(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091418
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】フッ化物イオン電池用電極活物質、フッ化物イオン電池用電極及びフッ化物イオン電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/48 20100101AFI20240627BHJP
C01G 51/00 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
H01M4/48
C01G51/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023150965
(22)【出願日】2023-09-19
(31)【優先権主張番号】P 2022207157
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145104
【弁理士】
【氏名又は名称】膝舘 祥治
(72)【発明者】
【氏名】柏原 浩大
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA05
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AD06
4G048AE07
5H050BA15
5H050CA02
5H050CB04
5H050HA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フッ化物イオン電池用電極活物質を提供する。
【解決手段】第1金属原子と、第2金属原子と、第3金属原子と、少なくとも酸素原子を含む特定非金属原子と、を含む金属複合酸化物は、第1金属原子の総モル数に対する、第2金属原子の総モル数の比が0.8以上1.2以下であり、第3金属原子の総モル数の比が3.8以上4.2以下であり、特定非金属原子の総モル数の比が6.9以上8.5以下である組成を有する。
第1金属原子群:Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ca、In、Sb;
第2金属原子群:Mg、Sr、Ba、Na;
第3金属原子群:Be、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au;
特定非金属原子群:O、F、N、S、Cl。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記第1金属原子群から選択される少なくとも1種を含む第1金属原子と、下記第2金属原子群から選択される少なくとも1種を含む第2金属原子と、下記第3金属原子群から選択される少なくとも1種を含む第3金属原子と、下記特定非金属原子群から選択され、少なくとも酸素原子を含む少なくとも1種の特定非金属原子と、を含み、
前記第1金属原子の総モル数に対する前記第2金属原子の総モル数の比が0.8以上1.2以下であり、前記第1金属原子の総モル数に対する前記第3金属原子の総モル数の比が3.8以上4.2以下であり、前記第1金属原子の総モル数に対する前記特定非金属原子の総モル数の比が6.9以上8.5以下である組成を有する金属複合酸化物を含むフッ化物イオン電池用電極活物質。
第1金属原子群:Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ca、In、Sb;
第2金属原子群:Mg、Sr、Ba、Na;
第3金属原子群:Be、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au;
特定非金属原子群:O、F、N、S、Cl。
【請求項2】
前記金属複合酸化物は、前記第1金属原子として、Y、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ca及びInからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【請求項3】
前記金属複合酸化物は、前記第2金属原子として、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項2に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【請求項4】
前記金属複合酸化物は、前記第3金属原子として、Al、Si、Fe、Co及びZnからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項3に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【請求項5】
下記式(1)で表される組成を有する金属複合酸化物を含むフッ化物イオン電池用電極活物質。
M1M2
pM3
qXr (1)
(式(1)中、p、q及びrは、0.8≦p≦1.2、3.8≦q≦4.2、6.9≦r≦8.5を満たし、M1はY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ca、In及びSbからなる群より選択される少なくとも1種を含み、M2は、Mg、Sr、Ba及びNaからなる群より選択される少なくとも1種を含み、M3は、Be、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt及びAuからなる群より選択される少なくとも1種を含み、Xは、Oを含み、N、F、S及びClからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでもよい。)
【請求項6】
前記金属複合酸化物は、前記M1としてY、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ca及びInからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項5に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【請求項7】
前記金属複合酸化物は、前記M2としてSr及びBaからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項6に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【請求項8】
前記金属複合酸化物は、前記M3としてAl、Si、Fe、Co、Cu及びZnからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項7に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質を含むフッ化物イオン電池用電極。
【請求項10】
請求項9に記載のフッ化物イオン電池用電極と、電解質とを備えるフッ化物イオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フッ化物イオン電池用電極活物質、フッ化物イオン電池用電極及びフッ化物イオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
高いエネルギー密度を有する二次電池としてリチウムイオン電池が知られている。リチウムイオン電池よりも高いエネルギー密度を達成可能な電池として、フッ化物イオン電池が提案されている。例えば、特許文献1には、層状ペロブスカイト構造を有し、特定組成の結晶相を有する活物質が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一態様は、フッ化物イオン電池用の電極活物質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様は、第1金属原子群から選択される少なくとも1種を含む第1金属原子と、第2金属原子群から選択される少なくとも1種を含む第2金属原子と、第3金属原子群から選択される少なくとも1種を含む第3金属原子と、特定非金属原子群から選択され、少なくとも酸素原子を含む少なくとも1種の特定非金属原子と、を含む金属複合酸化物を含むフッ化物イオン電池用電極活物質である。金属複合酸化物は、第1金属原子の総モル数に対する第2金属原子の総モル数の比が、0.8以上1.2以下であり、第1金属原子の総モル数に対する第3金属原子の総モル数の比が、3.8以上4.2以下であり、第1金属原子の総モル数に対する特定非金属原子の総モル数の比が6.9以上8.5以下である組成を有する。
第1金属原子群:Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ca、In、Sb;
第2金属原子群:Mg、Sr、Ba、Na;
第3金属原子群:Be、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au;
特定非金属原子群:O、F、N、S、Cl。
【0006】
第2態様は、下記式(1)で表される組成を有する金属複合酸化物を含むフッ化物イオン電池用電極活物質である。
【0007】
M1M2
pM3
qXr (1)
【0008】
式(1)中、p、q及びrは、0.8≦p≦1.2、3.8≦q≦4.2、6.9≦r≦8.5を満たす。M1はY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ca、In及びSbからなる群より選択される少なくとも1種を含む。M2は、Mg、Sr、Ba及びNaからなる群より選択される少なくとも1種を含む。M3は、Be、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt及びAuからなる群より選択される少なくとも1種を含む。Xは、Oを含み、N、F、S及びClからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでもよい。
【0009】
第3態様は、第1態様又は第2態様のフッ化物イオン電池用電極活物質を含むフッ化物イオン電池用電極である。第4態様は、第3態様のフッ化物イオン電池用電極と、電解質とを備えるフッ化物イオン電池である。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様によれば、フッ化物イオン電池用の電極活物質を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】スウェーデンボルガイト型酸化物の結晶構造の一例を示す概略図である。
【
図1B】スウェーデンボルガイト型酸化物の結晶構造の最小単位の一例を示す概略拡大図である。
【
図2】実施例1の金属複合酸化物のXRDスペクトルの一例を示す図である。
【
図3】実施例2の金属複合酸化物のXRDスペクトルの一例を示す図である。
【
図4】実施例3の金属複合酸化物のXRDスペクトルの一例を示す図である。
【
図5】実施例4の金属複合酸化物のXRDスペクトルの一例を示す図である。
【
図6】実施例1の金属複合酸化物を用いたフッ化物イオン電池の充放電特性の一例を示す図である。
【
図7】実施例2の金属複合酸化物を用いたフッ化物イオン電池の充放電特性の一例を示す図である。
【
図8】実施例3の金属複合酸化物を用いたフッ化物イオン電池の充放電特性の一例を示す図である。
【
図9】実施例4の金属複合酸化物を用いたフッ化物イオン電池の充放電特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。さらに本明細書に記載される数値範囲の上限及び下限は、数値範囲として例示された数値をそれぞれ任意に選択して組み合わせることが可能である。以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための、フッ化物イオン電池用電極活物質、フッ化物イオン電池用電極及びフッ化物イオン電池を例示するものであって、本発明は、以下に示すフッ化物イオン電池用電極活物質、フッ化物イオン電池用電極及びフッ化物イオン電池に限定されない。
【0013】
フッ化物イオン電池用電極活物質
フッ化物イオン電池用電極活物質(以下、単に「電極活物質」ともいう)は、第1金属原子群から選択される少なくとも1種を含む第1金属原子と、第2金属原子群から選択される少なくとも1種を含む第2金属原子と、第3金属原子群から選択される少なくとも1種を含む第3金属原子と、特定非金属原子群から選択され、少なくとも酸素原子を含む少なくとも1種の特定非金属原子と、を組成に含む金属複合酸化物を含む。金属複合酸化物は以下のような組成を有していてよい。第1金属原子の総モル数に対する第2金属原子の総モル数の比が0.8以上1.2以下であってよく、0.9以上、又は1.1以下であってよい。第1金属原子の総モル数に対する第3金属原子の総モル数の比が3.8以上4.2以下であってよく、3.9以上、又は4.1以下であってよい。第1金属原子の総モル数に対する特定非金属原子の総モル数の比が6.9以上8.5以下であってよく、7.0以上、又は8.0以下であってよい。
【0014】
第1金属原子群:イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、カルシウム(Ca)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)。
【0015】
第2金属原子群:マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ナトリウム(Na)。
【0016】
第3金属原子群:ベリリウム(Be)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、スズ(Sn)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)。
【0017】
特定非金属原子群:酸素原子(O)、フッ素原子(F)、窒素原子(N)、イオウ(S)、塩素原子(Cl)。
【0018】
電極活物質を構成する金属複合酸化物は、例えばスウェーデンボルガイト(Swedenborgite)型酸化物であってよい。スウェーデンボルガイト型酸化物では、四面体構造をとる第3金属原子と酸素を含む単位格子が、2次元ネットワーク構造をとって層状の結晶構造を形成すると考えられる。
図1A及び
図1Bにスウェーデンボルガイト型酸化物の一例としてYBaCo
4O
7の結晶構造を示す。
図1Aは結晶構造の概略を示す斜視図であり、
図1Bは結晶構造の最小単位の概略を示す斜視図である。
図1Bに示すように、コバルト(Co)6と酸素(O)8を含む四面体構造の単位格子が2次元ネットワーク構造をとり、イットリウム(Y)2とバリウム(Ba)4が、四面体構造の単位格子に囲まれる構造をとっている。従来知られているフッ化物イオン電池用電極活物質の多くは金属活物質であり、金属のフッ化脱フッ化反応により活物質として機能する。金属のフッ化脱フッ化反応は、結晶構造の大きな変化を伴う反応であり、体積変化が大きい。そのため、抵抗が大きく、サイクル特性やレート特性が低くなる傾向がある。一方、層状の結晶構造をもつ化合物は、キャリアイオンの層間空間への挿入脱離により活物質としての機能を発現する。活物質の結晶構造が変化しないことから体積変化が小さく、抵抗の低減及びサイクル特性、レート特性等の向上が期待できる。スウェーデンボルガイト型構造を有する酸化物である金属複合酸化物においても、これらの利点が期待できると考えられる。また、スウェーデンボルガイト型構造を有する酸化物のなかには酸素貯蔵能をもつものが存在し、アニオンをその結晶構造中に取り込みやすい材料であると考えられ、フッ化物イオンの可逆的な脱挿入も可能であると考えられる。
【0019】
金属複合酸化物における第1金属原子は、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ca、In及びSbからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、Sc、Y、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ca及びInからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、少なくともYを含んでいてよい。
【0020】
また、金属複合酸化物における第1金属原子は、Y、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ca及びInからなる群から選択される少なくとも1種を含み、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Yb、Lu及びSbからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含んでいてよい。第1金属原子がY、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ca及びInからなる群から選択される少なくとも1種を含む場合、第1金属原子におけるY、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ca及びInの総含有量は、例えば50モル%以上、70モル%以上、又は90モル%以上であってよい。第1金属原子におけるY、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ca及びInの総含有量は、例えば100モル%以下、又は100モル%未満であってよい。
【0021】
更に第1金属原子はYを含み、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ca、In及びSbからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含んでいてよい。第1金属原子がYを含む場合、第1金属原子におけるYの含有量は、例えば50モル%以上、70モル%以上、又は90モル%以上であってよい。第1金属原子におけるYの含有量は、例えば100モル%以下、又は100モル%未満であってよい。
【0022】
金属複合酸化物における第2金属原子は、Mg、Sr、Ba及びNaからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、少なくともBaを含んでいてよい。
【0023】
また、金属複合酸化物における第2金属原子は、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種を含み、Mg及びNaからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含んでいてよい。第2金属原子がSr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種を含む場合、第2金属原子におけるSr及びBaの総含有量は、例えば50モル%以上、70モル%以上、又は90モル%以上であってよい。第2金属原子におけるSr及びBaの総含有量は、例えば100モル%以下、又は100モル%未満であってよい。
【0024】
更に第2金属原子はBaを含み、Mg、Sr及びNaからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含んでいてよい。第2金属原子がBaを含む場合、第2金属原子におけるBaの含有量は、例えば50モル%以上、70モル%以上、又は90モル%以上であってよい。第2金属原子におけるBaの含有量は、例えば100モル%以下、又は100モル%未満であってよい。
【0025】
金属複合酸化物における第3金属原子は、Be、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt及びAuからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、Al、Si、Fe、Co及びZnからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、少なくともCoを含んでいてよい。
【0026】
また、金属複合酸化物における第3金属原子は、Al、Si、Fe、Co及びZnからなる群から選択される少なくとも1種を含み、Be、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt及びAuからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含んでいてよい。第3金属原子がAl、Si、Fe、Co及びZnからなる群から選択される少なくとも1種を含む場合、第3金属原子におけるAl、Si、Fe、Co及びZnの総含有量は、例えば50モル%以上、70モル%以上、又は90モル%以上であってよい。第3金属原子におけるAl、Si、Fe、Co及びZnの総含有量は、例えば100モル%以下、又は100モル%未満であってよい。
【0027】
更に第3金属原子はCoを含み、Be、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt及びAuからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含んでいてよい。第3金属原子がCoを含む場合、第3金属原子におけるCoの含有量は、例えば50モル%以上、70モル%以上、又は90モル%以上であってよい。第3金属原子におけるCoの含有量は、例えば100モル%以下、又は100モル%未満であってよい。
【0028】
金属複合酸化物における特定非金属原子は、少なくともOを含み、F、N、S及びClからなる群から選択される少なくとも1種を更に含んでいてよい。特定非金属原子は、Oのみを含んでいてよい。特定非金属原子がOを含む場合、特定非金属原子におけるOの含有量は、例えば50モル%以上、70モル%以上、又は90モル%以上であってよい。特定非金属原子におけるOの含有量は、例えば100モル%以下、又は100モル%未満であってよい。
【0029】
金属複合酸化物は、例えば下記式(1)で表される組成を有していてよい。
【0030】
M1M2
pM3
qXr (1)
【0031】
式(1)中、p、q及びrは、例えば0.8≦p≦1.2、3.8≦q≦4.2、6.9≦r≦8.5を満たしてよく、0.9≦p≦1.1、3.9≦q≦4.1、7.0≦r≦8.0を満たしてよい。
【0032】
M1は、例えばY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ca、In、Na及びSbからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてよい。M1は、Sc、Y、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ca及びInからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、少なくともYを含んでいてよい。
【0033】
M1はY、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ca及びInからなる群から選択される少なくとも1種を含み、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Yb、Lu及びSbからなる群より選択される少なくとも1種を更に含んでいてもよい。M1がY、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ca及びInからなる群から選択される少なくとも1種を含む場合、M1におけるY、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ca及びInの総含有量は、例えば50モル%以上、70モル%以上、又は90モル%以上であってよい。M1におけるY、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ca及びInの総含有量は、例えば100モル%以下、又は100モル%未満であってよい。
【0034】
M1はYを含み、Sc、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ca、In及びSbからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでいてよい。M1がYを含む場合、M1におけるYの含有量は、例えば50モル%以上、70モル%以上、又は90モル%以上であってよい。M1におけるYの含有量は、例えば100モル%以下、又は100モル%未満であってよい。
【0035】
M2は、例えばMg、Sr、Ba及びNaからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてよい。M2は、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、少なくともBaを含んでいてよい。
【0036】
M2は、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種を含み、Mg及びNaからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでいてよい。M2がSr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種を含む場合、M2におけるSr及びBaの総含有量は、例えば50モル%以上、70モル%以上、又は90モル%以上であってよい。M2におけるSr及びBaの総含有量は、例えば100モル%以下、又は100モル%未満であってよい。
【0037】
M2はBaを含み、Mg、Sr及びNaからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでいてよく、Srをさらに含んでいてよい。M2がBaを含む場合、M2におけるBaの含有量は、例えば50モル%以上、70モル%以上、又は90モル%以上であってよい。M2におけるBaの含有量は、例えば100モル%以下、又は100モル%未満であってよい。
【0038】
M3は、例えばBe、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt及びAuからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてよい。M3は、Al、Si、Fe、Co、Cu及びZnからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、少なくともCoを含んでいてよい。
【0039】
M3は、Al、Si、Fe、Co、Cu及びZnからなる群から選択される少なくとも1種を含み、Be、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt及びAuからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでいてよい。M3がAl、Si、Fe、Co、Cu及びZnからなる群から選択される少なくとも1種を含む場合、M3におけるAl、Si、Fe、Co、Cu及びZnの総含有量は、例えば50モル%以上、70モル%以上、又は90モル%以上であってよい。M3におけるAl、Si、Fe、Co、Cu及びZnの総含有量は、例えば100モル%以下、又は100モル%未満であってよい。
【0040】
M3はCoを含み、Be、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt及びAuからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでいてよく、Al、Si、Fe、Cu及びZnからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含んでいてよい。M3がCoを含む場合、M3におけるCoの含有量は、例えば50モル%以上、70モル%以上、又は90モル%以上であってよい。M3におけるCoの含有量は、例えば100モル%以下、又は100モル%未満であってよい。
【0041】
XはOを含み、N、F、S及びClからなる群から選択される少なくとも1種類の特定非金属原子を更に含んでよい。XにおけるOの含有量は、例えば50モル%以上、70モル%以上、又は90モル%以上であってよく、100モル%であってよい。
【0042】
金属複合酸化物の酸素の不定比を含む組成は、金属元素の組成比およびそれに含まれる遷移金属元素の価数を決定することで同定することができる。金属元素の組成比を決定する方法としては例えば誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP―AES)が挙げられる。遷移金属元素の価数を決定する方法としては、例えばヨウ素を用いた酸化還元滴定法が挙げられる。上記の手法を組み合わせる事で、金属複合酸化物の酸素不定比を含む組成比を同定することができる。金属複合酸化物の組成に含まれるN、F、S及びClのモル数についても同様にして算出される。
【0043】
ヨウ素を用いた酸化還元滴定は、以下のようにして行うことができる。金属複合酸化物を酸性水溶液に溶解させ、ヨウ化カリウム溶液と混合することにより、金属複合酸化物中の2価よりも高い酸化数を有するニッケルイオン、コバルトイオン、マンガンイオン等の遷移金属イオンは、Ni2+、Co2+、Mn2+等に還元される。このとき還元量と等量のI-が酸化されてI2が生成する。ここで生成するI2量は、デンプン溶液を指示薬としチオ硫酸ナトリウム標準溶液(Na2S2O3)で滴定することで同定される。
【0044】
例えば、ICP発光分光分析法により、第1金属原子であるY、第2金属原子であるBa及び第3金属原子であるCoが、モル数の比でそれぞれ、1:1:4で検出されたとする。この場合、イットリウムイオン、バリウムイオン及びコバルトイオンの検出量はモル基準でそれぞれ1、1、4となる。また、酸化還元滴定によりコバルトイオンの平均価数が2.25であったとする。イットリウムイオンの価数を3、バリウムイオンの価数を2、及びコバルトイオンの価数を2.25として、金属複合酸化物の組成に含まれる酸素原子のモル数は、(3×1+2×1+2.25×4)/2=7であると算出される。
【0045】
金属複合酸化物が、スウェーデンボルガイト型結晶構造を有することはX線回折(XRD)スペクトルを測定することで確認することができる。具体的には、無機結晶構造データベース(ICSD)において、金属複合酸化物に対応する組成を有し、スウェーデンボルガイト型結晶構造であることが示されている無機結晶のXRDスペクトルと、金属複合酸化物のXRDスペクトルとが相似関係にある場合に、金属複合酸化物がスウェーデンボルガイト型結晶構造を有していると同定することができる。
【0046】
例えば、金属複合酸化物がYBaCo4O7という理論組成を有する場合、ICSDにおけるYBaCo4O7のXRDデータのうち、比較的強度の高い複数(例えば、4つ)のピークについて、金属複合酸化物のXRDデータが対応するピークを有する場合に、金属複合酸化物がスウェーデンボルガイト型結晶構造を有していると同定することができる。具体的には例えば、YBaCo4O7のXRDデータの2θが、28.42°±1°、31.06°±1°、33.50°±1°及び52.08°±1°の位置にあればスウェーデンボルガイト型結晶構造を有していると同定することができる。
【0047】
例えば、金属複合酸化物がYBaCo4O8という理論組成を有する場合、ICSDにおけるYBaCo4O8のXRDデータのうち、比較的強度の高い複数(例えば、4つ)のピークについて、金属複合酸化物のXRDデータが対応するピークを有する場合に、金属複合酸化物がスウェーデンボルガイト型結晶構造を有していると同定することができる。具体的には例えば、YBaCo4O8のXRDデータの2θが、28.32°±1°、31.04°±1°、33.50°±1°及び56.40°±1°の位置にあればスウェーデンボルガイト型結晶構造を有していると同定することができる。
【0048】
また、金属複合酸化物がCaBaFe4O8という理論組成を有する場合、ICSDにおけるCaBaFe4O8のXRDデータのうち、比較的強度の高い複数(例えば、4つ)のピークについて、金属複合酸化物のXRDデータが対応するピークを有する場合に、金属複合酸化物がスウェーデンボルガイト型結晶構造を有していると同定することができる。具体的には例えば、CaBaFe4O8のXRDデータの2θが、30.06°±1°、33.12°±1°、35.16°±1°及び58.92°±1°の位置にあればスウェーデンボルガイト型結晶構造を有していると同定することができる。
【0049】
金属複合酸化物の形状は、例えば粒子状、バルク状等から適宜選択することができる。金属複合酸化物の体積平均粒径は、例えば1nm以上100μm以下であってよい。金属複合酸化物の体積平均粒径は、20nm以上、又は10μm以下であってよい。金属複合酸化物の体積平均粒径は、体積基準の累積粒度分布において、小径側からの体積累積50%に対応する粒径として求められる。なお、体積基準の累積粒度分布は、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定される。
【0050】
電極活物質を構成する金属複合酸化物は1種のみであってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。また電極活物質は、対極を構成する活物質に応じて、正極活物質であってもよく、負極活物質であってもよい。すなわち、フッ化物イオン電池を構成する際に、金属複合酸化物よりも低い電位を有する活物質で対極を構成することで、金属複合酸化物を正極活物質として用いることができる。一方、金属複合酸化物よりも高い電位を有する活物質で対極を構成することで、金属複合酸化物を負極活物質として用いることができる。
【0051】
電極活物質を正極活物質として用いる場合、負極活物質には、正極活物質よりも低い電位を有する任意の活物質が選択され得る。負極活物質としては、例えば、金属単体、合金、金属酸化物及びこれらのフッ化物を挙げることができる。負極活物質に含まれる金属原子としては、例えば、La、Ca、Al、Eu、Li、Si、Ge、Sn、In、V、Cd、Cr、Fe、Zn、Ga、Ti、Nb、Mn、Yb、Zr、Sm、Ce、Mg、Pb等を挙げることができる。中でも、負極活物質は、Mg、MgFx、Al、AlFx、Sn、SnFx、Ce、CeFx、Ca、CaFx、Pb、PbFx、La及びLaFxからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。なお、上記xは、0よりも大きい実数である。また、負極活物質として、炭素材料及びそのフッ化物を挙げることもできる。炭素材料としては、例えば、黒鉛、コークス、カーボンナノチューブ等を挙げることができる。また、負極活物質のさらに他の例として、ポリマー材料を挙げることもできる。ポリマー材料としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチオフェン等を挙げることができる。
【0052】
電極活物質を負極活物質として用いる場合、正極活物質には、負極活物質よりも高い電位を有する任意の活物質が選択され得る。正極活物質としては、例えば、金属単体、合金、金属酸化物及びこれらのフッ化物を挙げることができる。正極活物質に含まれる金属原子としては、例えば、Cu、Ag、Ni、Co、Pb、Ce、Mn、Au、Pt、Rh、V、Os、Ru、Fe、Cr、Bi、Nb、Sb、Ti、Sn、Zn等を挙げることができる。中でも、正極活物質は、Cu、CuFy、Fe、FeFy、Bi及びBiFyからなる群から選択少なくとも1種を含むことが好ましい。ここでyは、0よりも大きい実数である。また、正極活物質として上述した炭素材料及びポリマー材料を用いることもできる。
【0053】
電極活物質に含まれる金属複合酸化物の含有率は、電極活物質に対して、例えば50質量%以上、70質量%以上、又は90質量%以上であってよい。金属複合酸化物の含有率は、例えば100質量%以下であってよい。
【0054】
金属複合酸化物の製造方法には、セラミックス材料の製造方法を用いることができる。例えば、錯体重合法、水熱合成法、共沈法等の液相法、焼結法、メカノケミカル法等の固相法などを用いることができる。このうち、液相法によれば、化学的に均一性の高い金属複合酸化物を得ることができる。
【0055】
金属複合酸化物は、例えば錯体重合法により合成することもできる。この方法によれば、固相法に比べて得られる金属複合酸化物の化学的な均一性を高くすることができる。この方法では、まず、金属複合酸化物を構成する金属を含む金属源を、目的とする金属複合酸化物に含まれる金属の化学量論比と同様になるようにそれぞれ秤量して金属源混合物を得る。次いで金属源混合物と純水とクエン酸とを混合し、更に必要に応じてエチレングリコールを混合して原料溶液を得る。原料溶液を加熱濃縮して粉体状の前駆体を得る。必要に応じて前駆体を粉砕した後、前駆体を熱処理することで所望の金属複合酸化物を得ることができる。錯体重合法の詳細については、例えば国際公開第2019/065285号を参照することができる。
【0056】
金属複合酸化物の製造に用いられる金属源には、例えば所望の金属を含む硝酸塩、酢酸塩、酸化物等から適宜選択して用いることができる。
【0057】
フッ化物イオン電池用電極組成物
フッ化物イオン電池用電極組成物(以下、単に「電極組成物」ともいう)は、特定の第1金属原子、第2金属原子、第3金属原子及び特定非金属原子を含み、層状構造を有する金属複合酸化物を含む。金属複合酸化物は、電極活物質として電極組成物を構成してよい。金属複合酸化物の詳細については既述の通りである。電極組成物における金属複合酸化物の含有量は、電極組成物に対して、例えば30質量%以上99質量%以下であってよく、50質量%以上、又は80質量%以下であってよい。電極組成物は、金属複合酸化物を1種単独で含んでいてもよく、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0058】
電極組成物は、金属複合酸化物に加えて、導電助材、結着材、固体電解質、分散剤等からなる群から選択される少なくとも1種の他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0059】
導電助材としては、所望の電子伝導性を有するものであればよく、例えば炭素材料を挙げることができる。炭素材料としては、例えば、繊維状カーボン、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、グラフェン、フラーレン、カーボンナノチューブ等を挙げることができる。結着材としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等を挙げることができる。
【0060】
固体電解質としては、La、Ce等のランタノイドのフッ化物、Li、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属のフッ化物、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類金属のフッ化物等を挙げることができる。具体的には、La及びBaのフッ化物(例えば、La0.9Ba0.1F2.9)、Pb及びSnのフッ化物(例えば、PbSnF4)等を挙げることができる。
【0061】
電極組成物が、金属複合酸化物に加えて他の成分を含む場合、電極組成物における他の成分の含有量は、電極組成物に対して、例えば1質量%以上80質量%以下であってよく、20質量%以上、又は50質量%以下であってよい。
【0062】
電極組成物は電極を構成する電極活物質層を形成することに用いることができる。電極組成物は、その対極を構成する活物質に応じて、正極活物質層を構成する正極組成物であってもよく、負極活物質層を構成する負極組成物であってもよい。
【0063】
フッ化物イオン電池用電極
フッ化物イオン電池用電極(以下、単に「電極」ともいう)は、フッ化物イオン電池用電極組成物を含む。電極は、集電体と集電体上に配置される電極活物質層とを備えていてよい。集電体の材質としては、例えば金、白金、SUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタン、カーボン等を挙げることができる。集電体の材質は、電極の電位に応じて適宜選択することができる。また、集電体の形状としては、例えば、箔状、メッシュ状、多孔質状等を挙げることができる。
【0064】
集電体上に配置される電極活物質層は、既述の電極組成物を含んで構成されてよい。電極活物質層における金属複合酸化物の含有量は、電極活物質層に対して、例えば20質量%以上、50質量%以上、70質量%以上、又は90質量%以上であってよい。電極活物質層における金属複合酸化物の含有量は、例えば99質量%以下であってよい。
【0065】
電極活物質層は、金属複合酸化物に加えて、導電助材、結着材、固体電解質、分散剤等からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。電極活物質層における導電助材の含有量は、電極活物質層に対して、例えば1質量%以上20質量%以下であってよく、5質量%以上、又は10質量%以下であってよい。電極活物質層における結着材の含有量は、電極活物質層に対して、例えば1質量%以上30質量%以下であってよい。
【0066】
フッ化物電池用電極は、対極の活物質層を構成する活物質に応じて、正極活物質層を有するフッ化物電池用正極であってもよく、負極活物質層を有するフッ化物電池用負極であってもよい。
【0067】
電極は、粉体状の電極組成物を加圧して電極活物質層を形成し、電極活物質層と集電体とを接続して構成してよい。また、溶剤を含む電極組成物を集電体上に付与し、必要に応じて乾燥、及び加圧成形することで集電体上に電極活物質層を形成して、電極を構成してもよい。溶剤は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の有機溶剤や、水溶液等の水系溶剤を含んでいてよい。
【0068】
フッ化物イオン電池
フッ化物イオン電池は、フッ化物イオン電池用電極と電解質と対極とを備える。フッ化物イオン電池用電極は、対極を負極とする正極として構成されてもよく、対極を正極とする負極として構成されてもよい。フッ化物イオン電池は、正極及び負極の間に、セパレータを備えていてもよい。フッ化物イオン電池は、一次電池であってもよく、二次電池であってもよく、好ましくは二次電池であってよい。なお、一次電池には、二次電池の一次電池的使用(充電後、一度の放電だけを目的とした使用)も含まれる。フッ化物イオン電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型、角型等を挙げることができる。
【0069】
フッ化物イオン電池が備えるフッ化物イオン電池用電極については、既述の通りである。電解質は、フッ化物イオン電池用電極及びそれに対する対極の間に配置される。電解質は、液体電解質(電解液)であっても、固体電解質であってもよい。
【0070】
電解液は、例えば、フッ化物塩及び有機溶剤を含有する非水電解液であってよい。フッ化物塩としては、無機フッ化物塩、有機フッ化物塩、イオン液体等を挙げることができる。無機フッ化物塩としては、XFを挙げることができる。ここでXは、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ金属を含んでいてよい。有機フッ化物塩のカチオンとしては、テトラメチルアンモニウムカチオン等のアルキルアンモニウムカチオンを挙げることができる。電解液におけるフッ化物塩の濃度は、例えば0.1モル%以上40モル%以下であってよく、1モル%以上、又は10モル%以下であってよい。
【0071】
電解液を構成する有機溶剤はフッ化物塩を溶解する溶剤であればよい。有機溶剤としては、例えば、トリエチレングリコールジメチルエーテル(G3)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(G4)等のグライム、エチレンカーボネート(EC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)等の環状カーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の鎖状カーボネート挙げることができる。また、有機溶剤として、イオン液体を用いてもよい。
【0072】
固体電解質としては、La、Ce等のランタノイドのフッ化物、Li、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属のフッ化物、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類金属のフッ化物等を挙げることができる。具体的には、La及びBaのフッ化物(例えば、La0.9Ba0.1F2.9)、Pb及びSnのフッ化物(例えば、PbSnF4)等を挙げることができる。
【0073】
対極は、集電体と集電体上に配置される電極活物質層とを備えていてよい。集電体の材質は対極の電位に応じて適宜選択されてよい。例えば対極を負極として用いる場合、集電体の材質としては、例えば金、白金、SUS、銅、ニッケル、カーボン等を挙げることができる。また、集電体の形状としては、例えば、箔状、メッシュ状、多孔質状等を挙げることができる。
【0074】
フッ化物イオン電池用電極を正極としてフッ化物イオン電池を構成する場合、負極となる対極の負極活物質層を構成する負極活物質は、正極活物質である金属複合酸化物よりも低い電位を有する活物質であればよい。負極活物質の具体例は既述の通りである。負極活物質層における負極活物質の含有量は、負極活物質層に対して、例えば30質量%以上であってよく、50質量%以上、70質量%以上、又は90質量%以上であってよい。負極活物質層における負極活物質の含有量の上限は、例えば99質量%以下であってよい。
【0075】
フッ化物イオン電池用電極を負極としてフッ化物イオン電池を構成する場合、正極となる対極の正極活物質層を構成する正極活物質は、負極活物質である金属複合酸化物よりも高い電位を有する活物質であればよい。正極活物質の具体例は既述の通りである。正極活物質層における正極活物質の含有量は、正極活物質層に対して、例えば30質量%以上であってよく、50質量%以上、70質量%以上、又は90質量%以上であってよい。正極活物質層における正極活物質の含有量は、例えば99質量%以下であってよい。
【0076】
対極の電極活物質層は、電極活物質に加えて、導電助材、結着材、固体電解質、分散剤等からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。対極の電極活物質層における導電助材の含有量は、電極活物質層に対して、例えば1質量%以上20質量%以下であってよく、5質量%以上、又は10質量%以下であってよい。電極活物質層における結着材の含有量は、電極活物質層に対して、例えば1質量%以上30質量%以下であってよい。
【0077】
本開示に係る発明は、例えば以下の態様を包含してよい。
[1] 下記第1金属原子群から選択される少なくとも1種を含む第1金属原子と、下記第2金属原子群から選択される少なくとも1種を含む第2金属原子と、下記第3金属原子群から選択される少なくとも1種を含む第3金属原子と、下記特定非金属原子群から選択され、少なくとも酸素原子を含む少なくとも1種を含む特定非金属原子と、を含み、
前記第1金属原子の総モル数に対する前記第2金属原子の総モル数の比が、0.8以上1.2以下であり、前記第1金属原子の総モル数に対する前記第3金属原子の総モル数の比が、3.8以上4.2以下であり、前記第1金属原子の総モル数に対する前記特定非金属原子の総モル数の比が6.9以上8.5以下である組成を有する金属複合酸化物を含むフッ化物イオン電池用電極活物質。
【0078】
第1金属原子群:Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ca、In、Sb;
第2金属原子群:Mg、Sr、Ba、Na;
第3金属原子群:Be、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au;
特定非金属原子群:O、F、N、S、Cl。
【0079】
[2] 前記金属複合酸化物は、前記第1金属原子として、Sc、Y、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Ca及びInからなる群から選択される少なくとも1種を含む[1]に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【0080】
[3] 前記金属複合酸化物は、前記第2金属原子として、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種を含む[1]又は[2]に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【0081】
[4] 前記金属複合酸化物は、前記第3金属原子として、Al、Si、Fe、Co、Cu及びZnからなる群から選択される少なくとも1種を含む[1]から[3]のいずれかに記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【0082】
[5] 下記式(1)で表される組成を有する金属複合酸化物を含むフッ化物イオン電池用電極活物質。
M1M2
pM3
qXr (1)
(式(1)中、p、q及びrは、0.8≦p≦1.2、3.8≦q≦4.2、6.9≦r≦8.5を満たし、M1はY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ca、In及びSbからなる群より選択される少なくとも1種を含み、M2は、Mg、Sr、Ba及びNaからなる群より選択される少なくとも1種を含み、M3は、Be、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt及びAuからなる群より選択される少なくとも1種を含み、Xは、Oを含み、N、F、S及びClからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでもよい。)
【0083】
[6] 前記金属複合酸化物は、前記M1としてY、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ca及びInからなる群より選択される少なくとも1種を含む[5]に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【0084】
[7] 前記金属複合酸化物は、前記M2としてSr及びBaからなる群より選択される少なくとも1種を含む[5]又は[6]に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【0085】
[8] 前記金属複合酸化物は、前記M3としてAl、Si、Fe、Co、Cu及びZnからなる群より選択される少なくとも1種を含む[5]から[7]のいずれかに記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【0086】
[9] [1]から[8]のいずれかに記載のフッ化物イオン電池用電極活物質を含むフッ化物イオン電池用電極。
【0087】
[10] [9]に記載のフッ化物イオン電池用電極と、電解質とを備えるフッ化物イオン電池。
【実施例0088】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0089】
実施例1
金属複合酸化物の合成
硝酸イットリウム(Y(NO3)3・9H2O;株式会社高純度化学研究所製)、硝酸バリウム(Ba(NO3)2;富士フイルム和光純薬株式会社製)および硝酸コバルト(Co(NO3)2・6H2O;株式会社高純度化学研究所製)を金属のモル比で1:1:4となるように秤量した。そこに純水、総カチオン量の5倍モル量のクエン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)及び総カチオン量と等モル量のエチレングリコール(富士フイルム和光純薬株式会社製)を加えて均一になるよう撹拌し、原料溶液を得た。原料溶液を150℃に設定した恒温槽に静置し、加熱濃縮することで粉状の前駆体を得た。得られた前駆体を粉砕し、ボックス炉を用いて大気中1000℃で12時間熱処理して実施例1に係る金属複合酸化物を得た。
【0090】
実施例2
実施例1で得られた金属複合酸化物を、アルゴン(Ar)雰囲気中500℃で15時間熱処理し、実施例2に係る金属複合酸化物を得た。
【0091】
実施例3
実施例1で得られた金属複合酸化物を、大気中330℃で6時間熱処理し、実施例3に係る金属複合酸化物を得た。
【0092】
金属価数分析
実施例1から3で得られた金属複合酸化物に対してヨウ素を用いた酸化還元滴定を行った。それぞれの金属複合酸化物に含まれるCoの平均価数を表1に示す。
【0093】
【0094】
組成分析
上記で得られた金属複合酸化物についてICPより、それぞれの金属複合酸化物の組成を求めた。具体的には、前処理としてアルカリ溶融した後、塩酸加熱溶解をし、ICP(Optima8300:Perkin Elmer社製)を用いて、金属イオンの組成量を測定した。酸素の不定比を含む金属複合酸化物の組成はYのモル数を1として決定した。得られた金属複合酸化物の組成を表2に示す。
【0095】
【0096】
実施例4
硝酸カルシウム(Ca(NO3)2・4H2O;富士フイルム和光純薬株式会社製)、硝酸バリウム(Ba(NO3)2;富士フイルム和光純薬株式会社製)および硝酸鉄(Fe(NO3)2・9H2O;富士フイルム和光純薬株式会社製)を金属のモル比で1:1:4となるように秤量した。そこに純水、総カチオン量の5倍モル量のクエン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)及び総カチオン量と等モル量のエチレングリコール(富士フイルム和光純薬株式会社製)を加えて均一になるよう撹拌し、原料溶液を得た。原料溶液を150℃に設定した恒温槽に静置し、加熱濃縮することで粉状の前駆体を得た。得られた前駆体を粉砕し、ボックス炉を用いて大気中1000℃で12時間熱処理して実施例4に係る金属複合酸化物を得た。
【0097】
X線回折(XRD)測定
実施例1から4で得られた金属複合酸化物をXRDガラスフォルダに詰めて、X線回折測定装置(Rigaku社製Miniflex600)を用いて粉末XRD測定を行った。具体的には、CuKα線(λ=0.154nm)を用いて、2θ=20°から80°までスキャンスピード10°/min、ステップ幅:0.02°で測定を行った。結果を
図2から
図5に示す。
【0098】
図2は、実施例1に係る金属複合酸化物のXRDスペクトルである。下段には標品としてYBaCo
4O
7で表される組成を有するスウェーデンボルガイト型酸化物のXRDスペクトルを示す。
図3は、実施例2に係る金属複合酸化物のXRDスペクトルである。下段には標品としてYBaCo
4O
7で表される組成を有するスウェーデンボルガイト型酸化物のXRDスペクトルを示す。
図4は、実施例3の金属複合酸化物のXRDスペクトルである。下段には標品としてYBaCo
4O
8で表される組成を有するスウェーデンボルガイト型酸化物のXRDスペクトルを示す。
図5は、実施例4に係る金属複合酸化物のXRDスペクトルである。下段には標品としてCaBaFe
4O
8で表される組成を有するスウェーデンボルガイト型酸化物のXRDスペクトルを示す。
【0099】
実施例1の金属複合酸化物のXRDスペクトルにおいて、比較的強度の高い4つのピークとして、2θ=28.44°、30.88°、33.46°、51.96°の位置にピークが確認された。実施例2の金属複合酸化物のXRDスペクトルにおいて、比較的強度の高い4つのピークとして、2θ=28.30°、30.88°、33.34°、51.78°の位置にピークが確認された。実施例3の金属複合酸化物のXRDスペクトルにおいて、比較的強度の高い4つのピークとして、2θ=28.42°±1°、31.12°±1°、33.54°±1°及び56.42°±1°の位置にピークが確認された。実施例4の金属複合酸化物のXRDスペクトルにおいて、比較的強度の高い4つのピークとして、2θ=30.06°±1°、33.12°±1°、35.16°±1°及び58.88°±1°の位置にピークが確認された。
【0100】
実施例1の金属複合酸化物のXRDスペクトルにおいて、ICSDのXRDデータにおける2θ=28.42°±1°、31.06°±1°、33.50°±1°及び52.08°±1°の4個のピークに対応するピークが観察されたことから、実施例1で得られた金属複合酸化物は、スウェーデンボルガイト型結晶構造を有することがわかった。
【0101】
実施例2の金属複合酸化物のXRDスペクトルにおいて、ICSDのXRDデータにおける2θ=28.42°±1°、31.06°±1°、33.50°±1°及び52.08°±1°の4個のピークに対応するピークが観察されたことから、実施例2で得られた金属複合酸化物は、スウェーデンボルガイト型結晶構造を有することがわかった。
【0102】
実施例3の金属複合酸化物のXRDスペクトルにおいて、ICSDのXRDデータにおける2θ=28.32°±1°、31.04°±1°、33.50°±1°及び56.40°±1°の4個のピークに対応するピークが観察されたことから、実施例3で得られた金属複合酸化物は、スウェーデンボルガイト型結晶構造を有することがわかった。
【0103】
実施例4の金属複合酸化物のXRDスペクトルにおいて、ICSDのXRDデータにおける2θ=30.06°±1°、33.12°±1°、35.16°±1°及び58.92°±1°の4個のピークに対応するピークが観察されたことから、実施例4で得られた金属複合酸化物についても、スウェーデンボルガイト型結晶構造を有することがわかった。
【0104】
評価
上記で得られた金属複合酸化物を用いて、以下のようにして評価用電池を作製し、充放電試験を行った。
【0105】
固体電解質の準備
固体電解質としては、La0.9Ba0.1F2.9で表される組成を有するフッ化物を準備した。
【0106】
正極組成物の調製
電極活物質として上記で得られた金属複合酸化物を150mg、上記で得られた固体電解質を300mg及び導電助剤としてVGCF(R)-H(昭和電工社製)を50mg準備し、15分間乳鉢で混合した。そこに、混合用のメディアとしてジルコニア(ZrO2)ボール(Φ3mm)を15g加え、ホモジナイザーで混合して、正極組成物を得た。なお、上記工程は全てアルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。電極活物質として実施例1で得られた金属複合酸化物を用いた正極組成物、電極活物質として実施例2で得られた金属複合酸化物を用いた正極組成物、電極活物質として実施例3で得られた金属複合酸化物を用いた正極組成物及び電極活物質として実施例4で得られた金属複合酸化物を用いた正極組成物の4種類を調製した。
【0107】
負極組成物の調製
負極活物質としてフッ化スズ(SnF2;シグマアルドリッチ社製)を150mg、上記で得られた固体電解質を300mg及び導電助剤としてVGCF(R)-Hを50mg準備し、15分間乳鉢で混合した。そこに、混合用のメディアとしてジルコニアボール(Φ3mm)を15g加え、ホモジナイザーで混合して、負極組成物を得た。なお、上記工程は全てアルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。
【0108】
評価用電池の作製
上記で得られた正極組成物10mg、固体電解質175mgおよび負極組成物50mgをこの順で積層し、圧粉成型した。両端に集電体としてAu箔を取り付け、評価用電池を作製した。なお、上記工程は全てアルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。
【0109】
充放電試験
上記で得られた評価用電池に対し、140℃の環境下にて電流密度6.7mA/gで定電流充放電試験を10サイクル行った。実施例1で得られた金属複合酸化物を含む正極組成物を用いた評価用電池について、充放電終止電位は2.2Vおよび-1.5V(vs.Sn/SnF2)であった。
【0110】
図6に実施例1で得られた金属複合酸化物を含む評価用電池について、10サイクル目の充放電曲線を示す。10サイクルにわたって可逆的な充放電挙動が確認できたことから、スウェーデンボルガイト型酸化物がフッ化物イオン電池用の電極活物質として使用可能であると考えられる。
【0111】
図7に実施例2で得られた金属複合酸化物を含む評価用電池について、4サイクル目の充放電曲線を示す。充放電終止電位は2.06Vおよび-1.5V(vs.Sn/SnF
2)であった。実施例2で得られた金属複合酸化物についても同様に可逆的な充放電挙動が確認できた。
【0112】
図8に実施例3で得られた金属複合酸化物を含む評価用電池について、8サイクル目の充放電曲線を示す。充放電終止電位は2.14Vおよび-1.5V(vs.Sn/SnF
2)であった。実施例3で得られた金属複合酸化物についても同様に可逆的な充放電挙動が確認できた。
【0113】
図9に実施例4で得られた金属複合酸化物を含む評価用電池について、3サイクル目の充放電曲線を示す。充放電終止電位は2.06Vおよび-1.5V(vs.Sn/SnF
2)であった。実施例4で得られた金属複合酸化物についても同様に可逆的な充放電挙動が確認できた。