(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090693
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】発塵抑制剤、地盤改良材、及び地盤改良材の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/22 20060101AFI20240627BHJP
C09K 17/44 20060101ALI20240627BHJP
C09K 17/48 20060101ALI20240627BHJP
C09K 17/10 20060101ALI20240627BHJP
C09K 17/16 20060101ALI20240627BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
C09K3/22 Z
C09K17/44 P
C09K17/48 P
C09K17/10 P
C09K17/16 P
E02D3/12 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206742
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴宣
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅彦
【テーマコード(参考)】
2D040
4H026
【Fターム(参考)】
2D040AA01
2D040AB05
2D040CA01
2D040CA10
4H026CA01
4H026CB08
4H026CC02
4H026CC05
4H026CC06
(57)【要約】
【課題】改良土の一軸圧縮強さの低下を抑え、六価クロム、ふっ素の溶出も抑えることが可能な発塵抑制剤、地盤改良材、及び地盤改良材の製造方法を提供する。
【解決手段】発塵抑制剤は、対象土と混合する地盤改良材に用いられる発塵抑制剤であって、アルコール化合物と、還元剤と、水と、を含み、アルコール化合物の含有量が、水100質量部に対し、100質量部以上であり、還元剤の含有量が、無水物換算で水100質量部に対し、70質量部以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象土と混合する地盤改良材に用いられる発塵抑制剤であって、
アルコール化合物と、
還元剤と、
水と、を含み、
アルコール化合物の含有量が、水100質量部に対し、100質量部以上であり、
還元剤の含有量が、無水物換算で水100質量部に対し、70質量部以下である、発塵抑制剤。
【請求項2】
還元剤の含有量が、無水物換算で水100質量部に対し、11.2質量部以上である、請求項1に記載の発塵抑制剤。
【請求項3】
アルコール化合物が、下記式(1)及び/又は式(2)で表される化合物を含む、請求項1又は2に記載の発塵抑制剤。
【化1】
(式中、nは2~10の整数、mは2~10の整数である。)
【請求項4】
対象土と混合する地盤改良材であって、
請求項1又は2に記載の発塵抑制剤と、
セメント系固化材と、を含み、
水の含有量が、セメント系固化材とアルコール化合物との合計100質量部に対し、0.5質量部以上2.1質量部以下である、地盤改良材。
【請求項5】
対象土と混合する地盤改良材の製造方法であって、
請求項1又は2に記載の発塵抑制剤と、セメント系固化材と、を混合する混合工程を含み、
混合工程において、還元剤が水に溶解した水溶液として混合される、地盤改良材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発塵抑制剤、地盤改良材、及び地盤改良材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟弱地盤等の地盤改良において、地盤改良を行う対象土にセメントを主成分とする粉状の地盤改良材を散布し、地盤改良材と対象土を撹拌、混合して、改良土を形成し、軟弱地盤を固化する等の方法が用いられている。
【0003】
このような地盤改良材は粉状であるため、散布時に落下による衝撃や風等の影響で地盤改良材が飛散、発塵する。また、地盤改良材と土壌との撹拌、混合時においても地盤改良材が飛散、発塵する。そのため、地盤改良材の飛散、発塵により、周辺環境や作業環境への影響が懸念される。
【0004】
そこで、地盤改良材の飛散、発塵を抑制するために、発塵抑制剤を地盤改良材に加えることが知られている。例えば、特許文献1には、濃度5~70重量%のアルコール系化合物の水溶液(発塵抑制剤に相当)を、セメント系固化材に対して1~10重量%が混合された地盤改良用無粉塵固化材が開示されている。また、特許文献2には、アルキレンオキサイド平均付加モル数が5~40モルである炭素数1~6の1価アルコールのアルキレンオキサイド付加物(A)と(A)以外のアルコール系化合物(B)とを合計で72~85重量%の濃度で含有する水溶液(発塵抑制剤に相当)と、水硬性粉体とが混合されたセメント系固化材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-053669号公報
【特許文献2】特開2009-114378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、軟弱地盤等の地盤改良は、例えば、原位置で軟弱地盤等を掘削し、掘削された対象土と地盤改良材とを撹拌、混合して改良土を形成し、転圧した後、固化させる。その際、使用した地盤改良材とほぼ同体積の残土が発生し、処分が必要となる場合があるため、使用できる地盤改良材の量には限界がある。一例として、使用する地盤改良材の量を一定とした場合、地盤改良材の発塵を抑制するために発塵抑制剤の量を増やすと、地盤改良材の量が少なくなり、その結果、改良土の一軸圧縮強さが低下する虞がある。更に、一軸圧縮強さの低下に伴ってセメント水和物の緻密化による重金属等の封じ込め効果が低下し、六価クロムやふっ素の溶出量が増加する虞もある。そこで、地盤改良材の発塵を抑制すると共に、改良土の一軸圧縮強さの低下を抑え、かつ六価クロム及びふっ素の溶出を抑える発塵抑制剤が求められている。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、地盤改良材の発塵を抑制すると共に、改良土の一軸圧縮強さの低下を抑え、かつ六価クロム及びふっ素の溶出を抑えることが可能な発塵抑制剤、地盤改良材、及び地盤改良材の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る発塵抑制剤は、対象土と混合する地盤改良材に用いられる発塵抑制剤であって、
アルコール化合物と、
還元剤と、
水と、を含み、
アルコール化合物の含有量が、水100質量部に対し、100質量部以上であり、
還元剤の含有量が、無水物換算で水100質量部に対し、70質量部以下である。
【0009】
本発明に係る発塵抑制剤は、斯かる構成により、地盤改良材の発塵を抑制すると共に、改良土の一軸圧縮強さの低下を抑え、かつ六価クロム及びふっ素の溶出を抑えることができる。
【0010】
本発明に係る発塵抑制剤は、還元剤の含有量が、無水物換算で水100質量部に対し、11.2質量部以上であってもよい。
【0011】
本発明に係る発塵抑制剤は、斯かる構成により、地盤改良材の発塵を抑制すると共に、改良土の一軸圧縮強さの低下をより抑え、かつ六価クロム及びふっ素の溶出をより抑えることができる。
【0012】
本発明に係る発塵抑制剤は、アルコール化合物が、下記式(1)及び/又は式(2)で表される化合物を含んでもよい。
【化1】
(式中、nは2~10の整数、mは2~10の整数である。)
【0013】
本発明に係る発塵抑制剤は、斯かる構成により、地盤改良材の発塵をより抑えることができる。
【0014】
本発明に係る地盤改良材は、対象土と混合する地盤改良材であって、
上述の発塵抑制剤と、
セメント系固化材と、を含み、
水の含有量が、セメント系固化材とアルコール化合物との合計100質量部に対し、0.5質量部以上2.1質量部以下である、地盤改良材。
【0015】
本発明に係る地盤改良材は、斯かる構成により、地盤改良材の発塵を抑制すると共に、改良土の一軸圧縮強さの低下を抑え、かつ六価クロム及びふっ素の溶出を抑えることができる。
【0016】
本発明に係る地盤改良材の製造方法は、対象土と混合する地盤改良材の製造方法であって、
上述の発塵抑制剤と、セメント系固化材と、を混合する混合工程を含み、
混合工程において、還元剤が水に溶解した水溶液として混合される。
【0017】
本発明に係る地盤改良材の製造方法は、斯かる構成により、地盤改良材の発塵を抑制すると共に、改良土の一軸圧縮強さの低下を抑え、かつ六価クロム及びふっ素の溶出を抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、地盤改良材の発塵を抑制すると共に、改良土の一軸圧縮強さの低下を抑え、かつ六価クロム及びふっ素の溶出を抑えることができる発塵抑制剤、地盤改良材、及び地盤改良材の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本実施形態に係る発塵抑制剤、地盤改良材、及び地盤改良材の製造方法について説明する。
【0020】
<発塵抑制剤>
本実施形態に係る発塵抑制剤は、対象土と混合する地盤改良材に用いられる発塵抑制剤であって、アルコール化合物と、還元剤と、水と、を含む。
【0021】
アルコール化合物は、本実施形態に係る発塵抑制剤を、後述する地盤改良材に含有させた際、地盤改良材に含まれる粉状のセメント系固化材の表面を湿潤させて凝集状態にすることにより地盤改良材の飛散、発塵を抑制する。
【0022】
アルコール化合物は、好ましくは、下記式(1)及び/又は式(2)で表される化合物を含む。
【0023】
【化2】
(式中、nは2~10の整数、mは2~10の整数である。)
【0024】
式(1)及び/又は式(2)で表される化合物としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール、ノナエチレングリコール、デカエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノメチルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノメチルエーテル、ヘプタエチレングリコールモノメチルエーテル、オクタエチレングリコールモノメチルエーテル、ノナエチレングリコールモノメチルエーテル、デカエチレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。本実施形態に係る発塵抑制剤に含まれるアルコール化合物としては、セメント系固化材との混合性も良好であることから、ジエチレングリコールが特に好ましい。なお、アルコール化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
地盤改良材により対象土がアルカリ性になると対象土からふっ素が溶出し、特に一軸圧縮強さが小さい場合に多く溶出する。還元剤は、本実施形態に係る発塵抑制剤を用いた地盤改良材と土壌とを混合した改良土に含まれる六価クロムを還元する。更に、還元剤は、六価クロムを還元し、酸化されることで硫酸イオンへと変化し、セメント系固化材に作用してカルシウムアルミネート水和物を生成することによって、改良土の一軸圧縮強さの低下を抑える。その結果、改良土の重金属等の封じ込め効果を維持できる。
【0026】
還元剤は、好ましくは、チオ硫酸、亜硫酸、及び二亜硫酸からなる群から選択される少なくとも1つのアルカリ金属塩である。チオ硫酸、亜硫酸、及び二亜硫酸からなる群から選択される少なくとも1つのアルカリ金属塩としては、例えば、チオ硫酸リチウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、亜硫酸リチウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、二亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸カリウム等が挙げられる。なお、還元剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
本実施形態に係る発塵抑制剤は、水を含み、水に還元剤が溶解している。水としては、還元剤を溶解できれば、特に限定はない。本実施形態に係る発塵抑制剤を後述する地盤改良材のセメント系固化材と混合する際、還元剤が水に溶解しているので、地盤改良材中に還元剤を均一に分散させることができる。
【0028】
本実施形態に係る発塵抑制剤に含まれるアルコール化合物の含有量は、水100質量部に対し、100質量部以上である。アルコール化合物の含有量は、地盤改良材の飛散及び発塵を抑制する観点から、水100質量部に対し、好ましくは、140質量部以上である。また、アルコール化合物の含有量は、水100質量部に対し、好ましくは580質量部以下であり、より好ましくは、290質量部以下である。
【0029】
本実施形態に係る発塵抑制剤に含まれる還元剤の含有量は、無水物換算で水100質量部に対し、70質量部以下である。上述のように、本実施形態に係る発塵抑制剤に含まれる還元剤は、水に溶解している。そのため、還元剤を水に溶解させるとの観点から、還元剤は、無水物換算で水100質量部に対し、好ましくは、50質量部以下であり、より好ましくは、43質量部以下である。また、改良土の一軸圧縮強さの低下をより抑える観点から、還元剤の含有量は、無水物換算で水100質量部に対し、好ましくは、11.2質量部以上であり、より好ましくは、33.2質量部以上である。
【0030】
本実施形態に係る発塵抑制剤は、地盤改良材の発塵を抑制すると共に、改良土の一軸圧縮強さの低下を抑え、かつ六価クロム及びふっ素の溶出を抑えることできる。
【0031】
<地盤改良材>
本実施形態に係る地盤改良材は、上述の発塵抑制剤と、セメント系固化材と、を含む。
【0032】
セメント系固化材は、例えば、市販されている特殊土用固化材、一般軟弱土用固化材、高有機質土用固化材、特殊粘性土用固化材等を用いることができる。また、セメント系固化材としては、例えば、セメント、セメントに石膏(二水石膏、半水石膏、無水石膏を含む。)が添加されたもの、及びセメントに高炉水砕スラグ等の水硬性アルミナを含む混和材が添加されたもの等が挙げられる。
【0033】
ここで、セメントとしては、特に限定されるものではなく、例えば、JIS R 5210:2019で規定される普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等のポルトランドセメント;高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等の混合セメント;超速硬セメント、アルミナセメント等の公知のセメントを用いることができる。なお、セメントは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
本実施形態に係る地盤改良材に含まれるセメント系固化材の量としては、特に限定されるものではなく、土壌の性状に応じて適宜設定することができる。セメント系固化材の量としては、対象土1m3に対して、好ましくは、30kg以上500kg以下であり、より好ましくは、50kg以上300kg以下である。
【0035】
本実施形態に係る地盤改良材は、上述の発塵抑制剤とセメント系固化材とが混合される。その際、地盤改良材における水の含有量は、セメント系固化材とアルコール化合物との合計100質量部に対し、0.5質量部以上2.1質量部以下である。地盤改良材と対象土とを混合した改良土の一軸圧縮強さの低下、及び六価クロム、ふっ素の溶出を抑える観点から、地盤改良材における水の含有量は、好ましくは、セメント系固化材とアルコール化合物との合計100質量部に対し、0.5質量部以上1.1質量部以下である。
【0036】
本実施形態に係る地盤改良材は、例えば、原位置で地盤から掘削された対象土と混合して改良土を形成し、転圧して固化する地盤改良に用いることができる。そして、本実施形態に係る地盤改良材は、地盤改良材の発塵を抑制すると共に、改良土の一軸圧縮強さの低下を抑え、かつ六価クロム及びふっ素の溶出を抑えることができる。
【0037】
<地盤改良材の製造方法>
本実施形態に係る地盤改良材の製造方法は、上述の発塵抑制剤と、セメント系固化材と、を混合する混合工程を含む。
【0038】
混合工程は、上述の発塵抑制剤と、セメント系固化材と、を混合する工程である。その際、発塵抑制剤には、アルコール化合物と、還元剤と、水とが含まれるが、還元剤は、水に溶解した水溶液として、セメント系固化材と、アルコール化合物と混合される。
【0039】
還元剤は、水に溶解した水溶液の状態で混合されるので、発塵抑制剤と、セメント系固化材と、が混合された地盤改良材中に還元剤を均一に分散させることができる。そして、還元剤は、地盤改良材中に均一に分散しているので、地盤改良材と、対象土と、が混合された改良土においても、還元剤は、分散されやすくなる。したがって、改良土中に還元剤が分散されることで、還元剤は、局所的ではなく改良土の全体において、六価クロムを還元し、自身が酸化されセメント系固化材に作用する。
【0040】
よって、本実施形態に係る地盤改良材の製造方法で製造した地盤改良材は、地盤改良材の発塵を抑制すると共に、改良土の一軸圧縮強さの低下を抑え、かつ六価クロム及びふっ素の溶出を抑えることができる。
【0041】
なお、本実施形態に係る発塵抑制剤、地盤改良材及び地盤改良材の製造方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本出願における開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0042】
本発明は、以下の態様を含む。
[1]対象土と混合する地盤改良材に用いられる発塵抑制剤であって、
アルコール化合物と、
還元剤と、
水と、を含み、
アルコール化合物の含有量が、水100質量部に対し、100質量部以上であり、
還元剤の含有量が、無水物換算で水100質量部に対し、70質量部以下である、発塵抑制剤。
[2]還元剤の含有量が、無水物換算で水100質量部に対し、11.2質量部以上である、上記[1]に記載の発塵抑制剤。
[3]アルコール化合物が、下記式(1)及び/又は式(2)で表される化合物を含む、上記[1]又は[2]に記載の発塵抑制剤。
【化3】
(式中、nは2~10の整数、mは2~10の整数である。)
[4]対象土と混合する地盤改良材であって、
上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の発塵抑制剤と、
セメント系固化材と、を含み、
水の含有量が、セメント系固化材とアルコール化合物との合計100質量部に対し、0.5質量部以上2.1質量部以下である、地盤改良材。
[5]対象土と混合する地盤改良材の製造方法であって、
上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の発塵抑制剤と、セメント系固化材と、を混合する混合工程を含み、
混合工程において、還元剤が水に溶解した水溶液として混合される、地盤改良材の製造方法。
【実施例0043】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
(発塵抑制剤の作製)
表1に示す配合のアルコール化合物、還元剤、及び水を用いて、発塵抑制剤1~12を作製した。なお、発塵抑制剤が水を含む場合、還元剤は水に溶解していた。アルコール化合物、及び還元剤は下記に示すものを使用した。
アルコール化合物1:ジエチレングリコール(関東化学株式会社製)
アルコール化合物2:テトラエチレングリコール(関東化学株式会社製)
アルコール化合物3:ノナエチレングリコールモノメチルエーテル(関東化学株式会社製)
還元剤1:チオ硫酸ナトリウム(関東化学株式会社製)
還元剤2:亜硫酸ナトリウム(関東化学株式会社製)
還元剤3:二亜硫酸ナトリウム(関東化学株式会社製)
【0045】
【0046】
(地盤改良材の作製)
セメント系固化材(1)又は(2)に、発塵抑制剤1~12のいずれかを混合して地盤改良材を作製した。なお、セメント系固化材(1)及び(2)には下記に示すものを使用した。
セメント系固化材(1):タフロック3E型(住友大阪セメント製)
セメント系固化材(2):普通ポルトランドセメント:無水石膏=9:1
【0047】
(実施例1)
セメント系固化材(1)とアルコール化合物1との合計を100質量部として、アルコール化合物が3質量部となるようにセメント系固化材(1)と発塵抑制剤1とを混合して地盤改良材を作製した。表2に地盤改良材に含まれるセメント系固化材(1)、アルコール化合物1、還元剤1、及び水の含有量を示す。
【0048】
(実施例2)
発塵抑制剤1に代えて発塵抑制剤2を用いたこと以外、実施例1と同様に地盤改良材を作製した。表2に地盤改良材に含まれるセメント系固化材(1)、アルコール化合物1、還元剤1、及び水の含有量を示す。
【0049】
(実施例3)
発塵抑制剤1に代えて発塵抑制剤3を用いたこと以外、実施例1と同様に地盤改良材を作製した。表2に地盤改良材に含まれるセメント系固化材(1)、アルコール化合物1、還元剤1、及び水の含有量を示す。
【0050】
(実施例4)
発塵抑制剤1に代えて発塵抑制剤4を用いたこと以外、実施例1と同様に地盤改良材を作製した。表2に地盤改良材に含まれるセメント系固化材(1)、アルコール化合物1、還元剤1、及び水の含有量を示す。
【0051】
(実施例5)
発塵抑制剤1に代えて発塵抑制剤5を用いたこと以外、実施例1と同様に地盤改良材を作製した。表2に地盤改良材に含まれるセメント系固化材(1)、アルコール化合物1、還元剤1、及び水の含有量を示す。
【0052】
(実施例6)
発塵抑制剤1に代えて発塵抑制剤6を用いたこと以外、実施例1と同様に地盤改良材を作製した。表2に地盤改良材に含まれるセメント系固化材(1)、アルコール化合物1、還元剤2、及び水の含有量を示す。
【0053】
(実施例7)
発塵抑制剤1に代えて発塵抑制剤7を用いたこと以外、実施例1と同様に地盤改良材を作製した。表2に地盤改良材に含まれるセメント系固化材(1)、アルコール化合物1、還元剤3、及び水の含有量を示す。
【0054】
(実施例8)
発塵抑制剤1に代えて発塵抑制剤8を用いたこと以外、実施例1と同様に地盤改良材を作製した。表2に地盤改良材に含まれるセメント系固化材(1)、アルコール化合物2、還元剤1、及び水の含有量を示す。
【0055】
(実施例9)
発塵抑制剤1に代えて発塵抑制剤9を用いたこと以外、実施例1と同様に地盤改良材を作製した。表2に地盤改良材に含まれるセメント系固化材(1)、アルコール化合物3、還元剤1、及び水の含有量を示す。
【0056】
(比較例1)
セメント系固化材(1)のみで地盤改良材を作製した。
【0057】
(比較例2)
発塵抑制剤1に代えて発塵抑制剤11を用いたこと以外、実施例1と同様に地盤改良材を作製した。表2に地盤改良材に含まれるセメント系固化材(1)、アルコール化合物1、及び還元剤1の含有量を示す。
【0058】
(比較例3)
発塵抑制剤1に代えて発塵抑制剤12を用いたこと以外、実施例1と同様に地盤改良材を作製した。表2に地盤改良材に含まれるセメント系固化材(1)、及びアルコール化合物1の含有量を示す。
【0059】
(比較例4)
発塵抑制剤1に代えて発塵抑制剤10を用いたこと以外、実施例1と同様に地盤改良材を作製した。表2に地盤改良材に含まれるセメント系固化材(1)、アルコール化合物1、還元剤1、及び水の含有量を示す。
【0060】
(実施例10)
セメント系固化材(1)に代えてセメント系固化材(2)を用いたこと以外、実施例1と同様に地盤改良材を作製した。表2に地盤改良材に含まれるセメント系固化材(2)、アルコール化合物1、還元剤1、及び水の含有量を示す。
【0061】
(実施例11)
発塵抑制剤1に代えて発塵抑制剤2を用いたこと以外、実施例10と同様に地盤改良材を作製した。表2に地盤改良材に含まれるセメント系固化材(2)、アルコール化合物1、還元剤1、及び水の含有量を示す。
【0062】
(実施例12)
発塵抑制剤1に代えて発塵抑制剤3を用いたこと以外、実施例10と同様に地盤改良材を作製した。表2に地盤改良材に含まれるセメント系固化材(2)、アルコール化合物1、還元剤1、及び水の含有量を示す。
【0063】
(実施例13)
発塵抑制剤1に代えて発塵抑制剤4を用いたこと以外、実施例10と同様に地盤改良材を作製した。表2に地盤改良材に含まれるセメント系固化材(2)、アルコール化合物1、還元剤1、及び水の含有量を示す。
【0064】
(実施例14)
発塵抑制剤1に代えて発塵抑制剤5を用いたこと以外、実施例10と同様に地盤改良材を作製した。表2に地盤改良材に含まれるセメント系固化材(2)、アルコール化合物1、還元剤1、及び水の含有量を示す。
【0065】
(実施例15)
発塵抑制剤1に代えて発塵抑制剤6を用いたこと以外、実施例10と同様に地盤改良材を作製した。表2に地盤改良材に含まれるセメント系固化材(2)、アルコール化合物1、還元剤2、及び水の含有量を示す。
【0066】
(実施例16)
発塵抑制剤1に代えて発塵抑制剤7を用いたこと以外、実施例10と同様に地盤改良材を作製した。表2に地盤改良材に含まれるセメント系固化材(2)、アルコール化合物1、還元剤3、及び水の含有量を示す。
【0067】
(実施例17)
発塵抑制剤1に代えて発塵抑制剤8を用いたこと以外、実施例10と同様に地盤改良材を作製した。表2に地盤改良材に含まれるセメント系固化材(2)、アルコール化合物2、還元剤1、及び水の含有量を示す。
【0068】
(実施例18)
発塵抑制剤1に代えて発塵抑制剤9を用いたこと以外、実施例10と同様に地盤改良材を作製した。表2に地盤改良材に含まれるセメント系固化材(2)、アルコール化合物3、還元剤1、及び水の含有量を示す。
【0069】
(比較例5)
セメント系固化材(2)のみで地盤改良材を作製した。
【0070】
(比較例6)
発塵抑制剤1に代えて発塵抑制剤11を用いたこと以外、実施例10と同様に地盤改良材を作製した。表2に地盤改良材に含まれるセメント系固化材(2)、アルコール化合物1、及び還元剤1の含有量を示す。
【0071】
(比較例7)
発塵抑制剤1に代えて発塵抑制剤12を用いたこと以外、実施例10と同様に地盤改良材を作製した。表2に地盤改良材に含まれるセメント系固化材(2)、及びアルコール化合物1の含有量を示す。
【0072】
(比較例8)
発塵抑制剤1に代えて発塵抑制剤10を用いたこと以外、実施例10と同様に地盤改良材を作製した。表2に地盤改良材に含まれるセメント系固化材(2)、アルコール化合物1、還元剤1、及び水の含有量を示す。
【0073】
【0074】
(供試体の作製)
試料土1Lに対して、実施例1~18、及び比較例1~8のいずれかの地盤改良材200gを添加し、モルタルミキサー(株式会社篠原製作所製)で混合した。混合後、JCAS-L01:2006「セメント協会標準試験方法 セメント系固化材による改良体の強さ試験方法」に準拠して供試体を作製した。作製した供試体を20℃、90%RHの条件で養生した後、各試験を行った。なお、試料土には下記に示すものを使用した。
試料土:火山灰質粘性土(湿潤密度1.282Mg/m3、自然含水比157.4%)
【0075】
(発塵試験)
発塵試験は、舗装調査・試験法便覧(平成31年版)に記載の土質安定材の発塵試験方法に準拠して行った。発塵試験に用いられた地盤改良材は、作製後密封状態で7日間保管したものを用いた。
【0076】
(一軸圧縮試験)
一軸圧縮試験は、材齢28日の供試体を用い、JIS A 1216:2020に準拠して行った。
【0077】
(六価クロム、ふっ素溶出試験)
六価クロム、ふっ素溶出試験は、材齢7日の供試体を用い、環境庁告示第46号(平成3年8月23日)に準拠して行った。
【0078】
また、発塵試験、一軸圧縮試験、及び六価クロム、ふっ素溶出試験によって得られた値について、〇×の判定を行った。以下に発塵試験、一軸圧縮試験、及び六価クロム、ふっ素溶出試験における判定基準を示す。
発塵量 〇:50CPM以下。
×:50CPMより大きい。
一軸圧縮強さ 〇:実施例1~9、比較例2~4では、比較例1の値よりも大きい。実施例10~18、比較例6~8では、比較例5の値よりも大きい。
×:実施例1~9、比較例2~4では、比較例1の値以下。実施例10~18、比較例6~8では、比較例5の値以下。
六価クロム溶出試験 〇:実施例1~9、比較例2~4では、比較例1の値未満。実施例10~18、比較例6~8では、比較例5の値未満。
×:実施例1~9、比較例2~4では、比較例1の値以上。実施例10~18、比較例6~8では、比較例5の値以上。
ふっ素溶出試験 〇:実施例1~9、比較例2~4では、比較例1の値未満。実施例10~18、比較例6~8では、比較例5の値未満。
×:実施例1~9、比較例2~4では、比較例1の値以上。実施例10~18、比較例6~8では、比較例5の値以上。
【0079】
実施例1~18、比較例1~8を用いて作製した供試体による各試験の結果を表3に示す。
【0080】
【0081】
実施例1~9の地盤改良材は、セメント系固化材のみからなる地盤改良材を用いた比較例1の地盤改良材と比べて発塵量が抑えられた。さらに実施例1~9の地盤改良材を用いた供試体は、比較例1の供試体と比べて、一軸圧縮強さを増大させ、六価クロム及びふっ素の溶出量を小さくした。また、セメント系固化材の種類を代えた実施例10~18の地盤改良材についても、比較例5の地盤改良材と比べて発塵量が抑えられた。さらに実施例10~18の地盤改良材を用いた供試体についても、比較例5の地盤改良材を用いた供試体と比べて、一軸圧縮強さを増大させ、六価クロム及びふっ素の溶出量を小さくした。以上より、本発明の構成要件をすべて満たす発塵抑制剤を用いた地盤改良材は、地盤改良材と対象土との撹拌、混合による発塵を抑制すると共に、改良土の一軸圧縮強さの低下を抑え、かつ六価クロム及びふっ素の溶出を抑えることが可能であることが示された。