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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090698
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】バーナ及び当該バーナを有する燃焼器
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/22 20060101AFI20240627BHJP
   F23D 14/48 20060101ALI20240627BHJP
   F02C 7/232 20060101ALI20240627BHJP
   F23R 3/28 20060101ALI20240627BHJP
   F23R 3/32 20060101ALI20240627BHJP
   F02C 7/22 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
F23D14/22 G
F23D14/48 B
F02C7/232
F23R3/28 B
F23R3/32
F02C7/22 C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206757
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】株式会社三井E&S
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲路▼宇
(72)【発明者】
【氏名】高山 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】西江 俊介
【テーマコード(参考)】
3K017
3K019
【Fターム(参考)】
3K017CA05
3K017CA06
3K017CB02
3K017CD02
3K019AA05
3K019AA06
(57)【要約】
【課題】逆火の発生を防止し、また、燃焼時の窒素化合物NOxの発生を抑制する。
【解決手段】本発明のバーナは、燃料及び空気の混合気を燃焼室にて燃焼させるバーナであって、前記空気を前記燃焼室に向けて供給する流路を有する第1の供給管と、前記第1の供給管の前記流路に挿入されて、前記燃料の供給を行う第2の供給管と、前記第2の供給管の先端部に設けられて、前記第1の供給管の内壁面との間で前記流路を絞る絞り部を形成する絞り形成部と、前記流路の上流側に向けて前記燃料を噴出する噴出孔を有する本体部と、前記第2の供給管にて供給される前記燃料を前記本体部に送る管状部と、を含み、前記本体部が前記燃焼室の近傍に配置される燃料噴出部と、前記第1の供給管と前記燃焼室との接続部分に設けられて、前記流路から前記燃焼室に流入する前記空気を前記燃焼室内で拡散させる拡散部と、を有することを特徴とする。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料及び空気の混合気を燃焼室にて燃焼させるバーナであって、
前記空気を前記燃焼室に向けて供給する流路を有する第1の供給管と、
前記第1の供給管の前記流路に挿入されて、前記燃料の供給を行う第2の供給管と、
前記第2の供給管の先端部に設けられて、前記第1の供給管の内壁面との間で前記流路を絞る絞り部を形成する絞り形成部と、
前記流路の上流側に向けて前記燃料を噴出する噴出孔を有する本体部と、前記第2の供給管にて供給される前記燃料を前記本体部に送る管状部と、を含み、前記本体部が前記燃焼室の近傍に配置される燃料噴出部と、
前記第1の供給管と前記燃焼室との接続部分に設けられて、前記流路から前記燃焼室に流入する前記空気を前記燃焼室内で拡散させる拡散部と、
を有することを特徴とするバーナ。
【請求項2】
請求項1に記載のバーナにおいて、
前記第1の供給管の内径をD1、前記絞り形成部の外径をD2、前記管状部の外径をD3としたとき、
前記第1の供給管の内径D1に対する、前記絞り形成部の外径D2の比率は0.75から0.9に設定され、
前記第1の供給管の内径D1に対する、前記管状部の外径D3の比率は0.05から0.2に設定される
ことを特徴とするバーナ。
【請求項3】
請求項1に記載のバーナにおいて、
前記第1の供給管の内径をD1、前記本体部から前記燃焼室までの距離をH1としたとき、
前記第1の供給管の内径D1に対する、前記本体部から前記燃焼室までの距離H1の比率は0.15から0.45に設定される
ことを特徴とするバーナ。
【請求項4】
請求項1に記載のバーナにおいて、
前記拡散部は、前記第1の供給管と前記燃焼室との接続部分に設けた円弧状の曲面であり、
前記第1の供給管の内径をD1、前記拡散部の半径をR1としたとき、
前記第1の供給管の内径D1に対する、前記拡散部の半径R1の比率は0.2以上に設定される
ことを特徴とするバーナ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のバーナと、
前記バーナから送り込まれる混合気を燃焼させる燃焼室を内部に有する内筒と、
前記内筒の外側に配置されるとともに、前記内筒との間に前記バーナに前記空気を供給する空間を形成する外筒と、
を備えたことを特徴とする燃焼器。
【請求項6】
バーナを構成する第1の供給管の内部に流れ込まれる空気により、前記第1の供給管の内部に第1の渦を生成する工程と、
前記第1の供給管の内部に挿入された第2の供給管により供給される燃料を、前記第2の供給管の先端に設けたノズルを用いて、前記第1の供給管の上流側に向けて噴出させる工程と、
前記第1の供給管の内部に流れ込む前記空気と、前記ノズルから噴出される前記燃料と、を、前記第1の渦により、当該燃料が燃料過多となる状態に混合する工程と、
前記第1の渦により混合される前記空気と前記燃料との混合気を、燃焼室の内部で一次燃焼させる工程と、
前記第1の供給管と前記燃焼室との接続部分に設けられた拡散部により、前記第1の供給管から前記燃焼室に送り込まれる前記空気を前記燃焼室の内部で拡散させて、前記燃焼室の内部に第2の渦を生成する工程と、
前記一次燃焼により未燃焼となる前記燃料と、前記燃焼室に送り込まれる前記空気とを、前記第2の渦により混合する工程と、
前記第2の渦により混合された前記燃料と前記空気との混合気を前記燃焼室の内部で二次燃焼させる工程と、
を有することを特徴とする燃焼方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンなどに用いられるバーナ及び当該バーナを有する燃焼器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン燃焼器において、水素などの燃焼速度が速いガスの燃焼の場合、燃焼範囲が広く、燃焼温度も高いため大量の窒素化合物NOxが発生する。対策として燃焼器に水蒸気や水を噴射することで、非常に高い脱硝効果を達成できるが、一般的にはガスタービンの排熱を利用した排熱ボイラの蒸気を使用するため、ガスタービンの総合熱効率が低下する。一方、ドライ低NOx燃焼方式は総合熱効率を維持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-196073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、天然ガスなど燃焼速度が比較的遅い燃料は希薄予混合でドライ低NOx燃焼を達成できるが、水素などのガスは燃焼速度が速く、希薄予混合の場合は逆火のリスクがある。
【0005】
本発明は、上記に記載した課題を解決するために発明されたものであり、本燃焼器により、燃焼時の窒素化合物(NOx)の発生を抑制するとともに、逆火の発生を抑制するようにしたバーナ及び当該バーナを有する燃焼器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に記載した課題を解決するために、本発明の一側面のバーナは、燃料及び空気の混合気を燃焼室にて燃焼させるバーナであって、空気を燃焼室に向けて供給する流路を有する第1の供給管と、第1の供給管の流路に挿入されて、燃料の供給を行う第2の供給管と、第2の供給管の先端部に設けられて、第1の供給管の内壁面との間で流路を絞る絞り部を形成する絞り形成部と、流路の上流側に向けて燃料を噴出する噴出孔を有する本体部と、第2の供給管にて供給される燃料を本体部に送る管状部と、を含み、本体部が燃焼室の近傍に配置される燃料噴出部と、第1の供給管と燃焼室との接続部分に設けられて、流路から燃焼室に流入する空気を燃焼室内で拡散させる拡散部と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、第1の供給管の内径をD1、絞り形成部の外径をD2、管状部の外径をD3としたとき、第1の供給管の内径D1に対する、絞り形成部の外径D2の比率は0.75から0.9に設定され、第1の供給管の内径D1に対する、管状部の外径D3の比率は0.05から0.2に設定されるものである。
【0008】
また、第1の供給管の内径をD1、本体部から燃焼室までの距離をH1としたとき、第1の供給管の内径D1に対する、本体部から燃焼室までの距離H1の比率は0.15から0.45に設定されるものである。
【0009】
また、拡散部は、第1の供給管と燃焼室との接続部分に設けた円弧状の曲面であり、第1の供給管の内径をD1、拡散部の半径をR1としたとき、第1の供給管の内径D1に対する、拡散部の半径R1の比率は0.2以上に設定されるものである。
【0010】
また、本発明の一側面の燃焼器は、上記記載のバーナと、前記バーナから送り込まれる混合気を燃焼させる燃焼室を内部に有する内筒と、前記内筒が収納されるとともに、収納される前記内筒との間に、前記予混合管に空気を供給する空間を有する外筒と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一側面の燃焼方法は、バーナを構成する第1の供給管の内部に流れ込まれる空気により、前記第1の供給管の内部に第1の渦を生成する工程と、前記第1の供給管の内部に挿入された第2の供給管により供給される燃料を、前記第2の供給管の先端に設けたノズルを用いて、前記第1の供給管の上流側に向けて噴出させる工程と、前記第1の供給管の内部に流れ込む前記空気と、前記ノズルから噴出される前記燃料と、を、前記第1の渦により、当該燃料が燃料過多となる状態に混合する工程と、前記第1の渦により混合される前記空気と前記燃料との混合気を、前記燃焼室の内部で一次燃焼させる工程と、前記第1の供給管と前記燃焼室との接続部分に設けられた拡散部により、前記第1の供給管から前記燃焼室に送り込まれる空気を前記燃焼室の内部で拡散させて、前記燃焼室の内部に第2の渦を生成する工程と、前記一次燃焼により未燃焼となる燃料と、前記燃焼室に送り込まれる前記空気とを、前記第2の渦により混合する工程と、前記第2の渦により混合された前記燃料と前記空気との混合気を前記燃焼室の内部で二次燃焼させる工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、逆火の発生を防止し、同時に、燃焼時の窒素化合物(NOx)の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、燃焼器の一構成を示す図である。
図2図2は、バーナの構成を示す断面図である。
図3図3は、バーナ及び燃焼室を流れる空気の流れを示す図である。
図4図4は、燃焼室内における温度分布を示す図である。
図5図5は、燃焼室内における窒素化合物(NOx)の分布を示す図である。
図6図6は、絞り形成部の他の実施形態を示す図である。
図7図7は、ノズルの他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明における燃焼器の一実施形態について、図面を用いて説明する。図1は、燃焼器10の概略構成を示す断面図である。燃焼器10は、詳細は後述するが、流入する空気により渦を発生させて、燃料と空気とを燃料過多の状態となるように混合させて、その混合気を燃焼室内で一次燃焼させる。また、燃焼器10は、燃焼室に流入する空気により燃焼室内に渦を発生させて、一次燃焼により未燃焼の燃料と空気とを混合して、その混合気を二次燃焼させる。この構成により、燃料である水素の逆火の発生を抑制することができる。なお、以下では、燃料として水素などの燃焼速度が速いガスを例に挙げているが、例えば天然ガスを燃料として用いることも可能である。
【0015】
燃焼器10は、例えば不図示のガスタービンなどに設けられ、燃焼にて生成される燃焼ガスを不図示のタービンに送ることで、当該タービンを回転させるものである。燃焼器10は、図1に示すように、内筒20と、外筒30と、バーナ40と、を有している。なお、燃焼室21において燃焼を開始する際に点火を行うバーナをパイロットバーナと称し、燃焼に必要となる燃料及び空気を燃焼室21に送り込むバーナ40をメインバーナと称する場合もある。
【0016】
内筒20は、不図示のパイロットバーナにより点火した火炎を用いて、或いは、プラグから直接着火させることで、バーナ40により生成された混合気を燃焼させる燃焼室21を内部に有する。内筒20は、中心軸L方向における上端部が天蓋22により閉口された、例えば円筒状などの筒形状の部材である。天蓋22は、例えば、その中心部23が外周縁部24に対して、上方に突出した形状となっている。
【0017】
図示は省略するが、天蓋22の中心部23には、パイロットバーナが設置されている。また、天蓋22の中心部23には、燃焼器10の平面視においてパイロットバーナを取り囲むように、バーナ40が、内筒20の中心軸(L)方向を中心として所定角度間隔で、複数設けられている。また、天蓋22の外周縁部24にも、バーナ40が、内筒20の中心軸(L)方向を中心として所定角度間隔で、複数設けられている。なお、バーナ40の構成については、後述する。
【0018】
外筒30は、内筒20と同様に、中心軸(L)方向における上端部が閉口した、例えば円筒状などの筒形状の部材である。外筒30は、内筒20を収納した状態で保持される。なお、外筒30は、内筒20が同軸となる状態で、内筒20を収納している。外筒30の内部に内筒20を収納した状態では、収納した内筒20との間に空間31が形成されている。空間31は、外筒30の中心軸(L)方向における下端部から外筒30の内部へと供給される空気を、天蓋22に設けたパイロットバーナや、バーナ40の空気供給管41に向けて流す供給空間(以下、供給空間31と称する)として機能する。
【0019】
図示は省略するが、パイロットバーナは、内筒20が有する燃焼室21に向けて、燃料及び空気を各々噴出させて、燃料及び空気を燃焼室21の内部で拡散混合させて、拡散混合される燃料を点火ロッドによる点火により燃焼させる。この燃焼により、バーナ40から燃焼室21に流入する混合気が燃焼される。
【0020】
バーナ40は、燃料及び空気を混合させて混合気を生成し、当該混合気を燃焼室21に供給する。なお、詳細は後述するが、図2に示すように、バーナ40は、空気供給管41と、燃料供給管42とから構成されている。なお、バーナ40の空気供給管41は、請求項に記載の第1の供給管に、燃料供給管42は請求項に記載の第2の供給管にそれぞれ相当する。
【0021】
空気供給管41は、各々の中心軸(L2)方向が内筒20の中心軸(L)方向と水平となるように、内筒20の天蓋22の中心部及び外周縁部に設けられている。空気供給管41には、その上端部に空気が流入する流入口41aと、当該流入口41aから流入する空気を燃焼室21に供給する流路51とを有している。
【0022】
また、空気供給管41の下端部と内筒20の天蓋22との接続部分には拡散部56が設けられる。拡散部56は、例えば円弧状の曲面である。拡散部56を設けることで、空気が空気供給管41の流路51から燃焼室21へと流れ込むときに、当該空気が拡散部56に沿って流れることで、燃焼室21への流入時に拡散される。
【0023】
燃料供給管42は、燃料を空気供給管41の流路51に向けて供給する。燃料供給管42は、外筒30の上端面から内筒20の天蓋22に向けて延出され(図1参照)、内筒20の天蓋22に設けられた空気供給管41のそれぞれに挿入された状態で保持されている。
【0024】
燃料供給管42は、当該燃料供給管42の先端部に絞り形成部42aを有する。絞り形成部42aは、燃料供給管42の外周面から当該燃料供給管42の径方向に突出している。なお、絞り形成部42aの形状としては、例えば燃料供給管42の先端に向けて、外径が拡径された円錐形状である。例えば、燃料供給管42が空気供給管41の内部に挿入された状態で保持されると、絞り形成部42aは、空気供給管41の下流側において、空気供給管41の内壁面41bとの間に絞り部52を形成する。絞り部52を空気供給管41の内部に設けることで、絞り部52を通過する前後の空気の流速が変化して、絞り部52を通過した空気の一部が絞り部52の下流側で渦71を形成する。なお、絞り部52を通過する空気の流速は、例えば80~100m/sに設定されることが好ましい。これにより、絞り部52を通過した空気の一部が絞り部52の下流側で、燃料と空気とを当該燃料が過多となる状態で混合させるのに適した強さの渦71を形成することができる。ここで、渦71が請求項に記載の第1の渦に相当する。
【0025】
燃料供給管42の先端には、ノズル53が設けられている。ノズル53は請求項に記載の燃料噴出部に相当する。ノズル53は、燃料供給管42の先端面42bから、燃焼室21に向けて延出されている。ノズル53は、本体部61と、管状部62とを有する。本体部61は、燃料供給管42の先端面42b側に燃料を噴出する噴出孔63を複数有している。複数の噴出孔63は、中心軸(L2)方向を中心として、所定の角度間隔を空けて複数設けられている。
【0026】
(バーナ40内での空気及び燃料の混合から、燃焼までの流れの説明)
次に、バーナ40内での空気及び燃料の混合から、燃焼までの流れについて、主に図3を参照して説明する。ガスタービンの駆動に伴って、燃焼器10には、空気や燃料が供給される。燃焼器10に供給される空気は、燃焼器10の内筒20と外筒30との間に設けられた供給空間31に流入する。供給空間31に流入した空気は、空気供給管41の上端部に設けた流入口41aから当該空気供給管41の内部に流入する。空気供給管41の内部に流入した空気は、空気供給管41と燃料供給管42との間の流路51を、燃焼室21に向けて流れる。
【0027】
上述したように、燃料供給管42は、その先端部に絞り形成部42aを有している。したがって、空気供給管41と燃料供給管42との間の流路51には、空気供給管41の内壁面と、燃料供給管42の絞り形成部42aにより、絞り部52が形成されている。
【0028】
燃焼室21に向けて流れる空気が絞り部52を通過するとき、空気の流速が変化する。例えば、空気供給管41の内壁面41bの近傍を流れる空気は、そのまま、空気供給管41の内壁面41bの近傍を流れる。一方、燃料供給管42の絞り形成部42aに沿って流れる空気は、絞り部52を通過すると、燃料供給管42の絞り形成部42aの下流側で、空気供給管41の中心軸L2方向側に向けた渦71を形成する。
【0029】
一方、燃焼器10に供給される燃料(水素などの燃焼速度が速いガス)は、燃料供給管42を流れた後、ノズル53に到達する。そして、ノズル53に到達した燃料は、ノズル53に設けた噴出孔63から、燃料供給管42の先端面42bに向けて、すなわち、空気供給管41の上流側に向けて噴出される。上述したように、空気供給管41の内部では、絞り部52を通過する空気によって、燃料供給管42の絞り形成部42aの下流側に渦71が形成される。したがって、燃料供給管42の絞り形成部42aの先端面42bに向けて噴出される燃料の一部は、渦71によって、空気と急速混合(予混合)される。なお、絞り部52を通過して渦71を形成する空気と当該渦71に向けて噴出される燃料とは、空気に対する燃料の当量比が1以上の状態で、すなわち、燃料過多の状態で混合される。なお、燃料過多の状態で混合される混合気は、一部が完全に混合(予混合)されるが、噴出される燃料が全て完全に混合されずに燃焼室21に向けて流れる過程で空気と拡散混合される。
【0030】
ガスタービンが駆動すると、パイロットバーナによって点火される。したがって、バーナ40から燃焼室21へと供給される混合気は、拡散部56の近傍の領域76において燃焼される(一次燃焼)。すなわち、一次燃焼では、バーナ40の内部における空気と燃料との予混合により生成された混合気の燃焼(予混合燃焼)と、燃焼室21へと流れる空気と燃料との拡散混合により生成される混合気の燃焼(拡散燃焼)とが同時に行われる。上述したように、バーナ40の内部における空気と燃料との予混合により生成された混合気は、燃料過多の状態である。したがって、一次燃焼の一部である予混合燃焼では、混合気に含まれる空気濃度に応じた燃料のみが燃焼されて、未燃焼の燃料は、一次燃焼により生成されるガスや水蒸気とともに、燃焼室21の内部へと流れる。
【0031】
ところで、絞り部52を通過した空気のうち、空気供給管41の内壁面41bに沿って流れる空気は、燃焼室21へと流れ込んだときに燃焼室21の内部に拡散される。このとき、燃焼室21では、渦71によって混合された空気と燃料との混合気が燃焼室21に流れ込んでおり燃焼室21の内部で燃焼されている。したがって、空気供給管41の流路51から燃焼室21の内部に拡散された空気は、燃焼室21の内部で拡散した後、混合気が一次燃焼する領域76に向けて流れる。その結果、燃焼室21の内部において、渦72が生成される。なお、渦72は、例えば空気供給管41の内径以上の大きさとなる。なお、渦72は、請求項に記載の第2の渦に相当する。燃焼室21への空気の流入により渦72が形成されると、一次燃焼において未燃焼の燃料は、混合気の燃焼により生成される水蒸気とともに、渦72により再び空気と急速混合される。この急速混合された混合気は、一次燃焼により発生する火炎により、一次燃焼が行われる領域76よりも下方となる領域77で燃焼される(二次燃焼)。この二次燃焼により、一次燃焼において未燃焼となる燃料が燃焼される。そして、二次燃焼によって生成されるガスは、一次燃焼によって生成されるガスとともに、内筒20(図1参照)の下方へと流れて、不図示のタービンを回転させる。
【0032】
一次燃焼が行われる領域76では、温度が上昇して、混合気に含まれる空気が化学反応して窒素化合物NOxを生成する。しかしながら、混合気に含まれる空気のほとんどが燃料の燃焼に使用されるため、空気が化学反応することによる窒素化合物NOxの生成量は抑制される。
【0033】
また、二次燃焼では、燃料の燃焼により二次燃焼が行われる領域77における温度が上昇するが、一次燃焼によって生成される水蒸気が気化することで、二次燃焼が行われる領域77において、温度が過度に上昇することを防止している。したがって、二次燃焼において、混合気に含まれる空気が化学反応しにくくなり、窒素化合物NOxの生成量は抑制される。なおかつ、渦72により再び空気と急速混合されることで、高温の燃焼ガスが希釈され、高温によるサーマル窒素化合物NOxの生成過程を止める。例えば、二次燃焼により生成されたガスは高温のままになると、高温によるサーマル窒素化合物NOxは生成し続ける。したがって、燃焼室21の全域で生成される窒素化合物NOxの生成量は抑制される。
【0034】
(燃料供給管42の絞り形成部42aの外径や、ノズル53の管状部62の外径について)
上述したバーナ40の構成において、絞り部52を通過した空気により、絞り部52の下流側に渦71を生成して、空気と燃料とは、例えば空気に対する燃料の当量比が燃料過多、すなわち、当量比が1以上となるように混合される。図2に示すように、空気供給管41の内径D1、燃料供給管42の絞り形成部42aの外径の最大値D2、ノズル53の管状部62の外径D3は、以下の(1)式、(2)式を満足することが好ましい。
【0035】
D2/D1=0.75~0.9・・・(1)
D3/D1=0.05~0.2・・・(2)
【0036】
また、燃焼室21内に流れ込む空気を拡散して、混合気が燃焼される領域76に空気が流れることで生成される渦72の大きさを空気供給管41の内径の1倍以上とするためには、拡散部56における半径R1は、空気供給管41の内径D1に対して、以下の(3)式を満足することが好ましい。
【0037】
R1/D1≧0.2・・・(3)
【0038】
さらに、燃焼室21に送り込まれる混合気を燃焼させる際に、バーナ40の内部での燃焼を防止する、すなわち、逆火の発生を防止するために、ノズル53の先端から燃焼室21までの距離H1は、空気供給管41の内径D1に対して、以下の(4)式を満足することが好ましい。
【0039】
H1/D1=0.15~0.45・・・(4)
【0040】
(実験)
最後に、上記構成の燃焼器において、燃料を燃焼室21で燃焼させたときの燃焼室21内の温度分布や、生成される窒素化合物NOxの分布について説明する。図4に示すように、燃焼室21の内部で燃料を燃焼させると、図3に示す一次燃焼が行われる領域76や、二次燃焼が行われる領域77において高温となるものの局地的に高温となる領域が少ないことが分かった。また、図5に示すように、燃焼室21の内部において、二次燃焼が行われる領域77では窒素化合物NOxの濃度は高くなるが、燃焼室21における窒素化合物NOxの濃度は全体的に少なくなることが分かった。したがって、本発明における燃焼器10を用いた燃焼室21内での燃焼において、窒素化合物NOxの発生を抑えることができることが分かった。
【0041】
本実施の形態において、空気供給管41の内壁面41bとの間で絞り部52を形成するため、燃料供給管42に絞り形成部42aを設けているが、絞り形成部42aの形状は、図2に示すように、円錐形状からなる絞り形成部42aに限定されるものではない。例えば、図6に示すように、例えば、燃料供給管80の先端に、燃料供給管80の外径よりも大きい外径を有する円板状のフランジ部81を設け、このフランジ部81を絞り形成部として機能させることも可能である。
【0042】
また、本発明の実施の形態において、燃料供給管42の先端に設けられるノズル53の形状の詳細については説明を省略しているが、燃料を燃料供給管42の先端面42bに向けて噴出できれば、図2に示すノズル53の本体部61の形状に限定する必要はない。図7に示すように、例えば、燃料供給管42の先端面42bに対峙し、噴出孔82が形成される面83を斜面とした本体部84を有するノズル85としてもよい。
【0043】
(効果のまとめ)
上述したように、バーナ40によれば、燃料及び空気の混合気を燃焼室21に送り込むバーナ40であって、空気を燃焼室21に向けて供給する流路51を有する空気供給管41と、空気供給管41の流路51に挿入されて、燃料の供給を行う燃料供給管42と、燃料供給管42の先端部に設けられて、空気供給管41の内壁面41bとの間で流路51を絞る絞り部52を形成する絞り形成部42aと、流路51の上流側に向けて燃料を噴出する噴出孔63を有する本体部61と、燃料供給管42にて供給される燃料を本体部61に送る管状部62と、を含み、本体部61が燃焼室21の近傍に配置されるノズル53と、空気供給管41と燃焼室21との接続部分に設けられて、流路51から燃焼室21に流入する空気を燃焼室21内で拡散させる拡散部56と、を有することを特徴とする。
【0044】
これによれば、燃料が過多となる状態で予混合された混合気と、燃焼室21に向けて流れる燃料が空気と拡散混合された混合気とが燃焼室21の内部に送り込まれて、当該混合気が一次燃焼される。この一次燃焼では、混合気に含まれる空気は、ほとんどが燃焼により使用され、一次燃焼による温度上昇に伴った化学反応により生成される窒素化合物NOxの生成量が低減される。この一次燃焼においては、混合気に含まれる燃料の一部は未燃となるが、未燃となる燃料は、一次燃焼時に生成される水蒸気とともに流れて燃焼室21の内部で拡散される空気と混合されて二次燃焼される。この二次燃焼では、水蒸気を含んだ混合気を燃焼するため、燃料の燃焼することでの温度上昇が抑制される。その結果、二次燃焼に伴なった化学反応による窒素化合物NOxの生成が抑制される。なおかつ、渦72により再び空気と急速混合されることで、高温の燃焼ガスが希釈され、高温によるサーマル窒素化合物NOxの生成過程を止める。したがって、燃焼室21の内部において燃料を燃焼させたときに生成される窒素化合物NOxの総生成量が低減される。
【0045】
また、バーナ40では、燃焼室21の内部で拡散された空気と、一次燃焼において未燃焼となる燃料とが混合された混合気を、一次燃焼により生成される火炎を利用して二次燃焼を行うものであるから、例えばドライ燃焼方式の燃焼器で用いられるように、追い炊き燃焼用のバーナや、二次燃焼時に必要となる空気を供給する空気噴射ノズルなどの構成を、内筒20の下流側に配置する必要がなく、燃焼器10の全体の構成を簡素化することができ、また、燃焼器10を小型化できるという利点がある。また、空気噴射ノズルを用いた場合には、一次燃焼領域から流れる未燃焼の燃料と空気とを急速混合できない領域が発生する。しかしながら、バーナ40では、燃焼室21の内部に流れ込む空気によって燃焼室21の内部に渦72を発生させ、当該渦72により一次燃焼時に未燃焼となる燃料と空気とを、確実に、急速混合させることが可能となる。
【0046】
また、燃料供給管42に設けられるノズル53は、燃料を空気供給管41の流路51に対して、空気供給管41の上流側に噴出して、絞り部52を通過した空気により生成される渦によって空気と混合される。従来の予混合管では、当該予混合管の上流側で燃料及び空気の混合を行うため、燃焼室21における燃焼による火炎がバーナ40の内部に入り込んで、バーナ40の上流側まで到達する、所謂、逆火が発生する。しかしながら、本発明のバーナでは、空気供給管41の内部を流れる空気を利用して、バーナ40の下流側で燃料と混合させるので、燃焼室21における燃焼による火炎がバーナ40の内部に入り込んで、バーナ40の上流側まで到達する、所謂、逆火の発生を防止することができる。
【0047】
また、空気供給管41の内径をD1、絞り形成部42aの外径の最大値をD2、管状部62の外径をD3としたとき、空気供給管41の内径D1に対する、絞り形成部42aの外径D2の比率は0.75から0.9に設定され、空気供給管41の内径D1に対する、管状部62の外径D3の比率は0.05から0.2に設定されるものである。
【0048】
例えば、空気供給管41の内径D1に対する、絞り形成部42aの外径D2の比率は0.75未満となる場合、絞り部52の下流側に生成される渦71によって、空気と燃料とが混合されると、混合時の空気が少なくなり、一次燃焼時に未燃焼となる燃料が多く発生する。また、空気が燃焼室21の内部に流れ込んだときに、燃焼室21の内部で生成される渦72において、一次燃焼により未燃となる燃料と急速混合されなくなる。その結果、燃焼室21における二次燃焼における燃焼温度が上昇してしまうので、二次燃焼に伴なった窒素化合物NOxの発生量が増加する。
【0049】
一方、空気供給管41の内径D1に対する、絞り形成部42aの外径D2の比率を0.75から0.9に設定することで、一次燃焼時に未燃焼となる燃料の発生を抑え、また、一次燃焼により未燃となる燃料と空気とを急速混合させることが可能となる。その結果、二次燃焼に伴なった窒素化合物NOxの発生量を抑制することが可能となる。
【0050】
また、空気供給管41の内径をD1、本体部61から燃焼室21までの距離をH1としたとき、空気供給管41の内径D1に対する、本体部61から燃焼室21までの距離H1の比率は0.15から0.45に設定されるものである。
【0051】
これによれば、燃料が過多の状態で空気と混合された混合気を燃焼室21の内部にすぐに送り込むことができる。これにより、燃焼室21における混合気の燃焼による火炎がバーナ40の内部に入り込んで、バーナ40の内部で混合気を燃焼させる、所謂、逆火の発生を防止することができる。
【0052】
また、拡散部56は、空気供給管41と燃焼室21との接続部分に設けた円弧状の曲面であり、空気供給管41の内径をD1、拡散部56の半径をR1としたとき、空気供給管41の内径D1に対する、拡散部56の半径R1の比率は0.2以上に設定されるものである。
【0053】
これによれば、燃焼室21に流れ込む空気は、燃焼室21の内部で拡散される。このとき、空気供給管41の内径D1に対する、拡散部56の半径R1の比率が0.2未満となる時、燃焼室21の内部では、燃焼室21に流れ込む空気は、燃焼室21の内部で渦72を生成することはない。したがって、燃焼室21での一次燃焼により発生する高熱の燃焼ガスは、そのまま燃焼室21の下流側に流れる。その結果、高熱のガスの影響を受けて、燃焼室21の内部の空気が化学反応して、窒素化合物NOxが生成され続ける。一方、本発明では、空気供給管41の内径D1に対する、拡散部56の半径R1の比率を0.2以上とすることで、燃焼室21に流れ込む空気によって燃焼室21の内部に渦72を生成する。この渦72の生成により、一次燃焼時に未燃焼となる燃料及び一次燃焼により生成される水蒸気が空気と急速混合され、また、この急速混合により、燃焼室21での一次燃焼により発生する高熱の燃焼ガスは希釈され、高温によるサーマル窒素化合物NOxの生成過程を止める。
【0054】
また、燃焼器10は、上記に記載のバーナ40と、バーナ40から送り込まれる混合気を燃焼させる燃焼室21を内部に有する内筒20と、内筒20の外側に配置されるとともに、内筒20との間にバーナ40に空気を供給する空間31を形成する外筒30と、を備えたことを特徴とする。
【0055】
これによれば、燃料が過多となる混合気が燃焼室21の内部に送り込まれて、当該混合気が一次燃焼される。この一次燃焼では、混合気に含まれる空気は、ほとんどが燃焼により使用され、一次燃焼による温度上昇に伴った化学反応により生成される窒素化合物NOxの生成量が低減される。この一次燃焼においては、混合気に含まれる燃料の一部は未燃となるが、未燃となる燃料は、一次燃焼時に生成される水蒸気とともに流れて燃焼室21の内部で拡散される空気と混合されて二次燃焼される。この二次燃焼では、水蒸気を含んだ混合気を燃焼するため、燃料の燃焼することでの温度上昇が抑制される。なおかつ、渦72により再び空気と急速混合されることで、高温の燃焼ガスが希釈され、高温によるサーマル窒素化合物NOxの生成過程を止める。その結果、二次燃焼に伴なった化学反応による窒素化合物NOxの生成が抑制される。したがって、燃焼室21の内部において燃料を燃焼させたときに生成される窒素化合物NOxの総生成量が低減される。
【0056】
また、上述したように、燃焼方法として、バーナ40を構成する空気供給管41の内部に流れ込まれる空気により、空気供給管41の内部に渦71を生成する工程と、空気供給管41の内部に挿入された燃料供給管42により供給される燃料を、燃料供給管42の先端に設けたノズル53を用いて、空気供給管41の上流側に向けて噴出させる工程と、空気供給管41の内部に流れ込む空気と、ノズル53から噴出される燃料と、を、渦71により、当該燃料が燃料過多となる状態に混合する工程と、渦71により混合される空気と燃料との混合気を、燃焼室21の内部で一次燃焼させる工程と、空気供給管41と燃焼室21との接続部分に設けられた拡散部56により、空気供給管41から燃焼室21に送り込まれる空気を燃焼室21の内部で拡散させて、燃焼室21の内部に渦72を生成する工程と、一次燃焼により未燃焼となる燃料と、燃焼室21に送り込まれる空気とを、渦72により混合する工程と、渦72により混合された燃料と空気との混合気を燃焼室21の内部で二次燃焼させる工程と、を有することを特徴とする。
【0057】
これによれば、燃料が過多となる混合気が燃焼室21の内部に送り込まれて、当該混合気が一次燃焼される。この一次燃焼では、混合気に含まれる空気は、ほとんどが燃焼により使用され、一次燃焼による温度上昇に伴った化学反応により生成される窒素化合物NOxの生成量が低減される。この一次燃焼においては、混合気に含まれる燃料の一部は未燃となるが、未燃となる燃料は、一次燃焼時に生成される水蒸気とともに流れて燃焼室21の内部で拡散される空気と混合されて二次燃焼される。この二次燃焼では、水蒸気を含んだ混合気を燃焼するため、燃料の燃焼することでの温度上昇が抑制される。その結果、二次燃焼に伴なった化学反応による窒素化合物NOxの生成が抑制される。なおかつ、渦72により再び空気と急速混合されることで、高温の燃焼ガスが希釈され、高温によるサーマル窒素化合物NOxの生成過程を止める。したがって、燃焼室21の内部において燃料を燃焼させたときに生成される窒素化合物NOxの総生成量が低減される。
【符号の説明】
【0058】
10…燃焼器
20…内筒
30…外筒
40…バーナ
41…空気供給管
42…燃料供給管
42a…絞り形成部
53…ノズル
61…本体部
62…管状部
63…噴出孔
71…渦
72…渦
76…一次燃焼が行われる領域
77…二次燃焼が行われる領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7