(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090550
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】半導体製造装置、半導体製造工場及び半導体製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206528
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南出 由生
(72)【発明者】
【氏名】和田 直之
(57)【要約】 (修正有)
【課題】処理すべき処理部が製造ロットごとに決められている場合でも製造時間を短縮できる半導体製造装置及び半導体製造方法を提供する。
【解決手段】気相成長装置は、処理すべき反応炉11A、11Bが製造ロット毎に決められている被処理物を製造ロット単位でロードポート15X~15Zに搬入し、被処理物の夫々を1個単位で反応炉へ搬送して処理したのち、被処理物の製造ロットを、ロードポートの夫々に搬入するとともに残りのロードポートは空席とした上で、夫々の反応炉で処理を開始し、夫々の反応炉で被処理物を処理している間に、夫々の反応炉における被処理物の製造情報に基づいて、相対的に早く処理を終了する反応炉を予測し、夫々の反応炉での処理を終了する前に、現在空席となっているロードポートに、相対的に早く処理を終了すると予測された反応炉で処理すべき製造ロットを搬入する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の処理部とそれを超える数の搬入出部を備え、処理すべき処理部が製造ロットごとに決められている被処理物を前記製造ロット単位で前記搬入出部に搬入し、当該被処理物のそれぞれを1個単位で前記処理部へ搬送して処理したのち、前記搬入出部へ搬送する半導体製造装置において、
それぞれの処理部で処理すべき被処理物の製造ロットを、前記搬入出部のそれぞれに搬入するとともに残りの搬入出部は空席とした上で、前記それぞれの処理部で処理を開始し、
前記それぞれの処理部で前記被処理物を処理している間に、前記それぞれの処理部における前記被処理物の製造情報に基づいて、相対的に早く処理を終了する処理部を予測し、
前記それぞれの処理部での処理を終了する前に、現在空席となっている搬入出部に、前記相対的に早く処理を終了すると予測された処理部で処理すべき製造ロットを搬入する半導体製造装置。
【請求項2】
前記搬入出部に在席している製造ロットのうち、最後の被処理物又は最後から2番目の被処理物が前記処理部での処理を開始したときに、前記相対的に早く処理を終了する処理部を予測する請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項3】
前記被処理物の製造情報は、前記被処理物の処理時間、前記被処理物の処理順序又は前記製造ロットに含まれる被処理物の数量を含む請求項1又は2に記載の半導体製造装置。
【請求項4】
一の処理部において一の製造ロットの処理が終了した場合に、前記搬入出部のいずれかに前記一の処理部で処理すべき他の製造ロットが在席しているときは、当該他の製造ロットの処理を前記一の処理部により開始する請求項1又は2に記載の半導体製造装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体製造装置が、複数設置されている半導体製造工場。
【請求項6】
複数の前記半導体装置から送信された前記処理部の製造情報を集約し、相対的に早く処理を終了する前記処理部を予測する統括コントローラと、
前記統括コントローラの予測に基づいて、それぞれの処理部での処理を終了する前に、現在空席となっている搬入出部に、前記相対的に早く処理を終了すると予測された処理部で処理すべき製造ロットの搬入を、前記複数の半導体製造装置へ指示する生産管理装置と、
前記生産管理装置の指示に基づいて、製造ロットを前記複数の半導体装置に搬入する搬送装置と、を備える請求項5に記載の半導体製造工場。
【請求項7】
複数の処理部とそれを超える数の搬入出部を備える半導体製造装置を用い、処理すべき処理部が製造ロットごとに決められている被処理物を前記製造ロット単位で前記搬入出部に搬入し、当該被処理物のそれぞれを1個単位で前記処理部へ搬送して処理したのち、前記搬入出部へ搬送する半導体製造方法において、
それぞれの処理部で処理すべき被処理物の製造ロットを、前記搬入出部のそれぞれに搬入するとともに残りの搬入出部は空席とした上で、前記それぞれの処理部で処理を開始し、
前記それぞれの処理部で前記被処理物を処理している間に、前記それぞれの処理部における被処理物の製造情報に基づいて、相対的に早く処理を終了する処理部を予測し、
前記それぞれの処理部での処理を終了する前に、現在空席となっている搬入出部に、前記相対的に早く処理を終了すると予測された処理部で処理すべき製造ロットを搬入する半導体製造方法。
【請求項8】
前記搬入出部に在席している製造ロットのうち、最後の被処理物又は最後から2番目の被処理物が前記処理部での処理を開始したときに、前記相対的に早く処理を終了する処理部を予測する請求項5に記載の半導体製造方法。
【請求項9】
前記被処理物の製造情報は、前記被処理物の処理時間、前記被処理物の処理順序又は前記製造ロットに含まれる被処理物の数量を含む請求項5又は6に記載の半導体製造方法。
【請求項10】
一の処理部において一の製造ロットの処理が終了した場合に、前記搬入出部のいずれかに前記一の処理部で処理すべき他の製造ロットが在席しているときは、当該他の製造ロットの処理を前記一の処理部により開始する請求項5又は6に記載の半導体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置、半導体製造工場及び半導体製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
処理チャンバを複数備え、当該処理チャンバへの搬送制御パターンを複数設定することができる半導体製造装置に対し、現在の稼動状態および現在の在庫ロットに関するデータを収集し、半導体製造装置で処理予定の各ロットについての処理内容を示すレシピに応じたウェーハ処理時間および各ロット単位処理の間に発生するロス時間に関するデータを収集し、収集した各データに基づいて、ウェーハ搬送制御内容ごとに全在庫ロットの平均リードタイムをそれぞれ算出し、算出した各平均リードタイムの大小関係に基づいてウェーハ搬送制御内容を選択する半導体製造装置の制御システムが知られている(特許文献1参照)。これにより、ロット処理間にロス時間が存在する場合でも、半導体製造装置に対して最適なウェーハ搬送制御処理を指示することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、半導体製造工場の中で顧客の仕様などによって処理すべき処理チャンバが製造ロットごとに決められている場合、上記従来技術を適用することはできない。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、複数の処理部とそれを超える数の搬入出部を備える半導体製造装置につき、処理すべき処理部が製造ロットごとに決められている場合でも製造時間を短縮できる半導体製造装置、半導体製造工場及び半導体製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の処理部とそれを超える数の搬入出部を備え、処理すべき処理部が製造ロットごとに決められている被処理物を前記製造ロット単位で前記搬入出部に搬入し、当該被処理物のそれぞれを1個単位で前記処理部へ搬送して処理したのち、前記搬入出部へ搬送する半導体製造装置において、
それぞれの処理部で処理すべき被処理物の製造ロットを、前記搬入出部のそれぞれに搬入するとともに残りの搬入出部は空席とした上で、前記それぞれの処理部で処理を開始し、
前記それぞれの処理部で前記被処理物を処理している間に、前記それぞれの処理部における前記被処理物の製造情報に基づいて、相対的に早く処理を終了する処理部を予測し、
前記それぞれの処理部での処理を終了する前に、現在空席となっている搬入出部に、前記相対的に早く処理を終了すると予測された処理部で処理すべき製造ロットを搬入する半導体製造装置によって上記課題を解決する。
【0007】
また本発明は、複数の処理部とそれを超える数の搬入出部を備える半導体製造装置を用い、処理すべき処理部が製造ロットごとに決められている被処理物を前記製造ロット単位で前記搬入出部に搬入し、当該被処理物のそれぞれを1個単位で前記処理部へ搬送して処理したのち、前記搬入出部へ搬送する半導体製造方法において、
それぞれの処理部で処理すべき被処理物の製造ロットを、前記搬入出部のそれぞれに搬入するとともに残りの搬入出部は空席とした上で、前記それぞれの処理部で処理を開始し、
前記それぞれの処理部で前記被処理物を処理している間に、前記それぞれの処理部における被処理物の製造情報に基づいて、相対的に早く処理を終了する処理部を予測し、
前記それぞれの処理部での処理を終了する前に、現在空席となっている搬入出部に、前記相対的に早く処理を終了すると予測された処理部で処理すべき製造ロットを搬入する半導体製造方法によって上記課題を解決する。
【0008】
上記本発明において、前記搬入出部に在席している製造ロットのうち、最後の被処理物又は最後から2番目の被処理物が前記処理部での処理を開始したときに、前記相対的に早く処理を終了する処理部を予測することがより好ましい。
【0009】
また上記本発明において、前記被処理物の製造情報は、前記被処理物の処理時間、前記被処理物の処理順序又は前記製造ロットに含まれる被処理物の数量を含むことができる。
【0010】
また上記本発明において、一の処理部において一の製造ロットの処理が終了した場合に、前記搬入出部のいずれかに前記一の処理部で処理すべき他の製造ロットが在席しているときは、当該他の製造ロットの処理を前記一の処理部により開始することがより好ましい。
【0011】
また本発明は、上記発明に係る半導体製造装置が、複数設置されている半導体製造工場によっても上記課題を解決する。
【0012】
上記発明において、複数の前記半導体装置から送信された前記処理部の製造情報を集約し、相対的に早く処理を終了する前記処理部を予測する統括コントローラと、
前記統括コントローラの予測に基づいて、それぞれの処理部での処理を終了する前に、現在空席となっている搬入出部に、前記相対的に早く処理を終了すると予測された処理部で処理すべき製造ロットの搬入を、前記複数の半導体装置へ指示する生産管理装置と、
前記生産管理装置の指示に基づいて、製造ロットを前記複数の半導体製造装置に搬入する搬送装置と、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の処理部とそれを超える数の搬入出部を備える半導体製造装置に対し、それぞれの処理部での処理を終了する前に、現在空席となっている搬入出部に、相対的に早く処理を終了すると予測された処理部で処理すべき製造ロットを搬入する。これにより、処理部において間隔をおけることなく連続して製造でき、搬入出部において製造開始を待機する時間が短縮される。その結果、処理すべき処理部が製造ロットごとに決められている場合でも、被処理物の製造時間を短縮することができる。特に、複数の処理部を備えた半導体製造装置が半導体製造工場内に複数設置されている場合、複数台分の多数の処理部を使用して、例えば仕様の異なった多品種の半導体製品を効率よく製造することができ、効果が大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る半導体製造装置の一実施の形態である気相成長装置を示す平面ブロック図である。
【
図2】
図1の気相成長装置を模式化したブロック図であり、製造ロット及び被処理物の取り廻しを示すブロック図である。
【
図3】
図2の気相成長装置を用いた製造ロット及び被処理物の取り廻しの実施例と比較例を示すタイムチャートである。
【
図4A】
図3の実施例の処理手順を示すタイムチャート(その1)である。
【
図4B】
図3の実施例の処理手順を示すタイムチャート(その2)である。
【
図4C】
図3の実施例の処理手順を示すタイムチャート(その3)である。
【
図4D】
図3の実施例の処理手順を示すタイムチャート(その4)である。
【
図5】
図2の気相成長装置による製造ロット及び被処理物の取り廻し手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図1の半導体製造装置が複数設置された半導体製造工場の一実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明の半導体製造装置及び半導体製造方法は、半導体デバイスを製造するための装置及び方法を意味し、特に限定されないが、半導体の表面に薄膜を堆積する化学気相成長装置及び方法(CVD装置)、半導体に微細な凹凸を形成するエッチング装置及び方法、半導体の表面を洗浄する洗浄装置及び方法などの装置及び方法が含まれる。以下の実施形態では、半導体製造装置及び方法の一例として、シリコン単結晶ウェーハの表面にシリコンエピタキシャル膜を形成する気相成長装置及び方法を挙げ、本発明の実施形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る気相成長装置1を示す平面ブロック図であり、中央に示す気相成長装置1の本体は、平面図で示したものである。本実施形態の気相成長装置1は、いわゆるCVD装置であり、一対の反応炉11A,11Bと、シリコン単結晶ウェーハなどのウェーハWFをハンドリングする第1ロボット121が設置されたウェーハ移載室12と、一対のロードロック室13A,13Bと、ウェーハWFをハンドリングする第2ロボット141が設置されたファクトリインターフェース14と、複数枚のウェーハWFを収納したウェーハ収納容器15(カセットケース,FOUPともいう。)を設置するロードポート15X,15Y,15Zと、を備える。
【0017】
ファクトリインターフェース14は、ウェーハ収納容器15が搬入及び搬出されるロードポート15X,15Y,15Zの部屋(クリーンルーム)と同じ大気雰囲気とされた領域である。このファクトリインターフェース14には、ウェーハ収納容器15に収納された処理前のウェーハWFを取り出してロードロック室13へ投入する一方、ロードロック室13へ搬送されてきた処理後のウェーハWFをウェーハ収納容器15へ収納する第2ロボット141が設けられている。第2ロボット141は、第2ロボットコントローラ142により制御され、ロボットハンドの先端に装着された第2ブレード143が、予めティーチングされた所定の軌跡に沿って移動する。
【0018】
それぞれのロードロック室13A,13Bとファクトリインターフェース14との間には、気密性を有する開閉可能な第1ドア131A,131Bが設けられ、それぞれのロードロック室13A,13Bとウェーハ移載室12との間には、同じく気密性を有する開閉可能な第2ドア132A,132Bが設けられている。そして、それぞれのロードロック室13A,13Bは、不活性ガス雰囲気とされたウェーハ移載室12と、大気雰囲気とされたファクトリインターフェース14との間で、雰囲気ガスを置換するスペースとして機能する。そのため、ロードロック室13A,13Bの内部を真空排気する排気装置と、ロードロック室13A,13Bに不活性ガスを供給する供給装置とが設けられている。
【0019】
たとえば、処理前のウェーハWFを、ロードロック室13Aを介してウェーハ収納容器15からウェーハ移載室12に搬送する場合には、ファクトリインターフェース14側の第1ドア131Aを閉じ、ウェーハ移載室12側の第2ドア132Aを閉じ、ロードロック室13Aを不活性ガス雰囲気とした状態で、第2ロボット141を用いて、ウェーハ収納容器15のウェーハWFを取り出し、ファクトリインターフェース14側の第1ドア131Aを開け、ウェーハWFをロードロック室13Aに搬送する。次いで、ファクトリインターフェース14側の第1ドア131Aを閉じて当該ロードロック室13Aを再び不活性ガス雰囲気にしたのち、ウェーハ移載室12側の第2ドア132Aを開き、第1ロボット121を用いて、当該ウェーハWFをウェーハ移載室12に搬送する。
【0020】
逆に、処理後のウェーハWFを、ロードロック室13Aを介してウェーハ移載室12からウェーハ収納容器15へ搬送する場合には、ファクトリインターフェース14側の第1ドア131Aを閉じ、ウェーハ移載室12側の第2ドア132Aを閉じ、ロードロック室13Aを不活性ガス雰囲気とした状態で、ウェーハ移載室12側の第2ドア132Aを開き、第1ロボット121を用いて、ウェーハ移載室12のウェーハWFをロードロック室13Aに搬送する。次いで、ウェーハ移載室12側の第2ドア132Aを閉じて当該ロードロック室13Aを再び不活性ガス雰囲気にしたのち、ファクトリインターフェース14側の第1ドア131Aを開き、第2ロボット141を用いて、当該ウェーハWFをウェーハ収納容器15に搬送する。
【0021】
ウェーハ移載室12は、密閉されたチャンバからなり、一方がロードロック室13A,13Bと開閉可能な気密性を有する第2ドア132A,132Bを介して接続され、他方が気密性を有する開閉可能なゲートバルブ114A,114Bを介して接続されている。ウェーハ移載室12には、処理前のウェーハWFをロードロック室13A,13Bから反応室111A,111Bへ搬送するとともに、処理後のウェーハWFを反応室111A,111Bからロードロック室13A,13Bへ搬送する第1ロボット121が設置されている。第1ロボット121は、第1ロボットコントローラ122により制御され、ロボットハンドの先端に装着された第1ブレード123が、予めティーチングされた動作軌跡に沿って移動する。
【0022】
気相成長装置1の全体の制御を統括する16と、第1ロボットコントローラ122と、第2ロボットコントローラ142とは、相互に制御信号を送受信する。そして、統括コントローラ16からの動作指令信号が第1ロボットコントローラ122に送信されると、第1ロボットコントローラ122は、第1ロボット121の動作を制御し、当該第1ロボット121の動作結果が第1ロボットコントローラ122から統括コントローラ16へ送信される。これにより、統括コントローラ16は、第1ロボット121の動作状態を認識する。同様に、統括コントローラ16からの動作指令信号が第2ロボットコントローラ142に送信されると、第2ロボットコントローラ142は第2ロボット141の動作を制御し、当該第2ロボット141の動作結果が第2ロボットコントローラ142から統括コントローラ16へ送信される。これにより、統括コントローラ16は、第2ロボット141の動作状態を認識する。
【0023】
ウェーハ移載室12には、図示しない不活性ガス供給装置から不活性ガスが供給され、排気口に接続されたスクラバ(洗浄集塵装置)によってウェーハ移載室12のガスが浄化されたのち、系外へ放出される。この種のスクラバは、詳細な図示は省略するが、たとえば従来公知の加圧水式スクラバを用いることができる。
【0024】
反応炉11A,11Bは、CVD法によりウェーハWFの表面にエピタキシャル膜を生成するための装置であって、反応室111A,111Bを備え、当該反応室111A,111Bの内部にウェーハWFを載置して回転するサセプタ112A,112Bが設けられている、また、反応炉11A,11Bには、反応室111A,111Bに水素ガス及びCVD膜を生成するための原料ガス(CVD膜がシリコンエピタキシャル膜の場合は、たとえば四塩化ケイ素SiCl4やトリクロロシランSiHCl3など)を供給するガス供給装置113A,113Bが設けられている。図示は省略するが、反応室111A,111Bの周囲には、ウェーハWFを所定温度に昇温するための加熱ランプが設けられている。さらに、反応室111A,111Bとウェーハ移載室12との間には、ゲートバルブ114A,114Bが設けられ、ゲートバルブ114A,114Bを閉塞することで反応室111A,111Bのウェーハ移載室12との気密性が確保される。これら反応炉11A,11Bのサセプタ112A,112Bの駆動、ガス供給装置113A,113Bによるガスの供給・停止、加熱ランプのON/OFF、ゲートバルブ114A,114Bの開閉動作の各制御は、統括コントローラ16からの指令信号により制御される。なお、
図1に示す気相成長装置1は、一対の反応炉11A,11Bを設けた例を示したが、3つ以上の反応炉でもよい。
【0025】
反応炉11A,11Bにも、ウェーハ移載室12と同様の構成を有するスクラバ(洗浄集塵装置)が設けられている。すなわち、ガス供給装置113A,113Bから供給された水素ガス又は原料ガスは、反応室111A,111Bに設けられた排気口に接続されたスクラバによって浄化されたのち、系外へ放出される。このスクラバについても、たとえば従来公知の加圧水式スクラバを用いることができる。
【0026】
さて、
図1に示すように2つの反応炉11A,11Bが設けられた気相成長装置1を用いてシリコン単結晶ウェーハにシリコンエピタキシャル膜を形成する場合に、ウェーハWFの製品仕様により、どちらの反応炉11A,11Bで製造するかを、生産計画時に決定しておくことがある。たとえば、反応炉11A,11Bに設けられたサセプタ112A,112Bが、製品仕様に合わせて異なっている場合、ウェーハWFは、使用するサセプタによって製造すべき反応炉11A,11Bが決められる。また、同じ製造ロットのウェーハWFは、同じ反応炉11A,11Bで製造する方が、製造ロット間での品質が均一になるし、不具合の解析調査にも便利である。
【0027】
そのため、一つのウェーハ収納容器15に収納された全てのウェーハWFは、予め決められた反応炉11A又は11Bの一方に一枚ずつ搬送されて処理されたのち、元のウェーハ収納容器15に戻される。すなわち、反応炉11Aで処理するウェーハWFが収納されたウェーハ収納容器15が、
図1のロードポート15Xに搬入された場合、そのウェーハWFは全て反応炉11Aへ搬送されて処理されたのちロードポート15Xのウェーハ収納容器15に戻される。一方、反応炉11Bで処理するウェーハWFが収納されたウェーハ収納容器15が、
図1のロードポート15Yに搬入された場合、そのウェーハWFは全て反応炉11Bへ搬送されて処理されたのちロードポート15Yのウェーハ収納容器15に戻される。
【0028】
このように、一のロードポート15Xに搬入した製造ロットのウェーハWFを一の反応炉11Aでのみ処理し、他のロードポート15Yに搬入した他の製造ロットのウェーハWFを他の反応炉11Bでのみ処理するといったウェーハの搬送制御は、パラレル運転モードとも称される。これに対し、一のロードポート15Xに搬入した製造ロットのウェーハWFを、いずれか空いている方の反応炉11A,11Bで順次処理し、ロードポート15Xに搬入した製造ロットのウェーハWFを全て処理したら、他のロードポート15Yに搬入した製造ロットのウェーハをいずれか空いている方の反応炉11A,11Bで順次処理するといったウェーハの搬送制御は、シリアル運転モードとも称される。
【0029】
ここで、上記パラレル運転モードの搬送制御により製造する場合に、
図1に示すように、気相成長装置1が、反応炉11A,11Bの数を超える数量のロードポート15A,15B,15Cを有するとき、すなわち反応炉の数がNであるときに(N+1)以上の数量のロードポートを有するとき、(N+1)以上のロードポートに、N固の反応炉のいずれかで処理すべき製造ロットのウェーハ収納容器15を搬入するかについて、本発明者らは鋭意検討した。ここでは、
図1に示すように、反応炉11A,11Bが2つ、ロードポート15A,15B,15Cが3つである場合を検討した。
【0030】
図2は、
図1の気相成長装置1を模式化したブロック図であり、同じ製造ロットのウェーハWF(被処理物)の取り廻しを示すブロック図である。
図2に示す生産管理装置2は、複数の気相成長装置1を含む生産工程の全ての製造装置を統括管理する装置である。生産管理装置2は、製品の生産計画の立案を行うとともに、立案された製品の生産計画を、複数の気相成長装置1や搬送装置3を含む各製造装置へ出力し、各製造装置からの進捗情報を入力して生産計画の管理を行う。搬送装置3は、前工程の処理を終了したウェーハWFをウェーハ収納容器15に収納した状態で次工程に搬送するシステムであり、生産管理装置2からの指令にしたがい、前工程の所定の製造ロットのウェーハ収納容器15を、本実施形態の気相成長装置1のいずれかのロードポート15X,15Y,15Zに搬入する。
【0031】
図3は、
図2の気相成長装置1を用いて同じ製造ロットのウェーハWFを取り廻した場合の実施例と比較例を示すタイムチャートである。
図3の上図は、生産管理装置2にて立案した生産計画の一例を示し、「丸数字」は生産計画の順序、「A,B」は処理すべき反応炉11A,11Bの特定、「枚数」は1つの製造ロットに含まれるウェーハWFの枚数を示す。たとえば、1番目の製造ロットには、反応炉11Aで処理すべき7枚のウェーハWFが含まれ、2番目の製造ロットには、反応炉11Bで処理すべき5枚のウェーハWFが含まれる。本例では、1番目から10番目までの10の製造ロットにつき、反応炉11Aで34枚のウェーハWFを処理し、反応炉11Bで37枚のウェーハWFを処理するという生産計画であるものとする。なお、生産管理装置2で立案される生産計画は、製造すべき製品の仕様に応じて任意に決められ、特段の規則性はない。
【0032】
まず、本発明者らは、
図3の上図に示す生産計画の順序(丸数字)にしたがって3つのロードポート15X,15Y,15Zにウェーハ収納容器15を順番に搬入した場合に、生産性がどのようになるかを検討した。
図3の下図に示すように、1番目の製造ロットをロードポート15Xに搬入し、2番目の製造ロットをロードポート15Yに搬入し、3番目の製造ロットをロードポート15Zに搬入するものとした。ロードポート15Xに搬入した1番目の製造ロットのウェーハWFは反応炉11Aで処理すべきものであるので、反応炉11Aでの処理を開始し、これと同時にロードポート15Yに搬入した製造ロットのウェーハWFは反応炉11Bで処理すべきものであるので、反応炉11Bでの処理を開始するものとした。しかし、この時点では2つの反応炉11A,11Bは処理中になるため、残りのロードポート15Zに搬入した製造ロットのウェーハWFは待機状態になる。この待機状態を
図3の下図に点線枠にて示す。
【0033】
図3の下図において、時間T11になると、反応炉11Bでの処理が終了し、処理後のウェーハWFが収納されたウェーハ収納容器15がロードポート15Yから搬出される。これにより、反応炉11Bが空き状態になる。ところが、この時点で、処理を待機しているロードポート15Zの製造ロットは反応炉11Bではなく反応炉11Aで処理すべき製造ロットである。したがって、空き状態となった反応炉11Bには、4番目の製造ロットが収納されたウェーハ収納容器15をロードポート15Yに搬入するほかない。そこで、4番目の製造ロットが収納されたウェーハ収納容器15をロードポート15Yに搬入したのち、この製造ロットのウェーハWFを反応炉11Bに搬送し、処理する。この時間T11のタイミングで、待機状態であったロードポート15Zの製造ロットのウェーハWFは待機状態を継続せざるを得ないので、時間のロスが生じる。また、空席状態となったロードポート15Yに次のウェーハ収納容器15を搬入するまでの間も、反応炉11Bでの処理は開始できないので、この間も時間のロスとなる。このような時間のロスは、
図3の下図に示す時間T12においても5番目の製造ロットに発生し,T13においても7番目の製造ロットに発生する。
【0034】
すなわち、単純に生産計画の順序(丸数字)にしたがってウェーハ収納容器15を3つのロードポート15X,15Y,15Zに順次搬入すると、2つの反応炉11A,11Bでの処理の終了タイミングによっては、時間T11(3番目の製造ロット),T12(5番目の製造ロット),T13(7番目の製造ロット)におけるような時間のロスが発生し、これが原因で生産性が低下する。
【0035】
これに対し、本実施形態の気相成長装置1では、それぞれの反応炉11A,11Bで処理すべきウェーハWFの製造ロットを、ロードポート15X,15Yのそれぞれに搬入するとともに残りのロードポート5Zにはウェーハ収納容器15を搬入せずに空席とした上で、それぞれの反応炉11A,11Bで処理を開始する。次いで、それぞれの反応炉11A,11BでウェーハWFを処理している間に、それぞれの反応炉11A,11BにおけるウェーハWFの製造情報に基づいて、どちらの反応炉11A,11Bが相対的に早く処理を終了するかを予測する。そして、それぞれの反応炉1A,11Bでの処理を終了する前に、現在空席となっているロードポート15Zに、相対的に早く処理を終了すると予測された反応炉11A又は11Bで処理すべき製造ロットのウェーハ収納容器15を搬入する。
【0036】
ここで、どちらの反応炉11A,11Bが相対的に早く処理を終了するかを予測するタイミングは、特に限定されず、それぞれの反応炉11A,11BでウェーハWFを処理している間であればどのタイミングでもよい。ただし、ロードポート15X,15Yに在席している製造ロットのうち、最後のウェーハWF又は最後から2番目のウェーハWFが反応炉11A,11Bでの処理を開始したときに、どちらの反応炉11A,11Bが相対的に早く処理を終了するかを予測することがより好ましい。処理の終了間際であるため製造誤差が小さく、予測の精度が高くなるからである。
【0037】
また、予測に用いられるウェーハWFの製造情報には、ウェーハWFの処理時間、ウェーハの処理順序又は製造ロットに含まれるウェーハWFの数量が含まれる。たとえば、5枚のウェーハWFを含む製造ロットであり、1枚のウェーハWFの処理時間がn時間であるとの製造情報を用いると、最後又は最後から2番目のウェーハWFを特定できるとともに、最後のウェーハWFの処理が終了する時間を演算することができる。
【0038】
そして、一方の反応炉11A又は11Bにおいて一の製造ロットの処理が終了した場合に、ロードポートのいずれかに一方の反応炉11A又は11Bで処理すべき他の製造ロットが在席しているときは、間隔をおくことなく当該他の製造ロットの処理を当該一方の反応炉11A又は11Bにより開始することがより好ましい。これにより、時間のロスを限りなくゼロに近づけることができる。
【0039】
図3の中央図は、
図2の気相成長装置1を用いて同じ製造ロットのウェーハWFを取り廻した場合の実施例を示すタイムチャート、
図4A~
図4Dは、
図3の実施例の処理手順を順番に示すタイムチャートである。また、
図5は、本実施形態の気相成長装置1による製造ロット及びウェーハWFの取り廻し手順を示すフローチャートである。
図3の中央図及び
図4A~
図4Dを参照しながら、
図5のフローチャートにしたがって、本実施形態における製造ロット及びウェーハWFの取り廻し手順を説明する。
【0040】
なお、製造ロットの生産計画の具体例は、
図3の上図に示すものとして以下に説明するが、気相成長装置1の統括コントローラ16から生産管理装置2を介して搬送装置3へ指令が出されると、丸数字で示された生産計画の順序にかかわらず、所望の製造ロットのウェーハ収納容器15を所望のロードポート15X,15Y,15Zに搬入することができるものとする。
【0041】
まず、1日の操業開始時には、反応炉11A又は11BのいずれにもウェーハWFはなく、またいずれのロードポート15X,15Y,15Zにもウェーハ収納容器15は在席していないので、ステップS1において、各反応炉11A,11Bで処理する製造ロットのウェーハ収納容器15をロードポート15X,15Yに搬入し、残りのロードポート15Zは空席にする。この状態を
図4Aの中央図に時間T0で示す。ロードポート15Xには1番目の製造ロットが搬入され、ロードポート15Yには2番目の製造ロットが搬入され、ロードポート15Zは空席となっている。
【0042】
次のステップS2では、ロードポート15Xに搬入した1番目の製造ロットのウェーハWFを1枚ずつ反応炉11Aに搬送して処理を開始するとともに、ロードポート15Yに搬入した2番目の製造ロットのウェーハWFを1枚ずつ反応炉11Bに搬送して処理を開始する。
【0043】
ステップS3では、ロードポート15Xとロードポート15Yのそれぞれに搬入された製造ロットが終了するか又は終了直前(たとえば最後から2番目のウェーハ)であるかを判定する。この判定は、生産管理装置2から出力される製造ロットに含まれるウェーハWFの枚数(製品情報)と気相成長装置1の統括コントローラ16で演算される現在の処理枚数とから判定することができる。ステップS3において、ロードポート15Xとロードポート15Yのそれぞれに搬入された製造ロットが終了するか又は終了直前ではない場合はステップS2へ戻り、反応炉11A,11Bでの処理を継続する。
【0044】
ステップS3において、ロードポート15Xとロードポート15Yに搬入された製造ロットのどちらかが終了するか又は終了直前になると、ステップS4へ進み、現在処理中の2つの反応炉11A,11Bのうちどちらが早く処理を終了するかを推定する。この状態を
図4Aの中央図に時間T1で示す。ロードポート15Yに搬入された2番目の製造ロットが終了間際となったので、この時間T1において、反応炉11Bでの処理が終了していないウェーハWFの枚数(最後のウェーハWFであれば1枚、最後から2番目のウェーハWFであれば2枚)と反応炉11Bでの処理時間とから、反応炉11Bの処理の終了時間を演算する。これと同時に、時間T1において、反応炉11Aでの処理が終了していないウェーハWFの枚数と1枚当たりの処理時間とから、反応炉11Aでの処理の終了時間を演算する。これらを比較し、2つの反応炉11A,11Bのうちどちらが早く処理を終了するかを推定する。ここでは反応炉11Bの方が早く処理を終了するものとする。
【0045】
ステップS5では、ロードポート15X,15Y,15Zに空席があるか否かを判定し、空席がない場合はステップS7へ進むが、この場合、ロードポート15Zが空席なので、ステップS6へ進む。ステップS6では、相対的に早く処理を終了すると推定した反応炉11Bで処理すべき製造ロットのウェーハ収納容器15を生産計画の製造ロットから選択し、ロードポート15Zに搬入する。
図4Aの中央図に示すように、ロードポート15Zには4番目の製造ロットが搬入される。なお、生産計画の順序は3番目であるが、3番目の製造ロットは反応炉11Aで処理すべき製造ロットであるので、これをロードポート15Zに搬入することはしない。
【0046】
続くステップS7において、各ロードポート15X,15Y,15Zに搬入された製造ロットの全てのウェーハWFの処理が終了したか否かを判定し、全てのウェーハWFの処理が終了していない製造ロットについてはステップS2へ戻り、処理を継続する。ステップS7において、全てのウェーハWFの処理が終了した製造ロットについてはステップS8へ進み、ステップS8において、搬送装置3により、終了した製造ロットのウェーハ収納容器15をそのロードポートから搬出する。たとえば、
図4Aの中央図に示すように、ロードポート15Yに搬入された2番目の製造ロットの全てのウェーハWFの処理が終了したら、搬送装置によりこのウェーハ収納容器15をロードポート15Yから搬出する。これにより、ロードポート15Yが空席になると同時に、反応炉11Bも在席するウェーハWFがない状態となる。
【0047】
続くステップS9では、生産計画された全ての製造ロットの搬入が終了したか否かを判定し、終了した場合は本ルーチンを終了するが、製造ロットの搬入が終了していない場合はステップS2へ戻り、反応炉11A,11Bでの処理を継続する。ここでは、
図4Aの中央図に示すように、反応炉11Bも在席するウェーハWFがない状態となっており、しかもロードポート15Zに反応炉11Bで処理すべき4番目の製造ロットが搬入されているので、この4番目の製造ロットのウェーハWFを1枚ずつ反応炉11Bへ搬送して処理を開始する。これにより、反応炉11Bにおいては、2番目の製造ロットの処理が終了してから4番の製造ロットの処理を開始するまでを連続して行うことができ、時間のロスを限りなくゼロに近づけることができる。
【0048】
反応炉11Bにおいて4番目の製造ロットの処理が開始されると、続くステップS3にて、再び、ロードポート15Xとロードポート15Zのそれぞれに搬入された製造ロットが終了するか又は終了直前(たとえば最後から2番目のウェーハ)であるかを判定する。そして、ステップS3において、ロードポート15Xとロードポート15Zに搬入された製造ロットのどちらかが終了するか又は終了直前になると、ステップS4へ進み、現在処理中の2つの反応炉11A,11Bのうちどちらが早く処理を終了するかを推定する。この状態を
図4Aの下図に時間T2で示す。ロードポート15Xに搬入された1番目の製造ロットが終了間際となったので、この時間T2において、反応炉11Aでの処理が終了していないウェーハWFの枚数と反応炉11Aでの処理時間とから、反応炉11Aの処理の終了時間を演算する。これと同時に、時間T2において、反応炉11Bでの処理が終了していないウェーハWFの枚数と1枚当たりの処理時間とから、反応炉11Bでの処理の終了時間を演算する。これらを比較し、2つの反応炉11A,11Bのうちどちらが早く処理を終了するかを推定する。ここでは反応炉11Aの方が早く処理を終了するものとする。
【0049】
ステップS5では、ロードポート15X,15Y,15Zに空席があるか否かを判定し、この場合、ロードポート15Yが空席なので、ステップS6へ進む。ステップS6では、相対的に早く処理を終了すると推定した反応炉11Aで処理すべき製造ロットのウェーハ収納容器15を生産計画の製造ロットから選択し、ロードポート15Yに搬入する。3番目の製造ロットは反応炉11Aで処理すべき製造ロットであるので、
図4Aの下図に示すように、ロードポート15Yには3番目の製造ロットが搬入される。
【0050】
続くステップS7において、各ロードポート15X,15Y,15Zに搬入された製造ロットの全てのウェーハWFの処理が終了したか否かを判定し、
図4Aの下図に示すように、ロードポート15Xに搬入された1番目の製造ロットの全てのウェーハWFの処理が終了したら、搬送装置によりこのウェーハ収納容器15をロードポート15Xから搬出する。これにより、ロードポート15Xが空席になると同時に、反応炉11Aも在席するウェーハWFがない状態となる。そして、反応炉11Aが在席するウェーハWFがない状態となっており、しかもロードポート15Yに反応炉11Aで処理すべき3番目の製造ロットが搬入されているので、この3番目の製造ロットのウェーハWFを1枚ずつ反応炉11Aへ搬送して処理を開始する。これにより、反応炉11Aにおいては、1番目の製造ロットの処理が終了してから3番の製造ロットの処理を開始するまでを連続して行うことができ、時間のロスを限りなくゼロに近づけることができる。
【0051】
図4B~
図4Dに示す時間T3~T8の各タイミングにおいて、同様にステップS4の判定を行い、2つの反応炉11A,11Bのうちどちらが早く処理を終了するかを推定する。そして、早く処理を終了すると推定された反応炉11A又は11Bで処理すべき製造ロットのウェーハ収納容器15を空席となっているロードポート15X,15Y,15Zに搬入する。これにより、反応炉11A又は11Bにおいては、一の製造ロットの処理が終了してから他の製造ロットの処理を開始するまでを連続して行うことができ、時間のロスを限りなくゼロに近づけることができる。
【0052】
図6は、
図1の半導体製造装置が複数設置された半導体製造工場の一実施形態を示すブロック図であり、具体的には3機の気相成長装置101,102,103が設置された半導体製造工場を示すブロック図である。各気相成長装置101,102,103は、
図1及び
図2に示す気相成長装置1を同じ構成を備え、気相成長装置101は、一方の反応炉において製品仕様Aを製造し、他方の反応炉において製品仕様Bを製造し、気相成長装置102は、両方の反応炉において製品仕様Bを製造し、気相成長装置103は、一方の反応炉において製品仕様Bを製造し、他方の反応炉において製品仕様Cを製造するものとする。
【0053】
統括コントローラ16は、3機の気相成長装置101,102,103のそれぞれの制御を統括するコンピュータであり、各気相成長装置101,102,103の動作を制御する。また、3機の気相成長装置101,102,103のそれぞれから送信された各反応炉における製造情報を集約し、相対的に早く処理を終了する反応炉を統括して予測する。たとえば、製品仕様Bについては、3機の気相成長装置101,102,103において処理が可能であることから、製品仕様Bが仕掛かっている反応炉の製造情報を集約し、相対的に早く処理を終了する反応炉を予測することで、製品の待機時間を短縮することができる。
【0054】
生産管理装置2は、3機の気相成長装置101,102,103を含む半導体製造工場の生産工程の全ての製造装置を統括管理する装置であり、統括コントローラ16の予測に基づいて、3機それぞれの気相成長装置101,102,103の反応炉での処理を終了する前に、現在空席となっている搬入出部に、相対的に早く処理を終了すると予測された反応炉で処理すべき製造ロットの搬入を、3機の気相成長装置101,102,103へ指示する。
【0055】
搬送装置3は、前工程の処理を終了したウェーハWFをウェーハ収納容器15に収納した状態で次工程に搬送するシステムであり、生産管理装置2からの指令にしたがい、前工程の所定の製造ロットのウェーハ収納容器15を、3機の気相成長装置101,102,103のいずれかのロードポート1x,1y,1z,2x,2y,2z,3x,3y,3zに搬入する。
【0056】
上記気相成長装置1が本発明に係る半導体製造装置に相当し、上記反応炉11A,11Bが本発明に係る処理部に相当し、上記ロードポート15X,15Y,15Zが本発明に係る搬入出部に相当し、上記ウェーハWFが本発明に係る被処理物に相当する。
【符号の説明】
【0057】
1…気相成長装置(半導体製造装置)
11A,11B…反応炉(処理部)
111A,111B…反応室
112A,112B…サセプタ
113A,113B…ガス供給装置
114A,114B…ゲートバルブ
12…ウェーハ移載室
121…第1ロボット
122…第1ロボットコントローラ
123…第1ブレード
13A,13B…ロードロック室
131A,131B…第1ドア
132A,132B…第2ドア
14…ファクトリインターフェース
141…第2ロボット
142…第2ロボットコントローラ
143…第2ブレード
15…ウェーハ収納容器
15X,15Y,15Z…ロードポート(搬入出部)
16…統括コントローラ
2…生産管理装置
3…搬送装置
WF…ウェーハ(被処理物)
【手続補正書】
【提出日】2023-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の処理部とそれを超える数の搬入出部を備え、処理すべき前記処理部が製造ロットごとに決められている被処理物を前記製造ロットの単位で前記搬入出部に搬入し、前記被処理物のそれぞれを1個単位で前記処理部へ搬送して処理したのち、前記搬入出部へ搬送する半導体製造装置において、
それぞれの前記処理部で処理すべき前記被処理物の前記製造ロットを、前記搬入出部のそれぞれに搬入するとともに残りの前記搬入出部は空席とした上で、それぞれの前記処理部で処理を開始し、
それぞれの前記処理部で前記被処理物を処理している間に、それぞれの前記処理部における前記被処理物の製造情報に基づいて、相対的に早く処理を終了する前記処理部を予測し、
それぞれの前記処理部での処理を終了する前に、現在空席となっている前記搬入出部に、相対的に早く処理を終了すると予測された前記処理部で処理すべき前記製造ロットを搬入する半導体製造装置。
【請求項2】
前記搬入出部に在席している前記製造ロットのうち、最後の前記被処理物又は最後から2番目の前記被処理物が前記処理部での処理を開始したときに、相対的に早く処理を終了する前記処理部を予測する請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項3】
前記被処理物の前記製造情報は、前記被処理物の処理時間、前記被処理物の処理順序又は前記製造ロットに含まれる前記被処理物の数量を含む請求項1又は2に記載の半導体製造装置。
【請求項4】
一の前記処理部において一の前記製造ロットの処理が終了した場合に、前記搬入出部のいずれかに一の前記処理部で処理すべき他の前記製造ロットが在席しているときは、他の前記製造ロットの処理を一の前記処理部により開始する請求項1又は2に記載の半導体製造装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体製造装置が、複数設置されている半導体製造工場。
【請求項6】
複数の前記半導体製造装置から送信された前記処理部の前記製造情報を集約し、相対的に早く処理を終了する前記処理部を予測する統括コントローラと、
前記統括コントローラの予測に基づいて、それぞれの前記処理部での処理を終了する前に、現在空席となっている前記搬入出部に、相対的に早く処理を終了すると予測された前記処理部で処理すべき前記製造ロットの搬入を、複数の前記半導体製造装置へ指示する生産管理装置と、
前記生産管理装置の指示に基づいて、前記製造ロットを複数の前記半導体製造装置に搬入する搬送装置と、を備える請求項5に記載の半導体製造工場。
【請求項7】
複数の処理部とそれを超える数の搬入出部を備える半導体製造装置を用い、処理すべき前記処理部が製造ロットごとに決められている被処理物を前記製造ロットの単位で前記搬入出部に搬入し、前記被処理物のそれぞれを1個単位で前記処理部へ搬送して処理したのち、前記搬入出部へ搬送する半導体製造方法において、
それぞれの前記処理部で処理すべき前記被処理物の前記製造ロットを、前記搬入出部のそれぞれに搬入するとともに残りの前記搬入出部は空席とした上で、それぞれの前記処理部で処理を開始し、
それぞれの前記処理部で前記被処理物を処理している間に、それぞれの前記処理部における前記被処理物の製造情報に基づいて、相対的に早く処理を終了する前記処理部を予測し、
それぞれの前記処理部での処理を終了する前に、現在空席となっている前記搬入出部に、相対的に早く処理を終了すると予測された前記処理部で処理すべき前記製造ロットを搬入する半導体製造方法。
【請求項8】
前記搬入出部に在席している前記製造ロットのうち、最後の前記被処理物又は最後から2番目の前記被処理物が前記処理部での処理を開始したときに、相対的に早く処理を終了する前記処理部を予測する請求項7に記載の半導体製造方法。
【請求項9】
前記被処理物の前記製造情報は、前記被処理物の処理時間、前記被処理物の処理順序又は前記製造ロットに含まれる前記被処理物の数量を含む請求項7又は8に記載の半導体製造方法。
【請求項10】
一の前記処理部において一の前記製造ロットの処理が終了した場合に、前記搬入出部のいずれかに一の前記処理部で処理すべき他の前記製造ロットが在席しているときは、他の前記製造ロットの処理を一の前記処理部により開始する請求項7又は8に記載の半導体製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
上記発明において、複数の前記半導体製造装置から送信された前記処理部の製造情報を集約し、相対的に早く処理を終了する前記処理部を予測する統括コントローラと、
前記統括コントローラの予測に基づいて、それぞれの処理部での処理を終了する前に、現在空席となっている搬入出部に、前記相対的に早く処理を終了すると予測された処理部で処理すべき製造ロットの搬入を、前記複数の半導体製造装置へ指示する生産管理装置と、
前記生産管理装置の指示に基づいて、製造ロットを前記複数の半導体製造装置に搬入する搬送装置と、を備えることが好ましい。