(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090870
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】積層体及び積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240627BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20240627BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20240627BHJP
B29C 65/48 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B32B27/00 D
B32B27/00 H
B32B27/38
H05K3/46 T
B29C65/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207046
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】高橋 信行
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 勇人
【テーマコード(参考)】
4F100
4F211
5E316
【Fターム(参考)】
4F100AA17B
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(57)【要約】
【課題】熱耐久性に優れる積層体、並びに積層体の製造方法の提供。
【解決手段】第1の樹脂層(31)と、第1の導電層(32)と、絶縁層(33)と、第2の導電層(34)と、をこの順に備え、第1の樹脂層が収容部を有し、第1の導電層が、第1の樹脂層の収容部内に配置され、第1の導電層と絶縁層との間、及び絶縁層と第2の導電層との間の少なくともいずれかに、接着層(35)を備え、接着層が、熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂から選択される少なくとも一種である非晶性熱可塑性樹脂を主成分とする固形接合剤を含み、非晶性熱可塑性樹脂のエポキシ当量が1,600以上であるか、又は非晶性熱可塑性樹脂がエポキシ基を含まず、非晶性熱可塑性樹脂の融解熱が15J/g以下である、積層体。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂層と、
第1の導電層と、
絶縁層と、
第2の導電層と、
をこの順に備え、
前記第1の樹脂層が収容部を有し、
前記第1の導電層が、前記第1の樹脂層の前記収容部内に配置され、
前記第1の導電層と前記絶縁層との間、及び前記絶縁層と前記第2の導電層との間の少なくともいずれかに、接着層を備え、前記接着層が、熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂から選択される少なくとも一種である非晶性熱可塑性樹脂を主成分とする固形接合剤を含み、前記非晶性熱可塑性樹脂のエポキシ当量が1,600以上であるか、又は前記非晶性熱可塑性樹脂がエポキシ基を含まず、前記非晶性熱可塑性樹脂の融解熱が15J/g以下である、積層体。
【請求項2】
前記収容部が、凹状部又は凹凸状部を含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記第1の導電層、前記絶縁層及び前記第2の導電層が、前記第1の樹脂層の前記収容部内に配置される、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記第1の樹脂層が有する前記収容部の面積は、前記第1の導電層の面積以上である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項5】
前記第2の導電層の前記絶縁層とは反対側に第2の樹脂層を更に備え、
任意選択的に、前記第1の樹脂層と前記第1の導電層との間、及び前記第2の導電層と前記第2の樹脂層との間、の少なくとも1つに、前記接着層を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
前記第1の樹脂層が、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物である、請求項1から3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂が、不飽和ポリエステルを含む、請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
前記第1の樹脂層が、前記第1の導電層、前記絶縁層及び前記第2の導電層を固定する固定部を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項9】
収容部を有する第1の樹脂層と、前記第1の樹脂層の前記収容部内に配置された第1の導電層と、絶縁層と、第2の導電層とがこの順に配置された状態の積層体を準備する接合前工程であって、前記第1の導電層と前記絶縁層との間、及び前記絶縁層と前記第2の導電層との間の少なくともいずれかに、固形接合剤を配置し、前記固形接合剤が、熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂から選択される少なくとも一種である非晶性熱可塑性樹脂を主成分とする、接合前工程と、
前記積層体を加熱及び加圧して前記固形接合剤を溶融させ、前記第1の導電層と前記絶縁層とを接合し及び/又は前記絶縁層と前記第2の導電層とを接合する接合工程と、
を含む、積層体の製造方法であって、
前記非晶性熱可塑性樹脂のエポキシ当量が1,600以上であるか、又は前記非晶性熱可塑性樹脂がエポキシ基を含まず、前記非晶性熱可塑性樹脂の融解熱が15J/g以下である、積層体の製造方法。
【請求項10】
前記加熱及び加圧を、100℃~400℃及び0.01MPa~20MPaの条件で行う、請求項9に記載の積層体の製造方法。
【請求項11】
溶融前の前記固形接合剤が、フィルム、棒、ペレット及び粉体からなる群から選択されるいずれかの形状を有する、請求項9又は10に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体及び積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車等に搭載されるパワーモジュール(PM)は、樹脂成形品と金属との積層体(ハウジングとも呼ばれる)を備えている。
従来、ハウジングは、導電層及び絶縁層を金型内に、配置し、樹脂を金型内に射出し、成形(以下、インサート成形ともいう。)することにより製造されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、PMに用いるハウジングには、素子等がろう付けされた放熱板が接着される。
製造効率向上の観点から、放熱板のハウジングへの接着と、素子等の放熱板への接着とは同時に行われることが望まれる。しかしながら、素子等の放熱板へのろう付けにより、ハウジングに熱が加えられることとなる。
今般、本発明者らは、特許文献1において開示される従来のインサート成形により製造されるハウジングは、導電層が樹脂層に埋没しているため、積層体が高温環境下に静置された場合、加熱された場合等において、導電層と樹脂層との線膨張係数の差により生じる内部応力を十分に緩和することができず、クラックの発生、導電層及び樹脂層の変形等が生じ、その熱耐久性には改善の余地があることを見出した。
【0005】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、熱耐久性に優れる積層体、並びに積層体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1> 第1の樹脂層と、
第1の導電層と、
絶縁層と、
第2の導電層と、
をこの順に備え、
前記第1の樹脂層が収容部を有し、
前記第1の導電層が、前記第1の樹脂層の前記収容部内に配置され、
前記第1の導電層と前記絶縁層との間、及び前記絶縁層と前記第2の導電層との間の少なくともいずれかに、接着層を備え、前記接着層が、熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂から選択される少なくとも一種である非晶性熱可塑性樹脂を主成分とする固形接合剤を含み、前記非晶性熱可塑性樹脂のエポキシ当量が1,600以上であるか、又は前記非晶性熱可塑性樹脂がエポキシ基を含まず、前記非晶性熱可塑性樹脂の融解熱が15J/g以下である、積層体。
<2> 前記収容部が、凹状部又は凹凸状部を含む、前記<1>に記載の積層体。
<3> 前記第1の導電層、前記絶縁層及び前記第2の導電層が、前記第1の樹脂層の前記収容部内に配置される、前記<1>に記載の積層体。
<4> 前記第1の樹脂層が有する前記収容部の面積は、前記第1の導電層の面積以上である、前記<1>又は<2>に記載の積層体。
<5> 前記第2の導電層の前記絶縁層とは反対側に第2の樹脂層を更に備え、
任意選択的に、前記第1の樹脂層と前記第1の導電層との間、及び前記第2の導電層と前記第2の樹脂層との間、の少なくとも1つに、前記接着層を備える、前記<1>から<4>のいずれか1つに記載の積層体。
<6> 前記第1の樹脂層が、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物である、前記<1>から<5>のいずれか1つに記載の積層体。
<7> 前記熱硬化性樹脂が、不飽和ポリエステルを含む、前記<6>に記載の積層体。
<8> 前記第1の樹脂層が、前記第1の導電層、前記絶縁層及び前記第2の導電層を固定する固定部を有する、前記<1>から<7>のいずれか1つに記載の積層体。
<9> 収容部を有する第1の樹脂層と、前記第1の樹脂層の前記収容部内に配置された第1の導電層と、絶縁層と、第2の導電層とがこの順に配置された状態の積層体を準備する接合前工程であって、前記第1の導電層と前記絶縁層との間、及び前記絶縁層と前記第2の導電層との間の少なくともいずれかに、固形接合剤を配置し、前記固形接合剤が、熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂から選択される少なくとも一種である非晶性熱可塑性樹脂を主成分とする、接合前工程と、
前記積層体を加熱及び加圧して前記固形接合剤を溶融させ、前記第1の導電層と前記絶縁層とを接合し及び/又は前記絶縁層と前記第2の導電層とを接合する接合工程と、
を含む、積層体の製造方法であって、
前記非晶性熱可塑性樹脂のエポキシ当量が1,600以上であるか、又は前記非晶性熱可塑性樹脂がエポキシ基を含まず、前記非晶性熱可塑性樹脂の融解熱が15J/g以下である、積層体の製造方法。
<10> 前記加熱及び加圧を、100℃~400℃及び0.01MPa~20MPaの条件で行う、<9>に記載の積層体の製造方法。
<11> 溶融前の前記固形接合剤が、フィルム、棒、ペレット及び粉体からなる群から選択されるいずれかの形状を有する、<9>又は<10>に記載の積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施形態によれば、熱耐久性に優れる積層体、並びに積層体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の積層体の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本開示の積層体の他の実施形態を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本開示の積層体の一実施形態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本開示の積層体の他の実施形態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、本開示の積層体の他の実施形態を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本開示の積層体が備える第1の樹脂層の一実施形態を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、本開示の積層体が備える第1の樹脂層の一実施形態を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、本開示の積層体の他の実施形態を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、第1部材と第2部材とが固形接合剤を含む接着層を介して接合された状態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明表した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0010】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。 本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい
また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本開示において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
本開示において、接合とは、物と物を繋ぎ合わせることを意味し、接着及び溶着はその下位概念である。接着とは、テープ、接着剤などの有機材料(硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等)を介して、2つの被着材(接着しようとするもの)を接合状態とすることを意味する。溶着とは、熱可塑性樹脂等の表面を熱によって溶融し、接触加圧及び冷却を行う過程で生じる、分子拡散による絡み合いと結晶化、又は溶融時に生じる基材との分子間相互作用を利用して接合することを意味する。
【0011】
[積層体]
本開示の積層体は、第1の樹脂層と、第1の導電層と、絶縁層と、第2の導電層とをこの順に備え、第1の樹脂層が収容部を有し、第1の導電層が、第1の樹脂層の収容部内に配置される。
【0012】
本開示の積層体は熱耐久性に優れる。上記効果が奏される理由は明らかではないが、以下のように推測される。
本開示の積層体は、インサート成形ではなく、各層を個別に作製し、積層することによる製造が可能である。そのため、インサート成形により製造した積層体では、第1の樹脂層に第1の導電層が埋没し、完全に密着しているのに対し、本開示の積層体では、第1の樹脂層が収容部を有しているため、第1の導電層との間が完全には密着しておらず、加熱時において生じる内部応力の緩和が可能となる。これにより、クラックの発生、及び導電層及び樹脂層の変形を抑制することができ、熱耐久性が向上すると推測される。
また、第1の樹脂層は、収容部を有するが、これは、インサート成形では形成することが難しく、これにより熱耐久性が向上すると推測される。
【0013】
本開示の積層体は、第2の導電層の絶縁層とは反対側に第2の樹脂層を更に備えることができる。
【0014】
本開示の積層体は、第1の導電層と絶縁層との間、及び絶縁層と第2の導電層との間の少なくとも1つに接着層を備えており、さらに任意選択的に、第1の樹脂層と第1の導電層との間、及び第2の導電層と第2の樹脂層との間の少なくとも1つに、接着層を備えていてもよい。
熱耐久性の観点から、接着層は、第1の樹脂層の収容部内に配置されることが好ましい。
【0015】
本開示の積層体は、第1の導電層の第1の樹脂層側表面又は第2の導電層の第2の樹脂層側表面に放熱板を備えていてもよい。
熱耐久性の観点から、放熱板は、第1の樹脂層の収容部内に配置されることが好ましい。
【0016】
(第1の樹脂層)
第1の樹脂層は、収容部を有し、第1の導電層は収容部内に配置される、
熱耐久性の観点から、収容部は、凹状部又は凹凸状部を含むことが好ましい。
収容部が凹凸状部を含むとは、収容部が凹状部及び凸状部を含むことを意味する。凹状部は、階段状であってもよい。
【0017】
熱耐久性の観点から、第1の導電層、絶縁層及び第2の導電層は、第1の樹脂層の収容部内に配置されることが好ましい。
収容部が階段状の凹状部を含む場合、第1の導電層、絶縁層及び第2の導電層は、同一の階層に収容されていてもよく、異なる階層に収容されていてもよい。
図3~
図5においては、第1の導電層と、絶縁層及び第2の導電層とが階段状の凹状部の異なる階層に収容された態様について示す。
【0018】
また、第1の樹脂層は、収容部を1つ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。
図6に示す第1の樹脂層100は、複数の収容部101を有している。
図6に示す第1の樹脂層100が有する各収容部101は、凹状部102A及び凸状部102Bを含む。
第1の樹脂層が複数の収容部を有している場合、
図7に示すように一部の収容部に第1の導電層105を配置してもよく、すべての収容部に第1の導電層105を配置してもよい。
また、絶縁層及び第2の導電層は、すべての収容部に配置された第1の導電層に積層されている必要はないが、
図8に示すように、収容部に配置された第1の導電層のすべてに積層されていてもよい。なお、
図8において、絶縁層は図示せず、第2の導電層を符号106で示す。
【0019】
第1の樹脂層が有する収容部の面積は、第1の導電層の面積以上あることが好ましい。第1の樹脂層が有する収容部の面積に対する、第1の導電層の面積の比(第1の導電層の面積/第1の樹脂層が有する収容部)は、1.01以上であることが好ましい。これにより、第1の導電層の第1の樹脂層の収容部への配置を容易に行うことができる。また、面積比は、2.00以下であることが好ましい。これにより、第1の導電層の第1の樹脂層上における位置ずれの発生を抑制することができる傾向にある。
第1の樹脂層が収容部を有する場合、その大きさは、第1の導電層の大きさ、積層体の用途等に応じ適宜変更することが好ましい。収容部の面積は、例えば、1cm2~1000cm2とすることができる。
収容部の深さは、少なくとも第1の導電層の厚さ以上であることが好ましく、第1の導電層、絶縁層及び第2の導電層の厚さの合計以上であることがより好ましく、第1の導電層、絶縁層、第2の導電層及び接着層の厚さの合計以上であることが更に好ましく、第1の導電層、絶縁層、第2の導電層、接着層及び放熱板の厚さの合計以上であることが特に好ましい。収容部の厚さは、例えば、0.1mm~100mmとすることができる。
なお、収容部の深さは、1の導電層、絶縁層、第2の導電層、接着層及び放熱板の厚さの合計未満であってもよい。
【0020】
熱耐久性の観点から、第1の樹脂層は、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物であることが好ましい。
熱硬化性樹脂の種類は、特に限定されるものではなく、加熱による架橋反応に利用できる官能基を1分子中に1つ以上有する樹脂であればよい。官能基としては、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ヒドロキシ基、ビニル基、カルボキシ基、アミノ基、マレイミド基、酸無水物基、チオール基、チオニル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、不飽和イミド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂、レゾルシノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。上記した中でも、熱耐久性の観点から、不飽和ポリエステル、及びフェノール樹脂の中から選択される1つ以上を含むことが好ましく、不飽和ポリエステルを含むことがより好ましい。
樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を1種単独で含んでも、2種以上含んでいてもよい。
【0021】
不飽和ポリエステルは、多価アルコールと、不飽和多塩基酸、飽和多塩基酸等とを重縮合(エステル化)させることにより得ることができる。
【0022】
多価アルコールは、特に限定されるものではなく、従来公知のものを用いることができる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンタンジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールA、グリセリン等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
不飽和多塩基酸としては、特に限定されるものではなく、従来公知のものを用いることができる。不飽和多塩基酸としては、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等が挙げられる。これらは、単独又は複数を組み合わせて用いることができる。
飽和多塩基酸としては、特に限定されるものではなく、従来公知のものを用いることができる。飽和多塩基酸としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘット酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、テトラクロロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
不飽和ポリエステルは、上記原料を用いて公知の方法で合成したものを使用してもよく、市販されるものを使用してもよい。
不飽和ポリエステルは、窒素等の不活性ガス雰囲気において、140℃~230℃の温度にて、多価アルコールと、不飽和多塩基酸、飽和多塩基酸等とを重縮合させることにより得ることができる。重縮合反応は、加圧条件下又は減圧条件下で行ってもよい。
重縮合反応において、必要に応じて架橋剤、触媒を使用してもよい。
架橋剤としては、スチレンモノマー、ジアリルフタレートモノマー、ジアリルフタレートプレポリマー、メタクリル酸メチル、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。これらは、単独又は複数を組み合わせて用いることができる。
触媒としては、酢酸マンガン、ジブチル錫オキサイド、シュウ酸第一錫、酢酸亜鉛、酢酸コバルト等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
熱耐久性の観点からは、熱硬化性樹脂の数平均分子量は、1,000~10,000であることが好ましく、1,500~5,000であることがより好ましい。
本開示において、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0026】
熱耐久性の観点から、樹脂組成物の総質量に対する、熱硬化性樹脂の含有率は、10質量%~60質量%であることが好ましく、20質量%~50質量%であることがより好ましく、20質量%~40質量%であることが更に好ましい。
【0027】
樹脂組成物は、熱可塑性樹脂、エラストマー等を含んでいてもよい。
熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)等が挙げられる。
エラストマーの具体例としては、シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、ウレタンゴム等が挙げられる。
【0028】
樹脂組成物は、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、離型剤、難燃剤、着色剤、可塑剤、シランカップリング剤、防錆剤、銅害防止剤、還元剤、酸化防止剤、粘着付与樹脂、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤、溶剤等の各種添加剤を含んでもよい。
【0029】
第1の樹脂層は、第1の導電層、絶縁層及び第2の導電層を固定する固定部を有していてもよい。第1の樹脂層が固定部を有することにより、第1の導電層、絶縁層及び第2の導電層の第1の樹脂層上における位置ずれの発生を抑制することができる傾向にある。
【0030】
第1の樹脂層及び第2の樹脂層は、挿入部及び開口部のいずれか一方を有していてもよい。
第1の樹脂層が挿入部及び開口部のいずれか一方を有し、第2の樹脂層が少なくとも他方を有する場合、挿入部を開口部へ挿入することにより、第1の樹脂層及び第2の樹脂層の嵌め合わせを行うことができる。
【0031】
(第1の導電層及び第2の導電層)
第1の導電層及び第2の導電層は、金属及び金属酸化物の少なくとも一方を含むことができる。
金属としては、銀、金、銅、パラジウム、白金、チタン、クロム、ニッケル、アルミニウム、ジルコニウム、タングステン、バナジウム、ロジウム、イリジウム、これらの合金等が挙げられる。
金属酸化物としては、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)等が挙げられる。
【0032】
導電性の観点から、第1の導電層及び第2の導電層の平均厚さは、用途等に応じ適宜設定することができる。第1の樹脂層が有する凹状部又は凹凸状部への配置の容易性を考慮すると、0.1mm~10mmであることが好ましい。
本開示において、平均厚さは、測定器により、層の2点において厚さを測定し、これらの平均値とする。
【0033】
第1の導電層及び第2の導電層が含む材料、層の平均厚さ等は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0034】
(絶縁層)
絶縁層は、絶縁性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物であることが好ましい。
絶縁性樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等の硬化性樹脂などが挙げられる。
【0035】
光硬化性樹脂としては、光により架橋反応を起こす不飽和結合を1分子中に1つ以上有する樹脂であればよい。光硬化性樹脂の具体例としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂については上記したためここでは記載を省略する。
【0036】
樹脂組成物は、硬化剤、硬化促進剤、光重合開始剤、充填剤、離型剤、難燃剤、着色剤、可塑剤、シランカップリング剤、防錆剤、銅害防止剤、還元剤、酸化防止剤、粘着付与樹脂、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤、溶剤等の各種添加剤を含んでもよい。
【0037】
絶縁性の観点から、絶縁層の平均厚さは、用途等に応じ適宜設定することができる。第1の樹脂層が有する凹状部又は凹凸状部への配置の容易性を考慮すると、0.01mm~10mmであることが好ましい。
【0038】
(第2の樹脂層)
本開示の積層体は、第2の導電層の絶縁層とは反対側に第2の樹脂層を更に備えることができる。第2の樹脂層を備えることにより、第1の導電層、絶縁層及び第2の導電層の第1の樹脂層上における位置がずれてしまうことを抑制することができる。
第2の樹脂層は、凹状部、凸状部又は凹凸状部を有していてもよい。第2の樹脂層に設けられる凹状部、凸状部又は凹凸状部は、第2の導電層の形状に対応して設けられていてもよい。第2の樹脂層の凹状部と、第2の導電層の形状が対応することで、第2の樹脂層によって第2の導電層の位置を固定することができる。
例えば、第1の導電層、絶縁層及び第2の導電層の厚さの合計が第1の樹脂層の凹部の深さよりも大きい場合には、第2の導電層の形状に合わせた凹状部を第2の樹脂層に設けてもよい。この場合の第2の樹脂層の凹状部の面積は、第2の導電層の面積以上であることが好ましい
また、第1の導電層、絶縁層及び第2の導電層の厚さの合計が第1の樹脂層の凹部の深さよりも小さい場合には、第2の樹脂層には第2の導電層に対応する位置に凸状部を設けてもよい。凸状部は1個でも2以上の複数個であってもよい。
【0039】
第2の樹脂層は、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物であることが好ましい。熱硬化性樹脂及び樹脂組成物については、上記したためここでは記載を省略する。
【0040】
第2の樹脂層は、第1の導電層、絶縁層及び第2の導電層を固定する固定部を有していてもよい。第2の樹脂層が固定部を有することにより、第1の導電層、絶縁層及び第2の導電層の第1の樹脂層上における位置がずれてしまうことを抑制することができる傾向にある。
【0041】
(接着層)
本開示の積層体は、第1の導電層と絶縁層との間、絶縁層と第2の導電層との間、第1の樹脂層と第1の導電層との間、及び第2の導電層と第2の樹脂層との間の少なくとも1つに、接着層を備える。
いずれかの層間に設けた接着層のサイズを調整することにより、第1の樹脂層と第2の樹脂層とを接着してもよい。
【0042】
接着層は絶縁体の中間層を含んでもよく、その場合は接着層は接合材、中間層、接合材の3層であることが接着性と絶縁性の観点から好ましい。絶縁体の中間層を含むことで絶縁性のピンホールなどの欠陥ができにくく、絶縁性を上げることができる。
中間層の樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)フェノール樹脂等が挙げられる。
接着層は固体接合剤を含む。これにより、第1の樹脂層の表面に第1の導電層、接着層、絶縁層等を積層する際に、接着層の厚みが変化してしまうことを抑制することができ、第1の導電層と絶縁層との距離、第1の導電層と第2の導電層との距離、第2の導電層と絶縁層との距離等が変化してしまうことを抑制することができる。
【0043】
(固形接合剤)
固形接合剤は、熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂から選択される少なくとも一種である非晶性熱可塑性樹脂を主成分とし、前記非晶性熱可塑性樹脂のエポキシ当量は1,600以上であるか、又は前記非晶性熱可塑性樹脂はエポキシ基を含まず、前記非晶性熱可塑性樹脂の融解熱は15J/g以下である。
【0044】
前記固形接合剤の「固形」とは、常温で固体、すなわち23℃の加圧のない状態下において流動性がないことを意味する。前記固形接合剤は、23℃の加圧のない状態下において30日以上変形せずに外形を保持することができ、更に変質しない特性を備えることが望ましい。
【0045】
前記「主成分」とは、固形接合剤中の樹脂成分のうちで最も含有量の高い成分であって固形接合剤中の樹脂成分中における含有量が50質量%以上の成分を意味する。固形接合剤は、樹脂成分を50質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことが更に好ましく、90質量%以上含むことが特に好ましい。
【0046】
本開示における非晶性樹脂とは、融点(Tm)を有するが、示差走査熱量計(DSC)を用いた測定において、明確な融解に伴う吸熱ピークを有しない又は前記吸熱ピークが非常に小さい樹脂である。融解熱はDSCの吸熱ピークの面積と、熱可塑性樹脂成分の質量から算出される。無機充填剤などが固形接合剤に含まれる場合は、融解熱は、無機充填剤を除く樹脂成分の質量から算出される。
【0047】
具体的には、本開示における非晶性熱可塑性樹脂とは、以下の手順により測定される特性を有する樹脂を意味する。試料を2~10mg秤量し、アルミ製パンに入れ、DSC(株式会社リガク製DSC8231)で23℃から10℃/minで200℃以上まで昇温し、DSCカーブを得る。次いでそのDSCカーブから求めた融解時の吸熱ピークの面積と、前記秤量値から融解熱を算出したときに、融解熱が15J/g以下であるものを非晶性熱可塑性樹脂とみなす。
【0048】
固形接合剤に非晶性熱可塑性樹脂の特性を十分に付与する点から、前記非晶性熱可塑性樹脂の含有量は、固形接合剤中の樹脂成分のうち、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
【0049】
融解熱は、15J/g以下であり、11J/g以下であることが好ましく、7J/g以下であることがより好ましく、4J/g以下であることが更に好ましく、融解時の吸熱ピークが検出限界以下であることが最も好ましい。
【0050】
エポキシ当量は、1,600以上であり、2,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、9,000以上であることが更に好ましく、検出限界以上であってエポキシ基が実質的に検出されないことが最も好ましい。
【0051】
前記固形接合剤を用いることにより、加熱時に、従来のホットメルト接着剤で見られるような急激な粘度低下が起こらず、200℃を超える高温度領域においても低粘度(0.001~100Pa・s)状態には至らない。このため当該固形接合剤は溶融した状態でも積層体から流れ出すことはなく、接着層の厚みを安定して確保することができ、高い接着力を安定して得ることができる。
【0052】
本開示におけるエポキシ当量(エポキシ基1モルが含まれる前記樹脂の質量)は、接合前の固形接合剤に含まれる熱可塑性エポキシ樹脂又はフェノキシ樹脂成分のエポキシ当量の値であり、JIS K 7236:2001に規定された方法で測定された値(単位「g/eq.」)である。具体的には、樹脂のエポキシ当量は、電位差滴定装置を用い、溶媒としてシクロヘキサノンを使用し、臭素化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液を樹脂に加え、0.1mol/L過塩素酸-酢酸溶液を用いて測定される。溶媒希釈品(樹脂ワニス)については、不揮発分に基づいて固形分換算値としての数値として算出される。2種以上の樹脂の混合物のエポキシ当量は、それぞれの樹脂の含有量とエポキシ当量から算出することもできる。
【0053】
固形接合剤の主成分である非晶性熱可塑性樹脂の融点は50℃~400℃であることが好ましく、60℃~350℃であることがより好ましく、70℃~300℃であることが更に好ましい。融点が50℃~400℃の範囲であることにより、前記固形接合剤が加熱により効率よく変形及び溶融して接合面に有効に濡れ広がるため、高い接着力を得ることができる。本開示において、非晶性熱可塑性樹脂の融点とは、実質的に固体から軟化して熱可塑性を帯び、溶融と接着が可能となる温度を意味する。
【0054】
従来の熱硬化性の接着剤を含む接合体では、接合体を解体することが困難であり、接合体を構成する異種材を分別してリサイクルすることが難しい(すなわち、リサイクル性に劣る)。また、熱硬化性の接着剤を用いた場合、接合体の製造工程において接合箇所のズレ等があったとき、又は被着体に欠陥があり交換が必要なときに貼り直しが難しく(すなわち、リペア性に劣り)、利便性に欠ける。一方、前記固形接合剤は、熱で軟化及び溶融させることができ、容易に2つの被着体を分離することができるため、リサイクル性に優れる。また、前記固形接合剤は熱可塑性であるため、可逆的に軟化及び溶融と硬化(固化)を繰り返すことができ、リペア性にも優れる。
【0055】
《熱可塑性エポキシ樹脂》
熱可塑性エポキシ樹脂は、(a)2官能エポキシ樹脂モノマー又はオリゴマーと(b)フェノール性水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、イソシアネート基及びシアネートエステル基からなる群より選ばれる同一の又は異なる2つの官能基を有する2官能性化合物との重合体であることが好ましい。かかる化合物を使用することにより、直鎖状のポリマーを形成する重合反応が優先的に進行して、所望の特性を有する熱可塑性エポキシ樹脂を形成することが可能となる。
【0056】
前記(a)2官能エポキシ樹脂モノマー又はオリゴマーとは、分子内にエポキシ基を2個有するエポキシ樹脂モノマー又はオリゴマーをいう。前記(a)2官能エポキシ樹脂モノマー又はオリゴマーとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、2官能のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、2官能のナフタレン型エポキシ樹脂、2官能の脂環式エポキシ樹脂、2官能のグリシジルエステル型エポキシ樹脂(例えばジグリシジルフタレート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート、ダイマー酸ジグリシジルエステルなど)、2官能のグリシジルアミン型エポキシ樹脂(例えばジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジンなど)、2官能の複素環式エポキシ樹脂、2官能のジアリールスルホン型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂(例えばヒドロキノンジグリシジルエーテル、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテルなど)、2官能のアルキレングリシジルエーテル系化合物(例えばブタンジオールジグリシジルエーテル、ブテンジオールジグリシジルエーテル、ブチンジオールジグリシジルエーテルなど)、2官能のグリシジル基含有ヒダントイン化合物(例えば1,3-ジグリシジル-5,5-ジアルキルヒダントイン、1-グリシジル-3-(グリシドキシアルキル)-5,5-ジアルキルヒダントインなど)、2官能のグリシジル基含有シロキサン(例えば1,3-ビス(3-グリシドキシプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、α,β-ビス(3-グリシドキシプロピル)ポリジメチルシロキサンなど)及びそれらの変性物が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂が、反応性及び作業性の点から好ましい。
【0057】
前記(b)のフェノール水酸基を有する2官能性化合物としては、例えばカテコール、レゾルシン、ヒドロキノンなどのベンゼン環を1個有する一核体芳香族ジヒドロキシ化合物、ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールAD)などのビスフェノール化合物、ジヒドロキシナフタレンなどの縮合環を有する化合物、ジアリルレゾルシン、ジアリルビスフェノールA、トリアリルジヒドロキシビフェニルなどのアリル基を導入した2官能フェノール化合物、及びジブチルビスフェノールAが挙げられる。
【0058】
前記(b)のカルボキシル基を有する2官能性化合物としては、例えば、アジピン酸、コハク酸、マロン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸が挙げられる。
【0059】
前記(b)のメルカプト基を有する2官能性化合物としては、例えば、エチレングリコールビスチオグリコレート、及びエチレングリコールビスチオプロピオネートが挙げられる。
【0060】
前記(b)のイソシアネート基を有する2官能性化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、へキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、及びトリレンジイソシアネート(TDI)が挙げられる。
【0061】
前記(b)のシアネートエステル基を有する2官能性化合物としては、例えば、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)エタン、及びビス(4-シアナトフェニル)メタンが挙げられる。
【0062】
前記(b)の中でもフェノール水酸基を有する2官能性化合物が好適な特性を有する熱可塑性の重合物を形成できることから好ましく、フェノール性水酸基を2つ有し、ビスフェノール構造又はビフェニル構造を有する2官能性化合物が耐熱性及び接着性の観点から好ましく、ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールSが耐熱性及びコストの観点から好ましい。
【0063】
前記(a)がビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、又はビフェニル型エポキシ樹脂であり、前記(b)がビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールSである場合、前記(a)と(b)の重合により得られるポリマーは、パラフェニレン構造及びエーテル結合を主骨格として有し、それらがアルキレン基で連結された主鎖と、重付加により生成した水酸基が側鎖に配置された構造を有する。パラフェニレン構造及びエーテル結合を有する主骨格に起因する直鎖状の構造により、重合後のポリマーの機械的強度を高めることができるとともに、側鎖に配置された水酸基により、基材への密着性を向上させることができる。その結果、作業性を維持しながら、熱硬化性樹脂と同水準の高い接着強度を実現することができる。更に、熱で軟化及び溶融させることによってリサイクル及びリペアが可能となり、熱硬化性樹脂における問題点であるリサイクル性及びリペア性を改善することができる。
【0064】
《フェノキシ樹脂》
フェノキシ樹脂は、ビスフェノール化合物と、エピクロルヒドリンとから合成されるポリヒドロキシポリエーテルであり、熱可塑性を有する。フェノキシ樹脂の製造方法としては、二価フェノール化合物とエピクロルヒドリンの直接反応による方法、及び二価フェノール化合物のジグリシジルエーテルと二価フェノール化合物の付加重合反応による方法が知られているが、フェノキシ樹脂はいずれの製法により得られるものであってもよい。二価フェノール化合物とエピクロルヒドリンの直接反応の場合、二価フェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール、ビフェニレンジオール、フルオレンジフェニル等のフェノール化合物が挙げられる。これらの中でも、コスト、接着性、粘度及び耐熱性の観点から、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールSが好ましい。二価フェノール化合物に加えて、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等の脂肪族グリコールが上記直接反応に含まれてもよい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。フェノキシ樹脂は、エポキシ樹脂に類似の化学構造をもち、パラフェニレン構造及びエーテル結合を主骨格とし、それらが連結された主鎖と、水酸基が側鎖に配置された構造を有する。
【0065】
《熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂》
前記熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂の重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)測定によるポリスチレン換算の値で10,000~500,000であることが好ましく、18,000~300,000であることがより好ましく、20,000~200,000であることが更に好ましい。重量平均分子量はGPCによって検出される溶出ピーク位置から算出される標準ポリスチレン換算値である。重量平均分子量が上記範囲であると熱可塑性と耐熱性のバランスが良いため、効率よく溶融によって接合体を形成することができ、接合体の耐熱性を高めることもできる。重量平均分子量が10,000以上であると耐熱性に優れ、500,000以下であると溶融時の粘度が低く、接着性が高くなる。
【0066】
《固形接合剤の製造方法》
固形接合剤の製造方法は特に限定されないが、例えば、2官能エポキシ化合物のモノマー又はオリゴマーを加熱して重合させることで得ることができる。重合の際に粘度を低減させて撹拌しやすくするために溶媒を加えてもよい。溶媒を加える場合はその除去が必要であり、乾燥若しくは重合又はその両方を離型フィルムなどの上にて行うことで固形接合剤を得てもよい。
【0067】
必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で、固形接合剤にその他の添加剤を配合することができる。非晶性熱可塑性樹脂の全量に対する添加剤の配合量は、50体積%以下であることが好ましく、30体積%以下であることがより好ましく、20体積%以下であることが更に好ましく、10体積%以下であることが最も好ましい。本開示において添加剤の体積%とは、非晶性熱可塑性樹脂の全量の体積を基準とした、2官能エポキシ化合物のモノマー又はオリゴマーの重合前に含有されていた添加剤の体積比を表しており、添加剤の体積は、含有されていた添加剤の質量を添加剤の真比重で除して求めることができる。
【0068】
上記添加剤としては、例えば、粘度調整剤、無機フィラー、有機フィラー(樹脂粉体)、消泡剤、シランカップリング剤等のカップリング剤、及び顔料が挙げられる。これらの添加剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。粘度調整剤としては、例えば、反応性希釈剤が挙げられる。無機フィラーとしては、例えば、球状溶融シリカ、鉄などの金属の金属粉、珪砂、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、酸性白土、珪藻土、カオリン、石英、酸化チタン、シリカ、フェノール樹脂マイクロバルーン、及びガラスバルーンが挙げられる。
【0069】
このようにして得られた固形接合剤は、未反応のモノマー又は末端エポキシ基含有量が少ないか、未反応のモノマー又は末端エポキシ基を実質的に含まないため、貯蔵安定性に優れ、常温での長期保存も可能である。
【0070】
溶融前の固形接合剤の形態は特に限定されないが、フィルム、棒、ペレット及び粉体からなる群から選択されるいずれかの形状を有することが好ましい。固形接合剤の外形の少なくとも1辺が5mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることが更に好ましく、0.5mm以下であることが特に好ましく、0.3mm以下であることが最も好ましい。外形の少なくとも1辺が5mm以下である固形接合剤を、第1部材と第2部材の間に挟み、加熱及び加圧することで、固形接合剤が効率よく接着面に広がるため、高い接着力を得ることができる。
【0071】
溶融前の固形接合剤はフィルム形状を有することがより好ましい。フィルム形状の固形接合剤は、接合される部材同士を接合面全体にわたって所定の間隔で確実に保持しながらこれらの金属部材を接合することができる。そのため、フィルム形状の固形接合剤は、積層体の寸法安定性の観点から特に有利である。フィルム形状の固形接合剤の厚さは10μm~5mmであることが好ましく、20μm~3mmであることがより好ましく、30μm~0.5mmであることが更に好ましい。フィルム形状の固形接合剤の厚さを10μm以上とすることで、第1部材と第2部材との間の電食をより確実に防止し、かつ接着力を確保することができる。フィルム形状の固形接合剤の厚さを5mm以下とすることで、接合面のせん断方向の接着力を高めることができる。
【0072】
固形接合剤は、接着力及び耐熱性を阻害しない範囲で、タック性を有してもよい。その場合、積層体準備工程において、基材に対して前記固形接合剤を仮固定することができる。
【0073】
接着性の観点から、接着層の平均厚さは、1μm~5000μmであることが好ましく、20μm~1000μmであることがより好ましく、50μm~800μmであることが更に好ましい。
【0074】
(放熱板)
本開示の積層体は、第1の導電層の第1の樹脂層側表面又は第2の導電層の第2の樹脂層側表面に放熱板を備えていてもよい。
放熱板としては、従来公知のものを使用することができ、素子等が接着されていてもよい。
【0075】
(用途)
本開示の積層体は、パワーモジュール(PM)の作製に好適に使用することができる。
本開示の積層体の用途は、PM用途に限定されるものではなく、その他電装系部品、制御系部品、駆動系部品、弱電関係、家電、化粧部品等に使用することができる。
【0076】
以下、
図1~
図6を参照して、本開示の積層体等の一実施形態を説明する。なお、開示の積層体は、
図1~
図6に示す形態に限定されるものではない。
【0077】
図1は、本開示の積層体の一実施形態を示す斜視図であり、
図2は、本開示の積層体の他の実施形態を示す斜視図である。
図1及び
図2については、層間の接着層の表示を省略している。
図1に示す積層体10は、第1の樹脂層11と、第1の導電層12と、絶縁層13と、第2の導電層14と、第2の樹脂層16とをこの順に備える。
図2に示す積層体20は、第1の樹脂層21と、第1の導電層22と、絶縁層23と、第2の導電層24と、第2の樹脂層26とをこの順に備える。
図1及び
図2に示すように、第2の樹脂層は、開口を有していてもよい。これにより、第2の導電層等の表面に、放熱板等を配置することができる。開口の形状は、特に限定されるものではなく、用途に応じ適宜調整することが好ましい。
図1及び
図2に示すように、第1の導電層及び第2の導電層は、第1の樹脂層及び第2の樹脂層の外周から外に突出していてもよい。これにより、配線等の別部材と接続することができる。
【0078】
図3は、本開示の積層体の一実施形態を示す断面図である。
図3に示す積層体30は、第1の樹脂層31と、接着層35と、第1の導電層32と、接着層35と、絶縁層33と、接着層35と、第2の導電層34と、接着層35と、第2の樹脂層36とを備える。
図3に示すように、第1の樹脂層31は、階段状の凹状部を含む収容部を有しており、収容部内に、接着層35、第1の導電層32、接着層35、絶縁層33、接着層35、第2の導電層34及び接着層35が配置される。
図3においては、第1の導電層と、絶縁層及び第2の導電層とが階段状の凹状部の異なる階層に収容される。これにより、熱耐久性を向上することができる。
図3に示す積層体30において、第1の樹脂層31と第2の樹脂層36とは、接着層35により接着される。
【0079】
図4は、本開示の積層体の他の実施形態を示す断面図である。
図4に示す積層体40は、第1の樹脂層41と、接着層45と、第1の導電層42と、接着層45と、絶縁層43と、接着層45と、第2の導電層44と、接着層45と、第2の樹脂層46とを備える。
図4に示すように、第1の樹脂層41は、階段状の凹状部を含む収容部を有しており、収容部内に、接着層45、第1の導電層42、接着層45、絶縁層43、接着層45、第2の導電層44及び接着層45が配置される。
図4においては、第1の導電層と、絶縁層及び第2の導電層とが階段状の凹状部の異なる階層に収容される。これにより、熱耐久性を向上することができる。
また、
図4に示すように、第1の樹脂層41は挿入部47を有しており、第2の樹脂層46が有する開口部(図示せず)に挿入されている。
また、
図4に示す積層体40において、第1の樹脂層41と第2の樹脂層46とは、接着層45により接着される。
【0080】
図5は、本開示の積層体の他の実施形態を示す断面図である。
図5に示す積層体50は、第1の樹脂層51と、放熱板57と、接着層55と、第1の導電層52と、接着層55と、絶縁層53と、接着層55と、第2の導電層54と、接着層55と、第2の樹脂層56とを備える。
図5に示すように、第1の樹脂層51は、階段状の凹状部を含む収容部を有しており、収容部内に、放熱板57、接着層55、第1の導電層52、接着層55、絶縁層53、接着層55、第2の導電層54及び接着層55が配置される。
図5においては、第1の導電層と、絶縁層及び第2の導電層とが階段状の凹状部の異なる階層に収容される。これにより、熱耐久性を向上することができる。
また、
図5に示す積層体50において、第1の樹脂層51と第2の樹脂層56とは、接着層55により接着される。
【0081】
図6は、本開示の積層体が備える第1の樹脂層の一実施形態を示す斜視図である。
図6に示すように、第1の樹脂層100は、複数の収容部101を有しており、該収容部101は、凹状部102A及び凸状部102Bを含む。
また、第1の樹脂層100は、固定部103、開口部104を備える。
図6に示すように、第1の樹脂層100は、収容部101間に開口を有していてもよい。これにより、第1の樹脂層100に配置される第1の樹脂層等に対し、配線等の別部材を接続することができる。
【0082】
図3~
図6に示すように、接着層、第1の導電層、絶縁層及び第2の導電層の外周の大きさは異なっていてもよい。接着層、第1の導電層、絶縁層及び第2の導電層の外周の大きさは異なる場合、第1の樹脂層が有する凹状部を内周の大きさは、接着層、第1の導電層、絶縁層及び第2の導電層の中で最も大きい外周を有する層の外周の大きさ以上であることが好ましい。
【0083】
[積層体の製造方法]
本開示の積層体の製造方法は、少なくとも一方の表面に収容部を有する第1の樹脂層を準備する準備工程と、
上記第1の樹脂層の表面に、第1の導電層、絶縁層及び第2の導電層を積層する積層工程と、含み、
上記積層工程において、上記第1の樹脂層の上記収容部に、少なくとも上記第1の導電層を配置する。
【0084】
本開示の積層体の製造方法によれば、熱耐久性に優れる積層体を製造することができる。上記効果が奏される理由は明らかではないが、以下のように推測される。
本開示の積層体の製造方法は、インサート成形ではなく、各層を個別に作製し、積層することにより製造する。そのため、インサート成形により製造した積層体では、第1の樹脂層に第1の導電層が埋没し、完全に密着しているのに対し、本開示の製造方法により製造した積層体では、第1の樹脂層と第1の導電層との間が完全には密着しておらず、加熱時において生じる内部応力の緩和が可能となる。これにより、クラックの発生、及び導電層及び樹脂層の変形を抑制することができ、熱耐久性が向上すると推測される。
【0085】
本開示の積層体の製造方法は、第2の導電層の絶縁層とは反対側に第2の樹脂層を更に積層する第2の積層工程を含むことができる。
【0086】
(準備工程)
第1の樹脂層については、上記したためここでは記載を省略する。
第1の樹脂層の作製方法は特に限定されるものではなく、インサート成形等により作製することができる。
【0087】
(積層工程)
本開示の積層体の製造方法は、第1の樹脂層の表面に、第1の導電層、絶縁層及び第2の導電層を積層する積層工程を含む。
積層工程においては、第1の樹脂層の収容部に、少なくとも第1の導電層を配置する。樹脂層の収容部に、第1の絶縁層及び第2の導電層を配置することが好ましい。
【0088】
第1の樹脂層表面への第1の導電層、絶縁層及び第2の導電層の積層は、各層間に接着層を配置し、加熱することにより行うことができる。
各層間に接着層を配置する場合、積層工程において、第1の導電層、絶縁層及び第2の導電層と共に、接着層を第1の樹脂層の収容部に配置することが好ましい。
【0089】
積層工程において、第1の導電層の絶縁層とは反対側又は第2の導電層の絶縁層とは反対側に、放熱板を配置してもよい。
放熱板を配置する場合、積層工程において、第1の導電層、絶縁層及び第2の導電層と共に、放熱板を第1の樹脂層の収容部に配置することが好ましい。
【0090】
第1の導電層、第2の導電層、絶縁層、接着層及び放熱板については上記したためここでは記載を省略する。
第1の導電層、第2の導電層、絶縁層、接着層及び放熱板は、従来公知の方法により作製したものを使用してもよく、市販されるものを使用してもよい。
【0091】
(第2の積層工程)
第2の樹脂層については、上記したためここでは記載を省略する。
第2の樹脂層の作製方法は特に限定されるものではなく、インサート成形等により作製することができる。
【0092】
第2の樹脂層の積層は、第2の樹脂層と第2の導電層との間に接着層を配置し、加熱することにより行うことができる。
また、接着層により第1の樹脂層と第2の樹脂層とを接着してもよい。
【0093】
第1の樹脂層が挿入部及び開口部のいずれか一方を有し、第2の樹脂層が少なくとも他方を有する場合、挿入部を開口部へ挿入することにより、第1の樹脂層及び第2の樹脂層の嵌め合わせを行うことができる。
【0094】
固体接合剤を用いた積層工程及び第2の積層工程をより詳細に説明する。
【0095】
〈接合前工程〉
接合前工程では、第1部材と、熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂から選択される少なくとも一種である非晶性熱可塑性樹脂を主成分とする固形接合剤と、第2部材とが、この順に配置された状態の積層体を形成する。前記積層体において、第1部材と固形接合剤、及び固形接合剤と第2部材のいずれも互いに接合しておらず、それぞれ独立した部材が重ね合わせられた状態である。
【0096】
〈接合工程〉
接合工程では、前記積層体を加熱及び加圧して前記固形接合剤を溶融させ、その後、温度を下げることにより前記固形接合剤を固化させ、第1部材と第2部材を接合する。
【0097】
前記加熱及び加圧における温度は、100℃~400℃が好ましく、120℃~350℃がより好ましく、150℃~300℃が更に好ましい。100℃~400℃で加熱することにより、前記固形接合剤が効率よく変形及び溶融し接合面に有効に濡れ広がるため、高い接着力を得ることができる。
【0098】
前記加熱及び加圧における圧力は、0.01MPa~20MPaが好ましく、0.1MPa~10MPaがより好ましく、0.2MPa~5MPaが更に好ましい。ここでの圧力は、第1部材及び第2部材の接合面における平均圧力を意味する。0.01MPa~20MPaで加圧することにより、前記固形接合剤が効率よく変形し接合面に有効に濡れ広がるため、高い接着力を得ることができる。第1部材又は第2部材の少なくとも一方が熱可塑性樹脂を接合面に含む場合、0.01MPa~20MPaで加圧することにより、固形接合剤と当該部材の熱可塑性樹脂とを相溶化させて、高い接着力を得ることができる。
【0099】
固形接合剤の主成分である熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂は、樹脂内の凝集力が低く、かつ水酸基を有しているため、基材との相互作用が強く、従来の結晶性のホットメルト接着剤よりも高い接着力で異種材を接合することができる。
【0100】
第1部材と第2部材の接合は、固形接合剤の相変化(固体-液体-固体)を利用したものであり、化学反応を伴わないため、従来の熱硬化型のエポキシ樹脂よりも短時間で接合を完了することができる。
【0101】
第1部材若しくは第2部材又は両方に、それぞれ適した前処理をすることで高い接着力が得られることがある。前処理としては、基材の表面を洗浄する前処理又は表面に凹凸を付ける前処理が好ましい。前処理は、1種のみであってもよく、2種以上を施してもよい。これらの前処理の具体的な方法としては、公知の方法を用いることができる。
【0102】
具体的には、前記部材の材料が金属である場合、脱脂処理、UVオゾン処理、ブラスト処理、研磨処理、プラズマ処理、及びエッチング処理からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。前記部材の材料が樹脂である場合、脱脂処理、UVオゾン処理、ブラスト処理、研磨処理、プラズマ処理、及びコロナ放電処理からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0103】
図9に示す接合体1においては、前記固形接合剤が溶融後固化した接着層2を介して、第1部材3と第2部材4とが接合一体化されており、第1部材3と第2部材4との接合体1は優れた接合強度を示す。接合強度は、接着層と基材との間に働く界面相互作用の強さの他に、接着層の厚さ、接着剤を構成するポリマーの分子量及び化学構造、力学的特性、粘弾性的特性など数多くの因子に影響される。そのため、本開示の接合体が優れた接合強度を示す機構の詳細は明らかではないが、接着層を構成する非晶性熱可塑性樹脂の凝集力が低いことと、樹脂中に水酸基が存在し、接着層と第1部材の界面及び接着層と第2部材の界面で水素結合、ファンデルワールス力などの化学結合又は分子間力が形成されることが主な要因であると推測される。しかし、接合体において、接合体の界面の状態又は特性は、厚さナノメートルレベル以下のごく薄い化学構造に起因するため分析が困難であり、本開示の接合体の界面の状態又は特性を特定することにより、本開示の固形接合剤を含まない接合体と区別可能に表現することは、現時点の技術において不可能又は非実際的である。
【0104】
接着層が非晶性熱可塑性樹脂を含む本開示の積層体は、リサイクル性及びリペア性に優れており、接合体を加熱することにより容易に第1部材と第2部材に、すなわち第1(第2)の導電層と絶縁層とを分離して、積層体を解体することができる。
【実施例0105】
本発明に関連した実施試験例及び比較試験例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の例において、第1部材と第2部材をまとめて接合基材という。
【0106】
〈接合基材〉
以下の接合基材を使用した。
《PPS(樹脂)》
ポリフェニレンスルフィド(DIC社製、FZ-1130-D5)を射出成形(樹脂温度:300℃、型温:140℃)して得られた射出成形体(縦45mm×横10mm×厚み3mm)を用いた。表面処理はせずに使用した。
《銅》
銅(C1100(タフピッチ銅)の表面をメチルエチルケトンで拭いて脱脂処理し、幅18mm、長さ45mm、厚さ3mmの試験片を得た。
【0107】
〈熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂の重量平均分子量、融解熱及びエポキシ当量〉
熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂の重量平均分子量、融解熱及びエポキシ当量を、それぞれ以下の手順で測定した。
【0108】
(重量平均分子量)
熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂をテトラヒドロフランに溶解し、Prominence 501(昭和サイエンス株式会社製、Detector:Shodex(登録商標) RI-501(昭和電工株式会社製))を用い、以下の条件で測定した。
カラム:昭和電工株式会社製 LF-804×2本
カラム温度:40℃
試料:樹脂の0.4質量%テトラヒドロフラン溶液
流量:1mL/分
溶離液:テトラヒドロフラン
較正法:標準ポリスチレンによる換算
【0109】
(融解熱)
熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂を2~10mg秤量し、アルミ製パンに入れ、DSC(株式会社リガク製DSC8231)を用いて23℃から10℃/minで200℃まで昇温し、DSCカーブを得た。得られたDSCカーブの融解時の吸熱ピークの面積と前記秤量値から融解熱を算出した。
【0110】
(エポキシ当量)
JIS K 7236:2001に準拠して得られた測定値を、樹脂固形分としての値に換算した。反応を伴わない単純混合物の場合はそれぞれのエポキシ当量と含有量から算出した。
【0111】
〈実施試験例1〉
(固形接合剤P-1)
撹拌機、還流冷却器、ガス導入管、及び温度計を備えた反応装置に、jER(登録商標)1007(三菱ケミカル株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、重量平均分子量約10,000) 203g(1.0等量)、ビスフェノールS 12.5g(1.0等量)、トリフェニルホスフィン2.4g、及びメチルエチルケトン1,000gを仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温した。目視で溶解したことを確認し、40℃まで冷却して固形分約20質量%の樹脂組成物を得た。樹脂組成物から溶剤を除去して固体を得た。プレス機の上板及び下板に非粘着フッ素樹脂フィルム(ニトフロン(登録商標)No.900UL、日東電工株式会社製)を設置し、下板の非粘着フッ素樹脂フィルム上に上記固体を配置した後、上記プレス機を160℃に加熱し、上記樹脂組成物を2時間加熱圧縮して固形分100質量%の厚さ100μmのフィルム状の固形接合剤(P-1)を得た。重量平均分子量は約37,000であった。エポキシ当量は検出限界以上であった。DSCにおいて融解熱ピークは検出されなかった。
【0112】
(接合体)
接合体として下記1種類(樹脂/金属)を作製した。
【0113】
《樹脂/金属》
前記銅基材(第1部材)の上に、10×15mmの大きさに裁断した前記固形接合剤P-1を配置し、その後速やかに、その上に前記PPS基材(第2部材)を配置した。これらの基材同士の重なりは幅10mm、奥行き5mmとした。前記固形接合剤P-1は前記基材同士の重なり領域をすべて覆うように配置した。つまり、前記第1部材と第2部材同士は、直接触れず、その間に前記固形接合剤が介在した状態として、未接合の積層体を準備した。
【0114】
高周波誘導溶着機(精電舎電子工業株式会社製、発振器UH-2.5K、プレスJIIP30S)を用いて高周波誘導により金属を発熱させ、加熱及び加圧により試験片同士を接合した。加圧力は110N(圧力2.2MPa)、発振周波数は900kHzとした。発振時間は6秒とした。
【0115】
オープンタイム評価用接合体を以下の手順で作成した。前記銅基材(第1部材)の上に、10×15mmの大きさに裁断した前記固形接合剤P-1を配置し、その後3日間静置した後、その上に前記PPS基材(第2部材)を配置した。これらの基材同士の重なりは幅10mm、奥行き5mmとした。前記固形接合剤P-1は前記基材同士の重なり領域をすべて覆うように配置した。つまり、前記第1部材と第2部材同士は、直接触れず、その間に前記固形接合剤が介在した状態として、未接合の積層体を準備した。
【0116】
高周波誘導溶着機(精電舎電子工業株式会社製、発振器UH-2.5K、プレスJIIP30S)を用いて高周波誘導により金属を発熱させ、加熱及び加圧により試験片同士を接合した。加圧力は110N(圧力2.2MPa)、発振周波数は900kHzとした。発振時間は5秒とした。
【0117】
〈実施試験例2〉
(固形接合剤P-2)
撹拌機、還流冷却器、ガス導入管、及び温度計を備えた反応装置に、フェノトート(登録商標)YP-50S(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、フェノキシ樹脂、重量平均分子量約50,000)20g、シクロヘキサノン80gを仕込み、撹拌しながら60℃まで昇温し、目視で溶解したことを確認し、40℃まで冷却して固形分20質量%の樹脂組成物を得た。樹脂組成物から溶剤を除去して固体を得た。プレス機の上板及び下板に非粘着フッ素樹脂フィルム(ニトフロン(登録商標)No.900UL、日東電工株式会社製)を設置し、下板の非粘着フッ素樹脂フィルム上に上記固体を配置した後、上記プレス機を160℃に加熱し、上記樹脂組成物を2時間加熱圧縮して固形分100質量%の厚さ100μmのフィルム状の固形接合剤(P-2)を得た。重量平均分子量は50,000、エポキシ当量は検出限界以上であった。DSCにおいて融解熱ピークは検出されなかった。
【0118】
(接合体)
固形接合剤としてP-2を用いたこと以外は実施試験例1と同様にして、表1に示す接合体及びオープンタイム評価用接合体を作製した。
【0119】
〈実施試験例3〉
(固形接合剤P-3)
前記樹脂組成物P-2と結晶性エポキシ樹脂YSLV-80XY(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)を98対2の質量比で混合し、固形接合剤(P-3)を得た。重量平均分子量は36,000、エポキシ当量は9600g/eq、融解熱は2J/gであった。
【0120】
(接合体)
固形接合剤としてP-3を用いたこと以外は実施試験例1と同様にして、表1に示す接合体及びオープンタイム評価用接合体を作製した。
【0121】
〈実施試験例4〉
(固形接合剤P-4)
前記樹脂組成物P-2と結晶性エポキシ樹脂YSLV-80XY(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)を94対6の質量比で混合し、固形接合剤(P-4)を得た。重量平均分子量は35,000、エポキシ当量は2100g/eq、融解熱は4J/gであった。
【0122】
(接合体)
固形接合剤としてP-4を用いたこと以外は実施試験例1と同様にして、表1に示す接合体及びオープンタイム評価用接合体を作製した。
【0123】
〈実施試験例5〉
(固形接合剤P-5)
前記樹脂組成物P-2と結晶性エポキシ樹脂YSLV-80XY(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)を89対11の質量比で混合し、固形接合剤(P-5)を得た。重量平均分子量は33,000、エポキシ当量は1745g/eq、融解熱は11J/gであった。
【0124】
(接合体)
固形接合剤としてP-5を用いたこと以外は実施試験例1と同様にして、表1に示す接合体及びオープンタイム評価用接合体を作製した。
【0125】
〈実施試験例6〉
(固形接合剤P-6)
撹拌機、還流冷却器、ガス導入管、及び温度計を備えた反応装置に、jER(登録商標)1007(三菱ケミカル株式会社株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、分子量約4060) 203g(1.0等量)、ビスフェノールS(分子量250) 12.5g(0.6等量)、トリフェニルホスフィン2.4g、及びメチルエチルケトン1,000gを仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温した。目視で溶解したことを確認し、40℃まで冷却して固形分約20質量%の樹脂組成物を得た。樹脂組成物から溶剤を除去して固体を得た。プレス機の上板及び下板に非粘着フッ素樹脂フィルム(ニトフロン(登録商標)No.900UL、日東電工株式会社製)を設置し、下板の非粘着フッ素樹脂フィルム上に上記固体を配置した後、上記プレス機を160℃に加熱し、上記樹脂組成物を2時間加熱圧縮して固形分100質量%の厚さ100μmのフィルム状の固形接合剤(P-6)を得た。重量平均分子量は約30,000、エポキシ当量は検出限界以上であった。DSCにおいて融解熱ピークは検出されなかった。
【0126】
(接合体)
固形接合剤としてP-6を用いたこと以外は実施試験例1と同様にして、表1に示す接合体及びオープンタイム評価用接合体を作製した。
【0127】
〈比較試験例1〉
(固形接合剤Q-1)
熱硬化性液状エポキシ接着剤E-250(コニシ株式会社製、ビスフェノール型エポキシ樹脂とアミン硬化剤の2液タイプ)の2液を混合し、離型フィルムに塗布し、100℃で1時間硬化させたあと、冷却し、離型フィルムから剥がして厚さ100μmのフィルム状の固形接合剤(Q-1)を得た。DSCにおいて融解熱ピークは検出されなかった。エポキシ当量及び重量平均分子量は溶媒に不溶のため測定できなかった。
【0128】
(接合体)
固形接合剤としてQ-1を用いたこと以外は実施試験例1と同様にして、表1に示す接合体及びオープンタイム評価用接合体を作製した。
【0129】
〈比較試験例2〉
(固形接合剤Q-2)
非晶性のポリカーボネートフィルム(ユーピロン(登録商標)FE2000、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、厚さ100μm)を固形接合体Q-2として用いた。DSCにおいて融解熱ピークは検出されなかった。
【0130】
(接合体)
固形接合剤としてQ-2を用いたこと以外は実施試験例1と同様にして、表1に示す接合体及びオープンタイム評価用接合体を作製した。
【0131】
〈比較試験例3〉
(固形接合剤Q-3)
結晶性エポキシ樹脂YSLV-80XY(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)を固形接合剤(Q-3)として用いた。エポキシ当量は192g/eqであった。重量平均分子量は340であった。融解熱は70J/gであった。
【0132】
(接合体)
固形接合剤としてQ-3を用いたこと以外は実施試験例1と同様にして、表1に示す接合体及びオープンタイム評価用接合体を作製した。
【0133】
〈比較試験例4〉
(接合体)
熱硬化性液状エポキシ接着剤E-250(コニシ株式会社製、ビスフェノール型エポキシ樹脂とアミン硬化剤の2液タイプ)の2液を混合し、前記実施試験例1と同様の第1部材と第2部材にそれぞれ塗布し、1分以内に貼り合わせをし、その後、クリップにて固定した状態で100℃のオーブン内に1時間静置することで接着成分を硬化させ、その後、室温まで冷却することで表1に示す接合体を作製した。前記熱硬化性液状エポキシ接着剤E-250を第1部材と第2部材にそれぞれ塗布した後、3日間静置した後に貼り合わせをしたこと以外は上記と同様にして、オープンタイム評価用接合体も作製した。
【0134】
〈比較試験例5〉
フラスコに、jER(登録商標)1007(三菱ケミカル株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、重量平均分子量約10,000) 203g(1.0等量)、ビスフェノールS 12.5g(1.0等量)、トリフェニルホスフィン2.4g、及びメチルエチルケトン1,000gを仕込み、常温で撹拌することで固形分約20質量%の液状樹脂組成物を得た。前記実施試験例1と同様の第2部材の上に、前記液状樹脂組成物をバーコート塗布し、室温で30分乾燥させた後に、160℃のオーブンに2時間静置することで、厚さ100μmの固形の熱可塑性エポキシ樹脂重合物コーティング層を第2部材の表面上に形成した。コーティング層の重量平均分子量は約40,000であった。エポキシ当量は検出限界以上であった。DSCにおいて融解熱ピークは検出されなかった。
【0135】
(接合体)
前記コーティング層を持つ第2部材の上に第1部材を直接配置したこと以外は実施試験例1と同様にして、表1に示す接合体を作製した。オープンタイム評価用に、熱可塑性エポキシ樹脂重合物コーティング層を第2部材の表面上に形成した後、3日間静置し、その後に第1部材と積層した以外は上記と同様にして、オープンタイム評価用接合体も作製した。
【0136】
〈比較試験例6〉
撹拌機、還流冷却器、ガス導入管、及び温度計を備えた反応装置に、フェノトート(登録商標)YP-50S(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、フェノキシ樹脂、重量平均分子量約50,000)20g、シクロヘキサノン80gを仕込み、撹拌しながら60℃まで昇温し、目視で溶解したことを確認し、40℃まで冷却して固形分20質量%の液状樹脂組成物を得た。前記実施試験例1と同様の第2部材の上に、前記液状樹脂組成物をバーコート塗布し、70℃のオーブンに30分静置することで、厚さ100μmのフェノキシ樹脂コーティング層を第2部材の表面上に形成した。前記コーティング層の重量平均分子量は約50,000であった。エポキシ当量は検出限界以上であった。DSCにおいて融解熱ピークは検出されなかった。
【0137】
(接合体)
前記フェノキシ樹脂コーティング層を持つ第2部材の上に第1部材を直接配置したこと以外は実施試験例1と同様にして、表1に示す接合体を作製した。オープンタイム評価用に、フェノキシ樹脂コーティング層を第2部材の表面上に形成した後、3日間静置し、その後に第1部材と積層した以外は上記と同様にして、オープンタイム評価用接合体も作製した。
【0138】
〈比較試験例7〉
(接合体)
固形接合剤として結晶性のポリアミド系ホットメルト接着剤フィルムNT-120(日本マタイ株式会社製、厚さ100μm)を用いたこと以外は実施試験例1と同様にして、表1に示す接合体及びオープンタイム評価用接合体を作製した。融解熱は60J/gであった。
【0139】
[せん断接着力]
実施試験例1~6、比較試験例1~7で得られた接合体を測定温度(23℃又は80℃)で30分以上静置後、ISO19095に準拠して、引張試験機(万能試験機オートグラフ「AG-X plus」(株式会社島津製作所製);ロードセル10kN、引張速度10mm/min)にて、23℃及び80℃雰囲気での引張りせん断接着強度試験を行い、接合強度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0140】
[接合プロセス時間]
接合プロセス時間は下記のように測定した。接合剤が、接合体を構成する一方又は両方の基材と最初に接触した時を始点、接合体の作製の完了時を終点として、始点から終点までの時間を測定した。加熱及び加圧時間については、表1に示す接合体でのそれぞれ数値を平均した。
【0141】
[リサイクル性]
表1に示す接合体を200℃のホットプレートに置いて1分加熱した後、1N以下の力で容易に剥離できるかで判断した。剥離できれば良好(OK)で、剥離できなければ不適(NG)とした。
【0142】
[リペア性]
前記引張りせん断強度試験の23℃での試験後の接合面が破断したそれぞれの試験片(第1部材若しくは第2部材又はその両方の表面に接合固体の層が残存している)のうち第2部材の上に第1部材を配置し、前記実施試験例1と同様に接合体を作成することでリペア接合体を得た。前記リペア接合体の23℃のせん断接着力を前記試験方法と同様に測定し、1回目のせん断接着力の80%以上であれば良好(OK)で、80%未満ならば不適(NG)とした。
【0143】
[オープンタイム評価]
オープンタイム評価用接合体を用いて、前記引張りせん断接着強度試験を23℃で実施した。前記実施試験例及び比較試験例の方法で作成した試験片と比べてせん断接着力が80%以上であれば良好(OK)で、80%未満であれば不適(NG)とした。オープンタイム評価が良好(OK)とは、オープンタイムが長く、利便性に優れることを意味する。
【0144】
【0145】
本発明によれば、第1の導電層及び/又は第2の導電層(第1部材)と、絶縁層(第2部材)とが強固に接合された、積層体を、短い接合プロセス時間、かつ長いオープンタイムで製造することができる。
10、20、30、40、50:積層体、11、21、31、41、51:第1の樹脂層、12、22、32、42、52:第1の導電層、13、23、33、43、53:絶縁層、14、24、34、44、54:第2の導電層、15,25、35、45、55:接着層、16、26、36、46、56:第2の樹脂層、47:挿入部、57:放熱板、100:第1の樹脂層、101:収容部、102A:凹状部、102B:凸状部、103:固定部、104:開口部、105:第1の導電層、106:第2の導電層