(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000905
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】基板固定装置及び基板固定装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20231226BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20231226BHJP
H05B 3/72 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L23/36 D
H05B3/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099888
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】春原 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】西川 里駆
【テーマコード(参考)】
3K092
5F131
5F136
【Fターム(参考)】
3K092PP20
3K092QA05
3K092RF03
3K092RF11
3K092RF27
3K092SS12
3K092SS13
5F131AA02
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131CA03
5F131EA03
5F131EA04
5F131EB11
5F131EB81
5F131EB82
5F136BC00
5F136BC04
5F136BC05
5F136BC07
5F136CB06
5F136EA23
5F136FA02
(57)【要約】
【課題】吸着面での温度分布の制御性を向上すること。
【解決手段】基板固定装置は、ベースプレートと、セラミック板と、熱伝導部材とを有する。セラミック板は、ベースプレートに接着剤層を介して接着され、静電力によって基板を吸着する。熱伝導部材は、セラミック板の接着面、ベースプレートの接着面及び接着剤層の内部の少なくとも一つの、セラミック板の中央部と平面視で重なる中央領域又はセラミック板の外周部と平面視で重なる外周領域に配置され、ベースプレートとセラミック板との積層方向の熱伝導率が積層方向に垂直な平面方向の熱伝導率よりも高い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと、
前記ベースプレートに接着剤層を介して接着され、静電力によって基板を吸着するセラミック板と、
前記セラミック板の接着面、前記ベースプレートの接着面及び前記接着剤層の内部の少なくとも一つの、前記セラミック板の中央部と平面視で重なる中央領域又は前記セラミック板の外周部と平面視で重なる外周領域に配置され、前記ベースプレートと前記セラミック板との積層方向の熱伝導率が前記積層方向に垂直な平面方向の熱伝導率よりも高い熱伝導部材と
を有することを特徴とする基板固定装置。
【請求項2】
前記熱伝導部材は、
長手方向が前記積層方向を向くように配置されたカーボンナノチューブと、
前記カーボンナノチューブの長手方向の両端面が露出された状態で前記カーボンナノチューブを被覆する樹脂と
を有することを特徴とする請求項1に記載の基板固定装置。
【請求項3】
前記熱伝導部材は、
前記接着剤層の内部の前記中央領域又は前記外周領域に配置され、
前記樹脂は、
前記セラミック板の接着面に接着される第1面と、
前記ベースプレートの接着面に接着される第2面と、
前記第1面及び前記第2面を繋ぎ、前記接着剤層によって被覆される側面と
を有し、
前記カーボンナノチューブは、
一端面が前記樹脂の第1面から露出して前記セラミック板の接着面に接触し、他端面が前記樹脂の第2面から露出して前記ベースプレートの接着面に接触する
ことを特徴とする請求項2に記載の基板固定装置。
【請求項4】
前記接着剤層は、
前記セラミック板の接着面の前記中央領域又は前記外周領域に前記熱伝導部材を接着する第1接着剤と、
前記セラミック板の接着面と前記ベースプレートの接着面との間に積層され、前記熱伝導部材及び前記第1接着剤を被覆する第2接着剤と
を有することを特徴とする請求項1に記載の基板固定装置。
【請求項5】
前記第1接着剤は、
前記第2接着剤よりも熱伝導率が高い
ことを特徴とする請求項4に記載の基板固定装置。
【請求項6】
前記セラミック板の接着面及び前記ベースプレートの接着面の少なくとも一方の前記中央領域又は前記外周領域には、凹部が形成され、
前記熱伝導部材は、
前記凹部内に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の基板固定装置。
【請求項7】
前記熱伝導部材は、
前記セラミック板の接着面、前記ベースプレートの接着面及び前記接着剤層の内部の少なくとも一つの前記中央領域に配置され、
前記セラミック板は、
前記外周部に発熱する電極を内蔵する
ことを特徴とする請求項1に記載の基板固定装置。
【請求項8】
前記熱伝導部材は、
前記セラミック板の接着面、前記ベースプレートの接着面及び前記接着剤層の内部の少なくとも一つの前記外周領域に配置され、
前記セラミック板は、
前記中央部に発熱する電極を内蔵する
ことを特徴とする請求項1に記載の基板固定装置。
【請求項9】
外周部に発熱する電極を内蔵するセラミック板を形成し、
前記セラミック板の接着面の、前記セラミック板の中央部と平面視で重なる中央領域に、ベースプレートと前記セラミック板との積層方向の熱伝導率が前記積層方向に垂直な平面方向の熱伝導率よりも高い熱伝導部材を第1接着剤を介して接着し、
前記ベースプレートの接着面に第2接着剤を塗布し、
前記セラミック板の接着面に前記第2接着剤を積層して前記熱伝導部材及び前記第1接着剤を被覆するとともに、前記第1接着剤及び前記第2接着剤からなる接着剤層を介して前記ベースプレートの接着面に前記セラミック板を接着する
工程を有することを特徴とする基板固定装置の製造方法。
【請求項10】
中央部に発熱する電極を内蔵するセラミック板を形成し、
前記セラミック板の接着面の、前記セラミック板の外周部と平面視で重なる外周領域に、ベースプレートと前記セラミック板との積層方向の熱伝導率が前記積層方向に垂直な平面方向の熱伝導率よりも高い熱伝導部材を第1接着剤を介して接着し、
前記ベースプレートの接着面に第2接着剤を塗布し、
前記セラミック板の接着面に前記第2接着剤を積層して前記熱伝導部材及び前記第1接着剤を被覆するとともに、前記第1接着剤及び前記第2接着剤からなる接着剤層を介して前記ベースプレートの接着面に前記セラミック板を接着する
工程を有することを特徴とする基板固定装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板固定装置及び基板固定装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば半導体部品を製造する場合などにウエハを吸着して保持する基板固定装置は、静電チャック(ESC:Electrostatic Chuck)とも呼ばれ、電極を内蔵するセラミック板を備える。基板固定装置は、セラミック板がベースプレートに接着された構造を有し、セラミック板に内蔵された電極に電圧を印加することにより、静電力を利用してセラミック板にウエハを吸着する。セラミック板にウエハを吸着して保持することにより、ウエハに対する例えば微細加工やエッチングなどのプロセスが効率的に行われる。
【0003】
かかる基板固定装置においては、セラミック板は、例えばシリコーン樹脂系の接着剤によってベースプレートに接着される。セラミック板とベースプレートとが接着剤によって接着される場合、接着剤の厚み方向における熱抵抗が比較的に大きいため、ウエハを吸着するセラミック板からベースプレートへの熱の移動が阻害され、ウエハの温度調節の迅速性が低下することがある。これに対し、セラミック板からベースプレートへの熱伝達性を向上させるために、接着剤に代えて、長手方向の熱伝導率が高いカーボンナノチューブの集合体からなる接着層によってセラミック板をベースプレートに接着する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最近では、ウエハに対する加工の微細化が進んでおり、ウエハを吸着するセラミック板の吸着面での温度分布を局所的に制御することが求められている。例えば、セラミック板の吸着面の中央領域及び外周領域を異なる温度に制御することが求められている。
【0006】
しかしながら、カーボンナノチューブの集合体からなる接着層が用いられる場合、接着層を介してセラミック板全体からベースプレートへ熱が均等に移動し、セラミック板の吸着面の中央領域及び外周領域を異なる温度に制御することが困難であるという問題がある。具体的には、セラミック板とベースプレートとを接着する接着層全体にカーボンナノチューブが配置されることにより、セラミック板からベースプレートへの熱の移動が均等化され、セラミック板の吸着面全体における温度分布の制御性の向上には限界がある。
【0007】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、吸着面での温度分布の制御性を向上することができる基板固定装置及び基板固定装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の開示する基板固定装置は、一つの態様において、ベースプレートと、セラミック板と、熱伝導部材とを有する。セラミック板は、ベースプレートに接着剤層を介して接着され、静電力によって基板を吸着する。熱伝導部材は、セラミック板の接着面、ベースプレートの接着面及び接着剤層の内部の少なくとも一つの、セラミック板の中央部と平面視で重なる中央領域又はセラミック板の外周部と平面視で重なる外周領域に配置され、ベースプレートとセラミック板との積層方向の熱伝導率が積層方向に垂直な平面方向の熱伝導率よりも高い。
【発明の効果】
【0009】
本願の開示する基板固定装置の一つの態様によれば、吸着面での温度分布の制御性を向上することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る基板固定装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る基板固定装置の断面を示す模式図である。
【
図3】
図3は、熱伝導部材及びヒーター電極の配置の具体例を示す平面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る基板固定装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、セラミック板の具体例を示す図である。
【
図6】
図6は、熱伝導部材接着工程の具体例を示す図である。
【
図7】
図7は、第2接着剤塗布工程の具体例を示す図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る基板固定装置の第1変形例を示す図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る基板固定装置の第2変形例を示す図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る基板固定装置の第3変形例を示す図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態に係る基板固定装置の断面を示す模式図である。
【
図12】
図12は、熱伝導部材及びヒーター電極の配置の具体例を示す平面図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係る基板固定装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、熱伝導部材接着工程の具体例を示す図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態に係る基板固定装置の第1変形例を示す図である。
【
図17】
図17は、第2実施形態に係る基板固定装置の第2変形例を示す図である。
【
図18】
図18は、第2実施形態に係る基板固定装置の第3変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本願の開示する基板固定装置及び基板固定装置の製造方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により開示技術が限定されるものではない。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る基板固定装置100の構成を示す斜視図である。
図1に示す基板固定装置100は、ベースプレート110にセラミック板120が接着された構造を有する。
【0013】
ベースプレート110は、例えばアルミニウムなどの金属製の円形部材である。ベースプレート110は、セラミック板120を固定する基材である。ベースプレート110は、例えば半導体製造装置などに取り付けられ、基板固定装置100を、ウエハを保持する半導体保持装置として機能させる。
【0014】
セラミック板120は、絶縁性のセラミックからなる円形部材である。セラミック板120の径はベースプレート110の径よりも小さく、セラミック板120は、ベースプレート110の中央に固定される。すなわち、セラミック板120の下面がベースプレート110に接着される接着面となり、接着面がベースプレート110に接着されることによりセラミック板120が固定される。セラミック板120の上面は、例えばウエハのような吸着される対象物を吸着する吸着面である。
【0015】
セラミック板120は、導電性の電極を内蔵し、かかる電極に電圧が印加される場合に発生する静電力を利用して例えばウエハ等の対象物を吸着面に吸着する。また、セラミック板120は、ヒーター電極を内蔵し、電圧が印加される場合に発熱するヒーター電極によって、セラミック板120及びセラミック板120に吸着されるウエハなどの対象物の温度を調節する。
【0016】
図2は、第1実施形態に係る基板固定装置100の断面を示す模式図である。
図2には、
図1のII-II線における矢視断面が示されている。
図2に示すように、基板固定装置100は、ベースプレート110とセラミック板120とが接着剤層130によって接着されて構成される。
【0017】
ベースプレート110は、例えば厚さ20~50mm程度の金属製の円形部材である。ベースプレート110の内部には、例えば冷却水や冷却ガスなどの冷媒の通路となる冷媒通路111が形成されている。冷媒通路111を冷媒が通過することにより、セラミック板120が冷却される。セラミック板120が冷却される結果、セラミック板120の吸着面に吸着される例えばウエハなどの対象物が冷却される。ベースプレート110の上面110aは、セラミック板120に接着される接着面であり、接着剤層130によってセラミック板120の下面120aに接着されている。
【0018】
セラミック板120は、例えば厚さ4~6mmのセラミックからなる円形板である。セラミック板120は、例えば酸化アルミニウムを用いて作製されたグリーンシートを焼成することにより得られる。セラミック板120の下面120aは、ベースプレート110に接着される接着面であり、接着剤層130によってベースプレート110の上面110aに接着されている。セラミック板120の内部には、電極121及びヒーター電極122が形成されている。
【0019】
電極121は、セラミック板120の内部に配置され、電圧が印加されることにより静電力を発生させる。この静電力により、セラミック板120は、吸着面となる上面120bに例えばウエハ等の対象物を吸着する。
【0020】
ヒーター電極122は、セラミック板120の内部において電極121よりも下方に配置され、電圧が印加されることにより発熱する。このヒーター電極122の発熱により、セラミック板120は、セラミック板120及びセラミック板120の上面120bに吸着されるウエハ等の対象物を加熱する。
【0021】
接着剤層130は、例えばシリコーン樹脂系の接着剤又はエポキシ樹脂系の接着剤等からなる、例えば厚さ0.05mm~3.0mm程度の層であり、ベースプレート110の上面110aにセラミック板120の下面120aを接着している。接着剤層130の内部には、熱伝導部材140が配置されている。
【0022】
熱伝導部材140は、ベースプレート110とセラミック板120との積層方向(以下、単に「積層方向」と表記する場合がある)の熱伝導率が該積層方向に垂直な平面方向の熱伝導率よりも高い性質(以下適宜「熱的異方性」と呼ぶ)を有する。具体的には、熱伝導部材140は、樹脂142に、長手方向の熱伝導率が他の方向の熱伝導率よりも高い複数のカーボンナノチューブ141が埋め込まれた構造を有している。カーボンナノチューブ141は、炭素からなる線状の結晶であり、長手方向が積層方向を向くように互いに隣接した状態で配置されている。カーボンナノチューブ141の長手方向の熱伝導率は、セラミック板120及び接着剤層130の熱伝導率よりも高い。樹脂142は、カーボンナノチューブ141の長手方向の両端面が露出された状態でカーボンナノチューブ141を被覆している。樹脂142としては、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂又はポリエチレン樹脂等の熱可塑性樹脂等を用いることができる。
【0023】
ここで、熱伝導部材140及びヒーター電極122の配置の具体例について
図3を参照して説明する。
図3は、熱伝導部材140及びヒーター電極122の配置の具体例を示す平面図である。
図3においては、セラミック板120の吸着面(つまり、上面120b)側から見た熱伝導部材140及びヒーター電極122の配置を示している。
【0024】
図3に示すように、熱伝導部材140は、接着剤層130(
図2参照)の内部の、セラミック板120の中央部と平面視で重なる中央領域R1に配置される。中央領域R1は、接着剤層130の内部の、セラミック板120の外周部と平面視で重なる環状の外周領域R2によって囲まれる円板状の領域である。熱伝導部材140は、中央領域R1に対応して円板状に形成されている。
【0025】
接着剤層130の内部の全体ではなく中央領域R1に熱的異方性を有する熱伝導部材140が配置されることにより、中央領域R1においてセラミック板120からベースプレート110への熱の移動を局所的に促進させることができる。このため、セラミック板120の中央部の温度をセラミック板120の外周部の温度よりも低くすることができる。結果として、セラミック板120の吸着面において、中央領域と外周領域との温度差を発生させることができ、かかる吸着面での温度分布の制御性を向上することができる。
【0026】
また、
図3に示すように、ヒーター電極122は、セラミック板120の外周部に内蔵されている。ヒーター電極122は、例えばセラミック板120の中央部を囲む環状に形成されており、接着剤層130の内部の中央領域R1に配置される熱伝導部材140とは平面視で重ならない。セラミック板120の外周部に内蔵されるヒーター電極122による加熱によってセラミック板120の外周部の温度を調整することができ、セラミック板120の中央部とセラミック板120の外周部との温度差を拡大させることができる。結果として、セラミック板120の吸着面において、中央領域と外周領域との温度差を拡大させることができ、かかる吸着面での温度分布の制御性をより向上することができる。
【0027】
図2の説明に戻る。接着剤層130は、第1接着剤131と、第2接着剤132とを有する。第1接着剤131は、円板状をなし、セラミック板120の接着面(つまり、下面120a)に円板状の熱伝導部材140を接着している。第2接着剤132は、ベースプレート110の接着面(つまり、上面110a)とセラミック板120の接着面(つまり、下面120a)との間に積層され、熱伝導部材140及び第1接着剤131を被覆している。第2接着剤132は、第1接着剤131を構成する樹脂と同じ樹脂によって構成されてもよく、第1接着剤131を構成する樹脂と異なる樹脂によって構成されてもよい。このように、セラミック板120の下面120aに第1接着剤131を介して熱伝導部材140が接着されるとともに、熱伝導部材140及び第1接着剤131が第2接着剤132によって被覆されることで、熱伝導部材140の位置が接着剤層130内に固定される。これにより、簡便な工程で熱伝導部材140を接着剤層130の内部に配置することができ、基板固定装置100の製造効率を向上することができる。
【0028】
次に、上記のように構成された基板固定装置100の製造方法について、
図4を参照しながら説明する。
図4は、第1実施形態に係る基板固定装置100の製造方法を示すフローチャートである。
【0029】
まず、ウエハ等の対象物を吸着するセラミック板120が形成される(ステップS101)。具体的には、例えば酸化アルミニウムを主材料とする複数のグリーンシートが作製され、適宜、グリーンシートの一面に電極121が形成されるとともに、他のグリーンシートの一面にヒーター電極122が形成される。電極121及びヒーター電極122は、例えばグリーンシートの表面に金属ペーストをスクリーン印刷することにより、形成することができる。そして、複数のグリーンシートが積層され焼成されることにより、セラミック板120が形成される。セラミック板120は、例えば
図5に示すように、電極121の層及びヒーター電極122の層を内蔵する。
図5は、セラミック板120の具体例を示す図である。電極121は、セラミック板120の中央部及び外周部に内蔵されており、ヒーター電極122は、セラミック板120の外周部のみに内蔵されている。なお、必要に応じて、ヒーター電極122は、省略されてもよい。
【0030】
セラミック板120が形成されると、熱伝導部材140がセラミック板120の接着面(つまり、下面120a)の、セラミック板120の中央部と平面視で重なる中央領域に接着される(ステップS102)。具体的には、例えば
図6に示すように、セラミック板120よりも径が小さい円板状の熱伝導部材140が、セラミック板120の下面120aの中央領域に第1接着剤131を介して接着される。
図6は、熱伝導部材接着工程の具体例を示す図である。熱伝導部材140が接着される時点では、第1接着剤131を構成する樹脂は半硬化状態である。熱伝導部材140は、カーボンナノチューブ141の長手方向がベースプレート110とセラミック板120との積層方向(換言すれば、セラミック板120の厚み方向)と一致するように、セラミック板120の下面120aに接着される。このとき、カーボンナノチューブ141は、樹脂142を厚み方向に貫通しており、カーボンナノチューブ141の上端面が第1接着剤131に接触するとともに、カーボンナノチューブ141の下端面が樹脂142の下面から露出している。
【0031】
また、第1接着剤131は、第1接着剤131を構成する樹脂と第2接着剤132を構成する樹脂とが異なる場合、第2接着剤132よりも熱伝導率が高いことが好ましい。これにより、セラミック板120から熱伝導部材140への熱の移動を円滑化することが可能となる。
【0032】
そして、ベースプレート110の接着面(つまり、上面110a)に第2接着剤が塗布される(ステップS103)。具体的には、例えば
図7に示すように、ベースプレート110の上面110aの全面に第2接着剤132が塗布される。
図7は、第2接着剤塗布工程の具体例を示す図である。ベースプレート110の上面110aの全面に第2接着剤132が塗布される時点では、第2接着剤132を構成する樹脂は半硬化状態である。
【0033】
第2接着剤132が塗布されると、セラミック板120は、熱伝導部材140を被覆する第1接着剤131及び第2接着剤132からなる接着剤層130によってベースプレート110に接着される(ステップS104)。セラミック板120の下面120aに半硬化状態の第2接着剤132が熱伝導部材140及び第1接着剤131を被覆するように積層され、加熱及び加圧によって、第1接着剤131及び第2接着剤132が硬化する。この結果、第1接着剤131及び第2接着剤132からなる接着剤層130の内部の中央領域R1に熱伝導部材140が配置されるとともに、ベースプレート110の上面110aに、セラミック板120の下面120aが接着剤層130によって接着される。このとき、樹脂142の下面から露出しているカーボンナノチューブ141の下端面が第2接着剤132を介してベースプレート110の上面110aに接続され、ベースプレート110の上面110aと熱的に導通する。これにより、セラミック板120からベースプレート110への熱の移動を円滑化することが可能となる。ベースプレート110にセラミック板120が接着されることにより、基板固定装置100が完成する。なお、カーボンナノチューブ141の上端面及び下端面は、樹脂142又は接着剤層130に埋没していてもよい。
【0034】
以上のように、第1実施形態に係る基板固定装置(例えば、基板固定装置100)は、ベースプレート(例えば、ベースプレート110)と、セラミック板(例えば、セラミック板120)と、熱伝導部材(例えば、熱伝導部材140)とを有する。セラミック板は、ベースプレートに接着剤層(例えば、接着剤層130)を介して接着され、静電力によって基板を吸着する。熱伝導部材は、接着剤層の内部の、セラミック板の中央部と平面視で重なる中央領域(例えば、中央領域R1)に配置され、ベースプレートとセラミック板との積層方向の熱伝導率が積層方向に垂直な平面方向の熱伝導率よりも高い。これにより、第1実施形態に係る基板固定装置によれば、吸着面での温度分布の制御性を向上することができる。
【0035】
また、熱伝導部材は、カーボンナノチューブ(例えば、カーボンナノチューブ141)と、樹脂(例えば、樹脂142)とを有してもよい。カーボンナノチューブは、長手方向が積層方向を向くように配置されてもよい。樹脂は、カーボンナノチューブの長手方向の両端面が露出された状態でカーボンナノチューブを被覆してもよい。これにより、第1実施形態に係る基板固定装置によれば、ベースプレートとセラミック板との積層方向に沿った熱の移動を円滑化させることができる。
【0036】
また、接着剤層は、第1接着剤(例えば、第1接着剤131)と、第2接着剤(例えば、第2接着剤132)とを有してもよい。第1接着剤は、セラミック板の接着面の中央領域に熱伝導部材を接着する。第2接着剤は、ベースプレートの接着面とセラミック板の接着面との間に積層され、熱伝導部材及び第1接着剤を被覆する。これにより、第1実施形態に係る基板固定装置によれば、簡便な工程で熱伝導部材を接着剤層の内部に配置することができ、基板固定装置の製造効率を向上することができる。
【0037】
また、第1接着剤は、第2接着剤よりも熱伝導率が高くてもよい。これにより、第1実施形態に係る基板固定装置によれば、セラミック板から熱伝導部材への熱の移動を円滑化することが可能となる。
【0038】
なお、本実施形態においては、熱伝導部材140が接着剤層130の内部に配置される場合を例に説明したが、熱伝導部材140の配置はこれに限定されず適宜変更することが可能である。
【0039】
図8は、第1実施形態に係る基板固定装置100の第1変形例を示す図である。
図8において、
図2と同じ部分には同じ符号を付す。
【0040】
図8に示す変形例では、熱伝導部材140が、接着剤層130の内部の中央領域R1に代えて、セラミック板120の接着面(つまり、下面120a)の、セラミック板120の中央部と平面視で重なる中央領域に配置される。具体的には、セラミック板120の下面120aの中央領域には、凹部120cが形成されており、かかる凹部120c内に熱伝導部材140が配置されている。熱伝導部材140は、例えば接着剤145を介して凹部120cの底面に接着されてもよい。このように、セラミック板120の下面120aの中央領域に熱伝導部材140が配置される場合でも、セラミック板120の吸着面において、中央領域と外周領域との温度差を発生させることができ、かかる吸着面での温度分布の制御性を向上することができる。
【0041】
図9は、第1実施形態に係る基板固定装置100の第2変形例を示す図である。
図9において、
図2と同じ部分には同じ符号を付す。
【0042】
図9に示す変形例では、熱伝導部材140が、接着剤層130の内部の中央領域R1に代えて、ベースプレート110の接着面(つまり、上面110a)の、セラミック板120の中央部と平面視で重なる中央領域に配置される。具体的には、ベースプレート110の上面110aの中央領域には、凹部110bが形成されており、かかる凹部110b内に熱伝導部材140が配置されている。熱伝導部材140は、例えば接着剤145を介して凹部110bの底面に接着されてもよい。このように、ベースプレート110の上面110aの中央領域に熱伝導部材140が配置される場合でも、セラミック板120の吸着面において、中央領域と外周領域との温度差を発生させることができ、かかる吸着面での温度分布の制御性を向上することができる。
【0043】
また、本実施形態においては、熱伝導部材140の樹脂142の全面が接着剤層130によって被覆される場合を例に説明したが、樹脂142の側面のみが接着剤層130によって被覆されてもよい。
【0044】
図10は、第1実施形態に係る基板固定装置100の第3変形例を示す図である。
図10において、
図2と同じ部分には同じ符号を付す。
【0045】
図10に示す変形例では、熱伝導部材140の樹脂142の側面のみが接着剤層130によって被覆されており、樹脂142の上面(第1面の一例)及び下面(第2面の一例)は、接着剤層130から露出している。接着剤層130から露出する樹脂142の上面は、セラミック板120の接着面(つまり、下面120a)に接着されており、接着剤層130から露出する樹脂142の下面は、ベースプレート110の接着面(つまり、上面110a)に接着されている。そして、熱伝導部材140のカーボンナノチューブ141は、上端面が樹脂142の上面から露出してセラミック板120の下面120aに接触しており、下端面が樹脂142の下面から露出してベースプレート110の上面110aに接触している。このようにすることにより、熱伝導部材140を介したセラミック板120からベースプレート110への熱の移動を円滑化することができ、セラミック板120の吸着面での温度分布の制御性をより向上することができる。
【0046】
なお、上記第1実施形態及びその各変形例では、熱伝導部材140が、セラミック板120の接着面、ベースプレート110の接着面又は接着剤層130の内部に配置される場合を例に説明したが、熱伝導部材140の配置位置は、適宜変更することが可能である。例えば、熱伝導部材140は、セラミック板120の接着面、ベースプレート110の接着面及び接着剤層130の内部のいずれか二つに配置されてもよい。また、熱伝導部材140は、セラミック板120の接着面、ベースプレート110の接着面及び接着剤層130の内部に配置されてもよい。要するに、熱伝導部材140は、セラミック板120の接着面、ベースプレート110の接着面及び接着剤層130の内部の少なくとも一つに配置されてもよい。
【0047】
(第2実施形態)
第2実施形態は、主として熱伝導部材及びヒーター電極の配置が第1実施形態と異なる。
【0048】
図11は、第2実施形態に係る基板固定装置100の断面を示す模式図である。
図11において、
図2と同じ部分には同じ符号を付す。
図11に示す基板固定装置100は、熱伝導部材140に代えて、熱伝導部材240を有する。
【0049】
熱伝導部材240は、接着剤層130の内部に配置されている。熱伝導部材240は、熱伝導部材140と同様に熱的異方性を有する。具体的には、熱伝導部材240は、樹脂242に、長手方向の熱伝導率が他の方向の熱伝導率よりも高い複数のカーボンナノチューブ241が埋め込まれた構造を有している。カーボンナノチューブ241は、炭素からなる線状の結晶であり、長手方向が積層方向を向くように互いに隣接した状態で配置されている。カーボンナノチューブ241の長手方向の熱伝導率は、セラミック板120及び接着剤層130の熱伝導率よりも高い。樹脂242は、カーボンナノチューブ241の長手方向の両端面が露出された状態でカーボンナノチューブ241を被覆している。樹脂242としては、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂又はポリエチレン樹脂等の熱可塑性樹脂等を用いることができる。
【0050】
また、熱伝導部材240及びヒーター電極122の配置の具体例について
図12を参照して説明する。
図12は、熱伝導部材240及びヒーター電極122の配置の具体例を示す平面図である。
図12においては、セラミック板120の吸着面(つまり、上面120b)側から見た熱伝導部材240及びヒーター電極122の配置を示している。
【0051】
図12に示すように、熱伝導部材240は、接着剤層130(
図11参照)の内部の、セラミック板120の外周部と平面視で重なる外周領域R2に配置される。外周領域R2は、接着剤層130の内部の、セラミック板120の中央部と重なる円板状の中央領域R1を囲む環状の領域である。熱伝導部材240は、外周領域R2に対応して環状に形成されている。
【0052】
接着剤層130の内部の全体ではなく外周領域R2に熱的異方性を有する熱伝導部材240が配置されることにより、外周領域R2においてセラミック板120からベースプレート110への熱の移動を局所的に促進させることができる。このため、セラミック板120の外周部の温度をセラミック板120の中央部の温度よりも低くすることができる。結果として、セラミック板120の吸着面において、中央領域と外周領域との温度差を発生させることができ、かかる吸着面での温度分布の制御性を向上することができる。
【0053】
また、
図12に示すように、ヒーター電極122は、セラミック板120の中央部に内蔵されている。ヒーター電極122は、例えば環状の熱伝導部材240よりも径が小さい三重の同心円状に形成されており、接着剤層130の内部の外周領域R2に配置される熱伝導部材240とは平面視で重ならない。セラミック板120の中央部に内蔵されるヒーター電極122による加熱によってセラミック板120の中央部の温度を調整することができ、セラミック板120の中央部とセラミック板120の外周部との温度差を拡大させることができる。結果として、セラミック板120の吸着面において、中央領域と外周領域との温度差を拡大させることができ、かかる吸着面での温度分布の制御性をより向上することができる。
【0054】
図11の説明に戻る。接着剤層130は、第1接着剤131と、第2接着剤132とを有する。第1接着剤131は、環状をなし、セラミック板120の接着面(つまり、下面120a)に環状の熱伝導部材240を接着している。第2接着剤132は、ベースプレート110の接着面(つまり、上面110a)とセラミック板120の接着面(つまり、下面120a)との間に積層され、熱伝導部材240及び第1接着剤131を被覆している。第2接着剤132は、第1接着剤131を構成する樹脂と同じ樹脂によって構成されてもよく、第1接着剤131を構成する樹脂と異なる樹脂によって構成されてもよい。このように、セラミック板120の下面120aに第1接着剤131を介して熱伝導部材240が接着されるとともに、熱伝導部材240及び第1接着剤131が第2接着剤132によって被覆されることで、熱伝導部材240の位置が接着剤層130内に固定される。これにより、簡便な工程で熱伝導部材240を接着剤層130の内部に配置することができ、基板固定装置100の製造効率を向上することができる。
【0055】
次に、上記のように構成された基板固定装置100の製造方法について、
図13を参照しながら説明する。
図13は、第2実施形態に係る基板固定装置100の製造方法を示すフローチャートである。なお、
図13において、
図4と同じ部分には同じ符号を付す。
【0056】
まず、ウエハ等の対象物を吸着するセラミック板120が形成される(ステップS201)。具体的には、例えば酸化アルミニウムを主材料とする複数のグリーンシートが作製され、適宜、グリーンシートの一面に電極121が形成されるとともに、他のグリーンシートの一面にヒーター電極122が形成される。電極121及びヒーター電極122は、例えばグリーンシートの表面に金属ペーストをスクリーン印刷することにより、形成することができる。そして、複数のグリーンシートが積層され焼成されることにより、セラミック板120が形成される。セラミック板120は、例えば
図14に示すように、電極121の層及びヒーター電極122の層を内蔵する。
図14は、セラミック板120の具体例を示す図である。電極121は、セラミック板120の中央部及び外周部に内蔵されており、ヒーター電極122は、セラミック板120の中央部のみに内蔵されている。なお、必要に応じて、ヒーター電極122は、省略されてもよい。
【0057】
セラミック板120が形成されると、熱伝導部材240がセラミック板120の接着面(つまり、下面120a)の、セラミック板120の外周部と平面視で重なる外周領域に接着される(ステップS202)。具体的には、例えば
図15に示すように、セラミック板120よりも径が小さい環状の熱伝導部材240が、セラミック板120の下面120aの外周領域に第1接着剤131を介して接着される。
図15は、熱伝導部材接着工程の具体例を示す図である。熱伝導部材240が接着される時点では、第1接着剤131を構成する樹脂は半硬化状態である。熱伝導部材240は、カーボンナノチューブ241の長手方向がベースプレート110とセラミック板120との積層方向(換言すれば、セラミック板120の厚み方向)と一致するように、セラミック板120の下面120aに接着される。このとき、カーボンナノチューブ241は、樹脂242を厚み方向に貫通しており、カーボンナノチューブ241の上端面が第1接着剤131に接触するとともに、カーボンナノチューブ241の下端面が樹脂242の下面から露出している。
【0058】
また、第1接着剤131は、第1接着剤131を構成する樹脂と第2接着剤132を構成する樹脂とが異なる場合、第2接着剤132よりも熱伝導率が高いことが好ましい。これにより、セラミック板120から熱伝導部材240への熱の移動を円滑化することが可能となる。
【0059】
そして、ベースプレート110の接着面(つまり、上面110a)に第2接着剤が塗布される(ステップS103)。具体的には、ベースプレート110の上面110aの全面に第2接着剤132が塗布される。ベースプレート110の上面110aの全面に第2接着剤132が塗布される時点では、第2接着剤132を構成する樹脂は半硬化状態である。
【0060】
第2接着剤132が塗布されると、セラミック板120は、熱伝導部材240を被覆する第1接着剤131及び第2接着剤132からなる接着剤層130によってベースプレート110に接着される(ステップS104)。セラミック板120の下面120aに半硬化状態の第2接着剤132が熱伝導部材240及び第1接着剤131を被覆するように積層され、加熱及び加圧によって、第1接着剤131及び第2接着剤132が硬化する。この結果、第1接着剤131及び第2接着剤132からなる接着剤層130の内部の外周領域R2に熱伝導部材240が配置されるとともに、ベースプレート110の上面110aに、セラミック板120の下面120aが接着剤層130によって接着される。このとき、樹脂242の下面から露出しているカーボンナノチューブ241の下端面が第2接着剤132を介してベースプレート110の上面110aに接続され、ベースプレート110の上面110aと熱的に導通する。これにより、セラミック板120からベースプレート110への熱の移動を円滑化することが可能となる。ベースプレート110にセラミック板120が接着されることにより、基板固定装置100が完成する。なお、カーボンナノチューブ241の上端面及び下端面は、樹脂242又は接着剤層130に埋没していてもよい。
【0061】
以上のように、第2実施形態に係る基板固定装置(例えば、基板固定装置100)は、ベースプレート(例えば、ベースプレート110)と、セラミック板(例えば、セラミック板120)と、熱伝導部材(例えば、熱伝導部材240)とを有する。セラミック板は、ベースプレートに接着剤層(例えば、接着剤層130)を介して接着され、静電力によって基板を吸着する。熱伝導部材は、接着剤層の内部の、セラミック板の外周部と平面視で重なる外周領域(例えば、外周領域R2)に配置され、ベースプレートとセラミック板との積層方向の熱伝導率が積層方向に垂直な平面方向の熱伝導率よりも高い。これにより、第2実施形態に係る基板固定装置によれば、吸着面での温度分布の制御性を向上することができる。
【0062】
また、熱伝導部材は、カーボンナノチューブ(例えば、カーボンナノチューブ241)と、樹脂(例えば、樹脂242)とを有してもよい。カーボンナノチューブは、長手方向が積層方向を向くように配置されてもよい。樹脂は、カーボンナノチューブの長手方向の両端面が露出された状態でカーボンナノチューブを被覆してもよい。これにより、第2実施形態に係る基板固定装置によれば、ベースプレートとセラミック板との積層方向に沿った熱の移動を円滑化させることができる。
【0063】
また、接着剤層は、第1接着剤(例えば、第1接着剤131)と、第2接着剤(例えば、第2接着剤132)とを有してもよい。第1接着剤は、セラミック板の接着面の外周領域に熱伝導部材を接着する。第2接着剤は、ベースプレートの接着面とセラミック板の接着面との間に積層され、熱伝導部材及び第1接着剤を被覆する。これにより、第2実施形態に係る基板固定装置によれば、簡便な工程で熱伝導部材を接着剤層の内部に配置することができ、基板固定装置の製造効率を向上することができる。
【0064】
また、第1接着剤は、第2接着剤よりも熱伝導率が高くてもよい。これにより、第2実施形態に係る基板固定装置によれば、セラミック板から熱伝導部材への熱の移動を円滑化することが可能となる。
【0065】
なお、本実施形態においては、熱伝導部材240が接着剤層130の内部に配置される場合を例に説明したが、熱伝導部材240の配置はこれに限定されず適宜変更することが可能である。
【0066】
図16は、第2実施形態に係る基板固定装置100の第1変形例を示す図である。
図16において、
図11と同じ部分には同じ符号を付す。
【0067】
図16に示す変形例では、熱伝導部材240が、接着剤層130の内部の外周領域R2に代えて、セラミック板120の接着面(つまり、下面120a)の、セラミック板120の外周部と平面視で重なる外周領域に配置される。具体的には、セラミック板120の下面120aの外周領域には、凹部120cが形成されており、かかる凹部120c内に熱伝導部材240が配置されている。熱伝導部材240は、例えば接着剤245を介して凹部120cの底面に接着されてもよい。このように、セラミック板120の下面120aの外周領域に熱伝導部材240が配置される場合でも、セラミック板120の吸着面において、中央領域と外周領域との温度差を発生させることができ、かかる吸着面での温度分布の制御性を向上することができる。
【0068】
図17は、第2実施形態に係る基板固定装置100の第2変形例を示す図である。
図17において、
図11と同じ部分には同じ符号を付す。
【0069】
図17に示す変形例では、熱伝導部材240が、接着剤層130の内部の外周領域R2に代えて、ベースプレート110の接着面(つまり、上面110a)の、セラミック板120の外周部と平面視で重なる外周領域に配置される。具体的には、ベースプレート110の上面110aの外周領域には、凹部110bが形成されており、かかる凹部110b内に熱伝導部材240が配置されている。熱伝導部材240は、例えば接着剤245を介して凹部110bの底面に接着されてもよい。このように、ベースプレート110の上面110aの外周領域に熱伝導部材240が配置される場合でも、セラミック板120の吸着面において、中央領域と外周領域との温度差を発生させることができ、かかる吸着面での温度分布の制御性を向上することができる。
【0070】
また、本実施形態においては、熱伝導部材240の樹脂242の全面が接着剤層130によって被覆される場合を例に説明したが、樹脂242の側面のみが接着剤層130によって被覆されてもよい。
【0071】
図18は、第2実施形態に係る基板固定装置100の第3変形例を示す図である。
図18において、
図11と同じ部分には同じ符号を付す。
【0072】
図18に示す変形例では、熱伝導部材240の樹脂242の側面のみが接着剤層130によって被覆されており、樹脂242の上面(第1面の一例)及び下面(第2面の一例)は、接着剤層130から露出している。接着剤層130から露出する樹脂242の上面は、セラミック板120の接着面(つまり、下面120a)に接着されており、接着剤層130から露出する樹脂242の下面は、ベースプレート110の接着面(つまり、上面110a)に接着されている。そして、熱伝導部材240のカーボンナノチューブ241は、上端面が樹脂242の上面から露出してセラミック板120の下面120aに接触しており、下端面が樹脂242の下面から露出してベースプレート110の上面110aに接触している。このようにすることにより、熱伝導部材240を介したセラミック板120からベースプレート110への熱の移動を円滑化することができ、セラミック板120の吸着面での温度分布の制御性をより向上することができる。
【0073】
なお、上記第2実施形態及びその各変形例では、熱伝導部材240が、セラミック板120の接着面、ベースプレート110の接着面又は接着剤層130の内部に配置される場合を例に説明したが、熱伝導部材240の配置位置は、適宜変更することが可能である。例えば、熱伝導部材240は、セラミック板120の接着面、ベースプレート110の接着面及び接着剤層130の内部のいずれか二つに配置されてもよい。また、熱伝導部材240は、セラミック板120の接着面、ベースプレート110の接着面及び接着剤層130の内部に配置されてもよい。要するに、熱伝導部材240は、セラミック板120の接着面、ベースプレート110の接着面及び接着剤層130の内部の少なくとも一つに配置されてもよい。
【符号の説明】
【0074】
100 基板固定装置
110 ベースプレート
110a 上面
110b 凹部
111 冷媒通路
120 セラミック板
120a 下面
120b 上面
120c 凹部
121 電極
122 ヒーター電極
130 接着剤層
131 第1接着剤
132 第2接着剤
140、240 熱伝導部材
141、241 カーボンナノチューブ
142、242 樹脂
R1 中央領域
R2 外周領域