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特開2024-91765ウェハ加工システム及びウェハ加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091765
(43)【公開日】2024-07-05
(54)【発明の名称】ウェハ加工システム及びウェハ加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
H01L21/78 C
H01L21/78 F
H01L21/78 B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024066043
(22)【出願日】2024-04-16
(62)【分割の表示】P 2020006084の分割
【原出願日】2020-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(72)【発明者】
【氏名】福家 朋来
(57)【要約】
【課題】レーザ加工した溝に対して適切にブレード加工するウェハ加工システム及びウェハ加工方法を提供する。
【解決手段】分割予定ラインLに沿ってレーザ光により溝Cが加工されたウェハWに対し、分割予定ラインLに対する溝Cの位置ずれを示す位置ずれ情報を取得する制御装置38と、取得された位置ずれ情報をウェハWの固有の情報と紐付けて記憶するデータベースサーバ60と、記憶されたウェハWに対応する位置ずれ情報に基づいてウェハWを溝Cに沿ってブレードにより切削加工するブレードダイシング装置50と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割予定ラインに沿ってレーザ光により溝が加工されたウェハに対し、前記分割予定ラインに対する前記溝の位置ずれを示す位置ずれ情報を取得する情報取得部と、
前記取得された位置ずれ情報を前記ウェハの固有の情報と紐付けて記憶する記憶部と、
前記記憶された前記ウェハに対応する前記位置ずれ情報に基づいて前記ウェハを前記溝に沿ってブレードにより切削加工する加工部と、
を備える、
ウェハ加工システム。
【請求項2】
前記ウェハの固有の情報は、前記ウェハに付されたウェハID又はバーコードである、
請求項1に記載のウェハ加工システム。
【請求項3】
分割予定ラインに沿ってレーザ光により溝が加工されたウェハに対し、前記分割予定ラインに対する前記溝の位置ずれを示す位置ずれ情報を取得する情報取得工程と、
前記取得された位置ずれ情報を前記ウェハの固有の情報と紐付けて記憶する記憶工程と、
前記記憶された前記ウェハに対応する前記位置ずれ情報に基づいて前記ウェハを前記溝に沿ってブレードにより切削加工する加工工程と、
を備える、
ウェハ加工方法。
【請求項4】
前記ウェハの固有の情報は、前記ウェハに付されたウェハID又はバーコードである、
請求項3に記載のウェハ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウェハ加工システム及びウェハ加工方法に係り、特にレーザ加工により溝入れ加工した後にブレードによりダイシングする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの高性能化に伴い、デバイス表面に機械的強度が脆弱な膜(たとえば、Low-k膜やHi-k膜)を有するウェハが増えてきている。このウェハをブレードダイシングすると、ダイシング時の機械的負荷により膜が破損・剥離することがある。この剥離がデバイスに到達すると不良チップとなり、歩留り低下の要因となる。この歩留り低下を抑えるため、ブレードダイシングの前にブレードダイシング加工ライン上の脆弱な膜を機械的負荷の小さなレーザ加工にて除去しておくプロセスが一般的に用いられている(特許文献1参照)。このプロセスでは、先行するレーザ加工装置と後続するブレードダイシング装置の2台を使用してダイシングを行う。
【0003】
また近年、チップの高性能化に伴うチップサイズの縮小化と1枚のウェハからのチップ取り数を増やすため、加工ラインが狭小化している。このため、レーザ加工、ブレード加工ともに加工溝幅が小さくなってきており、より高精度な加工が求められるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-064231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のプロセスでは、ブレードダイシングはレーザ加工された溝の中心を加工する必要がある。これはブレードの刃がレーザ加工溝に入らないと、機械的負荷により膜の剥離が生じるからである。つまり、このプロセスのブレードダイシングはチップのパターンと、予め加工されたレーザ加工溝を認識する必要がある。
【0006】
先行するレーザ加工プロセスで装置が加工位置の補正を行うと、その加工ラインからチップとレーザ加工溝の相対位置が1本前の加工ラインから正しい位置にずれる。ところが、後続するブレードダイシングではこの補正位置を把握できないため、当該ラインからレーザ加工溝とブレード加工位置とが相対的にずれる。これを防ぐためにはブレードダイシング時に全加工ラインでレーザ加工溝位置を認識する必要があるが、これには時間がかかり現実的ではない。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、レーザ加工した溝に対して適切にブレード加工するウェハ加工システム及びウェハ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためのウェハ加工システムの一の態様は、レーザ加工装置と、ブレードダイシング装置と、記憶部と、を備えるウェハ加工システムであって、レーザ加工装置は、表面に分割予定ラインが形成されたウェハを保持する第1ステージと、ウェハの表面にレーザ光を照射するレーザ照射ユニットと、第1ステージ及びレーザ照射ユニットを相対的に移動させることで、ウェハの分割予定ラインに沿ってレーザ光によって溝を加工する溝入れ加工制御部と、撮像部によりウェハの表面を撮像することにより分割予定ラインに対する溝の位置ずれを示す位置ずれ情報を取得する取得部と、位置ずれ情報をウェハの固有の情報と紐付けて記憶部に記憶させる記憶制御部と、を備え、ブレードダイシング装置は、レーザ加工装置により溝が形成されたウェハを加工対象物とするものであり、ブレードダイシング装置は、ウェハに対応する位置ずれ情報を記憶部から取得する位置情報取得部と、ウェハを保持する第2ステージと、ウェハを切削するブレードと、取得した位置ずれ情報に基づいて第2ステージ及びブレードを相対的に移動させることで、ウェハを溝に沿ってブレードによって切削加工する切削加工制御部と、を備えるウェハ加工システムである。
【0009】
本態様によれば、レーザ加工した溝に対して適切にブレード加工することができる。
【0010】
撮像部は、第1ステージ及びレーザ照射ユニットの相対的な移動方向に対してレーザ照射ユニットの下流側に配置されることが好ましい。これにより、溝が加工された直後に撮像部によってウェハの表面を撮像することができる。
【0011】
レーザ照射ユニットは、レーザ光を集光する対物レンズを有し、撮像部は、対物レンズを介してウェハの表面を撮像することが好ましい。これにより、レーザ照射ユニット及び撮像部の焦点の調整を共通の対物レンズで行うことができ、溝の加工及びウェハの表面の撮像を共通の対物レンズで行うことができる。
【0012】
レーザ照射ユニット及び撮像部はそれぞれ互いに独立して焦点の調整が可能であることが好ましい。これにより、それぞれ焦点が調整されたレーザ照射ユニット及び撮像部によって溝の加工及びウェハの表面の撮像を行うことができる。
【0013】
取得部は、溝の加工と同時に位置ずれ情報を取得することが好ましい。これにより、位置ずれ情報を取得する時間を短縮することができる。
【0014】
上記目的を達成するためのウェハ加工方法の一の態様は、表面に分割予定ラインが形成されたウェハを保持する第1ステージ及びウェハの表面にレーザ光を照射するレーザ照射ユニットを相対的に移動させることで、ウェハの分割予定ラインに沿ってレーザ光により溝を加工する溝入れ加工制御工程と、ウェハの表面を撮像することにより分割予定ラインに対する溝の位置ずれを示す位置ずれ情報を取得する取得工程と、位置ずれ情報をウェハの固有の情報と紐付けて記憶部に記憶させる記憶制御工程と、溝が形成されたウェハの固有の情報と紐付けられた位置ずれ情報を記憶部から取得する位置情報取得工程と、取得した位置ずれ情報に基づいて溝が形成されたウェハを保持する第2ステージ及び溝が形成されたウェハを切削するブレードを相対的に移動させることで、溝が形成されたウェハを溝に沿ってブレードによって切削加工する切削加工制御工程と、を備えるウェハ加工方法である。
【0015】
本態様によれば、レーザ加工した溝に対して適切にブレード加工することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、レーザ加工した溝に対して適切にブレード加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、ウェハ加工システムの概観図である。
図2図2は、ウェハの平面図である。
図3図3は、第1の実施形態に係るレーザ加工装置の概略図である。
図4図4は、ブレードダイシング装置の概略図である。
図5図5は、ウェハ加工方法の処理の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、ウェハに付与されたバーコードの一例を示す図である。
図7図7は、データベースサーバに記憶されたデータの一例を示す図である。
図8図8は、第2の実施形態に係るレーザ加工装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。本実施形態において、X方向、Y方向、及びZ方向はそれぞれ互いに直交する方向である。また、X方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。
【0019】
<第1の実施形態>
〔ウェハ加工システムの全体構成〕
図1は、ウェハ加工システム10の概観図である。ウェハ加工システム10は、レーザ加工装置20、ブレードダイシング装置50、及びデータベースサーバ60を備える。
【0020】
レーザ加工装置20は、表面に金属膜を含む積層膜が形成された被加工物にレーザ加工を施す装置である。ここでは、レーザ加工装置20は、表面に分割予定ラインであるストリートLが形成されたウェハW(被加工物)のストリートLに沿って加工光であるレーザ光を照射し、加工溝(カーフ)である溝Cを加工する。ブレードダイシング装置50は、被加工物をブレードによって切削する装置である。ここでは、ブレードダイシング装置50は、溝Cが形成されたウェハWを切削する。
【0021】
データベースサーバ60は、後述する位置ずれ情報が記憶される記憶部に相当し、サーバ機能及び大容量のストレージを備える。レーザ加工装置20とデータベースサーバ60、ブレードダイシング装置50とデータベースサーバ60とは、それぞれP2P(Peer to Peer)接続など、ネットワーク経由で通信可能に接続される。データベースサーバ60は、レーザ加工装置20又はブレードダイシング装置50が備えてもよい。
【0022】
〔レーザ加工装置の全体構成〕
図2は、ウェハWの平面図である。ウェハWは、シリコン等の基板の表面にLow-k膜と回路を形成する機能膜とを積層した積層体である。ウェハWは、互いに交差する方向に格子状に配列された複数のストリートLによって複数の領域に区画されている。図2では、X方向に平行なストリートをLX、Y方向に平行なストリートをLYと表記している。ストリートLX及びLYによって区画された各領域であるチップCにはIC(Integrated Circuit)やLSI(Large Scale Integration)等のデバイスが形成されている。
【0023】
図3は、第1の実施形態に係るレーザ加工装置20の概略図である。図3に示すように、レーザ加工装置20は、ステージ22、レーザ光源24、レーザ照射ユニット26、レーザ照射ユニット用Zベース28、カメラ30、カメラ用Zベース32、共通ベース34、移動機構36、及び制御装置38を備える。
【0024】
ステージ22(第1ステージの一例)は、ウェハWの表面をZ方向上方に向けた状態で上面にウェハWを保持する。ステージ22は、不図示のモータを備え、移動機構36によりX方向及びY方向の移動、及びXY平面内での回転が可能に構成される。
【0025】
レーザ光源24は、不図示のレーザ発振器を備え、加工光であるレーザ光を発生させる。レーザ照射ユニット26は、ウェハWの表面にレーザ光を照射する。レーザ照射ユニット26は、対物レンズ26Aを含む不図示の照射光学系を備え、レーザ光源24が発生させたレーザ光を照射光学系によって収束して出射する。レーザ照射ユニット用Zベース28は、レーザ照射ユニット26の対物レンズ26AをZ方向下方に向けてレーザ照射ユニット26を保持する。
【0026】
カメラ30(撮像部の一例)は、不図示の光源、不図示の撮像素子、及び対物レンズ30Aを含む不図示の観察光学系を備え、ウェハWの表面を撮像(観察)する。カメラ30は、250Wのメタルハライド光源相当の不図示の光源を備え、1[μs]未満の露光時間で撮像が可能である。対物レンズ30Aは、観察光の波長550[nm]において、開口数NA=0.4、分解能=0.8[μm]程度の性能を有する。
【0027】
カメラ用Zベース32は、カメラ30の対物レンズ30AをZ方向下方に向けて、カメラ30を保持する。共通ベース34は、レーザ照射ユニット用Zベース28及びカメラ用Zベース32を保持する。
【0028】
このように、レーザ照射ユニット26及びカメラ30は、それぞれ焦点の調整が可能に保持される。また、共通ベース34は、後述するレーザ加工時の共通ベース34とステージ22との相対的なX方向の移動方向に対してレーザ照射ユニット26の下流側にカメラ30を保持する。
【0029】
制御装置38は、レーザ加工装置20を統括制御する。レーザ加工装置20は、制御装置38の制御に従って、ウェハWのストリートLX及びLYに沿って溝を加工する。
【0030】
即ち、制御装置38は、レーザ光源24にレーザ光を発生させる。また、制御装置38は、不図示のモータを制御し、レーザ照射ユニット26の対物レンズ26Aの焦点がウェハWの所望のZ方向位置に合うようにレーザ照射ユニット用Zベース28をZ方向に移動させる。
【0031】
制御装置38は、不図示のモータを制御し、カメラ30の対物レンズ30Aの焦点がウェハWの所望のZ方向位置に合うようにカメラ用Zベース32をZ方向に移動させる。
【0032】
制御装置38(溝入れ加工制御部の一例)は、不図示のモータを制御し、ステージ22に対して共通ベース34をX方向に相対的に移動(走査)させ、レーザ光によってウェハWのストリートLXに沿ってLow-k膜を除去して溝を加工する。図3に示す例では、共通ベース34に対してステージ22をX方向左方向に走査する。制御装置38は、1つのストリートLXのレーザ加工が終了すると、不図示のモータを制御し、共通ベース34に対してステージ22をY方向に移動させた後、同様に隣のストリートLXのレーザ加工を行う。
【0033】
なお、本実施形態では、ステージ22をX方向及びY方向に移動可能に構成し、レーザ照射ユニット26をZ方向に移動可能に構成したが、ステージ22とレーザ照射ユニット26とがX方向、Y方向、及びZ方向に相対的に移動できればよく、例えばステージ22をX方向に移動可能に構成し、レーザ照射ユニット26をY方向及びZ方向に移動可能に構成してもよい。
【0034】
また、制御装置38は、全てのストリートLXのレーザ加工が完了すると、不図示のモータを制御し、ステージ22を90°回転させることでウェハWを90°回転させる。その後、ストリートLXの場合と同様に、共通ベース34に対してステージ22をX方向左方向に走査し、レーザ光によってウェハWのストリートLYに沿って溝Cを加工する。
【0035】
また、制御装置38(取得部の一例)は、カメラ30によりウェハWの表面を撮像することにより、レーザ光による溝Cの加工時にストリートLX及びLYと溝Cとを観察し、ストリートLX及びLYとに対する溝Cの位置ずれを示す位置ずれ情報を取得する。さらに、制御装置38(記憶制御部の一例)は、取得した位置ずれ情報を、溝Cが形成されたウェハWの固有の情報と紐付けてデータベースサーバ60に記憶させる。
【0036】
〔ブレードダイシング装置の全体構成〕
ブレードダイシング装置50は、レーザ加工装置20により溝Cが形成されたウェハWを加工対象物とする装置である。図4は、ブレードダイシング装置50の概略図である。図4に示すように、ブレードダイシング装置50は、ステージ52、ブレード54、移動機構56、及び制御装置58を備える。
【0037】
ステージ52(第2ステージの一例)は、ウェハWの表面をZ方向上方に向けた状態で上面にウェハWを保持する。ステージ52は、不図示のモータを備え、移動機構56によりX方向の移動、及びXY平面内での回転(θZ方向の移動)が可能に構成される。ブレード54は、不図示の環状の切り刃を外周に備えたXZ平面に平行な円盤状部材である。ブレード54は、円盤の中心をY方向に平行な不図示のスピンドルに支持される。スピンドルは、不図示のモータを備え、移動機構56によりY方向及びZ方向の移動が可能に構成される。ブレード54は、スピンドルに接続された不図示のモータを備え、XZ平面内を回転可能に支持される。
【0038】
制御装置58は、ブレードダイシング装置50を統括制御する。ブレードダイシング装置50は、制御装置58の制御に従って、ウェハWを切削加工する。
【0039】
即ち、制御装置58(位置情報取得部の一例)は、加工するウェハWに対応する位置ずれ情報をデータベースサーバ60から取得する。制御装置58は、不図示のモータを制御し、ブレード54を回転させる。制御装置58(切削加工制御部の一例)は、不図示のモータを制御し、取得した位置ずれ情報に基づいて加工位置を調整しながらステージ52をX方向に移動させ、ブレード54によりウェハWのストリートLXに沿った溝の中心を切削加工する。制御装置58は、1つのストリートLXに沿った溝の中心を切削加工が終了すると、不図示のモータを制御し、ブレード54をY方向に移動させた後、同様に隣のストリートLXに沿った溝の中心を切削加工する。
【0040】
さらに、制御装置58は、全てのストリートLXに沿った切削加工が完了すると、不図示のモータを制御し、ステージ52を90°回転させることでウェハWを90°回転させる。その後、ストリートLXに沿った溝の場合と同様に、取得した位置ずれ情報に基づいて加工位置を調整しながらステージ52をX方向に移動させ、ブレード54によりウェハWのストリートLYに沿った溝の中心を切削加工する。
【0041】
なお、本実施形態では、ステージ52をX方向及びθZ方向に移動可能に構成し、ブレード54をY方向及びZ方向に移動可能に構成したが、ステージ52とブレード54とがX方向、Y方向、Z方向、及びθZ方向に相対的に移動できればよく、例えばステージ52をX方向、Y方向、及びθZ方向に移動可能に構成し、ブレード54をZ方向に移動可能に構成してもよい。
【0042】
〔ウェハ加工方法〕
図5は、ウェハ加工方法の処理の一例を示すフローチャートである。ここでは、ウェハWの全てのストリートLと溝Cの位置を予め検査しておき、その検査した情報に基づき、ブレードダイシングを行う。この検査は別の検査装置を用いることもできるが、ここでは先行するレーザ加工装置20でのレーザ加工プロセスにおいて、レーザ加工と同時にストリートLと溝Cのずれ量を把握し、各ストリートLに対する溝Cのずれ量の情報をウェハWと紐付けて、後続するブレードダイシング装置50に受け渡す。ブレードダイシング装置50では、そのずれ情報に基づき、チップのパターン認識のみで溝Cの中心を加工する。
【0043】
ステップS1(溝入れ加工制御工程の一例、取得工程の一例)では、レーザ加工装置20において、ウェハWに対して溝入れ加工すると同時に、ストリートLに対する溝Cの位置を観察し、ストリートLに対する溝Cの位置ずれ量を検査していく。レーザ加工装置20は、ストリートLと溝Cとの位置ずれ量が大きいと判断した場合には、次の走査による隣のストリートLに対する溝入れ加工の位置を補正する。
【0044】
このように、レーザ加工装置20は、レーザ加工中に検査を行う。なお、ここでいう「同時」とは、必ずしも厳密に同じタイミングであることを意味するものではなく、1回の走査において並列的に実行することを意味する。
【0045】
レーザ光による加工を停止させると処理時間が増加する。このため、本実施形態ではレーザ加工中(レーザ光とウェハWとの相対移動中)にストリートLと溝Cとを撮像し、そのずれ量を検査する方法を採用する。この方法を、スキャンカーフチェックと呼ぶ。このスキャンカーフチェックでは、走査中のウェハWを撮像するため、短い露光時間であってもストリートL及び溝Cを認識できるように、光量の大きな光源、及び連続的に画像処理を行う処理装置が必要となる。
【0046】
ここでは、溝入れ加工の走査速度は600[mm/sec]である。カメラ30によれば、Y方向のずれを3[μm]程度に抑えることができる。
【0047】
溝Cの位置ずれ量の検査は、全てのストリートLについて行ってもよいし、一部のストリートLについて行ってもよい。溝Cの位置ずれ量の検査をしていないストリートLがある場合は、そのストリートLに対する溝Cの位置のずれ量を、近隣のストリートLに対する溝Cの位置のずれ量から補間によって生成する。
【0048】
ステップS2(記憶制御工程の一例)では、レーザ加工装置20からブレードダイシング装置50に位置ずれ情報を引き渡すため、ステップS1で記録した位置ずれ情報を溝Cが形成されたウェハWと紐付けてデータベースサーバ60に記憶させる。
【0049】
溝Cが形成されたウェハWと、そのウェハWから取得した位置ずれ情報との紐付けは、ウェハWに刻印されているウェハID(ウェハの固有の情報の一例)や、ウェハWのフレームに貼られているバーコード(ウェハの固有の情報の一例)などをキーにして行う。図6は、ウェハWに付与されたバーコードの一例を示す図である。図6では、ウェハIDが#1のウェハW、及びウェハIDが#2のウェハWを示している。図6に示すように、各ウェハWには、それぞれ裏面に固有のバーコードBが付与されている。
【0050】
レーザ加工装置20は、溝Cが形成されたウェハWのウェハIDを取得し、そのウェハIDと位置ずれ情報とを紐付けてデータベースサーバ60に記憶させる。
【0051】
図7は、データベースサーバ60に記憶された位置ずれ情報の一例を示す図である。図7に示す例では、ウェハIDが#1のウェハWのストリート番号が1、2、3、4、…のストリートLに対する溝Cのずれ量は、それぞれ-0.5μm、+1.0μm、+0.1μm、+0.1μm、…である。また、ウェハIDが#2のウェハWのストリート番号が1、2…のストリートLに対する溝Cのずれ量は、それぞれ-2.0μm、-3.0μm、…である。
【0052】
以上のように、ストリートLに対する溝Cのずれ量を、溝Cが形成されたウェハWのウェハIDと紐付けてデータベースサーバ60に記憶させることができる。ここでは、ウェハIDをバーコードBで管理する例を説明したが、ウェハ固有の情報は「何番目に加工したウェハ」という順番で管理してもよい。
【0053】
ステップS3(位置情報取得工程の一例)では、ブレードダイシング装置50は、加工するウェハWのウェハIDを取得し、データベースサーバ60からそのウェハIDの位置ずれ情報を取得する。
【0054】
ステップS4(切削加工制御工程の一例)では、ブレードダイシング装置50は、ウェハWの切削すべきストリートLに対して、取得した位置ずれ情報に基づいて切削位置を調整する。これにより、ブレードダイシング装置50は、加工するウェハWの溝Cの位置を検査することなくウェハWの溝Cの中心を切削する。
【0055】
ここで、レーザ加工装置20で認識したストリートLとブレードダイシング装置50で認識するストリートLとの紐付けは、ウェハWのチップ端やノッチ等のユニークなパターンを用いたパターンマッチングで実現する。
【0056】
例えば、ウェハWの情報を最初にレーザ加工装置20及びブレードダイシング装置50に登録する際に、ユニークなパターンから何μm離れた場所に1本目のストリートLがある、という情報を登録することによって、レーザ加工装置20及びブレードダイシング装置50間で1本目のストリートLを揃えることができる。図2に示したウェハWの場合であれば、近接した領域に類似のパターンが存在しないユニークなパターンPを有しており、パターンPからの距離を規定することで、1本目のストリートLをレーザ加工装置20及びブレードダイシング装置50で共通に認識することができる。ユニークなパターンとして、ノッチやオリフラなどのウェハWの外形の特徴を使用してもよい。
【0057】
また、ウェハWの中心から1本目のストリートLまでの距離を予め設定しておき、外形測定機能を用いてウェハWの中心を求めることで、1本目のストリートLの位置を揃えてもよい。
【0058】
このように、本実施形態に係るウェハ加工方法によれば、レーザ加工装置20で計測した溝Cの位置をブレードダイシング装置50に引き渡すことが可能となり、ブレードダイシング装置50側では改めて溝Cの位置を検査することなく切削を行うことが可能となる。結果として、プロセス全体で高品質、高精度、短時間の処理が可能となる。
【0059】
なお、ブレードダイシング装置50において、切削加工前に溝Cの観察を行って位置ずれ情報を取得することも、理論上は可能である。しかしながら、ブレードダイシング装置50は、ブレードを冷却するための切削水などを扱うために外乱が多く、撮影環境としては好ましくない。したがって、ブレードダイシング装置50よりもレーザ加工装置20の方が、溝Cの位置を安定した環境で観察することができ、好ましい。
【0060】
本実施形態では、レーザ照射ユニット26の対物レンズ26Aとカメラ30の対物レンズ30Aとがそれぞれ独立している。また、レーザ照射ユニット用Zベース28及びカメラ用Zベース32によってレーザ照射ユニット26とカメラ30とをそれぞれ個別にZ方向に移動可能に構成した。したがって、加工光の波長、焦点深度、瞳径、加工時の発光、加工時のフォーカス位置などの制限がない。また、被写界深度が浅い光学系を用いた場合であっても、レーザ照射ユニット26及びカメラ30はそれぞれ互いに独立して焦点の調整が可能であるため、ともに適切な高さで焦点を合わせることができ、加工と撮像とをそれぞれ最適な条件で実施することができる。
【0061】
一方、レーザ照射ユニット26の照射位置とカメラ30の撮像位置とが離れているため、その間の距離だけX方向の走査距離が延び、加工時間がかかる。このため、検査は全てのストリートLに対する溝Cではなく、任意のストリートLの間隔や、レーザ加工での補正前後など、任意のタイミングで実施してもよい。実施のタイミングは、ユーザが設定可能に構成してもよい。また、検査を行わない溝Cのずれ量は、線形や任意の高次曲線による補間をしてもよいし、補間しなくてもよい。
【0062】
また、レーザ照射ユニット26とカメラ30とのZベースを共通とし、レーザ照射ユニット26とカメラ30とをZ方向に同時に移動可能に構成してもよい。
【0063】
さらに、データベースサーバ60に代えて、USB(Universal Serial Bus)メモリなどの可搬性の記憶媒体としてもよい。この場合、レーザ加工装置20及びブレードダイシング装置50は、それぞれ可搬性の記憶媒体に対してデータのアクセスが可能に構成される。
【0064】
<第2の実施形態>
図8は、第2の実施形態に係るレーザ加工装置70の概略図である。レーザ加工装置20と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。図8に示すように、レーザ加工装置20は、レーザ照射ユニット72、ダイクロイックミラー74、及び共通Zベース76を備えている。
【0065】
レーザ照射ユニット72は、対物レンズ72Aを備える。ダイクロイックミラー74は、レーザ光源24から対物レンズ72Aまでのレーザ光の光路に配置される。共通Zベース76は、レーザ照射ユニット72の対物レンズ72AをZ方向下方に向けてレーザ照射ユニット72を保持する。
【0066】
レーザ光源24から出射されたレーザ光は、ダイクロイックミラー74を透過してレーザ照射ユニット72の対物レンズ72Aに入射する。対物レンズ72Aは、入射したレーザ光をウェハWの焦点位置に集光する。
【0067】
また、共通Zベース76は、カメラ30を保持する。カメラ30は、観察光源30B、ハーフミラー30C、及び撮像素子30Dを備える。観察光源30Bから出射された観察光は、ハーフミラー30C及びダイクロイックミラー74で反射し、対物レンズ72Aに入射する。対物レンズ72Aは、入射した観察光をウェハWの焦点位置に入射させる。
【0068】
ウェハWに入射した観察光のうち、ウェハWで反射した反射光の一部が被写体光として対物レンズ72Aに入射する。対物レンズ72Aに入射した被写体光は、ダイクロイックミラー74で反射してカメラ30に入射し、ハーフミラー30Cを透過して撮像素子30Dに入射する。撮像素子30Dは、入射した被写体光を受光して被写体像を撮像する。
【0069】
このように、カメラ30は、レーザ照射ユニット72の対物レンズ72Aを介して溝Cが形成されたウェハWの表面を撮像する。単一の対物レンズ72Aであるため、光学系全体をコンパクトにすることができる。また、共通Zベース76により加工光の焦点と観察光の焦点とを同時に合わせることができる。さらに、加工時の走査距離を短くすることができる。なお、光学系を追加して加工光の焦点と観察光の焦点とをそれぞれ互いに独立して調整可能に構成してもよい。
【0070】
なお、単一の対物レンズ72Aは、カメラ30の専用の対物レンズ30A(図3参照)と比較すると、コントラストや解像力が低下する。具体的には、対物レンズ72Aは、観察光の波長を430[nm]とすると、開口数NA=0.15、分解能=1.7[μm]程度の性能を有する。
【0071】
<その他>
レーザ加工装置20及びレーザ加工装置70によれば、図7に示した溝Cのずれ量を打ち消す方向に、リアルタイムに加工中のY方向の位置を調整(アクティブY)したり、角度を調整(アクティブθ)したりするなど、溝Cのずれ量をフィードバックに使用することも可能である。
【0072】
あるY座標における、あるX方向速度での位置ずれ量に再現性がある場合には、一度その条件で位置ずれ量を観察して記憶しておけば、その後同じ条件で加工する場合にリアルタイムに検査する必要はなくなる。しかし、水温や気温の変化などの外乱がある場合は、リアルタイムに測定して補正する方法が有効である。なお、リアルタイムに検査しない場合の利点としては、検査間隔が加工速度に影響を与えないため細かくサンプリングできる点や、処理時間が加工速度に影響を与えないので処理能力に余裕が出るため、処理能力が低い装置でも問題が発生しないという点を挙げることができる。
【0073】
また、カメラ30でデブリの発生量を観察し、デブリの発生量からノズルの健全性を検査してもよい。
【0074】
ウェハWの全てのストリートLに対する溝Cを隙間なく観察することができれば、レーザ加工装置20(70)内で全チップの溝Cの外観検査をすることになるため、加工不良や加工漏れが発生している不良チップを予め把握することができる。また、そのゆがみの変化を測定することによって、レーザ加工装置20(70)の故障予測やメンテナンスのタイミングについても計ることができる。
【0075】
本発明の技術的範囲は、上記の実施形態に記載の範囲には限定されない。各実施形態における構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各実施形態間で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0076】
10…ウェハ加工システム
20…レーザ加工装置
22…ステージ
24…レーザ光源
26…レーザ照射ユニット
26A…対物レンズ
28…レーザ照射ユニット用Zベース
30…カメラ
30A…対物レンズ
32…カメラ用Zベース
34…共通ベース
36…移動機構
38…制御装置
50…ブレードダイシング装置
52…ステージ
54…ブレード
56…移動機構
58…制御装置
60…データベースサーバ
70…レーザ加工装置
72…レーザ照射ユニット
72A…対物レンズ
74…ダイクロイックミラー
76…共通Zベース
B…バーコード
C…溝
L、LX、LY…ストリート
P…パターン
W…ウェハ
S1~S4…ウェハ加工方法の各ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8