(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091136
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】ウェーハ分離装置及び方法並びにシリコンウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20240627BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H01L21/304 611A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207614
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】橋井 友裕
(72)【発明者】
【氏名】吉原 司
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 康則
(72)【発明者】
【氏名】川人 進一
(72)【発明者】
【氏名】増田 純久
【テーマコード(参考)】
5F057
5F131
【Fターム(参考)】
5F057AA03
5F057AA21
5F057AA31
5F057AA53
5F057BA12
5F057BB03
5F057CA06
5F057CA09
5F057CA36
5F057DA01
5F057DA05
5F057DA38
5F057FA32
5F057FA37
5F057FA45
5F057GA27
5F131AA02
5F131BA42
5F131CA12
5F131CA31
5F131DA42
5F131DB13
5F131DC14
(57)【要約】
【課題】ウェーハの分離不良を抑制し易いウェーハ分離装置及び方法並びにシリコンウェーハの製造方法を提供する。
【解決手段】流体を噴射する噴射口2と、転動体3と、転動体3を転動可能且つ一体に移動可能に保持し、往復動作可能であり、往復動作方向の一方側に付勢され、噴射口2に一体に連なる保持体4とを有する、ウェーハ分離装置1。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を噴射する噴射口と、
転動体と、
前記転動体を転動可能且つ一体に移動可能に保持し、往復動作可能であり、往復動作方向の一方側に付勢され、前記噴射口に一体に連なる保持体とを有する、ウェーハ分離装置。
【請求項2】
前記保持体が回転動作によって往復動作可能である、請求項1に記載のウェーハ分離装置。
【請求項3】
前記転動体がローラーによって構成される、請求項1に記載のウェーハ分離装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のウェーハ分離装置を用いるウェーハ分離方法であって、
ウェーハ積層体に含まれる最外層のウェーハにおける前記積層方向の端面に前記転動体を当接させることにより、前記最外層のウェーハの前記端面の位置に応じて前記噴射口を移動させる噴射口移動ステップと、
前記噴射口移動ステップによって移動させた前記噴射口から流体を噴射することにより、前記流体を前記最外層のウェーハと他のウェーハの間に流入させることで前記最外層のウェーハを分離する分離ステップと、
前記分離ステップによって分離した前記最外層のウェーハを前記積層方向に対して交差する搬送方向に移動させる搬送ステップとを有する、ウェーハ分離方法。
【請求項5】
前記噴射口移動ステップにおいて、前記最外層のウェーハの前記端面における前記噴射口側の部分に前記転動体を当接させる、請求項4に記載のウェーハ分離方法。
【請求項6】
請求項4に記載のウェーハ分離方法を用い、
前記ウェーハはシリコンウェーハである、シリコンウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウェーハ分離装置及び方法並びにシリコンウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ(例えばシリコンウェーハ)は、スライス工程によって半導体インゴットをスライスすることで複数枚のウェーハを切り出した後、各ウェーハに研磨等の処理を行うことで製品化される。
【0003】
半導体インゴットをスライスして得られた複数のウェーハにはスライス工程で用いた研削液等に由来するスラッジが付着している。そのため、スライス工程後のウェーハは、1枚ずつ洗浄工程に送られて洗浄された後、複数枚ずつカセットに収納されて研磨工程のために搬送される。ここで、複数のウェーハが積層して構成されるウェーハ積層体からウェーハを順次分離して洗浄工程に送るために、流体を噴射して最外層のウェーハと他のウェーハの間に流入させるウェーハ分離装置及び方法が知られている(例えば特許文献1~2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-233059号公報
【特許文献2】特開平9-237817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウェーハ積層体はウェーハ間へのスラッジの噛み込みなどにより最外層のウェーハに傾きが発生する場合がある。当該傾きが発生することにより、流体の噴射口と噴射した流体を流入させるべき目標位置との間の相対位置に変化が発生すると、目標位置に流体を流入させることができず、最外層のウェーハの分離不良を生じる虞がある。このようなウェーハの分離不良は、洗浄工程の停止を招き、生産効率を低下させるため、できるだけ抑制することが望ましい。
【0006】
そこで本発明の目的は、ウェーハの分離不良を抑制し易いウェーハ分離装置及び方法並びにシリコンウェーハの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は以下のとおりである。
【0008】
[1]
流体を噴射する噴射口と、
転動体と、
前記転動体を転動可能且つ一体に移動可能に保持し、往復動作可能であり、往復動作方向の一方側に付勢され、前記噴射口に一体に連なる保持体とを有する、ウェーハ分離装置。
【0009】
[2]
前記保持体が回転動作によって往復動作可能である、[1]に記載のウェーハ分離装置。
【0010】
[3]
前記転動体がローラーによって構成される、[1]又は[2]に記載のウェーハ分離装置。
【0011】
[4]
[1]~[3]の何れか1項に記載のウェーハ分離装置を用いるウェーハ分離方法であって、
ウェーハ積層体に含まれる最外層のウェーハにおける前記積層方向の端面に前記転動体を当接させることにより、前記最外層のウェーハの前記端面の位置に応じて前記噴射口を移動させる噴射口移動ステップと、
前記噴射口移動ステップによって移動させた前記噴射口から流体を噴射することにより、前記流体を前記最外層のウェーハと他のウェーハの間に流入させることで前記最外層のウェーハを分離する分離ステップと、
前記分離ステップによって分離した前記最外層のウェーハを前記積層方向に対して交差する搬送方向に移動させる搬送ステップとを有する、ウェーハ分離方法。
【0012】
[5]
前記噴射口移動ステップにおいて、前記最外層のウェーハの前記端面における前記噴射口側の部分に前記転動体を当接させる、[4]に記載のウェーハ分離方法。
【0013】
[6]
[4]又は[5]に記載のウェーハ分離方法を用い、
前記ウェーハはシリコンウェーハである、シリコンウェーハの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ウェーハの分離不良を抑制し易いウェーハ分離装置及び方法並びにシリコンウェーハの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態のウェーハ分離装置においてウェーハ積層体を積層方向の一方側へ送っている時の状態を示す模式図である。
【
図2】ウェーハ積層体へのスラッジの噛み込みがない場合の、
図1に示すウェーハ分離装置の動作を示す模式図である。
【
図3】ウェーハ積層体へのスラッジの噛み込みによって最外層のウェーハが傾いている場合の、
図1に示すウェーハ分離装置の動作を示す模式図である。
【
図4】スラッジの噛み込みによって最外層のウェーハが
図3とは反対側に傾いている場合のウェーハ分離装置の動作を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を例示説明する。
【0017】
図1~
図2に示すように、本発明の一実施形態においてウェーハ分離装置1は、流体を噴射する噴射口2と、転動体3と、転動体3を転動可能且つ一体に移動可能に保持し、一定の動作範囲内で往復動作可能であり、前記動作範囲内で往復動作方向の一方側に付勢され、噴射口2に一体に連なる保持体4とを有する。
【0018】
またウェーハ分離装置1は、スライス後の積層された複数のウェーハからなるウェーハ積層体5と転動体3とを積層方向において互いに近づける積層方向送り装置6を有する。積層方向送り装置6は例えば、ウェーハ積層体5を転動体3に向けて積層方向の一方側に搬送する搬送ステージによって構成される。
【0019】
本実施形態において、積層方向は鉛直方向であり、積層方向の前記一方側は鉛直上方である。なお、積層方向は鉛直方向に限らず、例えば、鉛直方向に対して交差する方向としてもよい。
【0020】
さらにウェーハ分離装置1は、ウェーハ積層体5の積層方向の前記一方側で転動体3に当接する最外層のウェーハ5aを分離後に積層方向に交差(好ましくは直交)する搬送方向に搬送する搬送方向送り装置7を有する。ここで最外層のウェーハ5aとは、ウェーハの積層方向においてウェーハ積層体5が搬送方向送り装置7に接する位置を基準として最も外側に位置するウェーハであって、ウェーハを洗浄工程に送る際にウェーハ積層体5から分離する対象となるウェーハを指す。
【0021】
噴射口2は例えばノズルとして構成される。噴射口2は、図示しない外部の流体供給部から流体を供給されて噴射する。噴射口2から噴射される流体は特に限定されず、例えば、水、洗浄液などの液体、又は気体などである。保持体4を往復動作方向に一方側に付勢する付勢力は重力である。なお、付勢力は重力に限定されず、例えば、バネの弾性力などを用いる構成としてもよい。
【0022】
転動体3は、第1回転軸線O1を中心に回転可能なローラーによって構成される。なお転動体3はローラーに限らず、例えばボールによって構成してもよい。しかし、転動体3との接触によるウェーハの損傷を抑制する観点から、点接触でなく線接触となるローラーを用いることが好ましい。ローラーの第1回転軸線O1は、積層方向に対して交差(好ましくは直交)し、かつ、搬送方向に対して交差(好ましくは直行)する方向に延びる。
【0023】
転動体3との接触によるウェーハの損傷を抑制する観点から、転動体3は、ウェーハとの接触面を弾性材料で形成する構成としてもよいし、ローラーの外面にブラシを設け、ブラシを介してウェーハに接触する構成としてもよい。
【0024】
保持体4は、噴射口2と転動体3とを保持する。保持体4は、本体部4aと、噴射口2を保持する噴射口保持部4bと、転動体3を保持する転動体保持部4cとを有する。本体部4aは、図示しない筐体と第2回転軸線O2において回転可能に接続し、第2回転軸線O2から略搬送方向に向かって延びる部材である。保持体4の第2回転軸線O2は、積層方向送り装置6よりも鉛直方向の上側かつ、搬送方向の反対側に位置する。第2回転軸線O2は、積層方向に対して交差(好ましくは直交)し、かつ、搬送方向に対して交差(好ましくは直行)する方向に延びる。ここで、略搬送方向とは、ベクトル成分にウェーハを搬送する向きが含まれている方向のことである。
【0025】
噴射口保持部4bは略搬送方向に延びる本体部4aから鉛直方向下向きに延びる部材である。転動体保持部4cは略搬送方向に延びる本体部4aのうち、噴射口保持部4bよりも搬送ステージに近い位置から鉛直方向下向きに延びる部材である。噴射口2は、転動体3よりも低い位置で保持され、転動体3がウェーハ積層体5のうち最外層のウェーハ5aの端面5a1と接したとき、噴射口2は最外層のウェーハ5aとその他のウェーハの境界に対して流体を噴射できるよう位置する。
【0026】
保持体4は、第2回転軸線O2を中心とする回転動作によって前記動作範囲(例えば、水平に対して±25°)内で往復動作可能である。このような構成によれば、簡単な構造で保持体4の往復動作を実現できる。しかし、保持体4はこのような構成に限らず、例えば、スライド機構などを用い、並進動作によって前記動作範囲内で往復動作可能な構成としてもよい。
【0027】
搬送方向送り装置7は、第3回転軸線O3を中心に回転可能な送りローラーによって構成される。送りローラーは、搬送ステージの上に位置する。搬送ステージに載置されたウェーハ積層体5が積層方向に搬送されることで、最外層のウェーハ5aは、端面5a1において送りローラーと当接する。送りローラーは、最外層のウェーハ5aに接した状態で、例えばモータとコンピュータ等で構成される駆動機構により、所定のタイミングで回転動作することで最外層のウェーハ5aを搬送方向に搬送する。なお搬送方向送り装置7は送りローラー以外によって構成してもよい。送りローラーの第3回転軸線O3は、積層方向に対して交差(好ましくは直交)し、かつ、搬送方向に対して交差(好ましくは直行)する方向に延びる。
【0028】
送りローラーとの接触によるウェーハの損傷を抑制する観点から、送りローラーは、ウェーハとの接触面を弾性材料で形成する構成としてもよいし、送りローラーの外面にブラシを設け、ブラシを介してウェーハに接触する構成としてもよい。
【0029】
ウェーハ分離装置1によれば、最外層のウェーハ5aの積層方向の前記一方側の端面5a1に転動体3を当接させることにより、最外層のウェーハ5aの端面5a1の位置に応じた位置に噴射口2を移動させる噴射口移動ステップと、噴射口移動ステップによって移動させた噴射口2から流体を噴射することにより、流体を最外層のウェーハ5aと他のウェーハの間に流入させることで最外層のウェーハ5aを分離する分離ステップと、分離ステップによって分離した最外層のウェーハ5aを積層方向に対して交差する搬送方向に移動させる搬送ステップとを有する、ウェーハ分離方法を行うことができる。
【0030】
以下、
図1~
図4に基づいて、ウェーハ分離装置1を用いたウェーハ分離方法について説明する。
【0031】
まず、噴射口移動ステップにおいては、最外層のウェーハ5aの端面5a1における噴射口側の部分(以下、説明の便宜上、当該部分を「噴射側部分」ともいい、その反対側の部分を「搬送側部分」ともいう)に転動体3を当接させる。
【0032】
図1に示すように、半導体インゴットをスライスして得られたウェーハ積層体5は、積層方向送り装置6が有する搬送ステージに載置される。このとき、ウェーハ積層体5はスラッジ等を噛みこんでおらず、最外層のウェーハ5aの端面5a1は水平に広がっているものとする。
【0033】
積層方向送り装置6は、ウェーハ積層体5を搬送方向送り装置6に向けて積層方向の一方側(ここでは鉛直上向き)に搬送する。積層方向の一方側に搬送されたウェーハ積層体5は、まず転動体3に当接する。転動体3は、最外層のウェーハ5aのうち積層方向の一方側の端面5a1において、最外層のウェーハ5aと当接する。このとき、保持体4は自重によって動作範囲の中の最も下に位置している。
【0034】
積層方向送り装置6は、ウェーハ積層体5が転動体3に当接した後もさらにウェーハ積層体5を積層方向の一方側へ搬送し続ける。このとき、ウェーハ積層体5が転動体3を押し、転動体3を保持する保持体4が第2回転軸線O2を中心に回転することで、転動体3、転動体3を保持する保持体4、及び保持体4に連なる噴射口2は一体として積層方向に変位する。
【0035】
転動体3の移動は第2回転軸線O2を中心とする回転運動であるため、転動体3は積層方向への変位にともなって最外層のウェーハ5aの端面5a1に当接しながら搬送方向へも変位する。転動体3が搬送方向への変位にしたがって第1回転軸線O1を中心として回転することで、転動体3が最外層のウェーハ5aの端面5a1を傷つけることを抑制できる。
【0036】
図2に示すように、積層方向送り装置6は最外層のウェーハ5aの端面5a1が送りローラーと当接する高さ(以下、基準高さとする)までウェーハ積層体5を搬送する。ウェーハ積層体5が基準高さまで移動するのにしたがって、噴射口2はさらに移動する。
【0037】
ここで、最外層のウェーハ5aと他のウェーハとの境界面のうち噴射口2に近い部分を分離点とする。噴射口2の位置、および噴射口2が流体を噴射する角度は、噴射口2から噴射された流体が分離点に当たる範囲であれば特に限定されないが、最外層のウェーハ5aを円滑に搬送方向に搬送する観点においては、噴射口2は分離点と同じ高さに位置し、流体を水平に噴射するよう設定されることが好ましい。
【0038】
分離ステップにおいて、噴射口2は流体を分離点に向けて噴射してウェーハ積層体5から最外層のウェーハ5aを分離させる。
【0039】
そして搬送ステップにおいて、搬送方向送り装置7が有する送りローラーが回転動作することで、最外層のウェーハ5aを搬送方向に搬送する。
【0040】
次に
図3に示すように、ウェーハ積層体5へのスラッジ8の噛み込みにより、ウェーハ積層体5の分離点がその反対側の部分よりも積層方向の前記一方側(すなわち鉛直方向の上側)に位置するように最外層のウェーハ5aが傾いている場合、最外層のウェーハ5aの端面5a1が水平に広がっている場合と比べて、転動体3はより高くまで押し上げられる。結果として、
図2に示すような最外層のウェーハ5aに傾きがない場合に比べて、噴射口2を第2回転軸線O2を中心に転動体3と一体に、積層方向の前記一方側に回転動作させることができる。
【0041】
したがって、最外層のウェーハ5aの端面5a1における噴射側部分が積層方向の前記一方側に寄っている時、すなわち、分離点が積層方向の前記一方側に寄っている時には、転動体3と保持体4を介して従動的に噴射口2を積層方向の前記一方側に寄せることができる。その結果、分離ステップにおいて、噴射口2から流体を噴射することにより、流体を最外層のウェーハ5aと他のウェーハの間により確実に流入させることができる。
【0042】
また、例えば
図4に示すように、ウェーハ積層体5へのスラッジ8の噛み込みにより、最外層のウェーハ5aの端面5a1における搬送側部分が噴射側部分よりも積層方向の前記一方側に位置するように最外層のウェーハ5aが傾いている場合でも、最外層のウェーハ5aの端面5a1における噴射側部分に転動体3が接触することで、
図2に示すような最外層のウェーハ5aに傾きがない場合に比べて、噴射口2を第2回転軸線O2を中心に転動体3と一体に、積層方向の他方側(つまり鉛直下方)に回転動作させることができる。
【0043】
したがって、最外層のウェーハ5aの端面5a1における噴射側部分が積層方向の前記他方側に寄っている時、すなわち、噴射口2から噴射される流体を流入させるべき最外層のウェーハ5aと他のウェーハの間の部分が積層方向の前記他方側に寄っている時には、転動体3と保持体4を介して従動的に噴射口2を積層方向の前記他方側に寄せることができる。その結果、分離ステップにおいて、噴射口2から流体を噴射することにより、流体を最外層のウェーハ5aと他のウェーハの間により確実に流入させることができる。
【0044】
なお、第2回転軸線O2の配置と保持体4の形状又は構造を変更することで、噴射口移動ステップにおいて、最外層のウェーハ5aの端面5a1における搬送側部分に転動体3を当接させることにより、上記と同様の噴射口2の動作を実現してもよい。しかし、上記のように、噴射口移動ステップにおいて最外層のウェーハ5aの端面5a1における噴射側部分に転動体3を当接させるようにする方が、噴射口2の安定した精度良い動作を実現し易いため好ましい。
【0045】
搬送ステップにおいては、分離ステップによって分離した最外層のウェーハ5aを搬送方向送り装置7によって搬送方向に移動させる。その際、転動体3が保持体4に対して転動可能であることにより、搬送方向に移動する最外層のウェーハ5aの端面5a1に従動して転動体3が転動することができるので、最外層のウェーハ5aの端面5a1と転動体3との接触による損傷が発生することを抑制できる。
【0046】
最外層のウェーハ5aが分離不良により搬送方向に移動しない搬送不良を例えばセンサによって検知する検知部を設け、搬送ステップにおいて、検知部が搬送不良を検知した場合に、送りローラーを正転、反転を繰り返すように動作させるようにしてもよい。その場合、送りローラーの正転、反転の繰り返しにより最外層のウェーハ5aが搬送方向へ前後に移動を繰り返したとしても、転動体3の従動により、最外層のウェーハ5aの端面5a1に損傷が発生することを抑制できる。
【0047】
ウェーハ分離装置1は、分離した最外層のウェーハ5aを搬送方向送り装置7によって搬送方向に搬送すると、次いで、積層方向送り装置6によって他のウェーハ(次の分離対象となるウェーハ積層体5)と転動体3とを積層方向において互いに近づけ、接触させ、その後は上述した要領による最外層のウェーハ5aの分離、搬送を繰り返す。
【0048】
本発明は前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0049】
したがって、前述した実施形態のウェーハ分離装置1は、流体を噴射する噴射口2と、転動体3と、転動体3を転動可能且つ一体に移動可能に保持し、往復動作可能であり、往復動作方向の一方側に付勢され、噴射口2に一体に連なる保持体4とを有する、ウェーハ分離装置1である限り変更可能である。
【0050】
また、前述した実施形態のウェーハ分離方法は、ウェーハ分離装置1を用いるウェーハ分離方法であって、ウェーハ積層体5に含まれる最外層のウェーハ5aにおける積層方向の端面5a1に転動体3を当接させることにより、最外層のウェーハ5aの端面5a1の位置に応じて噴射口2を移動させる噴射口移動ステップと、噴射口移動ステップによって移動させた噴射口2から流体を噴射することにより、流体を最外層のウェーハ5aと他のウェーハの間に流入させることで最外層のウェーハ5aを分離する分離ステップと、分離ステップによって分離した最外層のウェーハ5aを積層方向に対して交差する搬送方向に移動させる搬送ステップとを有する、ウェーハ分離方法である限り変更可能である。
【0051】
また、前述した実施形態のウェーハ分離方法は、シリコンウェーハの製造におけるスライス工程に適用し、スライス後のウェーハを分離して洗浄する段階で使用することができる。そうすることでシリコンウェーハのスライス工程において、ウェーハの割れや傷を防止しながらウェーハの分離不良を抑制し、生産効率を向上することができる。またその様にして得られたシリコンウェーハに対して、面取り、平坦化処理(ラッピング等)、研磨、洗浄等の通常のシリコンウェーハ製造で用いられている処理を行うことでシリコンウェーハの製造を行うことができる。
【符号の説明】
【0052】
1 ウェーハ分離装置
2 噴射口
3 転動体
4 保持体
4a 本体部
4b 保持部
4c 転動体保持部
5 ウェーハ積層体
5a 最外層のウェーハ
5a1 端面
6 積層方向送り装置
7 搬送方向送り装置
8 スラッジ
O1 第1回転軸線
O2 第2回転軸線
O3 第3回転軸線