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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091079
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】体液吸収シート
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20240627BHJP
   A61F 13/514 20060101ALI20240627BHJP
   A61F 13/533 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A61F13/511 100
A61F13/514 310
A61F13/533 100
A61F13/533 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207389
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】源治 紗也佳
(72)【発明者】
【氏名】青柳 裕大
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200BA13
3B200CA11
3B200DB05
3B200DC01
3B200DC04
3B200DD01
(57)【要約】
【課題】着用者の動きに追従しやすく、ヨレ等の発生を軽減できる体液吸収シートを提供する。
【解決手段】体液吸収シート100は、着用者の肌に対向する肌対向面11において、長手方向に対して傾斜した第1仮想直線K1と、第1仮想直線K1に交差する第2仮想直線K2と、に沿うV字状エンボス8が形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の肌に対向する肌対向面において、長手方向に対して傾斜した第1仮想直線と、前記第1仮想直線に交差する第2仮想直線と、に沿うV字状エンボスが形成されている、
体液吸収シート。
【請求項2】
前記V字状エンボスは、前記長手方向に平行な前記体液吸収シートのセンターラインを中心として対称である、
請求項1に記載の体液吸収シート。
【請求項3】
前記肌対向面には、前記長手方向に間隔をおいて形成された複数の前記V字状エンボスが形成されている、
請求項1に記載の体液吸収シート。
【請求項4】
複数の前記V字状エンボスの各々は、前記第1仮想直線及び前記第2仮想直線のうちの対応する仮想直線に沿って間隔をおいて形成された複数のエンボス部で構成されており、
複数の前記V字状エンボスの隣り合う前記V字状エンボスにおいて、前記対応する仮想直線に沿う方向における前記エンボス部の最大長さは互いに異なっている、
請求項3に記載の体液吸収シート。
【請求項5】
前記隣り合うV字状エンボスとして、前記最大長さが短いほうのエンボス部を有する第1V字状エンボスと、前記最大長さが長いほうのエンボス部を有する第2V字状エンボスと、を少なくとも一つずつ有し、
前記第1V字状エンボスと前記第2V字状エンボスとが前記長手方向に交互に並ぶ、
請求項4に記載の体液吸収シート。
【請求項6】
前記V字状エンボスの各々における前記第1仮想直線と前記第2仮想直線との交点は、前記長手方向の中央よりも後側に位置している、
請求項1から5のいずれか一項に記載の体液吸収シート。
【請求項7】
前記V字状エンボスは、前記体液吸収シートの側縁まで延びている、
請求項1から5のいずれか一項に記載の体液吸収シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、体液吸収シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の体液吸収シートが開示されている。特許文献1に記載の体液吸収シート(特許文献1では、体液吸収用当て材)は、トップシート、吸収体及びバックシートを重ねた状態で、体液吸収用当て材の外周部を圧着することで、相互に固定されている。体液吸収用当て材は、トップシートの外周部を除く部分には、圧着加工がされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-89424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の体液吸収用当て材は、厚さが厚すぎると、反発力が強すぎるため、着用者の動きに追従しにくくなる。また、体液吸収用当て材は、体液吸収用当て材の厚さが薄すぎると、反発力が弱すぎるため、着用者の動きに追従しにくくなる。すなわち、特許文献1に記載の体液吸収用当て材では、装着した際に、ちょうどよい厚さでないと、着用者の動きに追従できず、ヨレ及びズレが生じやすい。
【0005】
本開示の目的は、着用者の動きに追従しやすく、ヨレ等の発生を軽減できる体液吸収シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、体液吸収シートに関する。本開示の体液吸収シートは、着用者の肌に対向する肌対向面において、長手方向に対して傾斜した第1仮想直線と、前記第1仮想直線に交差する第2仮想直線と、に沿うV字状エンボスが形成されていることを特徴とする。
【0007】
本開示の体液吸収シートにおいて、好ましくは、前記V字状エンボスは、前記長手方向に平行な前記体液吸収シートのセンターラインを中心として対称であるように構成できる。
【0008】
本開示の体液吸収シートにおいて、好ましくは、前記肌対向面には、前記長手方向に間隔をおいて形成された複数の前記V字状エンボスが形成されるように構成できる。
【0009】
本開示の体液吸収シートにおいて、好ましくは、複数の前記V字状エンボスの各々は、前記第1仮想直線及び前記第2仮想直線のうちの対応する仮想直線に沿って間隔をおいて形成された複数のエンボス部で構成されている。複数の前記V字状エンボスの隣り合う前記V字状エンボスにおいて、前記対応する仮想直線に沿う方向における前記エンボス部の最大長さは互いに異なるように構成できる。
【0010】
本開示の体液吸収シートにおいて、好ましくは、前記隣り合うV字状エンボスとして、前記最大長さが短いほうのエンボス部を有する第1V字状エンボスと、前記最大長さが長いほうのエンボス部を有する第2V字状エンボスと、を少なくとも1つずつ有する。前記第1V字状エンボスと前記第2V字状エンボスとが前記長手方向に交互に並ぶように構成できる。
【0011】
本開示の体液吸収シートにおいて、好ましくは、前記V字状エンボスの各々における前記第1仮想直線と前記第2仮想直線との交点は、前記長手方向の中央よりも後側に位置するように構成できる。
【0012】
本開示の体液吸収シートにおいて、好ましくは、前記V字状エンボスは、前記体液吸収シートの側縁まで延びるように構成できる。
【発明の効果】
【0013】
本開示に係る上記態様の体液吸収シートによれば、着用者の動きに追従しやすく、ヨレ等の発生を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1(A)は、実施形態に係る体液吸収シートの平面図である。図1(B)は、図1(A)のA-A線断面図である。
図2図2図1(A)のB部分の拡大図である。
図3図3は、変形例に係る体液吸収シートの平面図である。
図4図4(A)は更なる変形例に係る体液吸収シートの平面図である。図4(B)は更なる変形例に係る体液吸収シートの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
本実施形態に係る体液吸収シート100を、図面を参照して説明する。体液吸収シート100は、着用者からの体液を吸収する。本実施形態に係る体液吸収シート100は、着用者の衣類(下着を含む)又は皮膚に装着される。体液吸収シート100としては、例えば、おりものシート(パンティライナー)、生理用ナプキン、失禁パッド、脇汗パッド、汗取りシート等が挙げられる。体液吸収シート100により吸収される体液としては、例えば、おりもの、経血、汗、尿等が挙げられる。本実施形態では、図1に示すように、体液吸収シート100の一例として、おりものシートを挙げて説明する。
【0016】
以下の説明において、体液吸収シート100の長手方向を「前後方向」とし、体液吸収シート100に沿いかつ前後方向に直交する方向を「幅方向」と定義する。本明細書において「平行」とは、2つの直線、辺、面等が延長しても交わらない場合だけでなく、2つの直線、辺、面等がなす角度が5°以内の範囲で交わる場合も含む。
【0017】
体液吸収シート100は、複数のシートが重ねられている。複数のシートは、トップシート1と、バックシート2と、吸収シート3と、を備えることが好ましい。本実施形態では、体液吸収シート100における着用者の肌に対向する面を「表面」とし、反対側の面を「裏面」として定義する。体液吸収シート100は、トップシート1、バックシート2、及び吸収シート3に加えて、圧縮回復シート等の他のシートを含んでもよい。また、体液吸収シート100は、単層であってもよい。本実施形態に係る体液吸収シート100は、トップシート1、バックシート2及び吸収シート3を重ねた複層構造体であるとして説明する。
【0018】
(トップシート1)
トップシート1は、着用者の肌に対向する表面(「肌対向面11」という場合がある)を含む。トップシート1は、本実施形態では、着用者の肌に接触する。トップシート1は、液透過性を有する。本明細書でいう「液透過性」は、厚さ方向に体液を通過させる性質を意味する。着用者から出た体液は、トップシート1を通過して、吸収シート3に至る。
【0019】
トップシート1としては、例えば、織物、編物、不織布、フェルト等が挙げられる。トップシート1には、不織布が用いられることが好ましい。トップシート1に不織布が用いられることによって、肌触りが損なわれるのを軽減でき、肌への刺激を軽減できる。不織布としては、例えば、スパンレース法、サーマルボンド法、エアースルー法、エアレイド法、ニードルパンチ法、スパンボンド法等の方法で製造することが好ましい。これらの方法によって不織布を製造することで、トップシート1の風合いがよくなる。また、接着剤や溶剤を用いないため、肌への安全性が高くなる。
【0020】
トップシート1の素材としては、例えば、合成繊維、半合成繊維、各種繊維を混ぜた繊維(例えば、混紡品、混繊品)等が挙げられる。合成繊維としては、例えば、コットン、シルク、パルプ、羊毛、麻等が挙げられる。半合成繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン/ポリエステル複合繊維、ポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維等が挙げられる。コットン、レーヨン繊維、アセテート繊維等のセルロース系繊維をトップシート1の素材に用いることで、吸湿性に優れたトップシート1にできる。これにより、着用者の肌の表面の水分を適度に保つことができるし、繊維自身が水分を吸って柔らかくなるので肌との摩擦が少なくなり、静電気の発生を軽減できる。天然繊維であるコットンは肌触りがよく、肌への刺激性が低い(かぶれにくい)ため、セルロース系繊維としてコットンを用いることで、肌に優しく快適性に優れた体液吸収シート100にできる。
【0021】
トップシート1は、コットンと、熱可塑性の合成繊維と、が含まれることが好ましい。熱可塑の合成繊維が含まれることで、エンボス加工部によって、エンボス加工を施した際に、熱可塑性の合成繊維が溶融しやすい。これにより、トップシート1と、吸収シート3又は/及びバックシート2と、がエンボス加工部によって溶着しやすくなる。この場合でも、上述したように、コットンを50%以上配合することが好ましい。これにより、エンボス加工部を有しながらも、肌に優しく快適性に優れた体液吸収シート100にできる。
【0022】
トップシート1は、単層であってもよいし、複数層であってもよい。複数層のトップシート1としては、例えば、着用者の肌に対向する面をセルロース系繊維(好ましくはコットン)からなるシートを配置し、吸収シート3に対向する側に熱可塑性の合成繊維からなるシートが配置される。
【0023】
(バックシート2)
バックシート2は、吸収シート3に吸収された体液が裏面側へ浸透するのを抑制する。バックシート2は、体液吸収シート100の裏面を含む。バックシート2は、液不透過性である。本明細書でいう「液不透過性」は、厚さ方向に体液の通過を妨げる性質を意味する。
【0024】
バックシート2としては、例えば、液不透過性のフィルム、液不透過性の不織布、不織布に対して樹脂フィルムが積層されたシート等が挙げられる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリビニルアルコール、セロファン、塩化ビニル等、又はこれらの積層フィルムが挙げられる。
【0025】
バックシート2の裏面には、粘着層が設けられることが好ましい。体液吸収シート100は、粘着層によって、衣類等に貼り付けられる。粘着層は、例えば、粘着剤をバックシート2に塗布することにより設けられる。粘着剤としては、例えば、アクリル系水溶性接着剤等の水溶性の接着剤、ゴム系ホットメルト等の非水溶性接着剤等が挙げられる。粘着層は、バックシート2の全面に設けられていてもよいし、前後方向において部分的に設けられてもよい。
【0026】
(吸収シート3)
吸収シート3は、体液を吸収し、かつ吸収した体液を保持する。吸収シート3は、トップシート1とバックシート2との間に配置される。吸収シート3は、天然繊維及び合成繊維を含む不織布が用いられることが好ましい。これにより、肌触りがよく、吸収性に優れた体液吸収シート100にしやすい。吸収シート3としては、例えば、織物、編物、不織布又はパルプ製品等のシート構造の繊維集合体等のほか、吸水性パルプ、吸水性ポリマー等の吸収材を用いることができる。
【0027】
天然繊維としては、例えば、コットン、シルク、パルプ、羊毛、麻等が挙げられる。天然繊維としては、タンパク質系成分でないコットン又はパルプ等のセルロース系繊維が好ましい。セルロース系繊維が用いられることで、吸収性に優れた吸収シート3にできる。また、吸収シート3にセルロース系繊維が用いられることで、着用者の肌に対して、アレルギー等の接触性皮膚炎を引き起こしにくく、かぶれさせにくくなる。
【0028】
合成繊維としては、例えば、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、エチレン酢酸ビニル繊維、ウレタン繊維等が挙げられる。また、合成繊維としては、例えば、半合成繊維、各種繊維の混紡品、混繊品等を用いてもよい。半合成繊維としては、例えば、レーヨン繊維、アセテート繊維、キュプラ等が挙げられる。合成繊維としては、ドライ感及び風合いの点から、エチレン酢酸ビニル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維等の合成繊維、又はそれらの複合繊維が用いられることが好ましい。複合繊維としては、例えば、ポリエチレン/ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートを含む)複合繊維、ポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維、エチレン酢酸ビニル/ポリプロピレン複合繊維等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上の組み合わせの例としては、セルロース系繊維と複合繊維の組み合わせ等が挙げられる。
【0029】
吸収シート3に用いられる不織布の製造方法としては、例えば、スパンレース法、サーマルボンド法、エアースルー法、エアレイド法、ニードルパンチ法、スパンボンド法等が挙げられる。これらの方法によれば、風合いのよい吸収シート3が製造できる。また、これらの方法は、接着剤及び溶剤を用いないため、着用者の肌に対する安全性が高い体液吸収シート100を製造できる。
【0030】
吸収シート3は、平面視矩形状であってもよいし、トップシート1(及びバックシート2)の外周縁に沿うような外縁を有する形状であってもよい。吸収シート3は、トップシート1(及びバックシート2)と同じ大きさであってもよいし、相似形であってもよい。
【0031】
(体液吸収シート100)
体液吸収シート100は、図1に示すように、前後方向に延び、かつ幅方向に延びている。体液吸収シート100の前後方向の最大長さは、幅方向の最大長さよりも長い。体液吸収シート100の幅方向の最大長さに対する前後方向の最大長さは、2倍以上5倍以下が好ましく、より好ましくは、2.2倍以上4倍以下である。体液吸収シートの初期厚さは、0.5mm以上5mm以下が好ましい。「初期厚さ」とは、体液の吸収前であって、何らの荷重が加わっていない状態の体液吸収シートの厚さを意味する。
【0032】
体液吸収シート100は、前端縁4と、後端縁5と、一対の側縁6と、を備える。前端縁4、後端縁5、及び一対の側縁6のうちの隣り合う縁同士は、滑らかに繋がっている。前端縁4は、幅方向に沿って延びる。前端縁4は、前側に突き出るように円弧状に形成されることが好ましい。ただし、前端縁4は、幅方向に沿って直線状に形成されてもよい。
【0033】
後端縁5は、幅方向に沿って延びる。後端縁5は、後側に突き出るように円弧状に形成されることが好ましい。ただし、後端縁5は、幅方向に沿って直線状に形成されてもよい。後端縁5の曲率半径は、前端縁4の曲率半径と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0034】
側縁6は、前後方向に沿って延びる。各側縁6は、側方に突き出る少なくとも1つの突出部61を有することが好ましい。各側縁6は、本実施形態では、複数(5つ)の突出部61を有する。複数の突出部61は、前後方向に一定の間隔をおいて配置されている。複数の突出部61は、前後方向における体液吸収シート100の中央部に形成されている。1つの突出部61は、センターラインC2に平行な仮想線に対して、2つの交点を有する。本明細書でいう「センターラインC2」は、幅方向の中央を通りかつ前後方向に平行な仮想線を意味する。また、前後方向における体液吸収シート100の中央部とは、体液吸収シート100の前後方向の中央から均等に振り分けた一定の範囲を有する部分である。ここでいう一定の範囲は、体液吸収シート100の幅の最大値に対して、90%以上120%以下が好ましく、より好ましくは、93%以上110%以下であり、更に好ましくは、95%以上105%以下である。本実施形態では、点P1から点P2までの距離は、40mm以上70mm以下に設定されている。長手方向の中央部よりも前側に位置する領域を「前端部」と称し、中央部よりも後側に位置する領域を「後端部」と称する場合がある。
【0035】
各突出部61は、一対の傾斜辺62を有する。傾斜辺62は、前後方向に平行なセンターラインC2に対して傾斜している。各傾斜辺62は、一部に直線部分を有することが好ましい。センターラインC2と直線部分とのなす角は、10°以上60°以下が好ましく、より好ましくは15°以上50°以下であり、更に好ましくは18°以上40°以下である。
【0036】
各傾斜辺62は、円弧であってもよい。この場合、傾斜辺62上において、センターラインC2からの距離が最大となる点と最小となる点とを結ぶ直線と、センターラインC2とのなす角が上述した範囲にあることが好ましい。
【0037】
1つの突出部61を構成する隣り合う傾斜辺62の接続点の近傍(以下、「突出部61の頂部63」という)は、ラウンド状に形成されることが好ましい。突出部61の頂部63の曲率半径は、例えば、5mm以上20mm以下であり、より具体的には8mm以上15mm以下である。また、図2に示すように、突出部61の突出高さL4は、1mm以上8mm以下が好ましく、より好ましくは、1.5mm以上6.5mm以下であり、更に好ましくは、2mm以上4mm以下である。突出高さL4は、突出部61の頂部63から突出部61の底辺に垂直におろした最大距離を意味する。底辺は、突出部61の2つの基端65,65を結ぶ仮想線66上に位置する。
【0038】
隣り合う突出部61の間は、滑らかに連続することが好ましい。これによって、応力集中を軽減でき、隣り合う突出部61の間で鋭利に折れ曲がることが軽減される。本実施形態に係る各側縁6は、複数の突出部61を有し、かつ隣り合う突出部61の間が滑らかに連続することで、波状に形成されている。体液吸収シート100の外形の形状は、センターラインC2に対して対称であることが好ましい。
【0039】
(エンボス加工部7)
複数のシート(トップシート1、吸収シート3及びバックシート2)同士は、重なった状態でエンボス加工部7により固定されている。エンボス加工部7は、トップシート1の肌対向面11からエンボス加工を施すことにより形成されている。すなわち、エンボス加工部7は、肌対向面11に形成されている。エンボス加工部7の厚さは、エンボス加工部7以外の箇所よりも薄い。エンボス加工部7は、図1に示すように、複数のV字状エンボス8と、V字状エンボス8以外のエンボスとを備える。エンボス加工部7におけるV字状エンボス8以外のエンボスは、幾何学的な形状に形成されてもよいし、植物を模した形状に形成されてもよいし、設けられなくてもよい。
【0040】
(V字状エンボス8)
V字状エンボス8は、1又は複数のエンボス部841,851が平面視で略V字状に連なる。本明細書でいう「略V字状」とは、おおよそV字と認識できる形状を意味する。「略V字状」は、3つの点を結ぶ線分のみで形成された厳密な「V字」だけでなく、例えば、2つの線分が端部において交差した形状、及び、2つの線分を接続する線が曲線であるU字状等も含まれる。
【0041】
V字状エンボス8は、第1仮想直線K1と第2仮想直線K2とに沿って形成される。V字状エンボス8は、一対の線状エンボス83で構成されている。1つの線状エンボス83は、第1仮想直線K1に沿って形成されている。他方の線状エンボス83は、第2仮想直線K2に沿って形成されている。一対の線状エンボス83の端部同士は、接続されてもよいし、離れていてもよい。
【0042】
第1仮想直線K1は、センターラインC2に対して傾斜する。すなわち、第1仮想直線K1は、長手方向に対して傾斜する。第1仮想直線K1とセンターラインC2とのなす角は、10°以上60°以下が好ましく、より好ましくは15°以上50°以下であり、更に好ましくは18°以上40°以下である。
【0043】
第2仮想直線K2は、センターラインC2に対して傾斜する。第2仮想直線K2の傾く向きは、センターラインC2に対して、第1仮想直線K1とは反対側である。第2仮想直線K2とセンターラインC2とのなす角は、10°以上60°以下が好ましく、より好ましくは15°以上50°以下であり、更に好ましくは18°以上40°以下である。第2仮想直線K2と第1仮想直線K1とは、センターラインC2に対して、対称であることが好ましい。
【0044】
本実施形態に係る体液吸収シート100は、V字状エンボス8を備えることで、着用した際に、一対の側縁6に対して、厚さ方向の互いに異なる向きに力が加わると、V字状エンボス8に沿って曲がりやすい。すなわち、各側縁6には脚の付け根が位置するが、脚の動きに応じて体液吸収シート100に力が加わると、体液吸収シート100がV字状エンボス8に沿って変形する。これによって、着用した際に、体液吸収シート100が着用者の脚の動きに追従しやすいため、着用者は体液吸収シート100のヨレ及びズレの少なくとも一方(以下、ヨレ等という)を低減できる。
【0045】
V字状エンボス8の角部C1は、体液吸収シート100の前後方向の中央よりも後方側に位置することが好ましい。V字状エンボス8の角部C1は、第1仮想直線K1と第2仮想直線K2との交点に対応する位置を意味する。すなわち、線状エンボス83の端部同士が接続されたV字状エンボス8の角部C1は、各線状エンボス83の一端部である。線状エンボス83の端部同士が離れたV字状エンボス8の角部C1は、各線状エンボス83の延長線上に位置する。複数のV字状エンボス8の角部C1の全ては、中央よりも後方側に位置することが好ましい。このようにすることで、体液吸収シート100がV字状エンボス8に沿って変形した場合に、体液吸収シート100における臀部に対向する部分が、前側の部分に比べて動きやすくなる。このため、体液吸収シート100における臀部に対向する部分がより動きやすく、体液吸収シート100のヨレ等を低減できる。
【0046】
V字状エンボス8は、センターラインC2を中心として対称であることが好ましい。V字状エンボス8の角部C1は、センターラインC2上に位置することが好ましい。また、V字状エンボス8は、体液吸収シート100の側縁6まで延びていることが好ましい。この場合、線状エンボス83における角部C1の反対側の端部は、体液吸収シート100の側縁6に接続される。
【0047】
線状エンボス83は、図2に示すように、傾斜辺62の仮想延長線K3に沿うようにして、形成されることが好ましい。すなわち、第1仮想直線K1と傾斜辺62の仮想延長線K3とは、平行でありかつ一定の距離の範囲に位置する。また、第2仮想直線K2と傾斜辺62の仮想延長線K3とは、平行でありかつ一定の距離の範囲に位置する。ここでいう「一定の距離」は、エンボス部841,851の幅の最大値(各仮想直線に直交する方向の長さ)に対して、0倍以上1.5倍以下が好ましく、より好ましくは、0倍以上1倍以下であり、更に好ましくは、0倍以上0.5倍以下である。第一仮想直線K1と傾斜辺62の仮想延長線K3とは、重なることがより好ましい。また、第2仮想直線K2と傾斜辺62の仮想延長線K3とは、重なることがより好ましい。ここでいう「重なる」とは、仮想線K1,K2が、延長線K3に一致する場合のほか、延長線K3に対して、仮想線K1,K2に沿う線状エンボス83が重なる場合も含むこととする。このように構成することで、体液吸収シート100の側縁6に加わる力が線状エンボス83に伝わりやすい。このため、着用した際に、着用者の脚の動きによる体液吸収シート100の側縁6の変形をきっかけにして、V字状エンボス8を変形させやすい。
【0048】
複数のV字状エンボス8は、図1に示すように、前後方向に間隔をおいて形成されている。前後方向に隣り合う線状エンボス83同士は、互いに平行である。以下では、複数のV字状エンボス8を区別して説明する場合、「第1V字状エンボス81」と、「第2V字状エンボス82」と称する。本実施形態に係る体液吸収シート100は、複数(ここでは、2つ)の第1V字状エンボス81と、複数(ここでは、3つ)の第2V字状エンボス82と、を備える。
【0049】
第1V字状エンボス81の線状エンボス83は、複数の第1エンボス部841で構成されている。本明細書において複数の第1エンボス部841で構成された線状エンボス83を、「第1線状エンボス84」という。複数の第1エンボス部841は、第1線状エンボス84に沿う方向に間隔をおいて形成されている。図2に示すように、第1線状エンボス84に沿う方向における第1エンボス部841の最大長さL1は、0.5mm以上1.5mm以下が好ましく、より好ましくは0.8mm以上1.2mm以下であり、更に好ましくは0.9mm以上1.1mm以下である。第1エンボス部841の形状としては、例えば、円形、ドーナツ形、楕円形、正方形、菱形、長方形、五角形、星形等が挙げられる。
【0050】
第2V字状エンボス82の線状エンボス83は、複数の第2エンボス部851で構成されている。本明細書において複数の第2エンボス部851で構成された線状エンボス83を、「第2線状エンボス85」という。複数の第2エンボス部851は、第2線状エンボス85に沿う方向に間隔をおいて形成されている。第2線状エンボス85に沿う方向における第2エンボス部851の最大長さL2は、第1エンボス部841の最大長さL1とは異なる長さである。本実施形態では、第2エンボス部851の最大長さL2は、第1エンボス部841の最大長さL1よりも長い。第2線状エンボス85に沿う方向における第2エンボス部851の長さL2は、第1エンボス部841の長さL1に対して、2倍以上4倍以下が好ましく、より好ましくは、2.5倍以上3.5倍以下であり、更に好ましくは2.8倍以上3.2倍以下である。第2エンボス部851の長さL2としては、例えば、2.5mm以上4.5mm以下が例示され、より具体的には、2.5mm以上3mm以下が例示される。
【0051】
図1(A)に示すように、第1V字状エンボス81と、第2V字状エンボス82とは、前後方向に交互に並ぶことが好ましい。第1V字状エンボス81と第2V字状エンボス82との間の最小距離L3は、3mm以上15mm以下が好ましく、より好ましくは4.0mm以上10mm以下であり、更に好ましくは4.5mm以上8mm以下である。このように構成することで、着用者の様々な動きに対して体液吸収シート100が追従しやすくなる。すなわち、第1線状エンボス84は第2線状エンボス85よりも曲がりやすい。第2線状エンボス85は、第1線状エンボス84に比べて曲がりにくく、曲がった際にハリを保ちながら曲がる。また、第1V字状エンボス81と第2V字状エンボス82とを前後方向に交互に並べることで、着用者の様々な動きに対して体液吸収シート100が追従しやすくなる。また、V字状エンボス8が長手方向に間隔をおいて平行に形成されていることで、体液吸収シート100の着用位置の違いに影響を受けにくい。
【0052】
(効果)
以上説明したように、本実施形態に係る体液吸収シート100は、着用者の肌に対向する肌対向面11においてV字状エンボス8が形成されている。このため、着用した際に、一対の側縁6に対して互いに異なる向きに力が加わると、V字状エンボス8において折れやすい。すなわち、各側縁6には脚の付け根が位置するが、脚の動きに応じて体液吸収シート100に力が加わると、体液吸収シート100がV字状エンボス8に沿って変形する。これによって、着用した際に、体液吸収シート100が着用者の脚の動きに追従しやすいため、着用者は体液吸収シート100のヨレ等を低減できる。
【0053】
また、V字状エンボス8は、体液吸収シート100のセンターラインC2を中心として対称であるため、体液吸収シート100の両側の側縁6の動きに応じて、体液吸収シート100が変形しやすい。
【0054】
また、肌対向面11には、長手方向に間隔をおいて、各々が平行となるように複数のV字状エンボス8が形成されているため、体液吸収シート100の着用位置の違いに影響を受けにくい。このため、着用した際に、体液吸収シート100が着用者の脚の動きに追従しにくくなることを低減できる。
【0055】
また、複数のV字状エンボス8の隣り合うV字状エンボス8において、各線状エンボス83に沿う方向におけるエンボス部841,851の最大長さは互いに異なることで、折れ曲がりやすさが変わる。このため、着用者の様々な動きに対して体液吸収シート100が追従しやすい。
【0056】
また、第1V字状エンボス81と第2V字状エンボス82とが、体液吸収シート100の長手方向に交互に並ぶため、着用者の様々な動きに対して体液吸収シート100が追従しやすくなる。
【0057】
また、第1仮想直線K1と第2仮想直線K2との交点の全ては、体液吸収シート100の長手方向の中央よりも後側に位置しているため、体液吸収シート100が、より動きの大きい臀部に追従しやすくなる。
【0058】
また、V字状エンボス8は、体液吸収シート100の側縁6まで延びているため、体液吸収シート100の側縁6に加わる力が線状エンボス83に伝わりやすい。このため、着用した際に、着用者の脚の動きによる体液吸収シート100の側縁6の変形をきっかけにして、V字状エンボス8を変形させやすい。
【0059】
<変形例>
以上、本開示の体液吸収シートの一実施形態について説明したが、本開示の体液吸収シートは上記実施形態に限定されず、本開示の趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形できる。つまり、以下に例示する変形例の体液吸収シートは、上記実施形態の体液吸収シート100と同様に、本開示の上述した課題を解決できる。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用できる。
【0060】
複数のV字状エンボス8は、図3に示すように、第1V字状エンボス81のみを備えてもよい。また、各V字状エンボス8の角部C1には、他の幾何学的形状のエンボス部が位置してもよい。また、V字状エンボス8は、必ずしも複数の突出部61の全てに対応するように形成されていなくてもよい。
【0061】
図4(A)に示すように、V字状エンボス8は、例えば、複数のV字状エンボス8のうちの真ん中のV字状エンボス8のように、突出部61とは無関係に形成されてもよい。また、V字状エンボス8の一部は、図4の(A)(B)に示すように、くびれ部64に接するように形成されてもよい。さらに、体液吸収シート100の側縁6は、図4(A)(B)に示すように、波形でなくてもよい。
【0062】
複数のV字状エンボス8は、長手方向に間隔をおいて形成されていなくてもよく、図4(B)に示すように、幅方向に間隔をおいて形成されてもよい。また、幅方向に間隔をおいて形成されたV字状エンボス8と、前後方向にずらして形成されたV字状エンボス8とが混在してもよい。
【0063】
上記実施形態において、各V字状エンボス8は、丸形のエンボス部(第1エンボス部841)又は隅丸長方形のエンボス部(第2エンボス部841)で構成されたが、一端から他端までが一つながりに連続した実線状に形成されてもよい。また、V字状エンボス8は、丸形のエンボス部からなる点線状、隅丸長方形からなる破線状、又は実線状のほか、例えば、1点鎖線状等であってもよい。このような構成であっても、V字状エンボス8として、実施形態で述べた効果と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0064】
100 体液吸収シート
11 肌対向面
6 側縁
8 V字状エンボス
81 第1V字状エンボス
82 第2V字状エンボス
841 第1エンボス部
851 第2エンボス部
K1 第1仮想直線
K2 第2仮想直線
C2 センターライン
図1
図2
図3
図4