特開 2024-91104 洗浄剤組成物

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024091104

(43)【公開日】2024-07-04

(54)【発明の名称】洗浄剤組成物

(51)【国際特許分類】

   C11D 1/62 20060101AFI20240627BHJP

   C11D 3/50 20060101ALI20240627BHJP

   C11B 9/00 20060101ALI20240627BHJP

【ＦＩ】

C11D1/62

C11D3/50

C11B9/00 K

C11B9/00 D

C11B9/00 B

【審査請求】未請求

【請求項の数】2

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022207556

(22)【出願日】2022-12-23

(71)【出願人】

【識別番号】000186588

【氏名又は名称】小林製薬株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100124431

【弁理士】

【氏名又は名称】田中 順也

(74)【代理人】

【識別番号】100174160

【弁理士】

【氏名又は名称】水谷 馨也

(74)【代理人】

【識別番号】100175651

【弁理士】

【氏名又は名称】迫田 恭子

(74)【代理人】

【識別番号】100122448

【弁理士】

【氏名又は名称】福井 賢一

(72)【発明者】

【氏名】前川 大輔

(72)【発明者】

【氏名】花井 健人

(72)【発明者】

【氏名】田之畑 瞳

(72)【発明者】

【氏名】松宗 円香

【テーマコード（参考）】

4H003

4H059

【Ｆターム（参考）】

4H003AC23

4H003AE05

4H003BA12

4H003DA06

4H003ED02

4H003FA10

4H003FA26

4H003FA28

4H059BA02

4H059BA14

4H059BA20

4H059BB03

4H059BB14

4H059BC10

4H059DA09

4H059EA35

(57)【要約】

【課題】本開示の目的は、塩化ベンザルコニウムと、テルペン系香料成分、フェノール系香料成分、及び芳香族アルデヒド系香料成分からなる群より選択される少なくとも１種の香料成分とを含みながらも、蛍光灯の光によって生じる変色を抑制できる洗浄剤組成物を提供することである。
【解決手段】本開示の洗浄剤組成物は、（Ａ）塩化ベンザルコニウムと、（Ｂ）テルペン系香料成分、フェノール系香料成分、及び芳香族アルデヒド系香料成分からなる群より選択される少なくとも１種の香料成分とを含有し、ｐＨが７．０以下である。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】

【請求項1】

（Ａ）塩化ベンザルコニウムと、（Ｂ）テルペン系香料成分、フェノール系香料成分、及び芳香族アルデヒド系香料成分からなる群より選択される少なくとも１種の香料成分とを含有し、ｐＨが７．０以下である、洗浄剤組成物。

【請求項2】

水洗トイレの便器の洗浄に使用される、請求項１に記載の洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本開示は、塩化ベンザルコニウム及び特定の香料成分を含みながらも、蛍光灯の光によって生じる変色を抑制できる洗浄剤組成物に関する。

【背景技術】

【0002】

従来、トイレの便器等の硬質表面に付着する汚れを除去し、衛生的な環境を作り出すために、様々な洗浄剤組成物が使用されている。例えば、水洗トイレ用の洗浄剤組成物としては、水洗トイレの手洗い部、便器表面、貯水タンク内等に設置することにより、フラッシュ水に洗浄剤を溶出できるように設計された洗浄剤組成物が使用されている。

【0003】

従来の洗浄剤組成物では、黒ずみ等の微生物由来の汚れを防ぐ目的で、除菌剤として塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、及びテトラアルキルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩が広く使用されている。例えば、特許文献１には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、及びジデシルジメチルアンモニウムクロライドから選ばれる少なくとも一種の第四級アンモニウム塩を含有する硬質表面用洗浄剤組成物が開示されている。

【0004】

また、従来、生活の快適性への要求が高まっており、洗浄剤組成物を使用する空間に芳香を付与して快適にするために、洗浄剤組成物に香料が配合されていることが多い。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0005】

【特許文献1】特開２００８－２６６３７５号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0006】

本発明者は、除菌剤である塩化ベンザルコニウムを含み、香りを呈する洗浄剤組成物について鋭意検討を進めたところ、塩化ベンザルコニウムと、テルペン系香料成分、フェノール系香料成分、又は芳香族アルデヒド系香料成分とを含む洗浄剤組成物は、蛍光灯の光によって、無色透明からピンク色に変色するという課題を知得した。本発明者は、更に検討を進めたところ、ステンレス鋼（ＳＵＳ）製の容器等の鉄を用いた製造設備で製造した前記洗浄剤組成物は当該変色が顕著に生じやすいこと、前記洗浄剤組成物を暗所に保存した場合には当該変色は生じないこと、前記洗浄剤組成物を蛍光灯の光に曝すと当該変色が生じるにもかかわらず、意外にも太陽光に曝した場合には当該変色は生じないこと、前記洗浄剤組成物を加熱しても当該変色は生じないことを知得した。鉄を含まない容器（例えば、樹脂製容器、ガラス製容器など）等を用いて前記洗浄剤組成物を製造すれば、当該変色はある程度抑制できるが、製造設備上の制約がかかるため当該方法は採用し難い。また、塩化ベンザルコニウム又は前記香料成分の含有量を低減させることによって、当該変色はある程度抑制できるが、塩化ベンザルコニウムの含有量の低減は除菌作用の低下を招き、また前記香料成分の含有量の低減は前記香料成分による香りの質の悪化を招く。また、蛍光灯の光を通さない収容部を有する商品容器に前記洗浄剤組成物を収容すれば、当該変色を抑制できるが、商品デザイン上の制約がかかるため当該方法も採用し難い。また、販売店舗等においては、蛍光灯の光に曝される環境下で、透明な収容部を有する商品容器に前記洗浄剤組成物を収容した商品が陳列されることから、蛍光灯の光による内容物の変色は消費者の購買意欲を低下させることにつながる。そのため、前記洗浄剤組成物の蛍光灯の光による変色は、解決しなければならない大きな問題である。

【0007】

本開示の目的は、塩化ベンザルコニウムと、テルペン系香料成分、フェノール系香料成分、及び芳香族アルデヒド系香料成分からなる群より選択される少なくとも１種の香料成分とを含みながらも、蛍光灯の光によって生じる変色を抑制できる洗浄剤組成物を提供することである。

【課題を解決するための手段】

【0008】

本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、塩化ベンザルコニウムと、テルペン系香料成分、フェノール系香料成分、及び芳香族アルデヒド系香料成分からなる群より選択される少なくとも１種の香料成分とを含有する洗浄剤組成物のｐＨを７．０以下に調整することにより、蛍光灯の光によって生じる変色を抑制できることを見出した。本開示は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。

【0009】

即ち、本開示は、以下に掲げる態様の発明を提供する。
項１．（Ａ）塩化ベンザルコニウムと、（Ｂ）テルペン系香料成分、フェノール系香料成分、及び芳香族アルデヒド系香料成分からなる群より選択される少なくとも１種の香料成分とを含有し、ｐＨが７．０以下である、洗浄剤組成物。
項２．水洗トイレの便器の洗浄に使用される、項１に記載の洗浄剤組成物。

【発明の効果】

【0010】

本開示の洗浄剤組成物は、（Ａ）塩化ベンザルコニウムと、（Ｂ）テルペン系香料成分、フェノール系香料成分、及び芳香族アルデヒド系香料成分からなる群より選択される少なくとも１種の香料成分とを含有するにもかかわらず、ｐＨが７．０以下であるため、蛍光灯の光による変色（ピンク色への変色）を効果的に抑制できる。また、本開示の洗浄剤組成物は、ステンレス鋼（ＳＵＳ）製の容器等の鉄を用いた製造設備で製造できるため、製造設備上の制約がないという利点がある。また、本開示の洗浄剤組成物は、塩化ベンザルコニウム又は前記香料成分の含有量を低減させる必要がないため、優れた除菌作用を有し、かつ前記香料成分による香りの質が高いものにすることができる。また、本開示の洗浄剤組成物は、商品内部を視認できる透明な収容部を有する商品容器、及び当該商品容器を包装するための透明なパッケージを使用できるため、商品デザイン上の制約がないという利点がある。さらに、販売店舗等において、透明な収容部を有する商品容器に本開示の洗浄剤組成物を収容した商品が、蛍光灯の光に曝される環境下で長時間陳列されたとしても、蛍光灯の光による変色（ピンク色への変色）を効果的に抑制できるため、消費者の購買意欲を低下させることがないという利点がある。

【発明を実施するための形態】

【0011】

本明細書において、数値範囲に関する表記Ｘ～Ｙは、Ｘ以上Ｙ以下であることを指す。

【0012】

１．洗浄剤組成物
本開示の洗浄剤組成物は、（Ａ）塩化ベンザルコニウム（以下、（Ａ）成分と表記することがある。）と、（Ｂ）テルペン系香料成分、フェノール系香料成分、及び芳香族アルデヒド系香料成分からなる群より選択される少なくとも１種の香料成分（以下、（Ｂ）成分と表記することがある。）と、を含有し、ｐＨが７．０以下であることを特徴とする。以下、本開示の洗浄剤組成物について詳述する。

【0013】

［塩化ベンザルコニウム］
本開示の洗浄剤組成物は、（Ａ）成分として塩化ベンザルコニウムを含有する。塩化ベンザルコニウムは、除菌作用があることが知られている公知の成分である。

【0014】

本開示の洗浄剤組成物における（Ａ）成分の含有量は特に限定されず、洗浄剤組成物の製剤形態及び用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、１～５０重量％であり、好ましくは５～４０重量％、より好ましくは１０～３０重量％である。

【0015】

［香料成分］
本開示のゲル状洗浄剤組成物は、（Ｂ）成分として、テルペン系香料成分、フェノール系香料成分、及び芳香族アルデヒド系香料成分からなる群より選択される少なくとも１種の香料成分を含有する。

【0016】

テルペン系香料成分とは、イソプレンを構成単位とする香料化合物、及びその誘導体である。テルペン系香料成分としては、香料成分として洗浄剤に配合されるものであれば特に制限されず、例えば、メンタン、リモネン、α－ピネン、シメン、フェランドレン、及びテルピネンなどのモノテルペン炭化水素；ジンギベレン、ファルネセン、ビサボラン、ビサボレン、カリオフィレン、及びフムレンなどのセスキテルペン炭化水素；シトラール、ゲラニオール、シトロネロール、カルベオール、テルピネオール、及びメントールなどのモノテルペンアルコール；ネロリドール、セドロール、及びファルネソールなどのセスキテルペンアルコール；スクラレオール、マノオール、アビエノール、及びサルビオールなどのジテルペンアルコール；シトラール、シトロネラール、ゲラニアール、ネラール、ミルテナール、フェランドラール、シネンサール、ペリルアルデヒド、及びファルネサールなどのテルペンアルデヒド；カルボン、カンフル、ベルベノン、メントン、ピペリトン、及びアトラントンなどのテルペンケトン；１，８－シネオール、１，４－シネオール、ローズオキシド、及びカリオフィレンオキシドなどのテルペンオキシド；酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、酢酸シトロネリル、及び酢酸メリルなどのテルペンエステル、などが挙げられる。テルペン系香料成分は、１種単独で使用してもよく、また２種以上を組み合わせて使用してもよい。前記例示のテルペン系香料成分のうち、蛍光灯の光による変色をより効果的に抑制する観点から、好ましくはカルボン、酢酸リナリル、リモネン、及び１，８－シネオールからなる群より選択される少なくとも１種である。また、（Ｂ）成分は、テルペン系香料成分を含有する精油であってもよい。カルボンを主として含有する精油としては、例えば、スペアミントオイルなどが挙げられる。酢酸リナリルを主として含有する精油としては、例えば、ラベンダーオイル、及びベルガモットオイルなどが挙げられる。リモネンを主として含有する精油としては、例えば、ガルバナムレジノイド、オレンジスイートオイル、レモンオイル、レモングラスオイルなどが挙げられる。１，８－シネオールを主として含有する精油としては、例えば、ユーカリプタスオイル、ペパーミントオイル、ローズマリーオイル、レモンオイル、及びラベンダーオイルなどが挙げられる。

【0017】

フェノール系香料成分とは、フェノール骨格を有する香料物質である。フェノール系香料成分としては、香料成分として洗浄剤に配合されるものであれば特に制限されず、例えば、２，６－ジメトキシフェノール、ｐ－エチルフェノール、β－ナフトールイソブチルエーテル、チモール、カルバクロール、オイゲノール、イソオイゲノール、ラズベリーケトン、クレオソール、及びトランス－アネトールなどが挙げられる。フェノール系香料成分は、１種単独で使用してもよく、また２種以上を組み合わせて使用してもよい。前記例示のフェノール系香料成分のうち、蛍光灯の光による変色をより効果的に抑制する観点から、好ましくはオイゲノール、及びトランス－アネトールからなる群より選択される少なくとも１種である。また、（Ｂ）成分は、フェノール系香料成分を含有する精油であってもよい。チモールを主として含有する精油としては、例えば、チミアンオイル、アヨワンオイル、及びジャコウソウオイルなどが挙げられる。カルバクロールを主として含有する精油としては、例えば、タイムオイル、及びオリガヌムオイルなどが挙げられる。オイゲノールを主として含有する精油としては、例えば、クローブオイル、ローリエオイル、及びシナモンオイルなどが挙げられる。トランス－アネトールを主として含有する精油としては、例えば、フェネルスイートオイル、バジルオイルなどが挙げられる。

【0018】

芳香族アルデヒド系香料成分とは、芳香環とアルデヒド基を有する香料物質である。芳香族アルデヒド系香料成分としては、香料成分として洗浄剤に配合されるものであれば特に制限されず、例えば、バニリン、エチルバニリン、メチルバニリン、ベンズアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、サリチルアルデヒド、アニスアルデヒド、ｐ－メチルフェニルアセトアルデヒド、シクラメンアルデヒド、ヘリオトロピン、ヘリオナール、クミンアルデヒド、及びシンナムアルデヒドなどが挙げられる。芳香族アルデヒド系香料成分は、１種単独で使用してもよく、また２種以上を組み合わせて使用してもよい。前記例示の芳香族アルデヒド系香料成分のうち、蛍光灯の光による変色をより効果的に抑制する観点から、好ましくはバニリン、クミンアルデヒド、及びシンナムアルデヒドからなる群より選択される少なくとも１種である。また、（Ｂ）成分は、芳香族アルデヒド系香料成分を含有する精油であってもよい。バニリンを主として含有する精油としては、例えば、バニラオイル、ペルーバルサムオイル、及びクローブオイルなどが挙げられる。ベンズアルデヒドを主として含有する精油としては、例えば、クヘントウオイル、モモオイル、及びアンズオイルなどが挙げられる。サリチルアルデヒドを主として含有する精油としては、例えば、カシアオイルなどが挙げられる。クミンアルデヒドを主として含有する精油としては、例えば、クミンオイルなどが挙げられる。シンナムアルデヒドを主として含有する精油としては、例えば、シナモンバークオイルなどが挙げられる。

【0019】

本開示の洗浄剤組成物における（Ｂ）成分の含有量は特に限定されず、洗浄剤組成物の製剤形態及び用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、０．１～３０重量％であり、好ましくは１～２０重量％、より好ましくは５～１０重量％である。ただし、本開示の洗浄剤組成物が、前記香料成分を含有する精油を含有する場合には、精油中の前記香料成分の含有量に基づいて洗浄剤組成物中の前記香料成分の含有量を求める。

【0020】

本開示の洗浄剤組成物において、（Ｂ）成分の含有量は、蛍光灯の光によって生じる変色をより抑制する観点から、（Ａ）成分１００重量部当たり、好ましくは１～１００重量部、より好ましくは５～８０重量部、更に好ましくは１０～６０重量部、より更に好ましくは２０～５０重量部である。ただし、本開示の洗浄剤組成物が、前記香料成分を含有する精油を含有する場合には、精油中の前記香料成分の含有量に基づいて（Ａ）成分に対する（Ｂ）成分の含有量比を求める。

【0021】

［ポリオキシアルキレンアルキルエーテル］
本開示の洗浄剤組成物は、必要に応じて、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが含まれていてもよい。本開示の洗浄剤組成物において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが含まれている場合には、塩化ベンザルコニウムの経口毒性や皮膚刺激性を低下させ、高い安全性を備えさせることができる。また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、ノニオン性界面活性剤であるので、洗浄作用を付与することもできる。

【0022】

ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとは、ポリオキシアルキレン鎖とアルキル基がエーテル結合している化合物である。

【0023】

ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおけるアルキレンオキサイドの種類については、特に制限されないが、例えば、炭素数２～４のアルキレンオキサイド、即ち、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、及びブチレンオキサイドが挙げられる。前記アルキレンオキサイドのうち、好ましくはエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド、より好ましくはエチレンオキサイドである。また、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおいて、１種の構造のアルキレンオキサイドが単独で含まれていてもよく、２種以上の構造のアルキレンオキサイドが組み合わされて含まれていてもよい。

【0024】

ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおけるアルキレンオキサイドの平均付加モル数は特に制限されないが、例えば、１０～１００であり、好ましくは２５～７５、より好ましくは４０～６０である。

【0025】

また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおけるアルキル基の炭素数は特に制限されないが、例えば、１０～２２であり、好ましくは１４～２０、より好ましくは１６～１８である。また、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおけるアルキル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよいが、好ましくは直鎖状である。

【0026】

ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとして、１種の構造のものを単独で使用してもよく、また２種以上の構造のものを組み合わせて使用してもよい。

【0027】

本開示の洗浄剤組成物において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含有させる場合、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの含有量は特に制限されないが、例えば、１～６０重量％であり、好ましくは１０～５５重量％、より好ましくは３０～５０重量％である。

【0028】

［水］
本開示のゲル状洗浄剤組成物は、水を含有することが好ましい。

【0029】

本開示の洗浄剤組成物において、水の含有量は、洗浄剤組成物の製剤形態及び用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、１０～８０重量％であり、好ましくは１５～６０重量％、より好ましくは２０～４０重量％である。

【0030】

［その他の添加剤］
本開示の洗浄剤組成物は、前述する成分の他に、本開示の発明の効果を損なわない範囲で、更に必要に応じて、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤（塩化ベンザルコニウム以外）、両性界面活性剤、香料（テルペン系香料成分、フェノール系香料成分、又は芳香族アルデヒド系香料成分を含む香料以外）、溶剤、酵素、除菌剤（塩化ベンザルコニウム以外）、殺菌剤、キレート剤、着色剤、顔料、消臭剤、乳化剤、可溶化剤、増量剤、溶解性調整剤、漂白剤、撥水剤、親水剤、充填剤、ｐＨ調整剤、増粘剤、緩衝剤、消泡剤等の添加剤を適量含有していてもよい。

【0031】

［ｐＨ］
本開示の洗浄剤組成物は、ｐＨが７．０以下である。本開示の洗浄剤組成物は、（Ａ）塩化ベンザルコニウムと、（Ｂ）テルペン系香料成分、フェノール系香料成分、及び芳香族アルデヒド系香料成分からなる群より選択される少なくとも１種の香料成分とを含有するにもかかわらず、ｐＨが７．０以下であるため、蛍光灯の光による変色（ピンク色への変色）を効果的に抑制できる。

【0032】

本開示において、洗浄剤組成物のｐＨは、ＪＩＳＺ８８０２：２０１１「ｐＨ測定方法」に従って、ガラス電極を用いたｐＨ計を用いて２５℃において測定し、小数点２位以下を四捨五入した値である。

【0033】

本開示の洗浄剤組成物のｐＨは、蛍光灯の光による変色をより効果的に抑制する観点、及び安全性の観点から、好ましくは４．０～７．０、より好ましくは４．０～６．５、更に好ましくは４．０～６．０、より更に好ましくは４．０～５．０である。

【0034】

［製造方法］
本開示の洗浄剤組成物は、常温において前記各成分を所定量混合し、必要に応じてｐＨ調整剤等を用いてｐＨを調整することにより製造できる。

【0035】

ｐＨ調整剤は特に制限されず、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、及びリン酸等の無機酸；１－ヒドロキシ－１，１－ジホスホン酸、多価カルボン酸、アミノポリカルボン酸、及びアミノ酸等の有機酸；水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アミン、アンモニウム塩、及びアンモニア等の塩基性物質などが挙げられる。ｐＨ調整剤は、１種単独で用いてもよく、２種以上を組み合わせて用いてもよい。

【0036】

［形態］
本開示の洗浄剤組成物の形態は特に制限されず、その用途に応じて適性設定すればよいが、例えば、液体状、固体状（粉末状、錠剤状等）、半固形状（ペースト状、ゲル状等）、エアゾール状等が挙げられる。これらの形態の中でも、好ましくは液体状、固体状、又は半固体状、更に好ましくは液体状である。

【0037】

［被洗浄物］
本開示の洗浄剤組成物の洗浄対象は、除菌及び／又は汚れ除去が求められるものであることを限度として特に制限されないが、例えば、トイレ（便器、トイレの床）、浴室、台所、厨房、排水管、貯水設備（プール、人工池等）等の、水との接触が可能な硬質表面が挙げられる。前記例示のうち、水洗トイレの便器は、黒ずみ等の微生物由来の汚れが付き易く、除菌が求められている洗浄対象であるため、本開示の洗浄剤組成物は、水洗トイレの便器用の洗浄剤として好適に用いられる。

【0038】

本開示の洗浄剤組成物を水洗トイレの便器の洗浄に使用する場合、本開示の洗浄剤組成物を便器にそのまま塗布して洗浄に使用してもよいが、フラッシュ水で希釈して、水洗トイレのフラッシュ時にフラッシュ水を用いた便器の洗浄に使用することが好ましい。本開示の洗浄剤組成物を水洗トイレの便器の洗浄用として、フラッシュ水に希釈して使用する場合、その希釈倍率については、特に制限されないが、例えば１万～１００万倍程度、好ましくは２万～５０万倍程度である。

【0039】

本開示の洗浄剤組成物を水洗トイレの便器の洗浄用としてフラッシュ水に希釈して使用する場合、本開示の洗浄剤組成物は、水洗トイレのオンタンク用の洗浄剤、水洗トイレのインタンク用の洗浄剤、水洗トイレのリム部用の洗浄剤、便器表面に付着させて使用される洗浄剤等のいずれであってもよい。

【0040】

水洗トイレのオンタンク用の洗浄剤とは、水洗トイレの手洗い部の上に設置して使用されるものであって、洗浄剤組成物が収容された容器に、手洗い部に供給された洗浄用のフラッシュ水と接触することにより、当該洗浄剤組成物が容器から流出され、洗浄剤組成物が溶け込んだフラッシュ水が便器内に放出されることによって便器を洗浄する洗浄剤である。本開示の洗浄剤組成物を水洗トイレのオンタンク用の洗浄剤として使用する場合、本開示の洗浄剤組成物は液体状又は固体状であることが好ましい。

【0041】

水洗トイレのインタンク用の洗浄剤とは、水洗トイレの貯水タンク内に投入して使用されるものであって、貯水タンク内で洗浄用のフラッシュ水と接触することにより、当該洗浄剤組成物が溶出し、フラッシュ時に洗浄剤組成物が溶け込んだフラッシュ水が便器内に放出されることによって便器を洗浄する洗浄剤である。本開示の洗浄剤組成物を水洗トイレのインタンク用の洗浄剤として使用する場合、本開示の洗浄剤組成物は固体状であることが好ましい。

【0042】

水洗トイレのリム部用の洗浄剤とは、水洗トイレのリム部に取り付けて使用されるものであって、洗浄剤組成物が収容された容器に、便器に放出されるフラッシュ水が接触することにより、当該洗浄剤組成物が容器から流出され、洗浄剤組成物が溶け込んだフラッシュ水が便器内に放出されることによって便器を洗浄する洗浄剤である。本開示の洗浄剤組成物を水洗トイレのリム部用の洗浄剤として使用する場合、本開示の洗浄剤組成物は液体状又は固体状であることが好ましい。

【0043】

便器表面に付着させて使用される洗浄剤とは、便器表面に付着させた状態で設置し、フラッシュ時に便器に放出されたフラッシュ水が接触し、洗浄剤組成物がフラッシュ水に溶出することにより便器を洗浄する洗浄剤である。本開示の洗浄剤組成物を、便器表面に付着させて使用される洗浄剤として使用する場合、便器表面への付着性を具備させるために、本開示の洗浄剤組成物はゲル状であることが好ましい。

【0044】

本開示の洗浄剤組成物は、蛍光灯の光による変色を効果的に抑制できるので、内部を視認可能な透明な収容部（洗浄剤組成物を収容する収容部）を有する容器に収容しても、また、当該容器を包装するための透明なパッケージを用いても、蛍光灯の光に曝される環境下において変色することなく安定的に外観を維持できる。従って、本開示の洗浄剤組成物を収容する容器の好適な一例としては、無色透明な収容部を有する容器が挙げられる。また、当該容器を包装するパッケージの好適な一例としては、無色透明なパッケージが挙げられる。

【実施例0045】

以下に実施例を示して本開示の発明をより具体的に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。

【0046】

以下の試験例で使用したポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、下記式で表される化合物である。

【化1】

（式中、Ｒ⁷は炭素数１０の直鎖状アルキル基、ｎは１７程度、ｍは３程度である。）

【0047】

試験例１
蛍光灯の光がない環境下で、塩化ベンザルコニウム２０重量部、レモン系香料成分（リモネン及び１，８－シネオールを主に含む）８重量部、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル４０重量部、及び精製水を、常温で混合して処方液を調製した。そして、調製した処方液２０ｍｌを３０ｍｌ容の透明プラスチック容器１０個にそれぞれ収容し、そのうち５個の透明プラスチック容器内に鉄粉を１重量％加え、ｐＨ調整剤として塩酸及び水酸化ナトリウムを用いてｐＨをそれぞれ表１に示す値に調整して試験液１～１０を調製した。ｐＨの測定方法は以下の通りである。調製直後の試験液１～１０は、いずれも無色透明であった。
＜ｐＨの測定方法＞
試験液１～１０のｐＨは、ＪＩＳＺ８８０２：２０１１「ｐＨ測定方法」に従って、ガラス電極を用いたｐＨ計（堀場製作所製、商品名：Ｆ５２）を用いて、２５℃において測定した。

【0048】

調製した試験液１～１０を色差用官能評価ボックス（PANTONE Color Resources P.J社製、商品名：PANTONE 3 Light Booth、光源：Ａ、ＣＦＷ、Ｄ６５、照度：３５００ｌｘ（３光源の合計））に設置し、２５℃の環境下で１週間光（蛍光灯の光に相当する光）負荷を与えた。その後、試験液１～１０の外観を目視で観察し、以下の判定基準に従って変色抑制効果を評価した。結果を表１に示す。
＜変色抑制効果の判定基準＞
Ａ：ほとんど変色しておらず、無色透明である。
Ｂ：僅かにピンク色に変色している。
Ｃ：ややピンク色に変色している。
Ｄ：明らかにピンク色に変色している。

【0049】

【表1】

【0050】

試験例２
試験例１で調製した処方液において、表２～１０に示す各香料成分に変更した以外は、試験例１と同様の方法で試験液を調製し、ｐＨを測定し、変色抑制効果の評価を行った。調製直後の試験液は、いずれも無色透明であった。結果を表２～１０に示す。

【0051】

【表2】

【0052】

【表3】

【0053】

【表4】

【0054】

【表5】

【0055】

【表6】

【0056】

【表7】

【0057】

【表8】

【0058】

【表9】

【0059】

【表10】

【0060】

表１～１０に示すように、塩化ベンザルコニウムと特定の香料成分とを含有する洗浄剤組成物において、ｐＨを７．０以下に調整することにより、蛍光灯の光によるピンク色への変色を効果的に抑制できることがわかった。