(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092453
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】食肉処理装置
(51)【国際特許分類】
A22C 21/00 20060101AFI20240701BHJP
B26D 5/24 20060101ALI20240701BHJP
B26D 1/14 20060101ALI20240701BHJP
B26D 7/06 20060101ALI20240701BHJP
B26D 3/28 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
A22C21/00 Z
B26D5/24
B26D1/14 F
B26D7/06 D
B26D3/28 640
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208382
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】木藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】後藤 修
【テーマコード(参考)】
3C021
3C027
4B011
【Fターム(参考)】
3C021DB07
3C027NN04
3C027NN05
4B011FA01
4B011FA03
4B011FA05
(57)【要約】
【課題】食鳥の首部からより多くの高品質の肉部を採取する。
【解決手段】本開示の少なくとも一実施形態に係る食肉処理装置は、ギャップを挟んで互いに対向して配置される一対のガイド板と、ギャップから肉部がはみ出るようにワークを一対のガイド板に対して押し付けるための押圧ユニットと、ギャップの延在方向に沿ってワークを搬送するための搬送装置と、一対のガイド板の下流側に位置し、ギャップからはみ出た肉部を搬送装置で搬送されているワークから分離するための切断刃を有する切断装置と、を備える。一対のガイド板のそれぞれは、ワークを第1方向の一方側から支持可能であるとともに、ギャップを挟んで第1方向と交差する第2方向に互いに対向して配置され、押圧ユニットは、ギャップの延在方向から見たときに、一対のガイド板で支持されているワークを一対のガイド板よりも第1方向の他方側の領域から押圧可能な一対の押圧片を含む。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食鳥屠体の首部を含むワークから首部の肉部を採取するための食鳥の食肉処理装置であって、
ギャップを挟んで互いに対向して配置される一対のガイド板と、
前記ギャップから前記肉部がはみ出るように前記ワークを前記一対のガイド板に対して押し付けるための押圧ユニットと、
前記ギャップの延在方向に沿って前記ワークを搬送するための搬送装置と、
前記一対のガイド板の下流側に位置し、前記ギャップからはみ出た前記肉部を前記搬送装置で搬送されている前記ワークから分離するための切断刃を有する切断装置と、
を備え、
前記一対のガイド板のそれぞれは、前記ワークを第1方向の一方側から支持可能であるとともに、前記ギャップを挟んで前記第1方向と交差する第2方向に互いに対向して配置され、
前記押圧ユニットは、前記ギャップの延在方向から見たときに、前記一対のガイド板で支持されている前記ワークを前記一対のガイド板よりも前記第1方向の他方側の領域から押圧可能な一対の押圧片を含む、
食肉処理装置。
【請求項2】
前記一対の押圧片は、前記ギャップの延在方向から見たときに、前記一対のガイド板よりも前記第1方向の前記他方側であって、前記ギャップを前記第1方向に通過する仮想線を挟んだ領域から、前記一対のガイド板で支持されている前記ワークの前記肉部を前記ギャップに向かって押圧可能である、
請求項1に記載の食肉処理装置。
【請求項3】
前記搬送装置は、前記ギャップの延在方向に沿って前記一対のガイド板に対して前記第1方向の他方側に配置された搬送チェーンを含む、
請求項1又は2に記載の食肉処理装置。
【請求項4】
前記一対の押圧片は、前記ギャップの延在方向から見たときに、前記一対のガイド板よりも前記第1方向の前記他方側であって前記搬送チェーンを挟んだ領域から前記一対のガイド板で支持されている前記ワークの前記肉部を前記ギャップに向かって押圧可能である、
請求項3に記載の食肉処理装置。
【請求項5】
搬送される前記ワークの通過タイミングを検出するための検出器、
を備え、
前記押圧ユニットは、前記通過タイミングを基準として規定のスケジュールに従って前記ワークを押圧するように構成されている、
請求項1又は2に記載の食肉処理装置。
【請求項6】
前記規定のスケジュールは、前記切断刃による前記ワークの切断を開始した後に前記押圧ユニットによる前記ワークの押圧が開始され、前記切断刃による前記ワークの切断を終了する前に前記押圧ユニットによる前記ワークの押圧を終了するように設定されている、
請求項5に記載の食肉処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、食肉処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鶏などの家禽類からなる食鳥屠体を解体し、肉部と骨部を分離する解体処理工程は、食鳥屠体を脱羽放血し、内蔵などの除去(中抜き)等の前処理を行い、その後、解体及び脱骨を行っている。この解体・脱骨処理は人手で行うと作業効率が悪いので、自動化が進められている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、食鳥の首部から骨部等の異物の混入を防ぐことで高品質な肉部をより多く採取しようとする作業は、自動化することが困難であった。そのため、このような作業は人手で行われているが、自動化を図ることが望まれていた。
【0005】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、食鳥の首部からより多くの高品質の肉部を採取できる食肉処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る食肉処理装置は、
食鳥屠体の首部を含むワークから首部の肉部を採取するための食鳥の食肉処理装置であって、
ギャップを挟んで互いに対向して配置される一対のガイド板と、
前記ギャップから前記肉部がはみ出るように前記ワークを前記一対のガイド板に対して押し付けるための押圧ユニットと、
前記ギャップの延在方向に沿って前記ワークを搬送するための搬送装置と、
前記一対のガイド板の下流側に位置し、前記ギャップからはみ出た前記肉部を前記搬送装置で搬送されている前記ワークから分離するための切断刃を有する切断装置と、
を備え、
前記一対のガイド板のそれぞれは、前記ワークを第1方向の一方側から支持可能であるとともに、前記ギャップを挟んで前記第1方向と交差する第2方向に互いに対向して配置され、
前記押圧ユニットは、前記ギャップの延在方向から見たときに、前記一対のガイド板で支持されている前記ワークを前記一対のガイド板よりも前記第1方向の他方側の領域から押圧可能な一対の押圧片を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、食鳥の首部からより多くの高品質の肉部を採取できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】一実施形態に係る食肉処理装置の要部についての斜視図である。
【
図1B】
図1Aに示した食肉処理装置の要部についての平面図である。
【
図1C】
図1Bに示した食肉処理装置の要部についての1C-1C矢視断面図である。
【
図1D】
図1Cに示した食肉処理装置の要部についての1D-1D矢視断面図である。
【
図2】ワークの通過を検出について説明するための図である。
【
図3A】一実施形態に係る食肉処理装置の要部についての斜視図である。
【
図3B】
図3Aに示した食肉処理装置の要部についての平面図である。
【
図3C】
図3Bに示した食肉処理装置の要部についての3C-3C矢視断面図である。
【
図4A】一実施形態に係る食肉処理装置の要部についての斜視図である。
【
図4B】
図4Aに示した食肉処理装置の要部についての平面図である。
【
図4C】
図4Bに示した食肉処理装置の要部についての4C-4C矢視断面図である。
【
図5A】一実施形態に係る食肉処理装置の要部についての斜視図である。
【
図5B】
図5Aに示した食肉処理装置の要部についての平面図である。
【
図5C】
図5Bに示した食肉処理装置の要部についての5C-5C矢視断面図である。
【
図6A】一実施形態に係る食肉処理装置の要部についての斜視図である。
【
図6B】
図6Aに示した食肉処理装置の要部についての平面図である。
【
図6C】
図6Bに示した食肉処理装置の要部についての6C-6C矢視断面図である。
【
図7】搬送装置について説明するための模式的な図である。
【
図8D】ワークの断面位置を説明するための図である。
【
図11】ギャップから肉部がはみ出た状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0010】
図1Aは、一実施形態に係る食肉処理装置の要部についての斜視図であり、ワークの投入時の状態を示している。
図1Bは、
図1Aに示した食肉処理装置の要部についての平面図である。
図1Cは、
図1Bに示した食肉処理装置の要部についての1C-1C矢視断面図である。
図1Dは、
図1Cに示した食肉処理装置の要部についての1D-1D矢視断面図である。
図2は、一実施形態に係る食肉処理装置の要部について、
図1Cと同様の断面図であり、ワークの通過を検出について説明するための図である。
図3Aは、一実施形態に係る食肉処理装置の要部についての斜視図であり、ワークの切断開始直前の状態を示している。
図3Bは、
図3Aに示した食肉処理装置の要部についての平面図である。
図3Cは、
図3Bに示した食肉処理装置の要部についての3C-3C矢視断面図である。
【0011】
図4Aは、一実施形態に係る食肉処理装置の要部についての斜視図であり、ワークの第1切断領域の切断時の状態を示している。
図4Bは、
図4Aに示した食肉処理装置の要部についての平面図である。
図4Cは、
図4Bに示した食肉処理装置の要部についての4C-4C矢視断面図である。
図5Aは、一実施形態に係る食肉処理装置の要部についての斜視図であり、ワークの第2切断領域の切断開始直前の状態を示している。
図5Bは、
図5Aに示した食肉処理装置の要部についての平面図である。
図5Cは、
図5Bに示した食肉処理装置の要部についての5C-5C矢視断面図である。
【0012】
図6Aは、一実施形態に係る食肉処理装置の要部についての斜視図であり、ワークの切断終了直前の状態を示している。
図6Bは、
図6Aに示した食肉処理装置の要部についての平面図である。
図6Cは、
図6Bに示した食肉処理装置の要部についての6C-6C矢視断面図である。
図7は、搬送装置について説明するための模式的な図であり、ワークが
図4Cに示す位置と同じ位置にあるときの状態を示している。
図8Aは、一実施形態に係る食肉処理装置における切断対象物であるワークの模式的な正面図である。
図8Bは、
図8Aに示したワークの模式的な側面図である。
図8Cは、
図8Aに示したワークの模式的な底面図である。
図8Dは、ワークの断面位置を説明するための図であり、
図8Aにおける8D-8D矢視に相当する図である。
【0013】
なお、図示の便宜上、
図1Aから
図6Cまでの図において、後述する搬送装置7の搬送チェーン71の図示を省略している。
【0014】
一実施形態に係る食肉処理装置1は、骨部を含む屠体から肉部を採取するための装置である。一実施形態に係る食肉処理装置1において処理を行うワークWは、家禽類、例えば鶏の食鳥屠体の内、首部Wnと、首部Wn(頚椎Bn)に連なる胸椎Btの一部と、胸椎Btの一部に連なる肋骨Brの一部とを含む、
図8Aから
図8Dに示すような首ガラNcである。
一実施形態に係る食肉処理装置1では、この首ガラNcから小肉やせせりと称される肉部Mを採取するように構成されている。
一実施形態に係る食肉処理装置1は、ワークWの高さ方向の位置決めを行うための位置決めユニット3と、位置決めユニット3に向かってワークを押圧するための押圧ユニット8と、位置決めユニット3により位置決めされたワークWを切断するための切断刃51を有する切断装置5とを備える。
【0015】
また、一実施形態に係る食肉処理装置1は、ワークWを搬送するための搬送装置7と、ワークWの投入ガイド11と、ワークWから分離された肉部Mを受けるための受け部21とを備える。
一実施形態に係る食肉処理装置1は、肉部Mが分離された後のワークWを後述するように搬送装置7から外すための排出ガイド23と、排出ガイド23で搬送装置7から外されたワークWを案内する排出シュート25とを備える。
一実施形態に係る食肉処理装置1は、食肉処理装置1の各部を制御するための制御装置9と、搬送されるワークWの通過タイミングを検出するための検出器91とを備える。
一実施形態に係る食肉処理装置1では、上述した各構成要素は、不図示の架台に取り付けられている。なお、制御装置9は、食肉処理装置1の架台から離れた場所に設けられていてもよい。
【0016】
以下の説明では、説明の便宜上、鉛直方向を上下方向として各図に示すように規定する。また、一実施形態に係る食肉処理装置1は、搬送装置7によってワークWを略水平方向に搬送して肉部Mを採取するように構成されている。以下の説明では、ワークWの搬送方向のことを単に搬送方向とも称する。
また、以下の説明では、搬送方向と直交する水平方向を幅方向とも称する。
以下の説明では、食鳥が起立し、首部Wn及び頭部を起こした姿勢を取った時に食鳥の前方を前方とし、食鳥の後方を後方とする前後方向を規定し、この前後方向に基づいてワークWの前後方向を表すこととする。
【0017】
(投入ガイド11)
一実施形態に係る食肉処理装置1では、投入ガイド11は、後述する位置決めユニット3にワークWを投入するためのガイドであり、例えば搬送方向に延在する溝部12aを有するガイド板12と、ワークWの延在方向を中心とする角度位置を修正するための一対のガイド棒13とを有する。
溝部12aは、例えば下方に向かうにつれて溝の幅(幅方向の寸法)が狭くなるようにガイド板12に形成されたV字形状の溝部である。
【0018】
図1A、
図1B、及び
図1Cに示すように、ワークWは、ワークWの長手方向、すなわち
図8Aに示す図示左右方向を溝部12aの延在方向に合わせ、胴体側が搬送方向下流側に向き、頭部側が搬送方向下流側を向いた状態で溝部12aに載置される。
なお、ワークWは、ワークWの前側を上方に向けた姿勢で、すなわち食鳥であれば首部Wnが仰向けにされた状態で、溝部12aに載置される。この姿勢では、ワークWの胸椎Btの前部は上方を向く。
【0019】
一実施形態に係る食肉処理装置1では、
図1B及び
図1Dによく示すように、一対のガイド棒13は、溝部12aの搬送方向下流側で溝部12aの上方に配置されている2つのガイド棒であり、幅方向に互い離間して配置されている。
一対のガイド棒13は、上述した姿勢で溝部12aに載置されたワークWが、後述するように作業員によって位置決めユニット3に向けて搬送方向下流側に移動させられた時に、一対のガイド棒13の間をワークWの胸椎Btが通過するように構成されている。
これにより、ワークWは、ワークWの胸椎Btの前部が斜め上方向を向くように姿勢が傾いていたとしても、一対のガイド棒13の間を胸椎Btが通過することで、胸椎Btの前部が上方向を向くように姿勢の傾きが修正される。
【0020】
(位置決めユニット3)
一実施形態に係る食肉処理装置1では、位置決めユニット3は、ワークガイド31と、支持部35と、支持部アクチュエータ37とを備えている。
ワークガイド31は、投入ガイド11よりも搬送方向下流側でガイド板12と隣り合って配置されたガイドであり、幅方向に互い離間して配置された一対のワークガイド板32を有する。すなわち、一対のワークガイド板32のそれぞれは、ワークWを第1方向の一方側(上下方向の下側)から支持可能であるとともに、ギャップ32g(
図1D参照)を挟んで第1方向(上下方向)と交差する第2方向(幅方向)に互いに対向して配置される。なお、一実施形態に係る食肉処理装置1では、ギャップ32gの延在方向は、搬送方向と一致している。
一対のワークガイド板32は、互いに幅方向に離れるにつれて高さが低くなるように傾斜した上面32aを有する。なお、幅方向で対向する一対のワークガイド板32の幅方向を向いた端部32b同士の離間距離a(
図1D参照)、すなわちギャップ32gの大きさは、ワークWの首部Wnの太さよりも小さい。
例えば
図1Bによく示すように、一対のワークガイド板32は、平面視において後述する切断装置5の切断刃51と重複する領域には設けられていない。
【0021】
一実施形態に係る食肉処理装置1では、支持部35は、一対のワークガイド板32の幅方向を向いた端部32b同士の間を上面35aが昇降可能に構成された部材であり、後述する切断装置5の切断刃51よる切断開始位置に切断刃51に近接して配置されている。
図1Cによく示すように、支持部アクチュエータ37は、支持部35を昇降するためのアクチュエータである。
一実施形態に係る位置決めユニット3の動作の詳細については、後で説明する。
【0022】
(搬送装置7)
一実施形態に係る食肉処理装置1では、
図7に示すように搬送装置7は、搬送方向に離間して配置された2つの不図示のスプロケットに掛け回された搬送チェーン71と、搬送チェーン71を駆動するための不図示の駆動モータとを有する。
搬送チェーン71の外プレートや内プレートには、掛け回された搬送チェーン71の外周側に突出する爪部71aが形成されている。
搬送チェーン71は、位置決めユニット3の一対のワークガイド板32の上方に配置されていて、不図示の2つのスプロケットの下側に位置する搬送チェーン71の爪部71aをワークガイド板32上のワークWに食い込ませることが可能となっている。搬送チェーン71は、爪部71aをワークWに食い込ませた状態で該下側に位置する搬送チェーン71が搬送方向下流側に移動することで、位置決めユニット3の一対のワークガイド板32の上でワークWを搬送方向下流側に搬送するように構成されている。
なお、以下の説明では、該下側に位置する搬送チェーン71のことを、単に下側の搬送チェーン71とも称し、不図示の2つのスプロケットの上側に位置する搬送チェーン71のことを、単に上側の搬送チェーン71とも称する。
【0023】
このように、一実施形態に係る食肉処理装置1では、搬送装置7は、ギャップ32gの延在方向に沿って一対のワークガイド板32に対して第1方向の他方側(上下方向の上側)に配置された搬送チェーン71を含む。
これにより、比較的簡単な構成でワークWを搬送できる。
【0024】
(切断装置5)
一実施形態に係る食肉処理装置1では、切断装置5は、鉛直方向に延在する回転軸52に取り付けられた、回転する丸刃である切断刃51と、切断刃51を回転させるとともに、切断刃51の高さを変更可能に構成された駆動部53とを有する。
一実施形態に係る食肉処理装置1では、切断刃51は、鎬が下側に形成された片刃の刃物である。後述する切断刃51の高さ位置は、切断刃51の刃先の高さ位置、すなわち切断刃51の上面の高さ位置のことである。
切断装置5は、一対のワークガイド板32の搬送方向下流側に位置し、ギャップ32gからはみ出た肉部Mを搬送装置7で搬送されているワークWから切断刃51によって分離することができる。
一実施形態に係る切断装置5の動作の詳細については、後で説明する。
【0025】
(押圧ユニット8)
一実施形態に係る食肉処理装置1では、押圧ユニット8は、圧下装置81(
図7参照)と、首押さえガイド83とを有する。なお、図示の便宜上、
図7以外の図では圧下装置81の記載を省略し、
図7では首押さえガイド83の記載を省略している。
圧下装置81は、上側の搬送チェーン71と下側の搬送チェーン71との間に配置されていて、下側の搬送チェーン71を介してワークWを位置決めユニット3のワークガイド板32及び支持部35に押圧可能に構成された装置である。圧下装置81は、例えばあらかじめ定められた一定の押圧力で下側の搬送チェーン71を下方に向かって押圧するように構成されていてもよい。また、例えば互いに独立した複数(図示した例では2つ)の圧下装置81を搬送方向に沿って並べて配置してもよく、これら複数の圧下装置81毎に押圧力を異ならせてもよい。
【0026】
図9は、一対のガイド板84の平面図である。なお、
図9では、部材としての一対のガイド板84の各部を説明するために、食肉処理装置1において斜め上方を向いている上面84uが紙面と水平となるように姿勢を修正した状態で記載している。
図10は、
図9のX-X矢視断面図である。
図11は、一対のガイド板84によってワークWが一対のワークガイド板32に押し付けられることでギャップ32gから肉部Mがはみ出た状態を説明するための図であり、ギャップ32gの延在方向(搬送方向)に沿って見た模式的な断面図である。
【0027】
一実施形態に係る食肉処理装置1では、首押さえガイド83は、ワークガイド板32の上方で、幅方向に離間して配置された一対のガイド板84と、一対のガイド板84のそれぞれを、幅方向斜め下側に向かって駆動可能なアクチュエータ85とを備えている。
首押さえガイド83は、ギャップ32gから肉部Mがはみ出るようにワークWを一対のワークガイド板32に対して押し付けることができるように構成されている。
首押さえガイド83は、ギャップ32gの延在方向から見たときに、一対のワークガイド板32で支持されているワークWを一対のワークガイド板32よりも第1方向の他方側(上下方向の上側)の領域R1、R2から押圧可能な一対の押圧片である一対のガイド板84を含む。
【0028】
一対のガイド板84は、幅方向で互いに相手側を向いている先端部84eを有する。先端部84eは、一対のガイド板84でワークWを押圧する際に、ワークWに当接する部位である。
一対のガイド板84でワークWを押圧する際、ワークWは搬送方向下流側に向かって移動しているが、一対のガイド板84の搬送方向の位置は不変である。そのため、一対のガイド板84でワークWを押圧すると、先端部84eはワークWの表面を摺動することとなる。
そこで、先端部84eの搬送方向上流側の端部がワークWに引っかかってワークWを損傷させたり、ワークWの搬送を阻害したりする等の不都合を回避するため、先端部84eのうち、搬送方向上流の一部の上流側領域84fは、搬送方向上流側に向かうにつれて一対のガイド板84の先端部84e同士の幅方向の間隔が大きくなるように形成されている。
また、先端部84eでワークWを効率的に押圧できるようにするため、ガイド板84の板厚は、先端部84eの近傍において他の領域よりも小さい。
【0029】
一対のガイド板84は、アクチュエータ85で幅方向斜め下側に向かって駆動されることでワークガイド板32上のワークWの側部を幅方向斜め下側に向かって押圧可能である。
一対のガイド板84は、搬送方向下流側に移動するワークWへ切断刃51が当たり始める搬送方向の位置である切断開始位置Pcの直近であって、該切断開始位置の上流側の位置において、ワークガイド板32上のワークWの側部を幅方向斜め下側に向かって押圧可能に構成されている。
【0030】
(検出器91)
一実施形態に係る食肉処理装置1では、検出器91は、例えば近接スイッチのオンオフによって搬送されるワークWの通過タイミングを検出可能に構成されており、近接スイッチ92(
図2参照)と、搬送されるワークWに接触することで移動可能に支持された検出アーム93とを有する。
一実施形態に係る食肉処理装置1では、例えば
図1Cに示すように検出アーム93は、幅方向で対向する一対のワークガイド板32の幅方向を向いた端部32b同士の間の隙間から搬送方向の規定の位置において検出アーム93の突出部93aが上方に突出するように配置されている。検出アーム93は、
図2に示すように該規定の位置を通過するワークWによって突出部93aが下方に押圧されて下方に移動するように構成されている。
近接スイッチ92は、例えば検出アーム93の突出部93aが下方に押圧されていない場合には、近接スイッチ92に接近している検出アーム93の存在を検出し、検出アーム93の突出部93aが下方に押圧された場合には、検出アーム93が近接スイッチ92から離れることで検出アーム93の存在を検出できなくなるように構成されている。
なお、該規定の位置は、位置決めユニット3の支持部35よりも搬送方向上流側に設定されている。
一実施形態に係る検出器91でワークWの通過タイミングを検出した後の食肉処理装置1の各部の動作の詳細については、後で説明する。
【0031】
(排出ガイド23)
一実施形態に係る食肉処理装置1では、排出ガイド23は、ワークガイド31よりも搬送方向下流側に配置されていて、下側の搬送チェーン71からワークWを外すためのガイドである。上述したように、搬送チェーン71で搬送されるワークWには搬送チェーン71の爪部71aが食い込んでいるため、ワークWが搬送チェーン71にくっついたままとなり、そのままで搬送チェーン71からワークWが外れないおそれがある。そのため、下側の搬送チェーン71で搬送されるワークWと下側の搬送チェーン71との間に排出ガイド23の搬送方向上流側を向いた先端部23aが侵入するように排出ガイド23を配置することで、下側の搬送チェーン71で搬送されるワークWは、排出ガイド23によって強制的に下側の搬送チェーン71から外される。
なお、排出ガイド23によって下側の搬送チェーン71から外されたワークWは、排出シュート25によって案内されて排出される。
【0032】
(制御装置9)
一実施形態に係る食肉処理装置1では、制御装置9は、上述したように食肉処理装置1の各部を制御するように構成されており、各種演算処理を実行する不図示のプロセッサと、プロセッサによって処理される各種データを非一時的または一時的に記憶する不図示のメモリとを備える。プロセッサは、CPU、GPU、MPU、DSP、これら以外の各種演算装置、又はこれらの組み合わせなどによって実現される。メモリは、ROM、RAM、フラッシュメモリ、またはこれらの組み合わせなどによって実現される。
【0033】
(食肉処理装置1におけるワークWの処理の流れについて)
以下、一実施形態に係る食肉処理装置1におけるワークWの処理の流れについて説明する。
【0034】
(ワークWの投入)
まず作業者は、
図1A、
図1B、及び
図1Cに示すように、ワークWを投入ガイド11のガイド板12の溝部12aに載置する。この時のワークWの長手方向の向きは、上述したようにワークWの胴体側が搬送方向下流側に向き、頭部側が搬送方向上流側を向いた状態とされる。また、上述したようにワークWの姿勢は、ワークWの前側を上方に向けた状態とされる。
次いで作業者は、ワークWを搬送方向下流側の位置決めユニット3へ向けて手動で押し出す。
【0035】
このような向き及び姿勢で位置決めユニット3へ向けて押し出されたワークWは、上述したようにワークWの胸椎Btの前部が斜め上方向を向くように姿勢が傾いていたとしても、一対のガイド棒13の間を胸椎Btが通過することで、胸椎Btの前部が上方向を向くように姿勢の傾きが修正される(
図1D参照)。
【0036】
(ワークWの搬送)
位置決めユニット3へ向けて押し出されたワークWには、搬送方向下流側に移動する下側の搬送チェーン71の爪部71aが食い込む。これにより、ワークWは下側の搬送チェーン71によって搬送方向下流側に引き込まれ、幅方向で対向する一対のワークガイド板32の幅方向を向いたそれぞれの端部32bで支持されながら下側の搬送チェーン71の移動と共に搬送方向下流側に搬送される。
【0037】
ワークWが一対のワークガイド板32の上を搬送方向下流側に向かって搬送されると、
図2に示すように、一対のワークガイド板32同士の間から突出している検出アーム93の突出部93aをワークWが押し下げる。これにより、近接スイッチ92の出力状態が変化するので、制御装置9は、検出アーム93の突出部93aの配置位置にワークWが到達したことを検知できる。
以降、制御装置9は、近接スイッチ92の出力状態が上述したように変化したタイミングを基準として、以下で述べるように食肉処理装置1の各部を制御する。なお、以下の説明では、近接スイッチ92の出力状態が上述したように変化したタイミングを通過タイミングとも称する。
【0038】
(ワークW切断の準備)
制御装置9は、近接スイッチ92の出力状態が上述したように変化したことを検出すると、ワークガイド31の支持部35の上面35aの高さ位置を第1設定位置Hs1に設定するよう、支持部アクチュエータ37に制御信号を出力する。これにより、支持部35の上面35aの高さ位置は第1設定位置Hs1に設定される。
図3A、
図3B、及び
図3Cは、支持部35の上面35aの高さ位置が第1設定位置Hs1に設定された後の状態を示している。
なお、制御装置9が支持部アクチュエータ37に制御信号を出力するタイミングは、遅くともワークWの胴体側の端部が切断開始位置Pcに到達する前に、支持部35の上面35aの高さ位置が第1設定位置Hs1となるようなタイミングであればよい。
【0039】
また、第1設定位置Hs1は、例えば一対のワークガイド板32の上端32c(
図1D参照)の高さ位置から距離s1だけ下がった位置である。
したがって、後述するようにワークガイド31の支持部35まで搬送されてきたワークWは、後述するように押圧ユニット8によって下方に向かって押圧されることで、肉部Mが支持部35の上面35aに当たるまで一対のワークガイド板32の幅方向を向いた端部32b同士の隙間から下方にはみ出すことが可能となる。
【0040】
また、制御装置9は、近接スイッチ92の出力状態が上述したように変化したことを検出すると、切断刃51の高さ位置(切断刃51の刃先の高さ位置)を第1設定位置Hc1に設定するよう、駆動部53に制御信号を出力する。これにより、切断刃51の高さ位置は第1設定位置Hc1に設定される。
図3A、
図3B、及び
図3Cは、切断刃51の高さ位置が第1設定位置Hc1に設定された後の状態を示している。
なお、制御装置9が駆動部53に制御信号を出力するタイミングは、遅くともワークWの胴体側の端部が切断開始位置Pcに到達する前に、切断刃51の高さ位置が第1設定位置Hc1となるようなタイミングであればよい。
また、第1設定位置Hc1は、例えば一対のワークガイド板32の上端32cの高さ位置から距離c1だけ下がった位置である。
【0041】
(ワークW切断の第1段階:胸椎Btの後側の切断)
その後、ワークWが搬送方向下流側にさらに移動すると、
図4A、
図4B、及び
図4Cに示すように、ワークWの胴体側の切断が開始される。
ワークWの胴体側である、胸椎Btの後側を切断する場合、胸椎Btの後側の肉部Mの厚さは比較的薄いため、比較的浅い位置、すなわち、ワークWの比較的後側の位置に切断刃51の刃先が入るようにするとよい。
一実施形態に係る食肉処理装置1では、ワークガイド31の支持部35の上面35aの高さ位置、及び切断刃51の高さ位置を上述のように設定することで、骨等の異物の混入を抑制しつつ、胸椎Btの後側の肉部Mを採取できる。
【0042】
ワークWが搬送方向下流側にさらに移動すると、切断刃51の刃先は、ワークWの首部Wnの根元部分、すなわち、首部Wnの胴体側に到達する。
ワークWの首部Wnの肉部Mの厚さは、胸椎Btの後側の肉部Mの厚さよりも厚い。そのため、ワークWの首部Wnの肉部Mを採取する場合、胸椎Btの後側を切断する場合よりも深い位置、すなわち胸椎Btの後側を切断する場合よりもワークWの前側を切断するとよい。
【0043】
そこで、ワークWの首部Wnの肉部Mを採取する場合、以下で説明するようにワークガイド31の支持部35の上面35aの高さ位置を低くするとともに、切断刃51の高さ位置を高くすることで、胸椎Btの後側を切断する場合よりも深い位置で切断するようにしている。
このようにすることで、
図8Dで示すようなカットラインLcでワークWから肉部Mを採取できる。
【0044】
(ワークW切断の第2段階:頚椎Bnの後側の切断)
すなわち、制御装置9は、近接スイッチ92の出力状態が上述したように変化したことを検出したときから所定の経過時間の経過後に、ワークガイド31の支持部35の上面35aの高さ位置を第2設定位置Hs2に設定するよう、支持部アクチュエータ37に制御信号を出力する。これにより、支持部35の上面35aの高さ位置は第2設定位置Hs2に設定される。
第2設定位置Hs2は、上述した第1設定位置Hs1よりも低い高さ位置であって、例えば一対のワークガイド板32の上端32cの高さ位置から距離s1よりも大きい距離s2だけ下がった位置である。
したがって、ワークWは、後述するように押圧ユニット8によって下方に向かって押圧されることで、肉部Mが支持部35の上面35aに当たるまで一対のワークガイド板32の幅方向を向いた端部32b同士の隙間から上述した第1段階よりもさらに下方にはみ出すことが可能となる。
【0045】
図5A、
図5B、及び
図5Cは、支持部35の上面35aの高さ位置が第2設定位置Hs2に設定された後の状態を示している。
なお、制御装置9が支持部35の上面35aの高さ位置を第2設定位置Hs2に設定するように支持部アクチュエータ37に制御信号を出力するタイミングは、切断刃51の刃先、すなわち切断開始位置が胸椎Btの後側から頚椎Bnの後側に移る直前のタイミングであってもよく、支持部35の移動速度を考慮し、上面35aの高さ位置が下がることでワークWの高さ位置が下がっても切断刃51が胸椎Btを切断しない範囲内で早いタイミングであってもよい。
【0046】
また、制御装置9は、近接スイッチ92の出力状態が上述したように変化したことを検出したときから所定の経過時間の経過後に、切断刃51の高さ位置を第2設定位置Hc2に設定するよう、駆動部53に制御信号を出力する。これにより、切断刃51の高さ位置は第2設定位置Hc2に設定される。
第2設定位置Hc2は、上述した第1設定位置Hc1よりも高い高さ位置であって、例えば一対のワークガイド板32の上端32cの高さ位置から距離c1よりも小さい距離c2だけ下がった位置である。
なお、制御装置9が切断刃51の高さ位置を第2設定位置Hc2に設定するように駆動部53に制御信号を出力するタイミングは、切断刃51の高さ位置が移動する速度を考慮して、切断刃51が胸椎Btを切断しない範囲内で早いタイミングであるとよい。
【0047】
さらに、制御装置9は、切断刃51の高さ位置を第2設定位置Hc2に設定するよう、駆動部53に制御信号を出力したときから所定の経過時間の経過後に、切断刃51の高さ位置を第3設定位置Hc3に設定するよう、駆動部53に制御信号を出力する。これにより、切断刃51の高さ位置は第3設定位置Hc3に設定される。
第3設定位置Hc3は、上述した第2設定位置Hc2よりも高い高さ位置であって、例えば一対のワークガイド板32の上端32cの高さ位置から距離c2よりも小さい距離c3だけ下がった位置である。
図5A、
図5B、及び
図5Cは、切断刃51の高さ位置が第3設定位置Hc3に設定された後の状態を示している。
なお、制御装置9が切断刃51の高さ位置を第3設定位置Hc3に設定するように駆動部53に制御信号を出力するタイミングは、切断刃51の高さ位置が移動する速度を考慮して、切断刃51が胸椎Btを切断しない範囲内で早いタイミングであるとよい。
【0048】
このように一実施形態に係る食肉処理装置1では、切断装置5は、上記通過タイミング、すなわち、近接スイッチ92の出力状態が上述したように変化したタイミングを基準として規定のスケジュールに従って、ワークWの通過中に切断刃51による切断高さを変化させるよう切断刃51を上下方向に移動可能に構成されている。
【0049】
(押圧ユニット8の作用について)
切断刃51でワークWを切断する際、ワークWが上方に浮き上がると採取される肉部Mの厚さが不所望に薄くなってしまう。そこで、一実施形態に係る食肉処理装置1では、下側の搬送チェーン71を介してワークWを下方に押圧するための圧下装置81(
図7参照)によって、切断中のワークWを下方に圧下するようにしている。圧下装置81は、ギャップ32gから肉部Mがはみ出るようにワークWを一対のワークガイド板32に対して押し付けることができる。
これにより、肉部Mが支持部35の上面35aに当たるまで一対のワークガイド板32の幅方向を向いた端部32b同士の隙間から下方にはみ出し易くなる。
【0050】
一実施形態に係る食肉処理装置1のように、ギャップ32gからはみ出た肉部Mを切断することで肉部Mを採取する場合、ギャップ32gから多くの肉部Mがはみ出ることが望ましい。
一実施形態に係る食肉処理装置1によれば、首押さえガイド83の一対のガイド板84で首部Wnを変形させてギャップ32gからの肉部のはみ出し量を増やすことで、採取される肉部Mの量を増やすことができる。
また、一実施形態に係る食肉処理装置1によれば、ギャップ32gの間隔を適宜設定することで、ワークWの骨部(頚椎Bn)がギャップ32gからはみ出すことを抑制できるので、採取される肉部Mに骨部等の異物が混入することを抑制でき、高品質の肉部Mを採取できる。
【0051】
図11に示すように、一実施形態に係る食肉処理装置1では、一対のガイド板84は、ギャップ32gの延在方向から見たときに、一対のワークガイド板32よりも第1方向の他方側(上下方向の上側)であって搬送チェーン71を挟んだ2つの領域R1、R2から一対のワークガイド板32で支持されているワークWの肉部Mをギャップ32gに向かって押圧可能である。
すなわち、
図11に示すように、一実施形態に係る食肉処理装置1では、一対のガイド板84は、ギャップ32gの延在方向から見たときに、一対のワークガイド板32よりも第1方向の他方側(上下方向の上側)であって、ギャップ32gを第1方向(上下方向)に通過する仮想線Lvを挟んだ2つの領域R1、R2から、一対のワークガイド板32で支持されているワークWの肉部Mをギャップ32gに向かって押圧可能である。
これにより、一対のガイド板84で首部Wnをギャップ32gに向かって変形させることができ、ギャップ32gからの肉部Mのはみ出し量を増やし易くなるので、採取される肉部Mの量を一層増やすことができる。
【0052】
(首押さえガイド83の動作タイミングについて)
首押さえガイド83は、切断刃51の高さ位置を第1設定位置Hc1から第1設定位置Hc1よりも高い第2設定位置Hc2や第3設定位置Hc3に上昇させる際に、一対のガイド板84でワークガイド板32上のワークWの側部を幅方向斜め下側に向かって押圧する。
すなわち、制御装置9は、切断刃51の高さ位置を第1設定位置Hc1から高い第2設定位置Hc2や第3設定位置Hc3に変更するタイミングで一対のガイド板84がワークWの側部を幅方向斜め下側に向かって押圧するように、アクチュエータ85に制御信号を出力する。
これにより、切断刃51の高さ位置が第1設定位置Hc1から第3設定位置Hc3まで上昇する際にワークWが持ち上がってしまうことを抑制できるとともに、第1設定位置Hs1から第2設定位置Hs2まで下降した支持部35の上面35aの高さ位置まで一対のワークガイド板32の幅方向を向いた端部32b同士の隙間から下方に肉部Mをはみ出させることができる。
【0053】
このように、一実施形態に係る食肉処理装置1では、首押さえガイド83は、上述した通過タイミングを基準として規定のスケジュールに従ってワークWを押圧するように構成されている。
これにより、一対のガイド板84によるワークWの押圧が必要となるタイミングで一対のガイド板84によりワークWを押圧できる。
【0054】
一実施形態に係る食肉処理装置1では、上記規定のスケジュールは、切断刃51によるワークWの切断を開始した後に首押さえガイド83によるワークWの押圧が開始され、切断刃51によるワークWの切断を終了する前に首押さえガイド83によるワークWの押圧を終了するように設定されているとよい。
これにより、一対のガイド板84による不必要な押圧を抑制できる。
【0055】
なお、制御装置9は、切断刃51の高さ位置が第1設定位置Hc1から上昇し始める直前に一対のガイド板84によるワークWの押圧を開始するようにアクチュエータ85に制御信号を出力するとよい。また、制御装置9は、切断刃51の高さ位置が第3設定位置Hc3まで上昇し、その後カットラインLcの前後方向の位置が安定した後には一対のガイド板84によるワークWの押圧を終了するようにアクチュエータ85に制御信号を出力する。すなわち、首押さえガイド83は、切断刃51の高さ位置の上昇に係る一定の期間だけ一対のガイド板84でワークWを押圧する。
【0056】
上述のようにしてワークWから切断された肉部Mは、切断刃51の下方に設けられた受け部21で受け取られる。
【0057】
(ワークWの排出)
その後、肉部Mが採取された後のワークWが搬送方向下流側にさらに移動すると、
図6Cに示すように、下側の搬送チェーン71で搬送されるワークWと下側の搬送チェーン71との間に排出ガイド23の搬送方向上流側を向いた排出ガイド23の先端部23aが侵入する。ワークWが搬送方向下流側にさらに移動すると、ワークWは排出ガイド23によって下方に案内されて強制的に下側の搬送チェーン71から外される。
排出ガイド23によって下側の搬送チェーン71から外されたワークWは、上述したように排出シュート25によって案内されて排出される。
【0058】
(一実施形態に係る食肉処理装置1の全体構成についてのまとめ)
上述した実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(a)本開示の少なくとも一実施形態に係る食肉処理装置1は、ワークWの高さ方向の位置決めを行うための位置決めユニット3と、搬送されるワークWの通過タイミングを検出するための検出器91と、位置決めユニット3により位置決めされたワークWを切断するための切断刃51を有する切断装置5と、を備える。切断装置5は、上記通過タイミングを基準として規定のスケジュールに従って、ワークWの通過中に切断刃51による切断高さを変化させるよう切断刃51を上下方向に移動可能に構成されている。
【0059】
上記(a)の構成によれば、ワークWの搬送方向に沿った位置に応じて切断高さを変更できるので、ワークWが骨部を含んでいても、ワークWからより多くの高品質の肉部Mを採取できる。
【0060】
(b)幾つかの実施形態では、上記(a)の構成において、ワークWを上下方向とは交差する搬送方向に搬送するための搬送装置7、を備えているとよい。切断刃51は、位置決めユニット3に対して搬送方向の下流側に配置されているとよい。
【0061】
上記(b)の構成によれば、切断刃51によって切断するワークWの高さ方向の切断位置の精度を容易に確保できる。
【0062】
(c)幾つかの実施形態では、上記(a)又は(b)の構成において、検出器91で検出した上記通過タイミングを基準として切断高さを制御するための制御装置9を備えるとよい。制御装置9は、ワークWにおける第1切断領域である胸椎Btの後側を切断する場合には第1切断高さ位置(第1設定位置Hc1)で切断し、ワークWにおける第1切断領域(胸椎Btの後側)よりも搬送方向上流側の第2切断領域である頚椎Bnの後側を切断する場合には第1切断高さ位置よりも切断刃51がワークWに近づいた第2切断高さ位置(第2設定位置Hc2又は第3設定位置Hc3)で切断するよう切断高さを制御するとよい。
【0063】
上記(c)の構成によれば、第1切断領域(胸椎Btの後側)よりも第2切断領域(頚椎Bnの後側)の方がワークWにおける肉部Mの厚さが厚い場合に、骨部等の異物の混入の可能性を抑制しつつ、ワークWからより多くの肉部Mを採取できる。
【0064】
(d)幾つかの実施形態では、上記(a)乃至(c)の何れかの構成において、位置決めユニット3に向かってワークWを押圧するための押圧ユニット8を備えるとよい。位置決めユニット3は、押圧ユニット8で押圧されたワークWを押圧ユニット8の押圧力に抗して支持する支持部35を有するとよい。
【0065】
上記(d)の構成によれば、ワークWが支持部35に押圧されるので、首ガラNcのようにワークWに曲がり等があっても所望する切断高さでワークWを切断できる。
【0066】
(e)幾つかの実施形態では、上記(d)の構成において、位置決めユニット3は、支持部35を上下方向に移動可能に構成されているとよい。幾つかの実施形態では、上記(d)の構成において、検出器91で検出した上記通過タイミングを基準として支持部35の高さを制御するための制御装置9を備えるとよい。制御装置9は、ワークWにおける第1支持領域である胸椎Btの後側を支持する場合には第1支持高さ(第1設定位置Hs1)でワークWを支持し、ワークWにおける第1支持領域(胸椎Btの後側)よりも搬送方向上流側の第2支持領域である頚椎Bnの後側を支持する場合には第1支持高さ(第1設定位置Hs1)よりも支持部35がワークWから離れた第2支持高さ(第2設定位置Hs2)で支持するように支持部35の高さを制御するとよい。
【0067】
上記(e)の構成によれば、第1支持領域(胸椎Btの後側)よりも第2支持領域(頚椎Bnの後側)の方がワークWにおける肉部Mの厚さが厚い場合に、骨部等の異物の混入の可能性を抑制しつつ、ワークWからより多くの肉部を採取できる。
【0068】
(f)幾つかの実施形態では、上記(a)乃至(e)の何れかの構成において、ワークWは、食鳥屠体の首部Wnと、首部Wnに連なる胸椎Btの一部と、胸椎Btの一部に連なる肋骨Brの一部とを含む首ガラNcであってもよい。切断刃51は、首ガラNcから首ガラNcの肉部Mを切断して分離可能であるとよい。
【0069】
ワークWが首部Wnに連なる胸椎Btの一部と、胸椎Btの一部に連なる肋骨Brの一部とを含む首ガラNcである場合、この首ガラNcの肉部Mの厚さは、首部Wnに連なる胸椎Btよりも頭部側の領域と比べると、胸椎Btに付いた肉部Mの方が薄い。そのため、胸椎Btに付いた肉部Mを切断刃51で切断する場合には、切断する厚さを比較的薄くして採取する肉部Mに骨部等の異物が混入しないようにすることが望ましい。また、胸椎Btよりも頭部側の領域である首部Wnの肉部Mを切断刃51で切断する場合には、切断する厚さを比較的厚くして採取する肉部Mを多くすることが望ましい。
上記(f)の構成によれば、首ガラNcの搬送方向に沿った位置に応じて切断高さを変更できるので、首ガラNcからより多くの高品質の肉部Mを採取できる。
【0070】
(g)幾つかの実施形態では、上記(f)の構成において、首ガラNcは、首部Wnの胴体側を搬送方向下流側に向け、首部Wnの頭部側を搬送方向上流側に向けた状態で搬送されるとよい。
【0071】
一般的に首ガラNcにおける肉部Mの厚さの個体差は、胸椎Btに付いた肉部Mよりも首部Wnの頭部側の方が大きい。そのため、首ガラNcに切断刃51の刃先を入れる場合に、首部Wnの胴体側から切断刃51の刃先を入れる方が、採取する肉部Mに骨部等の異物が混入し難い。
上記(g)の構成によれば、首部Wnの胴体側から首ガラNcに切断刃51の刃先が入ることになるので、採取する肉部Mに骨部等の異物が混入し難くなる。
【0072】
(h)幾つかの実施形態では、上記(g)の構成において、検出器91で検出した上記通過タイミングを基準として切断高さを制御するための制御装置9を備えるとよい。制御装置9は、首ガラNcにおける胸椎Btの一部を含む第1切断領域である胸椎Btの後側を切断する場合には第1切断高さ位置(第1設定位置Hc1)で切断し、首ガラNcにおける第1切断領域(胸椎Btの後側)よりも搬送方向上流側の第2切断領域である頚椎Bnの後側を切断する場合には第1切断高さ位置(第1設定位置Hc1)よりも切断刃51が首ガラNcの正面側(前側)に近づいた第2切断高さ位置(第2設定位置Hc2又は第3設定位置Hc3)で切断するように切断高さを制御するとよい。
【0073】
第1切断領域(胸椎Btの後側)よりも第2切断領域(頚椎Bnの後側)の方が首ガラNcにおける肉部Mの厚さが厚いので、上記(h)の構成によれば、骨部等の異物の混入の可能性を抑制しつつ、首ガラNcからより多くの肉部Mを採取できる。
【0074】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、一実施形態に係る食肉処理装置1において、上下方向の上側と下側とが(第1方向の他方側と一方側とが)入れ替わった形態の存在も許容される。
また、一実施形態に係る食肉処理装置1において、幅方向が水平方向ではない形態の存在も許容される。
一実施形態に係る食肉処理装置1において、第1方向は上下方向と一致していたが、第1方向は上下方向と一致していない形態の存在も許容される。同様に、一実施形態に係る食肉処理装置1において、第2方向は幅方向と一致していたが、第2方向は幅方向と一致していない形態の存在も許容される。
【0075】
一実施形態に係る食肉処理装置1では、切断刃51を第1設定位置Hc1から第3設定位置Hc3に上昇させる際に2回に分けて上昇させたが、1回で上昇させてもよく、3回以上に分けて上昇させてもよい。
また、一実施形態に係る食肉処理装置1では、支持部35の上面35aの高さ位置を第1設定位置Hs1から第2設定位置Hs2に下降させる際に1回で下降させたが、2回以上に分けて下降させてもよい。
【0076】
上述の説明では、ワークWの通過タイミングを検出アーム93と近接スイッチ92で検出しているが、検出アーム93及び近接スイッチ92を用いる検出方法以外の他の検出方法によってワークWの通過タイミングを検出するようにしてもよい。例えば、撮像装置で撮像したワークWの画像から画像処理によって規定の位置をワークWが通過したタイミングを検出するようにしてもよい。
【0077】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る食肉処理装置は、食鳥屠体の首部を含むワークから首部の肉部を採取するための食鳥の食肉処理装置である。本開示の少なくとも一実施形態に係る食肉処理装置は、ギャップを挟んで互いに対向して配置される一対のガイド板と、ギャップから肉部がはみ出るようにワークを一対のガイド板に対して押し付けるための押圧ユニットと、ギャップの延在方向に沿ってワークを搬送するための搬送装置と、一対のガイド板の下流側に位置し、ギャップからはみ出た肉部を搬送装置で搬送されているワークから分離するための切断刃を有する切断装置と、を備える。一対のガイド板のそれぞれは、ワークを第1方向の一方側から支持可能であるとともに、ギャップを挟んで第1方向と交差する第2方向に互いに対向して配置される。押圧ユニットは、ギャップの延在方向から見たときに、一対のガイド板で支持されているワークを一対のガイド板よりも第1方向の他方側の領域から押圧可能な一対の押圧片を含む。
【0078】
上記のギャップからはみ出た肉部を切断することで肉部を採取する場合、ギャップから多くの肉部がはみ出ることが望ましい。
上記(1)の構成によれば、一対の押圧片で首部を変形させてギャップからの肉部のはみ出し量を増やすことで、採取される肉部の量を増やすことができる。
また、上記(1)の構成によれば、ギャップ32gの間隔を適宜設定することで、ワークWの骨部(頚椎Bn)がギャップ32gからはみ出すことを抑制できるので、採取される肉部Mに骨部等の異物が混入することを抑制でき、高品質の肉部Mを採取できる。
【0079】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、一対の押圧片は、ギャップの延在方向から見たときに、一対のガイド板よりも第1方向の他方側であって、ギャップを第1方向に通過する仮想線を挟んだ領域から、一対のガイド板で支持されているワークの肉部をギャップに向かって押圧可能であるとよい。
【0080】
上記(2)の構成によれば、一対の押圧片で首部をギャップ32gに向かって変形させることができ、ギャップ32gからの肉部のはみ出し量を増やし易くなるので、採取される肉部の量を一層増やすことができる。
【0081】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、搬送装置は、ギャップの延在方向に沿って一対のガイド板に対して第1方向の他方側に配置された搬送チェーンを含むとよい。
【0082】
上記(3)の構成によれば、比較的簡単な構成でワークWを搬送できる。
【0083】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、一対の押圧片は、ギャップの延在方向から見たときに、一対のガイド板よりも第1方向の他方側であって搬送チェーンを挟んだ領域から一対のガイド板で支持されているワークの肉部をギャップに向かって押圧可能であるとよい。
【0084】
上記(4)の構成によれば、一対の押圧片で首部をギャップ32gに向かって変形させることができ、ギャップ32gからの肉部のはみ出し量を増やし易くなるので、採取される肉部の量を一層増やすことができる。
【0085】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、搬送されるワークの通過タイミングを検出するための検出器を備えているとよい。押圧ユニットは、上記通過タイミングを基準として規定のスケジュールに従ってワークを押圧するように構成されているとよい。
【0086】
上記(5)の構成によれば、一対の押圧片によるワークの押圧が必要となるタイミングで一対の押圧片によりワークを押圧できる。
【0087】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、上記規定のスケジュールは、切断刃によるワークの切断を開始した後に押圧ユニットによるワークの押圧が開始され、切断刃によるワークの切断を終了する前に押圧ユニットによるワークの押圧を終了するように設定されているとよい。
【0088】
上記(6)の構成によれば、一対の押圧片による不必要な押圧を抑制できる。
【符号の説明】
【0089】
1 食肉処理装置
3 位置決めユニット
5 切断装置
7 搬送装置
8 押圧ユニット
9 制御装置
11 投入ガイド
12 ガイド板
13 ガイド棒
23 排出ガイド
31 ワークガイド
32 ワークガイド板
32g ギャップ
35 支持部
51 切断刃
71 搬送チェーン
81 圧下装置
83 首押さえガイド
91 検出器