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  • 特開-固形医薬組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091536
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】固形医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4402 20060101AFI20240627BHJP
   A61K 31/136 20060101ALI20240627BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20240627BHJP
   A61K 31/195 20060101ALI20240627BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240627BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240627BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240627BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240627BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240627BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A61K31/4402
A61K31/136
A61K31/137
A61K31/195
A61K9/16
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
A61K47/02
A61P43/00 113
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023212569
(22)【出願日】2023-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2022207615
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】森 謙一郎
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA37
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC09
4C076DD28Q
4C076FF41
4C086BC17
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086NA03
4C086ZC13
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA01
4C206FA14
4C206FA31
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA61
4C206MA63
4C206MA72
4C206NA03
4C206ZC13
(57)【要約】
【課題】本発明は、クロルフェニラミン及び/又はその塩を含む固形医薬組成物の吸湿を抑制できる製剤処方を提供することを目的とする。
【解決手段】クロルフェニラミン及び/又はその塩を含む固形医薬組成物にアンブロキソール及び/又はその塩を配合することによって、吸湿を抑制できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)クロルフェニラミン及び/又はその塩、並びに、(B)アンブロキソール及び/又はその塩を含み、解熱鎮痛剤を含まない、固形医薬組成物。
【請求項2】
(C)プソイドエフェドリン、メチルエフェドリン、及び/又はそれらの塩を更に含む、請求項1に記載の固形医薬組成物。
【請求項3】
(D)トラネキサム酸を更に含む、請求項1に記載の固形医薬組成物。
【請求項4】
(E)タルクを更に含む、請求項1に記載の固形医薬組成物。
【請求項5】
前記(A)成分1重量部当たり、前記(B)成分を0.35重量部以上含む、請求項1に記載の固形医薬組成物。
【請求項6】
前記(A)成分1重量部当たり、前記(C)成分を0.6重量部以上含む、請求項2に記載の固形医薬組成物。
【請求項7】
前記(A)成分1重量部当たり、前記(D)成分を6重量部以上含む、請求項3に記載の固形医薬組成物。
【請求項8】
前記(A)成分を0.01~0.9重量%含む、請求項1に記載の固形医薬組成物。
【請求項9】
顆粒剤、細粒剤、散剤、錠剤、又はカプセル剤である、請求項1に記載の固形医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロルフェニラミン及び/又はその塩を含み、吸湿が抑制された固形医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
クロルフェニラミンマレイン酸塩は、第一世代のアルキルアミン系ヒスタミン受容体拮抗薬として知られており、ビスラー散のような散剤の医薬組成物に配合されている(非特許文献1)。
【0003】
散剤その他の固形の医薬組成物は、本来的に吸湿しやすく、吸湿は製品の品質に影響を及ぼす可能性がある。固形の医薬組成物の吸湿抑制は、基本的に、適切な包装材料及び保存条件の選択により達成される。一方で、固形の医薬組成物自体に被覆を施すこと(特許文献1)も知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ビスミラー散1%添付文書、2022年8月改訂(第1版)扶桑薬品工業株式会社
【非特許文献2】病院薬学Vol.11,No.5,p.414-418(1985)
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-184888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、様々な固形医薬組成物の中でも、クロルフェニラミン及び/又はその塩(以下において、「クロルフェニラミン類」とも記載する。)を含む固形医薬組成物が、吸湿性であり、特に保存期間が長期化すると吸湿性が顕著になる課題に直面した。
【0007】
ここで、固形の医薬組成物の吸湿抑制を適切な包装材料の選択に委ねる方法の問題点としては、特殊な包装材料の使用に拘束されること、及び様々な剤型に適用できなくなる場合があること等が考えられる。固形の医薬組成物の吸湿抑制を適切な保存条件の選択に委ねる方法の問題点としては、患者への十分な薬品管理指導までは行き届かないこと等が考えられる。固形の医薬組成物の吸湿抑制を被覆に委ねる方法の問題点としては、製剤がかさ高になること、及び生産効率が低下すること等が考えられる。
【0008】
従って、固形の医薬組成物の処方自体の工夫により吸湿抑制を図ることが望ましい。賦形剤等の添加剤を大量に共配してクロルフェニラミン類を希釈することも考えられるが、製剤自体のかさが大きくなることに伴い1回あたりの服用量が大きくなり、服用コンプライアンスに悪影響し得る。そこで、クロルフェニラミン類を含む固形の医薬組成物の吸湿を、添加剤ではなく他の有効成分の配合により抑制できれば、吸湿抑制とともに複数種の有効成分の効率的な服用が可能になるため、服用コンプライアンスの向上に大きく貢献できると考えられる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、クロルフェニラミン類を含む固形の医薬組成物の吸湿を、他の有効成分の共配合により抑制できる製剤処方を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討を行ったところ、クロルフェニラミン類を含む固形の医薬組成物に、解熱鎮痛剤を配合せず、アンブロキソール及び/又はその塩(以下において、「アンブロキソール類」とも記載する。)を配合することで、吸湿を抑制できることを見出した。また、プソイドエフェドリン、メチルエフェドリン、及び/又はそれらの塩(以下において、「エフェドリン類」とも記載する。)を更に配合したり、トラネキサム酸を更に配合したり、タルクを更に配合したりすることで、吸湿を一層抑制できることも見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0011】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)クロルフェニラミン及び/又はその塩、並びに、(B)アンブロキソール及び/又はその塩を含み、解熱鎮痛剤を含まない、固形医薬組成物。
項2. (C)プソイドエフェドリン、メチルエフェドリン、及び/又はそれらの塩を更に含む、項1に記載の固形医薬組成物。
項3. (D)トラネキサム酸を更に含む、項1又は2に記載の固形医薬組成物。
項4. (E)を更に含む、項1又は2に記載の固形医薬組成物。
項5. 前記(A)成分1重量部当たり、前記(B)成分を0.35重量部以上含む、項1~4のいずれかに記載の固形医薬組成物。
項6. 前記(A)成分1重量部当たり、前記(C)成分を0.6重量部以上含む、項2~5のいずれかに記載の固形医薬組成物。
項7. 前記(A)成分1重量部当たり、前記(D)成分を6重量部以上含む、項3~6のいずれかに記載の固形医薬組成物。
項8. 前記(A)成分を0.01~0.9重量%含む、項1~7のいずれかに記載の固形医薬組成物。
項9. 顆粒剤、細粒剤、散剤、錠剤、又はカプセル剤である、項1~8のいずれかに記載の固形医薬組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、クロルフェニラミン類を含む固形の医薬組成物の吸湿を、他の有効成分の共配合により抑制できる製剤処方が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】比較例3及び実施例8の固形医薬組成物の6か月保管後の外観を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の固形医薬組成物は、(A)クロルフェニラミン及び/又はその塩(以下において、「(A)成分」とも記載する。)並びに(B)アンブロキソール及び/又はその塩(以下において、「(B)成分」とも記載する。)を含有することを特徴とする。本開示の固形医薬組成物は、さらに、(C)プソイドエフェドリン、メチルエフェドリン、及び/又はそれらの塩(以下において、「(C)成分」とも記載する。)、(D)トラネキサム酸(以下において、「(D)成分」とも記載する。)並びに/若しくは、(E)タルク(以下において、「(E)成分」とも記載する。)を含むことができる。本開示の固形医薬組成物は、吸湿性が高いクロルフェニラミン類を含むにも関わらず、吸湿が抑制されている。
【0015】
以下、本開示の固形医薬組成物について詳述する。本明細書において、2つの数値と「~」とにより示される数値範囲は、当該2つの数値を下限値及び上限値として含むものとする。例えば、2~15重量%との表記は、2重量%以上15重量%以下を意味する。
【0016】
(A)クロルフェニラミン類
本開示の固形医薬組成物は、(A)成分としてクロルフェニラミン(3-(4-クロロフェニル)-N,N-ジメチル-3-ピリジン-2-イル-プロパン-1-アミン)及び/又はその塩を含有する。クロルフェニラミン類は、抗ヒスタミン剤として公知の成分である。クロルフェニラミン類は吸湿性が高いが、本開示の固形医薬組成物は吸湿が抑制されている。
【0017】
クロルフェニラミンの塩としては、薬学的に許容されるものであれば特に限定されず、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、炭酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。
【0018】
本開示の固形医薬組成物において、(A)成分として、上記の成分から1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、本開示の固形医薬組成物における(A)成分として、クロルフェニラミンの塩が挙げられ、より好ましくはクロルフェニラミンの有機酸塩が挙げられ、さらに好ましくはクロルフェニラミンのマレイン酸塩が挙げられる。
【0019】
本開示の固形医薬組成物において、(A)成分の配合量については特に限定されないが、例えば0.01~1.0重量%が挙げられる。吸湿性をより一層抑制する観点から、好ましくは0.01~0.9重量%又は0.01~0.8重量%、より好ましくは0.01~0.7重量%、さらに好ましくは0.01~0.65重量%が挙げられる。また、本開示の経口医薬組成物は吸湿抑制性に優れるため、本来的に吸湿が顕著に起こりやすい(A)成分の配合量であっても、効果的に吸湿を抑制できる。このような観点から好適な(A)成分の配合量としては、好ましくは0.03~1.0重量%、又は0.05~1.0重量%、より好ましくは0.1~1.0重量%、さらに好ましくは0.2~1.0重量%、0.3~1.0重量%、又は0.4~1.0重量%、一層好ましくは0.5~1.0重量%が挙げられる。
【0020】
(B)アンブロキソール類
本開示の固形医薬組成物は、(B)成分としてアンブロキソール(トランス-4-(2-アミノ-3,5-ジブロモベンジルアミノ)-シクロヘキサノール)及び/又はその塩を含有する。アンブロキソール類は、気道潤滑型の去痰剤として公知の成分である。(B)成分は、本開示の固形医薬組成物において(A)成分と共配合されることで、吸湿を抑制できる。
【0021】
アンブロキソールの塩としては、薬学的に許容されるものであれば特に限定されず、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、炭酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。
【0022】
本開示の固形医薬組成物において、(B)成分として、上記の成分から1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、本開示の固形医薬組成物における(B)成分として、アンブロキソールの塩が挙げられ、より好ましくはアンブロキソールの無機酸塩が挙げられ、さらに好ましくはアンブロキソールの塩酸塩が挙げられる。
【0023】
本開示の固形医薬組成物において、(B)成分の含有量については特に限定されず、吸湿抑制効果の求められる程度に応じて、適宜設定できる。例えば、(A)成分1重量部当たりの(B)成分の含有量として、例えば0.35重量部以上が挙げられ、吸湿抑制効果をより高める観点から、好ましくは1重量部以上、2重量部以上、2.5重量部以上、又は3重量部以上、より好ましくは3.5重量部以上又は4重量部以上、さらに好ましくは5重量部以上又は5.5重量部以上が挙げられる。(A)成分1重量部当たりの(B)成分の含有量は、その上限においても特に限定されないが、例えば60重量部以下、好ましくは40重量部以下、20重量部以下、10重量部以下、8重量部以下、又は6重量部以下が挙げられる。
【0024】
本開示の固形医薬組成物における(B)成分の具体的な含有量については、例えば0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは0.75重量%以上、さらに好ましくは1.0重量%以上、一層好ましくは1.2重量%以上、2重量%以上、又は2.5重量%以上、より一層好ましくは3重量%以上が挙げられる。(B)成分の具体的な含有量は、その上限においても特に限定されないが、例えば10重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、又は3.5重量%以下が挙げられる。
【0025】
(C)エフェドリン類
本開示の固形医薬組成物は、(C)成分として、プソイドエフェドリン(1-フェニル-2-メチルアミノプロパノール-1)、メチルエフェドリン(1-フェニル-2-ジメチルアミノプロパノール-1)、及び/又はそれらの塩を含有できる。エフェドリン類は、気管支拡張剤、中枢性の鎮咳剤として公知の成分である。(C)成分をさらに配合することで、本開示の固形医薬組成物の吸湿抑制性を向上できる。
【0026】
プソイドエフェドリン及びメチルエフェドリンの塩としては、薬学的に許容されるものであれば特に限定されず、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、炭酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。
【0027】
(C)成分として、上記の成分から1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。吸湿抑制性を高める観点から、好ましくは、本開示の固形医薬組成物における(C)成分として、メチルエフェドリン及びその塩が挙げられ、より好ましくはメチルエフェドリン塩が挙げられ、さらに好ましくはメチルエフェドリンの無機酸塩が挙げられ、一層好ましくはメチルエフェドリンの塩酸塩が挙げられる。
【0028】
本開示の固形医薬組成物において、(C)成分の含有量については特に限定されず、吸湿抑制効果の求められる程度に応じて、適宜設定できる。例えば、(A)成分1重量部当たりの(C)成分の含有量として、例えば0.6重量部以上が挙げられ、吸湿抑制効果をより高める観点から、好ましくは1重量部以上又は3重量部以上、より好ましくは5重量部以上又は6重量部以上、さらに好ましくは8重量部以上、一層好ましくは9重量部以上が挙げられる。(A)成分1重量部当たりの(C)成分の含有量は、その上限においても特に限定されないが、例えば100重量部以下、好ましくは50重量部以下、20重量部以下、又は10重量部以下が挙げられる。
【0029】
本開示の固形医薬組成物における(C)成分の具体的な含有量については、例えば0.1重量%以上、0.15重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、又は0.4重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、0.6重量%以上、0.7重量%以上、0.8重量%以上、0.9重量%以上、又は1重量%以上、さらに好ましくは1.2重量%以上、一層好ましくは1.5重量%以上、より一層好ましくは1.8重量%以上、1.9重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、又は5重量%以上が挙げられる。(C)成分の具体的な含有量は、その上限においても特に限定されないが、例えば9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、又は6.5重量%以下が挙げられる。
【0030】
(D)トラネキサム酸
本開示の固形医薬組成物は、(D)成分としてトラネキサム酸を含有できる。トラネキサム酸は、抗出血剤、抗アレルギー剤、抗炎症剤等として公知の成分である。(D)成分をさらに配合することで、本開示の固形医薬組成物の吸湿抑制性を向上できる。
【0031】
本開示の固形医薬組成物において、(D)成分の含有量については特に限定されず、吸湿抑制効果の求められる程度に応じて、適宜設定できる。例えば、(A)成分1重量部当たりの(D)成分の含有量として、例えば6重量部以上が挙げられ、吸湿抑制効果をより高める観点から、好ましくは10重量部以上又は20重量部以上、より好ましくは40重量部以上、さらに好ましくは60重量部以上又は80重量部以上が挙げられる。(A)成分1重量部当たりの(D)成分の含有量は、その上限においても特に限定されないが、例えば1000重量部以下、好ましくは500重量部以下、250重量部以下、150重量部以下、120重量部以下、又は100重量部以下が挙げられる。
【0032】
本開示の固形医薬組成物における(D)成分の具体的な含有量については、例えば5重量%以上、好ましくは7重量%以上又は8重量%以上、より好ましくは9重量%以上又は10重量%以上、より好ましくは12重量%以上、又は14重量%以上、さらに好ましくは16重量%以上、18重量%以上、20重量%以上、一層好ましくは40重量%以上又は50重量%以上が挙げられる。(D)成分の具体的な含有量は、その上限においても特に限定されないが、例えば90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、又は65重量%以下が挙げられる。
【0033】
(E)タルク
本開示の固形医薬組成物は、(E)成分としてタルクを含有できる。(E)成分をさらに配合することで、本開示の固形医薬組成物の吸湿抑制性を向上できる。
【0034】
本開示の固形医薬組成物において、(E)成分の含有量については特に限定されず、吸湿抑制効果の求められる程度に応じて、適宜設定できる。例えば、(A)成分1重量部当たりの(E)成分の含有量として、例えば3重量部以上が挙げられ、吸湿抑制効果をより高める観点から、好ましくは5重量部以上、より好ましくは7重量部以上、さらに好ましくは8重量部以上、一層好ましくは9重量部以上、より一層好ましくは10重量部以上が挙げられる。(A)成分1重量部当たりの(E)成分の含有量は、その上限においても特に限定されないが、例えば135重量部以下、好ましくは100重量部以下、より好ましくは50重量部以下、20重量部以下、17重量部以下、又は15重量部以下、又は13.5重量部以下が挙げられる。
【0035】
本開示の固形医薬組成物における(E)成分の具体的な含有量については、例えば1重量%以上、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは7重量%以上、一層好ましくは7.5重量%以上が挙げられる。(E)成分の具体的な含有量は、その上限においても特に限定されないが、例えば20重量%以下、15重量%以下、12重量%以下、又は10重量%以下が挙げられる。
【0036】
解熱鎮痛剤
本開示の固形医薬組成物は、吸湿抑制効果を損なわないため、解熱鎮痛剤を含まない。当該解熱鎮痛剤としては特に限定されないが、アセトアミノフェン、ロキソプロフェン又はその塩、イブプロフェン、エテンザミド、アスピリン又はその塩、サリチルアミド、サリチル酸ナトリウム、サリチルアミド、ラクチルフェネチジン、サザピリン、イソプロピルアンチピリン等が挙げられる。
【0037】
その他の成分
本開示の固形医薬組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、前述する(A)成分~(E)成分以外に、必要に応じて、他の薬理成分を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。このような含有の有無を問わない薬理成分の種類については、特に制限されないが、例えば、制酸剤、健胃剤、消化剤、整腸剤、鎮痙剤、粘膜修復剤、消炎鎮痛剤、収れん剤、鎮吐剤、鎮咳剤、去痰剤、消炎酵素剤、鎮静催眠剤、抗ヒスタミン剤、強心利尿剤、抗菌剤、血管収縮剤、血管拡張剤、局所麻酔剤、生薬、生薬エキス末、ビタミン類等が挙げられる。これらの薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの薬理成分の含有量については、使用する薬理成分の種類及び/又は固形医薬組成物の剤型等に応じて適宜設定すればよい。
【0038】
本開示の固形医薬組成物には、所望の剤型に調製するために、必要に応じて、薬学的に許容される他の基剤及び/又は添加剤等を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。このような含有の有無を問わない他の基剤及び添加剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、等張化剤、可塑剤、分散剤、乳化剤、溶解補助剤、湿潤化剤、安定化剤、懸濁化剤、粘着剤、コーティング剤、光沢化剤、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、水溶性高分子、界面活性剤、金属石鹸、低級アルコール類、多価アルコール、pH調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、防腐剤、矯味剤、香料、粉体、増粘剤、色素、キレート剤等が挙げられる。これらの基剤や添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの基剤及び/又は添加剤の含有量については、使用する添加成分の種類及び/又は固形医薬組成物の剤型等に応じて適宜設定すればよい。
【0039】
本開示の固形医薬組成物には、上記の基剤及び添加剤の中でも、吸湿抑制効果をより高める観点から、賦形剤、結合剤、崩壊剤等として用いられるでん粉及び/又は結晶セルロースを含むことが好ましく、でん粉を含むことがより好ましい。本開示の固形医薬組成物がでん粉及び/又は結晶セルロースを含む場合、でん粉及び/又は結晶セルロースの含有量については特に限定されないが、総量で、例えば、10~98重量%、好ましくは15~98重量%、さらに好ましくは20~98重量%、一層好ましくは25~98重量%、20~90重量%、20~60重量%、20~40重量%、又は20~30重量%が挙げられる。
【0040】
製剤形態及び包装
本開示の固形医薬組成物の製剤形態については、経口投与(内服)が可能な固形状であればよい。具体的な製剤形態としては、錠剤(好ましくは素錠が挙げられる。)、トローチ剤(好ましくはコーティングを備えないトローチ剤が挙げられる。)、カプセル剤(好ましくはカプセルのボディーとキャップとが接着又は接合等により一体化されていない通常のハードカプセルに充填されたカプセル剤が挙げられる。)、散剤(好ましくは(A)成分を含む粒子が被覆層を有しないものが挙げられる)、細粒剤(好ましくは(A)成分を含む粒子が被覆層を有しないものが挙げられる)、顆粒剤(ドライシロップを含む。好ましくは(A)成分を含む粒子が被覆層を有しないものが挙げられる)が挙げられる。本開示の固形医薬組成物は吸湿抑制性に優れているため、好適な剤型として、素錠;コーティングを備えないトローチ剤;カプセルのボディーとキャップとが接着又は接合等により一体化されていない通常のハードカプセルに、(A)成分を含む粒子が被覆層を有しない固形医薬組成物が充填されたカプセル剤;(A)成分を含む粒子が被覆層を有しない散剤、細粒剤、又は顆粒剤が挙げられる。
【0041】
本開示の固形医薬組成物を前記製剤形態に調製するには、上記(A)成分及び(B)成分、並びに必要に応じて配合される、(C)成分、(D)成分、(E)成分及び/又はその他の成分を用いて、医薬分野で採用されている通常の製剤化手法に従って製剤化すればよい。
【0042】
本開示の固形医薬組成物の包装については特に限定されないが、PTP包装、ストリップ包装、ブリスター包装、バラ包装等が挙げられる。本開示の固形医薬組成物は吸湿抑制性に優れているため、包装の好適な例として、湿気に暴露される回数が多いバラ包装が挙げられる。
【0043】
さらに、本開示の固形医薬組成物が包装される包装材の中には、乾燥剤が同梱されていてもよいし、同梱されていなくてもよい。好適な形態において、本開示の固形医薬組成物は吸湿抑制性に優れているため、包装材の中に、乾燥剤が同梱されていなくてもよい。
【実施例0044】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
試験例1
表1に示す各成分の粉末10gを、遮光下、40℃75%Rhで2週間保管し、保管後の重量を測定した。(A)~(D)成分は、表2に示す通り吸湿することで重量が増加した。
【0046】
【表1】
【0047】
表2に示す各成分を乳鉢で混合し、散剤の形態の固形医薬組成物を調製した。調製した固形医薬組成物を10gとってシャーレに入れ、遮光下、40℃75%Rhで2週間保管し、保管後の重量(x(g))を測定した。さらに、表1に示される固形医薬組成物の保管後重量と、表2の各固形医薬組成物の混合比率とから理論的に導出される保管後理論重量(y(g))で保管後の重量(x(g))を除した値を、吸湿スコア-1として導出した。結果を表2に示す。吸湿スコア-1が1を下回ると、吸湿抑制効果が得られたことを表し、吸湿スコア-1が小さいほど、吸湿抑制効果が高いことを示す。
【0048】
【表2】
【0049】
表2に示す通り、(A)成分と(B)成分とを共配合することで、吸湿スコア-1が1を下回り、吸湿抑制効果が得られた。
【0050】
試験例2
固形医薬組成物の組成を以下に変更したことを除いて、試験例1と同様にして固形医薬組成物を調製した。試験例1と同様に試験を行ったところ、1を下回る吸湿スコア-1が得られた。
[実施例2]
(A)クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.625重量%
(B)アンブロキソール塩酸塩 3.75 重量%
(C)dl-メチルエフェドリン塩酸塩 6.25 重量%
(D)トラネキサム酸 62.5 重量%
結晶セルロース 残部
合計 100 重量%
【0051】
試験例3
固形医薬組成物の組成を以下に変更したことを除いて、試験例1と同様にして固形医薬組成物を調製した。試験例1と同様に試験を行ったところ、吸湿スコア-1は0.965であった。
[実施例3]
(A)クロルフェニラミンマレイン酸塩 1.6 重量部
(B)アンブロキソール塩酸塩 10 重量部
(C)dl-メチルエフェドリン塩酸塩 16 重量部
(D)トラネキサム酸 160 重量部
【0052】
試験例4
表3及び4に示す各成分を乳鉢で混合し、散剤の形態の固形医薬組成物を調製した。調製した固形医薬組成物を10gとってシャーレに入れ、遮光下、40℃75%Rhで6か月保管した。6か月保管後、吸湿により形成されるだまを構成する固形医薬組成物量(以下において、単に「だまの形成量」と記載する。)の程度を評価した。具体的には、比較例3の保管後のだまの形成量を10とし、参考例6の保管後のだまの形成量を1とする相対量を吸湿スコア-2として導出した。吸湿スコア-2が小さいほど、吸湿性が低いことを示す。結果を表3及び4に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
表1と対比される表3に示されるように、保存期間をより一層長期化すると、(A)成分を含む固形医薬組成物(比較例2)及び(B)成分を含む固形医薬組成物(参考例4)の吸湿性が顕著であった。表1と表3との対比から、(A)成分を含む固形医薬組成物(比較例1、2)は、吸湿の速度こそ(B)成分を含む固形医薬組成物(参考例1、4)の吸湿の速度よりも緩慢であったものの、保存期間をより一層長期化することによる吸湿の程度は、(A)成分を含む固形医薬組成物(比較例2)で各段顕著であった。なお、表1と表3との対比から、(C)成分を含む固形医薬組成物(参考例2、5)及び(D)成分を含む固形医薬組成物(参考例3、6)はいずれも吸湿するものの、保存期間をより一層長期化してもさらに顕著に吸湿が進むことはなく、(D)成分を含む固形医薬組成物(参考例6)に至っては、だまの形成が認められる程度の吸湿性には至らなかった。
【0056】
これに対し、実施例4~8に示されるように、(A)成分を含む固形医薬組成物に(B)成分を追加配合することによって、吸湿性が顕著に抑制された。(B)成分自体も吸湿性であること(参考例4)に鑑みると、実施例4~8で認められる顕著の吸湿性の抑制効果は予想外であった。なお、実施例4~8において、(B)成分の配合量を、(A)成分1重量部当たり4重量部に変更しても吸湿抑制効果は得られたが、その程度は、実施例4~8の方が優れていた。
【0057】
さらに、実施例5~8に示されるように、(A)成分及び(B)成分を含む固形医薬組成物に、(C)成分、(D)成分、及び/又は(E)成分を配合することにより、より一層吸湿性が抑制された。なお、実施例5について、(E)成分の配合量を検討したところ、タルクの配合による吸湿抑制性の向上効果は、(A)成分1重量部に対して(E)成分を3重量部以上配合した場合に認められた。
【0058】
また、比較例3に示される通り、実施例8の組成にアセトアミノフェンを追加配合すると、吸湿抑制が全く不能となり、むしろより吸湿する結果となった。この吸湿抑制能の喪失及び悪化の傾向は、イブプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム、アスピリン等、一般的な解熱鎮痛剤で同様に認められた。
【0059】
また、実施例6、8においてエフェドリン塩酸塩をプソイドエフェドリン塩酸塩に置き換えた場合にも、同様に吸湿抑制向上効果が得られた。
【0060】
なお、比較例3及び実施例8の固形医薬組成物の6か月保管後の外観を、図1に示す。
図1