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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090773
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】レーザ加工装置及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240627BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20240627BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20240627BHJP
   B23K 26/364 20140101ALI20240627BHJP
【FI】
H01L21/78 B
B23K26/00 P
B23K26/53
B23K26/364
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206871
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】新井 裕介
【テーマコード(参考)】
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AD02
4E168AE01
4E168CA00
4E168CA06
4E168CB03
4E168CB07
4E168DA02
4E168DA24
4E168DA32
4E168DA45
4E168HA02
4E168JA12
5F063AA48
5F063BA45
5F063CB06
5F063DD26
5F063DD27
5F063DD31
5F063DE11
5F063DE16
5F063DE23
5F063DE38
(57)【要約】
【課題】被加工物に対するレーザ加工の加工状態をリアルタイムで評価可能なレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供する。
【解決手段】被加工物(ワークW)に対してレーザヘッド16を相対移動させつつレーザヘッド16からレーザ光Lを被加工物に照射することで、被加工物のストリートCH1,CH2に沿ってレーザ加工を行うレーザ加工装置10において、レーザ加工中に、レーザ加工により発生した音及び振動の少なくとも一方を繰り返し検出する検出センサ(マイクロフォン20、AEセンサ22)と、レーザ加工中に、検出センサが少なくとも一方を検出するごとに、検出センサの検出信号に基づいてレーザ加工の加工状態を評価する評価部38と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物に対してレーザヘッドを相対移動させつつ前記レーザヘッドからレーザ光を前記被加工物に照射することで、前記被加工物のストリートに沿ってレーザ加工を行うレーザ加工装置において、
前記レーザ加工中に、前記レーザ加工により発生した音及び振動の少なくとも一方を検出する検出センサと、
前記レーザ加工中に、前記検出センサの検出信号に基づいて前記レーザ加工の加工状態を評価する評価部と、
を備えるレーザ加工装置。
【請求項2】
前記検出センサが、アコースティックエミッションセンサ及びマイクロフォンの少なくとも一方を含む請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記被加工物を保持する保持面を有するテーブルを備え、
前記マイクロフォンが前記保持面に保持されている前記被加工物に対向する位置に設けられ、前記アコースティックエミッションセンサが前記テーブルに設けられている請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記被加工物を保持する保持面を有するテーブルを備え、
前記検出センサが少なくとも前記アコースティックエミッションセンサを含み、
前記アコースティックエミッションセンサが前記テーブルに設けられている請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記テーブルの前記保持面がポーラス体で形成され、前記テーブルの前記保持面とは反対側の反対面が緻密体で形成されており、
前記アコースティックエミッションセンサが、前記反対面に設けられている請求項4に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記アコースティックエミッションセンサが、前記保持面に埋設されており、前記保持面に保持されている前記被加工物に当接する請求項4に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記レーザヘッドが、前記被加工物の内部に集光点を合わせて前記レーザ光を前記被加工物に照射し、
前記レーザ加工が、前記ストリートに沿って前記被加工物の内部に単層又は複数層のレーザ加工領域を形成する内部集光加工であり、
前記評価部が、前記加工状態として、前記レーザ加工領域から伸展した亀裂の伸展状態を評価する請求項1から6のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記評価部が、前記レーザ加工領域が単層である場合には、前記伸展状態として、前記亀裂の伸展方向及び長さを評価する請求項7に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記評価部が、前記レーザ加工領域が複数層である場合には、前記伸展状態として、前記レーザ加工領域の層間の前記亀裂の接続状態を評価する請求項7に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
前記被加工物には複数の第1ストリートと複数の第2ストリートとが互いに交差して格子状に形成されており、
前記内部集光加工が、前記第1ストリートごとに前記第1ストリートに沿って前記被加工物の内部に前記レーザ加工領域を形成する第1内部集光加工と、前記第1内部集光加工の完了後に前記第2ストリートごとに前記第2ストリートに沿って前記被加工物の内部に前記レーザ加工領域を形成する第2内部集光加工と、を含み、
前記評価部が、前記第2内部集光加工中に前記第1ストリートと前記第2ストリートとの交点では、前記伸展状態として、前記第1内部集光加工により形成された前記レーザ加工領域から伸展した前記亀裂と、前記第2内部集光加工により形成された前記レーザ加工領域から伸展した前記亀裂との接続状態を評価する請求項7に記載のレーザ加工装置。
【請求項11】
前記レーザヘッドが前記被加工物の内部に集光点を合わせて前記レーザ光を前記被加工物に照射し、
前記レーザ加工が前記ストリートに沿って前記被加工物の内部にレーザ加工領域を形成する内部集光加工であり、
前記被加工物の前記保持面に接する側の面を表面とし、前記被加工物の前記表面とは反対側の面を裏面とした場合に、前記評価部が、前記加工状態として、前記マイクロフォンの検出結果に基づいて前記レーザ加工領域から前記裏面に向けて伸展した亀裂の伸展状態を評価し、前記アコースティックエミッションセンサの検出結果に基づいて前記レーザ加工領域から前記表面に向けて伸展した亀裂の伸展状態を評価する請求項3に記載のレーザ加工装置。
【請求項12】
前記レーザ加工が、前記ストリートに沿って前記被加工物の表面に加工溝を形成する溝加工であり、
前記評価部が、前記加工状態として、前記加工溝の溶融状態を評価する請求項1から6のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項13】
被加工物に対してレーザヘッドを相対移動させつつ前記レーザヘッドからレーザ光を前記被加工物に照射することで、前記被加工物のストリートに沿ってレーザ加工を行うレーザ加工方法において、
前記レーザ加工中に、前記レーザ加工により発生した音及び振動の少なくとも一方を検出する検出工程と、
前記レーザ加工中に、前記検出工程で検出した前記少なくとも一方の検出信号に基づいて前記レーザ加工の加工状態を評価する評価工程と、
を有するレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物をレーザ加工するレーザ加工装置及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物であるシリコンウェーハ(以下、ウェーハと略す)は、複数のデバイスが格子状のストリート(加工ライン、切断予定ラインともいう)によって格子状に区画されており、ウェーハをストリートに沿って割断(分割)することにより個々のデバイスが製造される。ウェーハを複数のデバイス(チップ)に割断する前工程として、レーザ加工装置によるウェーハのレーザ加工が実行される。
【0003】
例えば特許文献1及び特許文献2に記載のレーザ加工装置は、レーザ加工として、ウェーハの内部に集光点を合わせた状態でレーザ光をストリートに沿って照射して、ストリートに沿ってウェーハの内部に切断の起点となるレーザ加工領域を形成する内部集光加工を実行する。また、例えば特許文献3に記載のレーザ加工装置は、レーザ加工として、ウェーハの表面に集光点を合わせてレーザ光をストリートに沿って照射し、ストリートに沿ってウェーハの表面に加工溝(アブレーション溝又はレーザグルーブともいう)を形成する溝加工を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-006548号公報
【特許文献2】特開2020-088040号公報
【特許文献3】特開2021-192922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1及び特許文献2に記載のレーザ加工装置によりウェーハの内部にレーザ加工領域を形成すると、そのレーザ加工領域からウェーハの厚さ方向に亀裂(クラックともいう)が伸展する。そして、この亀裂の伸展状態(長さ等)が適正であれば、後工程の割断工程においてウェーハが各デバイス(チップ)に適正に割断される。このため、亀裂の伸展状態が適正になるように内部集光加工の条件出しを実行する必要がある。この際に、従来では、サンプルウェーハに対して内部集光加工を実行して、このサンプルウェーハを割断して断面の亀裂を実際に確認する必要があった。或いは従来では、ウェーハの割断後に各デバイスを画像検査装置で検査することで、内部集光加工の加工状態(亀裂伸展状態)の異常の有無を確認していた。このように従来では、製品ウェーハの内部集光加工中にその加工状態の変化をリアルタイムで検出することができなかった。
【0006】
また、上記特許文献3に記載のレーザ加工装置によりウェーハの表面に加工溝を形成する場合には、レーザヘッドのレンズの汚れ及びレーザ光の出力変動等のコンディション変化が発生すると加工溝の加工品質の低下する場合がある。しかしながら、特許文献3に記載のレーザ加工装置においても、製品ウェーハの溝加工中にその加工状態の変化をリアルタイムで検出することができなかった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、被加工物に対するレーザ加工の加工状態をリアルタイムで評価可能なレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的を達成するためのレーザ加工装置は、被加工物に対してレーザヘッドを相対移動させつつレーザヘッドからレーザ光を被加工物に照射することで、被加工物のストリートに沿ってレーザ加工を行うレーザ加工装置において、レーザ加工中に、レーザ加工により発生した音及び振動の少なくとも一方を検出する検出センサと、レーザ加工中に、検出センサの検出信号に基づいてレーザ加工の加工状態を評価する評価部と、を備える。
【0009】
このレーザ加工装置によれば、レーザ加工の加工状態をリアルタイムで評価可能である。
【0010】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、検出センサが、アコースティックエミッションセンサ及びマイクロフォンの少なくとも一方を含む。これにより、レーザ加工により被加工物で発生した音をマイクロフォンで検出して、レーザ加工により被加工物で発生した振動(弾性波)をアコースティックエミッションセンサで検出することができる。
【0011】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、被加工物を保持する保持面を有するテーブルを備え、マイクロフォンが保持面に保持されている被加工物に対向する位置に設けられ、アコースティックエミッションセンサがテーブルに設けられている。これにより、レーザ加工により被加工物で発生した音をマイクロフォンで検出して、レーザ加工により被加工物で発生した振動(弾性波)をアコースティックエミッションセンサで検出することができる。
【0012】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、被加工物を保持する保持面を有するテーブルを備え、検出センサが少なくともアコースティックエミッションセンサを含み、アコースティックエミッションセンサがテーブルに設けられている。これにより、少なくともレーザ加工により被加工物で発生した振動(弾性波)をアコースティックエミッションセンサで検出することができる。
【0013】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、テーブルの保持面がポーラス体で形成され、テーブルの保持面とは反対側の反対面が緻密体で形成されており、アコースティックエミッションセンサが、反対面に設けられている。これにより、アコースティックエミッションセンサが、レーザ加工により被加工物で発生した振動(弾性波)を、テーブルを通して検出することができる。
【0014】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、アコースティックエミッションセンサが、保持面に埋設されており、保持面に保持されている被加工物に当接する。これにより、アコースティックエミッションセンサの検出精度(感度)を向上させることができる。
【0015】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、レーザヘッドが、被加工物の内部に集光点を合わせてレーザ光を被加工物に照射し、レーザ加工が、ストリートに沿って被加工物の内部に単層又は複数層のレーザ加工領域を形成する内部集光加工であり、評価部が、加工状態として、レーザ加工領域から伸展した亀裂の伸展状態を評価する。これにより、内部集光加工中に亀裂の伸展状態をリアルタイムで評価することができる。
【0016】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、評価部が、レーザ加工領域が単層である場合には、伸展状態として、亀裂の伸展方向及び長さを評価する。これにより、単層のレーザ加工領域の内部集光加工中に、亀裂の伸展方向及び長さをリアルタイムで評価することができる。
【0017】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、評価部が、レーザ加工領域が複数層である場合には、伸展状態として、レーザ加工領域の層間の亀裂の接続状態を評価する。これにより、複数層のレーザ加工領域の内部集光加工中に、レーザ加工領域の層間の亀裂の接続状態をリアルタイムで評価することができる。
【0018】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、被加工物には複数の第1ストリートと複数の第2ストリートとが互いに交差して格子状に形成されており、内部集光加工が、第1ストリートごとに第1ストリートに沿って被加工物の内部にレーザ加工領域を形成する第1内部集光加工と、第1内部集光加工の完了後に第2ストリートごとに第2ストリートに沿って被加工物の内部にレーザ加工領域を形成する第2内部集光加工と、を含み、評価部が、第2内部集光加工中に第1ストリートと第2ストリートとの交点では、伸展状態として、第1内部集光加工により形成されたレーザ加工領域から伸展した亀裂と、第2内部集光加工により形成されたレーザ加工領域から伸展した亀裂との接続状態を評価する。これにより、第2内部集光加工中に交点での亀裂の接続状態をリアルタイムで評価することができる。
【0019】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、レーザヘッドが被加工物の内部に集光点を合わせてレーザ光を被加工物に照射し、レーザ加工がストリートに沿って被加工物の内部にレーザ加工領域を形成する内部集光加工であり、被加工物の保持面に接する側の面を表面とし、被加工物の表面とは反対側の面を裏面とした場合に、評価部が、加工状態として、マイクロフォンの検出結果に基づいてレーザ加工領域から裏面に向けて伸展した亀裂の伸展状態を評価し、アコースティックエミッションセンサの検出結果に基づいてレーザ加工領域から表面に向けて伸展した亀裂の伸展状態を評価する。これにより、内部集光加工中に、レーザ加工領域から被加工物の表面に向けて伸展した亀裂の伸展状態と、レーザ加工領域から被加工物の裏面に向けて伸展した亀裂の伸展状態と、をリアルタイムで評価することができる。
【0020】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、レーザ加工が、ストリートに沿って被加工物の表面に加工溝を形成する溝加工であり、評価部が、加工状態として、加工溝の溶融状態を評価する。これにより、被加工物の溝加工中に加工溝の溶融状態をリアルタイムで評価することができる。
【0021】
本発明の目的を達成するためのレーザ加工方法は、被加工物に対してレーザヘッドを相対移動させつつレーザヘッドからレーザ光を被加工物に照射することで、被加工物のストリートに沿ってレーザ加工を行うレーザ加工方法において、レーザ加工中に、レーザ加工により発生した音及び振動の少なくとも一方を検出する検出工程と、レーザ加工中に、検出工程で検出した少なくとも一方の検出信号に基づいてレーザ加工の加工状態を評価する評価工程と、を有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、被加工物に対するレーザ加工の加工状態をリアルタイムで評価可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態のレーザ加工装置の概略図である。
図2】レーザ加工装置による加工対象のウェーハの平面図である。
図3】ウェーハの一部の断面図である。
図4】テーブルに対する各AE(Acoustic Emission)センサの取付構造の変形例を示した図である。
図5】制御装置の機能ブロック図である。
図6】ウェーハの内部へのレーザ加工領域の形成を説明するための説明図である。
図7】ウェーハの内部へのレーザ加工領域の形成を説明するための説明図である。
図8】ウェーハの内部への複数層のレーザ加工領域の形成を説明するための説明図である。
図9】ウェーハの内部への複数層のレーザ加工領域の形成を説明するための説明図である。
図10】第1実施形態のレーザ加工装置によるウェーハの内部集光加工処理の流れを示すフローチャートである。
図11】第1内部集光加工中における、図10中のステップS5の流れを示すフローチャートである。
図12】第2内部集光加工中における、図10中のステップS5の流れを示すフローチャートである。
図13】第1実施形態のレーザ加工装置の第1変形例を示した図である。
図14】第1実施形態のレーザ加工装置の第2変形例を示した図である。
図15】第2実施形態のレーザ加工装置の概略図である。
図16】第2実施形態のレーザ加工装置によりウェーハに形成される加工溝の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態のレーザ加工装置10の概略図である。図1に示すように、レーザ加工装置10は、被加工物であるウェーハW(例えばシリコンウェーハ)を複数のチップ4(図2参照)に割断する割断プロセスの前工程として、ウェーハWに対してレーザ加工である内部集光加工を施す。なお、図中のXYZ方向は互いに直交し、このうちX方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向(ウェーハWの厚み方向)である。またθ方向は、Z方向を回転軸とする回転方向である。
【0025】
図2は、レーザ加工装置10による加工対象のウェーハWの平面図である。図3は、図2に示したウェーハWの一部の断面図である。図2及び図3に示すように、ウェーハWには、複数のストリートCH1と複数のストリートCH2とが互いに交差して格子状に形成されている。これにより、ウェーハWは、各ストリートCH1,CH2により複数の領域に区画されている。この区画された各領域にはチップ4を構成するデバイス層6が設けられている。なお、ストリートCH1は本発明の第1ストリートに相当し、ストリートCH2は本発明の第2ストリートに相当する。また、図2中の符号CRはストリートCH1とストリートCH2との交点である。また、ウェーハWは製品ウェーハである。
【0026】
レーザ加工装置10は、内部集光加工により、最初にストリートCH1ごとにストリートCH1に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域P1(図6参照)を形成し、次いでストリートCH2ごとにストリートCH2に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域P2(図6参照)を形成する。
【0027】
図1に戻って、レーザ加工装置10は、テーブル12(XYZθステージともいう)と、移動機構14と、レーザヘッド16と、赤外線カメラ18と、マイクロフォン20と、アコースティックエミッションセンサ(Acoustic Emissionセンサ)であるAEセンサ22と、モニタ24と、制御装置26と、を備える。
【0028】
テーブル12は、不図示のバックグラインドテープ等を介して、ウェーハWのデバイス層6が設けられている側の表面を吸着保持する保持面12aを有するチャックテーブルである。これにより、ウェーハWは、その表面とは反対側の裏面が後述のレーザヘッド16と対向するようにテーブル12の保持面12aに保持される。
【0029】
テーブル12は、2層構造で形成されている。具体的にはテーブル12の保持面12a側が、ウェーハWの吸着保持を行うためにポーラスセラミック等のポーラス体13Aで形成されている。また、テーブル12の保持面12aとは反対側の反対面12bが、後述のAEセンサ22を取り付けるために緻密体セラミック等の緻密体13Bで形成されている。
【0030】
移動機構14は、アクチュエータ及びモータ等により構成されており、後述の制御装置26の下、テーブル12をXYZ方向に移動させたり、或いはテーブル12をθ方向に回転させたりする。移動機構14は、内部集光加工時にはテーブル12をX方向(加工送り方向)に移動させる。なお、移動機構14は、テーブル12及びウェーハWに対してレーザヘッド16をXYZθ方向に相対移動可能であれば特に限定されず、例えば、レーザヘッド16を移動させてもよい。
【0031】
レーザヘッド16は、テーブル12のZ方向上方側の位置(ウェーハWの裏面に対向する位置)に配置されており、後述の制御装置26により制御される。このレーザヘッド16は、ウェーハWの内部に集光点を合わせてレーザ光LをウェーハWに向けて照射する。なお、このレーザヘッド16の具体的な構成は公知技術(例えば上記特許文献1及び特許文献2参照)であるので、ここでは具体的な説明は省略する。
【0032】
レーザ光Lの条件としては、例えば、光源が半導体レーザ励起Nd:YAGレーザ、波長が波長:1.1μm、レーザ光スポット断面積が3.14×10-8cm、発振形態がQスイッチパルス、繰り返し周波数が80~120kHz、パルス幅が180~280ns、出力が8Wである。
【0033】
赤外線カメラ18は、レーザヘッド16と一体(別体でも可)に設けられている。この赤外線カメラ18は、ウェーハWの内部集光加工前にはウェーハWに形成されているアライメント基準を撮影して、このアライメント基準の撮影画像データを制御装置26へ出力する。ここでいうアライメント基準とは、レーザ加工装置10がウェーハWのストリートCH1,CH2の位置を認識するための基準であり、例えば、ストリートCH1,CH2、或いはアライメントマーク(図示は省略)等の公知の基準が用いられる。なお、アライメント基準は、赤外線カメラ18で撮影可能であれば、ウェーハWの内部、表面、及び裏面等の任意の位置に設けられていてもよい。
【0034】
マイクロフォン20は、本発明の検出センサの一部を構成するものであり、ウェーハWの裏面に対向する位置に設けられている。マイクロフォン20は、制御装置26の制御の下、レーザヘッド16によるウェーハWの内部集光加工中にウェーハWで発生した音(ウェーハWから空気を伝わる振動)を検出し、音検出信号を制御装置26へ出力する。なお、マイクロフォン20の数は、特に限定はされず、複数個であってもよい。
【0035】
AEセンサ22は、本発明の検出センサの一部を構成するものであり、テーブル12の反対面12b(緻密体13B)上に複数取り付けられており、反対面12bに当接している。なお、図示は省略するが、各AEセンサ22と反対面12bとの間にグリス等が塗布されていてもよい。また、反対面12bに取り付けるAEセンサ22の数は1個以上であれば特に限定はされない。各AEセンサ22は、制御装置26の制御の下、レーザヘッド16によるウェーハWの内部集光加工中にウェーハWで発生した弾性波(ウェーハW内を伝わる振動)を検出し、AE検出信号を制御装置26へ出力する。
【0036】
なお、図1に示した実施形態では、テーブル12を介してウェーハWで発生した弾性波(振動)を各AEセンサ22で検出するために、テーブル12の反対面12b(緻密体13B)に各AEセンサ22を当接させているが、例えば、ウェーハWの表面に各AEセンサ22を直接接触させてもよい。
【0037】
図4は、テーブル12に対する各AEセンサ22の取付構造の変形例を示した図である。図4に示すように、各AEセンサ22をテーブル12の反対面12b(緻密体13B)に当接させる代わりに、各AEセンサ22をテーブル12の保持面12aに埋設させることで、各AEセンサ22をウェーハWの表面に当接させてもよい。この場合においても、各AEセンサ22とウェーハWの表面との間にグリス等が塗布されていてもよい。このように各AEセンサ22をウェーハWの表面に当接させることで、各AEセンサ22によるAE検出信号の検出精度(感度)を向上させることができる。また、この場合には、テーブル12を2層構造で形成する必要がなく、従来のポーラスタイプのテーブル12を使用可能である。
【0038】
図1に戻って、モニタ24は、赤外線カメラ18から入力された撮影画像データ、及びレーザ加工装置10の各設定画面等を表示する。
【0039】
制御装置26は、移動機構14、レーザヘッド16、赤外線カメラ18、マイクロフォン20、及び各AEセンサ22等のレーザ加工装置10の各部の動作を統括的に制御して、ウェーハWに対するレーザヘッド16のアライメント、ストリートCH1,CH2ごとの内部集光加工、及び内部集光加工の加工状態の評価等を実行する。
【0040】
図5は、制御装置26の機能ブロック図である。図5に示すように、制御装置26には、既述の移動機構14、レーザヘッド16、赤外線カメラ18、マイクロフォン20、及び各AEセンサ22の他に、操作部27及び記憶部28が接続されている。
【0041】
操作部27は、公知のキーボード、マウス、及び操作ボタン等が用いられ、オペレータによる各種操作の入力を受け付ける。
【0042】
記憶部28には、制御装置26の制御プログラム(図示は省略)の他に、後述の制御装置26(評価部38)による内部集光加工の加工状態の評価に用いられるデータテーブル40~42が記憶されている。
【0043】
制御装置26は、例えばパーソナルコンピュータのような演算装置により構成され、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成された演算回路を備える。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス[例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)]等が含まれる。なお、制御装置26の各種機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。
【0044】
制御装置26は、不図示の制御プログラムを実行することで、検出制御部30、レーザ加工制御部32、信号取得部34、加工位置判別部36、評価部38、及び表示制御部39として機能する。以下、本実施形態において「~部」として説明するものは「~回路」、「~装置」、又は「~機器」であってもよい。すなわち、「~部」として説明するものは、ファームウェア、ソフトウェア、及びハードウェアまたはこれらの組み合わせのいずれで構成されていてもよい。
【0045】
検出制御部30は、レーザ加工装置10の各部を制御して、テーブル12に保持されているウェーハWのストリートCH1,CH2の位置(XY面内での向きを含む)を検出するアライメント検出を実行する。
【0046】
最初に検出制御部30は、移動機構14及び赤外線カメラ18を制御して、ウェーハWのアライメント基準の撮影画像データを取得(撮影)する。例えば検出制御部30は、ウェーハWの公知の設計情報に基づいて移動機構14を駆動して、赤外線カメラ18をウェーハWのアライメント基準を撮影可能な位置に相対移動させる。この移動後に検出制御部30は、赤外線カメラ18にアライメント基準を含むウェーハWの撮影を実行させる。これにより、赤外線カメラ18によりウェーハWのアライメント基準の撮影画像データが取得され、この撮影画像データが赤外線カメラ18から検出制御部30に出力される。
【0047】
次いで、検出制御部30は、赤外線カメラ18から入力された撮影画像データからアライメント基準を公知の画像認識法で検出することにより、ウェーハWの各ストリートCH1,CH2の位置を検出する。
【0048】
レーザ加工制御部32は、移動機構14及びレーザヘッド16を制御して、ウェーハWのストリートCH1,CH2ごとに内部集光加工(レーザ加工)を実行する。この内部集光加工は、各ストリートCH1に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域P1(図6参照)を形成する第1内部集光加工と、各ストリートCH2に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域P2(図6参照)を形成する第2内部集光加工と、を含む。
【0049】
図6及び図7は、ウェーハWの内部へのレーザ加工領域P1,P2の形成を説明するための説明図である。図6及び図7に示すように、レーザ加工制御部32は、検出制御部30によるアライメント検出結果に基づき、移動機構14を駆動してテーブル12をθ方向に回転させることにより、互いに交差するストリートCH1,CH2のうちのストリートCH1をX方向(加工送り方向)に平行にする。次いで、レーザ加工制御部32は、検出制御部30によるアライメント検出結果に基づいて、移動機構14を駆動してテーブル12の位置調整を行うことで、レーザヘッド16の光軸を第1番目のストリートCH1の一端に位置合わせするアライメントを実行する。
【0050】
レーザ加工制御部32は、上述のアライメント完了後、レーザヘッド16を制御して、レーザ光LをウェーハWの裏面から所定の深さ位置に集光させることで、この集光点にレーザ加工領域P1を形成する。
【0051】
次いで、レーザ加工制御部32は、移動機構14を駆動して、テーブル12をX方向に移動させる。これにより、ウェーハWの内部にレーザ光Lを集光させた状態で、ウェーハWに対してレーザヘッド16がX方向に相対移動される、すなわち第1番目のストリートCH1に沿ってレーザヘッド16がウェーハWに対してX方向に相対移動される。その結果、第1番目のストリートCH1に沿ってウェーハWの内部に1層(単層)のレーザ加工領域P1が形成される。また、レーザ加工領域P1が形成されると、このレーザ加工領域P1を起点としてウェーハWの厚さ方向(Z方向)に亀裂Kが発生する。
【0052】
レーザ加工制御部32は、レーザ加工領域P1(レーザ加工領域P2)の層数が単層である場合には、第1番目のストリートCH1に対応するレーザ加工領域P1の形成後、移動機構14を駆動して、レーザヘッド16の光軸を第2番目のストリートCH1の一端に位置合わせ(アライメント)する。そして、レーザ加工制御部32は、レーザヘッド16によりウェーハWの内部にレーザ光Lを集光させた状態で、移動機構14を駆動してテーブル12をX方向に移動させる。これにより、第2番目のストリートCH1に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域P1が形成される。
【0053】
以下同様に、全てのストリートCH1に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域P1が形成され、第1内部集光加工が完了する。レーザ加工制御部32は、第1内部集光加工の完了後、移動機構14を駆動して、テーブル12を90°回転させることにより、各ストリートCH2をX方向に平行にする。そして、レーザ加工制御部32は、既述の第1内部集光加工の同様に、移動機構14及びレーザヘッド16等を制御して、全てのストリートCH2に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域P2を形成する第2内部集光加工を実行する。
【0054】
図8及び図9は、ウェーハWの内部への複数層のレーザ加工領域P1,P2の形成を説明するための説明図である。図8及び図9に示すように、レーザ加工制御部32は、ウェーハWが厚い場合には、ストリートCH1,CH2に沿ってウェーハWの内部に複数層(2層以上)のレーザ加工領域P1,P2の形成を実行する。この場合には、レーザ加工制御部32は、ストリートCH1ごとに複数層のレーザ加工領域P1を連続して実行すると共に、ストリートCH2ごとに複数層のレーザ加工領域P2を連続して実行する。
【0055】
具体的にレーザ加工制御部32は、既述の図6及び図7で説明したように第1番目のストリートCH1に対応する1層目のレーザ加工領域P1の形成後、レーザヘッド16から出射されるレーザ光Lの集光位置をウェーハWの内部で1層目のレーザ加工領域P1よりも浅い位置(Z方向上方側の位置)に変更する。次いで、レーザ加工制御部32は、移動機構14を駆動してテーブル12をX方向に移動させることで、2層目のレーザ加工領域P1の形成を繰り返し実行する。これにより、第1番目のストリートCH1に沿って2層目のレーザ加工領域P1が形成される。以下同様に、3層目以降のレーザ加工領域P1を第1番目のストリートCH1に沿って形成可能である。
【0056】
そして、レーザ加工制御部32は、残りのストリートCH1,CH2についても同様に、ストリートCH1,CH2ごとに複数層のレーザ加工領域P1,P2を形成する。
【0057】
本実施形態のレーザ加工装置10は、ウェーハWに対する内部集光加工(第1内部集光加工及び第2内部集光加工)によりレーザ加工領域P1,P2の形成を実行する場合には、内部集光加工の加工状態(レーザ加工領域P1,P2の加工状態)をリアルタイムに評価する。ここで内部集光加工の加工状態の評価とは、ウェーハWをストリートCH1,CH2に沿って割断する際の起点となる亀裂K(レーザ加工領域P1,P2)が適正に形成された否かを評価すること、すなわちレーザ加工領域P1,P2から伸展する亀裂Kの伸展状態を評価することである。
【0058】
具体的にはレーザ加工装置10は、内部集光加工中にウェーハWの内部で亀裂Kが伸展することでウェーハWから発生する音及び振動(弾性波)をリアルタイムで検出(測定)して解析することで、亀裂Kの伸展状態をリアルタイムで評価する。
【0059】
図5に戻って、信号取得部34は、内部集光加工中にマイクロフォン20及び各AEセンサ22を作動させて、マイクロフォン20から出力される音検出信号と各AEセンサ22から出力されるAE検出信号とを繰り返し取得する。また、信号取得部34は、これら音検出信号及びAE検出信号を取得するごとに、音検出信号及びAE検出信号を評価部38へ逐次出力する。
【0060】
加工位置判別部36は、内部集光加工中に移動機構14及びレーザヘッド16を監視することで、XY面内でのレーザヘッド16のレーザ光Lの集光位置と、Z方向におけるレーザ光Lの集光位置と、を繰り返し取得する。これにより、加工位置判別部36は、内部集光加工の加工位置をリアルタイムで判別する。その結果、内部集光加工中に、単層(1層目)の内部集光加工が実行されているか、或いは複数層(2層目以降)の内部集光加工が実行されているのかを判別可能である。また、第2内部集光加工中にレーザ光Lの集光位置が既述のストリートCH1とストリートCH2との交点CR(図2参照)に位置しているか否かを判別可能である。そして、加工位置判別部36は、内部集光加工の加工位置を判別するごとに、この加工位置の判別結果を評価部38へ逐次出力する。
【0061】
評価部38は、内部集光加工中に信号取得部34から音検出信号及びAE検出信号が繰り返し入力されるごとに、音検出信号及びAE検出信号に基づいて亀裂Kの伸展状態の評価を実行する。
【0062】
また、この際に評価部38は、加工位置判別部36から繰り返し入力される加工位置の判別結果に基づいて、加工位置に対応した亀裂Kの伸展状態の評価を実行する。具体的には評価部38は、単層(1層目)の内部集光加工中には「単層評価」を実行し、複数層(2層目以降)の内部集光加工中には「層間評価」を実行し、さらに第2内部集光加工中にレーザ光Lの集光位置が交点CRに位置する場合には「交点評価」を実行する。
【0063】
評価部38は「単層評価」では、音検出信号及びAE検出信号に基づいて、記憶部28内のデータテーブル40を参照することで亀裂Kの伸展方向及び長さを評価する。具体的には評価部38は、ウェーハWの裏面側に対向する位置にあるマイクロフォン20で検出された音検出信号に基づいてデータテーブル40を参照することで、レーザ加工領域P1,P2からウェーハWの裏面側に伸展した亀裂Kの長さを評価する。また、評価部38は、テーブル12の反対面12b側に設けられた各AEセンサ22で検出された音検出信号に基づいてデータテーブル40を参照することで、レーザ加工領域P1,P2からウェーハWの表面側(保持面12a側)に伸展した亀裂Kの長さを評価する。
【0064】
データテーブル40には、単層評価用のデータが予め実験又はシミュレーション等で求められて記憶されている。この単層評価用のデータは、単層(1層目)の内部集光加工時における、音検出信号の解析結果とこの解析結果に対応した亀裂K(裏面側)の長さの組み合わせを複数記憶すると共に、AE検出信号の解析結果とこの解析結果に対応した亀裂K(表面側)の長さの組み合わせを複数記憶している。
【0065】
ここで音検出信号の解析結果とは、例えば、内部集光加工中にウェーハWから発生する音の音圧、発生タイミング、及び長さ(期間)と、音検出信号の周波数及び波形(立ち上がり波形)と、を含む。また、AE検出信号の解析結果とは、例えば、AE検出信号の発生タイミング、長さ(期間)、周波数、及び波形(立ち上がり波形)を含む。これにより、評価部38は、信号取得部34から音検出信号及びAE検出信号が繰り返し入力されるごとに、これら各検出信号の解析結果に基づいてデータテーブル40を参照することで、亀裂K(裏面側)及び亀裂K(表面側)の長さを評価することができる。その結果、亀裂Kの伸展方向及び長さを評価可能である。
【0066】
なお、評価部38は、「単層評価」として、レーザヘッド16からのレーザ光L(パルスレーザ光)の照射タイミングと、マイクロフォン20で検出された音検出信号(ウェーハWから発生する音)の検出タイミングとのずれに基づいて、ウェーハWの内部でのレーザ加工領域P1,P2の加工高さ(Z方向位置)を評価(推定)してもよい。
【0067】
評価部38は「層間評価」では、厚いウェーハWをストリートCH1,CH2に沿って割断する際の起点となるレーザ加工領域P1,P2の各層間の亀裂Kの接続状態(以下、第1亀裂接続状態という)を評価する。具体的には評価部38は、音検出信号及びAE検出信号に基づいて、記憶部28内のデータテーブル41を参照することで、複数層の第1内部集光加工中には複数層のレーザ加工領域P1における第1亀裂接続状態を評価し、複数層の第2内部集光加工中には複数層のレーザ加工領域P2における第1亀裂接続状態を評価する。
【0068】
データテーブル41には、層間評価用のデータが予め実験又はシミュレーション等で求められて記憶されている。この層間評価用のデータは、複数層(2層目以降)の内部集光加工時における、既述の音検出信号及びAE検出信号の解析結果と、この解析結果に対応した第1亀裂接続状態の評価結果(正常状態、異常状態等)との組み合わせを複数記憶している。これにより、評価部38は、信号取得部34から音検出信号及びAE検出信号が繰り返し入力されるごとに、これら各検出信号を解析した解析結果に基づいてデータテーブル41を参照することで、第1亀裂接続状態を評価可能である。
【0069】
評価部38は「交点評価」では、第2内部集光加工中に交点CRにおいて亀裂Kが適正に形成されたか否かを評価する。ここで、ストリートCH2に沿った第2内部集光加工が交点CRに達すると、第1内部集光加工で先に交点CRに形成されたレーザ加工領域P1によりレーザ光Lが散乱等されることで、レーザ加工領域P2及び亀裂Kが適正に形成されない場合がある。この場合には、交点CRにおいてレーザ加工領域P1から伸展した亀裂Kとレーザ加工領域P2から伸展した亀裂Kとの接続状態が不十分になり、交点CRでの割断が正常に実行されないおそれがある。そこで、評価部38は、音検出信号及びAE検出信号に基づいて、記憶部28内のデータテーブル42を参照することで、レーザ加工領域P1から伸展した亀裂Kとレーザ加工領域P2から伸展した亀裂Kとの接続状態(以下、第2亀裂接続状態という)を評価する。
【0070】
データテーブル42には、交点評価用のデータが予め実験又はシミュレーション等で求められて記憶されている。この交点評価用のデータは、第2内部集光加工中の交点CRにおける、既述の音検出信号及びAE検出信号の解析結果と、この解析結果に対応した第2亀裂接続状態の評価結果(正常状態、異常状態等)との組み合わせを複数記憶している。これにより、評価部38は、信号取得部34から音検出信号及びAE検出信号が繰り返し入力されるごとに、これら各検出信号を解析した解析結果に基づいてデータテーブル42を参照することで、第2亀裂接続状態を評価可能である。
【0071】
表示制御部39は、赤外線カメラ18から入力された撮影画像データ、及びレーザ加工装置10の各設定画面等をモニタ24に表示させる。また、表示制御部39は、ウェーハWの内部集光加工中において、評価部38による亀裂Kの伸展状態の評価結果(単層評価の結果、層間評価の結果、交点評価の結果)に基づいて亀裂Kの伸展状態に異常が発生した場合には、その旨を示す警告情報46をモニタ24に表示させる。
【0072】
なお、レーザ加工制御部32は、評価部38による亀裂Kの伸展状態の評価結果に基づいて亀裂Kの伸展状態に異常が発生した場合には、ウェーハWの内部集光加工を停止する。或いはレーザ加工制御部32が、内部集光加工中に評価部38の評価結果に基づいて、レーザ光Lの出射条件(例えばレーザ光Lの出力等)をリアルタイムに補正する所謂フィードバック制御を実行してもよい。
【0073】
[第1実施形態の作用]
図10は、本発明のレーザ加工方法に係る第1実施形態のレーザ加工装置10によるウェーハWの内部集光加工処理の流れを示すフローチャートである。図11は、第1内部集光加工中における、図10中のステップS5(評価部38による評価処理)の流れを示すフローチャートである。図12は、第2内部集光加工中における、図10中のステップS5(評価部38による評価処理)の流れを示すフローチャートである。
【0074】
図10に示すように、加工対象のウェーハW(製品ウェーハ)がテーブル12に吸着保持されると、制御装置26の検出制御部30が作動する。検出制御部30は、移動機構14及び赤外線カメラ18を制御して、ウェーハWのアライメント基準の撮影画像データを取得する。そして、検出制御部30は、この撮影画像データを解析して、ウェーハWの各ストリートCH1,CH2の位置を検出するアライメント検出を行う(ステップS1)。
【0075】
アライメント検出が完了するとレーザ加工制御部32が作動して、ストリートCH1の内部集光加工処理を開始する。
【0076】
最初にレーザ加工制御部32は、検出制御部30によるアライメント検出結果に基づき、移動機構14を駆動して、レーザヘッド16の光軸を第1番目のストリートCH1の一端に位置合わせするアライメントを実行する(ステップS2)。このアライメントが完了すると、レーザ加工制御部32は、レーザヘッド16を制御して、レーザ光LをウェーハWの裏面から所定の深さ位置に集光させる。これにより、第1内部集光加工が開始されて、ウェーハWの内部にレーザ加工領域P1が形成される(ステップS3)。
【0077】
次いで、レーザ加工制御部32は、移動機構14を駆動して、テーブル12をX方向に移動させることで、ウェーハWに対してレーザヘッド16をX方向に相対移動させる(ステップS4)。これにより、ウェーハWの内部に第1番目のストリートCH1に沿ったレーザ加工領域P1が形成される。なお、レーザ加工制御部32は、ウェーハWが厚い場合には、移動機構14及びレーザヘッド16を制御して、第1番目のストリートCH1に沿った複数層のレーザ加工領域P1を形成する。
【0078】
一方、ウェーハWの第1内部集光加工(レーザ加工)が開始されると、制御装置26の信号取得部34、加工位置判別部36、及び評価部38が作動して、第1内部集光加工によりレーザ加工領域P1から伸展する亀裂Kの伸展状態を評価する評価処理が開始される(ステップS5)。
【0079】
図11に示すように、信号取得部34が、第1内部集光加工中にマイクロフォン20及び各AEセンサ22を作動させて、マイクロフォン20からの音検出信号の取得と、各AEセンサ22からのAE検出信号の取得と、評価部38への音検出信号及びAE検出信号の出力と、を繰り返し実行する(ステップS10、本発明の検出工程に相当)。また同時に加工位置判別部36が、第1内部集光加工中に移動機構14及びレーザヘッド16を監視することで、内部集光加工の加工位置の判別と、評価部38への加工位置の判別結果の出力と、を繰り返し実行する(ステップS10)。これにより、第1内部集光加工中に、ウェーハWから発生する音及び振動(弾性波)と、加工位置とがリアルタイムで検出される。
【0080】
評価部38は、加工位置判別部36による加工位置の判別結果に基づいて、単層(1層目)の第1内部集光加工中には(ステップS11でYES)、「単層評価」を実行する(ステップS12、本発明の評価工程に相当)。この場合には評価部38は、信号取得部34からの音検出信号及びAE検出信号に基づいてデータテーブル40を参照して、レーザ加工領域P1から伸展した亀裂K(裏面側)及び亀裂K(表面側)の長さを評価する。これにより、亀裂Kの伸展方向及び長さが適正であるか否かがリアルタイムに評価される。
【0081】
また、評価部38は、加工位置の判別結果に基づいて、複数層(2層目以降)の第1内部集光加工中には(ステップS11でNO)、「層間評価」を実行する(ステップS13、本発明の評価工程に相当)。この場合には評価部38は、信号取得部34からの音検出信号及びAE検出信号に基づいてデータテーブル41を参照して、第1亀裂接続状態を評価する。これにより、レーザ加工領域P1の各層間の亀裂Kの接続が適正であるか否かがリアルタイムで評価される。
【0082】
表示制御部39は、評価部38による亀裂Kの伸展状態の評価結果(単層評価の結果、層間評価の結果)に基づいて亀裂Kの伸展状態に異常が発生した場合には(ステップS14でYES)、その旨を示す警告情報46をモニタ24に表示させる(ステップS15)。これにより、オペレータに対して異常の発生を報知することができる。また、この場合には、レーザ加工制御部32がウェーハWの第1内部集光加工を停止させる。
【0083】
一方、亀裂Kの伸展状態に異常が発生してない場合には(ステップS14でNO)、図10のステップS6に進む。
【0084】
図10に戻って、第1番目のストリートCH1に対する単層又は複数層の第1内部集光加工が完了するまで、既述のステップS4及びステップS5(ステップS10からステップS15)までの処理が繰り返し実行される(ステップS6でNO)。以下同様に、残りのストリートCH1に対する第1内部集光加工(レーザ加工)と、第1内部集光加工の評価処理と、が繰り返し実行される(ステップS7でYES、ステップS2からステップS6)。
【0085】
レーザ加工制御部32は、全てのストリートCH1の内部集光加工処理が完了すると、既述のアライメント検出結果に基づき移動機構14を駆動して、レーザヘッド16の光軸を第1番目のストリートCH2の一端に位置合わせするアライメントを実行する(ステップS7でYES、ステップS2)。
【0086】
次いで、レーザ加工制御部32の制御の下、レーザヘッド16によるウェーハWの内部へのレーザ光Lの集光と、移動機構14によるテーブル12をX方向の移動と、が開始されることで、第2内部集光加工が開始される(ステップS3)。これにより、ウェーハWの内部に第1番目のストリートCH2に沿ったレーザ加工領域P2が形成される。なお、レーザ加工制御部32は、ウェーハWが厚い場合には、移動機構14及びレーザヘッド16を制御して、第1番目のストリートCH2に沿った複数層のレーザ加工領域P2を形成する。
【0087】
一方、ウェーハWの第2内部集光加工が開始されると、制御装置26の信号取得部34、加工位置判別部36、及び評価部38が再び作動して、第2内部集光加工によりレーザ加工領域P2から伸展する亀裂Kの伸展状態を評価する評価処理が開始される(ステップS5)。
【0088】
図12に示すように、既述の図11に示したステップS10と同様に、信号取得部34による各検出信号の取得及び評価部38への各検出信号の出力と、加工位置判別部36による加工位置の判別及び評価部38への判別結果の出力と、が繰り返し実行される(ステップS20、本発明の検出工程に相当)。
【0089】
評価部38は、加工位置判別部36による加工位置の判別結果に基づいて、単層(1層目)の第2内部集光加工中であって(ステップS21でYES)、さらに、レーザ光Lの集光位置が交点CRに位置してない場合には(ステップS22でNO)、既述の図11に示したステップS12と同様の「単層評価」を実行する(ステップS23、本発明の評価工程に相当)。これにより、亀裂Kの伸展方向及び長さが適正であるか否かがリアルタイムで評価される。
【0090】
また、評価部38は、加工位置の判別結果に基づいて、単層(1層目)の第2内部集光加工中であって(ステップS21でYES)、さらに、レーザ光Lの集光位置が交点CRに位置する場合には(ステップS22でYES)、「交点評価」を実行する(ステップS24、本発明の評価工程に相当)。この場合には評価部38は、信号取得部34からの音検出信号及びAE検出信号に基づいてデータテーブル42を参照して、交点CRでの第2亀裂接続状態を評価する。これにより、交点CRにおいて、レーザ加工領域P2及び亀裂Kが適正に形成されているか否かがリアルタイムで評価される。
【0091】
さらに、評価部38は、加工位置の判別結果に基づいて、複数層(2層目以降)の第2内部集光加工中であって(ステップS21でNO)、さらに、レーザ光Lの集光位置が交点CR以外である場合には(ステップS25でNO)、既述の図11に示したステップS13と同様の「層間評価」を実行する(ステップS26、本発明の評価工程に相当)。これにより、レーザ加工領域P2の各層間の亀裂Kの接続が適正であるか否かがリアルタイムで評価される。
【0092】
さらにまた、評価部38は、加工位置の判別結果に基づいて、複数層(2層目以降)の第2内部集光加工中であって(ステップS21でNO)、さらに、レーザ光Lの集光位置が交点CRに位置する場合には(ステップS25でNO)、「層間評価」及び「交点評価」を実行する(ステップS27、本発明の評価工程に相当)。なお、この場合には、「層間評価」及び「交点評価」のいずれか一方のみを実行してもよい。
【0093】
表示制御部39は、既述の図11に示したステップS14,S15と同様に、評価部38による亀裂Kの伸展状態の評価結果(単層評価の結果、層間評価の結果、交点評価の結果)に基づいて亀裂Kの伸展状態に異常が発生した場合には(ステップS28でYES)、警告情報46をモニタ24に表示させる(ステップS29)。これにより、オペレータに対して異常の発生を報知することができる。また、この場合には、レーザ加工制御部32がウェーハWの第2内部集光加工を停止させる。或いは、レーザ加工制御部32が、内部集光加工中に評価部38の評価結果に基づいてレーザ光の出射条件(例えばレーザ光Lの出力等)をリアルタイムに補正(フィードバック制御)してもよい。
【0094】
一方、亀裂Kの伸展状態に異常が発生してない場合には(ステップS28でNO)、図10のステップS6に進む。
【0095】
図10に戻って、第1番目のストリートCH2に対する単層又は複数層の第2内部集光加工(レーザ加工)が完了するまで、既述のステップS4及びステップS5(ステップS20からステップS29)までの処理が繰り返し実行される(ステップS6でNO)。以下同様に、残りのストリートCH2に対する第2内部集光加工と、第2内部集光加工の評価処理と、が繰り返し実行される(ステップS7でYES、ステップS2からステップS6)。これにより、ウェーハWの全てストリートCH1,CH2の内部集光加工が完了する(ステップS7でNO)。
【0096】
以上のように第1実施形態のレーザ加工装置10では、製品ウェーハであるウェーハWの内部集光加工中に、マイクロフォン20及び各AEセンサ22を用いてウェーハWから発生する音及び振動(弾性波)をリアルタイムで検出することで、レーザ加工領域P1,P2から伸展する亀裂Kの伸展状態をリアルタイムで評価可能である。その結果、従来のサンプルウェーハを用いた亀裂Kの伸展状態の評価を実行する必要がなくなるので、異常が発生した場合には直ぐにオペレータに報知することができる。これにより、不良となるウェーハW(製品ウェーハ)を減らすことができる。
【0097】
[第1実施形態のレーザ加工装置の変形例]
図13は、第1実施形態のレーザ加工装置10の第1変形例を示した図である。図14は、第1実施形態のレーザ加工装置10の第2変形例を示した図である。上記第1実施形態のレーザ加工装置10では、ウェーハWの内部集光加工中にマイクロフォン20及び各AEセンサ22を用いてウェーハWから発生する音及び振動(弾性波)の双方をリアルタイムで検出しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0098】
例えば、図13に示しように、上記第1実施形態のレーザ加工装置10からマイクロフォン20を省略して、内部集光加工中に各AEセンサ22によりウェーハWから発生する振動(弾性波)をリアルタイムで検出した結果のみに基づいて、レーザ加工領域P1,P2から伸展する亀裂Kの伸展状態をリアルタイムで評価してもよい。
【0099】
また、図14に示すように、上記第1実施形態のレーザ加工装置10から各AEセンサ22を省略して、内部集光加工中にマイクロフォン20によりウェーハWから発生する音をリアルタイムで検出した結果のみに基づいて、レーザ加工領域P1,P2から伸展する亀裂Kの伸展状態をリアルタイムで評価してもよい。さらに、この場合には、テーブル12の反対面12bに対向する位置にもマイクロフォン20を設けてもよい。
【0100】
[第2実施形態]
図15は、第2実施形態のレーザ加工装置10の概略図である。図16は、第2実施形態のレーザ加工装置10によりウェーハWに形成される加工溝100の正面図である。上記第1実施形態(第1変形例及び第2変形例を含む)のレーザ加工装置10では、レーザ加工として、ストリートCH1,CH2に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域P1,P2を形成する内部集光加工を実行している。
【0101】
これに対して、図15及び図16に示すように、第2実施形態のレーザ加工装置10では、レーザ加工として、ウェーハWのストリートCH1,CH2に沿ってウェーハWの表面に加工溝100を形成する溝加工を実行する。なお、第2実施形態のレーザ加工装置10の加工対象のウェーハWは、シリコン等の基板の表面に低誘電率絶縁体被膜(Low-k膜)と回路を形成する機能膜とを積層した積層体である。
【0102】
第2実施形態のレーザ加工装置10は、テーブル12の保持面12aがウェーハWの裏面を保持している点、及びレーザヘッド16の機能が一部異なる点を除けば、上記第1実施形態のレーザ加工装置10と基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
【0103】
第2実施形態のレーザヘッド16は、ウェーハWの表面に集光点を合わせてレーザ光LをウェーハWに向けて照射する。第2実施形態のレーザヘッド16の具体的な構成についても公知技術(例えば上記特許文献3参照)であるので、ここでは具体的な説明は省略する。
【0104】
第2実施形態のレーザ加工制御部32は、上記第1実施形態と同様にレーザヘッド16の光軸をストリートCH1,CH2の一端に位置合わせするアライメントを実行した後、レーザヘッド16を制御してレーザ光LをウェーハWの表面(ストリートCH1,CH2の一端)に集光させる。なお、図16中の符号SPは、ウェーハWの表面に集光されたレーザ光Lのスポット(集光点、加工点)である。
【0105】
次いで、レーザ加工制御部32が、移動機構14を駆動してウェーハWに対してレーザヘッド16がX方向に相対移動させることで、ストリートCH1,CH2に沿ってウェーハWの表面に加工溝100が形成される。
【0106】
第2実施形態のレーザ加工装置10では、ウェーハWの溝加工中にマイクロフォン20及び各AEセンサ22を用いてウェーハWから発生する音及び振動(弾性波)をリアルタイムで検出することで、この検出結果に基づいて溝加工(加工溝100)の加工状態、例えば加工溝100の溶融状態をリアルタイムで評価する。
【0107】
なお、第2実施形態のレーザ加工装置10では、加工対象のストリートCH1,CH2の左右にそれぞれ1個以上のマイクロフォン20を配置すると共に、加工対象のストリートCH1,CH2の左右にそれぞれ1個以上のAEセンサ22を配置してもよい。これにより、溝加工中にウェーハWから発生する音及び振動(弾性波)を加工対象のストリートCH1,CH2の左右で検出可能である。
【0108】
また、第2実施形態では、溝加工時に加工対象のストリートCH1,CH2の左右で検出される音検出信号及びAE検出信号の解析結果と、この解析結果に対応した加工溝100の溶融状態の評価結果(左右の溶融量のバランス、過多或いは過少の溶融量)との組み合わせを複数記憶したデータテーブルを予め作成しておく。これにより、第2実施形態の評価部38は、上記第1実施形態と同様に、信号取得部34から繰り返し入力される音検出信号及びAE検出信号を解析した解析結果に基づいてデータテーブル41を参照することで、加工溝100の溶融状態をリアルタイムで評価可能である。その結果、上記第1実施形態と同様に、警告情報46の報知及び溝加工の停止を実行したり、或いは溝加工中にレーザ光の出射条件(例えばレーザ光Lの出力等)をリアルタイムに補正したりすることができる。
【0109】
以上のように第2実施形態のレーザ加工装置10においても、溝加工中に加工溝100の溶融状態をリアルタイムで評価することができるため、上記第1実施形態のレーザ加工装置10と同様の効果が得られる。
【0110】
なお、第2実施形態のレーザ加工装置10においても、上記第1実施形態のレーザ加工装置10の第1変形例(図13参照)及び第2変形例(図14参照)と同様に、マイクロフォン20及び各AEセンサ22のいずれか一方のみを用いて、加工溝100の溶融状態を評価してもよい。
【0111】
[その他]
上記各実施形態では、評価部38が音検出信号及びAE検出信号の解析結果に基づいてデータテーブル40~42等を参照することで各種レーザ加工の加工状態を評価しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、音検出信号及びAE検出信号の解析結果と加工状態の評価結果とを教師データとして機械学習させた学習済みモデルを予め生成する。そして、評価部38が音検出信号及びAE検出信号の解析結果に基づいて学習済みモデルを用いて各種レーザ加工の加工状態を評価してもよい。
【0112】
上記各実施形態では、AEセンサ22を用いてウェーハWのレーザ加工中(内部集光加工中、溝加工中)に発生する振動(弾性波)を検出しているが、AEセンサ22に代えて或いはAEセンサ22と共に公知の各種振動検出センサ(圧電センサを含む)を用いて、ウェーハWのレーザ加工で発生する振動を検出してもよい。
【符号の説明】
【0113】
4 :チップ
6 :デバイス層
10 :レーザ加工装置
12 :テーブル
12a :保持面
12b :反対面
13A :ポーラス体
13B :緻密体
14 :移動機構
16 :レーザヘッド
18 :赤外線カメラ
20 :マイクロフォン
22 :AEセンサ
24 :モニタ
26 :制御装置
27 :操作部
28 :記憶部
30 :検出制御部
32 :レーザ加工制御部
34 :信号取得部
36 :加工位置判別部
38 :評価部
39 :表示制御部
40 :データテーブル
41 :データテーブル
42 :データテーブル
46 :警告情報
100 :加工溝
CH1 :ストリート
CH2 :ストリート
CR :交点
K :亀裂
L :レーザ光
P1 :レーザ加工領域
P2 :レーザ加工領域
W :ウェーハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16