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特開2024-91465円盤型目盛板の検査方法、検査装置および検査プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091465
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】円盤型目盛板の検査方法、検査装置および検査プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20240627BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240627BHJP
   G06T 7/60 20170101ALI20240627BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
G06T7/00 610
G06T7/60 150Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023200247
(22)【出願日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2022206090
(32)【優先日】2022-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 花純
(72)【発明者】
【氏名】川田 宏昭
(72)【発明者】
【氏名】山縣 正意
(72)【発明者】
【氏名】宮倉 常太
【テーマコード(参考)】
2G051
5L096
【Fターム(参考)】
2G051AA07
2G051AB01
2G051AB02
2G051BB01
2G051CA04
2G051CB01
2G051EB01
5L096BA03
5L096CA04
5L096DA02
5L096DA03
5L096EA28
5L096EA33
5L096FA03
5L096FA32
5L096FA52
5L096FA60
5L096FA62
5L096FA66
5L096FA67
5L096GA51
5L096JA11
(57)【要約】
【課題】円盤型目盛板を正確にかつ効率よく検査する検査方法を提供する。
【解決手段】円盤型目盛板の画像データを円盤型目盛板画像データとして取得する画像データ取得工程と、円盤型目盛板の中心を基準として円盤型目盛板画像データを極座標変換した極座標目盛画像データを生成する極座標変換工程と、を備える。欠陥検出工程は、極座標の角度表示軸上に処理領域を設定する処理領域設定工程と、処理領域ごとに重心を算出する重心算出工程と、重心算出工程で求められた重心のピッチを算出する重心ピッチ算出工程と、を備える。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤型目盛板の欠陥を検査する方法であって、
前記円盤型目盛板の画像データを円盤型目盛板画像データとして取得する画像データ取得工程と、
前記円盤型目盛板の中心を基準として前記円盤型目盛板画像データを極座標変換した極座標目盛画像データを生成する極座標変換工程と、
前記極座標目盛画像データに基づいて当該円盤型目盛板の欠陥検出を行う欠陥検出工程と、を備える
ことを特徴とする円盤型目盛板の検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の円盤型目盛板の検査方法において、
前記極座標変換工程は、角度パラメータを直線の角度表示軸に表すようにして前記極座標目盛画像データ中の目盛り線が平行に整列するようにし、
前記円盤型目盛板において前記目盛り線が設けられている範囲の中心角の大きさをA°とし、
前記円盤型目盛板の目盛り線の本数をNとし、
kをN/3以下の正の整数とするとき、
前記欠陥検出工程は、
前記角度表示軸上で(A°/N)×kに相当する幅をもつ処理領域を設定する処理領域設定工程と、
前記処理領域ごとに重心を算出する重心算出工程と、
前記重心算出工程で求められた重心のピッチを算出する重心ピッチ算出工程と、を備える
ことを特徴とする円盤型目盛板の検査方法。
【請求項3】
請求項2に記載の円盤型目盛板の検査方法において、
第一段階の検査では、kを1よりも大きな数とし、
第二段階の詳細検査として、kを1に設定する
ことを特徴とする円盤型目盛板の検査方法。
【請求項4】
請求項2に記載の円盤型目盛板の検査方法において、
前記重心算出工程の前に、
前記処理領域のエッジと目盛り線とが所定閾値以内に接近しているあるいは重なっているかを判定するエッジ判定工程と、
前記エッジ判定工程においてエッジと目盛線とが所定閾値以内に接近しているあるいは重なっている場合に、一目盛分の半分、すなわち、(A°/2N)に相当する分だけ前記処理領域を前記角度表示軸に沿ってずらす処理領域調整工程と、を行う
ことを特徴とする円盤型目盛板の検査方法。
【請求項5】
求項1に記載の円盤型目盛板の検査方法において、
前記画像データ取得工程は、
指針位置の異なる円盤型目盛板の画像データを複数枚取得し、
前記複数枚の画像データから指を実質的に除外した円盤型目盛板画像データを取得する
ことを特徴とする円盤型目盛板の検査方法。
【請求項6】
請求項5に記載の円盤型目盛板の検査方法において、
前記画像データ取得工程は、前記複数枚の画像データを平均化することによって前記円盤型目盛板画像データを取得する
ことを特徴とする円盤型目盛板の検査方法。
【請求項7】
請求項5に記載の円盤型目盛板の検査方法において、
前記画像データ取得工程は、前記複数枚の画像データの対応する画素ごとに輝度値の中央値あるいは中央値近傍の数点の平均値をその画素の輝度値とすることによって前記円盤型目盛板画像データを取得する
ことを特徴とする円盤型目盛板の検査方法。
【請求項8】
盤型目盛板の画像データを円盤型目盛板画像データとして取得する画像データ取得部と、
前記円盤型目盛板の中心を基準として前記円盤型目盛板画像データを極座標変換した極座標目盛画像データを生成する極座標変換部と、
前記極座標目盛画像データ中の目盛り線のピッチに基づいて当該円盤型目盛板の欠陥検出を行う欠陥検出部と、を備える
ことを特徴とする円盤型目盛板の検査装置。
【請求項9】
ンピュータに、
円盤型目盛板の画像データを円盤型目盛板画像データとして取得する画像データ取得工程と、
前記円盤型目盛板の中心を基準として前記円盤型目盛板画像データを極座標変換した極座標目盛画像データを生成する極座標変換工程と、
前記極座標目盛画像データ中の目盛り線のピッチに基づいて当該円盤型目盛板の欠陥検出を行う欠陥検出工程と、を実行させる
ことを特徴とする円盤型目盛板の検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円盤型目盛板の検査方法、検査装置および検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
円形の目盛板と回転する指針とにより測定値をアナログ表示する測定器として例えばダイヤルゲージがある。ダイヤルゲージなどの精密測定器は、測定精度の保証や精密校正のために、製品出荷前、あるいは定期的に、測定器メーカや検査機関によって検査が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-067628
【特許文献2】特公昭57-61165
【特許文献3】特許2846217
【特許文献4】特許4020377
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダイヤルゲージの検査というのは、ゲージ検査器(マスター測定器)によって検査対象のダイヤルゲージのスピンドルを所定量変位させ、そのときの検査対象のダイヤルゲージとマスター測定器とで指示値を対比し、指示誤差を計測するというものである。しかしながら、この検査方法でダイヤルゲージに指示誤差不良が見つかったとしても、その原因が内部機構に起因するのか表示部(目盛板や目盛り線)に起因するのか切り分けることができなかった。
【0005】
本発明の目的は、円盤型の目盛板を正確かつ効率よく検査する円盤型目盛板の検査方法、検査装置および検査プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の円盤型目盛板の検査方法は、
円盤型目盛板の欠陥を検査する方法であって、
前記円盤型目盛板の画像データを円盤型目盛板画像データとして取得する画像データ取得工程と、
前記円盤型目盛板の中心を基準として前記円盤型目盛板画像データを極座標変換した極座標目盛画像データを生成する極座標変換工程と、
前記極座標目盛画像データに基づいて当該円盤型目盛板の欠陥検出を行う欠陥検出工程と、を備える
ことを特徴とする。
【0007】
本発明では、
前記極座標変換工程は、角度パラメータを直線の角度表示軸に表すようにして前記極座標目盛画像データ中の目盛り線が平行に整列するようにし、
前記円盤型目盛板において前記目盛り線が設けられている範囲の中心角の大きさをA°とし、
前記円盤型目盛板の目盛り線の本数をNとし、
kをN/3以下の正の整数とするとき、
前記欠陥検出工程は、
前記角度表示軸上で(A°/N)×kに相当する幅をもつ処理領域を設定する処理領域設定工程と、
前記処理領域ごとに重心を算出する重心算出工程と、
前記重心算出工程で求められた重心のピッチを算出する重心ピッチ算出工程と、を備える
ことが好ましい。
【0008】
本発明では、
第一段階の検査では、kを1よりも大きな数とし、
第二段階の詳細検査として、kを1に設定する
ことが好ましい。
【0009】
本発明では、
前記重心算出工程の前に、
前記処理領域のエッジと目盛り線とが所定閾値以内に接近しているあるいは重なっているかを判定するエッジ判定工程と、
前記エッジ判定工程においてエッジと目盛線とが所定閾値以内に接近しているあるいは重なっている場合に、一目盛分の半分、すなわち、(A°/2N)に相当する分だけ前記処理領域を前記角度表示軸に沿ってずらす処理領域調整工程と、を行う
ことが好ましい。
【0010】
本発明では、
前記画像データ取得工程は、
指針位置の異なる円盤型目盛板の画像データを複数枚取得し、
前記複数枚の画像データから指を実質的に除外した円盤型目盛板画像データを取得する
ことが好ましい。
本発明では、
前記画像データ取得工程は、前記複数枚の画像データを平均化することによって前記円盤型目盛板画像データを取得する
ことが好ましい。
本発明では、
前記画像データ取得工程は、前記複数枚の画像データの対応する画素ごとに輝度値の中央値あるいは中央値近傍の数点の平均値をその画素の輝度値とすることによって前記円盤型目盛板画像データを取得する
ことが好ましい。
【0011】
本発明の円盤型目盛板の検査装置は、
円盤型目盛板の画像データを円盤型目盛板画像データとして取得する画像データ取得部と、
前記円盤型目盛板の中心を基準として前記円盤型目盛板画像データを極座標変換した極座標目盛画像データを生成する極座標変換部と、
前記極座標目盛画像データ中の目盛り線のピッチに基づいて当該円盤型目盛板の欠陥検出を行う欠陥検出部と、を備える
ことを特徴とする。
【0012】
本発明の円盤型目盛板の検査プログラムは、
コンピュータに、
円盤型目盛板の画像データを円盤型目盛板画像データとして取得する画像データ取得工程と、
前記円盤型目盛板の中心を基準として前記円盤型目盛板画像データを極座標変換した極座標目盛画像データを生成する極座標変換工程と、
前記極座標目盛画像データ中の目盛り線のピッチに基づいて当該円盤型目盛板の欠陥検出を行う欠陥検出工程と、を実行させる
ことを特徴とする円盤型目盛板の検査プログラム。
【0013】
また、本発明の円盤型目盛板の検査方法は、
円盤型目盛板の欠陥を検査する方法であって、
前記円盤型目盛板の画像データを円盤型目盛板画像データとして取得する画像データ取得工程と、
前記円盤型目盛板の中心を基準として前記円盤型目盛板画像データを極座標変換した極座標目盛画像データを生成する極座標変換工程と、
前記極座標目盛画像データ中の目盛り線のピッチを予め用意された参照値と対比することにより当該円盤型目盛板の欠陥検出を行う欠陥検出工程と、を備える
ことを特徴とする。
【0014】
本発明では、
前記極座標変換工程は、角度パラメータを直線の角度直線表示軸に表すようにして前記極座標目盛画像データ中の目盛り線が平行に整列するようにし、
前記円盤型目盛板において前記目盛り線が設けられている範囲の中心角の大きさをA°とし、
前記円盤型目盛板の目盛り線の本数をNとするとき、
前記欠陥検出工程は、
前記角度直線表示軸上で(A°/N)に相当する第一幅をもつ第一処理領域を設定する第一処理領域設定工程と、
前記第一処理領域ごとに重心を算出する第一重心算出工程と、を備える
ことが好ましい。
【0015】
本発明では、
前記第一重心算出工程の前に、
前記第一処理領域のエッジと目盛り線とが所定閾値以内に接近しているあるいは重なっているかを判定するエッジ判定工程と、
前記エッジ判定工程においてエッジと目盛り線とが所定閾値以内に接近しているあるいは重なっている場合に、一目盛分の半分、すなわち、(A°/2N)に相当する分だけ前記第一処理領域を前記角度直線表示軸に沿ってずらす処理領域調整工程と、を行う
ことが好ましい。
【0016】
本発明では、
前記第一重心算出工程によって求められた重心ごとに、前記第一処理領域よりも狭い第二幅をもつ第二処理領域を設定する第二処理領域設定工程と、
前記第二処理領域ごとに重心を算出する第二重心算出工程と、を備える
ことが好ましい。
【0017】
本発明では
前記画像データ取得工程は、
指針位置の異なる円盤型目盛板の画像データを複数枚取得し、
前記複数枚の画像データから指を実質的に除外した円盤型目盛板画像データを取得する
ことが好ましい。
本発明では、
前記画像データ取得工程は、前記複数枚の画像データを平均化することによって前記円盤型目盛板画像データを取得する
ことが好ましい。
本発明では、
前記画像データ取得工程は、前記複数枚の画像データの対応する画素ごとに輝度値の中央値あるいは中央値近傍の数点の平均値をその画素の輝度値とすることによって前記円盤型目盛板画像データを取得する
ことが好ましい。
【0018】
本発明の円盤型目盛板の欠陥検査装置は、
円盤型目盛板の画像データを円盤型目盛板画像データとして取得する画像データ取得部と、
前記円盤型目盛板の中心を基準として前記円盤型目盛板画像データを極座標変換した極座標目盛画像データを生成する極座標変換部と、
前記極座標目盛画像データ中の目盛り線のピッチを予め用意された参照値と対比することにより当該円盤型目盛板の欠陥検出を行う欠陥検出部と、を備える
ことを特徴とする。
【0019】
本発明の円盤型目盛板の検査プログラムは、
コンピュータに、
円盤型目盛板の画像データを円盤型目盛板画像データとして取得する画像データ取得工程と、
前記円盤型目盛板の中心を基準として前記円盤型目盛板画像データを極座標変換した極座標目盛画像データを生成する極座標変換工程と、
前記極座標目盛画像データ中の目盛り線のピッチを予め用意された参照値と対比することにより当該円盤型目盛板の欠陥検出を行う欠陥検出工程と、を実行させる
ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第一実施形態に係る測定器検査装置のシステム構成図である。
図2】演算処理装置の機能ブロック図である。
図3】第一実施形態に係る円盤型目盛板の欠陥検査方法の動作を説明するためのフローチャートである。
図4】欠陥検出工程の動作を説明するためのフローチャートである。
図5】円盤型目盛板の画像データを例示する図である。
図6】極座標目盛画像データを例示した図である。
図7】円盤型目盛板の中心を求める手順を例示する図である。
図8】極座標目盛画像データの角度表示軸に沿って第一処理領域を配置(マッピング)した状態を例示した図である。
図9】目盛り線を検出する様子を例示する図である。
図10】処理領域の配置(マッピング)を調整した後の状態を例示した図である。
図11】目盛り線(あるいは目盛板の表面)にキズ等がある場合を例示した図である。
図12】第二実施形態に係る測定器検査装置の演算処理装置の機能ブロック図である。
図13】第二実施形態における欠陥検出工程(ST300)の動作を説明するためのフローチャートである。
図14】第二実施形態における欠陥検出工程(ST300)の動作を説明するためのフローチャートである。
図15】第一処理領域を角度直線表示軸上に配置(マッピング)した状態を例示した図である。
図16】第二処理領域を角度直線表示軸上に配置(マッピング)した状態を例示した図である。
図17】測定器のアナログ表示部として1回転未満のものを例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明の測定器検査装置に係る第1実施形態について説明する。
測定器検査装置は、例えば、円盤型目盛板と回転指針とで測定値をアナログ表示する測定器、例えば、(アナログ表示式)ダイヤルゲージ10を検査する。(ダイヤルゲージは、インジケータやテストインジケータと呼ばれることもある。)
【0022】
ダイヤルゲージなどの精密測定器は、測定精度の保証や精密校正のために、定期的に測定器メーカや検査機関によって検査される。本実施形態の測定器検査装置は、主として、円盤型目盛板の欠陥、例えば、目盛板の歪み、目盛り線のかすれ、キズ、汚れ、などを検査する。
【0023】
図1は、測定器検査装置のシステム構成図である。
測定器検査装置100は、撮像手段(イメージセンサ)としてのカメラ110と、演算処理装置200と、を備える。
カメラ110は、検査対象である測定器10の目盛板40を正面から撮像するように設置されている。影による輝度ムラが生じたりしないようにリング照明120を設置するとよい。
【0024】
演算処理装置200は、典型的には小型コンピュータであって、コンピュータ本体に入出力機器としてキーボード、マウス、マイク、ディスプレイ、プリンタ、スピーカが内蔵または外付けされている。その他、演算処理装置200は、タブレット端末やスマートフォン(携帯型高機能電話機)であってもよい。
【0025】
図2は、演算処理装置200の機能ブロック図である。
演算処理装置200は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ(ROM、RAM)等を備えて構成され、CPU(中央処理装置)で検査プログラムを実行することにより各機能部の機能を実現する。検査プログラムの配布方法としては、不揮発性記録媒体(CD-ROM、メモリカード等)に記録して配布してもよいし、インターネット回線等を介してダウンロードさせるようにしてもよい。
【0026】
演算処理装置200は、画像データ取得部210と、座標変換部220と、欠陥検出部300と、を備える。
欠陥検出部300は、処理領域設定部310と、エッジ判定部320と、処理領域調整部330と、重心算出部340と、重心ピッチ算出部350と、合否判定部360と、を備える。
各機能部の動作はフローチャートを参照しながら後述する。
【0027】
図3は第一実施形態に係る円盤型目盛板の欠陥検査方法の動作を説明するためのフローチャートである。
オペレータは、検査対象の測定器のアナログ表示部(目盛板)がカメラ110と正対するように測定器をスタンドに設置する。カメラ(イメージセンサ)によって測定器の目盛板40を撮像し、その画像データが画像データ取得部210に送られる。
ここで、測定器のアナログ表示部は目盛板40と指針30とを有するが、本実施形態で検査するのは目盛板40である。したがって、指針30を除いた目盛板40の画像だけを取得する。そこで、指針30の位置を変えながら複数枚の画像データを取得する。
図5に例示のように、指針30を所定角度ずつ回転させながら指針30の一回転分の画像データを取得する。そして、複数枚の画像データを重ねて対応するピクセルごとに輝度を平均化する。すると、指針30の存在の影響が薄まり、指針30が実質的に除外された目盛板40だけの画像データを得る(画像データ取得工程ST110)。これを円盤型目盛板画像データ211とする。
あるいは、指針30の位置を変えながらアナログ表示部を撮像して複数枚の画像データを取得し、対応するピクセルごとの中央値をとるようにしてもよい。
複数枚の画像データをならべて、対応するピクセルごとに輝度値を昇順あるいは降順にならべてみたときの中央値をそのピクセルの輝度とする。
中央値そのものではなく、中央値近傍の数個の平均値をそのピクセルの輝度値として採用してもよい。
(中央値近傍の平均を求めるにあたっては、中央値近傍の、2点とか、3点とか、4点とか、5点とか、中央値近傍の適切な数の輝度値を抜き出して、それらの輝度値の値の平均を求めるようにしてもよい。あるいは、平均の算出に使用する中央値近傍の輝度値の数は、撮像した画像データの数の半分以下、3分の1以下、あるいは、4分の1以下などとし、中央値近傍の適切な数の輝度値を抜き出して、それらの輝度値の値の平均を求めるようにする。)
複数枚の画像データを重ねて対応するピクセルごとに輝度を平均化する方法は単純なので演算の負荷が比較的軽いが、若干コントラストが下がる心配がある。
この点、複数枚の画像データで対応するピクセルごとの中央値(あるいは中央値近傍の数点の平均値)を採用する場合は、指針の影響を完全に排除し、コントラストが高い目盛板40だけの画像データを得ることができる。
目盛板の検査であるから、質の高い目盛板画像データを取得することはまず最初に極めて重要なことである。
【0028】
次に、座標変換部220は、円盤型目盛板画像データ211を極座標変換する。
ここでは、目盛板20の中心(指針30の回転中心)を極座標の基準点(原点)とし、時計回りを正の回転方向とする。
角度(θ)がゼロの軸は適宜決めればよい。ここでは、円盤型目盛板画像データ211を二次元直交座標(x、y)でみたとき、Y軸に平行でy座標が大きくなる向きを角度(θ)ゼロの軸にする。
測定器(ダイヤルゲージ)を通常の縦姿勢でスタンドに設置していれば、目盛板の中心から目盛りの"0"に向かう線が角度ゼロの軸になる。ただし、測定器(ダイヤルゲージ)の目盛板20は回転可能であるから、角度(θ)がゼロの軸上に目盛り線が乗っている場合もあるし、乗っていない場合もある。
【0029】
そして、角度パラメータθが直線の横軸になるように画像データを変換する。この画像データを極座標目盛画像データ221とする。
図6は、極座標目盛画像データ221を例示した図である。
極座標目盛画像データ221のなかで目盛り線40は互いに平行で横軸に沿う方向に整列する。角度パラメータθに対応する直線の横軸を角度表示軸と称することとする。角度表示軸は0度から360度に相当する。角度パラメータθを角度表示軸にプロットするにあたっては、角度θの1度分に相当する長さ(あるいはピクセル数)を適宜設定しておく。ここでは、角度θの1°分に相当する長さを1mmとする。
【0030】
なお、円盤型目盛板画像データ211のなかで目盛板20の中心を求める方法としてはいくつか考えられる。
例えば、円盤型目盛板画像データ211を二次元直交座標(x、y)でみて、Y軸に平行な目盛り線を二つ検出することにより、0°の目盛り線と180°の目盛り線とが見つかる。0°の目盛り線と180°の目盛り線とを直線で結び、y1線とする(図7)。同様に、円盤型目盛板画像データ211を二次元直交座標(x、y)でみて、X軸に平行な目盛り線を二つ検出することにより、90°の目盛り線と270°の目盛り線とが見つかる。90°の目盛り線と270°の目盛り線とを直線で結び、x1線とする。
y1とx1との交点を目盛板20の中心とする(図7)。
【0031】
また、検査の正確さあるいは精度を高めるため、円盤型目盛板画像データ211を補間(例えばバイリニア補間)によってサブピクセルレベルに変換しておいて、角度θのサンプリングピッチを細密化するようにしてもよい。
【0032】
次に、欠陥検出工程(ST200)を説明する。
図4は、欠陥検出工程(ST200)の動作を説明するためのフローチャートである。
まず、処理領域設定部310は、欠陥検出のための画像処理単位(ROI)となる処理領域311のサイズ(大きさ)を設定する。処理領域311のサイズとしては、目盛り線を一本ずつ画像処理するとすれば、処理領域311のサイズ(幅)を一目盛分の幅に設定すればよい。例えば、目盛り線が100本だとして、処理領域311のサイズ(幅)を360°/100=3.6°に相当する幅に設定すればよい。例えば、1°分の幅が角度表示軸の1mmとすれば、処理領域311のサイズ(幅)は3.6mmとなる。
【0033】
検査対象の円盤型目盛板20の目盛り線の本数Nは、カメラ110で取得された画像データから演算処理装置200が画像認識で自動的に数えるようにしてもよい。あるいは、オペレータが予め演算処理装置200に目盛り線の本数を設定入力しておいてもよい。あるいは、測定器の型番や目盛板の型番、あるいは、測定器や目盛板に付されたバーコード(一次元または二次元バーコード)の情報から目盛り線の本数を読み取れるようにしてもよい。
【0034】
本実施形態では、検査効率を上げるため、まずは、目盛り線の10本(k=10)ずつを処理単位とする。例えば、目盛り線が100本(N=100本)だとして、処理領域311のサイズ(幅)を360°/100×10=36°に相当する幅に設定すればよい。1°分の幅を角度表示軸の1mmとすれば、処理領域311のサイズ(幅)は36mmとなる。
【0035】
処理領域311の高さについては、特段限定するものではないが、目盛り線の長さに応じて適宜高さを設定すればよい。処理領域311の高さが大きすぎると目盛り線以外の余計な領域を含んでしまうので、処理領域311の高さは目盛り線の長さとほぼ同じか、目盛り線の長さより若干短めにしておいてもよい。もちろん、処理領域311の高さが目盛り線の長さよりも長くてもよい。
【0036】
そして、極座標目盛画像データ221に処理領域311を配置する(ST210)。
図8は、極座標目盛画像データ221の角度表示軸に沿って処理領域311を配置(マッピング)した状態を例示した図である。ここでは、処理領域311は互いに重複無しで、かつ、隣の処理領域同士で隙間なく、極座標目盛画像データ221を角度表示軸に沿って区分けする。
【0037】
このあと、処理領域311ごとに重心を求めることによって目盛り線の検査をすることになるが、目盛り線40と処理領域311の端とが重なっていたり、接近し過ぎたりしていると、重心が正しく求められない。そこで、エッジ判定部320は、処理領域311のエッジと目盛り線40とが所定閾値以内に接近しているかを判定する(エッジ判定工程ST220)。このエッジ判定の閾値をエッジ判定閾値とする。
エッジ判定工程(ST220)は、マッピングしたすべての処理領域311で行う必要はなく、どれか一つの処理領域311、例えば、一番左端の処理領域311のさらに左端のエッジだけを判定すればよい。一番左端の処理領域311の左端のエッジに着目し、このエッジの左右で数ピクセル分(例えばエッジ判定閾値)の輝度をサンプリングし、エッジの近傍に目盛り線40があるかを判定する。図9に例示のように、エッジの近傍で輝度をサンプリングしたとき、輝度が所定値以下の点(ピクセル)が連続する領域があれば、処理領域311のエッジと目盛り線40とが接近し過ぎていると判断する(ST230:YES)。
【0038】
処理領域311のエッジと目盛り線40とが接近し過ぎている場合(ST230:YES)、処理領域311の配置をずらす調整を行う。すなわち、一目盛分の半分、すなわち、(360°/2N)に相当する分だけ処理領域311を角度表示軸に沿ってずらす。図10は、処理領域311の配置(マッピング)を調整した後の状態を例示した図である。
【0039】
ここで、本実施形態では、一つの処理領域311のエッジでエッジ判定して、処理領域311のエッジと目盛り線40とがかぶっていることがわかった場合、すべての処理領域311を全体的に一目盛りの半ピッチ(360°/2N)ずらせば、全部の処理領域311でエッジと目盛り線とのかぶりが解消していると考えてよい。これは、本実施形態の検査対象が円盤型目盛板であるためである。
例えば、直線状の長いリニアスケールを考えてみると、目盛り線の間隔の誤差はどんどん累積していくから、どこか一つの処理領域でエッジと目盛り線とのかぶりを修正するように全体を半ピッチずらしたとしても、そこから離れた他の処理領域でエッジと目盛り線とのかぶりが無いとは言い切れない。
一方、例えば、360°の円周をN等分するように打たれた目盛り線40の場合、どこかで目盛り間隔が広くなったり狭くなったりするズレがあってもそのズレはどこかで解消され、目盛り間隔のズレが半ピッチや半ピッチ以上に累積するようなことはないと言える。
【0040】
次に、重心算出部340により、それぞれの処理領域311ごとに重心の位置を算出する(重心算出工程ST250)。
画像中の輝度的重心位置を求める処理方法は種々知られている。
ここで、目盛板20は、一般的に、白の地色(背景)に黒の目盛り線を刻設や印刷したものであるから、(白の)背景を除いて、目盛り線、汚れ、キズなどの黒色の重心を求めるため、(使う計算式にもよるが)極座標目盛画像データ221を明暗反転してから重心を求めることが考えられる。また、重心計算の前に、所定閾値で白黒二値化するようにしてもよい。
それぞれの処理領域311ごとに求められた重心位置に基づき、重心ピッチを算出する(重心ピッチ算出工程ST260)。(重心位置のピッチを算出するにあっては、角度表示軸に平行な方向において隣り同士の重心の距離を算出する。)
【0041】
合否判定部360は、それぞれの処理領域311ごとに求められた重心位置のピッチの変動が許容範囲に入っているか否かを判定する(合否判定工程ST270)。
もし、目盛り線に汚れ、キズなどがなく、また、目盛板の歪みなどもなければ、図10に例示のように、目盛り線10本ずつの重心位置はほぼ等間隔に並ぶはずである。この場合、重心位置のピッチの変動は許容範囲(プラスマイナスα以内)に入る(ST280:YES, ST281)。
一方、図11に例示のように、目盛り線(あるいは目盛板の表面)にキズ、汚れ、かすれ、あるいは目盛板の歪みやたわみがあると、重心位置はずれる。すると、隣同士の重心の間隔(ピッチ)に大きな変動が表れる。すなわち、処理領域311ごとに求められた重心位置のピッチの変動が許容範囲を超えるので(ST280:No)、この場合、目盛板に欠陥があることが検出される(エラー検出ST282)。
【0042】
欠陥(エラー)が検出された場合は(ST282)、例えば、演算処理装置200からオペレータに警告を出し、欠陥(エラー)が検出された領域の画像を拡大してモニタに表示する。これによりオペレータが目視によって異常(目盛板のキズや汚れ)を確認し、適切な処置をとれるようにする。
【0043】
第一実施形態によれば次の作用効果を奏する。
従来、測定器の検査においては検査対象の測定器とマスター測定器とで指示値の誤差を検出して、検査対象の測定器の正確さをチェックしていた。このような検査方法では、検査対象の測定器の誤差が大きいことが検知できたとしても、測定誤差が内部的な機構に起因するのか、表示部(目盛板)の欠陥に起因するのか、が区別できなかった。
この点、本実施形態の測定器検査装置(円盤型目盛板の検査方法)によれば、目盛板に欠陥があるか否かを判別できる。測定誤差が目盛板や目盛り線の欠陥(キズ、汚れ、かすれ、歪み、たわみなど)に起因していることが特定できれば、目盛板を付け直したり、クリーニングしたり、交換したり、することによって問題は早期に解決する。
【0044】
近年では人手不足の解消のため指針式のアナログ表示部でも画像認識によって自動的に測定値を読み取ることも行われるようになっている。目盛板20や目盛り線40に人間の目では認識できないような小さなキズや汚れがあっても、これが画像認識の読み取り誤差に繋がり、測定誤差や校正ミスに繋がる。この点、本実施形態により目盛板20あるいは目盛り線40の欠陥を検査することで読み取りエラーを未然に防ぐことができるようになる。
【0045】
本実施形態では、所定のサイズの処理領域311を角度表示軸に沿ってマッピングし、処理領域311ごとに求めた重心のピッチ変化によって目盛板20あるいは目盛り線40の欠陥を検知している。この方法は、例えば、画像認識によって一本一本の目盛り線の欠陥(キズ、汚れ、かすれ)を検査したりすることに比べて簡単であって、演算負荷が少なく、早いという利点がある。
【0046】
画像処理領域(ROI)である処理領域311を角度表示軸にマッピングするにあたって、互いに重複無しで、かつ、隣の処理領域同士で隙間なく配置していき、仮に、エッジと目盛り線とがかぶってしまう不都合があっても全体に目盛り間隔の半ピッチずらせばよいとしている。このように画像処理領域(ROI)を設定できることも演算付加の低減に繋がっている。例えば、一つ一つの画像処理領域(ROI)ごとに目盛り線とエッジとの重なりを事前チェックする必要はない。これは、円盤型目盛板に設けられる目盛り線の特徴に着目した本実施形態の工夫である。
【0047】
(変形例1)
なお、第一実施形態では、複数本(10本)ずつの目盛り線をまとめて重心を求めるように処理領域311を配置した。処理領域311の幅を目盛り線40のピッチと同じにして(360/N)、目盛り線40の一本ごとに重心を算出するようにしてもよい。
また、第一段階の検査では、上記の説明のように、複数本(10本)ずつの目盛り線40をまとめて検査し、第二段階の詳細検査として、目盛り線40の一本ごとに処理領域311を配置して重心を求めるように検査してもよい。
明らかな欠陥は第一段階で分かるので、多くの測定器の検査をすることを考えれば、大幅な時短に繋がる。バッチ処理が可能になることも本実施形態の方法の利点である。
【0048】
第一実施形態では、10本(k=10)ずつバッチ処理する場合を例に説明したが、処理領域311の重心のピッチの変動をみることで目盛り線の欠陥を判定することを考えると、処理領域311が3つ以上あればよいといえる。したがって、バッチ処理で一つの処理領域311に含む目盛り線の本数(k)はN/3以下と考えられる。kがN/3以下であって、かつ、kがNの約数であるとさらによい。
表現を変えると、k=[N/M]で、Mは3≦M≦Nの整数である。[x]はxを超えない最大の整数を表すガウス記号(床関数)である。
さらに表現を変えると、検査対象の角度範囲Aを均等に分割した処理領域が3個以上あり、各処理領域の中には同じ本数の目盛り線が等しく含まれていること、ということである。
【0049】
(第二実施形態)
上記第一実施形態は、ユーザが使用している測定器(ダイヤルゲージ)を測定器メーカや検査機関が定期検査することを想定していた。
第二実施形態としては、測定器メーカが製品出荷前の最終検査を行う際に好適な検査方法を説明する。
製品出荷前の検査にあっては、目盛板20を測定器(ダイヤルゲージ)の表示部に組み付けた状態で目盛板20を検査する。
組み付ける前に目盛板20の部品検査は実施されているから、目盛板20の表面に大きなキズや汚れがあるということは無いはずであるが、組み付けるときに目盛板20がしっかり嵌まっていなかったり、部品ごとの個体差の累積により目盛板20が歪んだり撓んだりということは考えられる。その結果、目盛板20を正面からみたときの目盛り線の等間隔性が損なわれる恐れはある。いずれにしても最終出荷前の段階で、測定器の使用にあたってユーザが一番見ることになるアナログ表示部(目盛板)が狙った通りの精度にできているかを検査することが製品品質保証の点では最も望ましいことである。
【0050】
図12は、第二実施形態に係る測定器検査装置の演算処理装置である。
第二実施形態の演算処理装置200は、処理領域設定部310として、第一処理領域設定部312と第二処理領域設定部314とを有する。また、重心算出部340は、第一重心算出部341と第二重心算出部342とを有する。
【0051】
第二実施形態に係る円盤型目盛板の欠陥検査方法の動作を説明する。
第二実施形態においても、第一実施形態の画像データ取得工程(ST110)および座標変換工程(ST120)を実行し、極座標目盛画像データ221を生成する。
図13図14は、第二実施形態における欠陥検出工程(ST300)の動作を説明するためのフローチャートである。
第二実施形態においても、まず、極座標目盛画像データ221に処理領域を配置する(第一処理領域設定工程ST310)。ここで、処理領域は、目盛り線40のそれぞれに対応した処理領域であり、これを第一処理領域313と称することにする。目盛り線の本数をNとすると、各第一処理領域313の幅は(360°/N)に相当する。この幅を第一幅と称することにする。
【0052】
図15は、第一処理領域313を角度表示軸上に配置(マッピング)した状態を例示した図である。ここで、第一実施形態と同様に、エッジ判定工程(ST320)により第一処理領域313のエッジが目盛り線に接近しすぎていたり重なっていたりする場合(ST330:YES)、一目盛分の半分、すなわち、(360°/2N)に相当する分だけ第一処理領域313を角度表示軸に沿ってずらす(処理領域調整工程ST340)。
【0053】
そして、第一重心算出部341により、それぞれの第一処理領域313ごとに重心の位置を算出する(第一重心算出工程ST350)。第一処理領域313ごとに求めた重心を第一重心と称することにする。こうして求まった第一重心の位置から目盛り線40のピッチを求めてもよい。
ただ、第一処理領域313の幅は、検査対象である目盛り線40の幅よりもかなり広く、目盛り線以外の領域も大きく囲っている。そのため、第一重心の位置は、目盛り線以外の要素(目盛板の表面)の影響を受けやすい。例えば、目盛板20をカメラ110で撮像するときの照明のムラも多少は影響する可能性がある。
【0054】
そこで、第一処理領域313よりも幅が狭い第二処理領域315を用意し、各第一重心をそれぞれ囲むように第二処理領域315を配置(マッピング)する(第二処理領域設定工程ST351)。
図16は、第二処理領域315を角度表示軸上に配置(マッピング)した状態を例示した図である。
第二処理領域315の幅は、設計上の目盛り線の幅を基準として、目盛り線の幅の2倍や3倍、のように設定してもよい。あるいは、第二処理領域315の幅は、第一処理領域313の幅(一目盛分の幅)を基準にして、第一処理領域313の幅(一目盛分の幅)の半分や3分の1、のように設定してもよい。
【0055】
そして、第二重心算出部342により、それぞれの第二処理領域315ごとに重心の位置を算出する(第二重心算出工程ST352)。このようにして求められた第二重心は、第一重心よりも目盛り線の位置(目盛り線の中心)に対応していると考えられる。
【0056】
重心ピッチ算出部350は、第二重心を用いて重心ピッチを算出する(重心ピッチ算出工程ST360)。合否判定としては、一つ一つの重心ピッチを参照値(ノミナル値、設計上のねらい値)と対比し、目盛り線のピッチが設計値(ノミナル値)と一致しているか、あるいは、許容範囲か否かを判定する(合否判定工程ST370)。
【0057】
なお、合否判定として、第一実施形態と同様にピッチの変動を求めてもよい。ただし、第二実施形態では、製品出荷前の測定器を検査対象とするから、キズや汚れは無いと考えられ、ピッチの変動はほぼ検出されないと考えられる。第二実施形態としては、目盛板が設計通りに組み付けられているかを検査することを主眼にするから、重心ピッチ(目盛り間隔)の正確さを参照値(ノミナル値)との対比で検証するのがよい。
【0058】
このように第二実施形態によれば、目盛り線の精度検査が可能になる。製品出荷前の検査によって目盛板の欠陥の有無を検査でき、問題があれば早期に取り替えて問題を解消できる。目盛板の欠陥検査に合格したあと、マスター測定器との指示誤差の対比によって正確性の判定をする。このとき、仮に指示誤差不良となれば、それは目盛板ではなく内部機構の不良であると迅速に判断できるなど、原因の解明につながりやすい。
【0059】
なお、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更してもよい。
目盛板というのは、実際の板に目盛り線が刻印や印刷されているアナログ目盛板(アナログ文字盤)の他、例えば、液晶パネルや有機ELパネルなどのデジタル表示パネルに表示された円盤型目盛板であってもよい。
【0060】
上記実施形態では、目盛板の指針が一周360°(あるいはそれ以上)回転し、それに合わせて目盛り線は360°を均等に分割するように設けられている例を説明した。
測定器のアナログ表示部としては例えば図17に例示のように1回転未満のものもある。このような場合、処理領域の幅の算出にあたっては、目盛板において精度検査の対象とする目盛り線が設けられている範囲の中心角の大きさA°と、その範囲にある目盛り線の本数Nと、に応じて、(A°/N)×kに相当する幅をもつ処理領域を設定する。
【符号の説明】
【0061】
10 ダイヤルゲージ(測定器)
20 目盛板
40 目盛り線
200 演算処理装置
211 円盤型目盛板画像データ
220 座標変換部
221 極座標目盛画像データ
310 処理領域設定部
311 処理領域
312 第一処理領域設定部
313 第一処理領域
314 第二処理領域設定部
315 第二処理領域
320 エッジ判定部
340 重心算出部
341 第一重心算出部
342 第二重心算出部
360 合否判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17