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特開2024-90635樹脂組成物、シーラント層、積層体及びリチウムイオン二次電池の外装材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090635
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】樹脂組成物、シーラント層、積層体及びリチウムイオン二次電池の外装材
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20240627BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20240627BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20240627BHJP
   C08F 255/02 20060101ALI20240627BHJP
   C08G 18/63 20060101ALI20240627BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240627BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240627BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20240627BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20240627BHJP
   H01M 50/129 20210101ALI20240627BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20240627BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L33/04
C08L51/06
C08F255/02
C08G18/63
B32B27/30 A
B32B15/08 Q
H01M50/121
H01M50/119
H01M50/129
H01M50/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206644
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】庄司 妙子
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J026
4J034
5H011
【Fターム(参考)】
4F100AK03
4F100AK03A
4F100AK25
4F100AK25A
4F100AK62
4F100AK62A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA02
4F100CA02A
4F100GB41
4F100JA04
4F100JA04A
4F100JA07
4F100JA07A
4F100JA11
4F100JA11A
4F100JK06
4F100JL12
4F100JL12A
4J002BB121
4J002BB151
4J002BG022
4J002BN031
4J002ER006
4J002FD146
4J002GF00
4J002GG02
4J002GQ00
4J002HA05
4J026AA13
4J026AC01
4J026BA27
4J026BB04
4J026DB02
4J026DB09
4J026DB13
4J026GA09
4J034BA03
4J034DA01
4J034DB05
4J034DB07
4J034DC50
4J034DP04
4J034DP18
4J034HA02
4J034HA06
4J034HC35
4J034JA01
4J034JA42
4J034QC03
4J034RA06
4J034RA14
5H011AA01
5H011AA02
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011KK02
5H011KK04
5H011KK05
(57)【要約】
【課題】金属箔層に対する密着性及び耐有機溶剤性に優れたシーラント層を形成できる樹脂組成物と、シーラント層、積層体及びリチウムイオン二次電池の外装材の提供。
【解決手段】シーラント層を形成するための樹脂組成物であって、アクリル樹脂A及びオレフィン樹脂Bを含む樹脂Cと、イソシアネート系架橋剤Dと、有機溶剤Eとを含み、前記アクリル樹脂Aは、(メタ)アクリル系単量体a1由来の構成単位と、水酸基含有単量体a2由来の構成単位とを含む、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーラント層を形成するための樹脂組成物であって、
アクリル樹脂A及びオレフィン樹脂Bを含む樹脂Cと、イソシアネート系架橋剤Dと、有機溶剤Eとを含み、
前記アクリル樹脂Aは、(メタ)アクリル系単量体a1由来の構成単位と、水酸基含有単量体a2由来の構成単位とを含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂Cの水酸基価が0.2~100mgKOH/gである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂Cにおける水酸基の1当量に対して、前記イソシアネート系架橋剤Dのイソシアネート基の割合が0.001~5当量である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記アクリル樹脂Aは、カルボキシ基含有単量体a3由来の構成単位を含まない、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記有機溶剤Eは、Hansen溶解度パラメーターにおける水素結合項δhの値が8以上である有機溶剤E1を含む、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記有機溶剤E1の含有量が、前記有機溶剤Eの総質量に対して10質量%以上である、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記オレフィン樹脂Bの重量平均分子量が2万~15万であり、かつ結晶融解熱量が5~50J/gである、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記オレフィン樹脂Bの融点が40~120℃である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記オレフィン樹脂Bの結晶化温度が10~60℃である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記オレフィン樹脂Bが、エチレン由来の構成単位及びプロピレン由来の構成単位の少なくとも一方を含み、
前記オレフィン樹脂Bを構成する全構成単位の合計質量Wbに対して、前記エチレン由来の構成単位と前記プロピレン由来の構成単位との合計質量の割合が50質量%以上である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記樹脂Cにおいて、前記(メタ)アクリル系単量体a1由来の構成単位及び前記水酸基含有単量体a2由来の構成単位の合計質量Waに対する、前記オレフィン樹脂Bを構成する全構成単位の合計質量Wbの質量比を表すWb/Waが20/80~90/10である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記オレフィン樹脂Bが、ポリプロピレン又はエチレン-プロピレン共重合体である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
非水ディスパージョンである、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物より形成される、シーラント層。
【請求項15】
基材層と、前記基材層上に積層された、請求項14に記載のシーラント層とを含む、積層体。
【請求項16】
基材層と、前記基材層上に積層された、請求項14に記載のシーラント層、及び金属箔層とを含む、積層体。
【請求項17】
請求項14に記載のシーラント層を備えた、リチウムイオン二次電池の外装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、シーラント層、積層体及びリチウムイオン二次電池の外装材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電量貯蔵装置、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等に用いられるリチウムイオン二次電池の需要が増加している。
リチウムイオン二次電池用の外装材としては、軽量であり、電池形状を自由に設計できるという観点から、多層構成のラミネートフィルムが用いられている。
例えば特許文献1には、ラミネートフィルムの構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/123164号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リチウムイオン二次電池には、薄型化や軽量化が求められており、外装材にも薄型化が求められている。外装材の主要部材である基材層、金属箔層、シーラント層をそれぞれ薄くすれば、外装材の総厚を薄くできる。
しかしながら、例えばアルミニウム箔を薄くしすぎるとピンホールが発生することがあるため、金属箔層を薄くすることには限界がある。基材層やシーラント層についても、必要な性能を維持しつつ薄膜化するには限界がある。
【0005】
例えば、接着剤層を介さずにシーラント層を金属箔層に積層することができれば、金属箔層とシーラント層との間に接着剤層を設ける必要がなくなるため、外装材を薄型化できる。その場合、シーラント層には、金属箔層に対する密着性が求められる。また、シーラント層は、リチウムイオン二次電池の電解液に接することから、シーラント層には有機溶剤に対する耐性も求められる。
これまで、金属箔層に対する密着性及び耐有機溶剤性に優れたシーラント層は一般に知られていない。
【0006】
本発明は、金属箔層に対する密着性及び耐有機溶剤性に優れたシーラント層を形成できる樹脂組成物と、シーラント層、積層体及びリチウムイオン二次電池の外装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1] シーラント層を形成するための樹脂組成物であって、アクリル樹脂A及びオレフィン樹脂Bを含む樹脂Cと、イソシアネート系架橋剤Dと、有機溶剤Eとを含み、前記アクリル樹脂Aは、(メタ)アクリル系単量体a1由来の構成単位と、水酸基含有単量体a2由来の構成単位とを含む、樹脂組成物。
[2] 前記樹脂Cの水酸基価が0.2~100mgKOH/gである、前記[1]の樹脂組成物。
[3] 前記樹脂Cにおける水酸基の1当量に対して、前記イソシアネート系架橋剤Dのイソシアネート基の割合が0.001~5当量である、前記[1]又は[2]の樹脂組成物。
[4] 前記アクリル樹脂Aは、カルボキシ基含有単量体a3由来の構成単位を含まない、前記[1]~[3]のいずれかの樹脂組成物。
[5] 前記有機溶剤Eは、Hansen溶解度パラメーターにおける水素結合項δhの値が8以上である有機溶剤E1を含む、前記[1]~[4]のいずれかの樹脂組成物。
[6] 前記有機溶剤E1の含有量が、前記有機溶剤Eの総質量に対して10質量%以上である、前記[5]の樹脂組成物。
[7] 前記オレフィン樹脂Bの重量平均分子量が2万~15万であり、かつ結晶融解熱量が5~50J/gである、前記[1]~[6]のいずれかの樹脂組成物。
[8] 前記オレフィン樹脂Bの融点が40~120℃である、前記[1]~[7]のいずれかの樹脂組成物。
[9] 前記オレフィン樹脂Bの結晶化温度が10~60℃である、前記[1]~[8]のいずれかの樹脂組成物。
[10] 前記オレフィン樹脂Bが、エチレン由来の構成単位及びプロピレン由来の構成単位の少なくとも一方を含み、前記オレフィン樹脂Bを構成する全構成単位の合計質量Wbに対して、前記エチレン由来の構成単位と前記プロピレン由来の構成単位との合計質量の割合が50質量%以上である、前記[1]~[9]のいずれかの樹脂組成物。
[11] 前記樹脂Cにおいて、前記(メタ)アクリル系単量体a1由来の構成単位及び前記水酸基含有単量体a2由来の構成単位の合計質量Waに対する、前記オレフィン樹脂Bを構成する全構成単位の合計質量Wbの質量比を表すWb/Waが20/80~90/10である、前記[1]~[10]のいずれかの樹脂組成物。
[12] 前記オレフィン樹脂Bが、ポリプロピレン又はエチレン-プロピレン共重合体である、前記[1]~[11]のいずれかの樹脂組成物。
[13] 非水ディスパージョンである、前記[1]~[12]のいずれかの樹脂組成物。
[14] 前記[1]~[13]のいずれかの樹脂組成物より形成される、シーラント層。
[15] 基材層と、前記基材層上に積層された、前記[14]のシーラント層とを含む、積層体。
[16] 基材層と、前記基材層上に積層された、前記[14]のシーラント層、及び金属箔層とを含む、積層体。
[17] 前記[14]のシーラント層を備えた、リチウムイオン二次電池の外装材。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金属箔層に対する密着性及び耐有機溶剤性に優れたシーラント層を形成できる樹脂組成物と、シーラント層、積層体及びリチウムイオン二次電池の外装材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書においては、以下の用語の定義を採用する。
「構成単位」とは、単量体に由来する構成単位、すなわち単量体が重合することによって形成された構成単位、又は重合体を処理することによって構成単位の一部が別の構造に変換された構成単位を意味する。
「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の総称を意味する。また「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の総称を意味する。
「~」で表される数値範囲は、~の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
本明細書に開示の含有量、種々の物性値、性状値の数値範囲は、その下限値及び上限値を任意に組み合わせて新たな数値範囲とすることができる。
【0010】
本発明の樹脂組成物は、シーラント層を形成するためのものであり、以下に示す樹脂Cと、イソシアネート系架橋剤Dと、有機溶剤Eとを含む。
樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、樹脂C、イソシアネート系架橋剤D及び有機溶剤Eに加えて、これら以外の成分(以下、「任意成分」ともいう。)をさらに含んでいてもよい。
【0011】
[樹脂C]
樹脂Cは、以下に示すアクリル樹脂A及びオレフィン樹脂Bを含む。
樹脂Cにおいて、アクリル樹脂A及びオレフィン樹脂Bは、混合物の状態で存在していてもよいし、アクリル樹脂Aの少なくとも一部と、オレフィン樹脂Bの少なくとも一部とが複合化して存在していてもよい。本明細書において、アクリル樹脂Aの少なくとも一部と、オレフィン樹脂Bの少なくとも一部とは複合化した樹脂を「アクリルオレフィン複合樹脂AB」という。
【0012】
<アクリル樹脂A>
アクリル樹脂Aは、(メタ)アクリル系単量体a1由来の構成単位と、水酸基含有単量体a2由来の構成単位とを含む。
アクリル樹脂Aは、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、必要に応じて、(メタ)アクリル系単量体a1及び水酸基含有単量体a2以外の単量体(以下、「他の単量体」ともいう。)由来の構成単位をさらに含んでいてもよい。
【0013】
((メタ)アクリル系単量体a1)
(メタ)アクリル系単量体a1(以下、「単量体a1」ともいう。)としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、i-ペンチル(メタ)アクリレート、n-へキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の直鎖もしくは分岐状の炭化水素骨格を有するアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環式骨格を有するアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等のグリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;フェノキシ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO付加物(メタ)アクリレート、o-ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸アンモニウム、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム等の(メタ)アクリル酸塩;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の環状エーテルを有する(メタ)アクリレート;N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドジアセトンアクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド誘導体;2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート・モノエタノールアミン塩、ジフェニル((メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、3-クロロ-2-アシッド・ホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッド・ホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アシッド・ホスホオキシポリオキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のリン酸基を有する単量体などが挙げられる。
これら単量体a1は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
これらの中でも、詳しくは後述するが、樹脂組成物が非水ディスパージョン組成物である場合、非水ディスパージョン組成物の分散安定性に優れ、分離が生じ難くなる観点から、単量体a1としては、直鎖もしくは分岐状の炭化水素骨格を有するアルキル(メタ)アクリレート及び脂環式骨格を有するアルキル(メタ)アクリレートのうちの少なくとも一つを含むことが好ましく、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びイソボルニル(メタ)アクリレートのうちの少なくとも一つを含むことがより好ましく、メチル(メタ)アクリレートとn-ブチル(メタ)アクリレートをともに含むことがさらに好ましい。
【0015】
(水酸基含有単量体a2)
水酸基含有単量体a2(以下、「単量体a2」ともいう。)としては、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、1,2-ジヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,2-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,2-ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,2-ジヒドロキシ5-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、1,1-ジヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,1-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,1-ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,2,3-トリヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,2,3-トリヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1,2-トリヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,1,2-トリヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の芳香環を有するヒドロキシ(メタ)アクリレート;ヒドロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド-プロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド-ポリテトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド-テトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリプロピレンオキシド-ポリテトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリプロピレンオキシド-ポリテトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、1,2-ジヒドロキシポリエチルオキシド(メタ)アクリレート、1,2-ジヒドロキシポリプロピレンオキシド(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;1,2,3-トリヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、1,1,2-トリヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のヒドロキシポリアルキレンオキシド(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
これら単量体a2は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
これらの中でも、後述の非水ディスパージョン組成物の分散安定性に優れ、分離が生じ難くなる観点から、単量体a2としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、少なくとも2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを含むことがより好ましい。
【0017】
(他の単量体)
他の単量体としては、単量体a1及び単量体a2の少なくとも一方と共重合可能な単量体、オレフィン樹脂Bにグラフト共重合可能な単量体などが挙げられる。
他の単量体の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-シアノアクリレート、ジシアノビニリデン、フマロニトリル等のシアン化ビニル単量体;アクリル酸、メタクリル酸、コハク酸モノ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、クロトン酸、イソクロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、等のカルボキシ基含有単量体;ビニルスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有単量体;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテル等の多官能単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系単量体;1,3-ブタジエン、イソプレン、2-クロロ-1、3-ブタジエン、クロロプレン等の共役ジエン単量体などが挙げられる。
これら他の単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
ただし、樹脂組成物より形成されるシーラント層の、金属箔層に対する密着性がより向上する観点から、他の単量体は、カルボキシ基含有単量体a3(以下、「単量体a3」ともいう。)を含まないことが好ましい。すなわち、アクリル樹脂Aは、単量体a3由来の構成単位を含まないことが好ましい。
なお、本明細書において、「耐有機溶剤性」とは、後述する有機溶剤Sに対する耐性のことである。
【0019】
アクリル樹脂Aは公知の製造方法で製造できる。アクリル樹脂Aの製造方法については特に制限はないが、例えば、単量体a1及び単量体a2と、必要に応じて他の単量体とをラジカル重合等の方法で重合して製造できる。
また、詳しくは後述するが、アクリル樹脂Aの製造は、オレフィン樹脂Bの存在下で行ってもよい。
【0020】
<オレフィン樹脂B>
オレフィン樹脂Bは、少なくとも1つのオレフィン系単量体b由来の構成単位を有する樹脂である。
オレフィン樹脂Bは、カルボキシ基、エポキシ基、イソシアネート基、スルホン酸基、及び反応性基(例えば水酸基、アミノ基等)を有していてもよい。前記反応性基は、カルボキシ基の酸無水物構造であってもよい。
【0021】
オレフィン系単量体b(以下、「単量体b」ともいう。)としては、例えばエチレン、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、ヘプテン-1、オクテン-1、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン等が挙げられる。
これら単量体bは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
オレフィン樹脂Bの具体例としては、単量体bの単独重合体;エチレンとプロピレンとの共重合体(以下、「エチレン-プロピレン共重合体」ともいう。);エチレン及びプロピレンの少なくとも一方と、エチレン及びプロピレンと共重合可能な単量体(例えば、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、ヘプテン-1、オクテン-1、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン等の炭素数4以上のα-オレフィン)との共重合体;前記炭素数4以上のα-オレフィンで例示した単量体からなる群から選択される2種以上のα-オレフィンの共重合体;炭素数2以上のα-オレフィンと、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のα-オレフィン以外の非芳香族系単量体との共重合体;炭素数2以上のα-オレフィンと、芳香族系単量体との共重合体又はその水素添加物;共役ジエンブロック共重合体又はその水素添加物等が挙げられる。
【0023】
オレフィン樹脂Bを構成する全ての単量体由来の構成単位(以下、「全構成単位」ともいう。)の総質量(以下、「合計質量Wb」ともいう。)に対して、単量体b由来の構成単位の質量割合は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。単量体bに由来する構成単位の質量割合が高いほど、樹脂組成物より形成されるシーラント層同士の密着力が向上する傾向にある。
【0024】
オレフィン樹脂Bは、エチレン由来の構成単位及びプロピレン由来の構成単位の少なくとも一方を含むことが好ましい。オレフィン樹脂Bを構成する全構成単位の合計質量Wbに対して、エチレン由来の構成単位とプロピレン由来の構成単位との合計質量の割合が50質量%以上であることが好ましく、65質量%以上がより好ましく、75質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。
【0025】
オレフィン樹脂Bは、プロピレン由来の構成単位を有するプロピレン系共重合体が好ましく、その中でも特に、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体がより好ましく、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体がさらに好ましい。
プロピレン系重合体を構成する全構成単位の総質量(合計質量)に対して、プロピレン由来の構成単位の質量割合は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
【0026】
オレフィン樹脂Bは、ランダム共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体、直鎖状、分岐状等のいかなる構造を有する樹脂であってもよい。
【0027】
オレフィン樹脂Bの重量平均分子量Mw(以下、「Mw」ともいう。)は2万~15万が好ましく、3万~12万がより好ましく、4万~9万がさらに好ましい。オレフィン樹脂BのMwが上記下限値以上であれば、樹脂組成物より形成されるシーラント層同士の密着力が向上する。オレフィン樹脂BのMwが上記上限値以下であれば、後述の非水ディスパージョン組成物の分散安定性に優れ、分離が生じ難い。
オレフィン樹脂BのMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の値である。
【0028】
オレフィン樹脂Bの結晶融解熱量は、5~50J/gが好ましく、10~40J/gがより好ましく、12~30J/gがさらに好ましい。結晶融解熱量が大きいほど樹脂の結晶化度が高いことを示す。オレフィン樹脂Bの結晶融解熱量が上記下限値以上であれば、樹脂組成物より形成されるシーラント層同士の密着力が向上する。オレフィン樹脂Bの結晶融解熱量が上記上限値以下であれば、後述の非水ディスパージョン組成物の分散安定性に優れ、分離が生じ難い。
【0029】
オレフィン樹脂Bの融点Tm(以下、「Tm」ともいう。)は、40~120℃が好ましく、50~100℃がより好ましく、60~90℃がさらに好ましい。オレフィン樹脂Bの融点が上記下限値以上であれば、基材に樹脂組成物を塗工した後のブロッキング性に優れる。オレフィン樹脂Bの融点が上記上限値以下であれば、後述の非水ディスパージョン組成物の分散安定性に優れ、分離が生じ難い。
【0030】
オレフィン樹脂Bの結晶化温度は、10~60℃が好ましく、15~55℃がより好ましく、20~50℃がさらに好ましい。オレフィン樹脂Bの結晶化温度が上記下限値以上であれば、基材に樹脂組成物を塗工した後のブロッキング性に優れる。オレフィン樹脂Bの結晶化温度が上記上限値以下であれば、後述の非水ディスパージョン組成物の分散安定性に優れ、分離が生じ難い。
【0031】
本発明において、結晶融解熱量、融点及び結晶化温度は、示差走査熱量測定(DSC)で測定した値を意味する。例えば、これらは示差走査熱量計(例えばセイコーインスツルメンツ株式会社製の製品名「DSC6200」等)を使用して、以下の測定方法(I)により求めることができる。
(測定方法(I))
試料(約3~5mg)を精秤し専用のアルミパンに入れる。200℃で試料を融解後、10℃/minの速度で0℃まで降温した後に、10℃/minで200℃まで昇温することにより融解曲線を得て、最後の昇温段階における主吸熱ピークのピークトップ温度を融点として求める。また、そのピークとベースラインで囲まれた面積から算出される熱量を試料の重量で割ったものを結晶融解熱量(joule/g)とする。また、降温段階及び最後の昇温段階における主発熱ピークのピークトップ温度を結晶化温度として求める。
【0032】
オレフィン樹脂Bは公知の製造方法で製造できる。オレフィン樹脂Bの製造方法については特に制限はないが、例えば、単量体bをラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合及び配位重合等の方法で重合して製造できる。これらの重合方法は、それぞれリビング重合的であってもよい。
オレフィン樹脂Bとしては、市販品を用いることもできる。
【0033】
オレフィン樹脂Bが反応性基を有する場合、その反応性基の含有量は、オレフィン樹脂Bの1g当たり、1mmol/g以下が好ましく、0.5mmol/g以下がより好ましく、0.3mmol/g以下がさらに好ましい。
【0034】
<アクリルオレフィン複合樹脂AB>
アクリルオレフィン複合樹脂AB(以下、「複合樹脂AB」ともいう。)は、アクリル樹脂Aの少なくとも一部と、オレフィン樹脂Bの少なくとも一部とが複合化した樹脂である。複合樹脂ABは、具体的には、オレフィン樹脂Bに、単量体a1由来の構成単位及び単量体a2由来の構成単位を含む重合鎖が化学的に結合した構造を有することが好ましい。すなわち、複合樹脂ABは、単量体a1由来の構成単位及び単量体a2由来の構成単位と、オレフィン樹脂B由来の構造を有することが好ましい。
なお、オレフィン樹脂Bに結合した重合鎖は、樹脂C中のアクリル樹脂Aとみなす。同様に、重合鎖が結合したオレフィン樹脂Bは、樹脂C中のオレフィン樹脂Bとみなす。
【0035】
<割合>
樹脂C中の、単量体a1由来の構成単位及び単量体a2由来の構成単位の合計質量Waに対する、オレフィン樹脂Bを構成する全構成単位の合計質量Wbの質量比を表すWb/Waは、20/80~90/10が好ましく、30/70~80/20がより好ましく、40/60~75/25がさらに好ましい。質量比が上記範囲内であれば、樹脂組成物より形成されるシーラント層間及び金属箔層への密着性がより高まる。加えて、後述の非水ディスパージョン組成物の分散安定性に優れ、分離が生じ難い。
【0036】
樹脂Cに存在する全ての単量体由来の構成単位の総質量(合計質量)に対して、合計質量Waと合計質量Wbの合計は60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%でもよい。
【0037】
樹脂Cに存在する全ての単量体由来の構成単位の総質量(合計質量)に対して、単量体a1由来の構成単位の合計質量の割合は、5~80質量%が好ましく、15~70質量%がより好ましく、20~60質量%がさらに好ましい。単量体a1由来の構成単位の合計質量の割合が上記下限値以上であれば、後述の非水ディスパージョン組成物の分散安定性に優れ、分離が生じ難い。単量体a1由来の構成単位の合計質量の割合が上記上限値以下であれば、樹脂組成物より形成されるシーラント層間の密着性が向上する。
【0038】
樹脂Cに存在する全ての単量体由来の構成単位の総質量(合計質量)に対して、単量体a2由来の構成単位の合計質量の割合は、0.05~25質量%が好ましく、0.1~20質量%がより好ましく、0.5~10質量%がさらに好ましい。単量体a2由来の構成単位の合計質量の割合が上記下限値以上であれば、樹脂組成物より形成されるシーラント層の耐有機溶剤性がより向上する。単量体a2由来の構成単位の合計質量の割合が上記上限値以下であれば、後述の非水ディスパージョン組成物の分散安定性に優れ、分離が生じ難い。
【0039】
<物性>
樹脂Cの水酸基価は、0.2~100mgKOH/gが好ましく、0.4~85mgKOH/gがより好ましく、2~50mgKOH/gがさらに好ましい。樹脂Cの水酸基価が上記下限値以上であれば、樹脂組成物より形成されるシーラント層の耐有機溶剤性がより向上する。樹脂Cの水酸基価が上記上限値以下であれば、後述の非水ディスパージョン組成物の分散安定性に優れ、分離が生じ難い。
樹脂Cの水酸基価は、樹脂Cの1g当たりの水酸基数に相当する水酸化カリウムの量をミリグラム数で表したものであり、具体的には下記式(1)より求められる。
水酸基価(mgKOH/g)=(f2×M2/M/Mw2×[KOH]×1000) ・・・(1)
(式(1)中、f2は単量体a2の水酸基の数であり、M2は単量体a2の質量(g)であり、Mは樹脂Cの質量(g)であり、Mw2は単量体a2の分子量(数平均分子量)であり、[KOH]は水酸化カリウムの分子量である。)
【0040】
<樹脂Cの製造方法>
樹脂Cは、例えばアクリル樹脂Aとオレフィン樹脂Bとを混合することで得られる。
また、例えばオレフィン樹脂Bの存在下で、単量体a1及び単量体a2を含む単量体混合物maをラジカル重合して、樹脂Cを製造してもよい。単量体混合物maは、必要に応じて、上述した他の単量体を含んでもよい。この製造方法によれば、単量体混合物ma中の単量体のみが重合した反応生成物であるアクリル樹脂Aと、未反応のオレフィン樹脂Bとを含む樹脂C、又は、アクリル樹脂A及びオレフィン樹脂Bに加えて複合樹脂ABを含む樹脂Cが得られる。また、このようにして得られる樹脂Cに含まれる複合樹脂ABは、オレフィン樹脂Bをコア部とし、アクリル樹脂Aをシェル部とするコアシェル構造を有している。
【0041】
[イソシアネート系架橋剤D]
イソシアネート系架橋剤とは、イソシアネート基を有する架橋剤のことである。
イソシアネート系架橋剤Dとしては、1分子内にイソシアネート基を2つ以上有するポリイソシアネートが好ましい。
ポリイソシアネートとしては、例えばエチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;ノルボルナンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート体、アダクト体、ビウレット体などが挙げられる。
これらポリイソシアネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
これらのなかでも、イソシアネート系架橋剤Dとしては、ポットライフや硬化性に優れる観点から、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、ヘキサメチレンジイソシアネートの2官能型がより好ましい。
【0043】
イソシアネート系架橋剤Dとしては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、旭化成株式会社製のヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:「デュラネートTPA-100」)、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体(商品名:「デュラネートP301-75E」)、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体(商品名:「デュラネート24A-100」)、ヘキサメチレンジイソシアネートの2官能型(商品名:「デュラネートA-201H」)等が挙げられる。
【0044】
イソシアネート系架橋剤Dの含有量は、樹脂Cにおける水酸基の1当量に対して、イソシアネート系架橋剤Dのイソシアネート基が0.001~5当量となる量が好ましく、より好ましくは0.01~3当量となる量であり、さらに好ましくは0.05~1.2当量となる量である。イソシアネート系架橋剤Dの含有量が上記下限値以上であれば、樹脂組成物より形成されるシーラント層の耐有機溶剤性がより向上する。イソシアネート系架橋剤Dの含有量が上記上限値以下であれば、シーラント層間の密着性が向上する。
【0045】
[有機溶剤E]
有機溶剤Eとしては、樹脂Cを溶解又は分散安定化させる有機溶剤が好ましい。
有機溶剤Eとしては、例えばキシレン、トルエン等の芳香族炭化水素;メチルシクロシクロヘキサン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-プロピル、酢酸i-ブチル等のエステル;メタノール、エタノール、n-ブタノール、シクロヘキサノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、i-ブタノール、t-ブタノール、n-ヘキサノール等のアルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエステル;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル;n-オクタン、i-オクタン、n-ヘプタン、n-ヘキサン、n-ペンタン、アイソパーE(エクソンモービル社製)等の炭化水素;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテルなどが挙げられる。
これら有機溶剤Eは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
樹脂組成物の液安定性が向上する観点から、有機溶剤Eは、Hansen溶解度パラメーターにおける水素結合項δhの値が8以上である有機溶剤E1を含むことが好ましい。
有機溶剤E1としては、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(δh:9.8)、i-ブタノール(δh:15.9)等が挙げられる。
これら有機溶剤E1は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
有機溶剤E1のδhは8以上であり、9以上が好ましく、9.5以上がより好ましい。
有機溶剤E1のδhの上限は、液分散安定性の点で20以下が好ましく、19以下がより好ましい。
有機溶剤E1の、Hansen溶解度パラメーターにおける分散力項δdは10~20が好ましく、13~18がより好ましい。また、極性項δpは0~15が好ましく、3~10がより好ましい。
【0048】
なお、Hansen溶解度パラメーター(HSP)は、ある物質が他のある物質にどのくらい溶けるのかという溶解性を表す指標である。HSPは、ヒルデブランド(Hildebrand)によって導入された溶解度パラメーターを、分散力項δd、極性項δp、水素結合項δhの3成分に分割し、三次元空間に表したものである。分散力項δdは分散力による効果、極性項δpは双極子間力による効果、水素結合項δhは水素結合力による効果を示し、
δd: 分子間の分散力に由来するエネルギー
δp: 分子間の極性力に由来するエネルギー
δh: 分子間の水素結合力に由来するエネルギー
と、表記される。(ここで、それぞれの単位はMPa0.5である。)
分散力項δd、極性項δp、水素結合項δhは、Hansen Solubility Paramet ers:A User’s Handbook,CRC Press,Boca Raton FL,2007を元にしたソフトウェアパッケージHSPiP 5th Edition 5.3.06により算出できる。
【0049】
有機溶剤E1の含有量は、有機溶剤Eの総質量に対して10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。上限は100質量%でもよく、100質量%未満でもよい。有機溶剤E1の含有量が上記下限値以上であれば、樹脂組成物の液安定性がより向上する。
有機溶剤Eは、有機溶剤E1と、有機溶剤E1以外の有機溶剤(以下、「有機溶剤E2」ともいう。)との混合溶剤であってもよい。
【0050】
有機溶剤Eの含有量は、樹脂組成物の総質量に対して10~85質量%が好ましく、20~70質量%がより好ましく、30~60質量%がさらに好ましい。有機溶剤Eの含有量が上記範囲内であれば、樹脂組成物の取扱い性が良好である。
【0051】
[任意成分]
任意成分は、樹脂C、イソシアネート系架橋剤D及び有機溶剤E以外の成分である。
任意成分としては、例えば、樹脂C以外の樹脂(以下、「他の樹脂」ともいう。)、添加剤等が挙げられる。
【0052】
他の樹脂としては、例えばポリスチレン等のポリ芳香族ビニル化合物;ポリエステル樹脂;ポリウレタン樹脂;アルキッド樹脂;エポキシ樹脂;ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂;塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂等の塩化ビニル酢酸ビニル共重合系樹脂等が挙げられる。
これら他の樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
添加剤としては、例えば、カーボンブラック、フェライト等の導電性付与剤;無機充填剤;滑剤;可塑剤;有機過酸化物;アルミペースト、マイカ等の光輝剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;耐候性付与剤;耐放射線性付与剤;熱安定性付与剤;表面調整剤;架橋剤;硬化触媒;顔料沈降防止剤;シランカップリング剤等が挙げられる。
これら添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
[樹脂組成物の製造方法]
樹脂組成物は、例えばアクリル樹脂A及びオレフィン樹脂Bを含む樹脂Cと、イソシアネート系架橋剤Dと、有機溶剤Eと、必要に応じて任意成分とを混合することで得られる。
【0055】
また、有機溶剤Eにオレフィン樹脂Bを溶解させた溶液中で、ラジカル重合開始剤の存在下、単量体a1及び単量体a2を含む単量体混合物maをラジカル重合反応させた後、得られた反応液に、イソシアネート系架橋剤Dと必要に応じて任意成分とを添加して、樹脂組成物を製造してもよい。さらに、ラジカル重合反応後の反応液に、必要に応じて有機溶剤Eを添加して固形分濃度を調整してもよい。
なお、ラジカル重合反応後の反応液に固化が生じた場合は、50℃以上の温度で再加熱して液化させてもよい。
【0056】
ラジカル重合開始剤としては、例えば有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。これらの中でも、有機過酸化物が好ましい。
これらラジカル重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
有機過酸化物の具体例としては、o-メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス-3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレート)、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシイソノナノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、1,6-ジ-(t-ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソナノエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルカーボネート等が挙げられる。
アゾ化合物の具体例としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)等が挙げられる。
【0058】
これらの中でも、水素引き抜き能の高いラジカル重合開始剤であるジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネートが好ましい。
【0059】
ここでいう前記水素引き抜き能とは、有機過酸化物から生成するラジカル種が関与する反応の一つである水素引き抜き反応の生じ易さを示す指標を意味する。
なお、有機過酸化物の水素引き抜き能は、各種文献(例えば、Polymer Journal,29,366(1997)、Polymer Journal,29,940(1997)及びPolymer Journal,29,733(1997)等)に記載の方法により測定することができる。
【0060】
一般的に、水素引き抜き能の高い有機過酸化物を用いたビニル単量体の重合においては、生成するラジカル種がビニル単量体への付加反応を経るビニル単量体の重合反応が起こりやすい。従って水素引き抜き能が高いラジカル重合開始剤を用いて、オレフィン樹脂Bを含む溶液中で、単量体a1及び単量体a2を含む単量体混合物maをラジカル重合反応させることで、オレフィン樹脂Bに単量体a1及び単量体a2を含む重合鎖が化学的に結合した構造を有する複合樹脂Cを効率的に得ることができる。
【0061】
前記ラジカル重合開始剤の使用量は、単量体a1及び単量体a2を含む単量体混合物maと、オレフィン樹脂Bとの合計100質量部に対して、0.0001~10質量部が好ましく、0.01~5質量部がより好ましく、0.1~2質量部がさらに好ましい。ラジカル重合開始剤の使用量が多いほど、樹脂組成物より形成されるシーラント層の金属箔層に対する密着性が向上する傾向にある。ラジカル重合開始剤の使用量が少ないほど、後述の非水ディスパージョン組成物の分散安定性に優れ、分離が生じ難い傾向にある。
【0062】
[樹脂組成物の固形分量]
樹脂組成物の総質量に対する固形分の含有量(固形分含有量)は、5~80質量%が好ましく、10~70質量%がより好ましく、20~60質量%がさらに好ましい。樹脂組成物の固形分含有量が上記範囲内であれば、樹脂組成物の取り扱い性が良好である。
本明細書において、固形分含有量は、「100(質量%)-樹脂組成物中の有機溶剤Eの含有量(質量%)」で算出した値である。樹脂組成物中の有機溶剤Eの含有量は、常圧で加熱乾燥させることにより測定した値である。
【0063】
[樹脂組成物の粘度]
樹脂組成物の25℃における粘度は100~20000mPa・sが好ましく、300~15000mPa・sがより好ましく、500~10000mPa・sがさらに好ましい。樹脂組成物の粘度が上記範囲内であれば、樹脂組成物の取り扱い性が良好である。
本明細書において、粘度は樹脂組成物を25℃に調温し、B型粘度計を用いた回転粘度計法で回転数12rpmにより測定した値である。
【0064】
[樹脂組成物の形態]
樹脂組成物は、樹脂Cが有機溶剤Eに溶解した溶液であってもよいし、樹脂Cが有機溶剤Eに分散した非水ディスパージョンであってもよい。以下、非水ディスパージョンである樹脂組成物を特に「非水ディスパージョン組成物」ともいう。
非水ディスパージョン組成物とは、媒体の主成分が有機溶剤であり、媒体中に安定して分散している樹脂を含む組成物を意味する。すなわち、非水ディスパージョンである場合の樹脂組成物は、樹脂Cと、イソシアネート系架橋剤Dと、有機溶剤Eと、必要に応じて任意成分とを含む非水分散型樹脂組成物である。
非水ディスパージョン組成物の媒体である有機溶剤の主成分は、オレフィン樹脂溶解性の低い有機溶剤が好ましい。有機溶剤の主成分がオレフィン樹脂溶解性の高い有機溶剤、例えばトルエン、キシレン等である場合は、非水ディスパージョン組成物を形成するのは困難である。
非水ディスパージョン組成物の総質量に対する水分含有量は1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。
【0065】
[作用効果]
以上説明した本発明の樹脂組成物は、上述したアクリル樹脂A及びオレフィン樹脂Bを含む樹脂Cと、イソシアネート系架橋剤Dと、有機溶剤Eとを含むので、金属箔層に対する密着性及び耐有機溶剤性に優れたシーラント層を形成できる。
【0066】
[シーラント層]
本発明のシーラント層は、上述した本発明の樹脂組成物より形成されるものである。
シーラント層としては、有機溶剤Sに接触するシーラント層が挙げられ、具体的には有機溶剤Sに電解質が溶解した電解液に接触するシーラント層などが挙げられる。より具体的には、携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電量貯蔵装置、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等に用いられるリチウムイオン二次電池の電解液に接触する、リチウムイオン二次電池の外装材を構成するシーラント層が挙げられる。
本発明の樹脂組成物より形成されるシーラント層は、金属箔層に対する密着性及び耐有機溶剤性に優れる。よって、従来のリチウムイオン二次電池の外装材であれば、金属箔層に接着剤層を介してシーラント層を積層させる必要があるが、本発明の樹脂組成物を用いれば、接着剤層を介さずにシーラント層を金属箔層に直接、積層させることができる。その結果、金属箔層とシーラント層との間に接着剤層を設ける必要がなくなるため、外装材を薄型化できる。
このように、本発明の樹脂組成物より形成されるシーラント層は、リチウムイオン二次電池の外装材を構成するシーラント層として好適であり、本発明の樹脂組成物を用いれば、外装材を薄型化できる。
【0067】
シーラント層が接触する有機溶剤Sとしては、例えばリチウムイオン二次電池の電解液に用いられる有機溶剤などが挙げられ、具体的には、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル等のカーボネート類;γ-ブチロラクトン等のラクトン類;トリメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2-エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン等のオキソラン類;アセトニトリル、ニトロメタン、NMP等の含窒素類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、リン酸トリエステル等のエステル類;ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のグライム類;アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;スルホラン等のスルホン類;3-メチル-2-オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン類;1,3-プロパンスルトン、4-ブタンスルトン、ナフタスルトン等のスルトン類などが挙げられる。
【0068】
[積層体]
本発明の一実施形態に係る積層体は、基材層と、基材層上に積層された本発明のシーラント層とを含む。
本発明の別の実施形態に係る積層体は、基材層と、基材層上に積層された本発明のシーラント層、及び金属箔層とを含む。積層体が金属箔層を含む場合、金属箔層は、例えば基材層とシーラント層との間に設けられる。この場合、基材層と金属箔層とは、接着剤層を介して接着していることが好ましい。すなわち、積層体は、基材層と、接着剤層と、金属箔層と、シーラント層とがこの順に積層したものであってもよい。
積層体を構成する基材層、接着剤層及び金属箔層については、後述する。
【0069】
[リチウムイオン二次電池の外装材]
本発明のリチウムイオン二次電池の外装材は、本発明のシーラント層を備える。
リチウムイオン二次電池の外装材の一例としては、基材層と、接着剤層と、金属箔層と、シーラント層とがこの順に積層した積層体が挙げられる。
基材層としては、リチウムイオン二次電池の外装材に用いられる公知の基材層が挙げられ、具体的にはポリアミドフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の樹脂フィルムが挙げられる。樹脂フィルムは、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィイルム、無延伸フィルムのいずれであってもよい。
【0070】
接着剤層を形成する接着剤としては、基材層と金属箔層とを接着できるものであれば特に制限されないが、例えばウレタン系接着剤等が挙げられる。
ウレタン系接着剤としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等の主剤に、イソシアネート化合物等の硬化剤を作用させる2液硬化型の接着剤が挙げられる。
【0071】
金属箔層としては、ステンレスから銅やアルミニウムなどのベースメタル、白金や金・銀などの貴金属、チタンやニッケルなどのレアメタル、銅合金やニッケル合金などの特殊金属等が挙げられる。これらの中でも、リチウムイオン二次電池の外装材に用いられる公知の金属箔層であるアルミニウム箔が好ましい。
【0072】
本実施形態のリチウムイオン二次電池の外装材は、例えば金属箔層の一方の面に接着剤層を介して基材層を積層し、金属箔層の他方の面に本発明の樹脂組成物を塗工し、乾燥してシーラント層を形成することで得られる。
樹脂組成物の塗工方法としては、例えばバーコーター、グラビアコート法、ロールコート法、ナイフコート法、キスコート法等が挙げられる。
塗工後の乾燥条件としては、例えば60~200℃で5~1000秒の範囲が好ましい。
【実施例0073】
以下、実施例及び比較例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されない。
【0074】
[測定・評価]
<重量平均分子量測(Mw)の測定>
重量平均分子量の測定には東ソー株式会社製の高速GPC装置HLC-8320GPC型(検出器:RI検出器)を用いた。使用したカラムは、東ソー株式会社製のTSKgel superHZM-M(6.0mmID×15cmL)を2本と、東ソー株式会社製のTSKguardcolumn super HZ-H(4.6mmID×3.5cmL)を1本連結して測定を行なった。溶離液はテトラヒドロフラン(安定剤のジブチルヒドロキシトルエンを含む)を用い、流速は0.5mL/分、注入口温度40℃、オーブン温度40℃、RI検出器温度40℃で測定した。サンプルは樹脂濃度が0.27質量%になるようテトラヒドロフランで調整したものを10μL注入して測定を行なった。
【0075】
<結晶融解熱量、融点及び結晶化温度の測定>
結晶融解熱量、融点及び結晶化温度の測定には示差走査熱量計を用い、上述した測定方法(I)により求めた。
【0076】
<試験片の作製>
アルミニウム箔に、バーコーターで樹脂組成物を塗工した後、180℃で3分乾燥して、アルミニウム箔上に膜厚18μmのシーラント層が形成された積層体を2枚、作製した。
2枚の積層体を、シーラント層同士が接触するように積層し、180℃、荷重1.0kgf、加熱時間2秒の条件で部分的にヒートシールし、ヒートシール部を中心に15mm幅に切り出し、試験片を作製した。
【0077】
<耐有機溶剤性の評価>
上記の試験片の作製で得られた試験片を有機溶剤Sとして炭酸ジメチルに24時間、浸漬した。その後、試験片を炭酸ジメチルから取り出し、アルミニウム箔とシーラント層との間における剥がれの有無を確認し、以下の評価基準にてシーラント層の耐有機溶剤性(耐炭酸ジメチル性)を評価した。
〇:アルミニウム箔とシーラント層との間で、剥がれは確認できない。
△:ヒートシールした領域では、アルミニウム箔とシーラント層との間で、剥がれは確認できないが、ヒートシールしていない領域において、アルミニウム箔とシーラント層との間で、剥がれが確認された。
×:ヒートシールした領域及びヒートシールしていない領域において、アルミニウム箔とシーラント層との間で、剥がれが確認された。
【0078】
<密着性の評価(1):初期>
上記の試験片の作製で得られた試験片を、引張試験機(株式会社島津製作所製、製品名「小型卓上試験機EZ」)を用いて、50mm/分の速度で180°の方向へ引っ張り、剥離強度(単位:N/15mm)を測定し、以下の評価基準にてシーラント層の金属箔層に対する、初期の密着性を評価した。
〇:剥離強度が10N/15mm以上である。
×:剥離強度が10N/15mm未満である。
【0079】
<密着性の評価(2):有機溶剤浸漬後>
上記の耐有機溶剤性の評価を行った後の試験片をキムタオルで拭き、引張試験機(株式会社島津製作所製、製品名「小型卓上試験機EZ」)を用いて、50mm/分の速度で180°の方向へ引っ張り、剥離強度(単位:N/15mm)を測定し、以下の評価基準にてシーラント層の金属箔層に対する、有機溶剤浸漬後の密着性を評価した。
〇:剥離強度が5N/15mm以上である。
×:剥離強度が5N/15mm未満である。
【0080】
[使用材料]
実施例及び比較例で用いた材料は、以下の通りである。なお、以下において、下記の略称を使用することがある。
<単量体a1>
・BMA:n-ブチルメタクリレート(三菱ケミカル株式会社製、商品名「アクリエステルB」)。
・MMA:メチルメタクリレート(三菱ケミカル株式会社製、商品名「アクリエステルM」)。
<単量体a2>
・HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート(三菱ケミカル株式会社製、商品名「アクリエステルHO」)。
<単量体a3>
・AAc:アクリル酸(三菱ケミカル株式会社製)。
【0081】
<オレフィン樹脂B>
・S-410:ポリプロピレン(出光興産株式会社製、商品名「L-MODU S410」、Mw:70625、結晶融解熱量:14.3J/g、融点:74.1℃、結晶化温度:36.3℃)。
【0082】
<有機溶剤E>
・酢エチ:酢酸エチル。
・iBuOH:i-ブタノール。
【0083】
<重合開始剤>
・パーブチルO:t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日油株式会社製、商品名「パーブチルO」)。
【0084】
<イソシアネート系架橋剤D>
・TPA-100:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(旭化成株式会社製、商品名「デュラネートTPA-100」)。
【0085】
[実施例1]
本例では溶剤としてiBuOHを用い、重合温度を85℃とした。
撹拌機、冷却管、滴下漏斗及び温度計を備えた重合容器内で、前記溶剤28質量部に、オレフィン樹脂BとしてS410を60質量部、BMAを12質量部、MMAを10質量部、及びHEMAを4質量部、加熱溶解させた。重合装置内を十分に窒素置換し、重合容器内の液温を重合温度に保持して撹拌しながら、前記溶剤を46質量部、BMAを14質量部、及びパーブチルOを0.7質量部、3時間かけて滴下し、さらに1時間反応させた後に前記溶剤を1質量部とパーブチルOを0.35質量部追加し、その後2.5時間反応させた。酢エチ53質量部を追加して反応終了させ、室温まで冷却し、有機溶剤Eに、アクリル樹脂A及びオレフィン樹脂Bを含む樹脂Cが分散した分散液を得た。
本例の場合、アクリル樹脂Aは、BMA由来の構成単位と、MMA由来の構成単位と、HEMA由来の構成単位とを含む共重合体である。オレフィン樹脂Bは、ポリプロピレンである。
樹脂Cにおいて、BMA由来の構成単位とMMA由来の構成単位の合計質量Waに対する、オレフィン樹脂Bを構成する全構成単位(プロピレン由来の構成単位)の合計質量Wbの質量比を表すWb/Waは、60/40であった。
得られた樹脂Cの水酸基価及び酸価を表1に示す。なお、樹脂Cの水酸基価は、前記式(1)より求めた。樹脂Cの酸価は、下記式(2)より求めた。
酸価(mgKOH/g)=(f3×M3/M/Mw3×[KOH]×1000) ・・・(2)
(式(2)中、f3は単量体a3(AAc)のカルボキシ基の数であり、M3は単量体a3の質量(g)であり、Mは樹脂Cの質量(g)であり、Mw3は単量体a3の分子量(数平均分子量)であり、[KOH]は水酸化カリウムの分子量である。)
【0086】
得られた分散液にイソシアネート系架橋剤DとしてTPA-100を5.6質量部添加して、非水ディスパージョンである樹脂組成物を得た。樹脂Cにおける水酸基の1当量に対する、イソシアネート系架橋剤Dのイソシアネート基の量を表1に示す。また、樹脂組成物の固形分含有量を表1に示す。
得られた樹脂組成物について、耐有機溶剤性及び密着性を評価した。結果を表1に示す。
【0087】
[実施例2、3]
TPA-100の添加量を表1に示す値となるように変更した以外は、実施例1と同様にして非水ディスパージョンである樹脂組成物を得た。樹脂Cにおける水酸基の1当量に対する、イソシアネート系架橋剤Dのイソシアネート基の量を表1に示す。また、樹脂組成物の固形分含有量を表1に示す。
得られた樹脂組成物について、耐有機溶剤性及び密着性を評価した。結果を表1に示す。
【0088】
[実施例4]
重合初期のオレフィン樹脂Bを加熱溶解させる工程にて、BMAを15質量部、HEMAを1質量に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂Cが分散した分散液を調製した。
樹脂Cにおいて、BMA由来の構成単位とMMA由来の構成単位の合計質量Waに対する、オレフィン樹脂Bを構成する全構成単位(プロピレン由来の構成単位)の合計質量Wbの質量比を表すWb/Waは、60/40であった。
得られた樹脂Cの水酸基価及び酸価を表1に示す。
【0089】
得られた分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして非水ディスパージョンである樹脂組成物を得た。樹脂Cにおける水酸基の1当量に対する、イソシアネート系架橋剤Dのイソシアネート基の量を表1に示す。また、樹脂組成物の固形分含有量を表1に示す。
得られた樹脂組成物について、耐有機溶剤性及び密着性を評価した。結果を表1に示す。
【0090】
[比較例1]
重合初期のオレフィン樹脂Bを加熱溶解させる工程にて、BMAを13.8質量部、HEMAを0質量部に変更し、HEMAの代わりにAAcの2.2質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂Cが分散した分散液を調製した。
樹脂Cにおいて、BMA由来の構成単位とMMA由来の構成単位の合計質量Waに対する、オレフィン樹脂Bを構成する全構成単位(プロピレン由来の構成単位)の合計質量Wbの質量比を表すWb/Waは、61.3/38.7であった。
得られた樹脂Cの水酸基価及び酸価を表1に示す。
【0091】
得られた分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして非水ディスパージョンである樹脂組成物を得た。樹脂Cにおける水酸基の1当量に対する、イソシアネート系架橋剤Dのイソシアネート基の量を表1に示す。また、樹脂組成物の固形分含有量を表1に示す。
得られた樹脂組成物について、耐有機溶剤性及び密着性を評価した。結果を表1に示す。
【0092】
[比較例2]
重合初期のオレフィン樹脂Bを加熱溶解させる工程にて、BMAを16質量部、HEMAを0質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂Cが分散した分散液を調製した。
樹脂Cにおいて、BMA由来の構成単位とMMA由来の構成単位の合計質量Waに対する、オレフィン樹脂Bを構成する全構成単位(プロピレン由来の構成単位)の合計質量Wbの質量比を表すWb/Waは、60/40であった。
得られた樹脂Cの水酸基価及び酸価を表1に示す。
【0093】
得られた分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして非水ディスパージョンである樹脂組成物を得た。樹脂組成物の固形分含有量を表1に示す。
得られた樹脂組成物について、耐有機溶剤性及び密着性を評価した。結果を表1に示す。
【0094】
[比較例3]
実施例1と同様にして、樹脂Cが分散した分散液を調製した。
得られた分散液を樹脂組成物として用いた。樹脂組成物の固形分含有量を表1に示す。
得られた樹脂組成物について、耐有機溶剤性及び密着性を評価した。結果を表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
表1に示す結果から明らかなように、各実施例で得られた樹脂組成物からは、金属箔層に対する密着性及び耐有機溶剤性に優れたシーラント層を形成できた。
一方、単量体a2由来の構成単位を含まず、代わりに単量体a3由来の構成単位を含むアクリル樹脂を含む比較例1で得られた樹脂組成物から形成されたシーラント層は、金属箔層に対する密着性に劣っていた。
単量体a2由来の構成単位を含まないアクリル樹脂を含む比較例2で得られた樹脂組成物から形成されたシーラント層は、耐有機溶剤性に劣っていた。
イソシアネート系架橋剤Dを含まない比較例3で得られた樹脂組成物から形成されたシーラント層は、耐有機溶剤性に劣っていた。
なお、比較例2、3については、シーラント層の耐有機溶剤性が劣っていたため、密着性の評価(2)は実施しなかった。