(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092120
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】非晶性ポリエステル樹脂、水分散体、水分散体の製造方法、樹脂粒子、樹脂粒子の製造方法、トナー用樹脂粒子、トナー、トナーの製造方法、現像剤、トナー収容ユニット、及び、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
C08G 63/688 20060101AFI20240701BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20240701BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20240701BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20240701BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
C08G63/688
G03G9/087 331
G03G9/097 371
G03G9/08 381
C08L67/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207826
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 純一
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 彰法
(72)【発明者】
【氏名】行川 真広
(72)【発明者】
【氏名】武井 章生
(72)【発明者】
【氏名】溝口 由花
【テーマコード(参考)】
2H500
4J002
4J029
【Fターム(参考)】
2H500AA01
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4J029KE08
(57)【要約】
【課題】本発明は、環境対応性が高く、耐久性に優れ、かつ、水分散体としたときの水分散体の安定性に優れた非晶性ポリエステル樹脂を提供することを目的とする。
【解決手段】環境対応成分率が40質量%以上80質量%以下であり、且つ、スルホ基の含有量が2mol%以上10mol%以下である、ことを特徴とする非晶性ポリエステル樹脂。前記スルホ基を有する非晶性ポリエステル樹脂のSP値が11.5以上13.0以下であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境対応成分率が40質量%以上80質量%以下であり、且つ、スルホ基の含有量が2mol%以上10mol%以下である、ことを特徴とする非晶性ポリエステル樹脂。
【請求項2】
前記スルホ基を有する非晶性ポリエステル樹脂のSP値が11.5以上13.0以下である、請求項1に記載の非晶性ポリエステル樹脂。
【請求項3】
コア層とシェル層とからなるコアシェル構造を有する樹脂粒子におけるコア層の材料として使用される、請求項1又は2に記載の非晶性ポリエステル樹脂。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の非晶性ポリエステル樹脂を分散質とし、水を分散媒とする、非晶性ポリエステル樹脂の水分散体。
【請求項5】
以下の工程a及び工程bを有することを特徴とする請求項4に記載の非晶性ポリエステル樹脂の水分散体の製造方法。
工程a:環境対応成分率が40質量%以上80質量%以下であり、且つ、スルホ基の含有量が2mol%以上10mol%以下である非晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解乃至分散させた油相を作製する工程
工程b:前記油相に水を添加して、油中水型分散液から水中油型分散液に転相させる工程
【請求項6】
コア層とシェル層とからなるコアシェル構造を有する樹脂粒子であって、
前記シェル層は請求項1又は2に記載の非晶性ポリエステル樹脂を含むことを特徴とする樹脂粒子。
【請求項7】
以下の工程a、工程b、工程c、及び工程dを有することを特徴とする請求項6に記載の樹脂粒子の製造方法。
工程a:非晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解乃至分散させた油相を作製する工程
工程b:前記油相に水を添加して、油中水型分散液から水中油型分散液に転相させる工程
工程c:前記水中油型分散液の粒子を凝集させる工程
工程d:前記工程cの後、請求項4に記載の非晶性ポリエステル樹脂の水分散体を添加して、前記水分散体中の非晶性ポリエステル樹脂を凝集させてシェル層を形成する工程
【請求項8】
請求項6に記載の樹脂粒子を含有することを特徴とするトナー用樹脂粒子。
【請求項9】
請求項8に記載のトナー用樹脂粒子を含有することを特徴とするトナー。
【請求項10】
更に外添剤を含有する請求項9に記載のトナー。
【請求項11】
請求項8に記載のトナー用樹脂粒子に、外添剤を添加することを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項12】
請求項9に記載のトナーを含有することを特徴とする現像剤。
【請求項13】
請求項9に記載のトナーを収容したことを特徴とするトナー収容ユニット。
【請求項14】
静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体上に形成された前記静電潜像を現像して可視像を形成するトナーを備える現像手段と、
を有し、
前記トナーが、請求項9に記載のトナーであることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶性ポリエステル樹脂、水分散体、水分散体の製造方法、樹脂粒子、樹脂粒子の製造方法、トナー用樹脂粒子、トナー、トナーの製造方法、現像剤、トナー収容ユニット、及び、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トナーの結着樹脂などの樹脂材料は、ほぼ石油資源に依存しており、廃棄された際に生じる二酸化炭素は大気化され、地球温暖化などを招いているとされている。また、有限資源である石油由来樹脂から、環境対応樹脂であるバイオマス樹脂や再生樹脂への転換は、持続的に再生可能な環境対応材料への転換であるともいえ、要望されている技術である。
【0003】
そこで、トナーの結着樹脂としてポリ乳酸(PLA)やロジン化合物、再生ポリエチレンテレフタレート(PET)などの環境対応樹脂を用いることが検討されている。例えば、再生ポリエチレンテレフタレート(PET)を含有したトナー(特許文献1参照)が提案されている。
【0004】
また、シェル材としてスルホ基を含有した樹脂粒子を使用することにより安定性を向上させてシェル化性を向上させたトナー(特許文献2参照)が提案されている。シェル材の安定性が高くなると、シェル化性が改善するだけでなく、シェル材の長期保存性も改善するため、生産性を考える上でも重要な指標である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、環境対応性が高く、耐久性に優れ、かつ、水分散体としたときの水分散体の安定性に優れたポリエステル樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下に記載する通りの非晶性ポリエステル樹脂に係るものである。
環境対応成分率が40質量%以上80質量%以下であり、且つ、スルホ基の含有量が2mol%以上10mol%以下である、ことを特徴とする非晶性ポリエステル樹脂。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、環境対応性が高く、耐久性に優れ、かつ、水分散体としたときの水分散体の安定性に優れた非晶性ポリエステル樹脂を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
【
図3】
図3は、本発明の画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
【
図5】
図5は、本発明のトナー収容ユニットとしてのプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(非晶性ポリエステル樹脂)
本発明の非晶性ポリエステル樹脂は、環境対応成分率が40質量%以上80質量%以下であり、前記スルホ基の含有量が2mol%以上10mol%以下であることを特徴とする。
【0010】
本発明の非晶性ポリエステル樹脂を水に分散した水分散体は、安定性が高く、被膜を形成したときの耐久性に優れるものである。また、本発明の非晶性ポリエステル樹脂を水に分散した水分散体は、トナーのシェル材を形成するための原料としての使用に適している。
【0011】
本発明の非晶性ポリエステル樹脂の水分散体は、本発明の非晶性ポリエステル樹脂を分散質とし、水を分散媒とする。
本発明の非晶性ポリエステル樹脂の水分散体の製造方法は、以下の工程a及び工程bを有する。
工程a:環境対応成分率が40質量%以上80質量%以下であり、且つ、スルホ基の含有量が2mol%以上10mol%以下である非晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解乃至分散させた油相を作製する工程
工程b:前記油相に水を添加して、油中水型分散液から水中油型分散液に転相させる工程
【0012】
本発明の樹脂粒子は、コア層とシェル層とからなるコアシェル構造を有する。
本発明のトナー用樹脂粒子は、本発明の樹脂粒子を含有する。
本発明のトナーは本発明のトナー用樹脂粒子を含有する。
【0013】
前記樹脂粒子、前記トナー用樹脂粒子は、前記非晶性ポリエステル樹脂の他に、更に必要に応じて、結晶性樹脂、離型剤、着色剤等のその他の成分を含有していてもよい。
【0014】
以下、本発明に係る、非晶性ポリエステル樹脂、ポリエステル分散体、トナー用樹脂粒子、及び、トナーについて説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0015】
まず、環境対応樹脂である再生樹脂であるポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレート、及び、植物由来樹脂について説明する。
【0016】
<<ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレート由来成分>>
前記ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)由来成分としては、PET又はPBTに由来する成分であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記PETは、一般的にエチレングリコールとテレフタル酸から構成されている。また、前記PBTは、一般的にブチレングリコールとテレフタル酸から構成されている。そのため、前記PET又はPBT由来成分としては、例えば、エチレングリコール、ブチレングリコール、又はテレフタル酸のモノマーユニットが挙げられる。
【0017】
前記PET又はPBTとしては、再生PET又は再生PBTを使用することが、環境対応性の点で好ましい。
前記再生PET又は前記再生PBTとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記PET又はPBT製品のリサイクル品、オフスペックの繊維クズ、又はペレットを用いることができる。これらの中でも、リサイクル品(以下、「リサイクル樹脂」と称することがある)をフレーク状に加工したものが好ましい。
【0018】
前記PET又はPBT由来成分の原料となるPET又はPBTの分子量分布、組成、製造方法、及び使用する際の形態などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記PET又はPBTの重量平均分子量(Mw)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30,000~100,000が好ましい。
【0019】
近年、再生樹脂は、様々な分野で種々の試みが行われている。ポリエステルにおいてもPETボトルを始めとするポリエステル成型品を再溶融または低分子量化した後、重合してチップ化し、再び繊維やフィルムや成型品を製造するというリサイクルが行われている。このように、前記再生PET及び前記再生PBTは、汎用的な再生樹脂としてリサイクルフローが確立されており、廃棄物低減に貢献でき、環境負荷が低いと言える。また、このように資源の再利用に貢献することは、企業の最も重要な活動の一つと位置づけられる。
【0020】
なお、前記PET及びPBTは、いずれも芳香族二酸と脂肪族ジオールとの反応によって形成される半芳香族ポリエステルである。具体的には、前記PETは、芳香環骨格を有し、前記脂肪族ジオールに由来する炭素数がC2の化合物である。また、前記PBTは、芳香環骨格を有し、前記脂肪族ジオールに由来する炭素数がC4の化合物である。このように、PET及びPBTは、その化学的性質が類似しているため、当該技術分野においては、PETで実施可能であることは、概ねPBTでも実施可能であることが周知慣用技術である。本発明の樹脂粒子においてもPETとPBTとは、代替可能なものであり、前記樹脂粒子においては、特にPET及びPBTに由来する芳香環骨格を有する成分が、該樹脂粒子の機械的強度の向上に有効である。
これらの中でも、前記脂肪族ジオールに由来する炭素数が小さい方が、前記樹脂粒子の機械的強度の向上の点でより好ましく、前記PET由来成分が特に好ましい。
【0021】
<<植物由来成分>>
前記植物由来成分としては、植物由来の成分であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、植物由来のモノマー又は植物由来成分に置き換え可能なモノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
従来、石油由来材料であった材料についても、近年、植物由来材料への置き換えが可能になっており、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、コハク酸、イタコン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などは、植物由来材料として既に商業化が進んでいる。
【0023】
本明細書において、従来の石油由来モノマーに置き換え可能な植物由来モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、コハク酸、イタコン酸、セバシン酸、又はドデカン二酸が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。前記植物由来成分に置き換え可能なモノマーは、商業化が実現されている植物由来のモノマーであることが、入手が容易である点で好ましいが、適宜植物から分離して得られたものであってもよい。
【0024】
植物由来樹脂のポリエステルをトナーのシェル材として使用した場合、前記植物由来樹脂は、その構成モノマーに芳香環骨格を有しないため、所望の機械的強度を得難く、トナーの強度が低下し、感光体フィルミングが発生することがある。したがって、環境対応成分を使用し、環境対応性を高めることと、トナー特性として求められる耐久性を同時に満たすことは難しいという問題があった。
【0025】
また、植物由来樹脂のポリエステルをトナーのシェル材として使用した場合、シェル材の安定性が低く、シェル同士での凝集体が増えトナーを被覆できないことがある。したがって、環境対応性を高めることと、トナー特性として求められる耐久性を同時に満たすことは難しいという問題があった。
【0026】
前記問題に対し本発明の非晶性ポリエステル樹脂は、環境対応成分率が40質量%以上80質量%以下であり、且つ、スルホ基の含有量が2mol%以上10mol%以下あることにより、環境対応性が高く、耐久性に優れ、かつ、水分散体としたときの安定性に優れるという効果を奏するものである。
【0027】
本明細書において、以下、前記PET又はPBT由来成分、好ましくは、前記再生PET又は再生PBT由来成分と、前記植物由来成分とを合わせて、「環境対応成分」と称することがある。
前記環境対応成分は、前記ポリエステル分散体中の非晶性ポリエステルから、クロロホルム可溶分として分離することができる。したがって、前記ポリエステル分散体中の非晶性ポリエステルにおける前記環境対応成分率はクロロホルム可溶分から測定することができる。
【0028】
-クロロホルム可溶分の調製方法-
本発明の非晶性ポリエステル樹脂を用いてコアシェル構造のシェル層を形成する際には、非晶性ポリエステル樹脂を、後述するポリエステル分散体の製造方法によって得られる非晶性ポリエステル樹脂の水分散体(以下、「ポリエステル分散体」ということがある)の状態にして使用する。
ポリエステル分散体における非晶性ポリエステル樹脂中のクロロホルム可溶分は、以下のようにして得ることができる。
前記ポリエステル分散体を真空乾燥機で6時間乾燥させたもの1gを100mLのクロロホルム中に投入し、25℃の条件下、30分間攪拌しながら可溶分が溶解した溶解液を得る。これを目開き0.2μmのメンブランフィルターにて濾過し、前記樹脂粒子中のクロロホルム可溶分を得る。
【0029】
-ポリエステル分散体中の非晶性ポリエステル中の環境対応成分率の測定方法-
前記方法で得られたクロロホルム可溶分をクロロホルムに溶解してGPC測定用の試料とし、GPCに注入する。GPCの溶出液排出口にフラクションコレクターを配置し、所定のカウントごとに溶出液を分取(溶出曲線の全面積分のうちの所望の分子量部分に相当するフラクションをまとめて分取)し、溶出曲線の溶出開始(曲線の立ち上がり)から面積率で5%毎に溶出液を得る。次いで、各溶出液をエバポレーターなどにより濃縮及び乾燥した後、固形分を1mLの重クロロホルムにサンプル30mgを溶解させ、基準物質として0.05体積%のテトラメチルシラン(TMS)を添加する。得られた溶液を5mm径の核磁気共鳴分光法(NMR)測定用ガラス管に充填し、核磁気共鳴装置(例えば、JNM-AL400、日本電子株式会社製)を用い、23℃~25℃の温度下にて、128回の積算を行い、スペクトルを得る。得られたスペクトルのピーク積分比率から、溶出成分における前記ポリエステル分散体中の非晶性ポリエステルに含まれる各樹脂のモノマー組成及び構成比率を求めることができる。
【0030】
また、他の手法としては、前記溶出液を濃縮後、水酸化ナトリウム等により加水分解を行い、分解生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などにより定性定量分析することで構成モノマー比率を算出することもできる。
【0031】
前記方法で求められた、植物由来のモノマー成分及びPET又はPBT由来のモノマー成分の構成比率の総和を、本明細書における「環境対応成分率(%)」とする。環境対応比率としては、40%~80%が好ましい。40%未満であると、一般的に環境対応性が低いとみなされ、環境負荷を低減できない。環境対応成分率が80%を超えると、通常SP値が高くなってしまい、親水性が高くなるため膨潤しやすくなり、塗料やトナー用シェルとして使用したときに耐久性が悪化する。これは環境対応成分が通常SP値を上げる成分で構成されるためである。
【0032】
<非晶性ポリエステル樹脂>
【0033】
コアシェル構造のシェル層を形成する非晶性ポリエステル樹脂としては、下記非晶性ポリエステル樹脂Aが好ましく、前記樹脂粒子のコアに含まれる非晶性ポリエステル樹脂としては、後述の非晶性ポリエステル樹脂Bが好ましい。
【0034】
<<非晶性ポリエステル樹脂A>>
非晶性ポリエステル樹脂Aとしては、線状のポリエステル樹脂が好ましく、また未変性ポリエステル樹脂が好ましい。前記非晶性ポリエステル樹脂Aは、テトラヒドロフラン(THF)及びクロロホルムに可溶なポリエステル樹脂である。
前記未変性ポリエステル樹脂とは、多価アルコールと、多価カルボン酸又はその誘導体とを用いて得られるポリエステル樹脂であって、化合物などにより変性されていないポリエステル樹脂である。前記非晶性ポリエステル樹脂Aとしては、ウレタン結合及びウレア結合を有しないことが好ましい。前記多価アルコールイソシアネート及び前記多価カルボン酸又はその誘導体の少なくともいずれかにおいて、前記環境対応成分を使用することにより、前記非晶性ポリエステル樹脂Aを前記環境対応成分とすることができる。また、非晶性ポリエステル樹脂Aはスルホ基を有する非晶性ポリエステル樹脂が好ましい。スルホ基を含有することにより、水分散体にしたときに安定性が向上する。
非晶性ポリエステル樹脂Aは環境対応成分率が40質量%以上80質量%以下であり、前記スルホ基の含有量が2mol%以上10mol%以下である。
【0035】
-多価アルコール-
前記多価アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオールなどが挙げられる。
前記ジオールとしては、例えば、ビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物、エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、水添ビスフェノールA、又は水添ビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物が挙げられる。
前記ビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物としては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン又はポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記多価アルコールとしては、植物由来又は前記再生PET由来のエチレングリコール、植物由来又は前記再生PBT由来のブチレングリコール、植物由来のプロピレングリコール、植物由来の1,3-プロパンジオール、植物由来の1,4-ブタンジオール、植物由来のネオペンチルグリコールを含むことが、環境対応性を高めることができる点でより好ましい。
【0036】
また、酸価、水酸基価を調整する目的で、前記非晶性ポリエステル樹脂Aは、その樹脂鎖の末端に3価以上のアルコールを含んでいてもよい。
前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、又はトリメチロールプロパンが挙げられる。植物由来のグリセリンを使用することによりより環境対応性を高めることができる。
【0037】
-多価カルボン酸又はその誘導体-
前記多価カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジカルボン酸などが挙げられる。
前記ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、セバシン酸、ドデカン二酸又は炭素数1~20のアルキル基又は炭素数2~20のアルケニル基で置換されたコハク酸が挙げられる。
前記の炭素数1~20のアルキル基又は炭素数2~20のアルケニル基で置換されたコハク酸としては、例えば、ドデセニルコハク酸又はオクチルコハク酸が挙げられる。
前記多価カルボン酸の誘導体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多価カルボン酸無水物又は多価カルボン酸エステルが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
これらの中でも、前記多価カルボン酸としては、前記環境対応成分としての、植物由来、若しくは再生PET又は再生PBT由来の飽和脂肪族のコハク酸、セバシン酸、ドデカン二酸を含むことが好ましい。前記多価カルボン酸が、植物由来、若しくは再生PET又は再生PBT由来であることにより、環境対応性を高めることができる。
【0039】
<<非晶性ポリエステル樹脂B>>
前記非晶性ポリエステル樹脂Bとしては、線状のポリエステル樹脂が好ましく、また未変性ポリエステル樹脂が好ましい。前記非晶性ポリエステル樹脂Bは、テトラヒドロフラン(THF)及びクロロホルムに可溶なポリエステル樹脂である。
前記未変性ポリエステル樹脂とは、多価アルコールと、多価カルボン酸又はその誘導体とを用いて得られるポリエステル樹脂であって、イソシアネート化合物などにより変性されていないポリエステル樹脂である。前記非晶性ポリエステル樹脂Bとしては、ウレタン結合及びウレア結合を有しないことが好ましい。前記多価アルコール及び前記多価カルボン酸又はその誘導体の少なくともいずれかにおいて、前記環境対応成分を使用することにより、前記非晶性ポリエステル樹脂Bを前記環境対応成分とすることができる。
【0040】
-多価アルコール-
前記多価アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオールなどが挙げられる。
前記ジオールとしては、例えば、ビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物、エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、水添ビスフェノールA、又は水添ビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物が挙げられる。
前記ビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物としては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン又はポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記多価アルコールとしては、植物由来又は前記再生PET由来のエチレングリコール、植物由来又は前記再生PBT由来のブチレングリコール、植物由来のプロピレングリコール、植物由来の1,3-プロパンジオール、植物由来の1,4-ブタンジオールを含むことが、環境対応性を高めることができる点でより好ましい。
【0041】
また、酸価、水酸基価を調整する目的で、前記非晶性ポリエステル樹脂Bは、その樹脂鎖の末端に3価以上のアルコールを含んでいてもよい。
前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、又はトリメチロールプロパンが挙げられる。植物由来のグリセリンを使用することによりより環境対応性を高めることができる。
【0042】
-多価カルボン酸又はその誘導体-
前記多価カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジカルボン酸などが挙げられる。
前記ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、セバシン酸、ドデカン二酸又は炭素数1~20のアルキル基又は炭素数2~20のアルケニル基で置換されたコハク酸が挙げられる。
前記の炭素数1~20のアルキル基又は炭素数2~20のアルケニル基で置換されたコハク酸としては、例えば、ドデセニルコハク酸又はオクチルコハク酸が挙げられる。
前記多価カルボン酸の誘導体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多価カルボン酸無水物又は多価カルボン酸エステルが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
これらの中でも、前記多価カルボン酸としては、前記環境対応成分としての、植物由来、若しくは再生PET又は再生PBT由来の飽和脂肪族のコハク酸、セバシン酸、ドデカン二酸を含むことが好ましい。前記多価カルボン酸が、植物由来、若しくは再生PET又は再生PBT由来であることにより、環境対応性を高めることができる。
【0044】
前記非晶性ポリエステル樹脂Bは、該非晶性ポリエステル樹脂Aの構成成分にジカルボン酸成分を含み、前記ジカルボン酸成分が、テレフタル酸を50モル%以上含有することが好ましい。そうすることにより、耐熱保存性の点で有利である。
【0045】
また、酸価、水酸基価を調整する目的で、前記非晶性ポリエステル樹脂Bは、その樹脂鎖の末端に3価以上のカルボン酸を含んでいてもよい。
前記3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、又はそれらの酸無水物が挙げられる。
【0046】
前記非晶性ポリエステル樹脂Bの分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、GPCによる測定において、以下の範囲であることが好ましい。
前記非晶性ポリエステル樹脂Bの重量平均分子量(Mw)としては、3,000~10,000が好ましく、4,000~10,000がより好ましい。
前記非晶性ポリエステル樹脂Bの数平均分子量(Mn)として、1,000~4,000が好ましく、1,500~3,000がより好ましい。
前記非晶性ポリエステル樹脂Bの分子量の比(Mw/Mn)としては、1.0~4.0が好ましく、1.0~3.5がより好ましい。
前記非晶性ポリエステル樹脂Bの前記重量平均分子量(Mw)及び前記数平均分子量(Mn)が、前記好ましい範囲の下限値以上の場合、前記樹脂粒子の耐熱保存性や現像機内での攪拌等のストレスに対する耐久性が低下することを抑制することができる。また、前記非晶性ポリエステル樹脂Bの前記重量平均分子量(Mw)及び前記数平均分子量(Mn)が、前記好ましい範囲の上限値以下の場合、前記樹脂粒子の溶融時の粘弾性が高くなることを抑え、低温定着性が低下することを抑制することができる。
【0047】
前記非晶性ポリエステル樹脂Bの酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1mgKOH/g~50mgKOH/gが好ましく、5mgKOH/g~30mgKOH/gがより好ましい。前記非晶性ポリエステル樹脂Bの酸価が、1mgKOH/g以上であることにより、前記樹脂粒子を含有するトナーが負帯電性となりやすく、更には、紙等の記録媒体への定着時に、該記録媒体と前記トナーの親和性が良くなり、低温定着性を向上させることができる。また、前記非晶性ポリエステル樹脂Bの酸価が、50mgKOH/g以下であることにより、帯電安定性、特に環境変動に対する帯電安定性が低下することを抑制することができる。
前記非晶性ポリエステル樹脂Bの酸価は、JIS K0070-1992に記載の測定方法に準拠して測定することができる。
【0048】
前記非晶性ポリエステル樹脂Bの水酸基価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5mgKOH/g以上であることが好ましい。また、前記非晶性ポリエステル樹脂Bの水酸基価の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30mgKOH/g以下が好ましい。前記非晶性ポリエステル樹脂Bの水酸基価の下限値と上限値とは適宜組み合わせることができ、5mgKOH/g~30mgKOH/gが好ましい。
前記非晶性ポリエステル樹脂Bの水酸基価は、JIS K0070-1966に記載の測定方法に準拠して測定することができる。
【0049】
前記非晶性ポリエステル樹脂Bのガラス転移温度(Tg)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上70℃以下がより好ましい。前記非晶性ポリエステル樹脂Bのガラス転移温度(Tg)が、40℃以上であることにより、前記樹脂粒子を含有するトナーの耐熱保存性、及び現像機内での攪拌等のストレスに対する耐久性が十分なものとなり、また、耐フィルミング性も良好となる。前記非晶性ポリエステル樹脂Bのガラス転移温度(Tg)が、80℃以下であることにより、前記樹脂粒子を含有するトナーの定着時における加熱及び加圧による変形が十分なものとなり、低温定着性が良好となる。
【0050】
前記非晶性ポリエステル樹脂Bの分子構造は、溶液や固体による核磁気共鳴分光法(NMR)による測定の他、X線回折、ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)、液体クロマトグラフ分析(LC/MS)、又は赤外吸収分光法(IR)による測定方法により確認することができる。これらの中でも、IRで得られる赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1及び990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有しないものを前記非晶性ポリエステル樹脂Bとして検出する方法が挙げられる。
【0051】
前記非晶性ポリエステル樹脂Bの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂粒子100質量部に対して、50質量部以上90質量部以下が好ましく、60質量部以上80質量部以下がより好ましい。前記非晶性ポリエステル樹脂Bの含有量が、前記樹脂粒子100質量部に対して、50質量部以上であると、前記樹脂粒子中の顔料又は離型剤の分散性が悪化することを抑制でき、画像のかぶりや乱れが生じることを抑制することができる。また、前記非晶性ポリエステル樹脂Bの含有量が、前記樹脂粒子100質量部に対して、90質量部以下であると、前記結晶性樹脂の含有量が少なくなることを防止し、低温定着性が低下することを抑制することができる。前記非晶性ポリエステル樹脂Bの含有量が、前記より好ましい範囲であると、高画質及び低温定着性の全てに優れる点で有利である。
【0052】
<<コアシェル構造>>
前記樹脂粒子は、コアシェル構造を有する。前記シェル層を構成するシェル用樹脂としては、非晶性ポリエステル樹脂Aが好ましく、コアに含有する非晶性ポリエステルとしては非晶性ポリエステル樹脂Bが好ましい。
本明細書において、「コアシェル構造を有する」とは、コア層とシェル層とを有する構造を意味し、「シェル層」とは、前記樹脂粒子の最外層に存在する樹脂からなる層を意味し、「コア層」とは、前記シェル層を除く樹脂粒子内の領域を意味する。
前記コア層と前記シェル層とは、互いに完全には相溶せずに不均質に形成されてなる。
前記コアシェル構造において、前記コア層の表面は、前記シェル層によって被覆された形態であることが好ましい。
前記コアシェル構造において、前記コア層の表面は、前記シェル層によって完全に被覆されていてもよく、前記シェル層によって完全に被覆されていなくてもよい。前記コア層の表面が前記シェル層によって完全に被覆されていない形態としては、例えば、前記コア層が前記シェル層に網目状に被覆されている形態、前記コア層が部分的に前記シェル層から露出した形態などが挙げられる。これらの中でも、耐フィルミング性の点から、前記コア層の表面が、前記シェル層によって完全に被覆されていることが好ましい。
【0053】
-シェル材-
前記非晶性ポリエステル樹脂Aは、シェル材として使用される。前述の通り、非晶性ポリエステル樹脂Aは、多価アルコールと、多価カルボン酸とを重縮合することにより得られるものなどが挙げられ、前記環境対応成分を含有する。前記シェル用樹脂は、前記再生PET又は再生PBTのみを含有する樹脂であってもよく、前記植物由来成分のみを含有する樹脂であってもよく、この両方を含有する樹脂が好ましい。
【0054】
前記ポリエステル分散体中の非晶性ポリエステルの体積平均粒径を測定する方法としては、ナノトラック粒度分布測定装置(UPA-EX150、日機装株式会社、動的光散乱法/レーザードップラー法)を用いて測定する方法などが挙げられる。
まず、予め各対象試料の分散液の分散溶媒のみでバックグラウンド測定をした。次に、各対象試料が分散された分散液を、測定濃度範囲に調整して測定することで、体積平均粒径が測定できる。
【0055】
前記シェル層の組成構成を確認する方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ナノ(nano)IR(「AMF-IR」とも称する)を用いた表層(シェル層)組成分析によって確認する方法などが挙げられる。
ナノ(nano)IRの原子間力顕微鏡(AFM)とIRとを組合せたナノスケール分解能を実現する分析手法により、前記樹脂粒子の表層(シェル層)のIRスペクトルを取得することで組成構成を得ることができる。
【0056】
具体的には、前記樹脂粒子をエポキシ樹脂(S-31、DEVCON社製)に包埋して硬化させた後、ナイフで断面出しして、超音波ウルトラミクロトーム(Leica EM UC7、ライカ社製)を用いて、60nmの厚さに切除し、樹脂粒子の超薄切片を作製する。作製したトナーの超薄切片を、基板上(ZnS)に回収し、ナノスケール赤外分光分析システム(例えば、nanoIR2、アナシスインスツルメント社製)を用い、測定箇所(シェル層)をAFM-IR法にて測定する。測定範囲は、1,900cm-1から910cm-1とし、分解能は2cm-1として、得られたAFM-IR吸収スペクトルから、測定箇所(シェル層)の化学構造を解析することができる。したがって、この分析によって表層(シェル層)の組成構成を確認することができる。
なお、前記測定箇所をコア層とすることで、コア層の化学構造を解析することもできる。
【0057】
前記シェル層の平均厚さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50nm~500nmが好ましく、100nm~200nmがより好ましい。前記シェル層の平均厚さが50nm以上であると、前記樹脂粒子の内部のコア層を保護することができ、耐機械強度の向上ができ、200nm以下であると、低温定着性を阻害することなく、十分な耐機械強度を維持できる。
なお、本明細書において、「シェル層の平均厚さ」とは、樹脂粒子の重量平均粒径から±2.0μm以内のものの中から任意に50個選択し、後述の方法でそれぞれのシェル層の厚さを測定し、この50個の樹脂粒子のシェル層の厚さを平均した厚さを意味する。
【0058】
前記コア層表面の前記シェル層による被覆率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50%~100%が好ましく、80%~100%がより好ましい。なお、前記被覆率が100%であるとは、前記樹脂粒子における前記コア層の表面全域が、前記シェル層で覆われていることを意味する。
前記コア層表面の前記シェル層による被覆率(%)は、下記式(3)により算出することができる。
被覆率(%)=(被覆領域の面積)/(樹脂粒子の全表面積)×100 ・・・式(3)
前記式(3)中、「樹脂粒子の全表面積」は、被覆領域の面積と、コア層露出面積との合計を意味し、「被覆領域の面積」は、樹脂粒子の全表面積のうち、コア層がシェル層により被覆された領域の面積を意味し、「コア層露出面積」は、樹脂粒子の全表面積のうち、コア層がシェル層により被覆されていない領域の面積を意味する。
【0059】
前記樹脂粒子が、コアシェル構造を有することを確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記樹脂粒子をエポキシ樹脂(S-31、DEVCON社製)に包埋して硬化させた後、ナイフで断面出しして、超音波ウルトラミクロトーム(Leica EM UC7、ライカ社製)を用いて、60nmの厚さに切除し、樹脂粒子の超薄切片を作製する。作製したトナーの超薄切片を、四酸化ルテニウム(RuO4)でガス暴露し、シェルとコアを識別染色する。ガス暴露時間は観察時のコントラストにより適宜調整することができる。その後、透過型電子顕微鏡(H-7500、株式会社日立ハイテク製)を用いて、加速電圧120kVで樹脂粒子の断面像を観察することで確認することができる。
【0060】
また、前述の方法で観察されたTEM画像において、前記樹脂粒子の表面におけるコア層の被覆領域(樹脂粒子において、コア層がシェル層により被覆された領域)と、コア層の露出領域(樹脂粒子において、コア層がシェル層により被覆されていない領域)とは、輝度値の違いにより区別することができる。そのため、前述の方法で観察されたTEM画像を、画像処理ソフトを利用して2値化処理を行い、そのコントラスト比により、シェル層を特定することができ、シェル層の厚さを測定することができる。
【0061】
前記画像処理ソフトとしては、Image-Jを使用することができる。Image-Jを使用した前記シェル層の平均厚みの算出方法は、以下の通りである。
(1)Straight Lineでスケールをなぞった直線を引く。AnalyzeのSet Scaleでその実長と単位を設定する。
(2)樹脂粒子1個の前記断面像における該樹脂粒子の外周をFreehand-sectionsで囲い、「領域1」を作成する。
(3)前記樹脂粒子1個の前記断面像におけるシェル層を除いた領域の外周(即ち、シェル層とコア層との境界)をFreehand-sectionsで囲い、「領域2」を作成する。
(4)前記「領域1」の重量中心をAnalyzeにより求める。
(5)独自に開発したプラグインを使用し、前記「領域1」の外周、即ち、前記(2)において前記樹脂粒子1個の外周をFreehand-sectionsで囲った線を等間隔に100分割した座標から、前記(4)で求めた樹脂粒子の重量中心に向かって直線を引く。
(6)前記(5)で作成した100個の各直線の前記「領域1」を通る長さから、前記「領域2」を通る長さを除いたものの長さを、前記(1)で作成したスケールをなぞった直線を利用して算出し、100個の平均をとったものを、前記樹脂粒子1個のシェル層の厚みとする。
(7)前記(2)~(6)の操作を50個の樹脂粒子について行い、50個の樹脂粒子のシェル層の厚みの平均値を算出する。この平均値を、本発明におけるシェル層の平均厚みとする。
【0062】
また、Image-Jを使用した前記シェル層による被覆率の算出方法は、以下の通りである。
(1)樹脂粒子1個の前記断面像における該樹脂粒子の外周のシェル層で被覆されている部分をFreehand Lineでなぞり、なぞった線の長さをAnalyzeにより測定する。この長さを「長さ1」とする。
(2)前記樹脂粒子1個の前記断面像における該樹脂粒子の外周をFreehand Lineでなぞり、なぞった線の長さをAnalyzeにより測定する。この長さを「長さ2」とする。
(3)長さ1/長さ2×100を算出し、これを前記樹脂粒子1個のシェル層による被覆率とする。
(4)前記(1)~(3)の操作を50個の樹脂粒子について行い、50個の樹脂粒子のシェル層による被覆率の平均値を算出する。この平均値を、本発明におけるシェル層による被覆率とする。
【0063】
<その他の成分>
前記樹脂粒子における前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性樹脂、着色剤、離型剤、帯電制御剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料、又は異形化剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
<結晶性樹脂>
前記結晶性樹脂としては、結晶性を有するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ビニル樹脂、又は変性結晶性樹脂が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記結晶性樹脂としては、結晶性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0065】
<<結晶性ポリエステル樹脂>>
前記結晶性ポリエステル樹脂(以下、「結晶性ポリエステル樹脂C」と称することがある)は、高い結晶性を持つために、定着開始温度付近において急激に粘度が変化する熱溶融特性を示す。前記結晶性ポリエステル樹脂Cは、テトラヒドロフラン(THF)に不溶であり、クロロホルムに可溶なポリエステル樹脂である。
【0066】
このような特性を有する前記結晶性ポリエステル樹脂Cを前記非晶性ポリエステル樹脂と共に用いることで、良好な耐熱保存性と低温定着性とを兼ね備えた樹脂粒子が得られる。例えば、前記結晶性ポリエステル樹脂Cと、前記非晶性ポリエステル樹脂とを併用することにより、溶融開始温度直前までは結晶性ポリエステル樹脂Cの結晶性によって耐熱保存性がよく、溶融開始温度では結晶性ポリエステル樹脂Cの融解による急激な粘度低下(シャープメルト性)を起こし、それに伴い前記非晶性ポリエステル樹脂Bと相溶し、共に急激に粘度が低下することで良好に定着させることができる。また、離型幅(定着下限温度と耐高温オフセット発生温度との差)についても、良好な結果を示す。
【0067】
前記結晶性ポリエステル樹脂Cは、多価アルコールと、多価カルボン酸又はその誘導体とを用いて得られる。前記多価アルコール及び前記多価カルボン酸又はその誘導体の少なくともいずれかにおいて、前記植物由来成分、若しくは前記再生PET又は再生PBT由来成分を使用することにより、前記結晶性樹脂を前記環境対応成分とすることができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
前記多価カルボン酸の誘導体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多価カルボン酸無水物、又は多価カルボン酸エステルが挙げられる。
【0069】
なお、本明細書において、前記結晶性ポリエステル樹脂Cとは、上記のごとく、前記多価アルコールと、前記多価カルボン酸又はその誘導体とを用いて得られるものを指し、ポリエステル樹脂を変性したもの、例えば、前記プレポリマー、並びに、該プレポリマーを架橋反応及び伸長反応の少なくともいずれかの反応をさせて得られる樹脂は、前記結晶性ポリエステル樹脂Cには属さない。
【0070】
-多価アルコール-
前記多価アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール、又は3価以上のアルコールが挙げられる。
前記ジオールとしては、例えば、飽和脂肪族ジオールなどが挙げられる。
前記飽和脂肪族ジオールとしては、例えば、直鎖飽和脂肪族ジオール、又は分岐飽和脂肪族ジオールが挙げられる。これらの中でも、前記飽和脂肪族ジオールとしては、直鎖飽和脂肪族ジオールが好ましく、炭素数が2以上12以下の直鎖飽和脂肪族ジオールがより好ましい。前記飽和脂肪族ジオールが直鎖型であると、前記結晶性ポリエステル樹脂Cの結晶性が高く、融点が高くなる点で好ましい。なお、前記飽和脂肪族ジオールの炭素数が12を超えると、実用上の材料の入手が困難となる。前記飽和脂肪族ジオールの炭素数としては、12以下であることがより好ましい。
【0071】
前記飽和脂肪族ジオールの具体例としては、エチレングリコール、ブチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、又は1,14-エイコサンデカンジオールが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記結晶性ポリエステル樹脂Cの結晶性が高く、シャープメルト性に優れる点で、エチレングリコール、ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、又は1,12-ドデカンジオールが好ましい。
【0072】
前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又はペンタエリスリトールが挙げられる。
【0073】
これらの多価アルコールは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0074】
-多価カルボン酸-
前記多価カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジカルボン酸が挙げられる。
前記ジカルボン酸としては、例えば、飽和脂肪族ジカルボン酸、不飽和脂肪族ジカルボン酸、又は芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
前記飽和脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、セバシン酸、アジピン酸、又はドデカン二酸などが挙げられる。
前記不飽和脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、フマル酸又はマレイン酸が挙げられる。
前記飽和脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸などが挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
前記ジカルボン酸は、植物由来の炭素数が4以上12以下の飽和脂肪族が好ましい。前記ジカルボン酸が、植物由来であることで、カーボンニュートラル性を高めることができる。前記ジカルボン酸の炭素数が、12以下であると、前記非結晶性ポリエステル樹脂との相溶性が向上し、低温定着性が向上する。
【0076】
前記結晶性ポリエステル樹脂Cの融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上80℃以下であることが好ましい。前記結晶性ポリエステル樹脂Cの融点が60℃以上であると、前記結晶性ポリエステル樹脂Cが低温で溶融して前記樹脂粒子の耐熱保存性が低下することを抑制できる。また、前記結晶性ポリエステル樹脂Cの融点が80℃以下であると、定着時の加熱による前記結晶性ポリエステル樹脂Cの溶融を向上させることができ、低温定着性の低下を抑制できる。
【0077】
前記結晶性ポリエステル樹脂Cの分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、分子量分布がシャープで低分子量のものが低温定着性に優れ、かつ分子量が高い成分が多いと耐熱保存性が向上するという観点から、前記結晶性ポリエステル樹脂Cのオルトジクロロベンゼンの可溶分のGPCによる測定において、以下の範囲であることが好ましい。
前記結晶性ポリエステル樹脂Cの重量平均分子量(Mw)としては、3,000~30,000が好ましく、5,000~25,000がより好ましい。
前記結晶性ポリエステル樹脂Cの数平均分子量(Mn)としては、1,000~10,000が好ましく、2,000~10,000がより好ましい。
前記結晶性ポリエステル樹脂Cの分子量の比(Mw/Mn)としては、1.0~10が好ましく、1.0~5.0がより好ましい。
【0078】
前記結晶性ポリエステル樹脂Cの酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記酸化の下限値としては、記録媒体と前記樹脂粒子との親和性の観点から、所望の低温定着性を達成するために、5mgKOH/g以上が好ましく、10mgKOH/g以上がより好ましい。また、前記結晶性ポリエステル樹脂Cの酸価の上限値としては、耐高温オフセット性を向上させる点から、45mgKOH/g以下が好ましい。
前記結晶性ポリエステル樹脂Cの酸化は、JIS K0070-1992に記載の測定方法に準拠して測定することができる。
【0079】
前記結晶性ポリエステル樹脂Cの水酸基価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、所望の低温定着性を達成し、かつ良好な帯電特性を達成するためには、0mgKOH/g以上50mgKOH/g以下が好ましく、0mgKOH/g以上10mgKOH/g以下がより好ましい。
前記結晶性ポリエステル樹脂Cの水酸基価は、JIS K0070-1966に記載の測定方法に準拠して測定することができる。
【0080】
前記結晶性ポリエステル樹脂Cの分子構造は、溶液や固体による核磁気共鳴分光法(NMR)による測定の他、X線回折、ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)、液体クロマトグラフ分析(LC/MS)、又は赤外吸収分光法(IR)による測定方法により確認することができる。これらの中でも、IRで得られる赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1及び990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有するものを前記結晶性ポリエステル樹脂Cとして検出する方法が、簡便である。
【0081】
前記樹脂粒子における前記結晶性ポリエステル樹脂Cの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂粒子100質量部に対して、3質量部以上20質量部以下が好ましく、5質量部以上15質量部以下がより好ましい。前記樹脂粒子における前記結晶性ポリエステル樹脂Cの含有量が3質量部以上であると、前記結晶性ポリエステル樹脂Cによるシャープメルト化を向上させることができ、低温定着性を向上させることができる。また、前記樹脂粒子における前記結晶性ポリエステル樹脂Cの含有量が20質量部以下であると、耐熱保存性の低下を抑制でき、また画像のかぶりが発生することを抑制することができる。前記樹脂粒子における前記結晶性ポリエステル樹脂Cの含有量が前記より好ましい範囲内であると、高画質、及び低温定着性の全てに優れる点で有利である。
【0082】
<<着色剤>>
前記着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、又はリトボンが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0083】
前記樹脂粒子における前記着色剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂粒子100質量部に対して、1質量部以上15質量部以下が好ましく、3質量部以上10質量部以下がより好ましい。
【0084】
前記着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。
前記マスターバッチの製造又はマスターバッチとともに混練される前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記非晶性ポリエステル樹脂の他に、スチレン又はその置換体の重合体、スチレン系共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、又はパラフィンワックスが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記スチレン又はその置換体の重合体としては、例えば、ポリスチレン、ポリp-クロロスチレン、又はポリビニルトルエンが挙げられる。
前記スチレン系共重合体としては、例えば、スチレン-p-クロロスチレン共重合体、スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、又はスチレン-マレイン酸エステル共重合体が挙げられる。
【0085】
前記マスターバッチの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マスターバッチ用の前記樹脂と、前記着色剤とを高せん断力をかけて混合し、混練して得る方法などが挙げられる。この際、前記着色剤と前記樹脂との相互作用を高めるために、有機溶剤を用いることができる。また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる前記着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶剤とともに混合混練を行い、前記着色剤を前記樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができるため乾燥する必要がなく、好ましく用いられる。混合混練するには3本ロールミル等の高せん断分散装置が好ましく用いられる。
【0086】
<<離型剤>>
前記離型剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ロウ類又はワックス類、脂肪酸アミド、ポリアクリレートのホモ重合体又は共重合体、又は側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、これらの離型剤は、クロロホルムに可溶である。
【0087】
前記ロウ類又はワックス類としては、例えば、天然ワックス、合成炭化水素ワックス、又は合成ワックスが挙げられる。
前記天然ワックスとしては、例えば、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、又は石油ワックスが挙げられる。
前記植物系ワックスとしては、例えば、カルナウバワックス、綿ロウ、又は木ロウが挙げられる。
前記動物系ワックスとしては、例えば、ミツロウ又はラノリンが挙げられる。
前記鉱物系ワックスとしては、例えば、オゾケライト又はセルシンが挙げられる。
前記石油ワックスとしては、例えば、パラフィン、マイクロクリスタリン、又はペトロラタムが挙げられる。
前記合成炭化水素ワックスとしては、例えば、フィッシャー・トロプシュワックス又はポリエチレンワックスが挙げられる。
前記合成ワックスとしては、例えば、エステル、ケトン、又はエーテルが挙げられる。
【0088】
前記肪酸アミドとしては、例えば、12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、又は塩素化炭化水素が挙げられる。
【0089】
前記ポリアクリレートとしては、例えば、低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ-n-ステアリルメタクリレート又はポリ-n-ラウリルメタクリレートが挙げられる。
前記ポリアクリレートのホモ重合体又は共重合体としては、例えば、n-ステアリルアクリレート-エチルメタクリレートの共重合体などが挙げられる。
【0090】
これらの中でも、前記離型剤としては、植物系のワックスや、植物由来の材料を使ったエステルワックスが好ましい。前記離型剤が植物由来であることにより、カーボンニュートラル性を高めることができる。
【0091】
前記離型剤の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上80℃以下が好ましい。前記離型剤の融点が、60℃以上であると、低温で離型剤が溶融することを抑制でき、耐熱保存性が低下することを抑制することができる。また、前記離型剤の融点が80℃以下であると、樹脂が溶融して定着温度領域にある場合に、該離型剤が充分溶融せずに定着オフセットを生じることを抑制でき、画像の欠損が生じることを抑制することができる。
【0092】
前記樹脂粒子における前記離型剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂粒子100質量部に対して、2質量部以上10質量部以下が好ましく、3質量部以上8質量部以下がより好ましい。前記離型剤の含有量が2質量部以上であると、定着時の耐高温オフセット性、及び低温定着性が低下することを抑制でき、10質量部以下であると、耐熱保存性が低下することを抑制でき、また画像のかぶりなどが生じることを抑制することができる。前記離型剤の含有量が、前記より好ましい範囲内であると、高画質化、及び定着安定性を向上させる点で有利である。
【0093】
<<帯電制御剤>>
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、第四級アンモニウム塩(フッ素変性四級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩、オキシナフトエ酸金属塩、フェノール系縮合物、アゾ系顔料、ホウ素錯体、又は官能基(例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、又は四級アンモニウム塩等)を有する高分子系の化合物が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0094】
前記帯電制御剤の具体例としては、ニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP-51、含金属アゾ染料のボントロンS-34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE-82、サリチル酸系金属錯体のE-84、フェノール系縮合物のE-89(以上、オリエント化学工業株式会社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP-302、TP-415(以上、保土谷化学工業株式会社製)、LRA-901、ホウ素錯体であるLR-147(以上、日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料が挙げられる。
【0095】
前記帯電制御剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂粒子100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、0.2質量部~5質量部がより好ましい。前記帯電制御剤の含有量が、前記樹脂粒子100質量部に対して10質量部以下であると、前記樹脂粒子を含有するトナーの帯電性が大きくなり過ぎることを防ぎ、主帯電制御剤の効果を保つことができ、現像ローラとの静電的吸引力が増大することを防ぎ、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を抑制することができる。これらの帯電制御剤は、マスターバッチ、樹脂とともに溶融混練した後溶解分散させることもできるし、もちろん有機溶剤に直接溶解、分散する際に加えてもよいし、前記樹脂粒子表面に、該樹脂粒子作製後に固定化させてもよい。
【0096】
<<流動性向上剤>>
前記流動性向上剤は、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止可能なものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、又は変性シリコーンオイルが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0097】
前記流動性向上剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂粒子100質量部に対して、0.01質量部以上5.00質量部以下が好ましく、0.10質量部以上2.00質量部以下がより好ましい。
【0098】
<<クリーニング性向上剤>>
前記クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのものである。
前記クリーニング性向上剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪酸金属塩又はポリマー微粒子が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0099】
前記脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、又はステアリン酸が挙げられる。
【0100】
前記ポリマー微粒子としては、ソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子が好ましく、例えば、ポリメチルメタクリレート微粒子又はポリスチレン微粒子が挙げられる。
【0101】
前記ポリマー微粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01μm~1μmのものが好適である。
【0102】
前記クリーニング性向上剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂粒子100質量部に対して、0.01質量部以上5.00質量部以下が好ましく、0.10質量部以上2.00質量部以下がより好ましい。
【0103】
<<磁性材料>>
前記磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉄粉、マグネタイト、又はフェライトが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記磁性材料としては、色調の点で白色のものが好ましい。
【0104】
前記磁性材料の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂粒子100質量部に対して、20質量部以上200質量部以下が好ましく、40質量部以上150質量部以下がより好ましい。
【0105】
<<<異形化剤>>>
前記異形化剤は、前記樹脂粒子の形状を異形化するために添加されるものである。
前記異形化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、層状無機鉱物が有する層間のイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物を含有することが好ましい。
【0106】
前記層状無機鉱物が有する層間のイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スメクタイト系の基本結晶構造を有するものを有機カチオンで変性したものなどが挙げられる。スメクタイト族粘土鉱物は、層が負の電荷を帯び、これを補うために層間に陽イオンが存在する。この陽イオンのイオン交換や極性分子の吸着により層間化合物を形成することができる。また、層状無機鉱物の2価金属の一部を3価の金属に置換することにより、金属イオンを導入することができる。しかし、金属アニオンを導入すると親水性が高いため、金属アニオンの少なくとも一部を有機アニオンで変性した層状無機化合物が好ましい。
【0107】
前記層状無機鉱物が有する層間のイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物は、有機物カチオン変性剤又は有機物アニオン変性剤を用いることで得られる。
【0108】
前記有機物カチオン変性剤としては、有機物イオンで上記のように変性し得るものであれば、特に制限はなく、例えば、第4級アルキルアンモニウム塩、フォスフォニウム塩、又はイミダゾリウム塩が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記有機物カチオン変性剤としては、第4級アルキルアンモニウム塩が好ましい。
【0109】
前記第4級アルキルアンモニウムとしては、特に制限はなく、例えば、トリメチルステアリルアンモニウム、ジメチルステアリルベンジルアンモニウム、又はオレイルビス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムが挙げられる。
【0110】
前記有機物アニオン変性剤としては、有機物イオンで上記のように変性し得るものであれば、特に制限はなく、例えば、分岐、非分岐、又は環状のアルキル(C1~C44)基、分岐、非分岐、又は環状のアルケニル(C1~C22)基、分岐、非分岐、又は環状のアルコキシ(C8~C32)基、分岐、非分岐、又は環状のヒドロキシアルキル(C2~C22)基、エチレンオキサイド骨格、又はプロピレンオキサイド骨格を有する、硫酸塩、スルホン酸塩、カルボン酸塩、又はリン酸塩が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記有機物アニオン変性剤は、エチレンオキサイド骨格を有するカルボン酸が好ましい。
【0111】
前記異形化剤は、前記樹脂粒子が、後述する(樹脂粒子の製造方法)で製造される場合、後述する<油相作製工程>で添加されることが好ましい。
前記層状無機鉱物の層間のイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性することにより、適度な疎水性を有するため、前記樹脂粒子の材料を含む油相が非ニュ-トニアン粘性を持ち、前記樹脂粒子を異形化することができる。この際、前記樹脂粒子の材料における、前記異形化剤の含有量としては、前記樹脂粒子の材料の全量に対して、0.05質量%~10質量%であることが好ましく、0.05質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0112】
また、前記層状無機鉱物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、アタパルジャイト、セピオライト、又はこれらの混合物が挙げられる。
これらの中でも、前記層状無機鉱物が有する層間のイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物は、前記樹脂粒子をトナーに利用した場合、トナー特性に影響を与えず、容易に粘度調整ができ、添加量を少量とすることができることから、有機変性モンモリロナイト又は有機変性ベントナイトが好ましい。
【0113】
前記層状無機鉱物が有する層間のイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物の市販品としては、例えば、Bentone 3、Bentone 38、Bentone 38V(以上、レオックス社製)、チクソゲルVP(United catalyst社製)、クレイトン34、クレイトン40、クレイトンXL(以上、サザンクレイ社製)等のクオタニウム18ベントナイト;Bentone 27(レオックス社製)、チクソゲルLG(United catalyst社製)、クレイトンAF、クレイトンAPA(以上、サザンクレイ社製)等のステアラルコニウムベントナイト;クレイトンHT、クレイトンPS(以上、サザンクレイ社製)等のクオタニウム18/ベンザルコニウムベントナイトが挙げられる。これらの中でも、クレイトンAF、クレイトンAPAが好ましい。
【0114】
また、前記層状無機鉱物が有する層間のイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物としては、DHT-4A(登録商標)(協和化学工業株式会社製)に下記一般式(III)で表される有機物アニオン変性剤で変性させたものがより好ましい。下記一般式(III)で表される有機物アニオン変性剤としては、例えば、ハイテノール(登録商標)330T(第一工業製薬株式会社製)が挙げられる。
【0115】
R1(OR2)nOSO3M ・・・一般式(III)
(前記一般式(III)中、R1は炭素数13のアルキル基を表し、R2は炭素数2~6のアルキレン基を表し、nは2~10の整数を表し、Mは1価の金属元素を表す。)
【0116】
-樹脂粒子の体積平均粒径-
前記樹脂粒子の体積平均粒径(D4)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3μm以上7μm以下であることが好ましい。
また、前記樹脂粒子の個数平均粒径(Dn)に対する前記樹脂粒子の体積平均粒径(D4)の比(D4/Dn)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.2以下であることが好ましい。
また、前記樹脂粒子は、体積平均粒径が2μm以下である成分を1個数%以上10個数%以下含有することが好ましい。
【0117】
前記樹脂粒子の体積平均粒径(D4)、個数平均粒径(Dn)、及びこれらの比(D4/Dn)は、例えば、コールターカウンターTA-II、コールターマルチサイザーII(いずれもコールター社製)等を用いて測定することができる。なお、本明細書では、コールターマルチサイザーIIを使用した値とする。以下に測定方法について述べる。
【0118】
まず、電解水溶液100mL~150mL中に分散剤として界面活性剤(好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(非イオン性の界面活性剤))を0.1mL~5mL加えた混合液を得る。前記混合液に、更に測定試料を2mg~20mg加える。この測定試料を懸濁した電解水溶液は、超音波分散器で約1分間~3分間分散処理を行い、前記測定装置(コールターマルチサイザーII)により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用い、前記樹脂粒子の体積及び個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、前記樹脂粒子の体積平均粒径(D4)及び個数平均粒径(Dn)を求めることができる。
なお、前記電解水溶液とは、1級塩化ナトリウムを用いて1質量%塩酸ナトリウム水溶液を調製したもので、例えば、ISOTON-II(コールター社製)を使用することができる。
【0119】
チャンネルとしては、2.00μm以上2.52μm未満、2.52μm以上3.17μm未満;3.17μm以上4.00μm未満、4.00μm以上5.04μm未満、5.04μm以上6.35μm未満、6.35μm以上8.00μm未満、8.00μm以上10.08μm未満、10.08μm以上12.70μm未満、12.70μm以上16.00μm未満、16.00μm以上20.20μm未満、20.20μm以上25.40μm未満、25.40μm以上32.00μm未満、及び32.00μm以上40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上40.30μm未満の粒子を対象とする。
【0120】
-ガラス転移温度(Tg)及び融点(Tm)-
--ガラス転移温度(Tg)及び融点(Tm)の測定方法--
本明細書におけるガラス転移温度(Tg)及び融点(Tm)は、例えば、DSCシステム(示差走査熱量計)(「Q-200」、TAインスツルメント社製)を用いて測定することができる。
具体的には、対象試料のガラス転移温度(Tg)及び融点(Tm)は、下記手順により測定できる。
まず、対象試料約5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットする。次いで、窒素雰囲気下、-80℃から昇温速度10℃/分間にて150℃まで加熱する(昇温1回目)。その後、150℃から降温速度10℃/分間にて-80℃まで冷却させ、更に昇温速度10℃/分間にて150℃まで加熱(昇温2回目)する。この昇温1回目及び昇温2回目のそれぞれにおいて、示差走査熱量計(「Q-200」、TAインスツルメント社製)を用いてDSC曲線を計測する。
【0121】
得られるDSC曲線から、Q-200システム中の解析プログラムを用いて、1回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温1回目におけるガラス転移温度を求めることができる。また同様に、2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温2回目におけるガラス転移温度を求めることができる。
【0122】
また、得られるDSC曲線から、Q-200システム中の解析プログラムを用いて、1回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温1回目における吸熱ピークトップ温度を融点として求めることができる。また同様に、2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温2回目における吸熱ピークトップ温度を融点として求めることができる。
【0123】
本明細書では、対象試料として前記樹脂粒子を用いた際の、1回目昇温時におけるガラス転移温度を〔Tg1st〕、2回目昇温時におけるガラス転移温度を〔Tg2nd〕とする。
また、本明細書では、前記非晶性ポリエステル樹脂A、前記非晶性ポリエステル樹脂B、及び前記結晶性ポリエステル樹脂C、更には前記離型剤等のその他構成成分のガラス転移温度及び融点については、特に断りが無い場合、2回目昇温時における吸熱ピークトップ温度を各対象試料の融点とし、2回目昇温時におけるTgを各対象試料のTgとする。
【0124】
--Tg1st(樹脂粒子)--
前記樹脂粒子の示差走査熱量測定(DSC)の昇温1回目におけるガラス転移温度〔Tg1st(樹脂粒子)〕としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、低温定着性の点から、20℃以上50℃以下が好ましく、35℃以上45℃以下がより好ましい。前記〔Tg1st(樹脂粒子)〕が、20℃以上であると、耐熱保存性の低下、現像機内でのブロッキング、及び感光体へのフィルミングを抑制することができる。前記〔Tg1st(樹脂粒子)〕が、50℃以下であると、樹脂粒子の低温定着性が低下することを抑制することができる。
【0125】
従来、トナーにおいては、ガラス転移温度(Tg)が50℃以下程度になると、夏場や熱帯地方を想定したトナーの輸送時、及び保管環境での温度変化によりトナーの凝集が発生しやすくなる。その結果、トナーボトル中での固化、及び現像機内でのトナーの固着が発生する。また、トナーボトル内でのトナー詰りによる補給不良、及び現像機内でのトナー固着による画像異常が発生しやすくなる。
【0126】
前記樹脂粒子を含むトナーは、従来のトナーよりガラス転移温度(Tg)が低くても、トナー中の低Tg成分である前記非晶性ポリエステル樹脂Aが非線状である場合には、該トナーは、耐熱保存性を保持することができる。特に、前記非晶性ポリエステル樹脂Aが凝集力の高いウレタン結合又はウレア結合を有する場合には、耐熱保存性を保持する効果がより顕著になる。
【0127】
--〔Tg2nd(樹脂粒子)〕--
前記樹脂粒子の示差走査熱量測定(DSC)の昇温2回目におけるガラス転移温度〔Tg2nd(樹脂粒子)〕としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0℃以上30℃以下であることが好ましく、0℃以上15℃以下であることがより好ましい。前記〔Tg2nd(樹脂粒子)〕が0℃以上であると、定着画像(印刷物)の耐ブロッキング性が低下することを抑制することができ、30℃以下であると、低温定着性や光沢度が低下することを抑制することができる。
前記〔Tg2nd(樹脂粒子)〕は、例えば、結晶性樹脂のTg、及び配合量によりその数値を調整できる。
【0128】
--差[〔Tg1st(樹脂粒子)〕-〔Tg2nd(樹脂粒子)〕]--
前記樹脂粒子の示差走査熱量測定(DSC)の昇温1回目のガラス転移温度〔Tg1st(樹脂粒子)〕と昇温2回目のガラス転移温度〔Tg2nd(樹脂粒子)〕との差[〔Tg1st(樹脂粒子)〕-〔Tg2nd(樹脂粒子)〕]としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10℃以上であることが好ましい。前記差[〔Tg1st(樹脂粒子)〕-〔Tg2nd(樹脂粒子)〕]の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃以下が好ましい。
【0129】
前記差[〔Tg1st(樹脂粒子)〕-〔Tg2nd(樹脂粒子)〕]が10℃以上であると、より低温定着性に優れる点で有利である。また、前記差[〔Tg1st(樹脂粒子)〕-〔Tg2nd(樹脂粒子)〕]が10℃以上であることは、加熱前(昇温1回目の前)には非相溶状態で存在していた結晶性ポリエステル樹脂Cと、前記非晶性ポリエステル樹脂A及び前記非晶性ポリエステル樹脂Bとが、加熱後(昇温1回目の後)には相溶状態になることを意味する。なお、加熱後の相溶状態は、完全な相溶状態である必要はない。
【0130】
--Tg2nd(THF不溶分)--
前記樹脂粒子のテトラヒドロフラン(THF)不溶分の示差走査熱量測定(DSC)の昇温2回目におけるガラス転移温度〔Tg2nd(THF不溶分)〕としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、-40℃以上30℃以下であることが好ましく、0℃以上20℃以下であることがより好ましい。前記〔Tg2nd(THF不溶分)〕が-40℃以上であると、定着画像(印刷物)の耐ブロッキング性が低下することを抑制することができるという利点が得られ、30℃以下であると、低温定着性や光沢度が低下することを抑制することができるという利点が得られる。
【0131】
前記〔Tg2nd(THF不溶分)〕は、例えば、非晶性ポリエステル樹脂Aの多価アルコール及び多価カルボン酸の炭素数を変えることによりその数値を調整することができる。
【0132】
--融点(Tm)--
前記樹脂粒子の融点(Tm)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上80℃以下が好ましい。
【0133】
-貯蔵弾性率-
--貯蔵弾性率G’の測定方法--
各種条件における貯蔵弾性率(G’)は、例えば、動的粘弾性測定装置(ARES、TAインスツルメント社製)を用いて測定できる。測定の際の周波数は、1Hzである。
具体的には、測定試料を、直径8mm、厚み1mm~2mmのペレットに成型し、直径8mmのパラレルプレートに固定した後、40℃で安定させ、周波数1Hz(6.28rad/s)、歪み量0.1%(歪み量制御モード)にて200℃まで昇温速度2.0℃/分間で昇温させて、貯蔵弾性率を測定する。
本明細書において、40℃の貯蔵弾性率を〔G’(40)〕、100℃の貯蔵弾性率を〔G’(100)〕と表すことがある。
【0134】
--〔G’(100)(THF不溶分)〕、及び[〔G’(40)(THF不溶分)〕/〔G’(100)(THF不溶分)〕]--
前記樹脂粒子のテトラヒドロフラン(THF)不溶分の100℃における貯蔵弾性率〔G’(100)(THF不溶分)〕としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.0×105Pa~1.0×107Paが好ましく、5.0×105Pa~5.0×106Paがより好ましい。前記貯蔵弾性率〔G’(100)(THF不溶分)〕が、前記より好ましい範囲内であると、低温定着性がより優れる点で有利である。
【0135】
前記樹脂粒子のTHF不溶分の、40℃における貯蔵弾性率〔G’(40)(THF不溶分)〕と100℃における貯蔵弾性率〔G’(100)(THF不溶分)〕との比[〔G’(40)(THF不溶分)〕/〔G’(100)(THF不溶分)〕]としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3.5×10以下が好ましい。前記比[〔G’(40)(THF不溶分)〕/〔G’(100)(THF不溶分)〕]が、3.5×10以下であると、低温定着性が低下することを抑制することができる。
【0136】
また、前記樹脂粒子は、前記〔G’(100)(THF不溶分)〕が1.0×105Pa~1.0×107Paであり、かつ前記比[〔G’(40)(THF不溶分)〕/〔G’(100)(THF不溶分)〕]が3.5×10以下であると、前記結晶性樹脂と、高Tg成分である前記非晶性ポリエステル樹脂との相溶化を促進させ、熱流動評価装置(フローテスタ)による1/2流出温度が下がり、画像光沢が向上する点で有利である。
【0137】
前記〔G’(100)(THF不溶分)〕及び前記〔G’(40)(THF不溶分)〕は、例えば、樹脂組成(2官能以上の多価アルコール及び2官能以上の酸成分)によりその数値を調整できる。
具体的には、例えば、以下のようにすることで調整できる。前記貯蔵弾性率〔G’〕を上げるのであれば、樹脂におけるエステル結合の距離を短くしたり、芳香環を持つ樹脂組成にしたりすることで調整できる。前記貯蔵弾性率〔G’〕を下げるのであれば、線状のポリエステル樹脂を使用したり、ポリエステル樹脂の構成成分として、側鎖にアルキル基を持つ多価アルコールを使用したりすることで調整できる。
【0138】
--THF不溶分--
前記樹脂粒子のTHF不溶分は、以下のようにして得ることができる。
テトラヒドロフラン(THF)100部に対して樹脂粒子1部を添加し6時間還流した後に、遠心分離機により不溶成分を沈降させて、不溶成分と上澄み液とを分離することにより得られる。
【0139】
-分子量の測定-
前記樹脂粒子の各構成成分の分子量は、例えば、以下の分析条件で測定することができる。
[分析条件]
・ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定装置:GPC-8220GPC(東ソー株式会社製)
カラム:TSKgel(登録商標) SuperHZM-H 15cm 3連(東ソー株式会社製)
・温度:40℃
・検出器:RI(屈折率)検出器
・溶媒:クロロホルム
・流速:0.35mL/分間
・試料:0.1質量%の試料を100μL注入
・試料の前処理:前記樹脂粒子をクロロホルムに0.1質量%で溶解した後に、25℃の条件下、30分間攪拌しながら可溶分が溶解した溶解液を得る。これを目開き0.2μmのメンブランフィルターにて濾過し、その濾液をクロロホルム試料溶液として用いる。 前記クロロホルム試料溶液を100μL注入して測定する。
【0140】
試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作製された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、Showdex(登録商標)STANDARD(昭和電工株式会社製)のStd.No S-6550、S-1700、S-740、S-321、S-129、S-10、S-2.9、及びS-0.6を用いる。
【0141】
前記ポリエステル分散体の製造方法としては、特に制限はなく、後述する本発明のポリエステル分散体の製造方法により製造されることが好ましい。
【0142】
(ポリエステル分散体の製造方法)
本発明のポリエステル分散体の製造方法は、a)スルホ基を有する非晶性ポリエステル樹脂有機溶媒に溶解乃至分散させた油相を作製する工程(以下、「油相作製工程」と称することがある)と、b)前記油相に水系媒体を添加して、油中水型分散液から水中油型分散液に転相させる工程(以下、「転相乳化工程」と称することがある)と、を含み、更に必要に応じて、水相調製工程、脱溶剤工程等のその他の工程を含む。
【0143】
<油相作製工程>
前記油相作製工程は、少なくともスルホ基を有する非晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解乃至分散させた油相を作製する工程である。
前記スルホ基を有する非晶性ポリエステル樹脂は、前記(ポリエステル分散体、樹脂粒子、トナー用樹脂、及び塗料用樹脂粒子)の<非晶性ポリエステル樹脂A>の項目に記載の通りであり、前記油相は、前記非晶性ポリエステル樹脂Aを含む。
【0144】
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、除去が容易である点で、沸点が150℃未満の有機溶媒が好ましい。
前記沸点が150℃未満の有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトンが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記有機溶媒としては、酢酸エチル、トルエン、キシレン、ベンゼン、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、又は四塩化炭素が好ましく、酢酸エチルがより好ましい。
【0145】
前記有機溶媒の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂粒子の原料100質量部に対し、40質量部~300質量部が好ましく、60質量部~140質量部がより好ましく、80質量部~120質量部が更に好ましい。
【0146】
前記油相の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記有機溶媒中に、攪拌しながら、前記油相の材料を徐々に添加し、溶解又は分散させる方法などが挙げられる。
前記分散に際しては、公知のものが使用でき、例えば、ビーズミルやディスクミル等の分散機を用いることができる。
【0147】
<水相(水系媒体)作製工程>
前記水相調製工程は、水相(水系媒体)を調製する工程である。
前記水系媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、水と混和可能な溶媒、又はこれらの混合物が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水が好ましい。
【0148】
前記水と混和可能な溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、セロソルブ類、又は低級ケトン類が挙げられる。
前記アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、イソプロパノール、又はエチレングリコールが挙げられる。
前記低級ケトン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アセトン又はメチルエチルケトンが挙げられる。
【0149】
<転相乳化工程>
前記転相乳化工程は、前記油相に水系媒体を添加して、油中水型分散液から水中油型分散液に転相させる工程である。これにより、ポリエステル分散体(油滴)が得られる。
【0150】
前記水系媒体中において、前記非晶性ポリエステル樹脂Aを転相乳化する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、油相を塩基などで中和した後、それに水相を添加していき、油中水型分散液から水中油型分散液に転相させる転相乳化によってポリエステル分散体を得る方法などが挙げられる。
【0151】
前記油相を中和するための塩基としては、塩基性無機化合物、塩基性有機化合物のいずれを用いても良い。塩基性無機化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、アンモニアなどが挙げられる。塩基性有機化合物としては、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリエチルアミン、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、イソプロピルアミン、モノメタノールアミン、モルホリン、メトキシプロピルアミン、ピリジン、ビニルピリジン、イソホロンジアミンなどが挙げられる。
【0152】
中和時は通常の撹拌機や、分散装置を用いて均一に混合、分散させながら行う。分散装置としては、特に限定は無く、超音波分散機、ビーズミル、ボールミル、ロールミル、ホモミキサー、ウルトラミキサー、ディスパーミキサー、貫通型高圧分散装置、衝突型高圧分散装置、多孔型高圧分散装置、超高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザーなどが挙げられる。通常の撹拌機と分散装置は併用しても良い。
【0153】
前記非晶性ポリエステル樹脂Aを含有する油相を転相乳化させる際の、前記水系媒体の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記非晶性ポリエステル樹脂A100質量部に対して、50質量部以上2,000質量部以下が好ましく、100質量部以上1,000質量部以下がより好ましい。前記水系媒体の使用量が、前記非晶性ポリエステル樹脂A100質量部に対して50質量部以上であると、前記樹脂粒子材料の分散状態が悪くなることを防止し、所定の粒子径のポリエステル分散体が得られないことを抑制することができる。また、前記水系媒体の使用量が、前記非晶性ポリエステル樹脂A100質量部に対して2,000質量部以下であると、生産コストが高くなることを抑えることができる。
【0154】
前記非晶性ポリエステル樹脂Aを含有する油相を転相乳化する際には、油滴等の分散体を安定化させ、所望の形状にすると共に粒度分布をシャープにする観点から、分散剤を用いても良い。
前記分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、又は高分子系保護コロイドが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記分散剤としては、界面活性剤が好ましい。
【0155】
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、又は両性界面活性剤が挙げられる。
【0156】
前記陰イオン界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、又はリン酸エステルが挙げられる。これらの中でも、前記陰イオン界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有するものが好ましい。
【0157】
前記転相乳化は、攪拌翼を用いて行うことができる。
前記攪拌翼としては、特に制限はなく、溶液の粘度に応じて適宜選択することができ、例えば、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼、又は半月翼が挙げられる。
【0158】
前記攪拌翼を用いた場合の、周速としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.4m/秒間~2.0m/秒間が好ましく、0.7m/秒間~1.5m/秒間がより好ましい。
【0159】
前記ポリエステル分散体(油滴)の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20nm~200nmが好ましく、20nm~100nmがより好ましい。
【0160】
<脱溶剤工程>
前記脱溶剤工程は、前記転相乳化工程で得られたポリエステル分散体から前記有機溶媒を除去する工程である。
【0161】
前記ポリエステル分散体から前記有機溶媒を除去する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、反応系全体を徐々に昇温させて、前記微粒子分散液(油滴)中の有機溶媒を蒸発させる方法;前記微粒子分散液を乾燥雰囲気中に噴霧して、該微粒子分散液(油滴)中の有機溶媒を除去する方法;前記微粒子分散液を減圧し、有機溶媒を蒸発除去する方法などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0162】
前記微粒子分散液が噴霧される乾燥雰囲気としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体などが挙げられ、使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。
【0163】
前記脱溶剤工程は、装置を用いて行うことができ、例えば、スプレードライヤー、ベルトドライアー、又はロータリーキルンを用いることができ、短時間の処理で十分に目的とする品質を得ることができる。
【0164】
(樹脂粒子の製造方法)
本発明の樹脂粒子の製造方法は、a)少なくとも非晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解乃至分散させた油相を作製する工程(以下、「油相作製工程」と称することがある)と、b)前記油相に水系媒体を添加して、油中水型分散液から水中油型分散液に転相させる工程(以下、「転相乳化工程」と称することがある)と、c)前記水中油型分散液の粒子を凝集させて樹脂粒子を得る工程(以下、「凝集工程」と称することがある)と、を含み、更に必要に応じて、水相調製工程、脱溶剤工程、融着工程、洗浄工程、乾燥工程、分級工程、アニーリング工程等のその他の工程を含む。
【0165】
<油相作製工程>
前記油相作製工程は、少なくとも非晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解乃至分散させた油相を作製する工程である。
前記非晶性ポリエステル樹脂は、前記(ポリエステル分散体、樹脂粒子、トナー用樹脂、及び塗料用樹脂粒子)の<非晶性ポリエステル樹脂B>の項目に記載の通りであり、前記油相は前記非晶性ポリエステル樹脂Bを含むことが好ましい。
前記油相は、更に必要に応じて、前記結晶性樹脂、前記着色剤、前記離型剤などを含んでいてもよい。
【0166】
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、除去が容易である点で、沸点が150℃未満の有機溶媒が好ましい。
前記沸点が150℃未満の有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトンが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記有機溶媒としては、酢酸エチル、トルエン、キシレン、ベンゼン、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、又は四塩化炭素が好ましく、酢酸エチルがより好ましい。
【0167】
前記有機溶媒の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂粒子の原料100質量部に対し、40質量部~300質量部が好ましく、60質量部~140質量部がより好ましく、80質量部~120質量部が更に好ましい。
【0168】
前記油相の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記有機溶媒中に、攪拌しながら、前記油相の材料を徐々に添加し、溶解又は分散させる方法などが挙げられる。
前記分散に際しては、公知のものが使用でき、例えば、ビーズミルやディスクミル等の分散機を用いることができる。
【0169】
<水相(水系媒体)作製工程>
前記水相調製工程は、水相(水系媒体)を調製する工程である。
前記水系媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、水と混和可能な溶媒、又はこれらの混合物が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水が好ましい。
【0170】
前記水と混和可能な溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、セロソルブ類、又は低級ケトン類が挙げられる。
前記アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、イソプロパノール、又はエチレングリコールが挙げられる。
前記低級ケトン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アセトン又はメチルエチルケトンが挙げられる。
【0171】
<転相乳化工程>
前記転相乳化工程は、前記油相に水系媒体を添加して、油中水型分散液から水中油型分散液に転相させる工程である。これにより、微粒子分散液(油滴)が得られる。
【0172】
前記水系媒体中において、前記非晶性ポリエステル樹脂Bを含有する分散液を転相乳化する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、油相を塩基などで中和した後、それに水相を添加していき、油中水型分散液から水中油型分散液に転相させる転相乳化によって微粒子分散液を得る方法などが挙げられる。
【0173】
前記水系媒体中において、前記非晶性ポリエステル樹脂Aを含有する分散液を転相乳化する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、油相を塩基などで中和した後、それに水相を添加していき、油中水型分散液から水中油型分散液に転相させる転相乳化によって微粒子分散液を得る方法などが挙げられる。
【0174】
前記油相を中和するための塩基としては、塩基性無機化合物、塩基性有機化合物のいずれを用いても良い。塩基性無機化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、アンモニアなどが挙げられる。塩基性有機化合物としては、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリエチルアミン、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、イソプロピルアミン、モノメタノールアミン、モルホリン、メトキシプロピルアミン、ピリジン、ビニルピリジン、イソホロンジアミンなどが挙げられる。
【0175】
中和時は通常の撹拌機や、分散装置を用いて均一に混合、分散させながら行う。分散装置としては、特に限定は無く、超音波分散機、ビーズミル、ボールミル、ロールミル、ホモミキサー、ウルトラミキサー、ディスパーミキサー、貫通型高圧分散装置、衝突型高圧分散装置、多孔型高圧分散装置、超高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザーなどが挙げられる。通常の撹拌機と分散装置は併用しても良い。
【0176】
前記樹脂粒子材料を含有する油相を転相乳化させる際の、前記水系媒体の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記樹脂粒子材料100質量部に対して、50質量部以上2,000質量部以下が好ましく、100質量部以上1,000質量部以下がより好ましい。前記水系媒体の使用量が、前記樹脂粒子材料100質量部に対して50質量部以上であると、前記樹脂粒子材料の分散状態が悪くなることを防止し、所定の粒子径の樹脂粒子が得られないことを抑制することができる。また、前記水系媒体の使用量が、前記樹脂粒子材料100質量部に対して2,000質量部以下であると、生産コストが高くなることを抑えることができる。
【0177】
前記樹脂粒子材料を含有する油相を転相乳化する際には、油滴等の分散体を安定化させ、所望の形状にすると共に粒度分布をシャープにする観点から、分散剤を用いることが好ましい。
前記分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、又は高分子系保護コロイドが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記分散剤としては、界面活性剤が好ましい。
【0178】
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、又は両性界面活性剤が挙げられる。
【0179】
前記陰イオン界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、又はリン酸エステルが挙げられる。これらの中でも、前記陰イオン界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有するものが好ましい。
【0180】
前記転相乳化は、攪拌翼を用いて行うことができる。
前記攪拌翼としては、特に制限はなく、溶液の粘度に応じて適宜選択することができ、例えば、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼、又は半月翼が挙げられる。
【0181】
前記攪拌翼を用いた場合の、周速としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.4m/秒間~2.0m/秒間が好ましく、0.7m/秒間~1.5m/秒間がより好ましい。
【0182】
前記微粒子分散液中の分散体(油滴)の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50nm~2,000nmが好ましく、50nm~500nmがより好ましい。
【0183】
<脱溶剤工程>
前記脱溶剤工程は、前記転相乳化工程で得られた微粒子分散液から前記有機溶媒を除去し、母体粒子を得る工程である。
【0184】
前記微粒子分散液から前記有機溶媒を除去する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、反応系全体を徐々に昇温させて、前記微粒子分散液(油滴)中の有機溶媒を蒸発させる方法;前記微粒子分散液を乾燥雰囲気中に噴霧して、該微粒子分散液(油滴)中の有機溶媒を除去する方法;前記微粒子分散液を減圧し、有機溶媒を蒸発除去する方法などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0185】
前記微粒子分散液が噴霧される乾燥雰囲気としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体などが挙げられ、使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。
【0186】
前記脱溶剤工程は、装置を用いて行うことができ、例えば、スプレードライヤー、ベルトドライアー、又はロータリーキルンを用いることができ、短時間の処理で十分に目的とする品質を得ることができる。
【0187】
<凝集工程>
前記凝集工程は、前記水中油型分散液の粒子を凝集させて凝集粒子を得る工程である。
前記油滴又は前記母体粒子を凝集させる方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、凝集剤を添加する方法、pH調整を行う方法などが挙げられる。
【0188】
前記凝集剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、フッ化ナトリウム、酢酸ナトリウム、アセト酢酸ナトリウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、フッ化リチウム、酢酸リチウム、アセト酢酸リチウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、フッ化カリウム、アセト酢酸カリウム、臭化マグネシウム、塩化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酢酸マグネシウム、アセト酢酸マグネシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、臭化バリウム、塩化バリウム、ヨウ化バリウム、フッ化バリウム、酢酸バリウム、アセト酢酸バリウム、臭化ストロンチウム、塩化ストロンチウム、ヨウ化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、アセト酢酸ストロンチウム、臭化亜鉛、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、フッ化亜鉛、酢酸亜鉛、アセト酢酸亜鉛、臭化銅、塩化銅、ヨウ化銅、フッ化銅、酢酸銅、アセト酢酸銅、臭化鉄、塩化鉄、ヨウ化鉄、フッ化鉄、酢酸鉄、又はアセト酢酸鉄が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記凝集剤としては、二価の金属塩が好ましく、三価の金属塩がより好ましい。二価以上の金属塩を用いることで、前記非晶性ポリエステル樹脂Aや前記非晶性ポリエステル樹脂Bに含まれるカルボキシル基と金属架橋による三次元構造を形成することができ、これにより前記樹脂粒子の強度が上がり、耐フィルミング性が向上する。
【0189】
前記凝集剤を添加する場合、そのまま添加してもよいが、該凝集剤の水溶液にしたほうが、局所的な高濃度化を避けることができるため好ましい。また、凝集塩は、樹脂粒子の粒径を見ながら、徐々に添加することが好ましい。
【0190】
前記凝集工程を行う反応系の温度(凝集時の分散液の温度)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記非晶性ポリエステル樹脂Bのガラス転移温度(Tg)付近であることが好ましい。前記温度が低すぎると凝集があまり進まないため効率が悪くなることがあり、前記温度が高すぎると凝集速度が速くなり、粗大粒子が発生するなど粒径分布が悪化することがある。
【0191】
前記凝集工程は、前記凝集粒子が目的とする粒径に達した後、凝集を停止させる。
前記凝集を停止させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記凝集塩よりもイオン価数の低い塩やキレート剤を添加する方法;pHを調整する方法;凝集時の反応系(分散液)の温度を下げる方法;水系媒体を多量に添加して凝集時の反応系(分散液)濃度を薄める方法などが使用できる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0192】
前記凝集粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3.0μm~6.0μmが好ましく、4.0μm~5.0μmがより好ましい。
【0193】
前記凝集工程においては、離型剤を添加してもよく、低温定着性のために前記結晶性樹脂を添加してもよい。
前記離型剤としては、前記(ポリエステル分散体、樹脂粒子、トナー用樹脂、及び塗料用樹脂粒子)の<<離型剤>>の項目で説明したものを使用することができる。
前記結晶性樹脂としては、前記(ポリエステル分散体、樹脂粒子、トナー用樹脂、及び塗料用樹脂粒子)の<<結晶性ポリエステルC>>の項目で説明したものを使用することができる。
前記凝集工程において前記離型剤又は前記結晶性樹脂を添加する場合、前記離型剤を水系媒体に分散させた分散液や、同様に前記結晶性ポリエステル樹脂Cの分散液を用意し、前記微粒子分散液(油滴)と混合した上で凝集させていくことで、均一に離型剤や結晶性樹脂が分散した凝集粒子を得ることができる。
【0194】
前記分散液中の前記離型剤の分散粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50nm以上600nm以下であることが好ましく、50nm以上300nm以下であることがより好ましい。
なお、本明細書において、前記分散液中の前記離型剤の分散粒径は、体積平均粒径である。
【0195】
前記分散液中の前記結晶性樹脂の分散粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50nm以上600nm以下であることが好ましく、50nm以上300nm以下であることがより好ましい。
なお、本明細書において、前記分散液中の前記結晶性樹脂の分散粒径は、体積平均粒径である。
【0196】
前記離型剤、及び結晶性樹脂の分散粒径は、例えば、ナノトラック粒度分布測定装置(UPA-EX150、日機装株式会社、動的光散乱法/レーザードップラー法)を用いて測定することができる。
具体的な測定方法としては、前記離型剤、もしくは結晶性樹脂が分散された分散液を測定濃度範囲に調整して測定する。その際、予め分散液の分散溶媒のみでバックグラウンド測定をしておく。この測定法により、数十nm~数μmまでを測定することが可能である。
【0197】
(シェル層形成工程)
また、前記樹脂粒子にシェル層を形成させるために、前記凝集工程において、前記ポリエステル分散体を添加する。前記樹脂粒子にシェル層を形成させることで、フィルミング性を悪化させる前記結晶性樹脂や前記離型剤を内包でき、耐フィルミング性が向上する。
【0198】
前記シェル層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前述の方法で凝集粒子を作製した後、所望の粒径に達した凝集粒子に、前記ポリエステル分散体を添加する方法などが挙げられる。
なお、前記樹脂粒子の製造方法が、前記脱溶剤工程を含む場合は、前記脱溶剤工程で得られた母体粒子の凝集粒子を得た後、前記ポリエステル分散体を添加してもよい。
【0199】
<融着工程>
前記融着工程は、前記凝集粒子を融着させて凹凸を減らし、球形化した樹脂粒子を得る工程である。また、前記凝集工程で前記樹脂粒子にシェル層を形成するため樹脂を添加した場合は、前記融着工程により前記凝集粒子の表面にシェル層を形成することができる。
【0200】
前記凝集粒子を融着させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記凝集粒子の分散液を攪拌しながら加熱する方法などが挙げられる。
【0201】
前記加熱の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記非晶性ポリエステル樹脂BのTg以上Tg+20℃以下が好ましく、Tg以上Tg+10℃以下がより好ましい。前記加熱の温度が、前記非晶性ポリエステル樹脂BのTg+20℃以下であると、前記非晶性ポリエステル樹脂と前記結晶性樹脂とが適度に相溶し、耐熱保存性が向上する。
【0202】
前記樹脂粒子の平均円形度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂粒子の平均円形度が高いほど、前記樹脂粒子をトナーとして用いる場合に、現像ニップにおいてスムーズに回転するため、より多くの樹脂粒子が静電潜像担持体に移行できる点で、0.95以上が好ましく、0.96以上がより好ましい。
【0203】
-平均円形度の測定-
本実施形態において、平均粒子径及び平均円形度は、例えば、フロー式粒子像分析装置(FPIA-3000、シスメックス株式会社製)を用いて測定することができる。
具体的な測定方法としては、容器中の予め不純固形物を除去した水100mL~150mL中に、分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1mL~0.5mL加え、更に測定試料を0.1g~0.5g程度加える。試料を分散した懸濁液は、超音波分散器で約1分間~3分間の分散処理を行い、分散液濃度を3,000個/μL~1万個/μLとして前記装置により平均粒子径、平均円形度、及び円形度の標準偏差(SD)を測定する。
ただし、粒子径は円相当径とし、平均粒子径は円相当径(個数基準)により求め、前記フロー式粒子像分析装置の解析条件は以下とする。
[解析条件]
粒子径限定:0.5μm≦円相当径(個数基準)≦200.0μm
粒子形状限定:0.93<円形度≦1.00
また、本実施形態において平均円形度の定義は次の通りである。
(平均円形度)=(粒子の投影面積と等しい円の周囲長)/(粒子の投影像の周囲長)
【0204】
<洗浄工程>
前記洗浄工程は、前記凝集工程又は前記融着工程で得られた樹脂粒子を洗浄する工程である。
上述の方法で得られた樹脂粒子の分散液には、該樹脂粒子の他に、凝集剤等の副材料が含まれていることがあるため、前記樹脂粒子の分散液から前記樹脂粒子のみを取り出すために洗浄を行うことが好ましい。
【0205】
前記樹脂粒子の洗浄方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、遠心分離法、減圧濾過法、又はフィルタープレス法が挙げられる。
いずれの洗浄方法によっても前記樹脂粒子のケーキ体が得られるが、一度の操作で十分に洗浄できない場合は、得られたケーキ体を再度水系溶媒に分散させてスラリーにして前記洗浄方法の少なくともいずれかで、前記樹脂粒子を取り出す工程を繰り返してもよい。
前記減圧濾過法又は前記フィルタープレス法によって洗浄を行う場合は、水系溶媒を前記ケーキ体に貫通させて、前記樹脂粒子が抱き込んだ副材料を洗い流す方法をとってもよい。
【0206】
前記洗浄工程に用いられる前記水系溶媒としは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、又は水とアルコールとの混合溶媒が挙げられる。
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、又はエタノールが挙げられる。
これらの中でも、前記水系溶媒は、コストや排水処理などによる環境負荷の点から、水が好ましい。
【0207】
<乾燥工程>
前記乾燥工程は、前記洗浄工程で得られた樹脂粒子を洗浄する工程である。
前記洗浄工程で洗浄された樹脂粒子は、前記水系媒体を多く抱き込んでいるため、前記乾燥工程で乾燥を行い、前記水系媒体を除去することで、前記樹脂粒子のみを得ることができる。
【0208】
乾燥の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動槽乾燥機、回転式乾燥機、又は攪拌式乾燥機等の乾燥機を使用する方法が挙げられる。
【0209】
乾燥された樹脂粒子の最終的な水分量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水分が1質量%未満であることが好ましい。
【0210】
前記乾燥工程で乾燥された樹脂粒子は、軟凝集をしており、使用に際して不都合が生じる場合には、解砕を行い、軟凝集をほぐしてもよい。
前記解砕を行う方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、コーヒーミル、オースターブレンダー、又はフードプロセッサー等の装置を用いる方法が挙げられる。
【0211】
<分級工程>
分級工程は、前記洗浄工程又は前記乾燥工程で得られた樹脂粒子を分級する工程である。
前記分級の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことによる方法;乾燥後に公知の分級操作を行う方法などが挙げられる。
【0212】
<アニーリング工程>
前記アニーリング工程は、結晶性樹脂を添加した場合に、前記乾燥工程の後に行われる工程であり、結晶性樹脂と、非晶性ポリエステル樹脂とを相分離させる工程である。
【0213】
前記アニーリング処理を行う方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記結晶性樹脂のガラス転移温度(Tg)付近の温度で10時間以上保管する方法などが挙げられる。
【0214】
前記融着工程において、使用している樹脂のガラス転移温度(Tg)を超える温度付近で加熱した場合、前記結晶性樹脂と前記非晶性ポリエステル樹脂とが相溶状態となり、耐熱保存性と低温定着性の両立ができないことがあるが、前記アニーリング処理を行うと、前記結晶性樹脂と前記非晶性樹脂との相分離が進み、相溶状態ではなくなる点で有利である。
【0215】
(トナー)
本発明のトナーは、本発明のトナー用樹脂粒子を含有し、更に外添剤を含有することが好ましく、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0216】
<トナー用樹脂粒子>
前記トナー用樹脂粒子は、前記(樹脂粒子、トナー用樹脂、及び塗料用樹脂粒子)の項目に記載の通りであり、その詳細は省略する。
前記トナーにおいて、前記トナー用樹脂粒子は、トナー母体粒子となる。
【0217】
前記トナーにおける前記トナー用樹脂粒子の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記トナーは、前記トナー用樹脂粒子そのものであってもよい。
【0218】
<外添剤>
前記外添剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機微粒子、酸化物微粒子、脂肪酸金属塩、又はこれらが疎水化処理されたものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0219】
前記無機微粒子の一次粒子の平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100nm以下が好ましく、1nm以上100nm以下がより好ましく、3nm以上70nm以下が更に好ましく、5nm以上70nm以下が特に好ましい。前記無機微粒子の一次粒子の平均粒径が1nm以上であると、前記無機微粒子が前記トナー中に埋没し、その機能が有効に発揮されないことを防止でき、また100nm以下であると、感光体表面を不均一に傷つけることを抑制することができる。
【0220】
また、前記無機微粒子は、一次粒子の平均粒径が20nm以下の無機微粒子を少なくとも1種類以上含み、かつ一次粒子の平均粒径が30nm以上の無機微粒子を少なくとも1種類含むことが好ましい。
【0221】
前記無機微粒子のBET法による比表面積としは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20m2/g以上500m2/g以下であることが好ましい。
【0222】
前記無機微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、又は窒化ケイ素が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、シリカ又は二酸化チタンが好ましい。
【0223】
前記酸化物微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、チタニア、アルミナ、酸化錫、又は酸化アンチモンなどが挙げられる。
【0224】
前記脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、又はステアリン酸アルミニウムが挙げられる。
【0225】
これらの中でも、前記外添剤としては、疎水化処理された、シリカ、チタニア、酸化チタン、又はアルミナ微粒子が好ましい。
【0226】
前記シリカの微粒子としては、例えば、R972、R974、RX200、RY200、R202、R805、又はR812(いずれも、日本アエロジル株式会社製)が挙げられる。
【0227】
前記チタニアの微粒子としては、例えば、P-25(日本アエロジル株式会社製)、STT-30、STT-65C-S(いずれも、チタン工業株式会社製)、TAF-140(富士チタン工業株式会社製)、MT-150W、MT-500B、MT-600B、又はMT-150A(いずれも、テイカ株式会社製)が挙げられる。
【0228】
前記疎水化処理された酸化チタン微粒子としては、例えば、T-805(日本アエロジル株式会社製)、STT-30A、STT-65S-S(いずれも、チタン工業株式会社製)、TAF-500T、TAF-1500T(いずれも、富士チタン工業株式会社製)、MT-100S、MT-100T(いずれも、テイカ株式会社製)、又はIT-S(石原産業株式会社製)が挙げられる。
【0229】
前記疎水化処理された酸化物微粒子、疎水化処理されたシリカ微粒子、疎水化処理されたチタニア微粒子、又は疎水化処理されたアルミナ微粒子としては、例えば、親水性の微粒子をメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤で処理して得ることができる。また、シリコーンオイルを必要ならば熱を加えて無機微粒子に処理した、シリコーンオイル処理酸化物微粒子、無機微粒子も好適である。また、前記外添剤は、前記(樹脂粒子、トナー用樹脂、及び塗料用樹脂粒子)の<<流動性向上剤>>により表面処理行うこともできる。
【0230】
前記シリコーンオイルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、又はα-メチルスチレン変性シリコーンオイルが挙げられる。
【0231】
前記外添剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下が好ましく、0.3質量部以上3質量部以下がより好ましい。
【0232】
前記トナーの製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができるが、後述する本発明のトナーの製造方法により製造されることが好ましい。
【0233】
(トナーの製造方法)
本発明のトナーの製造方法は、本発明のトナー用樹脂粒子と外添剤とを混合する混合工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0234】
前記トナー用樹脂粒子は、前記(ポリエステル分散体、樹脂粒子、トナー用樹脂、及び塗料用樹脂粒子)の項目に記載の通りであり、また、前記外添剤は前記(トナー)の<外添剤>の項目に記載の通りであり、その詳細は省略する。
【0235】
<混合工程>
前記混合工程は、前記トナー母体粒子としてのトナー用樹脂粒子と、前記外添剤とを混合する工程である。この際、機械的衝撃力を印加することが、前記トナー母体粒子の表面から前記外添剤の粒子が脱離するのを抑制することができる点で好ましい。
【0236】
前記機械的衝撃力を印加する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高速で回転する羽根を用いて、前記トナー用樹脂粒子と前記外添剤との混合物に衝撃力を印加する方法;前記トナー用樹脂粒子と前記外添剤との混合物を高速気流中に投入し、加速させて粒子同士又は粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などが挙げられる。
【0237】
前記機械的衝撃力を印加する方法に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オングミル(ホソカワミクロン株式会社製)、I式ミル(日本ニューマチック工業株式会社製)を改造して粉砕エアー圧力を下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(株式会社奈良機械製作所製)、クリプトロンシステム(川崎重工業株式会社製)、自動乳鉢などが挙げられる。
【0238】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、必要に応じて適宜選択することができ、例えば、抑泡剤(消泡剤)、pH調整剤、防腐防黴剤、キレート試薬、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、又は光安定化剤が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0239】
前記インクにおける前記その他の成分の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0240】
(現像剤)
本発明の現像剤は、少なくとも本発明のトナーを含有し、更に必要に応じてキャリア等の適宜選択されるその他の成分を含有する。
本発明の現像剤に含有される前記トナーは、本発明のトナー用樹脂粒子を含有するため、前記現像剤は、環境対応性が高く、かつカーボンニュートラル性が高く、耐熱保存性に優れるものである。このため、前記現像剤は、転写性、帯電性等に優れ、高画質な画像を安定に形成することができる。
【0241】
なお、前記現像剤は、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命が向上することから、二成分現像剤が好ましい。
【0242】
前記現像剤を一成分現像剤として用いる場合、前記トナーの収支が行われても、該トナーの粒子径の変動が少なく、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するブレード等の部材へのトナーの融着が少なく、現像装置における長期の攪拌においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
【0243】
前記現像剤を二成分現像剤として用いる場合、長期にわたるトナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像装置における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
【0244】
<キャリア>
前記キャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、芯材を被覆する樹脂層を有するものが好ましい。
【0245】
<<芯材>>
前記芯材の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、50emu/g~90emu/gのマンガン-ストロンチウム系材料、又は50emu/g~90emu/gのマンガン-マグネシウム系材料が挙げられる。また、画像濃度を確保するためには、100emu/g以上の鉄粉、75emu/g~120emu/gのマグネタイト等の高磁化材料を用いることが好ましい。また、穂立ち状態となっている現像剤の感光体に対する衝撃を緩和でき、高画質化に有利であることから、30emu/g~80emu/gの銅-亜鉛系等の低磁化材料を用いることが好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0246】
前記芯材の体積平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm以上150μm以下が好ましく、40μm以上100μm以下がより好ましい。前記芯材の体積平均粒子径が10μm以上であると、キャリア中に微粉が多くなることを防ぎ、一粒子当たりの磁化が低下してキャリアの飛散が生じることを抑制することができる。また、前記芯材の体積平均粒子径が150μm以下であると、比表面積が低下することを防ぎ、トナーの飛散が生じることを抑制することができ、ベタ部分の多いフルカラーでは、特に、ベタ部の再現が悪くなることを抑制することができる。
【0247】
前記トナーを二成分系現像剤に用いる場合には、前記キャリアと混合して用いればよい。前記二成分現像剤中の前記キャリアの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記二成分現像剤100質量部に対して、90質量部以上98質量部以下が好ましく、93質量部以上97質量部以下がより好ましい。
【0248】
前記現像剤は、磁性一成分現像方法、非磁性一成分現像方法、又は二成分現像方法の公知の各種電子写真法による画像形成に好適に用いることができる。
【0249】
(画像形成装置及び画像形成方法)
本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を現像して可視像を形成するトナーを備える現像手段と、を有し、更に必要に応じて、その他の手段を有する。前記現像手段における前記トナーは、本発明のトナーである。
【0250】
本発明の画像形成方法は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、トナーを用いて前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を現像して可視像を形成する現像工程と、を含み、更に必要に応じて、その他の工程を有する。前記現像工程における前記トナーは、本発明のトナーである。
【0251】
前記画像形成方法は、前記画像形成装置により好適に行うことができ、前記静電潜像形成工程は、前記静電潜像形成手段により好適に行うことができ、前記現像工程は、前記現像手段により好適に行うことができ、前記その他の工程は、前記その他の手段により好適に行うことができる。
【0252】
<静電潜像担持体>
前記静電潜像担持体(以下、「感光体」と称することがある)の材質、構造、大きさとしては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。
前記静電潜像担持体の材質としては、例えば、無機感光体又は有機感光体が挙げられる。 前記無機感光体としては、例えば、アモルファスシリコン又はセレンが挙げられる。
前記有機感光体としては、例えば、ポリシラン又はフタロポリメチンが挙げられる。
前記静電潜像担持体としては、これらの中でも長寿命性の点でアモルファスシリコンが好ましい。
【0253】
前記アモルファスシリコン感光体としては、例えば、支持体を50℃~400℃に加熱し、該支持体上に真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD(化学気相成長、Chemical Vapor Deposition)法、光CVD法、又はプラズマCVD法等の成膜法によりa-Siからなる光導電層を有する感光体を用いることができる。前記成膜法は、これらの中でも、プラズマCVD法、即ち、原料ガスを直流又は高周波あるいはマイクロ波グロー放電によって分解し、支持体上にa-Si堆積膜を形成する方法が好適である。
【0254】
前記静電潜像担持体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、円筒状が好ましい。
前記円筒状の前記静電潜像担持体の外径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3mm以上100mm以下が好ましく、5mm以上50mm以下がより好ましく、10mm以上30mm以下が特に好ましい。
【0255】
<静電潜像形成手段及び静電潜像形成工程>
前記静電潜像形成手段は、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する手段である。
前記静電潜像形成工程は、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程である。
前記静電潜像形成工程は、前記静電潜像形成手段によって好適に行われる。
【0256】
前記静電潜像形成手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記静電潜像担持体の表面を帯電させる帯電部材と、前記静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光部材とを少なくとも有する手段などが挙げられる。
【0257】
前記静電潜像形成工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記静電潜像担持体の表面を帯電させた後、像様に露光することにより行うことができる。
【0258】
<<帯電部材及び帯電>>
前記帯電部材としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、接触帯電器、コロトロン、又はスコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器などが挙げられる。
前記接触帯電器は、導電性又は半導電性の、ローラ、ブラシ、フィルム、又はゴムブレード等を備えていることが好ましい。
【0259】
前記帯電は、例えば、前記帯電部材を用いて前記静電潜像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
【0260】
前記帯電部材の形状としては、ローラの他にも、磁気ブラシ、ファーブラシ等どのような形態をとってもよく、前記画像形成装置の仕様や形態にあわせて選択することができる。
前記帯電部材としては、前記接触式の帯電部材に限定されるものではないが、帯電部材から発生するオゾンが低減された画像形成装置が得られるので、接触式の帯電部材を用いることが好ましい。
【0261】
<<露光部材及び露光>>
前記露光部材としては、前記帯電部材により帯電された前記静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、又は液晶シャッタ光学系等の各種露光部材などが挙げられる。
【0262】
前記露光部材に用いられる光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、又はエレクトロルミネッセンス(EL)等の発光物全般などが挙げられる。
【0263】
また、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、又は色温度変換フィルター等の各種フィルターを用いることもできる。
【0264】
前記露光は、例えば、前記露光部材を用いて前記静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
なお、本発明においては、前記静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0265】
<現像手段及び現像工程>
前記現像手段は、前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を現像して可視像を形成するトナーを備える手段である。
前記現像工程は、トナーを用いて前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を現像して可視像を形成する工程である。
前記現像工程は、前記現像手段によって好適に行われる。
【0266】
前記現像手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよい。また、前記現像手段は、単色用現像手段であってもよいし、多色用現像手段であってもよい。これらの中でも、前記現像手段としては、前記トナーを摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、内部に固定された磁界発生手段を有し、かつ表面に前記トナーを含む現像剤を担持して回転可能な現像剤担持体を有する現像装置が好ましい。
【0267】
前記現像手段内では、例えば、前記トナーとキャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により該トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、前記静電潜像担持体近傍に配置されている。そのため、該マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記トナーの一部は、電気的な吸引力によって該静電潜像担持体の表面に移動する。その結果、前記静電潜像が該トナーにより現像されて該静電潜像担持体の表面に該トナーによる可視像が形成される。
【0268】
ここで、前記キャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記(現像剤)の項目に記載のものを用いることができる。
【0269】
<その他の手段及びその他の工程>
前記その他の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、転写手段、定着手段、クリーニング手段、除電手段、リサイクル手段、又は制御手段が挙げられる。
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、転写工程、定着工程、クリーニング工程、除電工程、リサイクル工程、又は制御工程が挙げられる。
【0270】
<<転写手段及び転写工程>>
前記転写手段は、前記現像手段で形成された可視像を記録媒体に転写する手段である。
前記転写工程は、前記現像工程で形成された可視像を記録媒体に転写する工程である。
前記転写工程は、前記転写手段により好適に行われる。
【0271】
前記転写手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。
【0272】
前記転写工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中間転写体を用い、該中間転写体上に前記可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する態様が好ましい。具体的には、前記転写工程は、例えば、前記可視像を、転写帯電器を用いて前記感光体を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。
【0273】
ここで、前記記録媒体上に二次転写される画像が複数色のトナーからなるカラー画像である場合に、前記転写手段により、前記中間転写体上に各色のトナーを順次重ね合わせて当該中間転写体上に画像を形成し、前記中間転写手段により、当該中間転写体上の画像を前記記録媒体上に一括で二次転写する構成とすることができる。
なお、前記中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルトなどが好適に挙げられる。
【0274】
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記感光体上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。
前記転写器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、又は粘着転写器が挙げられる。
【0275】
なお、前記記録媒体としては、代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
【0276】
<<定着手段及び定着工程>>
前記定着手段は、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる手段である。
前記定着工程は、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる工程である。
前記定着工程は、前記定着手段により好適に行われる。
【0277】
前記定着手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧部材が好ましい。
前記加熱加圧部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱ローラと加圧ローラとの組合せ、又は加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組合せなどが挙げられる。
なお、本発明においては、目的に応じて、前記定着手段と共に、あるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0278】
前記定着工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
【0279】
前記加熱加圧部材における加熱温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、80℃以上200℃以下が好ましい。
【0280】
前記定着工程における面圧としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10N/cm2以上80N/cm2以下であることが好ましい。
【0281】
<<クリーニング手段及びクリーニング工程>>
前記クリーニング手段は、前記感光体上に残留する前記トナーを除去する手段である。
前記クリーニング工程は、前記感光体上に残留する前記トナーを除去する工程である。
前記クリーニング工程は、前記クリーニング手段により好適に行われる。
【0282】
前記クリーニング手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、又はウエブクリーナが挙げられる。
【0283】
<<リサイクル手段及びリサイクル工程>>
前記リサイクル手段は、前記クリーニング手段により除去した前記トナーを前記現像手段に搬送し、リサイクルさせる手段である。
前記リサイクル工程は、前記クリーニング工程により除去した前記トナーを前記現像工程に搬送し、リサイクルする工程である。
前記リサイクル工程は、前記リサイクル手段により好適に行われる。
【0284】
前記リサイクル手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の搬送手段などが挙げられる。
【0285】
<<制御手段及び制御工程>>
前記制御手段は、前記各手段の動きを制御できる手段である。
前記制御工程は、前記各工程の動きを制御できる工程である。
前記制御工程は、前記制御手段により好適に行われる。
【0286】
前記制御手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、又はコンピュータ等の機器が挙げられる。
【0287】
次に、本発明の画像形成装置及び本発明の画像形成方法の一実施形態について、
図1~
図5を参照しながら説明する。
図1に示すカラー画像形成装置100Aは、前記静電潜像担持体としての感光体ドラム10(以下「感光体10」と称することがある)と、前記帯電手段としての帯電ローラ20と、前記露光手段としての露光装置30と、前記現像手段としての現像器40と、中間転写体50と、クリーニングブレードを有する前記クリーニング手段としてのクリーニング装置60と、前記除電手段としての除電ランプ70とを備える。
【0288】
中間転写体50は、無端ベルトであり、その内側に配置されこれを張架する3個のローラ51によって、矢印方向に移動可能に設計されている。3個のローラ51の一部は、中間転写体50へ所定の転写バイアス(一次転写バイアス)を印加可能な転写バイアスローラとしても機能する。中間転写体50の近傍には、クリーニングブレードを有するクリーニング装置90が配置されている。また、中間転写体50の近傍には、記録媒体としての転写紙95に現像像(トナー画像)を転写(二次転写)するための転写バイアスを印加可能な前記転写手段としての転写ローラ80が、中間転写体50に対向して配置されている。中間転写体50の周囲には、中間転写体50上のトナー画像に電荷を付与するためのコロナ帯電器58が、該中間転写体50の回転方向において、感光体10と中間転写体50との接触部と、中間転写体50と転写紙95との接触部との間に配置されている。
【0289】
現像器40は、前記現像剤担持体としての現像ベルト41と、現像ベルト41の周囲に併設したブラック現像ユニット45K、イエロー現像ユニット45Y、マゼンタ現像ユニット45M及びシアン現像ユニット45Cとから構成されている。なお、ブラック現像ユニット45Kは、現像剤収容部42Kと現像剤供給ローラ43Kと現像ローラ44Kとを備えている。イエロー現像ユニット45Yは、現像剤収容部42Yと現像剤供給ローラ43Yと現像ローラ44Yとを備えている。マゼンタ現像ユニット45Mは、現像剤収容部42Mと現像剤供給ローラ43Mと現像ローラ44Mとを備えている。シアン現像ユニット45Cは、現像剤収容部42Cと現像剤供給ローラ43Cと現像ローラ44Cとを備えている。また、現像ベルト41は、無端ベルトであり、複数のベルトローラに回転可能に張架され、一部が静電潜像担持体10と接触している。
【0290】
図1に示すカラー画像形成装置100Aにおいて、例えば、帯電ローラ20が感光体ドラム10を一様に帯電させる。露光装置30が感光体ドラム10上に像様に露光を行い、静電潜像を形成する。感光体ドラム10上に形成された静電潜像を、現像器40からトナーを供給して現像してトナー画像を形成する。該トナー画像が、ローラ51から印加された電圧により中間転写体50上に転写(一次転写)され、更に転写紙95上に転写(二次転写)される。その結果、転写紙95上には転写像が形成される。なお、感光体10上の残存トナーは、クリーニング装置60により除去され、感光体10における帯電は除電ランプ70により一旦、除去される。
【0291】
図2に、本発明の画像形成装置の他の一例を示す。画像形成装置100Bは、現像ベルト41を設けずに、感光体ドラム10の周囲に、ブラック現像ユニット45K、イエロー現像ユニット45Y、マゼンタ現像ユニット45M及びシアン現像ユニット45Cが直接対向して配置されている以外は、
図2に示す画像形成装置100Aと同様の構成を有する。
【0292】
図3に、本発明の画像形成装置の他の一例を示す。
図3に示す画像形成装置100Cは、複写装置本体150と、給紙テーブル200と、スキャナ300と、原稿自動搬送装置(ADF)400とを備えている。
複写装置本体150には、無端ベルト状の中間転写体50が中央部に設けられている。
そして、中間転写体50は、支持ローラ14、15及び16に張架され、
図3中、時計回りに回転可能とされている。支持ローラ15の近傍には、中間転写体50上の残留トナーを除去するための中間転写体クリーニング装置17が配置されている。支持ローラ14と支持ローラ15とにより張架された中間転写体50には、その搬送方向に沿って、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つの画像形成手段18が対向して並置されたタンデム型現像器120が配置されている。タンデム型現像器120の近傍には、前記露光部材である露光装置21が配置されている。中間転写体50における、タンデム型現像器120が配置された側とは反対側には、二次転写装置22が配置されている。二次転写装置22においては、無端ベルトである二次転写ベルト24が一対のローラ23に張架されており、二次転写ベルト24上を搬送される転写紙と中間転写体50とは互いに接触可能である。二次転写装置22の近傍には前記定着手段である定着装置25が配置されている。定着装置25は、無端ベルトである定着ベルト26と、これに押圧されて配置された加圧ローラ27とを備えている。
なお、タンデム画像形成装置においては、二次転写装置22及び定着装置25の近傍に、転写紙の両面に画像形成を行うために該転写紙を反転させるためのシート反転装置28が配置されている。
【0293】
次に、タンデム型現像器120を用いたフルカラー画像の形成(カラーコピー)について説明する。即ち、先ず、原稿自動搬送装置(ADF)400の原稿台130上に原稿をセットするか、あるいは原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じる。
【0294】
スタートスイッチを押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットした時は、原稿が搬送されてコンタクトガラス32上へと移動された後で、一方、コンタクトガラス32上に原稿をセットした時は直ちに、スキャナ300が駆動する。そして、第1走行体33及び第2走行体34が走行する。このとき、第1走行体33により、光源からの光が照射されると共に原稿面からの反射光を第2走行体34におけるミラーで反射し、結像レンズ35を通して読取りセンサ36で受光されてカラー原稿(カラー画像)が読み取られ、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの画像情報とされる。
【0295】
そして、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各画像情報は、タンデム型現像器120における各画像形成手段18(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段、及びシアン用画像形成手段)にそれぞれ伝達される。そして、各画像形成手段において、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各トナー画像が形成される。
【0296】
即ち、タンデム型現像器120における各画像形成手段18(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段及びシアン用画像形成手段)は、
図4に示すように、それぞれ、静電潜像担持体10(ブラック用静電潜像担持体10K、イエロー用静電潜像担持体10Y、マゼンタ用静電潜像担持体10M、及びシアン用静電潜像担持体10C)と、該静電潜像担持体10を一様に帯電させる前記帯電手段である帯電装置160と、各カラー画像情報に基づいて各カラー画像対応画像様に前記静電潜像担持体を露光(
図4中、L)し、該静電潜像担持体上に各カラー画像に対応する静電潜像を形成する露光装置と、該静電潜像を各カラートナー(ブラックトナー、イエロートナー、マゼンタトナー、及びシアントナー)を用いて現像して各カラートナーによるトナー画像を形成する前記現像手段である現像装置61と、該トナー画像を中間転写体50上に転写させるための転写帯電器62と、クリーニング装置63と、除電器64とを備えている。
【0297】
そして、各画像形成手段18は、それぞれのカラーの画像情報に基づいて各単色の画像(ブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像)を形成可能である。こうして形成された該ブラック画像、該イエロー画像、該マゼンタ画像及び該シアン画像は、支持ローラ14、15及び16により回転移動される中間転写体50上にそれぞれ、ブラック用静電潜像担持体10K上に形成されたブラック画像、イエロー用静電潜像担持体10Y上に形成されたイエロー画像、マゼンタ用静電潜像担持体10M上に形成されたマゼンタ画像及びシアン用静電潜像担持体10C上に形成されたシアン画像が、順次転写(一次転写)される。そして、中間転写体50上に前記ブラック画像、前記イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像が重ね合わされて合成カラー画像(カラー転写像)が形成される。
【0298】
一方、給紙テーブル200においては、給紙ローラ142の1つを選択的に回転させ、ペーパーバンク143に多段に備える給紙カセット144の1つからシート(記録紙)を繰り出す。シートは、分離ローラ145で1枚ずつ分離されて給紙路146に送り出され、搬送ローラ147で搬送されて複写機本体150内の給紙路148に導かれ、レジストローラ49に突き当てて止められる。あるいは、給紙ローラ142を回転して手差しトレイ54上のシート(記録紙)を繰り出し、分離ローラ52で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、同じくレジストローラ49に突き当てて止める。なお、レジストローラ49は、一般には接地されて使用されるが、シートの紙粉除去のためにバイアスが印加された状態で使用されてもよい。
【0299】
そして、中間転写体50上に合成された合成カラー画像(カラー転写像)にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転させ、中間転写体50と二次転写装置22との間にシート(記録紙)を送出させ、二次転写装置22により該合成カラー画像(カラー転写像)を該シート(記録紙)上に転写(二次転写)する。そうすることにより、該シート(記録紙)上にカラー画像が転写され形成される。なお、画像転写後の中間転写体50上の残留トナーは、中間転写体クリーニング装置17によりクリーニングされる。
【0300】
カラー画像が転写され形成された前記シート(記録紙)は、二次転写装置22により搬送されて、定着装置25へと送出され、定着装置25において、熱と圧力とにより前記合成カラー画像(カラー転写像)が該シート(記録紙)上に定着される。その後、該シート(記録紙)は、切換爪55で切り換えて排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。あるいは、シートは、切換爪55で切り換えてシート反転装置28により反転されて再び転写位置へと導かれ、裏面にも画像を記録した後、排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。
【0301】
(トナー収容ユニット)
本発明のトナー収容ユニットは、トナーを収容する機能を有するユニットに、トナーを収容したものである。
前記トナー収容ユニットに収容される前記トナーは、本発明のトナーである。したがって、本発明のトナー収容ユニットは、環境対応性が高いものである。また、前記トナー収容ユニットを、本発明の画像形成装置に装着して画像形成することで、本発明のトナーを用いて画像形成が行われるため、カーボンニュートラル性が高く、耐熱保存性に優れるものである。
【0302】
前記トナー収容ユニットの態様としては、前記トナーを収容できる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トナー収容容器、現像器、又はプロセスカートリッジが挙げられる。
【0303】
<トナー収容容器>
前記トナー収容容器とは、前記トナーを収容した容器をいう。
前記トナー収容容器としては、特に限定されず、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、容器本体と、キャップとを有するものなどが挙げられる。
【0304】
前記容器本体の大きさとしては、特に限定されず、適宜変更することができる。
【0305】
前記容器本体の形状としては、特に限定されず、適宜変更することができるが、筒状であることが好ましい。
【0306】
前記容器本体の構造としては、特に限定されず、適宜変更することができるが、内周面にスパイラル状の凹凸が形成され、回転させることにより内容物である前記トナーが排出口側に移行することが可能である、スパイラル状の凹凸の一部又は全てが蛇腹機能を有する構造が好ましい。
【0307】
前記容器本体の材質としては、特に限定されず、適宜変更することができるが、寸法精度がよいものであることが好ましく、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、又はポリアセタール樹脂等の樹脂材料が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0308】
前記トナー収容容器は、保存及び搬送が容易であり、取扱性に優れるため、プロセスカートリッジ又は画像形成装置に着脱可能に取り付け、前記トナーの補給に使用することができる。
【0309】
<現像器>
前記現像器とは、前記トナーを収容し、現像手段を有するものをいう。
前記現像手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記トナー収容容器と、該トナー収容容器内に収容されたトナーを担持すると共に搬送するトナー担持体とを少なくとも有する。
なお、前記現像手段は、担持するトナーの厚さを規制するため規制部材等を更に有してもよい。
【0310】
<プロセスカートリッジ>
前記プロセスカートリッジとは、少なくとも静電潜像担持体と、現像手段とを一体とし、前記トナーを収容し、画像形成装置に対して着脱可能であるものをいう。前記プロセスカートリッジは、更に必要に応じて、帯電手段、露光手段、クリーニング手段、及び除電手段から選択される少なくとも1種を有していてもよい。
【0311】
前記プロセスカートリッジの一例としては、各種画像形成装置に着脱可能に成型されており、静電潜像を担持する静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に担持された静電潜像を前記トナーで現像してトナー像を形成する現像手段を少なくとも有するものなどが挙げられ、必要に応じて、更にその他の手段を有していてもよい。
【0312】
次に、前記プロセスカートリッジの一実施形態を
図5に示す。本実施形態のプロセスカートリッジ110は、
図5に示すように、静電潜像担持体10を内蔵し、帯電手段としての帯電器58、現像手段としての現像器40、及びクリーニング手段としてのクリーニング装置90を含み、更に必要に応じてその他の手段を有する。
図5中、符号Lは、露光手段(図示せず)からの露光、符号95は記録紙をそれぞれ示す。
静電潜像担持体10としては、前記画像形成装置における静電潜像担持体と同様のものを用いることができる。帯電器58には、任意の帯電部材が用いられる。
図5に示すプロセスカートリッジによる画像形成プロセスについては、静電潜像担持体10は、矢印方向に回転しながら、帯電器58による帯電、露光手段による露光Lにより、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成される。
この静電潜像は、現像器40でトナー現像され、該トナー現像は転写ローラ80により、記録紙95に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の静電潜像担持体10表面は、クリーニング装置90によりクリーニングされ、更に除電手段(図示せず)により除電されて、再び、以上の操作を繰り返すものである。
【実施例0313】
以下に製造例、実施例、及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの製造例、調製例、及び実施例に何ら限定されるものではない。なお、製造例、調製例、実施例、及び比較例において、別段の断りない限り、「%」は「質量%」を示し、「部」は「質量部」を示す。また、実施例及び比較例における配合量は、各原材料における固形分の配合量を示す。
【0314】
(製造例A-1:非晶性ポリエステル樹脂A-1の合成)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、植物由来のプロピレングリコール(Dupont社製)を21部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(三洋化成工業社製)を395部、再生PET(協栄J&T環境株式会社製)を322部、植物由来のコハク酸(BASF社製)を146部、5-スルホイソフタル酸ナトリウム(東京化成工業社製)を116部仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1モル%になるよう入れ、180℃、常圧、3時間で反応させ、[非晶性ポリエステル樹脂A-1]を得た。この樹脂の組成、及び物性値を下記表1に示す。
【0315】
(製造例A-2:非晶性ポリエステル樹脂A-2の合成)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、植物由来のネオペンチルグリコール(Perstorp社製)を11部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(三洋化成工業社製)を386部、再生PET(協栄J&T環境株式会社製)を363部、植物由来のコハク酸(BASF社製)を126部、5-スルホイソフタル酸ナトリウム(東京化成工業社製)を113部仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1モル%になるよう入れ、180℃、常圧、3時間で反応させ、[非晶性ポリエステル樹脂A-2]を得た。この樹脂の組成、及び物性値を下記表1に示す。
【0316】
(製造例A-3:非晶性ポリエステル樹脂A-3の合成)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物(三洋化成工業社製)を58部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(三洋化成工業社製)を306部、再生PET(協栄J&T環境株式会社製)を406、アジピン酸(林純薬工業社製)を173部、5-スルホイソフタル酸ナトリウム(東京化成工業社製)を56部仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1モル%になるよう入れ、180℃、常圧、3時間で反応させ、[非晶性ポリエステル樹脂A-3]を得た。この樹脂の組成、及び物性値を下記表1に示す。
【0317】
(製造例A-4:非晶性ポリエステル樹脂A-4の合成)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、植物由来のプロピレングリコール(Dupont社製)を30部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(三洋化成工業社製)を195部、再生PET(協栄J&T環境株式会社製)を514部、植物由来のセバシン酸(小倉合成工業社製)を238部、5-スルホイソフタル酸ナトリウム(東京化成工業社製)を24部仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1モル%になるよう入れ、180℃、常圧、3時間で反応させ、[非晶性ポリエステル樹脂A-1]を得た。この樹脂の組成、及び物性値を下記表1に示す。
【0318】
(製造例A-5:非晶性ポリエステル樹脂A-5の合成)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコにビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(三洋化成工業社製)を409部、再生PET(協栄J&T環境株式会社製)を278部、植物由来のセバシン酸(小倉合成工業社製)を293部、5-スルホイソフタル酸ナトリウム(東京化成工業社製)を20部仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1モル%になるよう入れ、180℃、常圧、3時間で反応させ、[非晶性ポリエステル樹脂A-5]を得た。この樹脂の組成、及び物性値を下記表1に示す。
【0319】
(製造例A-6:非晶性ポリエステル樹脂A-6の合成)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコにビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(三洋化成工業社製)を307部、再生PET(協栄J&T環境株式会社製)を470部、イソフタル酸(三菱ガス化学社製)を166部、5-スルホイソフタル酸ナトリウム(東京化成工業社製)を56部仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1モル%になるよう入れ、180℃、常圧、3時間で反応させ、[非晶性ポリエステル樹脂A-6]を得た。この樹脂の組成、及び物性値を下記表1に示す。
【0320】
(製造例A-7:非晶性ポリエステル樹脂A-7の合成)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコにビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(三洋化成工業社製)を484部、再生PET(協栄J&T環境株式会社製)を124部、植物由来のドデカン二酸(Verdezyne社製)を304部、5-スルホイソフタル酸ナトリウム(東京化成工業社製)を89部仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1モル%になるよう入れ、180℃、常圧、3時間で反応させ、[非晶性ポリエステル樹脂A-7]を得た。この樹脂の組成、及び物性値を下記表1に示す。
【0321】
(製造例A-8:非晶性ポリエステル樹脂A-8の合成)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、植物由来のプロピレングリコール(Dupont社製)を22部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(三洋化成工業社製)を416部、再生PET(協栄J&T環境株式会社製)を340部、植物由来のコハク酸(BASF社製)を222部仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1モル%になるよう入れ、180℃、常圧、3時間で反応させ、[非晶性ポリエステル樹脂A-8]を得た。この樹脂の組成、及び物性値を下記表1に示す。
【0322】
(製造例A-9:非晶性ポリエステル樹脂A-9の合成)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、植物由来のプロピレングリコール(Dupont社製)を20部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(三洋化成工業社製)を385部、再生PET(協栄J&T環境株式会社製)を314部、植物由来のコハク酸(BASF社製)を111部、5-スルホイソフタル酸ナトリウム(東京化成工業社製)を170部仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1モル%になるよう入れ、180℃、常圧、3時間で反応させ、[非晶性ポリエステル樹脂A-9]を得た。この樹脂の組成、及び物性値を下記表1に示す。
【0323】
(製造例A-10:非晶性ポリエステル樹脂A-10の合成)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、植物由来のプロピレングリコール(Dupont社製)を21部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(三洋化成工業社製)を392部、再生PET(協栄J&T環境株式会社製)を320部、アジピン酸(林純薬工業社製)を243部、5-スルホイソフタル酸ナトリウム(東京化成工業社製)を23部仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1モル%になるよう入れ、180℃、常圧、3時間で反応させ、[非晶性ポリエステル樹脂A-10]を得た。この樹脂の組成、及び物性値を下記表1に示す。
【0324】
(製造例A-11:非晶性ポリエステル樹脂A-11の合成)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、植物由来のプロピレングリコール(Dupont社製)を35部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(三洋化成工業社製)を116部、再生PET(協栄J&T環境株式会社製)を594部、植物由来のドデカン二酸(Verdezyne社製)を230部、5-スルホイソフタル酸ナトリウム(東京化成工業社製)を24部仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1モル%になるよう入れ、180℃、常圧、3時間で反応させ、[非晶性ポリエステル樹脂A-11]を得た。この樹脂の組成、及び物性値を下記表1に示す。
【0325】
(製造例A-12:非晶性ポリエステル樹脂A-12の合成)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、植物由来のプロピレングリコール(Dupont社製)を21部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(三洋化成工業社製)を395部、再生PET(協栄J&T環境株式会社製)を323部、アジピン酸(林純薬工業社製)を261部仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1モル%になるよう入れ、180℃、常圧、3時間で反応させ、[非晶性ポリエステル樹脂A-12]を得た。この樹脂の組成、及び物性値を下記表1に示す。
【0326】
(製造例A-13:非晶性ポリエステル樹脂A-13の合成)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、スフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物(三洋化成工業社製)を271部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(三洋化成工業社製)を285部、再生PET(協栄J&T環境株式会社製)を145部、アジピン酸(林純薬工業社製)を299部仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1モル%になるよう入れ、180℃、常圧、3時間で反応させ、[非晶性ポリエステル樹脂A-13]を得た。この樹脂の組成、及び物性値を下記表1に示す。
なお、表1中の「↑」は当該矢印を記載した欄の内容は当該欄の上の欄に記載したものと同じであることを示す。
【0327】
【0328】
(製造例B-1:非晶質ポリエステル樹脂B-1の合成)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、植物由来のプロピレングリコール(Dupont社製)を195部、植物由来のコハク酸(Bioamber社製)を109部、植物由来のテレフタル酸(Gevo社製)を697部仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1モル%になるよう入れ、180℃、常圧、3時間で反応させ、[非晶質ポリエステル樹脂B-1]を得た。この樹脂の物性値を下記表2に記載した。
【0329】
(製造例B-2:非晶質ポリエステル樹脂B-2の合成)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、植物由来のプロピレングリコール(Dupont社製)を131部、再生PET(協栄J&T環境株式会社製)を429部、植物由来のテレフタル酸(Gevo社製)を229部、アジピン酸(林純薬工業社製)を50部仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1モル%になるよう入れ、180℃、常圧、3時間で反応させ、[非晶質ポリエステル樹脂B-2]を得た。この樹脂の物性値を下記表2に記載した。
【0330】
(製造例B-3:非晶性ポリエステル樹脂B-3の合成)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(三洋化成工業社製)を385部、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物(三洋化成工業社製)を244部、イソフタル酸(関東化学社製)を358部、アジピン酸(林純薬工業社製)を13部仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1モル%になるよう入れ、180℃、常圧、3時間で反応させ、[非晶質ポリエステル樹脂B-3]を得た。この樹脂の物性値を下記表2に記載した。
【0331】
【0332】
(実施例1)
<非晶性ポリエステル樹脂の水分散体の調製>
<<油相の調製>>
[非晶性ポリエステル樹脂A-1]150部、メチルエルケトン150部を容器に入れ、TKホモミキサー(プライミクス株式会社製)で、7,000rpmで60分間混合し、[油相1]を得た。
なお、各成分の配合量は、各原材料における固形分の配合量を示し、以下の工程においても同様である。
【0333】
<水相の調製>
イオン交換水800部を[水相1]とした。
【0334】
<転相乳化>
[油相1]700部をTKホモミキサーで、回転数5,000rpmで撹拌しながら10%水酸化ナトリウム10部を加え、10分間混合した後、[水相1]1,200部を徐々に滴下していき、[乳化スラリー1]を得た。
【0335】
<脱溶剤>
撹拌機及び温度計をセットした容器に、[乳化スラリー1]を投入し、30℃にて180分間脱溶剤した後、[ポリエステル分散体1]を得た。[ポリエステル分散体1]に含まれる粒子の体積平均粒径は50nmであり、固形分濃度は25%であった。
【0336】
<樹脂粒子の調製>
<<油相の調製>>
[非晶質ポリエステル樹脂B-1]750部を容器に入れ、TKホモミキサー(プライミクス株式会社製)で7,000rpmで60分間混合し、[油相2]を得た。
なお、各成分の配合量は、各原材料における固形分の配合量を示し、以下の工程においても同様である。
【0337】
<<水相の調製>>
水990部、ドデシル硫酸ナトリウム25部、及び酢酸エチル90部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを[水相2]とした。
【0338】
<<転相乳化>>
[油相2]700部をTKホモミキサーで、回転数5,000rpmで撹拌しながら28%アンモニア水20部を加え、10分間混合した後、[水相2]1,200部を徐々に滴下していき、[乳化スラリー2]を得た。
【0339】
<<脱溶剤>>
撹拌機及び温度計をセットした容器に、[乳化スラリー2]を投入し、30℃にて180分間脱溶剤した後、[脱溶剤スラリー2]を得た。[脱溶剤スラリー2]に含まれる粒子の体積平均粒径は0.35μmであった。
【0340】
<<凝集>>
[脱溶剤スラリー2]に10%硫酸マグネシウム溶液100部を滴下して更に5分攪拌した後、60℃に昇温し、粒径が5.0μmになったところで[ポリエステル分散体1]300部を滴下し、60分間攪拌後、10%塩化ナトリウム水溶液を200部添加して凝集工程を終了し、[凝集スラリー1]を得た。
【0341】
<<融着>>
[凝集スラリー1]を攪拌しながら70℃に加熱して、所望の平均円形度である0.961になったところで冷却し、[分散スラリー1]を得た。
【0342】
<<洗浄・乾燥>>
[分散スラリー1]100部を減圧濾過した後、以下の(1)~(4)の操作を2回行い[濾過ケーキ1]を得た。
(1):濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後、濾過した。
(2):前記(1)の濾過ケーキに10%水酸化ナトリウム水溶液100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。
(3):前記(2)の濾過ケーキに10%塩酸100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後、濾過した。
(4):前記(3)の濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後、濾過した。
得られた[濾過ケーキ1]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmのメッシュで篩い[樹脂粒子1]を得た。
【0343】
(実施例2)
[非晶性ポリエステル樹脂A-1]を[非晶性ポリエステル樹脂A-2]に変えた以外は実施例1と同様にして[ポリエステル分散体2]、[樹脂粒子2]を得た。得られた[ポリエステル分散体2]中の樹脂粒子の体積平均粒子径は62nmであり、固形分濃度は25%であった。
【0344】
(実施例3)
[非晶性ポリエステル樹脂A-1]を[非晶性ポリエステル樹脂A-3]に変え、[非晶性ポリエステル樹脂B-1]を[非晶性ポリエステル樹脂B-2]に変えた以外は実施例1と同様にして[ポリエステル分散体3]、[樹脂粒子3]を得た。得られた[ポリエステル分散体3]中の樹脂粒子の体積平均粒子径は73nmであり、固形分濃度は25%であった。
【0345】
(実施例4)
[非晶性ポリエステル樹脂A-1]を[非晶性ポリエステル樹脂A-4]に変え、イオン交換水1200部をイオン交換水とメチルエチルケトンを重量比90/10で混合したもの1200部に変え、[非晶性ポリエステル樹脂B-1]を[非晶性ポリエステル樹脂B-3]に変えた以外は実施例1と同様にして[ポリエステル分散体4]、[樹脂粒子4]を得た。得られた[ポリエステル分散体4]中の樹脂粒子の体積平均粒子径は69nmであり、固形分濃度は25%であった。
【0346】
(実施例5)
[非晶性ポリエステル樹脂A-1]を[非晶性ポリエステル樹脂A-5]に変え、メチルエチルケトン150部を100部に変えた以外は実施例1と同様にして[ポリエステル分散体5]、[樹脂粒子5]を得た。得られた[ポリエステル分散体5]中の樹脂粒子の体積平均粒子径は39nmであり、固形分濃度は25%であった。
【0347】
(実施例6)
[非晶性ポリエステル樹脂A-1]を[非晶性ポリエステル樹脂A-6]に変え、[非晶性ポリエステル樹脂B-1]を[非晶性ポリエステル樹脂B-2]に変えた以外は実施例1と同様にして[ポリエステル分散体6]、[樹脂粒子6]を得た。得られた[ポリエステル分散体6]中の樹脂粒子の体積平均粒子径は58nmであり、固形分濃度は25%であった。
【0348】
(実施例7)
[非晶性ポリエステル樹脂A-1]を[非晶性ポリエステル樹脂A-7]に変え、[非晶性ポリエステル樹脂B-1]を[非晶性ポリエステル樹脂B-3]に変えた以外は実施例1と同様にして[ポリエステル分散体7]、[樹脂粒子7]を得た。得られた[ポリエステル分散体7]中の樹脂粒子の体積平均粒子径は67nmであり、固形分濃度は25%であった。
【0349】
(比較例1)
[非晶性ポリエステル樹脂A-1]を[非晶性ポリエステル樹脂A-8]に変えた以外は実施例1と同様にして[ポリエステル分散体8]、[樹脂粒子8]を得た。得られた[ポリエステル分散体8]中の樹脂粒子の体積平均粒子径は55nmであり、固形分濃度は25%であった。
【0350】
(比較例2)
[非晶性ポリエステル樹脂A-1]を[非晶性ポリエステル樹脂A-9]に変え、[非晶性ポリエステル樹脂B-1]を[非晶性ポリエステル樹脂B-2]に変えた以外は実施例1と同様にして[ポリエステル分散体9]、[樹脂粒子9]を得た。得られた[ポリエステル分散体9]中の樹脂粒子の体積平均粒子径は63nmであり、固形分濃度は25%であった。
【0351】
(比較例3)
[非晶性ポリエステル樹脂A-1]を[非晶性ポリエステル樹脂A-10]に変え、[非晶性ポリエステル樹脂B-1]を[非晶性ポリエステル樹脂B-3]に変えた以外は実施例1と同様にして[ポリエステル分散体10]、[樹脂粒子10]を得た。得られた[ポリエステル分散体10]中の樹脂粒子の体積平均粒子径は50nmであり、固形分濃度は25%であった。
【0352】
(比較例4)
[非晶性ポリエステル樹脂A-1]を[非晶性ポリエステル樹脂A-11]に変えた以外は実施例1と同様にして[ポリエステル分散体11]、[樹脂粒子11]を得た。得られた[ポリエステル分散体11]中の樹脂粒子の体積平均粒子径は70nmであり、固形分濃度は25%であった。
【0353】
(比較例5)
[非晶性ポリエステル樹脂A-1]を[非晶性ポリエステル樹脂A-12]に変え、[非晶性ポリエステル樹脂B-1]を[非晶性ポリエステル樹脂B-2]に変えた以外は実施例1と同様にして[ポリエステル分散体12]、[樹脂粒子12]を得た。得られた[ポリエステル分散体12]中の樹脂粒子の体積平均粒子径は61nmであり、固形分濃度は25%であった。
【0354】
(比較例6)
[非晶性ポリエステル樹脂A-1]を[非晶性ポリエステル樹脂A-13]に変え、[非晶性ポリエステル樹脂B-1]を[非晶性ポリエステル樹脂B-3]に変えた以外は実施例1と同様にして[ポリエステル分散体13]、[樹脂粒子13]を得た。得られた[ポリエステル分散体13]中の樹脂粒子の体積平均粒子径は52nmであり、固形分濃度は25%であった。
【0355】
実施例1~7及び比較例1~6で得られた各ポリエステル分散体について、以下の方法で、ポリエステル樹脂の環境対応性、ポリエステル分散体の安定性、ポリエステル樹脂の耐久性、樹脂粒子の耐久性の評価を行った。結果を下記表3に示す。
【0356】
<評価方法>
<<ポリエステル樹脂の環境対応性>>
各ポリエステル分散体中の非晶性ポリエステルのクロロホルム可溶分の環境対応成分率を基に、下記評価基準に基づき「環境対応性」を評価した。
【0357】
<<<ポリエステル分散体中の非晶性ポリエステルの環境対応成分率の測定方法>>>
各ポリエステル分散体を真空乾燥機で6時間乾燥させたもの1gを100mLのクロロホルム中に投入し、25℃の条件下、30分間攪拌しながら可溶分が溶解した溶解液を得た。これを目開き0.2μmのメンブランフィルターにて濾過し、トナー中のクロロホルム可溶分を得た後、クロロホルム可溶分の質量(X)を測定した。次いで、これをクロロホルムに溶解してGPC測定用の試料とし、前述の分子量測定に用いるGPCに注入した。GPCの溶出液排出口にフラクションコレクターを配置し、所定のカウントごとに溶出液を分取し、溶出曲線の溶出開始(曲線の立ち上がり)から面積率で5%毎に溶出液を得た。各溶出液をエバポレーターにより濃縮及び乾燥した後、固形分を1mLの重クロロホルムに各試験試料サンプル30mgを溶解させ、基準物質として0.05体積%のテトラメチルシラン(TMS)を添加した。この溶液を5mm径のNMR測定用ガラス管に充填し、核磁気共鳴装置(JNM-AL400、日本電子株式会社製)を用い、23℃~25℃の温度下にて、128回の積算を行い、スペクトルを得た。得られたスペクトルのピーク積分比率から、溶出成分における各トナーに含まれる各樹脂のモノマー組成及び構成比率(モル比)を求め、下記式(4)に代入することにより、トナー中の「環境対応成分率」を算出した。
環境対応成分率(%)=構成モノマー成分の質量の総和(Y)/クロロホルム可溶分の全質量(X)×100 ・・・式(4)
前記式(4)において、「構成モノマー成分の質量」は、スペクトルのピーク積分比率から求められた、測定対象のトナーに含有される対象モノマー成分の構成比率(モル比)に、該モノマー成分の分子量を乗じて算出した質量(y)を示し、「構成モノマー成分の質量の総和(Y)」は、スペクトルのモノマー組成より特定された測定対象のトナーに含有される構成モノマー成分の質量(y)の総量を示す。
なお、前記構成モノマーは、環境対応成分であり、実施例1~10及び比較例1~12の各トナーに含有される、PET由来のエチレングリコール、植物由来のプロピレングリコール、植物由来のコハク酸、植物由来のセバシン酸、植物由来のドデカン二酸、及びPET由来のテレフタル酸からなる群より選択される少なくともいずれかである。
下記の評価基準で「◎、○」と評価されたものは、実用上問題のないレベルである。
-「環境対応性」の評価基準-
◎:60%以上
○:40%以上60%未満
×:40%未満
【0358】
<<ポリエステル分散体の安定性の測定方法>>
各ポリエステル分散体をイオン交換水で固形分濃度10%に調整したものを10g容器に取り、マグネチックスターラーで撹拌しながら、5%塩化カルシウム水溶液を滴下していき、塩化カルシウム水溶液添加前の体積平均粒径の2倍以上になる塩化カルシウム水溶液の最低濃度を臨界凝集濃度とした。体積平均粒径はナノトラック粒度分布測定装置(UPA-EX150、日機装株式会社、動的光散乱法/レーザードップラー法)で測定した。
下記の評価基準で「◎、○」と評価されたものは、実用上問題のないレベルである。
【0359】
-「ポリエステル分散体の安定性」の評価基準-
◎:臨界凝集濃度10%対ポリエステル固形分 以上
○:臨界凝集濃度5%対ポリエステル固形分以上~10%対ポリエステル固形分未満
×:臨界凝集濃度5%対ポリエステル固形分未満
【0360】
<<ポリエステル樹脂の耐久性の測定方法>>
各ポリエステル分散体の固形分を20%に調整した後、フィルムアプリケーターを用いてガラス板上に0.2mmになるように塗布し、150℃のオーブンで1時間乾燥させた後、40℃70%RHの恒温恒湿槽で168時間保管した。その後、JIS K5600-5-4に従い、引っかき硬度(鉛筆法)を測定した。
下記の評価基準で「◎、○」と評価されたものは、実用上問題のないレベルである。
-「ポリエステル樹脂の耐久性」の評価基準-
◎:2H以上
○:F~H
×:HB以下
【0361】
<<樹脂粒子の耐久性の測定方法>>
樹脂粒子32gと日本画像学会から提供される標準キャリア(負帯電極性トナー用標準キャリア「N-01」)618gを容器に入れ、ターブラーミキサー(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製)を用いて48rpmで5分間均一混合し、樹脂粒子とキャリアの混合物を作成した。
樹脂粒子とキャリアの混合物650gを、市販の複写機(RICOH MP C6502、リコー社製)に入れ、画像を印刷せず現像ユニットのみを駆動する設定とした後に、20時間現像ユニットを空攪拌することで、劣化剤を作製した。
【0362】
(小粒子率の測定)
攪拌後の剤を以下の手順で樹脂粒子を分離し、FPIA-3000を用いて測定を実施した。 小粒子率とは、3.5μm以下の樹脂粒子の個数頻度であり、初期樹脂粒子と劣化樹脂粒子との小粒子率の差し引き値をΔ小粒子率とする。 耐久性の高い樹脂粒子はΔ小粒子率が小さく、耐久性の低い樹脂粒子は破砕により、Δ小粒子率が大きい。
【0363】
(樹脂粒子の分離方法)
劣化剤2gをドライウェル(富士フィルム社製)1gをイオン交換水によって3倍に希釈し、さらにイオン交換水を15g計量した後、超音波洗浄機に入れ、1分間分散した。 その上澄み液を採取し、FPIA-3000によって樹脂粒子を計測した。
下記の評価基準で「◎、○」と評価されたものは、実用上問題のないレベルである。
-「樹脂粒子の耐久性」の評価基準-
◎ : Δ小粒子率が1%未満
○ : Δ小粒子率が1%以上10%未満
× : Δ小粒子率が10%以上
【0364】
【0365】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
(1)環境対応成分率が40質量%以上80質量%以下であり、且つ、スルホ基の含有量が2mol%以上10mol%以下である、ことを特徴とする非晶性ポリエステル樹脂。
(2)前記スルホ基を有する非晶性ポリエステル樹脂のSP値が11.5以上13.0以下である、上記(1)に記載の非晶性ポリエステル樹脂。
(3)コア層とシェル層とからなるコアシェル構造を有する樹脂粒子におけるコア層の材料として使用される、上記(1)又は(2)に記載の非晶性ポリエステル樹脂。
(4)上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の非晶性ポリエステル樹脂を分散質とし、水を分散媒とする、非晶性ポリエステル樹脂の水分散体。
(5)以下の工程a及び工程bを有することを特徴とする上記(4)に記載の非晶性ポリエステル樹脂の水分散体の製造方法。
工程a:環境対応成分率が40質量%以上80質量%以下であり、且つ、スルホ基の含有量が2mol%以上10mol%以下である非晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解乃至分散させた油相を作製する工程
工程b:前記油相に水を添加して、油中水型分散液から水中油型分散液に転相させる工程
(6)コア層とシェル層とからなるコアシェル構造を有する樹脂粒子であって、
前記シェル層は上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の非晶性ポリエステル樹脂を含むことを特徴とする樹脂粒子。
(7)以下の工程a、工程b、工程c、及び工程dを有することを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の樹脂粒子の製造方法。
工程a:非晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解乃至分散させた油相を作製する工程
工程b:前記油相に水を添加して、油中水型分散液から水中油型分散液に転相させる工程
工程c:前記水中油型分散液の粒子を凝集させる工程
工程d:前記工程cの後、上記(4)に記載の非晶性ポリエステル樹脂の水分散体を添加して、前記水分散体中の非晶性ポリエステル樹脂を凝集させてシェル層を形成する工程
(8)上記(6)に記載の樹脂粒子を含有することを特徴とするトナー用樹脂粒子。
(9)上記(8)に記載のトナー用樹脂粒子を含有することを特徴とするトナー。
(10)更に外添剤を含有する上記(9)に記載のトナー。
(11)上記(8)に記載のトナー用樹脂粒子に、外添剤を添加することを特徴とするトナーの製造方法。
(12)上記(9)に記載のトナーを含有することを特徴とする現像剤。
(13)上記(9)に記載のトナーを収容したことを特徴とするトナー収容ユニット。
(14)静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体上に形成された前記静電潜像を現像して可視像を形成するトナーを備える現像手段と、
を有し、
前記トナーが、上記(9)又は(10)に記載のトナーであることを特徴とする画像形成装置。