IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友大阪セメント株式会社の特許一覧

特開2024-90654静電チャック部材及び静電チャック装置
<>
  • 特開-静電チャック部材及び静電チャック装置 図1
  • 特開-静電チャック部材及び静電チャック装置 図2
  • 特開-静電チャック部材及び静電チャック装置 図3
  • 特開-静電チャック部材及び静電チャック装置 図4
  • 特開-静電チャック部材及び静電チャック装置 図5
  • 特開-静電チャック部材及び静電チャック装置 図6
  • 特開-静電チャック部材及び静電チャック装置 図7
  • 特開-静電チャック部材及び静電チャック装置 図8
  • 特開-静電チャック部材及び静電チャック装置 図9
  • 特開-静電チャック部材及び静電チャック装置 図10
  • 特開-静電チャック部材及び静電チャック装置 図11
  • 特開-静電チャック部材及び静電チャック装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090654
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】静電チャック部材及び静電チャック装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240627BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240627BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20240627BHJP
   C23C 14/50 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
C23C16/458
C23C14/50 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206687
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】金原 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】乾 敏祥
(72)【発明者】
【氏名】一由 拓
(72)【発明者】
【氏名】菅又 徹
【テーマコード(参考)】
4K029
4K030
5F004
5F131
【Fターム(参考)】
4K029AA06
4K029AA24
4K029BD01
4K029JA06
4K030CA04
4K030CA12
4K030GA02
4K030LA15
5F004AA16
5F004BA04
5F004BB22
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA32
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131BA23
5F131CA04
5F131CA06
5F131CA68
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB79
5F131EB81
5F131EB82
(57)【要約】
【課題】側面へ荷電性異物粒子が付着することで生じる課題、特にウエハプロセス中に発生する異常放電を低減させることが可能な静電チャック部材を提供する。また、このような静電チャック部材を有する静電チャック装置を提供する。
【解決手段】一主面が板状試料を載置する載置面である基体と、載置面とは反対側又は基体の内部に設けられた静電吸着用電極と、を有し、基体において載置面と連続する側周面には、載置面の周縁部において周方向に設けられた凸曲面である第1曲面と、第1曲面とは異なる高さ位置において周方向に設けられた第2曲面と、を少なくとも有し、静電吸着用電極の外縁近傍には、静電吸着用電極の外縁における電界を分散させる電界分散構造を有する静電チャック部材。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一主面が板状試料を載置する載置面である基体と、
前記載置面とは反対側又は前記基体の内部に設けられた静電吸着用電極と、を有し、
前記基体において前記載置面と連続する側周面には、前記載置面の周縁部において周方向に設けられた凸曲面である第1曲面と、
前記第1曲面とは異なる高さ位置において前記周方向に設けられた第2曲面と、を少なくとも有し、
前記静電吸着用電極の外縁近傍には、前記静電吸着用電極の外縁における電界を分散させる電界分散構造を有する静電チャック部材。
【請求項2】
前記電界分散構造は、前記静電吸着用電極に外縁部に設けられ前記載置面の方向からの視野に露出して傾斜している電極傾斜面である請求項1に記載の静電チャック部材。
【請求項3】
前記電極傾斜面は、凸曲面である請求項2に記載の静電チャック部材。
【請求項4】
前記電界分散構造は、前記静電吸着用電極の外縁部に設けられた低密度部であり、
前記低密度部の相対密度は、前記静電吸着用電極の中心の相対密度よりも低い請求項1に記載の静電チャック部材。
【請求項5】
前記電界分散構造は、前記静電吸着用電極の外縁と前記基体の内縁との間に設けられた隙間である請求項1に記載の静電チャック部材。
【請求項6】
前記側周面は、前記側周面の下端部において周方向に設けられ且つ外側に伸長する部分を有し、
前記第2曲面は、前記伸長する部分の上面に設けられた凹曲面である請求項1に記載の静電チャック部材。
【請求項7】
前記電界分散構造の幅は、前記静電吸着用電極の厚さよりも大きい請求項1に記載の静電チャック部材。
【請求項8】
前記側周面において、前記第1曲面と前記第2曲面との間は、前記載置面の方向からの視野に露出する傾斜面である請求項1に記載の静電チャック部材。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の静電チャック部材と、
前記静電チャック部材を冷却し前記静電チャック部材の温度を調整するベース部材と、を有する静電チャック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電チャック部材及び静電チャック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、IC、LSI、VLSI等の半導体装置を製造する半導体製造工程において、シリコンウエハ等の板状試料は、静電チャック機能を備えた静電チャック部材に静電吸着により固定されて所定の処理が施される。このような工程においては、例えば静電チャック装置でシリコンウエハを固定した後、シリコンウエハにプラズマを用いたエッチング処理や成膜処理を施す。
【0003】
上述のような製造工程において静電チャック装置を用いると、静電チャック部材にはウエハ残滓に代表される粒子状の異物(以下、異物粒子)が生じることがある。このような異物粒子は、半導体製造装置内で帯電し、静電チャック装置の表面に付着する。帯電した異物粒子(荷電性異物粒子)が付着した静電チャック装置では、製造工程中のプラズマ安定性が損なわれ、生産性が低下するおそれがある。また、異物粒子に起因して、プラズマ工程中に異常放電が生じ、プラズマの安定化を損ね、素子の歩留まり低下や静電チャック装置の絶縁破壊が生じる場合がある。
【0004】
以上のような課題に対し、半導体の製造工程においては、異物粒子で汚染された静電チャック装置をプラズマ洗浄し、異物粒子を除去する処理が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2013-512564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、シリコンウエハから得られる半導体チップの歩留まり向上を目的として、静電チャック部材が有する静電吸着用電極を拡大する提案がなされている。静電吸着用電極を拡大させた静電チャック部材では、ウエハの載置面の中央と周縁とで吸着力の差が小さくなり、シリコンウエハの外周部分においても中央部分と同様の加工(エッチング処理)が可能となる。これにより、シリコンウエハの外周部分においても好適に半導体チップを製造可能となり、歩留まりが向上する。
【0007】
一方で、静電吸着用電極が拡大すると、静電チャック部材の側面表面と静電吸着用電極との距離が近づき、静電チャック部材の側面表面の電界強度が増加する。そのため、静電吸着用電極を拡大させた静電チャック部材では、従来の静電チャックに比べ側面に荷電性異物粒子が静電吸着しやすい構成となる。
【0008】
特許文献1に記載の静電チャック部材では、プラズマ洗浄の効果を高めるために、周囲に傾斜部を設けている。しかし、この構成は、ウエハプロセス前の洗浄を効果的にする事は出来るが、製造プロセス中に荷電性異物粒子が静電チャック部材の側面に付着することを抑制するものではない。そのため、ウエハプロセス中に発生する異常放電による素子の歩留まり低下(生産性低下)や静電チャックの絶縁破壊などの問題を十分抑制できない、と言う課題があった。このため、ウエハプロセス中であっても静電チャック部材の側面に付着する荷電性異物粒子の影響を低減し、異常放電発生を抑制することが可能な静電チャック部材が求められていた。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、側面へ荷電性異物粒子が付着することで生じる課題、特にウエハプロセス中に発生する異常放電を低減させることが可能な静電チャック部材を提供することを目的とする。また、このような静電チャック部材を有する静電チャック装置を提供することを合わせて目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、以下の態様を包含する。
【0011】
[1]一主面が板状試料を載置する載置面である基体と、前記載置面とは反対側又は前記基体の内部に設けられた静電吸着用電極と、を有し、前記基体において前記載置面と連続する側周面には、前記載置面の周縁部において周方向に設けられた凸曲面である第1曲面と、前記第1曲面とは異なる高さ位置において前記周方向に設けられた第2曲面と、を少なくとも有し、前記静電吸着用電極の外縁近傍には、前記静電吸着用電極の外縁における電界を分散させる電界分散構造を有する静電チャック部材。
【0012】
[2]前記電界分散構造は、前記静電吸着用電極に外縁部に設けられ前記載置面の方向からの視野に露出して傾斜している電極傾斜面である[1]に記載の静電チャック部材。
【0013】
[3]前記電極傾斜面は、凸曲面である[2]に記載の静電チャック部材。
【0014】
[4]前記電界分散構造は、前記静電吸着用電極の外縁部に設けられた低密度部であり、前記低密度部の相対密度は、前記静電吸着用電極の中心の相対密度よりも低い[1]から[3]のいずれか1項に記載の静電チャック部材。
【0015】
[5]前記電界分散構造は、前記静電吸着用電極の外縁と前記基体の内縁との間に設けられた隙間である[1]から[4]のいずれか1項に記載の静電チャック部材。
【0016】
[6]前記側周面は、前記側周面の下端部において周方向に設けられ且つ外側に伸長する部分を有し、前記第2曲面は、前記伸長する部分の上面に設けられた凹曲面である[1]から[5]のいずれか1項に記載の静電チャック部材。
【0017】
[7]前記電界分散構造の幅は、前記静電吸着用電極の厚さよりも大きい[1]から[6]のいずれか1項に記載の静電チャック部材。
【0018】
[8]前記側周面において、前記第1曲面と前記第2曲面との間は、前記載置面の方向からの視野に露出する傾斜面である[1]から[7]のいずれか1項に記載の静電チャック部材。
【0019】
[9][1]から[8]のいずれか1項に記載の静電チャック部材と、前記静電チャック部材を冷却し前記静電チャック部材の温度を調整するベース部材と、を有する静電チャック装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、側面へ荷電性異物粒子が付着することで生じる課題を低減可能な静電チャック部材を提供することができる。また、このような静電チャック部材を有する静電チャック装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、第1実施形態の静電チャック部材10の概略斜視図である。
図2図2は、第1実施形態の静電チャック部材10を示す断面図である。
図3図3は、第1実施形態の静電チャック部材10を示す断面図である。
図4図4は、第1実施形態の静電チャック部材10の製造方法を示す説明図である。
図5図5は、第2実施形態に係る静電チャック部材20の説明図である。
図6図6は、第3実施形態に係る静電チャック部材30の説明図である。
図7図7は、第3実施形態の変形例に係る静電チャック部材40の説明図である。
図8図8は、第4実施形態の変形例に係る静電チャック部材50の説明図である。
図9図9は、第5実施形態の変形例に係る静電チャック部材60の説明図である。
図10図10は、第6実施形態の変形例に係る静電チャック部材70の説明図である。
図11図11は、実施形態の静電チャック装置を示す断面図である。
図12図12は、上述の静電チャック装置を有する半導体製造装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
以下、図1~4を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る静電チャック部材について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0023】
《静電チャック部材》
図1は、本実施形態の静電チャック部材10の概略斜視図である。図2,3は、本実施形態の静電チャック部材10を示す断面図であり、図1の線分II-IIにおける矢視断面図である。
【0024】
図1~3に示すように、静電チャック部材10は、一対のセラミックス板11,12と、一対のセラミックス板11,12の間に介在する静電吸着用電極13及び絶縁層15と、を備える。以下の説明では、静電吸着用電極を単に「電極」と略称する。
【0025】
一対のセラミックス板11,12、及び絶縁層15を合わせた構成は、本発明における基体に該当する。基体の一主面は、板状試料を載置する載置面10xである。
【0026】
以下の説明においては、載置面10xの面方向をX方向、載置面10xの法線方向をY方向とするXY軸に基づいて、部材間の相対位置を説明することがある。また、Y軸において、静電チャック部材10の載置面10x側を「上」、静電チャック部材10の載置面10xとは反対側を「下」とし、部材間の相対位置を説明することがある。
【0027】
図2,3に示す断面図は、平面視において静電チャック部材10に外接する円のうち最小の円を想定したとき、この円の中心を含む仮想面により、静電チャック部材を切断した断面である。言い換えると、図2,3は、基体(載置面10x)の中心Cを通り基体(載置面10x)の法線Nを含む断面における断面図である。静電チャック部材10が平面視で略円形である場合、上記円の中心と、平面視における静電チャック部材の形状の中心とは凡そ一致する。
【0028】
なお、本明細書において「平面視」とは、静電チャック部材の厚さ方向であるY方向から見た視野、又は載置面10xの方向からの視野を指す。
また、「断面視」とは、載置面に垂直、且つ平面視において静電チャック部材に外接する円のうち最小の円を想定したとき、この円の中心を含む仮想面で切断したときの、断面と直交する方向の視野を指す。
【0029】
さらに、平面視において、相対的に中心Cに近い側を「内」、中心Cから遠ざかる側を「外」と称することがある。
【0030】
そして、電極13の「外縁」とは、電極13を平面視したときの電極13の外周部分を指し、電極13の「外縁部」とは、電極13の外縁から電極13の内側に向けた外縁近傍の領域を指す。
【0031】
セラミックス板11において載置面10xの周縁部には、ヘリウム(He)等の冷却ガスが漏れないように、周縁部に沿って周縁部を一周する断面四角形状の環状突起部が設けられていてもよい。
【0032】
なお、基体の一主面に微小突起を有する静電チャック部材においては、各微小突起の頂部に接する仮想面を載置面10xとする。また、このように設定した仮想面が凹面又は凸面である場合には、仮想面の最小二乗平面を載置面10xとする。
【0033】
静電チャック部材10において、電極13は基体の内部に設けられているがこれに限らない。静電チャック部材において、電極13は、載置面10xとは反対側に設けられていてもよい。
【0034】
静電チャック部材10は、セラミックス板11と、電極13及び絶縁層15と、セラミックス板12とがこの順に積層されている。すなわち、静電チャック部材10は、セラミックス板11とセラミックス板12が、電極13及び絶縁層15を介して、接合一体化されてなる接合体である。また、電極13及び絶縁層15は、セラミックス板11においてセラミックス板12と対向する接合面、及びセラミックス板12においてセラミックス板11と対向する接合面に接して設けられている。
【0035】
(セラミックス板)
セラミックス板11,12は、平面視において外周の形状を同じくする。
【0036】
セラミックス板11,12は、同一組成又は主成分が同一である。セラミックス板11,12は、絶縁性材料から構成されてもよいし、絶縁性材料と導電性材料の複合体から構成されてもよい。
【0037】
セラミックス板11,12に含まれる絶縁性材料は、特に限定されないが、例えば、酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化イットリウム(Y)、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)等が挙げられる。なかでも、Al、AlNが好ましい。
【0038】
セラミックス板11,12に含まれる導電性材料は、特に限定されないが、例えば、炭化ケイ素(SiC)、酸化チタン(TiO)、窒化チタン(TiN)、炭化チタン(TiC)、炭素材料、希土類酸化物、希土類フッ化物等が挙げられる。炭素材料としては、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバーが挙げられる。なかでも、SiCが好ましい。
【0039】
セラミックス板11,12の材料は、体積固有抵抗値が1013Ω・cm以上1017Ω・cm以下程度であり、機械的な強度を有し、しかも腐食性ガス及びそのプラズマに対する耐久性を有する材料であれば、特に限定されない。このような材料としては、例えば、Al焼結体、AlN焼結体、Al-SiC複合焼結体等が挙げられる。高温での誘電特性、高耐食性、耐プラズマ性、耐熱性の観点から、セラミックス板11,12の材料は、Al-SiC複合焼結体が好ましい。
【0040】
セラミックス板11,12を構成する絶縁性材料の平均一次粒子径は、0.5μm以上3.0μm以下が好ましく、0.7μm以上2.0μm以下がより好ましく、1.0μm以上2.0μm以下がさらに好ましい。
【0041】
セラミックス板11,12を構成する絶縁性材料の平均一次粒子径が0.5μm以上3.0μm以下であれば、緻密で耐電圧性が高く、耐久性の高いセラミックス板11,12が得られる。
【0042】
セラミックス板11,12を構成する絶縁性材料の平均一次粒子径の測定方法は、次の通りである。日本電子社製の電解放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM。日本電子株式会社製、JSM-7800F-Prime)で10000倍に拡大して、セラミックス板11,12の厚さ方向の切断面を観察し、インターセプト法により絶縁性材料200個の粒子径の平均を平均一次粒子径とする。
【0043】
(静電吸着用電極)
電極13は、電荷を発生させて静電吸着力で板状試料を固定するために用いられる。電極13は、厚さ方向よりも厚さ方向と直交する方向に大きな広がりを有する薄型電極である。このような電極13は、電極層形成用ペーストを塗布し焼結することで形成される。得られる電極13の厚さは、電極層形成用ペーストの塗布厚さと、得られる電極13の厚さとの対応関係を予備実験により求めておくことにより、電極層形成用ペーストの塗布厚さを調整することで制御することができる。
【0044】
電極13は、導電性材料の粒子の焼結体、又は絶縁性セラミックスの粒子と導電性材料の粒子との複合体(焼結体)から構成される。
【0045】
電極13が絶縁性セラミックスと導電性材料から構成される場合、これらの混合材料の体積固有抵抗値は10-6Ω・cm以上10-2Ω・cm以下程度であることが好ましい。
【0046】
電極13が絶縁性セラミックスと導電性材料との複合体から構成される場合、電極13において、導電性材料の含有量は、15質量%以上100質量%以下が好ましく、20質量%以上100質量%以下がより好ましい。導電性材料の含有量が上記下限値以上であれば、セラミックス板12に充分な誘電特性を発現できる。
【0047】
電極13に含まれる導電性材料は、導電性セラミックスであってもよく、金属や炭素材料等の導電性材料であってもよい。電極13に含まれる導電性材料は、SiC、TiO、TiN、TiC、タングステン(W)、炭化タングステン(WC)、モリブデン(Mo)、炭化モリブデン(MoC)、タンタル(Ta)、炭化タンタル(TaC、Ta)、炭素材料及び導電性複合焼結体からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0048】
炭素材料としては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等が挙げられる。
【0049】
導電性複合焼結体としては、例えば、Al-Ta、Al-W、Al-SiC、AlN-W、AlN-Ta等が挙げられる。
【0050】
電極13に含まれる導電性材料が前記物質からなる群から選択される少なくとも1種であることにより、電極の導電率を担保できる。
【0051】
電極13に含まれる絶縁性セラミックスは、特に限定されないが、例えば、Al、AlN、窒化ケイ素(Si)、Y、YAG、サマリウム-アルミニウム酸化物(SmAlO)、酸化マグネシウム(MgO)及び酸化ケイ素(SiO)からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0052】
電極13が、導電性材料と絶縁性材料からなることにより、セラミックス板11,12と電極13との接合強度が向上する。また、電極13が、導電性材料と絶縁性材料からなることにより、電極としての機械的強度が強くなる。
【0053】
電極13に含まれる絶縁性材料が、Alであることにより、高温での誘電特性、高耐食性、耐プラズマ性、耐熱性が保たれる。
【0054】
電極13における導電性材料と絶縁性材料の含有量の比(配合比)は、特に限定されず、静電チャック部材10の用途に応じて適宜調整される。
【0055】
電極13の外縁部には、載置面の方向からの視野に露出して傾斜している電極傾斜面13Aが設けられている。電極傾斜面13Aは、本発明における「電界分散構造」に該当する。
【0056】
(絶縁層)
絶縁層15は、セラミックス板11とセラミックス板12の間であって、電極13が形成された部分以外の位置において、セラミックス板11,12を相互に接合するために設けられた構成である。絶縁層15は、セラミックス板11とセラミックス板12との間(一対のセラミックス板の間)において、平面視で電極13の周囲に配置されている。
【0057】
絶縁層15の形状(絶縁層15を平面視した場合の形状)は、特に限定されず、電極13の形状に応じて適宜調整される。図2においては、絶縁層15の電極13と接する面15Aは、電極傾斜面13Aと相補的な傾きを有する傾斜面として図示している。絶縁層15の厚さ(Y方向の幅)は、電極13の厚さと等しくなっている。
【0058】
絶縁層15は、絶縁性材料から構成されてもよいし、絶縁性材料と導電性材料の複合体から構成されてもよい。絶縁層15の体積固有抵抗値は、1013Ω・cm以上1017Ω・cm以下である。
【0059】
絶縁層15を構成する絶縁性材料は、特に限定されないが、セラミックス板11,12の主成分と同じであることが好ましい。絶縁層15を構成する絶縁性材料は、例えば、Al、AlN、Si、Y、YAG、SmAlO、MgO及びSiOからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。絶縁層15を構成する絶縁性材料は、Alが好ましい。絶縁層15を構成する絶縁性材料が、Alであることにより、高温での誘電特性、高耐食性、耐プラズマ性、耐熱性が保たれる。
【0060】
絶縁層15を構成する導電性材料は、特に限定されないが、セラミックス板11,12の主成分と同じであることが好ましい。絶縁層15を構成する導電性材料は、例えば、SiC、TiO、TiN、TiC、W、WC、Mo、MoC及び炭素材料からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。炭素材料としては、例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等が挙げられる。絶縁層15を構成する導電性材料は、SiCが好ましい。
【0061】
絶縁層15において、絶縁性材料の含有量は、80質量%以上96質量%以下が好ましく、80質量%以上95質量%以下がより好ましく、85質量%以上95質量%以下がさらに好ましい。絶縁性材料の含有量が上記下限値以上であれば、充分な耐電圧性が得られる。絶縁性材料の含有量が上記上限値以下であれば、絶縁層15に含有させる導電性材料の除電効果を充分に発現できる。
【0062】
絶縁層15において、導電性材料の含有量は、4質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましく、5質量%以上15質量%以下がさらに好ましい。導電性材料の含有量が上記下限値以上であれば、導電性材料の除電効果を充分に発現できる。導電性材料の含有量が上記上限値以下であれば、充分な耐電圧が得られる。
【0063】
絶縁層15を構成する絶縁性材料の平均一次粒子径は、0.5μm以上3.0μm以下が好ましく、0.7μm以上2.0μm以下がより好ましい。
【0064】
絶縁層15を構成する絶縁性材料の平均一次粒子径が0.5μm以上であれば、充分な耐電圧性が得られる。一方、絶縁層15を構成する絶縁性材料の平均一次粒子径が3.0μm以下であれば、研削等の加工が容易である。
【0065】
絶縁層15を構成する導電性材料の平均一次粒子径は、0.1μm以上1.0μm以下が好ましく、0.1μm以上0.8μm以下がより好ましい。
絶縁層15を構成する導電性材料の平均一次粒子径が0.1μm以上であれば、充分な耐電圧性が得られる。一方、絶縁層15を構成する導電性材料の平均一次粒子径が1.0μm以下であれば、研削等の加工が容易である。
【0066】
絶縁層15を構成する絶縁性材料の平均一次粒子径及び導電性材料の平均一次粒子径の測定方法は、セラミックス板11,12を構成する絶縁性材料の平均一次粒子径及び導電性材料の平均一次粒子径の測定方法と同様である。
【0067】
絶縁層15は、セラミックス板11,12と別体として設けられていてもよく、セラミックス板11,12のいずれか一方と一体的に形成された後、他方のセラミックス板と接合する構成であってもよい。
【0068】
本明細書において「一体的に形成されている」とは、1つの部材として形成されている(1つの部材である)ことを意味する。この意味において、「セラミックス板11,12のいずれか一方と一体的に形成された」構成とは、例えば、もともと2つの部材であったセラミックス板11と絶縁層15とを1つに「一体化」した構成とは異なる。セラミックス板と絶縁層とが一体的に形成された部材は、材料となるセラミックス板(凹部を有さないセラミックス板)の一面に、研削又は研磨により凹部加工をすることで形成することができる。
【0069】
さらに、絶縁層15は、セラミックス板11,12の両方と一体的に形成された構成であってもよい。
【0070】
セラミックス板11,12の両方と絶縁層とが一体的に形成された静電チャック部材は、以下の方法で形成することができる。
【0071】
例えば、セラミックス板の原料である無機粒子の原料粉末(例えば、アルミナ粉末や、SiC粉末)を用いて、セラミックス板11,12と同等の形状を有し焼結させる前の仮成形体を形成し、得られた仮成形体の一方に、導電ペーストをスクリーン印刷した後、他方の仮成形体を重ねて積層体とする。その後、積層体をホットプレス焼成することで、セラミックス板11,12の両方と絶縁層とが一体的に形成された静電チャック部材が得られる。
【0072】
上記仮成形体は、プレス成形や、原料粉末のペーストを成形型に流し込むことで成形してもよく、無機粒子の原料粉末を用いて薄板状のグリーンシートを形成した後、グリーンシートを積層して成形してもよい。
【0073】
得られる電極13の厚さは、電極層形成用ペーストの塗布厚さと、得られる電極13の厚さとの対応関係を予備実験により求めておくことにより、電極層形成用ペーストの塗布厚さを調整することで制御することができる。
【0074】
(静電チャック部材の形状)
以下の説明においては、セラミックス板11の厚さを「厚さT1」、セラミックス板12の厚さを「厚さT2」、電極13の厚さを「厚さT3」とする。さらに、電極13の外縁13xから側周面10yまでのX方向の距離を「幅L1」とし、電極傾斜面13AのX方向の距離を「幅L2」とする。詳細には、幅L2は、電極13の上面のX方向の端部と、基体(セラミックス板11)との接する位置(符号Aで示す。)から、電極13の下面のX方向の端部と、基体(セラミックス板12)との接する位置(符号Bで示す。)までのX方向の距離を指す。図2においては、位置Bと外縁13xとが一致する。
【0075】
セラミックス板11の厚さT1、及びセラミックス板12の厚さT2は、静電チャック部材10が採用される静電チャック装置や半導体製造装置の性能に応じて適宜設定される。一例として、厚さT1は100μm以上、900μm以下が好ましく、400μm以上600μm以下がより好ましい。また、厚さT2は下部セラミック板に形成する付加的な内部電極やヒーター等の有無によって大きく異なり、0.9mm以上4mm以下等が選ばれているが、これらに限定されない。
【0076】
電極13の厚さT3は、静電チャック部材10が採用される静電チャック装置や半導体製造装置の性能に応じて適宜設定される。一例として、厚さT3は5μm以上40μm以下が好ましく、10μm以上20μm以下がより好ましい。
【0077】
静電チャック部材10の基体の、載置面10xと連続する側周面10yには、載置面10xの周縁部において周方向に設けられた第1曲面CS1と、第1曲面CS1とは異なる高さ位置において周方向に設けられた第2曲面CS2と、を少なくとも有する。静電チャック部材10の第1曲面CS1と第2曲面CS2とはいずれも凸曲面である。
【0078】
さらに、静電チャック部材10の側周面10yにおいて、第1曲面CS1と第2曲面CS2との間は、載置面10xの方向からの視野に露出する傾斜面10aである。すなわち、側周面10yは、載置面10x側から、第1曲面CS1、傾斜面10a、第2曲面CS2をこの順に含む。
【0079】
本明細書において、「凸曲面」とは、側周面のうち、断面視において+y方向に凸の曲面を指す。
一方、「傾斜面」とは、側周面のうち、断面視において傾き一定の面を指す。
【0080】
傾斜面10aは、仮想面S1と仮想面S2とに沿う角部を直線的に面取りした面である。さらに、図2の視野における傾斜面10aの両端では、面取りにより生じる新たな2つの角部を、外に凸となる曲面(凸曲面)である第1曲面CS1と第2曲面CS2とに加工されている。
【0081】
第1曲面CS1の曲率半径r1、第2曲面CS2の曲率半径r2は、それぞれ電極13の厚さT3以上であると好ましい。第1曲面CS1、第2曲面CS2の曲率半径を電極13の厚さT3より大きくすることで、プラズマ処理時に第1曲面CS1、第2曲面CS2での電界の集中を抑制することができ、荷電性異物粒子の特定部分(例えば角部)への固着の集中を抑制することができる。
【0082】
なお、第1曲面CS1及び第2曲面CS2の曲率半径は、静電チャック部材10の基体を研磨、研削を行った結果として形成された形状に関する。基体を構成する導電性材料及び絶縁性材料において、第1曲面CS1及び第2曲面CS2の曲率半径よりも大きい粒子径を有する粒子が含まれ、第1曲面CS1又は第2曲面CS2に配置されるとしても、そのような粒子は研磨、研削によって形状や粒子径が変化することになる。そのため、第1曲面CS1及び第2曲面CS2の曲率半径は、基体の材料の粒子径には依存しない。
【0083】
第1曲面CS1の曲率半径r1、第2曲面CS2の曲率半径r2は、次の方法で求める。
まず、静電チャック部材の測定したい部分(凸曲面)について、載置面に垂直、且つ平面視において静電チャック部材に外接する円のうち最小の円を想定したとき、この円の中心を含む仮想面で切断する。断面を1000番以上の砥石で研削してもよい。
【0084】
次いで、得られた断面の拡大写真を撮像する。拡大倍率は、実体鏡を用いて測定したい凸曲面を観察し、凸曲面の大きさに応じて設定する。拡大倍率は、得られた写真から適切に曲率半径が測定できる倍率であり、例えば40倍から200倍の範囲から適宜選択する。
得られた拡大写真から、凸曲面の曲率半径r1,r2を測定する。
【0085】
上記測定方法は、後述する凹曲面の曲率半径を測定する際にも同様に用いられる。
【0086】
静電チャック部材10は、側周面10yの周方向の一部において第1曲面CS1及び第2曲面CS2が形成されていてもよく、周方向の全部において第1曲面CS1及び第2曲面CS2が形成されていてもよい。また、第1曲面CS1及び第2曲面CS2の曲率は、周方向で一定であってもよく、周方向で異ならせてもよい。
【0087】
側周面10yに付着する荷電性異物粒子の量は、電極13を大型化し、電極13の外縁13xから側周面10yまでのX方向の距離(幅L1)が短くなることにより多くなると考えられる。近年の電極13の大型化により、幅L1は、1mm以下(1000μm以下)とすることが求められている。
【0088】
また、セラミックス板11の厚さT1との関係において、幅L1は、厚さT1の2倍以下とすることが求められている(L1/T1≦2)。このように幅L1が小さくなることにより、側周面10yに対して荷電性異物粒子が付着しやすくなっていた。
【0089】
この点から、静電チャック部材の構成を検討した結果、発明者らは、荷電性異物粒子を付着させる要因である静電界の集中を抑制した構造、を採用することにより、側周面10yへの荷電性異物粒子の付着を抑制できると考えた。
【0090】
従来の静電チャック部材は側周面の上部が角部になっている。また、特許文献1に記載の静電チャック部材のように、周側面の上部を面取りした場合、側周面には2か所の角部が形成される。一方、板状試料を吸着させるための静電界は、上述した側周面の角部に集中しやすく、この静電界に引き寄せられる荷電性異物粒子も側周面の角部の周囲の狭い範囲に多く強固に付着しやすい。
【0091】
これに対し、静電チャック部材10のように角部が曲面化され、第1曲面CS1、第2曲面CS2となっていると、上述の静電界が第1曲面CS1及び第2曲面CS2で分散し特定の箇所に集中しにくくなる。その結果、荷電性異物粒子の付着箇所が分散し、単位表面積あたりの荷電性異物粒子の数が減少する結果、異常放電を抑制しやすい。
【0092】
また、角部を曲面化すると、形成される第1曲面CS1、第2曲面CS2の面積は、載置面10xの端部から仮想面S1と仮想面S2とを辿って第2曲面CS2の下端に至る面、すなわち、角部を曲面化しない場合に存在する面の面積よりも小さい。上述のように、静電チャック部材の角部には荷電性異物粒子が付着しやすいところ、角部を曲面化すると荷電性異物粒子が付着し得る部分の表面積を減らすことができるため、異常放電を抑制する構成として好適である。
【0093】
さらに、電極13は、電界分散構造である電極傾斜面13Aを有する。
図3は、電極傾斜面13Aの効果について説明する説明図である。図3(a)は、電極が電極傾斜面13Aを有さない静電チャック部材、図3(b)は、電極が電極傾斜面13Aを有する静電チャック部材を用いて、電極に印加したときの様子を模式的に説明する図である。図3では、模式的に電気力線LEを用いて説明する。
【0094】
まず、図3(a)のように電極が電極傾斜面13Aを有さない静電チャック部材10Xでは、断面視において、電極13の上面のX方向の端部と、基体(セラミックス板11)との接する位置Aに、通常、電界が集中しやすい角部が形成される。このような静電チャック部材10Xでは、プラズマ処理時に電極13Xに印加すると、位置Aの角部に電界が集中する。
【0095】
この場合、電極13に入力される電界の電気力線LEを考えると、電気力線LEに沿って飛来する荷電性異物粒子は、セラミックス板11の表面において、例えば間隔W1を開けて付着することとなる。
【0096】
対して、図3(b)のように電極が電極傾斜面13Aを有する静電チャック部材10では、位置Aの角部は、図3(a)の静電チャック部材10Xよりも鈍角となる。そのため、静電チャック部材10では、プラズマ処理時に電極13に印加すると、静電チャック部材10Xと比べて位置Aの角部に電界が集中しにくく、入力される電界が電極傾斜面13A全体に分散しやすいと考えられる。
【0097】
この場合、電極13に入力される電界の電気力線LEの密度は、図3(a)の静電チャック部材10Xよりも疎となる。そのため、電気力線LEに沿って飛来する荷電性異物粒子は、セラミックス板11の表面において、間隔W2(W2>W1)を開けて付着することとなる。
【0098】
そのため、電極13が電極傾斜面13Aを有すると、プラズマ処理時に外縁13xに集中しやすい電界が分散し、セラミックス板11に対する荷電性異物粒子の固着の集中を抑制することができる。
【0099】
また、電極傾斜面13A(電界分散構造)の幅L2は、電極の厚さT3よりも大きいと好ましい。これにより、位置Aの角部の角度を広げ、位置Aにおける電界の集中を効果的に抑制することができる。
【0100】
(表面粗さ)
第1曲面CS1、第2曲面CS2は、それぞれ算術平均粗さRaが2μm以下であると好ましい。第1曲面CS1、第2曲面CS2の算術平均粗さRaが2μm以下であることにより、第1曲面CS1、第2曲面CS2に付着する荷電性異物粒子を低減させることができ、効率的に上記不具合を抑制できる。
【0101】
算術平均粗さRaは、表面粗さ・輪郭形状測定機(サーフコムNEX200、株式会社東京精密製)を用いて測定することができる。具体的には、第1曲面CS1、第2曲面CS2について、静電チャック部材10を平面視したとき、周方向に90°毎の4カ所について、それぞれ同様の測定を行う。周方向4カ所でそれぞれ求めた算術平均粗さRaの測定値について、平均値を算出し、算術平均粗さRaとする。
【0102】
従来の静電チャック装置に採用される静電チャック部材は、載置面のRaが0.05μm程度、好適には0.01~0.02μm程度の鏡面仕上げをされることがある。載置面に微少突起が設けられた静電チャック部材の場合、微小突起の先端のRaが上述のRaを満たすことがある。
【0103】
一方、従来の静電チャック部材では、側周面のRaは載置面よりは荒く仕上げられ、Raが3~4μm程度の面精度で仕上げられている。これは、静電チャック部材の製造にあたり、ウエハが直接接する載置面の加工精度に目が向けられる一方、板状試料を載置しない側周面については着目されていなかったことによる。そのため、従来の静電チャック部材では、生産効率を考慮した上で、側周面に対して必要最小限の研磨を施すにとどまっていた。しかし発明者らは、側周面のRaが3~4μm程度の面精度の場合、荷電性異物粒子が付着し得る表面積が非常に広いことに加え、側周面に近接した内部電極により更に荷電性異物粒子を吸着させやすい、多くの荷電性異物粒子を滞留させ易い、との着想を得た。
【0104】
そこで、静電チャック部材10では、側周面10yが有する第1曲面CS1、第2曲面CS2のRaを従来よりも平滑な2μm以下とし、荷電性異物粒子が吸着される表面積を低減させた構造とし、側周面10yのRaを従来比半減させることにより、従来よりも側周面に付着し滞留する荷電性異物粒子を半分以下に大きく低減させることができる簡易で効果的な手段を考案した。
【0105】
通常、荷電性異物粒子は、ウエハプロセス中に、静電チャック部材の表面に対して吸着及び脱離を繰り返していると想定される。ここで、荷電性異物粒子の単位表面積あたりの付着量が多くなると、荷電性異物粒子は、複数が凝集した凝集体として、静電チャック部材の表面に対して吸着及び脱離をすると想定される。このような凝集体が静電チャック部材の表面に吸着及び脱離する場合、初めてプラズマの安定性を損ね、製造される素子の歩留まりを低下させる原因となる「異常放電」が生じると考えられる。
【0106】
すなわち、半導体製造装置において、ウエハプロセス中に静電チャック部材の側周面に荷電性異物粒子が付着する場合、荷電性異物粒子の単位表面積あたりの付着量が上記凝集体を形成するほど多くなるまでは異常放電は一切発生せず、上記凝集体を形成する閾値を超えて初めて異常放電が発生する。このような場合、荷電性異物粒子の付着量を低減し、例えば閾値未満とすると、異常放電の発生量を顕著に抑制することができ、高い効果が期待できる。「閾値」は、半導体製造装置の構成、ウエハの種類、ウエハプロセス条件など、種々の条件によって影響を受ける。
【0107】
すなわち、荷電性異物粒子の付着量と異常放電の発生数とが線形関係でなく、閾値を有する対応関係であると考えられるため、側周面10yのRaを従来比で半減させるという簡便な手段により、異常放電の発生を大幅に抑制することが期待されるとの着想に発明者らは帰着した。
【0108】
第1曲面CS1、第2曲面CS2のRaは、1.5μm以下であることが好ましく、0.05μm以下がより好ましく、0.01~0.02μmがさらに好ましい。
【0109】
側周面10yにおいて第1曲面CS1、第2曲面CS2の曲率半径を電極13の厚さよりも大きくすることで、側周面10yにおいて電極13の厚さより広く荷電性異物粒子が付着することを抑制できる。そのため、側周面10yにおいて荷電性異物粒子に起因する微小放電を抑制でき、側周面10yにおける絶縁破壊を抑制することができる。
【0110】
《静電チャック部材の製造方法》
図4は、上述の静電チャック部材の製造方法を示す説明図である。静電チャック部材10は、まず、セラミックス板11,12、電極13、絶縁層15を有し、第1曲面CS1、第2曲面CS2が加工されていない円板状の焼結体を得(焼結体を得る工程)、得られた焼結体の側周面を、回転砥石を用いて研削する(研削する工程)ことにより製造することができる。
【0111】
(焼結体を得る工程)
焼結体を得る工程では、まず、スクリーン印刷法等の塗工法により、静電チャック部材10において内側となるセラミックス板12の一方の面に、電極層形成用ペーストを塗布して電極層塗膜を形成する。次いで、絶縁層形成用ペーストを塗布して絶縁層塗膜を形成する。
【0112】
形成する電極層塗膜の外縁と、絶縁層塗膜の内縁とは平面視で重なっており、電極層塗膜と絶縁層塗膜との接触面は、セラミックス板12の一方の面の厚さ方向に対して傾きを有する。電極層塗膜の外縁は、絶縁層塗膜の内縁と相補的な傾きを有する。
【0113】
電極層形成用ペーストとしては、電極13を形成する絶縁性セラミックス粒子及び導電性セラミックス粒子を、溶媒に分散させた分散液が用いられる。電極層形成用ペーストに含まれる溶媒としては、イソプロピルアルコール等のアルコールが用いられる。
【0114】
絶縁層形成用ペーストとしては、絶縁層15を形成する絶縁性セラミックスを、溶媒に分散させた分散液が用いられる。絶縁層形成用ペーストに含まれる溶媒としては、イソプロピルアルコール等のアルコールが用いられる。
【0115】
次いで、電極層塗膜及び絶縁層塗膜を形成した面が内側になるように、セラミックス板12の一方の面側から、セラミックス板11を積層する。
【0116】
次いで、セラミックス板12、電極層塗膜、絶縁層塗膜、及びセラミックス板11を含む積層体を、加熱しながら、厚さ方向に加圧する。積層体を、加熱しながら、厚さ方向に加圧する際の雰囲気は、真空、あるいはAr、He、N等の不活性雰囲気が好ましい。
【0117】
積層体を加熱する温度(熱処理温度)は、1600℃以上かつ1900℃以下が好ましく、1650℃以上かつ1850℃以下がより好ましい。積層体を加熱する温度が1600℃以上かつ1900℃以下であれば、それぞれの塗膜に含まれる溶媒を揮発させて、セラミックス板12とセラミックス板11の間に、電極13と絶縁層15を形成できる。また、電極13と絶縁層15を介して、セラミックス板12とセラミックス板11を接合一体化することができる。
【0118】
積層体を厚さ方向に加圧する圧力(加圧力)は、1.0MPa以上かつ50.0MPa以下が好ましく、5.0MPa以上かつ20.0MPa以下がより好ましい。積層体を厚さ方向に加圧する圧力が1.0MPa以上かつ50.0MPa以下であれば、セラミックス板12とセラミックス板11の間に、互いに密着した電極13と絶縁層15を形成できる。また、電極13と絶縁層15を介して、セラミックス板12とセラミックス板11を接合一体化することができる。
【0119】
これにより、セラミックス板11,12、電極13、絶縁層15を有する円板状の焼結体が得られる。
【0120】
(研削する工程)
研削する工程では、得られた焼結体の側周面を研削する。
【0121】
このとき、用いる回転砥石Gは、回転砥石Gの回転軸Lを含む断面が、図2,3の視野の断面の第1曲面CS1の形状、第2曲面CS2の形状及び傾斜面10aと相補的な形状を有する。回転砥石Gにおいては、第1曲面CS1に対応する箇所の曲率半径は、第1曲面CS1の曲率半径と同じくr1である。また、第2曲面CS2に対応する箇所の曲率半径は、第2曲面CS2の曲率半径と同じくr2である。このような回転砥石を用いて載置面10xの周縁部を研削することで、容易に第1曲面CS1及び第2曲面CS2を有する静電チャック部材10を形成することができる。
【0122】
このような製造方法とすることにより、第1曲面CS1及び第2曲面CS2を形成するために、曲面に合わせて砥石の固定角度を変える必要が無く、容易に第1曲面CS1、第2曲面CS2を有する静電チャック部材を製造することができる。また、精度良く回転砥石Gを作製することで、再現性高く、静電チャック部材10を製造することができる。
【0123】
なお、上記説明では、回転砥石Gが第1曲面CS1、第2曲面CS2と相補的な形状を有することとしたが、少なくとも第1曲面CS1及び第2曲面CS2のいずれか一方の一部と相補的な形状を有する回転砥石を用いて加工してもよい。また、このような回転砥石を用いて加工することにより、砥石の付け替えや角度調整を大幅に減らすことができ、生産効率を向上させることができる。また、砥石の付け替えや角度調整による製造のばらつきも抑制することが可能となる。
【0124】
以上のような構成の静電チャック部材10によれば、側周面10yへ荷電性異物粒子が付着することで生じる課題(生産性低下、絶縁破壊)を低減可能となる。
【0125】
なお、本実施形態においては、側周面10yが2つの凸曲面(第1曲面CS1,第2曲面CS2)を有することとしたが、これに限らない。側周面10yは、載置面10xの周縁部において周方向に設けられた凸曲面である第1曲面CS1と、第1曲面CS1とは異なる高さ位置において周方向に設けられた第2曲面CS2の他、第1曲面CS1と異なる高さ位置において周方向に設けられた凸曲面である第3曲面、第4曲面…を有する構成であってもよい。
【0126】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態に係る静電チャック部材20の説明図である。以後の各実施形態においては、第1実施形態の静電チャック部材10と共通する材料を用いることができ、形状が異なる。以後の各実施形態において、第1実施形態と共通する構成要素については、詳細な説明は省略する。
【0127】
図5に示すように、静電チャック部材20は、一対のセラミックス板11,22と、一対のセラミックス板11,22の間に介在する静電吸着用電極23及び絶縁層25と、を備える。一対のセラミックス板11,22、及び絶縁層25を合わせた構成は、本発明の基体に該当する。電極23は、外縁部に電極傾斜面23Aを有する。電極傾斜面23Aは、上述の電極傾斜面13Aと同様の構成を有する。
【0128】
セラミックス板11は、上述の静電チャック部材10が有するセラミックス板と同じである。静電チャック部材20の側周面20yの上端部分は、上述の静電チャック部材10と同様に、第1曲面CS1、傾斜面20a、第2曲面CS2が形成されている。
【0129】
また、側周面20yは、側周面20yの下端部において外側に伸長する部分20zを有している。この部分20zの上面は、静電チャック部材20の周方向に設けられた凹曲面CS0である。すなわち、側周面20yは、上端側の第1曲面CS1、傾斜面20a、第2曲面CS2と、下端側の凹曲面CS0と、第2曲面CS2と凹曲面CS0とを接続する主面20bとで形成されている。主面20bは、Y方向に延びる面である。
【0130】
静電チャック部材20は、側周面20yの周方向の一部において、第1曲面CS1、第2曲面CS2が形成されていてもよく、周方向の全部において第1曲面CS1、第2曲面CS2が形成されていてもよい。また、第1曲面CS1、第2曲面CS2のそれぞれの曲率は、周方向で一定であってもよく、周方向で異ならせてもよい。
【0131】
また、静電チャック部材30は、側周面30yの周方向の一部において、凹曲面CS0が形成されていてもよく、周方向の全部において凹曲面CS0が形成されていてもよい。また、凹曲面CS0の曲率半径は、周方向で一定であってもよく、周方向で異ならせてもよい。
【0132】
一般に、静電チャック部材の側周面の下部は、プラズマクリーニング時にプラズマが届きにくく、荷電性異物粒子が付着していたとしても除去しにくいことが知られている。対して,静電チャック部材20では、側周面20yの下端側に凹曲面CS0が形成され、平面視において視野に露出している。これにより、側周面20yの下端側のプラズマクリーニングが容易となる。また、プラズマクリーニングにより側周面20yから離脱させた荷電性異物粒子はY方向に飛び出すことになるため、側周面20yの近傍に漂いにくく、再付着を抑制しやすい。
【0133】
凹曲面CS0の曲率半径r0は、電極23の厚さT3以上であると好ましい。
【0134】
第1曲面CS1の曲率半径r1と、凹曲面CS0の曲率半径r0とは、下記式(1)の関係を有していると好ましい。
[第1曲面CS1の曲率半径r1]<[凹曲面CS0の曲率半径r0] …(1)
【0135】
また、第2曲面CS2の曲率半径r2と、凹曲面CS0の曲率半径r0とは、下記式(2)の関係を有していると好ましい。
[第2曲面CS2の曲率半径r2]<[凹曲面CS0の曲率半径r0] …(2)
【0136】
通常の静電チャック部材の側周面では、吸引電界が集中し荷電性異物粒子が狭い範囲に集中する上部の角部と、遮蔽性が高く荷電性異物粒子が多く溜まり易い下部の角部において異常放電が発生しやすい。静電チャック部材20においては、上部の角部を第1曲面CS1、第2曲面CS2とし、下部の角部を凹曲面CS0とすることで荷電性異物粒子の堆積を抑制している。
【0137】
ここで、第1曲面CS1、第2曲面CS2を大きく形成すると、相対的に載置面20xが狭くなり、載置可能な板状試料の面積が小さくなってしまう。
【0138】
一方、上記(1)(2)を満たす静電チャック部材であれば、載置面20xの面積確保と、異常放電の抑制とを両立しやすいため好ましい。
【0139】
凹曲面CS0は、算術平均粗さRaが2μm以下であると好ましい。凹曲面CS0の算術平均粗さRaが2μm以下であることにより、凹曲面CS0であることによる効果と、面精度を高めることによる効果との両方の効果が得られ、効果的に荷電性異物粒子の付着を抑制することができる。凹曲面CS0のRaは、上述の領域AR1と同様、1.5μm以下であることが好ましく、0.05μm以下がより好ましく、0.01~0.02μmがさらに好ましい。
【0140】
載置面20xの法線方向と直交する方向において、主面20bから凹曲面CS0の外側の端部までの距離(X方向における部分20zの幅L3)は、電極23の厚さT3以上であると好ましい。
【0141】
以上のような構成の静電チャック部材20によっても、上述した電極傾斜面(電界分散構造)と、側周面に設けられた凸曲面及び凹曲面との機能により、静電界の集中を抑制して荷電性異物粒子の付着を抑制でき、側周面20yへ荷電性異物粒子が付着することで生じる課題(生産性低下、絶縁破壊)を低減可能となる。
【0142】
なお、本実施形態においては、主面20bをY方向と平行な面としたが、これに限らない。主面20bも平面視の視野に露出する傾斜面としてもよい。
【0143】
[第3実施形態]
図6は、第3実施形態に係る静電チャック部材30の説明図である。図6に示すように、静電チャック部材30は、一対のセラミックス板31,32と、一対のセラミックス板31,32の間に介在する静電吸着用電極33及び絶縁層35と、を備える。一対のセラミックス板31,32、及び絶縁層35を合わせた構成は、本発明の基体に該当する。電極33は、外縁部に電極傾斜面33Aを有する。電極傾斜面33Aは、上述の電極傾斜面13Aと同様の構成を有する。
【0144】
静電チャック部材30の側周面30yの上端部分は、面取りされ載置面30xの法線方向からの視野に露出する第1曲面CS1が形成されている。第1曲面CS1は凸曲面である。
【0145】
静電チャック部材30は、側周面30yの周方向の一部において第1曲面CS1が形成されていてもよく、周方向の全部において第1曲面CS1が形成されていてもよい。また、第1曲面CS1の曲率半径は、周方向で一定であってもよく、周方向で異ならせてもよい。
【0146】
また、側周面30yは、側周面30yの下端部において、第2実施形態の静電チャック部材20と同様に、外側に伸長する部分30zを有している。この部分30zの上面は、静電チャック部材30の周方向に設けられた凹曲面CS0である。凹曲面CS0は、本発明における「第2曲面」に該当する。
【0147】
第1曲面CS1の曲率半径r1と、凹曲面CS0の曲率半径r0と、電極33の厚さT3と、セラミックス板32の厚さ(静電吸着用電極の下面から基体の下面までの基体の厚さ)T2とは、下記(3)の関係を有していると好ましい。
[電極33の厚さT3]<[第1曲面CS1の曲率半径r1]
<[凹曲面CS0の曲率半径r0]<[セラミックス板32の厚さT2] …(3)
【0148】
まず、上述したとおり、[第1曲面CS1の曲率半径r1]<[凹曲面CS0の曲率半径r0]を満たすと、載置面30xの面積確保と、異常放電の抑制とを両立しやすいため好ましい。
【0149】
次いで、[電極33の厚さT3]<[第1曲面CS1の曲率半径r1]を満たす静電チャック部材では、従来の静電チャック部材(第1曲面CS1を有していない静電チャック部材)では側周面上部の角に集中していた電界を、電極33の厚さよりも広く分散させることができ、荷電性異物粒子の堆積を抑制できる。
【0150】
さらに、[凹曲面CS0の曲率半径r0]<[セラミックス板32の厚さT2]を満たす静電チャック部材では、静電チャック部材の平面視面積が大きくなりすぎることが無く、またセラミックス板32に欠けや割れが生じにくいため好ましい。
【0151】
第1曲面CS1及び凹曲面CS0は、算術平均粗さRaが2μm以下であると好ましい。第1曲面CS1及び凹曲面CS0のRaは、1.5μm以下であることが好ましく、0.05μm以下がより好ましく、0.01~0.02μmがさらに好ましい。
【0152】
以上のような構成の静電チャック部材30によっても、上述した電極傾斜面(電界分散構造)と、側周面に設けられた凸曲面及び凹曲面との機能により、側周面30yへ荷電性異物粒子が付着することで生じる課題(生産性低下、絶縁破壊)を低減可能となる。
【0153】
なお、本実施形態においては、主面30bをY方向と平行な面としたが、これに限らない。主面も平面視の視野に露出する傾斜面としてもよい。
【0154】
図7は、第3実施形態の変形例に係る静電チャック部材40の説明図である。図7に示すように、静電チャック部材40は、一対のセラミックス板41,42と、一対のセラミックス板41,42の間に介在する静電吸着用電極43及び絶縁層45と、を備える。一対のセラミックス板41,42、及び絶縁層45を合わせた構成は、本発明の基体に該当する。電極33は、外縁部に電極傾斜面33Aを有する。電極傾斜面33Aは、上述の電極傾斜面13Aと同様の構成を有する。
【0155】
側周面40yは、上端に設けられた第1曲面CS1と、下端に設けられた凹曲面CS0とを有する。凹曲面CS0は、外側に伸長する部分40zに設けられている。第1曲面CS1と凹曲面CS0との間の面(主面)40bは、連続した直線状の傾斜面である。
【0156】
静電チャック部材40は、主面40bの周方向の一部が傾斜面であってもよく、主面40bの周方向の全部が傾斜面であってもよい。また、主面40bの傾斜角θは、周方向で一定であってもよく、周方向で異ならせてもよい。
【0157】
以上のような構成の静電チャック部材40によっても、上述した電極傾斜面(電界分散構造)と、側周面に設けられた凸曲面及び凹曲面との機能により、静電界の集中を抑制して荷電性異物粒子の付着を抑制でき、側周面40yへ荷電性異物粒子が付着することで生じる課題(生産性低下、絶縁破壊)を低減可能となる。
【0158】
[第4実施形態]
図8は、第4実施形態に係る静電チャック部材50の説明図である。静電チャック部材50は、第1実施形態の静電チャック部材10と同構成の一対のセラミックス板11,12と、一対のセラミックス板11,12の間に介在する静電吸着用電極53及び絶縁層55と、を備える。
【0159】
電極53は、外縁部に電極傾斜面53Aを有する。電極傾斜面53Aは、載置面10x側に凸の凸曲面である。電極傾斜面53Aは、本発明における「電界分散構造」に該当する。
【0160】
絶縁層55の電極53と接する面は、電極傾斜面53Aと相補的な形状を有する。
【0161】
このような静電チャック部材50においては、図3(a)に示す静電チャック部材10Xと異なり、プラズマ処理時に電極53に印加した際に電界が集中しやすい角部が存在しない。そのため、静電チャック部材50では、電極53の外縁において電界が集中しにくく、入力される電界が電極傾斜面53A全体に分散し、その結果、セラミックス板11に対する荷電性異物粒子の固着の集中を抑制することができる。
【0162】
以上のような構成の静電チャック部材50によっても、上述した電極傾斜面(電界分散構造)と、側周面に設けられた凸曲面及び凹曲面との機能により、静電界の集中を抑制して荷電性異物粒子の付着を抑制でき、側周面10yへ荷電性異物粒子が付着することで生じる課題(生産性低下、絶縁破壊)を低減可能となる。
【0163】
[第5実施形態]
図9は、第5実施形態に係る静電チャック部材60の説明図である。静電チャック部材60は、第1実施形態の静電チャック部材10と同構成の一対のセラミックス板11,12と、一対のセラミックス板11,12の間に介在する静電吸着用電極63及び絶縁層65と、を備える。
【0164】
電極63の外縁部には、低密度部63Aが設けられている。低密度部63Aの相対密度は、電極63の平面視における中心の相対密度よりも低い。低密度部63Aは、本発明における「電界分散構造」に該当する。低密度部63Aにおいては、電極63の内部に微細な気孔を有しており、中実な部分と比べて低密度となっている。
【0165】
低密度部63Aの密度(相対密度)は、静電チャック部材60の断面について撮像する顕微鏡写真に基づいて求められる。
【0166】
(低密度部の相対密度の測定方法)
図9と同様の断面について、顕微鏡(例えば、キーエンス社製デジタルマイクロスコープ(VFX-900F))を用い、拡大倍率1000倍の顕微鏡写真を撮像する。電極63の外縁の相対密度を測定する場合、撮像範囲は、電極63の外縁であって、絶縁層65を含む領域である。
【0167】
低密度部63Aは、他の部分と比べ光の反射率(反射強度)が低い。そのため、静電チャック部材の断面を光学顕微鏡で観測すると、低密度部63Aの存在を、周囲との色の差として識別し、認識することができる。このとき、静電チャック部材の断面を偏光顕微鏡で観測すると、より明確に低密度部63Aを認識することができる。
【0168】
また、静電チャック部材の断面をデジタル方式の顕微鏡で観察した場合、指定した領域の反射光の強度を容易に数値化し、グラフ化することができる。このように得られた数値やグラフに基づいて、反射率の低い領域を低密度部63Aとして認識することができる。
【0169】
具体的には、低密度部63Aよりも内側の領域であって反射強度が概ね一定の領域(領域A)の反射強度を基準とし、領域Aから低密度部63Aに向けて反射強度を求めたとき、反射強度が領域Aの反射強度の1/e倍の強度を示す位置を領域Aと低密度部63Aとの境界の位置とする。
【0170】
同様に、低密度部63Aよりも外側の領域であって反射強度が概ね一定の領域(領域B)の反射強度を基準とし、領域Bから低密度部63Aに向けて反射強度を求めたとき、領域Bの反射強度の1/e倍の強度を示す位置を領域Bと低密度部63Aとの境界の位置とする。
【0171】
このように求めた2つの境界位置に挟まれた範囲を、低密度部63AのX方向の両端と規定することができる。
【0172】
上記顕微鏡写真によれば、電極63の断面と重なる仮想面において、電極63を構成する導電性セラミックス及び絶縁性セラミックスが存在する領域(物質が存在する領域。領域1)と、導電性セラミックス及び絶縁性セラミックスのいずれも存在しない「気孔」の領域(領域2)とが区別可能である。
【0173】
電極63の外縁の相対密度は、密度測定領域の外輪郭内の面積、すなわち領域1と領域2との合計面積に対する領域1の面積の割合を、百分率で表した値である。電極63に気孔が存在しない場合には、密度測定領域の相対密度は100%である。
【0174】
また、電極63の中心の相対密度を測定する場合、撮像範囲は、電極63のX方向の中央を含む領域(中心)である。なお、顕微鏡写真から、電極63の中心と同様の密度を有すると合理的に判断できる場合には、撮像範囲は、厳密に電極63の中央を含まなくてもよい。
【0175】
得られた顕微鏡写真において、X方向に幅150μmの範囲に含まれる電極63について、電極63の外縁の密度を測定する場合と同様に計算することで、電極63の中心の相対密度が求められる。
【0176】
以上のように求められる相対密度を比較することで、電極63の外縁において、電極63の中心よりも低密度であるか否かを判断することができる。
【0177】
静電チャック部材60においては、低密度部63Aの幅(電極63の中心から外縁に向かう方向の距離)は、電極63の厚さT3よりも大きいと好ましい。
【0178】
電界は、相対的に密度の高い部分に集中しやすく、密度の低い部分には集中しにくい。そのため、静電チャック部材60においては、電極63の低密度部63Aには電界が集中しにくく分散する。その結果、セラミックス板11に対する荷電性異物粒子の固着の集中を抑制することができる。
【0179】
低密度部63Aは、小さすぎると電極63の外縁での電界集中を効果的に分散し難くなってしまう。一方、低密度部63Aが大きすぎると、載置面に載置する板状試料の端部の吸着力が低下するおそれがある。そのため、低密度部63Aは、電極63の外縁から電極63内部方向へ向けて、電極63の厚さT3以上厚さT3の10倍以内の範囲に配置されることが好ましく、厚さT3以上T3の5倍以内の範囲に配置されることがより好ましい。
【0180】
以上のような構成の静電チャック部材60によっても、上述した低密度部(電界分散構造)と、側周面に設けられた凸曲面及び凹曲面との機能により、静電界の集中を抑制して荷電性異物粒子の付着を抑制でき、側周面10yへ荷電性異物粒子が付着することで生じる課題(生産性低下、絶縁破壊)を低減可能となる。
【0181】
[第6実施形態]
図10は、第6実施形態に係る静電チャック部材70の説明図である。静電チャック部材70は、第1実施形態の静電チャック部材10と同構成の一対のセラミックス板11,12と、一対のセラミックス板11,12の間に介在する静電吸着用電極73及び絶縁層75と、を備える。
【0182】
静電チャック部材70は、電極73の外縁と絶縁層75(基体)との間に隙間73Aを有する。静電チャック部材70においては、隙間73Aの幅(電極73の中心から外縁に向かう方向の距離)は、電極73の厚さT3よりも大きいと好ましい。
【0183】
電界は、相対的に誘電率の高い部分に集中しやすく、誘電率の低い部分には集中しにくい。そのため、静電チャック部材70においては、電極73の隙間73Aには電界が集中しにくく分散する。その結果、セラミックス板11に対する荷電性異物粒子の固着の集中を抑制することができる。
【0184】
隙間73Aは、小さすぎると電極73の外縁での電界集中を効果的に分散し難くなってしまう。一方、隙間73Aが大きすぎると、載置面に載置する板状試料の端部の吸着力が低下するおそれがある。そのため、隙間73Aは、電極73の外縁から電極73内部方向へ向けて、電極73の厚さT3以上厚さT3の10倍以内の範囲に配置されることが好ましく、厚さT3以上T3の5倍以内の範囲に配置されることがより好ましい。
【0185】
以上のような構成の静電チャック部材70によっても、上述した低密度部(電界分散構造)と、側周面に設けられた凸曲面及び凹曲面との機能により、静電界の集中を抑制して荷電性異物粒子の付着を抑制でき、側周面10yへ荷電性異物粒子が付着することで生じる課題(生産性低下、絶縁破壊)を低減可能となる。
【0186】
[静電チャック装置]
以下、図11を参照しながら、本発明の一実施形態に係る静電チャック装置について説明する。以下の説明では、上述の静電チャック部材10を有する静電チャック装置について説明するが、静電チャック装置には、上述した他の静電チャック部材もそれぞれ採用可能である。以下の説明においては、第1実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0187】
図11は、本実施形態の静電チャック装置を示す断面図である。静電チャック装置100は、円板状の静電チャック部材10と、静電チャック部材10を冷却し所望の温度に調整する円板状のベース部材103と、これら静電チャック部材10及びベース部材103を接合・一体化する接着剤層104と、を有している。
【0188】
以下の説明においては、静電チャック部材10側を「上」、ベース部材103側を「下」として記載し、各構成の相対位置を表すことがある。
【0189】
[静電チャック部材]
静電チャック部材10は、上述したセラミックス板11,12、電極13、絶縁層15の他、電極13に接するようにベース部材103の固定孔115内に設けられた給電用端子116を有している。
【0190】
[給電用端子]
給電用端子116は、電極13に電圧を印加するための部材である。
給電用端子116の数、形状等は、電極13の形態、すなわち単極型か、双極型かにより決定される。
【0191】
給電用端子116の材料は、耐熱性に優れた導電性材料であれば特に制限されない。給電用端子116の材料としては、熱膨張係数が電極13及びセラミックス板12の熱膨張係数に近似した材料であることが好ましく、例えば、コバール合金、ニオブ(Nb)等の金属材料、各種の導電性セラミックスが好適に用いられる。
【0192】
[導電性接着層]
導電性接着層117は、ベース部材103の固定孔115内及びセラミックス板12の貫通孔118内に設けられている。また、導電性接着層117は、電極13と給電用端子116の間に介在して、電極13と給電用端子116を電気的に接続している。
【0193】
導電性接着層117を構成する導電性接着剤は、炭素繊維、金属粉等の導電性物質と樹脂を含む。
【0194】
導電性接着剤に含まれる樹脂としては、熱応力により凝集破壊を起こし難い樹脂であれば特に限定されず、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポシキ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、伸縮度が高く、熱応力の変化によって凝集破壊し難い点から、シリコーン樹脂が好ましい。
【0195】
[ベース部材]
ベース部材103は、金属及びセラミックスの少なくとも一方からなる厚みのある円板状の部材である。ベース部材103の躯体は、プラズマ発生用内部電極を兼ねた構成とされている。ベース部材103の躯体の内部には、水、Heガス、Nガス等の冷却媒体を循環させる流路121が形成されている。
【0196】
ベース部材103の躯体は、外部の高周波電源122に接続されている。また、ベース部材103の固定孔115内には、その外周が絶縁材料123により囲繞された給電用端子116が、絶縁材料123を介して固定されている。給電用端子116は、外部の直流電源124に接続されている。
【0197】
ベース部材103を構成する材料は、熱伝導性、導電性、加工性に優れた金属、又はこれらの金属を含む複合材であれば特に制限されない。ベース部材103を構成する材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ステンレス鋼(SUS)、チタン(Ti)等が好適に用いられる。
【0198】
ベース部材103における少なくともプラズマに曝される面は、アルマイト処理又はポリイミド系樹脂による樹脂コーティングが施されていることが好ましい。また、ベース部材103の全面が、前記のアルマイト処理又は樹脂コーティングが施されていることがより好ましい。
【0199】
ベース部材103にアルマイト処理又は樹脂コーティングを施すことにより、ベース部材103の耐プラズマ性が向上するとともに、異常放電が防止される。したがって、ベース部材103の耐プラズマ安定性が向上し、また、ベース部材103の表面傷の発生も防止できる。
【0200】
[接着剤層]
接着剤層104は、静電チャック部材10と、ベース部材103とを接着一体化する構成である。
【0201】
接着剤層104の厚さは、100μm以上かつ200μm以下が好ましく、130μm以上かつ170μm以下がより好ましい。
接着剤層104の厚さが上記の範囲内であれば、静電チャック部材10とベース部材103との間の接着強度を充分に保持できる。また、静電チャック部材10とベース部材103との間の熱伝導性を充分に確保できる。
【0202】
接着剤層104は、例えば、シリコーン系樹脂組成物を加熱硬化した硬化体、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等で形成されている。
シリコーン系樹脂組成物は、シロキサン結合(Si-O-Si)を有するケイ素化合物であり、耐熱性、弾性に優れた樹脂であるので、より好ましい。
【0203】
このようなシリコーン系樹脂組成物としては、特に、熱硬化温度が70℃~140℃のシリコーン樹脂が好ましい。
【0204】
ここで、熱硬化温度が70℃を下回ると、静電チャック部材10とベース部材103とを対向させた状態で接合する際に、接合過程で硬化が充分に進まず、作業性に劣るため好ましくない。一方、熱硬化温度が140℃を超えると、静電チャック部材10及びベース部材103との熱膨張差が大きく、静電チャック部材10とベース部材103との間の応力が増加し、これらの間で剥離が生じることがあるため好ましくない。
【0205】
すなわち、熱硬化温度が70℃以上であると、接合過程で作業性に優れ、熱硬化温度が140℃以下であると、静電チャック部材10とベース部材103との間で剥離し難いため好ましい。
【0206】
本実施形態の静電チャック装置100によれば、上述した静電チャック部材10を有するため、静電チャック部材の側周面において、絶縁破壊(放電)の発生を抑制できる。
【0207】
なお、静電チャック装置100は、静電チャック部材の周囲を囲むフォーカスリングを有してもよい。その場合、フォーカスリングの形状は、静電チャック部材の側周面の形状に合わせて相補的な形状に変更してもよい。
【0208】
[半導体製造装置]
図12は、上述の静電チャック装置を有する半導体製造装置の説明図である。半導体製造装置1000は、静電チャック装置100と、真空チャンバ200と、上部電極300と、磁石400と、ガス供給手段500と、真空ポンプ600と、プラズマ安定化システム700と、を有する。
【0209】
真空チャンバ200は、静電チャック装置100を収容し、内部でプラズマ処理を行う反応場として用いられる。真空チャンバ200は、半導体製造装置に用いられる公知の構成を採用することができる。真空チャンバ200は、板状試料の出し入れを行う不図示のゲートを有する。
【0210】
上部電極300は、真空チャンバ200内に収容され、真空チャンバ200内にプラズマを発生させる際に静電チャック装置100と協働して用いられる対向電極である。上部電極300は、不図示の電源に接続される。
【0211】
磁石400は、真空チャンバ200の周囲に配置され、真空チャンバ200内の上部電極300と静電チャック装置100との間の空間に縦方向の磁界を発生させる。
【0212】
ガス供給手段500は、真空チャンバ200内にプラズマガスGasを供給する。ガス供給手段500は、例えば、上部電極300に設けられたガス孔から、真空チャンバ200内にプラズマガスGasを供給する。
【0213】
真空ポンプ600は、真空チャンバ200内の気体を排気し、プラズマを発生させる雰囲気を整える。真空ポンプ600は、例えば、真空チャンバ200において静電チャック装置100よりも下方に接続されている。
【0214】
プラズマ安定化システム700は、半導体製造装置1000において発生させるプラズマの状態を変動させる種々の外的要因を検出し、補償することで、プラズマの状態を安定させる。プラズマ安定化システム700は、検出器710と、検出器710による検出結果に基づいて半導体製造装置1000を制御する制御部720と、を有する。
【0215】
検出器710は、真空チャンバ200内のプラズマの様子を直接又は間接的に検出する。検出器710は、1つであってもよく、複数であってもよい。検出器710により検出される項目としては、例えば、真空チャンバ200内の真空度、プラズマの色、プラズマの温度、上部電極300と静電チャック装置100が有するプラズマ発生用内部電極(不図示)との間の電気容量、上部電極300とプラズマ発生用内部電極との間のインダクタンスなどが挙げられる。
【0216】
制御部720は、検出器710により検出される各項目の検出値、又は検出値の単位時間あたりの変化量に基づいて、半導体製造装置1000を制御する。制御部720は、上記項目の検出値と、真空チャンバ200内で発生するプラズマの状態と、の対応関係を予め記憶している。制御部720は、検出値と上記対応関係とに基づいて、プラズマの状態が予め定めた範囲に収まるように、半導体製造装置1000をフィードバック制御する。フィードバック制御する項目は、例えば、半導体製造装置内の温度、真空度、バイアス電圧が挙げられる。
【0217】
これらにより、プラズマ安定化システム700は、半導体製造装置1000におけるプラズマ状態の長期的な変動を抑制し、状態を安定化させることができる。
【0218】
このようなプラズマ安定化システムは、半導体製造装置を用いた製造プロセス全体の長期的なプラズマ状態の変動抑制には効果的である。一方、プラズマ安定化システムは、ウエハプロセス中の異常放電のように、極めて短い時間発生する変動要因に対しては、状態変動を抑制する効果が無かった。
【0219】
一方で、半導体製造装置1000は、上述の静電チャック装置100を有するため、ウエハはプロセス中に発生する異常放電を抑制することができる。そのため、半導体製造装置1000は、プラズマ安定化システム700を有することにより、長期的にも短期的にもプラズマを安定させることが可能となる。
【0220】
なお、制御部720は、プラズマ安定化システム700の固有の構成であってもよく、半導体製造装置1000の制御を行う制御装置が、機能を兼ねていてもよい。
【0221】
このような半導体製造装置1000においては、例えば、真空チャンバ200の排気口の位置(真空ポンプ600の接続位置)によって、静電チャック部材10の側周面における荷電性異物粒子の付着しやすさの傾向が異なることがある。半導体製造装置1000について経験的に上記傾向が判明している場合、静電チャック部材10は、荷電性異物粒子が付着しやすい位置の側周面について、その他の側周面よりも算術平均粗さRaを小さくしておく等、荷電性異物粒子の付着を抑制する構成を採用するとよい。
【0222】
本実施形態の半導体製造装置1000によれば、上述した静電チャック装置100を有するため、絶縁破壊(放電)の発生を抑制できる。
【0223】
また、半導体製造装置1000は、静電チャック装置100により異常放電(プラズマの短期的な変動)を抑制すると共に、プラズマ安定化システム700により、プラズマの長期的な変動を抑制可能である。そのため、安定したプラズマ処理が可能となり、歩留まりが改善した半導体製造装置とすることができる。
【0224】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
また、上記説明ではシリコンウエハを用いて説明したが、本発明の静電チャック部材で処理可能なウエハはシリコンだけでなく、インジウムリン系であってもガリウムひ素系であっても他の材料であってもよいことは明らかである。
【符号の説明】
【0225】
10,20,30,40,50…静電チャック部材、10a,20a…傾斜面、10x,30x…載置面、10y,20y,30y,40y…側周面、13,23,33,43…電極(静電吸着用電極)、20b,30b,40b…主面、20z,30z,40z…部分、100…静電チャック装置、103…ベース部材、C…中心、CS1…第1曲面、CS0…凹曲面、CS2…第2曲面、N…法線、r1,r2,r0…曲率半径、T1,T2,T3…厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12