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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009082
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】基板接合方法および基板接合システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20240112BHJP
   B23K 20/00 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
H01L21/02 B
B23K20/00 310A
B23K20/00 310P
【審査請求】未請求
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023194100
(22)【出願日】2023-11-15
(62)【分割の表示】P 2022553755の分割
【原出願日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】P 2020164962
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】304019355
【氏名又は名称】ボンドテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503177074
【氏名又は名称】須賀 唯知
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】山内 朗
(72)【発明者】
【氏名】須賀 唯知
(57)【要約】
【課題】2つの基板を強固に接合することができる基板接合方法および基板接合システムを提供する。
【解決手段】2つの基板を接合する基板接合方法であって、2つの基板それぞれの互いに接合される接合面の少なくとも一方に対して、窒素ガスを用いた反応性イオンエッチングと窒素ラジカルの照射との少なくとも一方を行うことにより接合面を活性化する活性化処理工程と、活性化処理工程の後、予め設定された基準時間内に、2つの基板の接合面を、水分を含む気体に暴露する気体暴露工程と、活性化処理工程において接合面が活性化された2つの基板を接合する接合工程と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの金属元素を含まない絶縁体材料から形成された基板を接合する基板接合方法であって、
前記2つの基板それぞれの互いに接合される接合面の少なくとも一方に対して、窒素ガスを用いたエッチング処理と窒素ラジカルの照射との少なくとも一方を行うことにより前記接合面を窒素酸化物が形成された状態にする活性化処理工程と、
前記活性化処理工程の後、窒素酸化物が形成された状態が消滅しない10min未満の予め設定された基準時間内に、前記2つの基板の前記接合面を、水分を含む気体に暴露することにより、窒素酸化物をOH基に置換する気体暴露工程と、
前記活性化処理工程において前記接合面にOH基が存在する前記2つの基板を接合する接合工程と、を含む、
基板接合方法。
【請求項2】
前記接合工程において、気圧が1Paより大きく且つ10000Pa未満の状態で、前記2つの基板を接合する、
請求項1に記載の基板接合方法。
【請求項3】
前記気体暴露工程の後、前記接合工程を行うまでの間、気圧が1Paより大きく且つ10000Pa未満の状態で維持しながら、前記2つの基板を搬送する搬送工程を更に含む、
請求項1または2に記載の基板接合方法。
【請求項4】
前記2つの基板のうち前記接合面が親水化された少なくとも一方の前記接合面に水を含む液体を吹き付けることにより洗浄する洗浄工程を更に含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載の基板接合方法。
【請求項5】
前記活性化処理工程の後且つ前記2つの基板を搬送する搬送工程の前と、前記搬送工程と、の少なくとも一方において、前記2つの基板の前記接合面へ水ガスを供給する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の基板接合方法。
【請求項6】
前記活性化処理工程において、前記2つの基板の接合面に対して、窒素ガスを用いた反応性イオンエッチングを行った後、前記2つの基板の接合面に対して、窒素ラジカルを照射するラジカル処理を行う、
請求項1から5のいずれか1項に記載の基板接合方法。
【請求項7】
前記活性化処理工程において、前記2つの基板の接合面に対して、前記窒素ガスを用いた反応性イオンエッチングを行う前に、前記2つの基板の接合面に対して、酸素ガスを用いた反応性イオンエッチングを行う、
請求項6に記載の基板接合方法。
【請求項8】
前記活性化処理工程において、前記2つの基板の接合面に対して、窒素ガスを用いた粒子ビームを照射するエッチング処理を行った後、前記2つの基板の接合面に対して、窒素ラジカルを照射するラジカル処理を行う、
請求項1から5のいずれか1項に記載の基板接合方法。
【請求項9】
前記ラジカル処理において、少なくとも1つの孔が貫設され且つ接地電位で維持されたトラップ板の厚さ方向における一面側で発生したプラズマ中のイオンおよびラジカルを、前記トラップ板の孔を通過させて前記トラップ板の厚さ方向における他面側に配置された前記2つの基板の少なくとも一方の接合面へ照射させる、
請求項6から8のいずれか1項に記載の基板接合方法。
【請求項10】
前記エッチング処理において、少なくとも1つの孔が貫設されたトラップ板をフローティング状態で維持し、前記トラップ板の厚さ方向における一面側でプラズマを発生させるとともに、前記トラップ板の厚さ方向における他面側に前記2つの基板の少なくとも一方を配置し、
前記ラジカル処理において、前記トラップ板を接地電位で維持する、
請求項6から9のいずれか1項に記載の基板接合方法。
【請求項11】
前記2つの基板の少なくとも一方の接合面は、金属部分と絶縁膜とが露出している、
請求項8に記載の基板接合方法。
【請求項12】
前記2つの基板の少なくとも一方の接合面には、酸化物または窒化物を堆積することにより形成された絶縁膜が露出している、
請求項1から11のいずれか1項に記載の基板接合方法。
【請求項13】
2つの金属元素を含まない絶縁体材料から形成された基板を接合する基板接合方法であって、
前記2つの基板それぞれの互いに接合される接合面を窒素酸化物が形成された状態にする活性化処理工程と、
前記活性化処理工程において前記接合面が活性化された前記2つの基板を接合する接合工程と、
前記活性化処理工程の後、窒素酸化物が形成された状態が消滅しない10min未満の予め設定された基準時間内に、水分を含む気体が存在する環境下に配置することにより、窒素酸化物をOH基に置換し、前記接合工程を行うまでの間、気圧が1Paより大きく且つ10000Pa未満の状態で維持しながら、前記2つの基板を搬送する搬送工程と、を含み、
前記接合工程において、気圧が1Paより大きく且つ10000Pa未満の状態で、前記接合面にOH基が存在する前記2つの基板を接合する、
基板接合方法。
【請求項14】
2つの金属元素を含まない絶縁体材料から形成された基板を接合する基板接合方法であって、
前記2つの基板それぞれの互いに接合される接合面の少なくとも一方に対して、窒素ガスを用いたエッチング処理と窒素ラジカルの照射との少なくとも一方を行うことにより前記接合面に窒素酸化物を形成する活性化処理工程と、
前記活性化処理工程の後、前記接合面に窒素酸化物が形成された状態が維持されているうちに、前記2つの基板の前記接合面を、水分を含む気体に暴露することにより、前記接合面に形成された窒素酸化物をOH基に置換する気体暴露工程と、
前記接合面にOH基が存在する状態で前記2つの基板を接合する接合工程と、を含む、
基板接合方法。
【請求項15】
2つの金属元素を含まない絶縁体材料から形成された基板を接合する基板接合方法であって、
前記2つの基板それぞれの互いに接合される接合面の少なくとも一方に対して、窒素ガスを用いたエッチング処理と窒素ラジカルの照射との少なくとも一方を行うことにより前記接合面を窒素酸化物が形成された状態にする活性化処理工程と、
前記活性化処理工程の後、窒素酸化物が形成された状態が消滅しない予め設定された基準時間内に、前記2つの基板の前記接合面を、水分を含む気体に暴露することにより、窒素酸化物をOH基に置換する気体暴露工程と、
前記活性化処理工程において前記接合面にOH基が存在する状態で前記2つの基板を接合する接合工程と、を含み、
前記接合工程において、気圧が1Paより大きく且つ10000Pa未満の状態で、前記2つの基板を接合する、
基板接合方法。
【請求項16】
2つの金属元素を含まない絶縁体材料から形成された基板を接合する基板接合方法であって、
前記2つの基板それぞれの互いに接合される接合面の少なくとも一方に対して、窒素ガスを用いたエッチング処理と窒素ラジカルの照射との少なくとも一方を行うことにより前記接合面を窒素酸化物が形成された状態にする活性化処理工程と、
前記活性化処理工程の後、窒素酸化物が形成された状態が消滅しない予め設定された基準時間内に、前記2つの基板の前記接合面を、水分を含む気体に暴露することにより、窒素酸化物をOH基に置換する気体暴露工程と、
前記活性化処理工程において前記接合面にOH基が存在する状態で前記2つの基板を接合する接合工程と、を含み、
前記接合工程において、前記活性化処理工程における気圧よりも高い気圧下において、前記2つの基板を接合する、
基板接合方法。
【請求項17】
2つの金属元素を含まない絶縁体材料から形成された基板を接合する基板接合システムであって、
前記2つの基板それぞれの互いに接合される接合面の少なくとも一方に対して、窒素ガスを用いたエッチング処理と窒素ラジカルの照射との少なくとも一方を行うことにより前記接合面を窒素酸化物が形成された状態にする活性化処理を行い、その後、窒素酸化物が形成された状態が消滅しない10min未満の予め設定された基準時間内に、前記2つの基板の前記接合面を、水分を含む気体に暴露する活性化処理装置と、
前記活性化処理装置により前記接合面が活性化処理された前記2つの基板を接合する基板接合装置と、を備える、
基板接合システム。
【請求項18】
2つの金属元素を含まない絶縁体材料から形成された基板を接合する基板接合システムであって、
前記2つの基板それぞれの互いに接合される接合面の少なくとも一方に対して、窒素ガスを用いたエッチング処理と窒素ラジカルの照射との少なくとも一方を行うことにより前記接合面を窒素酸化物が形成された状態にする活性化処理を行う活性化処理装置と、
前記活性化処理装置により前記接合面が活性化処理された前記2つの基板を接合する基板接合装置と、
前記活性化処理装置による前記活性化処理の後、窒素酸化物が形成された状態が消滅しない10min未満の予め設定された基準時間内に、前記2つの基板の前記接合面を、水分を含む気体に暴露することにより、窒素酸化物をOH基に置換するように、前記2つの基板を前記活性化処理装置から前記基板接合装置へ向けて搬送する搬送装置と、を備える、
基板接合システム。
【請求項19】
前記基板接合装置は、気圧が1Paより大きく且つ10000Pa未満の状態で、前記2つの基板を接合する、
請求項17または18に記載の基板接合システム。
【請求項20】
前記2つの基板を、水分を含む気体中において気圧が1Paより大きく且つ10000Pa未満の状態で維持しながら、前記2つの基板を前記活性化処理装置から前記基板接合装置へ向けて搬送する搬送装置を更に備える、
請求項17に記載の基板接合システム。
【請求項21】
前記2つの基板のうち前記接合面が親水化された少なくとも一方の前記接合面に水を含む液体を吹き付けることにより洗浄する洗浄装置を更に備え、
前記搬送装置は、前記2つの基板を前記活性化処理装置から前記洗浄装置へ搬送し、前記洗浄装置において前記2つの基板が洗浄された後、前記2つの基板を前記洗浄装置から前記基板接合装置へ搬送する、
請求項18または20に記載の基板接合システム。
【請求項22】
前記活性化処理装置と、前記搬送装置と、の少なくとも一方は、前記2つの基板の前記接合面へ水ガスを供給する水ガス供給部を有する、
請求項18、20、21のいずれか1項に記載の基板接合システム。
【請求項23】
前記活性化処理装置を制御する制御部を更に備え、
前記活性化処理装置は、
チャンバと、
前記チャンバ内において前記基板を支持するステージと、
前記チャンバ内へ窒素ガスを供給する窒素ガス供給部と、
プラズマを発生させ前記ステージに支持された前記基板の接合面へ前記プラズマ中のラジカルを供給するプラズマ発生源と、
前記ステージに支持された前記基板に高周波バイアスを印加するバイアス印加部と、を有し、
前記制御部は、
前記窒素ガス供給部を制御して、前記チャンバ内へ窒素ガスを導入してから、前記バイアス印加部を制御して、前記2つの基板のうち前記活性化処理を行う一方の基板へ高周波バイアスを印加させることにより、前記接合面に対して、窒素ガスを用いた反応性イオンエッチングを行った後、前記プラズマ発生源および前記バイアス印加部を制御して、前記窒素ガスでプラズマを発生させるとともに前記一方の基板への高周波バイアスの印加を停止させることにより、前記接合面に対して、窒素ラジカルを照射するラジカル処理を行う、
請求項17から22のいずれか1項に記載の基板接合システム。
【請求項24】
前記活性化処理装置は、
前記チャンバ内へ酸素ガスを供給する酸素ガス供給部を更に有し、
前記制御部は、
前記接合面に対して、窒素ガスを用いた反応性イオンエッチングを行う前に、前記酸素ガス供給部を制御して、前記チャンバ内へ酸素ガスを導入してから、前記バイアス印加部を制御して、前記2つの基板のうち前記活性化処理を行う一方の基板へ高周波バイアスを印加させることにより、前記接合面に対して、酸素ガスを用いた反応性イオンエッチングを行う、
請求項23に記載の基板接合システム。
【請求項25】
前記活性化処理装置を制御する制御部を更に備え、
前記活性化処理装置は、
チャンバと、
前記チャンバ内において前記基板を支持するステージと、
前記チャンバ内へ窒素ガスを供給する窒素ガス供給部と、
プラズマを発生させ前記ステージに支持された前記基板の接合面へ前記プラズマ中のラジカルを供給するプラズマ発生源と、
前記ステージに支持された前記基板へ粒子ビームを照射する粒子ビーム源と、を有し、
前記制御部は、
前記粒子ビーム源を制御して、前記2つの基板のうち前記活性化処理を行う一方の基板の前記接合面に対して、窒素ガスを用いた粒子ビームを照射するエッチング処理を行った後、前記プラズマ発生源を制御して、前記窒素ガスでプラズマを発生させることにより、前記接合面に対して、窒素ラジカルを照射するラジカル処理を行う、
請求項17から22のいずれか1項に記載の基板接合システム。
【請求項26】
前記活性化処理装置を制御する制御部を更に備え、
前記活性化処理装置は、
チャンバと、
前記チャンバ内において前記基板を支持するステージと、
前記チャンバ内へ窒素ガスを供給する窒素ガス供給部と、
プラズマを発生させ前記ステージに支持された前記基板の接合面へ前記プラズマ中のラジカルを供給するプラズマ発生源と、
前記チャンバ内に配置され少なくとも1つの孔が貫設されるとともに、接地電位で維持されたトラップ板と、を有し、
前記プラズマ発生源は、前記トラップ板の厚さ方向における一面側に前記プラズマを発生させ、
前記ステージは、前記チャンバ内の前記トラップ板の厚さ方向における他面側において前記基板を支持し、
前記制御部は、
前記窒素ガス供給部を制御して、前記チャンバ内へ窒素ガスを導入してから、前記接合面に対して、窒素ガスを用いた反応性イオンエッチングを行った後、前記プラズマ発生源を制御して、前記窒素ガスでプラズマを発生させて前記プラズマ中のイオンおよびラジカルを、前記トラップ板の前記少なくとも1つの孔を通過させて前記基板の前記接合面へ照射させるラジカル処理を行う、
請求項17から22のいずれか1項に記載の基板接合システム。
【請求項27】
前記制御部は、
前記反応性イオンエッチングにおいて、前記トラップ板をフローティング状態で維持し、
前記ラジカル処理において、前記トラップ板を接地電位で維持する、
請求項26に記載の基板接合システム。
【請求項28】
2つの金属元素を含まない絶縁体材料から形成された基板を接合する基板接合システムであって、
前記2つの基板それぞれの互いに接合される接合面の少なくとも一方に対して、窒素ガスを用いたエッチング処理と窒素ラジカルの照射との少なくとも一方を行うことにより前記接合面を窒素酸化物が形成された状態にする活性化処理を行う活性化処理装置と、
前記活性化処理装置により前記接合面が活性化処理された前記2つの基板を接合する基板接合装置と、
前記活性化処理装置による前記活性化処理の後、窒素酸化物が形成された状態が消滅しない予め設定された基準時間内に、前記2つの基板の前記接合面を、水分を含む気体に暴露することにより、窒素酸化物をOH基に置換するように、前記2つの基板を前記活性化処理装置から前記基板接合装置へ向けて搬送する搬送装置と、を備え、
前記基板接合装置は、気圧が1Paより大きく且つ10000Pa未満の状態で、前記2つの基板を接合する、
基板接合システム。
【請求項29】
2つの金属元素を含まない絶縁体材料から形成された基板を接合する基板接合システムであって、
前記2つの基板それぞれの互いに接合される接合面の少なくとも一方に対して、窒素ガスを用いたエッチング処理と窒素ラジカルの照射との少なくとも一方を行うことにより前記接合面を窒素酸化物が形成された状態にする活性化処理を行う活性化処理装置と、
前記活性化処理装置により前記接合面が活性化処理された前記2つの基板を接合する基板接合装置と、
前記活性化処理装置による前記活性化処理の後、窒素酸化物が形成された状態が消滅しない予め設定された基準時間内に、前記2つの基板の前記接合面を、水分を含む気体に暴露することにより、窒素酸化物をOH基に置換するように、前記2つの基板を前記活性化処理装置から前記基板接合装置へ向けて搬送する搬送装置と、を備え、
前記基板接合装置は、前記活性化処理における気圧よりも高い気圧下において、前記2つの基板を接合する、
基板接合システム。
【請求項30】
2つの金属元素を含まない絶縁体材料から形成された基板を接合する基板接合システムであって、
前記2つの基板それぞれの互いに接合される接合面の少なくとも一方に対して、窒素ガスを用いたエッチング処理と窒素ラジカルの照射との少なくとも一方を行うことにより前記接合面を活性化する活性化処理を行うことにより前記接合面に窒素酸化物を形成し、その後、前記接合面に窒素酸化物が形成された状態が維持されているうちに、前記2つの基板の前記接合面を、水分を含む気体に暴露することにより、前記接合面に形成された窒素酸化物をOH基に置換する活性化処理装置と、
前記活性化処理装置により活性化処理された前記接合面にOH基が存在する状態で前記2つの基板を接合する基板接合装置と、を備える、
基板接合システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板接合方法および基板接合システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板同士の親水化接合は、大気中で水分子を介在した状態で基板同士を張り合わせることにより、元の基板の接合面に十分なOH基ができていなくても、基板の接合面に介在している水分子がOH基へと変わり加熱により強固な共有結合へと移り変わることができていた。しかし、大気中で接合すると空気の巻き込みにより大きなボイドができるため、基板の中央部を撓ましつつ基板同士を張り合わせるなどの接合方法を採用する必要があった。但し、この接合方法の場合、基板に歪みが生じたり基板同士のアライメント精度が悪化したりするなどの課題があった。また、水分子を基板の界面に介在させての接合することになるため基板を加熱することによりマイクロボイドが発生するなどの問題点もある。そのため基板同士を真空中で接合することにより、基板の間に空気の巻き込みを防ぐことによりボイドの発生を抑制できる。更に、基板同士を真空中で接合することにより、基板の間に存在する水分子を飛ばして接合することになるためマイクロボイドも発生しない。このように、基板同士を真空中で接合する方法は、基板同士の良好な接合を得るために有効な方法である。しかし、基板同士の接合前の基板の接合面を活性化する際に、基板の接合面に十分なOH基を作っておかないといけない。そして、従来のように、RIE処理を行ってから大気に曝露するだけで基板の接合面を活性化する処理では、基板の接合面に十分なOH基ができず、接合された基板の接合強度が不足してしまう。上記を鑑み、基板の接合面の活性化処理として、真空中での接合に耐えうる十分なOH基を生成することができる方法が要請されている。
【0003】
これに対して、接合する2つの基板の接合面に対して、反応性イオンエッチングと、ラジカルの照射と、を併用することにより、2つの基板を接合する基板接合方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。この基板接合方法は、2つの基板の接合面に水酸基(OH基)を生成し、2つの基板の接合面同士を接触させて加圧することにより接合面間に水素結合を形成させて2つの基板同士を接合する方法である。そして、この基板接合方法では、接合する2つの基板の接合面を酸素プラズマに曝露させて反応性イオンエッチングを行った後、2つの基板の接合面に窒素ラジカルを照射する。その後、2つの基板の接合面同士を接触させて加圧することにより2つの基板を接合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-79353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された基板接合方法では、2つの基板の接合面に生成されるOH基の量が不十分であり、接合された2つの基板の接合強度が十分でない場合がある。そこで、2つの基板の接合面に十分な量のOH基を生成することにより、2つの基板同士をより強固に接合できる基板接合方法が要請されている。
【0006】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、2つの基板を強固に接合することができる基板接合方法および基板接合システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る基板接合方法は、
2つの金属元素を含まない絶縁体材料から形成された基板を接合する基板接合方法であって、
前記2つの基板それぞれの互いに接合される接合面の少なくとも一方に対して、窒素ガスを用いたエッチング処理と窒素ラジカルの照射との少なくとも一方を行うことにより前記接合面を窒素酸化物が形成された状態にする活性化処理工程と、
前記活性化処理工程の後、窒素酸化物が形成された状態が消滅しない10min未満の予め設定された基準時間内に、前記2つの基板の前記接合面を、水分を含む気体に暴露することにより、窒素酸化物をOH基に置換する気体暴露工程と、
前記活性化処理工程において前記接合面にOH基が存在する前記2つの基板を接合する接合工程と、を含む。
【0008】
他の観点から見た本発明に係る基板接合システムは、
2つの金属元素を含まない絶縁体材料から形成された基板を接合する基板接合システムであって、
前記2つの基板それぞれの互いに接合される接合面の少なくとも一方に対して、窒素ガスを用いたエッチング処理と窒素ラジカルの照射との少なくとも一方を行うことにより前記接合面を窒素酸化物が形成された状態にする活性化処理を行い、その後、窒素酸化物が形成された状態が消滅しない10min未満の予め設定された基準時間内に、前記2つの基板の前記接合面を、水分を含む気体に暴露する活性化処理装置と、
前記活性化処理装置により前記接合面が活性化処理された前記2つの基板を接合する基板接合装置と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、2つの基板それぞれの互いに接合される接合面の少なくとも一方に対して、窒素ガスを用いた反応性イオンエッチングと窒素ラジカルの照射との少なくとも一方を行うことにより基板の接合面を活性化する。その際、窒素プラズマ、窒素ラジカル処理により、表面に窒素が吸着されたり、酸窒化物が形成されたりするような状態が基板表面に形成される。これをここではN活性状態と呼ぶ。このN活性状態は、水と反応しOH基を形成して接合強度の増加に寄与する。しかし、基板の接合面に形成されたN活性状態は不安定であり、そのままでは、活性状態は失活してしまう。その結果、接合強度を維持することができない。そのため、基板の接合面を活性化した後、予め設定された基準時間内に、水分子と接触させる必要がある。そこで、本発明では、基板の接合面を活性化した後、予め設定された基準時間内に、基板の接合面を、水分を含む気体に暴露する。これにより、基板の接合面がN活性な状態で水分子と接触させることができるので、基板の接合面に多くの酸窒化物を形成することができる。そして、2つの基板の接合面同士を接触させて2つの基板を仮接合した後、熱処理を行った場合、2つの基板の接合面間に存在する多くの酸窒化物がOH基に置換されることで、比較的多くの水素結合を形成することができる。従って、互いに仮接合された2つの基板の接合面間に形成された水素結合が熱処理により共有結合へ移り変わると、2つの基板が比較的多くの共有結合を介して接合されるので、2つの基板同士の接合強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る基板接合システムの概略構成図である。
図2】実施の形態に係る活性化処理装置の概略正面図である。
図3】実施の形態に係る基板接合装置の概略正面図である。
図4A】実施の形態に係る基板接合システムにおいて、第1搬送ユニットにより基板が搬送される様子を示す図である。
図4B】実施の形態に係る基板接合システムにおいて、第1搬送ユニットからロードロック室へ基板が受け渡される様子を示す図である。
図5A】実施の形態に係る基板接合システムにおいて、ロードロック室から第2搬送ユニットへ基板が受け渡される様子を示す図である。
図5B】実施の形態に係る基板接合システムにおいて、第2搬送ユニットから活性化処理装置へ基板が受け渡される様子を示す図である。
図6A】実施の形態に係る基板接合システムにおいて、第2搬送ユニットからロードロック室へ基板が受け渡される様子を示す図である。
図6B】実施の形態に係る基板接合システムにおいて、ロードロック室から第1搬送ユニットへ基板が受け渡される様子を示す図である。
図7A】実施の形態に係る基板接合システムにおいて、第1搬送ユニットから洗浄装置へ基板が受け渡される様子を示す図である。
図7B】実施の形態に係る基板接合システムにおいて、洗浄装置から第1搬送ユニットへ基板が受け渡される様子を示す図である。
図8A】実施の形態に係る基板接合システムにおいて、第1搬送ユニットからロードロック室へ基板が受け渡される様子を示す図である。
図8B】実施の形態に係る基板接合システムにおいて、ロードロック室から第2搬送ユニットへ基板が受け渡される様子を示す図である。
図9A】実施の形態に係る基板接合システムにおいて、第2搬送ユニットから反転装置へ基板が受け渡される様子を示す図である。
図9B】実施の形態に係る基板接合システムにおいて、第2搬送ユニットにより基板が接合装置へ搬送される様子を示す図である。
図10A】ブレード挿入法による基板の接合強度(表面エネルギ換算)の測定方法を説明するための図である。
図10B】実施の形態に係る接合強度の評価方法を説明するための図である。
図11A】搬送時における気圧が1000Paの場合の基板の外観写真である。
図11B】搬送時における気圧が10000Paの場合の基板の外観写真である。
図12A】試料21、22それぞれの接合強度を示すグラフである。
図12B】試料22の活性化処理前の基板の接合面、活性化処理完了直後における基板の接合面および熱処理後の基板の接合面それぞれについてXPSスペクトルを示す図である。
図13】(A-1)は、基板に水分子が付着した様子を示す模式図であり、(A-2)は、大気圧下で基板同士を接触させた状態を示す模式図であり、(A-3)は、大気圧下で熱処理を行った場合の基板の状態の推移を示す模式図であり、(B-1)は、基板に水分子が付着した様子を示す模式図であり、(B-2)は、減圧下で基板同士を互いに近づけるときの基板の状態の推移を示す模式図であり、(B-3)は、減圧下で基板同士を接触させた状態を示す模式図であり、(C-1)は、本実施の形態に係る活性化処理工程後の基板の状態を示す模式図であり、(C-2)は、本実施の形態に係る接合工程における基板の状態の推移を示す模式図であり、(C-3)は、本実施の形態に係る接合工程において基板同士を接触させた状態を示す模式図である。
図14】変形例に係る活性化処理装置の概略正面図である。
図15A】変形例に係る活性化処理装置の動作説明図である。
図15B】変形例に係る活性化処理装置の一部の平面図である。
図16A】変形例に係る活性化処理装置のステージの動作説明図である。
図16B】変形例に係る活性化処理装置におけるラジカル処理を説明するための図である。
図17】変形例に係る活性化処理装置の概略正面図である。
図18】変形例に係る活性化処理装置の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る基板接合システムについて、図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係る基板接合システムでは、減圧下のチャンバ内で、2つの基板の接合面について活性化処理を行った後、基板同士を接触させて加圧および加熱することにより、2つの基板を接合するシステムである。活性化処理では、2つの基板それぞれの互いに接合される接合面の少なくとも一方に対して、窒素ガスを用いた反応性イオンエッチングと窒素ラジカルの照射との少なくとも一方を行うことにより基板の接合面を活性化する。
【0012】
本実施の形態に係る基板接合システムは、図1に示すように、導入ポート811、812と、取り出しポート813と、第1搬送装置82と、洗浄装置3と、反転装置4と、活性化処理装置2と、基板接合装置1と、第2搬送装置84と、制御部9と、ロードロック室83と、を備える。制御部9は、第1搬送装置82、洗浄装置3、反転装置4、活性化処理装置2、基板接合装置1および第2搬送装置84を制御する。第1搬送装置82、第2搬送装置84、洗浄装置3には、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ(図示せず)が設けられている。これにより、第1搬送装置82、第2搬送装置84、洗浄装置3内はパーティクルが極めて少ない大気圧環境になっている。
【0013】
第1搬送装置82は、先端部に基板を保持する保持部が設けられたアームを有する搬送ロボット821を備える。搬送ロボット821は、導入ポート811、812および取り出しポート813の並び方向に沿って移動可能であるとともに、旋回することによりアームの先端部の向きを変更することができる。また、第2搬送装置84も、先端部に基板を保持する保持部が設けられたアームを有する搬送ロボット841を備える。搬送ロボット841は、旋回することによりアームの先端部の向きを変更することができる。また、保持部は、真空チャック、静電チャック等を有し、基板における接合面側とは反対側を吸着保持する。
【0014】
ロードロック室83は、基板W1、W2を支持するステージ(図示せず)を冷却する冷却装置(図示せず)が設けられている。そして、例えばロードロック室83内の温度が25℃のときに湿度が50%となるように設定された場合、冷却装置が、ステージを18℃に冷却することにより、ステージに載置された基板W1、W2近傍の湿度を80%程度にする。
【0015】
洗浄装置3は、搬送されてきた基板に向けて水、洗浄液等の液体を吐出しながら洗浄する。洗浄装置は、基板を支持するステージ(図示せず)と、ステージを鉛直方向に直交し且つ互いに直交する2方向(XY方向)へ駆動するXY方向駆動部(図示せず)と、超音波またはメガソニック振動を与えた水または洗浄液を吐出する洗浄ヘッド(図示せず)と、を有する。また、洗浄装置3は、ステージを鉛直方向に直交する面内で回転させる回転駆動部(図示せず)を有する。そして、洗浄装置3は、洗浄ヘッドにより超音波を印加した水を基板の接合面に吹き付けながら、ステージをXY方向へスキャンさせて基板の接合面全面を洗浄する。そして、洗浄装置3は、洗浄ヘッドによる水の吐出を停止させてから、ステージを回転させることにより基板をスピン乾燥する。
【0016】
反転装置4は、搬送ロボット841のアームの先端部から基板を受け取って保持する基板保持部(図示せず)と、基板保持部が基板を保持した状態で基板保持部を反転させる駆動部(図示せず)と、を有する。基板保持部は、例えば基板の接合面側とは反対側を保持する真空チャック、静電チャック等を有する。反転装置4は、基板保持部が基板の接合面が鉛直上方を向く姿勢で搬送ロボット841のアームの先端部から基板を受け取ると、基板保持部を反転させて、基板の接合面が鉛直下方を向く姿勢で基板を保持する。そして、反転装置4は、基板の接合面が鉛直下方を向く姿勢で基板を搬送ロボット841のアームの先端部へ渡す。
【0017】
活性化処理装置2は、基板の接合面に対して、窒素ガスを用いた反応性イオンエッチングと窒素ラジカルの照射との少なくとも一方を行うことにより接合面を活性化する活性化処理を行う。基板の接合面を活性化する活性化処理を行う。活性化処理装置2は、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)を発生させる装置であり、図2に示すように、ステージ210と、チャンバ212と、プラズマチャンバ213と、プラズマチャンバ213の外側に巻回された誘導コイル215と、誘導コイル215へ高周波電流を供給する高周波電源216と、を有する。プラズマチャンバ213は、例えば石英ガラスから形成されている。また、活性化処理装置2は、窒素ガス供給部220Aと、酸素ガス供給部220Bと、を有する。窒素ガス供給部220Aは、窒素ガス貯留部221Aと、供給弁222Aと、供給管223Aと、バイアス印加部217と、を有する。酸素ガス供給部220Bは、酸素ガス貯留部221Bと、供給弁222Bと、供給管223Bと、を有する。ステージ210には、基板W1、W2が載置される。チャンバ212は、プラズマチャンバ213内に連通している。チャンバ212は、排気管202Aと排気弁203Aとを介して真空ポンプ201に接続されている。排気弁203Aを開状態にして真空ポンプ201を作動させると、チャンバ212内の気体が、排気管202Aを通してチャンバ212外へ排出され、チャンバ212内の気圧が低減(減圧)される。
【0018】
高周波電源216としては、誘導コイル215へ例えば27MHzの高周波電流を供給するものを採用することができる。そして、プラズマチャンバ213内にNガスが導入された状態で、高周波電流が誘導コイル215へ供給されると、プラズマチャンバ213内にプラズマPLMが形成される。ここで、誘導コイル215によりプラズマチャンバ213内にプラズマ中に含まれるイオンがトラップされるため、プラズマチャンバ213とチャンバ212との間の部分にトラップ板が無い構成であってもよい。誘導コイル215と、高周波電源216と、窒素ガス供給部220Aとから、プラズマチャンバ213内にプラズマPLMを発生させステージ210に支持された基板W1、W2の接合面へプラズマ中のNラジカルを供給するプラズマ発生源が構成される。なお、ここでは、活性化処理装置2として、誘導コイル215と、高周波電源216と、を備えるICPを発生させる装置である例について説明したが、これに限定されるものではなく、代わりにプラズマチャンバ213の外側に配置された平板電極と平板電極に電気的に接続された高周波電源と、プラズマチャンバ213とチャンバ212との間の部分に配置されプラズマ中のイオンをトラップするトラップ板と、を備える容量結合プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)を発生させる装置であってもよい。この場合、高周波電源としては、例えば27MHzの高周波バイアスを印加するものを採用することができる。そして、高周波電源からプラズマチャンバ内へ供給される電力は、例えば250Wに設定される。
【0019】
バイアス印加部217は、ステージ210に支持された基板W1、W2に高周波バイアスを印加する高周波電源である。このバイアス印加部217としては、例えば13.56MHzの高周波バイアスを発生させるものを採用することができる。このように、バイアス印加部217により基板W1、W2に高周波バイアスを印加することにより、基板W1、W2の接合面の近傍に運動エネルギを有するイオンが繰り返し基板W1、W2に衝突するシース領域が発生する。そして、このシース領域に存在する運動エネルギを有するイオンにより基板W1、W2の接合面がエッチングされる。また、活性化処理装置2は、前述の活性化処理を行った後、予め設定された基準時間内に、基板W1、W2の接合面を、水分を含む気体に暴露する。ここで、水分を含む気体としては、大気、水ガスが挙げられる。チャンバ212には、空気または水ガスをチャンバ212内へ導入するための導入管(図示せず)が接続されており、この導入管には導入弁(図示せず)が介挿されている。そして、活性化処理装置2は、排気弁203Aを閉状態にして導入弁を開状態にすることによりチャンバ212内へ大気または水ガスを導入することにより基板W1、W2の接合面を大気または水ガスに暴露する。水ガスを導入する場合、導入管に水ガスを供給する水ガス供給部(図示せず)が接続される。水ガス供給部は、アルゴン(Ar)や窒素(N2())、ヘリウム(He)、酸素(O2())等のキャリアガスと気化した水とを混合させることにより水ガスを生成して供給するものとすればよい。本実施の形態では、窒素をキャリアガスとして使用し、50%の気化した水を混合したものを水ガスとして採用した。
【0020】
基板接合装置1は、活性化処理装置2において活性化処理された基板W1、W2同士を接合する。基板接合装置1は、図3に示すように、チャンバ120と、ステージ141と、ヘッド142と、ステージ駆動部143と、ヘッド駆動部144と、基板加熱部1411、1421と、位置ずれ量測定部150と、を備える。なお、以下の説明において、適宜図3の±Z方向を上下方向、XY方向を水平方向として説明する。チャンバ120は、排気管122Bと排気弁123Bとを介して真空ポンプ121に接続されている。排気弁123Bを開状態にして真空ポンプ121を作動させると、チャンバ120内の気体が、排気管122Bを通してチャンバ120外へ排出され、チャンバ120内の気圧が低減(減圧)される。また、排気弁123Bの開閉量を変動させて排気量を調節することにより、チャンバ120内の気圧(真空度)を調節することができる。また、チャンバ120には、空気導入管(図示せず)が接続されており、空気導入管には空気導入弁(図示せず)が介挿されている。そして、基板接合装置1は、排気弁123Bを閉状態にして空気導入弁を開状態にすることによりチャンバ120内の気圧を大気圧にする。
【0021】
ステージ141とヘッド142とは、チャンバ120内において、Z方向において互いに対向するように配置されている。ステージ141は、その上面で基板W1を支持し、ヘッド142は、その下面で基板W2を支持する。なお、ステージ141の上面とヘッド142の下面とは、基板W1、W2のステージ141、ヘッド142との接触面が鏡面でステージ141、ヘッド142から剥がれにくい場合を考慮して、粗面加工が施されていてもよい。ステージ141およびヘッド142は、それぞれ基板W1、W2を保持する保持機構(図示せず)を有する。保持機構は、静電チャック、真空チャック等を有する。
【0022】
ステージ駆動部143は、ステージ141をXY方向へ移動させたり、Z軸周りに回転させたりすることができる。ヘッド駆動部144は、ヘッド142を上下方向(図3の矢印AR1参照)に昇降させる。ヘッド駆動部144は、ヘッド142を下方向に移動させることよりヘッド142をステージ141に近づける。また、ヘッド駆動部144は、ヘッド142を上方向に移動させることにより、ヘッド142をステージ141から遠ざける。そして、基板W1、W2同士が接触した状態においてヘッド駆動部144がヘッド142に対してステージ141に近づく方向への駆動力を作用させると、基板W2が基板W1に押し付けられる。また、ヘッド駆動部144には、ヘッド駆動部144がヘッド142に対してステージ141に近づく方向へ作用させる駆動力を測定する圧力センサ148が設けられている。圧力センサ148は、例えばロードセルであり、この測定値から、ヘッド駆動部144により基板W2が基板W1に押し付けられたときに基板W1、W2の接合面に作用する圧力が検出できる。
【0023】
基板加熱部1411、1421は、例えば電熱ヒータから構成される。基板加熱部1411、1421は、ステージ141、ヘッド142に支持されている基板W1、W2に熱を伝達することにより基板W1、W2を加熱する。また、基板加熱部1411、1421の発熱量を調節することにより、基板W1、W2またはそれらの接合面の温度を調節できる。位置ずれ量測定部150は、基板W1、W2それぞれに設けられた位置合わせ用のマーク(アライメントマーク)の位置を認識することにより、基板W1の基板W2に対する水平方向の位置ずれ量を測定する。位置ずれ量測定部150は、例えば基板W1、W2を透過する光(例えば赤外光)を用いて基板W1、W2のアライメントマークを認識する。ステージ駆動部143は、位置ずれ量測定部150により測定された位置ずれ量に基づいて、ステージ141を水平方向に移動させたり回転させたりすることにより、基板W1、W2の相互間の位置合わせ動作(アライメント動作)を実行する。この位置ずれ量測定部150による位置ずれ量の測定およびステージ駆動部143のアライメント動作は、いずれも制御部9の制御下において実行される。
【0024】
制御部9は、例えばプログラマブルロジックコントローラである。制御部9は、圧力センサ、位置ずれ量測定部150等から入力される測定信号に基づいて、基板W1、W2同士を圧接する際の圧力を算出したり、基板W1、W2の相対的な位置ずれ量を算出したりする。また、制御部9は、算出した圧力または位置すれ量に基づいて、ステージ駆動部143、ヘッド駆動部144へ制御信号を出力することによりステージ駆動部143、ヘッド駆動部144の動作を制御する。更に制御部9は、基板加熱部1411、1421、高周波電源216、バイアス印加部217、供給弁222A、222B、搬送ロボット821、841へ制御信号を出力することによりこれらの動作を制御する。
【0025】
次に、本実施の形態に係る基板接合システムについて、基板W1、W2が基板接合システムに投入されてから基板W1、W2が接合されて基板接合システムから取り出されるまでの動作の流れを図4A乃至図9を参照しながら説明する。基板W1、W2は、まず、図4Aに示す導入ポート811、812に配置される。基板W1、W2としては、例えば、Si基板、ガラス基板、酸化物基板(例えば、酸化ケイ素(SiO)基板、アルミナ基板(Al)等)、窒化物基板(例えば、窒化ケイ素(SiN)、窒化アルミニウム(AlN))のいずれかからなる。なお、基板W1、W2の少なくとも一方は、その接合面に金属部分と絶縁膜とが露出しているものであってもよい。或いは、基板W1、W2の少なくとも一方は、その接合面に酸化物または窒化物を堆積することにより形成された絶縁膜が露出しているものであってもよい。ここでは、基板W1がガラス基板または酸化物基板であり、基板W2がSi基板または窒化物基板であるとして説明する。また、導入ポート811には、例えば基板接合装置1においてヘッド142に保持される基板W2が配置され、導入ポート812には、例えば基板接合装置1においてステージ141に載置される基板W1が配置される。そして、基板W2が導入ポート811に配置されている場合、搬送ロボット821は、図4Aの矢印AR11に示すように、基板W2を導入ポート811から取り出す。そして、搬送ロボット821は、図4Aの矢印AR12に示すように、基板W2を保持した状態で、第1搬送装置82におけるロードロック室83へ基板W2を搬入する位置まで移動する。なお、基板W1が、導入ポート812に配置されている場合、搬送ロボット821は、基板W1を導入ポート812から取り出した後、基板W1を保持した状態で、第1搬送装置82におけるロードロック室83へ基板W1を搬入する位置まで移動する。
【0026】
次に、ロードロック室83の第1搬送装置82側の扉が開放されるとともに、搬送ロボット821が、図4Aの矢印AR13に示すように、アームの先端部がロードロック室83側を向くように旋回する。続いて、搬送ロボット821は、図4Bの矢印AR14に示すように、アームを伸張させることによりアームの先端部をロードロック室83内へ挿入する。そして、基板W1、W2が、アームの先端部からロードロック室83内のステージへ移載される。その後、搬送ロボット821は、基板W1、W2のロードロック室83内のステージへの移載が完了すると、図5Aの矢印AR15に示すように、アームを収縮させる。そして、ロードロック室83の第1搬送装置82側の扉が閉まる。
【0027】
続いて、ロードロック室83の第2搬送装置84側の扉が開放された後、搬送ロボット841が、アームの先端部をロードロック室83側に向けた状態でアームを伸張させる。そして、ロードロック室83内において、基板W1、W2が、ステージからアームの先端部へ移載されると、搬送ロボット841は、図5Aの矢印AR16に示すように。アームを収縮させることにより基板W1、W2をロードロック室83から取り出す。その後、ロードロック室83の第2搬送装置84側の扉が閉まる。次に、搬送ロボット841が、図5Bの矢印AR17に示すように、アームの先端部が活性化処理装置2側を向くように旋回するとともに、活性化処理装置2が基板W1、W2の搬出入口を開放する。続いて、搬送ロボット841が、アームを伸張させてアームの先端部を活性化処理装置2内へ挿入する。そして、図5Bの矢印AR18に示すように、基板W1、W2が、搬送ロボット841のアームの先端部から活性化処理装置2のステージ210(図2参照)へ移載される。その後、搬送ロボット841がアームを収縮させた後、活性化処理装置2が基板W1、W2の搬出入口を閉じる。
【0028】
次に、活性化処理装置2は、基板W1、W2それぞれの互いに接合される接合面の少なくとも一方に対して、窒素ガスを用いた反応性イオンエッチングと窒素ラジカルの照射との少なくとも一方を行うことにより接合面を活性化する活性化処理工程を行う。具体的には、活性化処理装置2は、接合面を活性化処理する対象となる基板の種類によって処理シーケンスが異なる。活性化処理装置2は、基板W1、即ち、ガラス基板または酸化物基板の接合面を活性化処理する場合、まず、図2に示す供給弁222Aを開くことにより窒素ガス貯留部221Aから供給管223Aを通じてチャンバ212内にNガスを導入する。次に、活性化処理装置2は、高周波電源216から誘導コイル215への高周波電流の供給を停止させた状態で、バイアス印加部217によりステージ210に載置された基板W1、W2に高周波バイアスを印加する。これにより、基板W1の接合面に対して、Nガスを用いた反応性イオンエッチング(RIE)が行われる。続いて、活性化処理装置2は、高周波電源216から誘導コイル215への高周波電流の供給を開始して、Nガスでプラズマを発生させる。このとき、活性化処理装置2は、バイアス印加部217による基板W1への高周波バイアスの印加を停止する。このようにして、基板W1の接合面にNラジカルが照射される。
【0029】
一方、活性化処理装置2は、基板W2、即ち、Siまたは窒化物基板の接合面を活性化処理する場合、まず、供給弁222Bを開くことにより酸素ガス貯留部221Bから供給管223Bを通じてチャンバ212内にOガスを導入する。次に、活性化処理装置2は、高周波電源216から誘導コイル215への高周波電流の供給を停止させた状態で、バイアス印加部217によりステージ210に載置された基板W2に高周波バイアスを印加する。これにより、基板W2の接合面に対して、Oガスを用いた反応性イオンエッチング(RIE)が行われる。続いて、活性化処理装置2は、供給弁222Bを閉じてOガス貯留部221Bからチャンバ212内へのOガスの供給を停止することにより、チャンバ212内のOガスを排気する。その後、活性化処理装置2は、供給弁222Aを開くことにより窒素ガス貯留部221Aから供給管223Aを通じてチャンバ212内にNガスを導入する。その後、活性化処理装置2は、高周波電源216から誘導コイル215への高周波電流の供給を開始して、Nガスでプラズマを発生させる。このとき、活性化処理装置2は、バイアス印加部217による基板W2への高周波バイアスの印加を停止する。このようにして、基板W2の接合面にNラジカルが照射される。活性化処理装置2は、これら一連の活性化処理が完了すると、予め設定された基準時間内に、基板W1、W2の接合面を、大気または水ガスに暴露する気体暴露工程を行う。そして、活性化処理装置2は、基板W1、W2の搬出入口を開放する。
【0030】
その後、搬送ロボット841が、アームを伸張させてアームの先端部を活性化処理装置2内へ挿入し、基板W1、W2がステージ210からアームの先端部へ移載される。次に、搬送ロボット841は、アームを収縮させることにより、図6Aの矢印AR19に示すように、基板W1、W2を活性化処理装置2から取り出す。続いて、搬送ロボット841は、図6Aの矢印AR20に示すように、アームの先端部がロードロック室83側を向くように旋回すると、ロードロック室83の第2搬送装置84側の扉が開放される。その後、搬送ロボット841が、アームを伸張させてアームの先端部をロードロック室83内へ挿入し、基板W1、W2がアームの先端部からロードロック室83内のステージへ移載される。次に、搬送ロボット841が、図6Bの矢印AR21に示すように、アームを収縮させるとともに、ロードロック室83の第2搬送装置84側の扉が閉まる。
【0031】
続いて、ロードロック室83の第1搬送装置82側の扉が開放された後、搬送ロボット821が、アームの先端部をロードロック室83側に向けた状態でアームを伸張させてアームの先端部をロードロック室83内へ挿入する。そして、基板W1、W2が、ロードロック室83内のステージから搬送ロボット821のアームの先端部へ移載される。その後、搬送ロボット821が、図6Bの矢印AR22に示すように、アームを収縮させることにより基板W1、W2をロードロック室83から取り出した後、ロードロック室83の第1搬送装置82側の扉が閉まる。次に、搬送ロボット821は、図6Bの矢印AR23に示すように、アームの先端部が洗浄装置3側を向くように旋回する。続いて、搬送ロボット821は、図7Aの矢印AR24に示すように、基板W1、W2を保持した状態で、第1搬送装置82における基板W1、W2を洗浄装置3へ搬入する位置まで移動する。その後、洗浄装置3が基板W1、W2の搬出入口を開放すると、搬送ロボット821が、アームを伸張させてアームの先端部を洗浄装置3内へ挿入する。そして、図7Aの矢印AR25に示すように、基板W1、W2が搬送ロボット821のアームの先端部から洗浄装置3のステージへ移載される。
【0032】
次に、洗浄装置3は、洗浄ヘッドから超音波を印加した水を基板W1、W2の接合面に吹き付けながら、基板W1、W2が載置されたステージをXY方向へスキャンさせて基板W1、W2の接合面全面を洗浄する。これにより、基板W1、W2の接合面に付着した異物が除去される。続いて、洗浄装置3は、洗浄ヘッドによる水の吐出を停止させてから、ステージを回転させることにより基板をスピン乾燥することにより洗浄処理を完了する。その後、洗浄装置3は、これら一連の洗浄処理が完了すると、基板W1、W2の搬出入口を開放する。
【0033】
その後、搬送ロボット821が、アームを伸張させてアームの先端部を洗浄装置3内へ挿入し、基板W1、W2がステージからアームの先端部へ移載される。次に、搬送ロボット821は、アームを収縮させることにより、図7Bの矢印AR26に示すように、基板W1、W2を洗浄装置3から取り出す。続いて、搬送ロボット821は、図7Bの矢印AR27に示すように、基板W1、W2を保持した状態で、第1搬送装置82におけるロードロック室83へ基板W1、W2を搬入する位置まで移動する。その後、ロードロック室83の第1搬送装置82側の扉が開放されるとともに、搬送ロボット821が、図7Bの矢印AR28に示すように、アームの先端部がロードロック室83側を向くように旋回する。
【0034】
次に、搬送ロボット821は、図8Aの矢印AR29に示すように、アームを伸張させることによりアームの先端部をロードロック室83内へ挿入する。そして、基板W1、W2が、アームの先端部からロードロック室83内のステージへ移載される。続いて、搬送ロボット821は、基板W1、W2のロードロック室83内のステージへの移載が完了すると、図8Bの矢印AR30に示すように、アームを収縮させる。そして、ロードロック室83の第1搬送装置82側の扉が閉まる。
【0035】
その後、ロードロック室83の第2搬送装置84側の扉が開放された後、搬送ロボット841が、アームの先端部をロードロック室83側に向けた状態でアームを伸張させる。そして、ロードロック室83内において、基板W1、W2が、ステージからアームの先端部へ移載されると、搬送ロボット841は、図8Bの矢印AR31に示すように。アームを収縮させることにより基板W1、W2をロードロック室83から取り出す。そして、ロードロック室83の第2搬送装置84側の扉が閉まる。ここで、搬送ロボット841は、ロードロック室83から基板接合装置1においてヘッド142に支持される基板W2を取り出した場合、図9Aの矢印AR32に示すように、アームの先端部が反転装置4側を向くように旋回する。続いて、搬送ロボット841が、アームを伸張させてアームの先端部を反転装置4内へ挿入する。そして、図9Aの矢印AR33に示すように、基板W2が、搬送ロボット841のアームの先端部から反転装置4の基板保持部へ移載される。その後、搬送ロボット841がアームを収縮させる。次に、反転装置4は、基板保持部を反転させることにより、基板W2の接合面が鉛直下方を向く姿勢で保持する。続いて、搬送ロボット841が、アームを伸張させてアームの先端部を反転装置4内へ挿入し、基板W2の接合面側とは反対側を保持した状態で反転装置4から取り出す。その後、搬送ロボット841は、図9B矢印AR34に示すように、アームの先端部が基板接合装置1側を向くように旋回する。また、搬送ロボット841は、ロードロック室83から基板接合装置1においてステージ141に載置される基板W1を取り出した場合、そのままアームの先端部が基板接合装置1側を向くように旋回する。
【0036】
次に、基板接合装置1が基板W1、W2の搬出入口を開放すると、搬送ロボット841が、アームを伸張させてアームの先端部を基板接合装置1内へ挿入する。そして、図9Bの矢印AR35に示すように、基板W2が、搬送ロボット841のアームの先端部から基板接合装置1のヘッド142(図3参照)へ移載される、或いは、基板W1が、搬送ロボット841のアームの先端部から基板接合装置1のステージ141(図3参照)へ移載される。続いて、搬送ロボット841が、アームを収縮させると、基板接合装置1は、基板W1、W2の搬出入口を閉じる。その後、基板接合装置1は、排気弁123Bを開状態にすることによりチャンバ120内の気圧を減圧する。なお、前述のように、第1搬送装置82、第2搬送装置84およびロードロック室83において基板W1、W2が搬送される工程が搬送工程に相当する。
【0037】
次に、基板接合装置1が、活性化処理工程において接合面が活性化処理された2つの基板を接合する接合工程を行う。ここで、基板接合装置1は、基板W1、W2がそれぞれステージ141およびヘッド142に支持されると、基板W1、W2同士が離れた状態から基板W1、W2同士が近づく方向へ基板W2を移動させて基板W1、W2の接合面同士を接触させる。ここにおいて、基板接合装置1は、まず、基板W2を支持したヘッド142を、基板W1を支持したステージ141に近づけて両基板W1、W2を接近させる。次に、基板接合装置1は、両基板W1、W2が互いに近接した状態において、位置ずれ量測定部150により測定される位置ずれ量に基づいて、両基板W1、W2のアライメント動作を実行する。続いて、基板接合装置1は、ヘッド142を再びステージ141に近づけることにより、2つの基板W1、W2を接触させる。
【0038】
その後、基板接合装置1は、基板W1、W2の接合面同士を接触させた状態で、2つの基板W1、W2が互いに密着する方向へ圧力を加えることにより、2つの基板W1、W2を接合する。このとき、基板W1、W2の接合面同士は、OH基または水分子により覆われている。これにより、基板W1、W2の接合面同士を接触させることにより、基板W1、W2同士が、OH基間または水分子間の水素結合により仮接合される。次に、基板接合装置1は、基板加熱部1411、1421により基板W1、W2を、例えば120乃至200℃に加熱した状態で2乃至7時間維持する。これにより、基板W1、W2の接合面に存在するOH基が水素結合から共有結合に移行する時に発生する水分子および水素又は真空中でも基板W1、W2の接合面に残った水分子および水素の多くが、基板W1、W2の接合界面の外部に抜け出していき、接合面間に強固な共有結合が形成されると考えられる。このとき、仮接合した基板W1、W2の接合界面から水分子および水素が抜け出していく過程において、仮接合時では接触していなかった部分においても基板W1、W2の接合面同士が接触し、実質的に接合界面が広がり接合面積が大きくなると考えられる。基板接合装置1は、基板W1、W2同士を接合すると、排気弁123Bを閉状態にするとともに空気導入弁を開状態にして、チャンバ120内へ空気を導入することによりチャンバ120内の気圧を大気圧にする。続いて、基板接合装置1は、再び基板W1、W2の搬出入口を開放する。
【0039】
その後、図9Bに示す搬送ロボット841は、アームを伸張させてアームの先端部を基板接合装置1内へ挿入する。そして、互いに接合された基板W1、W2が、基板接合装置1のステージ141またはヘッド142から搬送ロボット841のアームの先端部へ移載される。次に、搬送ロボット841が、アームを収縮させることにより、基板接合装置1から互いに接合された基板W1、W2を取り出す。そして、基板接合装置1は、再び基板W1、W2の搬出入口を閉じる。続いて、搬送ロボット841は、アームの先端部がロードロック室83側を向くように旋回する。その後、ロードロック室83の第2搬送装置84側の扉が開放されると、搬送ロボット841が、アームの先端部をロードロック室83側に向けた状態でアームを伸張させる。そして、ロードロック室83内において、互いに接合された基板W1、W2が、アームの先端部からステージへ移載されると、搬送ロボット841は、アームを収縮させる。そして、ロードロック室83の第2搬送装置84側の扉が閉まる。
【0040】
次に、ロードロック室83の第1搬送装置82側の扉が開放された後、搬送ロボット821が、アームの先端部をロードロック室83側に向けた状態でアームを伸張させてアームの先端部をロードロック室83内へ挿入する。そして、互いに接合された基板W1、W2が、ロードロック室83内のステージから搬送ロボット821のアームの先端部へ移載される。その後、搬送ロボット821が、アームを収縮させることにより互いに接合された基板W1、W2をロードロック室83から取り出した後、ロードロック室83の第1搬送装置82側の扉が閉まる。続いて、搬送ロボット821は、アームの先端部がロードロック室83側とは反対側を向くように旋回する。その後、搬送ロボット821は、互いに接合された基板W1、W2を保持した状態で、第1搬送装置82における取り出しポート813へ搬入する位置まで移動する。次に、搬送ロボット821が、アームを伸張させてアームの先端部を取り出しポート813内へ挿入して互いに接合された基板W1、W2を取り出しポート813内に配置する。
【0041】
次に、本実施の形態に係る基板接合システムにより2つの基板W1、W2を接合してなる22種類の試料について、接合強度を評価した結果について説明する。試料1乃至14について、活性化処理装置2でのSiO基板である基板W1に対するNガスを用いたRIE処理では、チャンバ212内へ導入するNガスの流量を50sccmとし、基板W1へ印加する高周波バイアスのバイアス電力を100Wに設定し、処理時間を30secに設定した。また、活性化処理装置2でのSi基板である基板W2に対するOガスを用いたRIE処理では、チャンバ212内へ導入するOガスの流量を50sccmとし、基板W2へ印加する高周波バイアスのバイアス電力を110Wに設定し、処理時間を30secに設定した。更に、基板W1、W2に対するNラジカル処理では、チャンバ212内へ導入するNガスの流量を200sccmとし、誘導コイル215へ供給される電力を2500Wに設定し、処理時間を15secとした。また、試料1乃至22について、基板W1、W2を洗浄装置3から基板接合装置1へ搬送する際の第1搬送装置82、ロードロック室83および第2搬送装置84における気圧は、いずれも1000Paとした。更に、試料1乃至20について、基板接合装置1での基板W1、W2の接合処理では、いずれの試料の場合も、チャンバ120内の気圧を1000Paに設定した状態で、基板W1、W2に1000Nの圧力を加えることにより仮接合した後、処理温度150℃、処理時間7時間で熱処理を行うことにより行った。
【0042】
20種類の試料のうちの試料1乃至試料4それぞれについて、基板W1、W2の接合面の曝露対象と基板W1、W2を活性化処理が完了した後最初に曝露対象に曝露した場所と、を纏めたものを以下の表1に示す。試料1乃至試料4では、基板W1をSiO基板とし、基板W2をSi基板とした。ここで、SiO基板として、Si基板の表面にSiO膜を形成した熱酸化膜基板を採用した。なお、表1の「曝露対象」の欄において、「水ガス」は、基板W1、W2の接合面を水ガスに曝露したことを示し、「大気」は、基板W1、W2の接合面を大気に曝露したことを示す。また、表1の「活性化処理後の曝露場所」の欄において、「活性化処理装置」は、活性化処理装置2での活性化処理が完了した後、そのまま活性化処理装置2内において曝露対象に曝露したことを示し、「第2搬送装置」は、活性化処理装置2での活性化処理が完了した後、搬送ロボット841が、基板W1、W2を活性化処理装置2から第2搬送装置84に取り出した後、基板W1、W2を曝露対象に曝露したことを示す。また、「ロードロック室」は、活性化処理装置2での活性化処理が完了した後、搬送ロボット841が、基板W1、W2を活性化処理装置2から取り出し、その後、ロードロック室83へ搬入された後、基板W1、W2を曝露対象に曝露したことを示す。また、試料1乃至4のいずれについても、活性化処理装置2において、基板W1に対してNガスを用いたRIE処理を行った後、Nラジカル処理を行い、基板W2に対してOガスを用いたRIE処理を行った後、Nラジカル処理を行った。
【0043】
【表1】
【0044】
また、20種類の試料のうちの試料5乃至試料7それぞれについて、基板W1、W2への活性化処理が完了した後、大気に曝露するまでの時間を纏めたものを以下の表2に示す。なお、試料5乃至7のいずれについても、活性化処理装置2において、基板W1に対してNガスを用いたRIE処理を行った後、Nラジカル処理を行い、基板W2に対してOガスを用いたRIE処理を行った後、Nラジカル処理を行った。
【0045】
【表2】
【0046】
更に、20種類の試料のうちの試料2並びに試料8乃至試料9それぞれについて、基板W1、W2への活性化処理の内容、並びに活性化処理が完了した後、大気に曝露するまでの時間を纏めたものを以下の表3に示す。なお、表3の「基板W1」、「基板W2」は、それぞれ基板W1に対する活性化処理の内容、基板W2に対する活性化処理の内容を示す。また、「N RIE処理」、「N ラジカル処理」および「O RIE処理」の欄において、「有」は当該処理を行ったことを示し、「無」は当該処理を省略したことを示す。ここで、「N RIE処理」は、Nガスを用いたRIE処理を示し、「O RIE処理」は、Oガスを用いたRIE処理を示す。
【0047】
【表3】
【0048】
また、20種類の試料のうちの試料2並びに試料11乃至試料14それぞれについて、基板W1、W2を活性化処理装置2から洗浄装置3へ搬送する際の第2搬送装置84、ロードロック室83および第1搬送装置82内の気圧条件を纏めたものを以下の表4に示す。
【0049】
【表4】
【0050】
更に、20種類の試料のうちの試料15乃至試料18それぞれについて、基板W1、W2に対する活性化処理の内容を纏めたものを以下の表5に示す。なお、試料15乃至18は、基板W1、W2の両方がガラス基板である。また、表5の「N RIE処理」、「N ラジカル処理」および「O RIE処理」は、表3の場合と同じである。ここで、Nガスを用いたRIE処理では、チャンバ212内へ導入するNガスの流量を50sccmとし、基板W1へ印加する高周波バイアスのバイアス電力を250Wに設定し、処理時間を60secに設定した。Oガスを用いたRIE処理では、チャンバ212内へ導入するOガスの流量を50sccmとし、基板W1、W2へ印加する高周波バイアスのバイアス電力を250Wに設定し、処理時間を60secに設定した。更に、基板W1、W2に対するNラジカル処理では、プラズマチャンバ213の外側に配置された平板電極と平板電極に電気的に接続された高周波電源と、を備える構成を使用し、プラズマチャンバ213内へ導入するNガスの流量を200sccmとし、平板電極間に供給する高周波電力を27MHz、250Wに設定し、処理時間を15secとした。
【0051】
【表5】
【0052】
また、20種類の試料のうちの試料19および試料20それぞれについて、基板W1、W2に対する活性化処理の内容を纏めたものを以下の表6に示す。また、試料19においては活性化処理後水ガスに暴露した。なお、試料19、試料20は、基板W1、W2の両方がSi基板上にSiOを堆積することにより形成された絶縁膜が形成された基板である。ここで、Nガスを用いたRIE処理では、チャンバ212内へ導入するNガスの流量を50sccmとし、基板W1へ印加する高周波バイアスのバイアス電力を500Wに設定し、処理時間を60secに設定した。Oガスを用いたRIE処理では、チャンバ212内へ導入するOガスの流量を50sccmとし、基板W1、W2へ印加する高周波バイアスのバイアス電力を500Wに設定し、処理時間を60secに設定した。なお、基板W1、W2に対するNラジカル処理など他の条件は、試料1乃至試料14と同じ条件で行った。また、試料19は、接合時における気圧を1000Paに設定し、試料20は、接合時の気圧を大気圧に設定し、熱処理における処理温度を350℃に設定し、処理時間を7時間に設定した。
【0053】
【表6】
【0054】
更に、22種類の試料のうちの試料21、22それぞれについて、基板W1、W2に対する活性化処理の内容を纏めたものを以下の表7に示す。なお、試料21、22は、基板W1、W2の両方が、その接合面の表面粗さがRMSで0.49nmのガラス基板である。また、表7の「N RIE処理」、「N ラジカル処理」および「O RIE処理」は、表3の場合と同じである。ここで、Nガスを用いたRIE処理では、チャンバ212内へ導入するNガスの流量を50sccmとし、基板W1へ印加する高周波バイアスのバイアス電力を250Wに設定し、処理時間を120secに設定した。Oガスを用いたRIE処理では、チャンバ212内へ導入するOガスの流量を50sccmとし、基板W1、W2へ印加する高周波バイアスのバイアス電力を250Wに設定し、処理時間を120secに設定した。更に、基板W1、W2に対するNラジカル処理では、プラズマチャンバ213の外側に配置された平板電極と平板電極に電気的に接続された高周波電源と、を備える構成を使用し、プラズマチャンバ213内へ導入するNガスの流量を200sccmとし、平板電極間に供給する高周波電力を27MHz、250Wに設定し、処理時間を15secとした。また、基板接合装置1での基板W1、W2の接合処理では、いずれの試料の場合も、チャンバ120内の気圧を1000Paに設定した状態で、基板W1、W2に1000Nの圧力を加えることにより仮接合した後、処理温度200℃、処理時間2時間で熱処理を行うことにより行った。
【0055】
【表7】
【0056】
また、試料1乃至試料22についての基板W1、W2の接合強度の評価は、ブレードを挿入するクラックアンドオープニング法を用いて接合強度(表面エネルギ換算)を測定することにより行った。このクラックアンドオープニング法では、まず、図10Aの矢印で示すように、互いに接合された2つの基板W1、W2の周縁から接合部分に例えばカミソリの刃のようなブレードBLを挿入したときの基板W1、W2の剥離長さLを測定する。ブレードBLとしては、例えば厚さ100μmのブレードを使用する。また、図10Bに示すように、互いに接合された2つの基板W1、W2の周縁部の6箇所(Pos1、Pos2、Pos3、Pos4、Pos5、Pos6)にブレードBLを挿入(図10B中の矢印参照)したときのブレード接点からの剥離長さLを測定した。そして、基板W1、W2の周縁部の6箇所それぞれについて、剥離長さLから、基板W1、W2の接合界面の強度を単位面積当たりの表面エネルギ換算で算出することにより、基板W1、W2の接合強度の評価を行った。なお、剥離長さLから接合強度(表面エネルギ換算)Ebを算出する際には、下記式(1)の関係式を使用した。
【0057】
【数1】
・・・式(1)
【0058】
ここで、Yはヤング率を示し、Tsは基板W1、W2の厚さを示し、TbはブレードBLの厚さを示す。試料1乃至14についての基板W1、W2の接合強度の評価では、ヤング率Yを6.5×1010[N/m]とし、基板W1、W2の厚さTsを0.0011m(1.1mm)、ブレードBLの厚さTbを0.0001m(0.1mm)とした。計算式より剥離長さが短いほど接合強度が大きくなる。基板W1、W2の周縁部の6箇所における剥離長さおよび接合強度(表面エネルギ換算)の平均値、並びにバルク破壊が発生した測定点の数を表5に示す。なお、算出された接合強度(表面エネルギ換算)が大きいほど、基板W1、W2の接合強度が大きいことを示す。また、この接合強度は、1J/m未満は強度不足とし、1J/m以上は必要であり、1.5J/m以上が通常良品と判定される大きさであり、2J/mを超えるが好ましく、また、バルク破壊するのがより好ましい。また、バルク破壊したものの中でも剥離長さが短いほど接合強度は高いと想定できるので剥離長さを併記している。
【0059】
試料1乃至試料20についての基板W1、W2の接合強度の評価結果を以下の表8に示す。なお、表8において「試料名」の欄は、前述の表1の試料1乃至試料14それぞれに対応する。「剥離長さ」の欄の値は、図10Bに示す2つの基板W1、W2の周縁部の6箇所(「Pos1」乃至「Pos6」)における剥離長さの平均値を示している。また、「接合強度(表面エネルギ換算)」の欄の値は、図10Bに示す2つの基板W1、W2の周縁部の6箇所(「Pos1」乃至「Pos6」)における接合強度(表面エネルギ換算)の平均値を示し、2つの基板W1、W2の周縁部の6箇所全てでバルク破壊が発生したものについては、推定の接合強度を記載している。更に、「バルク破壊箇所の数」の欄の値は、2つの基板W1、W2の周縁部の6箇所のうちバルク破壊が発生した箇所の数を示している。バルク破壊強度(2.5J/m)に達した試料については、剥離長さとバルク破壊箇所の数とで比較する。但し、基板W1、W2の組み合わせとして、SiO基板とSi基板、ガラス基板同士、酸化膜付きSi基板同士、の3種類の組み合わせを採用したため、バルク破壊強度以上の場合に剥離長さで単純に比較できないため、推定の接合強度を記載している。
【0060】
【表8】
【0061】
例えば試料1、2の接合強度(表面エネルギ換算)は、いずれも2.5J/m以上であり、バルク破壊強度に達している箇所が5箇所存在した。ところで、Si基板からなる基板W2は、接合面に自然酸化膜が形成されていないためORIE処理を行うことにより接合面に酸化膜を形成している。そして、基板W2については、NRIE処理を省略しても接合面にNラジカル処理を行うので接合面が前述のN活性化状態となっていると考えられる。実際、試料1、2は、Si基板である基板W1について接合面に親水化接合のための酸化膜を形成させるORIE処理を行うが、NRIE処理を省略している。それにも関わらず、十分な接合強度が得られていることからも、基板W1の接合面には、NRIE処理を行わなくてもNラジカル処理で前述のN活性化状態となっていると考えられる。つまり、基板W1、W2の接合面でのN活性化状態の実現には、Nラジカル処理が大きく寄与していることが判った。また、試料1、2の接合強度(表面エネルギ換算)の結果から、基板W1、W2を水ガスに曝露したほうが、これらを大気に曝露した場合に比べて接合強度が向上することが判った。このことから、大気中に含まれる水分子が基板W1、W2同士の親水化接合に寄与していることが判った。また、大気には水以外の物質を含んでいるため、N活性状態の基板W1、W2の接合面に大気中の水以外の物質が吸着しまうため、その分、接合面に形成されるOH基の数が減少してしまう。これに対して、水ガスを供給した場合、N活性状態の基板W1、W2の接合面に多くのOH基が形成される。このため、水ガスに暴露した方が、基板W1、W2同士の接合強度が向上したと考えられる。
【0062】
試料2乃至7の接合強度(表面エネルギ換算)およびバルク破壊箇所の数の結果から、活性化処理装置2での活性化処理完了後から基板W1、W2の接合面を大気に曝露するまでに要する時間が基板W1、W2の接合強度に影響していることが判った。本実施の形態に係る基板接合システムでは、活性化処理装置2での活性化処理完了後、第2搬送装置84において基板W1、W2を大気に曝露するまでに要する時間は約5minであり、活性化処理完了後、ロードロック室83において基板W1、W2を大気に曝露するまでに要する時間は約10minであり、このことから、活性化処理完了後、基板W1、W2を大気に曝露するまでの時間が長くなるほど、基板W1、W2の接合強度が低下することが判った。
【0063】
試料2、8の接合強度(表面エネルギ換算)およびバルク破壊箇所の数の結果から、NRIE処理よりもNラジカル処理のほうが基板W1、W2同士の接合強度に大きく寄与していることが判った。このことから、N活性化状態の基板W1、W2の接合面に形成されるOH基は、NRIE処理時よりもNラジカル処理時に多く形成されると考えられる。また、試料8、9の接合強度(表面エネルギ換算)の結果から、基板W2に対してNラジカル処理を行わない場合であってもNRIE処理を行うことにより比較的大きい接合強度が得られることが判った。このことから、基板W2にNラジカル処理またはNRIE処理を行うことが基板W1、W2の接合強度の向上に大きく影響することが判った。なお、試料9、10の比較において、基板W2に対してN2()ラジカル処理およびN2()RIE処理のいずれも行わない場合、活性化処理後に減圧下で待機する時間を変化させても接合強度に大きな変化は無かった。これより窒素によるN活性化状態のみが水分を含む気体に暴露するまでの時間に影響していることが分かる。また、強度差も一目瞭然であり、不安定なN活性化状態は、水と接触することにより、接合に寄与するOH基を、N活性化状態がない通常より、数多く形成すると考えられる。
【0064】
試料2並びに試料11乃至14の接合強度(表面エネルギ換算)およびバルク破壊箇所の数の結果から、活性化処理装置2での活性化処理完了後、洗浄装置3への搬送時における気圧が高いほど基板W1、W2の接合強度が向上することが判った。具体的には、搬送時における気圧が1Paの場合0.81J/mと低く、10Paの場合、1.55J/m、100Paの場合、2.15J/m、1000Paの場合、2.89J/m、10000Paの場合2.98J/mと、気圧が大きくなるに伴い接合強度は向上した。但し、試料2並びに試料11乃至13では、基板W1、W2の接合部分にボイドが見られなかったが、試料14では、基板W1、W2の接合部分にボイドが発生した。例えば図11Aに示すように、試料2では、ボイドが確認できなかったが、図11Bに示すように、試料11では、ボイドの発生が確認された。これは、基板W1、W2の搬送中における気圧が高い場合、基板W1、W2の間への空気の巻き込みによるボイドが発生し易くなるためと考えられる。或いは、基板W1、W2の搬送中における気圧が高い場合において、基板W1、W2の間の接合部分に水分が残存し基板接合装置1における熱処理時に気化した水分に起因してボイドが発生したと考えられる。なお、洗浄装置3での洗浄工程を省略して処理した場合、濡れ性の低下並びにパーティクルの付着に起因したボイドが発生したが、搬送時の気圧が低いほどボイドが減少する傾向が確認された。
【0065】
試料15乃至18の接合強度(表面エネルギ換算)およびバルク破壊箇所の数の結果から、ORIE処理のみの場合、接合強度は0.48J/mと低いのに対して、ORIE処理の後にNラジカル処理を行った場合、0.9J/mとなり、NRIE処理の後にNラジカル処理を行った場合、2.5J/mと窒素を使用する方が接合強度が向上することが判った。なお、NRIE処理を行う前にORIE処理を行ったことにより、基板W1、W2同士の濡れ性が向上し、基板W1、W2同士の接合強度が向上するとともに基板W1、W2の間で発生するボイドが低減した。これは、基板W1、W2の接合面に付着した有機物等の付着物がORIE処理により除去されることにより、その後のNRIE処理、Nラジカル処理においてN活性化状態の基板W1、W2の接合面により多くのOH基が形成されたことに起因すると考えられる。また、基板W1、W2の接合面に付着した有機物がORIE処理により除去されることにより、基板W1、W2の接合面の濡れ性がアップしたと考えられる。
【0066】
試料15乃至18および試料19、20の接合強度(表面エネルギ換算)およびバルク破壊箇所の数の結果から、Si基板とSiO基板同士の接合のみならず、SiO基板同士の接合、ガラス基板および酸化膜付きSi基板においても、N2()ラジカルの照射またはN2RIE処理を行うことにより、Si基板とSiO2()基板との接合と同様の傾向が見られ、他の処理条件においても同様な傾向であった。また、試料19、20の接合強度(表面エネルギ換算)およびバルク破壊箇所の数の結果から、Si基板上にCVD(Chemical Vapor deposition)法により基板上に酸化膜を堆積形成したものの場合、従来の基板接合方法では、基板同士の接合強度が0.59J/mだったものが、本実施の形態に係る基板接合方法を採用することにより、基板同士の接合強度がバルク破壊強度以上(2.89J/m)に大幅に向上したことが判った。また、ORIE処理を行わずに、NRIE処理、Nラジカル処理を行った場合でも、予め設定された時間内に基板W1、W2を大気に暴露することで従来以上の1J/mを超えるレベルの強度不足を回避する接合強度を得ることができた。
【0067】
また、図12Aに示すように、試料21の接合強度(表面エネルギ換算)が、0.31J/m、であったのに対して、試料22の接合強度はバルク破壊強度に相当する2.0J/mとなり、試料22は、試料21に比べて接合強度が大幅に向上することが判った。また、試料22の基板W1、W2の接合面について、XPS(X線光電子分光法)スペクトルを測定したところ、図12Bの曲線SL1、SL2に示すように、活性化処理後では活性化処理前には見られなかった396eV乃至399eV付近に酸窒化物由来のN1sピークが検出された。このことから、活性化処理により基板W1、W2の接合面に酸窒化物であるSiONが形成されることが判った。そして、活性化処理後の基板W1、W2に対して、試料21、22における熱処理の条件と同じ条件で熱処理を行ったところ、図12Bの曲線SL2、SL3に示すように、N1sピークの消失が確認された。このことと、図12Aに示すように試料22の接合強度が試料21の接合強度に比べて大幅に向上することから、試料22では基板W1、W2の接合部分において酸窒化物(SiON)が水素結合に寄与するOH基に置換されていると考えられる。
【0068】
以上説明したように、本実施の形態に係る基板接合システムでは、2つの基板W1、W2それぞれの互いに接合される接合面に対して、窒素ガスを用いた反応性イオンエッチングと窒素ラジカルの照射とを行うことにより基板W1、W2の接合面を活性化する。これによって形成された基板W1、W2の接合面のN活性状態は不安定であり、そのままでは、活性状態は失活してしまうため、強度が減少する。これを回避するため、基板W1、W2の接合面を活性化した後、予め設定された基準時間内に、水分子と接触させる必要がある。そこで、本実施の形態に係る基板接合システムでは、基板W1、W2の接合面を活性化した後、予め設定された基準時間内に、基板W1、W2の接合面を、大気または水ガスに暴露する。これにより、基板W1、W2の接合面がN活性な状態で水分子と接触させることができるので、基板W1、W2の接合面に多くの酸窒化物を形成することができる。そして、基板W1、W2の接合面同士を接触させて基板W1、W2を仮接合した後、熱処理を行った場合、基板W1、W2の接合面間に存在する多くの酸窒化物がOH基に置換されることで、比較的多くの水素結合を形成することができる。従って、互いに仮接合された基板W1、W2の接合面間に形成された水素結合が熱処理により共有結合へ移り変わると、基板W1、W2が比較的多くの共有結合を介して接合されるので、基板W1、W2同士の接合強度を高めることができる。
【0069】
ところで、従来は、基板W1、W2同士を仮接合した後、熱処理を行うことで初めてOH基が生成されて基板W1、W2同士の接合強度が向上する。これに対して、本実施の形態に係る基板接合方法では、基板W1、W2の接合面に対して活性化処理を施すことにより接合面に多数の酸窒化物(N基)を生成した状態で水分子に接触させることにより、基板W1、W2の接合面の多数の酸窒化物(N基)がそれぞれOH基に置換される。このため、基板W1、W2の接合面には多数のOH基が生成される。つまり、本実施の形態は、基板W1、W2の接合面に対して活性化処理を施した後、熱処理を行う前の段階で基板W1、W2の接合面に多数のOH基を生成する方法の発明に関するものである。従って、基板W1、W2の接合面に対して活性化処理を施した後では、基板W1、W2の接合面同士を真空度が比較的高い環境で接触させた場合において基板W1、W2の接合面に付着した水分が除去されたとしても接合面には既に多数のOH基が生成されているため、基板W1、W2同士が強固に仮接合される。
【0070】
また、従来の基板同士の接合方法では、基板の接合面に対してRIE処理を行うことにより接合面の濡れ性をアップした後、接合面に水を吹き付けることにより接合面を洗浄し、その後、大気圧下において基板の接合面間に水分子を介在させた状態で2つの基板の接合面同士を接触させることにより仮接合する。そして、互いに仮接合された2つの基板を熱処理することにより2つの基板を接合するのが一般的であった。ここで、2つの基板同士の接合強度を高めるためには、熱処理時における処理温度を350℃程度にする必要があった。この場合、2つの基板の接合部分におけるボイドの発生を抑制するために、2つの基板のうちの少なくとも一方の中央部を押圧して撓ませた状態で2つの基板を接触させることにより2つの基板の間への空気の巻き込みを抑制する技術が採用されることが多い。但し、基板に導体パターンが形成されている場合、導体パターンに起因して基板の濡れスピードに場所依存性が生じてしまい2つの基板の間への空気の巻き込みに起因したボイドの発生を低減させることができない場合があった。また、水を基板の接合面に吹き付けることにより洗浄するため、基板の接合面に水が残存した状態で熱処理が行われると、その残存した水がボイドの発生原因となることがあった。特に、Si基板の場合、水分子を吸収する酸化膜が薄く接合面に残存した水に起因したボイドの発生が顕著であった。このため、2つの基板同士を減圧下で接合することにより、2つの基板の間への空気の巻き込みを無くし接合面に残存した水を除去する接合方法が提供されている。従来の大気圧下で2つの基板の接合する基板接合方法では、ORIE処理を行うことにより基板の接合面の濡れ性を高めた後、図13(A-1)に示すように、接合面に水分子を付着させる。そして、図13(A-2)に示すように、2つの基板それぞれの接合面間に水分子を介在させた状態で基板が加熱されると、図13(A-3)に示すように、基板に付着した水分子がOH基に変わり強固な共有結合へと変化する。ところが、減圧下で基板を接合する基板接合方法では、図13(A-1)に示すように、接合面に水分子を付着させた後、基板を減圧下に置くと、図13(B-2)に示すように、基板に付着した水分子が蒸発し、基板上の水分子が減少する。その結果、基板の接合面に形成されるOH基が減少してしまい、図13(B-3)に示すように、基板の接合面にほとんどOH基が形成されていない状態で基板同士を接合することなる。この場合、基板同士を強固に接合することが困難であった。特に、基板上に導体パターンを形成した後、CVD法により基板上に酸化膜を形成し、その後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法により研磨した場合、酸化膜の緻密性が低いため接合強度が1J/m以上とならなかった。
【0071】
これに対して、本実施の形態に係る基板接合システムによれば、図13(C-1)に示すように、活性化処理において基板W1、W2の接合面にOH基を形成する。このため、その後、減圧下において基板W1、W2に付着した水分子が蒸発したとしても、図13(C-2)に示すように、基板W1、W2の接合面に比較的多くのOH基が形成された状態が維持される。このため、2つの基板がOH基を介して水素結合して仮接合した後、熱処理を行うことで、図13(C-3)に示すように2つの基板同士が強固な共有結合を介して接合される。このため、基板W1、W2同士を減圧下で強固に接合することができる。従って、基板W1、W2の間への空気の巻き込み或いは基板W1、W2の接合面に残存する水に起因したボイドの発生を抑制しつつ、基板W1、W2同士を堅固に接合することができる。
【0072】
また、基板W1、W2の接合部分における熱処理後のボイドの発生を抑制するためには、熱処理時における処理温度を低減することも要請されている。更に、基板W1、W2の熱膨張による位置精度の低下、或いは、熱膨張係数の異なる材料から形成された基板W1、W2同士の接合における基板W1、W2の反りまたは割れの発生を抑制するために、熱処理温度を200℃未満、好ましくは150℃程度にすることが要請されている。これに対して、本実施の形態に係る基板接合システムによれば、前述の接合強度の評価結果で示すように、基板W1、W2を仮接合した後の熱処理を処理温度150℃、処理時間7時間の条件で行うことにより、高い接合強度を得ることができる。つまり、熱処理の処理温度を150℃以下としても高い接合強度を確保することができる。
【0073】
従来は、基板W1、W2が、活性化処理装置2での活性化処理が完了した後、減圧下で第2搬送装置84からロードロック室83まで搬送されてから大気に曝露されていた。この場合、基板W1、W2が大気に曝露されるまでの時間が約10minかかってしまい、十分な接合強度を得ることができなかった。これに対して、本実施の形態に係る基板接合システムでは、活性化処理装置2での活性化処理が完了した後、活性化処理装置2または第2搬送装置84において大気に曝露することにより、活性化処理完了後大気曝露までの時間が短縮され、基板W1、W2同士の接合強度を高めることができる。また、活性化処理装置2での活性化処理が完了した後、活性化処理装置2または第2搬送装置84において水ガスに曝露することにより、更に基板W1、W2同士の接合強度を高めることができる。また、活性化処理装置2において水ガスに暴露した後、一旦、チャンバ212内を減圧状態にし、減圧下でロードロック室83まで搬送した後、洗浄装置3へ投入するために大気に曝しても、バルク破壊は起き、基板W1、W2同士の接合強度に大きな差はなかった。このことから、N活性化状態の基板W1、W2の接合面に形成されたOH基は、減圧下に置かれても消滅しないということが判った。また、基板W1、W2の接合面を水ガスに暴露する場合、大気圧と同程度の水ガスをチャンバ212内へ供給しなくても、数%の水分子がチャンバ212内へ充満されれば、基板W1、W2の接合面に多くのOH基が形成されることも判った。この場合、活性化処理装置2で短時間の水ガス暴露を行うのみで大気圧まで戻さなくともそのまま真空搬送を行えば済むので装置のタクト短縮になる。
【0074】
また、従来は、洗浄装置3から基板接合装置1へ基板W1、W2を搬送する際、1Pa程度の減圧下で基板W1、W2を搬送し、基板接合装置1において1Pa程度の気圧下で基板W1、W2の接合を行っていた。これに対して、本実施の形態に係る基板接合システムでは、洗浄装置3から基板接合装置1まで10Pa以上且つ1000Pa以下の気圧下で搬送する。これにより、基板W1、W2に付着した水分子の蒸発が抑制され、基板W1、W2同士の接合強度を高めることができる。つまり、基板接合装置1での接合工程において、基板W1、W2の接合面に水分子を残すことができ、活性化処理装置2での活性化処理により基板W1、W2の接合面をN活性化状態にすることに加えて、接合面に残存する水分子により、接合面により多くのOH基を形成することができる。それ故、基板W1、W2同士の接合強度をより高めることができる。また、活性化処理において、窒素ガスを用いたエッチング処理と窒素ラジカルの照射とを行わずに酸素ガスを用いた処理のみを行った場合でも、同様な結果が得られた。
【0075】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば、ロードロック室83内または第2搬送装置84内へ水ガスを供給する水ガス供給部(図示せず)を備えるものであってもよい。水ガス供給部は、アルゴン(Ar)や窒素(N)、ヘリウム(He)、酸素(O)等のキャリアガスと気化した水とを混合させることにより水ガスを生成して供給する。水ガス供給部は、供給弁および供給管を介してロードロック室83に接続されている。ロードロック室83内へ導入される水ガスおよびキャリアガスの流量は、供給弁の開度を制御することにより調整される。なお、水ガス供給部は、水(HO)の分子やクラスタ等を加速して、基板W1、W2の接合面に向けて照射する構成であってもよい。ここにおいて、水ガス供給部は、加速された水(HO)粒子を放射する粒子ビーム源から構成されていてもよい。この場合、粒子ビーム源として、例えば超音波発生素子を利用して水ガスを発生させる構成であってもよい。或いは、前述のバブリングや超音波振動などで生成したキャリアガスと水(HO)との混合ガスを、前述の粒子ビーム源に導入することにより、水の粒子ビームを発生させて、基板W1、W2の接合面へ照射する構成とすればよい。また、ロードロック室83においてロードロック室83を大気開放せずに基板W1、W2の接合面を水ガスに曝露した後、ロードロック室83を大気開放してもよい。また、水ガスの代わりに、基板W1、W2の接合面にH、OH基を含むガスを供給してもよい。
【0076】
実施の形態において、活性化処理装置が、基板W1、W2に対して粒子ビームを照射することにより基板W1、W2の接合面を活性化させる粒子ビーム源を有するものであってもよい。本変形例に係る活性化処理装置3002は、例えば図14に示すように、チャンバ3212と、基板W1、W2を保持するステージ3210と、粒子ビーム源3061と、ビーム源搬送部3063と、を有する。なお、図14において、実施の形態と同様の構成については図2と同一の符号を付している。また、活性化処理装置3002は、プラズマチャンバ3213と、誘導コイル215と、高周波電源216と、を有する。更に、活性化処理装置3002は、図14の矢印AR303に示すようにステージ3210をその厚さ方向に直交する1つの軸周りに回転駆動するステージ駆動部3623を有する。また、ステージ3210は、例えば真空チャックを有し、基板W1、W2が投入された場合、基板W1、W2を吸着保持する。
【0077】
粒子ビーム源3061は、例えば高速原子ビーム(FAB、Fast Atom Beam)源であり、放電室3612と、放電室3612内に配置される電極3611と、ビーム源駆動部3613と、窒素ガスを放電室3612内へ供給するガス供給部3614と、を有する。放電室3612の周壁には、中性原子を放出するFAB放射口3612aが設けられている。放電室3612は、炭素材料から形成されている。ここで、放電室3612は長尺箱状であり、その長手方向に沿って複数のFAB放射口3612aが一直線上に並設されている。ビーム源駆動部3613は、放電室3612内に窒素ガスのプラズマを発生させるプラズマ発生部(図示せず)と、電極3611と放電室3612の周壁との間に直流電圧を印加する直流電源(図示せず)と、を有する。ビーム源駆動部3613は、放電室3612内に窒素ガスのプラズマを発生させた状態で、放電室3612の周壁と電極3611との間に直流電圧を印加する。このとき、プラズマ中の窒素イオンが、放電室3612の周壁に引き寄せられる。このとき、FAB放射口3612aへ向かう窒素イオンは、FAB放射口3612aを通り抜ける際、FAB放射口3612aの外周部の、炭素材料から形成された放電室3612の周壁から電子を受け取る。そして、この窒素イオンは、電気的に中性化された窒素原子となって放電室3612外へ放出される。但し、窒素イオンの一部は、放電室3612の周壁から電子を受け取ることができず、窒素イオンのまま放電室3612の外へ放出される。また、FAB筐体内の一部または全部をSiで形成してもよい。そうすることでArビームと同時にSi粒子が放出されるため、界面にSiが打ち込まれ、打ち込まれたSiにもOH基が付くためより多くのOH基を生成でき、接合強度をアップすることができる。
【0078】
ビーム源搬送部3063は、長尺でありチャンバ3212に設けられた孔3212aに挿通され一端部で粒子ビーム源3061を支持する支持棒3631と、支持棒3631の他端部で支持棒3631を支持する支持体3632と、支持体3632を駆動する支持体駆動部3633と、を有する。また、ビーム源搬送部3063は、チャンバ3212内の真空度を維持するためにチャンバ3212の孔3212aの外周部と支持体3632との間に介在するベローズ3634を有する。支持体駆動部3633は、図14の矢印AR301に示すように、支持体3632を支持棒3631がチャンバ3212内へ挿脱される方向へ駆動することにより、図14の矢印AR302に示すようにチャンバ3212内において粒子ビーム源3061の位置を変化させる。ここで、ビーム源搬送部3063は、粒子ビーム源3061を、その複数のFAB放射口3612aの並び方向に直交する方向へ移動させる。
【0079】
活性化処理装置3002は、チャンバ3212内へ供給管223Aを介して窒素ガスを供給する窒素ガス供給部220Aを有する。そして、プラズマチャンバ213内にNガスが導入された状態で、高周波電流が誘導コイル215へ供給されると、プラズマチャンバ213内にプラズマPLM2が形成される。このとき、プラズマチャンバ213内で発生したプラズマPLM2に含まれるラジカルのみがチャンバ3212内におけるプラズマチャンバ213の下方へダウンフローする。粒子ビームを照射する際、チャンバ64内の圧力は、例えばターボ分子ポンプを使用して10-3Pa台まで真空引きされるが、ラジカル処理時においては、チャンバ64内の圧力を数10Pa程度まで上昇させて行う。
【0080】
本変形例に係る活性化処理装置3002は、例えば図15Aおよび図15Bの矢印AR304に示すように、粒子ビーム源3061を、基板W1、W2の接合面へ粒子ビームを照射させながらX軸方向へ移動させていく。ここで、活性化処理装置3002は、例えば粒子ビーム源3061を+X方向へ移動させながら粒子ビームを基板W1、W2の接合面に照射した後、粒子ビーム源3061を-X方向へ移動させながら基板W1、W2の接合面に粒子ビームを照射する。また、粒子ビーム源3061の移動速度は、例えば1.2乃至14.0mm/secに設定される。また、粒子ビーム源3061への供給電力は、例えば1kV、100mAに設定されている。そして、粒子ビーム源3061の放電室3612内へ導入される窒素ガスまたは酸素ガスの流量は、例えば100sccmに設定される。
【0081】
次に、活性化処理装置3002は、図16Aの矢印AR306に示すように、ステージ3210を反転させることにより、基板W1、W2の接合面が鉛直上方を向く姿勢にする。そして、活性化処理装置3002は、図16Bの矢印AR307に示すように、基板W1、W2の接合面に窒素ラジカルを照射する。
【0082】
ところで、基板W1、W2の接合面が、例えば電極となるCuから形成された領域と絶縁層となる酸化膜から形成された領域とから構成されたいわゆるハイブリッドな接合面である場合、従来のプラズマでのRIE処理を行うと、基板W1、W2の接合面の近傍にシース領域が形成され、全てのイオン化されたものが引き込まれて基板W1、W2の接合面にアタックする。このとき、Cuからなる領域がエッチングされることにより生成されたCuイオンまたは粒子が、基板W1、W2の接合面における酸化膜から形成された領域に付着すると酸化膜での接合強度が低下してしまう。また、酸化膜がエッチングされることにより生成された酸化膜の材料からなる粒子が、電極となるCuからなる領域に付着すると、電極の電気抵抗が上昇してしまう。これに対して、本構成によれば、粒子ビームを用いたいわゆるFAB処理を行うため、チャンバ3212内で発生したプラズマがビーム照射されるため、Cuからなる領域または酸化膜から形成された領域がエッチングされることにより生成されたCuイオン、Cu粒子または絶縁膜の材料からなる粒子が基板W1、W2の接合面へ戻ることなく弾き飛ばされる。従って、粒子ビームを基板W1、W2の接合面に照射しても基板W1、W2の接合面に不純物が付着することが抑制されるので、基板W1、W2同士の接合強度を高めることができる。それ故、いわゆるハイブリッドな接合面を有する基板W1、W2の活性化処理に好適である。
【0083】
また、基板W1、W2の代わりに、例えば基板をダイシングして得られるチップを粘着シートに貼着されたものを処理する場合、プラズマでのRIE処理では、その粘着シートを構成する樹脂がチップの接合面に付着してしまう。これに対して、本構成によれば、粘着シートを構成する樹脂もチップの接合面に付着することなく良好な活性化処理が可能となる。
【0084】
実施の形態では、活性化処理装置2が、プラズマ発生源がICPを発生させるものである例について説明したが、これに限定されるものではなく、プラズマ発生源がマイクロ波によりプラズマを発生させるものであってもよい。例えば図17に示すように、本変形例に係る活性化処理装置4002は、ステージ210と、チャンバ4212と、トラップ板4214と、導波管4215と、マグネトロン4216と、バイアス印加部217と、を有する。なお、図17において、実施の形態に係る活性化処理装置2と同様の構成については図2と同一の符号を付している。また、活性化処理装置4002は、窒素ガス供給部220Aと、酸素ガス供給部220Bと、を有する。窒素ガス供給部220Aは、窒素ガス貯留部221Aと、供給弁222Aと、供給管223Aと、を有する。酸素ガス供給部220Bは、酸素ガス貯留部221Bと、供給弁222Bと、供給管223Bと、を有する。ステージ210には、基板W1、W2が載置される。チャンバ4212は、ガラス窓4213を介して導波管4215に接続されている。チャンバ4212は、排気管202Aと排気弁203Aとを介して真空ポンプ201に接続されている。排気弁203Aを開状態にして真空ポンプ201を作動させると、チャンバ4212内の気体が、排気管202Aを通してチャンバ4212外へ排出され、チャンバ4212内の気圧が低減(減圧)される。トラップ板4214は、例えば金属、黒鉛等から形成され、接地電位に維持されている。
【0085】
マグネトロン4216で生成されるマイクロ波は、導波管4215を通じてチャンバ4212内へ導入される。マグネトロン4216としては、例えば周波数2.45GHzのマイクロ波を生成するものを採用することができる。そして、チャンバ4212内にN2()ガスが導入された状態で、導波管4215からマイクロ波を導入すると、マイクロ波によりチャンバ4212内のガラス窓4213近傍にプラズマPLMを形成する。トラップ板4214は、プラズマPLM中に含まれるイオンをトラップし、ラジカルのみをステージ210へダウンフローさせる。マグネトロン4216と、窒素ガス供給部220Aと、トラップ板4214とから、チャンバ4212内にプラズマPLMを発生させステージ210に支持された基板W1、W2の接合面へプラズマ中のN2()ラジカルを供給するプラズマ発生源が構成される。
【0086】
この活性化処理装置4002では、バイアス印加部217によりステージ210にバイアスを印加しながら、チャンバ4212の上部から窒素ガス、酸素ガスを導入することにより基板W1、W2の物理的なエッチング処理(RIE処理)が可能である。また、この活性化処理装置4002では、チャンバ4212の上部に導入されるマイクロ波によりチャンバ4212の上部にイオンまたはラジカルを高密度に発生させ、接地電位に維持されたトラップ板4214を通る時にイオンをトラップし中性子を含むラジカルのみをチャンバ4212のステージ210側へダウンフローさせてステージ210上の基板W1、W2を化学処理する。
【0087】
また、実施の形態では、活性化処理装置2が、RIE処理時に、チャンバ212の上部から窒素ガス、酸素ガスを導入しつつバイアス印加部217によりステージ210にバイアス電圧を印加し、ラジカル処理時に、ステージ210へのバイアス印加を停止する構成について説明した。但し、これに限定されるものではなく、例えばステージ210とプラズマチャンバ213の内側の領域との間にトラップ板(図示せず)が配置されたものであってもよい。ここで、トラップ板は、例えば接地電位で維持されている。
【0088】
ところで、実施の形態に係る活性化処理装置2では、ラジカル処理時において、誘導コイル215によりプラズマチャンバ213内に形成される電界によりイオンがICPプラズマ中にトラップされているので、トラップ板が無くてもラジカルのみをステージ210側へダウンフローさせることができる。但し、ラジカル処理において、イオンが完全にICPプラズマ中にトラップされるわけではなく、ある程度の数のイオンがステージ210側へ落ちてきてしまう。これに対して、本変形例に係る活性化処理装置では、ラジカル処理において、トラップ板によりイオンがトラップされるので、イオンがステージ210側へ照射されることを抑制できる。また、実施の形態で説明した活性化処理装置2において、トラップ板があると、RIE処理時およびラジカル処理時の両方において誘導コイル215へ電流を供給し続けることができるので、RIE処理からラジカル処理への切り替え時における誘導コイル215への電流供給の大幅な切り替えを行う必要がない。このため、基板W1、W2のRIE処理およびラジカル処理に要するタクトが短縮されたり、より多くのイオンまたはラジカルを発生させたりすることができる。
【0089】
また、前述の変形例では、トラップ板が接地電位で維持される例について説明したが、これに限らず、例えば、RIE処理時にはトラップ板を接地電位に維持せずフローティング状態とし、ラジカル処理時のみトラップ板を接地電位で維持するようにしてもよい。この場合、プラズマチャンバ213内に発生したプラズマPLM中のイオンは、RIE処理時にはトラップ板でトラップされずにステージ210側へ落下し、ラジカル処理時のみトラップ板にトラップされる。
【0090】
ところで、トラップ板がない場合、ラジカル処理時において、ラジカルが、窒素ガス、酸素ガスの流れに乗ってステージ210へ照射されることになる。これに対して、本変形例では、ラジカル処理において、プラズマチャンバ213内に発生したプラズマPLM中のイオンがトラップ板に引き込まれるとともに加速され、トラップ板の孔を通過する際、トラップ板から電子が供給されて中和されてからステージ210に載置された基板W1、W2へ照射される。このため、基板W1、W2により多くの中性子を含むラジカルを照射することが可能となる。
【0091】
更に、前述の変形例において、例えばステージ210にバイアスを印加せずに接地電位で維持し、トラップ板をフローティング状態で維持してもよい。この場合、プラズマチャンバ213内に発生したプラズマPLM中のイオンがそのままトラップ板の孔を通過してステージ210側に向けて加速された状態でステージ210に載置された基板W1、W2へ照射される。このため、RIE処理に類似した処理を行うこととなる。そして、トラップ板を接地電位で維持すれば、イオンがトラップ板にトラップされてラジカルのみがトラップ板を通り抜けてステージ210に載置された基板W1、W2へ照射される。このため、ステージ210にバイアスを印加するバイアス印加部217を省略した構成としつつRIE処理に類似した処理とラジカル処理とが可能となる。また、RIE処理に類似した処理では、基板W1、W2に対していわゆる弱いエッチング処理を行うことができる。
【0092】
なお、前述のRIE処理時にはトラップ板を接地電位に維持せずフローティング状態とし、ラジカル処理時のみトラップ板を接地電位で維持する構成、或いは、ステージ210にバイアスを印加せずに接地電位で維持し、トラップ板をフローティング状態で維持する構成については、いわゆるICPプラズマを利用した活性化処理装置に限定されるものではなく、図17を用いて説明したいわゆるマイクロ波を用いた活性化処理装置或いは平行平板型の活性化処理装置において適用されるものであってもよい。この場合、より安価な構成とすることができる。なお、平行平板型の活性化処理装置としては、例えば図18に示すような、プラズマチャンバ213内に配置された電極6215と、電極6215にバイアスを印加するバイアス印加部6216と、トラップ板5214と、を有する活性化処理装置6002が挙げられる。この構成においてもICPプラズマ同様プラズマはシース領域における電界にイオンがトラップされる。また、RIE処理ではバイアスの周波数が13.56MHzであるが、平行平板型やICPプラズマのように周波数27MHzのバイアスを使用したり2GHzのマイクロ波を使用したりしたほうがラジカルを多く発生でき有効である。
【0093】
前述の活性化処理装置では、プラズマPLM中のイオンが、プラズマチャンバ213内に形成されるにシース領域または誘導コイル215により形成される電界にトラップされてステージ210側へ落ちてこない。このため、トラップ板を接地電位で維持すればプラズマPLM中のプラスイオンがトラップ板へ引き寄せられて加速しトラップ板の孔を通過する際トラップ板から電子を受け取って中性子として加速されたままステージ210に載置された基板W1、W2へ照射される。このため、イオンによるチャージアップに起因した基板W1、W2のダメージを軽減することができる。また、トラップ板をフローティング状態とすることにより、プラズマPLM中のイオンは、プラズマチャンバ213内に形成されるシース領域または誘導コイル215により形成される電界にトラップされた状態が維持されるのでプラズマPLM中のラジカルのみをトラップ板を通過してステージ210側へ落下させることによる化学処理が可能となる。
【0094】
即ち、前述のように、(1)トラップ板をフローティング状態にし且つステージ210にバイアスを印加することによるいわゆる強い物理処理、(2)トラップ板をフローティング状態にしつつステージ210を接地電位で維持することによるいわゆる弱い物理処理、(3)トラップ板4214を接地電位で維持して中性のラジカルを基板W1、W2に照射するダメージの少ない弱い物理処理、の順に処理するといった段階的な使い分けが可能となる。また、(4)トラップ板を接地電位で維持することによりラジカルをダウンフローさせる化学処理、(5)トラップ板をフローティング状態にしてラジカルを処理する化学処理も可能である。そして、(1)一番強い物理処理の次に(4)化学処理を行う方法、(2)弱い物理処理の次に(4)化学処理を行う方法、或いは、(5)基板W1、W2へのダメージが少ない弱い物理処理の次に(4)化学処理を行う方法の3通りが考えられ、これらのうちのいずれかを選択して行うことが可能となる。
【0095】
また、前述の各変形例において、トラップ板またはステージ210は、接地電位で維持するに限らず、バイアス電圧を印加してもよい。これにより、トラップ板を通過するイオンが更に加速されてそのエネルギを高くすることができる。
【0096】
実施の形態では、2つの基板W1、W2の両方についてNRIE処理とNラジカル処理とを行う例について説明したが、2つの基板W1、W2の接合面の両方に活性化処理を行うのであれば、この活性化処理の方法に限定されない。例えば2つの基板W1、W2のいずれか一方のみにNRIE処理とNラジカル処理とを行い、他方はNRIE処理とNラジカル処理との少なくとも一方を行わない活性化処理を行う構成であってもよい。
【0097】
実施の形態では、基板接合装置1が、基板W1、W2の接合面全体が互いに接触した状態で、基板W1、W2に圧力を加えるとともに、熱処理を行う例について説明した。但し、これに限らず、例えば基板接合装置1が、基板W1、W2の接合面全体が互いに接触した状態で、基板W1、W2に圧力を加えるだけで熱処理を行わない構成であってもよい。或いは、基板接合装置1が、基板W1、W2の接合面全体が互いに接触した状態で、基板W1、W2の熱処理のみ実行し圧力を加えない構成であってもよい。また、基板接合装置1とは異なる装置において、基板W1、W2への加圧、熱処理が行われてもよい。例えば基板接合装置1が、基板W1、W2の仮接合までを実行し、その後、他の加熱装置(図示せず)において熱処理が行われてもよい。
【0098】
実施の形態では、基板W1、W2同士を真空中で接合する構成について説明したが、これに限らず、基板W1、W2同士を大気圧下で接合する構成であってもよいし、或いは、任意の気体が充填された雰囲気下で接合する構成であってもよい。
【0099】
実施の形態では、ロードロック室83に、基板W1、W2を支持するステージを冷却する冷却装置が設けられた構成について説明したが、これに限らず、ロードロック室83に冷却装置が設けられていない構成であってもよい。
【0100】
前述の変形例では、活性化処理装置3002が粒子ビーム源3061を備える例について説明したが、これに限らず、例えば反転装置4が粒子ビーム源を備えるものであってもよい。
【0101】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【0102】
本出願は、2020年9月30日に出願された日本国特許出願特願2020-164962号に基づく。本明細書中に日本国特許出願特願2020-164962号の明細書、特許請求の範囲および図面全体を参照として取り込むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、例えばCMOS(Complementary MOS)イメージセンサやメモリ、演算素子、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の製造に好適である。
【符号の説明】
【0104】
1:基板接合装置、2,3002,4002,5002,6002:活性化処理装置、3:洗浄装置、4:反転装置、9:制御部、82:第1搬送装置、83:ロードロック室、84:第2搬送装置、120、212,3212,4212:チャンバ、121,201:真空ポンプ、122B,202A:排気管、123B,203A:排気弁、141,210,3210:ステージ、142:ヘッド、143,3623:ステージ駆動部、144:ヘッド駆動部、148:圧力センサ、150:位置ずれ量測定部、213,3213:プラズマチャンバ、215:誘導コイル、216:高周波電源、217,6216:バイアス印加部、220A:窒素ガス供給部、220B:酸素ガス供給部、221A:窒素ガス貯留部、221B:酸素ガス貯留部、222A,222B:供給弁、223A,223B:供給管、811,812:導入ポート、813:取り出しポート、821,841:搬送ロボット、1411,1421:基板加熱部、3061:粒子ビーム源、3063:ビーム源搬送部、3212a:孔、3611,6215:電極、3612:放電室、3612a:FAB放射口、3613:ビーム源駆動部、3614:ガス供給部、3631:支持棒、3632:支持体、3633:支持体駆動部、3634:ベローズ、4213:ガラス窓、4214,5214:トラップ板、4215:導波管、4216:マグネトロン、BL1:ブレード、W1,W2:基板
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
図17
図18