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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092143
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】積層体及び成形体
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/28 20060101AFI20240701BHJP
   B29B 15/12 20060101ALI20240701BHJP
   B29K 105/14 20060101ALN20240701BHJP
【FI】
B32B5/28 Z
B29B15/12
B29K105:14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207870
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390015679
【氏名又は名称】ジャパンマテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】村上 信吉
(72)【発明者】
【氏名】木村 圭一
(72)【発明者】
【氏名】沖 真人
(72)【発明者】
【氏名】塚本 勝朗
(72)【発明者】
【氏名】塚本 浩晃
【テーマコード(参考)】
4F072
4F100
【Fターム(参考)】
4F072AA02
4F072AA04
4F072AA07
4F072AB10
4F072AB27
4F072AB29
4F072AD23
4F072AD42
4F072AG03
4F072AG17
4F072AH06
4F072AH23
4F072AH24
4F072AH49
4F072AJ22
4F072AL01
4F072AL02
4F072AL04
4F072AL08
4F072AL09
4F072AL11
4F072AL17
4F100AA37B
4F100AD11B
4F100AK53A
4F100AK53B
4F100AK54B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA08
4F100DG00B
4F100DG12B
4F100DH00A
4F100GB32
4F100GB48
4F100GB87
4F100JK02A
4F100JK02B
4F100JK04A
4F100JK04B
4F100JK10A
4F100JK10B
4F100JL01
(57)【要約】
【課題】短繊維強化プラスチックの耐衝撃強度と、引張強度または曲げ強度のうち少なくとも一方と、を補完する構造を備えた積層体及び該積層体で形成された成形体を提供することを目的とする。
【解決手段】短繊維及びマトリックス樹脂を含有する、少なくとも1プライの短繊維強化プラスチックと、強化繊維をメッシュ状に配置して形成された、少なくとも1プライのメッシュ状強化繊維材料と、が積層して接合された積層体であって、前記メッシュ状強化繊維材料は、前記短繊維強化プラスチックの耐衝撃強度と前記積層体の目標耐衝撃強度と、の差分である第1差分強度を補完する耐衝撃強度と、前記短繊維強化プラスチックの引張強度と前記積層体の目標引張強度と、の差分である第2差分強度を補完する引張強度、または、前記短繊維強化プラスチックの曲げ強度と前記積層体の目標曲げ強度と、の差分である第3差分強度を補完する曲げ強度のうち、少なくともいずれか一方と、を有することを特徴とする、積層体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
短繊維及びマトリックス樹脂を含有する、少なくとも1プライの短繊維強化プラスチックと、強化繊維をメッシュ状に配置して形成された、少なくとも1プライのメッシュ状強化繊維材料と、が積層して接合された積層体であって、
前記メッシュ状強化繊維材料は、
前記短繊維強化プラスチックの耐衝撃強度と前記積層体の目標耐衝撃強度と、の差分である第1差分強度を補完する耐衝撃強度と、
前記短繊維強化プラスチックの引張強度と前記積層体の目標引張強度と、の差分である第2差分強度を補完する引張強度、または、前記短繊維強化プラスチックの曲げ強度と前記積層体の目標曲げ強度と、の差分である第3差分強度を補完する曲げ強度のうち、少なくともいずれか一方と、を有する
ことを特徴とする、積層体。
【請求項2】
前記メッシュ状強化繊維材料は、一方向に引きそろえられた強化繊維束を用いた、二軸配向織物、三軸配向織物または四軸配向織物である
ことを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記メッシュ状強化繊維材料は、一方向に引きそろえられた強化繊維束を用いた、編物である
ことを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記短繊維強化プラスチックは、ランダムマット材、フェルト材、ペレット材、シートモールドコンパウンド(SMC)のいずれかを用いて形成される
ことを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記短繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂及び前記メッシュ状強化繊維材料のマトリックス樹脂が、フェノキシ樹脂である
ことを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
短繊維及びマトリックス樹脂を含有する、少なくとも1プライの短繊維強化プラスチックと、強化繊維をメッシュ状に配置して形成された、少なくとも1プライのメッシュ状強化繊維材料と、が積層して接合された積層体であって、
前記メッシュ状強化繊維材料の目開きは、2mm以上である
ことを特徴とする、積層体。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つに記載の積層体で形成された、成形体。
【請求項8】
短繊維及びマトリックス樹脂を含有する短繊維強化プラスチックの母材を準備する第1準備工程と、
強化繊維をメッシュ状に配置することで、少なくとも1プライのメッシュ状強化繊維材料を準備する第2準備工程と、
前記第1準備工程で得られた前記短繊維強化プラスチックの母材と、前記第2準備工程で得られた前記少なくとも1プライのメッシュ状強化繊維材料と、を積層させて母材積層体を得る積層工程と、
前記積層工程で得られた母材積層体を接合させて、少なくとも1プライの前記短繊維強化プラスチックと、少なくとも1プライの前記メッシュ状強化繊維材料と、が積層して接合された積層体を得る接合工程と、
を備え、
前記メッシュ状強化繊維材料は、
前記短繊維強化プラスチックの耐衝撃強度と前記積層体の目標耐衝撃強度と、の差分である第1差分強度を補完する耐衝撃強度と、
前記短繊維強化プラスチックの引張強度と前記積層体の目標引張強度と、の差分である第2差分強度を補完する引張強度、または、前記短繊維強化プラスチックの曲げ強度と前記積層体の目標曲げ強度と、の差分である第3差分強度を補完する曲げ強度のうち、少なくともいずれか一方と、を有する
ことを特徴とする、積層体の製造方法。
【請求項9】
短繊維及びマトリックス樹脂を含有する短繊維強化プラスチックの母材を準備する第1準備工程と、
強化繊維をメッシュ状に配置することで、少なくとも1プライのメッシュ状強化繊維材料を準備する第2準備工程と、
前記第1準備工程で得られた前記短繊維強化プラスチックの母材と、前記第2準備工程で得られた前記少なくとも1プライのメッシュ状強化繊維材料と、を積層させて母材積層体を得る積層工程と、
前記積層工程で得られた母材積層体を接合させて、少なくとも1プライの前記短繊維強化プラスチックと、少なくとも1プライの前記メッシュ状強化繊維材料と、が積層して接合された積層体を得る接合工程と、
を備え、
前記メッシュ状強化繊維材料の目開きは、2mm以上である
ことを特徴とする、積層体の製造方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の積層体の製造方法で得られた積層体を、金型を用いて前記積層体とは異なる形状に成形する、賦形工程を備える
ことを特徴とする、成形体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短繊維強化プラスチックと、メッシュ状強化繊維材料と、が積層して接合された積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マトリックス材を短繊維で強化した短繊維強化プラスチックが、様々な用途で用いられている。
【0003】
特許文献1には、マトリックス材が金属繊維であって、強化繊維が金属間化合物繊維であり、金属間化合物繊維が金属繊維との反応により合成される、繊維強化プラスチックが開示されており、繊維強化プラスチックの一例として、短繊維強化プラスチックが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-285465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
短繊維強化プラスチックは、成形加工性に優れる一方、強化繊維自体が短いため、強化繊維端に応力が集中しやすく、引張強度や曲げ強度、耐衝撃強度が十分に向上しない。
【0006】
そこで、本発明は、短繊維強化プラスチックの耐衝撃強度と、引張強度または曲げ強度のうち少なくとも一方と、を補完する構造を備えた積層体及び該積層体で形成された成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、(1)短繊維及びマトリックス樹脂を含有する、少なくとも1プライの短繊維強化プラスチックと、強化繊維をメッシュ状に配置して形成された、少なくとも1プライのメッシュ状強化繊維材料と、が積層して接合された積層体であって、前記メッシュ状強化繊維材料は、前記短繊維強化プラスチックの耐衝撃強度と前記積層体の目標耐衝撃強度と、の差分である第1差分強度を補完する耐衝撃強度と、前記短繊維強化プラスチックの引張強度と前記積層体の目標引張強度と、の差分である第2差分強度を補完する引張強度、または、前記短繊維強化プラスチックの曲げ強度と前記積層体の目標曲げ強度と、の差分である第3差分強度を補完する曲げ強度のうち、少なくともいずれか一方と、を有することを特徴とする、積層体。
【0008】
(2)前記メッシュ状強化繊維材料は、一方向に引きそろえられた強化繊維束を用いた、二軸配向織物、三軸配向織物または四軸配向織物であることを特徴とする、(1)に記載の積層体。
【0009】
(3)前記メッシュ状強化繊維材料は、一方向に引きそろえられた強化繊維束を用いた、編物であることを特徴とする、(1)に記載の積層体。
【0010】
(4)前記短繊維強化プラスチックは、ランダムマット材、フェルト材、ペレット材、シートモールドコンパウンド(SMC)のいずれかを用いて形成されることを特徴とする、(1)に記載の積層体。
【0011】
(5)前記短繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂及び前記メッシュ状強化繊維材料のマトリックス樹脂が、フェノキシ樹脂であることを特徴とする、(1)に記載の積層体。
【0012】
(6)短繊維及びマトリックス樹脂を含有する、少なくとも1プライの短繊維強化プラスチックと、強化繊維をメッシュ状に配置して形成された、少なくとも1プライのメッシュ状強化繊維材料と、が積層して接合された積層体であって、前記メッシュ状強化繊維材料の目開きは、2mm以上であることを特徴とする、積層体。
【0013】
(7)(1)乃至(6)のいずれか1つに記載の積層体で形成された、成形体。
【0014】
(8)短繊維及びマトリックス樹脂を含有する短繊維強化プラスチックの母材を準備する第1準備工程と、強化繊維をメッシュ状に配置することで、少なくとも1プライのメッシュ状強化繊維材料を準備する第2準備工程と、前記第1準備工程で得られた前記短繊維強化プラスチックの母材と、前記第2準備工程で得られた前記少なくとも1プライのメッシュ状強化繊維材料と、を積層させて母材積層体を得る積層工程と、前記積層工程で得られた母材積層体を接合させて、少なくとも1プライの前記短繊維強化プラスチックと、少なくとも1プライの前記メッシュ状強化繊維材料と、が積層して接合された積層体を得る接合工程と、を備え、前記メッシュ状強化繊維材料は、前記短繊維強化プラスチックの耐衝撃強度と前記積層体の目標耐衝撃強度と、の差分である第1差分強度を補完する耐衝撃強度と、前記短繊維強化プラスチックの引張強度と前記積層体の目標引張強度と、の差分である第2差分強度を補完する引張強度、または、前記短繊維強化プラスチックの曲げ強度と前記積層体の目標曲げ強度と、の差分である第3差分強度を補完する曲げ強度のうち、少なくともいずれか一方と、を有することを特徴とする、積層体の製造方法。
【0015】
(9)短繊維及びマトリックス樹脂を含有する短繊維強化プラスチックの母材を準備する第1準備工程と、強化繊維をメッシュ状に配置することで、少なくとも1プライのメッシュ状強化繊維材料を準備する第2準備工程と、前記第1準備工程で得られた前記短繊維強化プラスチックの母材と、前記第2準備工程で得られた前記少なくとも1プライのメッシュ状強化繊維材料と、を積層させて母材積層体を得る積層工程と、前記積層工程で得られた母材積層体を接合させて、少なくとも1プライの前記短繊維強化プラスチックと、少なくとも1プライの前記メッシュ状強化繊維材料と、が積層して接合された積層体を得る接合工程と、を備え、前記メッシュ状強化繊維材料の目開きは、2mm以上であることを特徴とする、積層体の製造方法。
【0016】
(10)(8)または(9)に記載の積層体の製造方法で得られた積層体を、金型を用いて前記積層体とは異なる形状に成形する、賦形工程を備えることを特徴とする、成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る積層体によれば、短繊維強化プラスチックの耐衝撃強度と、引張強度または曲げ強度のうち少なくとも一方と、を補完することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態における積層体の分解図である。
図2】本発明の別の実施形態における積層体の分解図である。
図3図1に示すメッシュ状強化繊維材料2の拡大図である。
図4】積層体1の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(積層体の基本構成)
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態について説明する。図1は、本実施形態における積層体の分解図である。図1を参照して、積層体1は、メッシュ状強化繊維材料2と、メッシュ状強化繊維材料2を挟む位置に配置されるシート状の一対の短繊維強化プラスチック3a、3bと、を備える。以下、一対の短繊維強化プラスチック3a、3bを短繊維強化プラスチック3と総称することがある。メッシュ状強化繊維材料2及び短繊維強化プラスチック3は、一体的に接合されている。メッシュ状強化繊維材料2は、複数の強化繊維束20をメッシュ状(網目状)に配置することで形成された網状体である。
【0020】
(本発明を創作するに至った経緯)
本発明の経緯について、以下に説明する。
短繊維強化プラスチックを筐体等に用いる場合、その用途等に応じて、目標とされる引張強度や曲げ強度、耐衝撃強度などの機械強度が設定される。しかしながら、短繊維強化プラスチックは、強化繊維自体が短いため、強化繊維端に応力が集中しやすく、短繊維強化プラスチックの引張強度、曲げ強度及び耐衝撃強度が、設定された目標引張強度、目標曲げ強度及び目標耐衝撃強度を満足しない場合がある。短繊維強化プラスチックの引張強度、曲げ強度及び耐衝撃強度を補完するためには、一般的に、(A)短繊維強化プラスチックの厚みを増加させる、(B)短繊維強化プラスチックの強化繊維を連続繊維系に代える、(C)クロス材(強化繊維束を隙間なく織込むことで形成される平面状の繊維強化材料)と接合させる、といった方法が採用されている。しかしながら、(A)の方法の場合、軽量且つ薄い材料が要求される分野(例えば、スマートフォンやタブレット等の携帯電子機器の筐体等)への適用が困難となる。また、(B)の方法の場合、専用の加工装置を準備する必要があり、コスト面で好ましくない。さらに、(C)の方法の場合、短繊維強化プラスチックの成型加工性が低下するため、好ましくない。
【0021】
そこで、本発明者らは、短繊維強化プラスチックの引張強度、曲げ強度及び耐衝撃強度を補完する方法について鋭意検討を重ね、短繊維強化プラスチックに、網目状に形成されたメッシュ状強化繊維材料を接合させることに想到した。このメッシュ状強化繊維材料は、短繊維強化プラスチックの耐衝撃強度と目標耐衝撃強度と、の差分である第1差分強度を補完する耐衝撃強度を有する。また、このメッシュ状強化繊維材料は、短繊維強化プラスチックの引張強度と目標引張強度と、の差分である第2差分強度を補完する引張強度、または、短繊維強化プラスチックの曲げ強度と目標曲げ強度と、の差分である第3差分強度を補完する曲げ強度のうち、少なくともいずれか一方を有する。この構成によれば、短繊維強化プラスチックが、該短繊維強化プラスチックに接合したメッシュ状強化繊維材料によって支持されるため、第1差分強度と、第2差分強度または第3差分強度のうち少なくともいずれか一方と、が補完される。
【0022】
そのため、本発明に係る積層体は、本実施形態の構成(一対の短繊維強化プラスチック3a、3bがメッシュ状強化繊維材料2を挟んだ構成)に限られず、少なくとも1プライの短繊維強化プラスチックと、少なくとも1プライのメッシュ状強化繊維材料と、が積層して接合された構成であればよく、短繊維強化プラスチックとメッシュ状強化繊維材料との積層順序や積層数は問わない。この構成であっても、少なくとも、積層方向に隣り合う短繊維強化プラスチック及びメッシュ状強化繊維材料が接合するため、短繊維強化プラスチックがメッシュ状強化繊維材料に支持され、第1差分強度と、第2差分強度または第3差分強度のうち少なくともいずれか一方と、が補完される。
【0023】
短繊維強化プラスチックとメッシュ状強化繊維材料との積層構成は、例えば、メッシュ状強化繊維材料を積層体の最外層に配置する構成であってもよく、複数プライの短繊維強化プラスチックの一部または全部の層間に、少なくとも1プライのメッシュ状強化繊維材料が配置された構成であってもよい。メッシュ状強化繊維材料が配置される位置は、積層体の積層方向中央部を通って積層方向に直交する対称面に対して、対称であってもよく、非対称であってもよい。複数プライの短繊維強化プラスチックの層間に配置されるメッシュ状強化繊維材料のプライ数は、層間ごとに同じであってもよいし、異なってもよい。本発明に係る積層体は、例えば図2に示すように、一対のメッシュ状強化繊維材料2a、2bが短繊維強化プラスチック3を挟んだ構成を有する積層体1´であってもよい。
【0024】
なお、本発明者らは、メッシュ状強化繊維材料はクロス材と比較して柔軟な構造であり、メッシュ状強化繊維材料を短繊維強化プラスチックに接合させても、短繊維強化プラスチックの成形加工性が低下しないことも、別途見出した。
【0025】
本発明者らがさらに検討を重ねた結果、短繊維強化プラスチックが補完される耐衝撃強度、引張強度及び曲げ強度は、メッシュ状強化繊維材料の強化繊維束の配置密度に応じて変化することが分かった。すなわち、メッシュ状強化繊維材料の強化繊維束の配置密度が高いほど、短繊維強化プラスチックが補完される耐衝撃強度、引張強度及び曲げ強度の補完量が大きくなる。この点に鑑み、本発明者らは、メッシュ状強化繊維材料の強化繊維束の配置密度を示す指標の1つとして「目開き」を用いることに想到した。「目開き」とは、網目の隙間部分の寸法であり、メッシュ状強化繊維材料において隣り合って所定方向に平行に延びる2本の強化繊維束の間隙距離を意味する。本実施形態における目開きについて、図3を参照して説明する。図3は、図1に示すメッシュ状強化繊維材料2の拡大図である。本実施形態では、強化繊維束20aと、強化繊維束20bと、が90度の交叉角で縦方向及び横方向にそれぞれ等間隔で配置されている。本実施形態における目開きは、隣り合って縦方向に平行に延びる2本の強化繊維束20aの、横方向における間隙距離d1、及び、隣り合って横方向に平行に延びる強化繊維束20bの、縦方向における間隙距離d2である。目開きd1及びd2は、同じ値でもよく、異なった値でもよい。なお、強化繊維束を配置する方向(強化繊維束の軸方向)は、図3に示すような、90度の交叉角で2方向に配置されるものに限られず、例えば、60度の交叉角で3方向に配置されてもよい。
【0026】
目開きは、所定の数値範囲において適宜設定することができる。目開きの上限値及び下限値は、特に限定されないが、2mm以上であることが好ましい。目開きを2mm以上とすることにより、(1)目開きからメッシュ状強化繊維材料の裏面に回り込んだ短繊維強化プラスチックによって、メッシュ状強化繊維材料との接合力がより強くなるため、耐衝撃強度、引張強度及び曲げ強度の補完量をより増加させることができるともに、(2)メッシュ状強化繊維材料自体の柔軟性がより向上するため、成形加工性がより良好となる。
【0027】
(短繊維強化プラスチック3の構成)
短繊維強化プラスチック3は、マトリックス樹脂と、該マトリックス樹脂を強化する短繊維と、を含有する。ここで、「短繊維」は、50mm以下の数平均繊維長を有する繊維を意味する。短繊維の数平均繊維長の下限は、特に限定されないが、例えば0.1mmである。
【0028】
短繊維強化プラスチック3が含有するマトリックス樹脂の種類は、熱硬化性の樹脂、熱可塑性の樹脂いずれでも構わないが、加工性やリサイクル性の観点から熱可塑性を有する樹脂であることが好ましく、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、フェノキシ樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステル、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンなどのポリアリールエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルフォン等から、1種または2種以上を用いることができる。ただし、比較的低温での加工性や、各種の強化繊維への良好な含浸性・密着性、得られる成形体の意匠性の高さ等に鑑み、上記樹脂のうち、フェノキシ樹脂を用いることがより好ましい。特に、現場重合型フェノキシ樹脂は、溶融粘度の低い低分子量体であって、強化繊維へ含浸したのちに高分子量化が可能である。そのため、短繊維強化プラスチック3が含有するマトリックス樹脂として、現場重合型フェノキシ樹脂を用いることがさらに好ましい。なお、現場重合型フェノキシ樹脂とは、2官能型エポキシ化合物と2官能型フェノール化合物とをエポキシ基の開環を伴う付加重合をすることで得られるフェノキシ樹脂であって、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールAとを、官能基の比率が1:1となるように配合し、リン系重合触媒存在下でin Situで重合させることで得られる。
【0029】
短繊維強化プラスチック3が含有する短繊維の種類は、特に限定されないが、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維やSiC繊維などのセラミックス繊維、アラミド繊維などの有機繊維、セルロース繊維などの天然繊維から、1種または2種以上を用いることができる。
【0030】
短繊維強化プラスチック3に含有される短繊維の含有率は、特に限定されないが、例えば、短繊維強化プラスチック3に対して繊維体積含有率(Vf)で30体積%~60体積%である。
【0031】
短繊維強化プラスチック3は、短繊維強化プラスチック3の母材をメッシュ状強化繊維材料2に接合させることで形成される。「短繊維強化プラスチック3の母材」は、短繊維強化プラスチック3の元となる材料を指し、ランダムマット材、フェルト材、ペレット材、シートモールドコンパウンド(SMC)、バルクモールドコンパウンド(BMC)等の成形材料、及び該成形材料を加工して得られた中間材料を含む。すなわち、短繊維強化プラスチック3は、成形材料をメッシュ状強化繊維材料2に直接接合させることで形成されてもよく、成形材料を予めシート状の中間材料に加工し、該中間材料をメッシュ状強化繊維材料2に接合させることで形成されてもよい。ただし、ペレット材やバルクモールドコンパウンド(BMC)は、メッシュ状強化繊維材料2と直接接合すると、メッシュ状強化繊維材料2の強化繊維束が破損する恐れや成形体内部に空隙が残存する恐れがある。そのため、短繊維強化プラスチック3は、予めシート化された成形材料であるランダムマット材、フェルト材またはシートモールドコンパウンド(SMC)を用いて形成されたものであることが好ましい。
【0032】
短繊維強化プラスチック3は、マトリックス樹脂と、該マトリックス樹脂を強化する短繊維と、の他に、本願発明の目的・効果を損なわない範囲で、マトリックス樹脂以外の樹脂や添加剤等を含有してもよい。マトリックス樹脂以外の樹脂としては、例えば、マトリックス樹脂として使用した種類以外の熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、臭素化フェノキシ樹脂やシリコーン樹脂、フッ素樹脂、ゴム粒子等を、機能性付与を目的として含有させることができる。また、添加剤としては、例えば、可塑剤、軟化剤、着色剤、分散剤、離型剤、安定化剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などの酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定化剤など)、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、結晶核成長剤、充填剤(シリカやタルクなどの粒状充填剤など)、脂質類、ワックス類などの滑剤等を含有することができる。
【0033】
短繊維強化プラスチック3の厚さは、特に限定されないが、メッシュ状強化繊維材料2による補強効果は、一般的に薄肉の成形品において高くなることから、例えば3mm以下が好ましい。
【0034】
(メッシュ状強化繊維材料2の構成)
メッシュ状強化繊維材料2を構成する強化繊維束20は、特に限定されないが、例えば、マトリックス樹脂を含浸させない強化繊維束や、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させた線状プリプレグ(トウプリプレグやテーププリプレグ)である。ただし、マトリックス樹脂が含浸されていない強化繊維束を用いる場合、短繊維強化プラスチック3から染み出した樹脂を該強化繊維束に含浸させる必要があるため、樹脂不足などにより含浸不良が起きる可能性がある。そのため、強化繊維束20は、予め樹脂が含侵しているプリプレグであることが好ましい。メッシュ状強化繊維材料2は、1種類の強化繊維束のみで形成されてもよく、2種類以上の強化繊維束を組み合わせて形成されてもよい。
【0035】
メッシュ状強化繊維材料2を構成する強化繊維束20の形態は、特に限定されないが、例えば、一方向に引きそろえられた強化繊維束、強化繊維束に撚りをかけた撚糸、複数本の強化繊維束を撚り合わせた合撚糸等が挙げられる。ここで、「強化繊維を一方向に引きそろえる」とは、強化繊維の繊維軸方向を合わせることを意味する。強化繊維束20は、2本以上の強化繊維の単繊維(フィラメント)を収束させたものであればよく、束ねる強化繊維フィラメントの本数は特に限定されない。ただし、フィラメント数が多くなると、マトリックス樹脂が強化繊維束に含侵しにくくなるほか、メッシュ状強化繊維材料2が厚くなることから、束ねる強化繊維フィラメントの本数の上限を、24000本とすることができる。また、強化繊維束20は、強化繊維の単繊維を、集束剤で収束させたものであってもよく、集束剤を用いずに束ねたものであってもよい。集束剤としては、例えばエポキシ樹脂系サイジング剤を用いることができる。
【0036】
メッシュ状強化繊維材料2の形態は、メッシュ状(網状)であれば特に限定されるものではないが、例えば、織物や編物、またはこれらの硬化物である。ただし、メッシュ状強化繊維材料は、織物であることが好ましい。メッシュ状強化繊維材料が織物である場合、強化繊維が直線状であり、且つ織られた形態であるため、外力に対する耐久性をより向上させることができる。
【0037】
メッシュ状強化繊維材料2は、例えば経糸と緯糸を織らずに補助糸を用いてメッシュ状に形成したものでもよい。補助糸の材質は、特に限定されないが、例えば、ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂で構成されることが好ましい。ただし、補助糸を用いて形成されたメッシュ状強化繊維材料は、メッシュを形成する強化繊維束同士が交絡していないので、メッシュ状強化繊維材料2は、一方向に引きそろえた強化繊維束を用いた、二軸配向織物、三軸配向織物または四軸配向織物であるか、または、一方向に引きそろえた強化繊維束を用いた編物であることが好ましい。ここで、「二軸配向織物」とは、平織、綾織、朱子織等の、経糸と緯糸が90°の交差角で織られた織物である。「三軸配向織物」とは、60°の角度で交差している2方向の経糸に緯糸が組織されており、各糸が60°の交差角で織られた織物である。「四軸配向織物」とは、経糸と緯糸による二軸に、さらに斜め方向に2本の糸が45°の交差角となるように織られた織物である。好ましくは、経糸や緯糸として、樹脂が含浸されていない炭素繊維束を用いる。これにより、より安定したメッシュの開口部を形成することができる。
【0038】
メッシュ状強化繊維材料2が含有する強化繊維の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維やSiC繊維などのセラミックス繊維、アラミド繊維などの有機繊維等から、1種または2種以上を用いることができる。
【0039】
メッシュ状強化繊維材料2がマトリックス樹脂を含有する場合、該マトリックス樹脂の種類は、特に限定されるものではないが、メッシュ状強化繊維材料2と短繊維強化プラスチック3との接着性を向上させるために、短繊維強化プラスチック3のマトリックス樹脂との接着性を有する樹脂が望ましく、短繊維強化プラスチック3のマトリックス樹脂と同じ樹脂を用いることがより望ましい。
【0040】
メッシュ状強化繊維材料2の厚さは、特に限定されないが、例えば2mm以下である。
【0041】
メッシュ状強化繊維材料2と、短繊維強化プラスチック3と、を接合する方法は、特に限定されないが、例えば、バッチ式や連続式の加熱プレス機を用いる方法が主に利用される。
【0042】
(成形体について)
積層体1を金型に入れて賦形することによって、積層体1とは異なる形状(金型に対応する形状)に成形された成形体を得ることができる。賦形のために金型に入れる積層体1は、1プライであってもよく、複数プライ積層させてもよい。なお、マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を使用した場合、短繊維強化プラスチック3を金型に入れて賦形した後、メッシュ状強化繊維材料2及び賦形後の短繊維強化プラスチック3を積層させ、接合することによって、成形体を得ることもできる。ただし、その場合には、賦形後の短繊維強化プラスチック3の樹脂がメッシュ状強化繊維材料2の目開きに十分充填されない恐れや、樹脂が未含浸のメッシュ状強化繊維材料2を用いた場合に賦形後の短繊維強化プラスチック3の樹脂が強化繊維束に十分含浸されない恐れがある。そのため、積層体1を金型に入れて賦形して成形体を得る方法が好ましい。
【0043】
積層体1の用途については、特に限定されないが、例えば、スマートフォンやタブレット、ノートPCなどの携帯用電子機器や家電等の一般電気機器の筐体、自動車のエンジンカバーやアンダーカバー、車載電池ボックスカバーなどの運輸・輸送機器の2次構造部材、土木建築材料、シューズソールやヘルメットなどのスポーツ及び安全用品などに好適に用いられる。なお、積層体1の目標耐衝撃強度、目標引張強度及び目標曲げ強度は、積層体1の用途に応じて種々変更される。一般的にはアルミダイキャスト(例えばADC12、引張強度:310MPa)との比較となるが、例えば、スマートフォンやタブレット、ノートパソコンなどの携帯電子機器の筐体であれば、JIS規格に基づく標準試験片にて、引張強度及び曲げ強度として200MPa以上が要求され、耐衝撃強度として40J/m以上が要求される。また、エンジンカバーや車載電池ケースなどの2次構造部材であれば、同様に、引張強度として100MPa以上、曲げ強度として150MPa以上、耐衝撃強度として10J/m以上が要求される。このように、目標耐衝撃強度、目標引張強度及び目標曲げ強度は、積層体1の用途に応じて異なるところ、本発明によれば、高い引張強度が要求される用途や、高い曲げ強度が要求される用途、高い引張強度及び曲げ強度が要求される用途など、各用途における引張強度、曲げ強度及び耐衝撃強度の要求に応じた積層体を提供することができる。
【0044】
(積層体1の製造方法)
積層体1の製造方法について、図4を用いて以下に説明する。図4は、積層体1の製造方法を示すフローチャートである。まず、熱硬化性または熱可塑性のマトリックス樹脂と、該マトリックス樹脂を強化する短繊維と、を含有する、一対の短繊維強化プラスチックの母材(本実施形態では、シート状中間材料)を準備する(S1)。次に、強化繊維束20を、所定の目開きとなるようにメッシュ状(網目状)に配置した、メッシュ状強化繊維材料2を準備する(S2)。S1で準備された一対の短繊維強化プラスチックのシート状中間材料及びS2で準備されたメッシュ状強化繊維材料2を、一方の短繊維強化プラスチックのシート状中間材料、メッシュ状強化繊維材料2、他方の短繊維強化プラスチックのシート状中間材料、の順で積層させて、母材積層体を得る(S3)。S3で積層した一対の短繊維強化プラスチックのシート状中間材料及びメッシュ状強化繊維材料2(すなわち、母材積層体)を、一体に接合させることにより(S4)、短繊維強化プラスチック3b、メッシュ状強化繊維材料2、短繊維強化プラスチック3a、の順に積層した、積層体1が製造される。S4で製造された積層体1を、金型を用いて賦形することにより(S5)、金型に対応した形状の成形体が得られる。
【0045】
(実施例)
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明する。
【0046】
[実施例1、2、比較例1に使用する短繊維強化プラスチックのシート状中間材料A1の製造]
現場重合型熱可塑性プリプレグ NS‐TEPreg(Vf:55%、日鉄ケミカル&マテリアル、登録商標)を10mm×10mmのサイズの短冊状のチップに裁断して金型内に繊維方向がランダムとなるように約65g堆積し、0.5mm厚のスペーサーを用いて温度180℃、圧力80MPaで5分間加熱プレスすることにより、短繊維強化プラスチックのシート状中間材料A1を作成した。
【0047】
[実施例3、4、比較例2に使用する短繊維強化プラスチックのシート状中間材料A2の製造]
二軸押出成形機(日本製鋼所製、TEM26SS)にフェノキシ樹脂YP-50Sをメーンホッパーより70部投入し、下流のサイドホッパーから炭素繊維のチョップドファイバー(三菱ケミカル製、φ7μm、3mm長)を30部となるように供給し、230℃で溶融混合を行った。ダイス口から吐出されたストランドを水槽で冷却した後ペレタイザーで約3mm長に裁断しペレットを得た。前記ペレットを金型内に約50g堆積し、0.5mm厚のスペーサーを用いて温度180℃、圧力80MPaで5分間加熱プレスすることにより、短繊維強化プラスチックのシート状中間材料A2を作成した。
【0048】
[実施例1~4に使用するメッシュ状強化繊維材料Bの製造]
6Kの炭素繊維束(東レ製、ターン数:20回/m)を経糸及び緯糸とし、これらをポリエステル製の400Texの止め糸を用いたからみ織りで固定することにより、4mm×4mmの目開きで、開口率が53%のメッシュ状強化繊維材料Bを作成した。メッシュ状強化繊維材料Bは、その後、乾燥後の樹脂含有量(RC)が42%となるように熱可塑性エポキシ樹脂(現場重合型フェノキシ樹脂)を含浸させて各種サンプル作製に供した。
【0049】
[実施例1、3における積層体の製造方法]
1プライのメッシュ状強化繊維材料Bを、2枚のシート状中間材料A1で上下から挟み込むように積層し、予め180℃に加熱したプレス機にセットして、圧力32MPaで1分間ホットプレスを行うことにより、実施例1で用いられる平板状の積層体が得られた。シート状中間材料としてシート状中間材料A2を用いて、同様の工程を経ることにより、実施例3で用いられる平板状の積層体が得られた。得られた積層体は、冷却後、各種評価に供された。
【0050】
[実施例2、4における積層体の製造方法]
1枚のシート状中間材料A1を、2プライのメッシュ状強化繊維材料Bで上下から挟み込むように積層し、予め180℃に加熱したプレス機にセットして、圧力32MPaで1分間ホットプレスを行うことにより、実施例2で用いられる平板状の積層体が得られた。シート状中間材料としてシート状中間材料A2を用いて、同様の工程を経ることにより、実施例4で用いられる平板状の積層体が得られた。得られた積層体は、冷却後、各種評価に供された。
【0051】
[比較例1、2における積層体の製造方法]
2枚のシート状中間材料A1を予め180℃に加熱したプレス機にセットして、圧力32MPaで1分間ホットプレスを行うことにより、比較例1で用いられる平板状の積層体が得られた。シート状中間材料としてシート状中間材料A2を用いて、同様の工程を経ることにより、比較例2で用いられる平板状の積層体が得られた。得られた積層体は、冷却後、各種評価に供された。
【0052】
[引張強度の評価方法]
実施例1、3及び比較例1、2において、各積層体を短冊状にした試験片を作製し、該試験片を用いて、JIS K 7164に基づく引張試験を行い、各実施例及び各比較例における引張強度を測定した。
【0053】
[曲げ強度の評価方法]
実施例1~4及び比較例1、2において、各積層体を短冊状にした試験片を作製し、該試験片を用いて、JIS K 7074に基づく3点曲げ試験を行い、各実施例及び各比較例における曲げ強度を測定した。
【0054】
[耐衝撃性の評価方法]
実施例1~4及び比較例1、2において、各積層体から、ノッチを含有させずに試験片を作製し、2.75Jのハンマーを用いて、該試験片に対してJIS K 7110に基づくIzod衝撃試験を実施し、耐衝撃性を測定した。
【0055】
[成形加工性の評価方法]
実施例1、3における各積層体を、半径50mmの半球状の金型を用いて、温度180℃、圧力80MPaの条件にて熱プレス機で2次成形し、得られた成形体に生じた成形シワの数をそれぞれ数えた。
また、メッシュ状繊維強化材料Bの代わりに、熱可塑性エポキシ樹脂を含浸させた3KのPAN系炭素繊維を用いた綾織クロス材(目付量:200g/m)を用いて、実施例1、3と同様の工程を経ることによって、各成形体を作製し、それぞれ参考例1、2とした。参考例1及び2の各成形体に生じた成形シワの数を数えた。
【0056】
実施例及び比較例の構成及び評価結果を、表1に示す。
【表1】
【0057】
表1を参照して、実施例1における引張強度(109.1[MPa])、曲げ強度(178.5[MPa])及び耐衝撃強度(226[J/m])は、比較例1における引張強度(49.1[MPa])、曲げ強度(167.9[MPa])及び耐衝撃強度(114[J/m])を、それぞれ上回った。
【0058】
実施例2における曲げ強度(342[MPa])及び耐衝撃強度(561[J/m])は、比較例1における曲げ強度(167.9[MPa])及び耐衝撃強度(114[J/m])を、それぞれ大幅に上回った。
【0059】
実施例3における引張強度(187.4[MPa])、曲げ強度(119.7[MPa])及び耐衝撃強度(357[J/m])は、比較例2における引張強度(69.2[MPa])、曲げ強度(118[MPa])及び耐衝撃強度(249[J/m])を、それぞれ上回った。
【0060】
実施例4における曲げ強度(224[MPa])及び耐衝撃強度(662[J/m])は、比較例2における曲げ強度(118[MPa])及び耐衝撃強度(249[J/m])を、それぞれ大幅に上回った。
【0061】
実施例1で得られた成形体の成形シワの数は、参考例1で得られた成形体の成形シワの数よりも少なくなった。また、実施例3で得られた成形体の成形シワの数は、参考例2で得られた成形体の成形シワの数よりも少なくなった。したがって、クロス材を用いる場合より、メッシュ状繊維強化材料を用いた方が、成形加工性がより良好となった。これは、メッシュ状強化繊維材料が、クロス材と比較して柔軟な構造を有するためであると考えられる。
【符号の説明】
【0062】
1、1´ 積層体 2 メッシュ状強化繊維材料 3 短繊維強化プラスチック 20 強化繊維束
図1
図2
図3
図4