(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091617
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】半導体製造装置の管理システム及びその方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20240627BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20240627BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20240627BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20240627BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L21/02 Z
C23C16/42
C23C16/44 B
G05B23/02 T
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024033681
(22)【出願日】2024-03-06
(62)【分割の表示】P 2022205022の分割
【原出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】小林 慶亮
(72)【発明者】
【氏名】毛利 友紀
(72)【発明者】
【氏名】小西 くみこ
(72)【発明者】
【氏名】奥山 裕
(72)【発明者】
【氏名】大内 潔
(72)【発明者】
【氏名】大野 俊之
(72)【発明者】
【氏名】島 明生
【テーマコード(参考)】
3C223
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
3C223AA13
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4K030AA06
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5F045AA06
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5F045GB11
5F045GB16
5F045GB17
5F045GH03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】半導体製造装置の経時変化に応じたレシピを決定する半導体製造装置の管理システム及びその方法を提供する。
【解決手段】SiC基板上にエピタキシャル成長でSiC膜を成膜する半導体製造装置における成膜処理のレシピを決定する半導体製造管理システムであって、サセプタの上の副生成物の厚さをモニタする入力デバイスを有し、1以上の記憶装置が、半導体製造装置(例えばチャンバやSiCエピタキシャル成長装置)の過去の成膜処理の履歴情報を格納し、1以上のプロセッサは、半導体製造装置による次の成膜処理における、生成膜の特性の目標値を取得し、履歴情報及び目標値に基づき、推定モデルを含む1以上の関数を使用して半導体製造装置の次の成膜処理のレシピを決定し、経時変化関数の値と規定値との比較結果に基づき、半導体製造装置のメンテナンスの要否を判定する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiC基板上にエピタキシャル成長でSiC膜を成膜する半導体製造装置における成膜処理のレシピを決定する、管理システムであって、
1以上の記憶装置と、
1以上のプロセッサと、を含み、
前記半導体製造装置は、サセプタの上の副生成物の厚さをモニタする手段を有し、
前記1以上の記憶装置は、前記半導体製造装置の過去の成膜処理の履歴情報を格納し、
前記1以上のプロセッサは、前記半導体製造装置による次の成膜処理における、生成膜の特性の目標値を取得し、
前記履歴情報及び前記目標値に基づき、推定モデルを含む1以上の関数を使用して前記半導体製造装置の前記次の成膜処理のレシピを決定し、
前記1以上の関数は、前記半導体製造装置の経時変化を示す経時変化関数を含み、
前記経時変化関数は、前記履歴情報に基づき構成され、
前記1以上のプロセッサは、前記経時変化関数の値と規定値との比較結果に基づき、前記半導体製造装置のメンテナンスの要否を判定する、管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の管理システムであって、
前記推定モデルの入力は、前記半導体製造装置の前記次の成膜処理のレシピ候補を含み、
前記推定モデルの出力は、前記生成膜の特性の推定値を含む、管理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の管理システムであって、
前記メンテナンスを、前記成膜処理のレシピの前に実行すべきメンテナンスとして決定する、管理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の管理システムであって、
前記履歴情報は、前記半導体製造装置による過去の成膜処理における前記SiC膜の膜厚の累積値を含む、管理システム。
【請求項5】
請求項1に記載の管理システムであって、
前記履歴情報は、前記半導体製造装置による過去のメンテナンスにおける前記副生成物の厚さの累積値を含む、管理システム。
【請求項6】
請求項2に記載の管理システムであって、
前記履歴情報は、前記半導体製造装置のレシピの履歴及び前記半導体製造装置に対して実行されたメンテナンスについての情報を含み、
前記推定モデルの前記入力は、前記次の成膜処理の前に前記半導体製造装置に対して実行すべきメンテナンスを含み、
前記1以上のプロセッサは、前記次の成膜処理の前に実行すべきメンテナンスが存在する場合、前記次の成膜処理の前に実行すべきメンテナンスを示すメッセージを出力デバイスに出力する、管理システム。
【請求項7】
請求項6に記載の管理システムであって、
前記1以上のプロセッサは、前記推定モデルの出力が前記目標値から許容範囲内にあるレシピ候補を、前記次の成膜処理のレシピと決定する、管理システム。
【請求項8】
請求項2に記載の管理システムであって、
前記推定モデルの前記入力は、さらに、前記次の成膜処理の対象物である基板の情報をさらに含む、管理システム。
【請求項9】
請求項2に記載の管理システムであって、
前記1以上のプロセッサは、前記経時変化関数により前記目標値及び/又は前記推定値を補正した後に前記目標値と前記推定値との比較を行い、前記比較の結果に基づいて前記レシピを決定する、管理システム。
【請求項10】
管理システムが、SiC基板上にエピタキシャル成長でSiC膜を成膜する半導体製造装置における成膜処理のレシピを決定する方法であって、
サセプタの上の副生成物の厚さをモニタし、
前記管理システムは、前記半導体製造装置の過去の成膜処理の履歴情報を格納し、
前記方法は、
前記管理システムが、前記半導体製造装置による次の成膜処理における、生成膜の特性の目標値を取得し、
前記管理システムが、前記履歴情報及び前記目標値に基づき、推定モデルを含む1以上の関数を使用して前記半導体製造装置の前記次の成膜処理のレシピを決定し、
前記1以上の関数は、前記半導体製造装置の経時変化を示す経時変化関数を含み、
前記経時変化関数は、前記履歴情報に基づき構成され、
前記方法は、前記管理システムが、前記経時変化関数の値と規定値との比較結果に基づき、前記半導体製造装置のメンテナンスの要否を判定する、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記推定モデルの入力は、前記半導体製造装置の前記次の成膜処理のレシピ候補を含み、
前記推定モデルの出力は、前記生成膜の特性の推定値を含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、
前記履歴情報は、前記半導体製造装置のレシピの履歴及び前記半導体製造装置に対して実行されたメンテナンスについての情報を含み、
前記推定モデルの前記入力は、前記次の成膜処理の前に前記半導体製造装置に対して実行すべきメンテナンスを含み、
前記方法は、前記管理システムが、前記次の成膜処理の前に実行すべきメンテナンスが存在する場合、前記次の成膜処理の前に実行すべきメンテナンスを示すメッセージを出力デバイスに出力する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体製造装置の管理システム及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体パワー素子には高耐圧のほか、低オン抵抗、低スイッチング損失が要求されるが、現在の主流であるケイ素(Si)パワー素子は理論的な性能限界に近づいている。炭化ケイ素(SiC)は、Siと比較して絶縁破壊電界強度が約1桁大きい。そのため、耐圧を保持するドリフト層を約1/10に薄く、不純物濃度を約100倍高くすることで、素子抵抗を理論上3桁以上低減できる。また、SiCは、Siに対してバンドギャップが約3倍大きいことから高温動作も可能であり、SiC半導体素子は、Si半導体素子を超える性能が期待され、SiC向けの半導体製造装置の開発が進められている。
【0003】
SiC向けの半導体製造装置の一つにSiCエピタキシャル成長装置がある。SiCのエピタキシャル成長はオフカットされたSiC基板上にSiCを成膜する技術である。一般にSiC基板は基板のドナー濃度が高いため、使用耐圧用途別にドナー濃度や膜厚を調整する必要があり、SiC素子作製のためにエピタキシャル成長を行っている。エピタキシャル成長技術への要求は、例えば、基板の大口径化に伴うエピタキシャル成長の大口径化、ドナー濃度の均一性の確保、エピ膜厚均一性の確保、高速成長、低結晶欠陥化、等多岐にわたる。
【0004】
これらの要求を全て精度よく満たすために、多数の制御パラメータ(入力パラメータ)を備えた装置が必要となる。それに伴い、半導体製造装置の性能をフルに引き出すためには、数種から数十種にも及ぶ制御パラメータを決定することが必要となる。従って、装置の性能が向上するにつれ、装置構造は複雑化し、所望の成膜結果が得られる制御パラメータの組み合わせを突き止めることが、ますます困難になっている。これは、デバイス開発の長期化を引き起こし、開発コストが増大する原因となる。
【0005】
更にSiCエピタキシャル成長装置においては、SiCエピ成長時、SiC基板以外の部材(内壁やサセプタ)に材料ガスに由来した副生成物が強固に付着する。この副生成物はエピ成長中に高温に曝され、蒸発し、エピ結果の経時変化を生む原因となる。他のCVD装置においてはガスクリーニング等の副生成物の除去を容易に行えるが、SiCにおいては、有効なガスクリーニング手法が現状確立されていない。このため、副生成物の除去のために、頻繁にチャンバを解放するようなメンテナンスが求められ、開発コスト増大の原因となる。
【0006】
従って、開発コストを低減するために、半自動的に経時変化を考慮して最適な制御パラメータを探索し、装置の性能を容易に引き出せる、更にはメンテナンスのタイミングを通知する機能や装置が求められる。経時変化を考慮してプロセスレシピを改変する方法として特許文献1や特許文献2の方法がある。
【0007】
経時変化による成膜結果のズレを補正する手段を開示する文献として、例えば特許文献1が挙げられる。特許文献1は、膜厚ズレを補正する方法を開示する。具体的には、以下の事項を開示する、「制御装置は、原子層堆積による膜を基板に成膜する基板処理装置の動作を制御する制御装置であって、前記膜の種類に応じた成膜条件を記憶するレシピ記憶部と、前記成膜条件が前記膜の特性に与える影響を表すプロセスモデルを記憶するモデル記憶部と、成膜時の前記成膜条件の実測値を記憶するログ記憶部と、前記レシピ記憶部に記憶された前記成膜条件により成膜された前記膜の特性の測定結果と、前記モデル記憶部に記憶された前記プロセスモデルと、前記ログ記憶部に記憶された前記成膜条件の実測値と、に基づいて、目標とする前記膜の特性を満たす成膜条件を算出する制御部と、を有する」(要約)。
【0008】
装置やチャンバ間の組み付けや寸法バラつきに起因した差、即ち機差、及び経時変化を補正する手段を開示する文献として、例えば特許文献2が挙げられる。特許文献2は、以下の事項を開示する。「複数の半導体製造装置とこれら半導体製造装置をそれぞれ制御する制御装置を備え、供給される1つのレシピに従って複数の半導体製造装置を制御して、共通の半導体装置を製造する半導体製造装置において、前記レシピが使用された装置の前記レシピ使用時における性能と、前記複数の半導体製造装置のうち、これから使用する予定の半導体製造装置を使用することにより得られる装置性能との差データをもとに予め記憶されたレシピ補正用データを参照してレシピ補正量を算出し、算出したレシピ補正量をもとに前記供給されたレシピを補正して、前記これから使用する予定の半導体製造装置に供給する。」(要約)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2017-174983号公報
【特許文献2】特開2013-135044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1の方法では、レシピを修正するきっかけは許容値を超える成膜であり、ズレ量によっては次工程に進めない。即ち失敗のリスクを伴うこととなり、開発コストが増大する原因となり得る。また、補正したい項目を増やす場合には、新たに装置の入力パラメータ数に対応した相関モデルを作成する必要があり、相関モデルの作成に多くの工数を必要とする。
【0011】
特許文献2の方法においても、機差及び経時変化の補正の手段として、予め各入力パラメータに対する出力結果の相関データを予め準備しておく必要がある。補正したい項目を増やす場合には、新たに装置の入力パラメータ数に対応した相関モデルを作成する必要があり、相関モデルの作成に多くの工数を必要とする。また、補正のために、予めメンテナンス後に性能履歴データ構築用のレシピによる処理を行う必要があり、開発コスト増大の原因となりうる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下の通りである。
本発明の一態様は、半導体製造装置のレシピを決定する、管理システムであって、1以上の記憶装置と、1以上のプロセッサと、を含み、前記1以上の記憶装置は、前記半導体製造装置の過去の処理の履歴情報を格納し、前記1以上のプロセッサは、前記半導体製造装置による次の処理における、特定対象の目標値を取得し、前記履歴情報及び前記目標値に基づき、推定モデルを含む1以上の関数を使用して前記半導体製造装置の前記次の処理のレシピを決定し、前記推定モデルの入力は前記半導体製造装置の前記次の処理のレシピ候補を含み、前記推定モデルの出力は前記特定対象の推定値を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、半導体製造装置の経時変化に応じたレシピを決定できる。
【0014】
前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態1において、比較例によるN回目の成膜処理の膜厚の推定を示す。
【
図2】実施形態1において、N回目の成膜処理の膜厚の推定を示す。
【
図3】実施形態1において、N回目に出力がXとなる入力を予測した後の推定モデルの構築に用いる訓練データの例を示す。
【
図4】実施形態1において、訓練データにおける処理順と出力(膜厚)との関係を示す。
【
図5】実施形態1において、訓練データにおける処理順と入力パラメータの一つ(ガス流量)との関係を示す。
【
図6】実施形態1において、推定モデルを使用して適切な入力(レシピ)を推定する方法を模式的に示す。
【
図7】実施形態1において、推定モデルの入力値と出力値の組み合わせが、処理毎に変化し得ることを示す。
【
図8】実施形態1において、半導体製造管理システムの構成例を模式的に示す。
【
図9】実施形態1において、半導体製造管理システムの論理構成例を模式的に示す。
【
図10】実施形態1において、半導体製造管理システムの他の論理構成例を模式的に示す。
【
図11】実施形態1において、訓練データデータベースに格納されている、推定モデルを更新するための訓練データの例を示す。
【
図12】実施形態1において、次回成膜処理の目標値の例を示す。
【
図13】実施形態1において、レシピ探索部が決定した最適入力値(レシピ)の例を示す。
【
図14】実施形態1において、半導体製造管理システムの処理を説明するための論理構成図である。
【
図15】実施形態1において、半導体製造管理システムが実行する処理のフローチャートを示す。
【
図16】実施形態1において、クラスタ装置の構成例を示す。
【
図17】実施形態1において、SiCエピクラスタ装置の構成例を示す。
【
図18A】実施形態2において、推定モデルによる出力の経時変化の例を示すグラフである。
【
図18B】実施形態2において、推定モデルによる出力の経時変化の例を示すグラフである。
【
図18C】実施形態2において、推定モデルによる出力の経時変化の例を示すグラフである。
【
図19】実施形態2において、訓練データの概念図である。
【
図20】実施形態2において、訓練データのより具体的な例を示す。
【
図21】実施形態2において、次回成膜処理の目標値の例を示す。
【
図22】実施形態2において、レシピ探索部が決定した最適入力値(レシピ)の例を示す。
【
図23】実施形態2において、本実施形態の半導体製造管理システムの処理を説明するための論理構成図である。
【
図24】実施形態2において、半導体製造管理システムが実行する処理のフローチャートを示す。
【
図25】実施形態3において、半導体製造管理システムが実行する処理のフローチャートを示す。
【
図26】実施形態3において、レシピ探索機能設定ウィンドウの例を示す。
【
図27】実施形態3において、目標値設定入力ウィンドウの例を示す。
【
図28】実施形態3において、基板情報入力ウィンドウの例を示す。
【
図29】実施形態3において、評価結果入力ウィンドウの例を示す。
【
図30】実施形態3において、最適レシピ出力ウィンドウの例を示す。
【
図31】実施形態3において、メンテナンス通知メッセージボックスの例を示す。
【
図32】実施形態3において、メンテナンス評価結果出力ウィンドウの例を示す。
【
図33】実施形態3において、履歴情報出力ウィンドウの例を示す。
【
図34】実施形態4において、経時変化に影響すると考えられる因子を含む訓練データの入力データの例を示す。
【
図35】実施形態5において、経時変化に影響すると考えられる因子を含む訓練データの入力データの例を示す。
【
図36】実施形態6において、関数g_a(t)のグラフの例を示す。
【
図37】実施形態6において、レシピaの経時変化関数のグラフの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明などの関係にある。
【0017】
また、以下の実施形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。さらに、以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップなどを含む)は、特に明示した場合及び原理的に明らかに必須であると考えられる場合などを除き、必ずしも必須のものではない。
<概要>
【0018】
本実施形態は、半導体製造装置の経時変化を考慮した適切なレシピの導出を説明する。
半導体製造管理システムは、半導体製造の過去の処理の履歴情報から、チャンバの経時変化を自律的に推定し、装置状況に合った適切レシピ(半導体装置の処理条件)を導出する。
【0019】
本実施形態は、経時変化を処理履歴情報から推定するため、経時変化を確認するための成膜が不要であり、工数を低減できる。また、本実施形態は、処理履歴情報に基づき機械学習モデルを構成することで、レシピを構成するパラメータ毎の相関データの準備が不要となる。更には、本実施形態は、経時変化を考慮した適切なレシピを導出できるため、メンテナンス回数を低減できる。
【0020】
上述のように、本実施形態の半導体製造管理システムは、機械学習モデル(推定モデル)によって、次回の処理の適切なレシピを決定する。推定モデルの入力はレシピを含み、出力は半導体製造装置による処理の結果得られる値の推定値(特定対象の推定値)を含む。
【0021】
以下において、成膜処理の例を説明する。成膜処理の例は、例えば、SiやSiCのエピタキシャル成膜である。成膜処理(推定モデル)における入力はレシピを含み、その出力は生成される膜の特性の推定値を含む。膜の特性は、例えば、膜厚又は不純物の濃度プロファイル等を含む。以下に説明する例おいて、膜厚を出力とする。なお、本実施形態の特徴は、成膜処理以外の半導体製造処理に適用できる。
【0022】
<実施形態1>
説明の簡単化のため、繰り返し実行される成膜処理のレシピが同一とする例を説明する。
図1は、比較例によるN回目の成膜処理の膜厚の推定を示す。比較例の推定モデルは、処理履歴情報を参照することなく、レシピから膜厚を推定する。つまり、推定モデルの入力は各回の成膜処理のレシピのみである。成膜装置の経時変化が存在する場合、同一レシピA(入力A)を用いても膜厚(出力)が変動する。したがって、比較例の推定モデルは、N回目の処理に拠る膜厚を正確に推定することができない。つまり、比較例は、目標A(膜厚A)となる入力Aを推定することができない。
【0023】
図2は、本実施形態によるN回目の成膜処理の膜厚の推定を示す。まず、処理履歴情報を訓練データに加え、時系列解析に適した機械学習(例えば、RNN(Recurrent Neural Network)やLSTM(Long-Short Term Memory)等)を用いて、推定モデルを構成する。さらに、最適解探索手法を用いて、推定モデルがN回目の処理の目標Aに近い値を出力する、入力(入力A)を予測する。ここで処理履歴情報は、例えば、処理枚数や処理回数等である。
【0024】
次に経時変化がある状態で出力(膜厚)が一定となる例を考える。経時変化の影響により、一定の出力(膜厚)を得るための入力(レシピ)が変化する。経時変化による出力の変動量が入力の関数と考えるならば、処理履歴情報として処理枚数や処理回数を用いても、精度の良い予測は出来ないと考えられる。
【0025】
そこで、処理履歴情報としてレシピ履歴を使用することで、経時変化の特徴量を自律的に学習することが可能となる。
図3は、N回目に出力がXとなる入力を予測した後の推定モデルの構築に用いる訓練データ31の例を示す。
図4は、訓練データ31における処理順と出力(膜厚)との関係を示し、
図5は、訓練データ31における処理順と入力パラメータの一つ(ガス流量)との関係を示す。
【0026】
N回目に出力がXとなる入力を予測するための推定モデルの構築に用いる訓練データは、
図3に示す訓練データ31からN回目のレコードを除去したデータである。訓練データ31は、推定モデルの入力である半導体製造におけるレシピ、出力である膜厚や濃度、それぞれの面内分布等やレシピ記録情報を示す。各レコードのレシピ履歴情報は、(チャンバメンテナンス後の)過去の全ての処理におけるレシピの時系列を示す。なお、過去の全ての処理はチャンバメンテナンス後から全ての処理としてもよい。最初のレコード(表のNo.1)のレシピ履歴情報「-」は、そのレコードの処理の前に、履歴として示す処理(レシピ)が存在しないことを示す。
【0027】
図6は、推定モデルを使用して適切な入力(レシピ)を推定する方法を模式的に示す。推定モデル23は、入力値41に対して、出力値42を出力する。入力値41及び出力値42は、例えば、ベクトルで表わされる。本方法は、半導体製造装置における特定対象の目標値(単に目標値とも呼ぶ)35と出力値(推定値)42との誤差が許容範囲内となる、入力値41を探索する。
【0028】
当該入力値41は、次の処理の半導体製造装置に対する入力値(レシピ候補)を含む。入力値41におけるレシピ候補を変化させることで、許容範囲内の出力値42を得るレシピ(入力値41)を探索する。当該方法は、さらに、レシピ履歴情報と共に、当該入力値41を訓練データ31に追加する。本方法は、さらに、更新された訓練データ31を使用して、推定モデル23を更新する。
【0029】
実際の半導体製造において、毎回同じ目標を設定するとは限らない。したがって、
図7に示すように、推定モデルの入力値と出力値の組み合わせは、処理毎に変化し得る。処理履歴情報としてレシピ履歴情報を適用することで、経時変化に伴う特徴量を自律的に捉え、経時変化も含めた精度良い推定モデルが構築可能となる。
【0030】
以下において、本実施形態におけるより具体的な構成例を説明する。
図8は、半導体製造管理システムの構成例を模式的に示す。
図8の例において、半導体製造管理システム100は、一つの計算機で構成されている。半導体製造管理システム100は、プロセッサ110、メモリ120、補助記憶装置130、及びネットワーク(NW)インタフェース140、I/Oインタフェース145、入力デバイス151、及び出力デバイス152を含む。上記構成要素は、バスによって互いに接続されている。メモリ120、補助記憶装置130又はこれらの組み合わせは記憶装置である。
【0031】
メモリ120は、例えば半導体メモリから構成され、主にプログラムやデータを一時的に保持するために利用される。メモリ120が格納しているプログラムは、不図示のオペレーティングシステムに加え、統合管理プログラム121、装置制御プログラム122、推定モデルプログラム123、レシピ探索プログラム124、及び分析評価プログラム125を含む。
【0032】
統合管理プログラム121は、他のプログラムを管理し、それら間の通信を媒介する。装置制御プログラム122は、半導体製造装置(例えばチャンバ)を制御する。推定モデルプログラム123は、半導体製造のレシピを入力として、半導体製造における目標対象(例えば、成膜における膜の特性)の推定値を出力するモデルであり、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、カーネル等の任意の適切な手法のモデルが使用される。レシピ探索プログラム124は、半導体製造における目標対象の目標値を実現するために適切なレシピを、推定モデルプログラム123によって探索する。分析評価プログラム125は、半導体製造における、目標対象の実測値を分析及び評価する。
【0033】
プロセッサ110は、メモリ120に格納されているプログラムに従って、様々な処理を実行する。プロセッサ110がプログラムに従って動作することで、様々な機能部が実現される。例えば、プロセッサ110は、上記プログラムそれぞれに従って、統合管理部、装置制御部、推定モデル、レシピ探索部、及び分析評価部として機能する。
【0034】
補助記憶装置130は、訓練データデータベース131を格納している。訓練データデータベース131は、推定モデルを訓練するためのデータを格納している。補助記憶装置130は、例えばハードディスクドライブやソリッドステートドライブなどの大容量の記憶装置から構成され、プログラムやデータを長期間保持するために利用される。
【0035】
説明の便宜上、プログラム121~125がメモリ120に格納され、訓練データデータベース131が補助記憶装置130に格納されているが、半導体製造管理システム100のデータの格納場所は限定されない。例えば、補助記憶装置130に格納されたプログラム及びデータが起動時又は必要時にメモリ120にロードされ、プログラムをプロセッサ110が実行することにより、半導体製造管理システム100の各種処理が実行される。したがって、以下において機能部より実行される処理は、プログラムに従った、プロセッサ110又は半導体製造管理システム100による処理である。
【0036】
ネットワークインタフェース140は、ネットワークとの接続のためのインタフェースである。半導体製造管理システム100は、ネットワークインタフェース140を介して、システム内の他の装置又はシステムと関連する装置と通信を行う。入力デバイス151は、ユーザが指示や情報などを入力するためのハードウェアデバイスであり、例えば、キーボード及びポインティングデバイスを含む。出力デバイス152は、入出力用の各種画像を示すハードウェアデバイスであり、例えば表示デバイスである。
【0037】
半導体製造管理システム100は1以上のプロセッサ及び1以上の計算装置を含む。各プロセッサは、単一又は複数の演算ユニット又は処理コアを含むことができる。プロセッサは、例えば、中央処理装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、ステートマシン、ロジック回路、グラフィック処理装置、チップオンシステム、及び/又は制御指示に基づき信号を操作する任意の装置として実装できる。
【0038】
半導体製造管理システム100の機能は複数の計算機を含む計算機システムによる分散処理により実装されてもよい。複数の計算機は、互いにネットワークを介して通信することで、協調して処理を実行する。
図9及び10は、半導体製造管理システムの他の論理構成例を模式的に示す。
【0039】
図9の例において、統合管理部21、装置制御部22、推定モデル23、レシピ探索部24、分析評価部25は、ネットワーク(NW)200を介して、互いに通信を行う。例えば、統合管理部21、装置制御部22、推定モデル23、レシピ探索部24、分析評価部25は、それぞれ、異なる計算機に実装されたプログラムにより実現される。複数の計算機による分散処理により、迅速な処理が実現される。
【0040】
図10の例において、統合管理部21、装置制御部22及び分析評価部25は、一つの計算機に実装されている。推定モデル23及びレシピ探索部24は、クラウド上に実装されている。後述するように、レシピ探索部24による処理が最も負荷が高いため、クラウド上にレシピ探索部24を実装することで、迅速な処理が実現される。また、レシピ探索部24を、複数の半導体製造管理システムの間で共有させることができる。
【0041】
図11は、訓練データデータベース131に格納されている、推定モデル23を更新するための訓練データ31の例を示す。訓練データ31は、推定モデル23に入力される入力データ311、及び、推定モデル23からの出力の目標データである、出力データ312を含む。
【0042】
図11の例において、入力データ311の各レコードは、推定モデル23の訓練において、推定モデル23に入力される、一回の成膜処理のための入力値を示す。入力値は、成膜のレシピを構成する複数の変数値(可変パラメータ値)で構成されている。
図11の例において、入力値は、処理時間、処理温度、処理圧力、三つの異なる種類のガスのガス流量、及びキャリアガス流量で構成され、ベクトルで表わされる。各入力値は、実際に行われた成膜におけるレシピである。
【0043】
図11は、三つの異なる種類のガスとして、SiH
4 、C
3 H
8 、N
2 を例示するが、Siを含む他の原料ガス、Cを含む他の原料ガス、及びドーパント(不純物)を含む他のガスを使用することができる。Siを含む他の原料ガスの他の例は、SiH
4 、SiClH
3 である。キャリアガスは、例えばH
2 である。これらガスの他、入力値は、アシストガス(例えばHCl)を含んでもよい。
【0044】
出力データ312の各レコードは、推定モデル23の訓練において、一回の成膜処理のために推定モデル23から出力される出力値に対する、目標値を示す。出力値は、成膜された膜の特性を示す複数の変数値で構成され、ベクトルで表わされる。
図11の例において、出力値は、膜厚、不純物濃度、及び結晶欠陥密度で構成される。各出力値は、実際に行われた成膜処理の結果の実測値である。
【0045】
入力データ311と出力データ312の同一処理番号のレコードが対応付けられる。
図11の例において、履歴情報は明示されていない。各レコードのレシピ履歴情報は、過去の処理(レコード)のレシピを、処理順序で並べたものである。
【0046】
図12は、次回成膜処理の目標値35の例を示す。目標値35は、次回処理の目標値を示す。本例においては、次回成膜処理によって得られる膜の特性の目標値を示す。目標値35の要素は、推定モデル23の出力値の要素と同様である。レシピ探索部24は、目標値35に近い推定モデル23の出力値が得られる入力値を探索する。
【0047】
図13は、レシピ探索部24が決定した最適入力値(レシピ)36の例を示す。レシピ探索部24は、推定モデル23に入力値を順次入力し、出力値と目標値35との誤差が許容範囲内にある入力値を、最適入力値(レシピ)36として探索する。
【0048】
図14及び
図15を参照して、半導体製造管理システム100の処理を説明する。
図14は、半導体製造管理システム100の処理を説明するための論理構成図である。レシピ探索部24は、モデル構成部241、レシピ推定部242及び収束判定部243を含む。ユーザは、次回の処理の最適レシピを取得するため、入力デバイス151からの入力データ51に、目標値及び誤差許容範囲を含める。実際の処理により得られた処理対象物の分析をユーザが行う場合、ユーザは、さらに、その分析評価結果を、入力データ51として、入力デバイス151から入力する。成膜処理の例において、分析評価結果は、
図11を参照して説明した訓練データ31の出力データである。分析評価結果は、訓練データデータベース131に格納される。
【0049】
半導体製造管理システム100は、出力デバイス152からの出力データ52として、次回処理のための最適レシピを出力する。さらに、実際の処理により得られた処理対象物の分析を半導体製造管理システム100が行う場合、さらに、その分析評価結果を、出力データ52として、出力デバイス152から出力する。
【0050】
図15は、半導体製造管理システム100が実行する処理のフローチャートを示す。まず、統合管理部21は、入力デバイス151から、目標値と誤差許容範囲を入力データ51として取得する(S101)。統合管理部21は、目標値と誤差許容範囲をレシピ推定部242に渡す。
【0051】
レシピ推定部242は、推定モデル23を用いて、目標値に近い値を実現するレシピを導出し、処理結果を推定する(S102)。例えば、レシピ推定部242は、ランダムサーチ法や焼きなまし法を用いて、目標値に最も近いレシピを含む入力値を決定する。当該入力値に対する推定モデル23の出力値が、推定された処理結果である。
【0052】
入力値は、今回の処理のレシピ及び過去のレシピ履歴を含む。レシピ推定部242は、レシピ履歴が共通で、今回の処理のレシピが異なる入力値において、出力値が許容範囲内となる入力値を探索する。レシピの各パラメータ値は、半導体製造装置に固有の制約(上下限値)を有する。候補レシピは、当該制約の範囲内から選択される。例えば、処理温度の上下限値や圧力の上下限値である。その他に目標とする成膜が明らかに成立しない条件を下限値としても良い。例えば処理温度をSiCのエピタキシャル成長が生じる温度、例えば1000℃以上にする等である。
【0053】
次に、収束判定部243は、推定された処理結果をレシピ推定部242から取得し、推定された処理結果と目標値との誤差が、ユーザにより指定された誤差許容範囲内であるか判定する(S103)。推定された処理結果が目標値から誤差許容範囲内にない場合(S103:NO)、収束判定部243は、統合管理部21を介して、出力デバイス152において、ユーザに目標値と誤差許容範囲の再入力を促す。フローはステップS101に戻る。なお、ユーザは最適レシピが許容範囲を満たせなくても処理を実施できる。この点は他の実施形態において同様である。
【0054】
推定された処理結果が目標値から誤差許容範囲内にある場合(S103:YES)、装置制御部22は、処理チャンバのプロセス実行部27に、上記決定された最適レシピでの処理(本例において成膜処理)を実行させ、さらに、最適レシピを訓練データデータベース131に格納する(S104)。
【0055】
例えば、装置制御部22は、統合管理部21を介して、レシピ推定部242により決定された最適レシピを取得する。装置制御部22は、最適レシピを指定して、プロセス実行部27に処理の実行を指示すると共に、統合管理部21を介して、最適レシピを訓練データ31の入力データ311に追加する。プロセス実行部27は、指定された最適レシピによって処理を実行する。
【0056】
分析評価部25は、プロセス実行部27による処理結果を分析及び評価する(S105)。例えば、分析評価部25は、処理対象物(本例において成膜された基板)を収容し、分析評価するための分析評価装置(分析評価チャンバ)を制御して、処理対象物の分析及び評価を実行する。本例において、分析評価部25は、成膜された膜の特性を分析及び評価する。分析評価部25は、統合管理部21を介して、分析評価結果を、訓練データデータベース131に、対応する最適レシピと紐づけて格納する(S106)。
【0057】
なお、統合管理部21は、分析評価結果を、入力デバイス151を介して、ユーザから取得してもよい。統合管理部21は、ユーザから取得した分析評価結果を、訓練データデータベース131に、対応する最適レシピと紐づけて格納する。モデル構成部241は、更新された訓練データデータベース131を用いて推定モデル23を更新する(S107)。
【0058】
分析評価部25は、許容誤差を踏まえた目標値と分析評価結果を比較する(S108)。分析評価結果が、目標値から許容誤差範囲内にある場合(S108:YES)、分析評価部25は、統合管理部21を介して、比較結果をユーザに提示して、本フローを終了する。分析評価結果が、目標値から許容誤差範囲内にない場合(S108:NO)、分析評価部25は、統合管理部21を介して、比較結果をユーザに提示すると共に再成膜の要否をユーザに問う。再成膜が必要である場合、統合管理部21は、レシピ推定部242に、ステップS102を実行することを指示する。再成膜が不要である場合、本フローは終了する。
【0059】
上述のように、本実施形態における半導体製造は、半導体製造装置及び分析評価装置を使用する。これら装置は、クラスタ化されていてもよい。これにより、効率的な半導体製造が可能となる。
図16はクラスタ装置400の構成例を示す。クラスタ装置400は複数のチャンバを含む。具体的には、クラスタ装置400は、基板分析チャンバ401、洗浄チャンバ402、分析評価チャンバ403、処理チャンバ404、再生チャンバ405、並びに、ロードロックチャンバ及びトランスファーチャンバ406を含む。
【0060】
基板分析チャンバ401は、基板を分析評価するためのチャンバである。実施形態3で説明する基板情報を取得するために使用することができる。基板分析チャンバ401は、例えば、ソリ、エッジ形状、板厚等の基板形状を測定する、又は、X線、PL光、レーザ光、顕微鏡等を用いて転位、積層欠陥、表面粗(Raなど)等を評価するために使用できる。分析評価チャンバ403は、処理チャンバ404で処理された基板を分析評価するためのチャンバである。再生チャンバ405は、処理チャンバ404で処理された基板を再生するためのチャンバである。
図14及び15を参照して説明した処理において、プロセス実行部27は、例えば、処理チャンバ404である。分析評価部25又はユーザは、分析評価チャンバ403によって処理した基板の分析及び評価を実行する。
【0061】
図17は、SiCエピクラスタ装置450の構成例を示す。SiCエピクラスタ装置450は、基板分析チャンバ451、エピ分析チャンバ452、欠陥分析チャンバ453、エピ成長チャンバ454、CMP(Chemical Mechanical Polishing)チャンバ455、並びに、ロードロックチャンバ及びトランスファーチャンバ456を含む。
【0062】
エピ成長チャンバ454は処理チャンバの例であり、基板上にSiC膜をエピタキシャル成長させる。エピ分析チャンバ452は、分析評価チャンバの例であり、エピ成長チャンバ454において成膜されたエピ膜(すなわち、SiC膜)の膜厚及び不純物濃度(ドーパント濃度)を分析評価するために使用される。欠陥分析チャンバ453は、分析評価チャンバの例であり、X線、PL光、レーザ光、顕微鏡を用いて、エピ成長チャンバ454において成膜されたエピ膜の欠陥を分析評価するために使用される。CMPチャンバ455は再生チャンバ405の例であり、成膜されたエピ膜が所望の特性を有していない場合、基板を再利用するために使用される。
【0063】
図14及び15を参照して説明した処理において、プロセス実行部27は、例えば、エピ成長チャンバ454である。分析評価部25又はユーザは、エピ分析チャンバ452及び欠陥分析チャンバ453によって成膜されたSiC膜の分析及び評価を実行して、膜厚、不純物濃度及び結晶欠陥密度の値を取得する。SiC膜が所望の特性を有していない場合、例えば、装置制御部22又はユーザは、CMPチャンバ455においてSiC膜を基板から除去し、当該基板に再度、SiC膜をエピタキシャル成長させる。
【0064】
本実施形態による適切なレシピの決定は、様々な半導体処理(装置)に適用できる。例えば、リソグラフィ装置、成膜装置、パターン加工装置、イオン注入装置、洗浄装置等に適用できる。リソグラフィ装置には、例えば、露光装置、電子線描画装置、及びX線描画装置を含む。成膜装置は、たとえばCVD(Chemical Vapor Deposition)装置、PVD(Physical Vapor Deposition)装置、蒸着装置、スパッタリング装置、熱酸化装置を含む。
【0065】
パターン加工装置は、例えば、ウェットエッチング装置、ドライエッチング装置、電子ビーム加工装置、レーザ加工装置を含む。イオン注入装置は、例えば、プラズマドーピング装置、イオンビームドーピング装置を含む。洗浄装置は、例えば、液体洗浄装置、超音波洗浄装置を含む。
【0066】
露光装置における開口寸法の最適化において、推定モデルの入力要素の例は、露光量、レジスト厚、レジスト種等であり、出力要素の例は、開口寸法、設計寸法のズレ量、レジスト倒れ等である。CVD装置の成膜プロセスの最適化において、入力要素の例はガス流量、プロセス温度、印加バイアス、圧力等である、出力要素の例は、膜応力、密度、炉内パーティクル等である。
【0067】
CVD・熱酸化装置におけるMOS、IGBTのゲート絶縁膜プロセス最適化において、入力要素の例はガス流量、プロセス温度、炉内圧力等であり、出力要素の例は、界面準位密度、絶縁破壊特性、チャネル移動度、PBTI&NBTI特性、等である。イオン注入装置における濃度プロファイルの最適化において、入力要素の例は、注入エネルギー、ドーズ量等であり、出力要素の例は、ピーク濃度位置、深さ方向に対するテール形状等である。
【0068】
パターン加工装置におけるエッチング形状の最適化において、入力要素の例はガス流量、印加バイアス等であり、出力要素の例は、トレンチの形状(テーパ角、サブトレンチ、トレンチ底部のラフネス)等である。洗浄装置における洗浄処理の最適化において、入力要素の例は、薬液種、薬液濃度、処理温度等であり、出力要素の例は、パーティクル、金属汚染、エッチングレート、実際の濃度等である。レーザアニール装置におけるコンタクト抵抗の最適化の例において、入力要素の例は、波長、レーザ強度、ステップ等であり、出力要素の例は、抵抗値である。
【0069】
上述のように、本実施形態は、半導体製造装置の過去の処理の履歴情報及び指定された目標値に基づき、推定モデル23を含む1以上の関数を使用して半導体製造装置の次の処理のレシピを決定する。本実施形態における1以上の関数は推定モデル23で構成されている。推定モデル23の入力は、さらに、半導体製造装置のレシピ履歴を含む。
【0070】
上述のように、本実施形態は、半導体製造装置における過去の履歴情報を使用した機械学習の手法を用いることで、経時変化に伴う特徴量を自律的に捉え、経時変化も含めた精度良い推定モデルが構築可能となる。また、経時変化を考慮した最適レシピを導出できるため、メンテナンスの回数を低減することができる。また、履歴情報を元に機械学習モデルを形成するため、相関データを準備することが不要である。
【0071】
<実施形態2>
実施形態2は、半導体製造装置のメンテナンスの要否を判定する。これにより、メンテナンスの回数を低減できる。例えば、半導体製造管理システム100は、探索により見つけられた最適レシピによる推定結果が、目標値からの許容範囲内に入っていない場合、メンテナンスが必要であると判定する。
【0072】
図18A、18B及び18Cは、推定モデルによる出力の経時変化の例を示すグラフである。各グラフにおいて、横軸は推定モデルへの入力としてのガス流量を示し、縦軸は推定モデルの出力としての濃度分布を示す。各グラフにおいて、実線の関数曲線501は、推定モデルの入力値と出力値との関係を示す。半導体製造装置は、入力値において設定可能範囲を有している。また、出力値に対する目標値を基準とする許容範囲が設定されている。各グラフにいて、破線矩形502は、設定可能範囲と許容範囲の双方を満たす領域を示す。
【0073】
図18Aは、経時変化が小さい状態でのグラフを示す。許容範囲内の出力を実現する適切なガス流量は、設定可能範囲内に存在する。このように、経時変化の影響が少ない場合に、目標値を満たす入力の最適値が存在し、最適レシピを探索できる。
図18B及び
図18Cは、経時変化が影響を及ぼした推定モデルのグラフを示す。推定モデルの関数曲線501は、上下左右方向にずれる事が予想される。
【0074】
図18Bに示すように、関数曲線501が上に大きくずれた場合、その極値でも許容範囲外になる。
図18Cに示すように、関数曲線501が右に大きくずれた場合、許容範囲内の出力値に対応する入力値は、設定可能範囲外となる。即ち、最適レシピを探索しても、出力値が目標値を基準とする許容範囲内に入るレシピを見付けることができない場合、半導体製造装置のメンテナンスが必要と判定すべきである。
【0075】
本実施形態は、訓練データにメンテナンス情報も含めて推定モデルを構成する。推定モデルにより、メンテナンスの要否判定及び最適レシピ導出が可能となる。
図19は、訓練データ61の概念図である。実施形態1の訓練データとの相違点は、入力値に実行されたメンテナンスの情報が含まれ、さらに、履歴情報がレシピ履歴に加え、メンテナンス履歴を含むことである。
【0076】
例えば、内容及び効果が異なる3種類のメンテナンスがあるとする(メンテナンス1、メンテナンス2、メンテナンス3)。訓練データ61の入力値は、処理前に実施したメンテナンスの情報を含む。メンテナンスを実施していない場合、メンテナンスを示す値は0である。メンテナンスを実施した場合、メンテナンスの種類に対応した数値が入力値に含まれる。メンテナンスを示す値は、例えば、メンテナンス1なら1、メンテナンス2なら2、メンテナンス3なら3である。なお、メンテナンスの識別子は、任意である。メンテナンス実施内容を入力及び履歴に加えることで、半導体製造管理システム100は、必要なメンテナンスを自律的に判定できる。
【0077】
以下において、メンテナンス要否を判定する本実施形態の具体例を説明する。主に実施形態1との相違点を説明する。
図20は、訓練データ61のより具体的な例を示す。実施形態1における訓練データ31に加え、入力データ611は、成膜前メンテナンス欄を有している。成膜前メンテナンス欄は、成膜処理前に実施したメンテナンスの識別子を示し、「0」は、いかなるメンテナンスも実施されなかったことを示す。
【0078】
図21は、次回成膜処理の目標値65の例を示す。
図22は、レシピ探索部24が決定した最適入力値(レシピ)66の例を示す。最適入力値(レシピ)66は、入力データ611に対応して、成膜前メンテナンスのセルを有している。
図22の例は、最適入力値(レシピ)66が示す成膜処理を行う前に、メンテナンス2を実行すべきであることを示す。
【0079】
図23及び24を参照して、半導体製造管理システム100の処理を説明する。
図23は、本実施形態の半導体製造管理システム100の処理を説明するための論理構成図である。レシピ探索部24は、実施形態1の構成要素に加え、メンテナンス効果評価部245を含む。
【0080】
ユーザは、入力デバイス151からの入力データ51に、実施形態1の情報に加え、実際に行ったメンテナンスの識別子を含める。メンテナンス識別子は、訓練データデータベース131に格納される。半導体製造管理システム100は、出力デバイス152からの出力データ52として、実施形態1の情報に加え、必要なメンテナンス通知及びメンテナンス評価結果を出力する。
【0081】
図24は、本実施形態の半導体製造管理システム100が実行する処理のフローチャートを示す。ステップS121~S128は、実施形態1の
図15のフローチャートにおけるステップS101~108に対応する。
図24のフローチャートは、ステップS123における判定結果がNOである場合のステップが実施形態1と異なる。
【0082】
ステップS123において、推定された処理結果が目標値から誤差許容範囲内にない場合(S123:NO)、レシピ推定部242は、推定モデル23を用いて、目標値に近い値を実現するメンテナンス及びレシピを導出し、処理結果を推定する(S129)。例えば、レシピ推定部242は、ランダムサーチ法や焼きなまし法を用いて、目標値に最も近い入力値を決定する。入力値は実行すべき何れかのメンテナンスを示し、メンテナンスに対応する要素の値は0以外の値である。当該入力値に対する推定モデル23の出力値が、推定された処理結果である。
【0083】
レシピ推定部242は、統合管理部21を介して、出力デバイス152において必要なメンテナンスをユーザに通知する。例えば、レシピ推定部242は、メンテナンス識別子と関連付けられたメッセージリストを保持しており、決定したメンテナンス識別子に対応するメッセージを、出力デバイス152において提示する。ユーザは、メンテナンス通知に従って、半導体製造装置のメンテナンスを実行し、実行したメンテナンスの情報を入力デバイス151から入力する。なお、半導体製造管理システム100が自動でメンテナンスを実行してもよい。
【0084】
メンテナンス効果評価部245は、統合管理部21を介して、メンテナンスの情報を受けると、半導体製造装置におけるメンテナンスの効果を評価する。例えば、メンテナンス効果評価部245は、チャンバ内に実装されているセンサを使用して、側壁の堆積物の厚み又はその減少量を評価する。メンテナンス効果評価部245は、その評価結果を、統合管理部21を介して、出力デバイス152において提示する。ユーザは、評価結果を参照することで、適切なメンテナンスが行われたかチェックできる。なお、ユーザがメンテナンス評価を実行し、メンテナンス効果評価部245を省略してもよい。
【0085】
装置制御部22は、統合管理部21を介して、レシピ推定部242により決定された、メンテナンス後の最適レシピを取得する。装置制御部22は、最適レシピを指定して、プロセス実行部27に処理の実行を指示すると共に、統合管理部21を介して、メンテナンス及び最適レシピの情報を訓練データ61の入力データ611に追加する。プロセス実行部27は、指定された最適レシピによって処理を実行する(S130)。
【0086】
分析評価部25は、プロセス実行部27による処理結果を分析及び評価する(S131)。分析評価部25は、統合管理部21を介して、分析評価結果を、訓練データデータベース131に、対応する最適レシピと紐づけて格納する(S132)。分析評価結果は、ユーザにより入力されてもよい。分析評価部25は、さらに、統合管理部21を介して、分析評価を出力デバイス152においてユーザに提示する。モデル構成部241は、更新された訓練データデータベース131を用いて推定モデル23を更新する(S133)。その後、フローはステップS128に進む。
【0087】
上述のように、本実施形態において、半導体製造装置の過去の処理の履歴情報は、半導体製造装置のメンテナンスについての情報を含む。また、推定モデル23への入力は、次の処理の前に実行すべきメンテナンスを含む。メンテナンス実施内容を処理履歴情報に加える事で、処理履歴情報から半導体製造装置の経時変化を自律的に推定しメンテナンスの要否を判定することができる。
【0088】
具体的には、本実施形態は、メンテナンスが不要の状態では装置状況に合わせた最適レシピを導出し、メンテナンスが必要な場合にはメンテナンス方法を提示することができる。必要なメンテナンスの提示により、ユーザは適時に適切なメンテナンスを実行できる。本実施形態によれば、半導体製造装置の経時変化を確認するための成膜が不要となり、工数を低減できる。
【0089】
<実施形態3>
実施形態3は、処理対象の基板変更の要否を判定する。これにより、必要な特性を満たしていない基板を新たな基板に適切に変更し、不要な工程数を低減できる。例えば、半導体製造管理システム100は、探索により見つけられた最適レシピによる推定結果が、目標値からの許容範囲内に入っていない場合、基板の変更が必要であると判定する。
【0090】
例えば、SiC基板はSi基板に比べて転位等の欠陥が多く、その転位密度はエピ後の欠陥密度に影響する。このため、推定モデル23の出力が欠陥密度を含む場合、基板の欠陥情報を考慮する必要がある。また基板のソリもエピ結果に影響を及ぼす。このため基板情報を加味する事で、精度良く最適レシピを導出できる。
【0091】
本実施形態の推定モデル23の入力は、実施形態2の入力に加え、基板情報を含む。したがって、訓練データの入力データは、基板情報を含む。最適レシピ(目標値から誤差許容範囲内の出力値を与える入力値)を導出する際、入力される基板情報は、予め指定した基板スペックを満たすことが必要である。もし、基板の欠陥が多い場合、最適レシピが規定値(予め定められた値)に入らない可能性がある。
【0092】
このため、本実施形態は、推定モデル23を使用して、どの程度の欠陥であれば最適レシピを導出できるか計算する。例えば、推定モデル23に入力される基板情報において基板欠陥の数を段階的に減らし、それぞれの欠陥数の条件で最適レシピが導出できるか(許容範囲内に収まるか)計算し、最適レシピ導出可能となった欠陥密度を通知する等の方法がある。その後、基板を変更するかユーザに判断を求め、基板を変更しない場合にはメンテナンス要否の判定を行う。
【0093】
図25を参照して、半導体製造管理システム100の処理を説明する。以下においては、主に実施形態2との相違点を説明する。本実施形態の半導体製造管理システム100の処理を説明するための論理構成図は、実施形態2における
図23と略同様である。実施形態2との一つの相違点は、入力データ51が処理対象の基板の情報を含むことである。上述のように、推定モデル23及び訓練データの入力データは、基板スペックを示す基板情報を含む。
【0094】
図25のフローチャートにおいて、ステップS141、S143~S149は、
図24のフローチャートのステップS121~S128に対応する。ステップS142において、統合管理部21は、入力デバイス151からユーザにより入力された基板情報を取得し、レシピ探索部24に渡す。
【0095】
ステップS144において、推定モデル23による推定結果が、目標値からの誤差許容範囲外である場合(S144:NO)、レシピ推定部242は、推定モデル23を用いて、目標値に近い値を実現するレシピの導出に必要な基板スペックを導出する(S150)。具体的には、レシピ推定部242は、推定モデル23への入力値におけるレシピ及びメンテナンス情報を維持し、基板情報のみを変更する。実施形態1において説明したように、レシピ推定部242は、推定モデル23の出力値と目標値との間の誤差が誤差許容範囲内となる基板情報を探索する。探索される基板スペックは、予め定められた範囲から選択される。
【0096】
許容範囲内の出力値を得ることができる基板情報が見つかった場合、レシピ推定部242は、基板を変更すると判定する(S151:YES)。レシピ推定部242は、統合管理部21を介して、出力デバイス152において、基板の変更の通知と新たな基板に求めるスペックとを、ユーザに提示する。フローは、ステップS142に戻る。
【0097】
許容範囲内の出力値を得ることができる基板情報が見つらなかった場合、レシピ推定部242は、基板を変更しないと判定する(S151:NO)。その後、レシピ推定部242は、メンテナンス要否の判定を行う。ステップS152~S156は、
図24のフローチャートのステップS129~S133に対応する。
【0098】
上記例は、基板情報を、入力デバイス151を介してユーザから取得する。他の例において、半導体製造管理システム100は、基板評価装置を使用して、基板情報を取得してもよい。半導体製造管理システム100は、
図25のフローチャートの処理を行う前に、チャンバ内に設置された基板の評価を実行する。本実施形態のメンテナンスの処理は、省略してもよい。
【0099】
以下において、いくつかの実施形態において使用できる、出力デバイス152で表示されるGUI画像の例を説明する。以下に説明する画像は単なる例であって、必要な情報を入出力することができれば、どのようなGUI画像が利用されてもよい。まず、ユーザがデータを入力するためのGUI画像の例を説明する。入力ウィンドウにおいて入力された情報は、統合管理部21によって、メモリ120又は補助記憶装置130に格納される。
【0100】
図26は、レシピ探索機能設定ウィンドウ531の例を示す。ユーザは、レシピ探索機能設定ウィンドウ531において、レシピ探査機能の有効又は無効にすることができる。レシピ探査機能が有効に設定されている場合、本明細書の複数の実施形態の処理それぞれが実行される。
【0101】
図27は、目標値設定入力ウィンドウ532の例を示す。目標値設定入力ウィンドウ532は、ユーザからの、推定モデル23の目標値及び許容範囲の入力を受け付ける。
図27の例において、目標値及び許容範囲は、パラメータ(出力値の要素)毎に設定される。さらに、許容範囲の上限及び下限が個別に設定されている。
【0102】
図28は、基板情報入力ウィンドウ533の例を示す。基板情報入力ウィンドウ533は、ユーザからの基板について情報の入力を受け付ける。
図28の例において、基板情報入力ウィンドウ533は、複数の基板の情報を入力可能であり、基板が挿入されているスロットの番号、基板ID及び基板の複数の属性の値が入力される。推定モデル23への入力値は、基板情報の属性値を含む。
【0103】
図29は、評価結果入力ウィンドウ534の例を示す。評価結果入力ウィンドウ534は、ユーザが半導体製造装置により処理された対象物の評価結果を入力するためウィンドウである。評価結果入力ウィンドウ534は、処理を識別するための処理番号及び処理結果の評価値を入力するためのセルを有する。上記成膜の例において、少なくとも、膜厚、不純物濃度、結晶欠陥密度の値が入力される。半導体製造管理システム100が自動で処理対象物の評価を行う場合、本ウィンドウは使用されない。
【0104】
次に、ユーザに情報提示するためのGUI画像の例を説明する。
図30は、最適レシピ出力ウィンドウ535の例を示す。最適レシピ出力ウィンドウ535は、統合管理部21を介して、出力デバイス152において表示される。レシピ内容と当該レシピにより得られる推定結果とを含む。例えば、レシピ推定部242は、ユーザに指定された許容範囲内の推定結果を得られると推定されるレシピ及び当該推定結果を、最適レシピ出力ウィンドウ535によってユーザに提示する。
【0105】
図31は、メンテナンス通知メッセージボックス536の例を示す。メンテナンス通知メッセージボックス536は、ユーザに所望の処理結果を得るために必要なメンテナンスの情報を提示する。上述のように、メンテナンスとメッセージとの関係を示す情報が予め設定されており、レシピ推定部242は、当該情報を参照して、推定モデル23を使用して決定したメンテナンスに対応するメッセージを取得し、メンテナンス通知メッセージボックス536により表示する。
【0106】
図32は、メンテナンス評価結果出力ウィンドウ537の例を示す。メンテナンス評価結果出力ウィンドウ537は、メンテナンス内容(識別子)と、そのメンテナンスの評価結果とを示す。メンテナンス効果評価部245がメンテナンス結果を評価する場合、本ウィンドウ537が使用される。ユーザがメンテナンスの評価を行う場合、本ウィンドウ537は使用されない。
【0107】
図33は、履歴情報出力ウィンドウ538の例を示す。履歴情報出力ウィンドウ538は、処理の基礎情報、処理レシピ及び処理対象物の評価結果を示す。処理の基礎情報は、例えば、処理日時や処理対象の基板の識別子を含む。例えば、統合管理部21は、ユーザからの要求に応答して、履歴情報出力ウィンドウ538を表示する。処理の基礎情報は、例えば、メモリ120又は補助記憶装置130に格納され、統合管理部21によって更新される。処理レシピ及び処理対象物の評価結果は、訓練データデータベース131の入力データ及び出力データに対応する。
【0108】
<実施形態4>
実施形態1、2及び3の方法は、レシピ履歴情報を用いるため、膨大な計算量を必要し、計算の長時間化、計算機の処理能力不足が起こり得る。この対処として、変数(レシピの要素)を少なくする方法が考えられるが、それでは探索範囲が狭くなり、最適解の導出に影響が生じる可能性がある。従って、実施形態4、5及び6は、計算量を少なくする手法を説明する。
【0109】
最適レシピ(許容範囲内のレシピ)を演算により得るためには、実施形態1、2及び3において説明したように、履歴情報から経時変化の特徴量を自律的に取得するのが好ましい。しかし、上述のように、計算量の膨大化が課題となる。そこで、本実施形態は、計算量を少なくするために、経時変化に影響すると考えられる因子を推定モデルの入力値に加える。
【0110】
図34は、経時変化に影響すると考えられる因子を含む訓練データの入力データ711の例を示す。入力データ711は、実施形態1の訓練データ31の入力データ311に加えて、積算処理時間、積算膜厚及び積算流量(SiH
4 )の欄を有している。これらは、最後のメンテナンスから直前の処理までの積算値(累積値)を示す。積算値は、レシピ履歴と同様に、過去の処理の履歴情報の例である。本実施形態の訓練データの出力データは、実施形態1の出力データ312と同様である。なお、推定モデル23にレシピと同時に入力される積算値には、当該レシピ及び処理の目標値が加算されていてもよい。
【0111】
図34は、SiCのエピタキシャル成長による成膜処理の例を示し、積算処理時間、積算膜厚及び積算流量(SiH
4 )は、それぞれ、最後のメンテナンスからの、エピタキシャル成長時間の積算時間、エピタキシャル成長膜厚の積算値、及びガス(SiH
4 )の流量の積算値を示す。積算処理時間及び積算流量は、半導体製造装置による過去の処理のレシピ要素の積算値(累積値)であり、成長膜厚の積算値は処理生成物の積算値(累積値)である。処理生成物は、成膜処理の目的とする生成物であり、副生成物は含まれない。本実施形態において、推定モデル23の入力値は、履歴情報として、実施形態1、2及び3において説明したレシピ履歴に代えて、上記積算値を含む。これにより、レシピ履歴を含む入力値と比較して、入力値の変数を大きく低減することができる。
【0112】
レシピ推定部242は、推定モデル23を使用して、上記他の実施形態で説明したように、目標値から許容範囲内の出力値を与えるレシピ(最適レシピ)を探索する。積算値それぞれに対して、半導体製造装置の制約が存在する。例えば、膜厚目標値を10μmとすると、積算膜厚は現状+10μmとなる。積算処理時間は現状+処理時間となる。なお、他の処理温度や処理圧力にも装置構造で決まる上限値が存在する。最適レシピは、当該制約の範囲内で探索される。
【0113】
<実施形態5>
実施形態5は、計算量を少なくするために、経時変化に影響すると考えられる因子を推定モデルの入力値に加える。
図35は、経時変化に影響すると考えられる因子を含む訓練データの入力データ811の例を示す。入力データ811は、実施形態1の訓練データ31の入力データ311に加えて、副生成物膜厚の欄を有する。
【0114】
入力データ811において、副生成物膜厚欄は、同一レコードのレシピによる処理を実行する前の副生成物膜厚値を示す。副生成物膜厚は、処理チャンバで堆積した副生成物の膜厚を示し、例えば、チャンバ内壁に堆積した副生成物の膜厚又はウェハサセプタ上の副生成物の膜厚を示す。副生成物膜は、処理により本来生成することを意図していない任意の物質の膜である。副生成物膜厚は、ユーザにより、又は、チャンバ内のセンサにより測定できる。
【0115】
本実施形態において、推定モデル23の入力値は、履歴情報として、実施形態1、2及び3において説明したレシピ履歴に代えて、処理前の副生成物膜厚値を含む。副生成物膜厚は、過去の処理により変化するため、処理の履歴を示す。副生成物膜厚を履歴情報として使用することで、レシピ履歴を含む入力値と比較して、入力値の変数を大きく低減することができる。また、副生成物膜厚は、より直接的に半導体製造装置(チャンバ)の経時変化を示すため、より適切に最適レシピを推定することができる。
【0116】
<実施形態6>
実施形態6は、推定モデル(関数)と経時変化関数を使用して半導体製造装置の次の処理のレシピを決定する。本実施形態は、実際の処理結果(訓練データの出力)を、経時変化関数により補正する。経時変化関数による補正は、半導体製造装置の経時変化に起因する成分を除去する。つまり、補正された処理結果は、半導体製造装置の経時変化がないと仮定した処理結果である。
【0117】
本実施形態における推定モデル23への入力値は、次の処理のレシピ候補を含み、上記他の実施形態のような履歴情報を含まない。訓練データの出力データは、半導体製造装置の経時変化がないと仮定した処理結果であり、実際の処理結果を経時変化関数で補正した値である。推定モデル23の出力値(推定値)と目標値との比較において、推定値及び/又は目標値は、経時変化関数によって補正された後に比較される。このように、推定モデル23は、経時変化がないと仮定された半導体製造装置のレシピに対する、処理結果の推定値を出力する。
【0118】
上述のように、推定モデル23は、履歴情報を入力値に含まないため、推定モデル23を使用した最適レシピの探索のための処理負荷を低減することができる。半導体製造装置の履歴情報は、経時変化関数の作成に利用される。以下において、経時変化関数の導出方法を、例を使用して説明する。経時変化関数は、履歴情報を使用して、回帰分析により導出される。
【0119】
一例として、あるチャンバ状態における成膜結果の一つである欠陥密度Dを、以下の関数gで記述する。関数gの変数tは、チャンバ内の副生成物膜厚を表す。
D=g(t)
【0120】
チャンバ内の副生成物膜厚がt1又はt2の時に、レシピaを実施した場合、欠陥密度D_t1、D_t2は、それぞれ以下のように表わされる。
D_t1=g_a(t1)
D_t2=g_a(t2)
【0121】
ここで、関数g_a(t)は未知のため、回帰分析を行い、関数g_a(t)を導出する。
図36は、関数g_a(t)のグラフの例を示す。グラフにおける黒点は測定値であり、実曲線は、測定値にフィッティングされた曲線であり、関数g_a(t)に対応する。
【0122】
次に、関数g_a(t)について考える。関数g_a(t)は、レシピaのみに起因する因子と、経時変化に起因する因子との和になっていると考えられる。したがって、関数g_a(t)は以下のように書き換えられる。
g_a(t)=D_a+f_a(t)
関数D_aは、経時変化に関わりなく、レシピaによって生じる欠陥密度を表す定数である。関数f_a(t)はレシピaの処理において経時変化によって生じる欠陥密度を表す。関数f_a(t)は経時変化関数である。
【0123】
次に、レシピaとレシピbを実施した時のf(t)の関係を考える。レシピを変更した場合、経時変化の影響の増減が考えられるが、経時変化が生じる物理的なメカニズムまでは変わらないため、以下のような関係が成り立つ。
f_b(t)=cf_a(t)
即ち、gb(t)は
g_b(t)=D_b+f_b(t)=D_b+cf_a(t)
なお、D_bはレシピbによって生じる欠陥密度を表す定数である。
【0124】
未知数はD_bとcの2つであるため、レシピbによる処理結果が2つあればレシピbにおける経時変化関数が導出できる。以上のように、モデル構成部241は、レシピ毎の経時変化関数を導出し、さらに、経時変化に影響されない推定モデル23を構成する。推定モデル23の入力は、処理履歴情報を含まない。
【0125】
上述のように、経時変化関数を使用して訓練データの出力データから経時変化によって生じた影響を除去する事が可能となり、経時変化に影響されない推定モデル23の構築が容易となる。上記説明は、出力値の例として欠陥密度を挙げたが、出力値は、例えば、ウェハ面内のある座標における不純物の濃度や平均濃度や面内濃度ばらつき、ウェハ面内のある座標における膜厚や平均膜厚や面内膜厚ばらつき、ダウンフォール欠陥、積層欠陥、基底面転位、等であってもよい。
【0126】
また、入力値の例としてチャンバ壁の副生成物厚さを挙げたが、入力値は、例えばサセプタの副生成物厚さやインジェクタのつまりによって発生する内径の変動等であってもよい。これらは、副生成物厚さや内径をモニタする必要があるが、簡便のために、これらに代えて、入力値は、例えば、積算膜厚、材料ガスの積算流量、チャンバに与えた積算熱量等であってもよい。
【0127】
経時変化関数は、メンテナンス要否の判定に使用できる。レシピ推定部242は、経時変化関数の出力と閾値との比較結果に基づき、メンテナンス要否の判定を行ってもよい。
図37は、レシピaの経時変化関数のグラフの例を示す。例えば、最適レシピと判定したレシピによる経時変化関数の値が規定値(予め定められている値)を超える場合に、レシピ推定部242は、メンテナンスが必要であると判定してもよい。
【0128】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0129】
また、上記の各構成・機能・処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード等の記録媒体に置くことができる。
【0130】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆どすべての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0131】
21 統合管理部、22 装置制御部、23 推定モデル、24 レシピ探索部、25分析評価部、27 プロセス実行部、31 訓練データ、35 目標値、41 入力値、42 出力値、51 入力デバイスでの入力データ、52 出力デバイスでの出力データ、61 訓練データ、65 目標値、66 最適入力値、100 半導体製造管理システム、110 プロセッサ、120 メモリ、121 統合管理プログラム、122 装置制御プログラム、123 推定モデルプログラム、124 レシピ探索プログラム、125 分析評価プログラム、130 補助記憶装置、131 訓練データデータベース、140 ネットワークインタフェース、145 I/Oインタフェース、151 入力デバイス、152 出力デバイス、241 モデル構成部、242 レシピ推定部、243収束判定部、245 メンテナンス効果評価部、311、611、711、811 訓練データの入力データ、312、612 訓練データの出力データ、400 クラスタ装置、401 基板分析チャンバ、402 洗浄チャンバ、403 分析評価チャンバ、404 処理チャンバ、405 再生チャンバ、406 ロードロックチャンバ及びトランスファーチャンバ、450 SiCエピクラスタ装置、451 基板分析チャンバ、452エピ分析チャンバ、453 欠陥分析チャンバ、454 エピ成長チャンバ、455CMPチャンバ、456 ロードロックチャンバ及びトランスファーチャンバ、501関数曲線、502 破線矩形、531 レシピ探索機能設定ウィンドウ、532 目標値設定入力ウィンドウ、533 基板情報入力ウィンドウ、534 評価結果入力ウィンドウ、535 最適レシピ出力ウィンドウ、536 メンテナンス通知メッセージボックス、537 メンテナンス評価結果出力ウィンドウ、538 履歴情報出力ウィンドウ