(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009207
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】周期的堆積プロセスによって基材上に遷移金属含有膜を形成する方法、遷移金属ハロゲン化物化合物を反応チャンバーに供給する方法、及び関連蒸着装置
(51)【国際特許分類】
C23C 16/30 20060101AFI20240112BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
C23C16/30
C23C16/455
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023198228
(22)【出願日】2023-11-22
(62)【分割の表示】P 2020543099の分割
【原出願日】2019-02-11
(31)【優先権主張番号】15/897,578
(32)【優先日】2018-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519237203
【氏名又は名称】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ティモ・ハタンパ
(72)【発明者】
【氏名】カチャ・ヴァイネン
(72)【発明者】
【氏名】ミッコ・リタラ
(72)【発明者】
【氏名】マルック・レスケラ
(57)【要約】
【課題】周期的堆積プロセスにより基材上に遷移金属含有膜を形成する方法が開示されている。
【解決手段】方法は、基材を、二座窒素含有付加配位子を含む遷移金属ハロゲン化物化合物を含む第一の気相反応物質と接触させることと、基材を第二の気相反応物質と接触させることとを含むことができる。二座窒素含有配位子を含む遷移金属ハロゲン化物化合物を反応チャンバーに供給する方法が、関連する蒸着装置と共に開示されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的堆積プロセスにより基材上に遷移金属含有膜を形成する方法であって、
前記基材を、二座窒素含有付加配位子を含む遷移金属ハロゲン化物化合物を含む第一の気相反応物質と接触させることと、
前記基材を第二の気相反応物質と接触させることとを含む、方法。
【請求項2】
前記付加配位子が二つの窒素原子を含み、各々の窒素原子が少なくとも一つの炭素原子に結合されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記遷移金属ハロゲン化物化合物が遷移金属塩化物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記遷移金属塩化物化合物が、塩化コバルト、塩化ニッケル、又は塩化銅のうちの少なくとも一つを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記遷移金属塩化物化合物が、塩化コバルト(TMEDA)、又は塩化ニッケル(TMPDA)のうちの少なくとも一つを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第二の気相反応物質が、オゾン(O3)、分子状酸素(O2)、酸素原子(O)、酸素プラズマ、酸素ラジカル、酸素励起種、水(H2O)、及び過酸化水素(H2O2)からなる群から選択される酸素前駆体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記遷移金属含有膜が、遷移金属酸化物を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記遷移金属酸化物が、酸化コバルト(II)(CoO)を実質的に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記遷移金属酸化物を還元剤前駆体と接触させることを更に含み、それによって元素遷移金属を形成する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記還元剤前駆体が、フォーミングガス(H2+N2)、アンモニア(NH3)、ヒドラジン(N2H4)、水素分子(H2)、水素原子(H)、水素プラズマ、水素ラジカル、水素励起種、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、ボラン、又はアミンのうちの少なくとも一つを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第三級ブチルヒドラジン(C4H12N2)、水素(H2)、水素(H2)プラズマ、アンモニア(NH3)、アンモニア(NH3)プラズマ、ヒドラジン(N2H4)、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、トリシラン(Si3H8)、ゲルマン(GeH4)、ジゲルマン(Ge2H6)、ボラン(BH3)、及びジボラン(B2H6)からなる群から選択される還元剤前駆体を含む、第三の気相反応物質に前記基材を接触させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記遷移金属含有膜が、元素コバルト、元素ニッケル、又は元素銅のうちの少なくとも一つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記周期的堆積プロセスが、原子層堆積プロセスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記周期的堆積プロセスが周期的化学気相堆積プロセスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記遷移金属含有膜が、元素遷移金属、遷移金属窒化物、遷移金属ケイ化物、遷移金属硫化物、遷移金属セレン化物、遷移金属リン化物、又は遷移金属ホウ化物のうちの少なくとも一つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
周期的堆積プロセスにより基材上に遷移金属含有膜を形成する方法であって、
前記基材を付加体形成配位子を含む遷移金属化合物を含む第一の気相反応物質と接触させることと、
前記基材を第二の気相反応物質と接触させることと、を含み、
前記遷移金属が、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、及びコバルト(Co)からなる群から選択される、周期的堆積プロセスにより基材上に遷移金属含有膜を形成する方法。
【請求項17】
前記付加体形成配位子が、窒素、リン、酸素、又は硫黄のうちの少なくとも一つを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記遷移金属化合物が、遷移金属塩化物、遷移金属ヨウ化物、遷移金属フッ化物、又は遷移金属臭化物からなる群から選択される、遷移金属ハロゲン化物化合物を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記遷移金属ハロゲン化物化合物が、二座窒素付加体形成配位子を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記遷移金属化合物が、塩化コバルト(TMEDA)、臭化コバルト(TMEDA)、ヨウ化コバルト(TMEDA)、塩化コバルト(TMPDA)、又は塩化ニッケル(TMPDA)のうちの少なくとも一つを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
付加体形成配位子を含む前記遷移金属化合物が、遷移金属ハロゲン化物化合物及び付加体形成配位子を50℃未満の温度で組み合わせることを含む、ワンステップ合成プロセスを利用して合成される、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記第二の気相反応物質が、酸素前駆体、窒素前駆体、シリコン前駆体、硫黄前駆体、セレン前駆体、リン前駆体、ホウ素前駆体、又は還元剤のうちの少なくとも一つを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
請求項1に記載の方法に従い形成される、前記遷移金属含有膜を含むデバイス構造。
【請求項24】
二座窒素含有付加配位子を含む遷移金属ハロゲン化物化合物を、反応チャンバーに供給するための方法であって、
前記遷移金属ハロゲン化物化合物を収容するように構成された前駆体供給源容器を提供することと、
前記反応チャンバーに前記前駆体供給源容器を流体連結させることと、
前記前駆体供給源容器内に含まれる前記遷移金属ハロゲン化物化合物を50℃より高い温度に加熱することと、
少なくとも0.001ミリバ-ルの前記遷移金属ハロゲン化物化合物の蒸気圧を生成することと、
前記遷移金属ハロゲン化物化合物を前記反応チャンバーに供給することと、を含む、二座窒素含有付加配位子を含む遷移金属ハロゲン化物化合物を、反応チャンバーに供給するための方法。
【請求項25】
前記遷移金属ハロゲン化物化合物が、塩化コバルト(TMEDA)、塩化ニッケル(TMPDA)のうちの少なくとも一つを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
反応性揮発性化学物質を利用する蒸着装置であって、
反応チャンバーと、
前記反応チャンバーに配置された基材と、
前記反応チャンバーと流体連通する前駆体供給源容器と、
前記前駆体供給源容器に配置された二座窒素含有付加配位子を含む、遷移金属ハロゲン化物化合物と、を備える、反応性揮発性化学物質を利用する蒸着装置。
【請求項27】
前記遷移金属ハロゲン化物化合物が、塩化コバルト(TMEDA)、又は塩化ニッケル(TMPDA)のうちの少なくとも一つを含む、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記遷移金属化合物が、150℃未満の遷移金属化合物温度で0.001ミリバールを超える蒸気圧を示す、請求項26に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本開示は、2018年2月15日に出願され、「A METHOD OF FORMING A TRANSITION METAL CONTAINING FILM ON A SUBSTRATE BY A CYCLICAL DEPOSITION PROCESS, A METHOD FOR SUPPLYING A TRANSITION METAL HALIDE COMPOUND TO A REACTION CHAMBER, AND RELATED VAPOR DEPOSITION APPARATUS」と題された米国特許出願第15/897,578号の利益を主張し、これを参照によって本明細書に組み込む。
【0002】
共同研究協約の当事者
本願で特許請求される発明は、ヘルシンキ大学(the University of Helsinki)とASM Microchemistry Oyとの間の共同研究協約によって、又は共同研究協約のために、及び/又は共同研究協約に関連してなされた。当協約は、特許請求される発明がなされた日及びその日以前に発効しており、特許請求される発明は、当協約の範囲内で取り組まれた活動の結果としてなされたものである。
【0003】
本開示は、概ね、周期的堆積プロセスにより、基材上に遷移金属含有膜を形成する方法、特にコバルト、銅、及びニッケル含有膜を形成するための方法に関する。本開示はまた、概ね、遷移金属ハロゲン化物化合物を蒸着ツール及び関連する蒸着装置に供給するための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
先端技術ノードにおける半導体デバイス製造プロセスは一般に、例えば、元素遷移金属、遷移金属酸化物、遷移金属窒化物、遷移金属ケイ化物、遷移金属リン化物、遷移金属セレン化物、又は遷移金属ホウ化物などの遷移金属含有膜を形成するための最先端の堆積法を必要とする。
【0005】
遷移金属含有膜の堆積に対する共通要件は、堆積プロセスが極めて共形であることである。例えば、高アスペクト比特徴を含む三次元構造上に遷移金属含有膜を均一に堆積させるために、共形堆積が必要とされることが多い。遷移金属含有膜の堆積に対する別の共通の要件は、堆積プロセスが、大きな基材領域の上に連続する超薄膜を堆積することができることである。遷移金属含有膜が導電性である特定の場合において、堆積プロセスは、低電気耐性の膜を生成するように最適化される必要があり得る。
【0006】
例えば、原子層堆積(ALD)及び周期的化学気相堆積(CCVD)などの周期的堆積プロセスは、一つまた複数の前駆体(反応物質)を反応チャンバーに逐次的に導入し、そこで前駆体は逐次的、自己制御的に一度に一つずつ基材の表面と反応する。原子レベルの厚さ制御による優れた共形性を有する金属含有膜を生成する周期的堆積プロセスが実証されてきた。
【0007】
周期的堆積プロセスは、例えば、銅含有膜、ニッケル含有膜、及び特にコバルト含有膜等の遷移金属含有膜の堆積に利用されてもよい。しかしながら、遷移金属含有膜の周期的堆積に適した化学的前駆体、及び特にコバルト含有膜は一般的ではなく、法外な費用がかかる。例えば、コバルト含有膜の周期的堆積に利用される既存の化学前駆体は、望ましくない高温堆積プロセス及び/又はプラズマ増強堆積プロセスの使用を必要とし得る。加えて、既存のコバルト化学前駆体を利用する周期的堆積プロセスは、下層基材の材料への堆積プロセスの感度によって望ましくない場合がある。従って、周期的堆積方法、周期的堆積プロセスでの使用に適した化学前駆体、及び関連する蒸着装置は、遷移金属含有膜、特にコバルト、銅、及びニッケル含有膜の形成に望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の概要は、概念の選択を簡略化した形で紹介するように提供する。これらの概念について、以下の本開示の例示的な実施形態の「発明を実施するための形態」において、更に詳細に説明される。この発明の概要は、特許請求される主題の主要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図していない、又は特許請求される主題の範囲を限定するために使用することも意図していない。
【0009】
本開示のいくつかの実施形態では、周期的堆積プロセスによる基材上に金属含有膜を形成する方法が提供される。方法は、基材を、二座窒素含有付加配位子を含む遷移金属ハロゲン化物化合物を含む第一の気相反応物質と接触させることと、基材を第二の気相反応物質と接触させることとを含むことができる。
【0010】
本開示のいくつかの実施形態では、周期的堆積プロセスによる基材上に金属含有膜を形成する追加的方法が提供される。方法は、基材を、付加体形成配位子を含む遷移金属化合物を含む第一の気相反応物質と接触させることと、基材を第二の気相反応物質と接触させることとを含み得、遷移金属は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、及びコバルト(Co)からなる群から選択される。
【0011】
本開示のいくつかの実施形態では、反応チャンバーへの二座窒素含有付加配位子を含む遷移金属ハロゲン化物化合物を供給するための方法が提供される。方法は、遷移金属ハロゲン化物化合物を含むように構成された前駆体供給源容器を提供することと、前駆体供給源容器を反応チャンバーに流体接続することと、前駆体供給源容器内に含まれる遷移金属ハロゲン化物化合物を150℃を超える温度に加熱することと、少なくとも0.001ミリバールの遷移金属ハロゲン化物化合物の蒸気圧を生成することと、遷移金属ハロゲン化物化合物を反応チャンバーへ供給することと、を含み得る。
【0012】
本開示のいくつかの実施形態では、反応性揮発性化学物質を利用する蒸着装置を提供する。装置は、反応チャンバー、反応チャンバー内に配置された基材、反応チャンバーと流体連通する前駆体供給源容器、及び前駆体供給源容器内に配置された二座窒素含有付加配位子を含む遷移金属ハロゲン化物化合物を含み得る。
【0013】
本発明と先行技術を超えて達成された利点とを要約する目的で、本発明の特定の目的及び利点が本明細書において上記に説明されている。当然のことながら、必ずしもこうした目的又は利点のすべてが本発明の任意の特定の実施形態によって達成されなくてもよいことが理解されるべきである。それ故に、例えば本明細書に教示又は示唆する通り、一つの利点又は一群の利点を達成又は最適化する様態で、本明細書で教示又は示唆されうる通りの他の目的又は利点を必ずしも達成することなく、本発明が具体化又は実行されてもよいことを当業者は認識するであろう。
【0014】
これらの実施形態のすべては、本明細書に開示する本発明の範囲内であることが意図されている。当業者には、これらの及び他の実施形態は、添付の図面を参照して、以下のある特定の実施形態の詳細な説明から容易に明らかとなり、本発明は、開示されるいかなる特定の実施形態にも限定されない。
【0015】
本明細書は、本発明の実施形態とみなされるものを具体的に指摘し、明確に特許請求する特許請求の範囲で結論付ける一方で、本開示の実施形態の利点は、添付の図面と併せて読むと、本開示の実施形態のある特定の実施例の説明から、より容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態による例示的な周期的堆積方法のプロセスフローを示す。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態による、堆積させた遷移金属含有膜を含む例示的なデバイス構造の概略図を示す。
【
図3】
図3は、本開示の周期的堆積プロセスで利用される遷移金属ハロゲン化物化合物の例を示す。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態による例示的な蒸着装置の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ある特定の実施形態及び実施例を以下に開示するが、それらは、本発明が具体的に開示する本発明の実施形態及び/又は用途、ならびにその明白な変更及び均等物を超えて拡大することは、当業者により理解されるであろう。それ故に、開示される本発明の範囲は、以下に説明される特定の開示された実施形態によって限定されるべきではないことが意図される。
【0018】
本明細書に示される図は、任意の特定の材料、構造又はデバイスの実際の図であることを意味せず、本開示の実施形態を説明するために使用される、単に理想化された表現にすぎない。
【0019】
本明細書で使用される「周期的堆積」という用語は、基材上に膜を堆積させるために反応チャンバーに前駆体(反応物質)を連続的に導入することを指し、原子層堆積及び周期的化学気相堆積などの堆積技術を含む。
【0020】
本明細書で使用される「周期的化学気相堆積」という用語は、基材を二つ以上の揮発性前駆体に逐次曝し、その前駆体が基材上で反応及び/又は分解して所望の堆積物を生成する、任意のプロセスを指すことができる。
【0021】
本明細書で使用する通り、「基材」という用語は、使用される場合がある、又はその上にデバイス、回路もしくは膜が形成される場合がある、あらゆる下層材料又は複数の下層材料を指してもよい。
【0022】
本明細書で使用する用語「原子層堆積」(ALD)は、堆積サイクル、好ましくは複数の連続堆積サイクルがプロセスチャンバー内で行われる蒸着プロセスを指すことができる。典型的には、各サイクルの間、前駆体は、堆積表面(例えば、基材の表面又は以前に堆積させた下地の表面、例えば、以前のALDサイクルを用いて堆積させた材料など)に化学吸着し、追加の前駆体と容易に反応しない単分子層又はサブ単分子層を形成する(すなわち、自己制御反応)。その後、必要に応じて、化学吸着した前駆体を堆積表面上で所望の材料に変換するのに使用するために、反応物(例えば、別の前駆体または反応ガス)をその後プロセスチャンバー内に導入することができる。典型的には、この反応物質は前駆体と更に反応することができる。更に、各サイクル中にパージ工程を利用して、化学吸着された前駆体の変換後に、過剰な前駆体をプロセスチャンバーから除去する、ならびに/または過剰の反応物質及び/もしくは反応副生成物をプロセスチャンバーから除去することができる。更に、本明細書で使用される「原子層堆積」という用語は、関連する用語、例えば、「化学蒸着原子層堆積」、「原子層エピタキシー」(ALE)、分子線エピタキシー(MBE)、ガス源MBE、又は有機金属MBE、並びに前駆体組成物、反応性ガス、及びパージ(例えば、不活性キャリア)ガスの交互パルスで実施される場合の化学ビームエピタキシー等、により示されるプロセスを含むことも意味する。
【0023】
本明細書で使用される場合、「膜」、「薄膜」、「層」及び「薄層」という用語は、本明細書に開示される方法により堆積させた任意の連続的又は非連続的な構造及び材料を意味することを意図する。「膜」、「薄膜」、「層」及び「薄層」としては、例えば、2D材料、ナノロッド、ナノチューブ、又はナノ粒子、又は部分的なもしくは完全な分子層、又は部分的なもしくは完全な原子層、又は原子及び/もしくは分子のクラスター、を挙げることができる。「膜」「薄膜」、「層」及び「薄層」は、ピンホールを有する材料又は層を含み得るが、それでも少なくとも部分的に連続している。
【0024】
本明細書で使用される場合、「遷移金属含有膜」という用語は、元素遷移金属、遷移金属酸化物、遷移金属窒化物、遷移金属ケイ化物、遷移金属セレン化物、遷移金属リン化物、遷移金属ホウ化物、及びこれらの混合物を含むが、これらに限定されない遷移金属種を含有する膜を指し得る。更に、「遷移金属含有膜」という用語は、遷移金属種含有膜ならびに炭素及び/又は水素含有膜を指し得る。
【0025】
本開示の実施形態を通じて多くの例示的な材料が与えられており、例示的な材料のそれぞれに与えられる化学式は限定的であると解釈されるべきではなく、与えられる非限定的な例示的な材料はある例示的な化学量論によって限定されるべきではないことに留意されたい。
【0026】
本開示は、基材上に遷移金属含有膜を形成するための方法、及び基材上に遷移金属含有膜の周期的堆積のための特定の方法を含む。本開示の実施形態は、例えば、銅含有膜、ニッケル含有膜、及び特にコバルト含有膜などの遷移金属含有膜の周期的堆積の方法を含み得る。
【0027】
本開示の特定の実施形態では、周期的堆積方法を利用して、例えば、元素コバルト、酸化コバルト、窒化コバルト、ケイ化コバルト、リン化コバルト、セレン化コバルト、又はホウ化コバルトなどのコバルト含有膜を堆積させ得る。新たな半導体デバイス製造プロセスでは、コバルト金属膜は、銅相互接続材料の周囲の誘電材料への電気移動を抑制するために、ライナー層およびキャッピング層などの用途で重要であり得る。実際に、先進技術ノードでデバイス機能のサイズが減少すると、コバルト金属膜は、一般に利用されている銅相互接続に取って代わり、相互接続材料として利用され得る。コバルト金属膜はまた、巨大磁気抵抗用途及び磁気メモリ用途で関心対象であり得る。更に、コバルト薄膜を、集積回路のシリコンゲート接点上に堆積させて、アニーリング時にケイ化コバルトを形成することもできる。コバルトの酸化物は、例えば、リチウムイオン電池及び電気化学水酸化などの新たなエネルギー関連技術での用途を有する可能性があり、触媒材料としても利用されている。
【0028】
元素コバルト及びコバルト含有膜の堆積は、典型的には、スパッタリング技術、ならびに有機金属前駆体を用いるCVD法を利用して達成されてきた。しかしながら、コバルト含有膜の堆積に関するそのような公知の方法は、それらの固有の非共形性により、先端技術ノードには不適切であり得る。原子層堆積などの周期的堆積方法は、特徴的に共形堆積方法であり、高いアスペクト比の特徴を含む三次元構造上の共形遷移金属含有膜の堆積に極めて適している。従って、遷移金属含有膜の堆積、特にコバルト含有膜の堆積のための周期的堆積方法が非常に望ましい。
【0029】
更に、コバルト含有膜の周期的堆積方法の開発は、適切な化学前駆体及びコスト効果の高い化学前駆体の欠如によって妨げられてきた。例えば、公知の化学前駆体を利用するコバルト含有膜の周期的堆積は、例えば300℃を超える望ましくない高温堆積プロセスを必要とする可能性がある。プラズマ増強原子層堆積プロセスは、より低い堆積温度でのコバルト含有膜の堆積に利用されてもよいが、プラズマ系プロセスの利用は、高エネルギープラズマ反応種による下層の半導体デバイス構造の潜在的な損傷のため、いくつかのデバイス用途では望ましくない場合がある。従って、遷移金属含有膜の堆積に適した化学前駆体が望ましく、周期的堆積プロセスによるコバルト含有膜の堆積には特定の化学前駆体が望ましい。更に、例えば、原子層堆積装置などの適切な蒸着システムに化学前駆体を供給するための方法及び関連装置が必要である。
【0030】
従って、本開示の実施形態は、周期的堆積プロセスによる基材上に遷移金属含有膜を形成する方法を含み得る。方法は、基材を、二座窒素含有付加配位子を含む遷移金属ハロゲン化物化合物を含む第一の気相反応物質と接触させることと、基材を第二の気相反応物質と接触させることとを含むことができる。
【0031】
本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属含有層(又は膜)は、遷移金属ハロゲン化物化合物を金属前駆体として利用する周期的堆積プロセスによって堆積させることができる。周期的堆積プロセスの非限定的な例示の実施形態は原子層堆積(ALD)を含み、ALDは典型的な自己制御反応に基づいており、それにより反応物質の逐次及び交互パルスを用いて、堆積サイクル当たり材料の約一原子(又は分子)単層を堆積する。堆積条件及び前駆体は、典型的には、一つの反応物質の吸着層が同じ反応物質の気相の反応物質と非反応性の表面終端を残すように、自己飽和反応を提供するように選択される。その後、基材を、前の終端と反応する異なる反応物質と接触させ、連続的な堆積を可能にする。従って、交互パルスの各サイクルは、典型的には、所望の材料の約一単層以下の単層を残す。しかし、上記のように、一つ又は複数のALDサイクルにおいて、例えば、交互するプロセスの性質にもかかわらずいくつかの気相反応が起こる場合、材料の一つより多い単層を堆積させることができることを、当業者は認識するであろう。
【0032】
遷移金属含有膜を堆積させるALDタイプのプロセスでは、一回の堆積サイクルは、基材を第一の反応物質に接触させることと、任意の未反応の第一の反応物質及び反応副生成物を反応空間から除去することと、基材を第二の反応物質に接触させることと、を含むことができ、第二の除去する工程に続く。第一の反応物質は、遷移金属ハロゲン化物化合物(「金属前駆体」)を含んでもよく、第二の反応物質は、酸素前駆体、窒素前駆体、シリコン前駆体、硫黄前駆体、セレン前駆体、リン前駆体、ホウ素前駆体、又は還元剤のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0033】
前駆体は、反応物質間の気相反応を防止し、自己飽和表面反応を可能にするように、不活性ガス、例えばアルゴン(Ar)又は窒素(N2)によって分離されることができる。しかし、いくつかの実施形態では、基材を移動させて、第一の気相反応物質と第二の気相反応物質とを、別々に接触させることができる。反応が自己飽和するので、基材の厳密な温度制御及び前駆体の正確な投与量制御は必要でない場合もある。しかし、基材温度は、入射ガス種が単層に凝縮しないように、及び表面で分解しないようにすることが好ましい。基材を次の反応性化学物質と接触させる前に、余分な化学物質および反応副生成物がある場合には、それらを、例えば反応空間をパージすることによりまたは基材を移動させることにより、基材の表面から除去する。望ましくない気体の分子を、不活性パージガスを用いて反応空間から効果的に排出することができる。パージを促進するために、真空ポンプを使用することができる。
【0034】
遷移金属含有膜を堆積させるために使用できる反応器を、堆積に使用できる。このような反応器としては、前駆体を供給するための適切な装置及び手段を備えたALD反応器、並びにCVD反応器が挙げられる。いくつかの実施形態によれば、シャワーヘッド反応器を使用し得る。いくつかの実施形態によれば、クロスフロー、バッチ、ミニバッチ、又は空間ALD反応器が使用され得る。
【0035】
使用することができる適切な反応器の例としては、アリゾナ州フェニックスのASM America,Inc.、及びオランダ、アルメアのASM Europe B.V.から入手可能な、市販の単一基材(又は単一ウエハ)成膜装置、例えば、Pulsar(登録商標)反応器(例えば、Pulsar(登録商標)2000、Pulsar(登録商標)3000、及びPulsar(登録商標)XP ALD等)、並びにEmerALD(登録商標)XP及びEmerALD(登録商標)反応器等が挙げられる。他の市販の反応器としては、商品名Eagle(登録商標)XP及びXP8、日本エー・エス・エム(株)(日本、東京)製の反応器が挙げられる。いくつかの実施形態では、反応器は処理中に基材が移動又は回転する空間ALD反応器である。
【0036】
本開示のいくつかの実施形態では、バッチ式反応器を使用し得る。適切なバッチ式反応器としては、商品名A400及びA412PLUSでASM Europe B.V(オランダ、アルメア)から市販のAdvance(登録商標)400シリーズ反応器が挙げられるが、これに限定されない。いくつかの実施形態では、ウエハは処理中に回転する。他の実施形態では、バッチ式反応器は、10枚以下のウエハ、8枚以下のウエハ、6枚以下のウエハ、4枚以下のウエハ、もしくは2枚以下のウエハを収容するように構成されるミニバッチ式反応器を備える。バッチ式反応器が使用されるいくつかの実施形態では、ウエハ間の不均一性は3%(1シグマ)未満、2%未満、1%未満又は更には0.5%未満である。
【0037】
本明細書に記載の堆積方法を、クラスタツールに接続される反応器又は反応チャンバーで任意に行うことができる。クラスタツールでは、各反応チャンバーが一つのタイプのプロセス専用であるため、各モジュール内の反応チャンバーの温度を一定に保つことができ、各運転の前に基材をプロセス温度まで加熱する反応器と比較してスループットが向上する。更に、クラスタツールでは、反応チャンバーを基材間で所望のプロセス圧力レベルに排気する時間を短縮することが可能である。本開示のいくつかの実施形態では、堆積プロセスは、複数の反応チャンバーを含むクラスタツール内で実施されてもよく、各個々の反応チャンバーは、基材を個々の前駆体ガスに曝露させるために使用されてもよく、基材を複数の前駆体ガスに曝露されるように異なる反応チャンバー間を搬送してもよく、基材の搬送は基材の酸化/汚染を回避するために制御された周辺環境下で実施される。本開示のいくつかの実施形態では、堆積プロセスは、複数の反応チャンバーを備えるクラスタツール内で実施されてもよく、各個々の反応チャンバーは、基材を異なる堆積温度に加熱するように構成されてもよい。
【0038】
独立型反応器にはロードロックが装備されている。その場合、各運転と運転との間に反応空間を冷却する必要はない。いくつかの実施形態では、遷移金属含有膜の堆積のための堆積プロセスは、例えばALDサイクル又は周期的CVDサイクルなどの複数の堆積サイクルを含み得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、周期的堆積プロセスは、基材上に遷移金属含有膜を形成するのに使用され、周期的堆積プロセスはALDタイプのプロセスであり得る。いくつかの実施形態では、周期的堆積は、ハイブリッドALD/CVD又は周期的CVDプロセスであることができる。例えば、いくつかの実施形態では、ALDプロセスの成長速度は、CVDプロセスと比較して低い場合がある。成長速度を増加させる一つのアプローチは、ALDプロセスにおいて典型的に使用される温度よりも高い基材温度で動作するアプローチであり、結果として化学蒸着プロセスになるが、更に前駆体の逐次導入を利用し、このようなプロセスは周期的CVDと呼ばれ得る。
【0040】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ALDプロセスは、部分的に作成された半導体デバイス構造などの基材上に遷移金属含有膜を堆積させるために使用され得る。本開示のいくつかの実施形態では、各ALDサイクルは、二つの異なる堆積工程又は段階を含む。堆積サイクルの第一段階(「金属段階」)では、堆積が望まれる基材の表面を、基材の表面上に化学吸着する金属前駆体を含み、基材の表面上に反応物質種の約一単層以下の単層を形成する第一の気相反応物質と接触させる。堆積の第二段階では、堆積が望まれる基材表面は、酸素前駆体、窒素前駆体、シリコン前駆体、硫黄前駆体、セレン前駆体、リン前駆体、ホウ素前駆体、又は還元剤のうちの少なくとも一つを含む第二の気相反応物質と接触し、第二の気相反応物質は、基材の表面上の遷移金属種と反応して、例えば、元素遷移金属、遷移金属酸化物、遷移金属窒化物、遷移金属ケイ化物、遷移金属セレン化物、遷移金属リン化物、遷移金属ホウ化物、及びこれらの混合物、ならびに炭素及び/又は水素を更に含む遷移金属含有膜などの基材上に遷移金属含有膜を形成することができる。
【0041】
本開示のいくつかの実施形態では、第一の気相反応物質は、本明細書で「金属化合物」とも称される、金属含有前駆体を含むことができる。いくつかの実施形態では、第一の気相反応物質は、付加体形成配位子を有する遷移金属化合物を含み得る。いくつかの実施形態では、第一の気相反応物質は、遷移金属化合物を含み得る。いくつかの実施形態では、第一の気相反応物質は、遷移金属ハロゲン化物化合物を含み得る。いくつかの実施形態では、第一の気相反応物質は、単座、二座、又は多座付加体形成配位子などの付加体形成配位子を有する遷移金属化合物を含み得る。いくつかの実施形態では、第一の気相反応物質は、単座、二座、又は多座付加体形成配位子などの付加体形成配位子を有する遷移金属ハロゲン化物化合物を含み得る。いくつかの実施形態では、第一の気相反応物質は、窒素を含む単座、二座、又は多座付加体形成配位子などの窒素を含む付加体形成配位子を有する遷移金属化合物を含み得る。いくつかの実施形態では、第一の気相反応物質は、亜リン酸、酸素、又は硫黄を含む単座、二座、又は多座付加体形成配位子などの亜リン酸、酸素、又は硫黄を含む付加体形成配位子を有する遷移金属化合物を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、遷移金属ハロゲン化物化合物は、遷移金属塩化物、遷移金属ヨウ化物、遷移金属フッ化物、又は遷移金属臭化物を含み得る。本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属ハロゲン化物化合物は、コバルト、ニッケル、又は銅のうちの少なくとも一つを含むが、これに限定されない遷移金属種を含むことができる。本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属ハロゲン化物化合物は、塩化コバルト、塩化ニッケル、又は塩化銅のうちの少なくとも一つを含むことができる。いくつかの実施形態では、遷移金属ハロゲン化物化合物は、二座窒素含有付加体形成配位子を含んでもよい。いくつかの実施形態では、遷移金属ハロゲン化物化合物は、二つの窒素原子を含む付加体形成配位子を含んでもよく、ここで窒素原子の各々は少なくとも一つの炭素原子に結合される。本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属ハロゲン化物化合物は、中心遷移金属原子に結合された一つ又は複数の窒素原子を含み、それによって金属複合体を形成する。
【0042】
本開示のいくつかの実施形態では、第一の気相反応物質は、以下の式(I)を有する遷移金属化合物を含み得る。
(付加体)n-M-Xa (I)
式中、「付加体」のそれぞれは、付加体形成配位子であり、単座、二座、又は多座付加体形成配位子又はその混合物となるよう独立して選択されることができ、単座形成配位子の場合、nは1~4であり、二座又は多座付加体形成配位子の場合、nは1~2であり、Mは、例えば、コバルト(Co)、銅(Cu)、又はニッケル(Ni)などの遷移金属であり、Xaのそれぞれは別の配位子であり、ハロゲン化物又は他の配位子となるように独立して選択されることができ、ここでaは、1~4であり、一部の例では、aは2である。
【0043】
本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属ハロゲン化物化合物などの遷移金属化合物における付加体形成配位子は、窒素原子、亜リン酸原子、酸素原子、又は硫黄原子のうちの少なくとも一つを介して、遷移金属化合物の遷移金属原子に配位させる、単座、二座、又は多座付加体形成配位子を含み得る。本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属化合物中の付加体形成配位子は、環状付加配位子を含み得る。本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属化合物中の付加体形成配位子は、モノアミン、ジアミン、又はポリアミンを含み得る。本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属化合物中の付加体形成配位子は、モノエーテル、ジエーテル、又はポリエーテルを含み得る。いくつかの実施形態では、遷移金属化合物中の付加体形成配位子は、モノホスフィン、ジホスフィン、又はポリホスフィンを含み得る。いくつかの実施形態では、遷移金属化合物中の付加体形成配位子は、付加体形成配位子中に、窒素、酸素、亜リン酸、又は硫黄に加えて炭素を含んでもよい。
【0044】
本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属化合物中の付加体形成配位子は、一つの単座付加体形成配位子を含み得る。本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属化合物中の付加体形成配位子は、二つの単座付加体形成配位子を含み得る。本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属化合物中の付加体形成配位子は、三つの単座付加体形成配位子を含み得る。本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属化合物中の付加体形成配位子は、四つの単座付加体形成配位子を含み得る。本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属化合物中の付加体形成配位子は、一つの二座付加体形成配位子を含み得る。本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属化合物中の付加体形成配位子は、二つの二座付加体形成配位子を含み得る。本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属化合物中の付加体形成配位子は、一つの多座付加体形成配位子を含み得る。本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属化合物中の付加体形成配位子は、二つの多座付加体形成配位子を含み得る。
【0045】
本開示のいくつかの実施形態では、付加体形成配位子は、アミン、ジアミン、又はポリアミン付加体形成配位子などの窒素を含む。このような実施形態では、遷移金属化合物は、トリエチルアミン(TEA)、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,2-エチレンジアミン(CAS:110-18-9)(TMEDA)、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン(CAS:150-77-6)(TEEDA)、N,N’-ジエチル-1,2-エチレンジアミン(CAS:111-74-0)(DEEDA)、N,N’-ジイソプロピルエチレンジアミン(CAS:4013-94-9)、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン(CAS:110-95-2)(TMPDA)、N,N,N’,N’-テトラメチルメタンジアミン(CAS:51-80-9)(TMMDA)、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン(CAS:3030-47-5)(PMDETA)、ジエチレントリアミン(CAS:111-40-0)(DIEN)、トリエチレンテトラミン(CAS:112-24-3)(TRIEN)、トリス(2-アミノエチル)アミン(CAS:4097-89-6)(TREN、TAEA)、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン(CAS:3083-10-1)(HMTETA)、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン(CAS:295-37-4)(Cyclam)、1,4,7-トリメチル-1,4,7-トリアザシクロノナン(CAS:96556-05-7)、又は1,4,8,11-テトラメチル-1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン(CAS:41203-22-9)のうちの少なくとも一つを含み得る。
【0046】
本開示のいくつかの実施形態では、付加体形成配位子は、ホスフィン、ジホスフィン、又はポリホスフィン付加体形成配位子などの亜リン酸を含む。例えば、遷移金属化合物は、トリエチルホスフィン(CAS:554-70-1)、トリメチルホスファイト(CAS:121-45-)、1,2-ビス(ジエチルホスフィノ)エタン(CAS:6411-21-8)(BDEPE)、又は1,3-ビス(ジエチルホスフィノ)プロパン(CAS:29149-93-7)のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0047】
本開示のいくつかの実施形態では、付加体形成配位子は、エーテル、ジエーテル、又はポリエーテル付加体形成配位子などの酸素を含む。例えば、遷移金属化合物は、1,4-ジオキサン(CAS:123-91-1)、1,2-ジメトキシエタン(CAS:110-71-4)(DME、モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(CAS:111-96-6)(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(CAS:112-49-2)(トリグライム)、又は1,4,7,10-テトラオキサシクロドデカン(CAS:294-93-9)(12-クラウン-4)のうちの少なくとも一つを含み得る。
【0048】
本開示のいくつかの実施形態では、付加体形成配位子は、例えば、1,7-ジアザ-12-クラウン-4:1,7-ジオキサ-4,10-ジアザシクロドデカン(CAS:294-92-8)、又は1,2-ビス(メチルチオ)エタン(CAS:6628-18-8)のうちの少なくとも一つなどのチオエーテル又は混合エーテルアミンを含む場合がある。
【0049】
いくつかの実施形態では、遷移金属ハロゲン化物化合物は、塩化コバルトN,N,N’,N’-テトラメチル-1,2-エチレンジアミン(CoCl2(TMEDA))を含み得る。いくつかの実施形態では、遷移金属ハロゲン化物化合物は、臭化コバルトテトラメチルエチレンジアミン(CoBr2(TMEDA))を含み得る。いくつかの実施形態では、遷移金属ハロゲン化物化合物は、ヨウ化コバルトテトラメチルエチレンジアミン(Col2(TMEDA))を含み得る。いくつかの実施形態では、遷移金属ハロゲン化物化合物は、塩化コバルトN,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン(CoCl2(TMPDA))を含み得る。本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属ハロゲン化物化合物は、塩化コバルトN,N,N’,N’-テトラメチル-1,2-エチレンジアミン(CoCl2(TMEDA))、塩化ニッケルテトラメチル-1,3-プロパンジアミン(NiCl2(TMPDA))、又はヨウ化ニッケルテトラメチル-1,3-プロパンジアミン(NiI2(TMPDA))を含み得る。
【0050】
本開示のいくつかの実施形態では、基材を遷移金属ハロゲン化物化合物を含む第一の気相反応物質、すなわち付加体形成配位子を含む遷移金属ハロゲン化物と接触させることは、基材を遷移金属ハロゲン化物化合物に曝露すること、すなわち約0.01秒~約60秒の間、約0.05秒~約10秒の間、又は約0.1秒~約5.0秒の間、接触させることを含むことができる。加えて、遷移金属ハロゲン化物化合物をパルス注入する間、遷移金属ハロゲン化物化合物の流量は、2000sccm未満、又は500sccm未満、又は更には100sccmであってもよい。加えて、基材上に遷移金属ハロゲン化物化合物をパルス注入する間、遷移金属ハロゲン化物化合物の流量は、約1~2000sccm、約5~1000sccm、又は約10~約500sccmで変動してもよい。
【0051】
過剰な遷移金属ハロゲン化物化合物及び反応副生成物がある場合には、それらを、例えば不活性ガスでポンピングすることにより、表面から除去し得る。例えば、本開示のいくつかの実施形態では、この方法は、基材の表面を約2.0秒未満の時間パージするパージサイクルを含み得る。過剰な遷移金属ハロゲン化物化合物及び反応副生成物を、反応チャンバーと流体連通するポンプシステムによって生成される真空を用いて除去してもよい。
【0052】
堆積サイクルの第二段階では、基材を、酸素前駆体、窒素前駆体、シリコン前駆体、硫黄前駆体、セレン前駆体、リン前駆体、ホウ素前駆体、又は還元剤のうちの少なくとも一つを含む第二の気相反応物質と接触させることができる。いくつかの実施形態では、第二の気相反応物質は、酸素前駆体を含んでもよく、本明細書に開示される周期的堆積方法によって堆積される遷移金属含有膜は、遷移金属酸化物を含み得る。いくつかの実施形態では、第二の気相反応物質は、以下により詳細に説明される還元剤を含んでもよく、ここに開示される周期的堆積方法によって堆積される遷移金属含有膜は、元素遷移金属を含み得る。いくつかの実施形態では、第二の気相反応物質は、窒素前駆体を含んでもよく、本明細書に開示される周期的堆積方法によって堆積される遷移金属含有膜は、遷移金属窒化物を含み得る。いくつかの実施形態では、第二の気相反応物質は、シリコン前駆体を含んでもよく、本明細書に開示される周期的堆積方法によって堆積される遷移金属含有膜は、遷移金属ケイ化物を含み得る。いくつかの実施形態では、第二の気相反応物質は、硫黄前駆体を含んでもよく、本明細書に開示される周期的堆積方法によって堆積される遷移金属含有膜は、遷移金属硫化物を含み得る。いくつかの実施形態では、第二の気相反応物質は、セレン前駆体を含んでもよく、本明細書に開示される周期的堆積方法によって堆積される遷移金属含有膜は、遷移金属セレン化物を含み得る。いくつかの実施形態では、第二の気相反応物質は、リン前駆体を含んでもよく、本明細書に開示される周期的堆積方法によって堆積される遷移金属含有膜は、遷移金属リン化物を含み得る。いくつかの実施形態では、第二の気相反応物質は、ホウ素前駆体を含んでもよく、本明細書に開示される周期的堆積方法によって堆積される遷移金属含有膜は、遷移金属ホウ化物を含み得る。
【0053】
本開示の実施形態では、第二の気相反応物質は酸素前駆体を含み、酸素前駆体は、オゾン(O3)、分子状酸素(O2)、酸素原子(O)、酸素プラズマ、酸素ラジカル、酸素励起種、水(H2O)、又は過酸化水素(H2O2)のうちの少なくとも一つを含んでもよい。本開示の実施形態では、第二の気相反応物質は窒素前駆体を含み、窒素前駆体は、アンモニア(NH3)、ヒドラジン(N2H4)、トリアザン(N3H5)、tert-ブチルヒドラジン(C4H9N2H3)、メチルヒドラジン(CH3NHNH2)、ジメチルヒドラジン((CH3)2N2H2)、もしくは窒素プラズマのうちの少なくとも一つを含むことでき、又は窒素プラズマは水素を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、第二の気相反応物質は、炭化水素置換ヒドラジン前駆体を含み得る。堆積サイクルの第二の段階(「置換ヒドラジン段階」)では、基材を、炭化水素置換ヒドラジン前駆体を含む第二の気相反応物質と接触させる。本開示のいくつかの実施形態では、方法は、少なくとも4個の炭素原子を有するアルキル基を含むように置換ヒドラジンを選択することを更に含むことができ、ここで、「アルキル基」は、長さが少なくとも4個の炭素原子の飽和又は不飽和炭化水素鎖を指し、例えば、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル及びオクチル、並びにそれらの異性体、例えば、それらのn-、iso-、sec-及びtert-異性体など、であるが、これらに限定されない。アルキル基は、直鎖又は分枝鎖であってもよく、アルキル基のすべての構造異性体形態を包含してもよい。いくつかの実施形態では、アルキル鎖は置換されていてもよい。本開示のいくつかの実施形態では、アルキルヒドラジンは、窒素に結合した少なくとも一つの水素を含み得る。本開示のいくつかの実施形態では、アルキルヒドラジンは、窒素に結合した少なくとも二つの水素を含み得る。本開示のいくつかの実施形態では、アルキルヒドラジンは、窒素に結合した少なくとも一つの水素、及び窒素に結合した少なくとも一つのアルキル鎖を含み得る。本開示のいくつかの実施形態では、第二の反応物質は、アルキルヒドラジンを含んでもよく、更に一つ又は複数のtert-ブチルヒドラジン(C4H9N2H3)、ジメチルヒドラジン、又はジエチルヒドラジンを含み得る。本開示のいくつかの実施形態では、置換ヒドラジンは、窒素に結合した少なくとも一つの炭化水素基を有する。本開示のいくつかの実施形態では、置換ヒドラジンは、窒素に結合した少なくとも二つの炭化水素基を有する。本開示のいくつかの実施形態では、置換ヒドラジンは、窒素に結合した少なくとも三つの炭化水素基を有する。本開示のいくつかの実施形態では、置換ヒドラジンは、窒素に結合した少なくとも一つのC1-C3炭化水素基を有する。本開示のいくつかの実施形態では、置換ヒドラジンは、窒素に結合した少なくとも一つのC4-C10炭化水素基を有する。本開示のいくつかの実施形態では、置換ヒドラジンは、窒素に結合した直鎖、分枝鎖、又は環状若しくは芳香族炭化水素基を有する。本開示のいくつかの実施形態では、置換ヒドラジンは、窒素に結合した置換炭化水素基を含む。
【0055】
本開示のいくつかの実施形態では、置換ヒドラジンは、以下の式IIを有する:
RIRII-N-NRIIIRIV (II)
式中、RIは、炭化水素基、例えば、直鎖、分枝鎖、環状、芳香族又は置換炭化水素基など、から選択されることができ、RII、RIII、RIV基のそれぞれは、水素基又は炭化水素基、例えば、直鎖、分枝鎖、環状、芳香族又は置換炭化水素基など、であるように独立して選択されることができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、式(II)のRI、RII、RIII、RIVの各々は、直鎖、分枝鎖、環状、芳香族又は置換炭化水素基のようなC1-C10炭化水素、C1-C3炭化水素、C4-C10炭化水素、又は水素とすることができる。いくつかの実施形態では、RI、RII、RIII、RIV基の少なくとも一つは、フェニル基のような芳香族基を含む。いくつかの実施形態では、RI、RII、RIII、RIV基の少なくとも一つは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、tert-ブチル基又はフェニル基を含む。いくつかの実施形態では、各々のRI、RII、RIII、RIV基の少なくとも二つは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、tert-ブチル基又はフェニル基を含むように、独立して選択することができる。いくつかの実施形態では、RII、RIII及びRIV基は水素である。いくつかの実施形態では、RII、RIII及びRIV基の少なくとも二つ一つは水素である。いくつかの実施形態では、RII、RIII及びRIV基の少なくとも一つは水素である。いくつかの実施形態では、RII、RIII及びRIV基の全ては水素である。
【0057】
本開示の実施形態では、第二の気相反応物質は、シリコン前駆体を含み、シリコン前駆体は、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、トリシラン(Si3H8)、テトラシラン(Si4H10)、イソペンタシラン(Si5H12)、又はネオペンタシラン(Si5H12)のうちの少なくとも一つを含み得る。本開示の実施形態では、第二の気相反応物質は、シリコン前駆体を含み、シリコン前駆体は、C1-C4アルキルシランを含み得る。本開示の実施形態では、第二の気相反応物質は、シリコン前駆体を含み、シリコン前駆体は、シラン族からの前駆体を含み得る。
【0058】
本開示の実施形態では、第二の気相反応物質は、ホウ素前駆体を含み、ホウ素前駆体は、ボラン(BH3)、ジボラン(B2H6)又はデカボラン(B10H14)などのその他のボランのうちの少なくとも一つを含み得る。
【0059】
本開示の実施形態では、第二の気相反応物質は、水素前駆体を含み、水素前駆体は、H2、H原子、H-イオン、H-プラズマ、又はH-ラジカルのうちの少なくとも一つを含み得る。
【0060】
本開示のいくつかの実施形態では、第二の気相反応物質は、リン前駆体、硫黄前駆体、又はセレン化物前駆体を含む。いくつかの実施形態では、硫黄前駆体は、水素及び硫黄を含む。いくつかの実施形態では、硫黄前駆体はアルキル硫黄化合物である。いくつかの実施形態では、第二の反応物質は、一つ又は複数の硫黄元素、H2S、(CH3)2S、(NH4)2S、((CH3)2SO)、及びH2S2を含む。いくつかの実施形態では、セレン前駆体はアルキルセレン化合物である。いくつかの実施形態では、第二の反応物質は、元素セレン、H2Se、(CH3)2Se、及びH2Se2のうちの一つ又は複数を含む。いくつかの実施形態では、セレン前駆体は、水素及びセレンを含む。いくつかの実施形態では、第二の反応物質は、Te、Sb、Se、例えば、(Me3Si)2Te、(Me3Si)2Se、又は(Me3Si)3Sbなどのアルキルシリル化合物を含んでもよい。いくつかの実施形態では、リン前駆体はアルキルリン化合物である。いくつかの実施形態では、第二の反応物質は、元素リン、PH3、又はメチルホスフィンなどのアルキルホスフィンのうちの一つ又は複数を含む。いくつかの実施形態では、リン前駆体は、水素及びリンを含む。
【0061】
本開示の実施形態では、第二の気相反応物質は、還元剤などの有機前駆体を含み、例えば、アルコール、アルデヒド又はカルボン酸、又は他の有機化合物、例えば、金属又は半金属を有しないが、-OH基を含む有機化合物を利用してもよい。アルコールは、第一級アルコール、第二級アルコール、第三級アルコール、ポリヒドロキシアルコール、環状アルコール、芳香族アルコール、及びアルコールの他の誘導体とすることができる。
【0062】
第一級アルコールは、別の炭素原子に結合される炭素原子に取り付けられる-OH基を有し、特に一般式(III)による第一級アルコールである。
R1-OH (III)
式中、R1は、直鎖又は分岐鎖C1-C20アルキル、又はメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルなどのアルケニル基である。第一級アルコールの例には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2-メチルプロパノール及び2-メチルブタノールが含まれる。
【0063】
第二級アルコールは、二つの他の炭素原子に結合される炭素原子に取り付けられる-OH基を有する。特に、第二級アルコールは以下の一般式(IV)を有する。
【0064】
【0065】
式中、各R1は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルなどの直鎖又は分岐鎖C1-C20アルキル及びアルケニル基の群から独立して選択される。第二級アルコールの例には、2-プロパノール及び2-ブタノールが含まれる。
【0066】
第三級アルコールは、三つの他の炭素原子に結合される炭素原子に取り付けられる-OH基を有する。特に、第三級アルコールは以下の一般式(V)を有する。
【0067】
【0068】
式中、各R1は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルなどの直鎖又は分岐鎖C1-C20アルキル及びアルケニル基の群から独立して選択される。第三級アルコールの一例はtert-ブタノールである。
【0069】
ジオール及びトリオールなどのポリヒドロキシアルコールは、上述の通り、第一級、第二級及び/又は第三級アルコール基を有する。ポリヒドロキシアルコールの例は、エチレングリコール及びグリセロールである。
【0070】
環状アルコールは、5~6個の炭素原子など、1~10個の環の一部である少なくとも一つの炭素原子に取り付けられる-OH基を有する。
【0071】
芳香族アルコールは、側鎖のベンゼン環又は炭素原子のいずれかに取り付けられた少なくとも一つの-OH基を有する。
【0072】
有機前駆体は、一般式(VI)を有する化合物、一般式(VII)を有するアルカンジアール化合物、ハロゲン化アルデヒド及びアルデヒドの他の誘導体からなる群から選択される、少なくとも一つのアルデヒド基(-CHO)を含んでもよい。
【0073】
従って、一実施形態では、有機前駆体は一般式(VI)を有するアルデヒドである。
R3-CHO (VI)
式中、R3は、水素及びメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルなどの直鎖又は分岐鎖C1-C20アルキル及びアルケニル基からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R3は、メチル又はエチルからなる群から選択される。例示的な化合物は、限定されないが、式(VI)によると、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、及びブチルアルデヒドである。
【0074】
別の実施形態では、有機前駆体は一般式(VII)を有するアルデヒドである。
OHC-R4-CHO (VII)
式中、R4は直鎖又は分岐鎖C1-C20飽和又は不飽和炭化水素である。別の方法として、アルデヒド基は相互に直接結合されてもよい(R4はnullである)。
【0075】
少なくとも一つの-COOH基を含有する有機前駆体は、一般式(VIII)の化合物、ポリカルボン酸、ハロゲン化カルボン酸及びカルボン酸の他の誘導体からなる群から選択されうる。
【0076】
従って、一実施形態では、有機前駆体は一般式(VIII)を有するカルボン酸である。
R5-COOH (VIII)
式中、R5は、水素又はメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシル、例えば、メチル又はエチルなどの直鎖もしくは分岐鎖C1-C20アルキル又はアルケニル基である。いくつかの実施形態では、R5は、直鎖又は分岐鎖C1-C3アルキル又はアルケニル基である。式(VII)による化合物の例は、ギ酸、プロパン酸及び酢酸であり、いくつかの実施形態ではギ酸(HCOOH)である。
【0077】
本開示のいくつかの実施形態では、基材を第二の気相反応物質に曝露すること、すなわち接触させることは、第二の気相反応物質を基材上で0.1秒~2.0秒、又は約0.01秒~約10秒、又は約20秒未満、約10秒未満、又は約5秒未満の時間、パルスすることを含む。基材上で第二の気相反応物質をパルスする間、第二の気相反応物質の流量は、50sccm未満、又は25sccm未満、又は15sccm未満、又は更には10sccm未満であり得る。
【0078】
例えば、パージガスのパルス注入及び/又は排気系により生成された真空により、基材の表面から過剰な第二の気相反応物質及び反応副生成物がある場合には、それらを除去してもよい。パージガスは、これらに限定されないが、アルゴン(Ar)、窒素(N2)、ヘリウム(He)などの任意の不活性ガスであることが好ましく、又は場合によっては、水素(H2)を使用することもできる。一つの段階は、パージ(すなわち、パージガスパルス)または他の反応物質除去ステップが介在する場合、一般に別の段階の直後に続くと考えられる。
【0079】
基材を第一の気相反応物質(すなわち、金属ハロゲン化物化合物)及び第二の気相反応物質(例えば、酸素前駆体)と交互に接触させる堆積サイクルは、所望の厚さの遷移金属含有膜が堆積されるまで一回又は複数回繰り返されてもよい。当然のことながら、本開示のいくつかの実施形態では、基材を第一の気相反応物質及び第二の気相反応物質と接触させる順序は、基材を最初に第二の気相反応物質と接触させるのに続いて、第一の気相反応物質と接触させる順序であってもよい。更に、いくつかの実施形態では、周期的堆積プロセスは、基材を第二の気相反応物質と一回又は複数回接触させる前に、基材を第一の気相反応物質と一回又は複数回接触させることを含むことができ、あるいは同様に、基材を第一の気相反応物質と一回又は複数回接触させる前に、基材を第二の気相反応物質と一回又は複数回接触させることを含むことができる。
【0080】
更に、本開示のいくつかの実施形態は、プラズマ反応物質を含まなくてもよく、例えば第一及び第二の気相反応物質はイオン化された反応種を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、第一及び第二の気相反応物質は、イオン化反応種、励起種及びラジカル種を実質的に含まない。例えば、第一の気相反応物質及び第二の気相反応物質の両方は、下地の基材のイオン化損傷及びそれにより生成される関連する欠陥を防止するために、プラズマ反応物質を含まないことができる。非プラズマ反応物質の使用は、高エネルギーのプラズマ種がデバイスの性能特性を損傷及び/又は劣化させる可能性があるので、下層の基材が、壊れやすい製造、又は少なくとも部分的に製造された半導体デバイス構造を含む場合に、特に有用でありうる。
【0081】
本開示のいくつかの実施形態では、本開示の例示的な周期的堆積方法は、還元剤を含む第三の気相反応物質と基材を接触させることを含む、追加的なプロセス工程を含み得る。いくつかの実施形態では、還元剤は、水素(H2)、水素(H2)プラズマ、アンモニア(NH3)、アンモニア(NH3)プラズマ、ヒドラジン(N2H4)、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、トリシラン(Si3H8)、ゲルマン(GeH4)、ジゲルマン(Ge2H6)、ボラン(BH3)、ジボラン(B2H6)、第三級ブチルヒドラジン(C4H12N2、セレン前駆体、ホウ素前駆体、亜リン酸前駆体、硫黄前駆体、有機前駆体(例えば、アルコ-ル、アルデヒド、又はカルボン酸類)又は水素前駆体のうちの少なくとも一つを含んでもよい。本開示のいくつかの実施形態では、本開示の例示的な周期的堆積方法は、還元剤である第二の気相反応物質と基材を接触させることを含み得る(任意の追加的な前駆体/反応物質の接触工程なしで)。
【0082】
還元剤を含む第三の気相反応物質は、反応チャンバーに導入され、例示的な周期的堆積方法のいくつかのプロセス段階で基材に接触してもよい。本開示のいくつかの実施形態では、還元剤は反応チャンバー内に導入され、第一の気相反応物質とは別個に、及び第二の気相反応物質とは別個に、基材と接触させることができる。例えば、基材を第一の気相反応物質と接触させる前に、基材を第一の気相反応物質と接触させた後かつ基材を第二の気相反応物質と接触させる前に、及び/又は基材を第二の気相反応物質と接触させた後に、還元剤を反応チャンバーに導入し、基材と接触させてもよい。本開示のいくつかの実施形態では、還元剤は反応チャンバー内に導入され、第一の気相反応物質と同時に、及/又は第二の気相反応物質と同時に、基材と接触させることができる。例えば、還元剤及び第一の気相反応物質は、反応チャンバー内に同時に流れ込み、同時に基材に接触することができ、及び/又は還元剤及び第二の気相反応物質は、反応チャンバー内に同時に流れ込み、同時に基材に接触することができる。
【0083】
本開示のいくつかの実施形態では、第一の気相反応物質は、遷移金属ハロゲン化物化合物を含んでもよく、第二の気相反応物質は、酸素前駆体を含んでもよい。このような実施形態では、周期的堆積プロセスは、基材上に遷移金属酸化物を堆積し得る。非限定的な例として、第一の気相の反応物質は、CoCl2(TMEDA)を含んでもよく、第二の気相反応物質は、水(H2O)を含んでもよく、基材上に堆積した膜は、酸化コバルトを含んでもよい。いくつかの実施形態では、遷移金属酸化物は、遷移金属酸化物を還元剤に曝すことによって更に処理されてもよい。いくつかの実施形態では、遷移金属酸化物は、フォーミングガス(H2+N2)、アンモニア(NH3)、ヒドラジン(N2H4)、水素分子(H2)、水素原子(H)、水素プラズマ、水素ラジカル、水素励起種、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、ボラン、又はアミンを含む、少なくとも一つの還元剤に曝されてもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、遷移金属酸化物を還元剤に曝すことで、遷移金属酸化物を元素遷移金属に還元することができる。非限定的な例として、本開示の周期的堆積プロセスを利用して、酸化コバルト膜を50ナノメ-トルの厚さに堆積させ、酸化コバルト膜を1000ミリバールの圧力及び約250℃の温度で10%のフォーミングガスに曝し、酸化コバルト膜を元素コバルトに還元することができる。本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属酸化物は、500ナノメ-トル未満、又は100ナノメ-トル未満、又は50ナノメ-トル未満、又は25ナノメ-トル未満、又は20ナノメートル未満、又は10ナノメートル未満、又は更には5ナノメ-トル未満の厚さを有し得る。いくつかの実施形態では、遷移金属酸化物は、5時間未満、又は1時間未満、又は30分未満、又は15分未満、又は10分未満、又は5分未満、又は更には1分未満、還元剤に曝されてもよい。いくつかの実施形態では、遷移金属酸化物は、500℃未満、又は400℃未満、又は300℃未満、又は250℃未満、又は200℃未満、又は更には150℃未満の基材温度で、還元剤に曝されてもよい。いくつかの実施形態では、遷移金属酸化物は、減圧雰囲気中で還元剤に曝されてもよく、圧力は、約0.001ミリバール~約10バール、又は約1ミリバール~約1000ミリバールであってもよい。
【0085】
遷移金属ハロゲン化物化合物を含む第一の気相反応物質及び遷移金属含有膜を堆積するための第二の気相反応物質を利用する、本明細書に記載される周期的堆積プロセスは、加熱された基材を用いてALD又はCVD堆積システムで実施され得る。例えば、いくつかの実施形態では、方法は、基材を約80℃~約150℃の温度に加熱すること、又は更に基材を約80℃~約120℃の温度に加熱することを含み得る。もちろん、任意の所定の周期的堆積プロセス、例えばALD反応等の適切な温度ウィンドウは、表面終端及び含まれる反応物質種に依存するであろう。ここで、温度は、使用される前駆体に応じて変化し、一般に約700℃以下である。いくつかの実施形態では、蒸着プロセスの場合、堆積温度は一般に約100℃以上であり、いくつかの実施形態では、堆積温度は約100℃~約300℃であり、いくつかの実施形態では、堆積温度は約120℃~約200℃である。いくつかの実施形態では、堆積温度は約500℃未満、又は約400℃より低く、又は約350℃より低く、又は約300℃より低い。場合によっては、堆積温度は約300℃より低く、約200℃より低く、又は約100℃より低くてもよい。場合によっては、堆積温度は、約20℃を超え、約50℃を超え、及び約75℃を超えてもよい。本開示のいくつかの実施形態では、堆積温度は、すなわち堆積中の基材の温度は約275℃である。
【0086】
いくつかの実施形態では、遷移金属含有膜の成長速度は、約0.005Å/サイクル~約5Å/サイクル、約0.01Å/サイクル~約2.0Å/サイクルである。いくつかの実施形態では、遷移金属含有膜の成長速度は、約0.05Å/サイクルより大きい、約0.1Å/サイクルより大きい、約0.15Å/サイクルより大きい、約0.20Å/サイクルより大きい、約0.25Å/サイクルより大きい、又は約0.3Å/サイクルより大きい。いくつかの実施形態では、遷移金属含有膜の成長速度は、約2.0Å/サイクル未満、約1.0Å/サイクル未満、約0.75Å/サイクル未満、約0.5Å/サイクル未満、又は0.2Å/サイクル未満である。本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属含有膜の成長速度は約0.4Å/サイクルであり得る。
【0087】
本開示の実施形態は、
図1の例示的な周期的堆積方法100により詳細に例示されることができる周期的堆積を含むことができる。方法100は、少なくとも一つの基材を反応チャンバー内に供給すること、及び基材を堆積温度に加熱することを含む、プロセスブロック110によって開始することができる。例えば、基材は、一つ又は複数の部分的に製造された半導体デバイス構造を含んでもよく、反応チャンバーは、原子層堆積反応チャンバーを備えてもよく、基材は約275℃未満の堆積温度に加熱されてもよい。加えて、反応チャンバー内の圧力を制御して、反応チャンバー内の雰囲気を減少させることができる。例えば、周期的堆積プロセスの間の反応チャンバー内の圧力は、1000ミリバール未満、又は100ミリバール未満、又は10ミリバール未満、又は5ミリバール未満、又は更に、一部の場合、1ミリバール未満であってもよい。
【0088】
方法100は、基材を遷移金属ハロゲン化物化合物に接触させることを含む、プロセスブロック120を継続してもよく、例えば、基材を遷移金属ハロゲン化物化合物に、約1秒の間、接触させてもよい。本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属化合物は、約0.01秒~約60秒の間、約0.05秒~約10秒の間、又は約0.1秒~約5秒の間、基材に接触することができる。更に、基材上に遷移金属前駆体をパルス注入する間、遷移金属前駆体の流量は、2000sccm未満、又は1000sccm未満、又は500sccm未満、又は200sccm未満、又は更に100sccm未満であることができる。
【0089】
基材を遷移金属ハロゲン化物化合物と接触させると、過剰な金属前駆体及びあらゆる反応副生成物は、パージ/排気プロセスによって反応チャンバーから除去されることができる。
【0090】
方法100は、例えば、酸素前駆体、窒素前駆体、ケイ素前駆体、リン前駆体、セレン前駆体、ホウ素前駆体、又は還元剤など、第二の気相反応物質と基材を接触させることを含む、プロセスブロック130を続けることができる。第二の気相反応物質、例えば、水は、基材におよそ4秒間接触してもよい。本開示のいくつかの実施形態では、第二の気相反応物質は、約0.01秒~約60秒の間、又は約0.05秒~約10秒の間、又は約0.1秒~約5.0秒の間、基材に接触することができる。更に、基材上で第二の気相反応物質をパルスする間、第二の気相反応物質の流量は、2000sccm未満、又は1000sccm未満、又は500sccm未満、又は200sccm未満、又は更には100sccm未満であり得る。
【0091】
基材を第二の気相反応物質前駆体と接触させると、過剰な第二の気相反応物質及び任意の反応副生成物は、パージ/排気プロセスによって反応チャンバーから除去されることができる。
【0092】
基材が遷移金属ハロゲン化物化合物(プロセスブロック120)と交互にかつ連続的に接触し、第二の気相反応物質(プロセスブロック130)と接触する、例示的な周期的堆積方法100は、一つの堆積サイクルを構成してもよい。本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属含有膜を堆積させる方法は、堆積サイクルを一回又は複数回繰り返すことを含むことができる。例えば、方法100は、周期的堆積方法100がプロセスブロック150を介して継続又は終了するかどうかを判断する決定ゲート140を継続してもよい。決定ゲート140は、堆積した遷移金属含有膜の厚さに基づいて決定され、例えば、遷移金属含有膜の厚さが所望のデバイス構造に対して不十分である場合、方法100はプロセスブロック120に戻り、基材を遷移金属ハロゲン化物化合物と接触させ、そして基材を第二の気相反応物質と接触させるプロセスを一回又は複数回繰り返してもよい。遷移金属含有膜が所望の厚さに堆積すると、方法はプロセスブロック150を介して終了し、遷移金属含有膜及び下層の半導体構造は、追加のプロセスを施して、一つ又は複数のデバイス構造を形成することができる。
【0093】
本明細書に記載のいくつかの実施形態に従って堆積させた遷移金属を含む膜又は層は、連続性薄膜であってもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいくつかの実施形態に従って堆積させた遷移金属を含む薄膜は、約100ナノメ-トル未満、又は約60ナノメ-トル未満、又は約50ナノメ-トル未満、又は約40ナノメ-トル未満、又は約30ナノメ-トル未満、又は約25ナノメ-トル未満、又は約20ナノメ-トル未満、又は約15ナノメ-トル未満、又は約10ナノメ-トル未満、又は約5ナノメ-トル未満、又は更に薄い厚さで連続的であってもよい。本明細書で言及される連続性は、物理的連続性又は電気的連続性であることができる。いくつかの実施形態では、膜が物理的に連続し得る厚さは、膜が電気的に連続する厚さと同じでなくてもよく、膜が電気的に連続し得る厚さは、膜が物理的に連続している厚さと同じでなくてもよい。
【0094】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいくつかの実施形態に従って堆積させた遷移金属含有膜は、約20ナノメートル~約100ナノメートルの厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいくつかの実施形態に従って堆積させた遷移金属含有膜は、約20ナノメートル~約60ナノメートルの厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいくつかの実施形態に従って堆積させた遷移金属含有膜は、約20ナノメートルを超える、又は約30ナノメートルを超える、又は約40ナノメートルを超える、又は約50ナノメートルを超える、又は約60ナノメートルを超える、又は約100ナノメートルを超える、又は約250ナノメートルを超える、又は約500ナノメートルを超える、又は更に大きい厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいくつかの実施形態に従って堆積させた遷移金属含有膜は、約50ナノメートル未満、約30ナノメートル未満、約20ナノメートル未満、約15ナノメートル未満、約10ナノメートル未満、約5ナノメートル未満、約3ナノメートル未満、約2ナノメートル未満、又は約1ナノメートル未満の厚さを有することができる。
【0095】
本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属含有膜は、例えば高いアスペクト比特徴を含む非平面の基材などの三次元構造上に堆積し得る。いくつかの実施形態では、遷移金属含有膜のステップカバレージは、アスペクト比(高さ/幅)が約2より大きい、約5より大きい、約10より大きい、約25より大きい、約50より大きい、又は更に約100より大きい構造において、約50%以上、又は約80%以上、又は約90%以上、又は約95%以上、又は約98%以上、又は約99%以上、もしくはそれより大きくてもよい。
【0096】
本開示のいくつかの実施形態では、本開示の実施形態に従って堆積させた遷移金属含有膜は、約50原子%未満の酸素、約25原子パーセント未満の酸素、約10原子%未満の酸素、約5原子%未満の酸素、約2原子%未満の酸素、又は更に約1原子%未満の酸素を含み得る。別の実施形態では、遷移金属含有膜は、約5原子%未満の水素、又は約2原子%未満の水素、又は約1原子%未満の水素、又は更に約0.5原子%未満の水素を含むことができる。更に別の実施形態では、遷移金属含有膜は、約5原子%未満の炭素、又は約2原子%未満の炭素、又は約1原子%未満の炭素、又は更に約0.5原子%未満の炭素を含むことができる。更に別の実施形態では、遷移金属含有膜は、約5原子%未満のハロゲン化物種、又は約2原子%未満のハロゲン化物種、又は約1原子%未満のハロゲン化物種、又は更に約0.5原子%未満のハロゲン化物種を含むことができる。いくつかの実施形態では、遷移金属含有材料の原子%は、飛行時間測定弾性反跳粒子検出法(ToF-ERDA)を利用して決定され得る。
【0097】
本開示のいくつかの実施形態では、本開示の周期的堆積プロセスを利用して、例えば、酸化コバルトなどの遷移金属酸化物を堆積することができる。原子層堆積などの周期的堆積プロセスに利用される前のコバルト前駆体は、水(H2O)に対して非反応性であることが証明されているため、オゾン(O3)が酸素前駆体として、一般的に利用されてきた。しかしながら、酸化コバルトの周期的堆積のためのオゾンの使用は、典型的には、酸化コバルト(II)(CoO)ではなく、酸化コバルト(II、III)(Co3O4)の形成をもたらす。いくつかの実施形態では、Co3O4ではなく、CoOを堆積させることが有益であり得、例えば、CoO形態のより低い酸化状態のコバルトは、より容易にコバルト金属に還元され得る。従って、本開示のいくつかの実施形態では、本開示の周期的堆積プロセスを利用して、実質的に酸化コバルト(II)(CoO)膜を堆積させることができ、すなわち、コバルト対酸素の比が1:1と実質的に等しい。本開示のいくつかの実施形態では、周期的堆積プロセスの間の堆積温度は、堆積された膜の化学量論に影響を与える可能性があ。例えば、本明細書に開示される周期的堆積プロセスを利用して酸化コバルト膜を堆積させる場合、基材温度は、堆積された膜内のコバルト対酸素(Co:O)の比に影響を与え得る。従って、本開示の非限定的な例示的実施形態として、酸化コバルト膜は、CoCl2(TMEDA)をコバルト前駆体として利用し、水(H2O)を酸素前駆体として利用して堆積され得る。このような周期的堆積プロセスの間、基材温度は約275℃に制御され得、コバルト対酸素の比(Co:O)が約1:1の酸化コバルト(II)(CoO)の堆積を生じ得る。
【0098】
本明細書に開示される周期的堆積プロセスによって堆積された遷移金属含有膜は、例えば、ライナー層、キャッピング層、ギャップ充填層、トレンチ充填層、シード層、コンタクト層/コンタクト充填層、電気移動改善層、バックエンド(BEOL)用途での導電性相互接続、及び半導体デバイス接点のシリサイド形態などの様々な状況で利用されてもよい。いくつかの実施形態では、本開示の遷移金属含有膜は、一つ又は複数のデバイス構造に電流を供給するように構成された電極、又は電極の少なくとも一部として利用されてもよい。本開示のいくつかの実施形態では、本開示の遷移金属含有膜は、一つ又は複数のCMOSデバイスへの電極の少なくとも一部として、CMOSデバイス用途で利用され得る。
【0099】
非限定的な例示的実施形態として、
図2に示すように、例えば、コバルトなどの遷移金属含有膜は、バックエンド(BEOL)メタライゼーション用途でのバリア材料及び/又はキャッピング層として利用されてもよい。より詳細には、
図2は、トランジスタ及びメモリ素子(図示せず)などの部分的に製作及び/又は製作された半導体デバイス構造を備え得る、基材202を備える、部分的に製作された半導体デバイス構造200を示す。部分的に製作された半導体デバイス構造200は、低誘電率材料、すなわちシリコン含有誘電体又は金属酸化物などの低k誘電体を含み得る、基材202上に形成された誘電材料204を含み得る。トレンチは、誘電材料204内に形成されてもよく、バリア材料206は、金属相互接続材料208が周囲の誘電材料204の中へと拡散するのを防止又は実質的に防止するトレンチの表面上に配置されてもよい。本開示のいくつかの実施形態では、バリア材料206は、本明細書に記載の周期的堆積プロセスによって堆積されたコバルトを含み得る。本開示のいくつかの実施形態では、コバルト膜は、35オングストローム未満、又は25オングストローム未満、又は更に15オングストローム未満の厚さを有してもよい。部分的に製作された半導体構造200はまた、基材202内に配置された複数のデバイス構造を電気的に相互接続するための金属相互接続材料208を備えてもよい。いくつかの実施形態では、金属相互接続材料208は、銅、又はコバルトのうちの一つ又は複数を含んでもよい。バリア材料としてコバルトの使用に加えて、コバルトはキャッピング層としても利用されてもよい。従って、
図2を参照すると、部分的に製作された半導体デバイス構造200は、金属相互接続材料208の上面上に直接配置されるキャッピング層210も含みうる。キャッピング層210は、金属相互接続材料208の酸化を防止し、重要なことには、後続の製造プロセスで、すなわち、複数レベルの相互接続構造のために、部分的に製作された半導体構造200の上に形成される追加的誘電材料への金属相互接続材料208の拡散を防止するために利用され得る。本開示のいくつかの実施形態では、キャッピング層210はまた、20オングストローム未満、又は15オングストローム未満、又は更に10オングストローム未満の厚さを有するコバルトを含んでもよい。いくつかの実施形態では、金属相互接続材料208、バリア材料206、及びキャッピング層210は、基材202内に配置された複数の半導体デバイスの電気相互接続のための電極を集合的に形成してもよい。
【0100】
本開示の実施形態は、例えば、原子層堆積、化学蒸着、及び周期化学気相堆積などの蒸着プロセスに有用な化学前駆体の合成にも利用され得る。従って、本開示の実施形態は、例えば、二座窒素含有付加配位子を含む、遷移金属ハロゲン化物など、本明細書において前述した通り、付加体形成配位子を含む遷移金属ハロゲン化物化合物を合成する方法を含み得る。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、塩化コバルト(II)(TMEDA)、塩化ニッケル(II)(TMEDA)、又は塩化銅(II)(TMEDA)のうちの一つ又は複数を合成するために利用され得る。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、ヨウ化コバルト(II)(TMEDA)、ヨウ化ニッケル(II)(TMEDA)、又はヨウ化銅(II)(TMEDA)のうちの一つ又は複数を合成するために利用され得る。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、臭化コバルト(II)(TMEDA)、臭化ニッケル(II)(TMEDA)、又は臭化銅(II)(TMEDA)のうちの一つ又は複数を合成するために利用され得る。更に、いくつかの実施形態では、本開示の方法は、塩化コバルト(II)(TMPDA)、塩化ニッケル(II)(TMPDA)、及び塩化銅(II)(TMPDA)を合成するために利用され得る。
【0101】
以下の記載は、CoCl2(TMEDA)の合成方法を開示し、CoCl2(TMEDA)の合成のために開示された方法は、本明細書に開示される追加の遷移金属ハロゲン化物化合物の合成方法に等しく適用可能であり、限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0102】
薬剤前駆体合成方法は、標準シュレンクテクニック(Schlenk techniques)と不活性ガス(例えば、N2又はAr)グローブボックスを使用して、空気と水分を厳密に排除して行われるすべての取り扱いと操作で実行され得る。無水CoCl2(99%)及びN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)(99%)を反応物質として利用した。加えて、ジクロロメタン(CH2Cl2)は、適切な溶媒として利用され、このプロセスは4Å以上の分子ふるいで、CH2Cl2を脱酸素化及び乾燥させることを含む。
【0103】
本開示のいくつかの実施形態では、ある量のCoCl2を量り、シュレンク瓶と同じような適切な容器に加えることができる。ある量のCH2Cl2を、CoCl2に追加できる。その後、化学量論量のTMEDAを溶液に滴下してもよい。いくつかの実施形態では、付加体形成配位子、例えば、TMEDAは、例えば、ハロゲン化物化合物の量よりも、2倍、又は5倍、又は更に10倍多い量など、ハロゲン化物化合物を上回って添加され得る。得られた懸濁液は、室温で約1時間攪拌され得る。非限定的な例として、6.00g(46.211mmol)のCoCl2を計量し、100mlのCH2Cl2と共にシュレンク瓶に追加してもよい。5.37g(46.211mmol)のTMEDAを溶液に加え、室温で1時間攪拌してもよい。得られた青色溶液を蒸発乾燥させ、青色の生成物を生成することができる。得られた生成物は、昇華器に移動され、生成物は、約150~200℃の温度で昇華され、それによっててCoCl2(TMEDA)を生成することができる。本開示のいくつかの実施形態では、得られた揮発性遷移金属ハロゲン化物化合物、例えば、CoCl2(TMEDA)は、5at%未満、又は2at%未満、又は1at%未満、又は0.1at%未満、又は更に0.01at%未満の割合の不純物濃度を有することができる。本開示のいくつかの実施形態では、揮発性遷移金属ハロゲン化物化合物は、有機遷移金属前駆体と比較して、より高い分解温度を有することができる。例えば、本開示の遷移金属ハロゲン化物化合物は、150℃より大きい、又は200℃よりも更に高い分解温度を有し得る。
【0104】
従って、本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属含有膜の蒸着に利用され得る、遷移金属ハロゲン化物化合物が合成され得る。いくつかの実施形態では、付加体形成配位子を含む金属ハロゲン化物化合物は、遷移金属ハロゲン化物化合物及び付加体形成配位子を、約50℃未満、又は約30℃未満、又は更に約15℃未満の温度で組み合わせることを含む、ワンステップ合成プロセスを利用して合成することができ、合成プロセス全体は、5時間未満、又は2時間未満、又は1時間未満、又は更に30分未満の時間で完了することができる。
【0105】
本開示の実施形態はまた、遷移金属ハロゲン化物化合物を収容するように、及び遷移金属ハロゲン化物化合物を反応チャンバーに供給するように構成された一つ又は複数の前駆体供給源容器を含む蒸着装置も含み得る。従って、本開示のいくつかの実施形態では、反応性揮発性化学物質を利用する蒸着装置を提供する。装置は、反応チャンバー、反応チャンバー内に配置された基材、反応チャンバーと流体連通する前駆体供給源容器、及び前駆体供給源容器内に配置された二座窒素含有配位子を含む遷移金属ハロゲン化物化合物を含み得る。
【0106】
より詳細には、
図4は、反応チャンバー402を含む、蒸着装置400を概略的に示す。
図4は、蒸着装置400の簡略化された概略バージョンであり、本開示の蒸着装置400で利用され得るありとあらゆる要素、すなわち、これらに限定されないが、バルブ、電気接続、マスフローコントローラ、シール、及びガス導管などを含まないことに留意されたい。本開示のいくつかの実施形態では、反応チャンバー402は、反応チャンバー内の基材406を保持するように構成されたサセプタ404を含み得る。また、反応チャンバー内に配置されるのは、基材を様々なガスに選択的に曝すために利用されるシャワーヘッドガス分配器408である。
【0107】
本開示のいくつかの実施形態では、前駆体供給源容器410Aは、導管又は他の適切な手段412Aを介して反応チャンバー402に流体連通していてもよく、更に、マニホールド、バルブ制御システム、質量流量制御システム、又は機構に連結されて、前駆体供給源容器410Aに由来する気体前駆体を制御してもよい。前駆体供給源容器410Aは、二座窒素含有配位子を含む遷移金属ハロゲン化物化合物を貯蔵するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、前駆体供給源容器410Aは、前駆体供給源容器410A内に貯蔵される遷移金属ハロゲン化物化合物に対して実質的に化学的に不活性であり得る、石英材料を含んでもよい。本開示の代替実施形態では、前駆体供給源容器410Aは、例えば、ハステロイ、モネルまたはそれらの組み合わせなど、耐食性金属または金属合金より製作されてもよい。
【0108】
本開示のいくつかの実施形態では、前駆体供給源容器410Aは、前駆体供給源容器410Aに貯蔵された遷移金属ハロゲン化物化合物を加熱するように構成された、一つ又は複数の加熱部414を更に備えてもよい。いくつかの実施形態では、一つ又は複数の加熱部400は、約0℃を超える、又は約20℃を超える、又は約100℃を超える、又は約150℃を超える、又は約200℃を超える、又は約200℃を超える、又は約300℃を超える、又は更に約400℃を超える温度まで、遷移金属ハロゲン化物化合物を加熱するように利用されてもよい。いくつかの実施形態では、一つ又は複数の加熱部414は、前駆体供給源容器410Aに貯蔵された遷移金属ハロゲン化物化合物を、約170℃の温度まで加熱するように構成されてもよい。
【0109】
いくつかの実施形態では、前駆体供給源容器410Aと関連付けられる一つ又は複数の加熱部414は、遷移金属ハロゲン化物化合物を固体から液体又は気体のいずれかに変換するように構成される。いくつかの実施形態では、前駆体供給源容器410Aと関連付けられる一つ又は複数の加熱部414は、前駆体貯蔵容器410A内に貯蔵された遷移金属ハロゲン化物化合物の粘性を制御するために利用されてもよい。いくつかの実施形態では、前駆体供給源容器410Aと関連付けられる一つ又は複数の加熱部414は、前駆体供給源容器内に貯蔵された遷移金属ハロゲン化物化合物によって生成された蒸気圧を制御するように構成されてもよい。本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属ハロゲン化物化合物は、25℃よりも高い、又は50℃よりも高い、又は更に100℃よりも高い温度で、0.01ミリバールを超える蒸気圧を有してもよい。本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属ハロゲン化物化合物は、350℃未満、又は250℃未満、又は200℃未満、又は更に150℃未満の温度で、0.01ミリバールを超える蒸気圧を有してもよい。本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属ハロゲン化物化合物は、25℃よりも高い、又は更に100℃よりも高い温度で、0.1ミリバールを超える蒸気圧を有してもよい。本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属ハロゲン化物化合物は、400℃未満、又は200℃未満、又は更に100℃未満の温度で、0.1ミリバールを超える蒸気圧を有してもよい。本開示のいくつかの実施形態では、25℃より高い、又は更に100℃より高い温度で、1ミリバールを超える蒸気圧を有してもよい。例えば、遷移金属ハロゲン化物化合物を、150℃より高い温度まで加熱し、0.001ミリバールを超える蒸気圧を発生させることができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、前駆体供給源容器410A内に貯蔵された遷移金属ハロゲン化物416は、塩化コバルト(TMEDA)、又は塩化ニッケル(TMEDA)のうちの少なくとも一つを含み得る。いくつかの実施形態では、前駆体供給源容器410A内に貯蔵された遷移金属ハロゲン化物416は、ヨウ化コバルト(TMEDA)を含み得る。いくつかの実施形態では、前駆体供給源容器410A内に貯蔵された遷移金属ハロゲン化物416は、含み得る。更に、いくつかの実施形態では、前駆体供給源容器410A内に貯蔵された遷移金属ハロゲン化物416は、塩化コバルト(TMPDA)、及び塩化ニッケル(TMPDA)を含み得る。
【0111】
本開示のいくつかの実施形態では、蒸気通路418は、一つまたは複数のキャリアガスが、キャリアガス貯蔵容器(図示せず)から蒸気通路418を介して前駆体供給源容器の中へ移送されてもよいように、前駆体供給源容器410Aに接続されてもよい。いくつかの実施形態では、マスフローコントローラ(図示せず)を蒸気通路418上に配置し、前駆体供給源容器410Aに近接して配置してもよい。例えば、マスフローコントローラは、前駆体供給源容器410Aに入るキャリアガスの質量流束を制御するように較正されてもよく、それによって、前駆体供給源容器410Aから反応チャンバー402への遷移金属ハロゲン化物化合物蒸気のその後の流れに対するより大きな制御が可能になる。
【0112】
いくつかの実施形態では、キャリアガス(例えば、水素、窒素、ヘリウム、アルゴン、及びそれらの混合物)は、遷移金属ハロゲン化物化合物416の露出した表面上に流れることができ、それによって、蒸気の一部を遷移金属ハロゲン化物化合物416から拾い上げ、遷移金属ハロゲン化物化合物を、キャリアガスと共に、反応チャンバー402に移送する。本開示の代替的実施形態では、キャリアガスは、例えば、任意の蒸気通路418’によって、遷移金属ハロゲン化物化合物416を通して、「バブリング」されてもよく、それによって、遷移金属ハロゲン化物化合物416の一部を撹拌及び拾い上げ、遷移金属ハロゲン化物化合物を、ガス導管412Aを介して反応チャンバー402に移送する。
【0113】
本開示のいくつかの実施形態では、蒸着装置400は、追加の前駆体供給源容器及び不活性パージガス用の一つ又は複数の供給源容器を含み得る。例えば、前駆体供給源容器410Bは、例えば、酸素前駆体、窒素前駆体、硫黄前駆体、セレン前駆体、リン前駆体、ホウ素前駆体、ケイ素前駆体、又は還元剤のうちの一つ又は複数などの第二の気相反応物質を含むように構成されてもよい。前駆体供給源容器410Bに含まれる第二の気相反応物質は、ガス導管412Bを介して反応チャンバー402へ移送されてもよい。いくつかの実施形態では、前駆体供給源容器410Bは、更に、前駆体供給源容器410B内に貯蔵された前駆体の温度を制御するための関連付けられたヒーター414を有してもよい。更に、供給源容器410Cは、例えば、限定されないが、アルゴン(Ar)、窒素(N2)、又はヘリウム(He)などの不活性パージガスを含むように利用されてもよい。蒸着システム400は三つの供給源容器を含むが、追加的な化学前駆体を含む追加的な供給源容器は、反応チャンバー402で使用するように構成され得ることを理解されたい。
【0114】
本開示のいくつかの実施形態では、蒸着装置400は、バルブ、マニホールド、ポンプ、及び蒸着装置400と関連付けられたその他の機器を選択的に動作させるための電子回路及び機械的構成要素を提供する、システム動作及び制御機構420を更に備えてもよい。このような回路及び化合物は、それぞれの前駆体供給源容器410A、410B、及びパージガス容器410Cから、前駆体、パージガスを導入するように動作する。システム動作及び制御機構420はまた、ガスパルスシーケンスのタイミング、基材及び反応チャンバーの温度、反応チャンバーの圧力、並びに蒸着装置400に適切な動作を提供するのに必要な様々な他の動作を制御し得る。動作及び制御機構420は、反応チャンバー402内外への前駆体、反応物質、及びパージガスの流れを制御するための制御ソフトウェア及び電気的又は空気制御バルブを含むことができる。制御システムは、特定のタスクを実行するソフトウェア及び/又はハードウェアコンポーネント、例えばFPGA又はASIC等のモジュールを含むことができる。モジュールは、大胆には、制御システムのアドレス指定可能な記憶媒体上に存在するように構成され、一つ又は複数のプロセスを実行するように構成され得る。
【0115】
関連技術分野の当業者は、異なる数及び種類の前駆体反応物質源及びパージガス源を備える本蒸着装置の他の形態が可能であることを理解する。更に、このような当業者はまた、反応チャンバー402の中へ選択的にガスを供給するという目的を達成するために使用され得るバルブ、導管、前駆体原料、パージガス源の多くの配置があることを理解するであろう。更に、蒸着装置の略図として、説明を簡単にするために多くの構成要素を省略する。このような構成要素としては、例えば、様々なバルブ、マニホールド、浄化装置、ヒーター、容器、通気孔、及び/又はバイパス等を挙げることができる。
【0116】
図4の蒸着装置400は、蒸着ツールに二座窒素含有付加配位子を含む遷移金属ハロゲン化物化合物を供給するために利用され得る。方法は、遷移金属ハロゲン化物化合物を含むように構成された前駆体供給源容器を提供することと、前駆体供給源容器を反応チャンバーに流体接続することと、前駆体供給源容器内に含まれる遷移金属ハロゲン化物化合物を150℃を超える温度に加熱することと、少なくとも0.001ミリバールの遷移金属ハロゲン化物化合物の蒸気圧を生成することと、遷移金属ハロゲン化物化合物を反応チャンバーへ供給することと、を含み得る。本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属ハロゲン化物化合物は、25℃よりも高い、又は50℃よりも高い、又は更に100℃よりも高い温度で、0.01ミリバールを超える蒸気圧を有してもよい。本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属ハロゲン化物化合物は、350℃未満、又は250℃未満、又は200℃未満、又は更に150℃未満の温度で、0.01ミリバールを超える蒸気圧を有してもよい。本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属ハロゲン化物化合物は、25℃よりも高い、又は更に100℃よりも高い温度で、0.1ミリバールを超える蒸気圧を有してもよい。本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属ハロゲン化物化合物は、400℃未満、又は200℃未満、又は更に100℃未満の温度で、0.1ミリバールを超える蒸気圧を有してもよい。本開示のいくつかの実施形態では、25℃より高い、又は更に100℃より高い温度で、1ミリバールを超える蒸気圧を有してもよい。
【0117】
いくつかの実施形態では、遷移金属ハロゲン化物化合物は、塩化コバルト(TMEDA)又は塩化ニッケル(TMPDA)のうちの少なくとも一つを含むことができる。
【0118】
上に記載した本開示の例示的実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその法的等価物により定義される、本発明の実施形態の単なる例であるため、これらの実施形態によって本発明の範囲は限定されない。いかなる同等の実施形態も、本発明の範囲内にあることを意図している。実際に、記載した要素の代替の有用な組み合わせなど、本明細書に示し記載したものに加えて、本開示の様々な改変が、説明から当業者に明らかとなってもよい。このような改変及び実施形態もまた、添付の特許請求の範囲に入ると意図される。
【符号の説明】
【0119】
200 半導体デバイス構造
202 基材
204 誘電材料
206 バリア材料
208 金属相互接続材料
210 キャッピング層
400 蒸着装置
402 反応チャンバー
404 サセプタ
406 基材
408 シャワーヘッドガス分配器
410A、410B 前駆体供給源容器
410C パージガス容器
412A、412B 導管
414 加熱部
416 遷移金属ハロゲン化物
418 蒸気通路
420 システム動作及び制御機構
【手続補正書】
【提出日】2023-11-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的堆積プロセスにより基材上に遷移金属含有膜を形成する方法であって、
前記基材を、二座窒素含有付加配位子を含む遷移金属ハロゲン化物化合物を含む第一の気相反応物質と接触させることであって、前記二座窒素含有付加配位子が、前記遷移金属ハロゲン化物化合物の遷移金属原子と配位させ、ハロゲン原子が前記金属原子に結合される、前記基材を、第1の気相反応物質と接触させることと、
前記基材を第二の気相反応物質と接触させることとを含む、方法。
【請求項2】
前記付加配位子が二つの窒素原子を含み、各々の窒素原子が少なくとも一つの炭素原子に結合されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記遷移金属ハロゲン化物化合物が遷移金属塩化物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記遷移金属塩化物化合物が、塩化コバルト、塩化ニッケル、又は塩化銅のうちの少なくとも一つを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記遷移金属塩化物化合物が、塩化コバルト(TMEDA)、又は塩化ニッケル(TMPDA)のうちの少なくとも一つを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第二の気相反応物質が、オゾン(O3)、分子状酸素(O2)、酸素原子(O)、酸素プラズマ、酸素ラジカル、酸素励起種、水(H2O)、及び過酸化水素(H2O2)からなる群から選択される酸素前駆体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記遷移金属含有膜が、遷移金属酸化物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記遷移金属酸化物が、酸化コバルト(II)(CoO)を実質的に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記遷移金属酸化物を還元剤前駆体と接触させることを更に含み、それによって元素遷移金属を形成する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記還元剤前駆体が、フォーミングガス(H2+N2)、アンモニア(NH3)、ヒドラジン(N2H4)、水素分子(H2)、水素原子(H)、水素プラズマ、水素ラジカル、水素励起種、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、ボラン、又はアミンのうちの少なくとも一つを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第三級ブチルヒドラジン(C4H12N2)、水素(H2)、水素(H2)プラズマ、アンモニア(NH3)、アンモニア(NH3)プラズマ、ヒドラジン(N2H4)、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、トリシラン(Si3H8)、ゲルマン(GeH4)、ジゲルマン(Ge2H6)、ボラン(BH3)、及びジボラン(B2H6)からなる群から選択される還元剤前駆体を含む、第三の気相反応物質に前記基材を接触させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記遷移金属含有膜が、元素コバルト、元素ニッケル、又は元素銅のうちの少なくとも一つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記周期的堆積プロセスが、原子層堆積プロセスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記周期的堆積プロセスが周期的化学気相堆積プロセスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記遷移金属含有膜が、元素遷移金属、遷移金属窒化物、遷移金属ケイ化物、遷移金属硫化物、遷移金属セレン化物、遷移金属リン化物、又は遷移金属ホウ化物のうちの少なくとも一つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
周期的堆積プロセスにより基材上に遷移金属含有膜を形成する方法であって、
前記基材を、遷移金属化合物の遷移金属に配位させ、ハロゲン化物が前記遷移金属に結合された付加体形成配位子を含む遷移金属化合物を含む第一の気相反応物質と接触させることと、
前記基材を第二の気相反応物質と接触させることと、を含み、
前記遷移金属が、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、及びコバルト(Co)からなる群から選択される、周期的堆積プロセスにより基材上に遷移金属含有膜を形成する方法。
【請求項17】
前記付加体形成配位子が、窒素、リン、酸素、又は硫黄のうちの少なくとも一つを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
付加体形成配位子を含む前記遷移金属化合物が、遷移金属ハロゲン化物化合物及び付加体形成配位子を50℃未満の温度で組み合わせることを含む、ワンステップ合成プロセスを利用して合成される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記第二の気相反応物質が、酸素前駆体、窒素前駆体、シリコン前駆体、硫黄前駆体、セレン前駆体、リン前駆体、ホウ素前駆体、又は還元剤のうちの少なくとも一つを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
二座窒素含有付加配位子を含む遷移金属ハロゲン化物化合物を、反応チャンバーに供給するための方法であって、
前記遷移金属ハロゲン化物化合物を収容するように構成された前駆体供給源容器を提供することであって、前記遷移金属ハロゲン化物化合物が遷移金属原子に結合されたハロゲン化物原子を含む、提供することと、
前記反応チャンバーに前記前駆体供給源容器を流体連結させることと、
前記前駆体供給源容器内に含まれる前記遷移金属ハロゲン化物化合物を50℃より高い温度に加熱することと、
少なくとも0.001ミリバ-ルの前記遷移金属ハロゲン化物化合物の蒸気圧を生成することと、
前記遷移金属ハロゲン化物化合物を前記反応チャンバーに供給することと、を含む、二座窒素含有付加配位子を含む遷移金属ハロゲン化物化合物を、反応チャンバーに供給するための方法。
【外国語明細書】