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  • 特開-ロータリーキルン用敷板アセンブリ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090840
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】ロータリーキルン用敷板アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F27B 7/22 20060101AFI20240627BHJP
   C22B 19/02 20060101ALI20240627BHJP
   C22B 19/38 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
F27B7/22
C22B19/02
C22B19/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206983
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】近藤 孝史
(72)【発明者】
【氏名】島田 康平
【テーマコード(参考)】
4K001
4K061
【Fターム(参考)】
4K001AA30
4K001BA14
4K001GA07
4K061AA08
4K061BA01
4K061BA02
4K061BA12
4K061CA16
4K061CA23
4K061DA01
(57)【要約】
【課題】 摩耗やスラスト阻止材の脱落の問題を抑えることが可能なロータリーキルン用の敷板アセンブリを提供する。
【解決手段】 ロータリーキルンの炉体1とタイヤ2との間隙部に周方向に等間隔に設けられる複数の敷板アセンブリ10であって、それらの各々は、略長方形板状の敷板11と、敷板11の表面に溶接された1対の角柱状のスラスト阻止材12と、敷板11の長手方向両端部からそれぞれ立設して1対のスラスト阻止材12の長手方向中央部にそれぞれ接合する1対の略L字形状の補強材13と、炉体1の外周面のうち敷板11の4つの角部の近接位置にそれぞれ溶接された4個の敷板ストッパー14と、4個の敷板ストッパー14からそれぞれ立設して1対のスラスト阻止材12の両端部におけるタイヤ2の対向面とは反対側の面にのみそれぞれ当接しうる4個の押え部材15とからなる。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリーキルンの炉体の外周面と、前記炉体の軸方向の少なくとも両端部に同芯軸状に設けられるタイヤの内周面との間隙部において、前記炉体の周方向に等間隔に設けられる複数の鉄製の敷板アセンブリであって、前記複数の敷板アセンブリの各々は、両端部が前記タイヤの両側から突出するようにして前記間隙部に差し込まれる略長方形板状の敷板と、前記タイヤを挟んで互いに対向するように前記敷板の表面に溶接された1対の角柱状のスラスト阻止材と、前記敷板の長手方向両端部からそれぞれ立設して前記1対のスラスト阻止材の長手方向中央部にそれぞれ接合する1対の略L字形状の補強材と、前記炉体の外周面のうち前記敷板の4つの角部の近接位置にそれぞれ溶接された4個の敷板ストッパーと、前記4個の敷板ストッパーからそれぞれ立設して前記1対のスラスト阻止材の両端部における前記タイヤの対向面とは反対側の面にのみそれぞれ当接しうる4個の押え部材とからなることを特徴とするロータリーキルン用敷板アセンブリ。
【請求項2】
前記4個の敷板ストッパーの各々は、最も近接位置にある前記角部を構成する前記敷板の長手方向端面及び幅方向端面に対向するように平面視略L字型状を有していることを特徴とする、請求項1に記載のロータリーキルン用敷板アセンブリ。
【請求項3】
前記押え部材は、その当接側の先端部に当接用部材が取り付けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のロータリーキルン用敷板アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーキルン用敷板アセンブリに関するものである。
【背景技術】
【0002】
円筒状の炉体を横向きにして回転可能に支持した構造のロータリーキルンは、大量の粉粒状の被処理物を比較的低コストで熱処理できるので、非鉄金属産業、セメント産業、化学工業、廃棄物処理業などの様々な産業分野で広く利用されている。例えば、電炉ダスト、鉄鋼ダスト、亜鉛めっきスラッジ、キュポラダスト等の鉄系廃棄物から亜鉛に代表される低沸点の金属を回収するウェルツキルン法にロータリーキルンが用いられている。
【0003】
上記のウェルツキルン法は、ロータリーキルンに装入した亜鉛を含有する鉄系廃棄物を1000~1500℃程度の高温の還元雰囲気下において還元焙焼処理し、その際、該鉄系廃棄物に含まれる亜鉛酸化物から還元揮発により発生する亜鉛蒸気が再酸化することで微粉末状の酸化亜鉛を生成するものである。生成された微粉末状の酸化亜鉛は排ガスと共に該ロータリーキルンから排出されるので、粗酸化亜鉛ダストとして集塵機等において回収することができる。なお、回収した粗酸化亜鉛ダストは湿式精製工程においてハロゲン等の不純物が除去された後、乾燥加熱キルンにてカ焼されることで、亜鉛製錬の原料となる粗酸化亜鉛焼鉱を生成することができる。
【0004】
上記のウェルツキルン法で使用されるロータリーキルンのように、工業的規模で用いられる大型のロータリーキルンは、その円筒状の炉体(シェルとも称する)のサイズが一般的に外径数メートル程度、長さ数十メートル程度にまで及ぶため、該炉体の外周部には、その軸方向の少なくとも両端部にタイヤと称する円環体が同芯軸状に設けられており、各タイヤは2個の受けローラーによって回転可能に支持されている。
【0005】
上記炉体の外周部には、更にガースギアと称する円環状の歯車が同芯軸状に設けられており、このガースギアに噛合するモーター駆動のピニオンギアによって、操業時は0.1~2rpm程度の回転速度で該炉体を回転させる。上記の炉体はその軸心が水平方向から僅かに傾けられているので、該炉体の一端部から炉内に装入された被処理物は、上記の炉体の回転に伴って撹拌されながら徐々に他端部に向かって移動し、その間に、該他端部に設けたバーナーの燃焼ガスによって熱処理が施される。
【0006】
ロータリーキルンの炉体内では、上記のように高温で被処理物の熱処理が行なわれるのでタイヤよりも炉体の温度が高くなり、これらタイヤと炉体とに熱膨張差が生じる。この熱膨張差による熱応力でロータリーキルンが破損しないように、ロータリーキルンはその炉体の外径がタイヤの内径よりも小さくなるように作製されており、これら炉体の外周面とタイヤの内周面との間隙部に、炉体の周方向に均等な間隔をあけて複数の略矩形板状の敷板(ライナー又は座金とも称する)が差し込まれている。
【0007】
例えば特許文献1には、ロータリーキルンの胴体の外周部と、該外周部に嵌挿されたタイヤの内周部との間隙部に、該胴体の全周に亘って略等間隔に複数のライナーを配置すると共に、該タイヤがロータリーキルンの軸方向に移動するのを防止するため、該ライナーの表面に金属製のスラスト阻止材が設けられている。更に、該スラスト阻止材がライナーから浮き上がったり傾いたりすることを防止するため、これらスラスト阻止材とライナーとを互いに抑え金物で接続する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実公昭49-024593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のロータリーキルンの炉体の外周面とタイヤの内周面との間隙部に設ける敷板は、炉体の外周面に溶接等により接合することがある。この場合、熱処理条件によっては炉体と敷板との温度差により熱応力が生じて敷板が変形することがあった。そこで、略矩形板状の敷板を炉体に接合させずに、該炉体の外周面のうち敷板の4つ角部のそれぞれ近接位置に、該炉体の外周面に沿った敷板の摺動領域を画定する敷板ストッパーを設ける技術が採用されている。これにより、炉体と敷板とに温度差が生じても、該敷板は該炉体の外周面上の限られた範囲内で摺動できるので、該敷板に熱応力がかかるのを防ぐことが可能になる。
【0010】
ところで、上記の敷板を備えたロータリーキルンにおいては、炉体とタイヤとの温度差により熱膨張差が生じたときにそれらに熱応力がかからないように、タイヤの内周面と、これに対向する敷板の表面との間には僅かな隙間が確保されている。このため、タイヤと炉体とは周方向に互いに僅かにずれながら回転することがある。また、前述したようにロータリーキルンの炉体はその軸心を水平方向から僅かに傾けた姿勢で回転可能に支持されているので、回転時にタイヤに対して炉体がその軸方向(スラスト方向とも称する)に少しずつ相対移動することがある。そこで上記の敷板の表面には、敷板の長手方向端部からタイヤがはみ出るのを防ぐため、例えば角柱状のスラスト阻止材が隅肉溶接により取り付けられている。
【0011】
前述したように、ロータリーキルンはその炉体とタイヤとが周方向に互いに僅かにずれながら回転するため、該炉体に対して該タイヤがスラスト方向に相対的に移動してその側面がスラスト阻止材に当接すると、これらタイヤの側面とこれに対向するスラスト阻止材の側面とが互いに摺接しながら回転することになる。その結果、これらの一方又は両方が著しく摩耗したり、スラスト阻止材が敷板から脱落したりする問題が生じることがあった。本発明はロータリーキルンが抱える上記問題に鑑みてなされたものであり、ロータリーキルンの炉体に対してタイヤがスラスト方向に相対的に移動してその側面がスラスト阻止材の側面に当接し、これらタイヤ及びスラスト阻止材が摺接しながら回転することで生じる上記の摩耗やスラスト阻止材の脱落の問題を抑えることが可能な敷板アセンブリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係るロータリーキルン用敷板アセンブリは、ロータリーキルンの炉体の外周面と、前記炉体の軸方向の少なくとも両端部に同芯軸状に設けられるタイヤの内周面との間隙部において、前記炉体の周方向に等間隔に設けられる複数の鉄製の敷板アセンブリであって、前記複数の敷板アセンブリの各々は、両端部が前記タイヤの両側から突出するようにして前記間隙部に差し込まれる略長方形板状の敷板と、前記タイヤを挟んで互いに対向するように前記敷板の表面に溶接された1対の角柱状のスラスト阻止材と、前記敷板の長手方向両端部からそれぞれ立設して前記1対のスラスト阻止材の長手方向中央部にそれぞれ接合する1対の略L字形状の補強材と、前記炉体の外周面のうち前記敷板の4つの角部の近接位置にそれぞれ溶接された4個の敷板ストッパーと、前記4個の敷板ストッパーからそれぞれ立設して前記1対のスラスト阻止材の両端部における前記タイヤの対向面とは反対側の面にのみそれぞれ当接しうる4個の押え部材とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ロータリーキルンの炉体に対してタイヤがスラスト方向に相対的に移動してその側面が敷板アセンブリのスラスト阻止材の側面に当接しても、これらタイヤとスラスト阻止材とが互いに摺接しながら回転するのを抑えることができるので、これらタイヤやスラスト阻止材が摩耗したりスラスト阻止材が脱落したりする問題を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の敷板アセンブリが好適に設けられるロータリーキルンの模式的な側面図である。
図2図1のロータリーキルンのII-II面断面図である。
図3図1のロータリーキルンのうちタイヤが設けられている部分の部分斜視図である。
図4図1に示すロータリーキルンの炉体の外周面とタイヤの内周面との間隙部に設けた本発明の実施形態の敷板アセンブリの部分斜視図である。
図5図4の敷板アセンブリの平面図である。
図6】従来の敷板アセンブリの部分側面図である。
図7】本発明の実施形態の敷板アセンブリの部分平面図及び部分側面図である。
図8】本発明のロータリーキルン用敷板アセンブリの変形例である。
図9】本発明の実施形態の敷板アセンブリが具備する押え部材の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
先ず、本発明の実施形態の敷板アセンブリが好適に設けられるロータリーキルンの一具体例について、亜鉛を含む融点1000~1100℃程度の鉄鋼ダストをウェルツキルン法により1日当たり180~240トン処理して粗酸化亜鉛を生成する場合を例に挙げて図1を参照しながら説明する。この図1に示すロータリーキルンは、内壁面が耐火レンガなどの耐火材で内張りされた円筒体を横向きにした構造の炉体1からなり、その外周部には2個のタイヤ2が軸方向に互いに離間して設けられている。これら2個のタイヤ2の各々は、2個の受けローラー3によって回転可能に支持されている。
【0016】
上記の2個のタイヤ2の各々の側面に対向する位置には、炉体1の中心軸Oに対して直交する方向に回転軸を有する切頭円錐形状のスラストローラー4が設けられており、これらスラストローラー4によって、炉体1の位置はその中心軸O方向の所定の範囲から外れないように制御されている。更に、上記の炉体1の外周部における上記2個のタイヤ2の間には、略円環状のガースギア5が炉体1に同芯軸状に設けられており、このガースギア5にモーター駆動のピニオンギア6が噛合している。
【0017】
上記の構成により、紙面左側の装入端側に設けられているロータリーキルンの装入口7からコークス等の還元剤と共に炉体1内に装入された原料の鉄鋼ダストは、ピニオンギア6によって回転するガースギア4と共に回転する炉体1の内側において撹拌されながら紙面右側の排出端側に向かって徐々に移動する。その際、炉体1の排出端側のバーナー8における燃料及び還元剤の燃焼によって生じる好ましくは1000~1400℃程度、より好ましくは1100~1200℃程度の高温の雰囲気により鉄鋼ダストは還元焙焼される。
【0018】
上記の鉄鋼ダストの還元焙焼の際に揮発により生ずる亜鉛蒸気は、気相中で酸素により酸化されて微粉末状の粗酸化亜鉛になる。この粗酸化亜鉛の微粉末は、排ガスと共に炉体1の装入端部からダクト9を介して排出され、図示しない電気集塵機等において粗酸化亜鉛ダストとして回収される。一方、上記の鉄鋼ダストの還元焙焼後にロータリーキルンの炉体1内に残留する残渣は、クリンカーとしてロータリーキルンの炉体1の排出端部から排出される。
【0019】
上記のように、ロータリーキルンの炉体1内では被処理物に対して1000℃を超える高温で熱処理を行うので、これにより生ずる炉体1とタイヤ2との熱膨張差による破損を防ぐため、タイヤ2の内径が炉体1の外径よりも大きくなるように製作されており、これら炉体1とタイヤ2とを同芯軸状に維持するため、それらの間隙部に図2及び図3に示すように複数の鉄製の敷板アセンブリ10が炉体1の周方向に等間隔に設けられている。なお、図2では16個の敷板アセンブリ10を周方向に等間隔に設けた例が示されているが、敷板アセンブリ10の個数はこれに限定されるものではない。
【0020】
上記の複数の敷板アセンブリ10の各々は、図4及び図5に示すように、タイヤ2の幅方向両側から突出するようにして上記間隙部に差し込まれる例えば長さ550~850mm、幅200~350mm、厚み25~40mmの略長方形板状の鉄製の敷板11と、タイヤ2を挟んで互いに対向するように敷板11の表面に溶接された例えば縦25~40mm、横25~40mmの矩形の断面を有し、敷板11の幅方向の長さの0.7~1.0倍程度の長さを有する互いに平行な1対の鉄製の四角柱状のスラスト防止材12と、これら1対のスラスト阻止材12が敷板11から浮き上がったり脱落したりするのを防止すべく、敷板11の表面の長手方向両端部からそれぞれ立設すると共に1対のスラスト阻止材12の長手方向中央部にそれぞれ溶接された例えば高さ100~160mm、長さ120~180mm、厚み25~40mmの1対の略L字形状の鉄製の補強材13と、炉体1の外周面に沿った敷板11の摺動領域を画定すべく、炉体1の外周面のうち敷板11を平面視したときの4つの角部のそれぞれ近接位置に溶接された平面視略L字形状の4個の鉄製の敷板ストッパー14と、これら4個の敷板ストッパー14のそれぞれの表面から立設すると共にそれぞれ最も近くに位置するスラスト阻止材12の端部におけるタイヤ2の側面2aとの対向面12aとは反対側の非対向面12bにのみ当接する例えば縦長さ40~60mm、横長さ15~25mmの矩形当接面を有し、部材全体の長さ70~110mm、厚み15~25mmの略L字状の鉄製の押え部材15とから構成される。
【0021】
かかる構成により、炉体1のスラスト方向にタイヤ2が相対的に移動してその側面2aがこれに対向するスラスト阻止材12におけるタイヤ2との対向面12aに当接したとき、このスラスト阻止材12にはこの対向面12aとは反対側の非対向面12bに押え部材15が当接しているので、タイヤ2がそれ以上スラスト方向に相対的に移動するのを阻止できる。これにより、タイヤ2と敷板11とを一緒に回転させることができるので、ロータリーキルンの回転の際にタイヤ2とスラスト阻止材12とが互いに摺動する頻度を大きく減らすことができる。その結果、これらタイヤ2やスラスト阻止材12が摩耗したり、スラスト阻止材12が敷板11から脱落したりするのを抑えることができる。
【0022】
すなわち、従来のロータリーキルンの敷板アセンブリ110では、図6に示すようにタイヤ2がスラスト阻止材112と離間する位置Aからスラスト方向に少しずつ移動し、スラスト阻止材112におけるタイヤ2の側面2aとの対向面112aに当接する位置Bに到達しても、スラスト阻止材112にはタイヤ2との対向面112aとは反対側の非対向面112bに当接する押え部材がないので、タイヤ2はそのまま敷板111と共にスラスト方向に更に移動して敷板111の端面が敷板ストッパー14に当接する位置Cに到達する。この間、タイヤ2はその側面2aをスラスト阻止材112の対向面112aに摺接させながら回転することになる。その結果、スラスト阻止材112と敷板111との溶接部のうちタイヤ2との対向面112a側が摩耗により減肉し、最終的に1点鎖線で示すようにスラスト阻止材112が敷板111から浮き上がったり脱落したりすることがあった。
【0023】
これに対して、本発明の実施形態の敷板アセンブリ10は、図7(a)、(b)に示すように、タイヤ2がスラスト阻止材12と離間する位置Aからスラスト方向に少しずつ移動してスラスト阻止材12と当接する位置Bに到達したとき、前述したようにスラスト阻止材12の非対向面12bに当接する押え部材15が設けられているので、タイヤ2がスラスト阻止材12を押しても、この押す方向とは反対の方向に押え部材15がスラスト阻止材12を押し返すので、万一スラスト阻止材12のタイヤ2側の溶接部が摩耗により減肉しても敷板11から浮き上がるのを抑えることができる。
【0024】
また、押え部材15の先端の当接面の面積は、前述した敷板ストッパー14に当接する敷板11の端面の当接面積よりも狭いので、スラスト阻止材12におけるタイヤ2との非対向面12bに対して、この押え部材15をその先端の当接面で確りと当接させることができる。これにより、前述したように、ある程度タイヤ2と敷板11とを一緒に回転させることができるので、従来の敷板アセンブリに比べてタイヤ2の側面2aがスラスト阻止材12におけるタイヤ2との対向面12aに摺接しながら回転する頻度を減らすことが可能になる。なお、タイヤ2の側面2aがスラスト阻止材12に当接し、ロータリーキルンが一方の軸方向の上限位置に達したときはロータリーキルンの炉体1の下側において炉体1の回転軸と直交するように設けられているスラストローラー5に接触するので、このスラストローラーを回転させることでタイヤ2のスラスト方向の力を緩和させることができる。
【0025】
以上、本発明の敷板アセンブリ10の実施形態について説明したが、本発明の敷板アセンブリは上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更例や代替例などを含むことができる。例えば炉体1の外周面に沿って敷板が自在に摺動するのを規制する敷板ストッパーは、図5の略L字形状のものに限定されるものではなく、図8に示すように、炉体1の外周面のうち、敷板11を平面視したときの4つの角部の各々における敷板11の長手方向の端面及び幅方向の端面にそれぞれ対向する位置に、敷板11の長手方向及び幅方向の移動をそれぞれ規制する第1敷板ストッパー24a及び第2敷板ストッパー24bを溶接してもよい。この場合は、第1敷板ストッパー24aの1個当たり1個の押し部材15を設けることになる。
【0026】
なお、図5に示す略L字型形状の敷板ストッパー14及び図8に示す第1敷板ストッパー24aのいずれにおいても、1個のストッパーに1個の押し部材15を設けることで、スペースに限りがある敷板アセンブリの設置場所であるにもかかわらず、敷板アセンブリを構成する各部材の点検作業や保守作業等を行うための作業空間を確保しつつ、炉体1のスラスト方向におけるタイヤ2の移動を阻止できる強度を有する十分な厚みを有する押え部材15を取り付けることができる。
【0027】
また、本発明の実施形態の敷板アセンブリ10においては、図9に示すように、押え部材25の先端部におけるスラスト阻止材12との当接部分に例えば柱状又は略直方体形状の当接用部材26を設けるのが好ましい。これにより、摺接により最も摩耗しやすいスラスト阻止材12との当接部分に例えば高硬度の材質で形成した当接用部材26を設けたり、押し部材25に対して当接用部材26を着脱可能にしたりすることで、敷板アセンブリの点検保守作業を簡素化することが可能になる。
【符号の説明】
【0028】
1 炉体(シェル)
1a 耐火材
2 タイヤ
2a タイヤ側面
3 受けローラー
4 スラストローラー
5 ガースギア
6 ピニオンギア
7 装入口
8 バーナー
9 ダクト
O 中心軸
10、110 敷板アセンブリ
11、111 敷板
12、112 スラスト阻止材
12a、112a 対向面
12b、112b 非対向面
13 補強材
14、24、114 敷板ストッパー
24a 第1敷板ストッパー
24b 第2敷板ストッパー
15、25 押え部材
26 当接用部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9