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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009123
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】測定器
(51)【国際特許分類】
   G01B 3/20 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
G01B3/20 101Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023196500
(22)【出願日】2023-11-20
(62)【分割の表示】P 2020057924の分割
【原出願日】2020-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(72)【発明者】
【氏名】永井 真人
(57)【要約】
【課題】測定対象物を押圧する測定力を安定させることが可能な測定器を提供する。
【解決手段】測定対象物W1に当接する第1測定子(外側測定ジョー22A、内側測定ジョー24A)を有し、長手方向に延びた本尺12と、測定対象物W1に当接する第2測定子(外側測定ジョー22B、内側測定ジョー24B)を有し、本尺12に対し長手方向に沿って移動自在に設けられたスライダ14と、スライダ14に設けられ、長手方向の一方向側と他方向側とに傾倒自在な操作レバー16と、操作レバー16が一方向側に予め定められた傾倒角度まで傾倒された場合と他方向側に傾倒角度まで傾倒された場合とに、第1測定子と第2測定子との間の寸法を取得する測定部18と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に当接する第1測定子を有し、長手方向に延びた本尺と、
前記測定対象物に当接する第2測定子を有し、前記本尺に対し前記長手方向に沿って移動自在に設けられたスライダと、
前記スライダに設けられ、前記長手方向の一方向側と他方向側とに傾倒自在な操作レバーと、
前記操作レバーが前記一方向側に予め定められた傾倒角度まで傾倒された場合と前記他方向側に前記傾倒角度まで傾倒された場合とに、前記第1測定子と前記第2測定子との間の寸法を取得する測定部と、
を備える測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の寸法測定を行う測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象物の長さ、幅、厚み、外径、及び内径等の寸法を測定するノギスとして、寸法の測定値の人為的な読み取りミスを低減するため、操作ボタン等の押下操作に応じて測定値を表示するデジタルノギス(測定器)が知られている。このデジタルノギスは、測定の基準となる本尺に対して移動自在に取り付けられたスライダを有し、このスライダの移動変位量を電気信号に変換して測定値をデジタル表示する。
【0003】
このようなデジタルノギスで測定対象物の寸法を精度良く測定するためには、デジタルノギスの一対の測定ジョーを測定対象物に接触させた際に、測定ジョーにより測定対象物を押圧する測定力を一定にする、又は所望の測定力に制御する必要がある。
【0004】
そこで、特許文献1には、測定対象物に接触させた測定ジョーによりこの測定対象物を押圧する測定力が所定の値か否かをユーザに各種表示又は音声出力により通知するデジタルノギスが開示されている。これにより、ユーザは、測定力が所定の値か否かを簡単に認識することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-25777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1に記載のデジタルノギスを用いた場合には、測定ジョーにより測定対象物を押圧する測定力が所定の値か否かをユーザに通知可能であるが、測定対象物の寸法測定を行う際にはデジタルノギスのいずれかに設けられた操作ボタンを押下操作する必要がある。そして、この操作ボタンを押下操作する際に、操作ボタンの位置によっては押し難くなるのでデジタルノギスを持つ手の力加減が変わってしまい、測定力がユーザの意図したとおりに安定しないという問題がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、測定対象物を押圧する測定力を安定させることが可能な測定器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的を達成するための測定器は、測定対象物に当接する第1測定子を有し、長手方向に延びた本尺と、測定対象物に当接する第2測定子を有し、本尺に対し長手方向に沿って移動自在に設けられたスライダと、スライダに設けられ、長手方向の一方向側と他方向側とに傾倒自在な操作レバーと、操作レバーが一方向側に予め定められた傾倒角度まで傾倒された場合と他方向側に傾倒角度まで傾倒された場合とに、第1測定子と第2測定子との間の寸法を取得する測定部と、操作レバーに設けられ、操作レバーの傾倒に抗する抗力を発生する弾性体と、を備える。
【0009】
この測定器によれば、測定対象物の毎回の寸法測定ごとに、第2測定子により測定対象物を一定の測定力で押圧することができる。
【0010】
本発明の他の態様に係る測定器において、弾性体が、操作レバーが傾倒角度まで傾倒されている場合において、本尺とスライダとの間の摩擦力よりも大きい抗力を発生する。これにより、各測定子が測定対象物に当接していない状態で、この測定対象物の寸法測定が実行されることが防止される。
【0011】
本発明の他の態様に係る測定器において、操作レバーが、スライダに設けられた支持軸と、第1開口と第2開口と中空部とを有する筒状のレバー本体であって、且つ第1開口から中空部内に支持軸の軸端部が挿入された状態で軸端部に対して一方向側と他方向側とに傾倒自在に支持されているレバー本体と、レバー本体の第1開口とは反対側の第2開口に設けられた蓋と、中空部内で蓋と軸端部との間に移動自在に設けられた移動体と、を備え、弾性体が、中空部内で蓋と移動体の間に設けられており、且つ移動体を軸端部に向けて付勢する。これにより、操作レバーが予め定めた傾倒角度まで傾倒されるごとに、第2測定子により測定対象物を一定の測定力で押圧することができる。
【0012】
本発明の他の態様に係る測定器において、支持軸に対するレバー本体の傾倒に応じて、移動体が中空部内で蓋に向けて移動し、且つ弾性体が蓋と移動体との間で圧縮されることにより抗力を発生する。これにより、操作レバーが予め定めた傾倒角度まで傾倒されるごとに、第2測定子により測定対象物を一定の測定力で押圧することができる。
【0013】
本発明の他の態様に係る測定器において、移動体の中で軸端部に当接する当接部が、長手方向において軸端部よりも狭幅に形成されている。これにより、操作レバーの傾倒操作に応じて、軸端部上で当接部を容易に傾倒させることができる。
【0014】
本発明の他の態様に係る測定器において、軸端部の外周面の中で一方向側の領域を第1領域とし、軸端部の外周面の中で他方向側の領域を第2領域とし、レバー本体の内周面の中で第1領域に対向する領域を第1対向領域とし、レバー本体の内周面の中で第2領域に対向する領域を第2対向領域とした場合において、第1領域又は第1対向領域と、第2領域又は第2対向領域と、に設けられた接触式又は釦式のスイッチを備え、操作レバーが一方向側に傾倒角度まで傾倒された場合にスイッチの一方がオンされ、操作レバーが他方向側に傾倒角度まで傾倒された場合にスイッチの他方がオンされ、測定部が、スイッチがオンされた場合に寸法を取得する。これにより、操作レバーが予め定めた傾倒角度まで傾倒された場合に測定対象物の寸法を取得することができる。
【0015】
本発明の他の態様に係る測定器において、弾性体がバネである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、測定対象物を押圧する測定力を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】デジタルノギスの正面図である。
図2】操作レバーの正面図である。
図3】操作レバーの断面図である。
図4】デジタルノギスによる測定対象物の寸法測定時における測定力を説明するための図である。
図5】デジタルノギスによる測定対象物の寸法測定時における測定力を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[デジタルノギスの構成]
図1は、本発明の測定器に相当するデジタルノギス10の正面図である。デジタルノギス10は、各種形状の測定対象物W1,W2の長さ、幅、厚み、外径、及び内径等の寸法測定に用いられる。なお、図中の互いに直交するXYZ方向のうちX方向はデジタルノギス10の本尺12の長手方向であり、Y方向は本尺12の短手方向であり、Z方向は本尺12の厚み方向である。また、X方向の一方向側を+X方向側とし且つ他方向側を-X方向側とし、Y方向の一方向側を+Y方向側とし且つ他方向側を-Y方向側とする。
【0019】
図1に示すように、デジタルノギス10は、本尺12(メインスケール、ノギス本体ともいう)と、スライダ14(検出子ともいう)と、操作レバー16と、測定部18と、表示部20と、を備える。
【0020】
本尺12はX方向に延びた形状を有する。本尺12の+X方向側の先端部には、本発明の第1測定子に相当する外側測定ジョー22A及び内側測定ジョー24Aが設けられている。また、本尺12の-X方向側の基端部は、ユーザにより把持される把持部となる。
【0021】
外側測定ジョー22Aは、本尺12の先端部から-Y方向側に突設されている。外側測定ジョー22Aは、測定対象物W1の長さ、幅、厚み、及び外径等の寸法測定時に測定対象物W1の被測定部(外面等)に当接する。
【0022】
内側測定ジョー24Aは、本尺12の先端部から+Y方向側に突設されている。内側測定ジョー24Aは、測定対象物W2の内径等の寸法測定時に測定対象物W2の被測定部(穴及び凹部の内面等)に当接する。
【0023】
スライダ14は、本尺12に対してX方向に沿って移動自在(摺動自在)に設けられている。このスライダ14には、本発明の第2測定子に相当する外側測定ジョー22B及び内側測定ジョー24Bと、操作レバー16と、測定部18と、表示部20と、止めネジ21と、が設けられている。
【0024】
外側測定ジョー22Bは、スライダ14の+X方向側の先端部から-Y方向側に突設されている。外側測定ジョー22Bは、測定対象物W1の長さ、幅、厚み、及び外径等の寸法測定時において測定対象物W1の被測定部に当接することで、外側測定ジョー22Aとの間で測定対象物W1(被測定部)を挟み込む。
【0025】
内側測定ジョー24Bは、スライダ14の先端部から+Y方向側に突設されている。内側測定ジョー24Bは、測定対象物W2の内径等の寸法測定時において測定対象物W2の被測定部に当接する。これにより、測定対象物W2の被測定部の+X方向側及び-X方向側の端部に内側測定ジョー24A,24Bが内接する。
【0026】
操作レバー16は、スライダ14の-Y方向側の下面において、+X方向側と-X方向側とに傾倒自在に設けられている。より具体的には、操作レバー16は、スライダ14の下面の中でユーザの指(人差し指或いは中指等)で傾倒操作可能な位置に設けられている。この操作レバー16は、測定対象物W1,W2の寸法の測定値を確定させる場合、すなわち後述の測定部18を作動させる場合に+X方向側又は-X方向側に傾倒操作される。
【0027】
具体的には操作レバー16は、外側測定ジョー22A,22Bを用いた測定対象物W1の寸法測定時には+X方向側(外側測定ジョー22Bで測定対象物W1を押圧する方向側)に傾倒操作される。また、操作レバー16は、内側測定ジョー24A,24Bを用いた測定対象物W2の寸法測定時には-X方向側(内側測定ジョー24Bで測定対象物W2を押圧する方向側)に傾倒操作される。
【0028】
測定部18は、公知のエンコーダ及びトランスデューサ等が用いられ、操作レバー16の傾倒操作に応じて後述の操作レバー16内のスイッチ40,42の一方がオンされた場合に、測定対象物W1,W2の寸法を取得する。この測定部18は、本尺12に対するスライダ14の移動変位量を電気信号として検出し、この検出量を測定対象物W1,W2の寸法測定値として表示部20に出力する。なお、スライダ14の移動変位量は、測定対象物W1の寸法測定時には外側測定ジョー22A,22Bの間の寸法に相当し、測定対象物W2の寸法測定時には内側測定ジョー24A,24Bの間の寸法に相当する。
【0029】
表示部20は、例えば液晶ディスプレイ等が用いられ、測定部18から入力された測定対象物W1,W2の寸法の測定値を表示する。止めネジ21は、本尺12に対するスライダ14の固定に用いられる。
【0030】
[操作レバー]
図2は操作レバー16の正面図である。図3は操作レバー16の断面図である。図2及び図3に示すように、操作レバー16は、支持軸30と、レバー本体32と、蓋34と、移動体36と、バネ38と、を備える。また、操作レバー16の内部には、釦式或いは接触式のスイッチ40,42が設けられている。
【0031】
支持軸30は、スライダ14の基端部下面側に設けられ、-Y方向側に延びた形状を有する。この支持軸30の-Y方向側の軸端部30aは、揺動軸31を介して、レバー本体32を±X方向側に揺動自在に支持する。
【0032】
レバー本体32は、筒状に形成されており、第1開口32aと第2開口32bと中空部32cとを有する。このレバー本体32の内径は支持軸30の外径よりも大径に形成されている。レバー本体32は、第1開口32a側から中空部32c内に軸端部30aが挿入された状態で、揺動軸31を介して、軸端部30aに対して±X方向側に揺動自在に支持されている。
【0033】
蓋34は、レバー本体32の第1開口32aとは反対側の第2開口32bに設けられている。この蓋34は、ユーザの指が掛かる指掛かり部である。
【0034】
移動体36は、中空部32c内の軸端部30aと蓋34との間に移動自在に設けられている。移動体36は、後述のバネ38により軸端部30aに向けて付勢される。この移動体36の軸端部30aに対向する対向面にはブロック36aが設けられている。
【0035】
ブロック36aは、本発明の当接部に相当するものであり、後述のバネ38により移動体36が付勢されることで軸端部30aに常時当接する。このブロック36aは、少なくともX方向において軸端部30aよりも狭幅に形成されている。これにより、詳しくは後述するが、操作レバー16の±X方向側の傾倒操作に応じて、軸端部30a上でブロック36a(移動体36)が±X方向に傾倒し易くなる(図4及び図5参照)。
【0036】
バネ38は、本発明の弾性体に相当するものであり、例えばコイルバネが用いられる。このバネ38は、中空部32c内の蓋34と移動体36との間に圧縮された状態で設けられている。これにより、バネ38が移動体36を軸端部30aに向けて常時付勢することで、ブロック36aが軸端部30aに常時当接する。なお、図中の符号L0は、操作レバー16の傾倒操作前のバネ38の長さ(蓋34と移動体36との間隔)である。
【0037】
バネ38の付勢力F1は、詳しくは後述するが、操作レバー16が+X方向側の傾倒操作された場合には、外側測定ジョー22Bが+X方向側に測定対象物W1を押圧する測定力MF1(図4参照)として作用する。また逆に、操作レバー16が-X方向側の傾倒操作された場合には、バネ38の付勢力F1は、内側測定ジョー24Bが-X方向側に測定対象物W2を押圧する測定力MF2(図5参照)として作用する。
【0038】
スイッチ40,42は、レバー本体32の内周面であって且つ支持軸30の外周面に対向する位置に設けられている。具体的には、軸端部30aの外周面の中で-X方向側の領域を第1領域R1とし、且つレバー本体32の内周面の中で第1領域R1に対向する領域を第1対向領域OR1とした場合に、スイッチ40は第1対向領域OR1に設けられている。また、軸端部30aの外周面の中で+X方向側の領域を第2領域R2とし、且つレバー本体32の内周面の中で第2領域R2に対向する領域を第2対向領域OR2とした場合に、スイッチ42は第2対向領域OR2に設けられている。
【0039】
スイッチ40は、操作レバー16(レバー本体32)が+X方向側に予め定められた傾斜角度まで傾倒された場合に、第1領域R1により押圧される又は第1領域R1に接触することでオンされ、それ以外の状態ではオフとなる(図4参照)。
【0040】
スイッチ42は、操作レバー16(レバー本体32)が-X方向側に予め定められた傾斜角度まで傾倒された場合に、第2領域R2により押圧される又は第2領域R2に接触することでオンされ、それ以外の状態ではオフとなる(図5参照)。
【0041】
[デジタルノギスの作用]
図4は、デジタルノギス10による測定対象物W1の寸法測定時における測定力MF1を説明するための図である。図5は、デジタルノギス10による測定対象物W2の寸法測定時における測定力MF2を説明するための図である。
【0042】
図4に示すように、測定対象物W1の寸法測定を行う場合には、外側測定ジョー22A,22Bをそれぞれ測定対象物W1に接触させた状態において(図1参照)、ユーザが操作レバー16を+X方向側に傾倒操作させる。また、図5に示すように、測定対象物W2の寸法測定を行う場合には、内側測定ジョー24A,24Bをそれぞれ測定対象物W2に接触させた状態において(図1参照)、ユーザが操作レバー16を-X方向側に傾倒操作させる。
【0043】
操作レバー16の傾倒操作に応じて、軸端部30a上で移動体36(ブロック36a)が操作レバー16の傾倒方向(+X方向側、-X方向側)に傾倒する。
【0044】
移動体36の傾倒角度が増加するのに従って、この移動体36がレバー本体32内で蓋34に向けて相対的に移動する。これにより、蓋34と移動体36との間隔L1が間隔L0よりも狭くなることでバネ38が圧縮(弾性変形)される。その結果、バネ38が移動体36を支持軸30に向けて付勢する付勢力F1が発生することで、この付勢力F1の一部が操作レバー16の傾倒に抗する抗力F2(抵抗力)、すなわち操作レバー16(移動体36)を元の姿勢(図3参照)に復元する復元力として作用する。この抗力F2は、操作レバー16の傾倒角度が増加するほど、すなわちバネ38が縮むほど増加する。
【0045】
そして、操作レバー16が+X方向側に予め定められた傾倒角度(以下、所定傾斜角度という)まで傾倒されると、スイッチ40が第1領域R1により押圧等されることでオンされる。その結果、測定部18による測定対象物W1の寸法(外側測定ジョー22A,22Bの間の寸法)の取得と、表示部20による寸法測定値の表示と、が行われる(図4参照)。
【0046】
また逆に、操作レバー16が-X方向側に所定傾斜角度まで傾倒されると、スイッチ42が第2領域R2により押圧等されることでオンされる。その結果、測定部18による測定対象物W2の寸法(内側測定ジョー24A,24Bの間の寸法)の取得と、表示部20による寸法測定値の表示と、が行われる(図5参照)。
【0047】
このように本実施形態では、操作レバー16が±X方向側に所定傾斜角度だけ傾倒されたときの抗力F2の値を「抗力閾値」とすると、この抗力閾値に相当する力が操作レバー16に印加された場合に測定対象物W1、W2の寸法の測定及び表示が実行される。このため、抗力閾値が、毎回の測定対象物W1の寸法測定において外側測定ジョー22Bが+X方向側に測定対象物W1を押圧する測定力MF1となり、且つ毎回の測定対象物W2の寸法測定において内側測定ジョー24Bが-X方向側に測定対象物W2を押圧する測定力MF2となる。これにより、ユーザが操作レバー16を±X方向側に所定傾斜角度まで傾倒操作するだけで、常に一定の測定力MF1,MF2で測定対象物W1,W2の寸法測定を実行可能である。
【0048】
[測定力MF1,MF2及び抗力閾値]
測定力MF1,MF2(抗力閾値)の大きさは、付勢力F1の大きさに依存する。このため、測定力MF1,MF2(抗力閾値)は、バネ38(バネ定数)の種類を変更したり、或いは蓋34と移動体36との間隔を変更したりすることで適宜調整可能である。
【0049】
また、抗力閾値は、本尺12とスライダ14との間の摩擦力(摺動抵抗)よりも大きい値であることが好ましい。これにより、少なくとも操作レバー16が所定傾斜角度まで回転された状態では、「操作レバー16を介してスライダ14に印加されるX方向の力>摩擦力」となるので、スライダ14が測定対象物W1,W2に向けて摩擦力を上回る力で押圧される。これにより、測定対象物W1,W2と各測定ジョー(外側測定ジョー22B、内側測定ジョー24B)との間に隙間が生じていても、測定対象物W1,W2に各測定ジョーを確実に当接させることができる。換言すると、各測定ジョーが測定対象物W1、W2に当接していない状態で、操作レバー16が所定傾斜角度まで傾倒されること、すなわち測定対象物W1,W2の寸法測定が実行されることが防止される。
【0050】
[本実施形態の効果]
以上のように本実施形態では、操作レバー16を所定傾斜角度まで傾倒させる傾倒操作により、測定対象物W1,W2を押圧する一定の測定力MF1,MF2(抗力閾値)を発生させると共に測定対象物W1,W2の寸法を取得することができる。その結果、毎回の測定対象物W1,W2の寸法測定において、測定力MF1,MF2を安定させることができる。
【0051】
[その他]
上記実施形態では、スライダ14と一体に外側測定ジョー22B及び内側測定ジョー24BがX方向に移動するが、スライダ14に対して内側測定ジョー24BがX方向に移動自在に保持されていてもよい。
【0052】
上記実施形態ではレバー本体32の第1対向領域OR1にスイッチ40を設け且つ第2対向領域OR2にスイッチ42を設けているが、逆に支持軸30の第1領域R1にスイッチ40を設け且つ第2領域R2にスイッチ42を設けてもよい。
【0053】
上記実施形態では、操作レバー16をスライダ14の-Y方向側の下面に設けているが、スライダ14の+Y方向側の上面に設けてもよい。この場合には操作レバー16は、スライダ14の上面の中でユーザの親指等で傾倒操作可能な位置に設けられる。
【0054】
上記実施形態では、操作レバー16が+X方向側に所定傾斜角度まで傾倒された場合にスイッチ40がオンされ、逆に操作レバー16が-X方向側に所定傾斜角度まで傾倒された場合にスイッチ42がオンされるが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、スイッチ40,42が揺動軸31よりも+Y方向側の位置に設けられている場合には、操作レバー16が+X方向側に所定傾斜角度まで傾倒された場合にスイッチ42がオンされ、逆に操作レバー16が-X方向側に所定傾斜角度まで傾倒された場合にスイッチ40がオンされる。
【0055】
上記実施形態では、バネ38としてコイルバネを例に挙げているが、板バネ等の圧縮により付勢力F1を発生可能な各種バネを用いてもよい。また、中空部32c内にバネ38を設ける代わりに、例えば揺動軸31に捩じりバネ(弾性体)を設け、この捩じりバネにより操作レバー16の傾倒に抗する抗力F2を発生させてもよい。さらに上記実施形態では本発明の弾性体として各種バネを例に挙げているが、例えばゴム等の弾性変形により上述の抗力F2(復元力)を発生可能な各種弾性体を用いてもよい。
【0056】
上記実施形態では、測定部18が取得した測定対象物W1,W2の寸法の測定結果を表示部20に表示させているが、不図示のスピーカから音声出力させてもよい。また、この寸法の測定結果を外部機器(モニタ、プリンタ、ストレージ、及びサーバ等)に出力してもよい。
【0057】
上記実施形態では、デジタルノギス10を例に挙げて説明したが、ユーザの測定開始操作に応じて各種形状の第1測定子及び第2測定子の間の寸法を取得するマイクロメータ等の各種のデジタル式の測定器に本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 デジタルノギス、12 本尺、14 スライダ、16 操作レバー、18 測定部、20 表示部、21 止めネジ、22A,22B 外側測定ジョー、24A,24B 内側測定ジョー、30 支持軸、30a 軸端部、31 揺動軸、32 レバー本体、32a 第1開口、32b 第2開口、32c 中空部、34 蓋、36 移動体、36a ブロック、38 バネ、40,42 スイッチ、F1 付勢力、F2 抗力、MF1,MF2 測定力、OR1 第1対向領域、OR2 第2対向領域、R1 第1領域、R2 第2領域、W1,W2 測定対象物
図1
図2
図3
図4
図5