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特開2024-92553コイル構造体、リニアモータ及びコイル構造体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092553
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】コイル構造体、リニアモータ及びコイル構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/02 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
H02K41/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208580
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】武富 正喜
(72)【発明者】
【氏名】吉田 実
(72)【発明者】
【氏名】中野 達也
【テーマコード(参考)】
5H641
【Fターム(参考)】
5H641BB06
5H641GG03
5H641GG05
5H641GG07
5H641GG10
5H641HH01
5H641HH02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コンパクト、かつ簡単な構造にて、体積当たりの発生推力が高いコイル構造体、リニアモータ及びコイル構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】軸心方向に単層である長方形の空芯コイルを有するコイル構造体30において、巻き方向が相反する2つの空芯コイルが軸心方向に積層された第1コイル対31Aを2つ有する第1コイルセット31を備え、各第1コイル対31Aの長さ方向の両端部は軸心方向に同一向きへ屈曲しており、2つの第1コイル対31Aは、夫々の両端部の屈曲向きが相互反対向きになるよう、軸心方向に積層されており、巻き方向が相反する2つの空芯コイルが軸心方向に積層され、かつ同一平面上に設けられた長辺部321,322及び短辺部323、324を有する第2コイル対32Bが、軸心方向に2つ積層された第2コイルセット32を備え、2つの第2コイルセット32が軸心方向を平行にして並設される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心方向に単層である長方形の空芯コイルを有するコイル構造体において、
巻き方向が相反する2つの空芯コイルが軸心方向に積層された第1コイル対を2つ有する第1コイルセットを備え、
各第1コイル対の長さ方向の両端部は軸心方向に同一向きへ屈曲しており、
前記2つの第1コイル対は、夫々の両端部の屈曲向きが相互反対向きになるよう、軸心方向に積層されており、
巻き方向が相反する2つの空芯コイルが軸心方向に積層され、かつ同一平面上に設けられた長辺部及び短辺部を有する第2コイル対が、軸心方向に2つ積層された第2コイルセットを備え、
2つの前記第2コイルセットが軸心方向を平行にして並設されており、
前記2つの前記第2コイルセットの隣り合う一方の長辺部同士が、前記第1コイルセットの内側に配置され、
前記2つの第1コイル対の短辺部同士の間に、前記一方の長辺部の端部が介在しているとともに、前記2つの前記第1コイル対は前記第2コイル対よりも長辺部が短いコイル構造体。
【請求項2】
各第1コイル対は、2つの長辺部と、該2つの長辺部の端部同士を連結する2つの短辺部とを有し、
前記2つの長辺部の両端部は、軸心方向に15°から35°の範囲で屈曲している請求項1に記載のコイル構造体。
【請求項3】
前記第1及び第2コイル対の各空芯コイルは内側引出し線及び外側引出し線を有しており、
前記第2コイル対の前記内側引出し線同士の接続部は、前記第1コイルセットの前記長辺部及び前記第2コイルセットの他方の長辺部の間に設けられている請求項2に記載のコイル構造体。
【請求項4】
前記第1及び第2コイル対では、2つの空芯コイルのうち一方の空芯コイルの前記外側引出し線と、他方の空芯コイルの前記外側引出し線とが、夫々異なる長辺部に設けられている請求項3に記載のコイル構造体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のコイル構造体と、
前記第1コイルセットの軸心方向で対向するよう、前記コイル構造体の両側に配置された磁石と
を備えるリニアモータ。
【請求項6】
軸心方向に単層である長方形の空芯コイルを有するコイル構造体の製造方法において、
巻き方向が相反する2つの空芯コイルを軸心方向に積層させ、前記空芯コイルの長さ方向の両端部を軸心方向に同一向きへ屈曲させて第1コイル対を生成し、
巻き方向が相反する2つの空芯コイルを軸心方向に積層させ、長辺部及び短辺部が同一平面上に設けられ、前記長辺部が前記第1コイル対よりも長い第2コイル対を生成し、
前記第2コイル対を軸心方向に2つ積層させて第2コイルセットを生成し、
2つの前記第2コイルセットを、軸心方向を平行にして並設させ、
前記2つの前記第2コイルセットの隣り合う一方の長辺部同士が、前記第1コイル対の内側に位置するようにして、2つの前記第1コイル対を、夫々の両端部の屈曲向きが相互反対向きになり、かつ前記2つの第1コイル対の短辺部同士の間に、前記一方の長辺部の端部が介在するように、軸心方向に積層させて第1コイルセットを生成するコイル構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル構造体、リニアモータ及びコイル構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、扁平な空芯コイルを用いるリニアモータが普及している。例えば、特許文献1では、軸心方向に単層である複数の空芯コイルを、部分的に重畳させながら配置したリニアモータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5508362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、複数の空芯コイルを部分的に重畳させたリニアモータについて記載しているが、斯かる空芯コイルが単層であるので、高い推力は期待できない。また、特許文献1では、高い推力のために異なる形状の空芯コイルを4重に重ねたリニアモータについても開示しているが、4重に重ねるために、大きさや形状の異なる複数種の空芯コイルが必要であり、構造が複雑である。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コンパクト、かつ簡単な構造にて、体積当たりの発生推力を高めることができるコイル構造体、リニアモータ及びコイル構造体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るコイル構造体は、軸心方向に単層である長方形の空芯コイルを有するコイル構造体において、巻き方向が相反する2つの空芯コイルが軸心方向に積層された第1コイル対を2つ有する第1コイルセットを備え、各第1コイル対の長さ方向の両端部は軸心方向に同一向きへ屈曲しており、前記2つの第1コイル対は、夫々の両端部の屈曲向きが相互反対向きになるよう、軸心方向に積層されており、巻き方向が相反する2つの空芯コイルが軸心方向に積層され、かつ同一平面上に設けられた長辺部及び短辺部を有する第2コイル対が、軸心方向に2つ積層された第2コイルセットを備え、2つの前記第2コイルセットが軸心方向を平行にして並設されており、前記2つの前記第2コイルセットの隣り合う一方の長辺部同士が、前記第1コイルセットの内側に配置され、前記2つの第1コイル対の短辺部同士の間に、前記一方の長辺部の端部が介在しているとともに、前記2つの前記第1コイル対は前記第2コイル対よりも長辺部が短い。
【0007】
本発明にあっては、第1コイルセットが、2つの第1コイル対を有し、前記2つの第1コイル対は、夫々の両端部の屈曲向きが相互反対向きになるよう、軸心方向に積層されており、並設された2つの前記第2コイルセットの隣り合う一方の長辺部同士が、前記第1コイルセットの内側に配置され、前記2つの第1コイル対の短辺部同士の間に、前記一方の長辺部の端部が介在し、かつ前記2つの第1コイル対は前記第2コイル対よりも長辺部が短いので、構造を簡単にしつつ、体積当たりの発生推力を高めることができる。
【0008】
本発明に係るコイル構造体は、各第1コイル対は、2つの長辺部と、該2つの長辺部の端部同士を連結する2つの短辺部とを有し、前記2つの長辺部の両端部は、軸心方向に15°から35°の範囲で屈曲している。
【0009】
本発明にあっては、前記第1コイル対の前記2つの長辺部の両端部が、該第1コイル対の軸心方向に15°から35°の範囲で屈曲しているので、屈曲角度が大き過ぎることによりプレス加工の際、前記第1コイル対に傷等の不具合が生じることを防止しつつ、屈曲角度が小さ過ぎることによる二つの第1コイル対を積層の際の積層部分の面積低下を防ぎ結果として第1コイルセットの強度低下を防止できる。
【0010】
本発明に係るコイル構造体は、前記第1及び第2コイル対の各空芯コイルは内側引出し線及び外側引出し線を有しており、前記第2コイル対の前記内側引出し線同士の接続部は、前記第1コイルセットの長辺部及び前記第2コイルセットの他方の長辺部の間に設けられている。
【0011】
本発明にあっては、前記第2コイル対の前記内側引出し線同士の接続部は、前記第1コイルセットの長辺部及び前記第2コイルセットの他方の長辺部の間に設けられるので、斯かる接続部の絶縁性を高めることができる。
【0012】
本発明に係るコイル構造体は、前記第1及び第2コイル対では、2つの空芯コイルのうち一方の空芯コイルの前記外側引出し線と、他方の空芯コイルの前記外側引出し線とが、夫々異なる長辺部に設けられている。
【0013】
本発明にあっては、前記第1コイル対の2つの前記外側引き出し線は、前記第1コイル対の異なる長辺部に夫々設けられ、前記第2コイル対の2つの前記外側引き出し線は、前記第2コイル対の異なる長辺部に夫々設けられている。よって、配線の場合、軸心方向においてコイル構造体と、前記外側引き出し線とが重畳することはなく、コイル構造体の厚みが厚くなることを防止できる。
【0014】
本発明に係るリニアモータは、上述のいずれかのコイル構造体と、前記第1コイルセットの軸心方向で対向するよう、前記コイル構造体の両側に配置された磁石とを備える。
【0015】
本発明にあっては、上述の如く、コンパクト、かつ簡単な構造のコイル構造体を用いるので、リニアモータのコンパクト化、及び、体積当たりの発生推力の向上を図ることができる。
【0016】
本発明に係るコイル構造体の製造方法は、軸心方向に単層である長方形の空芯コイルを有するコイル構造体の製造方法において、巻き方向が相反する2つの空芯コイルを軸心方向に積層させ、前記空芯コイルの長さ方向の両端部を軸心方向に同一向きへ屈曲させて第1コイル対を生成し、巻き方向が相反する2つの空芯コイルを軸心方向に積層させ、長辺部及び短辺部が同一平面上に設けられ、前記長辺部が前記第1コイル対よりも長い第2コイル対を生成し、前記第2コイル対を軸心方向に2つ積層させて第2コイルセットを生成し、2つの前記第2コイルセットを、軸心方向を平行にして並設させ、前記2つの前記第2コイルセットの隣り合う一方の長辺部同士が、前記第1コイル対の内側に位置するようにして、2つの前記第1コイル対を、夫々の両端部の屈曲向きが相互反対向きになり、かつ前記2つの第1コイル対の短辺部同士の間に、前記一方の長辺部の端部が介在するように、軸心方向に積層させて第1コイルセットを生成する。
【0017】
本発明にあっては、2つの空芯コイルを巻き方向が相反するように積層させ、斯かる空芯コイルの長さ方向の両端部を軸心方向に同一向きへ屈曲させて第1コイル対を生成する。2つの空芯コイルを巻き方向が相反するように軸心方向に積層させることによって、長辺部及び短辺部が同一平面上に設けられ、かつ前記長辺部が前記第1コイル対よりも長い第2コイル対を生成する。前記第2コイル対を軸心方向に2つ積層させて第2コイルセットを生成する。2つの前記第2コイルセットを、軸心方向を平行にして並設させ、前記2つの前記第2コイルセットの隣り合う一方の長辺部同士が、前記第1コイル対の内側に位置するようにして、2つの前記第1コイル対を、夫々の両端部の屈曲向きが相互反対向きになり、かつ前記2つの第1コイル対の短辺部同士の間に、前記一方の長辺部の端部が介在するように、軸心方向に積層させて第1コイルセットを生成する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コンパクト、かつ簡単な構造にて、体積当たりの発生推力が高いコイル構造体、リニアモータ及びコイル構造体の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係るリニアモータの外観を示す斜視図である。
図2図1のII-II線による模式的断面図である。
図3】本実施形態のリニアモータの可動子を示す斜視図である。
図4】本実施形態のリニアモータのコイル構造体を示す斜視図である。
図5図4のV-V線による矢視図である。
図6】本実施形態のリニアモータの第2コイル対を示す斜視図である。
図7】本実施形態のリニアモータの第2コイル対の製造方法を説明する説明図である。
図8】本実施形態のリニアモータの第1コイル対を示す斜視図である。
図9図8のIX-IX線による矢視図である。
図10】実施の形態2に係るリニアモータの外観を示す斜視図である。
図11】実施の形態3に係るリニアモータの可動子が複数のコイル構造体を有する場合を例示する例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態に係るコイル構造体及びリニアモータを、図面に基づいて詳述する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施形態に係るリニアモータ100の外観を示す斜視図である。リニアモータ100は、例えば、コイル可動型のリニアモータであり、固定子10及び可動子20を備えている。可動子20は電源装置(図示せず)に接続されている。
【0022】
固定子10は、矩形の平板形状をなす一対のヨーク11と、該一対のヨーク11の間に介在し、ヨーク11同士の両端部を連結する介在部12とを有している。介在部12は、ヨーク11の短辺側に配置されている。介在部12によって、ヨーク11同士は所定間隔を隔てて対向配置されており、一対のヨーク11の間に、可動子20が介在している。可動子20は、ヨーク11の両長辺の対向方向(図1の矢印方向)に移動可能である。即ち、図1の矢印は、可動子20の移動方向を示している。
【0023】
各ヨーク11は、矩形の平板形状をなしており、例えば、鉄等の磁性体から構成されている。介在部12は樹脂等の非磁性体又は鉄等の磁性体から構成されている。介在部12は、例えば、ヨーク11にネジ止めされている。
【0024】
図2は、図1のII-II線による模式的断面図である。図2においては、便宜上、可動子20の表示を省略している。
各ヨーク11は、内側面に磁石ユニット13が取り付けられている。磁石ユニット13は、ヨーク11と可動子20との間に配置されている。換言すれば、可動子20は、一対の磁石ユニット13の間に介在している。
【0025】
磁石ユニット13は、複数の永久磁石131を有している。各永久磁石131は、ヨーク11の長さ方向に延びる角棒形状をなしており、複数の永久磁石131は、可動子20の移動方向へ、等間隔に並設されている。
【0026】
一対の磁石ユニット13は交番磁界を形成している。詳しくは、各永久磁石131は、一対の磁石ユニット13の対向方向に、磁極を向けており、前記対向方向において、永久磁石131同士の磁極は逆転しており、隣り合う永久磁石131同士の磁極も逆転している。
【0027】
図3は、本実施形態のリニアモータ100の可動子20を示す斜視図である。
可動子20は、積層された複数の空芯コイルからなるコイル構造体30と、コイル構造体30を挟持する挟持部材40とを含む。挟持部材40は、コイル構造体30の空芯コイルの軸心方向の両側からコイル構造体30を挟持している。
【0028】
挟持部材40は、長方形の平板形状をなしており、対向配置された一対の当て部41と、一対の当て部41を連結するマチ部42とを有している。即ち、一対の当て部41の隣り合う一方の短辺同士がマチ部42によって連結されている。マチ部42は、当て部41の幅寸法と略同じ長さを有する、細長い長方形板形状をなしている。一対の当て部41及びマチ部42は一体形成されており、例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)から構成されている。
【0029】
また、一対の当て部41の間には、当て部41の長さ方向の略中間から他方の短辺部に亘って、間隔保持部43が設けられている。間隔保持部43は、マチ部42の幅寸法と略同じ厚みを有する矩形の板形状をなしており、ネジ又は接着剤によって当て部41に取り付けられ、当て部41同士間の間隔を保持している。間隔保持部43は、例えば、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)から構成されている。
【0030】
以上のような構成により、挟持部材40では、当て部41同士の間であって、マチ部42及び間隔保持部43の間に、隙間が形成されており、斯かる隙間にコイル構造体30が介在している。マチ部42はコイル構造体30の抜けを防止し、当て部41とコイル構造体30との間には、例えば、GFRP等からなる不図示の絶縁シートが介在しても良い。
【0031】
図4は、本実施形態のリニアモータ100のコイル構造体30を示す斜視図であり、図5は、図4のV-V線による矢視図である。図5においては、便宜上、第1コイルセット31及び第2コイルセット32の内側引き出し線及び外側引き出し線の図示を省略している。
【0032】
コイル構造体30は、1つの第1コイルセット31と、2つの第2コイルセット32とを備える。第1コイルセット31及び第2コイルセット32は、何れも、略長方形であり、幅方向の寸法が同一で第1コイルセット31の長さは第2コイルセットよりも短くしてある。
【0033】
各第2コイルセット32は、中空の長方形であり、2つの長辺部321,322と、2つの短辺部323,324とを備える。第2コイルセット32において、2つの長辺部321,322は、幅方向の寸法が同じであり、長辺部321,322の幅方向の寸法の和に相当する距離だけ離隔して形成されている。
【0034】
第1コイルセット31も、第2コイルセット32と同様、中空の長方形であり、2つの長辺部311,312と、2つの短辺部313,314とを備える。第1コイルセット31において、2つの長辺部311,312は、幅方向の寸法が同じであり、長辺部311,312の幅方向の寸法の和に相当する距離を離隔して形成されている。
【0035】
第1コイルセット31と、2つの第2コイルセット32とは長さ方向が平行になるように配置されており、第1コイルセット31は、2つの第2コイルセット32と部分的に重畳している。
【0036】
第2コイルセット32は、積層された2つの第2コイル対32Bを有している。
図6は、本実施形態のリニアモータ100の第2コイル対32Bを示す斜視図であり、図7は、本実施形態のリニアモータ100の第2コイル対32Bの製造方法を説明する説明図である。図7において、実線の矢印は、巻き方向を示している。
【0037】
第2コイル対32Bは、中空の長方形であり、2つの長辺部321B,322Bと、2つの短辺部323B,324Bを備える。2つの長辺部321B,322Bと、2つの短辺部323B,324Bとは同一平面上に設けられている。
【0038】
また、第2コイル対32Bは、軸心方向に単層である長方形の2つの空芯コイル300Bを巻き方向が相反するように、軸心方向に積層させることによって形成されている。即ち、図7に示すように、巻き方向が同一である2つの空芯コイル300Bのうちいずれか一方を反転させて、他方と同軸心上に積層させている。
【0039】
各空芯コイル300Bは、例えば、帯状0.835×0.6mmの導体の平角線(0.835×0.3mmの導体の平角線を二重にした場合も含む)を、軸心方向と直交する方向に15回巻いて形成されている。平角線同士が厚み方向にて重畳するように巻回されている。即ち、空芯コイル300Bは、軸心方向には単層であり、軸心方向と直交する方向に複層であって、軸心方向の両端面が略平らである。斯かる平角線は、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の接着剤が外周面に塗布された状態にて巻回される。接着剤は、室温で、又は加熱により硬化する。これによって、空芯コイル300Bの形状が維持され、第2コイル対32B及び第2コイルセット32においては、軸心方向に積層された空芯コイル300B同士が固定される。図4図7においては、便宜上、空芯コイル300Bの軸心方向の端面(複層状のコイル)を略示している。
【0040】
空芯コイル300Bは、内側引き出し線325B及び外側引き出し線326Bを有しており、内側引き出し線325Bは、空芯コイル300Bの短辺部の内側から引き出され、空芯コイル300Bの幅方向の中央よりも、長辺寄りにズレて設けられている。また、外側引き出し線326Bは、空芯コイル300Bの最外郭層のいずれかの長辺部から引き出されている。
【0041】
上述の如く、第2コイル対32Bは、2つの空芯コイル300Bのうちいずれか一方を反転させて同軸心上に積層させているから、第2コイル対32Bにおいては、各空芯コイル300Bの外側引き出し線326Bが異なる長辺部321B,長辺部322Bの外側面から夫々引き出されている。この際、内側引き出し線325B同士は、例えば、半田付けによって接続部327Bを形成し、第2コイル対32Bの幅方向の中央よりも、長辺部322B寄りにズレて設けられている。
【0042】
各第2コイルセット32は、2つの第2コイル対32Bを、同軸心上に積層させて形成されている。換言すれば、第2コイルセット32は、軸心方向に積層された4つの空芯コイル300Bを有する。この際、第2コイルセット32は2つの接続部327Bを有し、一方の接続部327Bは短辺部324寄りに設けられ、他方の接続部327Bは短辺部323寄りに設けられている。
【0043】
第1コイルセット31は、積層された2つの第1コイル対31Aを有している。図8は、本実施形態のリニアモータ100の第1コイル対31Aを示す斜視図であり、図9は、図8のIX-IX線による矢視図である。図9においては、便宜上、引き出し線の図示を省略している。
【0044】
第1コイル対31Aは、中空の長方形であり、2つの長辺部311A,312Aと、2つの短辺部313A,314Aを備える。
また、第1コイル対31Aは、軸心方向に単層である長方形の2つの空芯コイル300Aを第2コイル対32Bと同様、巻き方向が相反するように、軸心方向に積層させることによって形成されている。即ち、巻き方向が同一である2つの空芯コイル300Aのうちいずれか一方を反転させて、他方と同軸心上に積層させている。第1コイル対31Aは、長辺部が短いほかは後述する屈曲部318Aを除いて、第2コイル対32Bと同じ形状を有している。
【0045】
各空芯コイル300Aは、長辺部が短いほかは空芯コイル300Bと略同じ形状を有している。内側引き出し線315A及び外側引き出し線316Aを有しており、内側引き出し線315Aは、空芯コイル300Aの短辺部の内側から引き出され、空芯コイル300Aの幅方向の中央よりも、長辺部寄りにズレて設けられている。また、外側引き出し線316Aは、空芯コイル300Aの最外郭層のいずれかの長辺部から引き出されている。図8においては、便宜上、空芯コイル300Aの軸心方向の端面(複層状のコイル)を略示している。
【0046】
上述の如く、第1コイル対31Aは、2つの空芯コイル300Aのうちいずれか一方を反転させて他方と同軸心上に積層させているから、第1コイル対31Aにおいては、各空芯コイル300Aの外側引き出し線316Aが異なる長辺部311A,312Aの外側面から夫々引き出されている。
この際、内側引き出し線315A同士は、例えば、半田付けによって接続部317Aを形成し、第1コイル対31Aの幅方向の中央よりも、長辺部312A寄りにズレて設けられている。
【0047】
また、第1コイル対31Aは、長さ方向の両端部にプレス加工が施されて、湾曲している。斯かるプレス加工後の第1コイル対31Aは、長さ方向の長さが、第2コイル対32Bよりも短くしてある。これによって、第1コイル対31Aでは、2つの長辺部311A,312Aの両端側に屈曲部318Aが形成されている。上述の如く、屈曲部318Aを除いて、長辺部が短いほかは、第1コイル対31Aは第2コイル対32Bと略同じ形状を有している。
屈曲部318Aは、例えば、軸心方向へ15°から35°の範囲で屈曲している。即ち、各屈曲部318Aは、第1コイル対31Aの軸心方向と直交する方向に対して15°から35°の範囲で斜めに形成されている。屈曲部318Aの屈曲角度が35°を超える場合は、プレス加工の際、第1コイル対31Aに傷等の不具合が生じるおそれがある。屈曲部318Aの屈曲角度が15°未満の場合は、長辺部311A,312Aにおいて斜めに形成される部分(傾斜部分)が広くなり、2つの第1コイル対31Aを積層させて接着剤で固定する際に、2つの第1コイル対31Aの接触部分の面積が狭くなるので第1コイルセット31の強度が低下する。
【0048】
第1コイルセット31は、2つの第1コイル対31Aを、同軸心上に積層させて形成されている。換言すれば、第1コイルセット31は、軸心方向に積層された4つの空芯コイル300Aを有する。この際、2つの第1コイル対31Aのうち、一方の第1コイル対31Aの屈曲部318Aの屈曲向きは、他方の第1コイル対31Aの屈曲部318Aの屈曲向きと相互反対向きである。よって、第1コイルセット31においては、2つの第1コイル対31Aの短辺部313同士、及び、短辺部314同士の間に、隙間が形成されている。
【0049】
コイル構造体30においては、2つの第2コイルセット32が、軸心方向を平行にして、夫々の長辺部321同士が隣り合うように、並設されている。2つの第2コイルセット32の長辺部321同士は、第1コイルセット31の内側に配置されている。この際、2つの第2コイルセット32の長辺部321と、第1コイルセット31の長辺部311とは、第1コイル対31Aの屈曲部318Aを除く部分にて面一をなす。
【0050】
また、2つの第1コイル対31Aの短辺部313同士間の隙間には、2つの第2コイルセット32の長辺部321の一端部が介在している。また、2つの第1コイル対31Aの短辺部314同士間の隙間には、2つの第2コイルセット32の長辺部321の他端部が介在している。
【0051】
この際、2つの第2コイルセット32の接続部327Bは、第1コイルセット31の長辺部311と第2コイルセット32の長辺部322との間、及び、第1コイルセット31の長辺部312と第2コイルセット32の長辺部322との間の空間に配置されている。
【0052】
このような構成を有する実施の形態1のリニアモータ100は、コイル構造体30に通電が行われた場合、フレミングの左手則に基づいて一対の磁石ユニット13の間で形成された交番磁界を横切る方向(以下、移動方向)への推力が発生し、コイル構造体30を前記移動方向に押す。これにより、可動子20が移動する(図1の矢印参照)。
【0053】
本実施形態のリニアモータ100においては、上述の如く、コイル構造体30の第1コイルセット31及び2つの第2コイルセット32がいずれも4層の空芯コイル300A,300Bからなる。更に、2つの第2コイルセット32の長辺部321が、第1コイルセット31の内側に、面一になるように、配置されている。また、2つの第1コイル対31Aの短辺部313,314同士間の隙間には、2つの第2コイルセット32の長辺部321の両端部が介在している。よって、コンパクト、かつ簡単な構造にて、体積当たりの発生推力を高めることができる。
【0054】
また、本実施形態のリニアモータ100においては、上述の如く、2つの空芯コイル300Bの内側引き出し線325B同士の接続部327Bが、第1コイルセット31の長辺部311と第2コイルセット32の長辺部322との間、及び、第1コイルセット31の長辺部312と第2コイルセット32の長辺部322との間に配置されている(図4参照)。よって、リニアモータ100のコンパクト化を図ると共に、接続部327Bの絶縁性を高めることができる。
【0055】
更に、本実施形態のリニアモータ100においては、上述の如く、第1コイル対31Aでは、各空芯コイル300Aの外側引き出し線316Aが、最外郭層であって、相互異なる長辺部311A,312Aから夫々引き出されている。また、第2コイル対32Bでは、各空芯コイル300Bの外側引き出し線326Bが、最外郭層であって、相互異なる長辺部321B,322Bから夫々引き出されている。
よって、外側引き出し線316A,326Bの配線を行う場合、軸心方向においてコイル構造体30と、外側引き出し線316A,326Bとが重畳することはなく、コイル構造体30の厚みが厚くなることを防止できる。
【0056】
以上においては、リニアモータ100が、第1コイル対31Aが2つの空芯コイル300Aからなり、第2コイル対32Bが2つの空芯コイル300Bからなる場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。第1コイル対31Aが3つ以上の空芯コイル300Aからなり、第2コイル対32Bが3つ以上の空芯コイル300Bからなる構成であっても良い。
【0057】
(実施の形態2)
実施の形態1に係るコイル構造体30は、断面視でコの字型のヨークを持つリニアモータにも適用できる。以下、詳しく説明する。
【0058】
図10は、実施の形態2に係るリニアモータ100の外観を示す斜視図である。
リニアモータ100は、実施の形態1と同様、コイル可動型のリニアモータであり、固定子10及び可動子20を備えている。可動子20は電源装置(図示せず)に接続されている。
【0059】
固定子10は、矩形の平板形状をなす一対のヨーク板11と、ヨーク板11同士の一端部を連結する連結部12Aとを有している。連結部12Aは、ヨーク板11の一長辺側に設けられている。即ち、連結部12Aはヨーク板11と同じ長さの短冊形状を成しており、一方のヨーク板11の一長辺と、他方のヨーク板11の一長辺とを繋いでいる。連結部12Aによって、ヨーク板11同士は所定間隔を隔てて対向配置されており、ヨーク板11同士間には隙間が形成されている。一対のヨーク板11は前記一長辺を除く他の3辺にて開放されている。一対のヨーク板11の間の前記隙間には可動子20が介在している。
可動子20は、ヨーク11の両短辺の対向方向(図10の矢印方向)に移動可能である。即ち、図10の矢印方向は、可動子20の移動方向を示している。
【0060】
各ヨーク板11は、例えば、鉄等の磁性体から構成されており、連結部12Aはヨーク板11と同じく鉄等の磁性体から構成されている。一対のヨーク板11及び連結部12Aは、例えば、一体形成されており、断面視でコの字型を成している。
【0061】
各ヨーク板11では、内側面に磁石ユニット13(磁石の列)が取り付けられている。即ち、磁石ユニット13は、ヨーク板11と可動子20との間に配置されている。換言すれば、可動子20は、対向する一対の磁石ユニット13の間に介在している。
【0062】
各磁石ユニット13は、複数の永久磁石131を有している。各永久磁石131は、ヨーク板11の幅方向に延びる角棒形状をなしており、複数の永久磁石131は、可動子20の移動方向へ、等間隔に並設されている。磁石ユニット13については、実施の形態1にて既に説明しており、詳しい説明を省略する。
【0063】
可動子20は、一対のヨーク板11の間に位置する矩形厚板形状の介在部50と、介在部50の長さ方向の一端部を保持する保持部21とを備えている。可動子20は、複数の永久磁石131の並設方向に移動可能である。
【0064】
可動子20の介在部50は、上述の如く、一対の磁石ユニット13の間に介在しており、コイル構造体30を含む。詳しくは、介在部50は、例えばエポキシ樹脂、ガラス繊維強化エンジニアリングプラスチック(PPS)等のモールド材を用いてコイル構造体30をモールディング処理することによって形成されている。介在部50はコイル構造体30の形状に対応する矩形厚板形状をなしている。即ち、コイル構造体30の空芯コイルの積層方向は介在部50の厚み方向であり、コイル構造体30の長さ方向は介在部50の長さ方向であり、コイル構造体30の幅方向は介在部50の幅方向になる。介在部50の厚みは磁石ユニット13同士間の間隔よりも薄い。
【0065】
このような構成を有する実施の形態2のリニアモータ100は、コイル構造体30に通電が行われた場合、実施の形態1と同様、フレミングの左手則に基づいて一対の磁石ユニット13の間で形成された交番磁界を横切る方向への推力が発生し、コイル構造体30を前記移動方向に押す。これにより、可動子20が移動する。
【0066】
(実施の形態3)
以上では、可動子20が1つのコイル構造体30を有する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。可動子20が複数のコイル構造体30を有するように構成しても良い。以下、可動子20が3つのコイル構造体30を有する場合を例に挙げて詳しく説明する。
【0067】
図11は、実施の形態3に係るリニアモータ100の可動子20が複数のコイル構造体30を有する場合を例示する例示図である。図11の例においては、可動子20が3つのコイル構造体30X,30Y,30Zを有している。便宜上、図11では、保持部21の図示を省略している。また、以下では、3つのコイル構造体30X,30Y,30Zを単にコイル構造体30とも称する。
【0068】
3つのコイル構造体30X,30Y,30Zは隙間なくこの順に並設されている。3つのコイル構造体30X,30Y,30Zは各コイル構造体の幅方向に並設されている。3つのコイル構造体30X,30Y,30Zはモールド材を用いてモールディング処理されることによって一体化され、介在部50(可動子20)が形成されている。介在部50は、3つのコイル構造体30X,30Y,30Zの並設方向を長さ方向とする矩形の板形状を成している。
【0069】
コイル構造体30Xは、1相用の第1コイルセット31X及び2相用の第2コイルセット32Xを備えている。また、コイル構造体30Yは、1相用の第1コイルセット31Y及び2相用の第2コイルセット32Yを備えている。そして、コイル構造体30Zは、1相用の第1コイルセット31Z及び2相用の第2コイルセット32Zを備えている。
コイル構造体30X,30Y,30Zの夫々は、上述したコイル構造体30と同じ構成を有しているので、詳しい説明は省略する。
【0070】
実施の形態3に係るリニアモータ100において、コイル構造体30Xの第1コイルセット31XはV相用であり、コイル構造体30Yの第1コイルセット31YはW相用であり、コイル構造体30Zの第1コイルセット31ZはU相用である。即ち、コイル構造体30X,30Y,30Zの1相用の第1コイルセット31X、31Y、31Zは、夫々V相、W相、U相に対応している。
【0071】
なお、以上の記載に限定されるものではなく、可動子20が2つのコイル構造体30を有するように構成しても良く、可動子20が4つ以上のコイル構造体30を有するように構成しても良い。
【0072】
このように、可動子20が複数のコイル構造体30を有する場合、各コイル構造体30の第1コイルセット31は並設方向に沿って、夫々V相、W相、U相の順序に繰り返して適用される。
例えば、可動子20が2つのコイル構造体30を有する場合は、各コイル構造体30の第1コイルセット31はコイル構造体30の並設方向に沿って、夫々V相、W相に適用される。可動子20が4つ以上のコイル構造体30を有する場合は、各コイル構造体30の第1コイルセット31はコイル構造体30の並設方向に沿って、夫々V相、W相、U相、V相…に適用される。
【0073】
開示された実施の形態1~3は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
13 磁石ユニット
30,30X,30Y,30Z コイル構造体
31,31X,31Y,31Z 第1コイルセット
31A 第1コイル対
32,32X,32Y,32Z 第2コイルセット
32B 第2コイル対
100 リニアモータ
300A 空芯コイル
300B 空芯コイル
311,312,311A,312A,321,322,321B,322B 長辺部
313A,314A,323B,324B 短辺部
325B 315A内側引き出し線
326B 316A外側引き出し線
327B 接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11