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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090746
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】体液吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20240627BHJP
   A61F 13/512 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A61F13/511 100
A61F13/512 200
A61F13/511 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206829
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アラスト アリレザ
(72)【発明者】
【氏名】小迫 裕介
(72)【発明者】
【氏名】松永 慶
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA03
3B200BA01
3B200BA06
3B200BA08
3B200BB03
3B200DC04
3B200DC07
3B200DC09
(57)【要約】
【課題】吸収体に体液を素早く吸収させて表面シートに体液が残るのを抑制しかつ吸収体から表面シートへの体液の逆戻りを抑制して、表面の濡れ感を改善した体液吸収性物品を提供する。
【解決手段】体液吸収性物品1は、表面シート2と、裏面シート4と、吸収体3と、を備え、表面シート2は、少なくとも一部の全域に互いに間隔をあけて形成されかつ該表面シート2を厚み方向に貫通する複数の開口部8と、開口部8に隣接して配置されかつ吸収体3の方と反対側に向かって突き出て吸収体3との間に空間を形成する複数の凸部7と、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性を有する表面シートと、液不透過性の裏面シートと、前記表面及び前記裏面シートの間に配置された吸収体と、を備え、
前記表面シートは、
少なくとも一部の全域に互いに間隔をあけて形成されかつ該表面シートを厚み方向に貫通する複数の開口部と、
前記開口部に隣接して配置されかつ前記吸収体の方と反対側に向かって突き出て前記吸収体との間に空間を形成する複数の凸部と、
を含む、体液吸収性物品。
【請求項2】
複数の前記開口部及び複数の前記凸部は、前記表面シートの厚み方向に直交する面方向における少なくとも一方向に沿って前記凸部と前記開口部が交互に並ぶように、配置される、請求項1に記載の体液吸収性物品。
【請求項3】
前記表面シートの厚み方向に平行な縦断面における前記凸部の形状が、前記凸部の下側に向かうに連れて幅が次第に広くなる形状である、請求項1に記載の体液吸収性物品。
【請求項4】
前記凸部の高さは、0.2mm以上3.0mm以下である、請求項1に記載の体液吸収性物品。
【請求項5】
前記表面シートは、
親水性を有しかつ前記吸収体側に配置された下層不織布と、
親水性を有し、前記下層不織布に対して前記吸収体と反対側に配置された上層不織布と、
を備え、
前記下層不織布の平均繊維径が前記上層不織布の平均繊維径よりも大きい、請求項1から4のいずれか一項に記載の体液吸収性物品。
【請求項6】
前記上層不織布の平均繊維径が1dtex以上2dtex以下であり、
前記下層不織布の平均繊維径が4dtex以上6dtex以下である、請求項5に記載の体液吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、おりもの、経血、汗、尿等の体液を吸収するために使用される体液吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
身体から排出される、例えば、おりもの、経血、汗、尿等の体液を吸収するため、体液吸収性物品が従来から使用されている。体液吸収性物品は、主に、液透過性の表面シート(トップシート)、液不透過性の裏面シート(バックシート)、及び、表面シートと裏面シートとの間に配置される吸収体を備える。体液吸収性物品は、表面シートがユーザの肌に接触するように装着され、表面シートを透過した体液を吸収体が吸収するように構成されている。
【0003】
ユーザが体液吸収性物品を装着した際の快適性を高めるためには、吸収した体液がユーザの肌に接触しないことが重要である。そのためには、吸収体に体液を素早く吸収させて、肌に接触する表面シートに体液をできる限り残さないこと(体液吸収性物品の表面の濡れ感の改善)が必要である。そこで、表面シートにエンボス加工などによって複数の凹部を形成する技術が提案されている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-014927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、体液吸収性物品の快適性を高めるためには、吸収体に体液をより素早く吸収させる必要がある。また、吸収体に吸収された体液が表面シートの方に戻る体液の逆戻りを抑制する必要がある。そのため、体液吸収性物品はさらなる改良が望まれている。
【0006】
本開示は、上記課題を解決する体液吸収性物品を提供するものであり、吸収体に体液を素早く吸収させて表面シートに体液が残るのを抑制し、かつ、吸収体から表面シートへの体液の逆戻りを抑制して、ユーザにとって装着時の快適性を向上できる体液吸収性物品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の体液吸収性物品は、上記課題を解決するため、以下の項1に記載の体液吸収性物品を主題として包含する。
【0008】
項1.液透過性を有する表面シートと、液不透過性の裏面シートと、前記表面及び前記裏面シートの間に配置された吸収体と、を備え、
前記表面シートは、
少なくとも一部の全域に互いに間隔をあけて形成されかつ該表面シートを厚み方向に貫通する複数の開口部と、
前記開口部に隣接して配置されかつ前記吸収体の方と反対側に向かって突き出て前記吸収体との間に空間を形成する複数の凸部と、
を含む、体液吸収性物品。
【0009】
また、本開示の体液吸収性物品は、上記項1に記載の体液吸収性物品の好ましい態様として、以下の項2に記載の体液吸収性物品を包含する。
【0010】
項2.複数の前記開口部及び複数の前記凸部は、前記表面シートの厚み方向に直交する面方向における少なくとも一方向に沿って前記凸部と前記開口部が交互に並ぶように、配置される、項1に記載の体液吸収性物品。
【0011】
また、本開示の体液吸収性物品は、上記項1から項2に記載の体液吸収性物品の好ましい態様として、以下の項3に記載の体液吸収性物品を包含する。
【0012】
項3.前記表面シートの厚み方向に平行な縦断面における前記凸部の形状が、前記凸部の下側に向かうに連れて幅が次第に広くなる形状である、項1又は項2に記載の体液吸収性物品。
【0013】
また、本開示の体液吸収性物品は、上記項1から項3に記載の体液吸収性物品の好ましい態様として、以下の項4に記載の体液吸収性物品を包含する。
【0014】
項4.前記凸部の高さは、0.2mm以上3.0mm以下である、項1から項3のいずれか一項に記載の体液吸収性物品。
【0015】
また、本開示の体液吸収性物品は、上記項1から項4に記載の体液吸収性物品の好ましい態様として、以下の項5に記載の体液吸収性物品を包含する。
【0016】
項5.前記表面シートは、
親水性を有しかつ前記吸収体側に配置された下層不織布と、
親水性を有し、前記下層不織布に対して前記吸収体と反対側に配置された上層不織布と、
を備え、
前記下層不織布の平均繊維径が前記上層不織布の平均繊維径よりも大きい、項1から項4のいずれか一項に記載の体液吸収性物品。
【0017】
また、本開示の体液吸収性物品は、上記項5に記載の体液吸収性物品の好ましい態様として、以下の項6に記載の体液吸収性物品を包含する。
【0018】
項6.前記上層不織布の平均繊維径が1dtex以上2dtex以下であり、
前記下層不織布の平均繊維径が4dtex以上6dtex以下である、項5に記載の体液吸収性物品。
【発明の効果】
【0019】
本開示の体液吸収性物品によれば、吸収体に体液を素早く吸収させて表面シートに体液が残るのを抑制し、かつ、吸収体から表面シートへの体液の逆戻りを抑制できる。よって、本開示の体液吸収性物品によれば、装着時の表面の濡れ感を改善できるため、ユーザにとって装着時の快適性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】体液吸収性物品の平面図である。
図2】体液吸収性物品の背面図である。
図3】体液吸収性物品の一部分における拡大断面図(図1のA-A断面図)である。
図4】表面シートの平面図である。
図5図4の一部分Dの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
体液吸収性物品は、ユーザの衣類(例えば下着)又は肌に取り付けられて、ユーザから排出される、例えば、おりもの、経血、汗、尿等の体液を吸収するために使用される。体液吸収性物品の具体例として、おりものシート(パンティライナー)、生理用ナプキン、失禁パッド、脇汗パッド、汗取りシート等を例示できる。
【0022】
体液吸収性物品は、液透過性を有する表面シート(トップシート)と、液不透過性の裏面シート(バックシート)と、表面シート及び裏面シートの間に配置された吸収体と、を備える。体液吸収性物品は、表面シートがユーザの肌に接触するように装着される。表面シートは、ユーザから排出された体液を透過させる性質を有し、体液を吸収体に伝達する。吸収体は、体液を吸収する性質を有する。吸収体に吸収された体液は吸収体を厚み方向と直交する面方向に広がり、吸収体に保持される。裏面シートは、体液が透過するのを抑制する性質を有し、吸収体から漏れた体液がユーザの衣服に付着するのを抑制する。
【0023】
以下、本開示の体液吸収性物品の一実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、本開示では、体液吸収性物品のユーザの肌に接触する側を「表面側」とし、反対側を「裏面側」としている。
【0024】
体液吸収性物品の全体構成
図1から図3に示すように、本実施形態の体液吸収性物品1は、おりものシートである。体液吸収性物品1は、表面側及び裏面側に主面を有する偏平形状を呈している。体液吸収性物品1は、表面シート2、吸収体3及び裏面シート4がこの順に積層された多層構造である。表面シート2、吸収体3及び裏面シート4は、例えば、全て同じ外形(外周縁により形作られる形状)及び大きさに形成される。
【0025】
体液吸収性物品1は、裏面シート4の裏面(吸収体3と対向する側と反対側の面)に粘着層5が設けられている。体液吸収性物品1は、粘着層5によってユーザの衣類等に貼り付けられる。粘着層5の形状は、ユーザの衣類等に体液吸収性物品1を容易には剥がれないように固定できれば、いかなる形状であってもよい。粘着層5は、例えば、ストライプ状に形成できる。粘着層5を形成する粘着剤等は、この種の体液吸収性物品に使用されている公知の粘着材等を使用できる。
【0026】
体液吸収性物品1の外周縁部には、外周全長にわたって圧着部6が形成されている。圧着部6は、例えば、熱圧着加工、超音波圧着加工、又は、圧力のみを付与する単なる圧着加工を体液吸収性物品1に対して表面側から厚み方向に施すことにより、形成される。圧着部6において、表面シート2、吸収体3及び裏面シート4は一体化されている。圧着部6は、例えば、体液吸収性物品1の外周縁から内側に20mm以内の領域に形成される。圧着部6は、図1に示すように線状の模様であってもよいし、幅の大きな帯状であってもよい。圧着部6は、後述する体液排出部Fには形成されないのが好ましく、好ましくは体液排出部F以外の部分に形成される。
【0027】
体液吸収性物品1は、装着されるユーザの身体の部位に合わせた外形を有する。体液吸収性物品1がおりものシートである場合、体液吸収性物品1は、例えば、ユーザの股間部に合わせて縦長形状に形成できる。縦長形状の体液吸収性物品1は、平面視において、ユーザの身体の前後方向に沿うように向けられる縦方向(図1では左右方向)の長さが、縦方向と直交する横方向(図1では上下方向)の長さよりも長い。体液吸収性物品1の縦方向は、装着時に体液吸収性物品1をユーザの股間部に適切な向きで適用する際に基準となる方向である。体液吸収性物品1の外形の縦長形状は、例えば、競技場のトラック(周回走路)又はこれに近い形状、楕円形状、長方形状等、その他にも種々の形状にできる。
【0028】
体液吸収性物品1は、好ましくは、横方向の寸法を二等分しかつ縦方向に平行に延びる中心線に対して左右対称である。体液吸収性物品1は、縦方向の寸法を二等分しかつ横方向に平行に延びる中心線に対して、前後対称であってもよいし、前後対称でなくてもよい。体液吸収性物品1は、例えば、左右の側縁が前縁及び後縁から縦方向の中央に向うに連れて内側に括れるように、形成できる。
【0029】
体液吸収性物品1の大きさ及び厚みは、特に限定されず、装着されるユーザの身体の部位に応じた大きさ及び厚みにできる。
【0030】
表面シート
表面シート2は、ユーザから排出された体液を吸収体3に伝達する。表面シート2は、液透過性を有していれば、そのシート構造は特に限定されない。表面シート2は、例えば、織物、編物、不織布、フェルト等を使用できる。不織布は、良好な肌触り及び肌に対する刺激が低いことから、表面シート2に好適に使用できる。不織布の製造方法は、スパンレース法、サーマルボンド法、エアースルー法、エアレイド法、ニードルパンチ法、スパンボンド法等を例示できる。上述した製法で製造された不織布を表面シート2に使用すると、表面シート2の風合いを良好にでき、かつ、接着剤及び溶剤を使わないことから肌への安全性を向上できる。
【0031】
表面シート2を形成する繊維は、天然繊維、合成繊維、半合成繊維、複合繊維、及び上述した繊維を適宜混ぜた混合繊維等を例示できる。天然繊維は、コットン、シルク、パルプ、羊毛、麻等を例示できる。合成繊維は、ポリエチレンテレフタラート等のポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ビニロン等を例示できる。半合成繊維は、レーヨン、アセテート等を例示できる。複合繊維は、ポリエチレン/ポリエステル、ポリエチレン/ポリプロピレン等を例示できる。
【0032】
表面シート2は、図3から図5に示すように、吸収体3の方と反対側(表面側)に向かって突き出る複数の凸部7を含む。また、表面シート2は、表面シート2を厚み方向に貫通する複数の開口部8を含む。複数の凸部7のそれぞれは、開口部8に隣接して配置されている。
【0033】
開口部
開口部8は、表面シート2を厚み方向に貫通する。表面シート2が後述するように上層不織布20及び下層不織布21の二層構造である場合は、上層不織布20及び下層不織布21を厚み方向に貫通する。開口部8は、表面シート2の表面側(上層不織布20側)から裏面側(下層不織布21側)に向かって例えばニードル等を突き刺すことによって形成される。
【0034】
複数の開口部8は、表面シート2の全域に形成されていてもよいし、表面シート2において少なくとも一部の全域のみに形成されていてもよい。複数の開口部8が形成される表面シート2の一部は、例えば、ユーザからの体液の排出を主に受ける体液排出部Fである。体液排出部Fは、体液吸収性物品1の装着時にユーザの体液を排出する局部が当たると設計された部分とその周囲部である。体液吸収性物品1がおりものシートの場合、体液排出部Fは、図1において一点鎖線で示す表面シート2の縦方向及び横方向の略中央部である。表面シート2の縦方向及び横方向の略中央部は、例えば、表面シートの縦方向においては、三等分に分けた真ん中の部分であり、かつ、表面シート2の横方向においては、圧着部6よりも内側の部分である。
【0035】
複数の開口部8は、互いに間隔をあけて配置される。隣り合う二つの開口部8の間に凸部7が配置されている。複数の開口部8は、例えば、千鳥状に配列できる。複数の開口部8は、例えば、格子状に配列してもよいし、ランダムに配列してもよい。
【0036】
表面シート2に複数の開口部8が形成されていることから、表面シート2は、ユーザから排出された体液を開口部8から素早く吸収体3に伝達できる。これにより、肌に接触する表面シート2に体液が残るのを抑制できる。よって、体液吸収性物品1の表面の濡れ感を改善できる。
【0037】
開口部8の平面視の形状は、長方形又は正方形等の矩形状、円形状、楕円形状、三角形状、五角形以上の多角形状等を例示できる。
【0038】
開口部8の大きさは、例えば、直径0.5mm以上5.0mm以下の仮想円内に含まれる大きさであり、好ましくは直径1.0mm以上3.0mm以下の仮想円内に含まれる大きさである。開口部8の大きさが上述した範囲内であることで、表面シート2は、開口部8を介して吸収体3に体液を素早く伝達することができ、かつ、吸収体3が吸収した体液の逆戻りを抑制できる。
【0039】
開口部8の開口率は、0%よりも大きければ特に制限はないが、例えば、3%以上50%以下であり、好ましくは、5%以上30%以下である。開口部8の開口率は、表面シート2において、単位面積当たりの開口部8の開口面の合計面積の割合を意味する。開口率が3%未満であると、表面シート2の開口部8を通過して吸収体3に伝達する体液が減り、吸収速度が遅くなりやすい。一方で、開口率が50%を超えると、吸収体3が吸収した体液の逆戻りが生じやすい。そのため、開口部8の開口率が上述した範囲内であることで、表面シート2は、開口部8を介して吸収体3に体液を素早く伝達することができ、かつ、吸収体3が吸収した体液の逆戻りを抑制できる。
【0040】
開口部8の間隔Sは、例えば、1.0mm以上8.0mm以下であり、好ましくは、2.0mm以上5.0mm以下である。開口部8の間隔Sが上述した範囲内であることで、表面シート2は、開口部8を介して吸収体3に体液を素早く伝達できる。開口部8の間隔Sは、任意の開口部8に対して最も近くに位置する他の少なくとも一つの開口部8との中心O間の距離を意味する。
【0041】
凸部
複数の凸部7は、複数の開口部8と同様、表面シート2の全域に形成されていてもよいし、表面シート2において少なくとも一部の全域のみに形成されていてもよい。複数の凸部7が形成される表面シート2の一部は、例えば、ユーザからの体液の排出を主に受ける体液排出部Fである。
【0042】
複数の凸部7のそれぞれは、開口部8に隣接するように配置されている。複数の凸部7は、例えば、複数の開口部8と同様に千鳥状に配列されることにより、表面シート2の厚み方向に直交する面方向における一方向(例えば縦方向)及び該一方向に直交する他方向(例えば横方向)に沿って凸部7と開口部8が交互に並ぶように配置できる。これにより、開口部8の周囲、例えば矩形状の開口部8の四方に、複数の凸部7を隣接して配置できる。複数の凸部7は、例えば、複数の開口部8と同様に格子状に配列してもよい。これによっても、表面シート2の面方向において互いに直交する二方向に沿って、凸部7と開口部8が交互に並ぶように配置でき、開口部8の周囲、例えば矩形状の開口部8の四方に、複数の凸部7を隣接して配置できる。複数の凸部7は、それぞれが開口部8に隣接するように配置できれば、ランダムに配列してもよい。
【0043】
凸部7は、図3に示すように、表面シート2の裏面側から表面側に向かって突き出ている。凸部7は、例えばエンボス加工により表面シート2を裏面側からへこませることにより形成できる。表面シート2は、複数の凸部7のそれぞれにおいて吸収体3との間に空間9が形成されている。
【0044】
凸部7と吸収体3の間に空間9が形成されていることで、複数の凸部7がクッションの役割を果たすため、表面シート2を柔軟な風合いにできる。また、複数の凸部7がクッションの役割を果たすことから、吸収体3に吸収された体液が肌に接触するのを抑制でき、体液吸収性物品1の表面の濡れ感を改善できる。
【0045】
また、凸部7が開口部8に隣接して配置されていることで、表面シート2の凸部7において受けた体液を開口部8にスムーズに移行でき、開口部8を介して吸収体3に伝達できる。これにより、肌に接触する表面シート2に体液が残るのを抑制できる。よって、体液吸収性物品1の表面の濡れ感を改善できる。
【0046】
凸部7の開口縁の平面視の形状は、長方形又は正方形等の矩形状、円形状、楕円形状、三角形状、五角形以上の多角形状等を例示できる。凸部7の開口縁とは、表面シート2の裏面における凸部7の輪郭である。
【0047】
凸部7の平面視の大きさは、例えば、直径1.0mm以上10mm以下の仮想円内に含まれる大きさであり、好ましくは、直径2.0mm以上5.0mm以下の仮想円内に含まれる大きさである。凸部7の平面視の大きさが上述した範囲内であることで、表面シート2の凸部7において受けた体液を凸部7に隣接する開口部8に素早く移行でき、開口部8を介して吸収体3に伝達できる。
【0048】
表面シート2の厚み方向に平行な縦断面における凸部7の形状は、例えば、凸部7の下側(凸部7に隣接する開口部8)に向かうに連れて幅が次第に広くなる形状(裾広がりの形状又は逆テーパ状)である。凸部7の全方位における縦断面の形状が逆テーパ状であり、表面シート2の厚み方向に直交する横断面の大きさが凸部7の下側に向かうに連れて次第に大きくなっている。これにより、表面シート2の凸部7において受けた体液が凸部7に隣接する開口部8に移行しやすくなり、体液を素早く開口部8を介して吸収体3に伝達できる。
【0049】
凸部7の縦断面の逆テーパ形状は、半楕円形状、半円形状、台形状、先端が丸い円錐形状等を例示できる。凸部7の縦断面の形状は、必ずしも逆テーパ状でなくてもよい。
【0050】
図3に示す凸部7の高さHは、例えば、0.2mm以上3.0mm以下であり、好ましくは、0.5mm以上2.0mm以下である。凸部7の高さHが上述した範囲内であることで、凸部7の隆起がなだらかになり過ぎないため、凸部7が効果的にクッションの役割を果たす。さらに、凸部7の隆起が急になり過ぎないため、表面シート2の凸部7において受けた体液を凸部7に隣接する開口部8に素早く移行でき、開口部8を介して吸収体3に伝達できる。凸部7の高さHは、凸部7に隣接する開口部8との境目Bから、凸部7の頂部T(凸部7において最も垂直方向で高い位置)までの垂直方向の距離を意味する。
【0051】
表面シートの層構造
表面シート2は、一枚の不織布等のシートで構成されていてもよいし、複数枚の不織布等のシートを積層した積層体で構成されていてもよい。本実施形態では、表面シート2は、図3に示すように、二枚の積層された上層不織布20及び下層不織布21を接着等することなく繊維同士を絡ませて一体化した二層構造である。
【0052】
上層不織布20と下層不織布21の一体化は、例えば、スパンレース法、ニードルパンチ法、水流絡合法等により実現できる。表面シート2は、上述したように、体液吸収性物品1の装着時にユーザの肌に接触するように配置される。そのため、体液吸収性物品1の肌触りを良好にするために、上層不織布20は下層不織布21と比べて、平均繊維径が小さく、繊維密度が高くなるように形成されている。
【0053】
上層不織布
上層不織布20は、体液吸収性物品1の表面をなす。上層不織布20は、体液吸収性物品1の装着時にユーザの肌に接触してユーザから排出された体液を受ける。上層不織布20は、親水性を有する。上層不織布20が親水性を有することにより、ユーザから排出された体液を上層不織布20内に引き込みやすくなり、体液を下側の下層不織布21へ良好に伝達できる。
【0054】
上層不織布20の親水性は、上層不織布20を構成する繊維自体がもつ親水性により発揮できる。親水性をもつ繊維は、綿、麻、羊毛等を例示できる。上層不織布20の親水性は、例えば、上層不織布20を構成する合成繊維等に対して親水剤によって表面処理を施すことにより発揮してもよい。親水剤は、陰イオン性界面活性剤、カルボン酸塩、アシル化加水分解たんぱく質、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩、非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン系界面活性剤、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、ポリアルキレキシドブロック共重合体、陽イオン性界面活性剤、第四級アンモニウム塩、両性界面活性剤、イミダゾリニウム誘導体等を例示できる。
【0055】
上層不織布20は、下層不織布21に比べて、平均繊維径が小さい。上層不織布20の平均繊維径は、例えば、1dtex以上2dtex以下であり、好ましくは、1.2dtex以上1.6dtex以下である。上層不織布20の平均繊維径が2dtex以下であることで、ユーザの肌が上層不織布20に接触したときの感じ(肌触り)を良好にできる。上層不織布20の平均繊維径が1dtex以上であることで、上層不織布20の繊維密度が大きくなり過ぎない。そのため、上層不織布20内に体液を引き込みやすいことから、下層不織布21へ体液を良好に伝達できる。
【0056】
下層不織布
下層不織布21は、上層不織布20と吸収体3の間に配置される。下層不織布21は、親水性を有する。下層不織布21の親水性は、上層不織布20と同様、下層不織布21を構成する繊維自体がもつ親水性により発揮してもよいし、下層不織布21を構成する合成繊維に対して親水剤によって表面処理を施すことにより発揮してもよい。
【0057】
下層不織布21は、上層不織布20に比べて平均繊維径が大きい。これにより、下層不織布21の強度は、上層不織布20の強度よりも大きく、下層不織布21は保形性を有する。そのため、表面シート2の凸部7が下層不織布21により下支えされるため、表面シート2は凸部構造を保ちやすくなる。
【0058】
また、下層不織布21の平均繊維径が上層不織布20の平均繊維径よりも大きいことで、上層不織布20によって引き込んだ体液を下層不織布21により開口部8まで素早く移行させて、開口部8を通して吸収体3に伝達できる。よって、ユーザの肌に接触する上層不織布20に体液が残りにくいため、体液吸収性物品1の表面の濡れ感を改善できる。
【0059】
表面シート2の凸部構造を維持する観点、及び、表面シート2による吸収体3への体液の伝達性を向上する観点からは、下層不織布21の平均繊維径と上層不織布20の平均繊維径の差は、できる限り大きくすることが好ましい。下層不織布21の平均繊維径と上層不織布20の平均繊維径の差は、例えば、2dtex以上であり、好ましくは2dtexよりも大きい。
【0060】
下層不織布21の平均繊維径は、上層不織布20の平均繊維径が例えば1dtex以上2dtex以下であれば、例えば、4dtex以上6dtex以下である。下層不織布21の平均繊維径が4dtex以上であることで、表面シート2の凸部構造を良好に維持でき、かつ、表面シート2による吸収体3への体液の伝達性を良好に向上できる。下層不織布21の平均繊維径が6dtex以下であることで、下層不織布21の繊維密度が小さくなり過ぎない。そのため、下層不織布21に吸収体3が吸収した体液が付着しても、ユーザの肌に接触する上層不織布20の方に体液が戻るのを抑制できる。よって、体液吸収性物品1の表面の濡れ感を改善できる。
【0061】
本開示において、複数種類の繊維径を有する繊維が混合されている場合、「平均繊維径」は、繊維径ごとに繊維径に当該繊維径を有する繊維が全体に占める割合を掛けた値を算出し、全ての繊維径について算出した値を合算することで求められる数値である。例えば、繊維径が1.2dtexの繊維が50%の割合で含まれ、繊維径が2.0dtexの繊維が50%の割合で含まれている場合、平均繊維径は、1.2×0.5+2.0×0.5=1.6dtexである。
【0062】
表面シートの物性
表面シート2の目付けは、例えば、20g/m以上45g/m以下であり、好ましくは、25g/m以上35g/m以下であり、より好ましくは30g/mである。
【0063】
表面シート2の厚みは、例えば、0.2mm以上3.0mm以下であり、好ましくは、0.5mm以上2.0mm以下である。表面シート2の厚みが上述した範囲内であることで、凸部7の厚みが小さくなり過ぎないため、凸部7が効果的にクッションの役割を果たす。さらに、凸部7の厚みが大きくなり過ぎないため、表面シート2の凸部7において受けた体液を凸部7に隣接する開口部8に素早く移行でき、開口部8を介して吸収体3に伝達できる。
【0064】
吸収体
吸収体3は、ユーザから排出された体液を吸収して保持する。吸収体3は、一般に生理用ナプキン、おりものシート、おしめ、汗取りシート等に用いられている吸収体を使用でき、例えば、織物、編物、不織布又はパルプ製品等のシート状の繊維集合体を使用できる。繊維集合体に使用される繊維は、天然繊維、合成繊維、半合成繊維、又は、複合繊維等を使用できる。
【0065】
天然繊維は、コットン、シルク、パルプ、羊毛、麻等を例示できる。合成繊維は、ナイロン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート等のポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル、ウレタン等を例示できる。半合成繊維は、レーヨン、アセテート、キュプラ等を例示できる。複合繊維は、ポリエチレン/ポリエステル、ポリエチレン/ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル/ポリプロピレン等を例示できる。繊維集合体は、上述した繊維を二以上混ぜ合わせて形成してもよい。
【0066】
吸収体3は、体液の吸水性の観点から、例えば、吸水性ポリマー(SAP)が含まれることが好ましいが、吸水性ポリマーを含まなくてもよい。
【0067】
裏面シート
裏面シート4は、吸収体3に吸収された体液が体液吸収性物品1の裏面側から外部へ漏れるのを抑制する。裏面シート4は、例えば、液不透過性のフィルム、SMS等の液不透過性の不織布、スパンボンド不織布又はポイントボンド不織布等に液不透過性のフィルムをラミネートしたシート体等の液不透過性のシートを使用できる。液不透過性のフィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリビニルアルコール、セロファン、塩化ビニル等からなるフィルム、又は、上述したフィルムを二以上積層した多層フィルム等を例示できる。
【0068】
作用・効果
以上説明したように、本実施形態の体液吸収性物品1においては、表面シート2に複数の開口部8が間隔をあけて形成されており、さらに、表面シート2に吸収体3の方と反対側に向かって突き出て吸収体3との間に空間9を形成する複数の凸部7が形成されている。そして、それぞれの凸部7は、開口部8に隣接して配置されている。表面シート2の複数の開口部8は、ユーザから排出された体液を吸収体3へ伝達させやすく、また表面シート2の凸部7が受けた体液は凸部7に隣接する開口部8に移行されて、スムーズに開口部8を通って吸収体3に伝達される。よって、本実施形態の体液吸収性物品1によれば、吸収体3による体液の吸収性を向上でき、表面シート2に体液が残るのを抑制できるため、体液吸収性物品1の装着時の表面の濡れ感を改善できる。
【0069】
加えて、本実施形態の体液吸収性物品1は、表面シート2の複数の凸部7と吸収体3の間に空間9が形成されている。複数の凸部7はクッションの役割を果たし、吸収体3に吸収された体液が肌に接触するのを抑制する。よって、本実施形態の体液吸収性物品1によれば、体液吸収性物品1の装着時の表面の濡れ感を改善できる。また、表面シート2の複数の凸部7と吸収体3の間に空間9が形成されることで、吸収体3に吸収された体液の表面側への逆戻りを抑制できる。
【0070】
また、本実施形態の体液吸収性物品1においては、表面シート2において凸部7の縦断面における形状が、凸部7の下側(隣接する開口部8側)に向かうに連れて幅が次第に広くなる形状である。そのため、表面シート2の凸部7において受けた体液が凸部7に隣接する開口部8に移行しやすくなり、体液が素早く開口部8を介して吸収体3に伝達される。よって、本実施形態の体液吸収性物品1によれば、体液吸収性物品1の装着時の表面の濡れ感を改善できる。
【0071】
また、本実施形態の体液吸収性物品1においては、表面シート2における凸部の高さは、0.2mm以上3.0mm以下である。これにより、表面シート2の凸部7の隆起がなだらかになり過ぎたり急になり過ぎたりしない。そのため、凸部7が効果的にクッションの役割を果たして、吸収体3に吸収された体液が肌に接触するのが抑制され、さらに、表面シート2の凸部7において受けた体液が凸部7に隣接する開口部8に素早く移行し、開口部8を介して吸収体3に伝達される。よって、本実施形態の体液吸収性物品1によれば、体液吸収性物品1の装着時の表面の濡れ感を改善できる。
【0072】
また、本実施形態の体液吸収性物品1においては、表面シート2が親水性を有する上層不織布20と、親水性を有する下層不織布21との二層構造であり、下側層不織布21の平均繊維径が上層不織布20の平均繊維径よりも大きい。そのため、本実施形態の体液吸収性物品1によれば、体液吸収性物品1の表面をなす上層不織布20は繊維密度を高く形成できるため、体液吸収性物品1の肌触りを良好にできる。さらに、下層不織布21は上層不織布20よりも強度を大きく形成できるため、表面シート2の凸部7を下層不織布21により下支えできる。よって、本実施形態の体液吸収性物品1によれば、表面シート2は凸部構造を維持できる。
【0073】
変形例
以上、本開示の体液吸収性物品の一実施形態について説明したが、本開示の体液吸収性物品は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変形ができる。例えば、以下の変形ができる。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
【0074】
上述した実施形態では、表面シート2に複数の凸部7及び開口部8が、縦方向及び横方向に沿って凸部7と開口部8が交互に繰り返し並ぶパターンで配置されている。一変形例として、凸部7が開口部8に隣接していれば、凸部7と開口部8が交互に繰り返し並んでいる必要はなく、例えば、凸部7、凸部7、開口部8の順で繰り返し並んでいてもよい。
【0075】
あるいは、一変形例として、複数の凸部7及び複数の開口部8は、表面シート2の面方向における少なくとも一方向に沿って凸部7と開口部8が交互に繰り返し並ぶように配置されていればよい。例えば、横方向に凸部7が連続して並ぶ列と、横方向に開口部8が連続して並ぶ列とが、縦方向に交互に繰り返し並ぶように、表面シート2に複数の凸部7及び開口部8が配置されていてもよい。
【0076】
上述した実施形態では、体液吸収性物品1の外形が縦長形状である。一変形例として、体液吸収性物品1の外形は、縦長形状でない形状、例えば、正方形状、円形状、多角形状等の種々の形状であってもよい。
【0077】
上述した実施形態では、体液吸収性物品1は、表面シート2、吸収体3及び裏面シート4の三層構造である。一変形例として、体液吸収性物品1は、例えば、表面シート2と吸収体3との間に、透液効果、拡散効果又は表面側への体液の逆戻りを止める効果を有するシートを設ける等、四層以上の積層構造としてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 体液吸収性物品
2 表面シート
3 吸収体
4 裏面シート
7 凸部
8 開口部
9 空間
20 上層不織布
21 下層不織布
図1
図2
図3
図4
図5