(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092467
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20240701BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B41J2/17 103
B41J2/01 401
B41J2/01 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208406
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207181
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 朋
(72)【発明者】
【氏名】上野 智志
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EA20
2C056EC12
2C056EC33
2C056EE18
2C056FA10
2C056FB03
2C056HA42
2C056JB02
2C056JB04
2C056JB05
2C056JC17
(57)【要約】
【課題】液体吐出部外への液体の飛散を抑制することを課題とする。
【解決手段】液体吐出ヘッド20を有する液体吐出部9A、9Bと、電子基板12と、液体吐出部9Bをその内側に配置し、電子基板12をその外側に配置する隔離部と、を備えた液体吐出装置1であって、隔離部は、液体吐出部9A、9Bの主走査方向の両側および副走査方向の両側の四方を囲う第1隔離部と、第1隔離部に連続して設けられ、液体吐出部9Bの、液体吐出ヘッド20による液体吐出方向と反対方向の側を覆う第2隔離部とを有することを特徴とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出ヘッドを有する液体吐出部と、
電子基板と、
前記液体吐出部をその内側に配置し、前記電子基板をその外側に配置する隔離部と、を備えた液体吐出装置であって、
前記隔離部は、前記液体吐出部の主走査方向の両側および副走査方向の両側の四方を囲う第1隔離部と、前記第1隔離部に連続して設けられ、前記液体吐出部の、前記液体吐出ヘッドによる液体吐出方向と反対方向の側を覆う第2隔離部とを有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記隔離部内に設けられ、前記隔離部内で循環する気流を発生させる気流発生機構をさらに有する請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項3】
開閉部材と、
前記隔離部の一部を形成する隔離部材とを有する請求項1記載の液体吐出装置であって、
前記開閉部材を閉じた状態で、前記隔離部材が前記開閉部材に当接し、前記開閉部材と前記隔離部材とにより前記第2隔離部が構成される液体吐出装置。
【請求項4】
前記隔離部材は、第1隔離部の一部または全部を構成する第1隔離部材と、第2隔離部の一部を構成する第2隔離部材とを有し、
前記第2隔離部材は弾性を有する請求項3記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記隔離部は、前処理液を吐出する前記液体吐出ヘッドを有した液体吐出部を隔離する請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項6】
複数の液体吐出部を有し、
少なくともいずれか一つの液体吐出部を隔離する前記隔離部が設けられる請求項1記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体としてのインクを吐出する液体吐出装置では、画像形成のために液体吐出ヘッドから吐出される主な液滴の他に、この液滴よりも小さい霧状のミストが発生し、画像品質の低下や機内の汚染を生じさせる。特に捺染プリンタでは、インクを布地に塗布する前に前処理液を塗布する。この前処理液は電気導電性が高く、前処理液がミストとして飛散すると、液体吐出装置内の電子基板の不具合につながるという問題があった。
【0003】
例えば特許文献1(特開2020-37252号公報)の液体吐出装置は、前処理液を吐出する第1のヘッドと、インクを吐出する第2のヘッドと、排気部とを備える。排気部が、第2のヘッド側から第1のヘッド側へ流れる気流を形成し、前処理液が第2のヘッド側へ飛散することを抑制する。また、第1のヘッドと第2のヘッドとの間には遮蔽部材が設けられる。
【0004】
特許文献1のように、気流によって液体の飛散を抑制する効果を得ることができる。しかし、装置の構成によってはその効果は十分とは言えず、特に前処理液の飛散による電子基板の不具合に対して十分とは言えなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液体吐出部外への液体の飛散を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は、液体吐出ヘッドを有する液体吐出部と、電子基板と、前記液体吐出部をその内側に配置し、前記電子基板をその外側に配置する隔離部と、を備えた液体吐出装置であって、前記隔離部は、前記液体吐出部の主走査方向の両側および副走査方向の両側の四方を囲う第1隔離部と、前記第1隔離部に連続して設けられ、前記液体吐出部の、前記液体吐出ヘッドによる液体吐出方向と反対方向の側の面を覆う第2隔離部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液体吐出部外への液体の飛散を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る液体吐出装置の各カバー部材が閉じた状態の斜視図である。
【
図3】液体吐出装置の各カバー部材が開いた状態の斜視図である。
【
図5】液体吐出装置内部の構成を示す平面図である。
【
図6】液体吐出装置内部の構成を示す側面図である。
【
図7】液体吐出装置内部の構成を示す正面図である。
【
図8】一つの液体吐出部を有する液体吐出装置の平面図である。
【
図9】一つのキャリッジに一つの液体吐出ヘッドユニットを設けた構成を示す図である。
【
図10】一つのキャリッジに二つの液体吐出ヘッドユニットを設けた構成を示す図である。
【
図11】
図10と液体吐出ヘッドユニットの配置が異なる図である。
【
図12】左右方向、かつ内側に開閉するカバー部材を有する液体吐出装置の正面図で、各カバー部材が閉じた状態の図である。
【
図16】複数の液体吐出部と、左右に開閉するカバー部材とを有する液体吐出装置の正面図である。
【
図17】左右方向、かつ外側に開閉するカバーを有する液体吐出装置の正面図ある。
【
図18】
図17の液体吐出装置の平面図で、各カバー部材が閉じた状態の図である。
【
図19】
図18から各カバー部材が開いた状態の平面図である。
【
図20】前後方向、かつ内側に開閉する液体吐出装置の平面図で、各カバーが閉じた状態の図である。
【
図23】回転により開閉するカバー部材を有する液体吐出装置の側面図である。
【
図24】
図23とは別の、回転により開閉するカバー部材を有する液体吐出装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。本実施形態の液体吐出装置は、記録媒体としての布地に液体を吐出して画像を形成する捺染プリンタである。
【0010】
図1に各カバーが閉じた状態の液体吐出装置1の斜視図、
図2に平面図を示す。また
図3に各カバーが開いた状態の液体吐出装置1の斜視図、
図4に平面図を示す。
図1の方向Xを液体吐出装置の前後方向あるいは副走査方向あるいは記録媒体搬送方向、方向Yを液体吐出装置の幅方向あるいは主走査方向、方向Zは液体吐出方向およびその反対方向、あるいは上下方向とする。方向Xおよび方向Yはステージ上に配置された記録媒体の液体吐出面に平行な方向であるが、多少の誤差があってもよい。方向X,Y,Zは互いに直交する方向であるが、多少の誤差があってもよい。なお
図3および
図4では、便宜上後述の隔離部材や気流形成機構の記載を省略している。
【0011】
図1および
図2に示すように、液体吐出装置1は、筐体2の前方にステージ3を有する。ステージ3はガイドレール4上に設けられる。ガイドレール4は方向Xに延在している。筐体2の前側に操作パネル5が設けられる。筐体2の側面にはインクカートリッジ6が着脱される。筐体2の上方には、開閉部材あるいはカバー部材としての前カバー7および後ろカバー8が設けられる。
【0012】
ステージ3の上面は記録媒体を載置する載置面であり、平坦状をなしている。ステージ3の上面は方向Xおよび方向Yに平行な面である。ステージ3はガイドレール4上を移動し、方向Xの両方向に往復移動可能に設けられる。またステージ3はZ方向に昇降可能に設けられる。これにより、ステージ3に配置された記録媒体の高さを調整できる。
【0013】
前カバー7および後ろカバー8は方向Xの両方向に移動可能に設けられる。前カバー7が後ろ方向に移動し、後ろカバー8が前方向に移動した
図1の状態がそれぞれのカバーが閉じた状態である。これに対して、前カバー7が前方向に移動し、後ろカバー8が後ろ方向に移動した
図3の状態がそれぞれのカバーが開いた状態である。このように前カバー7および後ろカバー8をスライドにより開閉する構成とすることにより、例えば上下に開閉する構成と比較すると、各カバーの開閉領域を含めた液体吐出装置の占有領域を小さくできる。前カバー7および後ろカバー8はその前後方向の両端に開口部を有する。前カバー7および後ろカバー8が閉じられた状態で、前カバー7と後ろカバー8とが前後方向に連続して配置される。
【0014】
図3および
図4に示すように、液体吐出装置1の装置本体部50は、筐体2、筐体2上に設けられる液体吐出部9A、9Bなどを有する。本実施形態では特に、装置本体部50は、液体吐出装置1の前カバー7および後ろカバー8以外の部分である。この装置本体部50に対して、前カバー7および後ろカバー8がX方向にスライド可能に設けられる。
【0015】
前カバー7および後ろカバー8が開くことで、液体吐出装置1内の液体吐出部が外側に開放される。液体吐出部を外部に開放することにより、メンテナンスユニット30や液体吐出ヘッドおよびその周辺の清掃、あるいはキャリッジの交換が可能になる。また、画像形成時には前カバー7および後ろカバー8が閉じられた状態になる。これにより、前カバー7あるいは後ろカバー8により液体吐出部9A、9Bが覆われ、液体吐出部9A、9Bのキャリッジなどの動作部が外部からアクセスできない状態になる。また前カバー7あるいは後ろカバー8内の閉じられた空間に液体吐出部9A、9Bを配置することにより、液体吐出動作時にミストが装置外に飛散することを防止するとともに、液体吐出部9A、9Bに設けられるファンによって前カバー7あるいは後ろカバー8内で気流を循環させ、発生したミストを前カバー7あるいは後ろカバー8内で循環させて回収することができる。
【0016】
本実施形態の液体吐出装置1は、方向Xに二つの液体吐出部9A、9Bを有する。液体吐出部9Aはカラーおよび白色のインクを吐出する。液体吐出部9Bは前処理液を吐出する。なお、各液体吐出部9A、9Bが吐出する液体は上記に限らず、カラーインク、白色のインク、前処理液のうち任意の液体を吐出する形態でもよい。特に、記録媒体が布帛の場合には、インクによる画像形成の前に前処理液を塗布することが好ましいため、どちらか一方の液体吐出部は前処理液を吐出する形態であることが好ましい。
【0017】
液体吐出部9A、9Bは同様の構成を有するため、以下、液体吐出部9Aについて説明する。液体吐出部9Aは、キャリッジ10Aと、ガイドロッド11と、電子基板12と、メンテナンスユニット30とを有する。液体吐出部9A、9Bあるいはキャリッジ10A、10Bを単に液体吐出部9あるいはキャリッジ10とも称する。本実施形態における液体吐出部9は、キャリッジ10の全移動領域を含む部分のことであり、液体吐出部9には電子基板12を含まない。
【0018】
ガイドロッド11は主走査方向に延在する。キャリッジ10はガイドロッド11に沿って主走査方向に移動可能に設けられる。キャリッジ10は複数の液体吐出ヘッドを有する。メンテナンスユニット30は、ガイドロッド11に対向する位置で、左右方向の一方側の液体吐出領域外に設けられる。
【0019】
電子基板12は、液体吐出動作を制御する制御部を有する。
【0020】
メンテナンスユニット30は、液体吐出ヘッドのノズル面を清掃する払拭部材やノズル面を吸引する吸引機構などを有する。払拭部材は、ゴム等で構成されたワイパーでもよいし、不織布等から構成されるウェブでもよい。
【0021】
以上の液体吐出ヘッドについて、記録媒体に画像を形成する過程について説明する。
【0022】
まず記録媒体をステージ3に載置し、ガイドレール4上を搬送する。そして、液体吐出装置の後方側まで搬送し、液体吐出部9Bにより前処理液を記録媒体に塗布する。具体的には、キャリッジ10Bをガイドロッド11に沿って主走査方向へ移動させながら液体吐出ヘッドに設けられたノズルから前処理液を記録媒体に対して主走査方向にわたって塗布する。これを副走査方向の各位置で繰り返し行うことにより、記録媒体に前処理液が塗布される。その後、ステージ3を前方向へ移動させ、同様の方法で液体吐出部9Aによりカラーの各色を記録媒体に吐出する。記録媒体に白色の印刷をする場合には、例えばまず液体吐出部9Aにより白色のインクを吐出した後、再びステージ3を液体吐出部9Aの後方側まで移動させ、液体吐出部9Aによりカラーのインクを記録媒体に吐出させる。これにより、記録媒体に画像を形成できる。
【0023】
このような液体吐出装置では、液体吐出ヘッド20が吐出する液体が、小さい霧状のミストになって周囲に飛散し、液体吐出装置内の汚染や不具合が生じるという問題がある。特に液体吐出部9Bの液体吐出ヘッド20が吐出する前処理液は、酢酸化合物や硝酸化合物などの塩を含んでおり、電気伝導性が高い。このため、前処理液がミスト状になって電子基板へ飛散することにより、電子基板の不具合が生じるといった問題がある。
【0024】
以上の液体吐出ヘッド20が吐出する液体の飛散による不具合を防止する本実施形態の構成について、
図5~
図7を用いて説明する。
図5は液体吐出装置内の構成を示す平面図、
図6は側面図、
図7は正面図である。
【0025】
前処理液を吐出する液体吐出ヘッド20を有する液体吐出部9B側には、隔離部材21が設けられる。
図6に示すように、隔離部材21は、第1隔離部材211と、第2隔離部材212とを有する。第1隔離部材211は、例えば板金などの剛体により構成され、液体吐出装置の筐体の一部により構成してもよい。第2隔離部材212は、弾性を有する材料により形成されることが好ましく、本実施形態ではマイラにより構成される。本実施形態では、第1隔離部材と第2隔離部材とが別々の部材により構成されるが、共通の部材であってもよい。
【0026】
図5に示すように、第1隔離部材211は、液体吐出部9Bの四方を囲っている。つまり、上下方向に垂直な
図5の平面上において、液体吐出部9Bを周状に囲っている。別の言い方をすると、第1隔離部材21は、
図5の上下方向である主走査方向に伸びる部分と
図5の左右方向である副走査方向に伸びる部分により液体吐出部9Bを周状に囲っている。また、第2隔離部材212も同様に、液体吐出部9Bの四方を囲うように設けられる。このように、第1隔離部材211および第2隔離部材212は、液体吐出部9Bの四方を隙間なく囲っている。このように、第1隔離部材211の全部と第2隔離部材212の一部とにより、液体吐出部9Bの四方を囲う第1隔離部が構成される。
【0027】
本実施形態の第1隔離部材211は、上下方向において、液体吐出ヘッド20を含むキャリッジ10の全範囲にわたって設けられる。また第2隔離部材212は、第1隔離部材211の上端側に固定され、その上端が後ろカバー8に接触する。つまり、第2隔離部材212は、上下方向において、第1隔離部材211と後ろカバー8との間を埋めるようにして設けられる。第2隔離部材212を、弾性を有する材料により形成することにより、第2隔離部材212を後ろカバー8に対して、上下方向に隙間なく当接させることができる。本実施形態の隔離部材21は、その上下方向において、液体吐出ヘッド20による液体吐出領域の上方である液体吐出ヘッド20の下端よりも下方の位置から後ろカバー8の天板の底面8aまでの領域を隙間なく埋めている。つまり、ステージが移動する領域に第1隔離部材211は配置されていない。
【0028】
液体吐出部9Bの上方は、第2隔離部材212および後ろカバー8の天板の底面8aにより覆われている。このように、第2隔離部材212の一部と、後ろカバー8の底面8aとにより、液体吐出部9Bの上面側(液体吐出ヘッド20の液体吐出方向と反対方向の側)を覆う第2隔離部が構成される。ただし、第2隔離部材212のみにより液体吐出部9Bの上面を覆う構成であってもよい。
【0029】
液体吐出部9Bの四方を囲う第1隔離部と、液体吐出部9Bの上方を覆う第2隔離部とは連続して設けられ、その間に隙間は設けられていない。具体的には、第2隔離部材212が第1隔離部材211に対して、その一部が上下方向に重なって取り付けられることにより、第2隔離部材212が、第1隔離部材211と後ろカバー8の天板の底面8aとの間の隙間を埋めている。
【0030】
以上の第1隔離部および第2隔離部により、液体吐出部9Bの下方側以外の5面をすべて覆っている。これにより、液体吐出部9Bをその外側の電子基板が配置された空間から隔離し、電子基板などの液体吐出部9Bの外側の領域へ液体が飛散することを防止できる。また液体吐出部9Bの下方側の面を覆わないことにより、この方向からミストを逃がして隔離部内にミストが充満することを防止できる。従って、液体吐出部における機械劣化を防止できる。特に、液体吐出部の下方側は液体を吐出する方向であり、機能上開放する必要がある方向である。なお、この隔離部は、液体吐出部の四方および上方を覆うが、完全に覆う場合に限らず、隙間が設けられていてもよい。例えば、ハーネスを通すための隙間などがあってもよい。隙間が少ないほど、隔離部外への液体の飛散を抑制できる。
【0031】
また本実施形態のように複数の液体吐出部9A、9Bを有する構成においては、その少なくとも一方を隔離部によって隔離することにより、液体吐出部9A、9Bのそれぞれから吐出される液体が混合することも防止できる。
【0032】
また液体吐出部9A、9Bの前方には、気流形成機構22がそれぞれ設けられる。気流形成機構22は、主走査方向の一方側と他方側とにそれぞれ設けられ、液体吐出部9Aあるいは液体吐出部9Bに対して記録媒体の搬送方向に対向する位置に設けられる。
【0033】
図5および
図6に示すように、気流形成機構22は、吸気ダクト221と、フィルタ222と、ファン223と、排気ダクト224とを有する。吸気ダクト221は、吸気側である
図5の右側へ向けて幅が広がる形状をしており、液体吐出部の側からより広範囲の空気を取り込むことができる。従って、気流形成機構22によるミストの回収効率が向上する。フィルタ222は、吸気ダクト221から取り込んだ空気中のミストを回収できる。
【0034】
図5に矢印で示すように、ファン223によりキャリッジ10の移動領域側(つまり、ガイドロッド11側)から吸気ダクト221へ流れる気流が形成される。この気流は、フィルタ222を介して排気ダクト224から上方へ排気される。
【0035】
図7に示すように、排気ダクト224からの排気は、前カバー7の天板部の底面および側板部の内面に沿って流れる。そして、吸気ダクト221からの吸気によって再び吸気ダクト221側へ流れ、前カバー7内で気流が循環する。この前カバー7内で循環する気流により、前カバー7内のミストを気流形成機構側へ流し、フィルタ222により回収できる。なお、後ろカバー8内に設けられた気流形成機構22により、同様に後ろカバー8内で気流が循環する。
【0036】
液体吐出部9Bにおいては、隔離部材21内に気流形成機構22が設けられる。これにより、隔離部材21内で循環する気流を形成する。また、フィルタ222によりミストを回収することができる。これらにより、隔離部材21内でミストが充満することを抑制できる。
【0037】
以上の説明では、前処理液を吐出する液体吐出ヘッドを有する液体吐出部9Bを隔離する隔離部材について説明したが、液体吐出部9Aを隔離する隔離部材を設けてもよい。
【0038】
以上の説明では、液体吐出装置が複数の(2つの)液体吐出部9A、9Bを備え、それぞれの液体吐出部9A、9Bが、液体吐出ヘッドを備えたキャリッジ10A、10B、および、ガイドロッド11、11を備えた構成について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば
図8に示すように、液体吐出装置1が液体吐出部9を1つのみ有する構成であってもよい。この液体吐出装置1は、開閉部材としてのカバー部材7が液体吐出部9を開閉可能に設けられる。
図9に示すように、液体吐出部9が、ガイドロッド11と、キャリッジ10と、キャリッジ10に設けられる液体吐出ヘッドユニット60を有する。液体吐出ヘッドユニット60は複数の液体吐出ヘッドからなるが、単一の液体吐出ヘッドであってもよい。液体吐出ヘッドユニット60は、前処理液、白色あるいはカラー色のインクを吐出する。また液体吐出装置が液体吐出部を3つ以上有していてもよい。また、
図10に示すように、キャリッジ10が複数の液体吐出ヘッドユニット60A,60Bを有する構成であってもよい。この場合、例えば液体吐出ヘッドユニット60Aにより白色あるいはカラー色のインクが吐出され、液体吐出ヘッドユニット60Bにより前処理液が吐出される。また各液体吐出ヘッドユニット60A,60Bの配置は、
図10のように副走査方向に並べて配置する構成の他、
図11のように主走査方向に並べて配置してもよい。
【0039】
以上の説明では、複数の開閉部材が前後方向にスライドして液体吐出装置内を開閉する構成を説明したが、本発明はこれに限らない。例えば
図12に示すように、液体吐出装置1は、液体吐出部などを有する装置本体部50の上部に、開閉部材あるいはカバー部材としての左カバー13および右カバー14を有する。
図12の位置がそれぞれのカバーを閉じた状態であり、それぞれのカバーに示した矢印がそれぞれのカバーを開く方向である。
【0040】
図13に示すように、左カバー13および右カバー14が閉じた状態では、液体吐出部が覆われている。一方、
図14に示すように、右カバー14を左方向(
図14の上方向)へ移動させることで液体吐出部9の右側の一部領域が開放され、
図15に示すように、左カバー13を右方向(
図15の下方向)へ移動させることで液体吐出部9の左側の一部領域が開放される。
【0041】
上記実施形態では、液体吐出装置1が液体吐出部9を一つのみ有する構成を示したが、
図16に示すように、カバーが左右開きする構成において、複数の液体吐出部を有していてもよい。
【0042】
上記の実施形態では左カバー13および右カバー14が内側へ開く構成を示したが、本発明はこれに限らない。例えば
図17に示すように、本実施形態の液体吐出装置1は、左カバー13および右カバー14が
図17に矢印で示すように外側へ開いてもよい。
【0043】
図18に示すように、各カバーが閉じた状態では各カバーに液体吐出部9が覆われる。
図19に示すように、各カバーを開くことで液体吐出部9を外部に対して開放できる。
【0044】
図12のようにカバーが内側へ開く構成の方が、
図17のように外側へカバーが開く構成と比較して、カバーの可動領域を含めた液体吐出装置の占有領域を小さくすることができる。
【0045】
また
図20に示すように、前カバー7および後ろカバー8が前後に開く構成において、内開きの構成を採用することもできる。
図21に示すように、前カバー7を開くことにより、液体吐出部9Aを外部に対して開放する。
図22に示すように、後ろカバー8を開くことにより、液体吐出部9Bを外部に対して開放する。
【0046】
また本発明は、スライドして開閉する開閉部材を有する液体吐出装置の構成に限らない。例えば
図23に示すように、前カバー7が前方へ、後ろカバー8が後方へそれぞれ回転して開く構成であってもよいし、
図24に示すように、カバー7のみが設けられる構成で、カバー部材7が後方へ回転して開く構成であってもよい。
【0047】
以上の
図8~12,16,17,20,23,24で示した各液体吐出装置においても、前述の実施形態と同様、液体吐出部9を隔離する隔離部材を設けることにより、液体吐出部9外への液体の飛散を抑制できる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0049】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0050】
「液体」にはインクだけでなく塗料や前処理液、バインダー、オーバーコート液を含む。
【0051】
本願において、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドを有するキャリッジを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体吐出装置には、液体が付着可能なものである記録媒体に対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0052】
この「液体吐出装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0053】
例えば、「液体吐出装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0054】
また、「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0055】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0056】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0057】
また、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0058】
また、「液体吐出装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0059】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0060】
本発明の態様は、例えば以下の通りである。
<1>
液体吐出ヘッドを有する液体吐出部と、
電子基板と、
前記液体吐出部をその内側に配置し、前記電子基板をその外側に配置する隔離部と、を備えた液体吐出装置であって、
前記隔離部は、前記液体吐出部の主走査方向の両側および副走査方向の両側の四方を囲う第1隔離部と、前記第1隔離部に連続して設けられ、前記液体吐出部の、前記液体吐出ヘッドによる液体吐出方向と反対方向の側を覆う第2隔離部とを有することを特徴とする液体吐出装置である。
<2>
前記隔離部内に設けられ、前記隔離部内で循環する気流を発生させる気流発生機構をさらに有する<1>記載の液体吐出装置である。
<3>
開閉部材と、
前記隔離部の一部を形成する隔離部材とを有する<1>または<2>記載の液体吐出装置であって、
前記開閉部材を閉じた状態で、前記隔離部材が前記開閉部材に当接し、前記開閉部材と前記隔離部材とにより前記第2隔離部が構成される液体吐出装置である。
<4>
前記隔離部材は、第1隔離部の一部または全部を構成する第1隔離部材と、第2隔離部の一部を構成する第2隔離部材とを有し、
前記第2隔離部材は弾性を有する<3>記載の液体吐出装置である。
<5>
前記隔離部は、前処理液を吐出する前記液体吐出ヘッドを有した液体吐出部を隔離する<1>から<4>いずれか記載の液体吐出装置である。
<6>
複数の液体吐出部を有し、
少なくともいずれか一つの液体吐出部を隔離する前記隔離部が設けられる<1>から<5>いずれか記載の液体吐出装置である。
【符号の説明】
【0061】
1 液体吐出装置
8 後ろカバー(開閉部材)
9A、9B 液体吐出部
12 電子基板
21 隔離部材
211 第1隔離部材
212 第2隔離部材
22 気流発生機構
X 副走査方向あるいは記録媒体搬送方向
Y 主走査方向
Z 液体吐出方向およびその反対方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】