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  • 特開-被着体付き車両用窓ガラスの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090947
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】被着体付き車両用窓ガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20240627BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20240627BHJP
   C09J 5/02 20060101ALI20240627BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
C09J201/00
B60J1/00 H
C09J5/02
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207159
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】上田 俊司
(72)【発明者】
【氏名】江畑 研一
(72)【発明者】
【氏名】森岡 康司
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040EF001
4J040JB04
4J040KA30
4J040MA05
4J040MA10
4J040NA16
4J040PA04
(57)【要約】
【課題】被着体と車両用窓ガラスとが接着剤を介して接着されてなる、被着体付き車両用窓ガラスの製造において、被着体と接着剤との接着性を向上させる。
【解決手段】被着体付き車両用窓ガラスの製造方法が、被着体に酸性処理液を付着させ、前記被着体と車両用窓ガラスとの間にプライマー含有接着剤を配置して、前記被着体と前記車両用窓ガラスとを接着させることを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体に酸性処理液を付着させ、
前記被着体と車両用窓ガラスとの間にプライマー含有接着剤を配置して、前記被着体と前記車両用窓ガラスとを接着させることを含む、被着体付き車両用窓ガラスの製造方法。
【請求項2】
前記付着を、前記酸性処理液を前記被着体の表面に塗布若しくは散布すること、又は前記被着体を前記酸性処理液に浸漬させることによって行う、請求項1に記載の被着体付き車両用窓ガラスの製造方法。
【請求項3】
前記酸性処理液は、有機酸又はその塩を溶媒に溶解させてなる液である、請求項1又は2に記載の被着体付き車両用窓ガラスの製造方法。
【請求項4】
前記溶媒は有機溶剤を含む、請求項3に記載の被着体付き車両用窓ガラスの製造方法。
【請求項5】
前記酸性処理液のpHは0.5以上3.0以下である、請求項1又は2に記載の被着体付き車両用窓ガラスの製造方法。
【請求項6】
前記被着体は、少なくとも表面が樹脂製であり、
前記樹脂が、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、及びエポキシのうち1以上を含む、請求項1又は2に記載の被着体付き車両用窓ガラスの製造方法。
【請求項7】
前記被着体は、車載機器取付用のブラケットである、請求項1又は2に記載の被着体付き車両用窓ガラスの製造方法。
【請求項8】
前記プライマー含有接着剤は湿気硬化型接着剤である、請求項1又は2に記載の被着体付き車両用窓ガラスの製造方法。
【請求項9】
前記プライマー含有接着剤はシラン化合物含有接着剤である、請求項1又は2に記載の被着体付き車両用窓ガラスの製造方法。
【請求項10】
前記酸性処理液の付着前に、前記被着体の接着面に対して乾式処理を行う、請求項1に記載の被着体付き車両用窓ガラスの製造方法。
【請求項11】
前記乾式処理が、プラズマ処理、コロナ処理、フレーム処理、及びイトロ処理の1以上を含む、請求項10に記載の被着体付き車両用窓ガラスの製造方法。
【請求項12】
前記車両用窓ガラスの主面に遮蔽層が形成されており、前記プライマー含有接着剤が前記被着体と前記遮蔽層との間に配置されている、請求項1又は2に記載の被着体付き車両用窓ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被着体付き車両用窓ガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両において、ガラスに接着剤を介して被着体が接着されてなる構成が知られている。その一例として、フロントガラスの内面に、車載機器を取り付けるためのブラケット等が接着剤を介して接着された構成が挙げられる。
【0003】
このような被着体付き構成においては、被着体と接着剤との接着性を向上させるために、被着体の表面を処理することが知られている。例えば、特許文献1には、プラスチックの表面Aを乾式処理して得られた表面Bを、水及び極性溶剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含んだ洗浄用具で拭き、接着剤及びプライマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を付与して、積層体を得る方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-84520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のようにプラスチック(被着体)の表面を所定の洗浄用具で拭く方法であっても、被着体と接着剤との間の接着性が十分でないことがあった。そのため、接着性を向上させるべく、製造方法の更なる改善が求められている。
【0006】
上記の点に鑑みて、本発明の一態様においては、被着体と車両用窓ガラスとが接着剤を介して接着されてなる、被着体付き車両用窓ガラスの製造において、被着体と接着剤との接着性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、被着体に酸性処理液を付着させ、前記被着体と車両用窓ガラスとの間にプライマー含有接着剤を配置して、前記被着体と前記車両用窓ガラスとを接着させることを含む、被着体付き車両用窓ガラスの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、被着体と車両用窓ガラスとが接着剤を介して接着されてなる、被着体付き車両用窓ガラスの製造において、被着体と接着剤との接着性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態による被着体付き車両用窓ガラスの平面図である。
図2図1のI-I線断面の部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0011】
[被着体付き車両用窓ガラス]
図1に、本実施形態によって製造される被着体付き車両用窓ガラス1の一例を、車内面側から見た図である。また、図2に、図1のI-I線断面の部分拡大図を示す。図1及び図2に示すように、被着体30は、接着剤20を介して車両用窓ガラス10の主面に接着されている。図1及び図2には、被着体30としてブラケットを示すが、ブラケットの詳細な形状は省略している。
【0012】
<車両用窓ガラス>
本実施形態で用いられる車両用窓ガラス10は、自動車用の窓ガラスであってよい。図1に示す例においては、車両用窓ガラス10はフロントガラスであるが、車両用窓ガラス10は、例えば、リアガラス、サイドガラス、ルーフガラス等であってよい。
【0013】
車両用窓ガラス10には、ソーダライムシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、ボレートガラス、リチウムアルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス等のガラス板が用いられていてよい。ガラス板の成形法は特に限定されないが、例えばフロート法により成形されたガラスが好ましい。ガラス板は未強化であってよいし、風冷強化又は化学強化処理が施された強化ガラスであってもよい。未強化ガラスは、溶融ガラスを板状に成形し、徐冷したものである。強化ガラスは、未強化ガラスの表面に圧縮応力層を形成したものである。強化ガラスが風冷強化ガラスである場合は、加熱したガラス板を軟化点付近の温度から急冷し、ガラス表面とガラス内部との温度差によってガラス表面に圧縮応力を生じさせることで、ガラス表面を強化してもよい。一方、強化ガラスが化学強化ガラスである場合は、イオン交換法等によってガラス表面に圧縮応力を生じさせることでガラス表面を強化してもよい。また、車両用窓ガラスは透明であることが好ましいが、透明性を損なわない程度に着色されたガラスであってもよい。ガラスの形状は、特に矩形状に限定されるものではなく、種々の形状に加工されていてよい。また、車両用窓ガラスに用いられるガラス板は曲げ成形され、湾曲していてもよい。曲げ成形としては、重力成形、又はプレス成形等が用いられる。
【0014】
車両用窓ガラス10は、上述のガラス板からなる単板ガラスであってもよいし、合わせガラスであってもよい(図2)。合わせガラスは、複数のガラス板11、12を、中間膜13を介して貼り合わせてなるガラスである。合わせガラスに用いられる複数のガラス板も上述のガラスが用いられる。
【0015】
合わせガラスにおいて、複数のガラス板11、12の間に配置される中間膜13(図2)の材料は特に限定されないが、熱可塑性樹脂であると好ましい。中間膜の材料の具体例としては、可塑化ポリビニルアセタール系樹脂、可塑化ポリ塩化ビニル系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、可塑化飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、可塑化ポリウレタン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン-エチルアクリレート共重合体系樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、アイオノマー樹脂等の従来から用いられている熱可塑性樹脂が挙げられる。また、特許第6065221号に記載されている変性ブロック共重合体水素化物を含有する樹脂組成物も好適に使用できる。これらの中でも、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性、及び遮音性等の諸性能のバランスに優れることから、可塑化ポリビニルアセタール系樹脂が好適に用いられる。上記の熱可塑性樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。上記可塑化ポリビニルアセタール系樹脂における「可塑化」とは、可塑剤の添加により可塑化されていることを意味する。その他の可塑化樹脂についても同様である。
【0016】
中間膜13は、可塑剤を含有していない樹脂、例えばエチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂等であってもよい。上記ポリビニルアセタール系樹脂としては、ポリビニルアルコール(PVA)とホルムアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルホルマール樹脂、PVAとアセトアルデヒドとを反応させて得られる狭義のポリビニルアセタール系樹脂、PVAとn-ブチルアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルブチラール樹脂(PVB)等が挙げられ、特に、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性、及び遮音性等の諸性能のバランスに優れることから、PVBが好適な材料として挙げられる。なお、上記の樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0017】
車両用窓ガラスが単板ガラスの場合、その厚みは0.2mm以上5mm以下であってよい。また、車両用窓ガラスが合わせガラスの場合(図2)、車両用窓ガラス全体の厚み(中間膜も含めた厚み)は、2.3mm以上8mm以下であってよい。また、合わせガラスを構成する複数のガラス板のそれぞれの厚みは、0.5mm以上3.5mm以下であってよい。複数のガラス板の厚みは互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、なお、車内側のガラス板の厚みを0.5mm以上2.3mm以下としてもよい。
【0018】
さらに、図1及び図2に示すように、車両用窓ガラス10には、周縁部に遮蔽層15が形成されていてもよい。遮蔽層15は黒セラ層とも呼ばれる。遮蔽層15の構成は特に限定されないが、黒色、灰色、濃茶色有色のセラミックスペースト(ガラスペースト)が塗布され焼成されてなる層であると好ましい。遮蔽層15は、車両において車両用窓ガラスを車体に装着して保持するためのシーラント等を紫外線等から保護する働きを有する。図1及び図2の例では、被着体30は接着剤20を介して遮蔽層15に接着されている。すなわち、接着剤20は、被着体30と遮蔽層15との間に配置されている。被着体30が、遮蔽層15が設けられている領域に配置されていることで、車外から見た時に被着体30が遮蔽層15で隠れて審美性が高まると共に、被着体30が紫外線等によって劣化することを防止できる。
【0019】
<被着体>
本実施形態において用いられる被着体は、上述の車両用窓ガラスと接着剤を介して接着されるものであれば、特に限定されない。被着体は、車載機器を取り付けるための支持体、より具体的には、車載カメラ、車載センサ(レインセンサ、デフロストセンサ、温度センサ、湿度センサ)等を取り付けるためのブラケット、インナーミラーを取り付けるためのミラーベースであってよく、さらに、モール、プロテクタ、仮止めピン、クリップ、ホルダ、ヒンジ等であってもよい。本形態による方法は、上記の被着体のうち、車両用窓ガラスの主面に配置されるブラケット等の被着体の接着において、特に好適に用いられる。
【0020】
被着体としては、樹脂を含むもの、より具体的には、少なくとも表面が樹脂製であるものを使用できる。また、被着体は、少なくとも接着面が樹脂製であってよい。なお、被着体の接着面とは、車両用窓ガラス10の主面に対向させ、当該主面に沿わせることができる面である。接着面は平坦であるか、又は車両用窓ガラス10の対向面のカーブに合わせた湾曲を有していてもよい。樹脂を含む被着体は、全体又は一部が樹脂製の成形体となっているものであってよいし、樹脂以外の材料からなる成形体の表面の一部又は全部が樹脂で被覆されたものであってよい。
【0021】
被着体に用いられる樹脂材料(ポリマー材料)の具体例はとしては、ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド(PA)、テレフタル酸やイソフタル酸をベースとした高耐熱ポリアミド(PA6T、PA6I、PA6T/6I等)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリアセタール(POM)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エポキシ(EP)等が挙げられる。これらのうち、耐薬品性、機械的特性に優れることから、ポリアミド(PA)、及びポリブチレンテレフタレート(PBT)が好ましい。なお、上記樹脂材料は、上記樹脂のホモポリマーであってもよいし、上記の1以上を組み合わせたコポリマー、又はポリマーブレンド(ポリマーアロイ)を被着体の材料として用いてもよい。
【0022】
樹脂材料は、繊維、無機粒子等の充填材により強化されている樹脂であってもよい。強化用の繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維等が好ましい。繊維強化樹脂としては、ガラス繊維で強化されたポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルイミド等が好ましい。樹脂が強化用繊維を含有する場合、繊維は、樹脂全体に対して5~70質量%、好ましくは30~50質量%程度で含有させることができる。
【0023】
被着体が樹脂製の成形体である場合、その成形方法は限定されず、上述の樹脂材料を射出成形、注型、押出し、ブロー成形等の方法によって成形したものであってよい。また、樹脂以外の材料(金属等)からなるインサート材を用いてインサート成形したものであってもよい。
【0024】
被着体が、樹脂以外の材料からなる成形体の表面の一部又は全部が樹脂で被覆されたものである場合には、例えば、金属等からなる基体に、樹脂を含む電着塗料を用いて電着塗装された電着塗装体であってよい。電着塗装体は、基体(素地)に電解槽中で通電し、樹脂の塗料粒子を部品表面に析出させ、硬化炉で加熱硬化させて膜化したものである。電着塗装によって樹脂表面を形成する場合、電着塗料はカチオン電着塗料であると好ましい。また、電着塗料に含まれる樹脂は、エポキシ樹脂等の熱硬化型樹とすることができ、アミンやアンモニウム等で変性されたエポキシ樹脂を含むことが好ましい。一方、上記基体は、鋼、アルミニウム等を含む金属の成形体、特に板状成形体であってよい。電着塗装体の例としては、青木電器工業製のカチオン電着塗装鋼板(電着塗料として関西ペイント社製エレクロンHG-305E黒を使用)等が挙げられる。また、樹脂被覆は、基体の上に、樹脂を含む溶液若しくは分散液、又は樹脂の溶融液等を塗布すること、或いは予め形成しておいたシート状の樹脂層を被着することや、無電解めっき等によっても形成できる。
【0025】
<接着剤>
本実施形態では、接着剤として、プライマー含有接着剤を用いる。プライマー含有接着剤は、プライマー成分を含有する接着剤であり、プライマー成分が接着剤中に分散しているものであってもよいし、プライマー成分をマイクロカプセル等の粒子内に内包させたものであってもよい。なお、後者を、プライマー内包接着剤とも呼ぶ。接着剤に含まれるプライマーとしては、シランカップリング剤等のシラン化合物、ポリイソシアネート等が挙げられるが、ガラスとの接着に優れること、後述する酸との反応性の観点から、シラン化合物を含有する接着剤であると好ましい。なお、接着剤中のプライマーの含有量は、0.2質量%以上10質量%以下であってよい。
【0026】
また、本形態で用いられるプライマー含有接着剤は、湿気硬化型の接着剤であってよく、ウレタン系接着剤、変成シリコーン系接着剤等であるとより好ましい。また、接着剤は一液型であっても二液型であってもよい。なお、シランカップリング剤を含むプライマー含有接着剤であれば、湿気硬化型以外にも、光硬化型の接着剤や、熱硬化型の接着剤を用いてもよい。本実施形態で用いられるプライマー含有接着剤の具体例としては、横浜ゴム株式会社製のWS292A、WS242A等、Dow Chemical社製のU-414等が挙げられる。
【0027】
本実施形態では、被着体付き車両用窓ガラスの製造において、上述のプライマー含有接着剤を用いることで、別途プライマーを塗布する手間なく、接着性を高めることができる。また、プライマー含有接着剤の場合には、プライマー成分が接着剤によって保持されていることから、別途プライマーを塗布する場合に比べて、製造工程中にプライマー成分が流動して失われてしまうことも防止でき、接着剤と被着体との接着性向上に確実に寄与できる。そして、プライマー含有接着剤を用いた上、さらに接着剤の塗布前に被着体の接着面を酸性処理液によって処理しておくことによって(後に詳述)、被着体と接着剤との接着性を一層向上できる。
【0028】
[被着体付き車両用窓ガラスの製造]
冒頭に述べたように、本実施形態による被着体付き車両用窓ガラスの製造方法は、酸性処理液を被着体に付着させる酸性処理液付着処理ステップと、被着体を接着剤を介して車両用窓ガラスに貼り付ける貼付けステップとを有していてよい。さらに、酸性処理液処理ステップの前には、被着体の表面を清浄化する清浄化ステップを有していてよい。また、貼付けステップの後には、養生ステップを有していてもよい。以下、各ステップについて具体的に説明する。
【0029】
<酸性処理液処理ステップ>
被着体に接着剤を塗布する前に、酸性処理液処理ステップにて、被着体の少なくとも接着面を酸性処理液で処理して改質する。酸性処理液処理ステップにおける手法は、酸性処理液を、より具体的には酸性成分を被着体の表面に付着させる、若しくは供給することができればよく、その付着の方法は特に限定されない。例えば、液付着用の用具等を用いて被着体の表面に酸性処理液を付着させることができる。液付着用の用具は、例えば、処理液を吸収して保持でき、且つ被着体の表面に接触した際に処理液を放出できる素材、例えば、繊維を含む又は多孔質の素材、すなわち、フェルト、綿、スポンジのような塊状材料、布、不織布等のシート状材料、刷毛等を備えていてよい。酸性処理液を、液付着用の用具の上記材料に浸して、被着体の表面を拭く(ワイプする)ことで、酸性処理液を塗布できる。また、被着体表面に酸性処理液を散布すること、例えば酸性処理液の滴を跳ね掛けること、スプレー等で噴霧すること等も含まれる。
【0030】
さらには、被着体に酸性処理液を付着させるために、被着体の少なくとも接着面を処理液に浸漬させてもよい。その場合、容器等に酸性処理液を入れ、当該液中に被着体を浸すことができる。なお、本明細書における浸漬には、被着体を処理液中に所定時間浸した後に引き上げることに加え、被着体の表面に処理液を掛け流すことも含まれる。
【0031】
酸性処理液は、酸性成分を含むものであり、そのpHは、好ましくは0.5以上3.0以下、より好ましくは0.5以上2.0以下、さらに好ましくは0.8以上1.5以下であってよい。pHが3.0以下であることで、上述のプライマー含有接着剤と被着体との間の接着性が向上する。
【0032】
酸性処理液に含有させる酸性成分は、特に限定されないが、溶媒中で酸として機能するものであり、溶媒中で上述の好ましいpHの値を示し得るものであってよい。また、酸性成分は、有機酸又はその塩とすることが好ましい。有機酸としては、両親媒性であり様々な溶媒を利用できること、酸性処理液のpHを低くできること等から、酸性基を有する芳香族化合物であると好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸であるとより好ましく、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸であるとさらに好ましい。具体例としては、アルコール等の揮発性溶剤に可溶であることから、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)、及びp-トルエンスルホン酸(PTSA)が挙げられる。酸性処理液中の酸性成分は、1種の化合物単独であってもよいし、2種以上の化合物を組み合わせたものであってもよい。
【0033】
酸性処理液中の酸性成分の含有量は、好ましくは0.2質量%以上10質量%以下、より好ましくは1質量%以上5質量%以下であってよい。0.2質量%以上であることで、十分な量の酸性成分が、プライマー含有接着剤中のプライマー成分に接触できるので接着性を一層向上でき、10質量%以下であることで、温度変化により酸性成分が析出してしまったり、酸性処理液が乾燥し難くなったりすることを防止できる。
【0034】
酸性処理液は、上述の酸性成分を溶媒に溶解又は分散させて調製できる。用いられる溶媒としては、有機溶剤、水等であってよいが、酸性処理液の塗布後に溶媒を短時間で散逸できることから、有機溶剤であると好ましい。有機溶剤としては、メタノール、エタノール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)、1-プロパノール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;酢酸ブチル、酢酸エチル、グリコールエステル等のエステル;n-ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素;ジエチルエーテル、グリコールエーテル等のエーテル等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの有機溶剤のうち、低級アルコールが好ましく、中でも、脱脂能力が比較的高いことからイソプロパノールが好ましい。
【0035】
また、酸性処理液は、防腐剤、pH調整剤、防錆剤、酸化防止剤等の任意の添加剤を含んでいてもよい。
【0036】
このように、本実施形態では、上述のプライマー含有接着剤を使用すると共に、酸性処理液処理ステップを行うことで、被着体と接着剤との接着性を向上させることができる。これは、酸性処理液により作られる酸性条件によって、接着剤に含まれるプライマー成分の、被着体表面に存在する官能基との反応の速度が向上し、また、反応がより確実になるからと考えられる。なお、接着性の向上とは、破壊試験を行った場合に高い凝集破壊率が得られることを少なくとも指し、さらに接着強度の向上も意味する。また、本実施形態による方法で得られる被着体付き車両用窓ガラスは、従来の破壊試験(例えばナイフカット試験)による評価で高い凝集破壊率が観察されることに加え、さらに厳しい条件の破壊試験、例えば割裂による破壊試験(JIS K 6853 1994に準拠する割裂試験等)においても高い凝集破壊率が観察される。また、常温での試験のみならず、熱水浸漬後の破壊試験での高い凝集破壊率が観察される。すなわち、熱水耐久性若しくは熱水浸漬後の接着性に優れた、被着体付き車両用窓ガラスを得ることができる。よって、高温高湿での条件での使用に耐え得る構造体(被着体付き車両用窓ガラス)、ひいてはそのような構造体を備えた車両を得ることができる。
【0037】
酸性処理液処理ステップの後には、被着体を車両用窓ガラスに貼り付ける貼付けステップに進むが、被着体の接着面に付着した酸性処理液は乾燥させることが好ましい。乾燥させることによって、酸性成分が被着体の表面により確実に付着、固定され得る。また、後続のステップで、処理液がはみ出て製造装置等に付着してしまうこと等を防止できる。なお、乾燥は、例えば、酸性処理液の液滴が目視で観察できなくなるまで、室温で又は加温環境下で行うことができる。
【0038】
本実施形態による製造方法は、上述のように被着体の表面に酸性処理液を付着させる酸性処理液処理ステップに加え、車両用窓ガラスの対向面にも、酸性処理液を付着させることを含んでいてもよい。これにより、接着剤の厚み方向の両側に酸性処理液が存在することになり、接着剤中のプライマー成分の機能をより一層促進できる。その場合、後述の貼付けステップの前に、車両用窓ガラスの対向面に酸性処理液を付着させることができる。
【0039】
<貼付けステップ>
上述のように被着体酸性処理液を付着させた後、被着体と車両用窓ガラスとが接着剤を介して貼り付けられた状態とする。そのためには、例えば、被着体に接着剤を塗布し、その上に、車両用窓ガラスを重ねることができる。或いは、車両用窓ガラスに接着剤を塗布し、被着体の接着面を重ねてもよい。
【0040】
その場合、車両用窓ガラスの対向面には、少なくとも接着剤が配置される領域に、ガラス専用のプライマーを塗布してもよい。一方、酸性処理液で処理した後の被着体の接着面にも、別途プライマーを塗布することがあってもよいが、流動性のあるプライマーが、酸性処理液を押し流してしまったり、別途塗布されたプライマーによって酸性処理液中の酸性成分の濃度が薄まってしまったりすることを回避するために、被着体の側にはプライマーを塗布しないことが好ましい。また、本実施形態では、上述のようにプライマー含有接着剤を用いるので、従来行われているプライマーの塗布工程を省いても、被着体と接着剤との間で高い接着性を得ることができる。
【0041】
なお、貼付けステップ後には、被着体と車両用窓ガラスとが接着剤を介して貼り付けられてなる構造体を、所定の環境で保管する、すなわち養生してもよい。養生により、接着剤の硬化を促進して、接着強度を高めることができる。養生の条件は、被着体の材料、接着剤の種類、上述の酸性処理液処理ステップ及び貼付けステップの条件等によって異なるが、例えば、温度5~35℃で、且つ/又は湿度20~80%RHで養生できる。なお、接着剤を直接的に又は間接的に加熱する等することによって、常温を超える温度で養生することもできる。
【0042】
<乾式処理ステップ>
本実施形態による製造方法は、上述の酸性処理液処理ステップで被着体に酸性処理液を付着させる前に、被着体の少なくとも接着面に対して乾式処理を行う乾式処理ステップを含んでいてよい。乾式処理は、プラズマ処理、コロナ処理、フレーム処理、及びイトロ処理の1以上であってよく、比較的被着体へのダメージが小さく且つ改質効果の高い点からプラズマ処理が好ましい。
【0043】
プラズマ処理は、被着体の表面にプラズマを照射する処理である。その場合、プラズマの発生手段は特に限定されず、高周波プラズマ発生装置、又は低周波プラズマ発生装置であってよい。また、レーザーやマイクロ波等の照射によって発生したプラズマを利用してもよい。
【0044】
乾式処理ステップによって、被着体の表面を化学的に表面改質できる。より具体的には、被着体の樹脂表面に、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基といった親水性官能基を導入又は形成することができ、単位面積あたりの親水性官能基の数を増加させることができる。これにより、被着体の接着面において、当該接着面にある親水性官能基と上述の接着剤の成分が化学結合又は分子間力により相互作用できる箇所を増やすことができ、被着体と接着剤との間の結合(界面結合)を強化できる。
【0045】
乾式処理の条件は、被着体に用いられる樹脂材料、接着剤の種類、被着体の使用目的及び車両での使用場所に応じて、適宜調整できる。乾式処理がプラズマ処理である場合の条件は、一概には言えないが、例えば、プラズマ発生手段の電源の印加電圧の周波数は50Hz以上2.45GHz以下、好ましくは50Hz以上25kHz以下であり、照射距離(電極と被着体表面との距離)は0.5mm以上50mm以下、好ましくは3mm以上10mmである。出力電力密度は15W/cm以上であり、好ましくは20W/cm以上である。照射時間はノズルの移動速度によって定められる。ノズルの移動速度は、0.01m/分以上50m/分以下とすることができ、好ましくは2.5m/分以上10m/分以下であってよい。
【0046】
プラズマ処理を行う場合、プラズマ照射の前に予め被着体をヒータ等で加熱する等して、表面温度を高めておくと、後続のステップを経て得られる構造体における被着体と接着剤との間の接着性をさらに向上させることができる。また、得られる被着体付き車両用窓ガラスの熱水耐久性若しくは熱水浸漬後の接着性(被着体と車両用窓ガラスとを接着剤を介して貼り付けた後、熱水中に所定時間浸漬させた場合の耐久性)も向上させることができる。
【0047】
また、プラズマ照射前の被着体の表面温度は、例えば常温(23℃±3℃)を超える温度に上げておくことができ、例えば、60℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上、さらに好ましくは140℃以上とできる。
【0048】
なお、乾式処理ステップにおいては、上述のような表面の化学的な改質に加え、被着体の表面に微細な凹凸を形成する等の、物理的な表面改質を加えることもできる。
【0049】
<清浄化ステップ>
また、乾式処理ステップの前には、被着体の表面を公知の方法で清浄化できる。すなわち、本実施形態による被着体付き車両用窓ガラスの製造方法は、乾式処理ステップの前に、清浄化ステップを有していてもよい。清浄化ステップによって、被着体表面の微細な塵又は汚れを物理的又は化学的に予め除去できる。清浄化によって、被着体表面の塵又は汚れを予め十分に除去しておくことができれば、後続の乾式処理において、より多くの親水性官能基を被着体表面へ導入でき、また親水性官能基が接着剤とより安定的な結合を形成できる。そのため、プラズマ処理等の乾式処理の条件を過度に高くする必要がなくなり、過剰な表面処理によって表面が損傷する可能性を低減できる。
【0050】
清浄化の方法は特に限定されないが、被着体表面に存在する塵若しくは汚れを機械的な力で取り去ること、塵又は汚れを溶剤等に溶解すること、塵又は埃を溶剤よって分解すること、またその組み合わせが挙げられる。上記のうち、清浄化を効率的に行うことができることから、機械的な力を加えることを含むことが好ましい。より具体的には、拭き取り、研磨、洗浄等が挙げられる。溶剤を用いる場合、溶剤は、被着体を変性させないものであり、被着体表面に存在し得る塵又は汚れを分散又は溶解可能であり、揮発性であると好ましい。
【0051】
拭き取りにおいては、少なくとも乾式処理を行う範囲にわたって、被着体の表面を拭き取り用具で拭う。この際、拭き取り用具は、上述の酸性処理液処理ステップで用いられる液付着用の用具と同様の用具であってよい。すなわち、繊維を含む又は多孔質の素材、より具体的には、フェルト、綿、スポンジのような塊状材料、布、不織布等のシート状材料等を備えた用具であってよい。拭き取りにおいて、溶剤を利用する場合、ふき取り用具の上記の素材に溶剤を染み込ませ、被着体の表面を拭き取ることができる。拭き取りにより、溶剤によって汚れを分解したり、汚れを溶剤中に溶解したりしながら、被着体表面から塵や汚れを機械的な力で取り去ることができる。拭き取りにおいては、被着体表面に圧力がかからないように行ってもよいし、被着体表面に0.2kPa~60kPa程度の圧力がかかるように行ってもよい。圧力をかけて拭き取りを行うことで、被着体表面の汚れを確実に取り去ることができる。
【0052】
研磨によって清浄化を行う場合には、研磨剤及び研磨具を用いた公知の表面研磨方法を用いることができる。研磨によって、被着体表面の材料がわずかに削り取られるので、表面の汚れを十分に除去できる。研磨剤としては、例えば、鉱物粒子又は鉱物粒子の分散液等を用いることができるが、二酸化炭素のような昇華性を有する、すなわち常温常圧で昇華する物質の粒子を用いてもよい。昇華性を有する粒子を使用することで研磨工程の終了後に研磨剤を除去する必要がなくなる。
【0053】
洗浄は、被着体の公知の洗浄方法を用いることができる。例えば、被着体を、溶剤等の洗浄液に浸漬させ、所定時間静置した後に引き上げることによって行うことができる。また、被着体を洗浄液に浸漬させた後、洗浄液を流動させる等して被着体の表面に対して相対的に動かしてもよい。また、例えば洗浄液を被着体に掛け流してもよい。
【実施例0054】
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態についてさらに詳説する。本実施例では、被着体付きガラス板を様々な条件で作製し、接着性を評価した。以下の例のうち、例1~例6が実施例であり、例7~例12が比較例である。
【0055】
(例1)
高耐熱ポリアミド(より具体的にはPA6T/6I)成形体であるセンサ用ブラケット(全長70mm、幅50mm、接着面の面積約2000mm、略円形開口のある6角形形状)を準備した。ヘキサン(シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製、試薬特級)を不織布ワイパー(旭化成株式会社製、ベンコット(登録商標))に含ませ、当該不織布ワイパーでブラケットの接着面を拭き取り、清浄化した。
【0056】
次に、清浄化された接着面を酸性処理液で処理した。より具体的には、酸性処理液50mL程度を羊毛フェルト(スリーエム社製「スコッチブライト#7750」)に含ませ、羊毛フェルトをピンセットで保持し、上記プラズマ処理後のブラケットの接着面のほぼ全体を、一方向に1回、30N程度の力を掛けつつ拭いた。酸性処理液としては、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)の1.0質量%イソプロパノール(IPA)溶液(pH1.5)を用いた。当該ワイプ作業は常温(23℃±3℃)で行った。さらに、ワイプ後には常温(23℃±3℃)で、目視で液が存在しないことが確認できるまで乾燥させた。
【0057】
酸性処理液によって処理された上記ブラケットの接着面に、プライマー含有ウレタン系接着剤(横浜ゴム株式会社製「WS292A」)を、専用の塗布ガンを用いて、平面視で接着面の面積の80%程度の範囲で、1.0mm厚の接着剤層が形成されるように塗布した。板厚2mmの2枚のガラス板をポリビニルブチラール中間膜(0.73mm)を介して貼り合わせてなる、遮蔽層(黒セラ)が形成された合わせガラス(100mm×100mm)を準備し、この合わせガラスの遮蔽層側の主面に、接着剤を介してブラケットを貼り付けた。得られた構造体を、7日間、23℃±3℃、50~70%RHで養生した。養生後、接着性を評価した。
【0058】
<接着性評価(割裂試験評価)>
接着性は割裂試験によって評価した。本実施例で実施した割裂試験は、JIS K 6853 1994に準拠する試験であり、特開2022-23451号公報の図1に示される割裂接着強さ試験機を用いて行った。すなわち、ブラケットの接着面と反対側の面に第1支持部を固定し、一方、被着体付きガラス板のガラス板を保持部材によって第2支持部の下台に固定する。そして、移動機構部を利用して、第1支持部と第2支持部とを鉛直方向(ガラス板の厚み方向)に離間させ、被着体付きガラス板を割裂させた。
【0059】
上述の割裂後、被着体の接着面の状態を目視によって観察し、接着剤が凝集破壊している面積の割合を、凝集破壊率(CF率、単位%)として記録した。なお、CF率0%とは、接着剤が全く凝集破壊しておらず、界面剥離が起こっている状態であり、CF率100%とは、接着剤が塗布された全面にわたって凝集破壊している状態である。CF率が高い程、接着剤に凝集破壊が生じた割合が大きく、接着性が良好であると評価できる。この割裂試験を常温(23℃±3℃)で行うと共に、同じ例の被着体付きガラス板について、80℃の熱水に150時間浸漬させた後(熱水浸漬後)の条件でも行った。
【0060】
(例2)
接着剤を、例1で用いたものとは異なるプライマー含有ウレタン系接着剤(横浜ゴム株式会社製「WS242A」)を用いて、それ以外については例1と同様して、被着体付きガラス板を作製し、接着性を評価した。
【0061】
(例3)
酸性処理液を羊毛フェルトに含ませてブラケットの接着面をワイプする処理に代えて、容器に入れた酸性処理液(例1と同様の、ドデシルベンゼンスルホン酸の1.0質量%イソプロパノール溶液、pH1.5)中にブラケット全体が沈むように入れて、5分間浸漬させたこと以外は、例1と同様にして、被着体付きガラス板を作製した。なお、上記浸漬は常温(23℃±3℃)で行った。得られた被着体付きガラス板の接着性を評価した。
【0062】
(例4)
例1で用いた酸性処理液に代えて、p-トルエンスルホン酸(PTSA)の1.0質量%イソプロパノール(IPA)溶液を用いて、例1と同様にして被着体付きガラス板を作製、接着性を評価した。
【0063】
(例5)
ブラケットの材質をポリブチレンテレフタレート(PBT)に代えたこと以外は、例1と同様にして被着体付きガラス板を作製し、接着性を評価した。
【0064】
(例6)
酸性処理液による処理の前に、ブラケットの接着面に対しプラズマ処理を行ったこと以外は、例1と同様にして被着体付きガラス板を作製した。プラズマ処理は、プラズマ処理装置(プラズマトリート株式会社製「プラズマジェネレーターFG5001」に「プラズマジェットノズルRD1004」を装着)を用いて、照射速度(プラズマジェットノズルの移動速度)2.5m/分、照射距離10mmで行った。なお、上記処理装置における電源の印加電圧の周波数は21kHzであった。
【0065】
(例7)
酸性処理液を、イソプロパノール50質量%及び水50質量%の混合液に代えたこと以外は、例6と同様にして被着体付きガラス板を作製し、接着性を評価した。
【0066】
(例8)
酸性処理液による処理を行わずにプラズマ処理を行ったこと以外は、例6と同様にして被着体付きガラス板を作製し、接着性を評価した。
【0067】
(例9)
接着剤を、プライマー含有タイプでないウレタン系接着剤(横浜ゴム株式会社製「WS222」)に代えたこと以外は例1と同様にして、被着体付きガラス板を作製し、接着性を評価した。
【0068】
(例10)
酸性処理液による処理を行わずにプラズマ処理を行った上で、ブラケットの接着面にプライマー(横浜ゴム株式会社製「RC-50E」)を塗布したこと以外は、例6と同様にして被着体付きガラス板を作製し、接着性を評価した。
【0069】
(例11)
清浄化後、酸性処理液による処理を行わずに接着剤を塗布したこと以外は例1と同様にして被着体付きガラス板を作製し、接着性を評価した。すなわち、例11では、接着剤の塗布前に清浄化以外の処理を行わなかった。
【0070】
(例12)
酸性処理液に代えて、重曹1質量%の水溶液(pH8.5)を用いたこと以外は、例1と同様にして被着体付きガラス板を作製し、接着性を評価した。
【0071】
表1及び表2に、各例の作製条件及び評価結果を示す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
表1及び表2に示すように、接着剤としてプライマー含有接着剤を用い、且つ接着剤の配置前に酸性処理液による処理を行って得られた例1~例6では、常温及び熱水浸漬後の割裂試験による接着性評価が良好であった。これに対し、接着剤としてプライマー含有接着剤を用い且つ接着剤の配置前に酸性処理液による処理を行うという条件が揃っていない例7~例12では、プラズマ処理を行っても又はプライマーを利用しても、割裂試験において常温及び熱水浸漬後の両方での良好な評価は得られなかった。
【符号の説明】
【0075】
1 被着体付き車両用窓ガラス
10 窓ガラス(合わせガラス)
11、12 ガラス板
13 中間膜
15 遮蔽層
20 接着剤
30 被着体
図1
図2