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特開2024-91664光学要素、画像表示装置、仮想現実表示装置、電子ファインダー、偏光子の製造方法
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  • 特開-光学要素、画像表示装置、仮想現実表示装置、電子ファインダー、偏光子の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091664
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】光学要素、画像表示装置、仮想現実表示装置、電子ファインダー、偏光子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240628BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20240628BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240628BHJP
   G02B 27/02 20060101ALI20240628BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALN20240628BHJP
【FI】
G02B5/30
H10K50/86
H10K59/10
G02B27/02 Z
G02F1/1335 510
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024060044
(22)【出願日】2024-04-03
(62)【分割の表示】P 2022528779の分割
【原出願日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2020095644
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021087725
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】山田 直良
(57)【要約】
【課題】 本発明の課題は、曲面部分を有する吸収型の偏光子を往復光学系を用いた画像表示装置に適用した際に、ゴーストを抑制する効果が優れる光学要素を提供することにある。また、本発明の課題は、画像表示装置、仮想現実表示装置、電子ファインダー、および、偏光子の製造方法を提供することにある。
【解決手段】 本発明の光学要素は、曲面部分を有する吸収型の偏光子Aと、吸収型の偏光子Bと、を含み、偏光子Aの偏光子B側の表面において最も偏光子B側の位置を位置Xとし、位置Xと最も近い偏光子Bの偏光子A側の表面の位置を位置Yとし、位置Xと位置Yとを通る直線Lを引いた場合、直線L上であって、位置Yから位置Xを観察した際に位置Xよりも向こう側の位置に、特定の要件を満たす位置Zが存在する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収軸の方向が互いに異なる複数の領域を有し、かつ、曲面部分を有する吸収型の偏光子の製造方法であって、
光配向剤を含む光配向膜形成用組成物の層を樹脂基材の表面に形成する工程と、
前記層に対して直線偏光の紫外線をレンズを通して照射し、前記光配向剤を配向させることにより、配向膜を形成する工程と、
前記配向膜の表面に、液晶性化合物と二色性物質とを含む組成物を塗布する工程と、を有し、
前記配向膜が、曲面部分を有し、かつ、配向規制力の方向が互いに異なる複数の領域を有する、製造方法。
【請求項2】
前記組成物を塗布する工程が、前記配向膜の表面に前記組成物をスプレー塗布する工程である、請求項1に記載の偏光子の製造方法。
【請求項3】
前記の光配向膜形成用組成物の層を樹脂基材の表面に形成する工程が、平面状の樹脂基材の表面に前記光配向膜形成用組成物を塗布して塗布膜を形成する工程と、前記樹脂基材および前記塗布膜を曲面状に成形する工程と、を含む、請求項1に記載の偏光子の製造方法。
【請求項4】
偏光子Aと、吸収型の偏光子Bと、を含む光学要素の製造方法であって、
前記偏光子Aとして、請求項1~3のいずれか1項に記載の偏光子の製造方法で製造された偏光子を用いて前記光学要素を製造する、光学要素の製造方法。
【請求項5】
光学要素と、画像表示素子とを備える画像表示装置の製造方法であって、
前記光学要素として、請求項4に記載の光学要素の製造方法で製造された光学要素を用いて前記画像表示装置を製造する、画像表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記画像表示装置が、前記偏光子Aと前記偏光子Bとの間に、反射直線偏光子、第1のλ/4板、ハーフミラー、および、第2のλ/4板を、前記偏光子A側からこの順に有する、請求項5に記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記画像表示装置が、前記偏光子Aと前記偏光子Bとの間に、第1のλ/4板、反射円偏光子、ハーフミラー、および、第2のλ/4板を、前記偏光子A側からこの順に有する、請求項5に記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記反射円偏光子がコレステリック液晶層を有する、請求項7に記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記偏光子Bが前記画像表示素子に積層されている、請求項5~8のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項10】
画像表示装置を備える仮想現実表示装置の製造方法であって、
前記画像表示装置として、請求項5~9のいずれか1項に記載の画像表示装置を用いて前記仮想現実表示装置を製造する、仮想現実表示装置の製造方法。
【請求項11】
画像表示装置を備える電子ファインダーの製造方法であって、
前記画像表示装置として、請求項5~9のいずれか1項に記載の画像表示装置を用いて前記電子ファインダーを製造する、電子ファインダーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学要素、画像表示装置、仮想現実表示装置、電子ファインダー、および、偏光子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収型の偏光子は、液晶表示装置および有機EL表示装置などの画像表示装置に広く用いられているが、それら偏光子は、面内において吸収軸の向きが概ね揃っている(直線的である)ことが多い。
一方で、近年、仮想現実表示装置および電子ファインダーなどの画像表示装置において、表示部を小型、薄型化するため、例えば、特許文献1に記載されるような往復光学系を用いた画像表示装置が提案されている。これらの虚像表示装置においては、迷光により生じる、ゴースト等の望ましくない像(以下、単に「ゴースト」ともいう。)を抑制するために、視認側に吸収型の偏光子が用いられるが、このとき、レンズの形状に合わせ、上述の偏光子も曲面を有していることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-120679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者の検討によれば、往復光学系を用いた画像表示装置において、視認側に曲面を有する吸収型の偏光子を設置した場合であっても、迷光を十分に抑制できず、ゴーストが表示される場合があることが分かった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、曲面部分を有する吸収型の偏光子を往復光学系を用いた画像表示装置に適用した際に、ゴーストを抑制する効果が優れる光学要素を提供することにある。また、本発明の課題は、画像表示装置、仮想現実表示装置、電子ファインダー、および、偏光子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題に関し鋭意検討を重ねた結果、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0007】
〔1〕 曲面部分を有する吸収型の偏光子Aと、吸収型の偏光子Bと、を含み、偏光子Aの偏光子B側の表面において最も偏光子B側の位置を位置Xとし、位置Xと最も近い偏光子Bの偏光子A側の表面の位置を位置Yとし、位置Xと位置Yとを通る直線Lを引いた場合、直線L上であって、位置Yから位置Xを観察した際に位置Xよりも向こう側の位置に、特定の要件を満たす位置Zが存在する、光学要素。
〔2〕 偏光子Aが、吸収軸の方向が互いに異なる領域を有する、〔1〕に記載の光学要素。
〔3〕 偏光子Aが、液晶性化合物と二色性物質とを含む光学吸収異方性層を有する、〔1〕又は〔2〕に記載の光学要素。
〔4〕 偏光子Aが光配向膜を更に有する、〔3〕に記載の光学要素。
〔5〕 〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の光学要素と、画像表示素子とを備える、画像表示装置。
〔6〕 偏光子Aと偏光子Bとの間に、反射直線偏光子、第1のλ/4板、ハーフミラー、および、第2のλ/4板を、偏光子A側からこの順に有し、位置Xにおける偏光子Aの吸収軸の方向と、直線Lと反射直線偏光子との交点における反射直線偏光子の反射軸の方向とが、直線線Lが延びる方向から観察すると、平行であり、仮想線L1~L4と偏光子Aの交点における偏光子Aの吸収軸の方向と、仮想線L1~L4と反射直線偏光子との交点における反射直線偏光子の反射軸の方向とが、仮想線L1~L4が延びる方向から観察すると、それぞれ平行である、〔5〕に記載の画像表示装置。
〔7〕 位置Xにおける偏光子Aの吸収軸の方向と、直線Lと第1のλ/4板との交点における第1のλ/4板の遅相軸の方向とのなす角度が、直線Lが延びる方向から観察すると、45±10°であり、仮想線L1~L4と偏光子Aとの交点における偏光子Aの吸収軸の方向と、仮想線L1~L4と第1のλ/4板との交点における第1のλ/4板の遅相軸の方向とのなす角度が、仮想線L1~L4が延びる方向から観察すると、それぞれ、45±10°である、〔6〕に記載の画像表示装置。
〔8〕 直線Lと第1のλ/4板との交点における第1のλ/4板の遅相軸の方向と、直線Lと第2のλ/4板との交点における第2のλ/4板の遅相軸の方向とが、直線Lが延びる方向から観察すると、直交し、仮想線L1~L4と第1のλ/4板との交点における第1のλ/4板の遅相軸の方向と、仮想線L1~L4と第2のλ/4板との交点における第2のλ/4板の遅相軸の方向とが、仮想線L1~L4が延びる方向から観察すると、それぞれ、直交している、〔6〕又は〔7〕に記載の画像表示装置。
〔9〕 偏光子Aと偏光子Bとの間に、第1のλ/4板、反射円偏光子、ハーフミラー、および、第2のλ/4板を、偏光子A側からこの順に有し、位置Xにおける偏光子Aの吸収軸の方向と、直線Lと第1のλ/4板との交点における第1のλ/4板の遅相軸の方向とのなす角度が、直線Lが延びる方向から観察すると、45±10°であり、仮想線L1~L4と偏光子Aとの交点における偏光子Aの吸収軸の方向と、仮想線L1~L4と第1のλ/4板との交点における第1のλ/4板の遅相軸の方向とのなす角度が、仮想線L1~L4が延びる方向から観察すると、それぞれ、45±10°である、〔5〕に記載の画像表示装置。
〔10〕 反射円偏光子がコレステリック液晶層を有する、〔9〕に記載の画像表示装置。
〔11〕 偏光子Bが画像表示素子に積層されている、〔5〕~〔10〕のいずれかに記載の画像表示装置。
〔12〕 〔5〕~〔11〕のいずれかに記載の画像表示装置を備える、仮想現実表示装置。
〔13〕 〔5〕~〔11〕のいずれかに記載の画像表示装置を備える、電子ファインダー。
〔14〕 配向膜の表面に、液晶性化合物と二色性物質とを含む組成物をスプレー塗布する工程を有する、吸収軸の方向が互いに異なる複数の領域を有し、かつ、曲面部分を有する吸収型の偏光子の製造方法であって、配向膜が、曲面部分を有し、かつ、配向規制力の方向が互いに異なる複数の領域を有する、製造方法。
〔15〕 光配向剤を含む光配向膜形成用組成物の層を樹脂基材の表面に形成した後、層に対して直線偏光の紫外線をレンズを通して照射し、光配向剤を配向させることにより、配向膜を形成する工程を更に含む、〔14〕に記載の偏光子の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、曲面部分を有する吸収型の偏光子を往復光学系を用いた虚像表示装置に適用した際に、ゴーストを抑制する効果が優れる光学要素を提供できる。また、本発明によれば、画像表示装置、仮想現実表示装置、電子ファインダー、および、偏光子の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る光学要素の構成の一例を示す概略図である。
図2】従来の往復光学系を用いた画像表示装置の構成の一例を示す概略図である。
図3】吸収型偏光子Aの吸収軸の方向を示す模式図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る画像表示装置の構成を示す概略図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る画像表示装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態および具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に制限されるものではない。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
本明細書において、「直交」とは、厳密に90°を表すのではなく、90°±10°、好ましくは90°±5°を表すものとする。また、「平行」とは、厳密に0°を表すのではなく、0°±10°、好ましくは、0°±5°を表すものとする。更に、「45°」とは、厳密に45°を表すのではなく、45°±10°、好ましくは、45°±5°を表すものとする。
【0012】
本明細書において「吸収軸」とは、面内において吸光度が最大となる方向を意味する。また、「反射軸」とは、面内において反射率が最大となる方向を意味する。更に、「遅相軸」とは、面内において屈折率が最大となる方向を意味する。
本明細書において、「ローカルな吸収軸」などと表記する場合の「ローカル」とは、フィルムの全領域にわたる平均的な吸収軸の方位を表すのではなく、注目する1点における、局所的な吸収軸の方位であることを意味する。
【0013】
[光学要素]
本発明に係る光学要素(以下、「本光学要素」ともいう。)は、曲面部分を有する吸収型の偏光子Aと、吸収型の偏光子Bと、を含み、偏光子Aの特定の位置Xと偏光子Bの特定の位置Yとを結ぶ直線L上に、後述する要件を満たす位置Zが存在する、光学要素である。
【0014】
図1に、本発明に係る光学要素の構成の一例を示す。
図1に示す光学要素10は、偏光子A100と、偏光子B400とを有する。偏光子A100は、曲面を有する吸収型偏光子であり、偏光子B400は、平面状の吸収型偏光子である。
図1に示すように、光学要素10には、偏光子Aの偏光子B側の表面において最も偏光子B側の位置を位置Xとし、位置Xと最も近い偏光子Bの偏光子A側の表面の位置を位置Yとし、位置Xと位置Yとを通る直線Lを引いた場合、直線L上であって、位置Yから位置Xを観察した際に位置Xよりも向こう側の位置に、下記の要件(以下、「特定要件」ともいう。)を満たす位置Zが存在する。
【0015】
(特定要件)
(a)位置Zを通り、直線Lとのなす角度が30°である仮想線L1、仮想線L2、仮想線L3および仮想線L4がある。
(b)仮想線L1の偏光子B上に正射影した直線Lp1と、仮想線L2の偏光子B上に正射影した直線Lp2となす角度が90°であり、直線Lp2と、仮想線L3の偏光子B上に正射影した直線Lp3となす角度が90°であり、直線Lp3と、仮想線L4の偏光子B上に正射影した直線Lp4となす角度が90°であり、直線Lp4と直線Lp1とのなす角度が90°である。
(c)直線Lp1と、偏光子Bの吸収軸とのなす角度が、45°である。
(d)位置Xにおける偏光子Aの吸収軸の方向と、位置Yにおける偏光子Bの吸収軸の方向とが、直線Lが延びる方向から観察すると、直交している。
(e)仮想線L1と偏光子Aとの交点における偏光子Aの吸収軸の方向と、仮想線L1と偏光子Bとの交点における偏光子Bの吸収軸の方向とが、仮想線L1が延びる方向から観察すると、直交している。
(f)仮想線L2と偏光子Aとの交点における偏光子Aの吸収軸の方向と、仮想線L2と偏光子Bとの交点における偏光子Bの吸収軸の方向とが、仮想線L2が延びる方向から観察すると、直交している。
(g)仮想線L3と偏光子Aとの交点における偏光子Aの吸収軸の方向と、仮想線L3と偏光子Bとの交点における偏光子Bの吸収軸の方向とが、仮想線L3が延びる方向から観察すると、直交している。
(h)仮想線L4と偏光子Aとの交点における偏光子Aの吸収軸の方向と、仮想線L4と偏光子Bとの交点における偏光子Bの吸収軸の方向とが、仮想線L4が延びる方向から観察すると、直交している。
【0016】
本発明者は、上述の課題に関し鋭意検討を重ねた結果、曲面を有する吸収型の偏光子Aと、吸収型の偏光子Bとを有する光学要素において、上記特定要件を満たす位置Zが存在するように偏光子Aおよび偏光子Bの各構成を調整すること、特に、偏光子Aの吸収軸の局所的な方位を特定することにより、曲面部分を有する吸収型の偏光子を用いた画像表示装置においても、ゴーストを抑制する効果を向上できることを知見している。
【0017】
本発明者は、従来の往復光学系を用いた画像表示装置において、視認側に曲面部分を有する吸収型の偏光子を設置した場合にゴーストを十分に抑制できない原因について、以下のように考察した。
以下、上記原因および本発明に係る光学要素の作用効果を説明する。図2は、従来の往復光学系を用いた画像表示装置の構成の一例を示す概略図である。
図2に示す従来の画像表示装置30は、観察者の視点O側(視認側)から順に、少なくとも曲面を有する吸収型偏光子31、反射偏光子32、ハーフミラー33、吸収型偏光子34、および、画像表示素子35を備える。また、画像表示装置30は、図示しないλ/4板等の位相差板を備える。画像表示装置30の使用時には、図2に示すように、画像表示素子35から出射した光線Vが、反射偏光子32およびハーフミラー33によって反射され、光学系の内部を往復し、反射偏光子32および吸収型偏光子34を通過した後、視認側のレンズ(図示しない)から出射する。このように光線Vが往復することにより光学距離を伸長でき、光学系の小型化および薄型化に寄与する。このように従来の往復光学系は、光線Vが適切に反射および偏光変換されることを企図して設計されていた。
【0018】
しかしながら、本発明者の検討によれば、往復光学系を用いた画像表示装置において視認されるゴーストの多くは、光学系の内部で往復する光線Vではなく、往復せずに反射偏光子32を通過して観察者の視点Oまで直接届く光線S(図2参照)が原因となって生じていることが分かった。特に、反射偏光子32の偏光度が十分でない場合、反射偏光子32で反射されずに透過した光線Sが増える傾向があった。光線Sの透過は視認側に配置された吸収型偏光子31によって抑制できる。しかしながら、吸収型偏光子31は曲面を有するため、視点Oと吸収型偏光子34とを結ぶ直線と吸収型偏光子31との交点における吸収型偏光子31のローカルな吸収軸が、吸収型偏光子34と上記直線との交点における吸収型偏光子34のローカルな吸収軸とが厳密に直交しないことが原因で、光線Sを十分に遮光できず、ゴーストの抑制が十分にできない場合があることが分かった。
更には、観察者の視点Oから画像表示素子35の周縁部により近い画像を視認する場合、即ち、視点Oから画像を視認するときの視線(=光線S)と画像表示素子35の表示面の法線とのなす角度がより大きい場合に、光線Sによるゴーストの発生がより顕著となることが見出された。
【0019】
それに対して、本発明に係る光学要素10では、図1に示すように、偏光子A100側の離間した位置に、直線上の各交点において偏光子A100の吸収軸と偏光子B400の吸収軸とのなす角度が90°であるような直線Lおよび仮想線L1~L4が交差する位置Zが存在するように、偏光子A100および偏光子B400が構成されている。従って、光学要素10を画像表示装置に使用する際に位置Zから観察することにより、曲面部分を有する吸収型の偏光子A100において光学系の内部で往復せずに出射する光線Sを抑制でき、観察される表示画像におけるゴーストの発生を抑制できる。
特に、画像表示素子の周縁部により近い画像表示領域におけるゴーストの抑制に関して、上記の優れた作用効果はより顕著に現れる。
【0020】
〔位置Zの特定方法〕
光学要素における位置Zは、例えば、以下の方法で特定できる。
まず、光学要素において、偏光子Aの偏光子B側の表面において最も偏光子B側の位置Xを探す。続いて、位置Xと最も近い偏光子Bの偏光子A側の表面の位置Yを探す。確認された位置Xおよび位置Yに基づいて、位置Xと位置Yとを通る直線Lを決定する。換言すれば、位置Xから偏光子Bに下した垂線が直線Lであり、上記垂線と偏光子Bの偏光子A側の表面との交点が位置Yである。なお、図1においては、位置Yは、偏光子Bの中心に位置している。
次に、直線L上に存在し、位置Yから位置Xを観察した際に位置Xよりも向こう側に位置する点Wを仮定し、その後、点Wを通り、直線Lとのなす角度が30°であり、かつ、以下の要件を満たす仮想線Lw1、Lw2、Lw3およびLw4を求める。
要件:仮想線Lw1の偏光子Bへの正射影である線Lp1と、仮想線Lw2の偏光子Bへの正射影である線Lp2とのなす角度が90°であり、線Lp2と、仮想線Lw3の偏光子Bへの正射影である線Lp3とのなす角度が90°であり、線Lp3と、仮想線Lw4の偏光子Bへの正射影である線Lp4とのなす角度が90°であり、線Lp4と線Lp1とのなす角度が90°であり、線Lp1と、偏光子Bの吸収軸とのなす角度が、45°である。
【0021】
次に、AxoScan OPMF-1(オプトサイエンス社製)を用いて、仮想線Lw1と偏光子Aとの交点における偏光子Aの吸収軸、および、仮想線Lw1と偏光子Bとの交点における偏光子Bの吸収軸を測定する。偏光子Aの吸収軸を測定する際には、光学要素から偏光子Bを取り除き、AxoScanの測定用ビームの方向が仮想線Lw1に一致するように、かつ、仮想線Lw1と偏光子Aの位置関係を変えないように、偏光子Aを固定して、吸収軸を測定する。同様に、偏光子Bの吸収軸を測定する際には、光学要素から偏光子Aを取り除き、AxoScanの測定用ビームの方向が仮想線Lw1に一致するように、かつ、仮想線Lw1と偏光子Bの位置関係を変えないように、偏光子Bを固定して、吸収軸を測定する。
両者の測定値を比較することにより、仮想線Lw1と偏光子Aとの交点における偏光子Aの吸収軸と、仮想線Lw1と偏光子Bとの交点における偏光子Bの吸収軸とのなす角度が、仮想線Lw1が延びる方向から観察して90°であるか否かを判定する。
同様の測定および判定を、直線L、および、仮想線Lw2~Lw4についても実施する。
【0022】
直線L上における点Wの位置を移動させながら、上記の方法に従って、仮想線Lw1~Lw4の設定、および、各仮想線との交点における偏光子AおよびBの吸収軸の測定を繰り返す。その結果、直線Lおよび仮想線Lw1~Lw4の全てに関して、上記観察方向から観察したときの偏光子Aの吸収軸と偏光子Bの吸収軸となす角度が90°である場合、その点Wを位置Zとして特定する。なお、このときの点W(位置Z)を通る仮想線Lw1~Lw4が、それぞれ、上記特定要件で規定する仮想線L1~L4に相当する。
なお、本光学要素に関して、仮想線L1、仮想線L2、仮想線L3および仮想線L4はいずれも異なり、直線Lp1、直線Lp2、直線Lp3および直線Lp4はいずれも異なる。
【0023】
以下、本光学要素について詳しく説明する。
【0024】
本光学要素が備える、曲面部分を有する吸収型の偏光子A、および、吸収型の偏光子Bは、偏光子AおよびBの両者が特定要件を満たす位置Zが存在するように構成されている限り、特に制限されない。
なお、本明細書において、偏光子が「曲面部分を有する」とは、偏光子の少なくとも一部が曲面で形成されていることを意味する。
偏光子Aは、全体が曲面で形成されていることが好ましい。また、偏光子Aは、三次元曲面を有することが好ましく、全体が三次元曲面で形成されていることが好ましい。なお、三次元曲面とは、可展面でない曲面を指す。可展面とは伸縮せずに平面に展開できる曲面、即ち、平面を曲げたり切ったりして作成できる曲面を意味する。
また、偏光子Aは、偏光子B側の表面が凸面であり、偏光子B側とは反対側の表面が凹面である回転面を有することが好ましく、曲率半径が一定の曲面を有することがより好ましい。ここで、曲率半径が一定であるとは、偏光子A等の光学部材の表面における曲率半径の最大値と最小値との差が、曲率半径の最小値に対して5%以内であることを意味する。
なお、偏光子Aが曲率半径が一定の曲面を有する場合の曲率半径は、光学要素および画像表示装置の大きさおよび用途により適宜選択できるが、20~1000mmが好ましく、30~200mmがより好ましい。
偏光子Bは、平面状であっても、曲面部分を有していてもよい。偏光子Bが曲面部分を有する場合については、好ましい態様も含めて、上記偏光子Aと同じであってよい。
【0025】
本光学要素は、位置Zと偏光子Bとを結ぶ直線Lzを仮定した場合、直線Lzとの交点における偏光子Aのローカルな吸収軸と、直線Lzとの交点における偏光子Bのローカルな吸収軸とのなす角度が、直線Lzが延びる方向から観察して90°である、という位置Z、偏光子Aおよび偏光子Bの関係を、偏光子Bの全領域にわたって満たすことが好ましい。偏光子Bの全領域にわたって上記関係を満たすことで、本光学要素を用いて作製された画像表示装置において、表示画像に発生するゴーストをより効果的に抑制できる。
なお、光学要素が上記関係を満たすか否かの測定は、上記の位置Zの特定方法に準じて実施できる。
【0026】
以下、偏光子Aおよび偏光子Bのそれぞれについて詳しく説明する。
【0027】
〔偏光子A〕
偏光子Aは、吸収型の偏光子である。偏光子Aとしては、二色性物質を含む光吸収異方性層を少なくとも有する公知の吸収型偏光子を用いることができる。
光吸収異方性層としては、例えば、マトリックス化合物と二色性物質とを含む層が挙げられ、液晶化合物と二色性物質とを含む層が好ましい。
光吸収異方性層の二色性物質の配向度は、0.95以上が好ましく、0.97以上がより好ましい。配向度が高いほど、ゴーストを効果的に抑制できる。上記配向度の上限は特に制限されず、0.99以下であってもよく、0.98以下が好ましい。
【0028】
偏光子Aとしては、吸収軸の方向が互いに異なる複数の領域を有することが好ましい。即ち、偏光子Aの面内において、ローカルな吸収軸の方向が互いに平行ではない領域が2カ所以上存在することが好ましい。
図3に、偏光子Aが吸収軸の方向が互いに異なる複数の領域を有する場合における、吸収軸の配向分布の一例を示す。図3は、偏光子Aのローカルな吸収軸の平面(偏光子B)への正射影の分布を示す模式図であり、図3において、各「AA」は、吸収軸の正射影の方向を示す。図3に示すように、吸収軸の正射影の方向AAが互いに異なる複数の領域を有する場合、偏光子A内においても吸収軸の方向が互いに異なる複数の領域を有することは明らかである。
【0029】
偏光子Aにおける吸収軸は、上記(位置Zの特定方法)で述べた通り、AxoScan OPMF-1を用いて測定できる。
上記のように配向された吸収軸を有する偏光子Aは、例えば、後述の<<光吸収異方性層の形成方法>>に記載の方法で形成できる。
なお、偏光子Aにおける吸収軸は、特定要件を満たす位置Zが存在するものであれば、上記の態様に制限されない。例えば、吸収軸が全体にわたり平行である偏光子A、および、吸収軸が互いに異なる複数の領域を有する偏光子Bの組み合わせにより、特定要件を満たす位置Zが存在していてもよい。
【0030】
<<樹脂基材>>
偏光子Aは、樹脂基材を含んでいてもよい。偏光子Aを曲面状に成形する場合、樹脂基材は、tanδのピーク温度が170℃以下であることが好ましい。更に低温で成形が可能となる観点では、tanδのピーク温度が150℃以下であることが好ましく、tanδのピーク温度が130℃以下であることがより好ましい。
【0031】
ここで、tanδの測定方法について記載する。動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御株式会社製DVA-200)を用いて、あらかじめ温度25℃湿度60%Rh雰囲気下で2時間以上調湿したフィルム試料について、下記条件において、E”(損失弾性率)とE’(貯蔵弾性率)を測定し、tanδ(=E”/E’)を求める値とする。
装置:アイティー計測制御株式会社製 DVA-200
試料:5mm、長さ50mm(ギャップ20mm)
測定条件:引張りモード
測定温度:-150℃~220℃
昇温条件:5℃/min
周波数:1Hz
なお、光学用途においては、延伸処理がなされた樹脂基材を使用することが多く、延伸処理によって、tanδのピーク温度が高くなることが多い。例えば、TAC(トリアセチルセルロース)基材(TG40、富士フイルム社製)では、tanδのピーク温度は180℃以上となる。
【0032】
樹脂基材としては、特に制限されず、様々な光学樹脂からなる基材が使用可能であるが、上記tanδのピーク温度が170℃以下である樹脂基材が好ましい。そのような樹脂基材を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、および、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステルおよびポリアクリル酸エステル等のアクリル系樹脂;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;並びに、ポリフェニレンスルフィドおよびポリフェニレンオキシドが挙げられる。なかでも、市場から容易に入手できたり、透明性に優れていたりする点から、環状オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートまたはアクリル系樹脂が好ましく、環状オレフィン系樹脂またはポリメタクリル酸エステルがより好ましい。
【0033】
市販の樹脂基材としては、テクノロイS001G、テクノロイS014G、テクノロイS000、テクノロイC001、および、テクノロイC000(住化アクリル販売株式会社)、ルミラーUタイプ、ルミラーFX10、および、ルミラーSF20(東レ株式会社)、HK-53A(東山フィルム株式会社)、テフレックスFT3(帝人デュポンフィルム株式会社)、エスシーナおよびSCA40(積水化学工業(株))、ゼオノアフィルム(オプテス(株))、並びに、アートンフィルム(JSR(株))が挙げられる。
【0034】
樹脂基材の厚さは特に制限されないが、5~300μmが好ましく、5~100μmがより好ましく、5~30μmが更に好ましい。
【0035】
<<光吸収異方性層>>
光吸収異方性層は、上記の通り、液晶性化合物と二色性物質を含むことが好ましい。
このような光吸収異方性層は、液晶性化合物および二色性物質を含む組成物(以下、「光吸収異方性層形成用組成物」ともいう。)を用いて形成できる。
加熱時の偏光度低下が抑制される点で、光吸収異方性層形成用組成物に含まれる液晶化合物および/または二色性物質がラジカル重合性基を有することが好ましい。光吸収異方性層形成用組成物の固形分重量に対して、ラジカル重合性基のモル含有率が、0.6mmol/g以上であることが好ましく、1.0mmol/g以上であることがより好ましく、1.5mmol/g以上であることが更に好ましい。上限値は特に制限されないが、5mmol/g以下が好ましい。
【0036】
<液晶性化合物>
光吸収異方性層形成用組成物は、液晶性化合物を含む。
液晶性化合物は、可視領域で二色性を示さない液晶性化合物が好ましい。
液晶性化合物としては、低分子液晶性化合物および高分子液晶性化合物のいずれも用いることができる。ここで、「低分子液晶性化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有さない液晶性化合物のことをいう。また、「高分子液晶性化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有する液晶性化合物のことをいう。
低分子液晶性化合物としては、例えば、特開2013-228706号公報の[0027]~[0034]段落に記載されている液晶性化合物が挙げられる。なかでもスメックチック性を示す低分子液晶性化合物が好ましい。
高分子液晶性化合物としては、例えば、特開2011-237513号公報に記載されているサーモトロピック液晶性高分子が挙げられる。また、高分子液晶性化合物は、末端に架橋性基(例えば、アクリロイル基およびメタクリロイル基)を有していることが好ましい。
液晶性化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。高分子液晶性化合物と低分子液晶性化合物を併用することも好ましい。
液晶性化合物の含有量は、光吸収異方性層形成用組成物中の二色性物質の含有量100質量部に対して、25~2000質量部が好ましく、33~1000質量部がより好ましく、50~500質量部が更に好ましい。液晶性化合物の含有量が上記範囲内にあることで、偏光子の配向度がより向上する。
【0037】
液晶性化合物は、得られる光吸収異方性層の配向度がより高くなる理由から、高分子液晶性化合物であることが好ましく、下記式(1)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(1)」とも略す。)を含む高分子液晶性化合物であることがより好ましい。
【0038】
【化1】
【0039】
上記式(1)中、P1は繰り返し単位の主鎖を表し、L1は単結合または2価の連結基を表し、SP1はスペーサー基を表し、M1はメソゲン基を表し、T1は末端基を表す。
【0040】
P1が表す繰り返し単位の主鎖としては、例えば、下記式(P1-A)~(P1-D)で表される基が挙げられ、なかでも、原料となる単量体の多様性および取り扱いが容易である観点から、下記式(P1-A)で表される基が好ましい。
【0041】
【化2】
【0042】
式(P1-A)~(P1-D)において、「*」は、式(1)におけるL1との結合位置を表す。式(P1-A)において、Rは水素原子またはメチル基を表す。式(P1-D)において、Rはアルキル基を表す。
式(P1-A)で表される基は、得られる光吸収異方性層の配向度がより高くなる理由から、(メタ)アクリル酸エステルの重合によって得られるポリ(メタ)アクリル酸エステルの部分構造の一単位であることが好ましい。
式(P1-B)で表される基は、得られる光吸収異方性層の配向度がより高くなる理由から、エチレングリコールを重合して得られるポリエチレングリコールにおけるエチレングリコール単位であることが好ましい。
式(P1-C)で表される基は、得られる光吸収異方性層の配向度がより高くなる理由から、プロピレングリコールを重合して得られるプロピレングリコール単位であることが好ましい。
式(P1-D)で表される基は、得られる光吸収異方性層の配向度がより高くなる理由から、シラノールの縮重合によって得られるポリシロキサンのシロキサン単位であることが好ましい。
【0043】
L1は、単結合または2価の連結基である。
L1が表す2価の連結基としては、-C(O)O-、-OC(O)-、-O-、-S-、-C(O)NR-、-NRC(O)-、-SO-、および、-NR-などが挙げられる。式中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表わす。
P1が式(P1-A)で表される基である場合には、得られる光吸収異方性層の配向度がより高くなる理由から、L1は-C(O)O-で表される基が好ましい。
P1が式(P1-B)~(P1-D)で表される基である場合には、得られる光吸収異方性層の配向度がより高くなる理由から、L1は単結合が好ましい。
【0044】
SP1が表すスペーサー基は、液晶性を発現しやすいこと、および、原材料の入手性などの理由から、オキシエチレン構造、オキシプロピレン構造、ポリシロキサン構造およびフッ化アルキレン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含むことが好ましい。
ここで、SP1が表すオキシエチレン構造は、*-(CH-CHO)n1-*で表される基が好ましい。式中、n1は1~20の整数を表し、*は、上記式(1)中のL1またはM1との結合位置を表す。n1は、得られる光吸収異方性層の配向度がより高くなる理由から、2~10の整数であることが好ましく、2~4の整数であることがより好ましく、3であることが最も好ましい。
また、SP1が表すオキシプロピレン構造は、得られる光吸収異方性層の配向度がより高くなる理由から、*-(CH(CH)-CHO)n2-*で表される基が好ましい。式中、n2は1~3の整数を表し、*はL1またはM1との結合位置を表す。
また、SP1が表すポリシロキサン構造は、得られる光吸収異方性層の配向度がより高くなる理由から、*-(Si(CH-O)n3-*で表される基が好ましい。式中、n3は6~10の整数を表し、*はL1またはM1との結合位置を表す。
また、SP1が表すフッ化アルキレン構造は、得られる光吸収異方性層の配向度がより高くなる理由から、*-(CF-CFn4-*で表される基が好ましい。式中、n4は6~10の整数を表し、*はL1またはM1との結合位置を表す。
【0045】
M1が表すメソゲン基とは、液晶形成に寄与する液晶分子の主要骨格を示す基である。液晶分子は、結晶状態と等方性液体状態の中間の状態(メソフェーズ)である液晶性を示す。メソゲン基については特に制限されず、例えば、「Flussige Kristalle in Tabellen II」(VEB Deutsche Verlag fur Grundstoff Industrie, Leipzig、1984年刊)、特に第7頁~第16頁の記載、および、液晶便覧編集委員会編、液晶便覧(丸善、2000年刊)(特に第3章)の記載を参照できる。
メソゲン基としては、例えば、芳香族炭化水素基、複素環基、および、脂環式基からなる群から選択される少なくとも1種の環状構造を有する基であることが好ましい。
メソゲン基は、得られる光吸収異方性層の配向度がより高くなる理由から、芳香族炭化水素基を有するのが好ましく、2~4個の芳香族炭化水素基を有するのがより好ましく、3個の芳香族炭化水素基を有するのが更に好ましい。
【0046】
メソゲン基としては、液晶性の発現、液晶相転移温度の調整、原料入手性および合成適性という観点、並びに、本発明の効果がより優れる点から、下記式(M1-A)または下記式(M1-B)で表される基が好ましく、式(M1-B)で表される基がより好ましい。
【0047】
【化3】
【0048】
式(M1-A)中、A1は、芳香族炭化水素基、複素環基および脂環式基からなる群より選択される2価の基である。これらの基は、アルキル基、フッ化アルキル基、アルコキシ基または置換基で置換されていてもよい。
A1で表される2価の基は、4~6員環であることが好ましい。また、A1で表される2価の基は、単環でも、縮環であってもよい。
*は、SP1またはT1との結合位置を表す。
【0049】
A1が表す2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフチレン基、フルオレン-ジイル基、アントラセン-ジイル基およびテトラセン-ジイル基などが挙げられ、メソゲン骨格の設計の多様性および原材料の入手性などの観点から、フェニレン基またはナフチレン基が好ましく、フェニレン基がより好ましい。
【0050】
A1が表す2価の複素環基としては、芳香族または非芳香族のいずれであってもよいが、配向度がより向上するという観点から、2価の芳香族複素環基であることが好ましい。
2価の芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子および酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。
2価の芳香族複素環基の具体例としては、例えば、ピリジレン基(ピリジン-ジイル基)、ピリダジン-ジイル基、イミダゾール-ジイル基、チエニレン(チオフェン-ジイル基)、キノリレン基(キノリン-ジイル基)、イソキノリレン基(イソキノリン-ジイル基)、オキサゾール-ジイル基、チアゾール-ジイル基、オキサジアゾール-ジイル基、ベンゾチアゾール-ジイル基、ベンゾチアジアゾール-ジイル基、フタルイミド-ジイル基、チエノチアゾール-ジイル基、チアゾロチアゾール-ジイル基、チエノチオフェン-ジイル基、および、チエノオキサゾール-ジイル基などが挙げられる。
【0051】
A1が表す2価の脂環式基の具体例としては、シクロペンチレン基およびシクロへキシレン基などが挙げられる。
【0052】
式(M1-A)中、a1は1~10の整数を表す。a1が2以上である場合には、複数のA1は同一でも異なっていてもよい。
【0053】
式(M1-B)中、A2およびA3はそれぞれ独立に、芳香族炭化水素基、複素環基および脂環式基からなる群より選択される2価の基である。A2およびA3の具体例および好適態様は、式(M1-A)のA1と同様であるので、その説明を省略する。
式(M1-B)中、a2は1~10の整数を表し、a2が2以上である場合には、複数のA2は同一でも異なっていてもよく、複数のA3は同一でも異なっていてもよく、複数のLA1は同一でも異なっていてもよい。a2は、得られる光吸収異方性層の配向度がより高くなる理由から、2以上の整数であることが好ましく、2であることがより好ましい。
式(M1-B)中、a2が1である場合には、LA1は2価の連結基である。a2が2以上である場合には、複数のLA1はそれぞれ独立に、単結合または2価の連結基であり、複数のLA1のうち少なくとも1つが2価の連結基である。a2が2である場合、得られる光吸収異方性層の配向度がより高くなる理由から、2つのLA1のうち、一方が2価の連結基であり、他方が単結合であることが好ましい。
【0054】
式(M1-B)中、LA1が表す2価の連結基としては、-O-、-(CH-、-(CF-、-Si(CH-、-(Si(CHO)-、-(OSi(CH-(gは1~10の整数を表す。)、-N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)-C(Z’)-、-C(O)-、-OC(O)-、-C(O)O-、-O-C(O)O-、-N(Z)C(O)-、-C(O)N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)O-、-O-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)N(Z”)-、-N(Z”)-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)-S-、-S-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-N=C(Z’)-(Z、Z’、Z”は独立に、水素、C1~C4アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、シアノ基、または、ハロゲン原子を表す。)、-C≡C-、-N=N-、-S-、-S(O)-、-S(O)(O)-、-(O)S(O)O-、-O(O)S(O)O-、-SC(O)-、および、-C(O)S-などが挙げられる。なかでも、得られる光吸収異方性層の配向度がより高くなる理由から、-C(O)O-が好ましい。LA1は、これらの基を2つ以上組み合わせた基であってもよい。
【0055】
M1の具体例としては、例えば以下の構造が挙げられる。なお、下記具体例において、「Ac」は、アセチル基を表す。
【0056】
【化4】
【0057】
【化5】
【0058】
T1が表す末端基としては、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基(ROC(O)-:Rはアルキル基)、炭素数1~10のアシルオキシ基、炭素数1~10のアシルアミノ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニルアミノ基、炭素数1~10のスルホニルアミノ基、炭素数1~10のスルファモイル基、炭素数1~10のカルバモイル基、炭素数1~10のスルフィニル基、および、炭素数1~10のウレイド基、(メタ)アクリロイルオキシ基含有基などが挙げられる。上記(メタ)アクリロイルオキシ基含有基としては、例えば、-L-A(Lは単結合または連結基を表す。連結基の具体例は上述したL1およびSP1と同じである。Aは(メタ)アクリロイルオキシ基を表す)で表される基が挙げられる。
T1は、得られる光吸収異方性層の配向度がより高くなる理由から、炭素数1~10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~5のアルコキシがより好ましく、メトキシ基が更に好ましい。これらの末端基は、これらの基、または、特開2010-244038号公報に記載の重合性基によって、更に置換されていてもよい。
T1の主鎖の原子数は、得られる光吸収異方性層の配向度がより高くなる理由から、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10が更に好ましく、1~7が特に好ましい。T1の主鎖の原子数が20以下であることで、偏光子の配向度がより向上する。ここで、T1おける「主鎖」とは、M1と結合する最も長い分子鎖を意味し、水素原子はT1の主鎖の原子数にカウントしない。例えば、T1がn-ブチル基である場合には主鎖の原子数は4であり、T1がsec-ブチル基である場合の主鎖の原子数は3である。
【0059】
繰り返し単位(1)の含有量は、得られる光吸収異方性層の配向度がより高くなる理由から、高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位100質量%に対して、20~100質量%が好ましい。
本明細書において、高分子液晶性化合物に含まれる各繰り返し単位の含有量は、各繰り返し単位を得るために使用される各単量体の仕込み量(質量)に基づいて算出される。
繰り返し単位(1)は、高分子液晶性化合物中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。なかでも、得られる光吸収異方性層の配向度がより高くなる理由から、繰り返し単位(1)が高分子液晶性化合物中に2種含まれているのがよい。
【0060】
高分子液晶性化合物が繰り返し単位(1)を2種含む場合、得られる光吸収異方性層の配向度がより高くなる理由から、一方(繰り返し単位A)においてT1が表す末端基がアルコキシ基であり、他方(繰り返し単位B)においてT1が表す末端基がアルコキシ基以外の基であることが好ましい。
上記繰り返し単位BにおいてT1が表す末端基は、得られる光吸収異方性層の配向度がより高くなる理由から、アルコキシカルボニル基、シアノ基、または、(メタ)アクリロイルオキシ基含有基であることが好ましく、アルコキシカルボニル基、または、シアノ基であることがより好ましい。
高分子液晶性化合物中の上記繰り返し単位Aの含有量と高分子液晶性化合物中の上記繰り返し単位Bの含有量との割合(A/B)は、得られる光吸収異方性層の配向度がより高くなる理由から、50/50~95/5であることが好ましく、60/40~93/7であることがより好ましく、70/30~90/10であることが更に好ましい。
【0061】
(繰り返し単位(3-2))
高分子液晶性化合物は、更に、下記式(3-2)で表される繰り返し単位(本明細書において、「繰り返し単位(3-2)」ともいう。)を含んでいてもよい。これにより、高分子液晶性化合物の溶媒に対する溶解性が向上すること、および、液晶相転移温度の調整が容易になることなどの利点がある。
繰り返し単位(3-2)は、少なくともメソゲン基を有しないという点で、上記繰り返し単位(1)と異なる。
高分子液晶性化合物が繰り返し単位(3-2)を含む場合には、高分子液晶性化合物は、繰り返し単位(1)と繰り返し単位(3-2)との共重合体であってよく、更に、繰り返し単位A,Bを含む共重合体であってもよい。上記共重合体は、ブロック重合体、交互重合体、ランダム重合体、および、グラフト重合体など、いずれの重合体であってもよい。
【0062】
【化6】
【0063】
式(3-2)中、P3は繰り返し単位の主鎖を表し、L3は単結合または2価の連結基を表し、SP3はスペーサー基を表し、T3は末端基を表す。
式(3-2)におけるP3、L3、SP3およびT3の具体例はそれぞれ、上記式(1)におけるP1、L1、SP1およびT1と同様である。
ここで、式(3-2)におけるT3は、光吸収異方性層の強度が向上する観点から、重合性基を有することが好ましい。
【0064】
繰り返し単位(3-2)を含む場合の含有量は、高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位100質量%に対して、0.5~40質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましい。
繰り返し単位(3-2)は、高分子液晶性化合物中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。繰り返し単位(3-2)を2種以上含む場合には、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0065】
(重量平均分子量)
高分子液晶性化合物の重量平均分子量(Mw)は、得られる光吸収異方性層の配向度がより高くなる理由から、1000~500000が好ましく、2000~300000がより好ましい。高分子液晶性化合物のMwが上記範囲内にあれば、高分子液晶性化合物の取り扱いが容易になる。
特に、塗布時のクラック抑制の観点から、高分子液晶性化合物の重量平均分子量(Mw)は、10000以上が好ましく、10000~300000がより好ましい。
また、配向度の温度ラチチュードの観点から、高分子液晶性化合物の重量平均分子量(Mw)は、10000未満が好ましく、2000以上10000未満が好ましい。
本明細書において記載する重量平均分子量および数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)法により測定された値である。
・溶媒(溶離液):N-メチルピロリドン
・装置名:TOSOH HLC-8220GPC
・カラム:TOSOH TSKgelSuperAWM-H(6mm×15cm)を3本接続して使用
・カラム温度:25℃
・試料濃度:0.1質量%
・流速:0.35mL/min
・校正曲線:TOSOH製TSK標準ポリスチレン Mw=2800000~1050(Mw/Mn=1.03~1.06)までの7サンプルによる校正曲線を使用
【0066】
(含有量)
液晶性化合物の含有量は、光吸収異方性層形成用組成物における固形分中の50~99質量%となる量であることが好ましく、70~96質量%となる量であることがより好ましい。
ここで、「光吸収異方性層形成用組成物における固形分」とは、溶媒を除いた成分をいう。固形分の具体例としては、上記液晶性化合物および後述する二色性物質、重合開始剤、および、界面活性剤が挙げられる。
【0067】
<二色性物質>
光吸収異方性層形成用組成物は、二色性物質を含む。
二色性物質としては、特に制限されず、公知の二色性物質(二色性色素)が使用でき、例えば、可視光吸収物質(二色性色素)、発光物質(蛍光物質、燐光物質)、紫外線吸収物質、赤外線吸収物質、非線形光学物質、カーボンナノチューブ、および、無機物質(例えば量子ロッド)が挙げられる。
二色性物質としては、例えば、特開2013-228706号公報の[0067]~[0071]段落、特開2013-227532号公報の[0008]~[0026]段落、特開2013-209367号公報の[0008]~[0015]段落、特開2013-14883号公報の[0045]~[0058]段落、特開2013-109090号公報の[0012]~[0029]段落、特開2013-101328号公報の[0009]~[0017]段落、特開2013-37353号公報の[0051]~[0065]段落、特開2012-063387号公報の[0049]~[0073]段落、特開平11-305036号公報の[0016]~[0018]段落、特開2001-133630号公報の[0009]~[0011]段落、特開2011-215337号公報の[0030]~[0169]段落、特開2010-106242号公報の[0021]~[0075]段落、特開2010-215846号公報の[0011]~[0025]段落、特開2011-048311号公報の[0017]~[0069]段落、特開2011-213610号公報の[0013]~[0133]段落、特開2011-237513号公報の[0074]~[0246]段落、特開2016-006502号公報の[0005]~[0051]段落、国際公開第2016/060173号の[0005]~[0041]段落、国際公開第2016/136561号の[0008]~[0062]段落、国際公開第2017/154835号の[0014]~[0033]段落、国際公開第2017/154695号の[0014]~[0033]段落、国際公開第2017/195833号の[0013]~[0037]段落、国際公開第2018/164252号の[0014]~[0034]段落に記載されたものが挙げられる。
【0068】
光吸収異方性層は、2種以上の二色性物質を含んでいてもよく、例えば、得られる液晶層を黒色に近づける観点から、波長370~550nmの範囲に極大吸収波長を有する少なくとも1種の二色性物質と、波長500~700nmの範囲に極大吸収波長を有する少なくとも1種の二色性物質とを併用することが好ましい。
【0069】
光吸収異方性層形成用組成物に含まれる二色性物質は、架橋性基を有していてもよい。特に、加熱時の偏光度変化を抑制する観点では、二色性物質が架橋性基を有することが好ましい。
上記架橋性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、オキセタニル基、および、スチリル基が挙げられ、なかでも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0070】
(含有量)
光吸収異方性層形成用組成物の二色性物質の含有量は、二色性物質の配向度がより高くなる理由から、上記液晶性化合物100質量部に対して1~400質量部であることが好ましく、2~100質量部であることがより好ましく、5~30質量部であることが更に好ましい。
【0071】
<界面活性剤>
光吸収異方性層形成用組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。
光吸収異方性層形成用組成物に含まれる界面活性剤としては、公知の界面活性剤を用いることが可能であるが、フッ化アルキル基を含む繰り返し単位(以下、「繰り返し単位F」とも略す。)と、環構造を含む繰り返し単位(以下、「繰り返し単位M」とも略す。)とを有する共重合体が好ましい。
【0072】
(繰り返し単位F)
上記共重合体が有する繰り返し単位Fは、下記式(a)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【化7】
【0073】
上記式(a)中、Ra1は、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表し、Ra2は、少なくともひとつの炭素原子がフッ素原子を置換基として有する炭素数1~20のアルキル基もしくは炭素数2~20のアルケニル基を表す。
【0074】
上記式(a)中、Ra2は、得られる光吸収異方性層の配向欠陥がより抑制される理由から、少なくともひとつの炭素原子がフッ素原子を置換基として有する炭素数1~10のアルキル基もしくは炭素数2~10のアルケニレン基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基であることがより好ましく、Ra2に含まれる半数以上の炭素原子がフッ素原子を置換基として有することが更に好ましい。
【0075】
上記共重合体が有する繰り返し単位Fは、下記式(b)で表される繰り返し単位であることがより好ましい。
【化8】
【0076】
上記式(b)中、Ra1は、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表し、maおよびnaは、それぞれ独立に0以上の整数を表し、Xは、水素原子またはフッ素原子を表す。
ここで、maは、1以上10以下の整数であることが好ましく、naは、4以上12以下が好ましい。
【0077】
上記共重合体が有する繰り返し単位Fを形成する単量体(以下、「フルオロアルキル基含有モノマー」とも略す。)としては、例えば、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロ-3-メチルブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロ-5-メチルヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロ-7-メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H-ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H-ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート、1H-1-(トリフオロメチル)トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H-ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロブチル-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロヘキシル-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロオクチル-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロ-3-メチルブチル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロ-5-メチルヘキシル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、および、3-(パーフルオロ-7-メチルオクチル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0078】
フルオロアルキル基含有モノマーを共重合させる割合は、反応性および表面改質効果の観点から、後述するメソゲン基を有するモノマー1モルに対して、0.01~100モルであることが好ましく、0.1~50モルであることがより好ましく、1~30モルであることが更に好ましい。
【0079】
(繰り返し単位M)
上記共重合体が有する繰り返し単位Mは、環構造を含む単位であればよい。
環構造としては、例えば、芳香族炭化水素基、複素環基、および、脂環式基からなる群から選択される少なくとも1種の環構造が挙げられる。配向欠陥を抑制する観点から、繰り返し単位Mは、2個以上の環構造を有することが好ましい。
【0080】
上記共重合体が有する繰り返し単位Mは、下記式(b)で表される繰り返し単位であることがより好ましい。
【化9】
【0081】
上記式(c)中、Ra1は、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表し、L4およびL5は、それぞれ独立に単結合または炭素数1~8のアルキレン基を表し、G1およびG2は、それぞれ独立に2価の環状基を表し、T4は末端基を表す。nは、0~4の整数を表す。nが2~4の整数を表す場合、2以上のL5は同一でも異なっていてもよく、2以上のG2は同一でも異なっていてもよい。
【0082】
L4およびL5が表すアルキレン基については、アルキレン基を構成する1個以上の-CH-は、単結合、-O-、-S-、-NR31-、-C(=O)-、-C(=S)-、-CR32=CR32-、-C≡C-、-SiR3334-、-N=N-、-CR35=N-N=CR36-、-CR37=N-、および、-SO-からなる群より選択される少なくとも1種の基によって置き換えられていてもよく、R31~R37は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、または、炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表す。
また、L4またはL5がアルキレン基を表す場合、アルキレン基を構成する1個以上の-CH-に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、炭素数1~10の直鎖状のアルキル基および炭素数1~10の分岐状のアルキル基からなる群より選択される少なくとも1種の基によって置き換えられていてもよい。
なかでも、L4については、炭素数4~6で末端が酸素のアルキレンオキシ基が好ましく、L5については、エステル基が好ましい。
【0083】
G1およびG2が表す2価の環状基は、それぞれ独立に、炭素数5~8の2価の脂環式炭化水素基または芳香族炭化水素基を表し、上記脂環式炭化水素基を構成する-CH-の1個以上が-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい。更に、上記2価の環状基は、脂環式炭化水素基および芳香族炭化水素基から選択される複数の基が単結合してなる2価の基であってもよい。なかでも、ベンゼン環が好ましい。
【0084】
T4が表す末端基としては、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基(ROC(O)-:Rは炭素数1~10のアルキル基)、炭素数1~10のアシルオキシ基、炭素数1~10のアシルアミノ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニルアミノ基、炭素数1~10のスルホニルアミノ基、炭素数1~10のスルファモイル基、炭素数1~10のカルバモイル基、炭素数1~10のスルフィニル基、炭素数1~10のウレイド基、および、(メタ)アクリロイルオキシ基含有基が挙げられる。なかでも、水素原子、または、シアノ基が好ましい。
【0085】
上記共重合体が有する全ての繰り返し単位に対する繰り返し単位Fのモル比は、配向度の観点から50モル%以上が好ましく、ハジキの観点から、70モル%以下が好ましい。
【0086】
(含有量)
上述した界面活性剤の含有量は、得られる光吸収異方性層の配向度がより高くなる理由から、上記液晶性化合物100質量部に対して0.05~15質量部であることが好ましく、0.08~10質量部であることがより好ましく、0.1~5質量部であることが更に好ましい。
【0087】
<重合開始剤>
光吸収異方性層形成用組成物は、重合開始剤を含むことが好ましい。
重合開始剤としては特に制限されないが、感光性を有する化合物、すなわち光重合開始剤であることが好ましい。
光重合開始剤としては、各種の化合物を特に制限なく使用できる。具体的な光重合開始剤としては、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、および、米国特許第2367670号の各明細書)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号および米国特許第2951758号の各明細書)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報および米国特許第4239850号明細書)、オキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書)、o-アシルオキシム化合物(特開2016-027384公報[0065]段落)、並びに、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63-040799号公報、特公平5-029234号公報、特開平10-095788号公報および特開平10-029997号公報)が挙げられる。
このような光重合開始剤としては、市販品も用いることができる。光重合開始剤の市販品としては、例えば、BASF社製のイルガキュアー184、イルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー651、イルガキュアー819、イルガキュアーOXE-01およびイルガキュアーOXE-02が挙げられる。
【0088】
光吸収異方性層形成用組成物が重合開始剤を含む場合、重合開始剤の含有量は、光吸収異方性層形成用組成物中の上記二色性物質と上記高分子液晶性化合物との合計100質量部に対し、0.01~30質量部が好ましく、0.1~15質量部がより好ましい。重合開始剤の含有量が0.01質量部以上であることで、光吸収異方性膜の耐久性が良好となり、30質量部以下であることで、光吸収異方性膜の配向度がより良好となる。
重合開始剤は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。重合開始剤を2種以上含む場合、その合計量が上記範囲内であるのが好ましい。
【0089】
<溶媒>
光吸収異方性層形成用組成物は、作業性等の観点から、溶媒を含むことが好ましい。
溶媒としては、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロペタンタノン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロピラン、ジオキソランなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(例えば、シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼンなど)、ハロゲン化炭素類(例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなど)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチルなど)、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、イソペンチルアルコール、ネオペンチルアルコール、ジアセトンアルコール、ベンジルアルコールなど)、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、1,2-ジメトキシエタンなど)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドンなど)、および、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジンなど)などの有機溶媒、並びに、水が挙げられる。
溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの溶媒のうち、溶解性に優れるという効果を活かす観点から、ケトン類(特にシクロペンタノン、もしくは、シクロヘキサノン)、エーテル類(特にテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロピラン、もしくは、ジオキソラン)、または、アミド類(特に、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、もしくは、N-エチルピロリドン)が好ましい。
【0090】
光吸収異方性層形成用組成物が溶媒を含む場合、溶媒の含有量は、光吸収異方性層形成用組成物の全質量に対して、80~99質量%が好ましく、83~97質量%がより好ましく、85~95質量%が特に好ましい。
溶媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。溶媒を2種以上含む場合、その合計量が上記範囲内であるのが好ましい。
【0091】
光吸収異方性層の厚さは、特に制限されないが、光学要素を薄型化する観点から、100~8000nmが好ましく、300~5000nmがより好ましい。
【0092】
<<配向膜>>
偏光子Aは、配向膜を更に有していてもよく、光吸収異方性層の吸収軸の配向性の観点から、配向膜を有することが好ましい。
配向膜としては、配向機能を有する膜であれば特に制限されないが、光配向膜が好ましい。
偏光子Aが有してもよい光配向膜としては、光照射により配向機能が生じる配向膜であれば特に制限されず、公知の光配向膜を用いることができる。
【0093】
光配向膜を形成するための材料は特に制限されないが、光配向剤が挙げられる。光配向膜は、例えば、光配向剤を含む光配向膜形成用組成物を用いて形成される。
光配向剤とは、光配向性基を有する化合物である。光配向性基を有する化合物としては、光配向性基を含む繰り返し単位を有する重合体(ポリマー)であってもよい。
上記光配向性基は、光照射により膜に異方性を付与できる官能基である。より具体的には、光(例えば、直線偏光)の照射により、その基中の分子構造に変化が起こり得る基である。典型的には、光(例えば、直線偏光)の照射により、光異性化反応、光二量化反応、および光分解反応から選ばれる少なくとも1つの光反応が引き起こされる基をいう。
これら光配向性基のなかでも、光異性化反応を起こす基(光異性化する構造を有する基)、または、光二量化反応を起こす基(光二量化する構造を有する基)が好ましく、光二量化反応を起こす基がより好ましい。
【0094】
上記光異性化反応とは、光の作用で立体異性化、または、構造異性化を引き起こす反応をいう。このような光異性化反応を起こす物質としては、例えば、アゾベンゼン構造を有する物質(K. Ichimura et al., Mol.Cryst.Liq.Cryst., 298, page 221 (1997))、ヒドラゾノ-β-ケトエステル構造を有する物質(S. Yamamura et al., Liquid Crystals, vol. 13, No. 2, page 189 (1993))、スチルベン構造を有する物質(J.G.Victor and J.M.Torkelson, Macromolecules, 20, page 2241 (1987))、桂皮酸(シンナモイル)構造(骨格)を有する基、および、スピロピラン構造を有する物質(K. Ichimura et al., Chemistry Letters, page 1063 (1992) ;K.Ichimura et al., Thin Solid Films, vol. 235, page 101 (1993))が知られている。
上記光異性化反応を起こす基としては、C=C結合またはN=N結合を含む光異性化反応を起こす基が好ましく、このような基としては、例えば、アゾベンゼン構造(骨格)を有する基、ヒドラゾノ-β-ケトエステル構造(骨格)を有する基、スチルベン構造(骨格)を有する基、桂皮酸(シンナモイル)構造(骨格)を有する基、および、スピロピラン構造(骨格)を有する基などが挙げられる。これら基のなかでも、シンナモイル構造を有する基、または、クマリン構造を有する基が好ましく、シンナモイル構造を有する基がより好ましい。
【0095】
上記光二量化反応とは、光の作用で二つの基の間で付加反応が起こり、典型的には環構造が形成される反応をいう。このような光二量化を起こす物質としては、例えば、桂皮酸構造を有する物質(M. Schadt et al., J. Appl. Phys., vol. 31, No. 7, page 2155 (1992))、クマリン構造を有する物質(M. Schadt et al., Nature., vol. 381, page 212 (1996))、カルコン構造を有する物質(小川俊博他、液晶討論会講演予稿集,2AB03(1997))、および、ベンゾフェノン構造を有する物質(Y. K. Jang et al., SID Int. Symposium Digest, P-53(1997))が知られている。
上記光二量化反応を起こす基としては、例えば、桂皮酸(シンナモイル)構造(骨格)を有する基、クマリン構造(骨格)を有する基、カルコン構造(骨格)を有する基、ベンゾフェノン構造(骨格)を有する基、および、アントラセン構造(骨格)を有する基などが挙げられる。これら基のなかでも、シンナモイル構造を有する基、または、クマリン構造を有する基が好ましく、シンナモイル構造を有する基がより好ましい。
【0096】
また、上記光配向性基を有する化合物は、更に、架橋性基を有することが好ましい。
上記架橋性基としては、熱の作用により硬化反応を起こす熱架橋性基、光の作用により硬化反応を起こす光架橋性基が好ましく、熱架橋性基および光架橋性基をいずれも有する架橋性基であってもよい。
上記架橋性基としては、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、-NH-CH2-O-R(Rは水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。)で表される基、ラジカル重合性基(エチレン性不飽和二重結合を有する基)、および、ブロックイソシアネート基からなる群から選ばれた少なくとも1つが挙げられる。なかでも、エポキシ基、オキセタニル基、または、エチレン性不飽和二重結合を有する基が好ましい。
なお、3員環の環状エーテル基はエポキシ基とも呼ばれ、4員環の環状エーテル基はオキセタニル基とも呼ばれる。
また、ラジカル重合性基(エチレン性不飽和二重結合を有する基)としては、例えば、ビニル基、アリル基、スチリル基、アクリロイル基およびメタクリロイル基が挙げられ、アクリロイル基またはメタクリロイル基であることが好ましい。
【0097】
上記光配向膜の好適態様の一つとしては、シンナメート基を含む繰り返し単位a1を有する重合体Aを含む光配向膜形成用組成物を用いて形成される光配向膜が挙げられる。
ここで、本明細書において、シンナメート基とは、桂皮酸またはその誘導体を基本骨格として含む桂皮酸構造を有する基であって、下記式(I)または下記式(II)で表される基をいう。
【0098】
【化10】
【0099】
式中、Rは水素原子または1価の有機基を表し、Rは1価の有機基を表す。式(I)中、aは0~5の整数を表し、式(II)中、aは0~4を表す。aが2以上の場合、複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。*は結合手であることを示す。
【0100】
重合体Aは、シンナメート基を含む繰り返し単位a1を有する重合体であれば特に制限されず、従来公知の重合体を用いることができる。
重合体Aの重量平均分子量は、1000~500000が好ましく、2000~300000がより好ましく、3000~200000が更に好ましい。
ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によるポリスチレン(PS)換算値として定義され、本発明におけるGPCによる測定は、HLC-8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてTSKgel Super HZM-H、HZ4000、HZ2000を用いて測定できる。
【0101】
上記重合体Aが有するシンナメート基を含む繰り返し単位a1としては、例えば、下記式(A1)~(A4)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0102】
【化11】
【0103】
ここで、式(A1)および式(A3)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、式(A2)および式(A4)中、Rは炭素数1~6のアルキル基を表す。
式(A1)および式(A2)中、Lは単結合または2価の連結基を表し、aは0~5の整数を表し、Rは水素原子または1価の有機基を表す。
式(A3)および式(A4)中、Lは2価の連結基を表し、Rは1価の有機基を表す。
また、Lとしては、例えば、-CO-O-Ph-、-CO-O-Ph-Ph-、-CO-O-(CH-、-CO-O-(CH-Cy-、および、-(CH-Cy-などが挙げられる。ここで、Phは置換基を有していてもよい2価のベンゼン環(例えば、フェニレン基など)を表し、Cyは置換基を有していてもよい2価のシクロヘキサン環(例えば、シクロヘキサン-1,4-ジイル基など)を表し、nは1~4の整数を表す。
また、Lとしては、例えば、-O-CO-、-O-CO-(CH-O-などが挙げられる。ここで、mは1~6の整数を表す。
また、Rの1価の有機基としては、例えば、炭素数1~20の鎖状または環状のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、および、置換基を有していてもよい炭素数6~20のアリール基などが挙げられる。
また、Rの1価の有機基としては、例えば、炭素数1~20の鎖状または環状のアルキル基、および、置換基を有していてもよい炭素数6~20のアリール基などが挙げられる。
また、aは1であるのが好ましく、Rがパラ位に有しているのが好ましい。
また、上述したPh、Cyおよびアリール基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、および、アミノ基などが挙げられる。
【0104】
光吸収異方性層の配向性がより向上する点、および、光吸収異方性層の密着性がより向上する点から、上記重合体Aは、更に、架橋性基を含む繰り返し単位a2を有しているのが好ましい。
架橋性基の定義および好適態様は、上述した通りである。
なかでも、架橋性基を含む繰り返し単位a2としては、エポキシ基、オキセタニル基、エチレン性不飽和二重結合を有する基を有する繰り返し単位が好ましい。
【0105】
エポキシ基、オキセタニル基、エチレン性不飽和二重結合を有する基を有する繰り返し単位の好ましい具体例としては、下記の繰り返し単位が例示できる。なお、RおよびRは、それぞれ、上述した式(A1)および式(A1)中のRおよびRと同義である。
【0106】
【化12】
【0107】
上記重合体Aは、上述した繰り返し単位a1および繰り返し単位a2以外の他の繰り返し単位を有していてもよい。
他の繰り返し単位を形成するモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物、および、ビニル化合物などが挙げられる。
【0108】
光配向膜形成用組成物における上記重合体Aの含有量は、後述する有機溶媒を含む場合、有機溶媒100質量部に対して、0.1~50質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましい。
【0109】
光配向膜形成用組成物は、光配向膜を作製する作業性の観点から、溶媒を含むことが好ましい。溶媒としては、水、および、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、上記の光吸収異方性層形成用組成物が含んでいてもよい有機溶媒が挙げられる。
溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0110】
光配向膜形成用組成物は、上記以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、酸発生剤、架橋触媒、密着改良剤、レベリング剤、界面活性剤、および、可塑剤が挙げられる。
光配向膜形成用組成物を用いる光配向膜の形成方法については、後述する。
【0111】
偏光子Aは、光配向膜以外の他の配向膜を有していてもよい。
他の配向膜としては、例えば、有機化合物(好ましくはポリマー)の膜表面へのラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、および、ラングミュアブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例えば、ω-トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチルなど)の累積などの手法により形成される配向膜、並びに、電場の付与または磁場の付与により、配向機能が生じる配向膜が挙げられる。
【0112】
偏光子Aが配向膜を有する場合、その厚さは特に制限されないが、100~2000nmが好ましく、400~1000nmがより好ましい。
【0113】
<<偏光子Aの製造方法>>
偏光子Aの製造方法は、偏光子Aが曲面を有し、かつ、特定要件を満たす位置Zが出現するように吸収軸が配向されているものであれば、特に制限されず、公知の製造方法が適用できる。
より具体的な偏光子Aの製造方法としては、例えば、樹脂基材の表面に光配向膜を形成した後、形成された光配向膜の表面に上記光吸収異方性層形成用組成物を用いて光吸収異方性層を形成する方法が挙げられる。
【0114】
<光配向膜の形成方法>
光配向膜の形成方法は特に制限されず、例えば、上記の光配向膜形成用組成物を樹脂基材の表面に塗布して塗布膜を形成する塗布工程と、光配向膜形成用組成物の塗布膜に対し、偏光または非偏光を照射して光配向膜を形成する光照射工程とを有する製造方法が挙げられる。
【0115】
塗布工程は、光配向膜形成用組成物を樹脂基材の表面に塗布して塗布膜を形成する工程である。
光配向膜形成用組成物の塗布方法は制限されず、例えば、ロールコーティング法、グラビア印刷法、スピンコート法、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、スプレー法、および、インクジェット法が挙げられる。
【0116】
塗布工程により形成された塗布膜に対して、偏光または非偏光を照射する光照射工程を行うことにより、光配向膜が形成される。
なお、光照射工程において偏光を照射する場合、照射方向は塗布膜表面の法線方向であってもよく、塗布膜表面に対して斜め方向であってもよい。光照射工程において非偏光を照射する場合、照射方向は塗布膜表面に対して斜め方向である。
光照射工程に用いる光源は、赤外線、可視光または紫外線など、種々の光源を用いることができるが、紫外線が好ましい。
【0117】
なかでも、光照射工程では、偏光子Aの吸収軸が上記特定要件を満たす位置Zを存在させる態様となるように、上記塗布膜に対して、上記塗布膜を透過する領域によって偏光軸の向きが異なる紫外線(以下「偏光UV」ともいう。)を照射することが好ましく、曲面状の光配向膜形成用組成物の塗布膜に対して、上記偏光UVを照射することがより好ましい。
曲面状の光配向膜形成用組成物の塗布膜を形成する方法としては、曲面状に成形された樹脂基材の表面に光配向膜形成用組成物の塗布膜を形成する方法、および、平面状の樹脂基材の表面に光配向膜形成用組成物の塗布膜を形成した後、後述する曲面成形工程により樹脂基材および光配向膜形成用組成物の塗布膜の積層体を曲面状に成形する方法が挙げられる。
また、偏光UVを照射する方法としては、例えば、上記塗布膜よりも紫外線の光源側に配置された凸面を有するレンズに紫外線を通過させ、その通過するレンズの位置および焦点距離に応じて、レンズを通過した後の紫外線の偏光軸の向きを変えることにより、上記塗布膜の位置に応じて異なる偏光軸の向きを有する紫外線を照射する方法が挙げられる。
塗布膜に対して上記の光照射工程を行うことにより、曲面部分を有し、かつ、配向規制力の方向が互いに異なる複数の領域を有する配向膜が形成される。
【0118】
<光吸収異方性層の形成方法>
光吸収異方性層の形成方法は特に制限されないが、例えば、上述した光吸収異方性層形成用組成物を上記の光配向膜の形成工程で形成した光配向膜の表面に塗布して塗布膜を形成する工程(以下、「塗布膜形成工程」ともいう。)と、塗布膜に含まれる液晶性成分および/または二色性物質を配向させる工程(以下、「配向工程」ともいう。)と、をこの順に含む方法が挙げられる。
なお、液晶性成分とは、上述した液晶性化合物だけでなく、上述した二色性物質が液晶性を有している場合は、液晶性を有する二色性物質も含む成分である。また、光配向膜に代えて上記の他の配向膜を使用して光吸収異方性層を形成してもよい。
【0119】
(塗布膜形成工程)
塗布膜形成工程は、光吸収異方性層形成用組成物を光配向膜付き基材の光配向膜側の表面に塗布して塗布膜を形成する工程である。
上述した溶媒を含む光吸収異方性層形成用組成物を用いること、および/または、光吸収異方性層形成用組成物の加熱溶融液等の液状物を用いることにより、光配向膜の表面への光吸収異方性層形成用組成物の塗布がより容易になる。
光吸収異方性層形成用組成物の塗布方法としては、例えば、ロールコーティング法、グラビア印刷法、スピンコート法、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、スプレー法、および、インクジェット法などの公知の方法が挙げられる。
【0120】
なかでも、光吸収異方性層形成用組成物からなる塗布液をスプレー塗布し、光吸収異方性層形成用組成物の塗布膜を形成するスプレー法が好ましい。
スプレー塗布は、スプレーノズルから塗布液を微小液滴状に噴射し、塗布対象物に塗布する方法である。ノズルの種類としては、1流体ノズルおよび2流体ノズルが挙げられ、いずれも適用可能である。ノズルの形状については、吐出量および噴霧パターン(扇形状、柱状またはシャワー状)により様々な形状があるが、いずれも適用可能である。スプレー塗布において、塗布液濃度、塗出量、および、基体-ノズル間の距離により、塗布膜の厚さの制御を行うことができる。例えば、塗布液の濃度が同じであれば、塗出量が多いほど、あるいは、基体-ノズル間の距離が短いほど、より厚い塗布膜が得られる。
曲面を有する基材または光配向膜付き基材(以下「立体基材」ともいう。)に対してスプレー塗布を行う際は、型となる立体基材を回転ステージ上に載置し、あるいは、立体基材をスピンチャックにて真空吸着させて、立体基材を回転させながらスプレー塗布を行うことが好ましい。
【0121】
(配向工程)
配向工程は、塗布膜に含まれる液晶性成分を配向させる工程である。これにより、光吸収異方性層が得られる。
配向工程は、乾燥処理を有していてもよい。乾燥処理によって、溶媒などの成分を塗布膜から除去できる。乾燥処理は、塗布膜を室温下において所定時間放置する方法(例えば、自然乾燥)によって行われてもよいし、加熱および/または送風する方法によって行われてもよい。
ここで、光吸収異方性層形成用組成物に含まれる液晶性成分は、上述した塗布膜形成工程または乾燥処理によって、配向する場合がある。例えば、光吸収異方性層形成用組成物が溶媒を含む塗布液として調製されている態様では、塗布膜を乾燥して、塗布膜から溶媒を除去することで、光吸収異方性を持つ塗布膜(すなわち、光吸収異方性膜)が得られる。
乾燥処理が塗布膜に含まれる液晶性成分の液晶相への転移温度以上の温度により行われる場合には、後述する加熱処理は実施しなくてもよい。
【0122】
塗布膜に含まれる液晶性成分の液晶相への転移温度は、製造適性等の面から10~250℃が好ましく、25~190℃がより好ましい。上記転移温度が10℃以上であると、液晶相を呈する温度範囲にまで温度を下げるための冷却処理等が必要とならず、好ましい。また、上記転移温度が250℃以下であると、一旦液晶相を呈する温度範囲よりも更に高温の等方性液体状態にする場合にも高温を要さず、熱エネルギーの浪費、並びに、基板の変形および変質等を低減できるため、好ましい。
【0123】
配向工程は、加熱処理を有することが好ましい。これにより、塗布膜に含まれる液晶性成分を配向させることができるため、加熱処理後の塗布膜を光吸収異方性膜として好適に使用できる。
加熱処理は、製造適性等の面から10~250℃が好ましく、25~190℃がより好ましい。また、加熱時間は、1~300秒間が好ましく、1~60秒間がより好ましい。
【0124】
配向工程は、加熱処理後に実施される冷却処理を有していてもよい。冷却処理は、加熱後の塗布膜を室温(20~25℃)程度まで冷却する処理である。これにより、塗布膜に含まれる液晶性成分の配向を固定できる。冷却手段としては、特に制限されず、公知の方法により実施できる。
以上の工程によって、光吸収異方性膜を得ることができる。
なお、本態様では、塗布膜に含まれる液晶性成分を配向する方法として、乾燥処理および加熱処理などを挙げているが、これに制限されず、公知の配向処理によって実施できる。
【0125】
(他の工程)
光吸収異方性層の形成方法は、上記配向工程後に、光吸収異方性層を硬化させる工程(以下、「硬化工程」ともいう。)を有していてもよい。
硬化工程は、例えば、光吸収異方性層が架橋性基(重合性基)を有している場合には、加熱および/または光照射(露光)によって実施される。このなかでも、硬化工程は光照射によって実施されることが好ましい。
硬化に用いる光源は、赤外線、可視光または紫外線など、種々の光源を用いることが可能であるが、紫外線であることが好ましい。また、硬化時に加熱しながら紫外線を照射してもよいし、特定の波長のみを透過するフィルタを介して紫外線を照射してもよい。
露光が加熱しながら行われる場合、露光時の加熱温度は、液晶膜に含まれる液晶性成分の液晶相への転移温度にもよるが、25~140℃であることが好ましい。
また、露光は、窒素雰囲気下で行われてもよい。ラジカル重合によって液晶膜の硬化が進行する場合において、酸素による重合の阻害が低減されるため、窒素雰囲気下で露光することが好ましい。
【0126】
<曲面成形工程>
偏光子Aの製造方法は、平面状の基材、平面状の基材を有する積層体、および、平面状の偏光子からなる群より選択される部材を、熱成形または真空成形によって曲面状に成形する工程(以下、「曲面成形工程」ともいう。)を更に含むことが好ましい。
上記部材を曲面状に成形する方法としては、例えば、特開2004-322501号公報に記載されているようなインサート成形、並びに、国際公開第2010/001867号および特開2012-116094号公報に記載されているような真空成形、射出成形、圧空成形、減圧被覆成形、インモールド転写、および、金型プレスなどの成形方法が挙げられる。
上記部材を曲面状に成形する際に加熱することも好ましい。加熱温度は、80~170℃が好ましく、100~150℃がより好ましく、110~140℃が更に好ましい。
また、予め曲面部分を有する樹脂基材を準備した後、曲面を有する樹脂基材に、必要に応じて形成する光配向膜と、光吸収異方性層とを形成して、偏光子Aを作製してもよい。
【0127】
偏光子Aの製造方法としては、上記の樹脂基材の表面に光配向膜を形成する方法等により、曲面部分を有し、かつ、配向規制力の方向が互いに異なる複数の領域を有する配向膜を形成した後、得られた配向膜の表面に、上記の光吸収異方性層の形成方法により光吸収異方性層を形成することが好ましい。このとき、光吸収異方性層の形成方法としては、上記光吸収異方性層形成用組成物を塗布して光吸収異方性層を形成する工程を有することが好ましく、上記光吸収異方性層形成用組成物をスプレー塗布して光吸収異方性層を形成することがより好ましい。
なかでも、偏光子Aの製造方法としては、平面状の樹脂基材の表面に光配向膜形成用組成物を塗布して塗布膜を形成する塗布工程、樹脂基材および塗布膜を曲面状に成形する曲面成形工程、曲面状に成形された塗布膜に対して偏光または非偏光を照射する光照射工程、形成された光配向膜の表面に光吸収異方性層形成用組成物を塗布(好ましくはスプレー塗布)する塗布膜形成工程、および、形成された塗布膜に含まれる液晶性成分を配向させる配向工程を、この順序で実施することが好ましい。
ただし、偏光子Aの製造方法は上記の例に制限されない。
【0128】
〔偏光子B〕
偏光子Bは、吸収型の偏光子であれば特に制限されず、二色性物質を少なくとも含む公知の吸収型偏光子を用いることができる。
偏光子Bとしては、例えば、ポリビニルアルコールまたはその他の高分子樹脂からなる膜に二色性物質を染着した後、膜を延伸することで二色性物質を配向させた偏光子、並びに、偏光子Aと同様に、液晶化合物の配向を活用して二色性物質を配向させた光吸収異方性層を有する偏光子が挙げられる。
なかでも、入手性の観点、および、偏光度を高める観点から、ヨウ素で染色したポリビニルアルコールを延伸してなる偏光子が好ましい。
【0129】
本光学要素を画像表示装置に使用する場合、偏光子Bは、画像表示装置が備える液晶表示装置および有機EL表示装置等の画像表示素子に積層されていてもよい。換言すれば、上記画像表示素子が視認側に吸収型偏光子を有する場合、その吸収型偏光子を偏光子Bとして用いてもよい。
画像表示装置が吸収型偏光子を有さない場合、画像表示装置の視認側に偏光子Bを設ければよい。
【0130】
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、本光学要素と、画像表示素子とを少なくとも備える。これにより、曲面部分を有する吸収型偏光子を有する往復光学系を用いた画像表示装置において、画像表示素子により表示される画像におけるゴーストをより抑制できる。
また、画像表示装置は、波長板(λ/4板およびλ/2板など)、反射直線偏光子、反射円偏光子、偏光子Aおよび偏光子B以外の吸収型偏光子、ハーフミラー、並びに、反射防止フィルムなどの光学部材を組み込むことができる。
【0131】
〔第1実施形態〕
本発明に係る画像表示装置の第1の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図4は、第1実施形態に係る画像表示装置の構成を示す概略図である。
図4に示す画像表示装置20は、偏光子A100と、反射直線偏光子200と、第1のλ/4板600と、ハーフミラー300と、第2のλ/4板700と、偏光子B400と、画像表示素子500と、筐体24と、を備え、画像表示装置20には、直線L上に特定要件を満たす位置Zが存在している。
画像表示装置20が備える部材のうち、偏光子A100、反射直線偏光子200、第1のλ/4板600、ハーフミラー300、第2のλ/4板700、および、偏光子B400により、本光学要素が構成されている。
【0132】
後で詳しく述べるが、画像表示装置20において、光線Vは、反射直線偏光子200およびハーフミラー300によって反射された後、位置Zにおいて表示画像として観察される。即ち、光線Vは、反射直線偏光子200とハーフミラー300との間で往復する光路を有する。
本実施形態に係る画像表示装置20は、偏光子A100および偏光子B400が特的要件を満たす位置Zが存在するように構成されていることにより、位置Zにおいて観察される表示画像に発生するゴーストを効果的に抑制できる。
【0133】
本実施形態に係る画像表示装置が備える各部材について説明する。偏光子Aおよび偏光子Bについては、既に説明した通りである。
また、下記の画像表示装置の説明における、位置X、YおよびZ、直線L、並びに、仮想線L1~L4の規定等は、既に説明した本光学要素における位置X、YおよびZ、直線L、並びに、仮想線L1~L4の規定等と同じである。
【0134】
<λ/4板>
本実施形態に係る画像表示装置は、第1のλ/4板および第2のλ/4板を備える。
なお、本明細書において単に「λ/4板」と表記する場合、その構成および特徴等に関する記載が、第1のλ/4板および第2のλ/4板の両者に区別なく適用できることを意図している。
本実施形態に係る画像表示装置が備えるλ/4板は、直線偏光を円偏光に変換し、円偏光を直線偏光に変換するように、遅相軸の方向が設定されている。
λ/4板(1/4波長位相差板)は、可視域の波長のいずれかにおいて、およそ1/4波長となる位相差を有していればよい。λ/4板としては、例えば、波長550nmにおいて120~150nmの位相差を有する位相差板が挙げられ、波長550nmにおいておよそ138nm(138±10nm)の位相差を有する位相差板が好適に用いられる。
表示画像におけるゴーストを抑制し、更に輝度および色再現性などの表示性能を高める観点で、λ/4板は波長に対して逆分散性を有していることが好ましい。ここで、波長に対して逆分散性を有するとは、波長が大きくなるに伴い、その波長における位相差の値が大きくなることをいう。
λ/4板としては、公知のλ/4板を制限なく用いることができ、例えば、延伸したポリカーボネートフィルム、および、液晶性化合物を硬化させた位相差フィルムを用いることができる。薄型化の観点では、液晶性化合物を硬化させて作製された位相差フィルムを用いることが好ましい。
【0135】
第1のλ/4板は、曲面を有していてもよい。第1のλ/4板は、画像表示素子側の表面が凸面であり、視認側の表面が凹面である回転面を有することが好ましく、曲率半径が一定の曲面を有することがより好ましい。
第1のλ/4板が曲率半径が一定の曲面を有する場合の曲率半径は、光学要素および画像表示装置の大きさおよび用途により適宜選択できるが、20~1000mmが好ましく、30~200mmがより好ましい。
【0136】
(λ/4板の遅相軸)
本実施形態に係る画像表示装置において、第1のλ/4板の遅相軸は、位置Zと偏光子Bとを結ぶ直線上で、偏光子Aの上記直線との交点におけるローカルな吸収軸と、第1のλ/4板の上記直線との交点におけるローカルな遅相軸とのなす角度が、45°であることが好ましい。
より具体的には、第1のλ/4板および偏光子Aが下記の要件を全て満たすことが好ましい。
・位置Xにおける偏光子Aの吸収軸の方向と、直線Lと第1のλ/4板との交点における第1のλ/4板の遅相軸の方向とのなす角度が、直線Lが延びる方向から観察すると、45°である。
・仮想線L1と偏光子Aとの交点における偏光子Aの吸収軸の方向と、仮想線L1と第1のλ/4板との交点における第1のλ/4板の遅相軸の方向とのなす角度が、仮想線L1が延びる方向から観察すると、45°である。
・仮想線L2と偏光子Aとの交点における偏光子Aの吸収軸の方向と、仮想線L2と第1のλ/4板との交点における第1のλ/4板の遅相軸の方向とのなす角度が、仮想線L2が延びる方向から観察すると、45°である。
・仮想線L3と偏光子Aとの交点における偏光子Aの吸収軸の方向と、仮想線L3と第1のλ/4板との交点における第1のλ/4板の遅相軸の方向とのなす角度が、仮想線L3が延びる方向から観察すると、45°である。
・仮想線L4と偏光子Aとの交点における偏光子Aの吸収軸の方向と、仮想線L4と第1のλ/4板との交点における第1のλ/4板の遅相軸の方向とのなす角度が、仮想線L4が延びる方向から観察すると、45°である。
第1のλ/4板における遅相軸が上記の要件を全て満たすことで、光学要素の全領域にわたり、ゴーストを効果的に抑制できる。
【0137】
本実施形態に係る画像表示装置において、位置Zと偏光子Bとを結ぶ直線Lzを仮定した場合、直線Lzとの交点における偏光子Aのローカルな吸収軸の方向と、直線Lzとの交点における第1のλ/4板のローカルな遅相軸とのなす角度が、直線Lzが延びる方向から観察して45°である、という位置Z、偏光子Aおよび第1のλ/4板の関係が、偏光子Bの全領域にわたって満たされることが好ましい。なお、上記の関係が偏光子Bの全領域にわたって満たされるとは、偏光子Bの視認側表面に存在する点であれば、いずれの点から位置Zと結ぶ直線Lzを引いた場合であっても、上記の関係が満たされることを意味する。これにより、本実施形態に係る画像表示装置により表示される画像の全領域にわたり、ゴーストをより効果的に抑制できる。
【0138】
また、本実施形態に係る画像表示装置において、位置Zと偏光子Bとを結ぶ直線上で、第1のλ/4板の上記直線との交点におけるローカルな遅相軸と、第2のλ/4板の上記直線との交点におけるローカルな遅相軸とが、互いに直交することが好ましい。
より具体的には、第1のλ/4板および第2のλ/4板が下記の要件を全て満たすことが好ましい。
・直線Lと第1のλ/4板との交点における第1のλ/4板の遅相軸の方向と、直線Lと第2のλ/4板との交点における第2のλ/4板の遅相軸の方向とが、直線Lが延びる方向から観察すると、直交する。
・仮想線L1と第1のλ/4板との交点における第1のλ/4板の遅相軸の方向と、仮想線L1と第2のλ/4板との交点における第2のλ/4板の遅相軸の方向とが、仮想線L1が延びる方向から観察すると、直交する。
・仮想線L2と第1のλ/4板との交点における第1のλ/4板の遅相軸の方向と、仮想線L2と第2のλ/4板との交点における第2のλ/4板の遅相軸の方向とが、仮想線L2が延びる方向から観察すると、直交する。
・仮想線L3と第1のλ/4板との交点における第1のλ/4板の遅相軸の方向と、仮想線L3と第2のλ/4板との交点における第2のλ/4板の遅相軸の方向とが、仮想線L3が延びる方向から観察すると、直交する。
・仮想線L4と第1のλ/4板との交点における第1のλ/4板の遅相軸の方向と、仮想線L4と第2のλ/4板との交点における第2のλ/4板の遅相軸の方向とが、仮想線L4が延びる方向から観察すると、直交する。
第1のλ/4板の遅相軸および第2のλ/4板の遅相軸が上記の要件を全て満たすことで、光学要素の全領域にわたり、ゴーストを効果的に抑制できる。
【0139】
本実施形態に係る画像表示装置において、位置Zと偏光子Bとを結ぶ直線Lzを仮定した場合、直線Lzとの交点における第1のλ/4板のローカルな遅相軸と、直線Lzとの交点における第2のλ/4板のローカルな遅相軸とが、直線Lzが延びる方向から観察して直交する、という位置Z、第1のλ/4板および第2のλ/4板の関係が、偏光子Bの全領域にわたって満たされていることが好ましい。これにより、本実施形態に係る画像表示装置により表示される画像の全領域にわたり、ゴーストをより効果的に抑制できる。
【0140】
直線Lまたは仮想線L1~L4とλ/4板との交点におけるλ/4板の遅相軸の方向は、上記〔位置Zの特定方法〕において述べたAxoScanを用いる偏光子Aまたは偏光子Bの吸収軸の方向の測定方法に準じて、偏光子Aまたは偏光子Bに代えて第1のλ/4板または第2のλ/4板を配置することによって、測定できる。
【0141】
<反射直線偏光子>
本実施形態に係る画像表示装置は、反射直線偏光子を備える。
反射直線偏光子は、画像表示素子から射出された光の一部を反射し、光学系の内部で往復させる機能を有する。反射直線偏光子は、ゴーストを抑制する観点から、偏光度の高いものが好ましい。
反射直線偏光子としては、公知の反射直線偏光子を制限なく用いることができ、例えば、特開2011-053705号公報に記載されているような誘電体多層膜を延伸したフィルム、および、ワイヤグリッド偏光子が挙げられる。反射直線偏光子の市販品としては、3M社製の反射型偏光子(商品名APF)、および、旭化成株式会社製のワイヤグリッド偏光子(商品名WGF)等を、好適に用いることができる。
【0142】
反射直線偏光子は、曲面を有していてもよい。反射直線偏光子は、画像表示素子側の表面が凸面であり、視認側の表面が凹面である回転面を有することが好ましく、曲率半径が一定の曲面を有することがより好ましい。
反射直線偏光子が曲率半径が一定の曲面を有する場合の曲率半径は、光学要素および画像表示装置の大きさおよび用途により適宜選択できるが、20~1000mmが好ましく、30~200mmがより好ましい。
【0143】
本実施形態に係る画像表示装置において、反射直線偏光子の反射軸は、位置Zと偏光子Bとを結ぶ直線上で、偏光子Aの上記直線との交点におけるローカルな吸収軸と、反射直線偏光子の上記直線との交点におけるローカルな反射軸とが、平行であることが好ましい。
より具体的には、反射直線偏光子および偏光子Aが下記の要件を全て満たすことが好ましい。
・位置Xにおける偏光子Aの吸収軸の方向と、直線Lと反射直線偏光子との交点における反射直線偏光子の反射軸の方向とが、直線Lが延びる方向から観察すると、平行である。
・仮想線L1と偏光子Aとの交点における偏光子Aの吸収軸の方向と、仮想線L1と反射直線偏光子との交点における反射直線偏光子の反射軸の方向とが、仮想線L1が延びる方向から観察すると、平行である。
・仮想線L2と偏光子Aとの交点における偏光子Aの吸収軸の方向と、仮想線L2と反射直線偏光子との交点における反射直線偏光子の反射軸の方向とが、仮想線L2が延びる方向から観察すると、平行である。
・仮想線L3と偏光子Aとの交点における偏光子Aの吸収軸の方向と、仮想線L3と反射直線偏光子との交点における反射直線偏光子の反射軸の方向とが、仮想線L3が延びる方向から観察すると、平行である。
・仮想線L4と偏光子Aとの交点における偏光子Aの吸収軸の方向と、仮想線L4と反射直線偏光子との交点における反射直線偏光子の反射軸の方向とが、仮想線L4が延びる方向から観察すると、平行である。
反射直線偏光子におけるローカルな反射軸が上記の要件を全て満たすことで、光学要素の全領域にわたり、ゴーストを効果的に抑制できる。
【0144】
また、本実施形態に係る画像表示装置において、位置Zと偏光子Bとを結ぶ直線Lzを仮定した場合、直線Lzとの交点における偏光子Aの吸収軸と、反射直線偏光子の反射軸とが、直線Lzが延びる方向から観察して平行である、という位置Z、偏光子Aおよび反射直線偏光子の関係が、偏光子Bの全領域にわたって満たされることが好ましい。これにより、本実施形態に係る画像表示装置により表示される画像の全領域にわたり、ゴーストをより効果的に抑制できる。
【0145】
直線Lまたは仮想線L1~L4と反射直線偏光子との交点における反射直線偏光子の反射軸の方向は、上記〔位置Zの特定方法〕において述べたAxoScanを用いる偏光子Aまたは偏光子Bの吸収軸の方向の測定方法に準じて、偏光子Aまたは偏光子Bに代えて反射直線偏光子を配置することによって、測定できる。
【0146】
<ハーフミラー>
本実施形態に係る画像表示装置は、ハーフミラーを備える。
ハーフミラーとしては、特に制限されず、ガラス板にアルミニウムを蒸着したハーフミラー、並びに、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シクロオレフィンポリマー(COP)およびポリメタクリル酸メチル(PMMA)などの樹脂からなる透明樹脂板にアルミニウムを蒸着したハーフミラーなどの公知のハーフミラーが利用可能である。
ハーフミラーの透過率は、特に制限されないが、50±30%が好ましく、50±10%がより好ましく、50%が更に好ましい。
【0147】
ハーフミラーは、曲面を有していてもよい。ハーフミラーは、画像表示素子側の表面が凸面であり、視認側の表面が凹面である回転面を有することが好ましく、曲率半径が一定の曲面を有することがより好ましい。
ハーフミラーが曲率半径が一定の曲面を有する場合の曲率半径は、光学要素および画像表示装置の大きさおよび用途により適宜選択できるが、20~1000mmが好ましく、30~200mmがより好ましい。
【0148】
<画像表示素子>
画像表示素子としては、公知の画像表示素子が利用可能であり、例えば、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、および、マイクロLED(Light Emitting Diode)ディスプレイが挙げられる。
【0149】
筐体は、上記の光学部材を収容および支持する部材であれば特に制限されず、画像表示装置の用途に応じて適切な形態の筐体が適宜選択される。筐体の形状としては、例えば、ゴーグルの形状、一対の眼鏡用フレームの形状、および、ヘルメットの形状が挙げられる。
【0150】
図4を参照しながら、本実施形態に係る画像表示装置の具体的な使用態様について説明する。
なお、以下の説明および後述する第2実施形態に係る画像表示装置の使用態様の説明において、光線Vが偏光子Aに入射する位置における偏光子Aのローカルな吸収軸の向いている方向を「横方向」と、光線Vが偏光子Bに入射する位置における偏光子Bのローカルな吸収軸の向いている方向を「縦方向」と、それぞれ記載する。
また、画像表示装置20において、画像表示素子500は、無偏光を出射し、λ/4板700の遅相軸は、画像表示素子500側から入射する横方向の直線偏光を右円偏光に変換するように設定され、λ/4板600の遅相軸は、画像表示素子500側から入射する左円偏光を縦方向の直線偏光に変換するように設定され、反射直線偏光子200の反射軸は、横方向であるものとする。
【0151】
図4に示す画像表示装置20において、画像表示素子500から出射された無偏光の光線Vは、偏光子B400において、縦方向の成分が吸収されて横方向の直線偏光になり、λ/4板700に入射する。
λ/4板700に入射した横方向の直線偏光は、λ/4板700によって右円偏光に変換され、ハーフミラー300に入射する。
ハーフミラー300に入射した右円偏光は、約半分がハーフミラー300を透過してλ/4板600に入射し、残りの約半分が反射される。
λ/4板600に画像表示素子500側から入射した右円偏光は、λ/4板600によって横方向の直線偏光に変換され、反射直線偏光子200に入射する。
上記の通り、反射直線偏光子200の反射軸は横方向であるため、反射直線偏光子200に入射した横方向の直線偏光は、反射直線偏光子200によって反射され、横方向の直線偏光として、再度λ/4板600に視認側(位置Z側)から入射する。
λ/4板600に視認側から入射した横方向の直線偏光は、λ/4板600によって右円偏光に変換され、再度、ハーフミラー300に入射する。
ハーフミラー300に入射した右円偏光は、約半分がハーフミラー300を透過し、残りの約半分がハーフミラー300によって反射され、左円偏光として三度λ/4板600に入射する。
λ/4板600に画像表示素子500側から入射した左円偏光は、縦方向の直線偏光に変換され、反射直線偏光子200に入射する。
反射直線偏光子200に入射した縦方向の直線偏光は、反射直線偏光子200および偏光子A100を透過して、視認側(位置Z)に到達する。
【0152】
本実施形態に係る画像表示装置20は、このようにして、画像表示素子500から出射した光線Vが反射直線偏光子200とハーフミラー300との間の往復光路を経て、位置Zにおいて表示画像として観察される。
本実施形態に係る画像表示装置20には、特定要件を満たす位置Zが存在する。これにより、1回目に反射直線偏光子200に入射した横方向の直線偏光が十分に反射されずに反射直線偏光子200を透過する場合であっても、横方向の吸収軸を有する偏光子Aによって横方向の直線偏光が吸収されるので、往復光路を経ない光線の透過を抑制し、観察される表示画像にゴーストを抑制できる。
特に、本実施形態に係る画像表示装置20では、画像表示素子500の周縁部に近い領域で表示される画像であるほど、換言すれば、位置Zから画像表示領域までを結ぶ直線と直線Lとのなす角度が大きいほど、位置Zから観察して得られる表示画像において、ゴーストを抑制する効果がより顕著に現れる。
【0153】
〔第2実施形態〕
本発明に係る画像表示装置の第2の実施形態について、説明する。
図5は、第2実施形態に係る画像表示装置の構成を示す概略図である。
図5に示す画像表示装置22は、偏光子A100と、第1のλ/4板600と、反射円偏光子202と、ハーフミラー300と、第2のλ/4板700と、偏光子B400と、画像表示素子500と、筐体24と、を備え、画像表示装置22には、直線L上に特定要件を満たす位置Zが存在している。
画像表示装置22が備える部材のうち、偏光子A100、第1のλ/4板600、反射円偏光子202、ハーフミラー300、第2のλ/4板700、および、偏光子B400により、本光学要素が構成されている。
【0154】
画像表示装置22において、光線Vは、反射円偏光子202およびハーフミラー300によって反射され、位置Zにおいて表示画像として観察される。即ち、光線Vは、反射円偏光子202とハーフミラー300との間で往復する光路を有する。
本実施形態に係る画像表示装置22は、偏光子A100および偏光子B400が特的要件を満たす位置Zが存在するように構成されていることにより、位置Zにおいて観察される表示画像に発生するゴーストを効果的に抑制できる。
【0155】
本実施形態に係る画像表示装置が備える各部材について説明する。偏光子Aおよび偏光子B、第1および第2のλ/4板、ハーフミラー、並びに、画像表示素子については、既に説明した通りである。
【0156】
<反射円偏光子>
本実施形態に係る画像表示装置は、反射円偏光子を備える。
反射円偏光子は、右円偏光または左円偏光を透過して、透過する円偏光とは旋回方向が逆の円偏光を反射する偏光子であり、本実施形態に係る画像表示装置において、画像表示素子から射出された光の一部を反射し、光学系の内部で往復させる機能を有する。反射円偏光子は、ゴーストを抑制する観点から、偏光度の高いものが好ましい。
反射円偏光子としては、コレステリック液晶層を有する反射円偏光子が挙げられる。コレステリック液晶層は、液晶化合がコレステリック配向状態にある液晶相(コレステリック液晶相)を有する層である。コレステリック液晶層を有する反射円偏光子としては、コレステリック液晶相を示す状態で液晶化合物を硬化させたフィルム等を好適に用いることができる。
【0157】
反射円偏光子を用いる場合、反射円偏光子を透過した光線は円偏光となるため、偏光子Aと反射円偏光子の間に、円偏光を直線偏光に変換する光学部材、より具体的には、第1のλ/4板を設置する。これにより、反射円偏光子を透過した光線が直線偏光に変換され、偏光子Aに入射する。
【0158】
図5を参照しながら、本実施形態に係る画像表示装置の具体的な使用態様について説明する。
画像表示装置22において、画像表示素子500は、無偏光を出射し、λ/4板700の遅相軸は、画像表示素子500側から入射する横方向の直線偏光を右円偏光に変換するように設定され、λ/4板600の遅相軸は、画像表示素子500側から入射する左円偏光を縦方向の直線偏光に変換するように設定され、反射円偏光子202は、右円偏光を反射し、左円偏光を透過するものとする。
【0159】
図5に示す画像表示装置22において、画像表示素子500から出射された無偏光の光線Vは、偏光子B400において、縦方向の成分が吸収されて横方向の直線偏光になり、λ/4板700に入射する。
λ/4板700に入射した横方向の直線偏光は、λ/4板700によって右円偏光に変換され、ハーフミラー300に入射する。
ハーフミラー300に入射した右円偏光は、約半分がハーフミラー300を透過してλ/4板600に入射し、残りの約半分が反射される。
反射円偏光子202に入射した右円偏光は、反射円偏光子202によって反射され、右円偏光として、再度ハーフミラー300に入射する。
ハーフミラー300に入射した右円偏光は、約半分がハーフミラー300を透過し、残りの約半分がハーフミラー300によって反射され、左円偏光となって再度反射円偏光子202に入射する。
反射円偏光子202に入射した左円偏光は、反射円偏光子202を透過し、λ/4板600に入射する。
λ/4板600に画像表示素子500側から入射した左円偏光は、λ/4板600によって縦方向の直線偏光に変換され、偏光子A100に入射する。
偏光子A100に入射した縦方向の直線偏光は、偏光子A100を透過して、視認側(位置Z)に到達する。
【0160】
本実施形態に係る画像表示装置22は、このようにして、画像表示素子500から出射した光線Vが反射円偏光子202とハーフミラー300との間の往復光路を経て、位置Zにおいて表示画像として観察される。
本実施形態に係る画像表示装置22には、特定要件を満たす位置Zが存在する。これにより、1回目に反射円偏光子202に入射した右円偏光が十分に反射されずに反射円偏光子202を透過する場合であっても、透過した右円偏光がλ/4板600により横方向の直線偏光に変換された後、横方向の吸収軸を有する偏光子Aによって吸収されるので、往復光路を経ない光線の透過を抑制し、観察される表示画像にゴーストを抑制できる。
特に、本実施形態に係る画像表示装置22では、画像表示素子500の周縁部に近い領域で表示される画像であるほど、換言すれば、位置Zから画像表示領域までを結ぶ直線と直線Lとのなす角度が大きいほど、位置Zから観察して得られる表示画像において、ゴーストを抑制する効果がより顕著に現れる。
【0161】
本発明に係る画像表示装置の構成は、上記の実施形態に制限されない。
画像表示装置は、上記以外の他の機能層を備えていてもよい。他の機能層としては、例えば、粘着層、接着層、反射防止層および保護層が挙げられる。
画像表示装置は、少なくとも偏光子A、偏光子Bおよび画像表示装置に加えて、反射直線偏光子、反射円偏光子およびハーフミラーからなる群より選択される2つの光学部材を更に備えることが好ましく、反射直線偏光子および反射円偏光子のいずれか1つと、ハーフミラーとを更に備えることがより好ましい。
【0162】
画像表示装置の製造方法は、特に制限されず、上記の光学部材をそれぞれ作製し、粘着剤または接着剤で貼り合わせる工程を有してもよい。また、例えば、仮基材上に形成した光学部材を、他の光学部材に転写する工程を有してもよい。
各工程は公知の方法に従って実施できる。
【0163】
〔画像表示装置の用途〕
画像表示装置の用途は特に制限されないが、表示画像におけるゴーストが抑制されており、また、小型化および薄型化が容易であるため、ニアアイディスプレイとして用いることが好ましい。より具体的には、上記の画像表示装置は、仮想現実表示装置、拡張現実表示装置、デジタルカメラ等に用いられる電子ファインダー、光学望遠鏡、および、光学顕微鏡などの光学装置に備え付けられる画像表示装置として、用いることができる。
【実施例0164】
以下に実施例を挙げて、本発明の特徴をさらに具体的に説明する。なお、以下に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更できる。また、本発明の趣旨を逸脱しない限り、以下に示す構成以外の構成とすることもできる。
【0165】
[実施例1]
<光配向膜の作製>
後述する光配向膜形成用塗布液PA1を、住友アクリル販売株式会社製樹脂基材「テクノロイC001」(ポリカーボネート/PMMA積層基材、75um厚)に、ワイヤーバーで連続的に塗布し、塗布膜を形成した。塗布膜が形成された基材を140℃の温風で120秒間乾燥し、光配向膜付き基材を得た。
光配向膜の厚みは0.3μmであった。
【0166】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(光配向膜形成用塗布液PA1)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
下記重合体PA-1 100.00質量部
下記酸発生剤PAG-1 5.00質量部
下記酸発生剤CPI-110TF 0.005質量部
キシレン 1220.00質量部
メチルイソブチルケトン 122.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0167】
重合体PA-1
【化13】
【0168】
酸発生剤PAG-1
【化14】
【0169】
酸発生剤CPI-110F
【化15】
【0170】
<光配向膜の成形>
特開2012-116094号公報を参照して、上述の光配向膜付き基材を、直径40mm、焦点距離200mmの平凸レンズ(光学ガラス製、凸面の曲率半径100mm)の凸面に真空成形した。その後、光配向膜付き基材を上記レンズから剥離し、基材と曲面部分を有する光配向膜とを有する積層体を得た。
【0171】
<光配向膜の配向処理>
超高圧水銀ランプを使用して発生させた紫外線を、直径100mm、焦点距離300mmの凸レンズに入射し、紫外線を集光させた。次に、凸レンズに対し超高圧水銀ランプとは反対側で、凸レンズから70mmの位置に、ワイヤグリッド偏光子を設置することにより、紫外線を偏光UVとした。さらに、上記で得られた曲面を有する光配向膜を、曲面の凸側が超高圧水銀ランプおよび凸レンズに対向するように、凸レンズから150mmの位置に設置し、光配向膜に対して10mJ/cmの偏光UVで露光することにより、光配向膜の配向処理を行った。
上記の方法で光配向膜の配向軸を配向することにより、光配向膜の表面に、吸収軸の方向が異なる複数の領域を有し(図3参照)、位置Zから観察したとき、偏光子Aの吸収軸の方向が後述する偏光子Bの吸収軸の方向とのなす角度が、偏光子Bの全領域にわたって90°であるような光吸収異方性層を形成できる光配向膜が得られた。
【0172】
<光吸収異方性層形成用組成物の調製>
下記の組成を有する光吸収異方性層形成用組成物P1を調製した。
【0173】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
光吸収異方性層形成用組成物P1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記二色性物質D-1 0.05質量部
・下記二色性物質D-2 0.07質量部
・下記二色性物質D-3 0.12質量部
・下記高分子液晶性化合物P-1 0.44質量部
・下記低分子液晶性化合物M-1 0.27質量部
・重合開始剤
IRGACUREOXE-02(BASF社製) 0.040質量部
・下記界面活性剤F-1 0.005質量部
・シクロペンタノン 48.0質量部
・テトラヒドロフラン 48.0質量部
・ベンジルアルコール 3.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0174】
D-1
【化16】
【0175】
D-2
【化17】
【0176】
D-3
【化18】
【0177】
高分子液晶性化合物P-1
【化19】
【0178】
低分子液晶性化合物M-1
【化20】
【0179】
界面活性剤F-1
【化21】
【0180】
<偏光子Aの作製>
上記の配向処理を行った曲面を有する光配向膜の表面に、上記の光吸収異方性層形成用組成物を、旭サナック株式会社製コータ「rCoater」を用いてスプレー塗布する塗布膜形成工程を行い、塗布層P1を形成した。
次いで、配向工程として、塗布層P1を140℃で30秒間加熱した後、塗布層P1を室温(23℃)になるまで冷却した後、再び塗布層P1を90℃で60秒間加熱し、再び室温になるまで冷却した。
その後、硬化工程として、塗布層P1に対して、LED灯を用いて中心波長365nmの光を照度200mW/cmの照射条件で2秒間照射することにより光吸収異方性層を形成した。
これにより、基材、光配向膜および光吸収異方性層を備え、かつ、曲面部分を有する吸収型偏光子Aを作製した。
得られた吸収型偏光子Aの光吸収異方性層の膜厚は1.6μmであった。
【0181】
<λ/4板の作製および成形>
特開2018-010224号公報等を参照し、液晶性化合物を含む液晶性組成物を硬化させてなる逆分散性のλ/4板を作製した。次に、作製したλ/4板を、UV硬化型接着剤を用いて上記の樹脂基材「テクノロイC001」に転写した。
得られた樹脂基材付きのλ/4板を、上記<光配向膜の成形>に記載の手法に従って真空成形することにより、曲率半径が100mmである平凸レンズの凸面に沿った形状の曲面を有するλ/4板を得た。
【0182】
<反射直線偏光子の成形>
3M社製の反射直線偏光子「APF」を、上記<光配向膜の成形>に記載の手法に従って真空成形することにより、曲率半径が100mmである平凸レンズの凸面に沿った形状を有する反射直線偏光子λ/4板を得た。
【0183】
〔画像表示装置の製造〕
往復光学系を採用した仮想現実表示装置である、Huawei社製の仮想現実表示装置「Huawei VR Glass」を分解し、最も視認側に配置されていたレンズと、レンズに次いで視認側に配置されていたハーフミラーを取り外した。なお、上記レンズを取り外した「Huawei VR Glass」には、視認側から順に、λ/4板、吸収型偏光子、および、画像表示素子が配置されていた。
次に、直径40mm、焦点距離200mmの平凸レンズの凸面側に、上記の方法でそれぞれ作製された吸収型偏光子A、反射直線偏光子、および、λ/4板をこの順序で貼り合わせて、積層レンズを作製した。このようにして作製した積層レンズを上記の取り外した視認側レンズに代えて用いること、および、予め用意したハーフミラー(曲率半径100mm)を上記の取り外したハーフミラーに代えて用いることにより、Huawei VR Glassを再度組み上げ、実施例1の仮想現実表示装置を製造した。
製造された実施例1の仮想現実表示装置は、図4に示す構成を有していた。即ち、実施例1の仮想現実表示装置において、視認側から順に、吸収型偏光子A、反射直線偏光子、第1のλ/4板、ハーフミラー、第2のλ/4板、吸収型偏光子B、および、画像表示素子が配置されていた。吸収型偏光子A、第1のλ/4板、反射直線偏光子およびハーフミラーはいずれも曲面部分を有し、凹面が視認側に対向し、凸面が画像表示素子側に対向していた。また、第2のλ/4板および吸収型偏光子Bは平面状であった。
【0184】
実施例1の仮想現実表示装置に対して、上述の位置Zの特定方法を試したところ、特定要件を満たす位置Zの存在が直線L上に確認された。即ち、実施例1の仮想現実表示装置では、直線Lおよび仮想線L1~L4の方向を観察した場合に、偏光子Aの吸収軸と偏光子Bの吸収軸とのなす角度が90°である位置Zが存在することがわかった。
また、上述の測定方法で測定したところ、実施例1の仮想現実表示装置では、位置Zから直線Lおよび仮想線L1~L4のそれぞれの方向を観察した場合に、偏光子Aの吸収軸と反射直線偏光子の反射軸とは平行であり、偏光子Aの吸収軸と第1のλ/4板の遅相軸とのなす角度はそれぞれ45°であり、第1のλ/4板の遅相軸と第2のλ/4板の遅相軸とはそれぞれ直交していることがわかった。
【0185】
[比較例1]
比較例1として、Huawei社製の仮想現実表示装置「Huawei VR Glass」を用いた。
比較例1の仮想現実表示装置の最も視認側に配置されていたレンズ(実施例1において取り外したレンズ)は、視認側が凸面の平凸レンズであり、平凸レンズの平面側に、視認側から順に、吸収型の偏光子、反射直線偏光子、および、λ/4板が配置されていた。
即ち、比較例1の仮想現実表示装置においては、視認側から順に、第1の吸収型偏光子、反射直線偏光子、第1のλ/4板、ハーフミラー、第2のλ/4板、第2の吸収型偏光子、および、画像表示パネルが配置されていた。なお、各吸収型偏光子、各λ/4板、反射直線偏光子、および、ハーフミラーはいずれも平面状であり、互いに平行に配置されていた。また、各吸収型偏光子の吸収軸は面内の1方向に沿って直線的に配置されていた。
【0186】
比較例1の仮想現実表示装置を、平凸レンズの凸面側の離間した位置から観察した結果、観察位置から第1の吸収型偏光子および第2の吸収型偏光子に対して下した垂線と交差する領域では、第1の吸収型偏光子の吸収軸と第2の吸収型偏光子の吸収軸とのなす角度が90°であったが、観察位置から上記領域から外れた方向を観察した場合、上記方向の直線との交点における第1の吸収型偏光子の吸収軸、および、上記方向の直線との交点における第2の吸収型偏光子の吸収軸とのなす角度は、90°ではなかった。
また、比較例1の仮想現実表示装置に対して、上述の位置Zの特定方法を試したが、特定要件を満たす位置Zの存在は確認できなかった。
【0187】
[ゴーストの評価]
作製したそれぞれの仮想現実表示装置において、画像表示素子に白黒のチェッカーパターンを表示させ、視認側から観察されるゴーストを目視にて評価した。
その結果、比較例1の仮想現実表示装置においては、チェッカーパターンの黒表示領域の一部に、白表示領域の像がゴーストとして視認され、チェッカーパターンが明瞭ではなかった。特に、周縁部に近い領域の表示画像を視認した場合に、ゴーストの影響が顕著であった。
それに対して、実施例1の仮想現実表示装置においては、レンズの全領域にわたって迷光に由来するゴーストが視認されず、チェッカーパターンが明瞭に表示されており、なかでも、比較例1の仮想現実表示装置ではゴーストの影響が顕著であった周縁部に近い領域の表示画像においても、表示画像の中央部と同様にゴーストが視認されなかった。
【符号の説明】
【0188】
10 光学要素
20,22,30 画像表示装置
24 筐体
31,34 吸収型偏光子
32 反射偏光子
33,300 ハーフミラー
35,500 画像表示素子
100 偏光子A
200 反射直線偏光子
202 反射円偏光子
400 偏光子B
600 第1のλ/4板
700 第2のλ/4板
S,V 光線
図1
図2
図3
図4
図5