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  • 特開-液晶組成物、液晶層及び調光素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092705
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】液晶組成物、液晶層及び調光素子
(51)【国際特許分類】
   C09K 19/60 20060101AFI20240701BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20240701BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20240701BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20240701BHJP
   C09K 19/14 20060101ALI20240701BHJP
   C09K 19/20 20060101ALI20240701BHJP
   C09K 19/24 20060101ALI20240701BHJP
   C09K 19/16 20060101ALI20240701BHJP
   C09K 19/18 20060101ALI20240701BHJP
   C09K 19/38 20060101ALI20240701BHJP
   C09K 19/54 20060101ALI20240701BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
C09K19/60 E
C09K19/34
C09K19/30
C09K19/12
C09K19/14
C09K19/20
C09K19/24
C09K19/16
C09K19/18
C09K19/38
C09K19/54 Z
G02F1/13 500
G02F1/13 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208824
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(72)【発明者】
【氏名】高崎 美花
(72)【発明者】
【氏名】東條 健太
(72)【発明者】
【氏名】中田 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】間宮 純一
(72)【発明者】
【氏名】川北 健人
(72)【発明者】
【氏名】門本 豊
【テーマコード(参考)】
2H088
4H027
【Fターム(参考)】
2H088EA34
2H088GA02
2H088GA13
2H088KA06
2H088KA20
2H088MA02
2H088MA20
4H027BA14
4H027BB11
4H027BD02
4H027BD07
4H027BD24
4H027BE04
4H027BE05
4H027CC04
4H027CD04
4H027CE05
4H027CG04
4H027CM01
4H027CN01
4H027CP04
4H027CT01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】二色性色素を含有しながらも、耐光性に優れる液晶層を形成するための液晶組成物を提供すること。
【解決手段】下記式(1)で表される化合物、及び、特定化学構造で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の二色性色素と、重合性化合物と、重合開始剤と、下記式(3)で表される液晶化合物と、を含有する、液晶組成物。


【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物、及び、下記式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の二色性色素と、
重合性化合物及び重合開始剤と、
下記式(3)で表される液晶化合物と、を含有する、液晶組成物。
【化1】

[式(1)中、
及びAはそれぞれ独立して
(a1)1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-O-又は-S-に置き換えられてもよく、この基中に存在する-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)、
(b1)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)、
(c1)1,4-シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基又はフェナントレン-2,7-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基及びフェナントレン-2,7-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)及び
(d1)チオフェン-2,5-ジイル基、チオフェン-2,4-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,5-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、ジベンゾチオフェン-3,7-ジイル基、ジベンゾチオフェン-2,6-ジイル基又はチエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル基(これらの基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基を表し、前記の基(a1)、基(b1)、基(c1)及び基(d1)中に存在する水素原子はそれぞれ独立して、メチル基、フッ素原子又は塩素原子に置き換えられてもよく、
及びZはそれぞれ独立して、-CHO-、-OCH-、-CFO-、-OCF-、-CHCH-、-CFCF-、-CH=CH-、-CF=CF-、-N=CH-、-CH=N-、-N=N-、-C≡C-又は単結合を表し、
及びRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基(この基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよく、この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-NR-、-O-、-S-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-に置き換えられてもよい。)を表し、
は、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数2~20のアルケニル基(これらの基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-O-、-S-、-COO-、-OCO-又は-CO-に置き換えられてもよく、これらの基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよい。)を表し、
は酸素原子又は硫黄原子を表し、
が複数存在する場合、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、式(1)中で酸素原子と酸素原子が直接結合することはない。]
【化2】

[式(2)中、
及びAはそれぞれ独立して
(a2)1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-O-又は-S-に置き換えられてもよく、この基中に存在する-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)、
(b2)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)、
(c2)1,4-シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基又はフェナントレン-2,7-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基及びフェナントレン-2,7-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)及び
(d2)チオフェン-2,5-ジイル基、チオフェン-2,4-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,5-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、ジベンゾチオフェン-3,7-ジイル基、ジベンゾチオフェン-2,6-ジイル基又はチエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル基(これらの基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基を表し、前記の基(a2)、基(b2)、基(c2)及び基(d2)中に存在する水素原子はそれぞれ独立して、メチル基、フッ素原子又は塩素原子に置き換えられてもよく、
及びZはそれぞれ独立して、-CHO-、-OCH-、-CFO-、-OCF-、-COO-、-OCO-、-CHCH-、-CFCF-、-CH=CH-、-CF=CF-、-N=CH-、-CH=N-、-N=N-、-C≡C-又は単結合を表し、
及びRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基(この基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよく、この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-NR-、-O-、-S-、-CO-、-CS-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-に置き換えられてもよい。)を表し、
は、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数2~20のアルケニル基(これらの基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-O-、-S-、-COO-、-OCO-又は-CO-に置き換えられてもよく、これらの基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよい。)を表し、
n及びmはそれぞれ独立して1~3の整数を表し、
及びZが複数存在する場合、複数のAは互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のZは互いに同一であっても異なっていてもよく、
及びZが複数存在する場合、複数のAは互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のZは互いに同一であっても異なっていてもよく、
が複数存在する場合、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、式(2)中で酸素原子と酸素原子が直接結合することはない。]
【化3】

[式(3)中、
11は炭素原子数1~10のアルキル基(この基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよく、この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-に置き換えられてもよい。)を表し、
12はハロゲン原子、シアノ基、イソチオシアネート基又は炭素原子数1~10のアルキル基(該アルキル基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよく、該アルキル基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-に置き換えられてもよい。)を表し、
11、A12及びA13はそれぞれ独立して
(a3)1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-は-O-に置き換えられてもよい。)、
(b3)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)及び
(c3)1,4-シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基及び1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基を表し、前記の基(a3)、基(b3)及び基(c3)中に存在する水素原子はそれぞれ独立して、シアノ基、メチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメチルオキシ基、フッ素原子又は塩素原子に置き換えられてもよく、
11及びZ12はそれぞれ独立して、単結合、-CHCH-、-(CH-、-OCH-、-CHO-、-COO-、-OCO-、-OCF-、-CFO-、-CH=N-N=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-を表し、
11は0~3の整数を表し、
11及びZ11が複数存在する場合、複数のA11は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のZ11は互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記式(1)で表される化合物を含有する、請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
前記式(1)中の前記A及び前記Aがそれぞれ独立して、前記基(a1)及び前記基(b1)からなる群より選ばれる基である、請求項2に記載の液晶組成物。
【請求項4】
前記式(1)中の前記Z及び前記Zがそれぞれ独立して、-OCH-又は単結合である、請求項3に記載の液晶組成物。
【請求項5】
前記式(2)で表される化合物を含有する、請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項6】
前記式(2)中の前記A及び前記Aがそれぞれ独立して、前記基(a2)及び前記基(b2)からなる群より選ばれる基である、請求項5に記載の液晶組成物。
【請求項7】
前記式(2)中の前記Z及び前記Zがそれぞれ独立して、-OCH-又は単結合である、請求項6に記載の液晶組成物。
【請求項8】
前記式(1)で表される化合物及び前記式(2)で表される化合物を含有する、請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項9】
前記式(3)で表される化合物として、下記式(3T)で表される化合物を含有する、請求項1に記載の液晶組成物。
【化4】

[式(3T)中、
T1及びRT2はそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基(この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-は-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-に置き換えられてもよい。)を表し、
T1、AT2及びAT3はそれぞれ独立して、1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよく、この基中の水素原子はメチル基、シアノ基、フッ素原子又は塩素原子に置き換えられてもよい。)を表す。]
【請求項10】
前記重合開始剤として、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤を含有する、請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の液晶組成物から形成される液晶層であって、
前記二色性色素と、前記重合性化合物由来のポリマーネットワークと、前記液晶化合物とを含む、液晶層。
【請求項12】
一対の透明電極基板と、
前記一対の透明電極基板の間に配された請求項11に記載の液晶層と、を有する調光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶組成物、液晶層及び調光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶材料は、TVやスマートフォンに代表される文字や画像、映像を表示させる各種表示素子に利用されるだけではなく、光の透過を調節する調光素子としての利用に関しても実用化されつつある。中でも、二色性色素を含む液晶材料は、偏光板が不要になり、低コストで透過率の高い調光素子を得ることができることから、調光素子用の材料として期待されている。
【0003】
二色性色素を含む液晶材料については古くから検討されており、所定の性能(例えば、液晶組成物と色素化合物の高い溶解性)を有する液晶材料を開発する試みが行われてきた(例えば、特許文献1)。
【0004】
近年、建材や運輸の分野において、空間の快適性と利便性向上のため、外光の透過度合いを調節するスマートウィンドウ・スマートガラス用途の調光素子として、いわゆる高分子分散型(ポリマーネットワーク型)液晶素子が注目されている。高分子分散型液晶素子は、液晶材料がポリマーネットワーク中に介在(又は分散)する構造の液晶層(調光層)を有しており、液晶層での光の透過/散乱度合いを印加電圧によって調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2017-513975号公報
【特許文献2】国際公開第2022/138418号
【特許文献3】中国特許出願公開第106748833号明細書
【特許文献4】特開平7-156564号公報
【特許文献5】特開昭59-4651号公報
【特許文献6】特開2006-193742号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Journal of Chemical and Engineering Data, 1984, 29(4), 482-483
【非特許文献2】Liquid Crystals (2011), 38(11-12), 1683-1698
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
スマートウィンドウ等の調光素子に使用される液晶層には高い耐光性が求められるが、液晶層が二色性色素を含む場合には、十分に高い耐光性が得られないことがある。
【0008】
本発明の課題の一つは、二色性色素を含有しながらも、耐光性に優れる液晶層を提供することにある。また、本発明の課題の一つは、上記液晶層を形成するための液晶組成物を提供することにある。また、本発明の課題の一つは、上記液晶組成物を用いた調光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のいくつかの側面は、下記[1]~[12]に記載の液晶組成物、液晶層及び調光素子を提供する。
【0010】
[1]
下記式(1)で表される化合物、及び、下記式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の二色性色素と、
重合性化合物及び重合開始剤と、
下記式(3)で表される液晶化合物と、を含有する、液晶組成物。
【0011】
【化1】
【0012】
[式(1)中、
及びAはそれぞれ独立して
(a1)1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-O-又は-S-に置き換えられてもよく、この基中に存在する-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)、
(b1)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)、
(c1)1,4-シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基又はフェナントレン-2,7-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基及びフェナントレン-2,7-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)及び
(d1)チオフェン-2,5-ジイル基、チオフェン-2,4-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,5-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、ジベンゾチオフェン-3,7-ジイル基、ジベンゾチオフェン-2,6-ジイル基又はチエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル基(これらの基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基を表し、前記の基(a1)、基(b1)、基(c1)及び基(d1)中に存在する水素原子はそれぞれ独立して、メチル基、フッ素原子又は塩素原子に置き換えられてもよく、
及びZはそれぞれ独立して、-CHO-、-OCH-、-CFO-、-OCF-、-CHCH-、-CFCF-、-CH=CH-、-CF=CF-、-N=CH-、-CH=N-、-N=N-、-C≡C-又は単結合を表し、
及びRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基(この基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよく、この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-NR-、-O-、-S-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-に置き換えられてもよい。)を表し、
は、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数2~20のアルケニル基(これらの基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-O-、-S-、-COO-、-OCO-又は-CO-に置き換えられてもよく、これらの基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよい。)を表し、
は酸素原子又は硫黄原子を表し、
が複数存在する場合、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、式(1)中で酸素原子と酸素原子が直接結合することはない。]
【0013】
【化2】
【0014】
[式(2)中、
及びAはそれぞれ独立して
(a2)1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-O-又は-S-に置き換えられてもよく、この基中に存在する-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)、
(b2)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)、
(c2)1,4-シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基又はフェナントレン-2,7-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基及びフェナントレン-2,7-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)及び
(d2)チオフェン-2,5-ジイル基、チオフェン-2,4-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,5-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、ジベンゾチオフェン-3,7-ジイル基、ジベンゾチオフェン-2,6-ジイル基又はチエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル基(これらの基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基を表し、前記の基(a2)、基(b2)、基(c2)及び基(d2)中に存在する水素原子はそれぞれ独立して、メチル基、フッ素原子又は塩素原子に置き換えられてもよく、
及びZはそれぞれ独立して、-CHO-、-OCH-、-CFO-、-OCF-、-COO-、-OCO-、-CHCH-、-CFCF-、-CH=CH-、-CF=CF-、-N=CH-、-CH=N-、-N=N-、-C≡C-又は単結合を表し、
及びRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基(この基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよく、この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-NR-、-O-、-S-、-CO-、-CS-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-に置き換えられてもよい。)を表し、
は、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数2~20のアルケニル基(これらの基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-O-、-S-、-COO-、-OCO-又は-CO-に置き換えられてもよく、これらの基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよい。)を表し、
n及びmはそれぞれ独立して1~3の整数を表し、
及びZが複数存在する場合、複数のAは互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のZは互いに同一であっても異なっていてもよく、
及びZが複数存在する場合、複数のAは互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のZは互いに同一であっても異なっていてもよく、
が複数存在する場合、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、式(2)中で酸素原子と酸素原子が直接結合することはない。]
【0015】
【化3】
【0016】
[式(3)中、
11は炭素原子数1~10のアルキル基(この基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよく、この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-に置き換えられてもよい。)を表し、
12はハロゲン原子、シアノ基、イソチオシアネート基又は炭素原子数1~10のアルキル基(該アルキル基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよく、該アルキル基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-に置き換えられてもよい。)を表し、
11、A12及びA13はそれぞれ独立して
(a3)1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-は-O-に置き換えられてもよい。)、
(b3)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)及び
(c3)1,4-シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基及び1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基を表し、前記の基(a3)、基(b3)及び基(c3)中に存在する水素原子はそれぞれ独立して、シアノ基、メチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメチルオキシ基、フッ素原子又は塩素原子に置き換えられてもよく、
11及びZ12はそれぞれ独立して、単結合、-CHCH-、-(CH-、-OCH-、-CHO-、-COO-、-OCO-、-OCF-、-CFO-、-CH=N-N=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-を表し、
11は0~3の整数を表し、
11及びZ11が複数存在する場合、複数のA11は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のZ11は互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【0017】
[2]
前記式(1)で表される化合物を含有する、[1]に記載の液晶組成物。
【0018】
[3]
前記式(1)中の前記A及び前記Aがそれぞれ独立して、前記基(a1)及び前記基(b1)からなる群より選ばれる基である、[2]に記載の液晶組成物。
【0019】
[4]
前記式(1)中の前記Z及び前記Zがそれぞれ独立して、-OCH-又は単結合である、[2]又は[3]に記載の液晶組成物。
【0020】
[5]
前記式(2)で表される化合物を含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の液晶組成物。
【0021】
[6]
前記式(2)中の前記A及び前記Aがそれぞれ独立して、前記基(a2)及び前記基(b2)からなる群より選ばれる基である、[5]に記載の液晶組成物。
【0022】
[7]
前記式(2)中の前記Z及び前記Zがそれぞれ独立して、-OCH-又は単結合である、[5]又は[6]に記載の液晶組成物。
【0023】
[8]
前記式(1)で表される化合物及び前記式(2)で表される化合物を含有する、[1]~[7]のいずれかに記載の液晶組成物。
【0024】
[9]
前記式(3)で表される化合物として、下記式(3T)で表される化合物を含有する、[1]~[8]のいずれかに記載の液晶組成物。
【0025】
【化4】
【0026】
[式(3T)中、
T1及びRT2はそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基(この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-は-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-に置き換えられてもよい。)を表し、
T1、AT2及びAT3はそれぞれ独立して、1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよく、この基中の水素原子はメチル基、シアノ基、フッ素原子又は塩素原子に置き換えられてもよい。)を表す。]
【0027】
[10]
前記重合開始剤として、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤を含有する、[1]~[9]のいずれかに記載の液晶組成物。
【0028】
[11]
[1]~[10]のいずれかに記載の液晶組成物から形成される液晶層であって、
前記二色性色素と、前記重合性化合物由来のポリマーネットワークと、前記液晶化合物とを含む、液晶層。
【0029】
[12]
一対の透明電極基板と、
前記一対の透明電極基板の間に配された[11]に記載の液晶層と、を有する調光素子。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、二色性色素を含有しながらも、耐光性に優れる液晶層を提供することができる。また、本発明によれば、上記液晶層を形成するための液晶組成物を提供することができる。また、本発明によれば、上記液晶組成物を用いた調光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】一実施形態に係る液晶素子を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は下記実施形態に何ら限定されるものではない。
【0033】
<液晶組成物>
本発明の一実施形態は、二色性色素と、重合性成分(重合性化合物)と、重合開始剤と、液晶成分と、を含有する液晶組成物である。この液晶組成物は、二色性色素として、後述する式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」という。)、及び、式(2)で表される化合物(以下、「化合物(2)」という。)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有し、液晶化合物として、後述する式(3)で表される化合物(以下、「化合物(3)」という。)を含有する。
【0034】
上記液晶組成物中の重合性化合物は、重合して液晶成分を分散するポリマーネットワークを構成する。上記液晶組成物によれば、重合性化合物を重合させることにより、高分子分散型(ポリマーネットワーク型)液晶を形成することができる。したがって、上記液晶組成物は、高分子分散型(ポリマーネットワーク型)液晶形成性組成物ということができる。また、上記液晶組成物は、ホストとなる液晶成分とゲストとなる二色性色素を含有することから、ゲスト-ホスト(GH)型液晶材料ということもできる。
【0035】
上記液晶組成物によれば、二色性色素を含有しながらも、耐光性に優れる液晶層が得られる。したがって、上記液晶組成物は、スマートウィンドウ等の調光素子用途に好適に用いられる。また、スマートウィンドウには、快適性向上等の目的で遮光性が求められる場合があるが、上記液晶組成物を用いて得られる液晶層は、同系色の二色性色素を含有する液晶層と比較して、電圧無印加時の遮光性に優れる傾向があり、透過率のコントラストにも優れる傾向がある。
【0036】
以下、液晶組成物に含有される、各成分について説明する。
【0037】
(二色性色素)
化合物(1)は下記式(1)で表される化合物である。
【0038】
【化5】
【0039】
式(1)中、
及びAはそれぞれ独立して
(a1)1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-O-又は-S-に置き換えられてもよく、この基中に存在する-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)、
(b1)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)、
(c1)1,4-シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基又はフェナントレン-2,7-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基及びフェナントレン-2,7-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)及び
(d1)チオフェン-2,5-ジイル基、チオフェン-2,4-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,5-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、ジベンゾチオフェン-3,7-ジイル基、ジベンゾチオフェン-2,6-ジイル基又はチエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル基(これらの基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基を表し、前記の基(a1)、基(b1)、基(c1)及び基(d1)中に存在する水素原子はそれぞれ独立して、メチル基、フッ素原子又は塩素原子に置き換えられてもよく、
及びZはそれぞれ独立して、-CHO-、-OCH-、-CFO-、-OCF-、-CHCH-、-CFCF-、-CH=CH-、-CF=CF-、-N=CH-、-CH=N-、-N=N-、-C≡C-又は単結合を表し、
及びRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基(この基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよく、この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-NR-、-O-、-S-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-に置き換えられてもよい。)を表し、
は、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数2~20のアルケニル基(これらの基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-O-、-S-、-COO-、-OCO-又は-CO-に置き換えられてもよく、これらの基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよい。)を表し、
は酸素原子又は硫黄原子を表し、
が複数存在する場合、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、式(1)中で酸素原子と酸素原子が直接結合することはない。
【0040】
基(b1)は、下記式(b-1)で表される構造の基であることが好ましく、下記式(b-2)又は下記式(b-3)で表される構造の基であることがより好ましい。
【0041】
【化6】
【0042】
式(b-1)中、Ri1及びRi2はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。式(b-1)、式(b-2)及び式(b-3)中の*がZ又はZへの結合手を表し、波線がL又は窒素原子への結合手を表す。
【0043】
及びAは、基(a1)及び基(b1)からなる群より選ばれる基であることが好ましく、基(b1)であることがより好ましい。中でも、Aが式(b-2)又は式(b-3)で表される構造の基であり、Aが式(b-2)で表される構造の基であることが好ましく、A及びAの両方が式(b-2)で表される構造の基であることがより好ましい。
【0044】
及びZは、-OCH-又は単結合であることが好ましい。中でも、Zが-OCH-又は単結合であり、Zが単結合であることが好ましく、Z及びZの両方が単結合であることがより好ましい。
【0045】
及びRは、炭素原子数1~30のアルキル基(置換されたものも含む)であることが好ましい。R及びRで表されるアルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状であってよく、直鎖状であることが好ましい。アルキル基の炭素原子数は、好ましくは2~16であり、より好ましくは4~12である。なお、上記炭素数は、アルキル基中の一部が上述したいずれかの基に置き換えられている場合には、置換基中の炭素原子数を含めた総炭素原子数を意味する。
【0046】
及びRは、炭素原子数1~20の無置換のアルキル基又は炭素原子数1~19の無置換のアルコキシ基であることがより好ましい。中でも、Rが炭素原子数1~20の無置換のアルキル基又は炭素原子数1~19の無置換のアルコキシ基であり、Rが炭素原子数1~20の無置換のアルキル基であることが好ましく、R及びRの両方が炭素原子数1~20の無置換のアルキル基であることがより好ましい。Rがアルコキシ基である場合、Zは単結合であることが好ましく、Rがアルコキシ基である場合、Zは単結合であることが好ましい。
【0047】
炭素原子数1~20の無置換のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等が挙げられる。炭素原子数1~19の無置換のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基等が挙げられる。
【0048】
は好ましくは酸素原子である。
【0049】
化合物(1)の好適な具体例としては、下記式(1A)で表される化合物が挙げられる。
【0050】
【化7】
【0051】
式(1A)中、
及びRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基を表し、
、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、
及びZはそれぞれ独立して、-OCH-又は単結合を表す。
【0052】
及びRで表されるアルキル基の詳細(好ましい態様を含む)は、R及びRで表されるアルキル基の詳細と同じである。
【0053】
及びRの一方又は両方が水素原子であり、R及びRの両方が水素原子であることが好ましく、R、R、R及びRの全てが水素原子であることが好ましい。
【0054】
及びZの両方が単結合であることが好ましい。
【0055】
化合物(2)は下記式(2)で表される化合物である。
【0056】
【化8】
【0057】
式(2)中、
及びAはそれぞれ独立して
(a2)1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-O-又は-S-に置き換えられてもよく、この基中に存在する-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)、
(b2)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)、
(c2)1,4-シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基又はフェナントレン-2,7-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基及びフェナントレン-2,7-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)及び
(d2)チオフェン-2,5-ジイル基、チオフェン-2,4-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,5-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、ジベンゾチオフェン-3,7-ジイル基、ジベンゾチオフェン-2,6-ジイル基又はチエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル基(これらの基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基を表し、前記の基(a2)、基(b2)、基(c2)及び基(d2)中に存在する水素原子はそれぞれ独立して、メチル基、フッ素原子又は塩素原子に置き換えられてもよく、
及びZはそれぞれ独立して、-CHO-、-OCH-、-CFO-、-OCF-、-COO-、-OCO-、-CHCH-、-CFCF-、-CH=CH-、-CF=CF-、-N=CH-、-CH=N-、-N=N-、-C≡C-又は単結合を表し、
及びRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基(この基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよく、この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-NR-、-O-、-S-、-CO-、-CS-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-に置き換えられてもよい。)を表し、
は、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数2~20のアルケニル基(これらの基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-O-、-S-、-COO-、-OCO-又は-CO-に置き換えられてもよく、これらの基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよい。)を表し、
n及びmはそれぞれ独立して1~3の整数を表し、
及びZが複数存在する場合、複数のAは互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のZは互いに同一であっても異なっていてもよく、
及びZが複数存在する場合、複数のAは互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のZは互いに同一であっても異なっていてもよく、
が複数存在する場合、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、式(2)中で酸素原子と酸素原子が直接結合することはない。
【0058】
基(b2)は、上記式(b-1)で表される構造の基であることが好ましく、上記式(b-2)で表される構造の基であることがより好ましい。
【0059】
及びAは、基(a2)及び基(b2)からなる群より選ばれる基であることが好ましく、基(b2)であることがより好ましい。中でも、A及びAの両方が上記式(b-2)で表される構造の基であることが好ましい。
【0060】
及びZは、-OCH-又は単結合であることが好ましい。中でも、Z及びZの両方が単結合であることが好ましい。
【0061】
及びRは、炭素原子数1~20のアルキル基(置換されたものも含む)であることが好ましい。R及びRで表されるアルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状であってよく、直鎖状であることが好ましい。R及びRで表されるアルキル基の炭素原子数は、好ましくは2~16であり、より好ましくは4~12である。なお、上記炭素数は、アルキル基中の一部が上述したいずれかの基に置き換えられている場合には、置換基中の炭素原子数を含めた総炭素原子数を意味する。
【0062】
及びRは、炭素原子数1~20の無置換のアルキル基であることがより好ましい。中でも、R及びRの両方が炭素原子数1~20の無置換のアルキル基であることが好ましい。炭素原子数1~20の無置換のアルキル基の具体例は、R及びRで表されるアルキル基と同じである。
【0063】
n及びmは、それぞれ独立して、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0064】
化合物(2)の好適な具体例としては、下記式(2A)で表される化合物が挙げられる。
【0065】
【化9】
【0066】
式(2A)中、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基を表す。アルキル基の詳細(好ましい態様を含む)は、R及びRで表されるアルキル基の詳細と同じである。
【0067】
化合物(1)は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。同様に、化合物(2)は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
化合物(1)は、例えば、非特許文献1(Journal of Chemical and Engineering Data, 1984, 29(4), 482-483)に記載の合成法を参考に合成することができる。
【0069】
化合物(2)は、例えば、非特許文献2(Liquid Crystals (2011), 38(11-12), 1683-1698)に記載の合成法を参考に合成することができる。
【0070】
化合物(1)の含有量は、電圧OFF時の遮光性、耐光性の観点から、液晶組成物中の液晶成分の総量100質量部に対して、0.1質量部以上、0.5質量部以上又は1質量部以上であってよい。化合物(1)の含有量は、二色性色素の溶解性、電圧ON時の透明性の観点から、液晶組成物中の液晶成分の総量100質量部に対して、15質量部以下、8質量部以下又は5質量部以下であってよい。これらの観点から、化合物(1)の含有量は、液晶組成物中の液晶成分の総量100質量部に対して、0.1~15質量部、0.5~8質量部又は1~5質量部であってよい。
【0071】
化合物(2)の含有量は、電圧OFF時の遮光性、耐光性の観点から、液晶組成物中の液晶成分の総量100質量部に対して、0.1質量部以上、0.5質量部以上又は1質量部以上であってよい。化合物(2)の含有量は、二色性色素の溶解性、電圧ON時の透明性の観点から、液晶組成物中の液晶成分の総量100質量部に対して、15質量部以下、8質量部以下又は5質量部以下であってよい。これらの観点から、化合物(2)の含有量は、液晶組成物中の液晶成分の総量100質量部に対して、0.1~15質量部、0.5~8質量部又は1~5質量部であってよい。
【0072】
液晶組成物は、上記化合物(1)及び化合物(2)以外の二色性色素を含有してもよい。液晶組成物に含まれる二色性色素の種類は、1~6種であってよく、1~5種又は1~4種であってもよい。複数種の二色性色素を用いる場合には、該複数種の二色性色素が互いに異なる吸収波長を有していることが好ましい。これにより黒色など所望の色に調整することが可能になる。具体的には、600~750nmの間に最大吸収波長を有する青色色素化合物、500~600nmの間に最大吸収波長を有する赤色色素化合物、及び、400~500nmの間に最大吸収波長を有する黄色色素化合物からなる群より選ばれる少なくとも2種の二色性色素を用いることが好ましく、これらの全ての二色性色素を用いることがより好ましい。
【0073】
上記化合物(1)は600~750nmの間に最大吸収波長を有する傾向があるため、二色性色素として化合物(1)を用いる場合、赤色色素化合物及び黄色色素化合物の少なくとも一方を併用することが好ましい。また、化合物(2)は、500~600nmの間に最大吸収波長を有する傾向があるため、二色性色素として化合物(2)を用いる場合、青色色素化合物及び黄色色素化合物の少なくとも一方を併用することが好ましい。
【0074】
最大吸収波長の測定方法は、次の通りである。
まず、色素化合物を溶解することができる任意の液晶組成物100質量部に対して、色素化合物を1.0質量部添加して溶解させて試料を調製する。
次に、ITO電極を有し、当該ITO電極上に水平配向用配向膜を備えた2cm×2cmのガラス基板を2枚用いて、ITO電極層をセルの内側として、プラスチック粒子によりセル厚10μmに調整した注入口を備えたセルを作製する。
当該セルに、試料を注入し、注入口を封止材で塞ぐことにより、素子を作製する。
次に、スペクトルメーター(大塚電子社製、「LCD-5200」)を用いて、25℃、電圧無印加の条件下、作製した素子を用いて、350~750nmの間の吸収スペクトルを測定することにより、色素化合物の最大吸収波長を求めることができる。
【0075】
二色性色素の含有量(総量)は、電圧OFF時の遮光性、耐光性の観点から、液晶組成物中の液晶成分の総量100質量部に対して、0.2質量部以上、0.5質量部以上又は1.0質量部以上であってよい。二色性色素の含有量(総量)は、二色性色素の溶解性、電圧OFF時の透明性の観点から、液晶組成物中の液晶成分の総量100質量部に対して、15質量部以下、13質量部以下又は10質量部以下であってよい。これらの観点から、二色性色素の含有量(総量)は、液晶組成物中の液晶成分の総量100質量部に対して、0.2~15質量部、0.5~15質量部又は0.3~13質量部であってよい。
【0076】
(液晶成分)
液晶成分は、1種又は2種以上の液晶化合物からなる成分である。液晶成分は化合物(3)を含む。化合物(3)は、例えば、非重合性液晶化合物であり、下記式(3)で表される。
【0077】
【化10】
【0078】
式(3)中、
11は炭素原子数1~10のアルキル基(この基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよく、この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-に置き換えられてもよい。)を表し、
12はハロゲン原子、シアノ基、イソチオシアネート基又は炭素原子数1~10のアルキル基(該アルキル基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよく、該アルキル基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-に置き換えられてもよい。)を表し、
11、A12及びA13はそれぞれ独立して
(a3)1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-は-O-に置き換えられてもよい。)、
(b3)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)及び
(c3)1,4-シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基及び1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基を表し、前記の基(a3)、基(b3)及び基(c3)中に存在する水素原子はそれぞれ独立して、シアノ基、メチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメチルオキシ基、フッ素原子又は塩素原子に置き換えられてもよく、
11及びZ12はそれぞれ独立して、単結合、-CHCH-、-(CH-、-OCH-、-CHO-、-COO-、-OCO-、-OCF-、-CFO-、-CH=N-N=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-を表し、
11は0~3の整数を表し、
11及びZ11が複数存在する場合、複数のA11は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のZ11は互いに同一であっても異なっていてもよい。なお、上記のとおり、化合物(3)は、分子中に-CH=CH-、-C≡C-等の不飽和結合を含み得るが、化合物(3)の構造上、これらの不飽和結合を有する基(例えばアルケニル基)は重合性基として機能しない基であり、実質的に、重合性基ではない。
【0079】
11は、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基、炭素原子数2~8のアルケニル基又は炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基が好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、炭素原子数2~5のアルケニル基又は炭素原子数2~5のアルケニルオキシ基が好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数2~5のアルケニル基がさらに好ましく、炭素原子数2~5のアルキル基又は炭素原子数2~3のアルケニル基がさらに好ましく、炭素原子数2~5のアルキル基が特に好ましい。
【0080】
11は、信頼性を重視する場合にはアルキル基であることが好ましい。R11は、ネマチック相を安定化させるためには、炭素原子及び酸素原子の合計が5以下であることが好ましく、直鎖状であることが好ましい。
【0081】
12は、好ましくはフッ素原子、シアノ基又は炭素原子数1~5のアルキル基(該アルキル基中の1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-は-O-に置き換えられてもよい。)である。
【0082】
11、A12及びA13はそれぞれ独立して、上記の基(a3)及び基(b3)からなる群より選ばれる基を表すことが好ましい。中でも、A13は基(b3)であることが好ましく、下記式(b3-1)で表される構造の基であることがより好ましい。
【0083】
【化11】
【0084】
i3、Ri4及びRi5はそれぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子を表す。式(b3-1)中の*がR12への結合手を表し、波線がZ12への結合手を表す。
【0085】
13が基(b3)であるとき、屈折率異方性(Δn)を大きくすることが求められる場合には、A11及びA12は芳香族であることが好ましい。また、応答速度を改善するためには、A11及びA12は脂肪族であることが好ましい。これらの観点から、A11及びA12はそれぞれ独立して、トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-は-O-に置き換えられてもよく、この基中に存在する-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)、又は、1,4-フェニレン基、2-フルオロ-1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基若しくは2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン基(これらの基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)を表すことが好ましい。
【0086】
中でもA11及びA12は、それぞれ独立して下記の構造のいずれかを表すことがより好ましい。
【0087】
【化12】
【0088】
上記構造中の波線で表される結合手がR11側の結合手であり、*で表される結合手がR12側の結合手である。
【0089】
11及びA12は、それぞれ独立して下記の構造のいずれかを表すことがさらに好ましい。なお、下記構造中の波線及び*は上記と同義である。
【0090】
【化13】
【0091】
11は、0、1又は2であることが好ましい。Δεの改善に重点を置く場合、n11は0又は1であることが好ましい。転移温度(Tni)を重視する場合には、n11は1又は2であることが好ましい。
【0092】
上記化合物(3)は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、化合物(3)を、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種又は9種組み合わせて用いてよく、10種以上組み合わせて用いてもよい。組み合わせることができる化合物の種類に特に制限は無いが、低温での溶解性、転移温度、電気的な信頼性、複屈折率などの所望の性能に応じて組み合わせて使用する。
【0093】
化合物(3)の含有量は、散乱性、低電圧駆動の観点から、液晶組成物中の液晶成分、重合性化合物及び重合開始剤の総量を基準として、25質量%以上、35質量%以上又は45質量%以上であってよい。化合物(3)の含有量は、散乱性、信頼性の観点から、液晶組成物中の液晶成分、重合性化合物及び重合開始剤の総量を基準として、80質量%以下、70質量%以下又は60質量%以下であってよい。これらの観点から、化合物(3)の含有量は、液晶組成物中の液晶成分、重合性化合物及び重合開始剤の総量を基準として、25~80質量%、35~70質量%又は45~60質量%であってよい。
【0094】
上記化合物(3)は、25℃における誘電率異方性(Δε)が正の液晶化合物(いわゆるp型液晶化合物)又は誘電率異方性(Δε)がほぼ0の液晶化合物(いわゆるノンポーラ型液晶化合物)である。
【0095】
一実施形態では、化合物(3)として、式(3)中のZ12が-C≡C-である化合物(以下、「トラン系液晶化合物」という。)を用いることが好ましい。液晶成分が該トラン系液晶化合物を含む場合、液晶素子において、密着性、光散乱性が良好になりやすく、室温時及び低温時の低電圧駆動を実現しやすい。
【0096】
トラン系液晶化合物において、式(3)中のR12は、炭素原子数1~10のアルキル基(置換されたものも含む)であることが好ましい。
【0097】
トラン系液晶化合物において、式(3)中のA11は、1,4-シクロへキシレン基であるか、又は、下記式(A1)~式(A12)で表されるいずれかの構造であることが好ましく、A12及びA13はそれぞれ独立して、下記式(A1)~式(A12)で表されるいずれかの構造であることが好ましい。
【0098】
【化14】
【0099】
【化15】
【0100】
上記構造中の波線で表される結合手がR11側の結合手であり、*で表される結合手がR12側の結合手である。
【0101】
11は、高散乱の点から、1,4-フェニレン基であることがより好ましく、A12及びA13は、高速応答の点から、上記式(A5)~式(A8)、式(A11)及び式(A12)で表されるいずれかの構造となるように選択されることが好ましい。
【0102】
トラン系液晶化合物において、式(3)中のZ11は、-C≡C-、-CFO-、-OCF-、トランス--CH=CH-、トランス--CF=CF-、-COO-、-CH-CH-、-CF-CF-又は単結合であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。
【0103】
トラン系液晶化合物において、式(3)中のn11は0又は1であることが好ましい。
【0104】
トラン系液晶化合物の好適な具体例としては、下記式(3T)で表される化合物が挙げられる。
【0105】
【化16】
【0106】
式(3T)中、
T1及びRT2はそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基(この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-は-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-に置き換えられてもよい。)を表し、
T1、AT2及びAT3はそれぞれ独立して、1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよく、この基中の水素原子はメチル基、シアノ基、フッ素原子又は塩素原子に置き換えられてもよい。)を表す。
【0107】
T1及びRT2で表されるアルキル基の詳細(好ましい態様を含む)は、式(3)中のR11で表されるアルキル基の詳細と同じである。
【0108】
T1及びAT2はそれぞれ独立して、1,4-フェニレン基、2-フルオロ-1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基又は2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン基を表すことが好ましく、1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基又は3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基を表すことがより好ましい。なお、1位がRT1側であり、4位がRT2側である。
【0109】
T3は、1,4-フェニレン基、2-フルオロ-1,4-フェニレン基、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基又は5-フルオロ-1,4-フェニレン基を表すことが好ましく、1,4-フェニレン基又は2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン基を表すことがより好ましい。なお、1位がRT1側であり、4位がRT2側である。
【0110】
トラン系液晶化合物の好適な具体例としては、下記式(3T-1)で表される化合物が挙げられる。
【0111】
【化17】
【0112】
上記式(3T-1)中のRT1及びRT2は、前述の式(3T)におけるRT1及びRT2と同義であり、XT1、XT2、XT3及びXT4は、それぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子を表す。XT1、XT2、XT3及びXT4のいずれか一つはフッ素原子であることが好ましい。ただし、XT1及びXT2のいずれか一方がフッ素原子であるとき、XT3及びXT4は水素原子であることが好ましい。
【0113】
式(3T-1)で表される化合物としては、例えば、下記式(3T-A)~(3T-C)で表される化合物が挙げられる。
【0114】
【化18】
【0115】
上記トラン系液晶化合物は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0116】
トラン系液晶化合物の含有量は、散乱性の観点から、液晶組成物中の液晶成分の総量を基準として、0質量%以上、20質量%以上又は40質量%以上であってよい。トラン系液晶化合物の含有量は、液晶組成物中の液晶成分の総量を基準として、80質量%以下、70質量%以下又は60質量%以下であってよい。これらの観点から、トラン系液晶化合物の含有量は、液晶組成物中の液晶成分の総量を基準として、0~70質量%、20~65質量%又は40~60質量%であってよい。同様の観点から、式(3T)で表される化合物の含有量は上記範囲であってよい。
【0117】
一実施形態では、化合物(3)として、式(3)中のR12がシアノ基である化合物(以下、「シアン系液晶化合物」という。)を用いることが好ましい。
【0118】
シアン系液晶化合物において、式(3)中のZ11及びZ12は、それぞれ独立して、単結合、-COO-、-OCO-、-CH-CH-であることが好ましく、単結合又は-COO-であることがより好ましい。
【0119】
シアン系液晶化合物において、式(3)中のR11の炭素原子数は、好ましくは2~7であり、より好ましくは2~5である。
【0120】
シアン系液晶化合物において、式(3)中のn11は0又は1であることが好ましい。
【0121】
シアン系液晶化合物の好適な具体例としては、下記式(vi-1)~(vi-11)で表される化合物が挙げられる。
【0122】
【化19】
【0123】
上記式(vi-1)~(vi-11)中、R51は炭素原子数1~10のアルキル基、又は炭素原子数1~10のアルコキシ基を表し、Y11~Y64は、それぞれ独立して水素原子、又はフッ素原子を表す。Y11~Y64は、全て水素原子を表してもよく、その中の1つ以上がフッ素原子を表してもよい。
【0124】
シアン系液晶化合物のより具体的な例としては、下記式(vi-A)~(vi-G)で表される化合物が挙げられる。
【0125】
【化20】
【0126】
上記式(vi-A)~(vi-G)中、R511は炭素原子数2~7のアルキル基、又は炭素原子数2~7のアルコキシ基を表し、好ましくは2~5のアルキル基、又は炭素原子数2~5のアルコキシ基を表す。
【0127】
シアン系液晶化合物のさらに具体的な例としては、下記式(3C-1)~(3C-18)で表される化合物が挙げられる。
【0128】
【化21】
【0129】
【化22】
【0130】
【化23】
【0131】
【化24】
【0132】
【化25】
【0133】
上記シアン系液晶化合物は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0134】
シアン系液晶化合物の含有量は、低駆動電圧の観点から液晶組成物中の液晶成分の総量を基準として、5質量%以上、10質量%以上又は15質量%以上であってよい。シアン系液晶化合物の含有量は、信頼性・低粘度化による高速応答性の観点から、液晶組成物中の液晶成分の総量を基準として、100質量%以下、97質量%以下又は95質量%以下であってよい。これらの観点から、シアン系液晶化合物の含有量は、液晶組成物中の液晶成分の総量を基準として、5~100質量%、10~97質量%又は15~95質量%であってよい。
【0135】
一実施形態では、上記トラン系液晶化合物及び上記シアン系液晶化合物の少なくとも一方と、トラン系液晶化合物及びシアン系液晶化合物のいずれにも該当しない化合物とを組み合わせて用いてもよい。これらの化合物は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0136】
トラン系液晶化合物及びシアン系液晶化合物のいずれにも該当しない化合物としては、例えば、化合物(3)のうち、式(3)中のR12が炭素原子数1~10のアルキル基(置換されたものも含む)であり、式(3)中のZ11及びZ12が単結合である化合物が挙げられる。このような化合物の具体例としては、下記式(3M-1)~(3M-6)で表される化合物のうちの1種以上を用いることが好ましい。
【0137】
【化26】
【0138】
【化27】
【0139】
液晶成分は、化合物(3)以外の液晶化合物を含有してもよい。化合物(3)以外の液晶化合物の含有量は、液晶組成物中の液晶成分の総量を基準として、10質量%以下であることが好ましい。
【0140】
液晶成分(液晶化合物全体)の転移温度(Tni)は、95℃以上であることが好ましく、100~150℃であることがより好ましく、130~140℃であることがさらに好ましい。ここで、転移温度(Tni)は、液晶成分(液晶相)がネマチック相から等方相へ相転移する温度(上限温度)を意味する。転移温度(Tni)が高いほど高温でもネマチック相を維持することができ、駆動温度範囲を広く取ることができる。
【0141】
液晶成分の25℃、589nmにおける屈折率異方性(Δn)は、0.15~0.35であることが好ましく、0.18~0.32であることがより好ましく、0.20~0.30であることがさらに好ましい。
【0142】
(重合性成分)
重合性成分は、1種又は2種以上の重合性化合物からなる成分である。重合性化合物は、重合性基を有する化合物であり、ラジカル重合性、カチオン重合性又はアニオン重合性を有する。重合性化合物は、好ましくは(メタ)アクリレートである。ここで、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、及び、それに対応するメタクリレートの少なくとも一方を意味する。
【0143】
重合性化合物としては、後述する第1~第4成分のうちの少なくとも1種を用いることが好ましい。中でも、第1成分を用いることが好ましく、第1成分と、第2成分及び第3成分のうちの少なくとも1種とを組み合わせて用いることがより好ましい。より密着性を重視する場合には、第4成分を用いることが好ましい。
【0144】
-第1成分-
第1成分は、例えば、下記式(v)で表される鎖状単官能重合性化合物である。
【0145】
【化28】
【0146】
式(v)中、Piia1は重合性基を表し、
iia2は炭素原子数1~22の直鎖又は分岐のアルキル基を表すが、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の-CH-は、酸素原子が直接隣接しないようにそれぞれ独立して、-O-、-CO-、-COO-又は、-OCO-で置換されていてもよく、該アルキル基中に存在する1又は2以上の水素原子は、それぞれ独立して、フッ素原子又は-OHで置換されていてもよい。
【0147】
式(v)で表される化合物において、Piia1は重合性基を表すが、好ましくは、下記式(P-1)~式(P-21)のいずれかで表される基である。また、下記式(P-1)~式(P-21)中、*は、炭素原子又は他の原子との結合手を示す。
【0148】
【化29】
【0149】
重合性及び保存安定性を高める観点では、上記式(P-1)~(P-21)で表わされる重合性基のうち、式(P-1)、式(P-2)、式(P-7)、式(P-12)、式(P-13)又は式(P-21)で表わされる重合性基が好ましく、式(P-1)、式(P-2)、式(P-7)又は式(P-21)で表わされる重合性基がより好ましく、特に式(P-1)、式(P-2)又は式(P-21)で表わされる重合性基が好ましい。
【0150】
式(v)で表される化合物において、Riia2は炭素原子数3~20の直鎖又は分岐のアルキル基を表すことがより好ましく、炭素原子数6~18の直鎖又は分岐のアルキル基を表すことが特に結晶性を抑制できる点から好ましく、分岐のアルキル基を表すことがさらにより好ましく、炭素原子数9~24の分岐のアルキル基を表すことがさらにより好ましく、炭素原子数9~24の分岐のアルキル基を表すことが最も好ましい。なお、上記「直鎖又は分岐のアルキル基」には、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の-CH-が、酸素原子が直接隣接しないように-O-で置換されたものも包含される。
【0151】
iia2が分岐のアルキル基を表す場合、式(v)で表される化合物としては、下記の構造で表される分岐状アルキル鎖を有するモノ(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0152】
【化30】
【0153】
特に電圧無印加時の透明性を良好に維持しつつ、駆動電圧を低減効果が顕著なものとなる観点では、式(v)で表される化合物のなかでも分岐状アルキル鎖を有するモノ(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0154】
式(v)で表される化合物は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0155】
式(v)で表される化合物の含有量は、低電圧駆動化の観点から、また、液晶組成物中の各成分の相溶性を高める観点から、重合性成分の総量を基準として、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが特に好ましい。式(v)で表される化合物の含有量は、密着性の観点から、重合性成分の総量を基準として、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが特に好ましい。
【0156】
第1成分は、下記式(ii)で表される環状単官能重合性化合物であってもよい。
【0157】
【化31】
【0158】
式(ii)中、
iii1は重合性基を表し、
iii1は単結合、又は炭素原子数1~7のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の1つ又は2つ以上の隣接しない-CH-は酸素原子が直接隣接しないようにそれぞれ独立して-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-で置換されていてもよく、
iii1は下記式(ii-1)~(ii-20)で表される基を表す。
【0159】
【化32】
【0160】
式(ii-1)~(ii-20)中、1つ以上の-CH-はそれぞれ独立して、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-NH-、-NCH-、又は-CO-で置換されていてもよいが、式(ii-1)~(ii-20)中に酸素原子及び/又は硫黄原子が合計2個以上存在する場合には、これらは-O-O-、-O-S-又は-S-S-のようにお互い同士結合することはなく、また、一つ以上の-CH-CH-は、-CH=CH-基に置換されていてもよく、また、式(ii-1)~(ii-20)中の水素原子は炭素原子数1~8のアルキル基で置換されていてもよく、該アルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の隣接しない-CH-は酸素原子が直接隣接しないようにそれぞれ独立して-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-で置換されていてもよい。また、式中の黒点はZiii1への結合手を表す。
【0161】
式(ii)で表される化合物は、可撓性に優れる材料であり、この化合物を用いると、曲げた状態でも白濁性を維持することができる。また、密着性を高めるとともに、液晶組成物中の各成分の相溶性を高めることができる。式(ii)で表される化合物は、非液晶性の化合物である。
【0162】
式(ii)で表される化合物において、Piii1の好ましい例は式(v)中のPiia1で表される重合性基の好ましい例と同じである。
【0163】
式(ii)で表される化合物において、Ziii1は単結合又は炭素原子数1~7のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の1つ又は2つ以上の-CH-は、酸素原子が直接隣接しないようにそれぞれ独立して-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-で置換されていてもよく、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上の水素原子は、それぞれ独立してフッ素原子で置換されていてもよい。Ziii1は、単結合又は炭素原子数1~6のアルキレン基であることが好ましく、単結合又は炭素原子数1~3のアルキレン基であることがより好ましく、単結合又は-CH-基であるのが特に好ましい。
【0164】
式(ii)で表される化合物において、Aiii1は、密着性をより向上させる観点から、Aiii1中に窒素原子、酸素原子、硫黄原子を有する複素環構造を有することが好ましく、より具体的には、以下の式(ii-a1)~(ii-a11)で表される基であることが好ましい。特に、環状構造が窒素原子を有する場合には、環状構造が窒素原子の存在により、密着性をより向上させることができる。
【0165】
【化33】
【0166】
式(ii-a1)~(ii-a11)中、1つ以上の-CH-はそれぞれ独立して-CO-で置換されていてもよく、また、式(ii-a1)~(ii-a11)中の水素原子は炭素原子数1~8のアルキル基で置換されていてもよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の隣接しない-CH-は酸素原子が直接隣接しないようにそれぞれ独立して-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-で置換されていてもよい。
【0167】
式(ii-a1)~(ii-a11)中の水素原子は炭素原子数1~8のアルキル基で置換されていてもよく、該アルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の隣接しない-CH-は酸素原子が直接隣接しないようにそれぞれ独立して-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-で置換されていてもよい。
【0168】
式(ii-a1)~(ii-a11)中の黒点はZiii1への結合手を表す。
【0169】
式(ii)で表される化合物としては、具体的には、下記の式(II-34)~(II-51)で表される化合物が好ましい。
【0170】
【化34】
【0171】
式(II-34)~(II-51)中、Xは水素原子、又はメチル基を表す。
【0172】
式(II-34)~(II-51)で表される化合物の中でも、式(II-34)、(II-36)、式(II-38)、式(II-39)、式(II-40)、式(II-41)、式(II-43)、又は式(II-45)で表される化合物を用いることがより好ましい。
【0173】
式(ii)で表される化合物は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0174】
式(ii)で表される化合物の含有量は、密着性を向上させる観点から、また、液晶組成物中の各成分の相溶性を高める観点から、重合性成分の総量を基準として、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。式(ii)で表される化合物の含有量は、低電圧化の観点から、重合性成分の総量を基準として、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることが特に好ましい。
【0175】
第1成分としては、低電圧を重視する場合は、式(v)で表される化合物を用いることが好ましく、密着性を重視する場合は式(ii)で表される化合物を用いることが好ましい。第1成分としては、式(v)で表される化合物と式(ii)で表される化合物とを併用することもできる。
【0176】
-第2成分-
第2成分は、重量平均分子量が2000以上の多官能(メタ)アクリレートオリゴマーである。多官能(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリマーのネットワーク構造中に架橋構造を導入するために、また、良好な密着性を得るために用いられてよい。
【0177】
多官能(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量は、2000以上であり、2000~60000が好ましく、2500~40000がより好ましく、2800~35000がさらにより好ましく、3000~30000がさらにより好ましい。これは、分子量が小さすぎると、1分子中に含まれる(メタ)アクリル基の増加によって引き起こる架橋密度の増加により、硬化収縮の度合いが大きくなり、密着性が悪化してしまうこと、及び、分子量が大きいすぎると、架橋間距離が長くなるため、隙間が大きくなり、液晶を取り込みやすくなるために高分子分散型液晶としての散乱性が低下するからである。すなわち高温下での環境に放置すると、ポリマーが液晶を吸収してしまい、特性が大きく変化してしまうためである。また、分子量が大きすぎると重合性化合物添加による高分子分散型液晶の転移点Tnmの低下度合いが小さくなり、Tnmを室温以下にするには、液晶化合物自身のTniが低い材料を用いなければならなくなるため、結果的に動作温度範囲が狭くなってしまう問題も生じてしまう。
【0178】
多官能(メタ)アクリレートオリゴマーの中でも、2官能アクリレートオリゴマーが好ましい。さらに、基材との密着性を重視するには、ウレタン系又はポリエステル系の(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーがより好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーはポリエステル系のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであってもよいが、ポリエーテル系のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
【0179】
多官能のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、水酸基含有(メタ)アクリレートと、ポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させて得られる。
【0180】
ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリブタジエンポリオール等があげられ、ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0181】
ポリイソシアネートとしては、2、4-および2、6-トリレンジイソシアネート(TDI)、オルトトルイジンジイソシアネート(TODI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、4、4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロペンタジエンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、およびカルボジイミド変成MDI、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリメリックポリイソシアネート等があげられる。
【0182】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、ε-カプロラクトンで変性されたモノ(メタ)アクリレート等があげられる。
【0183】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、具体的には、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート又は芳香族ウレタン(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、脂肪族ウレタンアクリレートを用いることがより好ましい。また、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリウレタンジ(メタ)アクリレートオリゴマーを用いることが好ましい。
【0184】
用いるポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオールが好ましく、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールが特に好ましい。
【0185】
用いるポリイソシアネートとしては、環状構造を有するポリイソシアネートが好ましく、脂環構造を有するポリイソシアネートが特に好ましい。より具体的には、オルトトルイジンジイソシアネート(TODI)、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、ジシクロペンタジエンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、カルボジイミド変成MDIが好ましく、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、ジシクロペンタジエンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが特に好ましい。
【0186】
用いる水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、ε-カプロラクトンで変性されたモノ(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0187】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、以下の一般式(i-1)の化合物も好ましい。
【0188】
【化35】
【0189】
式(i-1)中、Xi1はそれぞれ独立して水素原子、又はメチル基を表し、Bは各々独立して、炭素原子数1~4までのアルキル基を表し、該アルキル基中の一つ以上の-CH-は酸素原子、-CO-、-COO-、-OCO-で置換されていてもよく、bは1~20を表す。Bは、下記式(i-2)~(i-6)で表される基の中から選ばれる基を表し、bが2以上である場合、複数のBは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0190】
【化36】
【0191】
は下記式(i-7)~(i-11)で表される基の中から選ばれる基を表し、bが2以上である場合、複数のBは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0192】
【化37】
【0193】
式(i-7)~(i-11)中、Xi4、及びXi5はそれぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表し、Xi2、及びXi3はそれぞれ独立に炭素原子数1~9のアルキル基を表し、Yは分岐鎖を有していてもよい炭素原子数1~15のアルキレン基、2価の芳香族基又は2価の脂環式炭化水素基を表し、該アルキレン基中の一つ以上の-CH-基は、酸素原子が互いに隣接しない条件で酸素原子、-COO-、-OCO-で置換されていてもよく、t1及びt2はそれぞれ独立して0、又は1を表し、t3は0~300の整数を表す。
【0194】
第2成分は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0195】
第2成分の含有量は、密着性を高める観点から、重合性成分の総量を基準として、5質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることが特に好ましい。第2成分の含有量は、低電圧化の観点から、重合性成分の総量を基準として、80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが特に好ましい。
【0196】
-第3成分-
第3成分は、下記式(iv)で表される重量平均分子量2000未満の多官能重合性化合物である。
【0197】
【化38】
【0198】
式(iv)中、
31は水素原子、又はメチル基を表し、
31は炭素原子数130以下のアルキレン基を表し、該アルキレン基は環式炭化水素基や分岐鎖を有していてもよく、該アルキレン基、又は環式炭化水素基中の一つ以上の-CH-基は、酸素原子が互いに直接隣接しないようにそれぞれ独立して-O-、-NH-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、又は-C≡C-で置換されていてもよく、該アルキレン基又は環式炭化水素基中に存在する1つ又は2つ以上の水素原子は、それぞれ独立してフッ素原子又は-OHで置換されていてもよく、
31は2~6の整数を表す。
【0199】
式(iv)で表される重合性化合物としては、好ましくは下記式(iv-1)で表される重合性化合物を用いることが好ましい。
【0200】
【化39】
【0201】
式(iv-1)中、
、及びYは水素原子、又はメチル基を表し、
は直鎖又は分岐の炭素原子数2~80のアルキレンを表す。該アルキレンの任意の炭素原子は、酸素原子が直接隣接しないように、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-C≡C-又は、OHで置換されてよい。該アルキレンの炭素原子数は6~70の範囲であることが好ましく、中でも8~60の範囲であることが好ましく、特に9~50の範囲であることが駆動電圧低下の点から好ましい。
【0202】
式(iv-1)で表される重合性化合物としては、例えば、下記式(iv-1-1)~(iv-1-10)で表される化合物が挙げられる。
【0203】
【化40】
【0204】
式(iv-1-1)~(iv-1-10)中、n及びmはn+mが1~10となる整数、nは1~18の整数、n及びmはn+mが1~18となる整数、nは1~23の整数、nは1~23の整数、nは4~30の整数、nは2~10の整数、n及びnは2~10の整数をそれぞれ表す。
【0205】
第3成分はオリゴマーであってもモノマーであってもよい。第3成分の分子量は、1500以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましい。
【0206】
第3成分は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、オリゴマーとモノマーを組み合わせて用いてもよい。
【0207】
第3成分の含有量は、耐熱性向上の観点から、重合性成分の総量を基準として、2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。第3成分の含有量は、密着性を維持する観点から、重合性成分の総量を基準として、50質量%以下であること、40質量%以下であること、30質量%以下であること、25質量%以下であることが特に好ましい。
【0208】
-第4成分-
第4成分は、下記式(x)で表されるリン系(メタ)アクリレートである。
【0209】
【化41】
【0210】
式(x)中、
31は水素原子、又はメチル基を表し、
31は、下記式(x-1)で表される2価の基を有する、炭素原子数130以下のアルキレン基を表し、該アルキレン基は環式炭化水素基や分岐鎖を有していてもよく、該アルキレン基、又は環式炭化水素基中の一つ以上の-CH-基は、酸素原子が互いに直接隣接しないようにそれぞれ独立して-O-、-NH-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、又は-C≡C-で置換されていてもよく、該アルキレン基又は環式炭化水素基中に存在する1つ又は2つ以上の水素原子は、それぞれ独立してフッ素原子又は-OHで置換されていてもよく、
31は1~6の整数を表す。
【0211】
【化42】
【0212】
第4成分としては、具体的には、下記式(x-2)及び(x-3)で表される化合物を用いることが好ましい。
【0213】
【化43】
【0214】
式(x-2)及び(x-3)中、X、X、及びXはそれぞれ独立して水素原子、又はメチル基を表し、q、r、及びsは1~4の整数を表す。
【0215】
第4成分は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0216】
第4成分の含有量は、液晶組成物の総量を基準として、0.005質量%以上2質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上0.5質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以上0.2質量%以下であることがさらに好ましい。
【0217】
-その他の重合性化合物-
重合性化合物としては、上記第1~第4成分以外の重合性化合物(例えば、メソゲン性骨格を有する重合性化合物等)を用いてもよい。その重合性化合物の含有量は、液晶組成物中の重合性化合物の総量を基準として、5質量%以下であってよく、0質量%であってもよい。
【0218】
重合性成分の含有量(総量)は、高散乱性、高密着性の観点から、液晶組成物中の液晶成分、重合性成分及び重合開始剤の総量を基準として、20質量%以上、30質量%以上又は40質量%以上であってよい。重合性成分の含有量(総量)は、高散乱性、低電圧性の観点から、液晶組成物中の液晶成分、重合性成分及び重合開始剤の総量を基準として、70質量%以下、60質量%以下又は50質量%以下であってよい。これらの観点から、重合性成分の含有量(総量)は、高散乱性の観点から、液晶組成物中の液晶成分、重合性成分及び重合開始剤の総量を基準として、20~70質量%、30~60質量%又は40~50質量%であってよい。
【0219】
(重合開始剤)
重合開始剤は、重合性化合物を重合させるために用いる。重合開始剤は、重合を光照射によって行う場合に使用される、光重合開始剤であることが好ましい。光重合開始剤としては、重合性化合物の重合性に対応した活性種を発生するものを使用すればよく、例えば、光ラジカル重合開始剤又は光カチオン重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、公知慣用のものを使用できる。
【0220】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン「オムニラッド184」、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン「オムニラッド1173」、2-メチル-1-[(メチルチオ)フェニル]-2-モリホリノプロパン-1「オムニラッド907」、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン「オムニラッドBDK」、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン「オムニラッド369」)、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリノ-フェニル)ブタン-1-オン「オムニラッド379」、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン「オムニラッド651」等のアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤;2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ジフェニルフォスフィンオキサイド「オムニラッドTPO」、2,4,6-トリメチルベンゾイル-フェニル-フォスフィンオキサイド「オムニラッド819」(IGM Resins株式会社製)等のアシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)],エタノン「イルガキュアOXE01」)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)「イルガキュアOXE02」、「イルガキュアOXE04」(BASF株式会社製)、「アデカアークルズNCI-831」、「アデカアークルズNCI-930」、「アデカアークルズN-1919」(ADEKA社製)等のオキシムエステル系光ラジカル重合開始剤などが挙げられる。光ラジカル重合開始剤としては、2,4-ジエチルチオキサントン(日本化薬社製「カヤキュアDETX」)とp-ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬社製「カヤキュアEPA」)との混合物、イソプロピルチオキサントン(ワ-ドプレキンソップ社製「カンタキュア-ITX」)とp-ジメチルアミノ安息香酸エチルとの混合物、「エサキュア ONE」、「エサキュアKIP150」、「エサキュアKIP160」、「エサキュア1001M」、「エサキュアA198」、「エサキュアKIP IT」、「エサキュアKTO46」、「エサキュアTZT」(lamberti株式会社製)、「スピードキュアBMS」、「スピードキュアPBZ」、「ベンゾフェノン」(LAMBSON社製)等を用いることもできる。これらは、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0221】
上記の中でも、電圧OFF時の遮光性やコントラストがより優れる観点から、オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤又はアシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤を用いることが好ましく、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤を用いることがより好ましい。
【0222】
光カチオン重合開始剤としては、光酸発生剤を用いることができる。光酸発生剤としてはジアゾジスルホン系化合物、トリフェニルスルホニウム系化合物、フェニルスルホン系化合物、スルフォニルピリジン系化合物、トリアジン系化合物及びジフェニルヨードニウム化合物などが挙げられる。
【0223】
光重合開始剤の含有量は、液晶組成物中の重合性化合物の総量100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、0.2質量部以上6質量部以下がより好ましい。
【0224】
重合開始剤としては、熱重合開始剤を用いることもできる。熱重合の際に使用する熱重合開始剤としては、公知慣用のものが使用でき、例えば、メチルアセトアセテイトパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パ-オキシジカーボネイト、t-ブチルパーオキシベンゾエイト、メチルエチルケトンパーオキサイド、1,1-ビス(t-ヘキシルパ-オキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、p-ペンタハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネイト、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾニトリル化合物、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロピオン-アミヂン)ジハイドロクロライド等のアゾアミヂン化合物、2,2’アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}等のアゾアミド化合物、2,2’アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)等のアルキルアゾ化合物等を使用することができる。これらは、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0225】
熱重合開始剤の含有量は、液晶組成物中の重合性化合物の総量100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、1質量部以上6質量部以下がより好ましい。
【0226】
(添加剤成分)
液晶組成物には、実用的な電気光学特性、及び、液晶素子を作製した際に密着性が損なわれない範囲で、重合禁止剤、酸化防止剤、光安定剤、連鎖移動剤、顔料、粒子径が1μm未満の粒子、キラル化合物、あるいは、配向材料を添加することができる。これらの中でも、重合禁止剤、酸化防止剤、光安定剤、粒子径が1μm未満の粒子及び顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。これらの添加剤としては、公知慣用のものを使用でき、例えば、国際公開第2022/138418号に記載されている化合物を同様の添加量で用いることができる。
【0227】
<液晶層>
本発明の他の一実施形態は、上記実施形態の液晶組成物から形成される液晶層である。この液晶層は、上記二色性色素と、上記重合性化合物由来のポリマーネットワークと、上記化合物(3)を含む液晶成分と、を含む。ポリマーネットワークは、上記重合性成分の重合体(重合性成分として例示した各重合性化合物をモノマー単位として含む重合体)で構成される。液晶組成物中の重合性成分の総量に対する上記第1~第4成分の含有量は、液晶層中の重合体の総量(全質量)に対する各成分に由来するモノマー単位の含有量として読み替えることができる。また、液晶組成物の総量に対する上記重合性成分の含有量は、液晶層の総量に対する重合体の含有量として読み替えることができる。
【0228】
上記液晶層は、ポリマーネットワークと液晶成分とを含むことから、高分子分散型(ポリマーネットワーク型)液晶からなる層、すなわち、高分子分散型液晶層(ポリマーネットワーク型液晶層)ということができる。高分子分散型液晶層は、例えば、ポリマーの3次元ネットワーク構造中に液晶成分が連続層をなす構造、液晶成分のドロップレットがポリマー中に分散している構造、又は両者が混在する構造を有する。高分子分散型液晶層は、液晶成分がポリマー成分内にカプセル状に閉じ込められた構造、液晶成分の連続相中にポリマー成分の3次元ネットワーク構造が形成された構造、又は両者が混在した構造等を有しているが、液晶成分の連続相中にポリマー成分の3次元ネットワーク構造が形成された構造を有することが好ましい。カプセル状の液晶成分の平均粒径、及び、ポリマー成分の3次元ネットワーク構造の平均空隙間隔は、それぞれ、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上が最も好ましく、3μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましく、1μm以下が最も好ましい。上記液晶層において、液晶成分とポリマーネットワークとは互いに相分離するため、液晶層は相分離液晶層ということもできる。
【0229】
液晶層は、例えば、基材上に液晶組成物を塗布し、該液晶組成物中の重合性成分を重合させることにより得られる。
【0230】
液晶組成物の塗布方法は、アプリケーター法、バーコーティング法、ロールコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、インクジェット法、ダイコーティング法、キャップコーティング法等の公知慣用の方法であってよい。
【0231】
液晶組成物中の重合性成分を重合させる方法は、重合性成分の種類(重合開始剤の種類)に応じた方法であればよいが、光重合開始剤を含有する液晶組成物に対して紫外線照射を行うことで、該重合性成分を重合させることが好ましい。
【0232】
紫外線を発生させるランプとしては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ等を用いることができる。また、照射する紫外線の波長としては、液晶組成物に含有されている光重合開始剤の吸収波長領域であり、且つ含有されている液晶化合物の吸収波長域でない波長領域の紫外線を照射することが好ましい。具体的には、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプを使用して330nm以下の紫外線をカットして使用することが好ましい。また、単一波長を照射できるUV-LEDランプを用いることも好ましい。
【0233】
照射する紫外線の強度は、目的とする液晶層を得る観点から適宜調整することができるが、1~200mw/cmが好ましく、5~50mw/cmがより好ましい。紫外線を照射する時間は照射する紫外線強度により適宜選ばれるが、10~300秒が好ましい。紫外線照射時の温度は、液晶層の特性を決める重要な要素となるが、液晶組成物のアイソトロピック-ネマチック転移点(Tnm)より高い温度が好ましい。
【0234】
<液晶素子及び調光素子>
本発明の他の一実施形態は、液晶層と、電極と、該液晶層及び該電極を支持する基材と、を少なくとも備える液晶素子である。この液晶素子は、液晶層が上記実施形態の液晶層(高分子分散型(ポリマーネットワーク型)液晶層)であることから、いわゆる高分子分散型(ポリマーネットワーク型)液晶素子である。
【0235】
図1は、一実施形態に係る液晶素子を示す模式断面図である。図1に示すように、一実施形態に係る液晶素子1は、第1の電極基板2及び第2の電極基板3からなる一対の電極基板と、一対の電極基板(第1の電極基板2及び第2の電極基板3)間に配置された液晶層4と、第1の電極基板2の液晶層4とは反対側に設けられた紫外線遮断層5と、を備える。すなわち、一実施形態に係る液晶素子1は、厚さ方向(積層方向)に、第2の電極基板3、液晶層4、第1の電極基板2及び紫外線遮断層5をこの順に備える。
【0236】
上記液晶素子は、例えば、電圧無印加時には、重合性化合物由来のポリマーネットワークとその空隙に存在する液晶分子(液晶成分)によって光散乱状態とすることができる。一方、電圧印加時には、基材に対して液晶分子が垂直に配向することによって、光透過状態とすることができる。このように、上記液晶素子は電圧印加の有無により光の透過状態を変化させられる。特に、上記液晶層は、電圧印加時に液晶分子とともに配向する二色性色素を含むことから、電圧無印加時に二色性色素の吸収波長に応じた色を発現でき、複数の二色性色素を組み合わせることで、電圧無印加時に遮光状態とすることもできる。このため、上記液晶素子は、調光機能が求められる装置に組み込んで用いる液晶調光素子や、映像表示用ディスプレイに用いられる液晶表示素子として利用することができる。
【0237】
液晶素子は、例えば、建材、調光ガラス、車載向けのスマートウィンドウ又はOLEDディスプレイにおける調光ユニット等に用いることが好ましい。液晶素子は、従来の高分子分散型液晶表示素子と同様な用途に用いることができるほか、特に透過型ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ等にも好ましく用いることができる。より具体的には、窓、天窓、屋根、壁、仕切り、間仕切り、扉等の建築用調光素子、扉、窓、ドア、ヘルメット、サンルーフ等の輸送用調光素子、サングラス、眼鏡、サンバイザー、時計、鏡、反射板等の装飾用調光素子、フレキシブル液晶表示素子、反射型液晶表示素子、透明液晶表示素子、可変式拡散フィルム等のディスプレイ用部材等の物品に用いることができる。
【0238】
(電極基板)
第1の電極基板2は、第1の基材2aと該第1の基材2a上に設けられた第1の電極2bとを備える。同様に、第2の電極基板3は、第2の基材3aと該第2の基材3a上に設けられた第2の電極3bとを備える。これらの電極基板において、電極(第1の電極2b及び第2の電極3b)は、液晶層中の液晶分子を配向制御可能な電界を生じるように設けられている。
【0239】
第1の電極基板2は透明な電極基板(透明電極基板)であり、第1の基材2a及び第1の電極2bは透明な材料で構成されている。すなわち、第1の基材2aは透明基材であり、第1の電極2bは透明電極である。ここで、「透明」とは、400~780nmの波長域の光透過率が80%以上であることを意味する。なお、特に断りのない場合、本明細書中、光透過率は、分光光度計(V-660)を用いて測定される透過率を意味する。
【0240】
第1の基材2a(透明基材)は、例えば、平板状又は非平板状(例えば曲面を有する形状)である。第1の基材2a(透明基材)を構成する材料は、ガラスであってもプラスチックであってもよい。すなわち、第1の基材2a(透明基材)はガラス基材であってもプラスチック基材であってもよい。軽量化や後工程の作業性の観点では、第1の基材2a(透明基材)はプラスチック基材であることが好ましい。プラスチック基材の材料としては、セルロース誘導体、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアリレート、ポリエーテルサルホン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ナイロン又はポリスチレン等が挙げられる。中でもポリエステル(例えばPET)、ポリスチレン、ポリオレフィン、セルロース誘導体、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリイミド等が好ましく用いられる。
【0241】
第1の基材2a(透明基材)の厚さは、例えば5~500μmであってよい。
【0242】
第1の電極2b(透明電極)は、例えば、膜状である。第1の電極2b(透明電極)の形状は特に限定されず、例えば、電極の導電部が、ストライプ状、メッシュ状、ランダムな網目状等に形成されていてもよい。第1の電極2b(透明電極)を構成する材料としては、例えばITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、IZTO(Indium Zinc Tin Oxide)のような公知の透明導電性材料が挙げられる。
【0243】
第1の電極2b(透明電極)の厚さは、例えば5~500nmであってよい。
【0244】
第2の電極基板3は、第1の電極基板2と同じく透明電極基板であってもよいが、場合によっては非透明の電極基板(例えば、色付きの電極基板、遮光性を有する電極基板等)であってもよい。
【0245】
第2の基材3aは、例えば、平板状又は非平板状(例えば曲面を有する形状)である。第2の基材3aとしては、液晶表示素子、有機発光表示素子、その他表示素子、光学部品、調光素子、着色剤、マーキング、印刷物や光学フィルムに通常使用する基材を用いることができる。第2の基材3aの材料に特に制限はなく、例えば、上記第1の基材2aに用いられるガラス基材及びプラスチック基材の他、金属基材、セラミックス基材、紙基材等を用いることができる。第2の基材3aは、透明であってよく、色付きの基材であってもよい。第2の基材3aとしては、第2の電極基板3に遮光性を付与するために、可視光の透過率が低い基材(例えば、グレー色等の基材)を用いることもできる。
【0246】
第2の電極3bは、例えば、膜状である。第2の電極3bの形状は特に限定されず、例えば、電極の導電部が、ストライプ状、メッシュ状、ランダムな網目状等に形成されていてもよい。第2の電極3bの材料に特に制限はなく、公知の金属材料であってよい。このような金属材料としては、上記第1の電極2bに用いられる透明導電性材料の他、例えば、Al、Cu、Au、Ag、Cr、Ta、Ti、Mo、W、Ni又はこれらのうちの少なくとも1種を含む合金を用いることができる。
【0247】
第2の基材3aの厚さ及び第2の電極3bの厚さの範囲は、それぞれ、第1の基材2aの厚さ及び第1の電極2bの厚さとして例示した上記範囲と同じであってよい。
【0248】
第1の電極基板2及び第2の電極基板3の基材(第1の基材2a及び第2の基材3a)は、液晶素子の密着性向上のために表面処理されていてもよい。表面処理としては、オゾン処理、プラズマ処理、コロナ処理、シランカップリング処理などが挙げられる。また、光の透過率や反射率を調節するために、基材表面に、有機薄膜、無機酸化物薄膜、金属薄膜等が、蒸着等の方法によって設けられていてよい。また、光学的な付加価値をつけるために、基材がピックアップレンズ、ロッドレンズ、光ディスク、位相差フィルム、光拡散フィルム、マイクロレンズシート、カラーフィルター、等であってもよい。また、必要に応じて、基材に反射防止機能、反射機能等が付与されていてもよい。
【0249】
図示しないが、第1の電極基板2及び第2の電極基板3は、周縁領域に配置されたエポキシ系熱硬化性組成物等のシール材及び封止材によって互いに貼り合わされていてよい。第1の電極基板2及び第2の電極基板3の間には、基板間距離を保持するために、例えば、ガラス粒子、プラスチック粒子、アルミナ粒子等の粒状スペーサー、又はフォトリソグラフィー法により形成された樹脂からなるスペーサー柱が配置されていてもよい。
【0250】
(紫外線遮断層)
紫外線遮断層5は、378nm以下の波長域における光透過率が0.1%以下である層である。紫外線遮断層5の412nm以下の波長域における光透過率は、好ましくは30%以上であり、50%以上であってもよい。紫外線遮断層5の400nm以下の波長域における光透過率は0.1%超(例えば0.1%超90%以下)であってもよいが、0.1%以下であってもよい。紫外線遮断層5の394nm以下の波長域における光透過率は0.1%以下であってよい。紫外線遮断層5の394nm以下の波長域における光透過率が0.1%以下である場合、紫外線遮断層5の412nm以下の波長域における光透過率は、好ましくは50%以上である。
【0251】
紫外線遮断層5は、長波長域の光に対しては光透過性を有する。紫外線遮断層5の420nm以上の波長域における光透過率は、例えば、80%以上である。
【0252】
紫外線遮断層5は、例えば、膜状である。紫外線遮断層5を構成する材料としては、紫外線吸収剤を混入、又はコーティングした各種プラスチックフィルム、光干渉型の基材等が挙げられる。紫外線吸収剤入り樹脂を電極基板2に直接コーティングして形成されたコーティング層であってもよい。
【0253】
紫外線遮断層5の厚さは、例えば10μm~5mmであってよい。
【0254】
紫外線遮断層5としては、例えば、富士フィルム社製のTAC基材の紫外線吸収フィルターSCシリーズ、日東樹脂工業社製のアクリル基材の紫外線カットフィルター、HOYA社の色ガラスフィルター、3M社製のUVカットフィルター等として入手可能な紫外線遮断フィルムを使用可能である。
【0255】
紫外線遮断層5を配置する方法は、紫外線遮断層であるフィルム・基材を第1の電極基板2に貼り合わせる方法、第1の電極基板2に紫外線遮断層をコーティング等の手法により、直接成形させる方法等が挙げられる。
【0256】
本発明の液晶素子は上記実施形態の液晶素子に限定されない。例えば、紫外線遮断層が第2の電極基板3の液晶層4とは反対側にさらに設けられていてもよい。すなわち、液晶素子は、一対の電極基板(第1の電極基板2及び第2の電極基板3)と液晶層4とを挟むように、一対の紫外線遮断層を備えていてもよい。この場合、第2の電極基板3は透明電極基板であってよい。透明電極基板の詳細は、第1の電極基板2場合と同じである。また、本発明の液晶素子が、一対の電極基板と該一対の電極基板間に配置された液晶層とを備える素子を他の基材に貼り合わせて得られたものである場合、該基材、貼り合わせに使用された感圧接着剤(PSA)、PVB、EVA等の中間膜などが紫外線遮断層5であってもよい。すなわち、これらの基材等に紫外性遮断機能を持たせることで、紫外線遮断層5としてもよい。PSAや、PVB、EVA等の中間膜に紫外線遮断機能を持たせる方法としては、例えば、これらの材料に紫外線吸収剤等を含有させる方法が挙げられる。本発明の液晶素子は、紫外線遮断層を備えていなくてもよいが、紫外線遮断層を使用することで、液晶素子の耐光性を向上させることができる。
【0257】
上記液晶素子は、液晶素子中の液晶分子が水平配向、あるいは、垂直配向するように、配向膜をさらに備えていてもよく、基材に配向処理が施されていてもよい。配向膜としては、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルホン、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、アクリル樹脂、アゾ化合物、クマリン化合物、カルコン化合物、シンナメート化合物、フルギド化合物、アントラキノン化合物、アゾ化合物、アリールエテン化合物等の化合物、又は、前記化合物の重合体や共重合体などで構成される膜が挙げられる。配向処理としては、延伸処理、ラビング処理、偏光紫外可視光照射処理、イオンビーム処理、基材へのSiOの斜方蒸着処理、等が挙げられる。液晶分子にチルト角を付与するために、ラビング処理を行う場合、ラビングにより配向処理する化合物は、配向処理、もしくは配向処理の後に加熱工程を入れることで材料の結晶化が促進されるものが好ましい。ラビング以外の配向処理を行う化合物の中では光配向材料を用いることが好ましい。一般に、配向機能を有する基材に液晶組成物を接触させた場合、液晶分子は基板付近で基板を配向処理した方向に沿って配向する。液晶分子が基板と水平に配向するか、傾斜あるいは垂直して配向するかは、基板への配向処理方法による影響が大きい。
【0258】
上記液晶素子は、そのまま使用できるが、他の基材に貼り合せて使用することもできる。また、液晶素子には、接着剤や接着層、粘着剤や粘着層、保護フィルムや偏光フィルム等が積層されていてもよい。
【0259】
液晶素子は、電圧印加により液晶分子の配向を制御できるよう構成されればよく、垂直電界型液晶素子、横電界型液晶素子、その他の電界型(例えば、FFS駆動モードに採用されるフリンジ電界型)の液晶素子であってよい。これらの中でも、液晶素子が垂直電界型液晶素子として構成されることが好ましい。
【0260】
垂直電界型液晶素子は、配向膜に対して垂直に電界が生じるように電極が配置された液晶素子である。垂直電界型液晶素子においては、通常、液晶層を狭持する一対の透明基材の両方に電極が設けられる。すなわち、透明基材と電極とを備える透明電極基板が用いられる。
【0261】
垂直電界型の液晶素子は、例えば、一対の透明電極基板(第一の透明電極基板及び第二の透明電極基板)と、前記一対の透明電極基板の間に配された液晶層と、を有する。このような構造の液晶素子は、調光素子として好適に用いられる。すなわち、本発明の他の一実施形態は、一対の透明電極基板と、前記一対の透明電極基板の間に配された、上記実施形態の液晶層と、を有する調光素子である。
【0262】
調光素子は、例えば、光の透過率を電気的に制御する素子であってよい。調光素子は電圧印加装置を備えていてもよい。調光素子は、上記液晶層及び透明電極基板の積層体を、PVB(ポリビニルブチラール)、EVA(エチレン酢酸ビニール共重合樹脂)、TPU(ポリウレタン系)、SGP等の中間膜を介して2枚のガラスで挟み、合わせガラスとした構造を有していてもよい。また、本調光素子には、紫外線カット、熱線カット等の機能性フィルムが付加されていてもよい。
【0263】
垂直電界型液晶素子は、生産性の観点から、例えばロールtoロール法を用いて、基材の上に上記実施形態の液晶組成物をODF法等により滴下又は塗布し、対向基板をラミネートした後に液晶組成物中の重合性成分を重合させることで、液晶素子を作製することが好ましい。
【0264】
ロールtoロール法による液晶素子の製造工程においては、第一の電極、又は、配向膜と第一の電極を有するガラス基材、あるいは、プラスチック基材上に液晶組成物を塗布し、第二の電極、又は、配向膜と第二の電極を有するガラス基材、あるいは、プラスチック基材の前記電極側、又は前記配向膜側と前記液晶組成物が接するように貼り合せ、厚みを略均一にした後に液晶組成物中の重合性成分を重合させることで、前記液晶素子を製造することもできる。
【0265】
液晶組成物の塗布方法及び重合性成分の重合方法は、上記液晶層の作製方法で説明したとおりである。
【0266】
ODF法の前記液晶素子製造工程においては、中空素子のバックプレーン又はフロントプレーンのどちらか一方の基板にエポキシ系光熱併用硬化性などのシール剤を、ディスペンサーを用いて閉ループ土手状に描画し、その中に脱気下で所定量の前記液晶組成物を滴下後、フロントプレーンとバックプレーンを接合することによって前記液晶素子を製造することができる。
【0267】
液晶素子を作製する際には、周知の液晶素子の作製方法と同様に、間隔保持用のスペーサー(粒子等)を2枚の基材間に介在させることより、基材間の厚み(基材間隔)を調整してよい。基板間の厚み、すなわち相分離層の厚みは、2~50μmが好ましく、10~30μmがより好ましい。スペーサーは事前に基板上に散布してもよいが、液晶組成物中にあらかじめ混入しておき、液晶組成物と同時に基板上に塗布してもよい。
【0268】
2枚の基板間に液晶組成物を狭持させる方法は、通常の真空注入法でもよいが、ODF法等滴下又は塗布で行うことが好ましい。この滴下又は塗布から重合性成分が重合するまでの間、液晶組成物は略均一なアイソトロピック状態であることが好ましい。
【0269】
滴下又は塗布を行う場合、2枚の基板で液晶組成物を挟みこむ方法としては、2枚の基板をラミネーター等で挟み込む方法が挙げられる。
【実施例0270】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「部」は「質量部」を意味する。
【0271】
<二色性色素の準備>
(二色性色素A~Cの合成)
非特許文献1(Journal of Chemical and Engineering Data, 1984, 29(4), 482-483)に記載の合成法を参考に下記式(A)で表される化合物(二色性色素A)、下記式(B)で表される化合物(二色性色素B)及び下記式(C)で表される化合物(二色性色素C)を合成した。
【0272】
【化44】
【0273】
【化45】
【0274】
【化46】
【0275】
(二色性色素Dの合成)
特許文献3(中国特許出願公開第106748833号明細書)の実施例を参考に、下記式(D)で表される化合物(二色性色素D)を合成した。
【0276】
【化47】
【0277】
(二色性色素Eの合成)
非特許文献2(Liquid Crystals (2011), 38(11-12), 1683-1698)に記載の合成法を参考に下記式(E)で表される化合物(二色性色素E)を合成した。
【0278】
【化48】
【0279】
(二色性色素Fの合成)
特許文献4(特開平7-156564号公報)の実施例を参考に、下記式(F)で表される化合物(二色性色素F)を合成した。
【0280】
【化49】
【0281】
(二色性色素Gの合成)
当業者に公知の方法を用いて下記式(G)で表される化合物(二色性色素G)を合成した。なお、下記式(G)で表される化合物は特許文献5(特開昭59-4651号公報)等に記載されている公知化合物である。
【0282】
【化50】
【0283】
(二色性色素H及びIの準備)
二色性色素Hとして、Sudan Blue II(Sigma-Aldrich社製)を用意し、二色性色素Iとして、Solvent Violet 59(Changzhou Yingshuo Chemicals社製)を用意した。
【0284】
(二色性色素Jの合成)
特許文献6(特開2006-193742号公報)の実施例を参考に、下記式(J)で表される化合物(二色性色素J)を合成した。
【0285】
【化51】
【0286】
上記二色性色素A~Jの最大吸収波長、並びに、二色性色素A~E、G~Iの二色比及び吸光度(Abs.)を表1に示す。
【0287】
【表1】
【0288】
最大吸収波長は、以下の方法で測定した。まず、色素化合物を溶解することができる任意の液晶組成物100質量部に対して、最大吸収波長を測定する二色性色素を1.0質量部添加して溶解させ、測定試料を調製した。次に、ITO電極を有し、当該ITO電極上に水平配向用配向膜を備えた2cm×2cmのガラス基板を2枚用いて、ITO電極層をセルの内側として、プラスチック粒子によりセル厚10μmに調整した注入口を備えたセルを作製した。当該セルに、試料を注入し、注入口を封止材で塞ぐことにより、素子を作製した。次に、スペクトルメーター(大塚電子社製、「LCD-5200」)を用いて、25℃、電圧無印加の条件下、作製した素子を用いて、380~780nmの間の吸収スペクトルを測定することにより、二色性色素の最大吸収波長を求めた。
【0289】
二色比は、上記最大吸収波長の測定のために作製した素子を用いて測定した。具体的には、テストパネルに電圧を印可しないときの極大吸収波長における透過率から-log10(透過率/100)の計算式により算出した吸光度をA0とし、テストパネルに30Vの電圧を印可したときの極大吸収波長における透過率から算出した吸光度をA30とし、R=A0/A30の式から二色比(R)を算出した。
【0290】
吸光度は、スペクトルメーター(大塚電子社製、「LCD-5200」)を用いて、25℃、電圧無印加の条件下、作製した素子を用いて、380~780nmの間の透過率を測定し、-log10(透過率/100)の計算式により測定した。
【0291】
<液晶混合物(LB)の調製>
複数種の液晶化合物を混ぜ合わせ、下記表2に示す組成の液晶混合物(LB1~LB3)を調製した。これらの液晶混合物(LB1~LB3)を後述の実施例及び比較例で用いた。
【0292】
【表2】
【0293】
表2では液晶化合物の構造を符号及び数字で示している。各符号は、以下に示す構造の基を表し、末端の数字(1~5)は、該数字と同一の炭素原子数の直鎖状アルキル基を表す。例えば、2-Ph-E-Ph3-CNで表される化合物は、上記式(3C-1)で表される化合物を意味する。
【0294】
【化52】
【0295】
表2中、物性値「Tni」は、上記液晶混合物からなる液晶成分(液晶相)がネマチック相から等方相へ転移する温度(上限温度)を意味し、偏光顕微鏡により測定した値である。
【0296】
表2中、物性値「Δn」は、液晶混合物からなる液晶成分の25℃、589nmにおける屈折率異方性を意味し、アッベ屈折計を用いて、25℃、589nmにおける液晶分子(液晶成分)の長軸方向の屈折率(n)及び液晶分子(液晶成分)の短軸方向の屈折率(n)を測定し算出した値である。
【0297】
<重合性化合物及び重合開始剤の準備>
下記表3に示す重合性化合物及び重合開始剤を準備した。これらを後述の実施例及び比較例で用いた。
【0298】
【表3】
【0299】
(合成例1)
攪拌羽根のついたフラスコにIPDI(イソホロンジイソシアネート)44.4部(0.2モル)を仕込み、攪拌を行いながらポリプロピレングリコール(平均分子量Mw:8100)810部(0.1モル)を発熱に注意しながら仕込み、70℃まで昇温した。この温度で反応を7時間行い、末端にイソシアネート基を有するウレタンポリマーを得た。次いで2-ヒドロキシエチルアクリレート(分子量116)23.2部(0.2モル)を仕込み、この温度でさらに7時間反応を行った。赤外吸収スペクトルでNCOの吸収が消失したことを確認して取り出し、ウレタンアクリレートである重合性化合物(2-1)(平均分子量Mw:29800)を得た。本発明において、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)はGPC測定に基づきポリスチレン換算した値である。なお、GPCの測定条件は以下の通りである。
【0300】
[GPCの測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製「HLC-8320 GPC」
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「SuperHZ-L」+東ソー株式会社製「SuperHZ2000」×3本+東ソー株式会社製「TSuperHZM-M」
検出器:内蔵RI検出器
データ処理:東ソー株式会社製「EcoSEC-WorkStation Ver2.01」
測定条件:カラム温度40℃、展開溶媒テトラヒドロフラン、流速1.0ml/分
標準:装置測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の単分散ポリスチレンを用いた。
【0301】
<重合性混合物(MA)の調製>
上記表3に示す重合性化合物及び重合開始剤を、下記表4に示す質量比で混合し、50℃で攪拌しながら重合開始剤を重合性化合物に溶解させることで、重合性混合物(MA1~MA10)を得た。
【0302】
【表4】
【0303】
<実施例1~20及び比較例1~5>
(液晶組成物の調製)
下記表5~表8に示す組み合わせで、二色性色素と、液晶混合物(LB)と、重合性混合物(MA)とを混合し、50℃で攪拌しながら二色性色素及び液晶混合物(LB)を重合性混合物(MA)に溶解させることで、実施例1~20及び比較例1~5の液晶組成物(液晶組成物1~25)を得た。二色性色素は、液晶混合物(LB)の総量100質量部に対して、表5~表8に記載の量(単位:質量部)を配合した。二色性色素と液晶混合物(LB)は、これらの合計量(LB+色素)と重合性混合物(MA)の量との比率が、表5~表8に記載の混合比(LB+色素・MA混合比)となるように配合した。
【0304】
(液晶素子の作製)
液晶組成物1~25を用いて、実施例1~20及び比較例1~5の液晶素子(高分子分散型液晶素子)をそれぞれ作製した。具体的には、液晶組成物を厚み20μmのガラスセル(構成は、ガラス基材/透明電極層/空気層/透明電極層/ガラス基材)に室温で注入した後、室温で紫外線を照射することにより、実施例1~20及び比較例1~5それぞれについて、液晶高分子複合体(高分子分散型液晶)からなる液晶層を得た。このときの紫外線の条件は、光源がUV-LEDランプ(波長:365nm)であり、照射強度が40mW/cmであり、照射時間が40秒であり、照射温度が25℃であった。
【0305】
<評価1>
(全光線透過率及びヘイズの測定)
上記で得られた液晶素子に電極配線を取り付け、ヘイズメーター(日本電色工業社製NDH-7000)を用いて、電圧印加時及び電圧無印加時の全光線透過率及びヘイズを測定した。測定はJIS K 7361-1及びJIS K 7136に準拠し、25℃で矩形波60Hz、0~100Vの電圧を印加することにより行った。電圧無印加時の全光線透過率(T0)及びヘイズ(OFF Haze)、並びに、AC100V印加時の全光線透過率(T100)及びヘイズ(ON Haze)を表5~表8に示す。なお、表5~表8中のCRは、上記電圧印加前後での全光線透過率及びヘイズのコントラスト(T100に対するT0の比、及び、ON Hazeに対するOFF Hazeの比)である。
【0306】
(UV退色耐性評価)
液晶素子作製時の紫外線照射前後での色度変化(√((Δa*)2+(Δb*)2))により、UV退色耐性を評価した。具体的には、セルの裏面に上質紙を置いた状態で、LCD-5200(大塚電子社製)を用いて、測定温度25℃において、UV照射前後のセルの反射率(投光-受光角:30-0[°])の色度a*、b*を測定した。上記色度変化が10未満の場合に評価A(退色耐性に優れる)とし、上記色度変化が10以上の場合に評価Bとした。結果を表5~表8に示す。本評価において評価がBであった比較例は、耐光性に劣ると判断し、耐光性評価は実施しなかった。
【0307】
(耐光性評価)
上記で得られた液晶素子の耐光試験前後での色度変化(√((Δa*)2+(Δb*)2))により、耐光性を評価した。具体的には、まず、ATLAS社製のSUNTEST CPS+を使用し、設定強度550W/m、設定温度65℃で、液晶素子の耐光性試験を行った。紫外線遮断フィルムには、紫外線遮断波長域が394nm以下である日東樹脂工業製のN-190を使用した。次いで、セルの裏面に上質紙を置いた状態で、LCD-5200(大塚電子社製)を用いて、測定温度25℃において、耐光性試験前後のセルの反射率(投光-受光角:30-0[°])の色度a*、b*を測定した。2000時間の耐光性試験後でも色度変化が10未満の場合に評価A(耐光性に非常に優れる)とし、2000時間の耐光性試験後の色度変化が10以上であるが、1000時間の耐光性試験後の色度変化が10未満である場合に評価B(耐光性に優れる)とし、1000時間の耐光性試験後の色度変化が10以上である場合に評価Cとした。結果を表5~表8に示す。
【0308】
【表5】
【0309】
【表6】
【0310】
【表7】
【0311】
【表8】
【0312】
<実施例21~26>
実施例15~19で作製した液晶組成物15~19を用いて、実施例21~26の液晶素子(高分子分散型液晶素子)をそれぞれ作製した。
【0313】
具体的には、まず、液晶組成物15~19に平均粒子径20μmのビーズスペーサーを含有させることで、液晶組成物X1~X5を得た。ビーズスペーサーの配合量は1質量%とした。次に、電極基板としてITO電極付PETフィルムを2枚用意し、一方の電極基板のITO電極側に上記組成物(液晶組成物X1~X5のいずれか)を塗布して塗膜を形成し、他方の電極基板を、ITO電極側の面が塗膜に接するように塗膜上に配置した。次いで、得られた積層体に、ラミネーター(ヒサゴ社製FUJIPLA LPD2313)を用いて均一な圧をかけた後、UV-LEDランプで15mw/cmの波長365nmのUV光を90sec間照射した。次に、一方の電極基板の液晶層とは反対側の面に、紫外線遮断フィルムを貼り付け、紫外線遮断フィルムを備える液晶素子を得た。紫外線遮断フィルムとしては、表9に示すとおり、フィルムA又はフィルムBを使用した。フィルムA及びフィルムBの詳細は以下に示す。
・フィルムA:N-190(日東樹脂工業社製社製、遮断波長域:394nm以下)
・フィルムB:N-113(日東樹脂工業社製社製、遮断波長域:400nm以下)
なお、本明細書中、「遮断波長域」とは、光透過率が0.1%以下である波長域を意味する。
【0314】
<評価2>
(全光線透過率及びヘイズの測定)
上記評価1と同様にして、実施例21~26の液晶素子の電圧無印加時及びAC100V印加時における全光線透過率及びヘイズを測定した。電圧無印加時の全光線透過率(T0)及びヘイズ(OFF Haze)、並びに、AC100V印加時の全光線透過率(T100)及びヘイズ(ON Haze)を表9に示す。
【0315】
(UV退色耐性評価及び耐光性評価)
上記評価1と同様にして、実施例21~26の液晶素子のUV退色耐性評価及び耐光性評価を行った。結果を表9に示す。
【0316】
【表9】
【符号の説明】
【0317】
1…液晶素子、2…第1の電極基板、3…第2の電極基板、4…液晶層、5…紫外線遮断層、2a…第1の基材、2b…第1の電極、3a…第2の基材、3b…第2の電極。

図1