(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090446
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】接合方法
(51)【国際特許分類】
C09J 201/00 20060101AFI20240627BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240627BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20240627BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20240627BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20240627BHJP
C09K 5/12 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J11/04
C09J5/00
C09J163/00
C09J7/35
C09K5/12 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206364
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 信行
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 勇人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ゴルゴル リカルド ミゾグチ
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA13
4J004AA15
4J004AA18
4J004AB03
4J004BA02
4J004CB03
4J004CC02
4J004CD06
4J004DB03
4J004FA05
4J040EC061
4J040EE061
4J040HA136
4J040HD21
4J040JA08
4J040JB01
4J040KA14
4J040KA23
4J040LA01
4J040LA02
4J040LA08
4J040MA02
4J040MA05
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】発熱体と放熱部品、又は放熱部品と放熱部品を、固形熱伝導材料を介して接合する接合方法を提供すること。
【解決手段】発熱体Aと放熱部品B、又は放熱部品B2と放熱部品B3を、熱可塑性樹脂と放熱フィラーを含み、前記熱可塑性樹脂の含有量が、固形熱伝導材料中の樹脂成分のうち、51質量%以上である固形熱伝導材料を介して接合する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体Aと放熱部品B、又は放熱部品B2と放熱部品B3を、熱可塑性樹脂と放熱フィラーを含み、前記熱可塑性樹脂の含有量が、固形熱伝導材料中の樹脂成分のうち、51質量%以上である固形熱伝導材料を介して接合する、接合方法。
【請求項2】
前記固形熱伝導材料を前記放熱部品Bに接合させた後、前記放熱部品Bに接合した状態の固形熱伝導材料を前記発熱体Aに接面させて、前記固形熱伝導材料を溶融及び固化させることにより、発熱体Aと放熱部品Bを接合する、
又は
前記固形熱伝導材料を放熱部品B3に接合させた後、前記放熱部品B3に接合した状態の固形熱伝導材料を放熱部品B2に接面させて、前記固形熱伝導材料を溶融及び固化させることにより、放熱部品B2と放熱部品B3を接合する、請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記固形熱伝導材料を前記発熱体Aに接合させた後、前記発熱体Aに接合した状態の固形熱伝導材料を前記放熱部品Bに接面させて、前記固形熱伝導材料を溶融及び固化させることにより、発熱体Aと放熱部品Bを接合する、請求項1に記載の接合方法。
【請求項4】
前記発熱体Aと、前記固形熱伝導材料と、前記放熱部品Bとを、この順で配置した状態で、前記固形熱伝導材料を溶融及び固化させることにより、発熱体Aと放熱部品Bを接合する、
又は
前記放熱部品B2と、前記固形熱伝導材料と、前記放熱部品B3とを、この順で配置した状態で、前記固形熱伝導材料を溶融及び固化させることにより、放熱部品B2と放熱部品B3を接合する、請求項1に記載の接合方法。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂が、融解熱が15J/g以下の非晶性熱可塑性樹脂である、請求項1に記載接合方法。
【請求項6】
前記非晶性熱可塑性樹脂が、熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂の少なくとも何れかである、請求項5に記載の接合方法。
【請求項7】
前記非晶性熱可塑性樹脂が、エポキシ当量が1,600以上である非晶性熱可塑性樹脂、又はエポキシ基を含まない非晶性熱可塑性樹脂である、請求項6に記載の接合方法。
【請求項8】
前記固形熱伝導材料中における放熱フィラーの含有量が、40~95体積%である、請求項1に記載の接合方法。
【請求項9】
前記放熱フィラーが、銀、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、二酸化ケイ素、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、炭化ケイ素および窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも何れかである、請求項1に記載の接合方法。
【請求項10】
前記溶融を、100~400℃の加熱条件及び0.01~20MPaの加圧条件で行う、請求項2~4の何れかに記載の接合方法。
【請求項11】
溶融前の固形熱伝導材料が、フィルム、棒、ペレット及び粉体からなる群から選択される何れかの形状を有する、請求項2~4の何れかに記載の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形熱伝導材料を介した接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Thermal Interface Material(以下、「TIM」)は、電子機器の内部で発生した不要な熱を効率よく放熱するために部材間に挿入される熱伝導材料である。TIMは、一般的に、IC(集積回路)などの発熱体と、ヒートスプレッダーやヒートシンクといった放熱部品との間に挿入する形や、放熱部品と放熱部品との間に挿入する形で使用される。
【0003】
従来、TIMとして、サーマルグリース(例えば、特許文献1)、サーマルギャップフィラー、フェイズチェンジマテリアル(以下、「PCM」)(例えば、特許文献2)、放熱シート(例えば、特許文献3)、等、様々な形状のものが知られ、それぞれ用途に応じて使用されている。
【0004】
サーマルグリースは、シリコーンなどの樹脂に金属粉等の熱伝導性を持つ粒子を添加した、粘性のある液状材料であり、キュア(加熱処理)が必要ないことからCPU(中央処理装置)などのICの放熱に広く使用されている。サーマルグリースは液状であるため、複雑な形状の凹凸にも追従して密着が可能であって熱伝導の効率を上げることができるというメリットや、フレキシビリティが高く施工時の厚み調整等にも対応可能であるというメリットを有する。一方で、サーマルグリースの保管や塗布に関し、製品ごとのノウハウがあり、ハンドリング性に劣り、既存の製造ラインへの適性が低いというデメリットがある。また、サーマルグリースは、熱膨張特性の異なる部品間を埋めるように使用された際、機器の稼働・停止を繰り返すうちに、部品間にあった液状のグリースが徐々に外に押し出されて少なくなっていく「ポンプアウト」と呼ばれる現象や、長期の使用にともなって、樹脂の揮発成分が抜けてしまい、固まって粉状に劣化してしまう現象が起きやすく、長期間使用する上では信頼性に課題が残る。
【0005】
サーマルギャップフィラーは、液状の熱伝導性ギャップ充填材料で、電子部品に塗布して、空気溜まりや隙間を埋めるために使用される。サーマルギャップフィラーも液状であるため、複雑な形状の凹凸にも追従して密着が可能であり、硬化後にエアギャップのない高効率の熱インターフェースが提供できるというメリットを有する。一方で、サーマルギャップフィラーも、前記サーマルグリースと同様に、ハンドリング性に劣り、既存の製造ラインへの適性が低いというデメリットがある。
【0006】
PCMは、熱可塑性樹脂を主成分としており、常温状態では固体、IC動作時の60℃~80℃では液体となるように設計されている熱伝導材料であり、ICの動作時に軟化して放熱器との密着が良好になるため、複雑な形状の凹凸にも追従して密着が可能であって熱伝導の効率を上げることができる。しかし、PCMは、機器の稼働・停止に伴い、その形状が固体と液体間で繰り返し変化するため、固化時に体積変化や形状変化が起きやすく、ボイド(空隙)が発生して放熱効率が低下する確率が高まるというデメリットがある。また、使用前は冷蔵保存が必要であり、既存の製造ラインへの適性が低いというデメリットがある。また、常温では固化してIC等に接着されているため、部品のリワークが難しいというデメリットもある。
【0007】
放熱シートは、フィラーが充填されたシート状の樹脂材料であり、TIMとして重要な厚みのコントロールがしやすく、形状の制御に優れ性能が安定しているため、液状材料では難しい比較的大きな凹凸を埋める用途に好適である。また、シート形状のため、扱いやすく、リワーク(取り替え)も容易であるため、熱伝導材料として広く使用されている。しかし、放熱シートは、液状材料ほどの柔軟性はなく、複雑な形状の凹凸に追従して密着することが難しく、また、施工時の厚み調整等にも対応できないなど、設計への適性が低いというデメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006-188638号公報
【特許文献2】特開2010-21165号公報
【特許文献3】特開2020-13872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、発熱体と放熱部品、又は放熱部品と放熱部品を、固形熱伝導材料を介して接合する接合方法であって、従来のTIMにおけるデメリットを解消し、既存の製造ラインへの適性、及び、設計への適性が、共に高く、長期使用や繰り返し使用に伴う性能の低下が生じにくいTIMを電子機器に挿入する用途に好適な接合方法の提供を目的とする。
本開示において、「既存の製造ラインへの適性が高い」とは、保管や塗布等に関する特殊な制限がなく、ハンドリング性に優れることを意味し、「設計への適性が高い」とは、複雑な形状の凹凸にも追従して密着が可能であって、フレキシビリティが高く施工時の厚み調整等にも対応可能であることを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記目的を達成するために、以下の手段を提供する。
【0011】
<接合方法>
[1] 発熱体Aと放熱部品B、又は放熱部品B2と放熱部品B3を、熱可塑性樹脂と放熱フィラーを含み、前記熱可塑性樹脂の含有量が、固形熱伝導材料中の樹脂成分のうち、51質量%以上である固形熱伝導材料を介して接合する、接合方法。
[2] 前記固形熱伝導材料を前記放熱部品Bに接合させた後、前記放熱部品Bに接合した状態の固形熱伝導材料を前記発熱体Aに接面させて、前記固形熱伝導材料を溶融及び固化させることにより、発熱体Aと放熱部品Bを接合する、又は前記固形熱伝導材料を放熱部品B3に接合させた後、前記放熱部品B3に接合した状態の固形熱伝導材料を放熱部品B2に接面させて、前記固形熱伝導材料を溶融及び固化させることにより、放熱部品B2と放熱部品B3を接合する、[1]に記載の接合方法。
[3] 前記固形熱伝導材料を前記発熱体Aに接合させた後、前記発熱体Aに接合した状態の固形熱伝導材料を前記放熱部品Bに接面させて、前記固形熱伝導材料を溶融及び固化させることにより、発熱体Aと放熱部品Bを接合する、又は前記固形熱伝導材料を放熱部品B2させた後、前記放熱部品B2に接合した状態の固形熱伝導材料を放熱部品B3に接面させて、前記固形熱伝導材料を溶融及び固化させることにより、放熱部品B2と放熱部品B3を接合する、[1]に記載の接合方法。
[4] 前記発熱体Aと、前記固形熱伝導材料と、前記放熱部品Bとを、この順で配置した状態で、前記固形熱伝導材料を溶融及び固化させることにより、発熱体Aと放熱部品Bを接合する、又は前記放熱部品B2と、前記固形熱伝導材料と、前記放熱部品B3とを、この順で配置した状態で、前記固形熱伝導材料を溶融及び固化させることにより、放熱部品B2と放熱部品B3を接合する、[1]に記載の接合方法。
[5] 前記熱可塑性樹脂が、融解熱が15J/g以下の非晶性熱可塑性樹脂である、[1]~[4]の何れかに記載接合方法。
[6] 前記非晶性熱可塑性樹脂が、熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂の少なくとも何れかである、[5]に記載の接合方法。
[7] 前記非晶性熱可塑性樹脂が、エポキシ当量が1,600以上である非晶性熱可塑性樹脂、又はエポキシ基を含まない非晶性熱可塑性樹脂である、[6]に記載の接合方法。
[8] 前記固形熱伝導材料中における放熱フィラーの含有量が、40~95体積%である、[1]~[7]の何れかに記載の接合方法。
[9] 前記放熱フィラーが、銀、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、二酸化ケイ素、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、炭化ケイ素および窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも何れかである、[1]~[8]の何れかに記載の接合方法。
[10] 前記溶融を、100~400℃の加熱条件及び0.01~20MPaの加圧条件で行う、[2]~[4]の何れかに記載の接合方法。
[11] 溶融前の固形熱伝導材料が、フィルム、棒、ペレット及び粉体からなる群から選択される何れかの形状を有する、[2]~[4]の何れかに記載の接合方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、電子機器にTIMを挿入する用途に好適である。本発明によれば、従来のTIMにおけるデメリットを解消することができる。すなわち、本発明の方法によれば、既存の製造ラインへの適性、及び、設計への適性が、共に高く、長期使用や繰り返し使用に伴う性能の低下が生じにくいTIMを電子機器に挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態における熱伝導層の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本開示において、連結とは、物と物とを繋いで一続きにすることを意味し、接合はその下位概念である。本開示において接合とは、物と物とが接するように繋合わせることを意味し、接着及び溶着はその下位概念である。接着とは、テープや接着剤の様な有機材(熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等)を介して、2つの被着材(接着しようとするもの)を接合状態とすることを意味する。溶着とは、熱可塑性樹脂等の表面を熱によって溶融し、冷却して凝固させることにより、分子拡散による絡み合いを生じさせて接合状態とすることを意味する。
【0015】
[接合方法]
本発明に係る接合方法の具体的用途は限定されないが、TIMを電子機器に挿入する用途に好適であり、「既存の製造ラインへの適性が高い」ことや「設計への適性が高い」ことが要求される用途に特に好適である。
【0016】
<電子機器における熱伝導層の形成方法>
本実施形態では、本発明の接合方法を、電子機器の熱伝導層を形成する用途に適用した実施形態について説明する。具体的には、発熱体Aと放熱部品B、又は放熱部品B2と放熱部品B3の間に前記熱伝導層を形成する用途に適用した実施形態について説明する。
【0017】
発熱体Aと放熱部品B又は放熱部品B2と放熱部品B3は、それぞれ、セラミック、炭素材料又は金属の少なくとも1種であることが好ましい。
前記金属は、アルミニウム、鉄、銅、マグネシウムおよびそれらの合金からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、接合力や強度の観点と、前記固形熱伝導材料との界面接合力の強度の観点から、アルミニウム合金及び鉄合金の少なくとも何れかであると、強固な接合体が得られるので、特に好ましい。
前記セラミックは、炭化ケイ素、窒化アルミ、アルミナ、窒化ケイ素、サーメット、イットリア、フォルステライト、コージライト、ジルコニア、ステアタイトからなる群から選択される1種であることが好ましく、熱伝導性やコスト、成形の容易性の観点から、アルミナであることがより好ましい。
【0018】
接合対象である発熱体A、放熱部品B、放熱部品B2及び放熱部品B3からなる群の少なくとも何れかに各部材に適した前処理を施してもよい。前処理としては、表面を洗浄する前処理または表面に凹凸を付ける前処理が好ましい。具体的には、接合対象である発熱体A、放熱部品B2、放熱部品B及び放熱部品B3からなる群の少なくとも何れかがアルミニウム、セラミック、又は鉄からなる場合、脱脂処理、UVオゾン処理、ブラスト処理、研磨処理、プラズマ処理、エッチング処理からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
前処理は、1種のみであってもよく、2種以上を施してもよい。これらの前処理の具体的な方法としては、公知の方法を用いることができる。
【0019】
熱伝導層は、
図1に示すように、発熱体Aと放熱部品B、又は放熱部品B2と放熱部品を、熱可塑性樹脂と放熱フィラーを含む固形熱伝導材料Cを介して接合して形成することができる。
例えば、次のa法、b法、及びc法が挙げられる。
【0020】
一実施形態において、発熱体Aは放熱部品Bよりも高温になる部分であり、熱は発熱体Aから放熱部品Bへ伝熱する。他の実施形態において、放熱部品B2は放熱部品B3よりも高温になる部分であり、熱は放熱部品B2から放熱部品Bへ伝熱する。
【0021】
<a法>
a法は、固形熱伝導材料Cを、放熱部品Bに接合させた後、放熱部品Bに接合した状態の固形熱伝導材料Cを、発熱体Aに接面させて、固形熱伝導材料Cを溶融及び固化させることにより、発熱体Aと放熱部品Bを、前記固形熱伝導材料Cを介して接合する方法、又は、固形熱伝導材料Cを、放熱部品B3に接合させた後、放熱部品B3に接合した状態の固形熱伝導材料Cを、放熱部品B2に接面させて、固形熱伝導材料Cを溶融及び固化させることにより、放熱部品B2と放熱部品B3を、前記固形熱伝導材料Cを介して接合する方法、である。
【0022】
a法は、まず、a1工程として、事前に固形熱伝導材料Cを、放熱部品B又は放熱部品B3に接合させる。
固形熱伝導材料Cと、放熱部品B又は放熱部品B3を予め接合することで、発熱体と放熱部品とを精度よく接合することができる。この時、固形熱伝導材料は、タック性を有していてもよい。
【0023】
次に、a2工程として、放熱部品B又は放熱部品B3に接合した状態の固形熱伝導材料Cを、発熱体A又は放熱部品B2に接面させ、固形熱伝導材料Cを溶融及び固化させる。
発熱体A又は放熱部品B2の表面に凹凸がある場合、溶融した固形熱伝導材料Cを、前記凹凸に押し付けることで、前記凹凸に固形熱伝導材料Cを追従させることができる。溶融した固形熱伝導材料Cに、前記凹凸を押し付けて、固形熱伝導材料Cを前記凹凸に追従させてもよい。
固形熱伝導材料Cが前記凹凸に追従した状態で固化し、発熱体Aと放熱部品B、又は放熱部品B2と放熱部品B3とを接合することができる。
【0024】
高い接合力を得る観点から、固形熱伝導材料の融点以上の温度で加熱して固形熱伝導材料を溶融させることが好ましい。
a法において、固形熱伝導材料を溶融及び固化させる方法は、後述する《溶融及び固化》のとおりである。
【0025】
<b法>
b法は、固形熱伝導材料Cを、発熱体Aに接合させた後、発熱体Aに接合した状態の固形熱伝導材料Cを放熱部品Bに接面させ、固形熱伝導材料Cを溶融及び固化させることにより、発熱体Aと放熱部品B、前記固形熱伝導材料Cを介して接合する方法である。b法は、固形熱伝導材料Cを、放熱部品B2に接合させた後、放熱部品B2に接合した状態の固形熱伝導材料Cを放熱部品B3に接面させ、固形熱伝導材料Cを溶融及び固化させることにより、放熱部品B2と放熱部品B3を、前記固形熱伝導材料Cを介して接合する方法であってもよい。
【0026】
b法は、まず、b1工程として、事前に固形熱伝導材料Cを発熱体A又は放熱部品B2に接合させる。
固形熱伝導材料Cを発熱体A又は放熱部品B2を予め接合することで、発熱体Aと放熱部品B、又は放熱部品B2と放熱部品B3とを精度よく接合することができる。この時、固形熱伝導材料は、タック性を有していてもよい。
【0027】
次に、b2工程として、発熱体A又は放熱部品B2に接合した状態の固形熱伝導材料Cを、放熱部品B又は放熱部品B3に接面させ、固形熱伝導材料Cを溶融及び固化させる。
放熱部品B又は放熱部品B3の表面に凹凸がある場合、溶融した固形熱伝導材料を放熱部品に押し付けることで、前記凹凸に固形熱伝導材料を追従させることができる。溶融した固形熱伝導材料に、前記凹凸を押し付けて、固形熱伝導材料を前記凹凸に追従させてもよい。
固形熱伝導材料が前記凹凸に追従した状態で固化し、発熱体Aと放熱部品B、又は放熱部品B2と放熱部品B3とを接合することができる。
【0028】
高い接合力を得る観点から、固形熱伝導材料の融点以上の温度で加熱して固形熱伝導材料を溶融させることが好ましい。
b法において、固形熱伝導材料を溶融及び固化させる方法は、後述する《溶融及び固化》のとおりである。
【0029】
<c法>
c法は、発熱体Aと、固形熱伝導材料Cと、放熱部品Bとを、この順で配置した状態で、前記固形熱伝導材料Cを溶融及び固化させることにより、発熱体Aと放熱部品Bを接合する方法、又は、放熱部品B2と、前記固形熱伝導材料Cと、放熱部品B3とを、この順で配置した状態で、固形熱伝導材料を溶融及び固化させることにより、放熱部品B2と放熱部品B3を接合する方法である。
【0030】
c法は、まず、c1工程として、発熱体Aと、固形熱伝導材料Cと、放熱部品Bとを、この順で配置して積層させて、又は放熱部品B2と、固形熱伝導材料Cと、放熱部品B3とを、この順で配置させて積層体とする。前記積層体は、発熱体Aと固形熱伝導材料C、固形熱伝導材料Cと放熱部品B、放熱部品B2と固形熱伝導材料C、固形熱伝導材料Cと放熱部品B3の何れも、接合しておらずそれぞれ独立した部材を重ね合わせてなる。この時、固形熱伝導材料は、タック性を有していてもよい。
【0031】
次に、c2工程として、上記積層体における固形熱伝導材料Cを溶融及び固化させる。
発熱体A又は放熱部品B2の表面に凹凸がある場合又は放熱部品B又は放熱部品B3の表面に凹凸がある場合、固形熱伝導材料Cを溶融させた状態で、発熱体A又は放熱部品B2側から、あるいは放熱部品B又は放熱部品B3側から、あるいは発熱体A又は放熱部品B2側及び放熱部品B又は放熱部品B3側の両方から、固形熱伝導材料C方向に力を加えて押し付けることで、前記凹凸に固形熱伝導材料Cを追従させることができる。
固形熱伝導材料Cが前記凹凸に追従した状態で固化し、発熱体Aと放熱部品B、又は放熱部品B2と放熱部品B3とを接合することができる。
【0032】
積層体における固形熱伝導材料を溶融させる際、高い接合力を得る観点から、固形熱伝導材料の融点以上の温度で加熱して固形熱伝導材料を溶融させることが好ましい。
c法において、固形熱伝導材料を溶融及び固化させる方法は、後述する《溶融及び固化》のとおりである。
【0033】
<組み合わせ>
固形熱伝導材料の組み込み方法は、上述したa法におけるa1工程、b法におけるb1工程、及びc法におけるc1工程から選ばれる少なくとも2つの工程の組み合わせを有してもよい。
一例として、a1工程とb1工程との組み合わせが挙げられる。
例えば、a1工程により固形熱伝導材料Cを放熱部品Bに接合させた接合体aと、b1工程により固形熱伝導材料Cを発熱体Aに接合させた接合体bとを、接合体a及び接合体bの固形熱伝導材料Cを向かい合わせて接面させ、両方の固形熱伝導材料Cを溶融及び固化させる。この時、固形熱伝導材料Cを溶融させた状態で、接合体a側から、あるいは接合体b側から、あるいは接合体a側及び接合体b側の両方から、固形熱伝導材料Cの方向に力を加えて押し付けることで、接合体とすることができる。すなわち、a1工程とb1工程との組み合わせを有する接合体の製造方法は、2つの固形熱伝導材料を用いて、発熱体と放熱部品とを接合することができる。
【0034】
また、別の一例として、a1工程とc1工程との組み合わせが挙げられる。
例えば、c1工程において、放熱部品Bの代わりに、a1工程により固形熱伝導材料Cを放熱部品Bに接合させた接合体aを配置する。この時、接合体aに接合している固形熱伝導材料Cを、独立した別の固形熱伝導材料Cと向かい合わせる。すなわち、発熱体Aと、固形熱伝導材料Cと、接合体aとを、この順で配置して積層させた積層体とする。次いで、当該積層体における両方の固形熱伝導材料Cを溶融及び固化させる。接合体aに接合している固形熱伝導材料Cを、独立した別の固形熱伝導材料Cと重ねて使用することで、接合体の厚みが増し、接合力を向上させることができる。この時、固形熱伝導材料Cを溶融させた状態で、接合体a側から、あるいは発熱体A側から、あるいは接合体a側及び発熱体A側の両方から、固形熱伝導材料C方向に力を加えて押し付けることで、接合体とすることができる。すなわち、a1工程とc1工程との組み合わせを有する接合体の製造方法は、2つの固形熱伝導材料Cを用いて、発熱体Aと放熱部品Bとを接合することができる。
【0035】
また、別の一例として、b1工程とc1工程との組み合わせが挙げられる。
例えば、c1工程において、発熱体の代わりに、b1工程により固形熱伝導材料Cを発熱体に接合させた接合体bを配置する。この時、接合体bに接合している固形熱伝導材料Cを、独立した別の固形熱伝導材料Cと向かい合わせる。すなわち、接合体bと、固形熱伝導材料Cと、放熱部品とを、この順で配置して積層させた積層体とする。次いで、当該積層体における両方の固形熱伝導材料Cを溶融及び固化させる。この時、固形熱伝導材料Cを溶融させた状態で、放熱部品側から、あるいは接合体b側から、あるいは放熱部品側及び接合体b側の両方から、固形熱伝導材料C方向に力を加えて押し付けることで、接合体とすることができる。すなわち、b1工程とc1工程との組み合わせを有する接合体の製造方法は、2つの固形熱伝導材料Cを用いて、発熱体と放熱部品とを接合することができる。
【0036】
《溶融及び固化》
前記a法~c法において、固形熱伝導材料を溶融させる方法としては、接触加熱、温風加熱、熱プレス、熱板溶着、赤外線加熱、超音波溶着、振動溶着及び高周波誘導溶着からなる群より選ばれる少なくとも1種の方法が挙げられる。
中でも、製造容易性及び接合プロセス短縮の観点から、熱プレス、超音波溶着、及び高周波誘導溶着が好ましい。
【0037】
熱プレスを行う場合の条件については特に限定はない。
熱プレスにおける加熱温度は、100℃~400℃が好ましく、120℃~350℃がより好ましく、150℃~300℃が更に好ましい。100℃~400℃で加熱することにより、固形熱伝導材料が効率よく変形、溶融し接合面に有効に濡れ広がるため高い接合力が得られる。
熱プレスにおける加圧力は0.01~20MPaが好ましく、0.1~10MPaがより好ましく、0.2~5MPaが更に好ましい。このような圧力範囲であると、固形熱伝導材料が効率よく変形し接合面に有効に濡れ広がるため高い接合力が得られる。
例えば、上記接合は、加熱温度100~400℃及び0.01~20MPaの加圧下で、固形熱伝導材料を溶融及び固化させることにより行うことができる。
【0038】
超音波溶着を行う場合の条件に付いては、接合対象である発熱体A、放熱部品B、放熱部品B2及び放熱部品B3からなる群の少なくとも何れかが樹脂である場合において、それら樹脂および前記固形熱伝導材料のうち少なくとも一方の一部分が溶融する条件であれば特に限定は無い。
例えば、発信周波数は、好ましくは10~70kHz、より好ましくは15~40kHzである。
超音波印可時間は、接合性と外観性の観点から、好ましくは0.1~3秒、より好ましくは0.2~2秒である。
超音波印可時に、発熱体Aと放熱部品Bを加圧する場合、又は放熱部品B2と放熱部品B3を加圧する場合、その加圧力は0.01~20MPaが好ましく、0.1~10MPaがより好ましく、0.2~5MPaが更に好ましい。このような圧力範囲であると、固形熱伝導材料が効率よく変形し接合面に有効に濡れ広がるため高い接合力が得られる。
【0039】
高周波誘導溶着を行う場合の条件に付いては、接合対象である発熱体A、放熱部品B2、放熱部品B及び放熱部品B3からなる群の少なくとも何れかが金属である場合において、それら金属が加熱され溶融する条件であれば特に限定は無い。
例えば、発振周波数は、1~1500kHzの範囲が挙げられる。接合対象の大きさや種類に応じて、適切な発振周波数に調整すればよい。
出力は、100~5000Wの範囲が挙げられる。
発振時間は、接合対象である発熱体A、放熱部品B、放熱部品B2及び放熱部品B3からなる群の少なくとも何れかの大きさや種類に応じて調整すればよく、例えば、好ましくは1.0~10.0秒であり、より好ましくは1.5~8.0秒である。
【0040】
溶融した固形熱伝導材料を再度固化させる方法としては、常温で放冷する方法又は冷却装置を用いて放冷する方法が挙げられる。なお、「常温」とは、5~30℃の範囲内の一般的な室温を意味する。中でも、製造容易性の観点から、常温で放冷する方法が好ましい。
なお、本開示において、「固化」とは、常温で固体、即ち23℃の加圧のない状態下において流動性が無いことを意味する。
前記a法~c法における接合は、何れも、固形熱伝導材料の相変化(固体~液体~固体)を利用したものであり、化学反応を伴わないため、化学反応を伴う従来法に比べ、短時間で接合を完了することができる。
【0041】
<固形熱伝導材料>
本発明に係る接合方法に用いる固形熱伝導材料は、熱可塑性樹脂と、放熱フィラーを含み、前記熱可塑性樹脂の含有量が、固形熱伝導材料中の樹脂成分のうち、51質量%以上である。
本開示において「固形熱伝導材料中の樹脂成分」とは、固形熱伝導材中における放熱フィラー以外の成分を意味する。
【0042】
熱可塑性樹脂の含有量は、固形熱伝導材料中の樹脂成分のうち、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが最も好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が多くなるほど、固形熱伝導材料において熱可塑性樹脂の特性が顕著に表れる。
【0043】
固形熱伝導材料に含まれる熱可塑性樹脂は特定のものに限定されないが、熱可塑性樹脂として非晶性熱可塑性樹脂を用いることで、固形熱伝導材料に非晶性熱可塑性樹脂の特性を付与することができる。非晶性熱可塑性樹脂とは、融点(Tm)を有するが、示差走査熱量計(DSC)を用いた測定において、融解に伴う吸熱ピークが、明確な吸熱ピークとして確認されないか、もしくは前記吸熱ピークが非常に小さい樹脂である。
【0044】
前記非晶性熱可塑性樹脂は、融解熱が15J/g以下の非晶性熱可塑性樹脂であることが好ましい。
前記融解熱は、DSC(示差走査熱量計)の吸熱ピークの面積と、熱可塑性樹脂成分の重量から算出する。無機充填剤等が固形熱伝導材料中に含まれる場合には、無機充填剤は除いた、熱可塑性樹脂成分の重量から算出する。具体的には、試料を2-10mg秤量し、アルミ製パンに入れ、DSC(株式会社リガク製DSC8231)を用いて23℃から10℃/minで200℃以上まで昇温してDSCカーブを得、次いでそのDSCカーブから求めた融解時の吸熱ピークの面積と、前記秤量値から算出することができる。
前記非晶性熱可塑性樹脂の融解熱は、11J/g以下であることがより好ましく、7J/g以下であることが更に好ましく、4J/g以下であることがより更に好ましく、融解ピークが検出限界以下であることが最も好ましい。
【0045】
融解熱が15J/g以下である非晶性熱可塑性樹脂を固形熱伝導材料中の樹脂成分のうち、51質量%以上含む固形熱伝導材料では、加熱時に、急激な粘度低下は起こらず、200℃を超える高温度領域においても低粘度(0.001~100Pa・s)状態には至らない。このため当該固形熱伝導材料は溶融して流れ出すことはなく、固化後の厚みも、所定範囲内に維持でき、高い連結力を安定して得ることができ、ポンプアウトを回避することができる。
【0046】
非晶性熱可塑性樹脂が融点を有する場合、融点は50~400℃であることが好ましく、60℃~350℃であることがより好ましく、70℃~300℃であることが更に好ましい。50~400℃の範囲に融点があることにより、前記固形熱伝導材料が加熱により効率よく変形及び溶融し、発熱体と放熱部品の間、又は放熱部品と放熱部品の間に有効に濡れ広がるため高い連結力が得られる。
本開示において、非晶性熱可塑性樹脂の融点とは、実質的に固体から軟化し、熱可塑性を帯び、溶融と接合が可能となる過程の温度範囲を意味し、DSCで測定される融解ピーク温度を意味する。なお、融解ピークが得られない場合は、ガラス転移点に70℃を足した温度を融点とする。ガラス転移点は、DSCで200℃まで昇温後、40℃以下に冷却し、さらに200℃まで加熱した2サイクル目のDSCカーブの降下開始時の温度を意味する。
【0047】
前記非晶性熱可塑性樹脂は、熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂の少なくとも何れかであることが好ましい。熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂は、樹脂内の凝集力が低く、かつ水酸基を有しているため、発熱体や放熱部品との相互作用が強く、高い連結力で連結することができる。また、熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂は可撓性や強靭性に優れるため、高い強度の連結が得られる。
【0048】
前記非晶性熱可塑性樹脂が、エポキシ当量が1,600以上の非晶性熱可塑性樹脂であるか、エポキシ基を含まない非晶性熱可塑性樹脂であることが好ましい。
前記エポキシ当量(エポキシ基1モルが含まれる前記熱可塑性樹脂の重量)は、電子機器への組み込み前の固形熱伝導材料に含まれる熱可塑性樹脂のエポキシ当量の値であり、JIS-K7236:2001に規定された方法で測定された値(単位「g/eq.」)である。具体的には、電位差滴定装置を用い、臭素化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液を加え、0.1mol/L過塩素酸-酢酸溶液を用い、溶媒希釈品(樹脂ワニス)は、不揮発分から固形分換算値としての数値を算出した値である。なお、2種以上の樹脂の混合物の場合はそれぞれの含有量とエポキシ当量から算出することもできる。
前記非晶性熱可塑性樹脂のエポキシ当量は、2,000以上であることがより好ましく、5,000以上であることが更に好ましく、9,000以上であることが更により好ましく、検出限界以上であってエポキシ基が実質的に検出されないことが最も好ましい。なお、エポキシ当量が検出限界以上とは、後述のJIS K 7236:2001に基づきエポキシ当量を測定した際に、エポキシ基が検出されないことを意味する。
【0049】
エポキシ当量が1,600以上であり、融解熱が15J/g以下である非晶性熱可塑性樹脂を、固形熱伝導材料に固形熱伝導材料中の樹脂成分のうち、51質量%以上含むことにより、急激な粘度低下を更に効果的に抑制でき、より高い連結力を安定して得ることができる。
【0050】
本発明で用いる固形熱伝導材料は熱可塑性であって、可逆的に軟化・溶融と硬化を繰り返すことができるため、電子機器へ挿入前は固体として保管し、挿入箇所において液体とした後、固体として挿入ことができる。電子機器への組み込み前に固体として保管できるため、保管や組み込み作業に関し、特殊なノウハウが不要であり、既存の製造ラインへの適性に優れる。組み込み箇所において溶融して、複雑な形状の凹凸にも追従して密着させた後、固化することができるため、各種設計への適性が高い。また、可逆的に軟化・溶融と硬化を繰り返すことができるため、ポンプアウトは生じず、ボイドも発生しにくく、長期使用や繰り返し使用に伴う性能の低下を回避することができる。
【0051】
《熱可塑性エポキシ樹脂》
熱可塑性エポキシ樹脂は、(a)2官能エポキシ樹脂モノマーもしくはオリゴマーと(b)フェノール性水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、イソシアネート基及びシアネートエステル基からなる群より選ばれる同一の又は異なる2つの官能基を有する2官能性化合物との重合体であることが好ましい。
かかる化合物を使用することにより、直鎖状のポリマーを形成する重合反応が優先的に進行して、所望の特性を具備する熱可塑性エポキシ樹脂を得ることが可能となる。
【0052】
前記(a)2官能エポキシ樹脂モノマーもしくはオリゴマーとは、分子内にエポキシ基を2個有するエポキシ樹脂モノマーもしくはオリゴマーをいう。
前記(a)の具体例として、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、2官能のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、2官能のナフタレン型エポキシ樹脂、2官能の脂環式エポキシ樹脂、2官能のグリシジルエステル型エポキシ樹脂(例えばジグリシジルフタレート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート、ダイマー酸ジグリシジルエステルなど)、2官能のグリシジルアミン型エポキシ樹脂(例えばジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジンなど)、2官能の複素環式エポキシ樹脂、2官能のジアリールスルホン型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂(例えばヒドロキノンジグリシジルエーテル、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテルなど)、2官能のアルキレングリシジルエーテル系化合物(例えばブタンジオールジグリシジルエーテル、ブテンジオールジグリシジルエーテル、ブチンジオールジグリシジルエーテルなど)、2官能のグリシジル基含有ヒダントイン化合物(例えば1,3-ジグリシジル-5,5-ジアルキルヒダントイン、1-グリシジル-3-(グリシドキシアルキル)-5,5-ジアルキルヒダントインなど)、2官能のグリシジル基含有シロキサン(例えば1,3-ビス(3-グリシドキシプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、α,β-ビス(3-グリシドキシプロピル)ポリジメチルシロキサンなど)及びそれらの変性物などが挙げられる。これらのうち、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂が、反応性及び作業性の点から好ましい。
前記(b)のフェノール水酸基を持つ2官能性化合物としては、例えばカテコール、レゾルシン、ヒドロキノンなどのベンゼン環を1個有する一核体芳香族ジヒドロキシ化合物類、ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールAD)などのビスフェノール類、ジヒドロキシナフタレンなどの縮合環を有する化合物、ジアリ
ルレゾルシン、ジアリルビスフェノールA、トリアリルジヒドロキシビフェニルなどのアリル基を導入した2官能フェノール化合物、ジブチルビスフェノールAなどが挙げられる。
前記(b)のカルボキシル基含有化合物の具体例としては、アジピン酸、コハク酸、マロン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸などが挙げられる。
前記(b)のメルカプト基を持つ2官能性化合物としては、例えば、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネ
ートなどが挙げられる。
前記(b)のイソシアネート基含有の2官能性化合物の具体例としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、へキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、及びトリレンジイソシアネート(TDI)などが挙げられる。
前記(b)のシアネートエステル基含有の2官能性化合物の具体例としては、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)エタン、及びビス(4-シアナトフェニル)メタンなどが挙げられる。
前記(b)のなかでもフェノール水酸基を持つ2官能性化合物が熱可塑性の重合物を得る観点から好ましく、フェノール性水酸基を2つ持ち、ビスフェノール構造もしくはビフェニル構造を持つ2官能性化合物が耐熱性および接合性の観点から好ましく、ビスフェノールA、ビスフェノールFもしくはビスフェノールSが耐熱性およびコストの観点から好ましい。
【0053】
前記(a)がビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂であり、前記(b)がビスフェノールA、ビスフェノールFもしくはビスフェノールSである場合、前記(a)と(b)の重合により得られるポリマーは、パラフェニレン構造とエーテル結合を主骨格とし、それらをアルキレン基で連結した主鎖と、重付加により生成した水酸基が側鎖に配置された構造を有する。
パラフェニレン骨格からなる直鎖状の構造により、重合後のポリマーの機械的強度を高めることができるとともに、側鎖に配置された水酸基により、密着性を向上させることができる。この結果、熱硬化性樹脂の作業性を維持しながら、高い接合強度を実現することができる。
【0054】
《フェノキシ樹脂》
フェノキシ樹脂は、ビスフェノール類と、エピクロルヒドリンより合成されるポリヒドロキシポリエーテルであり、熱可塑性を有する。フェノキシ樹脂の製造には、二価フェノール類とエピクロルヒドリンの直接反応による方法、二価フェノール類のジグリシジルエーテルと二価フェノール類の付加重合反応による方法が知られているが、本発明に用いられるフェノキシ樹脂は何れの製法により得られるものであっても良い。二価フェノール類とエピクロルヒドリンの直接反応の場合は、二価フェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール、ビフェニレンジオール、フルオレンジフェニル等のフェノール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等の脂肪族グリコールが挙げられる。中でも、コストや接合性、粘度、耐熱性の観点から、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSが好ましい。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
フェノキシ樹脂は、エポキシ樹脂に類似の化学構造をもち、パラフェニレン構造とエーテル結合を主骨格とし、それらを連結した主鎖と、水酸基が側鎖に配置された構造を有する。
【0055】
《熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂の重量平均分子量》
前記熱可塑性エポキシ樹脂およびフェノキシ樹脂は、GPC(ゲル・パーミエ―ション・クロマトグラフィー)測定によるポリスチレン換算の値である重量平均分子量が10,000~500,000であることが好ましく、18,000~300,000であることがより好ましく、20,000~200,000であることが更に好ましい。重量平均分子量はGPCによって検出される溶出ピーク位置から算出され、それぞれ標準ポリスチレン換算での分子量の値である。重量平均分子量がこの値の範囲であると熱可塑性と耐熱性のバランスが良く、耐熱性も高くなる。重量平均分子量が10,000以上であると耐熱性に優れ、500,000以下であると溶融時の粘度が低く、接合性が高くなる。
【0056】
《固形熱伝導材料の製造方法》
固形熱伝導材料の製造方法は特に限定されないが、例えば、2官能エポキシ化合物のモノマーもしくはオリゴマーに、放熱フィラーを添加した組成物を加熱して重合させることで得られる。重合の際に粘度を低減させて撹拌しやすくするために溶媒を加えても良い。溶媒を加える場合はその除去が必要であり、乾燥もしくは重合またはその両方を離型フィルムなどの上にて行うことで固形熱伝導材料を得ても良い。
【0057】
放熱フィラーの種類は特に限定されないが、熱伝導性に優れる金属含有粒子、非金属粒子等が挙げられる。例えば、金属粒子、樹脂粒子に金めっきなどを施したもの、樹脂粒子に金めっきを施した粒子の最外層に絶縁被覆を施したものなどを挙げることができる。
放熱フィラーは、例えば、熱伝導率が10W/(m・K)以上のフィラーであってもよい。放熱フィラーは、絶縁性であってよく、導電性であってもよい。
【0058】
放熱フィラーとしては、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属水酸化物、金属炭化物、金属フッ化物、炭素等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。具体的には、例えば、アルミニウム、銅、銀、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、二酸化ケイ素、酸化ベリリウム、酸化スズ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭化ホウ素、炭化ケイ素、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、ダイヤモンド、フラーレン、グラファイトが挙げられる。
これらの中でも特に、熱伝導性、化学的安定性、入手容易性等の点から、銀、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、二酸化ケイ素、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、炭化ケイ素および窒化ケイ素からなる群から選択される1種または2種以上を用いることが好ましい。
【0059】
放熱フィラーの平均粒径は特に限定されないが、0.1μm~50μmであってもよく、0.2μm~20μmであってもよく、0.5μm~10μmであってもよい。平均粒径が前記範囲にあると、放熱フィラーの充填密度を高めることができる。充填密度が高いほど、放熱フィラーの接触点が多くなり、熱伝導率を向上させることができる。
充填率を大きくするため、平均粒径の異なる2種類以上の放熱フィラーを含有してもよい。
前記平均粒径は、体積基準のD50を用いて表すことができる。体積基準のD50は、質量累積粒度分布曲線を小粒径側から描いた場合に、質量累積が50%となる粒子径に対応する。D50は、コールター・カウンター法やレーザ回折散乱法(例えば、日機装株式会社製「マイクロトラックシリーズMT3300」)等によって測定することができる。例えば、球状アルミナ粒子の場合は、コールター・カウンター法により測定し、鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子の場合は、レーザ回折散乱法により測定することが好ましい。
【0060】
放熱フィラーの形状は、球状、板状、多角状、顆粒状、繊維状など種々の形状を用いることができる。
異方性を有する放熱フィラーを用いる場合、組成物中の配向を適切に制御することで、所定の方向についての樹脂組成物の強度や熱伝導性などを向上させることができる。
【0061】
放熱フィラーの含有量は、40~95体積%が好ましく、50~90体積%がより好ましく、60~80体積%が特に好ましい。
放熱フィラーの含有量(体積%)は、25℃における仕込み量から求められ、具体的には、フィラーの質量%に対し、フィラー以外の成分の比重と、フィラーの真比重を基に、下記(式1)によりに算出される。
(式1)
X=(MF/DF)÷(MF/DF+(100-MF)/DR)×100%
(式1)において、
X:放熱フィラーの含有量(体積%)
MF:フィラーの仕込み量(質量%)
DR:樹脂成分を硬化した際の比重
DF:フィラーの真比重
である。
【0062】
放熱フィラーの含有量を40体積%以上とすることで、放熱フィラーの充填密度を高めることができる。充填密度が高いほど、放熱フィラーの接触点が多くなり、熱伝導率が向上する。
放熱フィラーの含有量が95体積%以下の固形熱伝導材料は、成形性が良好であり、容易にシート形状への成形を行うことができる。また、放熱フィラーの含有量を95体積%以下とすることで、高い接合力が得られる。
【0063】
固形熱伝導材料中における、樹脂成分及び放熱フィラーの合計含有量は、好ましくは70体積%以上が好ましく、85体積%以上がより好ましく、95体積%が特に好ましい。
固形熱伝導材料中における、非晶性熱可塑性樹脂及び放熱フィラーの合計含有量は、70体積%以上が好ましく、80体積%以上がより好ましく、90体積%以上が特に好ましい。
【0064】
必要に応じて、本発明の目的を阻害しない範囲で、放熱フィラーの他に、その他の添加剤を含有することができる。熱可塑性樹脂の全量に対するその他の添加剤の配合量は、50体積%以下であることが好ましく、30体積%以下であることがより好ましく、20体積%以下であることが更に好ましく、10体積%以下であることが最も好ましい。なお、添加剤の体積%とは、固形熱伝導材料の重合前に含有された添加剤の体積の、熱可塑性樹脂の全量の体積を基準とした体積比を表しており、この添加剤の体積は、含有される添加剤の重量を添加剤の真比重で除して求めることができる。
【0065】
上記その他の添加剤としては、例えば、粘度調整剤、無機フィラー、有機フィラー(樹脂粉体)、消泡剤、シランカップリング剤等のカップリング剤、顔料等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記粘度調整剤として、例えば、反応性希釈剤等を使用することができる。
ここで、無機フィラーとは、熱伝導性に優れる前記放熱フィラーには含まれない無機フィラーであり、強度向上等の目的で使用され、例えば、球状溶融シリカ、珪砂、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、酸性白土、珪藻土、カオリン、石英、酸化チタン、シリカ、ガラスバルーン等が挙げられる。
【0066】
このようにして得られた固形熱伝導材料は、未反応のモノマーや末端エポキシ基含有量が少ないか実質的に含まれないため、貯蔵安定性に優れ、常温での長期保存も可能であり、既存の製造ラインへの適性が高い。
【0067】
固形熱伝導材料の形態は特に限定されないが、フィルム、棒、ペレット及び粉体からなる群から選択される何れかの形状を有することが好ましい。特に、少なくとも外形の少なくとも1辺が5mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることが更に好ましく、0.5mm以下であることがより更に好ましく、0.3mm以下であることが最も好ましい。そのような範囲のサイズであると、加熱加圧によって効率よく接合面に広がることができ、高い接合力が得られる。
【0068】
固形熱伝導材料は、接合力やその耐熱性を阻害しない範囲で、タック性があっても良い。
【実施例0069】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0070】
<基材>
以下の基材を使用した。
《基材A》
アルミニウム(A6061、25×100×厚さ1.6mm。表面をメチルエチルケトンで拭いて脱脂
《基材B》
アルミニウム(A6061、25×100×厚さ1.6mm。表面をメチルエチルケトンで拭いて脱脂)
《基材C》
銅(C1100、25×100×厚さ1.6mm。表面をメチルエチルケトンで拭いて脱脂))
【0071】
<固形熱伝導材料の作製に用いたベース樹脂の重量平均分子量>
固形熱伝導材料の作製に用いたベース樹脂の重量平均分子量、融解熱、ガラス転移点、融点及びエポキシ当量を、それぞれ以下のように求めた。
【0072】
(重量平均分子量)
ベース樹脂をテトラヒドロフランに溶解し、Prominence 501(昭和サイエンス株式会社製、Detector:Shodex(登録商標) RI-501(昭和電工株式会社製))を用い、以下の条件で測定した。
カラム:昭和電工株式会社製 LF-804×2本
カラム温度:40℃
試料:樹脂の0.4質量%テトラヒドロフラン溶液
流量:1ml/分
溶離液:テトラヒドロフラン
較正法:標準ポリスチレンによる換算
【0073】
(融解熱、融点)
ベース樹脂を2~10mg秤量し、アルミ製パンに入れ、DSC(株式会社リガク製DSC8231)で23℃から10℃/minで200℃まで昇温し、DSCカーブを得た。そのDSCカーブの融解時の吸熱ピークの面積と前記秤量値から融解熱を算出した。融解時ピーク温度を融点とした。ただし、融解ピークが得られない場合や、融解熱が15J/g以下である場合は、ガラス転移点に70℃を足した温度を融点とした。
【0074】
(ガラス転移点Tg)
ガラス転移点は、前記DSCで200℃まで昇温後、40℃以下に冷却し、さらに200℃まで加熱した2サイクル目のDSCカーブの降下開始時の温度をガラス転移点とした。
【0075】
(エポキシ当量)
JIS K-7236:2001で測定し、樹脂固形分としての値に換算した。また、反応を伴わない単純混合物の場合はそれぞれのエポキシ当量と含有量から算出した。
【0076】
<実施例1>
フェノトート(登録商標)YP-007A30(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、フェノキシ樹脂のシクロヘキサノン溶液、固形分30質量%)に対し、球状アルミナCB-A20S(昭和電工株式会社製、平均粒径d50=21μm)を表1の配合で、自転公転ミキサーで混合し、ペースト状の樹脂組成物を得た。フィラーの体積%(表1-1における「フィラー量(vol%)」)は、25℃における仕込み量から計算した。具体的には、フィラーの質量%に対し、フィラー以外の成分の比重と、フィラーの真比重を基に、前記(式1)により、算出した。
前記ペースト状の樹脂組成物をバーコーターで離型処理PETフィルム上にコートし、160℃で2時間乾燥させた後、180℃の熱ロールを20回通し、塗膜中の空気を押し出して、フィルム状の固形熱伝導材料サンプル(以下、SP)1を得た。
基材A(サイズ25×100×1.6mmのアルミニウム)と基材B(サイズ25×100×1.6mmのアルミニウム)に対し、25×12.5mmのサイズにカットした固形熱伝導材料SP1を挟み、200℃のホットプレスで3MPaの圧力を10分印可して固形熱伝導材料SP1を溶融させ、その後圧力を解いて放冷することで固形熱伝導材料SP1を固化させて、接合体を作製した。
【0077】
<実施例2>
フェノトート(登録商標)YP-007A30(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、フェノキシ樹脂のシクロヘキサノン溶液、固形分30質量%)と球状アルミナCB-A20Sの配合を表1のように変更した以外は前記実施例1と同様にして、フィルム状の固形熱伝導材料SP2を得た。
基材A(サイズ25×100×1.6mmのアルミニウム)に、25×12.5mmのサイズにカットした固形熱伝導材料SP2に接面させ、200℃のホットプレスで3MPaの圧力を10分印可して固形熱伝導材料SP2を溶融させ、その後圧力を解いて放冷することで固形熱伝導材料SP2を固化させて、固形熱伝導材料SP2を基材Aに接合させた。その後、基材Aに接合した状態の固形熱伝導材料SP2を基材C(サイズ25×100×1.6mmの銅)に接面させ、200℃のホットプレスで3MPaの圧力を10分印可して固形熱伝導材料SP2を溶融させ、その後圧力を解いて放冷することで固形熱伝導材料SP2を固化させて、接合体を作製した。
【0078】
<実施例3>
フェノトート(登録商標)YP-007A30(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、フェノキシ樹脂のシクロヘキサノン溶液、固形分30質量%)と球状アルミナCB-A20Sの配合を表1のように変更した以外は前記実施例1と同様にして、フィルム状の固形熱伝導材料SP3を得た。
基材C(サイズ25×100×1.6mmの銅)に、25×12.5mmのサイズにカットした固形熱伝導材料SP3に接面させ、200℃のホットプレスで3MPaの圧力を10分印可して固形熱伝導材料SP3を溶融させ、その後圧力を解いて放冷することで固形熱伝導材料SP3を固化させて、固形熱伝導材料SP3を基材Cに接合させた。その後、基材Cに接合した状態の固形熱伝導材料SP3を基材A(サイズ25×100×1.6mmのアルミニウム)に接面させ、200℃のホットプレスで3MPaの圧力を10分印可して固形熱伝導材料SP3を溶融させ、その後圧力を解いて放冷することで固形熱伝導材料SP3を固化させて、接合体を作製した。
【0079】
<実施例4>
フェノトート(登録商標)YP-007A30(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、フェノキシ樹脂のシクロヘキサノン溶液、固形分30質量%)と球状アルミナCB-A20Sの配合を表1のように変更した以外は前記実施例1と同様にして、フィルム状の固形熱伝導材料SP4を得た。
基材Aと基材Bに対し、25×12.5mmのサイズにカットした固形熱伝導材料SP4を挟んだこと以外は実施例1と同様に接合体を作製した。
【0080】
<実施例5>
フェノトート(登録商標)YP-007A30(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、フェノキシ樹脂のシクロヘキサノン溶液、固形分30質量%)と球状アルミナCB-A20Sの配合を表1のように変更した以外は前記実施例1と同様にして、フィルム状の固形熱伝導材料SP5を得た。
基材Aと基材Bに対し、25×12.5mmのサイズにカットした固形熱伝導材料SP5を挟んだこと以外は実施例1と同様に接合体を作製した。
【0081】
<実施例6>
撹拌機、環流冷却器、ガス導入管、及び温度計を付した反応装置に、フェノトート(登録商標)YP-50S(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、フェノキシ樹脂、重量平均分子量約50,000)20g、シクロヘキサノン80gを仕込み、撹拌しながら60℃まで昇温し、目視で溶解したことを確認し、40℃まで冷却して得た固形分20質量%の樹脂溶液をベース樹脂溶液として使用したこと以外は前記実施例1と同様にして、フィルム状の固形熱伝導材料SP6を得た。
基材Aと基材Bに対し、25×12.5mmのサイズにカットした固形熱伝導材料SP6を挟んだこと以外は実施例1と同様に接合体を作製した。
【0082】
<実施例7>
撹拌機、環流冷却器、ガス導入管、及び温度計を付した反応装置に、jER(登録商標)1007(三菱ケミカル株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、重量平均分子量約11,000)1.0等量(203g)、ビスフェノールS1.0等量(12.5g)、トリフェニルホスフィン2.4g、及びシクロヘキサノン1,000gを仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温した。目視で溶解したことを確認し、170℃まで昇温し、170℃で6.5時間反応させた後、40℃まで冷却して得た固形分20質量%の樹脂溶液をベース樹脂溶液として使用したこと以外は前記実施例1と同様にして、フィルム状の固形熱伝導材料SP7を得た。
基材Aと基材Bに対し、25×12.5mmのサイズにカットした固形熱伝導材料SP7を挟んだこと以外は実施例1と同様に接合体を作製した。
【0083】
<実施例8>
撹拌機、環流冷却器、ガス導入管、及び温度計を付した反応装置に、jER(登録商標)1007(三菱ケミカル株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、重量平均分子量約11,000)1.0等量(203g)、ビスフェノールS1.0等量(12.5g)、トリフェニルホスフィン2.4g、及びシクロヘキサノン1,000gを仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温した。目視で溶解したことを確認し、40℃まで冷却して得た固形分20質量%のベース樹脂溶液を得た。前記ベース樹脂溶液に対し、球状アルミナCB-A20S(昭和電工株式会社製、平均粒径d50=21μm)を表1の配合で自転公転ミキサーで混合し、ペーストを得た。前記ペーストをバーコーターで離型処理PETフィルム上にコートし、160℃で2時間加熱することで溶媒の乾燥とエポキシ樹脂とビスフェノールSを重合させた後、180℃の熱ロールを20回通し、塗膜中の空気を押し出して、フィルム状の固形熱伝導材料SP8を得た。
基材Aと基材Bに対し、25×12.5mmのサイズにカットした固形熱伝導材料SP8を挟んだこと以外は実施例1と同様に接合体を作製した。
【0084】
<実施例9>
撹拌機、環流冷却器、ガス導入管、及び温度計を付した反応装置に、jER(登録商標)1007(三菱ケミカル株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、重量平均分子量約11,000)203g及びシクロヘキサノン1,000gを仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温した。目視で溶解したことを確認し、40℃まで冷却して得た固形分20質量%のベース樹脂溶液をベース樹脂溶液として用いたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム状の固形熱伝導材料SP9を得た。
基材Aと基材Bに対し、25×12.5mmのサイズにカットした固形熱伝導材料SP9を挟んだこと以外は実施例1と同様に接合体を作製した。
【0085】
<実施例10>
結晶性エポキシ樹脂YSLV-80XY(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)を粉砕して、前記実施例3のフィルム(固形熱伝導材料SP3)にアルミナ量が65質量%になるまで均一にふりかけ、万力でプレスし、50℃に加熱することでフィルム状の固形熱伝導材料SP10を得た。基材Aと基材Bに対し、25×12.5mmのサイズにカットした固形熱伝導材料SP10を挟んだこと以外は実施例1と同様に接合体を作製した。
【0086】
<実施例11>
撹拌機、環流冷却器、ガス導入管、及び温度計を付した反応装置に、jER(登録商標)1007(三菱ケミカル株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、重量平均分子量約11,000)1.0等量(203g)、ビスフェノールS1.0等量(12.5g)、トリフェニルホスフィン2.4g、及びシクロヘキサノン1,000gを仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温した。目視で溶解したことを確認し、40℃まで冷却して得た固形分20質量%のベース樹脂溶液を得た。前記ベース樹脂溶液に対し、銀粒子(粒子径1.5μm)を表1の配合で混合し、樹脂組成物を得た。前記樹脂組成物をバーコーターで離型処理PETフィルム上にコートし、160℃で2時間加熱することで溶媒の乾燥とエポキシ樹脂とビスフェノールSを重合させた後、180℃の熱ロールを20回通し、塗膜中の空気を押し出して、フィルム状の固形熱伝導材料SP11を得た。基材Aと基材Bに対し、25×12.5mmのサイズにカットした固形熱伝導材料SP11を挟んだこと以外は実施例1と同様に接合体を作製した。
【0087】
<実施例12>
実施例1と同様にYP-007A30に対して球状アルミナCB-A20Sを混合したペースト状の樹脂組成物57質量部に対して、ポリアミド系結晶性ホットメルト接着剤TY-863H1をTHFに溶解させた25%質量濃度の樹脂溶液に、球状アルミナCB-A20Sを64体積%になるように混合したペースト状の樹脂組成物43質量部を自転公転ミキサーで混合した樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にフィルム状の固形熱伝導材料SP12を得た。基材Aと基材Bに対し、25×12.5mmのサイズにカットした固形熱伝導材料SP12を挟んだこと以外は実施例1と同様に接合体を作製した。
【0088】
<実施例13>
jER1007の代わりにjER1004(三菱ケミカル株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、重量平均分子量約5000)を用いたこと以外は実施例7と同様にして、フィルム状の固形熱伝導材料SP13を得た。
基材Aと基材Bに対し、25×12.5mmのサイズにカットした固形熱伝導材料SP13を挟んだこと以外は実施例1と同様に接合体を作製した。
【0089】
<実施例14>
ポリアミド系結晶性ホットメルト接着剤TY-863H1をTHFに溶解させた25質量%濃度の樹脂溶液をベース樹脂溶液として用いたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム状の固形熱伝導材料SP14を得た。
基材Aと基材Bに対し、25×12.5mmのサイズにカットした固形熱伝導材料CSP1を挟んだこと以外は実施例1と同様に接合体を作製した。
【0090】
<比較例1>
結晶性エポキシ樹脂YSLV-80XY(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)に球状アルミナCB-A20S(昭和電工株式会社製、平均粒径d50=21μm)を46体積%になるように加え、自転公転ミキサーで混合し、ペーストを得た。前記ペーストを離型処理PETにフィルムにはさみ、プレスして、フィルム状の固形熱伝導材料比較用サンプル(以下、CSP)1を得た。
を得た。
基材Aと基材Bに対し、25×12.5mmのサイズにカットした固形熱伝導材料CSP2を挟んだこと以外は実施例1と同様に接合体を作製した。
【0091】
<比較例2>
エポキシ樹脂jER1007 100g、ビスフェノールS 6.2g、及びトリエチルアミン0.4gを、アセトン197gに溶解し、組成物(A1)を得た。
また、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂NC-3000 100g、イミダゾリジノン骨格を有するフェノール化合物TAM-005 91.9g、及びトリエチルアミン1.54gを、アセトン356.5gに溶解し、組成物(B2)を得た。
前記組成物(A1)と前記組成物(B1)とを、アセトンを除く質量比で40/60で配合した樹脂組成物を用い、球状アルミナCB-A20Sの配合を表1のように変更した以外は、前記実施例1と同様にして、フィルム状の固形熱伝導材料CSP2を得た。基材Aと基材Bに対し、25×12.5mmのサイズにカットした固形熱伝導材料CSP2を挟んだこと以外は実施例1と同様に接合体を作製した。
【0092】
<比較例3>
球状アルミナCB-A20Sを混合しないこと以外は実施例1と同様にフィルム状固形熱伝導材料比較用CSP3を得た。
基材Aと基材Bに対し、25×12.5mmのサイズにカットした固形熱伝導材料CSP3を挟んだこと以外は実施例1と同様に接合体を作製した。
【0093】
[熱伝導率]
実施例1~14、比較例1~3で得られた固形熱伝導材の熱伝導率をレーザーフラッシュ法により以下の式を用いて評価した。評価結果を表1-1及び表1-2に示す。
熱伝導率=熱拡散率×比熱容量×密度
上記式における「熱拡散率」「比熱容量」「密度」は、それぞれ、以下の方法で求めた。
熱拡散率:熱伝導性樹脂組成物の平板から直径10mmの円盤を切り出し、その円盤の厚み方向の熱拡散率をLaser Flash TC-7000(真空理化株式会社製)で20℃において測定した。
比熱容量:熱伝導性樹脂組成物の粉末の比熱容量は、示差走査熱量計DSC7(パーキンエルマー社製)を用いて、JIS K 7123:1987に準拠して測定した。具体的には、熱伝導性樹脂組成物およそ10mgをアルミニウムパンに封入した。サンプルパンと空パンをホールダーにセットした。0℃で15分間保持した後、10℃/分の昇温速度で50℃まで昇温し、熱伝導性樹脂組成物のDSC曲線を得た。同様の温度プロファイルで、基準物質であるα-アルミナおよそ10mgのDSC曲線を得た。熱伝導性樹脂組成物とα-アルミナのDSC曲線から熱伝導性樹脂組成物の比熱容量を評価した。
密度:熱伝導性樹脂組成物の平板から、50mm×50mmの試験片を切り出し、DENSI METER(東洋精機工業株式会社製)を用いて、JIS K 7112:1999に準拠して測定した。
【0094】
[せん断接合力]
実施例1~14、比較例1~3で得られた接合体を用い、測定温度(23℃もしくは80℃)で30分以上静置後、ISO19095に準拠して、引張試験機(万能試験機オートグラフ「AG-X plus」(株式会社島津製作所製);ロードセル10kN、引張速度10mm/min)にて、23℃および80℃雰囲気での引張りせん断接合力の試験を行い、接合強度を測定した。測定結果を表1-1及び表1-2に示す。
【0095】
[凹凸密着性]
実施例1~14、比較例1~3で得られた接合体のせん断接合力の試験後に、接合面を観察し、接合体が基材と密着していない部分が無ければ良好(Good)とし、密着していない部分があれば不適(Poor)とした。評価結果を表1-1及び表1-2に示す。
【0096】
[接合プロセス時間]
接合プロセス時間は下記のように測定した。
接合体を構成する少なくとも何れかの基材と接合剤の接触時を始点、接合体の作製の完了時を終点として、始点から終点までの時間を測定した。加熱・加圧時間については、3種の接合体でのそれぞれ加熱・加圧時間を平均した。測定結果を表1-1及び表1-2に示す。
【0097】
[リサイクル性]
接合体を200℃のホットプレートに置いて1分加熱した後、1N以下の力で容易に剥離できるかで判断した。剥離できれば良好(Good)で、剥離できなければ不適(Poor)とした。評価結果を表1-1及び表1-2に示す。
【0098】
[リペア性]
23℃雰囲気でのせん断接合力の試験後に、接合面が破断したそれぞれの試験片(基材AもしくはBまたはその両方の表面に接合固体の層が残存している)のうち基材Bの上に基材Aを配置し、前記実施例1と同様に接合体を作成することでリペア接合体を得た。前記リペア接合体の23℃のせん断接合力を前記試験方法と同様に測定し、1回目のせん断接合力の80%以上であれば良好(Good)で、80%未満ならば不適(Poor)とした。評価結果を表1-1及び表1-2に示す。
【0099】
[オープンタイム評価]
オープンタイム評価用接合体を用いて、前記引張りせん断接合強度試験を23℃で実施した。前記実施例及び比較例の方法で作成した試験片と比べてせん断接合力が80%以上であれば良好(Good)で、80%未満であれば不適(Poor)とした。オープンタイム評価が良好(Good)とは、オープンタイムが長く、利便性に優れることを意味する。
【0100】
【0101】
【0102】
表1-1に示すように、本発明に係る接合方法に用いる固形熱伝導材料は高い熱伝導性と接合力を備える。当該特性に加え、本発明に係る接合方法に用いる固形熱伝導材料は以下の特性を備える。
【0103】
本発明に係る接合方法に用いる固形熱伝導材料は、熱可塑性であって、可逆的に軟化・溶融と硬化を繰り返すことができるため、電子機器への組み込み前は固体として保管し、組み込み箇所において液体とした後、固体として挿入することができる。電子機器への組み込み前に固体として保管できるため、保管や組み込み作業に関し、特殊なノウハウが不要であり、既存の製造ラインへの適性に優れる。このため、本発明によれば、従来の液状のTIMにおけるデメリットである「製造ラインへの適性の低さ」を克服することができる。
本発明に係る接合方法に用いる固形熱伝導材料は、熱可塑性樹脂を含むため、組み込み箇所において溶融して、複雑な形状の凹凸にも追従して密着させた後、固化することができるため、上記表1-1に示すように凹凸密着性に優れ、各種設計への適性が高い。このため、本発明によれば、従来のシート状のTIMにおけるデメリットである「設計への適正の低さ」を克服することができる。
本発明に係る接合方法に用いる固形熱伝導材料は、熱可塑性樹脂を固形熱伝導材料中の樹脂成分のうち、51質量%以上含むため、可逆的に軟化・溶融と硬化を繰り返すことができるため、ポンプアウトは生じず、ボイドも発生しにくく、長期使用や繰り返し使用に伴う性能の低下を回避することができる。このため、本発明によれば、従来のサーマルグリースにおけるデメリットである「長期使用や繰り返し使用に伴う性能の低下」を克服することができる。
本発明の接合方法は、既存の製造ラインへの適性、及び、設計への適性が、共に高く、長期使用や繰り返し使用に伴う性能の低下が生じにくいTIMを電子機器に挿入する用途に好適である
本発明の接合方法は、半導体パッケージの製造工程で用いてもよく、本発明の接合方法に用いる固形熱伝導材料は、半導体チップ用のフィルム状接着材料としても利用できる。例えば、ダイボンディングフィルムとして利用することができ、この場合ダイシングテープと積層されたダイシング・ダイボンディング一体型フィルムとして用いてもよい。