(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090396
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】風車及び風力発電装置
(51)【国際特許分類】
F03D 3/06 20060101AFI20240627BHJP
F01D 1/32 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
F03D3/06 G
F01D1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206283
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(71)【出願人】
【識別番号】503420833
【氏名又は名称】学校法人常翔学園
(71)【出願人】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】酒井 祐介
(72)【発明者】
【氏名】植田 芳昭
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 智也
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA16
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB10
3H178BB35
3H178CC02
3H178DD14Z
(57)【要約】
【課題】ブレードの機械的な破損を防ぎ、初期起動に必要とされる風速を下げ、起動性に優れた風車及び風力発電装置を提供する。
【解決手段】
回転軸と、前記回転軸の回転中心軸を中心とする同心円上に均等な間隔で離隔して設けられた複数のブレードと、を備え、前記複数のブレードに風が当たることにより複数のブレードが回転軸とともに回転可能とされた風車であって、前記ブレードが該ブレードの後縁より後方にジェットを噴射可能な開口部を備え、前記開口部からのジェットの噴射を制御するジェット噴射装置を備えた構成とした。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、前記回転軸の回転中心軸を中心とする同心円上に均等な間隔で離隔して設けられた複数のブレードと、を備え、前記複数のブレードに風が当たることにより複数のブレードが回転軸とともに回転可能とされた風車であって、
前記ブレードが該ブレードの後縁より後方にジェットを噴射可能な開口部を備え、
前記開口部からのジェットの噴射を制御するジェット噴射装置を備えたことを特徴とする風車。
【請求項2】
前記ブレードは、翼形状を有することを特徴とする請求項1に記載の風車。
【請求項3】
前記開口部がブレードの延長方向に沿って開口するように形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の風車。
【請求項4】
前記ジェット噴射装置は、
各ブレードに対する風向に基づいて、ジェットを噴射することを特徴とする請求項1に記載の風車。
【請求項5】
前記ジェット噴射装置は、
風が向かい風となるブレードからのジェットの噴射を停止し、
風が追い風となるブレードからジェットを噴射することを特徴とする請求項1に記載の風車。
【請求項6】
前記請求項1乃至請求項5に記載の風車を備え、
前記回転軸の回転により発電する発電機を備えた風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風車及び風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
風力エネルギーを回収する風車には大きく分けて水平軸型風車と垂直軸型風車がある。水平軸型風車としてプロペラ型風車があり、世界的に見ても最も多用されている風車である。この風車は、効率が高いものの風の風向が変化すると回転軸の方向を風のくる方に向け直す必要がある。一方、垂直軸型風車は、あらゆる方向からの風に対して有効に働くので、風向が頻繁に変化する環境に適した風車である。
垂直軸型風車には、抗力型と揚力型とがある。抗力型の代表的なものにはサボニウス風車があり、現在も広く用いられている。この風車は、起動トルクが大きいものの一般に効率が低い。
一方、揚力型風車としては、ダリウス風車とジャイロミル風車が代表的である。揚力型風車は翼が回転しているときに、翼に働く揚力を用いることから、起動トルクが小さいだけでなく、低速回転時、具体的には周速度比(翼の周速度/風速)が1以下の場合における効率が低い。特に、ダリウス風車は起動トルクが低いのでサボニウス風車と組み合わせた使用も試みられている。
ジャイロミル風車は、直線型ダリウス風車とも呼ばれ、起動トルクが比較的高く、自律的な起動が可能である。
但し、揚力型の特性として、低速回転時におけるトルク、効率は低い。しかし、騒音が低い、或いは起動特性が良いなどの優れた特性が評価され、近年この種の風車が注目されている。
例えば、特許文献1に示すように、ブレードの後端に補助ブレードを設けることにより、初期起動に必要とされる風速を下げ、ローターの抗力及び揚力の増大によって発電効率を向上させたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、補助ブレードは、風車の回転が上がるに従い、補助ブレードが遠心力により外側に反り、流れに対する抵抗となって急激なトルクの低下を招く場合がある。また、補助ブレードが弾性材料を素材として構成されるため、変形の繰り返しによる疲労破壊や自然環境下での耐久性に劣る等の問題を生じさせていた。
本発明は、上記課題を解決するため、ブレードの機械的な破損を防ぎ、初期起動に必要とされる風速を下げ、起動性に優れた風車及び風力発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための風車の構成として、回転軸と、回転軸の回転中心軸を中心とする同心円上に均等な間隔で離隔して設けられた複数のブレードと、を備え、複数のブレードに風が当たることにより複数のブレードが回転軸とともに回転可能とされた風車であって、ブレードが該ブレードの後縁より後方にジェットを噴射可能な開口部を備え、開口部からのジェットの噴射を制御するジェット噴射装置を備えた構成とした。
本構成によれば、ジェットの反力によりブレードを回転させることができる。即ち、風の力が弱い(風速が遅い)場合であっても、風車の回転の起動を補助することができる。
また、ブレードが翼形状を有することにより、噴射されたジェットの反力によって揚力が生じ、風の力が弱い(風速が遅い)場合であっても、風車の回転の起動を補助することができる。
また、前記開口部が、ブレードの延長方向に沿って開口するように形成されたことにより、開口部から噴射されたジェットが、航空機などで知られるフラップとして機能し、噴射されたジェットの反力とともに大きな揚力が得られ、風車の回転の起動を補助することができる。
また、前記ジェット噴射装置は、各ブレードに対する風向に基づいて、ジェットを噴射することにより、ジェットの噴射に要するエネルギーの消費を減らすことができる。
また、前記ジェット噴射装置が、風が向かい風となるブレードからのジェットの噴射を停止し、
風が追い風となるブレードからジェットを噴射することにより、ジェットの噴射に要するエネルギーの消費を減らすことができる。
風力発電装置が、前記請求項1乃至請求項4に記載の風車を備え、前記回転軸の回転により発電する発電機を備えることにより、風速が遅い場合であっても発電を開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の実施形態に係る垂直軸型風力発電装置を示す外観図である。
【
図2】垂直軸型風力発電装置を示す側断面図である。
【
図3】ブレードを翼弦方向に沿って断面視したときの表面形状を示す図である。
【
図4】回転軸とアームの連結部分及びアームとブレードの連結部分の拡大断面図である。
【
図5】ブレードを後縁側から平面視した拡大図である。
【
図6】ブレードの後縁に設けられた開口部を含む断面図である。
【
図8】ブレードからジェットを噴射したときのイメージ図である。
【
図9】ジェット噴射装置の他の形態を示すブロック図である。
【0007】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る垂直軸型の風力発電装置1の平面図である。
図2は、風力発電装置1の側断面図である。
図1、
図2に示すように、風力発電装置1は、風Wを受けて回転する回転機構2と、回転機構2により得られた機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機構4と、ジェット噴射装置8等を備える。
これら回転機構2、発電機構4及びジェット噴射装置8は、地面Fに立設されて鉛直方向に延びる台座6の上部に配設される。
【0009】
回転機構2は、風Wを受ける風車10と、風車10に連結された回転軸20、軸受30を介して回転軸20を中心軸C回りに回転可能に支持するケーシング40を備える。
本実施形態に係る風車10は、例えば 垂直軸型風車の一つであるジャイロミル型風車を構成している。風車10は、風向きに対して依存性がなく、どの方向からの風Wに対しても回転軸20の中心軸C回りに回転可能に構成される。
【0010】
ケーシング40は、下端部が台座6の上端部に固定して設けられる。ケーシング40は、上側部分41(風車10側)が、下側部分42(台座6側)よりも縮径された多段筒形に形成される。
【0011】
ケーシング40の下側部分42には、例えば、発電機構4やジェット噴射装置8(不図示)等が収容される。
発電機構4は、回転軸20が周方向(中心軸C回り)に回転することで得られる機械エネルギーを電気エネルギーに変換して電力を発電させる発電機(図外)を備える。
【0012】
発電機は、例えば、回転軸20とともに回転するように回転軸20の下端にマグネットロータ(図外)を設け、該マグネットロータの外周側を取り囲むようにコイルステータ(図外)を配置して構成される。
【0013】
ケーシング40の上側部分41の内周面には、回転軸20を回転可能に支持する軸受30が設けられる。軸受30は、外周がケーシング40の上側部分41の上端側及び下端側の内周面に嵌合され、内周に回転軸20が嵌着される。
【0014】
図1,2に示すように、回転軸20は、下端側が軸受30;30によりケーシング40に対して回転可能に支持され、上方に向けて延長する。なお、軸受30;30に支持された回転軸20は、中心軸Cが地面Fに対して垂直とされる。
【0015】
回転軸20の外周面には、ブレード11を支持するためのアーム12の一端が接続される。本実施形態では、アーム12は、中間部材15を介して回転軸20と連結されものとして説明する。中間部材15は、回転軸20の上下2か所に所定距離離間して設けられる。
本実施形態では、アーム12は断面円形の中空パイプとして説明するが、その断面形状は円形に限定されない。
【0016】
各中間部材15には、複数本(本実施形態では3本)のアーム12が回転軸20の外周面から半径方向外側に向けて延長するように接続される。各中間部材15に接続された複数のアーム12は、回転軸20の周方向均等な間隔をあけて配置される。また、各中間部材15に接続されたアーム12は、鉛直方向上下に並ぶように配置される。以下、鉛直方向上下に並ぶアーム12;12をアーム対12;12という。本実施形態の場合では、アーム対12;12が3対とされる。
【0017】
アーム対12;12の他端には、風Wの受ける1枚のブレード11が地面Fと鉛直方向に延びるように連結される。本実施形態では、3枚のブレード11が、アーム対12;12を介して、回転軸20の中心軸C回りの同心円上を円周方向に均等な間隔をあけて設けられている。
各ブレード11は、前縁と後縁とを結ぶ線分が、ブレード11が回転したときの回転円の接線方向となるようにアーム対12;12に取り付けられている。
【0018】
図3は、ブレードを翼弦方向に沿って断面視したときの表面形状を示す図である。
本実施形態では、ブレード11は、風Wを受けると揚力を発生可能な翼形状とされる。即ち、風車10は、ブレード11が風Wを受けたときに発生した揚力により回転軸20を回転させるように構成されている。
【0019】
ここで、回転軸20とアーム12の連結構造、アーム12とブレード11の連結構造について説明する。本実施形態に係る回転軸20、アーム12及びブレード11は、それぞれ中空となるように構成される。
【0020】
図4は、回転軸とアームの連結部分及びアームとブレードの連結部分の拡大断面図である。
図4(a)に示すように、回転軸20及び中間部材15は、アーム12の一端部が回転軸20の中空部に進入可能な貫通孔20A;15Aをそれぞれ備えた構成とされる。
また、
図4(b)に示すように、ブレード11及び連結部材25は、アーム12の他端部がブレード11の中空部に進入可能な貫通孔11A;25Aを備えた構成とされる。
【0021】
本実施形態の風車10では、中空のアーム12の両端が開口した状態で、回転軸20及びブレード11に固定され、回転軸20の中空部がアーム12を介してブレード11の中空部と連通するように構成されている。
【0022】
図5は、ブレードを後縁側から平面視した拡大図である。
図6は、ブレードの後縁に設けられた開口部を含む断面図である。
本実施形態に係るブレード11は、後縁13から後方にジェットJを噴出可能に構成される。なお、ジェットJとは、例えば、加圧された空気が一方向の流れとなって噴出することを言う。
図5,6に示すように、ブレード11は、開口部80を備えた構成とされる。開口部80は、例えば、翼長の中央位置、かつ、後縁13を中心として翼弦方向に延長する円孔として設けられる。開口部80を形成する孔壁80aは、翼弦方向に延長する円柱面としてブレード11に形成される。
【0023】
開口部80は、例えば、風車10を構成するすべてのブレード11に設けられる。また、開口部80の大きさは、ブレード11内に供給された圧縮空気が開口部80からジェットJとして噴出可能な大きさとすると良い。
【0024】
図7は、ジェット噴射装置のブロック図である。
ジェット噴射装置8は、例えば、ブレード11から噴出されるジェットJの元となる圧縮空気を生成する圧縮空気生成手段100と、回転軸20の回転状態を検出するための回転角検出手段120と、風Wの風速を検出する風速検出手段130と、ブレード11への圧縮空気の供給を制御するジェット制御手段140と、を備えた構成とされる。
【0025】
圧縮空気生成手段100は、例えば、コンプレッサーやレギュレータ、バルブ等により構成することができる。圧縮空気生成手段100は、コンプレッサーで加圧された圧縮空気をレギュレータにより所定の圧力に調圧し、バルブを開閉することで、調圧された圧縮空気の出力や停止が実現される。本実施形態では、バルブは、電気的な信号により弁が開閉する電磁弁として説明する。バルブは、回転軸20と接続され、バルブが開いたときの圧縮空気を回転軸20の中空部に供給可能に配管される。
【0026】
バルブから回転軸への配管は、例えば、回転軸20の下端の開口部に回転継手(ロータリージョイント)を設け、回転継手とバルブとを管で接続すれば良い。このように配管を構成することで、回転軸20の回転を維持したまま、圧縮空気を回転軸20の中空部に供給することができる。
なお、回転軸20内における圧縮空気生成手段100から各ブレード11に圧縮空気を供給するための流路は、配管を用いたものに限定されず、例えば、回転軸20内に遮蔽板(区画壁)を設けて、配管に代わる流路を形成するようにしても良い。即ち、圧縮空気生成手段100から各ブレード11に対して個別に圧縮空気を供給可能な流路が形成されていれば良い。
【0027】
そして、回転軸20の中空部に供給された圧縮空気は、アーム12の中空部を経由して、ブレード11の中空部へと供給され、翼後縁に設けた開口部80からジェットJとなって噴出される。
【0028】
回転角検出手段120は、回転軸20の回転を検出可能に設けられる。回転角検出手段120は、例えば、ロータリーエンコーダ等、検出した回転軸20の回転(角度)を電気的に出力可能なセンサを利用することができる。
【0029】
風速検出手段130は、風車10周りの風Wの速度(風速)を検出し、検出した風速を電気的な信号として出力可能に構成されたセンサを利用することができる。
【0030】
ジェット制御手段140は、所謂コンピューター等により構成することができる。ここで言うコンピューターとは、例えば、演算処理手段としてのCPUや記憶手段としてのROM,RAM等のハードウェアを備えたものを言い、その形態は問わず、PLC(Programmable Logic Controller)等であっても良い。
【0031】
ジェット制御手段140は、バルブ、回転角検出手段120、風速検出手段130等と電気的に接続され、回転角検出手段120により検出された回転軸20の回転角度の変化に基づいて回転軸20の回転速度を算出し、算出された回転速度に基づいてバルブの開閉を制御したり、風速検出手段130により検出された風速に基づいてバルブの開閉を制御したりするように構成することができる。
【0032】
ジェット制御手段140は、例えば、風速があらかじめ設定された閾値よりも小さいときや回転軸20の回転速度がゼロや所定の回転数に達したときにはバルブに信号を出力しないように構成することができる。
これにより、風速が風車10を回転させるには困難な場合や、十分な風速が得られてジェットJが不要な回転数に達したときのエネルギー消費を抑えることができる。
【0033】
また、ジェット制御手段140は、例えば、風速があらかじめ設定された閾値に達したときには、バルブに信号を出力するように構成することができる。ここで言う閾値とは、ジェットJの噴射により風車10の起動が可能とされる風速を意味する。
【0034】
図8は、ブレード11からジェットJを噴射したときのイメージ図である。
図8に示すように、風車10は、各ブレード11からジェットJを噴射することにより、風Wの向きによらず回転軸20の中心軸C周りを回転軸20に回転力を生じさせることができる。
したがって、風Wの風速が風車10の起動にやや不足する場合にジェットJを噴射することで、風車10の回転を開始させることができる。
また、風Wによって十分な回転力が得られる場合を超えた場合には、ジェットJの噴射を停止することで、不要なエネルギーの消費を防ぐことができる。
【0035】
上記実施形態では、ジェット制御手段140は、風Wの風速や、回転軸20の回転数に基づいてジェットJを噴射したり停止したりするものとして説明したが、これに限定されない。
例えば、ジェット制御手段140は、各ブレード11に対する風向に基づいて、ブレード11からジェットJを噴射するようにしても良い。
【0036】
本実施形態で説明した風車10のように、風Wを受けることで揚力を発生するブレード11を用いている場合、回転する3つのブレード11のうち、風向方向に向かう(風Wが向かい風となる)ブレード11には揚力が生じるが、風向方向が追い風となるブレード11には揚力が生じないということが知られている。即ち、風向方向が向かい風となるブレード11は、揚力分だけ風向方向が追い風となるブレード11よりも回転軸20を回転させる力が大きいと言える。
【0037】
そこで、風向方向が向かい風となるブレード11からのジェットJの噴射を停止し、風向方向が追い風となるブレード11からのみジェットJを噴出するようにジェット噴射装置8を構成しても良い。即ち、1つのブレード11が回転軸20の周りを1回転する間に、ジェットJの噴射と噴射の停止とを繰り返すような制御とされる。
このようにジェット噴射装置8を構成することにより、ジェットJの生成に必要とされるエネルギーを少なくすることができる。
【0038】
図9は、ジェット噴射装置の他の形態を示す図である。
この場合、
図9に示すように、ジェット噴射装置8は、前述の圧縮空気生成手段100、回転角検出手段120、風速検出手段130,ジェット制御手段140に加え、風向検出手段160を備えた構成とすれば良い。
風向検出手段160には、例えば、検出した風Wの向きを電気的な信号として出力可能に構成されたセンサを利用することができる。
【0039】
風向検出手段160は、例えば、設置された向き(センサ自体に設定された方位角0°(180°)を基準として風Wの向きが出力されるものとして説明する。
風向検出手段160は、例えば、方位角0°の位置が、回転角検出手段120の0°の位置に一致するように設けると良い。これにより、1つのブレード11の位置を回転角検出手段120の0°及び風向検出手段160の方位角0°に一致させることができるので、風Wの向き(風向)に対する他の2つのブレード11の位置の特定が容易とされる。
【0040】
また、この場合には、各ブレード11への圧縮空気の供給が必要とされる。そこで、例えば、回転軸20の中空部に進入した全てのアーム12の端部に電気的に開閉される弁を設け、各弁とジェット制御手段140とを配線により接続すれば良い。弁とジェット制御手段140とを接続する配線は、例えば、回転軸20の中空部を下側に向けて延長させ、ケーシング40の上側部分41内でスリップリング等を介して電気的な接続を維持したまま回転軸20の中空部から回転軸20の外のジェット制御手段140と接続すれば良い。
【0041】
したがって、ジェット制御手段140は、回転中のブレード11のうち、風向の向きに達したブレード11に連結されたアーム対12;12の弁に信号を出力することで、該ブレード11からジェットJを噴出させることができる。また、ジェット制御手段140は、このブレード11が180°回転したときに、弁への信号の出力を停止すれば良い。
【0042】
このようにジェットJの噴射を制御することにより、必要なときに風車10の回転を補助し、安定させることができる。
【0043】
なお、ブレード11からのジェットJの噴射は、上記制御に限定されず、適宜変更しても良い。但し、ジェットJの噴射は、風力発電装置1の発電効率を高めつつジェットJの噴射に必要とされるエネルギーの消費を抑えるように制御することが好ましい。
【0044】
また、上記実施形態では、各ブレード11の翼長の中央位置に、後縁13上を中心として翼長方向に延長する円孔として開口部80を1つ設けるものとしたが、これに限定されない。即ち、開口部80の数量は1つに限定されず、後縁13の延長方向に複数設けても良い。
【0045】
開口部80は、円孔として設けるものとして説明したが、その形状は限定されない。例えば、開口部80は、ブレード11の後縁13に沿って延長するスリット状としても良い。このように開口部80を構成することにより、開口部80から噴射されるジェットJは、フラップとして機能し、ブレード11に作用する揚力を大きくすることができる。
【0046】
また、開口部80を後縁13上に設けるものとして説明したがこれに限定されず、内側翼面を形成する翼部材や、外側翼面を形成する翼部材に設けても良く、またこれらを組み合わせて設けても良い。開口部80の形成に肝要なことは、ブレード11の後方にジェットJが噴射されることにある。
【0047】
なお、開口部80の大きさや形状は、ブレード11内に供給された圧縮空気がジェットJとして噴出可能な大きさとすると良い。
【0048】
また、上記実施形態では、風Wの風速や、回転軸20の回転数、風向等に基づいてジェットJを噴射したり停止したりするものとして説明したが、例えば、風Wの風速、回転軸20の回転数、風向等、これらを組み合わせてジェットJの噴射や停止を制御するようにしても良い。
【0049】
また、ジェットJの噴射や停止に係る制御は、上記実施形態で説明した構成に限定されず、ジェットJの噴射を制御するための風Wの風速、回転軸20の回転数、風向等の制御因子に応じて適宜構成すれば良い。
【0050】
以上説明したように、風車10に、ブレード11の後縁13より後方にジェットJを噴射可能な開口部80を設け、開口部80からのジェットJの噴射を制御するジェット噴射装置を備えた構成とすることにより、ジェットJの反力によりブレード11を回転させることができる。例えば、風の力が弱い(風速が遅い)場合であっても、風車10の回転の起動を補助することができる。
また、ブレード11が翼形状を有することにより、噴射されたジェットJの反力によって揚力が生じ、風の力が弱い(風速が遅い)場合であっても、風車10の回転の起動を補助することができる。
また、開口部80が、ブレード11の延長方向に沿って開口するように形成されることにより、開口部80から噴射されたジェットJが、航空機などで知られるフラップとして機能し、噴射されたジェットJの反力とともに大きな揚力が得られ、風車の回転の起動を補助することができる。
また、ジェット噴射装置が、風が向かい風となるブレード11からのジェットJの噴射を停止し、
風が追い風となるブレード11からジェットJを噴射することにより、ジェットJの噴射に要するエネルギーの消費を減らすことができる。
そして、風力発電装置が、風車10を備えることにより、風速が遅い場合であっても発電することができる。
【0051】
本実施形態では、例示的に垂直軸を中心に回転するジャイロミル(H-rotor、Gyromill)型風力発電装置に適用したことを説明するが、例えば、ヘリカルH-ローター型、ダリウス型、クロスフロー型、サボニウス型などの多様な形態の風力発電装置に適用することができる。
【0052】
また、前述した実施形態では、風Wを作動流体として回転する風車10として説明したが、作動流体に水を用いて回転させる水車(羽根車)としても利用できる。
即ち、風車10の適用は、風力発電装置に限らず、水力発電装置に利用しても、同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0053】
1 風力発電装置、8 ジェット噴射装置、10 風車、11 ブレード、
12 アーム、13 後縁、20 回転軸、80 開口部、
100 圧縮空気生成手段、120 回転角検出手段、130 風速検出手段、
140 ジェット制御手段、160 風向検出手段、C 中心軸、J ジェット、W 風。