(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091537
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/136 20060101AFI20240627BHJP
A61P 11/10 20060101ALI20240627BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240627BHJP
A61K 31/195 20060101ALI20240627BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20240627BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240627BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240627BHJP
A61K 31/4402 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A61K31/136
A61P11/10
A61P11/00
A61K31/195
A61K31/137
A61P43/00 121
A61K47/18
A61K31/4402
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023212570
(22)【出願日】2023-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2022207615
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】森 謙一郎
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC15
4C076DD49
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4C076FF46
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
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4C086MA03
4C086MA05
4C086NA03
4C086ZA59
4C086ZA63
4C086ZC75
4C206AA01
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4C206FA01
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4C206FA31
4C206KA01
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4C206MA72
4C206NA03
4C206ZA59
4C206ZA63
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】本発明は、アンブロキソール及び/又はその塩を含む医薬組成物の変色を抑制できる製剤処方を提供することを目的とする。
【解決手段】アンブロキソール及び/又はその塩を含む医薬組成物にトラネキサム酸を配合することによって、変色を抑制できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アンブロキソール及び/又はその塩、並びに(B)トラネキサム酸を含有する、医薬組成物。
【請求項2】
解熱鎮痛剤を含まない、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
さらに(C)プソイドエフェドリン、メチルエフェドリン、及び/又はそれらの塩、並びに/若しくは、(D)クロルフェニラミン及び/又はその塩を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記(A)成分1重量部当たり、前記(B)成分を5重量部以上含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記(A)成分1重量部当たり、前記(C)成分を0.5重量部以上含む、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記(A)成分1重量部当たり、前記(D)成分を0.05重量部以上含む、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記(A)成分の含有量が0.1~10重量%含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
顆粒剤、細粒剤、散剤、トローチ剤、又は錠剤である、請求項1に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンブロキソール及び/又はその塩を含み、変色が抑制された医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アンブロキソール塩酸塩は、気道潤滑型の去痰剤として知られており、素錠、内用液、シロップ、ドライシロップ、コーティング錠等の剤形で販売されている(非特許文献1)。
【0003】
アンブロキソール及びその塩は、特にかぜ症状の治療及び緩和のために広く用いられている。さらに、アンブロキソール及びその塩は、かぜ症状の治療及び緩和に寄与する他の有効成分と共に配合され、家庭に常備できる総合感冒薬としても市販されている。
【0004】
アンブロキソール及びその塩を含む製剤は、他の有効成分と共配合された場合に安定性が低下することが知られており、製剤安定性を向上させる処方が検討されている。
【0005】
例えば、他の有効成分としてイブプロフェン等の解熱鎮痛薬が共配合された場合、経時的に安定性が損なわれ変色が生じるため、当該変色を抑制するために、ポリエチレングリコールと、ジブチルヒドロキシトルエン、ジブチルヒドロキシアニソール、安息香酸またはその塩類、没食子酸プロピル、ヒドロキノン、dl-α-トコフェロール、d-α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム及びレシチン等の還元剤をさらに共配合すること、アスパラギン酸、グルタミン及びタウリン等のアミノ酸又はアスパルテーム等のペプチドを配合すること、並びに、タルクを含有するコーティング液を用いてフィルムコーティングしたイブプロフェン顆粒とアンブロキソール塩酸塩顆粒を別々に調製し、配合すること等が知られている(特許文献1)。
【0006】
また、他の有効成分として、ロキソプロフェン又はその塩が共配合された場合、安定性が損なわれ変色を生じるため、当該変色を抑制するために、カフェイン等のキサンチン誘導体をさらに共配合することが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ムコソルバン錠、ムコソルバン内用液、小児用ムコソルバンシロップ、小児用ムコソルバンDS、ムコソルバンL錠 医薬品インタビューフォーム
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2017-043546号公報
【特許文献2】特開2011-116751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
アンブロキソール及び/又はその塩を含む製剤の安定性向上のための処方は、アンブロキソール及び/又はその塩と解熱鎮痛薬との相互作用に起因して発生する状態を抑制するものである。しかしながら、アンブロキソール及び/又はその塩が、他の成分の共配合にかかわらずそれ自体単独で持つ変色等の不安定性を改善する製剤処方に対しては、十分に検討されていない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、アンブロキソール及び/又はその塩を含む医薬組成物の変色を抑制できる製剤処方を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、鋭意検討を行ったところ、アンブロキソール及び/又はその塩に、トラネキサム酸を配合することで、変色が抑制されることを見出した。
【0012】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)アンブロキソール及び/又はその塩、並びに(B)トラネキサム酸を含有する、医薬組成物。
項2. 解熱鎮痛剤を含まない、項1に記載の医薬組成物。
項3. さらに(C)プソイドエフェドリン、メチルエフェドリン、及び/又はそれらの塩、並びに/若しくは、(D)クロルフェニラミン及び/又はその塩を含む、項1又は2に記載の医薬組成物。
項4. 前記(A)成分1重量部当たり、前記(B)成分を5重量部以上含む、項1~3のいずれかに記載の医薬組成物。
項5. 前記(A)成分1重量部当たり、前記(C)成分を0.5重量部以上含む、項3に又は4記載の医薬組成物。
項6. 前記(A)成分1重量部当たり、前記(D)成分を0.05重量部以上含む、項3~5のいずれかに記載の医薬組成物。
項7. 前記(A)成分の含有量が0.1~10重量%含む、項1~6のいずれかに記載の医薬組成物。
項8. 顆粒剤、細粒剤、散剤、トローチ剤、又は錠剤である、項1~7のいずれかに記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アンブロキソール及び/又はその塩を含む医薬組成物の変色を抑制できる製剤処方が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の医薬組成物は、(A)アンブロキソール及び/又はその塩(以下において、「(A)成分」又は「アンブロキソール類」とも記載する。)、並びに(B)トラネキサム酸(以下において、「(B)成分」とも記載する。)を含有することを特徴とする。本開示の医薬組成物は、さらに、(C)プソイドエフェドリン、メチルエフェドリン、及び/又はそれらの塩(以下において、「(C)成分」又は「エフェドリン類」とも記載する。)、並びに/若しくは、(D)クロルフェニラミン及び/又はその塩(以下において、「(D)成分」又は「クロルフェニラミン類」とも記載する。)を含むことができる。本開示の医薬組成物は、光による変色を抑制できる。また、好ましい実施形態において、本開示の医薬組成物は、吸湿も抑制できる。
【0015】
以下、本開示の医薬組成物について詳述する。本明細書において、2つの数値と「~」とにより示される数値範囲は、当該2つの数値を下限値及び上限値として含むものとする。例えば、2~15重量%との表記は、2重量%以上15重量%以下を意味する。
【0016】
(A)アンブロキソール類
本開示の医薬組成物は、(A)成分としてアンブロキソール(トランス-4-(2-アミノ-3,5-ジブロモベンジルアミノ)-シクロヘキサノール)及び/又はその塩を含有する。アンブロキソール類は、気道潤滑型の去痰剤として公知の成分である。(A)成分は、単独で光に対して変色を呈するが、本開示の医薬組成物は、光に対する変色が抑制されている。
【0017】
アンブロキソールの塩としては、薬学的に許容されるものであれば特に限定されず、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、炭酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。
【0018】
本開示の医薬組成物において、(A)成分として、上記の成分から1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、本開示の医薬組成物における(A)成分として、アンブロキソールの塩が挙げられ、より好ましくはアンブロキソールの無機酸塩が挙げられ、さらに好ましくはアンブロキソールの塩酸塩が挙げられる。
【0019】
本開示の医薬組成物における(A)成分の配合量については特に限定されず、所望の薬効を示す量を適宜選択できるが、例えば0.1~10重量%、好ましくは0.5~10重量%、より好ましくは1~7重量%、一層好ましくは1~6重量%、1.1~5重量%、又は1.2~4重量%、より一層好ましくは2~4重量%、又は3~4重量%が挙げられる。
【0020】
(B)トラネキサム酸
本開示の医薬組成物は、(B)成分としてトラネキサム酸を含有する。トラネキサム酸は、抗出血作用、抗アレルギー作用、抗炎症作用を有することが知られている公知の成分である。本開示の医薬組成物は、(B)成分を配合することで、(A)成分による変色を抑制できる。また、本開示の医薬組成物は、(A)成分と(B)成分とを配合することで、それらの成分をそれぞれ単独で含む場合の吸湿性から予測されるよりも高い耐吸湿性を奏する。
【0021】
本開示の医薬組成物において、(B)成分の含有量については特に限定されず、変色抑制効果、又は、変色抑制効果及び吸湿抑制効果の求められる程度に応じて、適宜設定できる。例えば、(A)成分1重量部当たりの(B)成分の含有量として、例えば5重量部以上が挙げられ、変色抑制効果、又は、変色抑制効果及び吸湿抑制効果をより高める観点から、好ましくは10重量部以上、より好ましくは13重量部以上、さらに好ましくは15重量部以上が挙げられる。(A)成分1重量部当たりの(B)成分の含有量は、その上限においても特に限定されないが、例えば60重量部以下、好ましくは55重量部以下、50重量部以下、又は20重量部以下が挙げられる。
【0022】
本開示の医薬組成物における(B)成分の具体的な含有量については、例えば5重量%以上、好ましくは7重量%以上又は8重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは13重量%以上、一層好ましくは15重量%以上、より一層好ましくは18重量%以上、特に好ましくは19重量%以上、20重量%以上、40重量%以上、又は55重量%以上が挙げられる。(B)成分の具体的な含有量は、その上限においても特に限定されないが、例えば90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、又は65重量%以下が挙げられる。
【0023】
(C)エフェドリン類
本開示の医薬組成物は、(C)成分として、プソイドエフェドリン(1-フェニル-2-メチルアミノプロパノール-1)、メチルエフェドリン(1-フェニル-2-ジメチルアミノプロパノール-1)、及び/又はそれらの塩を含有できる。エフェドリン類は、気管支拡張作用、中枢性の鎮咳作用を有することが知られている公知の化合物である。(C)成分をさらに配合することで、本開示の医薬組成物の変色抑制性を向上できる。また、(C)成分をさらに配合することで、本開示の医薬組成物の吸湿抑制性を向上できる。
【0024】
プソイドエフェドリン及びメチルエフェドリンの塩としては、薬学的に許容されるものであれば特に限定されず、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、炭酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。
【0025】
(C)成分として、上記の成分から1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、本開示の医薬組成物における(C)成分として、メチルエフェドリン及びその塩が挙げられ、より好ましくはメチルエフェドリン塩が挙げられ、さらに好ましくはメチルエフェドリンの無機酸塩が挙げられ、一層好ましくはメチルエフェドリンの塩酸塩が挙げられる。
【0026】
本開示の医薬組成物において、(C)成分の含有量については特に限定されず、変色抑制効果及び/又は吸湿抑制効果の求められる程度に応じて、適宜設定できる。例えば、(A)成分1重量部当たりの(C)成分の含有量として、例えば0.5重量部以上が挙げられ、変色抑制効果及び/又は吸湿抑制効果をより高める観点から、好ましくは1重量部以上、より好ましくは1.3重量部以上、さらに好ましくは1.5重量部以上が挙げられる。(A)成分1重量部当たりの(C)成分の含有量は、その上限においても特に限定されないが、例えば10重量部以下、好ましくは7重量部以下、5重量部以下、又は2重量部以下が挙げられる。
【0027】
本開示の医薬組成物における(C)成分の具体的な含有量については、例えば0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上又は0.8重量%以上、より好ましくは1.0重量%以上、さらに好ましくは1.2重量%以上、一層好ましくは1.5重量%以上、より一層好ましくは1.8重量%以上、1.9重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、又は5重量%以上が挙げられる。(C)成分の具体的な含有量は、その上限においても特に限定されないが、例えば9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、又は6.5重量%以下が挙げられる。
【0028】
(D)クロルフェニラミン類
本開示の医薬組成物は、(D)成分としてクロルフェニラミン(3-(4-クロロフェニル)-N,N-ジメチル-3-ピリジン-2-イル-プロパン-1-アミン)及び/又はその塩を含有できる。クロルフェニラミン類は、抗ヒスタミン剤として公知の化合物である。(D)成分をさらに配合することで、本開示の医薬組成物の変色抑制性を向上できる。また、(D)成分をさらに配合することで、本開示の医薬組成物の吸湿抑制性を向上できる。
【0029】
クロルフェニラミンの塩としては、薬学的に許容されるものであれば特に限定されず、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、炭酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。
【0030】
本開示の医薬組成物において、(D)成分として、上記の成分から1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、本開示の医薬組成物における(D)成分として、クロルフェニラミンの塩が挙げられ、より好ましくはクロルフェニラミンの有機酸塩が挙げられ、さらに好ましくはクロルフェニラミンのマレイン酸塩が挙げられる。
【0031】
本開示の医薬組成物において、(D)成分の含有量については特に限定されず、変色抑制効果及び/又は吸湿抑制効果の求められる程度に応じて、適宜設定できる。例えば、(A)成分1重量部当たりの(D)成分の含有量として、例えば0.05重量部以上が挙げられ、変色抑制効果及び/又は吸湿抑制効果をより高める観点から、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.13重量部以上、さらに好ましくは0.15重量部以上が挙げられる。(A)成分1重量部当たりの(D)成分の含有量は、その上限においても特に限定されないが、例えば1重量部以下、好ましくは0.6重量部以下、0.4重量部以下、0.3重量部以下、又は0.2重量部以下が挙げられる。
【0032】
本開示の医薬組成物における(D)成分の具体的な含有量については、例えば0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上又は0.08重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.12重量%以上、一層好ましくは0.15重量%以上、より一層好ましくは0.18重量%以上、0.19重量%以上、0.2重量部%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上、又は0.5重量%以上が挙げられる。(D)成分の具体的な含有量は、その上限においても特に限定されないが、例えば0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、又は0.65重量%以下が挙げられる。
【0033】
その他の成分
本開示の医薬組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、前述する成分以外に、必要に応じて、他の薬理成分を含んでいてもよい。このような薬理成分の種類については、特に制限されないが、例えば、解熱鎮痛剤、制酸剤、健胃剤、消化剤、整腸剤、鎮痙剤、粘膜修復剤、消炎鎮痛剤、収れん剤、鎮吐剤、鎮咳剤、去痰剤、消炎酵素剤、鎮静催眠剤、抗ヒスタミン剤、強心利尿剤、抗菌剤、血管収縮剤、血管拡張剤、局所麻酔剤、生薬、生薬エキス末、ビタミン類等が挙げられる。これらの薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの薬理成分の含有量については、使用する薬理成分の種類や医薬組成物の剤型等に応じて適宜設定すればよい。
【0034】
本開示の医薬組成物には、変色抑制効果をより一層高める観点から、解熱鎮痛剤を含まないことが好ましい。当該解熱鎮痛剤としては特に限定されないが、アセトアミノフェン、ロキソプロフェン又はその塩、イブプロフェン、エテンザミド、アスピリン又はその塩、サリチルアミド、サリチル酸ナトリウム、サリチルアミド、ラクチルフェネチジン、サザピリン、イソプロピルアンチピリン等が挙げられる。
【0035】
本開示の医薬組成物には、所望の剤型に調製するために、必要に応じて、薬学的に許容される基剤及び/又は添加剤等が含まれていてもよい。このような基剤及び添加剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、等張化剤、可塑剤、分散剤、乳化剤、溶解補助剤、湿潤化剤、安定化剤、懸濁化剤、粘着剤、コーティング剤、光沢化剤、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、水溶性高分子、界面活性剤、金属石鹸、低級アルコール類、多価アルコール、pH調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、防腐剤、矯味剤、香料、粉体、増粘剤、色素、キレート剤等が挙げられる。これらの基剤や添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの基剤及び/又は添加剤の含有量については、使用する添加成分の種類及び/又は医薬組成物の剤型等に応じて適宜設定すればよい。
【0036】
本開示の医薬組成物には、上記の基剤及び添加剤の中でも、賦形剤、結合剤、崩壊剤等として用いられる結晶セルロースを含むことが好ましい。本開示の医薬組成物が結晶セルロースを含む場合、結晶セルロースの含有量については特に限定されないが、例えば、0.5~50重量%、好ましくは5~45重量%、さらに好ましくは10~40重量%、一層好ましくは20~35重量%、25~35重量%、20~29重量%、又は25~29重量%が挙げられる。
【0037】
製剤形態及び包装
本開示の医薬組成物の製剤形態については、経口投与(内服)が可能な固形状製剤であればよい。本開示の医薬組成物の具体的な製剤形態としては、液剤及び固形剤のいずれであってもよいが、好ましくは固形剤が挙げられる。固形剤の具体例としては、錠剤(透光性(好ましくは透明)コーティングを備える錠剤、及び素錠が挙げられる。)、トローチ剤(透光性(好ましくは透明)コーティングを備えるトローチ剤、及びコーティングを備えないトローチ剤が挙げられる。)、カプセル剤(透光性(好ましくは透明)カプセルに充填されたカプセル剤が挙げられる。)、散剤、細粒剤、顆粒剤(ドライシロップを含む)が挙げられる。本開示の医薬組成物は、変色抑制性、又は、変色抑制性及び吸湿抑制性に優れているため、好適な製剤形態としては、透光性(好ましくは透明)コーティングを備える錠剤、素錠、透光性(好ましくは透明)コーティングを備えるトローチ剤、コーティングを備えないトローチ剤、透光性(好ましくは透明)カプセルに充填されたカプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤が挙げられ、より好ましくは、素錠、コーティングを備えないトローチ剤、散剤、細粒剤、顆粒剤が挙げられ、さらに好ましくは、散剤、細粒剤、顆粒剤が挙げられる。
【0038】
本開示の医薬組成物を前記製剤形態に調製するには、上記(A)成分、(B)成分、並びに必要に応じて配合される、(C)成分、(D)成分及び/又はその他の成分を用いて、医薬分野で採用されている通常の製剤化手法に従って製剤化すればよい。
【0039】
本開示の医薬組成物の包装については特に限定されないが、PTP包装、ストリップ包装、ブリスター包装、バラ包装等が挙げられる。本開示の医薬組成物は、変色抑制性、又は、変色抑制性及び吸湿抑制性に優れているため、これらの包装材料は、一部又は全部が、透光性(好ましくは透明)のプラスチックで構成されていることが好ましい。また、本開示の医薬組成物は、変色抑制性、又は、変色抑制性及び吸湿抑制性に優れているため、包装の好適な例として、湿気及び光に暴露される回数が多いバラ包装が挙げられる。
【0040】
さらに、本開示の医薬組成物が包装される包装材の中は、空気が充填されていてもよいし、窒素等の不活性ガスが充填されていてもよい。本開示の医薬組成物は、変色抑制性、又は、変色抑制性及び吸湿抑制性に優れているため、好適な形態において、包装材の中は、空気が充填されていてよい。本開示の医薬組成物が包装される包装材の中には、乾燥剤が同梱されていてもよい。好適な形態において、本開示の医薬組成物は吸湿抑制性に優れているため、包装材の中に、乾燥剤が同梱されていなくてもよい。
【実施例0041】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
試験例1
表1に示す成分を乳鉢で混合し、散剤の形態の医薬組成物を調製した。調製された医薬組成物10gを、透明のシャーレ(不活性ガスの充てんなし)に入れ、ガラス蓋をし、直射日光が当たる場所に2週間晒した。
【0043】
比較例1の医薬組成物の変色の程度を10点、変色が無い場合を1点とするビジュアル・アナログ・スケール(VAS)により、4人のパネリストが、各比較例及び各実施例の変色の程度を採点し、それら評点の平均値を「変色スコア」として導出した。変色スコアが小さいほど、変色抑制性が高いことを示す。なお、評点の標準偏差も併せて導出した。結果を表1に示す。
【表1】
【0044】
表1に示す通り、(A)成分による変色(比較例1)は、(B)成分を配合することによって抑制された(実施例1~6)。また、変色抑制効果は、解熱鎮痛剤を含まない場合(実施例1,2)において顕著であり、解熱鎮痛剤を含まず、且つ(C)成分及び(D)成分をさらに含む場合(実施例2)において各段顕著であった。これら実施例1,2において認められる変色抑制効果は、(B)成分、並びに(C)成分及び(D)成分もそれら自体変色を呈するにもかかわらず、これらの成分が(A)成分と共配合されることで優れた変色抑制効果が得られたことは予想外であった。
【0045】
試験例2
表2に示す各成分の粉末10gを、遮光下、40℃75%Rhで2週間保管し、保管後の重量を測定した。(A)~(D)成分は、表2に示す通り吸湿することで重量が増加した。
【0046】
【0047】
表3に示す各成分を乳鉢で混合し、散剤の形態の医薬組成物を調製した。調製した医薬組成物を10gとってシャーレに入れ、遮光下、40℃75%Rhで2週間保管し、保管後の重量(x(g))を測定した。さらに、表2に示される参考例1~4の医薬組成物の保管後重量と、表3の各医薬組成物の混合比率とから理論的に導出される保管後理論重量(y(g))で保管後の重量(x(g))を除した値を、吸湿スコアとして導出した。結果を表3に示す。吸湿スコアが1を下回ると、吸湿抑制効果が得られたことを表し、吸湿スコアが小さいほど、吸湿抑制効果が高いことを示す。
【0048】
【0049】
表3に示す通り、(A)成分と(B)成分とを共配合した場合(実施例7)、吸湿スコアが1を下回り、吸湿抑制効果が得られた。また、(A)成分と(C)成分とを共配合した場合(参考例5)及び(A)成分と(D)成分を共配合した場合(参考例6)にも、吸湿抑制効果が得られ、その程度は、(A)成分と(B)成分とを共配合した場合(実施例7)よりも優れていた。
【0050】
試験例3
試験例1の実施例2について、試験例2と同様に試験を行ったところ、1を下回る吸湿スコアが得られた。また、(A)アンブロキソール塩酸塩10重量部、(B)トラネキサム酸160重量部、(C)dl-メチルエフェドリン塩酸塩16重量部、及び(D)クロルフェニラミンマレイン酸1.6重量部からなる散剤形態の医薬組成物(実施例8)を調製し、試験例2と同様に試験を行ったところ、吸湿スコアは0.965であった。実施例8は(B)成分よりも共配合による吸湿抑制効果が高い(C)成分及び(D)成分を含むため、実施例7よりも小さい吸湿スコアが得られた。