(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091084
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】体液吸収シート
(51)【国際特許分類】
A61F 13/511 20060101AFI20240627BHJP
A61F 13/514 20060101ALI20240627BHJP
A61F 13/533 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A61F13/511 100
A61F13/514 310
A61F13/533 200
A61F13/533 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207480
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】源治 紗也佳
(72)【発明者】
【氏名】青柳 裕大
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200BA13
3B200CA11
3B200DB05
3B200DC01
3B200DC04
3B200DD01
(57)【要約】
【課題】着用者の動きに追従しやすく、ヨレ等の発生を軽減できる体液吸収シートを提供する。
【解決手段】体液吸収シート100は、長手方向に延びた体液吸収シート100であって、長手方向における中央部91の曲げ剛性が、中央部91よりも長手方向の端部側の部位の曲げ剛性よりも高い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びた体液吸収シートであって、
前記長手方向における中央部の曲げ剛性が、前記中央部よりも前記長手方向の端部側の部位の曲げ剛性よりも高い、
体液吸収シート。
【請求項2】
肌対向面に形成されたエンボス部を有し、
前記中央部の表面積に占める前記エンボス部の面積の割合が前記端部側の部位の表面積に占める前記エンボス部の面積の割合よりも大きい、
請求項1に記載の体液吸収シート。
【請求項3】
前記エンボス部は、前記中央部において格子状に形成された格子状エンボスを有する、
請求項2に記載の体液吸収シート。
【請求項4】
前記格子状エンボスは、前記体液吸収シートの幅方向の中央領域に形成されている、
請求項3に記載の体液吸収シート。
【請求項5】
肌対向面における前記中央部と前記端部側の部位との境界に形成され、前記長手方向に交差する方向に沿って延びる線状エンボスを有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の体液吸収シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、体液吸収シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の体液吸収シートが開示されている。特許文献1に記載の体液吸収シート(特許文献1では、体液吸収用当て材)は、トップシート、吸収体及びバックシートを重ねた状態で、体液吸収用当て材の外周部を圧着することで、相互に固定されている。体液吸収用当て材は、トップシートの外周部を除く部分には、圧着加工がされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の体液吸収用当て材は、全面にわたって略均一な剛性を有する。このため、特許文献1に記載の体液吸収用当て材では、着用者の脚の動きに対して、体液吸収用当て材の全体が動きやすいため、着用者の動きに追従できず、ヨレ及びズレが生じやすい。
【0005】
本開示の目的は、着用者の動きに追従しやすく、ヨレ等の発生を軽減できる体液吸収シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、体液吸収シートに関する。本開示の体液吸収シートは、長手方向に延びた体液吸収シートであって、前記長手方向における中央部の曲げ剛性が、前記中央部よりも前記長手方向の端部側の部位の曲げ剛性よりも高いことを特徴とする。
【0007】
本開示の体液吸収シートにおいて、好ましくは、肌対向面に形成されたエンボス部を有し、前記中央部の表面積に占める前記エンボス部の面積の割合が前記端部側の部位の表面積に占める前記エンボス部の面積の割合よりも大きいように構成できる。
【0008】
本開示の体液吸収シートにおいて、好ましくは、前記エンボス部は、前記中央部において格子状に形成された格子状エンボスを有するように構成できる。
【0009】
本開示の体液吸収シートにおいて、好ましくは、前記格子状エンボスは、前記体液吸収シートの幅方向の中央領域に形成されているように構成できる。
【0010】
本開示の体液吸収シートにおいて、好ましくは、肌対向面における前記中央部と前記端部側の部位との境界に形成され、前記長手方向に交差する方向に沿って延びる線状エンボスを有するように構成できる。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係る上記態様の体液吸収シートによれば、着用者の動きに追従しやすく、ヨレ等の発生を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1(A)は、実施形態に係る体液吸収シートの平面図である。
図1(B)は、
図1(A)のA-A線断面図である。
【
図2】体液吸収シートの曲げ剛性を測定する方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
本実施形態に係る体液吸収シート100を、図面を参照して説明する。体液吸収シート100は、着用者からの体液を吸収する。本実施形態に係る体液吸収シート100は、着用者の衣類(下着を含む)又は皮膚に装着される。体液吸収シート100としては、例えば、おりものシート(パンティライナー)、生理用ナプキン、失禁パッド、脇汗パッド、汗取りシート等が挙げられる。体液吸収シート100により吸収される体液としては、例えば、おりもの、経血、汗、尿等が挙げられる。本実施形態では、
図1に示すように、体液吸収シート100の一例として、おりものシートを挙げて説明する。
【0014】
以下の説明において、体液吸収シート100の長手方向を「前後方向」とし、体液吸収シート100に沿いかつ前後方向に直交する方向を「幅方向」と定義する。本明細書において「平行」とは、2つの直線、辺、面等が延長しても交わらない場合だけでなく、2つの直線、辺、面等がなす角度が5°以内の範囲で交わる場合も含む。
【0015】
体液吸収シート100は、複数のシートが重ねられている。複数のシートは、トップシート1と、バックシート2と、吸収シート3と、を備えることが好ましい。本実施形態では、体液吸収シート100における着用者の肌に対向する面を「表面」とし、反対側の面を「裏面」として定義する。体液吸収シート100は、トップシート1、バックシート2、及び吸収シート3に加えて、圧縮回復シート等の他のシートを含んでもよい。また、体液吸収シート100は、単層であってもよい。本実施形態に係る体液吸収シート100は、トップシート1、バックシート2及び吸収シート3を重ねた複層構造体であるとして説明する。
【0016】
(トップシート1)
トップシート1は、着用者の肌に対向する表面(「肌対向面11」という場合がある)を含む。トップシート1は、本実施形態では、着用者の肌に接触する。トップシート1は、液透過性を有する。本明細書でいう「液透過性」は、厚さ方向に体液を通過させる性質を意味する。着用者から出た体液は、トップシート1を通過して、吸収シート3に至る。
【0017】
トップシート1としては、例えば、織物、編物、不織布、フェルト等が挙げられる。トップシート1には、不織布が用いられることが好ましい。トップシート1に不織布が用いられることによって、肌触りが損なわれるのを軽減でき、肌への刺激を軽減できる。不織布としては、例えば、スパンレース法、サーマルボンド法、エアースルー法、エアレイド法、ニードルパンチ法、スパンボンド法等の方法で製造することが好ましい。これらの方法によって不織布を製造することで、トップシート1の風合いがよくなる。また、接着剤や溶剤を用いないため、肌への安全性が高くなる。
【0018】
トップシート1の素材としては、例えば、合成繊維、半合成繊維、各種繊維を混ぜた繊維(例えば、混紡品、混繊品)等が挙げられる。合成繊維としては、例えば、コットン、シルク、パルプ、羊毛、麻等が挙げられる。半合成繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン/ポリエステル複合繊維、ポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維等が挙げられる。コットン、レーヨン繊維、アセテート繊維等のセルロース系繊維をトップシート1の素材に用いることで、吸湿性に優れたトップシート1にできる。これにより、着用者の肌の表面の水分を適度に保つことができるし、繊維自身が水分を吸って柔らかくなるので肌との摩擦が少なくなり、静電気の発生を軽減できる。天然繊維であるコットンは肌触りがよく、肌への刺激性が低い(かぶれにくい)ため、セルロース系繊維としてコットンを用いることで、肌に優しく快適性に優れた体液吸収シート100にできる。
【0019】
トップシート1は、コットンと、熱可塑性の合成繊維と、が含まれることが好ましい。熱可塑の合成繊維が含まれることで、エンボス加工部によって、エンボス加工を施した際に、熱可塑性の合成繊維が溶融しやすい。これにより、トップシート1と、吸収シート3又は/及びバックシート2と、がエンボス加工部によって溶着しやすくなる。この場合でも、上述したように、コットンを50%以上配合することが好ましい。これにより、エンボス加工部を有しながらも、肌に優しく快適性に優れた体液吸収シート100にできる。
【0020】
トップシート1は、単層であってもよいし、複数層であってもよい。複数層のトップシート1としては、例えば、着用者の肌に対向する面をセルロース系繊維(好ましくはコットン)からなるシートを配置し、吸収シート3に対向する側に熱可塑性の合成繊維からなるシートが配置される。
【0021】
(バックシート2)
バックシート2は、吸収シート3に吸収された体液が裏面側へ浸透するのを抑制する。バックシート2は、体液吸収シート100の裏面を含む。バックシート2は、液不透過性である。本明細書でいう「液不透過性」は、厚さ方向に体液の通過を妨げる性質を意味する。
【0022】
バックシート2としては、例えば、液不透過性のフィルム、液不透過性の不織布、不織布に対して樹脂フィルムが積層されたシート等が挙げられる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリビニルアルコール、セロファン、塩化ビニル等、又はこれらの積層フィルムが挙げられる。
【0023】
バックシート2の裏面には、粘着層が設けられることが好ましい。体液吸収シート100は、粘着層によって、衣類等に貼り付けられる。粘着層は、例えば、粘着剤をバックシート2に塗布することにより設けられる。粘着剤としては、例えば、アクリル系水溶性接着剤等の水溶性の接着剤、ゴム系ホットメルト等の非水溶性接着剤等が挙げられる。粘着層は、バックシート2の全面に設けられていてもよいし、前後方向において部分的に設けられてもよい。
【0024】
(吸収シート3)
吸収シート3は、体液を吸収し、かつ吸収した体液を保持する。吸収シート3は、トップシート1とバックシート2との間に配置される。吸収シート3は、天然繊維及び合成繊維を含む不織布が用いられることが好ましい。これにより、肌触りがよく、吸収性に優れた体液吸収シート100にしやすい。吸収シート3としては、例えば、織物、編物、不織布又はパルプ製品等のシート構造の繊維集合体等のほか、吸水性パルプ、吸水性ポリマー等の吸収材を用いることができる。
【0025】
天然繊維としては、例えば、コットン、シルク、パルプ、羊毛、麻等が挙げられる。天然繊維としては、タンパク質系成分でないコットン又はパルプ等のセルロース系繊維が好ましい。セルロース系繊維が用いられることで、吸収性に優れた吸収シート3にできる。また、吸収シート3にセルロース系繊維が用いられることで、着用者の肌に対して、アレルギー等の接触性皮膚炎を引き起こしにくく、かぶれさせにくくなる。
【0026】
合成繊維としては、例えば、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、エチレン酢酸ビニル繊維、ウレタン繊維等が挙げられる。また、合成繊維としては、例えば、半合成繊維、各種繊維の混紡品、混繊品等を用いてもよい。半合成繊維としては、例えば、レーヨン繊維、アセテート繊維、キュプラ等が挙げられる。合成繊維としては、ドライ感及び風合いの点から、エチレン酢酸ビニル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維等の合成繊維、又はそれらの複合繊維が用いられることが好ましい。複合繊維としては、例えば、ポリエチレン/ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートを含む)複合繊維、ポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維、エチレン酢酸ビニル/ポリプロピレン複合繊維等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上の組み合わせの例としては、セルロース系繊維と複合繊維の組み合わせ等が挙げられる。
【0027】
吸収シート3に用いられる不織布の製造方法としては、例えば、スパンレース法、サーマルボンド法、エアースルー法、エアレイド法、ニードルパンチ法、スパンボンド法等が挙げられる。これらの方法によれば、風合いのよい吸収シート3が製造できる。また、これらの方法は、接着剤及び溶剤を用いないため、着用者の肌に対する安全性が高い体液吸収シート100を製造できる。
【0028】
吸収シート3は、平面視矩形状であってもよいし、トップシート1(及びバックシート2)の外周縁に沿うような外縁を有する形状であってもよい。吸収シート3は、トップシート1(及びバックシート2)と同じ大きさであってもよいし、相似形であってもよい。
【0029】
(体液吸収シート100)
体液吸収シート100は、
図1に示すように、前後方向に延び、かつ幅方向に延びている。体液吸収シート100の前後方向の最大長さは、幅方向の最大長さよりも長い。体液吸収シート100の幅方向の最大長さに対する前後方向の最大長さは、2倍以上5倍以下が好ましく、より好ましくは、2.2倍以上4倍以下である。体液吸収シート100の初期厚さは、0.5mm以上5mm以下が好ましい。「初期厚さ」とは、体液の吸収前であって、何らの荷重が加わっていない状態の体液吸収シート100の厚さを意味する。
【0030】
体液吸収シート100は、前端縁4と、後端縁5と、一対の側縁6と、を備える。前端縁4、後端縁5、及び一対の側縁6のうちの隣り合う縁同士は、滑らかに繋がっている。前端縁4は、幅方向に沿って延びる。前端縁4は、前側に突き出るように円弧状に形成されることが好ましい。ただし、前端縁4は、幅方向に沿って直線状に形成されてもよい。
【0031】
後端縁5は、幅方向に沿って延びる。後端縁5は、後側に突き出るように円弧状に形成されることが好ましい。ただし、後端縁5は、幅方向に沿って直線状に形成されてもよい。後端縁5の曲率半径は、前端縁4の曲率半径と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0032】
側縁6は、前後方向に沿って延びる。各側縁6は、側方に突き出る複数(3つ)の突出部61を有する。複数の突出部61は、前後方向に一定の間隔をおいて配置されている。1つの突出部61は、センターラインC1に平行な仮想線に対して、2つの交点を有する。本明細書でいう「センターラインC1」は、幅方向の中央を通りかつ前後方向に平行な仮想線を意味する。
【0033】
各突出部61の頂部は、ラウンド状に形成されることが好ましい。突出部61の頂部63の曲率半径は、例えば、5mm以上20mm以下であり、より具体的には8mm以上15mm以下である。
【0034】
隣り合う突出部61の間は、滑らかに連続することが好ましい。これによって、応力集中を軽減でき、隣り合う突出部61の間で角張って折れ曲がることが軽減される。本実施形態に係る各側縁6は、複数の突出部61を有し、かつ隣り合う突出部61の間が滑らかに連続することで、波状に形成されている。体液吸収シート100の外形の形状は、センターラインC1に対して対称であることが好ましい。
【0035】
体液吸収シート100の長手方向の中央部91の曲げ剛性は、中央部91よりも長手方向の外側の部分92,93の曲げ剛性よりも高い。ここで、
図1に示すように、体液吸収シート100の長手方向において、センターラインC1の中央から、センターラインC1上で一定の距離だけ離れた2点(点P1,P2)をとり、肌対向面11を、点P1,点P2を通る幅方向に平行な仮想線で区画して3つの領域に分ける。この場合において、本明細書でいう「長手方向の中央部91」は、長手方向に並ぶ3つの領域のうちの真ん中の領域を指す。点P1から点P2までの距離は、体液吸収シート100の幅の最大値に対して、90%以上120%以下が好ましく、より好ましくは、93%以上110%以下であり、更に好ましくは、95%以上105%以下である。本実施形態では、点P1から点P2までの距離は、40mm以上70mm以下に設定されている。以下、長手方向の中央部91よりも前側に位置する領域を「前端部92」と称し、中央部91よりも後側に位置する領域を「後端部93」と称する。
【0036】
本明細書でいう曲げ剛性は、次の方法によって測定される曲げ剛性を意味する。
図2には、中央部91の剛性を測定する際の説明図を示す。ここで、曲げ剛性を測定する位置の中立軸M1は、幅方向に延びる。長手方向において、中立軸M1よりも一方側の部分(
図2では、前端部92)を保持し、他方側の部分(
図2では、後端部93)を、中立軸M1を中心にして、回転するように移動させる。このとき、他方側の部分を回転移動させる際に必要な力を、曲げ剛性として評価する。各部分91,92,93における曲げ剛性は、対応する部分91,92,93における曲げ剛性の平均値を意味する。測定に用いる装置としては、例えば、KES-FB2S(カトーテック株式会社製)が用いられる。
【0037】
中央部91の曲げ剛性としては、1.0gf・cm2/cm以上が好ましい。また、中央部91の曲げ剛性としては、1.0gf・cm2/cm以上1.5gf・cm2/cm以下が好ましく、より好ましくは、1.05gf・cm2/cm以上1.45gf・cm2/cmであり、更に好ましくは、1.1gf・cm2/cm以上1.4gf・cm2/cmである。また、前端部92と後端部93の各々の曲げ剛性としては、0.95gf・cm2/cm以下が好ましい。このように構成することで、張りのある中央部91と、柔軟性のある前端部92及び後端部93とで構成された体液吸収シート100が得られる。
【0038】
このような体液吸収シート100によれば、装着した際に、中央部91については、ハリがあり、動きにくいため、着用者が動いた際の支点になりやすい。これにより、中央部91を支点として、前端部92及び/又は後端部93が動きやすくなるため、着用者の動きに追従しやすい。このため、着用者は体液吸収シート100のヨレ及びズレの少なくとも一方(以下、ヨレ等という)を軽減できる。
【0039】
中央部91の曲げ剛性は、エンボス部によって、高くすることが好ましい。本実施形態に係る体液吸収シート100では、中央部91の表面積に占めるエンボス部の面積の割合が、前端部92及び後端部93の各々の表面積に占めるエンボス部の面積の割合よりも大きくなるように設定されている。中央部91の表面積に占めるエンボス部の面積の割合は、例えば、10%以上90%以下が好ましく、より好ましくは、15%以上60%以下であり、更に好ましくは、20%以上50%以下である。また、前端部92及び後端部93の各々の表面積に占めるエンボス部の面積の割合は、例えば、0%以上10%以下が好ましく、より好ましくは、0%以上5%以下である。このように、エンボス部によって、中央部91の曲げ剛性を高められるため、トップシート1の素材の肌触りを保つことができ、体液吸収シート100の使用感が損なわれにくい。
【0040】
複数のシート(トップシート1、吸収シート3及びバックシート2)同士は、重なった状態でエンボス部により固定されている。エンボス部は、トップシート1の肌対向面11からエンボス加工を施すことにより形成されている。すなわち、エンボス部は、肌対向面11に形成されている。エンボス部の厚さは、エンボス部以外の箇所よりも薄い。本実施形態に係る体液吸収シート100は、エンボス部として、
図1に示すように、格子状エンボス81と、複数の線状エンボス83とを備える。
【0041】
格子状エンボス81は、平面視で格子状に形成されている。格子状エンボス81は、センターラインC1に対して傾斜して延びる複数のエンボスによって構成されている。ただし、格子状エンボス81は、センターラインC1に対して平行に延びるエンボスと、センターラインC1に対して直交する方向に延びるエンボスとで構成されてもよい。格子状エンボス81を構成する各エンボスは、一端から他端まで連続的に形成されてもよいし、断続的に形成されてもよい。
【0042】
格子状エンボス81は、幅方向において、中央領域にのみ形成されていることが好ましい。幅方向の中央領域とは、センターラインC1を対称軸とした一定の幅を有する領域を意味する。一定の幅とは、体液吸収シート100の中央部91の幅方向の最大値に対し、20%以上50%以下が好ましく、より好ましくは、25%以上40%以下であり、更に好ましくは、30%以上35%以下である。格子状エンボス81が体液吸収シート100の幅方向の中央領域に形成されていることにより、中央部91において、中央領域に対して幅方向の両端部が動きやすくなる。この結果、体液吸収シート100を装着した際に、格子状エンボス81が形成された領域を支点とし、装着者の脚に近い側縁6の近傍が脚の動きに追従しやすい。ただし、格子状エンボス81は、幅方向において中央部91の全長にわたって形成されてもよい。
【0043】
中央部91に形成されるエンボス部は、格子状エンボス81でなくてもよい。例えば、センターラインC1に対して平行又は交差する方向に延びる複数のエンボスであってもよい。また、中央部91に形成されるエンボス部は、例えば、ドットエンボス(点状エンボス)であってもよい。中央部91に形成されるエンボス部としては、ヨレ等の軽減効果の高い順に、格子状、線状、ドットが挙げられる。
【0044】
前端部92と中央部91との境界と、後端部93と中央部91との境界には、線状エンボス83が形成されることが好ましい。線状エンボス83は、1つの仮想線に沿って形成されたエンボス部である。当該仮想線は、センターラインC1に対して交差する方向(本実施形態では、幅方向)に延びている。したがって、線状エンボス83は、センターラインC1に対して交差する方向に延びる。線状エンボス83は、他の部分に比べて曲がりやすい。したがって、体液吸収シート100が、前端部92と中央部91との境界と、後端部93と中央部91との境界に線状エンボス83を有することで、体液吸収シート100の側縁6に外力を受けた際に、中央部91が動きの支点になりやすい。各線状エンボス83は、実線状であってもよいし、破線状であってもよいし、点線状であってもよい。
【0045】
各線状エンボス83は、円弧状に形成されることが好ましい。前側の線状エンボス83は、前側に突き出るような円弧状に形成されている。後側の線状エンボス83は、後側に突き出るような円弧状に形成されている。
【0046】
後端部93には、一対の後側エンボス部84が形成されている。後側エンボス部84は、後方向に進むに従って幅方向の外側に位置するように、センターラインC1に対して傾斜する仮想線に沿って形成されている。一対の後側エンボス部84は、後方向に進むに従って対向間の距離が拡がる。一対の後側エンボス部84は、センターラインC1に対して対称である。後側エンボス部84が後端部93に形成されていることにより、体液吸収シート100を着用した際に、一対の側縁6に対して、厚さ方向の互いに異なる向きに力が加わると、後側エンボス部84に沿って曲がりやすい。これにより、装着者の脚の動きに応じて体液吸収シート100に力が加わると、後側エンボス部84に沿って変形するため、体液吸収シート100が脚の動きに追従しやすい。とくに、中央部91が動きの支点となることで、後側エンボス部84に沿って変形することで、より効果的に、体液吸収シート100のヨレ等を軽減できる。剛性の高い中央部91と後側エンボス部84とを備える体液吸収シート100によれば、着用者が大きなストライドで歩いたり、走ったりしても、体液吸収シート100のヨレ等の軽減効果を発揮しやすい。
【0047】
本実施形態では、一対の後側エンボス部84の前側の端部は、互いに離れているが、接続されてもよい。また、後側エンボス部84は、後端縁5まで延びていないが、後端縁5にまで延びてもよい。
【0048】
体液吸収シート100には、一対の側方エンボス部82が形成されている。側方エンボス部82は、幅方向の両端部の各々において、前後方向に延びている。側方エンボス部82は、後端部93、中央部91及び前端部92に跨って形成されている。側方エンボス部82が形成されることで、全体的にハリを有する体液吸収シート100にしやすい。
【0049】
(効果)
以上説明したように、本実施形態に係る体液吸収シート100は、長手方向において、中央部91の曲げ剛性が、中央部91よりも長手方向の端部側の部位の曲げ剛性よりも高い。このため、着用した際に、一対の側縁6に対して互いに異なる向きに力が加わると、中央部91を支点として端部側の部位が、着用者の動きに追従しやすい。このため、体液吸収シート100の着用時のヨレ等が軽減される。
【0050】
また、中央部91の表面積に占めるエンボス部の面積の割合は、中央部91よりも外側の部位の表面積に占めるエンボス部の面積の割合よりも大きい。このように、エンボス部によって曲げ剛性を調整するため、肌対向面11を体液吸収シート100の素材のままにすることができ、体液吸収シート100の使用感が損なわれにくい。
【0051】
エンボス部は、中央部91において格子状に形成された格子状エンボス81を有するため、中央部91において、ハリを有する体液吸収シート100が得られる。これにより、体液吸収シート100が、中央部91を支点として動きにくく、かつ中央部91よりも外側の部位が動きやすくなり、着用者の動きに追従しやすい。
【0052】
格子状エンボス81は、体液吸収シート100の幅方向の中央領域に形成されているため、中央部91において、中央領域に対して幅方向の両端部が動きやすくなる。この結果、格子状エンボス81が形成された中央領域を支点とし、その外側の領域が着用者の動きに追従しやすい。
【0053】
体液吸収シート100は、肌対向面における中央部91とその両側の部位との境界に形成された線状エンボス83を有するため、中央部91を支点として、中央部91の両側の部位が動きやすくなる。
【0054】
また、本実施形態に係る体液吸収シート100は、後側エンボス部84を有する。後側エンボス部84は、後側に進むに従って幅方向の対向間の距離が拡がる。これによって、より効果的に、体液吸収シート100のヨレ等を軽減できる。
【0055】
<変形例>
以上、本開示の体液吸収シート100の一実施形態について説明したが、本開示の体液吸収シート100は上記実施形態に限定されず、本開示の趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形できる。つまり、以下に例示する変形例の体液吸収シート100は、上記実施形態の体液吸収シート100と同様に、本開示の上述した課題を解決できる。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用できる。
【0056】
上記実施形態では、中央部91の曲げ剛性をエンボス部によって高くしたが、例えば、いずれかのシートの素材を部分的に変えたり、体液吸収シート100の厚さを部分的に変えたりしてもよい。また、バックシート2と吸収シート3とを接着する接着剤の厚さを変えて曲げ剛性を調整してもよいし、バックシート2と吸収シート3との間に他のシート(例えば、圧縮回復シート)を介在させて曲げ剛性を調整してもよい。
【符号の説明】
【0057】
100 体液吸収シート
11 肌対向面
81 格子状エンボス
83 線状エンボス
91 中央部
92 前端部(長手方向の端部側の部位)
93 後端部(長手方向の端部側の部位)
C1 センターライン