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特開2024-90429成形体、それを備えた合わせガラス又は自動車用部材、成形体の製造方法
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  • 特開-成形体、それを備えた合わせガラス又は自動車用部材、成形体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090429
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】成形体、それを備えた合わせガラス又は自動車用部材、成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1343 20060101AFI20240627BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
G02F1/1343
G02F1/13 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206343
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳衛 真人
(72)【発明者】
【氏名】藤森 尚美
【テーマコード(参考)】
2H088
2H092
【Fターム(参考)】
2H088EA34
2H088FA09
2H088FA19
2H088FA29
2H088GA10
2H088HA01
2H088HA02
2H092GA03
2H092HA03
2H092KB13
2H092KB15
2H092NA25
2H092PA01
2H092QA15
2H092RA10
(57)【要約】
【課題】屈曲部などを有する三次元形状にしても調光機能を発揮することができる合わせガラスなどの成形体を提供する。
【解決手段】成形体は、2枚の透明導電膜2a付き基板2を前記透明導電膜2aが対向するように配置し、前記2枚の透明導電膜2a付き基板2の間に液晶層3を備える液晶素子4を用いた成形体1であって、前記透明導電膜2aが、金属ナノワイヤ、導電性高分子、炭素系導電剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、成形体1の少なくとも一部に屈曲部を有することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の透明導電膜付き基板を前記透明導電膜が対向するように配置し、前記2枚の透明導電膜付き基板の間に液晶層を備える液晶素子を用いた成形体であって、
前記透明導電膜が、金属ナノワイヤ、導電性高分子、炭素系導電剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
成形体の少なくとも一部に屈曲部を有する、成形体。
【請求項2】
2枚の透明導電膜付き基板を前記透明導電膜が対向するように配置し、前記2枚の透明導電膜付き基板の間に液晶層を備える液晶素子を用いた成形体であって、
前記透明導電膜が、金属ナノワイヤ、導電性高分子、炭素系導電材からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
成形体の少なくとも一部に前記液晶素子を延伸させた延伸成形部位を有する、成形体。
【請求項3】
前記透明電極膜が炭素系導電材を含む、請求項1又は2に記載の成形体。
【請求項4】
前記炭素系導電材がカーボンナノチューブである、請求項3に記載の成形体。
【請求項5】
前記透明導電膜付き基板が透明導電膜及び基材を備え、前記基材のガラス転移温度が50℃以上である、請求項1に記載の成形体。
【請求項6】
前記基材のガラス転移温度が80℃以上である、請求項5に記載の成形体。
【請求項7】
前記透明導電膜付き基板が透明導電膜及び基材を備え、前記基材が延伸可能な基材である、請求項2に記載の成形体。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の成形体を備える、合わせガラス。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の成形体を備える、自動車用部材。
【請求項10】
2枚の透明導電膜付き基板を前記透明導電膜が対向するように配置し、前記2枚の透明導電膜付き基板の間に設けた液晶層を備える液晶素子を用いた成形体の製造方法であって、
前記透明電極膜が金属ナノワイヤ、導電性高分子、炭素系導電剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
前記透明導電膜付き基板が透明導電膜及び基材を備え、
下記工程(1)及び工程(2)を有する、成形体の製造方法。
(1)前記基材のガラス転移温度以上に加熱した後、加圧して前記液晶素子を成形用型に密着させる工程
(2)前記液晶素子を成型用型に密着させた状態で、前記ガラス転移温度未満まで冷却する工程
【請求項11】
前記液晶素子を3次元形状に成形する、請求項10に記載の成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体、それを備えた合わせガラス又は自動車用部材に関する。より詳しくは、調光機能などを備えた合わせガラスなどに好適な成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、破損しても破片が飛び散りにくいため、自動車や建築物などに用いられている。近年では、用途に合わせ、機能を付加した合わせガラスが開発されている。
例えば、特許文献1には、樹脂層と透明導電層とを有する合わせガラス用中間膜が示され、これを2枚のガラス板間に備えて合わせガラスとし、中間膜に電圧を印加することにより温められる、いわゆるデフロスター機能を有する合わせガラスが示されている。この合わせガラスは、自動車窓ガラスなどの曲面に適合できるように追従性や伸張性を有するように設計されたものである。
【0003】
また、特許文献2には、2枚のガラス板間に液晶フィルムを挟んだ積層体とし、液晶フィルムに電圧を印加することにより光の透過量を調整できる調光機能を有する合わせガラスが示されている。この合わせガラスは、3次元曲面の表面形状としても液晶フィルムにしわや空隙が生じないように設計されたものである。
【0004】
特許文献3には、2つの積層体間に液晶層を備えた、合わせガラスなどに用いる調光フィルムが示され、このフィルムは積層体に設けられた電極の駆動により、透過光を制御することができるものである。この電極に導電性ナノワイヤーを用いることにより、電極の信頼性を向上させ、断線などを防ぐものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-83688号公報
【特許文献2】特許第7103369号公報
【特許文献3】特開2019-101375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
調光機能を備えた合わせガラスは、例えば、2枚のガラス板間に調光フィルムを備えた構成とし、調光フィルムに電圧を印加することにより光を透過又は遮蔽可能とし、透過光を調整するものである。
しかし、調光フィルムは柔軟性に乏しく、屈曲や伸縮などの変形をさせると調光フィルムが不通となり、調光機能が働かなくなってしまうものであった。
そのため、合わせガラスとしては、平板状や曲率半径の大きな曲面形状などにしか成形できず、形状の複雑な透明部材、例えば、自動車のヘッドライトなどには応用することができなかった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、屈曲部などを有する三次元形状にしても調光機能を発揮することができ、合わせガラスなどに好適な成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の[1]~[11]の態様を有する。
【0009】
[1] 2枚の透明導電膜付き基板を前記透明導電膜が対向するように配置し、前記2枚の透明導電膜付き基板の間に液晶層を備える液晶素子を用いた成形体であって、前記透明導電膜が、金属ナノワイヤ、導電性高分子、炭素系導電剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、成形体の少なくとも一部に屈曲部を有する成形体。
【0010】
[2] 2枚の透明導電膜付き基板を前記透明導電膜が対向するように配置し、前記2枚の透明導電膜付き基板の間に液晶層を備える液晶素子を用いた成形体であって、前記透明導電膜が、金属ナノワイヤ、導電性高分子、炭素系導電材からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、成形体の少なくとも一部に前記液晶素子を延伸させた延伸成形部位を有する成形体。
【0011】
[3] 前記透明電極膜が炭素系導電材を含む、[1]又は[2]に記載の成形体。
【0012】
[4] 前記炭素系導電材がカーボンナノチューブである、[3]に記載の成形体。
【0013】
[5] 前記透明導電膜付き基板が透明導電膜及び基材を備え、前記基材のガラス転移温度が50℃以上である、[1]~[4]に記載の成形体。
【0014】
[6] 前記基材のガラス転移温度が80℃以上である、[5]に記載の成形体。
【0015】
[7] 前記透明導電膜付き基板が透明導電膜及び基材を備え、前記基材が延伸可能な基材である、[2]に記載の成形体。
【0016】
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の成形体を備える、合わせガラス。
【0017】
[9] [1]~[7]のいずれかに記載の成形体を備える、自動車用部材。
【0018】
[10] 2枚の透明導電膜付き基板を前記透明導電膜が対向するように配置し、前記2枚の透明導電膜付き基板の間に設けた液晶層を備える液晶素子を用いた成形体の製造方法であって、前記透明電極膜が金属ナノワイヤ、導電性高分子、炭素系導電剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、前記透明導電膜付き基板が透明導電膜及び基材を備え、下記工程(1)及び工程(2)を有する、成形体の製造方法。
(1)前記基材のガラス転移温度以上に加熱した後、加圧して前記液晶素子を成形用型に密着させる工程
(2)前記液晶素子を成型用型に密着させた状態で、前記ガラス転移温度未満まで冷却する工程
【0019】
[11] 前記液晶素子を3次元形状に成形する、[10]に記載の成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明の成形体は、透明導電膜が、金属ナノワイヤ、導電性高分子、炭素系導電材からなる群より選ばれる少なくとも1種、その中でも炭素系導電材、特にカーボンナノチューブを含むことにより、液晶素子を、屈曲部を有する三次元形状に変形させても調光機能を発揮することができる。また、延伸させても調光機能を発揮することができる。そのため、合わせガラスや自動車部品に好適に用いることができる。
本発明において「屈曲部」とは、角折れ状に折れ曲がる部分をいい、例えば、曲率半径が2000mm以下、特に500mm以下、さらに50mm以下の範囲の折れ曲がり部分をいう。前記曲率半径の下限は特に限定されないが、通常は0.1mm以上である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態の成形体を模式的に示した断面図である。
図2】本発明の一実施形態の成形体の製造方法の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を一実施形態に基づいて説明する。但し、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0023】
<成形体>
本発明の一実施形態の成形体1は、図1に示すように、透明導電膜2aが付いた基板2を、その透明導電膜2aが対向するように配置し、その間に液晶層3を備える液晶素子4を用いたものである。透明導電膜2aと液晶層3との間にはオーバーコート層5を設けてもよい。
本発明の成形体は、少なくとも一部に屈曲部を有する成形体(以下、第一態様の成形体ともいう。)や、少なくとも一部に延伸させた延伸成形部位を有する成形体(以下、第二態様の成形体ともいう。)にすることができる。
液晶素子4は、公知の液晶素子を用いることができ、高分子分散型液晶(PDLC)、高分子安定化液晶(PSLC)のいずれでもよく、また、ノーマルモード(電圧印加OFF時に光散乱、ON時に透明)、リバースモード(電圧印加OFF時に透明、ON時に光散乱)のいずれでもよいが、加工性の観点からノーマルモードが好ましい。
【0024】
<基板>
基板2は、透明導電膜2aと基材2bとを備えるものである。
【0025】
<透明導電膜>
透明導電膜2aは、金属ナノワイヤ、導電性高分子、炭素系導電材からなる群(以下、これらを合わせて導電材という。)より選ばれる少なくとも1種を含むものであり、電極としての働きをするものである。導電材は透明導電膜2aに導電性を付与するものである。
【0026】
金属ナノワイヤは、径の太さがナノメーターオーダーのサイズを有する、ワイヤ状又はチューブ状の金属である。金属ナノワイヤとしては、金、銀、白金、銅、ニッケル、鉄、コバルト、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、カドミウム、オスミウム、イリジウムなどからなるナノワイヤを挙げることができ、これらの中でも、銀ナノワイヤが好ましい。
【0027】
導電性高分子としては、例えば、チオフェン系化合物が挙げられ、具体的には、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホネートとの混合物(PEDOT:PSS)、ポリ(3-チオフェン-β-エタンスルホン酸)などを挙げることができ、これらの中では、PEDOT:PSSが好ましい。
【0028】
炭素系導電材としては、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン、導電性カーボンブラックなどが挙げることができ、これらの中でもカーボンナノチューブ(CNT)が好ましい。グラフェン、導電性カーボンブラックなどは粒子状、針状又は燐片状であることが好ましい。
【0029】
導電材は、1種で使用しても、2種以上を併用してもよい。導電材の中では、炭素系導電材が好ましく、その中でもカーボンナノチューブ(CNT)が好ましい。
カーボンナノチューブ(CNT)としては、直径が0.5nm~5nmが好ましく、0.7nm~3nmがより好ましく、1nm~2nmが特に好ましく、1.6nm±0.4nmが最も好ましい。カーボンナノチューブ(CNT)は、G/D比(G-bandのピーク強度比)が5以上が好ましく、10以上がより好ましく、15以上が特に好ましい。カーボンナノチューブ(CNT)は、単層、二層又は多層のいずれでもよいが単層が好ましい。
カーボンナノチューブ(CNT)は、具体的には、TUBALL製「単層カーボンナノチューブ」などを用いることができる。
【0030】
透明導電膜2aは、バインダーをさらに含んでもよい。バインダーは、導電材を互いに結着させ、かつ基材2b上に被膜させることが可能になる。また、透明導電膜2aには、界面活性剤、粘度調整剤、分散剤、硬化促進触媒、可塑剤、酸化防止剤などの添加剤を配合してもよい。
【0031】
バインダーとしては、従来公知のバインダー樹脂を使用することができ、例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ニトロセルロース、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、フッ化ビニリデン、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリビニルアセタール樹脂などの熱可塑性樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アクリルメラミン樹脂、ポリイソシアネート樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの硬化性樹脂などを挙げることができる。
【0032】
透明導電膜2aの厚みは、特に限定するものではないが、1nm~1000nmが好ましく、1nm~500nmがより好ましく、1nm~100nmが特に好ましい。
【0033】
<基材(第一態様の成形体)>
基材2bは、第一態様の成形体とする場合、透明な樹脂、特に透明な熱可塑性樹脂であって、可撓性を有するフィルムを適用することができ、光学異方性が小さく、また、可視域の波長(380~800nm)における透過率が80%以上である透明樹脂フィルムを適用することが好ましい。
透明樹脂フィルムの材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、EVA等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリサルホン(PEF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホン、ポリエーテル(PE)、ポリエーテルケトン(PEK)、(メタ)アクロニトリル、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー等の樹脂を挙げることができる。
本実施形態の液晶素子4は、3次元曲面など屈曲部を有するように成形されるため、基材2bに用いる透明樹脂フィルムの材料としては、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)樹脂のうちのいずれかを素材とすることが特に好ましい。
また、第一態様の成形体において、基材2bとして用いられる透明樹脂フィルムの厚みは、その材料にも依るが、その透明樹脂フィルムが可撓性を有する範囲内で適宜選択することができるが、厚みを200μm以下とすることが好ましい。
【0034】
第一態様の成形体とする場合の基材2bのガラス転移温度は、50℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。ガラス転移温度は示差走査熱量測定(DSC)で測定することができる。
【0035】
<基材(第二態様の成形体)>
基材2bは、第二態様の成形体とする場合、延伸可能であることが好ましく、導電材(特にCNT)をはじくことなく塗布可能で伸縮性があるのが好ましく、さらに、機械強度を有するのが好ましい。また、液晶層3への追従性、基材2b自体の伸張性の観点から、柔軟性を有する樹脂を使用したほうが好ましい。
本発明において延伸可能とは、基材2bが破断することなく延びる性質をいい、例えば、延伸率が0.1%~7000%の範囲内で延伸することをいう。より好ましくは延伸率が0.5%~5000%の範囲内、特に好ましくは1%~1000%の範囲内である。この場合の延伸率は延伸の方向の延伸前後の長さの百分率をいう。
そのような観点から、基材2bに使用される熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体などのスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、ポリ乳酸、ポリブチルサクシネート等の生分解性ポリマーなどが挙げられる。
【0036】
上記した中でも、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、熱可塑性エラストマーなどが好ましい。これら樹脂を使用することで、コート性を良好にし、また、液晶層3への追従性、基材2b自体の伸張性が良好となる。
また、上記した中では、追従性及び伸張性をより良好にする観点からは、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、熱可塑性エラストマーがより好ましい。さらに、これらの中では、接着性を高める観点からはポリビニルアセタール樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、熱可塑性エラストマーが好ましく、衝撃吸収性等も向上させる観点からはポリビニルアセタール樹脂が好ましい。
また、追従性及び伸張性を付与しつつ、機械強度を良好にする観点からはポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂などを使用してもよい。
【0037】
(ポリエステル系樹脂)
基材2bに使用するポリエステル系樹脂としては、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。基材2bに機械強度及び伸張性を付与しつつ、液晶層3への追従性を付与する観点からはポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
【0038】
(ポリオレフィン系樹脂)
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリ(4-メチルペンテン-1)系樹脂などが挙げられる。
【0039】
(ポリビニルアセタール樹脂)
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化して得られる。また、ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルなどのポリビニルエステルをけん化することにより得られる。ポリビニルアセタール樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
アセタール化に使用するアルデヒドは特に限定されないが、炭素数が1~10のアルデヒドが好適に用いられ、より好ましくは炭素数が2~6のアルデヒド、さらに好ましくは炭素数が4のアルデヒドである。
上記炭素数が1~10のアルデヒドは特に限定されず、例えば、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n-ブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、n-バレルアルデヒドが好ましく、n-ブチルアルデヒドがより好ましい。これらのアルデヒドは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
また、ポリビニルアルコールとしては、鹸化度80~99.8モル%のポリビニルアルコールが一般的に用いられる。ポリビニルアルコールの平均重合度は、ポリビニルアセタール樹脂の平均重合度を所望の範囲内に調整するために、500以上が好ましく、また、4000以下が好ましい。ポリビニルアルコールの平均重合度は、1000以上がより好ましく、また、3600以下がより好ましい。ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0042】
ポリビニルアセタール樹脂に含まれているアセタール基の炭素数は特に限定されないが、1~10であることが好ましく、2~6がより好ましく、4がさらに好ましい。アセタール基としては、具体的にはブチラール基が特に好ましく、したがって、ポリビニルアセタール樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。
ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、好ましくは40モル%以上であり、また、好ましくは85モル%以下である。また、アセタール化度は、60モル%以上がより好ましく、また、より好ましくは75モル%以下である。なお、アセタール化度とは、アセタール基がブチラール基であり、ポリビニルアセタール樹脂がポリビニルブチラール樹脂の場合には、ブチラール化度を意味する。
【0043】
ポリビニルアセタール樹脂の水酸基量は、好ましくは15モル%以上であり、また、好ましくは35モル%以下である。水酸基量を15モル%以上とすることで、ガラス板などとの接着性が良好になりやすくなり、合わせガラスの耐貫通性などを良好にしやすくなる。また、水酸基量を35モル%以下とすることで、合わせガラスが硬くなり過ぎたりすることを防止する。ポリビニルアセタール樹脂の水酸基量は、より好ましくは20モル%以上であり、またより好ましくは33モル%以下である。
【0044】
ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度(アセチル基量)は、好ましくは0.1モル%以上であり、また、好ましくは20モル%以下である。アセチル化度が、上記下限値以上とすることで、可塑剤などとの相溶性が良好になりやすい。また、上記上限値以下とすることで、液晶層3の耐湿性が高くなる。これらの観点からアセチル化度は、より好ましくは0.3モル%以上、更に好ましくは0.5モル%以上であり、また、より好ましくは10モル%以下であり、さらに好ましくは5モル%以下である。
なお、水酸基量、アセタール化度(ブチラール化度)、及びアセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出することができる。
【0045】
ポリビニルアセタール樹脂の平均重合度は、好ましくは500以上、また、好ましくは4000以下である。平均重合度を500以上することで、合わせガラスの耐貫通性が良好になる。また、平均重合度を4000以下とすることで、合わせガラスの成形がしやすくなる。重合度はより好ましくは1000以上であり、またより好ましくは3600以下である。なお、ポリビニルアセタール樹脂の平均重合度は、原料となるポリビニルアルコールの平均重合度と同じであり、ポリビニルアルコールの平均重合度によって求めることができる。
【0046】
(エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂)
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂としては、非架橋型のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂であってもよいし、また、高温架橋型のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂であってもよい。エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物、エチレン-酢酸ビニルの加水分解物などのようなエチレン-酢酸ビニル変性体樹脂も用いることができる。
【0047】
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂は、JIS K6730「エチレン・酢酸ビニル樹脂試験方法」またはJIS K6924-2:1997に準拠して測定される酢酸ビニル含量が好ましく10質量%以上50質量%以下、より好ましくは20質量%以上40質量%以下である。酢酸ビニル含量をこれら下限値以上とすることで、ガラスへの接着性が高くなり、また、合わせガラスの耐貫通性が良好になりやすくなる。また、酢酸ビニル含量をこれら上限値以下とすることで、合わせガラス用中間膜の破断強度が高くなり、合わせガラスの耐衝撃性が良好になる。
【0048】
(熱可塑性エラストマー)
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系熱可塑性エラストマー、脂肪族ポリオレフィンが挙げられる。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。スチレン系熱可塑性エラストマーは、一般的に、ハードセグメントとなるスチレンモノマー重合体ブロックと、ソフトセグメントとなる共役ジエン化合物重合体ブロック又はその水添ブロックとを有する。スチレン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン-イソプレンジブロック共重合体、スチレン-ブタジエンジブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体、スチレン-ブタジエン/イソプレン-スチレントリブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体、並びにその水素添加体が挙げられる。
上記脂肪族ポリオレフィンは、飽和脂肪族ポリオレフィンであってもよく、不飽和脂肪族ポリオレフィンであってもよい。上記脂肪族ポリオレフィンは、鎖状オレフィンをモノマーとするポリオレフィンであってもよく、環状オレフィンをモノマーとするポリオレフィンであってもよい。中間膜の保存安定性、及び、遮音性を効果的に高める観点からは、上記脂肪族ポリオレフィンは、飽和脂肪族ポリオレフィンであることが好ましい。
上記脂肪族ポリオレフィンの材料としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、trans-2-ブテン、cis-2-ブテン、1-ペンテン、trans-2-ペンテン、cis-2-ペンテン、1-ヘキセン、trans-2-ヘキセン、cis-2-ヘキセン、trans-3-ヘキセン、cis-3-ヘキセン、1-ヘプテン、trans-2-ヘプテン、cis-2-ヘプテン、trans-3-ヘプテン、cis-3-ヘプテン、1-オクテン、trans-2-オクテン、cis-2-オクテン、trans-3-オクテン、cis-3-オクテン、trans-4-オクテン、cis-4-オクテン、1-ノネン、trans-2-ノネン、cis-2-ノネン、trans-3-ノネン、cis-3-ノネン、trans-4-ノネン、cis-4-ノネン、1-デセン、trans-2-デセン、cis-2-デセン、trans-3-デセン、cis-3-デセン、trans-4-デセン、cis-4-デセン、trans-5-デセン、cis-5-デセン、4-メチル-1-ペンテン、及びビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0049】
第二態様の成形体において、基材2bの厚みは、特に限定するものではないが、30μm~1000μmが好ましく、50μm~500μmがより好ましく、50μm~300μmが特に好ましい。
【0050】
(可塑剤)
第一及び第二態様の成形体のいずれにおいて、基材2bは、樹脂成分に加えて、さらに可塑剤を含有してもよい。
基材2bは、可塑剤を含有することにより柔軟となり、合わせガラス用中間膜の曲面への追従性や伸張性がより良好になる。さらには、高い接着性を発揮することも可能になる。可塑剤は、熱可塑性樹脂としてポリビニルアセタール樹脂を使用する場合に含有させると基材2bを柔軟にしやすく、また、高い接着性を発揮しやすくなる。
可塑剤としては、例えば、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、並びに有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤などのリン酸可塑剤等が挙げられる。なかでも、有機エステル可塑剤が好ましい。
【0051】
一塩基性有機酸エステルとしては、グリコールと、一塩基性有機酸とのエステルが挙げられる。グリコールとしては、各アルキレン単位が炭素数2~4、好ましくは炭素数2又は3であり、アルキレン単位の繰り返し数が2~10、好ましくは2~4であるポリアルキレングリコールが挙げられる。また、グリコールとしては、炭素数2~4、好ましくは炭素数2又は3であり、繰り返し単位が1であるモノアルキレングリコールでもよい。
グリコールとしては、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ブチレングリコールなどが挙げられる。
一塩基性有機酸としては、炭素数3~10の有機酸が挙げられ、具体的には、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2-エチル酪酸、2-エチルペンタン酸、ヘプチル酸、n-オクチル酸、2-エチルヘキシル酸、n-ノニル酸及びデシル酸などが挙げられる。
【0052】
具体的な一塩基性有機酸としては、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ-n-オクタノエート、トリエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、ジエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリエート、トリエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、エチレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,2-プロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,3-プロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,4-ブチレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,2-ブチレングリコールジ-2-エチルブチレートなどが挙げられる。
【0053】
また、多塩基性有機酸エステルとしては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の炭素数4~12の二塩基性有機酸と、炭素数4~10のアルコールとのエステル化合物が挙げられる。炭素数4~10のアルコールは、直鎖でもよいし、分岐構造を有していてもよいし、環状構造を有してもよい。
具体的には、セバシン酸ジブチル、アゼライン酸ジオクチル、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ヘプチルノニル、ジブチルカルビトールアジペート、混合型アジピン酸エステルなどが挙げられる。また、油変性セバシン酸アルキドなどでもよい。混合型アジピン酸エステルとしては、炭素数4~9のアルキルアルコール及び炭素数4~9の環状アルコールから選択される2種以上のアルコールから作製されたアジピン酸エステルが挙げられる。
有機リン酸可塑剤としては、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等のリン酸エステルなどが挙げられる。
可塑剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
可塑剤としては、上記したなかでも、グリコールと、一塩基性有機酸とのエステルが好ましく、トリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)が特に好適に用いられる。
【0054】
基材2bにおいて、可塑剤の含有量は、特に限定されないが、例えば柔軟性を付与し、曲面への追従性及び伸張性や、接着性を優れたものにする観点からは一定量以上含有させるとよい。そのような観点から、基材2bにおける可塑剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上である。また、可塑剤の含有量は、80質量部以下が好ましい。含有量を80質量部以下とすると、基材2bから可塑剤が分離することが防止される。可塑剤の含有量はより好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは35質量部以上であり、また、より好ましく70質量部以下、さらに好ましくは63質量部以下である。
【0055】
一方で、基材2bにおいて、可塑剤の量を少なくすることで、ブリードアウトした可塑剤が透明導電膜2aの導電性を低下させることを防止する。したがって、透明導電膜2aの導電性を優れたものとするためには、可塑剤の含有量は、40質量部以下が好ましく、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がさらに好ましく、0質量部であることがよりさらに好ましく、可塑剤は基材2bに含有されていなくてもよい。
基材2bにおいて、樹脂成分、又は樹脂成分及び可塑剤が主成分となるものであり、樹脂成分及び可塑剤の合計は、基材2bの全量基準で、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上100質量%以下である。
【0056】
(その他の添加剤)
第一及び第二態様の成形体のいずれにおいて、基材2bは、必要に応じて、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、結晶核剤、分散剤、染料、顔料等の可塑剤以外の添加剤を含有してもよい。
【0057】
<液晶層>
液晶層3は、上述したとおり、ノーマルモード、リバースモードのいずれにしてもよい。
ノーマルモードにおける液晶層3としては、例えば、国際公開第2022/1806062号公報(WO2022/180606A)に開示された液晶-高分子複合膜を用いることができる(特に段落[0041]~[0076]参照)。
リバースモードにおける液晶層3としては、例えば、日本特開2016-110148号公報(JP2016-110148A)に開示された液晶調光層を用いることができる(特に段落[0029]~[0088]参照)。
【0058】
<オーバーコート層>
オーバーコート層5は、設けなくてもよいが、基板2と液晶層3との間に設けてこれらを接着するようにするのが好ましい。
オーバーコート層5としては例えば、接着剤を用いることができる。また、優れた光透過性を有することが好ましいことから、オーバーコート層5としては例えば、熱可塑性樹脂(ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレートなど)、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルサルフォン、ポリビニルアルコールおよびその誘導体(ポリビニルブチラールなど)、ポリフェニレンエーテル、ノルボルネン系樹脂、イソブチレン無水マレイン酸共重合樹脂、環状オレフィン系樹脂)、非感光性の熱硬化型樹脂(アルキッド樹脂、芳香族スルフォンアミド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂)、光硬化型樹脂等を用いることができる。
オーバーコート層5の形成方法は特に限定されないが、一般的にはスピンコート、ロールコート、ナイフコートなどの塗布法で形成することができる。
オーバーコート層5は、液晶素子内に部分的に設けてもよい。
オーバーコート層5を設ける場合は、厚みが0.1μm~3μmが好ましく、0.1μm~2μmがより好ましく、0.1μm~1μmが特に好ましい。
【0059】
<液晶素子の製造方法>
以下、液晶素子4の製造方法の一例を説明する。
まず、基材2b上に透明導電膜2aを設けた基板2を作製する。
基材2b上に透明導電膜2aを形成する方法は、特に限定するものではないが、透明導電膜2aを形成する組成物分散液を基材2a上に塗布や印刷などにより形成することができる。
組成物分散液は、2-プロパノール、エタノール、などを含む溶媒にポリアクリル酸などを分散剤として溶解し、これに導電材を添加して混合し、混合液を得る。溶媒に対して導電材を0.01mg/ml~2mg/ml添加するのが好ましい。
この混合液を攪拌する。この攪拌は、例えば、1500rpmで20時間行う。攪拌した混合液を氷冷しながらプローブ型の超音波処理を行う。処理した液を遠心分離(例えば、10000rpmで30分)し、上澄み液をPTFEフィルター(5μm)を通して回収し、組成物分散液とすることができる。
【0060】
組成物分散液を基材2bの片面に塗布又は印刷して、組成物分散液を乾燥させて透明導電膜2aを形成し、基板2を作製できる。
塗布は、例えば、バーコート法、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法などで行うことができる。
印刷は、例えば、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、静電印刷、フレキソ印刷、グラビアオフセット印刷、凸版反転オフセット印刷などで行うことができる。
【0061】
液晶層3は、例えば、基板2の透明導電膜2a上に調光インクを塗布して形成することができる。
例えば、ネマチック液晶に二色性色素、カイラル剤などを混合した液晶組成物を作製し、これに対し、エマルション安定剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液などを加え、シラス多孔質ガラスなどに通して乳化し、エマルジョンを得る。
他方、水性アクリルエマルジョンにポリビニルアルコールなどを加えて攪拌し、ラテックスを得る。
エマルジョンにラテックスを加え、均一になるまで撹拌して調光インクを得る。
この調光インクを基板2上に塗布し、乾燥して液晶層3を得ることができる。
より詳しくは、国際公開第2022/1806062号公報(WO2022/180606A)に開示された液晶-高分子複合膜の製造方法(特に段落[0086]~[0142]参照)や特開2016-110148号公報(JP2016-110148A)に開示された液晶調光層の製造方法(特に段落[0083]~[0088]参照)などに基づき液晶層3を作製することができる。
【0062】
液晶層3を設けた基板2に、他の基板2の透明導電膜2a側が液晶層3に接するように貼り合わせ、オートクレーブなどで加熱して液晶素子4を作製することができる。
【0063】
<成形体の製造方法>
成形体1は、液晶素子4を変形させても調光機能を発揮するものであり、液晶素子4を成形し、少なくとも一部に屈曲部を有する形状に形成したり、延伸させたりして形成することができる。従来では、液晶素子を屈曲させたり延伸させたりすれば液晶層が不通になり、調光機能を発揮しなくなるものであったが、本発明の成形体1は、屈曲させたり延伸させたりしても調光機能を発揮するものである。
【0064】
成形体1は、例えば、下記工程(1)及び工程(2)を有する方法により、製造することができる。
(1)基材2bのガラス転移温度以上に加熱した後、加圧して液晶素子4を成形用型に密着させる工程
(2)液晶素子4を成型用型に密着させた状態で、基材2bのガラス転移温度未満まで冷却する工程
【0065】
より詳しくは、図2(A)に示すように、液晶素子4を基材2bのガラス転移温度以上に加熱装置6などで加熱し、図2(B)又は(C)に示すように、成形用型7に、吸引装置8などを用いて真空又は圧空などの加圧により密着させた後、基材2bのガラス転移温度未満に冷却し、図2(D)に示すように、液晶素子4を成形用型から取り外し、必要に応じて裁断して、液晶素子4に三次元形状を付与した成形体1を製造することができる。
成形用型は、アルミニウムなどの金属からなり、液晶素子4を賦形するための三次元形状に形成してある。
三次元形状の成形は、市販の真空成型機で行うこともでき、例えば、ラヤマパック社製卓上真空成形機「V.former」などを用いることができる。
屈曲部とは、上記したとおり、例えば、曲率半径が2000mm以下、特に500mm以下、さらに50mm以下の範囲の折れ曲がり部分をいい、屈曲部の曲率半径が一律ではなかったり、成形体5に複数の屈曲部があったりする場合は最小の曲率半径がこの範囲に含まれていればよい。
また、屈曲部を形成する2つの面部の角度が、0°~180°が好ましく、0°~160°がより好ましく、0°~140°が特に好ましい。
【0066】
成形体1は、平板状の液晶素子4を、折り曲げたり、凹凸を有する成形をしたりして形成することができる。例えば、液晶素子4に一部をドーム状などの三次元形状にした膨出部を設けることができる。なお、本発明において、三次元形状とは縦・横・高さの次元を有する形状であり、立方体状、直方体状、円柱状、半球状、三角錐状などの他、星型状、円環状など様々な形状にすることができる。
【0067】
成形体1は、液晶素子4の少なくとも一部に延伸させた延伸成形部位を有するものとして製造することもできる。また、成形体1は、使用時に伸縮させる用途のものとして製造することもできる。
液晶素子4の少なくとも一部が延伸されていればよく、延伸率が0%よりも大きいのが好ましく、3%以上がより好ましく、10%以上が特に好ましい。上限値は特に限定するものではないが3000%以下が好ましく、2000%以下がより好ましく、1000%以下が特に好ましい。
なお、延伸率は(成型後の成型部面積-成型前の成型部面積)/成型前の成型部面積×100%で測定することができる。
【0068】
成形体1は、屈曲部を有したり延伸部を有したりしても、調光機能を発揮するものであるため、透明で変形形状のものに好適に用いることができ、具体的には、合わせガラスや自動車用部材などに適用することができる。例えば、建築物用窓、仕切壁、自動車のヘッドライトカバー、テールライトカバー、フロントガラス、リアガラス、サイドガラス、ルーフガラスなどに用いることができる。
【実施例0069】
以下、本発明の一実施例を説明する。但し、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0070】
以下の実施例1、実施例2及び比較例1を作製した。
【0071】
(実施例1)
<CNT分散液の作製>
2-プロパノールとエタノールの19対1(質量比)の混合溶媒40mLにポリアクリル酸(PAA、重量平均分子量5000)を20mg溶解し、次いでカーボンナノチューブ(CNT)(TUBALL製「単層カーボンナノチューブ」)を20mg添加し混合した。この混合液を1500rpmの回転スピードで20時間撹拌した(プレ分散工程)。その後、本分散として、氷冷しながらプローブ型の超音波処理を行った。処理後の液を20℃下で10000rpmの遠心分離機に30分かけた後、上澄み液をPTFEの5μmのフィルターを通して回収し、CNT分散液を得た。
なお、用いたカーボンナノチューブの直径は1.6±0.4nmであり、D/G比は18であった。
【0072】
(基板の作製)
基材として未延伸PETフィルム(厚さ200μm)を用いた。このPETフィルムのガラス転移温度(Tg)は75℃であった。
上記CNT分散液を、wet膜厚が40μmとなるよう、基材上にバーコートで塗布し、50℃で乾燥して基材上に透明導電膜を備えた基板を得た。この基板を2枚準備した。
【0073】
(調光インクの作製)
ネマチック液晶に二色性色素、カイラル剤を混合し、液晶組成物(L-1)を得た。
【0074】
液晶組成物(L-1)50質量部に対し、1.5質量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液を50質量部加え、シラス多孔質ガラスに通して乳化し、o/wエマルジョン(E-1)を得た。
他方、水性アクリルエマルジョン(ジャパンコーティングレジン社製「ES-620」)93質量部にポリビニルアルコール(三菱ケミカル社製「ゴーセノールGH-17R」)7質量部を加えて攪拌し、白色のラテックス(W-1)を得た。
o/wエマルジョン(E-1)55質量部にラテックス(W-1)を45質量部加え、均一になるまで撹拌して調光インクを得た。
【0075】
(液晶層の作製)
調光インクを基板の透明導電膜上にバーコートで塗布し、50℃で乾燥して膜厚25μmの液晶層を得た。
この液晶層を膜面上から顕微鏡で観察したところ、高分子マトリクス中に平均粒径10μmの液晶組成物が分散した液晶領域を有していた。
液晶層に、もう1枚の基板を50℃で向い合せに貼り合わせ、液晶素子を得た。
【0076】
(三次元形成)
ラヤマパック社製真空成形機「v.former」を使用して真空吸引して三次元成形を行った。
液晶素子を95℃に加熱し、成形用型へ向けて移動させて、液晶素子に成形用型を押し当てる。また、吸引孔からエアを吸引して、液晶素子を成形用型に密着させる。この状態を保持したまま、液晶素子を基材のガラス転移温度(Tg)より低い室温まで冷却することにより、液晶素子は、成形用型の形状に倣った形状に成型された。これを実施例1の成形体とした。なお、成形用型は直径2.5cm、高さ1.25cmのドーム型にした。
実施例1の成形体の最小の曲率半径は12.5mmであった。
【0077】
(駆動試験)
実施例1の成形体に電圧印加し、調光機能を発揮するか確認した。電圧OFF時には不透明であるが電圧ON時には透明になることが確認された。
【0078】
(実施例2)
<CNT分散液の作製>
実施例1と同様にCNT分散液を作製した。
【0079】
(基板の作製)
基材としてエポキシ樹脂からなるPanasonic社製「エラストマーBEYOLEX」(A4サイズ)を用いた。
CNT分散液を、wet膜厚が40μmとなるよう、基材上にバーコートで塗布し、100℃で乾燥して基材に透明導電膜を備えた基板を得た。この基板を2枚準備した。
【0080】
(調光インクの作製)
実施例1と同様に調光インクを作製した。
【0081】
(液晶層の作製)
調光インクを基板の透明導電膜上にバーコートで塗布し、50℃で乾燥して膜厚25μmの液晶層を得た。
この液晶層を膜面上から顕微鏡で観察したところ、高分子マトリクス中に平均粒径10μmの液晶組成物が分散した液晶領域を有していた。
液晶層に、もう1枚の基板を50℃で向い合せに貼り合わせ、液晶素子を得た。
【0082】
(延伸試験)
液晶素子を手動一軸延伸機で延伸させた。幅50mmの液晶素子を延伸部分が20mmとなるようにカットして、1mm/sの延伸速度で延伸した。
液晶素子を延伸させながら、液晶素子の電圧印加をON/OFFし、延伸された状態で調光機能を有するかを確認しながら行った。延伸率150%までは電圧をOFFでは不透明に、電圧をONにすると透明になることが確認された。
【0083】
(比較例1)
(基板の作製)
基材としてエポキシ樹脂からなるPanasonic社製「エラストマーBEYOLEX」(A4サイズ)を用いた。
基材上にITOを膜厚80nmとなるよう蒸着することで基材に透明導電膜を備えた基板を得た。この基板を2枚準備した。
【0084】
(調光インクの作製)
実施例1と同様に調光インクを作製した。
【0085】
(液晶層の作製)
調光インクを基板の透明導電膜上にバーコートで塗布し、50℃で乾燥して膜厚25μmの液晶層を得た。
この液晶層を膜面上から顕微鏡で観察したところ、高分子マトリクス中に平均粒径10μmの液晶組成物が分散した液晶領域を有していた。
液晶層に、もう1枚の基板を50℃で向い合せに貼り合わせ、液晶素子を得た。
【0086】
(延伸試験)
液晶素子を手動一軸延伸機で延伸させた。幅50mmの液晶素子を延伸部分が20mmとなるようにカットして、1mm/sの延伸速度で延伸した。
液晶素子を延伸させながら、液晶素子の電圧印加をON/OFFし、延伸された状態で調光機能を有するかを確認しながら行った。延伸後すぐに、電圧をONにしても透明にならないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の成形体は、屈曲部を有する三次元形状に変形、または延伸させて調光機能を発揮できるため、様々な形状に加工された合わせガラスや自動車部品にも適用できる。
【符号の説明】
【0088】
1 成形体
2 基板
2a 透明導電膜
2b 基材
3 液晶層
4 液晶素子
5 オーバーコート層
6 加熱装置
7 成形用型
8 吸引装置
図1
図2