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特開2024-91165合成中間体パッケージ、反応性化合物の保管方法、ポリマーの製造方法及び有機光電変換素子の製造方法
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  • 特開-合成中間体パッケージ、反応性化合物の保管方法、ポリマーの製造方法及び有機光電変換素子の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091165
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】合成中間体パッケージ、反応性化合物の保管方法、ポリマーの製造方法及び有機光電変換素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/26 20060101AFI20240627BHJP
   C08G 61/12 20060101ALI20240627BHJP
   H10K 30/30 20230101ALI20240627BHJP
   H10K 30/50 20230101ALI20240627BHJP
   B65D 77/04 20060101ALI20240627BHJP
   B65D 77/00 20060101ALI20240627BHJP
   C07F 5/02 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B65D81/26 N
C08G61/12
H10K30/30
H10K30/50
B65D77/04 E
B65D77/00 C
C07F5/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207669
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪口 大輔
【テーマコード(参考)】
3E067
4H048
4J032
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
3E067AB96
3E067AB99
3E067AC01
3E067BA01A
3E067BA12A
3E067BB08A
3E067BB08B
3E067BB11A
3E067BB11B
3E067BB12C
3E067BB14A
3E067BB14B
3E067BB14C
3E067BB15A
3E067BB15B
3E067BB26C
3E067BC03A
3E067BC03B
3E067CA05
3E067CA06
3E067EA06
3E067EA23
3E067EB27
3E067EE25
3E067EE59
3E067FA04
3E067FB07
3E067FC01
3E067GB12
4H048AA05
4H048VA77
4J032BA05
4J032BA21
4J032BB06
4J032BC03
4J032CG01
5F151AA11
5F151FA02
5F151FA06
5F251AA11
5F251FA02
5F251FA06
(57)【要約】
【課題】経時による反応性化合物の純度の低下を抑えることができる合成中間体パッケージ及び反応性化合物の保管方法並びにその応用の提供。
【解決手段】合成中間体である反応性化合物と、ガスバリア性を有し、前記反応性化合物を内部に収容した封入容器と、前記封入容器の内部の雰囲気に接するように配置された乾燥剤と、を有する合成中間体パッケージ、反応性化合物の保管方法、ポリマーの製造方法及び有機光電変換素子の製造方法
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成中間体である反応性化合物と、
ガスバリア性を有し、前記反応性化合物を内部に収容した封入容器と、
前記封入容器の内部の雰囲気に接するように配置された乾燥剤と、を有する合成中間体パッケージ。
【請求項2】
前記反応性化合物がボロン酸及びボロン酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の合成中間体パッケージ。
【請求項3】
前記反応性化合物が芳香族複素環基を有するボロン酸及び芳香族複素環基を有するボロン酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の合成中間体パッケージ。
【請求項4】
前記反応性化合物がπ共役系化合物である請求項1に記載の合成中間体パッケージ。
【請求項5】
前記乾燥剤が、シリカゲルを含む請求項1に記載の合成中間体パッケージ。
【請求項6】
前記シリカゲルの質量に対する、前記反応性化合物の質量の比が0.1以上5以下である請求項5に記載の合成中間体パッケージ。
【請求項7】
前記封入容器の外側に袋状容器を有する請求項1に記載の合成中間体パッケージ。
【請求項8】
加水分解が進行しにくい雰囲気下で反応性化合物を保管する工程を含む、反応性化合物の保管方法。
【請求項9】
前記加水分解が進行しにくい雰囲気が、絶対湿度が25℃で10g/m以下の雰囲気である請求項8に記載の反応性化合物の保管方法。
【請求項10】
内部に乾燥剤を備える封入容器内に前記反応性化合物を保管する請求項8に記載の反応性化合物の保管方法。
【請求項11】
加水分解が進行しにくい雰囲気下で反応性化合物を保管する工程と、
保管後の前記反応性化合物を反応させる工程と、
を含む、ポリマーの製造方法。
【請求項12】
内部に乾燥剤を備える封入容器内に前記反応性化合物を保管する請求項11に記載のポリマーの製造方法。
【請求項13】
湿度を調整した雰囲気下で反応性化合物を保管する工程と、
保管後の前記反応性化合物を反応させる工程と、
を含む、ポリマーの製造方法。
【請求項14】
前記保管する工程において、絶対湿度が25℃で10g/m以下の雰囲気になるように湿度を調整する請求項12又は請求項13に記載のポリマーの製造方法。
【請求項15】
陽極及び陰極を含む1対の電極、及び前記1対の電極間に設けられた活性層を備える有機光電変換素子の製造方法において、
加水分解が進行しにくい雰囲気下で反応性化合物を保管する工程と、
保管後の前記反応性化合物を反応させてポリマーを得る工程と、
前記ポリマーを用いて、活性層を形成する工程と、を含む、有機光電変換素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、合成中間体パッケージ、反応性化合物の保管方法、ポリマーの製造方法及び有機光電変換素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複素芳香環ボロン酸、複素芳香環ボロン酸エステル等のような反応性化合物は不安定であり、加水分解等を引き起こしやすい。そのため、長期間保管において経時により反応性化合物の純度が低下しやすい。
非特許文献1には、ボロン酸の加水分解速度が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】H. G. Kuivila, J. F. Reuwer, JR., and J. A. Mangravite, PROTODEBORONATION OF ARENEBORONIC ACID, July 5, 1964
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、合成中間体である反応性化合物の経時による純度の低下を抑えることができるパッケージの開発が求められている。
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、経時による反応性化合物の純度の低下を抑えることができる合成中間体パッケージを提供することである。
本開示の他の一実施形態が解決しようとする課題は、経時による反応性化合物の純度の低下を抑えることができる反応性化合物の保管方法を提供することである。
本開示の他の一実施形態が解決しようとする課題は、経時による純度の低下が抑えられた反応性化合物を用いたポリマーの製造方法を提供することである。
本開示の他の一実施形態が解決しようとする課題は、経時による純度の低下が抑えられた反応性化合物を用いた有機光電変換素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段には、以下の手段が含まれる。
<1> 合成中間体である反応性化合物と、
ガスバリア性を有し、前記反応性化合物を内部に収容した封入容器と、
前記封入容器の内部の雰囲気に接するように配置された乾燥剤と、を有する合成中間体パッケージ。
<2> 前記反応性化合物がボロン酸及びボロン酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種である<1>に記載の合成中間体パッケージ。
<3> 前記反応性化合物が芳香族複素環基を有するボロン酸及び芳香族複素環基を有するボロン酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種である<1>又は<2>に記載の合成中間体パッケージ。
<4> 前記反応性化合物がπ共役系化合物である<1>~<3>のいずれか1つに記載の合成中間体パッケージ。
<5> 前記乾燥剤が、シリカゲルを含む<1>~<4>のいずれか1つに記載の合成中間体パッケージ。
<6> 前記シリカゲルの質量に対する、前記反応性化合物の質量の比が0.1以上5以下である<5>に記載の合成中間体パッケージ。
<7> 前記封入容器の外側に袋状容器を有する<1>~<6>のいずれか1つに記載の合成中間体パッケージ。
<8> 加水分解が進行しにくい雰囲気下で反応性化合物を保管する工程を含む、反応性化合物の保管方法。
<9> 前記加水分解が進行しにくい雰囲気が、絶対湿度が25℃で10g/m以下の雰囲気である<8>に記載の反応性化合物の保管方法。
<10> 内部に乾燥剤を備える封入容器内に前記反応性化合物を保管する<8>又は<9>に記載の反応性化合物の保管方法。
<11> 加水分解が進行しにくい雰囲気下で反応性化合物を保管する工程と、
保管後の前記反応性化合物を反応させる工程と、
を含む、ポリマーの製造方法。
<12> 内部に乾燥剤を備える封入容器内に前記反応性化合物を保管する<11>に記載のポリマーの製造方法。
<13> 湿度を調整した雰囲気下で反応性化合物を保管する工程と、
保管後の前記反応性化合物を反応させる工程と、
を含む、ポリマーの製造方法。
<14> 前記保管する工程において、絶対湿度が25℃で10g/m以下の雰囲気になるように湿度を調整する<12>又は<13>に記載のポリマーの製造方法。
<15> 陽極及び陰極を含む1対の電極、及び前記1対の電極間に設けられた活性層を備える有機光電変換素子の製造方法において、
加水分解が進行しにくい雰囲気下で反応性化合物を保管する工程と、
保管後の前記反応性化合物を反応させてポリマーを得る工程と、
前記ポリマーを用いて、活性層を形成する工程と、を含む、有機光電変換素子の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、経時による反応性化合物の純度の低下を抑えることができる合成中間体パッケージが提供される。
本開示の他の一実施形態が解決しようとする課題は、経時による反応性化合物の純度の低下を抑えることができる反応性化合物の保管方法が提供される。
本開示の他の一実施形態が解決しようとする課題は、経時による純度の低下が抑えられた反応性化合物を用いたポリマーの製造方法が提供される。
本開示の他の一実施形態が解決しようとする課題は、経時による純度の低下が抑えられた反応性化合物を用いた有機光電変換素子の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示に係る合成中間体パッケージを透過的に示す模式的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0009】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
「工程」とは、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0010】
本明細書中、「構成単位」とは、ポリマー中に1個以上存在する単位構造を意味する。「構成単位」は、「繰返し単位」(ポリマー中に2個以上存在する単位構造)として含まれることが好ましい。
「水素原子」は、軽水素原子であっても、重水素原子であってもよい。
「ハロゲン原子」には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が含まれる。
「置換基を有していてもよい」とは、その化合物又は基を構成するすべての水素原子が無置換の場合、及び1個以上の水素原子の一部又は全部が置換基によって置換されている場合の両方の態様を含む。
【0011】
本明細書中の置換基について以下に説明する。
「アルキル基」は、別に断らない限り、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~20である。分岐状又は環状であるアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~50であり、好ましくは3~30であり、より好ましくは4~20である。
【0012】
アルキル基は、置換基を有していてもよい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソアミル基、2-エチルブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、3-n-プロピルヘプチル基、アダマンチル基、n-デシル基、3,7-ジメチルオクチル基、2-エチルオクチル基、2-n-ヘキシル-デシル基、n-ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル墓、オクタデシル基、エイコシル基等のアルキル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、3-フェニルプロピル基、3-(4-メチルフェニル)プロピル基、3-(3,5-ジ-n-ヘキシルフェニル)プロピル基、6-エチルオキシヘキシル基等の置換基を有するアルキル基が挙げられる。
【0013】
「アリール基」は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子を1個を除いた残りの原子団を意味する。アリール基の炭素数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~50であり、好ましくは6~30であり、より好ましくは6~20である。
アリール基は、置換基を有していてもよい。アリール基の具体例としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、9-アントラセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、2-フルオレニル基、3-フルオレニル基、4-フルオレニル基、2-フェニルフェニル基、3-フェニルフェニル基、4-フェニルフェニル基、及びアルキル基、アルコキシ基、アリール基、フッ素原子等の置換基を有する基が挙げられる。
【0014】
「アルコキシ基」は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルコキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~40であり、好ましくは1~10である。分岐状又は環状のアルコキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~40であり、好ましくは4~10である。
アルコキシ基は、置換基を有していてもよい。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、3,7-ジメチルオクチルオキシ基、及びラウリルオキシ基が挙げられる。
【0015】
「アリールオキシ基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60であり、好ましくは6~48である。
アリールオキシ基は、置換基を有していてもよい。アリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、1-アントラセニルオキシ基、9-アントラセニルオキシ基、1-ピレニルオキシ基、及びアルキル基、アルコキシ基、フッ素原子等の置換基を有する基が挙げられる。
【0016】
「アルキルチオ基」は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルキルチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~40であり、好ましくは1~10である。分岐状及び環状のアルキルチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~40であり、好ましくは4~10である。
アルキルチオ基は、置換基を有していてもよい。アルキルチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2-エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7-ジメチルオクチルチオ基、ラウリルチオ基、及びトリフルオロメチルチオ基が挙げられる。
【0017】
「アリールチオ基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60であり、好ましくは6~48である。
アリールチオ基は、置換基を有していてもよい。アリールチオ基の例としては、フェニルチオ基、C1~C12アルキルオキシフェニルチオ基(ここで、「C1~C12」は、その直後に記載された基の炭素原子数が1~12であることを示す。以下も同様である。
)、C1~C12アルキルフェニルチオ基、1-ナフチルチオ基、2-ナフチルチオ基、及びペンタフルオロフェニルチオ基が挙げられる。
【0018】
「p価の複素環基」(pは、1以上の整数を表す。)とは、置換基を有していてもよい複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちのp個の水素原子を除いた残りの原子団を意味する。p価の複素環基の中でも、「p価の芳香族複素環基」が好ましい。「p価の芳香族複素環基」は、置換基を有していてもよい芳香族複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちp個の水素原子を除いた残りの原子団を意味する。
【0019】
ここで、複素環式化合物が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、1価の複素環基、置換アミノ基、アシル基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、置換オキシカルボニル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、及びニトロ基が挙げられる。
【0020】
芳香族複素環式化合物には、複素環自体が芳香族性を示す化合物に加えて、芳香族性を示さない複素環に芳香環が縮環している化合物が包含される。
芳香族複素環式化合物のうち、複素環自体が芳香族性を示す化合物の具体例としては、オキサジアゾール、チアジアゾール、チアゾール、オキサゾール、チオフェン、ピロール、ホスホール、フラン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、ピリダジン、キノリン、イソキノリン、カルバゾール、及びジベンゾホスホールが挙げられる。
【0021】
芳香族複素環式化合物のうち、芳香族性を示さない複素環に芳香環が縮環している化合物の具体例としては、フェノキサジン、フェノチアジン、ジベンゾボロール、ジベンゾシロール、及びベンゾピランが挙げられる。
【0022】
1価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常、2~60であり、好ましくは4~20である。
1価の複素環基は、置換基を有していてもよく、1価の複素環基の具体例としては、例えば、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、及びこれらの基がアルキル基、アルコキシ基等の置換基を有している基が挙げられる。
【0023】
「置換アミノ基」とは、置換基を有するアミノ基を意味する。置換アミノ基が有し得る置換基の例としては、アルキル基、アリール基、及び1価の複素環基が挙げられる。置換基としては、アルキル基、アリール基、又は1価の複素環基が好ましい。置換アミノ基の炭素原子数は、通常2~30である。
置換アミノ基の例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(4-メチルフェニル)アミノ基、ビス(4-tert-ブチルフェニル)アミノ基、ビス(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)アミノ基等のジアリールアミノ基が挙げられる。
【0024】
「アシル基」は、炭素原子数が通常2~20であり、好ましくは炭素原子数が2~18である。アシル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、及びペンタフルオロベンゾイル基が挙げられる。
【0025】
「イミン残基」とは、イミン化合物から、炭素原子-窒素原子二重結合を構成する炭素原子又は窒素原子に直接結合する水素原子を1個除いた残りの原子団を意味する。「イミン化合物」とは、分子内に、炭素原子-窒素原子二重結合を有する有機化合物を意味する。イミン化合物の例としては、アルジミン、ケチミン、及びアルジミン中の炭素原子-窒素原子二重結合を構成する窒素原子に結合している水素原子が、アルキル基等で置換された化合物が挙げられる。
イミン残基は、通常炭素原子数が2~20であり、好ましくは炭素原子数が2~18である。イミン残基の例としては、下記の構造式で表される基が挙げられる。下記構造式中「Me」はメチル基を意味する。
【0026】
【化1】
【0027】
「アミド基」は、アミドから窒素原子に結合した水素原子を1個除いた残りの原子団を意味する。アミド基の炭素原子数は、通常1~20であり、好ましくは1~18である。
アミド基の具体例としては、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、及びジペンタフルオロベンズアミド基が挙げられる。
【0028】
「酸イミド基」とは、酸イミドから窒素原子に結合した水素原子を1個除いた残りの原子団を意味する。酸イミド基の炭素原子数は、通常、4~20である。酸イミド基の具体例としては、下記の構造式で表される基が挙げられる。下記構造式中「Me」はメチル基を意味する。
【0029】
【化2】
【0030】
「置換オキシカルボニル基」とは、R’-O-(C=O)-で表される基を意味する。
ここで、R’は、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、又は1価の複素環基を表す。
置換オキシカルボニル基は、炭素原子数が通常2~60であり、好ましくは炭素原子数が2~48である。
置換オキシカルボニル基の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2-エチルヘキシルオキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、3,7-ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロブトキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、及びピリジルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0031】
「アルケニル基」は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~30であり、好ましくは3~20である。分岐状又は環状のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~30であり、好ましくは4~20である。
アルケニル基は、置換基を有していてもよい。アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、7-オクテニル基、及びこれらの基がアルキル基、アルコキシ基等の置換基を有している基が挙げられる。
【0032】
「アルキニル基」は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~20であり、好ましくは3~20である。分岐状又は環状のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常4~30であり、好ましくは4~20である。
アルキニル基は置換基を有していてもよい。アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、及びこれらの基がアルキル基、アルコキシ基等の置換基を有している基が挙げられる。
【0033】
<合成中間体パッケージ>
本開示に係る合成中間体パッケージは、合成中間体である反応性化合物と、ガスバリア性を有し、反応性化合物を内部に収容した封入容器と、封入容器の内部の雰囲気に接するように配置された乾燥剤と、を有する。
【0034】
本開示に係る合成中間体パッケージは、上記構成により、経時による反応性化合物の純度の低下を抑えることができる。その理由は、次の通り推測される。
【0035】
ガスバリア性を有し、反応性化合物を内部に収容した封入容器の内部の雰囲気に接するように乾燥剤を配置することで、封入容器の内部の雰囲気が低湿度に保たれる。そのため、反応性化合物の加水分解が抑制され、経時による反応性化合物の純度の低下を抑えることができる。
【0036】
図1を参照して、本開示に係る合成中間体パッケージの一例を説明する。
図1に示す様に、合成中間体パッケージ10は、反応性化合物60と、封入容器30と、乾燥剤50と、を有する。
そして、保管安定性の観点から、合成中間体パッケージ10は、封入容器30の外側に袋状容器40を有することが好ましい。
更に、保管安定性の観点から、合成中間体パッケージ10は、封入容器30の外側、かつ、袋状容器40の内側に乾燥剤50を含むことが好ましい。
以下、合成中間体パッケージの具体的な構成について説明する。なお、符号については省略する。
【0037】
(反応性化合物)
本開示に係る合成中間体パッケージは合成中間体である反応性化合物を有する。
ここで反応性化合物とは、反応性官能基を有する化合物である。
反応性官能基としては、ボロン酸基、ボロン酸エステル残基等が挙げられる。
ここで、ボロン酸基とは下記式(S1)で表される基であり、ボロン酸エステル残基とは下記式(S2)で表される基である。
【0038】
【化3】
【0039】
式(S1)及び式(S2)中、*は結合手を表す。また、式(S2)中、Rは1価の基を表し、それぞれ同一の基であってもよく、異なった基であってもよい。また、式(S2)中、Rはそれぞれ結合し、環を形成していてもよい。
【0040】
保管安定性の観点から、反応性化合物はボロン酸及びボロン酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
ここでボロン酸とは、少なくとも1つのボロン酸基を有する化合物である。ボロン酸エステルとは、少なくとも1つのボロン酸エステル残基を有する化合物である。
【0041】
保管安定性の観点から、芳香族複素環基を有するボロン酸及び芳香族複素環基を有するボロン酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0042】
保管安定性の観点から、反応性化合物がπ共役系化合物であることが好ましい。
ここで、π共役系化合物とはπ共役構造を有する化合物である。
【0043】
反応性化合物は、下記式(I)で表される化合物であることが好ましい。
【0044】
【化4】
【0045】
式(I)中、Zは2価の基を表す。式中、Yは、ヒドロキシル基を有するボロン酸エステル残基を表す。Ar及び、Arは、同一でも異なっていてもよく、3価の芳香族炭化水素基又は3価の芳香族複素環基を表す。
【0046】
式(I)中、Zで表される2価の基は、sp混成軌道を有する炭素原子、sp混成軌道を有するケイ素原子、sp混成軌道を有する窒素原子及び、sp混成軌道を有する酸素原子のうちの少なくともいずれか1つの原子を含む2価の基などが挙げられ、下記式(Z-1)~式(Z-7)で表される基であることが好ましく、反応性化合物の純度向上の観点から、式(Z-4)又は式(Z-5)で表される基であることがさらに好ましい。
【0047】
【化5】
【0048】
式(Z-1)~式(Z-7)中、Rは、同一又は相異なり、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を表し、*は結合手を表す。
【0049】
式(Z-1)~式(Z-7)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を表す。置換基としては、1価の基であり、例えば、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもようアルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、置換されていてもよいアリールアルキル基、置換されていてもよいアリールアルコキシ基、置換されていてもよいアリールアルキルチオ基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアミド基、置換されていてもよい酸イミド基、アミノ基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、複素環基、複素環オキシ基、複素環チオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、カルボキシル基、シアノ基が挙げられる。式(Z-1)~式(Z-7)のそれぞれにおいて、Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。
【0050】
Rで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子である。
【0051】
置換されていてもよいアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルキル基であってもよい。アルキル基の炭素数は、通常1~30である。アルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子が挙げられる。該ハロゲン原子の具体例は、Rで表されるハロゲン原子の具体例と同じである。置換基を有していてもよいアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル墓、ペンチル基、イソペンチル基、2-メチルブチル基、1-メチルブチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、3,7-ジメチルオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル墓、オクタデシル基、エイコシル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
【0052】
置換されていてもよいアルコキシ基は、直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルコキシ基であってもよい。アルコキシ基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子が挙げられる。該ハロゲン原子の具体例は、Rで表されるハロゲン原子の具体例と同じである。アルコキシ基の炭素数は、通常1~20程度である。置換基を有していてもよいアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7-ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基、メトキシメチルオキシ基及び2-メトキシエチルオキシ基が挙げられる。
【0053】
置換されていてもよいアルキルチオ基は、直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルキルチオ基であってもよい。アルキルチオ基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子が挙げられる。該ハロゲン原子の具体例は、Rで表されるハロゲン原子の具体例と同じである。アルキルチオ基の炭素数は、通常1~20程度である。置換基を有していてもよいアルキルチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2-エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7-ジメチルオクチルチオ基、ラウリルチオ基及びトリフルオロメチルチオ基が挙げられる。
【0054】
アリール基は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から、芳香環上の水素原子1個を除いた原子団であり、炭素数は、通常6~60である。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルチオ基が挙げられる。該ハロゲン原子、置換されていてもよいアルコキシ基及び置換されていてもよいアルキルチオ基の具体例は、Rで表されるハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基及び置換されていてもよいアルキルチオ基の具体例と同じである。アリール基の具体例としては、フェニル基、C1~C12アルキルオキシフェニル基(C1~C12アルキルは、炭素数1~12のアルキルであることを示す。C1~C12アルキルは、好ましくはC1~C8アルキルであり、より好ましくはC1~C6アルキルである。C1~C8アルキルは、炭素数1~8のアルキルであることを示し、C1~C6アルキルは、炭素数1~6のアルキルであることを示す。C1~C12アルキル、C1~C8アルキル及びC1~C6アルキルの具体例としては、上記アルキル基で説明し例示したものが挙げられる。以下も同様である。)、C1~C12アルキルフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基及びペンタフルオロフェニル基が挙げられる。
【0055】
アリールオキシ基は、その炭素数が通常6~60程度である。アリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、C1~C12アルキルオキシフェノキシ基、C1~C12アルキルフェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基及びペンタフルオロフェニルオキシ基が挙げられる。
【0056】
アリールチオ基は、その炭素数が通常6~60程度である。アリールチオ基の具体例としては、フェニルチオ基、C1~C12アルキルオキシフェニルチオ基、C1~C12アルキルフェニルチオ基、1-ナフチルチオ基、2-ナフチルチオ基及びペンタフルオロフェニルチオ基が挙げられる。
【0057】
置換されていてもよいアリールアルキル基は、その炭素数が通常7~60程度であり、アルキル部分が置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子が挙げられる。該ハロゲン原子の具体例は、Rで表されるハロゲン原子の具体例と同じである。置換基を有していてもよいアリールアルキル基の具体例としては、フェニル-C1~C12アルキル基、C1~C12アルキルオキシフェニル-C1~C12アルキル基、C1~C12アルキルフェニル-C1~C12アルキル基、1-ナフチル-C1~C12アルキル基及び2-ナフチル-C1~C12アルキル基が挙げられる。
【0058】
置換されていてもよいアリールアルコキシ基は、その炭素数が通常7~60程度であり、アルコキシ部分が置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子が挙げられる。該ハロゲン原子の具体例は、Rで表されるハロゲン原子の具体例と同じである。置換基を有していてもよいアリールアルキルオキシ基の具体例としては、フェニル-C1~C12アルキルオキシ基、C1~C12アルキルオキシフェニル-C1~C12アルキルオキシ基、C1~C12アルキルフェニル-C1~C12アルキルオキシ基、1-ナフチル-C1~C12アルキルオキシ基及び2-ナフチル-C1~C12アルキルオキシ基が挙げられる。
【0059】
置換されていてもよいアリールアルキルチオ基は、その炭素数が通常7~60程度であり、アルキルチオ部分が置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子が挙げられる。該ハロゲン原子の具体例は、Rで表されるハロゲン原子の具体例と同じである。置換基を有していてもよいアリールアルキルチオ基の具体例としては、フェニル-C1~C12アルキルチオ基、C1~C12アルキルオキシフェニル-C1~C12アルキルチオ基、C1~C12アルキルフェニル-C1~C12アルキルチオ基、1-ナフチル-C1~C12アルキルチオ基及び2-ナフチル-C1~C12アルキルチオ基が挙げられる。
【0060】
置換されていてもよいアシル基は、その炭素数が通常2~20程度である。アシル基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子が挙げられる。該ハロゲン原子の具体例は、Rで表されるハロゲン原子の具体例と同じである。置換基を有していてもよいアシル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基及びペンタフルオロベンゾイル基が挙げられる。
【0061】
置換されていてもよいアシルオキシ基は、その炭素数が通常2~20程度である。アシルオキシ基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子が挙げられる。該ハロゲン原子の具体例は、Rで表されるハロゲン原子の具体例と同じである。置換基を有していてもよいアシルオキシ基の具体例としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基及びペンタフルオロベンゾイルオキシ基が挙げられる。
【0062】
置換されていてもよいアミド基は、その炭素数が通常1~20程度である。アミド基とは、アミドから窒素原子に結合した水素原子を除いて得られる基をいう。アミド基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子が挙げられる。該ハロゲン原子の具体例は、Rで表されるハロゲン原子の具体例と同じである。置換基を有していてもよいアミド基の具体例としては、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基及びジペンタフルオロベンズアミド基が挙げられる。
【0063】
置換されていてもよい酸イミド基とは、酸イミドから窒素原子に結合した水素原子を除いて得られる基をいう。酸イミド基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子が挙げられる。該ハロゲン原子の具体例は、Rで表されるハロゲン原子の具体例と同じである。置換基を有していてもよい酸イミド基の具体例としては、スクシンイミド基及びフタル酸イミド基が挙げられる。
【0064】
置換アミノ基は、その炭素数が通常1~40程度である。置換アミノ基が有する置換基としては、例えば、置換されていてもよいアルキル基及びアリール基が挙げられる。該置換されていてもよいアルキル基及びアリール基の具体例は、Rで表される置換されていてもよいアルキル基及びアリール基の具体例と同じである。置換基アミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert-ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2-エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、3,7-ジメチルオクチルアミノ基、ラウリルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ピロリジル基、ピペリジル基、ジトリフルオロメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、C1~C12アルコキルオキシフェニルアミノ基、ジ(C1~C12アルキルオキシフェニル)アミノ基、ジ(C1~C12アルキルフェニル)アミノ基、1-ナフチルアミノ基、2-ナフチルアミノ基、ペンタフルオロフェニルアミノ基、ピリジルアミノ基、ピリダジニルアミノ基、ピリミジルアミノ基、ピラジルアミノ基、トリアジルアミノ基、フェニル-C1~C12アルキルアミノ基、C1~C12アルキルオキシフェニル-C1~C12アルキルアミノ基、C1~C12アルキルフェニル-C1~C12アルキルアミノ基、ジ(C1~C12アルキルオキシフェニル-C1~C12アルキル)アミノ基、ジ(C1~C12アルキルフェニル-C1~C12アルキル)アミノ基、1-ナフチル-C1~C12アルキルアミノ基及び2-ナフチル-C1~C12アルキルアミノ基が挙げられる。
【0065】
置換シリル基が有する置換基としては、例えば、置換されていてもよいアルキル基及びアリール基が挙げられる。該置換されていてもよいアルキル基及びアリール基の具体例は、Rで表される置換されていてもよいアルキル基及びアリール基の具体例と同じである。置換シリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ-p-キシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基及びジメチルフェニルシリル基が挙げられる。
【0066】
置換シリルオキシ基が有する置換基としては、例えば、置換されていてもよいアルキル基及びアリール基が挙げられる。該置換されていてもよいアルキル基及びアリール基の具体例は、Rで表される置換されていてもよいアルキル基及びアリール基の具体例と同じである。置換シリルオキシ基の具体例としては、トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、トリプロピルシリルオキシ基、トリイソプロピルシリルオキシ基、tert-ブチルジメチルシリルオキシ基、トリフェニルシリルオキシ基、トリ-p-キシリルシリルオキシ基、トリベンジルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基、tert-ブチルジフェニルシリルオキシ基及びジメチルフェニルシリルオキシ基が挙げられる。
【0067】
置換シリルチオ基が有する置換基としては、例えば、置換されていてもよいアルキル基及びアリール基が挙げられる。該置換されていてもよいアルキル基及びアリール基の具体例は、Rで表される置換されていてもよいアルキル基及びアリール基の具体例と同じである。置換シリルチオ基の具体例としては、トリメチルシリルチオ基、トリエチルシリルチオ基、トリプロピルシリルチオ基、トリイソプロピルシリルチオ基、tert-ブチルジメチルシリルチオ基、トリフェニルシリルチオ基、トリ-p-キシリルシリルチオ基、トリベンジルシリルチオ基、ジフェニルメチルシリルチオ基、tert-ブチルジフェニルシリルチオ基及びジメチルフェニルシリルチオ基が挙げられる。
【0068】
置換シリルアミノ基が有する置換基としては、例えば、置換されていてもよいアルキル基及びアリール基が挙げられる。該置換されていてもよいアルキル基及びアリール基の具体例は、Rで表される置換されていてもよいアルキル基及びアリール基の具体例と同じである。置換シリルアミノ基の具体例としては、トリメチルシリルアミノ基、トリエチルシリルアミノ基、トリプロピルシリルアミノ基、トリイソプロピルシリルアミノ基、tert-ブチルジメチルシリルアミノ基、トリフェニルシリルアミノ基、トリ-p-キシリルシリルアミノ基、トリベンジルシリルアミノ基、ジフェニルメチルシリルアミノ基、tert-ブチルジフェニルシリルアミノ基、ジメチルフェニルシリルアミノ基、ジ(トリメチルシリル)アミノ基、ジ(トリエチルシリル)アミノ基、ジ(トリプロピルシリル)アミノ基、ジ(トリイソプロピルシリル)アミノ基、ジ(tert-ブチルジメチルシリル)アミノ基、ジ(トリフェニルシリル)アミノ基、ジ(トリ-p-キシリルシリル)アミノ基、ジ(トリベンジルシリル)アミノ基、ジ(ジフェニルメチルシリル)アミノ基、ジ(tert-ブチルジフェニルシリル)アミノ基、ジ(ジメチルフェニルシリル)アミノ基が挙げられる。
【0069】
複素環基は、置換基を有していてもよい複素環式化合物から、複素環上の水素原子1個を除いた原子団である。複素環式化合物としては、例えば、フラン、チオフェン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾール、ピラゾリン、プラゾリジン、フラザン、トリアゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、テトラゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、チオピラン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、モルホリン、トリアジン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、インドリン、イソインドリン、クロメン、クロマン、イソクロマン、ベンゾピラン、キノリン、イソキノリン、キノリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、インダゾール、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、キナゾリジン、シンノリン、フタラジン、プリン、プテリジン、カルバゾール、キサンテン、フェナントリジン、アクリジン、β-カルボリン、ペリミジン、フェナントロリン、チアントレン、フェノキサチイン、フェノキサジン、フェノチアジン及びフェナジンが挙げられる。複素環式化合物が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基及び置換されていてもよいアルキルチオ基が挙げられる。該ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基及び置換及び置換されていてもよいアルキルチオ基の具体例は、Rで表されるハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基及び置換されていてもよいアルキルチオ基の具体例と同じである。複素環基としては、芳香族複素環基が好ましい。
【0070】
複素環オキシ基としては、前記1価の複素環基に酸素原子が結合した式(A-1)で表される基が挙げられる。
複素環チオ基としては、前記1価の複素環基に硫黄原子が結合した式(A-2)で表される基が挙げられる。
【0071】
【化6】
【0072】
式(A-1)及び式(A-2)中、Arは1価の複素環基を表し、*は結合手を表す。
【0073】
複素環オキシ基の具体例としては、チエニルオキシ基、C1~C12アルキルチエニルオキシ基、ピロリルオキシ基、フリルオキシ基、ピリジルオキシ基、C1~C12アルキルピリジルオキシ基、イミダゾリルオキシ基、ピラゾリルオキシ基、トリアゾリルオキシ基、オキサゾリルオキシ基、チアゾールオキシ基及びチアジアゾールオキシ基が挙げられる。
【0074】
複素環チオ基の具体例としては、チエニルメルカプト基、C1~C12アルキルチエニルメルカプト基、ピロリルメルカプト基、フリルメルカプト基、ピリジルメルカプト基、C1~C12アルキルピリジルメルカプト基、イミダゾリルメルカプト基、ピラゾリルメルカプト基、トリアゾリルメルカプト基、オキサゾリルメルカプト基、チアゾールメルカプト基及びチアジアゾールメルカプト基が挙げられる。
【0075】
アリールアルケニル基は、通常、その炭素数8~20である。アリールアルケニル基の具体例としては、スチリル基が挙げられる。
【0076】
アリールアルキニル基は、通常、その炭素数8~20である。アリールアルキニル基の具体例としては、フェニルアセチレニル基が挙げられる。
【0077】
本開示に係る反応性化合物を使用して合成されるポリマーの溶媒に対する溶解性を高める観点からは、Rは、炭素数6以上のアルキル基、炭素数6以上のアルコキシ基、炭素数6以上のアルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、炭素数6以上のアシル基及び炭素数6以上のアシルオキシ基が好ましく、炭素数6以上のアルキル基、炭素数6以上のアルコキシ基、アリール基及びアリールオキシ基がより好ましく、炭素数6以上のアルキル基が特に好ましい。
【0078】
Rの好ましい一態様である炭素数6以上のアルキル基としては、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、トリアコンチル基、テトラコンチル基、ペンタコンチル基などの直鎖状のアルキル基や1,1,3,3-テトラメチルブチル基、1-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、3,7-ジメチルオクチル基、1-プロピルペンチル基、3-ヘプチルドデシル基、2-ヘプチルウンデシル基、2-オクチルドデシル基、3,7,11-トリメチルドデシル基、3,7,11,15-テトラメチルヘキサデシル基、3,5,5-トリメチルへキシル基などの分岐状のアルキル基が挙げられる。
【0079】
炭素数6以上のアルキル基は、本開示に係る反応性化合物を使用して合成されるポリマーの溶媒に対する溶解性等を考慮して適宜選択されるが、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、2-エチルヘキシル基、3,7-ジメチルオクチル基、1-プロピルペンチル基及び3-ヘプチルドデシル基が好ましく、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、2-エチルヘキシル基、3,7-ジメチルオクチル基及び3-ヘプチルドデシル基がより好ましく、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、2-エチルヘキシル基、3,7-ジメチルオクチル基及び、3-ヘプチルドデシル基が特に好ましい。
【0080】
Rの好ましい一態様であるアリール基としては、本開示に係る反応性化合物を使用して合成されるポリマーの溶媒に対する溶解性等を考慮した場合、アルキル基が置換したフェニル基が好ましい。アルキル基の置換位置は、パラ位が好ましい。パラ位にアルキル基が置換したフェニル基としては、p-ヘキシルフェニル基、p-ヘプチルフェニル基、p-オクチルフェニル基、p-ノニルフェニル基、p-デシルフェニル基、p-ウンデシルフェニル基、p-ドデシルフェニル基、p-トリデシルフェニル基、p-テトラデシルフェニル基、p-ペンタデシルフェニル基、p-ヘキサデシルフェニル基、p-2-エチルヘキシルフェニル基、p-3,7-ジメチルオクチルフェニル基、p-1-プロピルペンチルフェニル基及びp-2-ヘキシルデシルフェニル基が好ましく、p-ヘキシルフェニル基、p-ヘプチルフェニル基、p-オクチルフェニル基、p-ドデシルフェニル基、p-ペンタデシルフェニル基、p-ヘキサデシルフェニル基、p-2-エチルヘキシルフェニル基、p-3,7-ジメチルオクチルフェニル基及びp-2-ヘキシルデシルフェニル基がより好ましく、p-ドデシルフェニル基、p-ペンタデシルフェニル基、p-2-エチルヘキシルフェニル基及びp-3,7-ジメチルオクチルフェニル基が特に好ましい。
【0081】
式(I)中、2箇所あるYで表されるヒドロキシル基を有するボロン酸エステル残基は、3価以上のアルコールと2価のボロン酸により形成されるボロン酸エステル残基が挙げられ、下記式(Y’-1)~式(Y’-3)で表される基であることが好ましい。
【0082】
【化7】
【0083】
式(Y’-1)、(Y’-2)および(Y’-3)中、R’は、下記式(R’-1)、(R’-2)または(R’-3)で表される置換基である。R’’は、水素原子、メチル基、またはエチル基を表し、*は結合手を表す。n及びmは、それぞれ整数を表し、n≧1、m≧0、n+m≦4を満たす。
【0084】
式(Y’-1)、(Y’-2)及び(Y’-3)のそれぞれの式において、R’が複数ある場合、それらは同一であっても、異なっていてもよい。
また式(Y’-1)、(Y’-2)及び(Y’-3)のそれぞれにおいて、R’’が数ある場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0085】
ヒドロキシル基を含む置換基R’とは、下記式(R’-1)~式(R’-3)で表される基である。
【0086】
【化8】
【0087】
式(R’-1)、(R’-2)及び(R’-3)中、R’’’は、同一又は相異なり、前記R’’と同様の意味を表す。
式(R’-1)、(R’-2)及び(R’-3)のそれぞれの式において、R’’’が複数ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
式(Y’-1)~式(Y’-3)で表されるヒドロキシル基を有するボロン酸エステル残基としては、特に限定される訳ではないが、以下の式(Y-1)~式(Y-16)が例示される。
【0088】
【化9】
【0089】
【化10】
【0090】
【化11】
【0091】
反応性化合物の純度向上の観点から、式(Y-1)~式(Y-16)で表されるヒドロキシル基を有するボロン酸エステル残基の構造は、式(Y-1)、式(Y-2)、式(Y-3)、式(Y-4)、式(Y-10)、式(Y-11)、又は式(Y-12)が好ましく、式(Y-1)、式(Y-2)、又は式(Y-3)がより好ましく、式(Y-1)がさらに好ましい。
【0092】
Ar及びArは、同一でも異なっていてもよく、3価の芳香族炭化水素基又は3価の複素環基を表し、3価の複素環基であることが好ましい。
【0093】
3価の芳香族複素環基が有する炭素数は、通常2~60であり、好ましくは4~60であり、より好ましくは4~20である。
【0094】
3価の芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。当該置換基としては、例えば、ハロゲン原子及び1価の基が挙げられる。該ハロゲン原子及び1価の基の定義及び具体例は、Rで表されるハロゲン原子及び1価の基の定義及び具体例と同じである。
【0095】
Ar及びArで表される3価の芳香族炭化水素基としては、例えば、式(201)~式(301)で表される基が挙げられる。式(201)~式(301)中、Rは式(Z-1)~式(Z-7)中におけるRと同じ意味を表し、*は結合手を表す。
【0096】
【化12】
【0097】
【化13】
【0098】
【化14】
【0099】
【化15】
【0100】
【化16】
【0101】
【化17】
【0102】
【化18】
【0103】
【化19】
【0104】
【化20】
【0105】
【化21】
【0106】
【化22】
【0107】
3価の芳香族炭化水素基が有する炭素数は、通常6~60であり、好ましくは6~20である。
【0108】
3価の芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。当該置換基としては、例えば、ハロゲン原子又は1価の基を表す。該ハロゲン原子及び1価の基の定義及び具体例は、Rで表されるハロゲン原子及び1価の基の定義及び具体例と同じである。
【0109】
Ar及びArで表される3価の芳香族炭化水素基としては、例えば、式(302)~式(311)で表される基が挙げられる。式(302)~式(311)中、Rは式(Z-1)~式(Z-7)中におけるRと同じ意味を表し、*は結合手を表す。
【0110】
【化23】
【0111】
【化24】
【0112】
式(201)~式(311)で表される基の中でも、本発明の反応性化合物の合成の容易さの観点からは、式(202)、式(205)、式(206)、式(207)、式(210)、式(212)、式(220)、式(235)、式(238)、式(270)、式(271)、式(272)、式(273)、式(274)、式(275)、式(286)、式(287)、式(288)、式(291)、式(292)、式(293)、式(296)、式(301)及び式(302)で表される基が好ましく、式(235)、式(271)、式(272)、式(273)、式(274)、式(286)、式(291)、式(296)、式(301)及び式(302)で表される基がより好ましく、式(271)、式(272)、式(273)、式(274)及び式(311)で表される基がさらに好ましく、式(273)で表される基が特に好ましい。
【0113】
上記式(I)中、2つのYを除いた残基(即ち、Ar、Ar及びZで表される基)としては、例えば、下記式(401)~式(468)が挙げられる。
下記式(401)~式(468)中、Rは式(Z-1)~式(Z-7)中におけるRと同じ意味を表し、*は結合手を表す。
【0114】
【化25】
【0115】
【化26】
【0116】
【化27】
【0117】
【化28】
【0118】
【化29】
【0119】
【化30】
【0120】
【化31】
【0121】
【化32】
【0122】
【化33】
【0123】
上記式(I)で表される反応性化合物は、下記式(II)で表される化合物であることが好ましく、さらには、下記式(III-1)又は(III-2)で表される化合物であることが好ましい。
【0124】
【化34】
【0125】
式(II)中、Y及びZは式(I)中におけるY及びZと同様の意味を表す。
【0126】
【化35】
【0127】
式(III-1)及び式(III-2)中、Zは、式(I)中におけるZと同様の意味を表す。
【0128】
式(II)で表される反応性化合物としては、例えば、式(501)~式(515)で表される化合物が挙げられる。式(501)~式(515)中、Rは式(Z-1)~式(Z-7)中におけるRと同じ意味を表す。
【0129】
【化36】
【0130】
【化37】
【0131】
【化38】
【0132】
上記の式(501)~式(515)で表される化合物の中でも、反応性化合物の純度向上の容易さの観点からは、式(501)、式(502)、式(503)、式(504)、式(505)、式(506)で表される化合物が好ましく、式(501)、式(502)、式(503)、式(504)、式(506)で表される化合物がより好ましく、式(501)、式(503)、式(506)で表される化合物がさらに好ましく、式(501)、式(506)で表される化合物が特に好ましく、式(501)で表される化合物が特により好ましい。
【0133】
以下の表1中に反応性化合物の具体例を示すが、これに限定されることはない。
なお表1中、「式」の下欄の数字は上記式(501)~式(515)で表される化合物のいずれかであることを示す。
「R」は、上記式(501)~式(515)で表される化合物のRと同義であり、下欄にRの具体例を示す。なお「n-」はノルマルを意味する。
【0134】
【表1】
【0135】
反応性化合物の含有量は、封入容器の内部の容積に対して、80体積%以上99体積%以下とすることが好ましく、85体積%以上97体積%以下とすることがより好ましく、90体積%以上95体積%以下とすることが更に好ましい。
【0136】
反応性化合物は、例えば、式(Ar-1)~式(Ar-10)で表される化合物を原料として用いることにより、式(Ar’-1)~式(Ar’-5)を合成することが出来る。なお、式(Ar-1)~式(Ar-10)及び式(Ar’-1)~式(Ar’-5)中のRは、式(Z-1)~式(Z-7)中における、Rと同義である。
【0137】
【化39】
【0138】
【化40】
【0139】
反応性化合物を合成する際、合成のし易さの観点からは、式(Ar-1)、式(Ar-2)、式(Ar-3)、式(Ar-4)、式(Ar-6)、式(Ar-7)、式(Ar-8)、式(Ar-9)が好ましく、式(Ar-1)、式(Ar-2)、式(Ar-3)がより好ましく、式(Ar-1)、式(Ar-3)、がさらに好ましく、式(Ar-1)が特に好ましい。
【0140】
式(Ar-1)~式(Ar-10)で表される化合物を、式(I)で表される反応性化合物へ変換する方法としては、例えば、ジエチルエーテル溶媒中、式(Ar-1)~式(Ar-10)で表される化合物に対し、n-ブチルリチウム等の塩基を用い、ジリチオ化を行った後、トリメトキシボランもしくはトリイソプロポキシボラン等を作用させ、該当するボロン酸を合成した後、2-ヒドロキシメチレン-2-メチル-1,3-プロパンジオール等の多価アルコールによりエステル化することで変換できる。
【0141】
反応性化合物は、再結晶法により容易に高純度化する事ができる。再結晶に使用する溶媒の例示としては、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メシチレン等が挙げられ、単体溶媒であっても混合溶媒であってもよい。好ましくは、シクロヘキサンとトルエンの混合溶媒が挙げられる。
【0142】
また、反応性化合物である、式(Ar’-1)~式(Ar’-5)で表される化合物を原料に用いる事で、下記式(Ar’’-1)~式(Ar’’-5)で表される反応性化合物を合成する事が出来る。式中、Rは、式(Z-1)~式(Z-7)中における、Rと同義である。式中、Mは、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子を表す。
【0143】
【化41】
【0144】
なお、式(I)で表される反応性化合物の他に、式(Ar’’-1)~式(Ar’’-5)で表される反応性化合物を用いた場合でも、ポリマーを製造する事ができる。
【0145】
(封入容器)
本開示に係る合成中間体パッケージは封入容器を有する。
封入容器は、ガスバリア性を有する封入容器であって、反応性化合物を気密状態として封入することができる封入容器である。
ここでガスバリア性を有するとは、透湿度が1g/m/24hr以下であり、酸素透過度が1mL/m/24hr以下であることを意味する。
透湿度はJIS K 0208(1976)に準拠して測定する。酸素透過度はJIS K 7126-1(2006)に準拠して測定する。
【0146】
封入容器の形状および収容量は、所望の量の反応性化合物を収容及び取り出し自在であれば特に限定されない。封入容器は、封入容器内を、気密状態に保持することができ、さらに反応性化合物の加水分解を抑制することができる雰囲気を維持できるように調整できる封入容器であれば特に限定されない。
【0147】
封入容器を構成する材料は、本開示の目的及び効果を著しく損なわないことを条件として、特に限定されない。このような材料としては、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラートなどの樹脂系材料;セラミック、ガラス、合金等の金属;及びこれらの組み合わせ;等が挙げられる。
【0148】
封入容器の具体的な構成の一例について、図1を用いて説明する。
封入容器30としては、反応性化合物60の保管時において反応性化合物60と乾燥剤50とを離間させて配置する観点から、例えば、ボトル状の封入容器30であって、開口部32aを有しており、反応性化合物60を収容する本体部32と、本体部32の内壁に取付け取外し自在に嵌合し、乾燥剤50を反応性化合物60から離間させた状態で載置することができる凹部36aを画成し、乾燥剤50と反応性化合物60が接触している雰囲気とを接触させることができる孔部36bを有する内蓋36と、内蓋36が取り付けられた状態で、開口部32aの外壁に取付け取外し自在に嵌合して、本体部32内を気密状態にできる外蓋38とを含む態様とすることができる。
【0149】
このような態様の具体例としては、乾燥剤50が載置できる内蓋36と外蓋38とを有するプラスチック製試薬ボトル(ボトル状の封入容器30)において、乾燥剤50が反応性化合物60を収容する本体部32内に落下しない程度の大きさ(径)の1以上の貫通孔(孔部36b)が内蓋36に設けられている態様が挙げられる。
【0150】
(乾燥剤)
本開示に係る合成中間体パッケージは乾燥剤を有する。
乾燥剤は、反応性化合物の加水分解が進行しにくい雰囲気となる様に、封入容器内の雰囲気の湿度を調整する機能を有する。
【0151】
乾燥剤の剤形、有効成分などは特に限定されない。乾燥剤の剤形としては、錠剤などの種々の剤形の製剤、及び有効成分が機能を発揮することができる態様でパッケージ化された小袋封入型のパッケージが挙げられる。
【0152】
乾燥剤は、シリカゲル、シリカアルミナゲル(例えば、アロフェン)、天然ゼオライト、合成ゼオライト(例えば、モレキュラーシーブ)、生石灰(酸化カルシウム)、ベントナイトクレイ(例えば、モンモリロナイト)、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム等を含むことが好ましい。
【0153】
保管安定性の観点から、乾燥剤はシリカゲルを含むことが好ましい。
シリカゲルとしては、シリカゲルA型及びシリカゲルB型が挙げられ、保管安定性の観点から、乾燥剤はシリカゲルA型を含むことが好ましい。
ここで、シリカゲルA型は、低湿度において湿気を吸着する力が強いものであり、シリカゲルB型は、高湿度において多量の湿気を吸い、吸着容量が大きいものである。
シリカゲルA型及びシリカゲルB型はJIS Z 0701(1977)によって定義される。
【0154】
シリカゲルA型としては、例えば、市場にて入手可能な小袋封入型のシリカゲルA型が挙げられる。小袋封入型のシリカゲルA型としては、豊田化工社製の不織布シリカゲル乾燥剤PCタイプ、及びNタイプ;TRUSCO社製のA型シリカゲル;オアシスプランニング社製のオアシスシリカゲル;等が挙げられる。
【0155】
用いられる乾燥剤の量は、反応性化合物の種類、性状及び量、封入容器内の雰囲気の体積、想定される保管期間などを考慮して、決定すればよい。
例えば、封入容器内の雰囲気の体積が50mLであり、想定される保管期間が1年である場合には、1個あたり0.5gの水を吸収できる乾燥剤を1個用いればよい。
【0156】
保管安定性の観点から、シリカゲルの質量に対する、反応性化合物の質量の比が1以上10以下であることが好ましく、1以上5以下であることがより好ましく、1以上2以下であることが更に好ましい。
【0157】
乾燥剤の封入容器における設置態様は、上記の条件を満たすことを前提として、特に限定されない。乾燥剤として、例えば小袋封入型のパッケージを用いる場合には、封入容器内の反応性化合物に直接的にパッケージが接触するように設置してもよいし、少なくとも封入容器内の雰囲気に接触するように、換言すると、反応性化合物とパッケージとが互いに離間しているが、いずれも封入容器内の雰囲気に接触するように設置してもよい。
【0158】
(袋状容器)
保管安定性の観点から、本開示に係る合成中間体パッケージは、封入容器の外側に袋状容器を有することが好ましい。
袋状容器を有することで、封入容器内の雰囲気の湿度の向上がより抑制される。そのため、反応性化合物の加水分解が抑制される。
【0159】
袋状容器の好適な具体例としては、袋状のアルミ箔の開口部に開閉自在なファスナーを有する袋状体、ポリマーフィルムの表面にアルミニウム等の金属をコーティング又はアルミ箔等の金属箔がラミネートされた袋状体であって、開口部に開閉自在な開閉手段を有する袋状体であるチャック付きアルミ袋(例えば、ラミジップ(登録商標)アルミタイプ、株式会社生産日本製)等が挙げられる。
【0160】
保管安定性の観点から、合成中間体パッケージは、封入容器の外側、かつ、袋状容器の内側に乾燥剤を含むことが好ましい。
この場合、封入容器の外側、かつ、袋状容器の内側に含む乾燥剤の種類は、既述の乾燥剤と同様のものが適用可能であり、好ましい形態も同様である。
封入容器の外側、かつ、袋状容器の内側に含む乾燥剤の添加量は、例えば、封入容器内に含む乾燥剤の添加量に対して1倍以上10倍以下であることが好ましく、1倍以上5倍以下であることがより好ましく、1倍以上3倍以下であることが更に好ましい。
【0161】
<反応性化合物の保管方法>
本開示に係る反応性化合物の保管方法は、加水分解が進行しにくい雰囲気下で反応性化合物を保管する工程(保管工程A)を含む。
【0162】
(保管工程A)
保管工程Aは、加水分解が進行しにくい雰囲気下で反応性化合物を保管する工程である。
加水分解が進行しにくい雰囲気は、湿度が低い雰囲気であることが好ましい。
具体的には、加水分解が進行しにくい雰囲気は、保管安定性の観点から、絶対湿度が25℃で10g/m以下の雰囲気であることが好ましく、絶対湿度が25℃で7.5g/m以下の雰囲気であることがより好ましく、絶対湿度が25℃で5g/m以下の雰囲気であることが更に好ましい。
【0163】
絶対湿度は以下に記載する保管工程Aにより達成される。
【0164】
絶対湿度は以下の通り算出する。
保管工程Aを行う際の大気中の25℃における相対湿度(%)を測定する。そして当該相対湿度を絶対湿度(g/m)に変換する(当該絶対湿度を「25℃相対湿度XX%時の絶対湿度」とする)。そして、保管工程Aにおいて湿度の調整を行う物(例えばシリカゲル)の水分吸着率(%)を測定する。水分吸着率はJIS K1150:1994に準拠して行い、測定した保管工程Aを行う際の大気中の25℃における相対湿度(%)における水分吸着率を測定することとする。そして、下記式を用いて絶対湿度を算出する。
式:絶対湿度(g/m)=(25℃相対湿度XX%時の絶対湿度×反応性化合物を補完する容器の体積(m)-湿度の調整を行う物の質量(g)×湿度の調整を行う物の水分吸着率(%))÷容器の体積(m
ただし、上式において絶対湿度の値が負の値となる場合、絶対湿度は0.1g/m未満とする
【0165】
保管工程Aは、雰囲気の温度を10℃以上45℃以下とすることが好ましく、10℃以上40℃以下とすることがより好ましく、10℃以上30℃以下とすることが更に好ましく、10℃以上25℃以下とすることが特に好ましい。
【0166】
ここで温度は温度計により測定される値である。温度計としては、例えばドリテック社製、品名O-206BLが使用可能である。
【0167】
保管工程Aは、内部の湿度の調製が可能な保管容器内で反応性化合物を保管することで行うことが好ましい。
保管容器としては、例えば、デシケーター、既述の封入容器等が挙げられる。
【0168】
保管安定性の観点から、保管工程Aは、内部に乾燥剤を備える封入容器内に反応性化合物を保管する工程であることが好ましい。
乾燥剤及び封入容器としては、既述の合成中間体パッケージが有する乾燥剤及び封入容器が適用可能であり、好ましい態様も同様である。
【0169】
<ポリマーの製造方法>
本開示の一実施形態に係るポリマーの製造方法(以下、第1実施形態に係るポリマーの製造方法と称する)は、加水分解が進行しにくい雰囲気下で反応性化合物を保管する工程(保管工程B)と、保管後の反応性化合物を反応させる工程(反応工程)と、を含む。
【0170】
本開示の他の一実施形態に係るポリマーの製造方法(以下第2実施形態に係るポリマーの製造方法と称する)は、湿度を調整した雰囲気下で反応性化合物を保管する工程(保管工程C)と、保管後の反応性化合物を反応させる工程(反応工程)と、を含む。
【0171】
第1実施形態及び第2実施形態に係るポリマーの製造方法は、保管工程B又は保管工程Cによって保管された反応性化合物を用いてポリマーを製造する。保管工程B及び保管工程Cによって保管された反応性化合物は、加水分解が進行しやすい雰囲気下で保管された反応性化合物と比較して、経時による反応性化合物の純度の低下が抑制されている。そのため、第1実施形態及び第2実施形態に係るポリマーの製造方法によって製造されたポリマーは、加水分解が進行しやすい雰囲気下で保管された反応性化合物を使用するポリマーの製造方法と比較して、目的とする構造を有するポリマーの製造が容易となる。
【0172】
以下、第1実施形態に係るポリマーの製造方法及び第2実施形態に係るポリマーの製造方法について説明する。
【0173】
(第1実施形態に係るポリマーの製造方法)
-保管工程B-
保管工程Bは、加水分解が進行しにくい雰囲気下で反応性化合物を保管する工程である。
保管工程Bは、保管工程Aと同様の工程であることが好ましく、好ましい態様も同様である。
【0174】
所望のポリマーを得やすい観点から、加水分解が進行しにくい雰囲気が、絶対湿度が25℃で10g/m以下の雰囲気であることが好ましく、絶対湿度が25℃で7.5g/m以下の雰囲気であることがより好ましく、絶対湿度が25℃で5g/m以下の雰囲気であることが更に好ましい。
絶対湿度は既述の通り測定される値である。
【0175】
所望のポリマーを得やすい観点から、保管工程Bは、内部に乾燥剤を備える封入容器内に反応性化合物を保管する工程であることが好ましい。
【0176】
-反応工程-
反応工程は、保管後の反応性化合物を反応させる工程である。
反応工程における反応は、特に制限されるものではないが、ポリマーの合成の容易さからは、Suzukiカップリング反応を用いる方法が好ましい。
【0177】
Suzukiカップリング反応を用いる方法としては、例えば、下記式(VI)で表される構成単位と、下記式(VII)で表される構成単位とを含むポリマーの合成方法であって、式(I)で表される1種類以上の化合物と、式(V)で表される1種類以上の化合物とを反応させる方法が挙げられる。
【0178】
【化42】
【0179】
式(VI)中、Z、Ar及び、Arは、式(I)中におけるZ、Ar及び、Arと同義であり、*は結合手を表す。
【0180】
【化43】
【0181】
式(VII)中、Arは、2価の芳香族炭化水素基又は、複素環基を表し、*は結合手を表す。
【0182】
【化44】
【0183】
式(V)中、Arは、2価の芳香族炭化水素基又は、複素環基を表し、Xは、同一又は相異なりハロゲン原子を表す。
【0184】
そして上記反応としては、パラジウム触媒及び塩基の存在下で行われる製造方法が挙げられる。
【0185】
式中、Arで表される2価の芳香族炭化水素基とは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から、芳香環上の水素原子2個を除いた原子団である。2価の芳香族炭化水素基の炭素数は通常6~60程度であり、好ましくは6~20である。
【0186】
芳香族炭化水素が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子又は1価の基を表す。該ハロゲン原子及び1価の基の定義及び具体例は、式(Z-1)~式(Z-7)中Rで表されるハロゲン原子及び1価の基の定義及び具体例と同じである。
【0187】
式中、Arで表される2価の芳香族炭化水素基又は複素環基としては、本開示に係るポリマーを有機薄膜太陽電池の活性層として用いた場合、有機薄膜太陽電池の光電変換効率を高める観点からは、式(Cy-1)~式(Cy-5)で表される構成単位が好ましい。
【0188】
【化45】
【0189】
式(Cy-1)~(Cy-5)中、Rは、式(Z-1)~式(Z-7)中におけるRと同じ意味を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を表す。RとRは、連結して環状構造を形成してもよい。環Cyは、同一又は相異なり、置換基を有していてもよい芳香環を表す。Rは、2価の基を表す。*は、結合手を表す。
【0190】
及びRで表されるハロゲン原子及び1価の基の定義及び具体例は、式(Z-1)~式(Z-7)中Rで表されるハロゲン原子及び1価の基の定義及び具体例と同じである。
【0191】
とRは、連結して環状構造を形成してもよい。該環状構造の具体例としては、式(D-1)~式(D-5)で表される構造が挙げられる。
【0192】
【化46】
【0193】
式(D-1)~式(D-5)中、Rは、式(Z-1)~式(Z-7)におけるRと同義であり、*は結合手を表す。
【0194】
環Cyで表される芳香環は、単環であっても、縮合環であってもよい。単環である芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピラジン環、イミダゾール環、トリアゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、ピリミジン環、ピリダジン環及びトリアジン環が挙げられる。
【0195】
縮合環である芳香環としては、前記の単環に任意の環が縮合した芳香環が挙げられる。単環に縮合する環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピロリン環、ピロリジン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、イミダゾール環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、ピラゾール環、ピラゾリン環、プラゾリジン環、フラザン環、トリアゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、テトラゾール環、ピラン環、ピリジン環,ピペリジン環、チオピラン環、リダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環、モルホリン環、トリアジン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、イソインドール環、インドリジン環、インドリン環、イソインドリン環、クロメン環、クロマン環、イソクロマン環、ベンゾピラン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、インダゾール環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キナゾリン環、キナゾリジン環、シンノリン環、フタラジン環、プリン環、プテリジン環、カルバゾール環、キサンテン環、フェナントリジン環、アクリジン環、β-カルボリン環、ペリミジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環及びフェナジン環が挙げられる。
【0196】
環Cyにおいて、芳香環が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子及び1価の基を表す。該ハロゲン原子及び1価の基の定義及び具体例は、式(Z-1)~式(Z-7)中Rで表されるハロゲン原子及び1価の基の定義及び具体例と同じである。
【0197】
で表される2価の基の具体例としては、式(b-1)~式(b-7)で表される基が挙げられる。
【0198】
【化47】
【0199】
式(b-1)~式(b-7)中、Rは、式(Z-1)~式(Z-7)中におけるRと同義である。
【0200】
式(Cy-1)~式(Cy-5)で表される構成単位としては、例えば、式(C-1)~式(C-31)で表される構成単位が挙げられる。
【0201】
【化48】
【0202】
【化49】
【0203】
【化50】
【0204】
【化51】
【0205】
本開示に係るポリマーを有機薄膜太陽電池材料に用いる場合、開放端電圧の観点からは、式(Cy-1)~式(Cy-5)で表される構成単位としては、式(C-30)で表される構成単位及び式(C-31)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、式(C-31)で表される構成単位がより好ましい。
【0206】
本開示に係るポリマーを有機薄膜太陽電池材料に用いる場合、式(C-1)~式(C-5)で表される構成単位としては、開放端電圧の観点からは、式(C-2)及び、式(C-3)で表される構成単位が好ましく、式(C-3)で表される構造単位が特に好ましい。
【0207】
本開示に係るポリマーを有機薄膜太陽電池材料に用いる場合、式(C-1)~式(C-5)で表される構成単位としては、開放端電圧の観点からは、式(C-32)で表される構成単位及び式(C-33)で表される構成単位が好ましい。式(C-32)及び式(C-33)中、*は結合手を表す。
【0208】
【化52】
【0209】
式(V)における、Xで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。高分子化合物の合成の容易さからは、臭素原子及びヨウ素原子であることが好ましく、臭素原子であることがさらに好ましい。
【0210】
具体的には、Suzukiカップリング反応を行う方法としては、任意の溶媒中において、触媒としてパラジウム触媒を用い、塩基の存在下で反応させる方法が挙げられる。
Suzukiカップリング反応に使用するパラジウム触媒としては、例えば、Pd(0)触媒、Pd(II)触媒が挙げられ、具体的には、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、パラジウムアセテート類、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウムアセテート、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムが挙げられるが、反応(重合)操作の容易さ、反応(重合)速度の観点からは、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウムアセテート、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムが好ましい。
【0211】
パラジウム触媒の添加量は、特に限定されず、触媒としての有効量であればよいが、式(I)で表される化合物1モルに対して、通常、0.0001モル~0.5モルであり、好ましくは0.0003モル~0.1モルである。
【0212】
Suzukiカップリング反応に使用するパラジウム触媒としてパラジウムアセテート類を用いる場合は、トリフェニルホスフィン、トリ(o-トリル)ホスフィン、トリ(o-メトキシフェニル)ホスフィン等のリン化合物を配位子として添加することができる。この場合、配位子の添加量は、パラジウム触媒1モルに対して、通常、0.5モル~100モルであり、好ましくは0.9モル~20モルであり、さらに好ましくは1モル~10モルである。
【0213】
Suzukiカップリング反応に使用する塩基としては、無機塩基、有機塩基、無機塩等が挙げられる。無機塩基としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化バリウム、リン酸カリウムが挙げられる。有機塩基としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミンが挙げられる。無機塩としては、例えば、フッ化セシウムが挙げられる。
【0214】
塩基の添加量は、式(100)で表される化合物1モルに対して、通常、0.5モル~100モルであり、好ましくは0.9モル~20モルであり、さらに好ましくは1モル~10モルである。
【0215】
Suzukiカップリング反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド、トルエン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、塩化メチレンが例示される。ポリマーの溶解性の観点からは、トルエン、テトラヒドロフランが好ましい。また、塩基の添加として、塩基を含む水溶液を反応液に加え、水相と有機相の2相系で反応させてもよい。塩基として無機塩を用いる場合は、無機塩の溶解性の観点から、通常、塩基を含む水溶液を反応液に加えて反応させる。
【0216】
なお、2相系で反応させる場合は、必要に応じて、第4級アンモニウム塩などの相間移動触媒を加えてもよい。
【0217】
Suzukiカップリング反応を行う温度は、前記溶媒にもよるが、通常、40~160℃程度である。ポリマーの高分子量化の観点からは、60~120℃が好ましい。また、溶媒の沸点近くまで昇温し、還流させてもよい。反応時間は、目的の重合度に達したときを終点としてもよいが、通常、0.1時間~200時間程度である。0.5時間~30時間程度が効率的で好ましい。
【0218】
Suzukiカップリング反応は、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性雰囲気下、パラジウム触媒が失活しない反応系で行う。例えば、アルゴンガスや窒素ガス等で、十分脱気された系で行う。具体的には、重合容器(反応系)内を窒素ガスで十分置換し、脱気した後、この重合容器に、式(I)で表される化合物、式(V)で表される化合物、パラジウム触媒、例えば、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)を仕込み、さらに、重合容器を窒素ガスで十分置換し、脱気した後、あらかじめ窒素ガスでバブリングすることにより、脱気した溶媒、例えば、トルエンを加えた後、この溶液に、あらかじめ窒素ガスでバブリングすることにより脱気した塩基、例えば、炭酸ナトリウム水溶液を滴下した後、加熱、昇温し、例えば、還流温度で8時間、不活性雰囲気を保持しながら重合する。
【0219】
ポリマーのポリスチレン換算の重量均分子量は、好ましくは1×10~1×10である。ポリスチレン換算の重量均分子量が1×10以上である場合には、強靭な薄膜が得られやすくなる。一方、1×10以下である場合には、溶解性が高く、薄膜の作製が容易である。
【0220】
(第2実施形態に係るポリマーの製造方法)
-保管工程C-
保管工程Cは、湿度を調整した雰囲気下で反応性化合物を保管する工程である。
保管工程Cは、湿度が低い雰囲気に調整することが好ましく、具体的には、絶対湿度が25℃で10g/m以下の雰囲気になるようにすることが好ましく、絶対湿度が25℃で7.5g/m以下の雰囲気になるようにすることがより好ましく、絶対湿度が25℃で5g/m以下の雰囲気になるようにすることが更に好ましい。
絶対湿度の測定は既述の通りである。
【0221】
保管工程Cは、内部の湿度の調整が可能な保管容器内で反応性化合物を保管することで行うことが好ましい。
保管容器としては、例えば、デシケーター、既述の封入容器等が挙げられ、保管安定性の観点から、内部に乾燥剤を備える封入容器であることが好ましい。
【0222】
-反応工程-
第2実施形態に係るポリマーの製造方法における反応工程は、第1実施形態に係るポリマーの製造方法と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0223】
以上の工程を経て本開示に係るポリマーは製造される。
なお、第1実施形態に係るポリマーの製造方法及び第2実施形態に係るポリマーの製造方法において製造されるポリマーの構造及び数平均分子量はいずれも同様であり、好ましい態様も同様である。
【0224】
<有機光電変換素子の製造方法>
本開示に係る有機光電変換素子の製造方法は、陽極及び陰極を含む1対の電極、及び前記1対の電極間に設けられた活性層を備える有機光電変換素子の製造方法において、
加水分解が進行しにくい雰囲気下で反応性化合物を保管する工程(保管工程D)と、
保管後の前記反応性化合物を反応させてポリマーを得る工程(反応工程)と、
前記ポリマーを用いて、活性層を形成する工程(活性層形成工程)と、を含む。
【0225】
(保管工程D)
保管工程Dは、加水分解が進行しにくい雰囲気下で反応性化合物を保管する工程である。
保管工程Dは、保管工程A~保管工程Cのいずれかと同様の工程であることが好ましく、好ましい態様も同様である。
【0226】
(反応工程)
反応工程は、第1実施形態及び第2実施形態に係るポリマーの製造方法における反応工程と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0227】
(活性層形成工程)
活性層形成工程は、保管工程及び反応工程を経て得たポリマーを用いて、活性層を形成する工程である。
【0228】
本開示に係る有機光電変換素子の活性層は、p型半導体材料(電子供与性化合物)とn型半導体材料(電子受容性化合物)とを含む。p型半導体材料及びn型半導体材料のうちのいずれであるかは、選択された有機半導体材料のHOMO又はLUMOのエネルギーレベルから相対的に決定することができる。
【0229】
活性層の厚さは、通常、1nm~100μmが好ましく、より好ましくは2nm~1000nmであり、さらに好ましくは5nm~500nmであり、特に好ましくは20nm~200nmである。有機光電変換素子を、例えば太陽電池に適用する場合には、活性層の厚さは、50nm~200nmであることが好ましく、また、有機光電変換素子を、例えば光検出素子に適用する場合には、活性層の厚さは、200nm~800nmであることが好ましい。
【0230】
活性層は、例えば、インク組成物(塗布液)を用いる塗布法により製造することができる。
【0231】
ここで、有機光電変換素子の主たる構成要素である活性層を塗布法によって形成する例について説明する。かかる活性層の形成工程は、下記の工程(i)及び工程(ii)を含んでいる。
【0232】
工程(i)
インク組成物を塗布対象に塗布する方法としては、任意好適な塗布法を用いることができる。塗布法としては、スリットコート法、ナイフコート法、スピンコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、インクジェット印刷法、ノズルコート法、又はキャピラリーコート法が好ましく、スリットコート法、スピンコート法、キャピラリーコート法、又はバーコート法がより好ましく、スリットコート法又はスピンコート法がさらに好ましい。
【0233】
活性層形成用のインク組成物は、有機光電変換素子及びその製造方法に応じて選択された塗布対象に塗布される。活性層形成用のインク組成物は、有機光電変換素子の製造方法において、有機光電変換素子が有する機能層であって、活性層が隣接し得る機能層に塗布される。したがって、活性層形成用のインク組成物の塗布対象は、製造される有機光電変換素子の層構成及び層形成の順序によって異なる。例えば、有機光電変換素子が、基板/陽極/正孔輸送層/活性層/電子輸送層/陰極の層構成を有しており、より左側に記載された層が先に形成される場合、インク組成物の塗布対象は、正孔輸送層となる。また、例えば、有機光電変換素子が、基板/陰極/電子輸送層/活性層/正孔輸送層/陽極の層構成を有しており、より左側に記載された層が先に形成される場合、インク組成物の塗布対象は、電子輸送層となる。
【0234】
工程(ii)
インク組成物の塗布膜から、溶媒を除去する方法、すなわち塗布膜を乾燥処理して溶媒を除去し、硬化させる方法としては、任意好適な方法を用いることができる。溶媒を除去する方法の例としては、ホットプレートを用いて直接的に加熱する方法、熱風乾燥法、赤外線加熱乾燥法、フラッシュランプアニール乾燥法、減圧乾燥法などによる乾燥処理が挙げられる。
【0235】
活性層を形成する工程は、工程(i)及び工程(ii)以外に、本開示に係る有機光電変換素子の製造方法の目的及び効果を損なわないことを条件としてその他の工程を含んでいてもよい。
【0236】
本開示に係る有機光電変換素子の製造方法は、複数の活性層を含む有機光電変換素子を製造する方法であってもよく、工程(i)及び工程(ii)が複数回繰り返される製造方法であってもよい。
【0237】
(インク組成物)
上記工程(i)に用いられ得るインク組成物は、溶液であってもよく、分散液、エマルション(乳濁液)、サスペンション(懸濁液)等の分散液であってもよい。インク組成物は、活性層形成用のインク組成物であって、p型半導体材料であるπ共役系ポリマー及びn型半導体材料と、第1溶媒とを含み、さらに所望により第2溶媒を含み得る。
【0238】
インク組成物は、p型半導体材料(本開示に係るポリマー)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上を任意の割合の組み合わせとして含んでいてもよい。
【0239】
(n型半導体材料)
n型半導体材料(電子受容性化合物)は、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
【0240】
低分子化合物であるn型半導体材料の例としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8-ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、C60フラーレン等のフラーレン類及びその誘導体、並びに、バソクプロイン等のフェナントレン誘導体が挙げられる。
【0241】
高分子化合物であるn型半導体材料の例としては、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン構造を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、並びに、ポリフルオレン及びその誘導体が挙げられる。
【0242】
n型半導体材料としては、フラーレン及びフラーレン誘導体から選ばれる1種以上であってもよく、非フラーレン化合物であってもよい。
n型半導体材料としては、フラーレン及びフラーレン誘導体から選ばれる1種以上が好ましく、フラーレン誘導体がより好ましい。
【0243】
フラーレンの例としては、C60フラーレン、C70フラーレン、C76フラーレン、C78フラーレン、及びC84フラーレンが挙げられる。フラーレン誘導体の例としては、これらのフラーレンの誘導体が挙げられる。フラーレン誘導体とは、フラーレンの少なくとも一部が修飾された化合物を意味する。
【0244】
フラーレン誘導体の例としては、下記式(N-1)~式(N-4)で表される化合物が挙げられる。
【0245】
【化53】
【0246】
式(N-1)~式(N-4)中、Rは、アルキル基、アリール基、1価の複素環基、又はエステル構造を有する基を表す。複数個あるRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0247】
式(N-1)~式(N-4)中、Rは、アルキル基、又はアリール基を表す。複数個あるRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0248】
で表されるエステル構造を有する基の例としては、下記式(19)で表される基が挙げられる。
【0249】
【化54】
【0250】
式(19)中、u1は、1~6の整数を表す。u2は、0~6の整数を表す。Rは、アルキル基、アリール基、又は1価の複素環基を表す。
【0251】
60フラーレン誘導体の例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0252】
【化55】
【0253】
70フラーレン誘導体の例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0254】
【化56】
【0255】
フラーレン誘導体の具体例としては、[6,6]-フェニル-C61酪酸メチルエステル(C60PCBM、[6,6]-Phenyl C61 butyric acid methyl ester)、[6,6]-フェニル-C71酪酸メチルエステル(C70PCBM、[6,6]-Phenyl C71 butyric acid methyl ester)、[6,6」-フェニル-C85酪酸メチルエステル(C84PCBM、[6,6]-Phenyl C85 butyric acid methyl ester)、及び[6,6]-チエニル-C61酪酸メチルエステル([6,6]-Thienyl C61 butyric acid methyl ester)が挙げられる。
【0256】
非フラーレン化合物としては、特に限定されず従来公知の化合物が適用可能である。
暗電流を抑制する観点から、非フラーレン化合物としては、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド構造を含む化合物又は下記式(VIII)表されるA-D-A型構造を有する化合物であることが好ましい。

-B10-A (VIII)
【0257】
式(VIII)中、
及びAは、それぞれ独立に、電子求引性の基を表し、B10は、π共役系を含む基を表す。
【0258】
及びAである電子求引性の基の例としては、-CH=C(-CN)で表される基、及び下記式(a-1)~式(a-9)で表される基が挙げられる。
【0259】
【化57】
【0260】
式(a-1)~式(a-7)中、
Tは、炭素環又は複素環を表す。炭素環及び複素環は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。これらの環が置換基を複数有する場合、複数ある置換基は、同一であっても異なっていてもよい。置換基としては、上述の置換基Aが挙げられる。
【0261】
Tである炭素環の例としては、芳香族炭素環が挙げられ、好ましくは芳香族炭素環である。Tである炭素環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ピレン環、及びフェナントレン環が挙げられ、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、及びフェナントレン環であり、より好ましくはベンゼン環及びナフタレン環であり、更に好ましくはベンゼン環である。炭素環は置換基有していてもよく、置換基としては、上述の置換基Aが挙げられ、フッ素原子及び炭素数1以上6以下のアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0262】
Tである複素環の例としては、芳香族複素環が挙げられ、好ましくは芳香族複素環である。Tである複素環の具体例としては、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、及びチエノチオフェン環が挙げられ、好ましくはチオフェン環、ピリジン環、ピラジン環、チアゾール環、及びチエノチオフェン環であり、より好ましくはチオフェン環である。複素環は置換基有していてもよく、置換基としては、上述の置換基Aが挙げられ、好ましくはフッ素原子及び炭素数1以上6以下のアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0263】
11、X12、及びX13は、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子、アルキリデン基、又は=C(-CN)で表される基を表し、好ましくは、酸素原子、硫黄原子、又は=C(-CN)で表される基である。
【0264】
14は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基又は1価の複素環基を表す。これらの基は置換基を有していてもよく、置換基としては上述の置換基Aが挙げられる。
【0265】
a11及びRa12は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基又は1価の複素環基を表し、好ましくは、アルキル基又はアリール基である。これらの基は置換基を有していてもよく、置換基としては上述の置換基Aが挙げられる。
【0266】
【化58】
【0267】
式(a-8)及び式(a-9)中Ra11及びRa12は、式(a-1)~式(a-7)中のRa11及びRa12と同義であり、好ましい態様も同一である。
【0268】
及びAである電子求引性の基としては、下記式(a-1-1)~下記式(a-1-4)並びに式(a-6-1)及び式(a-7-1)のいずれかで表される基が好ましく、式(a-1-1)で表される基がより好ましい。ここで、複数あるRa10は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Ra11及びRa12は、式(a-1)~式(a-7)中のRa11及びRa12と同義であり、好ましい態様も同一である。
【0269】
【化59】
【0270】
10であるπ共役系を含む基の例としては、後述する式(VII)で表される化合物における、-(Sn1-B11-(Sn2-で表される基が挙げられる。
【0271】
非フラーレン化合物としては、下記式(IX)で表される化合物であることが好ましい。

-(Sn1-B11-(Sn2-A (IX)
【0272】
式(IX)中、A及びAは、式(VIII)におけるA及びAと同義であり、好ましい態様も同一である。
【0273】
及びSは、それぞれ独立に、2価の炭素環基、2価の複素環基、-C(Rs1)=C(Rs2)-で表される基(ここで、Rs1及びRs2は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基(好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は1価の複素環基を表す。)、又は-C≡C-で表される基を表す。)を表す。これらの基は置換基を有していてもよい。
【0274】
式(IX)中、n1及びn2は、それぞれ独立に、0以上の整数を表し、好ましくはそれぞれ独立に、0又は1を表し、より好ましくは、同時に0又は1を表す。
【0275】
及びSは、それぞれ独立に、下記式(s-1)又は(s-2)で表される基であ
ることが好ましい。
【0276】
【化60】
【0277】
式(s-1)及び(s-2)中、
21は、酸素原子又は硫黄原子を表す。
a10は、式(a-1-1)~式(a-1-4)並びに式(a-6-1)及び式(a-7-1)におけるRa10と同義であり、好ましい態様も同一である。
【0278】
式(IX)中、B11は、炭素環構造及び複素環構造からなる群から選択された2以上の構造の縮合環基であり、かつオルト-ペリ縮合構造を含まない縮合環基であり、かつ置換基を有していてもよい縮合環基を表す。
ここで縮合環基とは、縮合環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子を1個以上除いた残りの原子団を意味する。
【0279】
11で表される縮合環基を構成し得る炭素環構造の例としては、下記式(Cy1)又は式(Cy2)で表される環構造が挙げられる。
【0280】
【化61】
【0281】
11で表される縮合環基を構成し得る複素環構造の例としては、下記式(Cy3)~式(Cy10)のいずれかで表される環構造が挙げられる。
【0282】
【化62】
【0283】
式(IX)中、B11は、好ましくは、前記式(Cy1)~式(Cy10)で表される構造からなる群から選択された2以上の構造の縮合環基であって、オルト-ペリ縮合構造を含まない縮合環基であり、かつ置換基を有していてもよい縮合環基である。B11は、式(Cy1)~式(Cy10)で表される構造のうち、2以上の同一の構造が縮合した構造を含んでいてもよい。
【0284】
11は、より好ましくは、式(Cy1)~式(Cy6)及び式(Cy8)で表される構造からなる群から選択された2以上の構造の縮合環基であって、オルト-ペリ縮合構造を含まない縮合環基である。当該縮合環基は置換基を有していてもよい。
【0285】
11である縮合環基の例としては、下記式(b-1)~式(b-14)で表される基、及びこれらの基における水素原子が、置換基(好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基)で置換された基が挙げられる。
【0286】
11である縮合環基としては、下記式(b-2)若しくは(b-3)で表される基、又はこれらの基における水素原子が、置換基(好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基)で置換された基が好ましく、下記式(b-2)又は(b-3)で表される基がより好ましい。
【0287】
【化63】
【0288】
【化64】
【0289】
【化65】
【0290】
式(b-1)~式(b-14)中、Ra10は、式(a-1-1)~式(a-1-4)並びに式(a-6-1)及び式(a-7-1)におけるRa10と同義であり、好ましい態様も同一である。
【0291】
式(VIII)又は式(IX)で表される化合物の例としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0292】
【化66】
【0293】
【化67】
【0294】
上記式中、Rは、置換基を表し、置換基としては上述の置換基Aが挙げられる。
上記式中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又はアルキル基を表す。
上記式中、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又はアルキルオキシ基であることが好ましい。
【0295】
本開示に係るインク組成物は、電子受容性化合物として非フラーレン化合物のみを含んでいてもよく、フラーレン及びフラーレン誘導体から選ばれる1種以上のみを含んでいてもよく、非フラーレン化合物とフラーレン及びフラーレン誘導体から選ばれる1種以上とを組み合わせて含んでいてもよい。
【0296】
組成物に含まれる電子受容性化合物の好適な具体例として、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0297】
【化68】
【0298】
本開示に係るインク組成物において、n型半導体材料の含有量は、インク組成物全体の質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
【0299】
本開示に係るインク組成物において、n型半導体材料の含有量に対する本開示に係るポリマーの含有量(本開示に係るポリマーの含有量/n型半導体材料の含有量)は、1/9以上9/1以下であることが好ましく、1/5以上5/1以下であることがより好ましく、1/3以上3/1以下であることが更に好ましい。
【0300】
本開示に係る組成物において、本開示に係るポリマー及びn型半導体材料の合計の含有量は、インク組成物全体の質量に対して、0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以上5質量%以下であることが更に好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。
【0301】
インク組成物は、n型半導体材料を1種のみ含んでいてもよく、2種以上の組み合わせを任意の割合で含んでいてもよい。
【0302】
-第1溶媒-
溶媒は、選択されたp型半導体材料及びn型半導体材料に対する溶解性、活性層を形成する際の乾燥条件に対応するための特性(沸点など)を考慮して選択すればよい。
主溶媒である第1溶媒は、置換基(例えば、アルキル基、ハロゲン原子)を有していてもよい芳香族炭化水素(以下、単に芳香族炭化水素という。)である。第1溶媒は、選択されたp型半導体材料及びn型半導体材料の溶解性を考慮して選択することが好ましい。
【0303】
このような芳香族炭化水素としては、例えば、トルエン、キシレン(例、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン)、トリメチルベンゼン(例、メシチレン、1,2,4-トリメチルベンゼン(プソイドクメン))、ブチルベンゼン(例、n-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン)、メチルナフタレン(例、1-メチルナフタレン)、テトラリン、インダン、クロロベンゼン及びジクロロベンゼン(o-ジクロロベンゼン)が挙げられる。
【0304】
第1溶媒は1種のみの芳香族炭化水素から構成されていても、2種以上の芳香族炭化水素から構成されていてもよい。第1溶媒は、1種のみの芳香族炭化水素から構成されることが好ましい。
【0305】
第1溶媒は、好ましくは、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メシチレン、プソイドクメン、n-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、メチルナフタレン、テトラリン、インダン、クロロベンゼン及びo-ジクロロベンゼンからなる群から選択される1種以上を含み、より好ましくは、o-キシレン、プソイドクメン、テトラリン、クロロベンゼン又はo-ジクロロベンゼンである。
【0306】
(第2溶媒)
第2溶媒は、特にn型半導体材料の溶解性を高める観点から選択される溶媒であることが好ましい。第2溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、プロピオフェノン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸フェニル、エチルセルソルブアセテート、安息香酸メチル、安息香酸ブチル、安息香酸ベンジル等のエステル溶媒が挙げられる。
【0307】
第2溶媒は、暗電流を低減する観点から、アセトフェノン、プロピオフェノン、又は安息香酸ベンジルが好ましい。
【0308】
(第1溶媒及び第2溶媒の組み合わせ)
第1溶媒及び第2溶媒の組み合わせとしては、例えば、下記表2に示される組み合わせが挙げられる。
【0309】
【表2】
【0310】
(第1溶媒及び第2溶媒の重量比)
主溶媒である第1溶媒の添加溶媒である第2溶媒に対する重量比(第1溶媒/第2溶媒)は、p型半導体材料及びn型半導体材料の溶解性をより向上させる観点から、85/15~95/5の範囲とすることが好ましい。
【0311】
(インク組成物における第1溶媒及び第2溶媒の合計の重量百分率)
インク組成物に含まれる第1溶媒及び第2溶媒の総重量は、インク組成物の全重量を100重量%としたときに、p型半導体材料及びn型半導体材料の溶解性をより向上させる観点から、好ましくは90重量%以上、より好ましくは92重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上であり、インク組成物中のp型半導体材料及びn型半導体材料の含有量をより多くしつつ一定の厚さ以上の膜を形成し易くする観点から、好ましくは99重量%以下、より好ましくは98重量%以下、さらに好ましくは97.5重量%以下である。
【0312】
(任意の溶媒)
インク組成物は、第1溶媒及び第2溶媒以外の任意の溶媒を含んでいてもよい。インク組成物に含まれる全溶媒の合計重量を100重量%としたときに、任意の溶媒の含有率は、好ましくは5重量%以下であり、より好ましくは3重量%以下であり、さらに好ましくは1重量%以下である。任意の溶媒としては、第2溶媒より沸点が高い溶媒が好ましい。
【0313】
(任意の成分)
インク組成物には、第1溶媒、第2溶媒、p型半導体材料、及びn型半導体材料の他に、本発明の目的及び効果を損なわない限度において、紫外線吸収剤、酸化防止剤、吸収した光により電荷を発生させる機能を増感するための増感剤、紫外線に対する安定性を増加させるための光安定剤といった任意の成分が含まれていてもよい。
【0314】
(インク組成物におけるp型半導体材料及びn型半導体材料の濃度)
インク組成物における、p型半導体材料及びn型半導体材料の合計の濃度は、0.01重量%以上20重量%以下であることが好ましく、0.01重量%以上10重量%以下であることがより好ましく、0.01重量%以上5重量%以下であることがさらに好ましく、0.1重量%以上5重量%以下であることが特に好ましい。インク組成物中、p型半導体材料及びn型半導体材料は溶解していても分散していてもよい。p型半導体材料及びn型半導体材料は、好ましくは少なくとも一部が溶解しており、より好ましくは全部が溶解している。
【0315】
(インク組成物の調製)
インク組成物は、公知の方法により調製することができる。例えば、第1溶媒及び第2溶媒を混合して混合溶媒を調製し、混合溶媒にp型半導体材料及びn型半導体材料を添加する方法、第1溶媒にp型半導体材料を添加し、第2溶媒にn型半導体材料を添加してから、各材料が添加された第1溶媒及び第2溶媒を混合する方法などにより、調製することができる。
【0316】
第1溶媒及び第2溶媒とp型半導体材料及びn型半導体材料とを、溶媒の沸点以下の温度で加温して混合してもよい。
【0317】
第1溶媒及び第2溶媒とp型半導体材料及びn型半導体材料とを混合した後、得られた混合物をフィルターを用いて濾過し、得られた濾液をインク組成物として用いてもよい。
フィルターとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂で形成されたフィルターを用いることができる。
【0318】
(有機光電変換素子)
本開示に係る有機光電変換素子は、陽極及び陰極を含む1対の電極、及び該1対の電極間に設けられた活性層を備える。
そして活性層は、本開示に係るポリマーを有機半導体材料として含む。
【0319】
以下、本実施形態の有機光電変換素子が備え得る、既に説明した活性層以外の構成及びその形成工程について説明する。
【0320】
(基板)
有機光電変換素子は、通常、基板に形成される。この基板には、通常、陰極及び陽極を含む電極が形成される。基板の材料は、特に有機化合物を含む層を形成する際に化学的に変化しない材料であれば特に限定されない。基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコンが挙げられる。基板としては、後述する電極が形成されているか、又はパターニングすることにより電極として機能し得る導電性材料の層が設けられた基板を用意して用いることができる。導電性材料の層が設けられた基板の例としては、インジウムスズオキサイド(ITO)の層が形成されたガラス基板が挙げられる。
【0321】
(電極)
透明又は半透明の電極の材料としては、例えば、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるITO、インジウム亜鉛オキサイド(IZO)、NESA等の導電性材料、金、白金、銀、銅が挙げられる。透明又は半透明の電極の材料としては、ITO、IZO、酸化スズが好ましい。また、電極として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機化合物が材料として用いられる透明導電膜を用いてもよい。透明又は半透明の電極は、陽極であっても陰極であってもよい。基板が不透明である場合には、不透明な基板側に設けられる電極とは反対側の電極(すなわち、基板から遠い側の電極)が透明又は半透明の電極とされることが好ましい。
【0322】
1対の電極のうち、一方の電極が透明又は半透明であれば、他方の電極は光透過性の低い電極であってもよい。光透過性の低い電極の材料としては、例えば、金属、及び導電性高分子が挙げられる。光透過性の低い電極の材料の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びこれらのうちの2種以上の合金、又は、これらのうちの1種以上の金属と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン及び錫からなる群から選ばれる1種以上の金属との合金、グラファイト、グラファイト層間化合物、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体が挙げられる。合金としては、マグネシウム-銀合金、マグネシウム-インジウム合金、マグネシウム-アルミニウム合金、インジウム-銀合金、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-マグネシウム合金、リチウム-インジウム合金、及びカルシウム-アルミニウム合金が挙げられる。
【0323】
電極の形成方法としては、従来公知の任意好適な形成方法を用いることができる。電極の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、及びめっき法が挙げられる。
【0324】
(中間層)
本実施形態の有機光電変換素子は、光電変換効率といった特性を向上させるためのさらなる構成要素として、電荷輸送層(電子輸送層、正孔輸送層、電子注入層、正孔注入層)といった付加的な中間層を備えていてもよい。
【0325】
このような中間層に用いられる材料としては、従来公知の任意好適な材料を用いることができる。中間層の材料としては、例えば、フッ化リチウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化物、及び酸化物が挙げられる。
【0326】
また、中間層に用いられる材料としては、例えば、酸化チタン等の無機半導体の微粒子、及びPEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))とPSS(ポリ(4-スチレンスルホネート))との混合物(PEDOT:PSS)が挙げられる。
【0327】
有機光電変換素子は、陽極と活性層との間に、正孔輸送層を備えていてもよい。正孔輸送層は、活性層から電極へと正孔を輸送する機能を有する。
【0328】
陽極に接して設けられる正孔輸送層を、特に正孔注入層という場合がある。陽極に接して設けられる正孔輸送層(正孔注入層)は、陽極への正孔の注入を促進する機能を有する。正孔輸送層(正孔注入層)は、活性層に接していてもよい。
【0329】
正孔輸送層は、正孔輸送性材料を含む。正孔輸送性材料の例としては、ポリチオフェン及びその誘導体、芳香族アミン化合物、芳香族アミン残基を有する構成単位を含む高分子化合物、CuSCN、CuI、NiO、及び酸化モリブデン(MoO)が挙げられる。
【0330】
有機光電変換素子は、陰極と活性層との間に、電子輸送層を備えていてもよい。電子輸送層は、活性層から陰極へと電子を輸送する機能を有する。電子輸送層は、陰極に接していてもよい。電子輸送層は活性層に接していてもよい。
【0331】
電子輸送層は、電子輸送性材料を含む。電子輸送性材料の例としては、酸化亜鉛のナノ粒子、ガリウムドープ酸化亜鉛のナノ粒子、アルミニウムドープ酸化亜鉛のナノ粒子、ポリエチレンイミン、エトキシ化ポリエチレンイミン、及びPFN-P2が挙げられる。
【0332】
中間層は、既に説明した活性層の製造方法と同様の塗布法により形成することができる。
【0333】
(封止層)
本開示に係る有機光電変換素子は、封止層をさらに備えていてもよい。封止層は、例えば、基板から遠い方の電極側に設けることができる。封止層は、水分を遮断する性質(水蒸気バリア性)又は酸素を遮断する性質(酸素バリア性)を有する材料を用いて、選択された材料に好適な方法により形成することができる。
【0334】
(有機光電変換素子の用途)
本開示に係る有機光電変換素子は、光が照射されることにより、電極間に光起電力を発生させることができ、太陽電池として動作させることができる。また太陽電池を複数集積することにより薄膜太陽電池モジュールとすることもできる。
【0335】
また、本開示に係る有機光電変換素子は、電極間に電圧を印加した状態で、透明又は半透明の電極側から光を照射することにより、光電流を流すことができ、光検出素子(光センサー)として動作させることができる。また、光センサーを複数集積することによりイメージセンサーとして用いることもできる。
【実施例0336】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0337】
<反応性化合物の合成>
国際公開第2014/112656号に記載の方法に従って反応性化合物であるH209TEを合成した。
【0338】
【化69】
【0339】
<実施例1~実施例3>
式(501-1)で表される反応性化合物2.5gを、大気雰囲気下、封入容器である内蓋を有する容器(アイセロ社製、AC-100TSST)に入れ、1cm四方の孔部を1つ設けた内蓋を容器本体の開口部に嵌合し、内蓋の上に乾燥剤である5gのシリカゲルA型(アズワン株式会社から購入。品名シリカゲル乾燥剤)を1つ設置し、その後封入した。上記化合物が入った該封入容器及び乾燥剤(上記と同一のシリカゲルA型)3個を袋状容器であるアルミラミジップに入れ、熱ラミネーションにより封止することにより、合成中間体パッケージとした。これを下記表3に示す温度の恒温槽中に置き、一年間保管した。10℃保管において、封入容器の内部に結露は観測されなかった。
【0340】
<比較例1及び比較例2>
封入容器内及び袋状容器内に乾燥剤を入れなかったこと以外は実施例1~実施例3と同一の手順で合成中間体パッケージを得て、これを下記表3に示す温度の恒温槽中に置き、一年間保管した。
【0341】
<保管安定性評価>
保管前の反応性化合物の純度を液体クロマトグラフによって測定し、測定された純度を「初期純度」とする。
そして、一年間保管後の反応性化合物の純度を液体クロマトグラフによって測定し、測定された純度を「保管後純度」とする。
そして、保管後純度を初期純度で割り(即ち、保管後純度÷初期純度)得た値を保管安定性指標と称する。保管安定性指標の値が1に近いほど経時による反応性化合物の純度の低下を抑えることができたことを意味する。
【0342】
【表3】
【0343】
表3中、「保管雰囲気の絶対湿度」は封入容器内の雰囲気の絶対湿度を意味する。
【0344】
実施例1~3と、比較例1及び比較例2と、の間における保管安定性指標値の差は、保管後の反応性化合物を用いたポリマー合成において大きく影響を及ぼす。具体的には、実施例1~3の通り保管された反応性化合物を用いてポリマーを合成した場合、所望のポリマーが得られやすいのに対し、比較例1及び比較例2の通り保管された反応性化合物を用いてポリマーを合成した場合所望のポリマーが得られにくい(例えば分子量が所望の値より小さくなりやすい等)。
【0345】
<実施例P1>
【0346】
【化70】
【0347】
国際公開第2014/112656号に記載の方法に従ってH216TE及びH241BRを合成した。
次いで、常温で冷却装置を備えたガラス製反応容器に、H241BR(3.55mmol)、実施例1の条件で一年間保管したH209TE(1.73mmol)、H216TE(1.73mmol)、水(106g)、40質量%リン酸カリウム水溶液(12.5mL)、1-メチルシクロヘキサノール(59mL)、テトラリン(55mL)、及びクロリド(メタニド){ビス(1,1-ジメチルエチル)[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェニル]ホスファン}パラジウム(0.04mmol)を加えて65℃で1時間攪拌した。フェニルホウ酸(3.55mmol)の40質量%リン酸カリウム水溶液(12.5mL)を加えて、65℃で1時間攪拌した。生じた有機層を酢酸水、及び水で洗浄した後、洗浄済みの有機層をメタノールに加えて析出した固体を濾過することによって粗ポリマーとして回収した。
得られた粗ポリマーをテトラリンに溶解させて、5B(JIS P 3801:5種B)濾紙に通液させた後、再度メタノールに加えて析出した固体を濾過によって回収することによりポリマーP-1を得た。GPC分析により得られたポリマーのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は1.13×10であり、所望のポリマーが得られたことを確認した。
【0348】
上記結果から、本開示に係る合成中間体パッケージ及び反応性化合物の保管方法は、経時による反応性化合物の純度の低下を抑えることができることがわかる。
また、本開示に係るポリマーの製造方法は、保管された反応性化合物を使用した場合でも、経時による純度の低下が抑えられた反応性化合物を用いることで所望のポリマーが得られることが分かる。
【符号の説明】
【0349】
10 合成中間体パッケージ
30 封入容器
32 本体部
32a 開口部
36 内蓋
36a 凹部
36b 孔部
38 外蓋
40 袋状容器
50 乾燥剤
60 反応性化合物
図1