(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090615
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】電解装置
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20210101AFI20240627BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20240627BHJP
C25B 15/00 20060101ALI20240627BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20240627BHJP
C25B 9/19 20210101ALI20240627BHJP
C25B 9/13 20210101ALI20240627BHJP
C02F 1/461 20230101ALI20240627BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B15/00 303
C25B15/00 304
C25B15/08 302
C25B9/19
C25B9/13
C02F1/461 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206605
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 仁司
【テーマコード(参考)】
4D061
4K021
【Fターム(参考)】
4D061DA03
4D061DA04
4D061DB07
4D061DB08
4D061DB09
4D061EA02
4D061EB02
4D061EB04
4D061EB19
4D061EB39
4D061GC11
4D061GC16
4K021AA01
4K021BA02
4K021BA17
4K021BC01
4K021BC03
4K021BC06
4K021CA08
4K021CA09
4K021CA10
4K021CA14
4K021DB05
4K021DB50
4K021DC01
4K021DC03
4K021EA06
(57)【要約】
【課題】電解槽内の液体を簡易な構成でタンクに排出可能な電解装置を提供する。
【解決手段】電解装置2は、ポンプ8と、タンク6とポンプ8とを接続する第1の管路L1と、ポンプ8と電解槽4とを接続する第2の管路L2と、第1の管路L1と第2の管路L2とを接続する第3の管路L3と、第2の管路L2において第3の管路L3との接続部10よりもポンプ8側に位置するポンプ8側部分からタンク6まで延びる第4の管路L4と、第1の管路L1および第2の管路L2を介してタンク6から電解槽4へポンプ8によって液体を供給するための供給経路、または、第3の管路L3および第4の管路L4を介して電解槽4からタンク6へポンプ8によって液体を戻すための戻り経路のいずれかを選択するための選択手段12と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内の液体を電解槽に供給して電解を行う電解装置であって、
ポンプと、
前記タンクと前記ポンプとを接続する第1の管路と、
前記ポンプと前記電解槽とを接続する第2の管路と、
前記第1の管路と前記第2の管路とを接続する第3の管路と、
前記第2の管路において前記第3の管路との接続部よりも前記ポンプ側に位置するポンプ側部分から前記タンクまで延びる第4の管路と、
前記第1の管路および前記第2の管路を介して前記タンクから前記電解槽へ前記ポンプによって液体を供給するための供給経路、または、前記第3の管路および前記第4の管路を介して前記電解槽から前記タンクへ前記ポンプによって液体を戻すための戻り経路のいずれかを選択するための選択手段と、
を備える電解装置。
【請求項2】
前記選択手段は、
前記第1の管路に設置された第1の開閉弁と、
前記第2の管路に設置された第2の開閉弁と、
前記第3の管路に設置された第3の開閉弁と、
前記第4の管路に設置された第4の開閉弁と、
前記第1の開閉弁、前記第2の開閉弁、前記第3の開閉弁および前記第4の開閉弁を制御するコントローラと、
を含む請求項1に記載の電解装置。
【請求項3】
前記選択手段は、
前記第1の管路に設置された第1の開閉弁と、
前記第4の管路に設置された第2の開閉弁と、
前記第2の管路と前記第3の管路との接続部に設置された三方弁と、
前記第1の開閉弁、前記第2の開閉弁および前記三方弁を制御するコントローラと、
を含む請求項1に記載の電解装置。
【請求項4】
前記選択手段は、
前記第2の管路に設置された第1の開閉弁と、
前記第4の管路に設置された第2の開閉弁と、
前記第1の管路と前記第3の管路との接続部に設置された三方弁と、
前記第1の開閉弁、前記第2の開閉弁および前記三方弁を制御するコントローラと、
を含む請求項1に記載の電解装置。
【請求項5】
前記選択手段は、
前記第1の管路に設置された第1の開閉弁と、
前記第3の管路に設置された第2の開閉弁と、
前記第2の管路と前記第4の管路との接続部に設置された三方弁と、
前記第1の開閉弁、前記第2の開閉弁および前記三方弁を制御するコントローラと、
を含む請求項1に記載の電解装置。
【請求項6】
前記選択手段は、
前記第1の管路と前記第3の管路との接続部に設置された第1の三方弁と、
前記第2の管路と前記第4の管路との接続部に設置された第2の三方弁と、
前記第1の三方弁および前記第2の三方弁を制御するコントローラと、
を含む請求項1に記載の電解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク内の液体を電解槽に供給して電解を行う電解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電解装置においては、タンク内の電解液をポンプによって電解槽に供給して電解を行なっているが、電解装置の運転を停止する際には、電解槽の腐食を防止するため、電解槽から液体を排出するようになっている。
【0003】
下記特許文献1には、運転停止時に電解槽内の液体を重力により排出する電解装置が開示されている。この電解装置は、タンクと、タンクの上方に設置された電解槽と、電解槽の下方に接続された供給マニホールドと、電解槽の陽極室および陰極室の底部に設けられた供給ノズルと、供給ノズルと供給マニホールドとの間に設けられた供給チューブとを備える。そして、上記電解装置においては、運転停止時に電解槽内の液体を供給ノズルより供給チューブ、供給マニホールドを介してタンク内に重力によって回収するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電解槽内の液体を重力により排出させるには、タンクよりも上方に電解槽の排出口を設置しなければならない。このためには、相当の重量物である電解槽を高所に配置するための頑丈で大きな架台が必要となり、そのような架台の設置に高額な費用がかかるという問題がある。
【0006】
本発明の課題は、電解槽内の液体を簡易な構成でタンクに排出可能な電解装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上記課題を解決する以下の電解装置が提供される。すなわち、
「タンク内の液体を電解槽に供給して電解を行う電解装置であって、
ポンプと、
前記タンクと前記ポンプとを接続する第1の管路と、
前記ポンプと前記電解槽とを接続する第2の管路と、
前記第1の管路と前記第2の管路とを接続する第3の管路と、
前記第2の管路において前記第3の管路との接続部よりも前記ポンプ側に位置するポンプ側部分から前記タンクまで延びる第4の管路と、
前記第1の管路および前記第2の管路を介して前記タンクから前記電解槽へ前記ポンプによって液体を供給するための供給経路、または、前記第3の管路および前記第4の管路を介して前記電解槽から前記タンクへ前記ポンプによって液体を戻すための戻り経路のいずれかを選択するための選択手段と、
を備える電解装置」が提供される。
【0008】
前記選択手段は、前記第1の管路に設置された第1の開閉弁と、前記第2の管路に設置された第2の開閉弁と、前記第3の管路に設置された第3の開閉弁と、前記第4の管路に設置された第4の開閉弁と、前記第1の開閉弁、前記第2の開閉弁、前記第3の開閉弁および前記第4の開閉弁を制御するコントローラと、を含むのが好ましい。
【0009】
前記選択手段は、前記第1の管路に設置された第1の開閉弁と、前記第4の管路に設置された第2の開閉弁と、前記第2の管路と前記第3の管路との接続部に設置された三方弁と、前記第1の開閉弁、前記第2の開閉弁および前記三方弁を制御するコントローラと、を含む構成でもよい。
【0010】
前記選択手段は、前記第2の管路に設置された第1の開閉弁と、前記第4の管路に設置された第2の開閉弁と、前記第1の管路と前記第3の管路との接続部に設置された三方弁と、前記第1の開閉弁、前記第2の開閉弁および前記三方弁を制御するコントローラと、を含むのが好適である。
【0011】
前記選択手段は、前記第1の管路に設置された第1の開閉弁と、前記第3の管路に設置された第2の開閉弁と、前記第2の管路と前記第4の管路との接続部に設置された三方弁と、前記第1の開閉弁、前記第2の開閉弁および前記三方弁を制御するコントローラと、を含むのが望ましい。
【0012】
前記選択手段は、前記第1の管路と前記第3の管路との接続部に設置された第1の三方弁と、前記第2の管路と前記第4の管路との接続部に設置された第2の三方弁と、前記第1の三方弁および前記第2の三方弁を制御するコントローラと、を含み得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電解装置においては、運転時に供給経路を選択することにより、ポンプによってタンクから電解槽へ液体を供給し、運転を停止する際には、戻り経路を選択することにより、液体供給時に使用するポンプで電解槽からタンクへ液体を戻すことができる。つまり、運転時における電解槽への液体供給と、運転停止時における電解槽からの液体排出とを同一のポンプによって行うため、電解槽を高所に配置するための頑丈で大きな架台を要することなく、簡易な構成で電解槽内の液体をタンクに排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】
図1に示す電解装置における運転時の液体の流れを示すフロー図。
【
図3】
図1に示す電解装置において、運転を停止する際の液体の流れを示すフロー図。
【
図4】本発明に係る電解装置の第1の変形例を示すフロー図。
【
図5】
図4に示す電解装置における運転時の液体の流れを示すフロー図。
【
図6】
図4に示す電解装置において、運転を停止する際の液体の流れを示すフロー図。
【
図7】本発明に係る電解装置の第2の変形例を示すフロー図。
【
図8】
図7に示す電解装置における運転時の液体の流れを示すフロー図。
【
図9】
図7に示す電解装置において、運転を停止する際の液体の流れを示すフロー図。
【
図10】本発明に係る電解装置の第3の変形例を示すフロー図。
【
図11】
図10に示す電解装置における運転時の液体の流れを示すフロー図。
【
図12】
図10に示す電解装置において、運転を停止する際の液体の流れを示すフロー図。
【
図13】本発明に係る電解装置の第4の変形例を示すフロー図。
【
図14】
図13に示す電解装置における運転時の液体の流れを示すフロー図。
【
図15】
図13に示す電解装置において、運転を停止する際の液体の流れを示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る電解装置の好適実施形態について、
図1ないし
図3を参照しながら説明する。尚、以下に説明する実施の態様はあくまで本発明の一例であり、本発明が下記に説明する実施の態様に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で適宜変更可能である。
【0016】
(電解装置2)
電解装置2は、アルカリ水電解装置や食塩電解装置などとして使用され得る。
図1に示すとおり、電解装置2は、陽極室4aおよび陰極室4bを有する電解槽4と、電解槽4の陽極室4aに管路を介して接続された陽極液タンク6と、陽極室4aと陽極液タンク6との間の管路に配置された陽極液ポンプ8とを備える。陽極液タンク6は、陽極室4aに供給すべき陽極液を貯留するとともに、陽極室4aの上部から流出した陽極液(電解液)を受け入れる。
【0017】
電解装置2は、陽極室4aおよび陽極液タンク6を陽極液が循環する陽極液回路に加えて、陰極液が循環する陰極液回路(図示していない。)を有する。陰極液回路は、電解槽4の陰極室4bに管路を介して接続された陰極液タンクと、陰極室4bと陰極液タンクとの間の管路に配置された陰極液ポンプとを含む。ただし、陰極液回路の構成(ポンプや管路、弁、コントローラなど)は、陽極液回路の構成と同一でよいので、本明細書においては、主に陽極液回路について説明する。
【0018】
(第1~第4の管路L1~L4)
電解装置2の陽極液回路は、陽極液タンク6と陽極液ポンプ8とを接続する第1の管路L1と、陽極液ポンプ8と電解槽4とを接続する第2の管路L2と、第1の管路L1と第2の管路L2とを接続する第3の管路L3とを含む。第1の管路L1は、陽極液タンク6の下部(陽極液タンク6内の液面よりも下側)と陽極液ポンプ8の吸入ポート8aとを接続している。第2の管路L2は、陽極液ポンプ8の吐出ポート8bと電解槽4の陽極室4aの下部とを接続している。
【0019】
陽極液回路には、第2の管路L2において第3の管路L3との接続部10よりも陽極液ポンプ8側に位置するポンプ側部分から、陽極液タンク6の下部(陽極液タンク6内の液面よりも下側)まで延びる第4の管路L4が設けられている。
【0020】
また、電解槽4の陽極室4aの上部からは、陽極液タンク6まで延びる第5の管路L5が設けられている。第5の管路L5は、陽極液タンク6の手前で、陽極液タンク6内の液面よりも上側に接続される上側部分L5aと、陽極液タンク6内の液面よりも下側に接続される下側部分L5bとに分岐している。
【0021】
(選択手段12)
電解装置2は、さらに、第1の管路L1および第2の管路L2を介して陽極液タンク6から電解槽4の陽極室4aへ陽極液ポンプ8によって陽極液を供給するための供給経路、または、第3の管路L3および第4の管路L4を介して電解槽4の陽極室4aから陽極液タンク6へ陽極液ポンプ8によって陽極液を戻すための戻り経路のいずれかを選択するための選択手段12を備えている。
【0022】
図示の実施形態の選択手段12は、第1の管路L1に設置された第1の開閉弁V1と、第2の管路L2に設置された第2の開閉弁V2と、第3の管路L3に設置された第3の開閉弁V3と、第4の管路L4に設置された第4の開閉弁V4と、第1~第4の開閉弁V1~V4を制御するコントローラ20とを含む。なお、第5の管路L5の下側部分L5bには、第5の開閉弁V5が設置されており、第5の開閉弁V5もコントローラ20によって制御されるようになっている。
【0023】
第1の開閉弁V1は、第1の管路L1と第3の管路L3との接続部14よりも陽極液タンク6側に位置づけられている。第2の開閉弁V2は、第2の管路L2と第3の管路L3との接続部10と、第2の管路L2と第4の管路L4との接続部16と、の間に配置されている。なお、第3の開閉弁V3は、接続部10と接続部14との間(つまり、第3の管路L3)に位置し、第4の開閉弁V4は、接続部16と陽極液タンク6の下部(つまり、第4の管路L4)に位置していればよい。
【0024】
第1~第5の開閉弁V1~V5は、ゲート弁またはバタフライ弁などの公知の開閉弁でよい。また、第1~第5の開閉弁V1~V5には、弁体を作動させるためのアクチュエータ(たとえば、エアシリンダや電動モータ)が装着されており、各アクチュエータがコントローラ20に電気的に接続されている。
【0025】
コントローラ20は、処理装置および記憶装置を有するコンピュータから構成されている。コントローラ20は、第1~第5の開閉弁V1~V5の作動および陽極液ポンプ8の作動を制御するようになっている。なお、コントローラ20は、陽極液回路の第1~第5の開閉弁V1~V5および陽極液ポンプ8だけでなく、陰極液回路の第1~第5の開閉弁および陰極液ポンプの作動も制御するようになっていてもよい。
【0026】
(電解装置2の動作)
次に、上述したとおりの電解装置2の動作について説明する。
【0027】
(電解装置2の運転時)
電解装置2の運転時には、選択手段12によって供給経路を選択する。供給経路を選択すると、コントローラ20は、第1・第2・第5の開閉弁V1、V2、V5を開け、第3・第4の開閉弁V3、V4を閉じるとともに、陽極液ポンプ8を作動させる。
【0028】
これによって、
図2に示すとおり、第1の管路L1を通って陽極液タンク6から陽極液ポンプ8の吸入ポート8aに陽極液が流入する。そして、陽極液ポンプ8の吐出ポート8bから吐出された陽極液は、第2の管路L2を通って電解槽4の陽極室4aに流入する。他方、第3・第4の開閉弁V3、V4は閉じられているので、第3・第4の管路L3、L4に陽極液が流れることはない。なお、
図2において供給経路を灰色の太線で示している。
【0029】
また、電解装置2の運転時には、陰極液回路においても、陽極液回路と同様に、第1・第2・第5の開閉弁が開放され、第3・第4の開閉弁が閉塞されるとともに、陰極液ポンプが作動する。そして、陰極液回路における第1の管路を通って、陰極液タンクから陰極液ポンプの吸入ポートに陰極液が流入し、陰極液ポンプの吐出ポートから吐出された陰極液が、陰極液回路における第2の管路を通って電解槽4の陰極室4bに流入する。
【0030】
そして、電解槽4において電解が行われると、陽極室4aにおいて発生した気体が第5の管路L5を介して陽極室4aの上部から陽極液タンク6に陽極液とともに送られる。なお、第5の管路L5の上側部分L5aを気体が通り、第5の管路L5の下側部分L5bを陽極液が通る。また、陰極室4bにおいて発生した気体は、陰極液回路における第5の管路を介して、陰極室4bの上部から陰極液タンクに陰極液とともに送られる。
【0031】
(電解装置2の運転を停止する際)
他方、電解装置2の運転を停止する際は、選択手段12によって戻り経路を選択する。そうすると、コントローラ20は、第1・第2・第5の開閉弁V1、V2、V5を閉じ、第3・第4の開閉弁V3、V4を開ける。
【0032】
これによって、
図3に示すとおり、第3の管路L3を通って陽極室4aの下部から陽極液ポンプ8の吸入ポート8aに陽極液が流入する。そして、陽極液ポンプ8の吐出ポート8bから吐出された陽極液は、第4の管路L4を通って陽極液タンク6の下部に流入する。なお、
図3において戻り経路を灰色の太線で示している。
【0033】
電解装置2の運転を停止する際は、第1の開閉弁V1が閉じられているので、陽極液ポンプ8の吸入ポート8aに、陽極液タンク6内の陽極液が供給されることはない。また、第2の開閉弁V2が閉じられているため、陽極液ポンプ8の吐出ポート8bから吐出された陽極液が、電解槽4の陽極室4aに流入することはない。
【0034】
また、陰極液回路においても、陽極液回路と同様に、第3・第4の開閉弁が開放されるとともに、第1・第2・第5の開閉弁が閉塞される。そして、陰極液回路における第3の管路を通って陰極室4bの下部から陰極液ポンプの吸入ポートに陰極液が流入し、陰極液ポンプの吐出ポートから吐出された陰極液が、陰極液回路における第4の管路を通って陰極液タンクの下部に流入する。
【0035】
上述したとおり、電解装置2においては、運転時に供給経路を選択することにより、陽極液ポンプ8によって陽極液タンク6から電解槽4の陽極室4aへ陽極液を供給し、運転を停止する際には、戻り経路を選択することにより、液体供給時に使用する陽極液ポンプ8によって電解槽4の陽極室4aから陽極液タンク6へ陽極液を戻すことが可能である。
【0036】
すなわち、電解装置2においては、運転時における電解槽4の陽極室4aへの陽極液の供給と、運転停止時における電解槽4からの陽極液の排出を同一の陽極液ポンプ8によって行うため、電解槽4を高所に配置するための頑丈で大きな架台を要することなく、簡易な構成で電解槽4の陽極室4a内の陽極液を陽極液タンク6に排出することができる。この効果は、陽極液回路だけでなく、陰極液回路においても同様である。
【0037】
次に、本発明に係る電解装置2の第1の変形例について、
図4ないし
図6を参照しつつ説明する。
【0038】
図4に示す第1の変形例においては、第2の管路L2と第3の管路L3との接続部に、コントローラ20によって作動制御される三方弁TVが設置されている。このため、第1の変形例においては、
図1に示す回路とは異なり、第2・第3の管路L2、L3に開閉弁が設置されていなくてもよい。そこで、第1の変形例においては、第4の管路L4に設置されている開閉弁を「第2の開閉弁V2」と呼び、第5の管路L5に設置されている開閉弁を「第3の開閉弁V3」と呼ぶことにする。
【0039】
なお、第1の変形例における第2の開閉弁V2は、
図1に示す回路における第4の開閉弁V4と実質的に同一でよく、また、第1の変形例における第3の開閉弁V3は、
図1に示す回路における第5の開閉弁V5と実質的に同一でよい。
【0040】
(第1の変形例の運転時)
図4に示す第1の変形例において、電解装置2の運転時に供給経路が選択されると、コントローラ20は、第1・第3の開閉弁V1、V3を開け、第2の開閉弁V2を閉じるとともに、陽極液ポンプ8を作動させる。
【0041】
さらに、供給経路が選択された際には、第2の管路L2における三方弁TVよりも陽極液ポンプ8側に位置するポンプ側部分と、第2の管路L2における三方弁TVよりも電解槽4側に位置する電解槽側部分とを連通させ、第2の管路L2と第3の管路L3との連通を遮断するように、コントローラ20によって三方弁TVが制御される。
【0042】
これによって、
図5に示すとおり、第1の管路L1を通って陽極液タンク6から陽極液ポンプ8の吸入ポート8aに陽極液が流入し、陽極液ポンプ8の吐出ポート8bから吐出された陽極液が第2の管路L2を通って電解槽4の陽極室4aに流入する。他方、三方弁TVおよび第2の開閉弁V2によって、第3・第4の管路L3、L4への陽極液の流入が阻止される。
【0043】
(第1の変形例の運転を停止する際)
他方、
図4に示す第1の変形例において、電解装置2の運転を停止する際に、戻り経路が選択されると、コントローラ20は、第1・第3の開閉弁V1、V3を閉じ、第2の開閉弁V2を開ける。
【0044】
さらに、戻り経路が選択された際には、第2の管路L2における三方弁TVよりも陽極液ポンプ8側に位置するポンプ側部分と、第2の管路L2における三方弁TVよりも電解槽4側に位置する電解槽側部分との連通を遮断し、第2の管路L2における電解槽側部分と第3の管路L3とを連通させるように、コントローラ20によって三方弁TVが制御される。
【0045】
これによって、
図6に示すとおり、第3の管路L3を通って陽極室4aの下部から陽極液ポンプ8の吸入ポート8aに陽極液が流入し、陽極液ポンプ8の吐出ポート8bから吐出された陽極液は、第4の管路L4を通って陽極液タンク6の下部に流入する。
【0046】
次に、本発明に係る電解装置2の第2の変形例について、
図7ないし
図9を参照しつつ説明する。
【0047】
図7に示す第2の変形例においては、第1の管路L1と第3の管路L3との接続部に、コントローラ20によって作動制御される三方弁TVが設置されている。このため、第2の変形例においては、
図1に示す回路とは異なり、第1・第3の管路L1、L3に開閉弁が設置されていなくてもよい。そこで、第2の変形例においては、第2の管路L2に設置されている開閉弁を「第1の開閉弁V1」と呼び、第4の管路L4に設置されている開閉弁を「第2の開閉弁V2」と呼び、第5の管路L5に設置されている開閉弁を「第3の開閉弁V3」と呼ぶことにする。
【0048】
(第2の変形例の運転時)
図7に示す第2の変形例において、電解装置2の運転時に供給経路が選択されると、コントローラ20は、第1・第3の開閉弁V1、V3を開け、第2の開閉弁V2を閉じるとともに、陽極液ポンプ8を作動させる。
【0049】
さらに、供給経路が選択された際には、第1の管路L1における三方弁TVよりも陽極液タンク6側に位置するタンク側部分と、第1の管路L1における三方弁TVよりも陽極液ポンプ8側に位置するポンプ側部分とを連通させ、第1の管路L1と第3の管路L3との連通を遮断するように、コントローラ20によって三方弁TVが制御される。
【0050】
これによって、
図8に示すとおり、第1の管路L1を通って陽極液タンク6から陽極液ポンプ8の吸入ポート8aに陽極液が流入し、陽極液ポンプ8の吐出ポート8bから吐出された陽極液が第2の管路L2を通って電解槽4の陽極室4aに流入する。他方、三方弁TVおよび第2の開閉弁V2によって、第3・第4の管路L3、L4への陽極液の流入が阻止される。
【0051】
(第2の変形例の運転を停止する際)
他方、
図7に示す第2の変形例において、電解装置2の運転を停止する際に、戻り経路が選択されると、コントローラ20は、第1・第3の開閉弁V1、V3を閉じ、第2の開閉弁V2を開ける。
【0052】
さらに、戻り経路が選択された際には、第1の管路L1における三方弁TVよりも陽極液タンク6側に位置するタンク側部分と、第1の管路L1における三方弁TVよりも陽極液ポンプ8側に位置するポンプ側部分との連通を遮断し、第1の管路L1におけるポンプ側部分と第3の管路L3とを連通させるように、コントローラ20によって三方弁TVが制御される。
【0053】
これによって、
図9に示すとおり、第3の管路L3を通って陽極室4aの下部から陽極液ポンプ8の吸入ポート8aに陽極液が流入し、陽極液ポンプ8の吐出ポート8bから吐出された陽極液は、第4の管路L4を通って陽極液タンク6の下部に流入する。
【0054】
次に、本発明に係る電解装置2の第3の変形例について、
図10ないし
図12を参照しつつ説明する。
【0055】
図10に示す第3の変形例においては、第2の管路L2と第4の管路L4との接続部に、コントローラ20によって作動制御される三方弁TVが設置されている。このため、第3の変形例においては、
図1に示す回路とは異なり、第2・第4の管路L2、L4に開閉弁が設置されていなくてもよい。そこで、第3の変形例においては、第3の管路L3に設置されている開閉弁を「第2の開閉弁V2」と呼び、第5の管路L5に設置されている開閉弁を「第3の開閉弁V3」と呼ぶことにする。
【0056】
(第3の変形例の運転時)
図10に示す第3の変形例において、電解装置2の運転時に供給経路が選択されると、コントローラ20は、第1・第3の開閉弁V1、V3を開け、第2の開閉弁V2を閉じるとともに、陽極液ポンプ8を作動させる。
【0057】
さらに、供給経路が選択された際には、第2の管路L2における三方弁TVよりも陽極液ポンプ8側に位置するポンプ側部分と、第2の管路L2における三方弁TVよりも電解槽4側に位置する電解槽側部分とを連通させ、第2の管路L2と第4の管路L4との連通を遮断するように、コントローラ20によって三方弁TVが制御される。
【0058】
これによって、
図11に示すとおり、第1の管路L1を通って陽極液タンク6から陽極液ポンプ8の吸入ポート8aに陽極液が流入し、陽極液ポンプ8の吐出ポート8bから吐出された陽極液が第2の管路L2を通って電解槽4の陽極室4aに流入する。他方、三方弁TVおよび第2の開閉弁V2によって、第3・第4の管路L3、L4への陽極液の流入が阻止される。
【0059】
(第3の変形例の運転を停止する際)
他方、
図10に示す第3の変形例において、電解装置2の運転を停止する際に、戻り経路が選択されると、コントローラ20は、第1・第3の開閉弁V1、V3を閉じ、第2の開閉弁V2を開ける。
【0060】
さらに、戻り経路が選択された際には、第2の管路L2における三方弁TVよりも陽極液ポンプ8側に位置するポンプ側部分と、第2の管路L2における三方弁TVよりも電解槽4側に位置する電解槽側部分との連通を遮断し、第2の管路L2におけるポンプ側部分と第4の管路L4とを連通させるように、コントローラ20によって三方弁TVが制御される。
【0061】
これによって、
図12に示すとおり、第3の管路L3を通って陽極室4aの下部から陽極液ポンプ8の吸入ポート8aに陽極液が流入し、陽極液ポンプ8の吐出ポート8bから吐出された陽極液は、第4の管路L4を通って陽極液タンク6の下部に流入する。
【0062】
次に、本発明に係る電解装置2の第4の変形例について、
図13ないし
図15を参照しつつ説明する。
【0063】
図13に示す第4の変形例においては、第1の管路L1と第3の管路L3との接続部に第1の三方弁TV1が設置され、第2の管路L2と第4の管路L4との接続部に第2の三方弁TV2が設置されており、第1・第2の三方弁TV1、TV2はコントローラ20によって作動制御されるようになっている。
【0064】
第4の変形例においては、
図1に示す回路とは異なり、第1~第4の管路L1~L4に開閉弁が設置されていなくてもよい。そこで、第4の変形例においては、第5の管路L5に設置されている開閉弁を、単に「開閉弁V」と呼ぶことにする。第4の変形例における開閉弁Vは、
図1に示す回路における第5の開閉弁V5と実質的に同一でよい。
【0065】
(第4の変形例の運転時)
図13に示す第4の変形例において、電解装置2の運転時に供給経路が選択されると、コントローラ20は、開閉弁Vを開けるとともに陽極液ポンプ8を作動させる。また、コントローラ20は、第1の三方弁TV1について、第1の管路L1における第1の三方弁TV1よりも陽極液タンク6側に位置するタンク側部分と、第1の管路L1における第1の三方弁TV1よりも陽極液ポンプ8側に位置するポンプ側部分とを連通させ、第1の管路L1と第3の管路L3との連通を遮断するように制御する。
【0066】
さらに、コントローラ20は、第2の三方弁TV2について、第2の管路L2における第2の三方弁TV2よりも陽極液ポンプ8側に位置するポンプ側部分と、第2の管路L2における第2の三方弁TV2よりも電解槽4側に位置する電解槽側部分とを連通させ、第2の管路L2と第4の管路L4との連通を遮断するように制御する。
【0067】
これによって、
図14に示すとおり、第1の管路L1を通って陽極液タンク6から陽極液ポンプ8の吸入ポート8aに陽極液が流入し、陽極液ポンプ8の吐出ポート8bから吐出された陽極液が第2の管路L2を通って電解槽4の陽極室4aに流入する。
【0068】
(第4の変形例の運転を停止する際)
他方、
図13に示す第4の変形例において、電解装置2の運転を停止する際に、戻り経路が選択されると、コントローラ20は、開閉弁Vを閉じるとともに、第1の三方弁TV1について、第1の管路L1におけるタンク側部分とポンプ側部分との連通を遮断し、第1の管路L1におけるポンプ側部分と第3の管路L3とを連通させるように制御する。
【0069】
また、コントローラ20は、第2の三方弁TV2について、第2の管路L2におけるポンプ側部分と電解槽側部分との連通を遮断し、第2の管路L2におけるポンプ側部分と第4の管路L4とを連通させるように制御する。
【0070】
これによって、
図15に示すとおり、第3の管路L3を通って陽極室4aの下部から陽極液ポンプ8の吸入ポート8aに陽極液が流入し、陽極液ポンプ8の吐出ポート8bから吐出された陽極液は、第4の管路L4を通って陽極液タンク6の下部に流入する。
【0071】
このように、
図4ないし
図6に示す第1の変形例、
図7ないし
図9に示す第2の変形例、
図10ないし
図12に示す第3の変形例、
図13ないし
図15に示す第4の変形例のいずれにおいても、運転時に供給経路を選択することにより、陽極液ポンプ8によって陽極液タンク6から電解槽4の陽極室4aへ陽極液を供給し、運転を停止する際には、戻り経路を選択することにより、液体供給時に使用する陽極液ポンプ8によって電解槽4の陽極室4aから陽極液タンク6へ陽極液を戻すことが可能である。
【0072】
したがって、
図4ないし
図6に示す第1の変形例、
図7ないし
図9に示す第2の変形例、
図10ないし
図12に示す第3の変形例、
図13ないし
図15に示す第4の変形例のいずれにおいても、運転時における電解槽4の陽極室4aへの陽極液の供給と、運転停止時における電解槽4からの陽極液の排出を同一の陽極液ポンプ8によって行うため、電解槽4を高所に配置するための頑丈で大きな架台を要することなく、簡易な構成で電解槽4の陽極室4a内の陽極液を陽極液タンク6に排出することができる。第1~第4の変形例の効果は、陽極液回路だけでなく、当然ながら陰極液回路においても同様である。
【符号の説明】
【0073】
2:電解装置
4:電解槽
4a:陽極室
4b:陰極室
6:陽極液タンク
8:陽極液ポンプ
8a:吸入ポート
8b:吐出ポート
10:第2の管路と第3の管路との接続部
12:選択手段
14:第1の管路と第3の管路との接続部
16:第2の管路と第4の管路との接続部
L1:第1の管路
L2:第2の管路
L3:第3の管路
L4:第4の管路
V1:第1の開閉弁
V2:第2の開閉弁
V3:第3の開閉弁
V4:第4の開閉弁
TV:三方弁(第1の変形例)
TV1:第1の三方弁(第2の変形例)
TV2:第2の三方弁(第2の変形例)