(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090366
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】ポリアセタール共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 2/10 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
C08G2/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206232
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】細井 悠平
【テーマコード(参考)】
4J032
【Fターム(参考)】
4J032AA05
4J032AA32
4J032AA34
4J032AA38
4J032AB05
4J032AC03
4J032AC43
4J032AD32
4J032AD36
4J032AD37
4J032AD38
4J032AD46
4J032AD51
4J032AE02
(57)【要約】
【課題】高い耐衝撃性を有する成形品を得ることができる、ポリアセタール共重合体の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明のポリアセタール共重合体の製造方法は、重合触媒存在下で、トリオキサンと、前記トリオキサンと共重合可能なコモノマーとを重合装置で共重合させる工程と、前記工程で得られる粗ポリアセタール共重合体を、押出機で溶融混錬する工程と、を有し、前記重合触媒はプロトン酸であり、前記溶融混練する工程において、溶融混練開始後、溶融混練終了までの間に塩基性化合物の溶液を添加する製造方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合触媒存在下で、トリオキサンと、前記トリオキサンと共重合可能なコモノマーとを重合装置で共重合させる工程と、
前記工程で得られる粗ポリアセタール共重合体を、押出機で溶融混錬する工程と、
を有し、
前記重合触媒はプロトン酸であり、
前記溶融混練する工程において、溶融混練開始後、溶融混練終了までの間に塩基性化合物の溶液を添加する、
ポリアセタール共重合体の製造方法。
【請求項2】
前記プロトン酸は、ヘテロポリ酸である、請求項1に記載のポリアセタール共重合体の製造方法。
【請求項3】
前記塩基性化合物の溶液は、アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩もしくはカルボン酸塩またはその水和物、または1g/Lの水溶液のpHが10以上の窒素含有有機化合物の水溶液である、請求項1に記載のポリアセタール共重合体の製造方法。
【請求項4】
前記アルカリ金属は、ナトリウムまたはカリウムである、請求項3に記載のポリアセタール共重合体の製造方法。
【請求項5】
前記窒素含有有機化合物は、アミンである、請求項3に記載のポリアセタール共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアセタール共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール共重合体の製造方法としては、重合触媒存在下、主モノマー(トリオキサン)と、上記主モノマーと共重合可能なコモノマーと、をカチオン重合させる方法が知られている。上記カチオン重合触媒としては、三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモンなどのルイス酸およびそれらの錯化合物またはそれらの塩が広く一般に用いられている。
【0003】
これらの重合触媒を用いる場合には、重合の際に比較的多量(例えば、全モノマーに対し40ppmまたはそれ以上)の重合触媒を添加することが必要となるため、製造工程において、重合後にポリアセタール共重合体中に残存した触媒を十分に失活させることが難しいという問題があった。また、重合触媒を失活化できたとしても、触媒由来の物質が共重合体中に残存することにより、共重合体の分解が促進されるなどの不具合が生じることもあった。
【0004】
近年では、優れた熱安定性を有し、かつ、ホルムアルデヒド発生量が極めて少ない高品質のポリアセタール共重合体が求められている。そのため、効率的な触媒の失活化、および触媒失活後における粗ポリアセタール共重合体の不安定末端部の分解処理による安定化などの検討がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によると、重合触媒としてヘテロポリ酸を用い、失活剤と共に溶融混練処理することにより、少量の触媒量で重合が可能となり、煩雑な工程を削減でき、高品質なポリアセタール共重合体を得ることができるとされている。
【0007】
しかしながら、ポリアセタール共重合体を用いた成形品の物性(耐衝撃性)についてはさらに検討の余地がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、高い耐衝撃性を有する成形品を得ることができる、ポリアセタール共重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討の結果、以下の(1)~(5)に係る発明を完成させた。
【0010】
(1) 重合触媒存在下で、トリオキサンと、前記トリオキサンと共重合可能なコモノマーとを重合装置で共重合させる工程と、前記工程で得られる粗ポリアセタール共重合体を、押出機で溶融混錬する工程と、を有し、前記重合触媒はプロトン酸であり、前記溶融混練する工程において、溶融混練開始後、溶融混練終了までの間に塩基性化合物の溶液を添加する、ポリアセタール共重合体の製造方法。
【0011】
(2) 前記プロトン酸は、ヘテロポリ酸である、(1)に記載のポリアセタール共重合体の製造方法。
【0012】
(3) 前記塩基性化合物の溶液は、アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩もしくはカルボン酸塩またはその水和物、または1g/Lの水溶液のpHが10以上の窒素含有有機化合物の水溶液である、(1)に記載のポリアセタール共重合体の製造方法。
【0013】
(4) 前記アルカリ金属は、ナトリウムまたはカリウムである、(3)に記載のポリアセタール共重合体の製造方法。
【0014】
(5) 前記窒素含有有機化合物は、アミンである、(3)に記載のポリアセタール共重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高い耐衝撃性を有する成形品を得ることができる、ポリアセタール共重合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明に係る製造方法の概略を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更が可能である。
【0018】
[ポリアセタール共重合体の製造方法]
本発明のポリアセタール共重合体の製造方法は、重合触媒(プロトン酸)存在下で、トリオキサンと、トリオキサンと共重合可能なコモノマーとを重合装置で共重合させる工程と、上記工程で得られる粗ポリアセタール共重合体を、押出機で溶融混錬する工程と、を有する。溶融混練する工程においては、溶融混練開始後、溶融混練終了までの間に、上記押出機内に失活剤として塩基性化合物の溶液を添加する工程を有する。
【0019】
以下、各構成成分および各工程について説明する。
【0020】
(トリオキサン)
トリオキサンは、ホルムアルデヒドの環状三量体である。本発明において、上記トリオキサンは主モノマーとして用いられる。ここで、主モノマーとは、全モノマー中、単独で最も多く含まれているモノマーのことをいう。なお、トリオキサンは、一般的には酸性触媒の存在下でホルムアルデヒド水溶液を反応させることによって得られ、これを蒸留等の方法で精製して用いられる。
【0021】
(コモノマー)
本発明のコモノマーは、上記トリオキサンと共重合するものであれば特に限定されない。上記コモノマーとしては、少なくとも1つの炭素-炭素結合を有する環状エーテルおよび環状ホルマールからなる群から選択されることが好ましい。
【0022】
コモノマーの例には、1,3-ジオキソラン、ジエチレングリコールホルマール、1,4-ブタンジオールホルマール、1,3-ジオキサン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、エピクロルヒドリン等が含まれる。これらの中では、重合安定性の観点から、1,3-ジオキソラン、1,4-ブタンジオールホルマールが好ましい。
【0023】
また、コモノマーとして、ブタンジオールジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテルやジホルマールのような2個の重合性環状エーテル基または環状ホルマール基を有する化合物、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等の3個以上の重合性環状エーテル基または環状ホルマール基を有する化合物を用いることもできる。これらのコモノマーを用いることによって、分岐構造や架橋構造が形成されたポリアセタール共重合体を得ることができる。
【0024】
本発明において、コモノマーの含有量は、トリオキサン100質量部に対して0.01~20質量部であることが好ましく、0.5~10質量部であることがより好ましく、1~8質量部であることがさらに好ましい。コモノマーの含有量が、トリオキサン100質量部に対して0.01質量部以上20質量部以下であると、重合を安定的に進行させることができるとともに、ポリマー鎖の結晶化速度の低下や結晶化度の低下を抑制することもできる。
【0025】
(重合触媒)
重合触媒は、カチオン重合触媒である。カチオン重合触媒の例には、ルイス酸、プロトン酸が含まれる。
【0026】
<ルイス酸>
ルイス酸の例には、三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモンおよびその錯化合物または塩が含まれる。
【0027】
<プロトン酸>
プロトン酸の例には、パーフルオロアルカンスルホン酸、ヘテロポリ酸、イソポリ酸等が含まれる。
【0028】
パーフルオロアルカンスルホン酸の例には、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸、トリデカフルオロヘキサンスルホン酸、ペンタデカフルオロへプタンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸が含まれる。
【0029】
ヘテロポリ酸の例には、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、リンタングストバナジン酸、ケイタングステン酸、ケイモリブデン酸、ケイモリブドタングステン酸、ケイモリブドタングステントバナジン酸が含まれる。
【0030】
イソポリ酸の例には、パラタングステン酸、メタタングステン酸、パラモリブデン酸、メタモリブデン酸、メタポリバナジウム酸、イソポリバナジウム酸が含まれる。
【0031】
重合触媒の添加量は、全モノマーの合計量に対して0.1ppm以上であることが好ましい。また、重合触媒の添加量の上限値は、特に限定されないが、50ppm以下であることが好ましく、30ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることがさらに好ましい(以下、単位のppmはすべて質量基準である)。なお、重合触媒は、ギ酸メチル、シクロヘキサンなどの重合に悪影響を及ぼさない溶媒の溶液として添加することが好ましい。
【0032】
また、上記重合触媒はプロトン酸であることが好ましく、ヘテロポリ酸であることがより好ましい。ヘテロポリ酸を用いることにより、従来よりも少ない添加量で重合反応を十分に進行させることができるので、触媒による重合体の主鎖分解、解重合等の所望しない反応を抑制することができる。
【0033】
(塩基性化合物)
本発明の塩基性化合物は、アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩もしくはカルボン酸塩またはその水和物、または1g/Lの水溶液のpHが10以上の窒素含有有機化合物の水溶液であることが好ましい。
【0034】
<アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩もしくはカルボン酸塩またはその水和物>
アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩もしくはカルボン酸塩またはその水和物としては、ナトリウムまたはカリウムを含む炭酸塩、炭酸水素塩もしくはカルボン酸塩またはその水和物であることが好ましい。
【0035】
これらの例には、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、炭酸カリウム、および酢酸カリウムが含まれる。これらの中では、炭酸ナトリウム、および炭酸カリウムであることが好ましい。なお、これらは1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0036】
また、上述のアルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩もしくはカルボン酸塩またはその水和物は、水溶液として用いることが好ましい。
【0037】
<窒素含有有機化合物>
窒素含有有機化合物は、アミンであることが好ましい。
【0038】
アミンの例には、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、トリブタノールアミンが含まれる。これらの中では、水溶液として用いることができるジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミンおよびトリエタノールアミンであることが好ましく、トリエチルアミンであることがより好ましい。
【0039】
また、上記塩基性化合物の添加量は、樹脂に対して5ppm以上であることが好ましく、10ppm以上であることがより好ましい。また、上記塩基性化合物の添加量の上限値は、特に限定されないが、50ppm以下であることが好ましく、20ppm以下であることがより好ましい。塩基性化合物の水溶液の濃度が10ppm以上20ppm以下であることにより、高い耐衝撃性を有する成形品を得ることができる。
【0040】
(ポリアセタール共重合体の製造方法)
本発明のポリアセタール共重合体の製造方法では、例えば、バッチ式、連続式などの公知の方法および重合装置を用いて行うことができる。
【0041】
バッチ式では、一般に用いられる撹拌機付きの反応槽などを使用することができる。また、連続式では、コニーダー、二軸スクリュー式連続押出混合機、二軸パドルスクリュー押出機、ベント付き二軸押出機などを使用することができる。工業的に好ましい製造方法は連続式である。
【0042】
具体的には、
図1に示されるように本発明の製造方法は、所定の温度に加熱した重合装置に、トリオキサン、コモノマー、重合触媒(プロトン酸)、および任意の重合反応用の添加剤を含有する混合液を連続的に供給し、所定の時間重合させる工程(以下、「重合工程」ともいう)と、上記重合工程で得られた粗ポリアセタール共重合体を押出機で溶融混練する工程(以下、「溶融混練工程」ともいう)を有する。溶融混練工程では、溶融混練開始後、溶融混練終了までの間(
図1のAで示す工程)に、押出機内に失活剤として塩基性化合物の水溶液を添加する工程を有する。
【0043】
溶融混練工程において、溶融混練開始後、溶融混練終了までの間に、塩基性化合物の水溶液を添加することにより、高い耐衝撃性を有するポリアセタール共重合体を得ることができる。なお、ポリアセタール共重合体の衝撃強度は、ISO 179/1eAに準じて、衝撃試験機で測定することができる。
【0044】
また、上記触媒の失活処理の際に、その他の重合体、その他の充填剤、窒素化合物、紫外線吸収剤等の安定剤、金属塩等の抗酸剤、帯電防止剤、難燃剤、染料や顔料等の着色剤、潤滑剤、離型剤、結晶化促進剤、結晶核剤等のその他の成分も要求性能に応じて適宜添加してもよい。これらは、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【実施例0045】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
1.ポリアセタール共重合体1~13の製造
[ポリアセタール共重合体1]
(重合装置)
重合装置としては、連続二軸パドルスクリュー押出機を用いた。上記押出機は胴体部の外側に加熱用または冷却用の媒体を通すためのジャケットを備える。また、上記胴体部は上下分割構造であり、上部開放が可能な構造となっている。上記押出機の内部には撹拌、推進用の多数のバドルを付した2本の回転軸が長手方向に設けられている。
【0047】
(製造方法)
80℃の媒体をジャケットに通じ加熱した重合装置に、単位時間当たり、100質量部のトリオキサン(TOX)と、4.0質量部の1,3-ジオキソラン(DO)と、所定量のメチラールと、を含有する混合液を連続的に供給するとともに、5.0ppmのリンタングステン酸(H3PW12O40)をギ酸メチル溶液として添加し、重合反応を行った。
【0048】
次いで、上記重合装置の吐出口から得られた粗ポリアセタール共重合体に対して、0.3質量%のIRGANOX 1010(BASFジャパン製、「IRGANOX」はBASF社の登録商標)を加えて、
図1のBで示す範囲でベント付き二軸押出機に投入した後、押出機のシリンダー温度220℃、ベント部の真空度が5mmHgの条件下で溶融混練を開始した後、押出機の吐出口から溶融樹脂を吐出し溶融混練が終了するまでの間(
図1のAで示す工程)に、樹脂に対して15ppmの炭酸ナトリウムを2.0wt%の水溶液として添加し、溶融混練終了後に、押出機から押し出すことにより、ポリアセタール共重合体1のペレットを得た。
【0049】
なお、上記メチラールの添加量は、得られる共重合体のメルトフローレート(MFR)が9g/10分となるように調整された量である。上記MFRは、ISO1133に準拠し、メルトインデクサ L220型(株式会社立山科学ハイテクノロジーズ製)を用いて、荷重2.16kg、温度190℃、吐出樹脂取得時間7分の条件で測定した。
【0050】
[ポリアセタール共重合体2、3]
表1に示すとおりに、1,3-ジオキソラン(DO)の含有量を変更した以外は、ポリアセタール共重合体1と同様の製造方法により、ポリアセタール共重合体2、3のペレットを得た。
【0051】
[ポリアセタール共重合体4]
表1に示すとおりに、コモノマーの種類を1,4-ブタンジオールホルマール(BDF)に変更した以外は、ポリアセタール共重合体1と同様の製造方法により、ポリアセタール共重合体4のペレットを得た。
【0052】
[ポリアセタール共重合体5、6]
表1に示すとおりに、重合触媒の種類を変更した以外は、ポリアセタール共重合体1と同様の製造方法により、ポリアセタール共重合体5、6のペレットを得た。
【0053】
[ポリアセタール共重合体7~9]
表1に示すとおりに、失活剤の種類を変更した以外は、ポリアセタール共重合体1と同様の製造方法により、ポリアセタール共重合体7~9のペレットを得た。
【0054】
[ポリアセタール共重合体10]
表1に示すとおりに、得られる共重合体のMFRが27g/10分になるように、メチラールの添加量を変更した以外は、ポリアセタール共重合体1と同様の製造方法により、ポリアセタール共重合体10のペレットを得た。
【0055】
[ポリアセタール共重合体11]
80℃の媒体をジャケットに通じ加熱した重合装置に、単位時間当たり、100質量部のトリオキサン(TOX)と、4.0質量部の1,3-ジオキソラン(DO)と、所定量のメチラールと、を含有する混合液を連続的に供給するとともに、5.0ppmのリンタングステン酸(H3PW12O40)をギ酸メチル溶液として添加し、重合反応を行った。
【0056】
上記重合装置の吐出口より得られた粗ポリアセタール共重合体に対して、
図1のBで示す範囲で15ppmの炭酸ナトリウム水溶液および0.3質量%のIRGANOX 1010を添加し(、連続的にベント付き二軸押出機を用いて、押出機のシリンダー温度220℃、ベント部の真空度が5mmHgの条件下で溶融混練して押し出し、ポリアセタール共重合体11のペレットを得た。
【0057】
[ポリアセタール共重合体12]
表1に示すとおりに、得られる共重合体のMFRが27g/10分になるように、メチラールの添加量を変更した以外は、ポリアセタール共重合体11と同様の製造方法により、ポリアセタール共重合体12のペレットを得た。
【0058】
[ポリアセタール共重合体13]
表1に示すとおりに、失活剤の種類を変更した以外は、ポリアセタール共重合体11と同様の製造方法により、ポリアセタール共重合体13のペレットを得た。
【0059】
2.評価
上記製造方法で得たポリアセタール共重合体1~13について、シャルピー衝撃強度の評価を行った。
【0060】
(試験片の作製)
ISO179/IeAに準拠して、ポリアセタール共重合体1~13のペレットを用い、ノッチ付きシャルピー試験片を成形した。
【0061】
(評価方法)
上記試験片を用いて、ISO179/IeAに準拠して、23℃でのシャルピー衝撃強度を測定した。
【0062】
[MFRの測定]
ポリアセタール共重合体1~13の製造において、得られる粗ポリアセタール共重合体の溶融時の流動性の指標であるMFRの値を以下のようにして求めた。
(測定方法)
株式会社立山科学ハイテクノロジーズ製のメルトインデクサ L220型を用いて、ISO1133に準拠した、荷重2.16kg、温度190℃、吐出樹脂取得時間7分の条件で測定した。
【0063】
ポリアセタール共重合体1~13の主たる構成成分および評価結果を表1に示す。また、表1中の略語は以下のとおりである。
【0064】
(主モノマー)
TOX:トリオキサン
(コモノマー)
DO :1,3-ジオキソラン
BDF:1,4-ブタンジオールホルマール
【0065】
(重合触媒)
H3PW12O40 :リンタングステン酸
H3PMo12O40:リンモリブデン酸
【0066】
【0067】
表1に示されるように、失活剤の添加位置を「A」にすることにより、添加位置が「B」としたときと比較して、同一のメルトフローレート(MFR)で製造されたポリアセタール共重合体からなる成形品同士を比較すると、失活剤の添加位置を「A」にすることにより、添加位置が「B」としたときよりも得られる成形品の耐衝撃性が高くなることを確認することができた。
本発明の方法を用いることにより、高い耐衝撃性を有する成形品を得ることができるポリアセタール共重合体を製造することができるので、同分野の技術の進展および普及に貢献することが期待される。