。一例としては、ローバンド送受信素子部111で送受信する電波の周波数帯域は1GHz以下であり、ハイバンド送受信素子部112で送受信する電波の周波数帯域は1GHz以上である。
【0063】
また被測定アンテナ入出力部130は、ローバンド入出力部131及びハイバンド入出力部132を備える。ローバンド入出力部131には、ローバンド垂直偏波信号Slv及びローバンド水平偏波信号Slhが入力される。ローバンド垂直偏波信号Slvとは、ローバンド送受信素子部111に入力される垂直(鉛直)方向に偏波された電波の受信信号であり、ローバンド水平偏波信号Slhとは、ローバンド送受信素子部111に入力される水平方向に偏波された電波の受信信号である。またハイバンド入出力部132には、ハイバンド垂直偏波信号Shv及びハイバンド水平偏波信号Shhが入力される。ハイバンド垂直偏波信号Shvとは、ハイバンド送受信素子部112に入力される垂直(鉛直)方向に偏波された電波の受信信号であり、ハイバンド水平偏波信号Shhとは、ハイバンド送受信素子部112に入力される水平方向に偏波された電波の受信信号である。
【0064】
<アンテナ特性測定部の説明>
次に、アンテナ測定装置10が備えるアンテナ特性測定部50の構成について説明する。一実施形態として、アンテナ特性測定部50は、上記のようなアンテナ100によって受信された受信電波に基づいて、アンテナ100の周方向の指向性を測定(推定)する。すなわちアンテナ特性測定部50は、アンテナ100の水平面指向性を測定する。
【0065】
図11は、アンテナ測定装置を構成するアンテナ特性測定部を示すブロック図である。図11に示すように、アンテナ特性測定部50は、入力部51、指向性測定部52、出力部53、記憶部54を備える。
【0066】
入力部51は、ネットワークアナライザ70から送られる受信電波信号情報を指向性測定部52に入力する。受信電波信号情報は、アンテナ100が受信した受信電波をアナログ電気信号である受信電波信号に変換し、さらに受信電波信号をA/D変換したデジタル信号情報である。また、入力部51は、例えば、タイミング信号、アンテナ100の位置情報等の各種の情報をデジタル信号として指向性測定部52に入力する。さらに、入力部51は、マンマシンインターフェースとしての機能を備える場合もある。
【0067】
指向性測定部52は、入力部51から入力された受信電波信号情報を含む各種情報からアンテナ100の周方向の指向性(水平面指向性)を測定(推定)する。なお指向性測定部52は、一例として、CPUを備えるマイクロコンピュータを用いて実現できる。マイクロコンピュータには、指向性測定部52として機能させるためのコンピュータプログラム(アンテナ指向性測定プログラム)が予めインストールされる。マイクロコンピュータは、このプログラムを実行することで、指向性測定部52が備える複数の情報処理部として機能する。
【0068】
一実施形態として、指向性測定部52は、トリガ信号生成部521と、送信電波情報生成部522と、受信電波情報解析部523と、補正部524とを備える。トリガ信号生成部521は、指向性の測定、つまりプローブアンテナ30とアンテナ100との間での電波の送受信、を開始するためのトリガ信号を生成する。またトリガ信号生成部521は、アンテナ100(ポジショナ40)の移動を停止するためのトリガ信号を生成する。これらのトリガ信号は、所定のタイミングで、ポジショナ制御部80、スイッチタイミング制御部60、ネットワークアナライザ70等に送信される。
【0069】
送信電波情報生成部522は、各プローブアンテナ30から送信電波(水平偏波電波及び垂直偏波電波)を送信するための周波数情報、変調情報、増幅情報等の情報を生成する。この情報は、送信電波を送信する各プローブアンテナ30の特性情報、各プローブアンテナ30とのインターフェース関係の特性情報等を考慮して生成される。なお、送信電波情報生成部522による情報生成方法は公知の技術であるため、情報生成方法の詳細な説明は省略する。
【0070】
受信電波情報解析部523は、ネットワークアナライザ70から送られた受信電波信号情報(受信水平偏波電波信号情報及び受信垂直偏波電波信号情報)を解析する。受信電波情報解析部523は、例えば、受信電波信号の振幅情報と位相情報とを含む受信電波信号情報を、円周方向の中心角(各プローブアンテナ30の配置角度)及びZ方向の距離に対する離散データとする。
【0071】
補正部524は、詳しくは後述するが、受信電波情報解析部523で解析された解析データを、例えば、受信電波を受信した測定点に応じて適宜補正する。出力部53は、指向性測定部52により生成された各種情報を外部に出力する。一例として、出力部53は、プローブアンテナ30に伝送される送信電波信号を生成するための送信電波信号情報を出力する。すなわち出力部53は、トリガ信号生成部521によって生成された測定開始のためのトリガ信号が送信されるタイミングで、送信電波情報生成部522によって生成された上記情報に基づく送信電波信号情報をネットワークアナライザ70に出力する。なお、出力部53から送信電波信号情報が送信される際、ネットワークアナライザ70は、送信電波信号情報から送信電波信号を生成する送信電波生成装置として機能する。
【0072】
記憶部54は、入力部51から指向性測定部52に入力された情報を記憶し、指向性測定部52との間で情報を入出力し、入出力する情報を記憶する。なお記憶部54は、指向性測定部52の中の各機能ブロック間の情報を記憶することもできる。さらに記憶部54は、出力部53から出力されるべき情報を記憶することもできる。
【0073】
この記憶部54は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体で構成される。例えば、記憶部54は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の少なくとも1つを含んで構成される。また記憶部54は、ROM、RAMに加え、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等の少なくとも1つを含んで構成されてもよい。記憶部54は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。また記憶部54は、本発明に係る処理を実行可能なプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールなどを保存することもできる。
【0074】
なお、アンテナ特性測定部50は、例えば、ブロック図の機能に係る処理を実行する半導体回路やマイコン等からなるハードウェアにより実装された装置として構成される。もしくは、汎用的なサーバ機器やクラウドコンピューティングサービス上に構築された仮想サーバ等により構成されてもよい。また、アンテナ特性測定部50は、図示しないCPU(Central Processing Unit)により構成されてもよい。
【0075】
そして、アンテナ特性測定部50は、記憶部54を除いて、HDD(Hard Disk Drive)等の記録装置からメモリ上に展開したOS(Operating System)等のミドルウェアや、その上で稼働するソフトウェアにより実行されてもよい。
【0076】
また、アンテナ特性測定部50は、これらのハードウェアによる実装とソフトウェアによる実装とを適宜組み合わせて構成されてもよい。またアンテナ特性測定部50は、全体を1つの筐体で実装する構成に限らず、一部の機能を別の筐体で実装され、これらの筐体間を通信ケーブル等により相互に接続された構成であってもよい。すなわち、アンテナ特性測定部50の実装形態は、特に限定されるものではなく、システムの環境等に応じて適宜柔軟に変更できる。
【0077】
さらに、アンテナ特性測定部50は、アンテナ測定装置10の他の構成と組み合わされて実現されてもよい。例えば、アンテナ測定装置10の他のハードウェアに追加される実装、アンテナ測定装置10の他のソフトウェアに追加される実装、によってアンテナ特性測定部50が実現されてもよい。
【0078】
<アンテナ測定装置の動作の説明>
図12及び図13は、アンテナ測定装置の動作を説明する図であり、送信電波が送信されるプローブアンテナの位置と、被測定アンテナの各測定点との位置関係を説明する図である。以下では、アンテナ測定装置10の動作、主にアンテナ特性測定部の動作について説明する。
【0079】
アンテナ測定装置10による指向性の測定では、アンテナ100を、その軸方向(Z方向)に直線移動させながら、複数のプローブアンテナ30から送信電波を順次送信し、各プローブアンテナ30から送信された送信信号を、アンテナ100の異なる測定点でそれぞれ受信する。そして、各測定点で受信した受信電波から得られる受信電信号情報を解析して離散データ等の解析データとすると共に、この解析データを必要に応じて補正する。これにより、アンテナ100の周方向の指向性を比較的短時間で測定することが可能となる。
【0080】
一実施形態として、アンテナ測定装置10は、上述のように15個のプローブアンテナ30(30a~30o)を備える。各プローブアンテナ30から送信される送信電波は、アンテナ100に所定間隔で配置された各測定点でそれぞれ受信される。指向性の測定は、アンテナ100を、図12及び図13に示すように、その中心軸C1に沿ったZ方向に直線移動しながら行われる。アンテナ100には、各プローブアンテナ30a~30oから送信される送信電波に対応する測定点P1~P15が、Z方向において所定距離Da毎に配置されている。
【0081】
ここで、アンテナ100の各測定点P1~P15は、中心軸C1上に直線状に配置されているものとみなす。なお各プローブアンテナ30a~30oの向きを考慮すると、各測定点P1~P15は、中心軸C1の周囲に螺旋状に配置される。
【0082】
また各プローブアンテナ30a~30oは、アンテナ100の中心軸C1から所定距離Dbだけ離れた位置に配置されている。つまりアンテナ100は、その軸中心C1が複数のプローブアンテナ30で形成される円の中心と一致するように配置される。
【0083】
そして、指向性の測定を行う際には、まず、例えば、作業者によるスイッチ操作等に応じて、指向性の測定開始を指示する信号(測定開始情報信号)がアンテナ特性測定部50の入力部51から指向性測定部52に入力される。測定開始情報信号が指向性測定部52に入力されると、指向性の測定を開始するためトリガ信号がトリガ信号生成部521によって生成される。生成されたトリガ信号は、指向性測定部52から出力部53を介してポジショナ制御部80に送信される。
【0084】
トリガ信号を受信したポジショナ制御部80は、ポジショナ40の位置情報を逐次読み込み、アンテナ100が搭載されたポジショナ40をレール90に沿って筐体20の内部に向かって移動させる。ポジショナ制御部80は、アンテナ100の位置を問い合わせる信号を受信すると、それに応じて、アンテナ100の位置情報をアンテナ特性測定部50(指向性測定部52)に適宜送信する。
【0085】
なおポジショナ制御部80は、アンテナ100の指向性測定が終了するまでアンテナ100が搭載されたポジショナ40を略一定速度で連続的に移動させる。ただし、指向性測定時のアンテナ100(ポジショナ40)の移動速度は、必ずしも一定でなくてもよく、必要に応じて適宜変更してもよい。例えば、プローブアンテナ30から送信される送信電波をアンテナ100が受信するタイミングではポジショナ40を停止させ、送信電波をアンテナ100が受信していないタイミングでポジショナ40を移動させてもよい。
【0086】
アンテナ100(ポジショナ40)の移動が開始されると、アンテナ100の位置を問い合わせる信号がアンテナ特性測定部50(指向性測定部52)からポジショナ制御部80に連続して送信される。そして、アンテナ100が送信電波を受信できる位置まで移動すると、そのことを示す信号(受信準備完了信号)がアンテナ特性測定部50に送信される。例えば、アンテナ100の測定点P1が、Z方向でプローブアンテナ30に対応する所定位置Z1まで移動すると(図12参照)、受信準備完了信号がアンテナ特性測定部50に入力される。受信準備完了信号がアンテナ特性測定部50によって受信されると、トリガ信号生成部521によって作成されたトリガ信号が、スイッチタイミング制御部60及びネットワークアナライザ70に送信される。また送信電波情報生成部522によって生成された情報が、アンテナ特性測定部50からネットワークアナライザ70を介してプローブアンテナ30aに送信される。これにより、プローブアンテナ30aからの送信電波の送信が開始される。
【0087】
なお一実施形態として、アンテナ特性測定部50からスイッチタイミング制御部60に送信されるトリガ信号には、例えば、複数のプローブアンテナ30から送信電波を送信する一つ(例えば、プローブアンテナ30a)を選択する情報が含まれる。また、このトリガ信号には、プローブアンテナ30を構成する水平偏波アンテナ31h又は垂直偏波アンテナ31vの一方を選択する情報が含まれる。このような情報を含むトリガ信号が送信されることで、送信電波を送信する一つのプローブアンテナ30aが選択されると共に、選択されたプローブアンテナ30aについて水平偏波アンテナ31hと垂直偏波アンテナ31vとの切り替えが行われる。
【0088】
そして、プローブアンテナ30aから送信された送信電波は、アンテナ100の測定点P1で受信される。アンテナ100の測定点P1で受信された受信電波は、アンテナ100でアナログ電気信号としての受信電波信号に変換され、受信電波信号がスイッチSW2を介してネットワークアナライザ70に入力される。受信電波信号はネットワークアナライザ70でA/D変換され、デジタル情報である受信電波信号情報としてアンテナ特性測定部50に入力される。この場合、ネットワークアナライザ70は、受信電波信号情報生成装置として機能する。
【0089】
アンテナ特性測定部50に入力された受信電波信号情報は、例えば、記憶部54に一時的に記憶されると共に、受信電波情報解析部523によって解析される。上述のように、受信電波情報解析部523は、例えば、受信電波信号の振幅情報と位相情報とを含む受信電波信号情報を、円周方向の中心角(各プローブアンテナ30の配置角度)及びZ方向の距離に対する離散データ等の解析データとする。この解析データも、例えば、記憶部54に一時的に記憶される。
【0090】
また受信電波信号情報がアンテナ特性測定部50に入力されると、アンテナ特性測定部50からスイッチタイミング制御部60に電波取得信号が送信される。スイッチタイミング制御部60に電波取得信号が入力されると、スイッチタイミング制御部60によってスイッチSW1の回路が切り替えられプローブアンテナ30aがOFF状態となり、スイッチSW2の回路が切り替えられてアンテナ100がOFF状態となる。
【0091】
上述のように一実施形態として、アンテナ100の指向性測定の間、アンテナ100(ポジショナ40)は、略一定速度で移動している。そして、図13に示すように、アンテナ100がZ方向に所定距離Daだけ移動し、測定点P2がプローブアンテナ30に対応する位置Z1に達すると、受信準備完了信号がポジショナ制御部80からアンテナ特性測定部50に入力される。これにより、次のプローブアンテナ30bから送信電波を送信するためのトリガ信号がトリガ信号生成部521によって生成される。このトリガ信号は、アンテナ特性測定部50からスイッチタイミング制御部60及びネットワークアナライザ70に送信される。また送信電波情報生成部522によって生成された情報が、アンテナ特性測定部50からネットワークアナライザ70を介してプローブアンテナ30bに送信される。これにより、プローブアンテナ30bからの送信電波の送信が開始される。
【0092】
プローブアンテナ30bから送信された送信電波は、アンテナ100の測定点P2で受信される。アンテナ100の測定点P2で受信された受信電波は、アンテナ100でアナログ電気信号としての受信電波信号に変換され、受信電波信号がスイッチSW2を介してネットワークアナライザ70に入力される。受信電波信号はネットワークアナライザ70でA/D変換され、デジタル情報である受信電波信号情報としてアンテナ特性測定部50に入力される。
【0093】
アンテナ特性測定部50に入力された受信電波信号情報は、測定点P1で電波が受信された場合と同様に、受信電波情報解析部523によって解析され、円周方向の中心角及びZ方向の距離に対する離散データ等の解析データとされる。またアンテナ特性測定部50からスイッチタイミング制御部60に電波取得信号が送信されることで、プローブアンテナ30b及びアンテナ100はスイッチタイミング制御部60によってそれぞれOFF状態に切り替えられる。
【0094】
次いで、受信電波情報解析部523で解析された解析データは、補正部524によって、例えば、受信電波を受信した測定点に応じて適宜補正される。詳しくは、補正部524は、送信電波を送信しているプローブアンテナ30からアンテナ100の「実測定点」までの距離と、送信電波を送信しているプローブアンテナ30からアンテナ100の「仮想測定点」までの距離との差分等に基づいて解析データを適宜補正して補正データとする。この補正データも、例えば、記憶部54に一時的に記憶される。
【0095】
ここで、「実測定点」とは、各プローブアンテナ30から送信される送信電波が実際に測定されるアンテナ100の測定点である。すなわち、「実測定点」は、送信電波を送信しているプローブアンテナ30から延長される延長線がアンテナの中心軸C1と直交する点と略一致する。例えば、図12に示すように、プローブアンテナ30aから送信電波が送信される場合、送信電波はアンテナ100の測定点P1で受信される。したがって、プローブアンテナ30aからアンテナ100の「実測定点」までの距離は、図中O-P1間に相当する。また例えば、図13に示すように、プローブアンテナ30bから送信電波が送信される場合、送信電波はアンテナ100の測定点P2で受信される。したがって、プローブアンテナ30bからアンテナ100の「実測定点」までの距離は、図中O-P2間に相当する。このように、各プローブアンテナ30からアンテナ100の「実測定点」までの距離とは、アンテナ100とプローブアンテナ30との距離Dbに相当する。
【0096】
一方、「仮想測定点」とは、各プローブアンテナ30から送信される送信電波を本来測定したいアンテナ100の測定点である。プローブアンテナ30aからプローブアンテナ30oまで順に送信電波を送信する一回の測定において、上記「仮想測定点」は一点に設定される。図12及び図13に示す例では、測定点P1~P15において各プローブアンテナ30a~30oで送信される送信電波をそれぞれ測定するが、このうちの測定点P1が「仮想測定点」である。
【0097】
この場合、プローブアンテナ30aからアンテナ100の「仮想測定点」までの距離は、図中O-P1間に相当し、プローブアンテナ30aからアンテナ100の「実測定点」までの距離と一致する。このため、アンテナ100の測定点P1で受信された受信電波に基づく解析データの補正は不要である。
【0098】
またプローブアンテナ30bからアンテナ100の「仮想測定点」までの距離は、図13に示すように、図中O-P1間の距離Dcに相当し、プローブアンテナ30bからアンテナ100の「実測定点」までの距離Dbとは一致しない。このため、プローブアンテナ30bから送信された送信電波(アンテナ100の測定点P2で受信された受信電波)に基づく解析データは、補正部524によって補正される。
【0099】
つまり補正部524は、各プローブアンテナ30からアンテナ100の「仮想測定点」までの距離と、各プローブアンテナ30からアンテナ100の「実測定点」までの距離との差分に基づいて、各測定点P2~P15で受信された受信電波に基づく解析データを適宜補正する。換言すれば、補正部524は、「仮想測定点」と「実測定点」とが一致していない各測定点で受信された受信電波に基づく解析データを適宜補正する。なお、補正部524による解析データの補正方法自体は、特に限定されず、既知の方法を採用すればよいため、ここでの詳細な説明は省略する。また一実施形態として、測定点P1を「仮想測定点」に設定した例を説明したが、勿論、測定点P1以外の測定点P2~P15が「仮想測定点」に設定されてもよい。
【0100】
その後、アンテナ測定装置10は、残りのプローブアンテナ30c~30oについても同様の処理を繰り返す。アンテナ測定装置10は、アンテナ100がZ方向に所定距離Daだけ進む毎に、上記の処理を繰り返す。すなわち、指向性測定部52は、最後のプローブアンテナ30oから送信された送信電波に基づく受信電波信号情報を受信するまで、アンテナ100が所定距離Daだけ移動する毎に上記トリガ信号の送信を繰り返す。
【0101】
アンテナ100が最後の測定点P15を超えて移動したことを示す信号が指向性測定部52に入力されると、アンテナ100(ポジショナ40)の移動を停止するトリガ信号がトリガ信号生成部521によって生成されてポジショナ制御部80に送信される。これにより、アンテナ100(ポジショナ40)の移動が停止され、一回の指向性の測定が終了する。そして上述のように、補正部524に補正された補正データに基づいてアンテナ100の周囲(周方向)の指向性が測定(推定)される。
【0102】
なお、アンテナ100に対して指向性の測定を実行する回数は特に限定されない。アンテナ100の指向性の測定は、アンテナ100の軸方向(Z方向)において複数回連続して実行してもよい。その際、上記の所定距離Daは、アンテナ特性測定部50が任意の値に設定することができる。ただし、一回の指向性の測定が行われる間、つまりプローブアンテナ30aからプローブアンテナ30oまで順に送信電波が送信される間は、上記の所定距離Daは同一の値とすることが好ましい。
【0103】
以上説明したように一実施形態として、アンテナ測定装置10は、アンテナ100を軸方向(Z方向)に移動させながら、プローブアンテナ30a~30oから送信した送信電波を、アンテナ100の各測定点P1~P15で受信する。そしてアンテナ測定装置10は、各測定点P1~P15で受信した受信電波に基づく解析データを、アンテナ100の同一の「仮想測定位置」(例えば、測定点P1)で受信した解析データとする補正を行うようにした。
【0104】
これにより、アンテナ100の軸方向(Z方向)の移動と停止とを繰り返すことなく、アンテナ100の周方向の電波特性を測定することができる。その結果、アンテナ100の周方向の指向性を比較的短時間で測定することができる。また上述のように各プローブアンテナ30は、隣接するプローブアンテナ30が、連結部36によって連結されることで、高精度に位置決めされた状態で固定パネル22に取り付けられる。このため、指向性測定時の各プローブアンテナ30の位置ずれも抑えられる。したがって、アンテナ100の周方向の指向性をより正確に測定できる。
【0105】
なお一実施形態として、上述のアンテナ測定装置10では、アンテナ100が載置された載置台200がポジショナ40に搭載され、このポジショナ40の移動を制御することで、アンテナ100を等速度で移動させる。このため、ポジショナ40の移動速度と移動時間とから、アンテナ100(ポジショナ40)のZ方向の位置を的確に把握できる。したがって、ポジショナ制御部80は、ポジショナ40(アンテナ100)の位置情報を取得することなく、予め決められたタイミングで、受信準備完了信号等をアンテナ特性測定部50に送信してもよい。この場合でも、各プローブアンテナ30からの送信電波を、アンテナ100の各測定点P1~P15にて適切に受信できる。
【0106】
(キャリブレーション処理の説明)
アンテナ測定装置10は、上述のように複数のプローブアンテナ30を備える。各プローブアンテナ30は、個別に設けられるデータ線Sd1を介してネットワークアナライザ70に接続される。すなわち、アンテナ測定装置10は、各プローブアンテナ30a~30oとネットワークアナライザ70とを繋ぐ複数の経路を備えている。そのため、所定のタイミングで各経路の特性を測定し、各経路の特性差が小さくなるように、各経路の特性差を補正するキャリブレーション処理を実施することが望ましい。
【0107】
一実施形態として、アンテナ測定装置10は、以下に説明する方法で、キャリブレーション処理を実施している。まずは、キャリブレーション処理に用いられるキャリブレーション用アンテナ300及び支持治具350の構成について説明する。図14は、キャリブレーション用アンテナ及び支持治具の概略構成を示す斜視図である。
【0108】
一実施形態として、アンテナ測定装置10は、上述のようにキャリブレーション処理の実施時に使用されるキャリブレーション用アンテナ300と、このキャリブレーション用アンテナ300を回転可能に支持する支持治具350と、を備える。キャリブレーション処理時には、図1に点線で示すように、被測定アンテナであるアンテナ100から取り外した第1ケーブルであるデータ線Sd3を、キャリブレーション用アンテナ300に接続する。
【0109】
またキャリブレーション用アンテナ300を、複数のプローブアンテナ30に対応する位置に配置する。すなわちキャリブレーション用アンテナ300を複数のプローブアンテナ30で形成される円(仮想円VC)内に配置する。言い換えれば、キャリブレーション用アンテナ300を、複数のプローブアンテナ30が固定された固定パネル22の貫通部23内に配置する。
【0110】
そして、キャリブレーション用アンテナ300を回転させてプローブアンテナ30の各々に順次対向させ、キャリブレーション用アンテナ300に対向する各プローブアンテナ30と測定器であるネットワークアナライザ70とを繋ぐ第2ケーブルであるデータ線Sd1を含む各経路の特性を測定する。その後、この測定の結果に基づいて、複数の経路の特性差を補正する。
【0111】
このキャリブレーション用アンテナ300は、キャリブレーション処理を実施する際に、各プローブアンテナ30から送信される送信電波を受信、又は各プローブアンテナ30に対して送信電波を送信するためのものである。キャリブレーション処理において、キャリブレーション用アンテナ300は、複数の各プローブアンテナ30に共通して使用される。
【0112】
図14に示すように、キャリブレーション用アンテナ300は、プローブアンテナ30と同一形状を有する。すなわちキャリブレーション用アンテナ300は、プローブアンテナ30と同様に、水平偏波アンテナ301h及び垂直偏波アンテナ301vを含むアンテナ部301を有する。水平偏波アンテナ301hは水平偏波用基板302hに形成され、垂直偏波アンテナ301vは垂直偏波用基板302vに形成され、これら水平偏波用基板302hと垂直偏波用基板302vとは直交するように取り付けられる。勿論、キャリブレーション用アンテナ300の構成は、これに限定されず、各プローブアンテナ30に対向させることができ、その状態で各経路の特性を測定できるものであればよい。
【0113】
そのためには、キャリブレーション用アンテナ300は、できるだけシンプルな構造であることが好ましく、また軽量なものであることが好ましい。後述のように、キャリブレーション用アンテナ300は、各プローブアンテナ30に対向できるように、支持治具350によって回転可能に支持される。キャリブレーション用アンテナ300がシンプルな構造であり、また軽量であれば、キャリブレーション用アンテナ300を支持治具350によって回転可能に支持し易くなる。その結果、支持治具350の構造を簡素化でき、また支持治具350の小型化を図ることができる。
【0114】
キャリブレーション用アンテナ300を支持する支持治具350は、キャリブレーション用アンテナ300が固定される軸部材351と、軸部材の両端部を保持する一対の軸保持部材352と、軸保持部材352が所定間隔で配設される土台部353と、を備える。
【0115】
軸部材351は、キャリブレーション用アンテナ300が固定されてキャリブレーション用アンテナ300の回転中心となる部材であり、断面が円形の棒状の部材である。キャリブレーション用アンテナ300は、軸部材351の長手方向の中央部に固定される。またキャリブレーション用アンテナ300は、垂直偏波用基板302vの表面が軸部材351の長手方向(軸方向)に沿うように配置される。軸部材351の材料は、特に限定されないが、高周波特性への影響が少ない材料であることが好ましく、例えば、樹脂材料等が好適に用いられる。この軸部材351の長手方向(軸方向)の両端部は、一対の軸保持部材352によって回転可能に保持される。すなわち軸部材351は、キャリブレーション用アンテナ300が複数のプローブアンテナ30の並設方向に沿って回転可能に、軸保持部材352によって保持される。
【0116】
一対の軸保持部材352は、いわゆるシャフトホルダであり、所定間隔を空けて両者が対向するように配置されて土台部353に固定される。土台部353は、支持治具350の基礎となる部材であり、所定間隔で設けられる一対の支柱部354を有する。一対の軸保持部材352は、各支柱部354の先端部(図14中上方の端部)付近にそれぞれ固定される。土台部353の材料としては、高周波特性への影響が少ない材料で形成されることが好ましく、一実施形態として、木材が用いられる。勿論、土台部353の材料は、木材に限定されず、例えば、樹脂材料等であってもよい。なお土台部353の構造は、特に限定されず、キャリブレーション用アンテナ300と共に軸部材351を回転させられるように、軸保持部材352を所定間隔で配置できる構成であればよい。
【0117】
また軸保持部材352は、それぞれクランプ機構355を有し、キャリブレーション用アンテナ300がプローブアンテナ30の各々に対向する位置で軸部材351を固定可能に構成される。なお軸保持部材352が備えるクランプ機構355の構成は、特に限定されず、既存のものを採用すればよいため、ここではクランプ機構355の構成の一例について簡単に説明する。
【0118】
一実施形態として、軸保持部材352は、軸部材351が挿入される孔部の外周の一部を切り欠いたスリット356が形成される。軸保持部材352のスリット356に対応する部分には、図示は省略するが、スリット356の間隔を調整する締結部材が設けられている。この締結部材にはクランプレバー357が取り付けられており、作業者がこのクランプレバー357を操作することでスリット356の間隔が調整される。すなわち作業者がクランプレバー357を一方向に回転させることで、スリット356の間隔が狭まり、軸部材351が軸保持部材352によって締め付けられて軸部材351が固定される。また作業者がクランプレバー357を締め付け方向とは逆方向に回転させることで、スリット356の間隔が広がり、軸保持部材352による軸部材351の締め付けが弱まって軸保持部材352を回転(回動)できるようになる。
【0119】
キャリブレーション処理に、このような支持治具350を用いることで、キャリブレーション用アンテナ300を所望の向きで容易に固定することができる。すなわちキャリブレーション用アンテナ300を、各プローブアンテナ30に容易に対向させて固定することができる。これにより、キャリブレーション処理の作業性が向上する。したがって、アンテナ測定装置10でのキャリブレーション処理の作業時間の短縮を図ることができる。
【0120】
以下、キャリブレーション処理の手順(キャリブレーション方法)について説明する。図15は、キャリブレーション処理の手順の一例を示すフローチャートである。また図16及び図17は、キャリブレーション処理を説明する平面図である。
【0121】
図15に示すように、まずは、キャリブレーション用アンテナ300がZ方向においてプローブアンテナ30に対応する位置となるように、キャリブレーション用アンテナ300を支持する支持治具350を配置する(ステップS1)。具体的には、ポジショナ40上に搭載されている載置台200をポジショナ40から下ろし、キャリブレーション用アンテナ300が支持された支持治具350をポジショナ40に搭載する。このとき、軸部材351の軸方向がZ方向となるようにし、且つ軸部材351の軸中心を複数のプローブアンテナ30で形成される円(仮想円VC)の中心と一致させる。そして、キャリブレーション用アンテナ300が複数のプローブアンテナ30に対応する位置となるまでポジショナ40をZ方向に移動させる。すなわちキャリブレーション用アンテナ300を所定位置Z1(図12参照)まで移動させる。
【0122】
次いで、キャリブレーション用アンテナ300を所定のプローブアンテナ30に対向させ、軸部材351を軸保持部材352によって固定する(ステップS2)。すなわち支持治具350の軸部材351と共にキャリブレーション用アンテナ300を回転させて、キャリブレーション用アンテナ300を所定のプローブアンテナ30に対向させる。例えば、図16に示すように、まずはキャリブレーション用アンテナ300をプローブアンテナ30aに対向させる。
【0123】
ここで、「キャリブレーション用アンテナ300がプローブアンテナ30に対向する」とは、軸部材351の径方向に見て、キャリブレーション用アンテナ300の水平偏波用基板302hとプローブアンテナ30の水平偏波用基板32hとが重なる状態をいう。この場合、キャリブレーション用アンテナ300の垂直偏波用基板302v及びプローブアンテナ30の垂直偏波用基板32vも、当然、軸部材351の径方向に見て重なる状態となる。
【0124】
次いで、プローブアンテナ30aから送信電波を送信させると共に、この送信電波をキャリブレーション用アンテナ300によって受信し、キャリブレーション用アンテナ300によって受信した受信電波に基づいて、プローブアンテナ30aとネットワークアナライザ70とを繋ぐデータ線Sd1,Sd2を含む各経路の特性を測定する(ステップS3)。なお、この経路には、キャリブレーション用アンテナ300とネットワークアナライザ70とを繋ぐデータ線Sd3,Sd4が含まれ、さらにプローブアンテナ30a自体も含まれるものとする。
【0125】
次に、全てのプローブアンテナ30に対応する上記経路の特性の測定が完了したか否かを判定する(ステップS4)。全ての経路について特性の測定が完了していない場合には(ステップS4:No)、ステップS2に戻り、支持治具350によってキャリブレーション用アンテナ300を回転させ、キャリブレーション用アンテナ300を次のプローブアンテナ30に対向させる。例えば、キャリブレーション用アンテナ300がプローブアンテナ30aに対向する位置にあった場合、図17に示すように、キャリブレーション用アンテナ300が、プローブアンテナ30aに隣接するプローブアンテナ30bに対向するように、支持治具350によってキャリブレーション用アンテナ300を回転させる。そして、プローブアンテナ30aの場合と同様に、プローブアンテナ30bとネットワークアナライザ70とを接続する経路の特性を測定する(ステップS3)。なお経路の特性を測定する順序は、特に限定されず、プローブアンテナ30aに対応する経路の特性を測定した後、次いでプローブアンテナ30c~30oに対応する経路の特性を測定してもよい。
【0126】
その後、各プローブアンテナ30c~30oに対応する経路についても同様の測定を実施する(ステップS3)。そして全てのプローブアンテナ30a~30oに対応する経路について特性の測定が完了すると(ステップS4:Yes)、ステップS5に進み、上記ステップにて測定した測定結果、つまり各経路の特性に基づいて、複数の各経路の特性差が小さくなるように、特性差を補正する。なお、ステップS5における特性差の補正方法は、周知の方法を採用すればよいため、補正方法についての詳細な説明は省略する。
【0127】
なお、特性差の補正内容(キャリブレーションデータ)は、アンテナ特性測定部50の記憶部54に記憶されていてもよい。被測定アンテナ100の測定時には、補正部524は、記憶部54に記憶されたキャリブレーションデータに基づいて、プローブアンテナ30から送信された送信電波を補正する。出力部53は、補正部524によって補正された送信電波の送信電波信号を外部に出力する。
【0128】
このような方法でキャリブレーション処理を実施することで、各経路の特性の測定作業が容易となる。
【0129】
従来は、プローブアンテナ用ケーブルをプローブアンテナから取り外して被測定アンテナ用ケーブルに接続し、経路の特性の測定終了後には、プローブアンテナ用ケーブルを被測定アンテナ用ケーブルから取り外してプローブアンテナに再び接続するという着脱作業を、プローブアンテナの本数に応じた回数だけ行う必要があった。さらに、プローブアンテナが水平偏波アンテナと垂直偏波アンテナとを備え、両アンテナについてキャリブレーション処理を行う場合には、上記着脱作業をプローブアンテナの本数の二倍の回数だけ行う必要があり、かなりの手間と時間を要していた。
【0130】
しかしながら、一実施形態として、支持治具350によってキャリブレーション用アンテナ300を各プローブアンテナ30に対向させて各経路の特性を測定するようにしたので、従来行っていた上記ケーブルの脱着作業が不要となる。したがって、キャリブレーション処理を実施する際、作業時間の短縮を図ることができる。また、このようなキャリブレーション処理を行うことで、各プローブアンテナ30を含む経路の特性差が比較的小さく抑えられる。したがって、アンテナ測定装置10によるアンテナ100の指向性の測定精度(推定精度)を向上できる。
【0131】
<他の実施形態>
以上、本発明者によってなされた発明を、一実施形態に基づき詳細に説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。すなわち本発明は、上記の実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0132】
例えば、一実施形態として、複数のプローブアンテナ30a~30oが、プローブアンテナ30aとプローブアンテナ30oとの間を除いて等間隔に配置され、各プローブアンテナ30a~30oのそれぞれが連結部36によって連結されて一体化された構成を例示したが、プローブアンテナ30の構成はこれに限定されない。例えば、複数のプローブアンテナ30a~30oは、必ずしも等間隔で配置されていなくてもよく、異なる間隔で配置されていてもよい。すなわち本発明は、異なる間隔で円環状に配置された複数のプローブアンテナを備えるアンテナ測定装置にも適用できる。
【0133】
また複数のプローブアンテナ30a~30oは、その全てが連結部36を介して一体化されていなくてもよい。複数のプローブアンテナ30a~30oは、複数個ずつ連結部36によって連結されて一体化されていてもよい。例えば、プローブアンテナ30a~30eが連結部36を介して一体化され、プローブアンテナ30f~30jが連結部36を介して一体化され、プローブアンテナ30k~30oが連結部36を介して一体化されていてもよい。このような構成としても、各プローブアンテナ30の位置精度を高精度に維持し易くなり、プローブアンテナ30の固定パネル22への取り付け作業時間を短縮することができる。
【0134】
さらに複数のプローブアンテナ30は、必ずしも連結部36によって連結されていなくてもよい。また一実施形態として、複数のプローブアンテナ30が、被測定アンテナ100を囲む仮想円VCに沿って円環状に並べて配置された例について説明したが、複数のプローブアンテナ30の配置はこれに限定されない。複数のプローブアンテナ30が円環状に並べて配置されていない場合でも、キャリブレーション用アンテナ300を用いて各経路の特性を測定することで、測定作業の作業時間を短縮できる。
【0135】
さらにアンテナ測定装置10のキャリブレーション方法の一例として、支持治具350を用いてキャリブレーション処理を実施する例を説明したが、キャリブレーション方法は、これに限定されない。キャリブレーション処理は、例えば、支持治具350を用いることなく実施してもよい。すなわちキャリブレーション用アンテナ300を各プローブアンテナ30に対向させて固定できれば、支持治具350は用いなくてもよい。また一実施形態として、アンテナ特性測定部50が、アンテナ100の特性として指向性を測定(推定)する例について説明したが、アンテナ特性測定部50は、指向性以外のアンテナ特性を測定するものであってもよい。
【0136】
さらに、上記アンテナ特性測定部50の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば、集積回路で設計すること等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、またはICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。さらにアンテナ測定装置10においては、上述したアンテナ100とは異なる種類のアンテナを被測定アンテナとすることもできる。
【符号の説明】
【0137】
10…アンテナ測定装置、 20…筐体、 21…トンネル部、 22…固定パネル(固定部材)、 23…貫通部、24…切欠き部、25…電波吸収体、 30…プローブアンテナ、 31h…水平偏波アンテナ、31…アンテナ部、 31v…垂直偏波アンテナ、 32h…水平偏波用基板、 32v…垂直偏波用基板、 33h,33v…同軸ケーブル、 34…支持部材、 35…締結部材、 36…連結部、 37…連結板、 38…固着部材、 39…挿通孔、 40…ポジショナ、 50…アンテナ特性測定部、 60…スイッチタイミング制御部、 70…ネットワークアナライザ(測定器)、 80…ポジショナ制御部、 90…レール、 100…アンテナ(被測定アンテナ)、 200…載置台、 300…キャリブレーション用アンテナ、 301…アンテナ部、 350…支持治具、 351…軸部材、 352…軸保持部材、 353…土台部、 354…支柱部、 355…クランプ機構、 356…スリット、 357…クランプレバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17