(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091141
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】揚げ物食品用バッター液
(51)【国際特許分類】
A23L 7/157 20160101AFI20240627BHJP
A23L 17/00 20160101ALN20240627BHJP
A23L 17/40 20160101ALN20240627BHJP
【FI】
A23L7/157
A23L17/00 A
A23L17/40 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207629
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】株式会社日清製粉ウェルナ
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西出 辰徳
(72)【発明者】
【氏名】安藤 まなみ
(72)【発明者】
【氏名】重松 亨
【テーマコード(参考)】
4B025
4B042
【Fターム(参考)】
4B025LB05
4B025LB07
4B025LD03
4B025LG26
4B025LG28
4B025LG52
4B025LK01
4B042AC05
4B042AD18
4B042AG72
4B042AH01
4B042AK07
4B042AK14
4B042AP05
4B042AP19
(57)【要約】
【課題】天ぷら等の揚げ物食品の衣材として用いたときに、凹凸のある外観の揚げ物食品が確実に得られ、しかも粉っぽい食感又はべたついた食感となることがない、バッター液を提供すること。
【解決手段】澱粉5~15質量%、卵白粉及びトレハロースを含有し、水分含量が50~70質量%であり、25℃における回転型粘度計による粘度が450~1500mPa・sである、揚げ物食品用バッター液。上記澱粉中にアセチル化澱粉を含むことが好ましい。また、さらに乳化剤を0.1~2質量%含有することが好ましく、さらに粉末水あめを1~8質量%含有することも好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉5~15質量%、卵白粉及びトレハロースを含有し、水分含量が50~70質量%であり、25℃における回転型粘度計による粘度が450~1500mPa・sである、揚げ物食品用バッター液。
【請求項2】
上記澱粉中にアセチル化澱粉を含む、請求項1記載のバッター液。
【請求項3】
さらに乳化剤を0.1~2質量%含有する、請求項1又は2記載のバッター液。
【請求項4】
さらに粉末水あめを1~8質量%含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のバッター液。
【請求項5】
揚種の最外表面に付着させるものである、請求項1~4のいずれか一項に記載のバッター液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天ぷら等の揚げ物食品の衣材として用いられる、揚げ物食品用バッター液に関する。
【背景技術】
【0002】
天ぷらは、小麦粉等の衣材を水に溶いたバッター液を具材の表面に付着させて揚種とし、この揚種を高温の油で油ちょう調理して得られる食品である。天ぷらはカラッと揚げられていて、サクサクした食感を有し、表面は凹凸のある乾いた外観のものが好まれている。ボリュームがあり凹凸のある外観を得る目的で、バッター液の水分含量を低くする場合がある。しかしながら、バッター液の水分含量を低くすると、衣が粉っぽい食感になってしまう場合があった。また、バッター液の水分含量を低くすると、衣が厚くなって、凹凸のある外観が必ずしも得られなかったり、べたついた食感になることも多かった。
【0003】
従来から揚げ物食品の衣材について改良の提案がされている。特許文献1には、小麦粉、澱粉、卵白粉及び糖類を含有することを特徴とする天ぷら衣ミックスが記載され、このミックスを用いると、サクミが大きく、衣のボリュームのある天ぷらを得ることができるとされている。特許文献2には、トレハロース、ソルビトール及びマルチトールから選ばれるいずれか一種以上の糖類と、アセチル化でん粉又はエーテル化でん粉とを含有する衣材用ミックスが記載されている。このミックスを用いると、具材の旨味に優れ、衣の口当り、歯触り等の食感あるいは外観に優れる揚げ物食品を得ることができるとされている。
【0004】
また、揚げ物食品の衣材として、小麦粉に代えて澱粉を用いることも行われており、この澱粉に関しても改良技術が提案されている。特許文献3には、酸処理アセチル化澱粉及び酸処理ヒドロキシプロピル化澱粉からなる群から選択される一種以上を含有する、フライ食品用衣材が記載され、特許文献4には、小麦粉15~35質量%、酸化澱粉10~20質量%、リン酸架橋澱粉10~18質量%、及び重曹0.1~1.0質量%を含有する、水溶きタイプのから揚げ用ミックスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-295360号公報
【特許文献2】特開2011-103837号公報
【特許文献3】国際公開第2015/162972号
【特許文献4】特開2015-223119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、天ぷら等の揚げ物食品の衣材として用いたときに、凹凸のある外観の揚げ物食品が確実に得られ、しかも粉っぽい食感又はべたついた食感となることがない、バッター液を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、澱粉5~15質量%、卵白粉及びトレハロースを含有し、水分含量が50~70質量%であり、25℃における回転型粘度計による粘度が450~1500mPa・sである揚げ物食品用バッター液である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のバッター液は、水分含量が少なく、天ぷら等の揚げ物食品の衣材として用いたときに、凹凸のある外観の揚げ物食品を確実に得ることができ、しかも粉っぽい食感又はべたついた食感となることがない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のバッター液は、原料粉を水性液体に懸濁してなるものであり、常温(15~25℃)で液状乃至スラリー状の流動性を有する液体である。本発明のバッター液の水分含量は50~70質量%、好ましくは55~65質量%である。本発明において、バッター液の水分含量は、例えば以下のようにして求めることができる。
(1)計算によりバッター液の水分含量を求める方法:原料粉及び水性液体それぞれの水分含量(質量%)並びに両者の混合比(質量比)に基づいて計算すればよく、例えば、原料粉の水分含量が14質量%である場合、該原料粉と水を質量比50:50で混合してバッター液を調製すると、そのバッター液の水分含量は57質量%となる(50×0.14+50=57)。
(2)バッター液から直接、水分含量を測定する方法:測定に用いるバッター液を10g程度量り取り、その質量を正確に測定する。次いで、絶乾法に準じてバッター液を80℃で12時間乾燥させた後、バッター液の質量を再度正確に測定する。乾燥の前後の質量差を水分質量とし、乾燥前の質量に対する水分質量を百分率で求め、その値をバッター液の水分含量とする。
【0010】
尚、以下の説明において、原料粉を構成する各成分の含有量は、当該成分が水分を含んでいる場合は、水分を含めた量である。以下に詳述する各成分の中でも、澱粉及び穀粉は、一般的に10~15質量%程度の水分を含んでいる。
【0011】
本発明のバッター液は、澱粉を含有する。澱粉の種類は、特に制限されるものではなく、例えば、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、米澱粉等の未加工澱粉、及びこれらにα化、エーテル化、アセチル化、エステル化、架橋、酸化等の加工を施した加工澱粉が挙げられ、これらのいずれか1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。澱粉の含有量は、バッター液の全量中に、5~15質量%、好ましくは7~12質量%である。澱粉の含有量が上記の範囲外であると、得られたバッター液を用いて製造された揚げ物食品は、凹凸が少なくなる等、外観が劣る場合がある。
【0012】
澱粉は、加工澱粉、特にアセチル化澱粉を含むことが好ましい。澱粉が加工澱粉(好ましくはアセチル化澱粉)を含有する場合、その含有量は、バッター液の全量中に、好ましくは0.5~5質量%、より好ましくは1~3質量%である。また、未加工澱粉と加工澱粉(好ましくはアセチル化澱粉)との質量比は、前者:後者として、好ましくは1:0.01~1、より好ましくは1:0.1~0.5である。
【0013】
本発明のバッター液は、卵白粉を含有する。卵白粉としては、卵白粉を含む全卵粉を用いることもできるが、全卵から卵黄を除去した卵白粉を使用するのが望ましい。卵白粉の含有量は、バッター液の全量中に、好ましくは0.05~1質量%、より好ましくは0.1~0.7質量%である。卵白粉の含有量が上記の範囲外であると、得られたバッター液を用いて製造された揚げ物食品は、サクサクした食感に乏しいものになる場合がある。
【0014】
本発明のバッター液は、トレハロースを含有する。トレハロースの含有量は、バッター液の全量中に、好ましくは0.05~2質量%、より好ましくは0.1~0.7質量%である。トレハロースの含有量が上記範囲外であると、得られたバッター液を用いて製造された揚げ物食品は、サクサクした食感に乏しいものになる場合がある。
【0015】
好ましくは、本発明のバッター液は乳化剤を含有する。乳化剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。乳化剤を用いる場合、その含有量は、バッター液の全量中に、好ましくは0.1~2質量%、より好ましくは0.3~1質量%である。含有量が上記の範囲外であると、得られたバッター液を用いて製造された揚げ物食品のサクサクした食感が劣るものになる場合がある。
【0016】
好ましくは、本発明のバッター液は粉末水あめを含有する。粉末水あめを用いる場合、その含有量は、バッター液の全量中に、好ましくは1~8質量%、より好ましくは2~6質量%である。含有量が上記の範囲外であると、得られたバッター液を用いて製造された揚げ物食品のサクサクした食感が劣るものになる場合がある。
【0017】
本発明のバッター液は、以上に述べた澱粉、卵白粉、トレハロース並びに好ましい任意成分である乳化剤及び粉末水あめ以外に、通常、小麦粉、米粉等の穀粉を含有する。穀粉の含有量は、好ましくは25~50質量%、より好ましくは27~47質量%、さらに好ましくは29~44質量%である。
【0018】
本発明のバッター液は、必要に応じて、その他の成分を更に含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、トレハロース以外の糖類;リン酸塩;油脂類;膨張剤;増粘剤;食塩、醤油、発酵調味料、アミノ酸等の調味料;香辛料;香料;ビタミン等の栄養成分;着色料等が挙げられ、揚げ物食品の種類に応じて、これらの1種又は2種以上を適宜選択することができる。
【0019】
本発明のバッター液は、上記の各成分を混合し均一に攪拌することで調製することができる。得られたバッター液は、品温25℃における回転型粘度計による粘度が、450~1500mPa・s、好ましくは550~1100mPa・s、さらに好ましくは650~950mPa・sである。尚、粘度測定の際、回転型粘度計の回転速度は3~15rpmとする。本発明のバッター液は、水分含量50~70質量%と比較的低い水分含量でありながらも、上記のような比較的低い粘度を有する点が特徴である。これにより、具材にバッター液を付着させてなる揚種を油ちょう調理する際の、バッター液中の水分膨張の程度が適度になり、本発明の効果が得られると、本発明者らは推定している。
【0020】
本発明のバッター液は、揚げ物食品に用いられる通常のバッター液と同様にして用いることができ、例えば、具材の表面にバッター液を付着させて揚種とし、この揚種を高温の油で油ちょう調理して揚げ物食品を得ることができる。本発明のバッター液は、凹凸のある外観の揚げ物食品が得られるという本発明の効果に鑑みると、揚種の最外表面に付着させるのに好適である。
【0021】
本発明のバッター液を用いる揚げ物食品に用いられる具材は、特に限定されず、例えば、鶏、豚、牛、羊、ヤギ等の畜肉類や、ソーセージ、ハム、ベーコン等の畜肉加工品、イカ、エビ、アジ等の魚介類及び魚肉すり身等の魚介加工品、並びに野菜類等の種々のものを使用することができる。具材は、バッター液を付着させる前に、必要に応じて、調味料及び香辛料を用いて下味を付けてもよく、あるいは、薄力粉や片栗粉等の打ち粉を具材表面に付着させてもよい。
【0022】
本発明バッター液は、衣を有する種々の揚げ物食品の製造に適用することができるが、特に、天ぷら、フリッター、フライ類、から揚げ、アメリカンドッグを製造する際に好適であり、とりわけ、天ぷら、フリッター等、具材量に対して衣量が比較的多い揚げ物食品の製造に特に好適である。
【0023】
次に、本発明をさらに具体的に説明するために、実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例0024】
(実施例1~2、比較例1~6)
以下の表1に示す配合で原料を混合し、バッター液を製造した。バッター液の水分含量を上記(2)の方法により測定した。また、バッター液の粘度を下記の粘度測定法により測定した。これらの結果を表1に示す。
(粘度測定法)
バッター液の品温を25℃とし、B型粘度計(型番BM型:TOKIMEC製)を用いて、ローター回転速度3~15rpmで測定した。
【0025】
(試験例1)
具材として尾付き海老の身(20g/1尾)を準備した。キッチンペーパーを用いて具材表面の水分を除去し、該具材表面に打ち粉(薄力粉)を薄く付着させた後、実施例又は比較例の各バッター液を海老の身の表面全体にからめて付着させて、バッター液が付着した具材を得た。このバッター液が付着した具材を、170℃の油槽に投入し、2分30秒間油ちょうして、揚げ物食品(海老天ぷら)を製造した。
得られた海老天ぷらの粗熱を取った後、10名の専門パネラーに下記評価基準に従って、外観及び食感を評価してもらった。その結果を10名の点数の平均値として以下の表1に示す。
【0026】
<天ぷらの外観の評価基準>
5点:表面全体(見た目で表面積の90%以上)に凹凸があり、非常に良好。
4点:表面のほぼ全体(見た目で表面積の60%以上90%未満)に凹凸があり、良好。
3点:表面の半分程度(見た目で表面積の40%以上60%未満)に凹凸があり、問題のない外観。
2点:表面に凹凸があまりなく(見た目で表面積の10%以上40%未満)、不良。
1点:表面に凹凸がほとんどなく(見た目で表面積の10%未満)、非常に不良。
<天ぷらの食感の評価基準>
5点:粉っぽさやべたつきは感じられず、衣が非常にサクサクとしており、非常に良好。
4点:粉っぽさやべたつきは感じられず、衣がサクサクとしており、良好。
3点:粉っぽさ又はべたつきがわずかに感じられるが、サクサクとした食感が感じられ、問題のない食感。
2点:粉っぽさ又はべたつきが感じられ、衣のサクサクとした食感があまり感じられず、衣が柔らかく、不良。
1点:粉っぽさ又はべたつきが強く感じられ、衣のサクサクとした食感が感じられず、非常に不良。
【0027】
【0028】
(実施例3~20、比較例7~8)
各成分の含有量を表2~3に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にしてバッター液を製造した。得られたバッター液を用いて、試験例1と同様にして海老天ぷらを製造し評価した。それらの結果を表2~3に示す。
【0029】
【0030】
【0031】
(実施例21~30)
乳化剤としてのショ糖脂肪酸エステル及び/又は粉末水あめを用い、各成分の含有量を表4に記載のようにした以外は、実施例1と同様にしてバッター液を製造した。得られたバッター液を用いて、試験例1と同様にして海老天ぷらを製造し評価した。それらの結果を表4に示す。
【0032】
【0033】
(実施例31~36、比較例9~10)
各成分の含有量を表5に記載のように変更し、バッター液の粘度を表5に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にしてバッター液を製造した。得られたバッター液を用いて、試験例1と同様にして海老天ぷらを製造し評価した。それらの結果を表5に示す。
【0034】