IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社堀場エステックの特許一覧

特開2024-90786抵抗体の製造方法、流体測定装置、流体制御装置、及び流体装置群
<>
  • 特開-抵抗体の製造方法、流体測定装置、流体制御装置、及び流体装置群 図1
  • 特開-抵抗体の製造方法、流体測定装置、流体制御装置、及び流体装置群 図2
  • 特開-抵抗体の製造方法、流体測定装置、流体制御装置、及び流体装置群 図3
  • 特開-抵抗体の製造方法、流体測定装置、流体制御装置、及び流体装置群 図4
  • 特開-抵抗体の製造方法、流体測定装置、流体制御装置、及び流体装置群 図5
  • 特開-抵抗体の製造方法、流体測定装置、流体制御装置、及び流体装置群 図6
  • 特開-抵抗体の製造方法、流体測定装置、流体制御装置、及び流体装置群 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090786
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】抵抗体の製造方法、流体測定装置、流体制御装置、及び流体装置群
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/00 20220101AFI20240627BHJP
   G05D 7/06 20060101ALI20240627BHJP
   G01F 1/684 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
G01F1/00 S
G05D7/06 Z
G01F1/684 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206894
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】岡野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】江村 秀俊
【テーマコード(参考)】
2F030
2F035
5H307
【Fターム(参考)】
2F030CC11
2F030CF01
2F030CF09
2F035EA03
5H307AA02
5H307BB01
5H307DD01
5H307DD13
5H307EE02
5H307EE07
5H307FF06
5H307HH12
(57)【要約】
【課題】制御流量範囲が小流量の流体制御装置から大流量の流体制御装置であっても、抵抗体の流量特性を同じとすることで、補正係数又はガスデータを取得する手間及び工数を削減する。
【解決手段】流量測定範囲が互いに異なる3つ以上の流体測定装置それぞれに用いられる3種類以上の抵抗体の製造方法であって、前記3種類以上の抵抗体同士において前記内部流路の流路長及び流路径を略同じとし、前記3種類以上の抵抗体それぞれに形成する前記内部流路の流路数を異ならせる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量測定範囲が互いに異なる3つ以上の流体測定装置それぞれに用いられる3種類以上の抵抗体の製造方法であって、
前記3種類以上の抵抗体同士において前記内部流路の流路長及び流路径を略同じとし、前記3種類以上の抵抗体それぞれに形成する前記内部流路の流路数を互いに異ならせる、抵抗体の製造方法。
【請求項2】
前記3種類以上の抵抗体それぞれのレイノルズ数を互いに略同じとする、請求項1に記載の抵抗体の製造方法。
【請求項3】
前記3種類以上の抵抗体は、流量測定範囲が30~50000[sccm]に含まれる3つ以上の流体測定装置それぞれに用いられるものである、請求項1又は2に記載の抵抗体の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の製造方法により製造された抵抗体を用いた流体測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の流体測定装置と、
前記流体測定装置の上流側又は下流側に設けられた流体制御バルブと、
前記流体測定装置により測定された流量に基づいて前記流体制御バルブを制御するバルブ制御部とを備える、流体制御装置。
【請求項6】
流量測定範囲が互いに異なる3つ以上の流体測定装置又はそれら流体測定装置を用いて構成された3つ以上の流体制御装置からなる流体装置群であって、
前記流体測定装置それぞれに用いられる抵抗体は、流路長と流路径とが略同じ内部流路を有するとともに、前記内部流路の流路数が互いに異なるものである、流体装置群。
【請求項7】
流量測定範囲が互いに異なる3つ以上の流体測定装置又はそれら流体測定装置を用いて構成された3つ以上の流体制御装置からなる流体装置群であって、
前記流体測定装置それぞれに用いられる3種類以上の抵抗体は、レイノルズ数が互いに略同じである、流体装置群。
【請求項8】
前記3種類以上の抵抗体は、前記内部流路の流路長及び流路径が略同じ、且つ、前記内部流路の流路数が同じであり、
前記3つ以上の流体測定装置の少なくとも2つ以上は、前記抵抗体の上流側端面に取り付けられて前記抵抗体に形成された一部の流路を塞ぐ閉塞板を有しており、
前記閉塞板により、前記3つ以上の流体測定装置は流量測定範囲が互いに異なるものとされている、請求項7に記載の流体装置群。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗体の製造方法、流体測定装置、流体制御装置、及び流体装置群に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、熱式マスフローコントローラに用いられる抵抗体は、制御流量範囲が例えば1000[sccm]以下の小流量では、特許文献1に示すテーパー型の抵抗体が用いられ、例えば3000[sccm]以上の中流量以上では、特許文献2に示すエッチングプレート型の抵抗体が用いられている。
【0003】
しかしながら、図7に示すように、テーパー型の抵抗体(TP bypass)と、エッチングプレート型の抵抗体(EP bypass)では、図7に示すように流量特性の直線性が異なってしまう。また、エッチングプレート型の抵抗体に関しては、レイノルズ数ができるだけ小さくなるように制御流量範囲ごとに流量設計がされており、エッチングプレート型の抵抗体においても流量特性の直線性は統一されていない。
【0004】
このため、制御流量範囲ごとに流量精度のばらつきを補正するための補正係数又はガスデータを取得する必要があり、その手間と工数がかかってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-171275号公報
【特許文献2】特開2001-336958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上述した問題を解決すべくなされたものであり、小流量から大流量までの種々の流量制御範囲の流体制御装置又は流量測定範囲の流体測定装置において抵抗体の流量特性を同じとすることで、補正係数又はガスデータを取得する手間及び工数を削減することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る抵抗体の製造方法は、流量測定範囲が互いに異なる3つ以上の流体測定装置それぞれに用いられる3種類以上の抵抗体の製造方法であって、前記3種類以上の抵抗体同士において前記内部流路の流路長及び流路径を略同じとし、前記3種類以上の抵抗体それぞれに形成する前記内部流路の流路数を互いに異ならせることを特徴とする。
【0008】
このような抵抗体の製造方法によれば、3種類以上の抵抗体同士において内部流路の流路長及び流路径を略同じとし、それら抵抗体それぞれに形成する内部流路の流路数を互いに異ならせているので、測定流量範囲が小流量のものから大流量のものまで幅広い流体測定装置において、抵抗体の流量特性を同じとすることができる。
その結果、流量測定範囲が小流量、中流量、大流量などの流量測定範囲が互いに異なる3つ以上の流体測定装置において、補正係数又はガスデータを取得する手間及び工数を削減することができる。
その他、全ての流量測定範囲で抵抗体の流量特性を揃えておけば、ガスデータは小流量域に対応した流体測定装置で取得すれば良くなり、その結果、高価なガスの使用量又は温暖化ガスの使用量が抑えられるので、コスト面又は環境面において有効である。
【0009】
具体的に抵抗体の流路長及び流路径を略同じにすることによって、前記3種類以上の抵抗体それぞれのレイノルズ数を互いに略同じとすることができる。
【0010】
前記3種類以上の抵抗体は、流量測定範囲が30~50000[sccm]に含まれる3つ以上の流体測定装置それぞれに用いられるものであることが望ましい。
ここで、流量測定範囲は、フルスケール流量が、例えば30[sccm]、100[sccm]、300[sccm]、1000[sccm]、3000[sccm]、10000[sccm]、30000[sccm]、50000[sccm]などが考えられる。
【0011】
また、上述した製造方法により製造された抵抗体を用いた流体測定装置も本発明の一態様である。
【0012】
さらに、本発明に係る流体制御装置は、上述した流体測定装置と、前記流体測定装置の上流側又は下流側に設けられた流体制御バルブと、前記流体測定装置により測定された流量に基づいて前記流体制御バルブを制御するバルブ制御部とを備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る流体装置群は、流量測定範囲が互いに異なる3つ以上の流体測定装置又はそれら流体測定装置を用いて構成された3つ以上の流体制御装置からなるものであって、前記流体測定装置それぞれに用いられる抵抗体は、流路長と流路径とが略同じ内部流路を有するとともに、前記内部流路の流路数が互いに異なるものであることを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明に係る流体装置群は、流量測定範囲が互いに異なる3つ以上の流体測定装置又はそれら流体測定装置を用いて構成された3つ以上の流体制御装置からなるものであって、前記流体測定装置それぞれに用いられる3種類以上の抵抗体は、レイノルズ数が互いに略同じであることを特徴とする。
【0015】
ここで、前記3種類以上の抵抗体は、前記内部流路の流路長及び流路径が略同じ、且つ、前記内部流路の流路数が同じであり、前記3つ以上の流体制御装置又は前記3つ以上の流体測定装置の少なくとも2つ以上は、前記抵抗体の上流側端面に取り付けられて前記抵抗体に形成された一部の流路を塞ぐ閉塞板を有しており、前記閉塞板により、前記3つ以上の流体制御装置は流量制御範囲が互いに異なるものとされていることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
このように構成した本発明によれば、小流量から大流量までの種々の流量測定範囲の流体測定装置において抵抗体の流量特性を同じとすることで、補正係数又はガスデータを取得する手間及び工数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る流体制御装置を示す模式図である。
図2】同実施形態の抵抗体の構成例を示す模式図である。
図3】同実施形態の抵抗体の製造方法を説明するための図である。
図4】同実施形態の抵抗体の流量特性を示すグラフである。
図5】変形実施形態の抵抗体及び閉塞板の構成を示す断面図である。
図6】変形実施形態の整流板を有する構成を示す模式図である。
図7】従来の抵抗体の流量特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る流体制御装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0019】
<装置構成>
本実施形態の流体制御装置100は、例えば半導体製造装置に組み込まれることにより半導体製造プロセスに用いられるものであって、例えば半導体処理チャンバに接続された1又は複数のガス供給ラインに設けられて、各ガス供給ラインを流れるプロセスガスの流量を制御するものである。
【0020】
具体的に流体制御装置100は、いわゆる熱式マスフローコントローラ(熱式MFC)であり、図1に示すように、内部流路であるメイン流路Xが形成された金属製(例えばステンレス製)のブロック体20と、ブロック体20に設置されてメイン流路Xを流れる流体の流量を測定する流量センサ30と、ブロック体20に設置されてメイン流路Xを流れる流体の流量を制御するための流体制御バルブ40と、流量センサ30で測定される測定値に基づき流体制御バルブ40の弁開度を調節してメイン流路Xに流れる流体の流量を制御するバルブ制御部50とを備えている。
【0021】
流量センサ30は、熱式流量センサである。具体的に流量センサ30は、メイン流路Xをバイパスするセンサ流路Lと、センサ流路Lを形成する測定管31の上流側及び下流側に巻き付けられた一対の発熱抵抗体32とを備えている。また、流量センサ30は、センサ流路Lに流体が流れることによって生じる一対の発熱抵抗体32の温度差に基づき、センサ流路Lを流れる流体の流量を算出する流量算出部33を備えている。
【0022】
ここで、メイン流路Xにおけるセンサ流路Lの分岐点とセンサ流路Lの合流点との間には、定流量特性を有する抵抗体Rが設けられており、メイン流路X及びセンサ流路Lの分流比が所定の設計値となるようにしてある。ここで、流量センサ30と、ブロック体20と、抵抗体Rとにより流体測定装置200が構成される。ここで、流体測定装置200において、後述する各流量測定範囲の抵抗体Rを除いて、その他の流路構造は同じである。より具体的には、流体測定装置200においてセンサ流路Lが同じであればよい。
【0023】
そして、流量算出部33は、メイン流路Xとセンサ流路Lとの分流比に基づいて、メイン流路Xを流れる流量を算出する。なお、流量算出部33は、後述するバルブ制御部50の機能を発揮するコンピュータを用いて構成しても良い。
【0024】
流体制御バルブ40は、流量センサ30の上流側に設けられている。具体的に流体制御バルブ40は、アクチュエータにより弁体を弁座に対して進退移動させることにより、流量を制御するものである。この流体制御バルブは、アクチュエータとしてソレノイドを用いたソレノイドバルブ(電磁弁)としても良いし、アクチュエータとしてピエゾ素子を用いたピエゾバルブとしても良い。また、流体制御バルブは、弁体を駆動していない状態で全閉状態となる所謂ノーマルクローズタイプのものであっても良いし、弁体を駆動していない状態で全開状態となる所謂ノーマルオープンタイプのものであっても良い。
【0025】
バルブ制御部50は、流量センサ30の流量算出部33により算出された流量Q及び目標流量(設定値)に基づいて流体制御バルブ40を制御するものである。なお、バルブ制御部50は、例えばCPU、メモリ、A/D・D/Aコンバータ、入出力手段を具備するいわゆるコンピュータから構成されており、メモリに格納されている流量制御プログラムが実行されて各種機器が協働することにより、バルブ制御部50としての機能が発揮される。
【0026】
<抵抗体Rの詳細構成>
本実施形態の抵抗体Rは、流量制御範囲が互いに異なる3つ以上の流体制御装置100それぞれに用いられる3種類以上の抵抗体Rにおいて、流量特性が略同じとなるように構成されている。
【0027】
具体的に3種類以上の抵抗体Rは、図2に示すように、それら抵抗体R同士において内部流路Rxの流路長A1と流路径A2とが略同じであり、内部流路Rxの流路数が互いに異なるものである。なお、1つの抵抗体Rに形成された複数の内部流路は、流路長A1及び流路径A2が略同じである。
【0028】
ここで、流路長A1が略同じ(実質的に同一)及び流路径A2が略同じ(実質的に同一)とは、加工精度の範囲のばらつきを許容し、同じであることを意味する。例えば、流路長A1のばらつきが±15%以内、より好ましくは±10%以内であれば略同じであり、流路径A2のばらつきが±15%以内、より好ましくは±10%以内であれば略同じである。設計値においては、流路長A1が同じ及び流路径A2が同じである。
【0029】
このように、3種類以上の抵抗体Rにおいて、それらの流路長A1と流路径A2とを略同じとすることにより、それらのレイノルズ数を互いに略同じとしつつ、流路数を互いに異ならせることによって、抵抗体Rを流れる流量を変化させている。ここで、レイノルズ数が略同じとは、流路長A1が略同じ及び流路径A2が略同じであることにより計算されるレイノルズ数のばらつきを許容し、同一であることを意味する。つまり、3種類以上の抵抗体Rは、設計値においては、レイノルズ数は互いに同じである。
【0030】
ここで、3種類以上の抵抗体Rは、例えば、流量制御範囲(流量測定範囲)が30~50000[sccm]に含まれる3つ以上の流体制御装置100それぞれに用いられるものである。ここで、流体測定装置200の測定可能範囲が流体制御バルブ40の制御可能範囲内であれば、流体制御装置100の流量制御範囲と流体測定装置200の流量測定範囲とは同じとなる。
【0031】
具体的には、流量制御範囲が、
(1)フルスケール流量30[sccm]のもの、
(2)フルスケール流量100[sccm]のもの、
(3)フルスケール流量300[sccm]のもの、
(4)フルスケール流量1000[sccm]のもの、
(5)フルスケール流量3000[sccm]のもの、
(6)フルスケール流量10000[sccm]のもの、
(7)フルスケール流量30000[sccm]のもの、
(8)フルスケール流量50000[sccm]のもの、である。
なお、フルスケール流量とは、流量制御範囲の最大値である。
【0032】
上記の8種類の流体制御装置100に用いられる8種類の抵抗体Rそれぞれに形成される内部流路Rxの流路長A1及び流路径A2を互いに同じとし、それら抵抗体Rそれぞれに形成する内部流路Rxの流路数を異ならせている。
【0033】
詳細な設計例としては、以下のようにすることが考えられる。
【0034】
【表1】
【0035】
ここで、抵抗体Rの製造方法について説明する。以下では、エッチングにより金属プレートに孔をあけて抵抗体Rを製造する例について説明する。
【0036】
まず、図3に示すように、例えば厚さ0.1mmの金属プレート1にエッチングにより、同一孔径の穴2を形成する。ここで、形成する孔2の数は、上記表1に示すように、装置No.の流量制御範囲に応じて決定される。なお、図3では、例として、装置No.#3及びNo.#4の抵抗体Rを製造するための金属プレート1を示している。
【0037】
また、形成する孔2の形状は、円形としている。これは、ハーゲンポアユイズの式から流れ特性を理論的に求めるためである。さらに、複数の孔2の配置は、金属プレート1において均等に配置することが望ましい。中央部に集中して配置すると、外周部で渦が発生したりして損失となるためである。
【0038】
上記の通り、孔2を形成した複数枚の金属プレート1を、各孔2が一致するように、ろう接合又は拡散接合などにより接合して一体化する。ここでは、流路長をa[mm]とするために、孔2を形成した所定枚の金属プレート1を接合することにより、抵抗体Rを形成する。このように製造された8種類の抵抗体Rは、外形サイズが同じであり、内部流路Rxの流路長がa[mm]で同じであり、内部流路Rxの流路径がb[mm]で同じであり、レイノルズ数(計算上)が同じであり、流路数のみが異なる構成となる。また、このように構成された抵抗体Rは、メイン流路Xの形状に合うような形となっている。ここでは円筒状の抵抗体Rになっている。
【0039】
このように構成された8種類の抵抗体Rの流量特性を図4に示す。本実施形態により構成した8種類の抵抗体Rは、実質的に同一の流量特性を示していることがわかる。
【0040】
また、上記のより製造された8種類の抵抗体Rを用いた流体制御装置100は、制御流量範囲が互いに異なる流体制御装置群を構成する。つまり、この流体制御装置群は、流体制御装置100それぞれに用いられる抵抗体Rが、内部流路Rxの流路長と流路径とが略同じであり、内部流路の流路数が互いに異なるものである。また、この流体制御装置群において、流体制御装置100それぞれに用いられる3種類以上の抵抗体Rは、レイノルズ数が互いに略同じである。
【0041】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態の流体制御装置100によれば、3種類以上の抵抗体Rそれぞれに形成する内部流路Rxの流路長及び流路径を略同じとし、それら抵抗体Rそれぞれに形成する内部流路Rxの流路数を異ならせているので、制御流量範囲が小流量のものから大流量のものまで幅広い流体制御装置100において、抵抗体Rの流量特性を同じとすることができる。
その結果、制御流量範囲が小流量、中流量、大流量などの流量制御範囲が互いに異なる3つ以上の流体制御装置100において、補正係数又はガスデータを取得する手間及び工数を削減することができる。
その他、全ての流量制御範囲で抵抗体Rの流量特性を揃えておけば、ガスデータは小流量域に対応した流体制御装置で取得すれば良くなり、その結果、高価なガスの使用量又は温暖化ガスの使用量が抑えられるので、コスト面又は環境面において有効である。
【0042】
<その他の実施形態>
例えば、図5に示すように、3種類以上の抵抗体Rは、内部流路Rxの流路長、流路径及び流路数が同じであり、3つ以上の流体制御装置100の少なくとも2つ以上は、抵抗体Rの上流側端面に取り付けられて抵抗体Rに形成された一部の流路を塞ぐ閉塞板SPを有する構成としてもよい。そして、この閉塞板SPにより、3つ以上の流体制御装置100は流量制御範囲が互いに異なるものとしてもよい。具体的には、前記実施形態に対応させると、抵抗体Rをフルスケール流量50000[sccm]のもの(#8)とし、その抵抗体Rに設けられる閉塞板SPに形成する穴数を変更して、流量制御範囲を互いに異なるものとする。更に下流側も上流側と同様に閉塞板を設けるようにしても良い。こうすることで、使用しない流路がデッドボリュームとなることを防ぎ、さらに測定精度が向上することが期待される。
【0043】
この構成であれば、抵抗体Rを3つ以上の流体制御装置100において共通とすることができ、抵抗体Rの製造コストを削減することができるだけでなく、補正係数又はガスデータを取得する手間及び工数をより一層削減することができる。なお、閉塞板SPを用いて流量を異ならせる場合には、流量特性を合わせるために、全ての種類の抵抗体Rに対して閉塞板SPを設け、その閉塞板SPに形成する内部流路の流路長及び流路計を略同一とすることが望ましい。
【0044】
さらに、図6に示すように、抵抗体Rの上流側に整流板TMを配置しても良い。特に、例えば30000sccm以上などの流体装置群のうち大流量に対応した流体制御装置100に整流板TMを取り付けると効果が良い顕著に現れる。小流量では元々の流量が小さいので、層流状態で抵抗体Rに流れが入るが、大流量では乱流に近いような状態で抵抗体Rに流れが入ってしまう。そのため、抵抗体Rの直前に整流板TMを入れることが望ましい。整流板TMは、抵抗体Rの流路よりも小さい孔が無数に空いていて、そこを通ることにより、乱流状態から層流状態に近づき、大流量であっても層流状態の流体を抵抗体Rに流すことができる。
【0045】
また、前記実施形態では、流量制御範囲が8種類とされた流体制御装置群について説明したが、8種類に限られず、3種類以上であれば良い。
【0046】
前記実施形態の抵抗体は、金属プレートにエッチングにより穴を形成していたが、その他、レーザ光を用いて穴を開ける方法や、ドリルで穴を開ける方法であっても良い。
【0047】
さらに、前記実施形態の流量センサは、熱式のものであったが、差圧式のものであっても良い。
【0048】
その上、前記実施形態の流体制御バルブは、流量センサの上流側に設けられても良い。
【0049】
前記実施形態の抵抗体Rは、流量測定範囲が互いに異なる3つ以上の流体測定装置に用いられるものであってもよい。この流体測定装置は、前記実施形態の流体制御装置において、流体制御バルブ40及びバルブ制御部50を有さない構成とすることが考えられる。
【0050】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0051】
100・・・流体制御装置
2 ・・・流路ブロック
R ・・・抵抗体
SP ・・・閉塞板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7