(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092166
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】樹脂成形物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 23/10 20060101AFI20240701BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20240701BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20240701BHJP
B29C 70/12 20060101ALI20240701BHJP
B29C 70/42 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
C08L23/10
C08K7/14
B29C45/00
B29C70/12
B29C70/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207911
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】杉山 訓之
(72)【発明者】
【氏名】坪井 優之介
【テーマコード(参考)】
4F205
4F206
4J002
【Fターム(参考)】
4F205AA04
4F205AA11
4F205AA50
4F205AB25
4F205AD16
4F205AR15
4F205HA12
4F205HA27
4F205HA34
4F205HA36
4F205HB01
4F205HF05
4F205HK04
4F206AA04
4F206AA11
4F206AA50
4F206AB11
4F206AB25
4F206AE10
4F206AR03
4F206JA07
4F206JL02
4J002BB121
4J002BB151
4J002BP021
4J002DL006
4J002FA046
4J002FD016
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】従来と同程度のガラス繊維含有量を有しながら、高いシャルピー衝撃強さと良好な表面外観とを両立できる樹脂成形物と、その製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂成形物であって、前記樹脂成形物の総質量に対して、ポリプロピレン樹脂(A)50~90質量%と、ガラス繊維(B)10~50質量%とを含み、前記ガラス繊維(B)の重量平均繊維長が800~2000μmであり、前記ガラス繊維(B)の総質量に対する、繊維長が1200μm以上5000μm未満のガラス繊維(b1)の割合が15~40質量%である、樹脂成形物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形物であって、
前記樹脂成形物の総質量に対して、ポリプロピレン樹脂(A)50~90質量%と、ガラス繊維(B)10~50質量%とを含み、
前記ガラス繊維(B)の重量平均繊維長が800~2000μmであり、
前記ガラス繊維(B)の総質量に対する、繊維長が1200μm以上5000μm未満のガラス繊維(b1)の割合が15~40質量%である、樹脂成形物。
【請求項2】
前記ガラス繊維(B)の総質量に対する、繊維長が800μm以上1200μm未満のガラス繊維(b2)の割合が15質量%以下である、請求項1に記載の樹脂成形物。
【請求項3】
前記ポリプロピレン樹脂(A)が、プロピレンのホモポリマー、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー、及びプロピレンとエチレンのランダムコポリマーからなる群より選択される少なくとも1つの樹脂を含む、請求項1または2に記載の樹脂成形物。
【請求項4】
前記ポリプロピレン樹脂(A)が、プロピレンのホモポリマー、及びプロピレンとエチレンのブロックコポリマーからなる群より選択される少なくとも1つの樹脂を含む、請求項1または2に記載の樹脂成形物。
【請求項5】
前記ガラス繊維(B)の平均繊維径が5~20μmである、請求項1または2に記載の樹脂成形物。
【請求項6】
前記樹脂成形物が、混合物(Z)の成形物であり、
前記混合物(Z)が、ガラス長繊維(m1)を長さ方向に揃えた繊維束に、ポリプロピレン樹脂(a1)を含浸させて一体化させた(X-1)からなる、または前記(X-1)及びポリプロピレン樹脂(a2)を含む組成物(X-2)からなるポリプロピレン樹脂含浸ガラス長繊維束(X)と、ガラス繊維(m2)及びポリプロピレン樹脂(a3)を含むガラス繊維含有樹脂成形物のリサイクル材(Y)とを含む、請求項1または2に記載の樹脂成形物。
【請求項7】
前記混合物(Z)の総質量に対する前記リサイクル材(Y)の割合が、50~85質量%である、請求項6に記載の樹脂成形物。
【請求項8】
請求項1または2に記載の樹脂成形物の製造方法であって、
前記樹脂成形物中の、前記ガラス繊維(B)の重量平均繊維長が800~2000μmとなり、かつ前記ガラス繊維(B)中の、繊維長が1200μm以上5000μm未満の前記ガラス繊維(b1)の割合が、前記ガラス繊維(B)の総質量に対して15~40質量%となるように、原料樹脂組成物を射出成形することを含む、樹脂成形物の製造方法。
【請求項9】
前記射出成形することが、20MPa未満の背圧で前記原料樹脂組成物を射出成形することを含む、請求項8に記載の樹脂成形物の製造方法。
【請求項10】
さらに、前記原料樹脂組成物を調製することを含み、
前記原料樹脂組成物を調製することが、ポリプロピレン樹脂含浸ガラス長繊維束(X)とリサイクル材(Y)とを含む混合物(Z)を得ることを含み、
前記ポリプロピレン樹脂含浸ガラス長繊維束(X)が、ガラス長繊維(m1)を長さ方向に揃えた繊維束に、ポリプロピレン樹脂(a1)を含浸させて一体化させた(X-1)からなる、または前記(X-1)及びポリプロピレン樹脂(a2)を含む組成物(X-2)からなり、
前記リサイクル材(Y)が、ガラス繊維(m2)及びポリプロピレン樹脂(a3)を含むガラス繊維含有樹脂成形物のリサイクル材である、請求項8に記載の樹脂成形物の製造方法。
【請求項11】
前記ポリプロピレン樹脂含浸ガラス長繊維束(X)中の前記ガラス長繊維(m1)の平均繊維長が3~30mmである、請求項10に記載の樹脂成形物の製造方法。
【請求項12】
前記ポリプロピレン樹脂含浸ガラス長繊維束(X)中の前記ガラス長繊維(m1)の割合(GF1)と、前記リサイクル材(Y)中の前記ガラス繊維(m2)の割合(GF2)とが、下記式(1)を満たす、請求項10に記載の樹脂成形物の製造方法。
0≦|GF1-GF2|≦20 ・・・(1)
(式(1)中、GF1は前記ポリプロピレン樹脂含浸ガラス長繊維束(X)の総質量に対する前記ガラス長繊維(m1)の割合(質量%)を表し、GF2は前記リサイクル材(Y)の総質量に対する前記ガラス繊維(m2)の割合(質量%)を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、ガラス繊維含有ポリプロピレン樹脂等のガラス繊維強化樹脂組成物の成形物がよく知られている。このうち、特にガラス短繊維強化樹脂組成物の成形物は様々な分野で使用されている。その用途によって材料に求められる機械的特性(例えば、引張強さ、曲げ強さ、シャルピー衝撃強さ等)は異なるが、より高いシャルピー衝撃強さが求められる分野では、ガラス短繊維強化樹脂組成物中のガラス短繊維含有量を高くすること等が検討される。しかしながら、単純に樹脂組成物中のガラス短繊維含有量を高くした場合、得られる成形物の比重も高くなる。そのため、比重の増大を忌避する分野では、ガラス長繊維強化樹脂組成物を選択して機械強度を充足させることもあるが、ガラス長繊維強化樹脂組成物の成形物は表面にガラス繊維の凝集物が現れる場合があり、成形物の表面外観に劣るという問題がある。
【0003】
特許文献1には、ガラス短繊維強化樹脂組成物と、ガラス長繊維強化樹脂組成物とを混合して、引張強さと表面外観とを両立させた成形物を得ることが提案されている。しかしながら特許文献1には、得られた成形物の表面外観については十分に評価されていない。また、成形物のシャルピー衝撃強さについても何ら評価されていない。
【0004】
ところで、引張強さが樹脂成形物を一方向に引っ張る際に加えることができる最大応力であるのに対し、シャルピー衝撃強さは、加えられた衝撃エネルギーを樹脂成形物が吸収できる能力を表す指標の一つである。すなわち、シャルピー衝撃強さは成形物の耐衝撃性の指標となる機械特性であり、繊維強化複合材料では、繊維や樹脂の破断、樹脂及び繊維の界面の破壊、繊維同士の絡み合い構造の変形や破壊等に大きく影響を受けると考えられる。そのため、単純に機械強度を高くする方法では、選択的なシャルピー衝撃強さの向上は難しいと考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、従来と同程度のガラス繊維含有量を有しながら、高いシャルピー衝撃強さと良好な表面外観とを両立できる樹脂成形物と、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは鋭意検討した結果、重量平均繊維長が800~2000μmのガラス繊維(B)を含み、かつ前記ガラス繊維(B)中の繊維長が1200μm以上5000μm未満のガラス繊維(b1)の割合が一定の範囲にある樹脂成形物であれば、前述の全ての課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
[1]樹脂成形物であって、
前記樹脂成形物の総質量に対して、ポリプロピレン樹脂(A)50~90質量%と、ガラス繊維(B)10~50質量%とを含み、
前記ガラス繊維(B)の重量平均繊維長が800~2000μmであり、
前記ガラス繊維(B)の総質量に対する、繊維長が1200μm以上5000μm未満のガラス繊維(b1)の割合が15~40質量%である、樹脂成形物。
[2]前記ガラス繊維(B)の総質量に対する、繊維長が800μm以上1200μm未満のガラス繊維(b2)の割合が15質量%以下である、[1]に記載の樹脂成形物。
[3]前記ポリプロピレン樹脂(A)が、プロピレンのホモポリマー、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー、及びプロピレンとエチレンのランダムコポリマーからなる群より選択される少なくとも1つの樹脂を含む、[1]または[2]に記載の樹脂成形物。
[4]前記ポリプロピレン樹脂(A)が、プロピレンのホモポリマー、及びプロピレンとエチレンのブロックコポリマーからなる群より選択される少なくとも1つの樹脂を含む、[1]から[3]のいずれかに記載の樹脂成形物。
[5]前記ガラス繊維(B)の平均繊維径が5~20μmである、[1]から[4]のいずれかに記載の樹脂成形物。
[6]前記樹脂成形物が、混合物(Z)の成形物であり、
前記混合物(Z)が、ガラス長繊維(m1)を長さ方向に揃えた繊維束に、ポリプロピレン樹脂(a1)を含浸させて一体化させた(X-1)からなる、または前記(X-1)及びポリプロピレン樹脂(a2)を含む組成物(X-2)からなるポリプロピレン樹脂含浸ガラス長繊維束(X)と、ガラス繊維(m2)及びポリプロピレン樹脂(a3)を含むガラス繊維含有樹脂成形物のリサイクル材(Y)とを含む、[1]から[5]のいずれかに記載の樹脂成形物。
[7]前記混合物(Z)の総質量に対する前記リサイクル材(Y)の割合が、50~85質量%である、[6]に記載の樹脂成形物。
[8][1]から[7]のいずれかに記載の樹脂成形物の製造方法であって、
前記樹脂成形物中の、前記ガラス繊維(B)の重量平均繊維長が800~2000μmとなり、かつ前記ガラス繊維(B)中の、繊維長が1200μm以上5000μm未満の前記ガラス繊維(b1)の割合が、前記ガラス繊維(B)の総質量に対して15~40質量%となるように、原料樹脂組成物を射出成形することを含む、樹脂成形物の製造方法。
[9]前記射出成形することが、20MPa未満の背圧で前記原料樹脂組成物を射出成形することを含む、[8]に記載の樹脂成形物の製造方法。
[10]さらに、前記原料樹脂組成物を調製することを含み、
前記原料樹脂組成物を調製することが、ポリプロピレン樹脂含浸ガラス長繊維束(X)とリサイクル材(Y)とを含む混合物(Z)を得ることを含み、
前記ポリプロピレン樹脂含浸ガラス長繊維束(X)が、ガラス長繊維(m1)を長さ方向に揃えた繊維束に、ポリプロピレン樹脂(a1)を含浸させて一体化させた(X-1)からなる、または前記(X-1)及びポリプロピレン樹脂(a2)を含む組成物(X-2)からなり、
前記リサイクル材(Y)が、ガラス繊維(m2)及びポリプロピレン樹脂(a3)を含むガラス繊維含有樹脂成形物のリサイクル材である、[8]に記載の樹脂成形物の製造方法。
[11]前記ポリプロピレン樹脂含浸ガラス長繊維束(X)中の前記ガラス長繊維(m1)の平均繊維長が3~30mmである、[10]に記載の樹脂成形物の製造方法。
[12]前記ポリプロピレン樹脂含浸ガラス長繊維束(X)中の前記ガラス長繊維(m1)の割合(GF1)と、前記リサイクル材(Y)中の前記ガラス繊維(m2)の割合(GF2)とが、下記式(1)を満たす、[10]または[11]に記載の樹脂成形物の製造方法。
0≦|GF1-GF2|≦20 ・・・(1)
(式(1)中、GF1は前記ポリプロピレン樹脂含浸ガラス長繊維束(X)の総質量に対する前記ガラス長繊維(m1)の割合(質量%)を表し、GF2は前記リサイクル材(Y)の総質量に対する前記ガラス繊維(m2)の割合(質量%)を表す。)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来と同程度のガラス繊維含有量を有しながら、高いシャルピー衝撃強さと良好な表面外観とを両立できる樹脂成形物と、その製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。一実施形態について記載した特定の説明が他の実施形態についても当てはまる場合には、他の実施形態においてはその説明を省略している場合がある。本明細書において数値範囲を示す「~」の記載は、「以上以下」であることを意味している。例えば、「800~2000μm」とは、「800μm以上2000μm以下」を意味する。
【0010】
本明細書において、「重量平均繊維長」とは、樹脂成形物を灰化した後に媒体に分散させ、前記灰化物中の繊維を画像処理することによって算出された繊維長の平均値を指す。具体的な測定方法は本明細書に記載の通りである。
「繊維長」とは、ガラス繊維1本の繊維長さを指す。
「平均繊維径」とは、走査型電子顕微鏡で約100本のガラス繊維の繊維径(繊維断面における最も長い径)を測定し、その平均値を指す。なお、樹脂成形物中のガラス繊維(B)の平均繊維径は、樹脂成形物を灰化した後の灰化残渣中のガラス繊維(B)約100本の繊維径を走査型電子顕微鏡で測定し、その平均値を指す。具体的な測定方法は本明細書に記載の通りである。
「平均繊維長」は、長繊維束(X)中のガラス長繊維の繊維長さを指す。長繊維束(X)中のガラス長繊維の繊維長はペレットの長さと同じとなるため、約100個のペレットの長さをノギスなどで測定し、その平均値とする。
【0011】
[樹脂成形物]
本実施形態に係る樹脂成形物は、樹脂成形物の総質量に対して、ポリプロピレン樹脂(A)50~90質量%と、ガラス繊維(B)10~50質量%とを含み、ガラス繊維(B)の重量平均繊維長が800~2000μmであり、ガラス繊維(B)の総質量に対する、繊維長が1200μm以上5000μm未満のガラス繊維(b1)の割合が15~40質量%であることを特徴とする。本実施形態に係る樹脂成形物によれば、従来のガラス繊維含有ポリプロピレン樹脂成形物と同程度のガラス繊維含有量を有しながら、高いシャルピー衝撃強さと良好な表面外観とを両立することができる。
【0012】
重量平均繊維長が800~2000μmであり、かつ繊維長が1200μm以上5000μm未満のガラス繊維(b1)を15~40質量%含むガラス繊維(B)を含む、本実施形態に係る樹脂成形物は、例えば、樹脂(A)とガラス繊維とを含む原料樹脂組成物を射出成形する際の条件を調整する、好ましくは、射出成形時の背圧を低く設定すること等により調製されやすい。または、ガラス長繊維をポリプロピレン樹脂に含浸させた、ポリプロピレン樹脂含浸ガラス長繊維束と、ガラス短繊維を含む樹脂組成物とを含む原料樹脂組成物を、比較的低い背圧で射出成形すること等によっても調製されやすい。
【0013】
<ポリプロピレン樹脂(A)>
本実施形態に係る樹脂成形物は、ポリプロピレン樹脂(A)(以下、「樹脂(A)」と記載することもある)を含む。樹脂成形物中の樹脂(A)の割合は、樹脂成形物の総質量に対して、50~90質量%である。樹脂成形物中の樹脂(A)の割合は、50~90質量%の範囲で任意に調整できる。一実施形態において、樹脂成形物中の樹脂(A)の割合は、樹脂成形物の総質量に対して、55~90質量%であってもよく、60~90質量%であってもよく、60~85質量%であってもよく、60~80質量%であってもよい。また一実施形態においては、樹脂成形物中の樹脂(A)の割合は、樹脂成形物の総質量に対して、70~90質量%であってもよく、80~90質量%であってもよい。
【0014】
樹脂(A)としては、例えば、プロピレンのホモポリマー(以下、「PPホモポリマー」と記載することもある)、プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体等が挙げられる。
プロピレンのホモポリマーとしては、例えば、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレンが挙げられる。これらは一種単独で用いられてもよく、二種以上を併用してもよい。
プロピレン以外のα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、ブテン、ヘキセン、ヘプテン等が挙げられる。これらは一種単独で用いられてもよく、二種以上を併用してもよい。このうち、プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体としては、プロピレンとエチレンとのブロックコポリマー、プロピレンとエチレンとのランダムコポリマーが好ましい。
一実施形態において、樹脂(A)は、PPホモポリマー、プロピレンとエチレンとのブロックコポリマー(以下、「PPブロックコポリマー」と記載することもある)、及びプロピレンとエチレンとのランダムコポリマーからなる群より選択される少なくとも1つの樹脂を含むことが好ましく、PPホモポリマー、及びPPブロックコポリマーからなる群より選択される少なくとも1つの樹脂を含むことがより好ましい。
【0015】
一実施形態において、ガラス繊維(B)への濡れ性が向上しやすくなる観点から、樹脂(A)は、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂及び無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂からなる群より選択される少なくとも1つの酸変性ポリプロピレン樹脂を含むことができる。樹脂(A)が酸変性ポリプロピレン樹脂を含む場合、樹脂(A)中の酸量(酸変性ポリプロピレン樹脂に含まれる酸成分の量)が、無水マレイン酸換算で平均0.05~0.5質量%の範囲となるように、酸変性ポリプロピレン樹脂を併用することがより好ましい。
【0016】
<ガラス繊維(B)>
本実施形態に係る樹脂成形物は、ガラス繊維(B)を含む。樹脂成形物中のガラス繊維(B)の割合は、10~50質量%である。樹脂成形物中のガラス繊維(B)の割合は、10~50質量%の範囲で任意に調整できる。一実施形態において、樹脂成形物中のガラス繊維(B)の割合は、樹脂成形物の総質量に対して、10~45質量%であってもよく、10~40質量%であってもよく、15~40質量%であってもよく、20~40質量%であってもよい。また一実施形態においては、樹脂成形物中のガラス繊維(B)の割合は、樹脂成形物の総質量に対して、10~30質量%であってもよく、10~20質量%であってもよく、20~50質量%であってもよく、30~50質量%であってもよく、35~50質量%であってもよく、40~50質量%であってもよい。
本明細書において、ガラス繊維(B)の重量平均繊維長、ガラス繊維(b1)及び後述するガラス繊維(b2)、並びにガラス繊維(b0)、(b3)及び(b4)の繊維長は、樹脂成形物中の値を意味する。
【0017】
樹脂成形物中のガラス繊維(B)の重量平均繊維長は、800~2000μmである。また、ガラス繊維(B)中の繊維長が1200μm以上5000μm未満のガラス繊維(b1)の割合は、ガラス繊維(B)の総質量に対して、15~40質量%である。このようなガラス繊維(B)を含むことで、成形物中のガラス繊維含有量を高くすることなく、高いシャルピー衝撃強さと良好な表面外観とを両立した成形物となる。樹脂成形物中のガラス繊維(B)の重量平均繊維長、及びガラス繊維(b1)の割合は以下の方法で測定できる。
(重量平均繊維長の測定方法)
樹脂成形物5gを電気炉に投入し、600℃で2時間加熱して灰化する。灰化残渣を5質量%ポリエチレングリコール水溶液に十分分散させたのち、シャーレに移して、実体顕微鏡でガラス繊維(B)を観察する。その際、灰化残渣中のガラス繊維(B)1000本の画像をCCDカメラからPCに取り込み、画像測定器(例えば、(株)ニレコ製、製品名「LUZEX(登録商標) AP」)を用いた画像処理手法により、前記1000本のガラス繊維(B)の繊維長を測定し(カットオフ上限:100μm未満)、その平均値を重量平均繊維長とする。なお、重量平均繊維長は、前記平均値の一の位を四捨五入した値を採用する。
また、前記1000本のガラス繊維(B)のうち、繊維長が1200μm以上5000μm未満のガラス繊維(b1)の本数を、ガラス繊維(B)中のガラス繊維(b1)の割合とする。なお、ガラス繊維(b1)の繊維長は、測定値の一の位を四捨五入した値を採用する。以下、後述するガラス繊維(b0)、(b2)~(b4)も同様である。
【0018】
よりシャルピー衝撃強さが良好となりやすい観点からは、ガラス繊維(B)の重量平均繊維長は850~2000μmが好ましく、900~1900μmがより好ましく、1000~1900μmがさらに好ましい。また、ガラス繊維(B)中のガラス繊維(b1)の割合は、16~40質量%が好ましく、19~35質量%がより好ましく、19~31質量%がさらに好ましい。
【0019】
本実施形態に係る樹脂成形物に含まれるガラス繊維(B)は、繊維長が800μm以上1200μm未満のガラス繊維(b2)の割合が、ガラス繊維(B)の総質量に対して、15質量%以下であることが好ましい。ガラス繊維(B)中のガラス繊維(b2)の割合が15質量%以下であれば、成形物の表面外観がより良好となりやすい。なお、ガラス繊維(B)中のガラス繊維(b2)の割合は、前述の「重量平均繊維長の測定方法」において、1000本のガラス繊維(B)中の、繊維長が800μm以上1200μm未満のガラス繊維の本数から算出することができる。
【0020】
一実施形態において、ガラス繊維(B)中のガラス繊維(b2)の割合は、13質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、8質量%以下がさらに好ましい。また、ガラス繊維(b2)の下限は1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、4質量%以上がさらに好ましく、5質量%以上が特に好ましい。一実施形態において、ガラス繊維(B)中のガラス繊維(b2)の割合は、1~15質量%であってもよく、3~15質量%であってもよく、4~13質量%であってもよく、4~8質量%であってもよい。
【0021】
一実施形態において、ガラス繊維(B)中のガラス繊維(b1)及び(b2)の合計量は、ガラス繊維(B)の総質量に対して、15質量%超55質量%以下であってもよく、20~53質量%であってもよい。
【0022】
一実施形態において、ガラス繊維(B)は、繊維長が5000μm以上のガラス繊維(b0)、繊維長が400μm以上800μm未満のガラス繊維(b3)、繊維長が400μm未満のガラス繊維(b4)を含むことができる。ガラス繊維(b4)の割合は、ガラス繊維(B)の総質量に対して、10~60質量%以下であってもよく、15~60質量%であってもよく、20~55質量%であってもよい。ガラス繊維(B)が、ガラス繊維(b1)と、繊維長が400μm未満のガラス繊維(b4)を含むことで、シャルピー衝撃強さと表面外観とがより両立しやすくなる。また、ガラス繊維(b3)及びガラス繊維(b0)の割合は、ガラス繊維(B)の総質量から前述のガラス繊維(b1)、(b2)及び(b4)の合計量(質量%)を差し引いた残部とすることができる。なお、本実施形態に係る樹脂成形物には、ガラス繊維(B)がガラス繊維(b0)を含まない態様も含まれる。
【0023】
一実施形態において、ガラス繊維(B)の平均繊維径は、5~20μmであることが好ましく、6~18μmであることがより好ましく、9~18μmであることがさらに好ましい。平均繊維径が前記範囲内のガラス繊維(B)を含むことにより、より高いシャルピー衝撃強さと良好な表面外観とを両立しやすくなる。
【0024】
本実施形態に係る樹脂成形物は、上述の通り、特徴あるガラス繊維(B)を含むため、従来と同程度のガラス繊維含有量を有しながら、成形物の機械特性のうち、特にシャルピー衝撃強さを向上させることができる。その正確な理由は不明であるが、ガラス長繊維成分で構築されたガラス繊維同士の絡み合い構造の変形や破壊(ガラス繊維自身の折れも含む)により、衝撃エネルギーが吸収されやすくなること、樹脂とガラス繊維の界面で衝撃エネルギーを減衰させるための十分な面積(距離)が確保されやすくなること等によるものと推察される。
【0025】
一実施形態において、樹脂成形物は、混合物(Z)の成形物とすることができる。一実施形態において、混合物(Z)は、ガラス長繊維(m1)を長さ方向に揃えた繊維束に、ポリプロピレン樹脂(a1)を含浸させて一体化させた(X-1)からなる、または前記(X-1)及びポリプロピレン樹脂(a2)を含む組成物(X-2)からなるポリプロピレン樹脂含浸ガラス長繊維束(X)と、ガラス繊維(m2)及びポリプロピレン樹脂(a3)を含むガラス繊維含有樹脂成形物のリサイクル材(Y)とを含むことができる。混合物(Z)がリサイクル材(Y)を含むことにより、環境負荷のより少ない、環境配慮型樹脂成形物とすることができる。
【0026】
また別の実施形態においては、混合物(Z)は、ポリプロピレン樹脂含浸ガラス長繊維束(X)と、ガラス短繊維及びポリプロピレン樹脂(a3)を含むガラス短繊維含有樹脂組成物とを含んでいてもよい。また、その他の実施形態においては、混合物(Z)は、ポリプロピレン樹脂含浸ガラス長繊維束(X)と、リサイクル材(Y)と、前記ガラス短繊維含有樹脂組成物とを含んでいてもよい。
【0027】
樹脂成形物が混合物(Z)の成形物である場合、樹脂(A)は、ポリプロピレン樹脂含浸ガラス長繊維束(X)(以下、「長繊維束(X)」と記載することもある)由来のポリプロピレン樹脂(a1)及び(a2)と、リサイクル材(Y)由来のポリプロピレン樹脂(a3)とを含むことができる。
一実施形態において、混合物(Z)の総質量に対するリサイクル材(Y)の割合は、環境への負荷がより少ない樹脂成形物とする観点から、及びシャルピー衝撃強さを向上させやすい観点からは、50~85質量%であってもよく、60~80質量%であってもよい。
【0028】
[樹脂成形物の製造方法]
本実施形態に係る樹脂成形物は、樹脂成形物中の、ガラス繊維(B)の重量平均繊維長が800~2000μmとなり、かつガラス繊維(B)中の、繊維長が1200μm以上5000μm未満のガラス繊維(b1)の割合が、ガラス繊維(B)の総質量に対して15~40質量%となるように、原料樹脂組成物を射出成形することを含む方法にて、製造することができる。以下、本実施形態に係る樹脂成形物の製造方法について説明する。
【0029】
本実施形態に係る製造方法は、原料樹脂組成物を射出成形することを含む。一実施形態においては、20MPa未満の背圧で射出成形することが好ましい。射出成形時の背圧を20MPa未満とすることにより、ガラス繊維(B)の重量平均繊維長及び繊維長の分布を調整しやすくなる。射出成形時の背圧は15MPa以下がより好ましく、10MPa以下がさらに好ましい。また背圧の下限は1MPa以上とすることが好ましい。すなわち、射出成形時の背圧は、1MPa以上20MPa未満が好ましく、1~15MPaがより好ましく、1~10MPaがさらに好ましい。
【0030】
一実施形態において、射出成形時のシリンダー温度は、連続運転の安定性(成形機の停止トラブルの防止や成形物の重量バラツキの抑制等)の観点からは、190~250℃であってもよく、200~240℃であってもよい。
【0031】
<原料樹脂組成物>
本実施形態に係る樹脂成形物は、少なくとも、前述のポリプロピレン樹脂(A)とガラス繊維とを含む原料樹脂組成物を射出成形することにより得られる。以下、原料樹脂組成物中のガラス繊維を前述の樹脂成形物中のガラス繊維(B)と区別する観点から、「ガラス繊維(M)」と表記する。
【0032】
(ガラス繊維(M))
原料樹脂組成物に含まれるガラス繊維(M)の重量平均繊維長は、最終的に得られる樹脂成形物中のガラス繊維(B)の重量平均繊維長が800~2000μmとなり、かつ繊維長が1200μm以上5000μm未満のガラス繊維(b1)の割合が15~40質量%となる範囲で、任意に設定できる。
【0033】
一実施形態において、より樹脂成形物中のガラス繊維(B)の重量平均繊維長と繊維長分布とを調整しやすい観点からは、ガラス繊維(M)は、ガラス短繊維とガラス長繊維との混合繊維であってもよい。ガラス繊維(M)が混合繊維の場合、その混合比率(ガラス短繊維/ガラス長繊維)としては、(50~80)/(20~50)が好ましく、(55~80)/(20~45)がより好ましく、(60~80)/(20~40)がさらに好ましい。
【0034】
一実施形態において、環境負荷のより少ない樹脂成形物を得る観点から、原料樹脂組成物として、前述の長繊維束(X)とリサイクル材(Y)を含む混合物(Z)を用いてもよい。すなわち、本実施形態に係る製造方法は、さらに原料樹脂組成物を調製することを含み、前記原料樹脂組成物を調製することが、長繊維束(X)とリサイクル材(Y)とを含む混合物(Z)を得ることを含んでいてもよい。なお、本実施形態に係る製造方法が、原料樹脂組成物として、混合物(Z)を得ることを含む場合、ガラス繊維(M)は、長繊維束(X)由来のガラス長繊維(m1)及びリサイクル材(Y)由来のガラス繊維(m2)を含むことができる。以下、混合物(Z)を原料樹脂組成物として用いる場合の、一実施形態について説明する。
【0035】
(混合物(Z))
混合物(Z)は、長繊維束(X)とリサイクル材(Y)とを含むことができる。混合物(Z)中のリサイクル材(Y)の割合は、前述の通り、混合物(Z)の総質量に対して、50~85質量%であってもよく、60~80質量%であってもよい。また、混合物(Z)は、長繊維束(X)とリサイクル材(Y)のみで構成されていてもよい。
【0036】
[ポリプロピレン樹脂含浸長繊維束(X)]
長繊維束(X)は、ガラス長繊維(m1)を長さ方向に揃えた繊維束に、ポリプロピレン樹脂(a1)を含浸させて一体化させた(X-1)からなる、または前記(X-1)及びポリプロピレン樹脂(a2)を含む組成物(X-2)からなる。
【0037】
<ガラス長繊維(m1)とポリプロピレン樹脂(a1)の一体化物(X-1)>
本実施形態に係る長繊維束(X)は、ガラス長繊維(m1)を長さ方向に揃えた繊維束に、ポリプロピレン樹脂(a1)を含浸させて一体化させた(X-1)(以下、「一体化物(X-1)」と記載する)で構成されていてもよい。本実施形態において、一体化物(X-1)とは、ガラスロービングのことを指す。長繊維束(X)は、一体化物(X-1)のみで構成されていてもよく、後述する、一体化物(X-1)とポリプロピレン樹脂(a2)とを含む組成物(X-2)であってもよい。
【0038】
(ポリプロピレン樹脂(a1))
一実施形態において、一体化物(X-1)に含まれるポリプロピレン樹脂(a1)(以下、「樹脂(a1)」と記載することもある)としては、前述の樹脂(A)と同じものが例示でき、好ましい例もまた同じである。
好ましい実施形態において、樹脂(a1)としては、ISO 1133に従って測定されるメルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)の物性が20~200g/10min.のポリプロピレンを用いることが好ましい。樹脂(a1)が前述のポリプロピレンを含む場合、樹脂(a1)のガラス長繊維(m1)への濡れ性がより良好となりやすい。なお、この場合の「ポリプロピレン」は、前述のPPホモポリマーであってもよく、PPブロックコポリマーであってもよい。
【0039】
一実施形態において、樹脂(a1)はリサイクルされたポリプロピレン樹脂を含んでいても良い。「リサイクル樹脂」とは、目的の用途に使用された後に回収された成形品(ただし未使用品を含む)から得られる熱可塑性樹脂である。リサイクル樹脂の元の用途は特に限定されず、後述するリサイクル材(Y)と同じ例が挙げられる。樹脂(a1)がリサイクル樹脂を含む場合、二酸化炭素排出量削減の観点からは、樹脂(a1)の総量に対して、20質量%以上とすることが好ましい。
【0040】
(ガラス長繊維(m1))
一実施形態において、ガラス長繊維(m1)の平均繊維径は、樹脂の機械物性と成形加工性の観点からは、5~30μmが好ましく、10~20μmがより好ましく、15~18μmがさらに好ましい。
【0041】
一実施形態において、一体化物(X-1)中のガラス長繊維(m1)の平均繊維長は3~30mmが好ましく、5~20mmがより好ましく、6~15mmがさらに好ましい。
【0042】
一体化物(X-1)中のガラス長繊維(m1)の本数は、一体化物(X-1)の外径(長軸長さ及び短軸長さ)を考慮して調整することができる。例えば、ガラス長繊維(m1)の本数は、100~30,000本であってもよく、1,000~24,000本であってもよく、2,000~12,000本であってもよい。
【0043】
一実施形態において、一体化物(X-1)中の樹脂(a1)と、ガラス長繊維(m1)の含有割合は、樹脂(a1)とガラス長繊維(m1)の合計量(100質量%)に対して、樹脂(a1)が30~80質量%であってもよく、ガラス長繊維(m1)が20~70質量%であってもよい。また、樹脂(a1)を40~75質量%とし、ガラス長繊維(m1)を25~60質量%としてもよく、樹脂(a1)を50~70質量%とし、ガラス長繊維(m1)を30~50質量%としてもよい。
一実施形態において、一体化物(X-1)の総質量に対する、ガラス長繊維(m1)の割合は、10~50質量%であってもよく、20~50質量%であってもよい。
【0044】
一体化物(X-1)には、樹脂(a1)及びガラス長繊維(m1)以外の公知の樹脂用添加剤が含まれていてもよい。樹脂用添加剤としては、例えば、難燃剤、熱安定剤、光安定剤、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤などを挙げることができる。これらは1種単独で含まれていてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
一実施形態において、一体化物(X-1)の平均長さは、物性と成形性の観点から、3~30mmが好ましく、5~20mmがより好ましく、6~15mmがさらに好ましい。
【0046】
<一体化物(X-1)とポリプロピレン樹脂(a2)とを含む組成物(X-2)>
一実施形態において、長繊維束(X)は、一体化物(X-1)とポリプロピレン樹脂(a2)とを含む組成物(X-2)(以下、「組成物(X-2)」と記載する)で構成されていてもよい。長繊維束(X)が組成物(X-2)である場合、組成物(X-2)中の一体化物(X-1)及びポリプロピレン樹脂(a2)(以下、「樹脂(a2)」と記載することもある)の割合は、所望のガラス繊維含有量の範囲で適宜調整できる。
【0047】
(ポリプロピレン樹脂(a2))
一実施形態において、組成物(X-2)に含まれるポリプロピレン樹脂(a2)としては、前述の樹脂(A)及び樹脂(a1)と同じものが例示でき、好ましい例もまた同じである。また、一実施形態においては、樹脂(a1)と同じく、樹脂(a2)もリサイクルされたポリプロピレン樹脂を含んでいても良い。樹脂(a2)がリサイクル樹脂を含む場合、二酸化炭素排出量削減の観点からは、樹脂(a2)の総量に対して、20質量%以上とすることが好ましい。
【0048】
一実施形態において、長繊維束(X)中のガラス長繊維(m1)の割合(GF1)は、10~50質量%が好ましい。GF1は10~50質量%の範囲で任意に設定できるが、一実施形態において、GF1は、10~45質量%であってもよく、10~40質量%であってもよく、10~30質量%であってもよく、15~40質量%であってもよく、20~40質量%であってもよく、10~20質量%であってもよい。
【0049】
[ポリプロピレン樹脂含浸長繊維束(X)の製造方法]
長繊維束(X)の製造方法としては、従来公知の、クロスヘッドダイを使用した方法等を採用できる。例えば、特開2013-107979号公報(製造例1の樹脂含浸ガラス長繊維束の製造)、特開2013-121988号公報(製造例1の樹脂含浸ガラス長繊維束の製造)等に記載の方法に準じて製造することができる。
【0050】
[リサイクル材(Y)]
本明細書において「リサイクル材」とは、ガラス繊維強化樹脂成形物を粉砕してクラッシュ片としたもの、または粉砕後にリペレット化したものを指す。本実施形態に係るガラス繊維強化樹脂成形物のリサイクル材(Y)は、ポリプロピレン樹脂(a3)とガラス繊維(m2)とを含む。
なお、ここで言う「ガラス繊維強化樹脂成形物」には、目的の用途に使用された後回収された、ポリプロピレン樹脂(a3)(以下、「樹脂(a3)」と記載することもある)とガラス繊維(ガラス長繊維であってもよい)とを含む樹脂成形物を意味するが、成形後未使用のものも含まれる。樹脂成形物の元の用途は特に限定されず、例えば、自動車車体前部構造体や自動車用外装構造体等の自動車部品;コンピュータ、電話、スマートフォン、携帯等の情報機器、通信機器、音響機器;テレビ、冷蔵庫、エアコン、洗濯機等の家庭電化製品;机、椅子、棚等の事務用品;パッケージング等の包装用品等があげられる。また、樹脂成形物は、物性測定用試験片として成形されたものを含むことができる。また、リサイクル材(Y)として活用できる樹脂成形物には、本実施形態に係る樹脂成形物も含まれる。
【0051】
<ポリプロピレン樹脂(a3)>
リサイクル材(Y)に含まれるポリプロピレン樹脂(a3)としては、前述の樹脂(A)、樹脂(a1)及び樹脂(a2)と同じものが例示でき、好ましい例もまた同じである。
【0052】
<ガラス繊維(m2)>
前述の通り、リサイクル材(Y)はガラス繊維含有樹脂成形物を粉砕して再利用したものであるため、リサイクル材(Y)中に含まれるガラス繊維(m2)は一般に短繊維となる。そのため、ガラス繊維(m2)の重量平均繊維長は、一般に、0.1mm以上3mm未満程度である。一実施形態において、リサイクル材(Y)としては、ガラス繊維(m2)の重量平均繊維長が0.1~1.5mmのものが好ましく、0.2~1.0mmのものがより好ましい。
一実施形態において、ガラス繊維(m2)の平均繊維径は、成形加工性と樹脂成形物の機械特性の観点から、6~18μmが好ましく、9~16μmがより好ましい。
【0053】
リサイクル材(Y)は、ガラス繊維含有樹脂成形物を粉砕したのち、リペレット化したものであることが好ましい。ガラス繊維含有樹脂成形物を粉砕する方法としては特に限定されないが、例えば、一軸粉砕機等によってガラス繊維含有樹脂組成物を粉砕してもよい。また、リペレット化の方法としても特に限定されず、ガラス繊維含有樹脂成形物の粉砕物を1軸押出機で押出してリペレットすること等を採用できる。
【0054】
一実施形態において、リサイクル材(Y)中のガラス繊維(m2)の割合(GF2)は、10~50質量%が好ましい。GF2は10~50質量%の範囲で任意に設定できるが、一実施形態において、GF2は、10~45質量%であってもよく、10~40質量%であってもよく、10~30質量%であってもよく、15~40質量%であってもよく、20~40質量%であってもよく、10~20質量%であってもよい。
【0055】
一実施形態において、GF1とGF2とが、下記式(1)を満たすことが好ましい。
0≦|GF1-GF2|≦20 ・・・(1)
(式(1)中、GF1は長繊維束(X)の総質量に対するガラス長繊維(m1)の割合(質量%)を表し、GF2はリサイクル材(Y)の総質量に対するガラス繊維(m2)の割合(質量%)を表す。)
すなわち、GF1とGF2との絶対差が、0~20質量%が好ましく、0~15質量%がより好ましく、0~10質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。GF1とGF2との絶対差を前記範囲内とすることにより、樹脂成形物のシャルピー衝撃強さ向上と表面外観改善とのバランスをとりやすくなる。
【0056】
混合物(Z)には、前述の長繊維束(X)、リサイクル材(Y)由来の材料の他、その他の成分が含まれていてもよい。その他の成分としては、例えば、前述のガラス繊維以外の強化材(例えば、カーボン繊維、アラミド繊維等の無機繊維);ガラスビーズ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、タルク、マイカ、ゼオライト、フェライト等の無機充填材;カーボンブラック、チタンホワイト、ベンガラ等の着色剤;水酸化物系、臭素化ビスフェノールA(TBA系)、デカブロムビフェニルエーテル系、酸化アンチモン、酸化モリブデン、リン酸エステル類等の難燃化剤;その他機能性添加剤として周知の添加材を、添加してもよい。また、ステアリン酸マグネシウムやステアリン酸カルシウム等を外部滑剤としてリサイクル材(Y)や長繊維束(X)の表面にまぶしても良い。
【0057】
[用途]
本実施形態に係る樹脂成形物は、従来と同程度のガラス繊維含有量を有しながら、高いシャルピー衝撃強さと良好な表面外観とを両立できる。そのため、例えば、自動車室内部品、冷蔵庫等の家電の外観部品等の分野に好適に用いることができる。
【実施例0058】
以下に実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の解釈が限定されるものではない。
【0059】
以下、本実施形態に係る樹脂成形物の一例として、混合物(Z)を原料樹脂組成物として用いた例を記載する。
<原材料>
(長繊維束(X))
・樹脂(a1-1):プロピレンとエチレンのブロックコポリマー(PPブロックコポリマー、サンアロマー(株)製、製品名「PMB60A」)。
・樹脂(a1-2):プロピレンのホモポリマー(PPホモポリマー、サンアロマー(株)製、製品名「PMB02A」)。
・樹脂(a1-3):無水マレイン酸変性のホモポリプロピレン(アルケマ(株)製、製品名「OREVAC(登録商標)CA100」)。
・ガラス長繊維(m1):日東紡績(株)製、製品名「RS2400R-489」、平均繊維径17.4μm。
(リサイクル材(Y))
・樹脂(a3-1):プロピレンとエチレンのブロックコポリマー(PPブロックコポリマー、住友化学(株)製、製品名「住友ノーブレン(登録商標)AW564」)。
・樹脂(a3-2):プロピレンのホモポリマー(PPホモポリマー、住友化学(株)製、製品名「住友ノーブレン W101」)。
・樹脂(a3-3):無水マレイン酸変性のホモポリプロピレン(アルケマ(株)製、製品名「OREVAC CA100」)。
・ガラス繊維:ガラス短繊維(日本電気硝子(株)製、製品名「ECS 03 T-480」、平均繊維径13μm)。
【0060】
[製造例1:ポリプロピレン樹脂含浸長繊維束(X1)の調製]
長繊維束(X1)として、以下の条件で一体化物(X-1)を調製した。
ガラス長繊維(m1)の連続繊維をクロスヘッドダイに通して引きながら、樹脂(a1-1)と、樹脂(a1-3)とを、混合比(樹脂(a1-1)/樹脂(a1-3))25/1で組み合わせたポリプロピレン樹脂を、250℃に設定した押出機から溶融状態で前述のクロスヘッドダイに供給して連続繊維に含浸させた。その後、賦形ダイを通してストランド状に引き取って冷却し、引き抜き方向に対して直角となるように切断して、ポリプロピレン樹脂含浸長繊維束のペレットを得た。得られたペレットの平均長さ(ペレット100個の長軸の長さの平均値)は11mmであった。前記ペレットは、ガラス長繊維(m1)を長さ方向に揃えた繊維束に樹脂(a1)を含浸させた一体化物(X-1)である。長繊維束(X1)中のガラス長繊維(m1)の平均繊維長は、前述のペレットの平均長さと同じ11mmであった。また、長繊維束(X1)中のガラス繊維(m1)の割合(GF1)は20質量%であった。
【0061】
[製造例2:ポリプロピレン樹脂含浸長繊維束(X2)の調製]
ガラス長繊維(m1)の割合(GF1)を30質量%に変更した以外は、長繊維束(X1)と同じ条件で長繊維束(X2)を得た。
【0062】
[製造例3:ポリプロピレン樹脂含浸長繊維束(X3)の調製]
樹脂(a1-1)を樹脂(a1-2)に変更した以外は、長繊維束(X1)と同じ条件で長繊維束(X3)を得た。
【0063】
[製造例4:リサイクル材(Y1)の調製]
まず、ガラス短繊維強化樹脂の成形物を以下の条件で作成した
樹脂(a3-1)と、樹脂(a3-3)とを、混合比(樹脂(a3-1)/樹脂(a3-3))25/1で組み合わせたポリプロピレン樹脂を、240℃に設定した30mm二軸押出機のC1位置(根本フィード部)に供給した。さらに、ガラス繊維を二軸押出機のC7位置にサイドフィードして、ポリプロピレン樹脂とガラス繊維を混練し、ダイから吐出した。吐出後、ストランドバスにて水冷し、吐出方向に対して直角となるように切断して、ガラス短繊維強化樹脂組成物のペレットを得た。ペレットの平均長さは3mmであった。なお、ガラス短繊維強化樹脂組成物の調製は以下の条件(I)で行った。
<条件(I):樹脂組成物の調製>
二軸押出機:(株)日本製鋼所製、製品名「TEX-30α」
スクリュー回転数:180rpm
原料樹脂投入位置及びその温度:C1(ダイ直前がC11)、200℃
ガラス繊維投入位置及びその温度:C7、220℃
ダイ温度:230℃
吐出量:10kg/hr
【0064】
得られたガラス短繊維強化樹脂組成物を下記の条件(II)で射出成形して、ISO多目的試験片(ガラス短繊維強化樹脂成形物)を得た。
<条件(II):射出成形>
射出成形機:ファナック(株)製、製品名「α-S150iA」
スクリュー:長繊維専用スクリュー
シリンダー温度:250℃
射出速度:30mm/s
保圧時間:20sec
保圧:45MPa
冷却時間:30sec
成形物形状:ISO4号ダンベル型試験片
金型温度:50℃
【0065】
上記で得られたISO多目的試験片を、一軸粉砕機((株)ハーモ製、製品名「グランカッター SPCII-C200」)で粉砕し、粉砕物を30mm二軸押出機にて、シリンダー温度240℃でリペレット化して、リサイクル材(Y1)を得た。リサイクル材(Y1)中のガラス繊維(m2)の、後述する条件(IV)で測定した重量平均繊維長は350μmであった。また、リサイクル材(Y1)中のガラス繊維(m2)の割合(GF2)は20質量%であった。また、リペレット化は以下の条件(III)で行った。
<条件(III):リペレット化>
二軸押出機:(株)日本製鋼所製、製品名「TEX-30α」
スクリュー回転数:180rpm
原料樹脂投入位置及びその温度:C1(ダイ直前がC11)、200℃
ダイ温度:230℃
吐出量:10kg/hr
<条件(IV):ガラス繊維の重量平均繊維長の測定>
後述の重量平均繊維長の測定方法に沿って、リサイクル材(Y)5gを電気炉に投入し、600℃で2時間加熱して灰化させた。灰化残渣を5質量%ポリエチレングリコール水溶液に十分分散させたのち、シャーレに移して、実体顕微鏡でガラス繊維(m2)を観察した。その際、灰化残渣中のガラス繊維(m2)1000本の画像をCCDカメラからPCに取り込み、画像測定器((株)ニレコ製、製品名「LUZEX AP」)を用いた画像処理手法により、前記1000本のガラス繊維(m2)の繊維長を測定し、その平均値を算出した。
【0066】
[製造例5:リサイクル材(Y2)の調製]
ガラス繊維(m2)の割合(GF2)を30質量%に変更した以外は、リサイクル材(Y1)と同じ条件でリサイクル材(Y2)を得た。
【0067】
[製造例6:リサイクル材(Y3)の調製]
樹脂(a3-1)を樹脂(a3-2)に変更した以外は、リサイクル材(Y1)と同じ条件でリサイクル材(Y3)を得た。
【0068】
以下、各製造例で得られた長繊維束(X)及びリサイクル材(Y)のポリプロピレン樹脂の組成、ガラス繊維の種類と平均繊維長(又は重量平均繊維長)、及びガラス繊維含有量を表1にまとめた。
【0069】
【0070】
[実施例1]
上で調製した長繊維束(X1)と、リサイクル材(Y1)とを、20/80(長繊維束(X1)/リサイクル材(Y1))で混合して、混合物(Z)を得た。得られた混合物(Z)を原料樹脂組成物として、上述の条件(II)かつ背圧5MPaで射出成形して、樹脂成形物を得た。得られた樹脂成形物中のガラス繊維(B)の重量平均繊維長及びガラス繊維(b1)の割合、並びにガラス繊維(b0)、(b2)~(b4)の割合と、ガラス繊維(B)の平均繊維径を以下の条件で測定した。さらに、樹脂成形物の機械特性(シャルピー衝撃強さ、引張強さ、曲げ強さ、及び曲げ弾性率)、及び成形物外観を以下の条件で評価した。
【0071】
<重量平均繊維長の測定方法>
樹脂成形物5gを電気炉に投入し、600℃で2時間加熱して灰化させた。灰化残渣を5質量%ポリエチレングリコール水溶液に十分分散させたのち、シャーレに移して、実体顕微鏡でガラス繊維(B)を観察した。その際、灰化残渣中のガラス繊維(B)1000本の画像をCCDカメラからPCに取り込み、画像測定器((株)ニレコ製、製品名「LUZEX AP」)を用いた画像処理手法により、前記1000本のガラス繊維(B)の繊維長を測定し(カットオフ上限:100μm未満)、その平均値を「重量平均繊維長」とした。また、前記1000本のガラス繊維(B)のうち、繊維長が1200μm以上5000μm未満のガラス繊維(b1)の本数を、ガラス繊維(B)中のガラス繊維(b1)の割合とした。同様に、前記1000本のガラス繊維(B)のうち、繊維長が800μm以上1200μm未満のガラス繊維(b2)の本数を、ガラス繊維(B)中のガラス繊維(b2)の割合として算出した。その他、前記1000本のガラス繊維(B)のうち、繊維長が5000μm以上のガラス繊維(b0)の割合、繊維長が400μm以上800μm未満のガラス繊維(b3)の割合、及び繊維長が400μm未満のガラス繊維(b4)の割合も算出した。
【0072】
<平均繊維径の測定方法>
前記重量平均繊維長の測定方法に沿って樹脂成形物を灰化させた後、灰化残渣中のガラス繊維(B)100本を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、前記100本のガラス繊維(B)の繊維径(ガラス繊維(B)の断面における長径の長さ)を測定し、その平均値から算出した。
【0073】
<機械特性の評価>
(シャルピー衝撃強さの測定方法)
得られた樹脂成形物から、ISO短冊試験片タイプ1eAを作成し、ISO179-1及びISO170-2に沿って測定した。具体的には、デジタル衝撃試験機((株)安田精機製作所製、製品名「衝撃試験機No.258-L IMPACT TESTER」)を用いて、試験温度:23℃、測定モード:V型ノッチ付き、ハンマー容量:2Jの条件で測定した。
【0074】
(引張強さの測定方法)
得られた樹脂成形物から、ISO短冊試験片タイプA1を作成し、ISO527に沿って測定した。具体的には、引張試験機((株)島津製作所製、製品名「オートグラフ(登録商標)AG-20kNXDplus」)を用いて、温度:23℃、試験速度:2mm/min、チャック間距離(スパン)115mmの条件で測定した。
【0075】
(曲げ強さ及び曲げ弾性率の測定方法)
得られた樹脂成形物から、ISO短冊試験片タイプB1を作成し、ISO178に沿って測定した。具体的には、引張試験機((株)島津製作所製、製品名「オートグラフ AGS-X 5kN」)を用いて、温度:23℃、試験速度:2mm/min、チャック間距離(スパン)64mmの条件で測定した。
【0076】
<成形物の表面外観の評価>
実施例1に記載の比率で、長繊維束(X1)とリサイクル材(Y1)を混合して混合物(Z)を得た後、カーボンブラックを30質量%含むポリプロピレン樹脂マスターバッチ((株)ポリコール社製、製品名「POLYCOOL MASTER EPP-K-22771」)を、前記混合物(Z)に対して、0.7質量%配合して(混合物(Z):99.3質量%、マスターバッチ:0.7質量%)、成形物の表面外観評価用樹脂組成物を得た。前記樹脂組成物を、以下の条件(V)で射出成形して成形物の表面外観評価用サンプルを作成した。その後、サンプル表面の黒い異物(ガラス繊維の凝集物)の数を計測した。サンプル表面のガラス繊維の凝集物の合計数が、10個未満のものを「合格」(成形物の表面外観が良好である)とした。
<条件(V):射出成形条件(成形物の表面外観評価用)>
射出成形機:東洋機械金属(株)製、製品名「Si-180-6」
スクリュー:長繊維専用スクリュー
シリンダー温度(ノズル側):235℃
射出速度:50mm/min
背圧:5MPa
保圧時間:12sec
保圧:40MPa
冷却時間:20sec
成形物形状:150mm(縦)×150mm(横)×3mm(厚み)
金型温度:50℃
【0077】
[比較例1]
上述の、リサイクル材(Y)の原料である樹脂(a3-1)及びガラス繊維を80/20の比率で二軸押出機にて混練して、比較例1の原料樹脂組成物(ガラス短繊維強化樹脂組成物)を得た。比較例1の原料樹脂組成物は条件(I)で調製した。得られた原料樹脂組成物を上述の条件(II)かつ背圧5MPaで射出成形して、比較例1の樹脂成形物を得た。比較例1の樹脂成形物中のガラス繊維(B)の重量平均繊維長及びガラス繊維(b1)の割合、並びにガラス繊維(b0)、(b2)~(b4)の割合と、ガラス繊維(B)の平均繊維径を実施例1と同じ条件で測定した。さらに、樹脂成形物の機械特性(シャルピー衝撃強さ、引張強さ、曲げ強さ、及び曲げ弾性率)、及び成形物外観を実施例1と同じ条件で評価した。
【0078】
[実施例2~8及び比較例2~6]
リサイクル材(Y)と長繊維束(X)の種類、配合比、及び射出成形時の背圧を表2~5に記載の通りとした以外は、実施例1と同じ条件で樹脂成形物を得た。得られた樹脂成形物中のガラス繊維(B)の重量平均繊維長及びガラス繊維(b1)の割合、並びにガラス繊維(b0)、(b2)~(b4)の割合と、ガラス繊維(B)の平均繊維径を実施例1と同じ条件で測定した。さらに、樹脂成形物の機械特性(シャルピー衝撃強さ、引張強さ、曲げ強さ、及び曲げ弾性率)、及び成形物外観を実施例1と同じ条件で評価した。
【0079】
[比較例7]
上述の、リサイクル材(Y)の原料である樹脂(a3-1)及びガラス繊維を70/30の比率で二軸押出機にて混練して、比較例7の原料樹脂組成物(ガラス短繊維強化樹脂組成物)を得た。比較例7の原料樹脂組成物は、条件(I)で調製した。得られた原料樹脂組成物を上述の条件(II)かつ背圧5MPaで射出成形して、比較例7の樹脂成形物を得た。比較例7の樹脂成形物中のガラス繊維(B)の重量平均繊維長及びガラス繊維(b1)の割合、並びにガラス繊維(b0)、(b2)~(b4)の割合と、ガラス繊維(B)の平均繊維径を実施例1と同じ条件で測定した。さらに、樹脂成形物の機械特性(シャルピー衝撃強さ、引張強さ、曲げ強さ、及び曲げ弾性率)、及び成形物外観を実施例1と同じ条件で評価した。
【0080】
[比較例8]
上述の、リサイクル材(Y)の原料である樹脂(a3-2)及びガラス繊維を80/20の比率で二軸押出機にて混練して、比較例8の原料樹脂組成物(ガラス短繊維強化樹脂組成物)を得た。比較例8の原料樹脂組成物は、条件(I)で調製した。得られた原料樹脂組成物を上述の条件(II)かつ背圧5MPaで射出成形して、比較例8の樹脂成形物を得た。比較例8の樹脂成形物中のガラス繊維(B)の重量平均繊維長及びガラス繊維(b1)の割合、並びにガラス繊維(b0)、(b2)~(b4)の割合と、ガラス繊維(B)の平均繊維径を実施例1と同じ条件で測定した。さらに、樹脂成形物の機械特性(シャルピー衝撃強さ、引張強さ、曲げ強さ、及び曲げ弾性率)、及び成形物外観を実施例1と同じ条件で評価した。
【0081】
【0082】
表2に示す通り、本実施形態の構成を満たす、実施例1~4の樹脂成形物は、比較例1~4と同じガラス繊維含有量でありながら、シャルピー衝撃強さの値が高かった。また、樹脂成形物の表面外観も良好であった。一方、ガラス短繊維とPPブロックコポリマーを混合して得られた比較例1の樹脂成形物は、ガラス繊維(B)の重量平均繊維長が800μm未満であり、かつガラス繊維(b1)の割合も15質量%未満であった。比較例1は、表面外観は良好であったが、シャルピー衝撃強さに劣っていた。比較例2及び4も比較例1と同じく、表面外観は比較的良好であったが、シャルピー衝撃強さに劣っていた。また、ガラス繊維(B)の重量平均繊維長が2000μm超であり、かつガラス繊維(b1)の割合が40質量%超の比較例3の樹脂成形物は、シャルピー衝撃強さの値は高かったが、表面外観に劣っていた。
【0083】
【0084】
実施例5~6及び比較例5は同じ原料樹脂組成物(混合物(Z))を用いて、射出成形時の背圧を変更した例である。本実施形態に係る製造方法で製造された実施例5~6の樹脂成形物は、高いシャルピー衝撃強さと良好な表面外観とを両立できていた。一方、背圧20MPaで射出成形した比較例5の樹脂成形物は、ガラス繊維(B)の重量平均繊維長が800μm未満であり、かつガラス繊維(b1)の割合も15質量%未満であったため、シャルピー衝撃強さの値が低かった。また、長繊維束(X1)の割合を70質量%にまで増やして、背圧20MPaで射出成形した比較例6では、ガラス繊維(B)の重量平均繊維長は800~2000μmの範囲であったが、ガラス繊維(b1)の割合が40質量%超と高くなっていた。比較例6の樹脂成形物は、シャルピー衝撃強さの値は高かったが、表面外観に劣っていた。
【0085】
【0086】
実施例7及び比較例7は、樹脂成形物中のガラス繊維(B)の含有量を30質量%に増やした場合の例である。成形物中のガラス繊維含有量を増やすことで、引張強さや曲げ強さ等の機械特性は向上する傾向にある。しかしながら、本実施形態の構成を満たす実施例7の樹脂成形物の方が、比較例7の樹脂成形物よりも、シャルピー衝撃強さの値が高かった。このことからも、本実施形態に係る樹脂成形物が、機械特性の中でもシャルピー衝撃強さを特異的に向上できることが分かった。
【0087】
【0088】
実施例8及び比較例8は、樹脂成形物中の樹脂(A)を、プロピレンのホモポリマーに変更した場合の例である。樹脂(A)がPPホモポリマーの場合でも、本実施形態の構成を満たす実施例8の樹脂成形物の方が、比較例8の樹脂成形物よりも、シャルピー衝撃強さに優れていた。
以上の結果より、本実施形態に係る樹脂成形物によれば、従来と同程度のガラス繊維含有量(すなわち、比較例の樹脂成形物と同程度のガラス繊維含有量)を有しながら、高いシャルピー衝撃強さと良好な表面外観とを両立できることが分かった。