(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092737
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】免疫応答の細胞間伝播の観察方法、および、その利用
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/66 20060101AFI20240701BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240701BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
C12Q1/66
C12Q1/02
C12N5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208872
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】玉置 寛子
(72)【発明者】
【氏名】須藤 麻希
(72)【発明者】
【氏名】藤本 仰一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 郁尚
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QR57
4B063QR80
4B063QS28
4B063QX02
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA46
(57)【要約】
【課題】一細胞単位における免疫応答の細胞間の伝播(免疫応答の拡大)について観察可能な技術を提供する。
【解決手段】免疫応答制御エレメントおよび免疫応答制御エレメントの制御下に発現可能に連結されたレポーター遺伝子を含むプラスミドが導入された真核細胞と、免疫応答制御エレメントを作動させる免疫応答誘導剤とを接触させた後、レポーター遺伝子に由来するマーカーの発現を経時的に観察することにより、免疫応答の細胞間伝播を観察する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫応答制御エレメント、および当該免疫応答制御エレメントの制御下に発現可能に連結されたレポーター遺伝子を含むプラスミドが導入された真核細胞と、前記免疫応答制御エレメントを作動させる免疫応答誘導剤と、を接触させる接触工程、および、
前記レポーター遺伝子に由来するマーカーの発現を経時的に観察する観察工程、を含む、免疫応答の細胞間伝播の観察方法。
【請求項2】
前記レポーター遺伝子は、蛍光レポーター遺伝子である、請求項1に記載の観察方法。
【請求項3】
前記観察工程では、前記マーカーの発現データに対して、キモグラフによる解析を行う、請求項1または2に記載の観察方法。
【請求項4】
免疫応答制御エレメント、および当該免疫応答制御エレメントの制御下に発現可能に連結されたレポーター遺伝子を含むプラスミドが導入された真核細胞と、前記免疫応答制御エレメントを作動させる免疫応答誘導剤と、を接触させて、炎症状態を準備する炎症誘導工程、
前記炎症誘導工程において得られた炎症状態の前記真核細胞と、候補物質と、を接触させる接触工程、および、
前記接触工程後の、前記レポーター遺伝子に由来するマーカーの発現を経時的に観察する観察工程、を含む、抗炎症物質のスクリーニング方法。
【請求項5】
免疫応答制御エレメント、および当該免疫応答制御エレメントの制御下に発現可能に連結されたレポーター遺伝子を含むプラスミドが導入された真核細胞と、前記免疫応答制御エレメントを作動させる免疫応答誘導剤と、候補物質と、を接触させる接触工程、および、
前記接触工程後の、前記レポーター遺伝子に由来するマーカーの発現を経時的に観察する観察工程、を含む、抗炎症物質のスクリーニング方法。
【請求項6】
免疫応答制御エレメント、および当該免疫応答制御エレメントの制御下に発現可能に連結されたレポーター遺伝子を含むプラスミドが導入された真核細胞と、候補物質と、を接触させる候補物質接触工程、
前記候補物質接触工程にて前記候補物質と接触した前記真核細胞と、前記免疫応答制御エレメントを作動させる免疫応答誘導剤と、を接触させて、炎症状態を準備する炎症誘導工程、および、
前記炎症誘導工程後の、前記レポーター遺伝子に由来するマーカーの発現を経時的に観察する観察工程、を含む、抗炎症物質のスクリーニング方法。
【請求項7】
前記レポーター遺伝子は、蛍光レポーター遺伝子である、請求項4~6のいずれか1項に記載の抗炎症物質のスクリーニング方法。
【請求項8】
前記観察工程では、前記マーカーの発現データに対して、キモグラフによる解析を行う、請求項4~6のいずれか1項に記載の抗炎症物質のスクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫応答の細胞間伝播の観察方法、および、その利用に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、外部刺激に応答して免疫制御を行う。皮膚の表皮角化細胞における、免疫機構の破綻、および/または、過剰な免疫反応は、免疫性皮膚疾患の一因となり、皮膚表面に皮疹を生じさせる。
【0003】
皮疹は、同心円状、らせん状、木目状、など様々な様式にて拡大し、拡大の速度も異なる。このような皮疹の拡大の違いがどのように生じるのかは、不明な点が多い。
【0004】
これまでに、本発明者等により、皮膚における免疫応答のメカニズム、および、皮膚における免疫応答の伝播を表す数理モデルが構築されている。この数理モデルの計算機シミュレーションによって、円形の炎症領域が時間とともに拡大する様子が再現されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Sudo M., Fujimoto K., "Traveling wave of inflammatory response to regulate the expansion or shrinkage of skin erythema" PLoS ONE 17(2): e0263049, 2022
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術のインビトロ(in vitro)の免疫解析研究においては、細胞集団において平均化されたデータを採取して、免疫応答の細胞間の伝播(免疫応答の拡大)について評価を行うことが一般的であって、一細胞単位における免疫応答の細胞間の伝播(免疫応答の拡大)については評価されていない。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みなされたものであって、一細胞単位における免疫応答の細胞間の伝播(免疫応答の拡大)について観察可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の発明を包含する。
【0009】
〔1〕免疫応答制御エレメント、および当該免疫応答制御エレメントの制御下に発現可能に連結されたレポーター遺伝子を含むプラスミドが導入された真核細胞と、前記免疫応答制御エレメントを作動させる免疫応答誘導剤と、を接触させる接触工程、および、
前記レポーター遺伝子に由来するマーカーの発現を経時的に観察する観察工程、を含む、免疫応答の細胞間伝播の観察方法。
【0010】
〔2〕前記レポーター遺伝子は、蛍光レポーター遺伝子である、〔1〕に記載の観察方法。
【0011】
〔3〕前記観察工程では、前記マーカーの発現データに対して、キモグラフによる解析を行う、〔1〕または〔2〕に記載の観察方法。
【0012】
〔4〕免疫応答制御エレメント、および当該免疫応答制御エレメントの制御下に発現可能に連結されたレポーター遺伝子を含むプラスミドが導入された真核細胞と、前記免疫応答制御エレメントを作動させる免疫応答誘導剤と、を接触させて、炎症状態を準備する炎症誘導工程、前記炎症誘導工程において得られた炎症状態の前記真核細胞と、候補物質と、を接触させる接触工程、および、前記接触工程後の、前記レポーター遺伝子に由来するマーカーの発現を経時的に観察する観察工程、を含む、抗炎症物質のスクリーニング方法。
【0013】
〔5〕免疫応答制御エレメント、および当該免疫応答制御エレメントの制御下に発現可能に連結されたレポーター遺伝子を含むプラスミドが導入された真核細胞と、前記免疫応答制御エレメントを作動させる免疫応答誘導剤と、候補物質と、を接触させる接触工程、および、前記接触工程後の、前記レポーター遺伝子に由来するマーカーの発現を経時的に観察する観察工程、を含む、抗炎症物質のスクリーニング方法。
【0014】
〔6〕免疫応答制御エレメント、および当該免疫応答制御エレメントの制御下に発現可能に連結されたレポーター遺伝子を含むプラスミドが導入された真核細胞と、候補物質と、を接触させる候補物質接触工程、前記候補物質接触工程にて前記候補物質と接触した前記真核細胞と、前記免疫応答制御エレメントを作動させる免疫応答誘導剤と、を接触させて、炎症状態を準備する炎症誘導工程、および、前記炎症誘導工程後の、前記レポーター遺伝子に由来するマーカーの発現を経時的に観察する観察工程、を含む、抗炎症物質のスクリーニング方法。
【0015】
〔7〕前記レポーター遺伝子は、蛍光レポーター遺伝子である、〔4〕~〔6〕のいずれか1項に記載の抗炎症物質のスクリーニング方法。
【0016】
〔8〕前記観察工程では、前記マーカーの発現データに対して、キモグラフによる解析を行う、〔4〕~〔7〕のいずれか1項に記載の抗炎症物質のスクリーニング方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、一細胞単位における免疫応答の細胞間の伝播(免疫応答の拡大)について観察可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】GFPを発現している細胞のライブイメージング像を示す図である。
【
図2】GFPを発現している細胞のキモグラフ像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態の一例について詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されない。本発明は、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「X~Y」は、「X以上Y以下」を意図する。
【0020】
〔1.免疫応答の細胞間伝播の観察方法〕
本発明の一実施形態に係る免疫応答の細胞間伝播の観察方法は、免疫応答制御エレメント、および当該免疫応答制御エレメントの制御下に発現可能に連結されたレポーター遺伝子を含むプラスミドが導入された真核細胞と、前記免疫応答制御エレメントを作動させる免疫応答誘導剤と、を接触させる接触工程、および、前記レポーター遺伝子に由来するマーカーの発現を経時的に観察する観察工程、を含む。
【0021】
本発明は、炎症性疾患等の脅威の低減に繋がることから、例えば、持続可能な開発目標(SDGs)の目標3(あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する)の達成に貢献し得る。
【0022】
〔1-1.免疫応答制御エレメント、および当該免疫応答制御エレメントの制御下に発現可能に連結されたレポーター遺伝子を含むプラスミド〕
本発明において、免疫応答制御エレメントは、免疫応答誘導剤(例えば、炎症性サイトカイン)によって活性化された転写因子が免疫応答制御エレメントに結合して、当該免疫応答制御エレメントの制御下にあるプロモーター配列からの転写を促進または抑制する塩基配列(例えば、転写因子の結合配列、結合部位、またはモチーフ)であり得る。
【0023】
免疫応答制御エレメントは、例えば、当該免疫応答制御エレメントの制御下にあるプロモーター配列からの転写を促進する、免疫応答の正の制御領域(エンハンサー)であってもよい。この場合、免疫応答誘導剤によって、免疫応答制御エレメントの制御下にあるプロモーター配列からのレポーター遺伝子の転写が促進され、その結果、レポーター遺伝子に由来するマーカーの発現が促進されることになる。当該マーカーの発現を経時的に観察することによって、免疫応答の細胞間伝播を観察することができる。
【0024】
免疫応答の正の制御領域(エンハンサー)としては、例えば、NF-κB、STAT1、STAT2、STAT3、STAT4、STAT5A、STAT5B、STAT6、NFATC2、および、MAPK1それぞれのTRE(transcriptional response element)を挙げることができる。
【0025】
なお、NF-κBの全長塩基配列は、例えば、データベースGenBankにおいて、アクセッション番号:NM_003998、NM_001288724、NM_021975、NM_006509、NM_002908として登録されている。STAT1の全長塩基配列は、例えば、データベースGenBankにおいて、アクセッション番号:NM_007315として登録されている。STAT2の全長塩基配列は、例えば、データベースGenBankにおいて、アクセッション番号:NM_005419として登録されている。STAT3の全長塩基配列は、例えば、データベースGenBankにおいて、アクセッション番号:NM_003150として登録されている。STAT4の全長塩基配列は、例えば、データベースGenBankにおいて、アクセッション番号:NM_003151として登録されている。STAT5Aの全長塩基配列は、例えば、データベースGenBankにおいて、アクセッション番号:NM_001288718、STAT5Bの全長塩基配列は、例えば、データベースGenBankにおいて、アクセッション番号:NM_012448、STAT6の全長塩基配列は、例えば、データベースGenBankにおいて、アクセッション番号:NM_001178078、NFATC2の全長塩基配列は、例えば、データベースGenBankにおいて、アクセッション番号:NM_012340として登録されている。MAPK1の全長塩基配列は、例えば、データベースGenBankにおいて、アクセッション番号:NM_002745として登録されている。
【0026】
例えば、NF-κB TREを免疫応答制御エレメントとして用いた場合には、細胞質内のNF-κBが炎症性サイトカイン(例えば、TNF-α)の添加によって活性化されて核内へ移行し、当該核内のNF-κBがNF-κB TREに結合し、当該NF-κB TREの制御下に発現可能に連結されたレポーター遺伝子がコードするレポータータンパク質の発現が誘導される。レポータータンパク質に由来するマーカー(例えば、蛍光)の発現強度の経時的な増加の様子を解析することにより、免疫応答の細胞間伝播を可視化することができる。
【0027】
免疫応答制御エレメントは、例えば、当該免疫応答制御エレメントの制御下にあるプロモーター配列からの転写を抑制する、免疫応答の負の制御領域(サイレンサー)であってもよい。この場合、免疫応答誘導剤によって、免疫応答制御エレメントの制御下にあるプロモーター配列からのレポーター遺伝子の転写が抑制され、その結果、レポーター遺伝子に由来するマーカーの発現が抑制されることになる。当該マーカーの消失を経時的に観察することによって、免疫応答の細胞間伝播を観察することができる。
【0028】
免疫応答の負の制御領域(サイレンサー)としては、例えば、COX-2、および、NF-κBそれぞれのTSE(transcriptional silencer element)を挙げることができる。
【0029】
なお、COX-2の全長塩基配列は、例えば、データベースGenBankにおいて、アクセッション番号:NM_000963として登録されている。NF-κBの全長塩基配列は、例えば、データベースGenBankにおいて、アクセッション番号:NM_003998, NM_001288724、NM_021975、NM_006509、NM_002908として登録されている。
【0030】
レポーター遺伝子としては、例えば、蛍光レポーター遺伝子、発光レポーター遺伝子、および、その他のレポーター遺伝子を挙げることができる。
【0031】
蛍光レポーター遺伝子としては、例えば、GFP遺伝子、YFP遺伝子、RFP遺伝子、および、m-Cherry遺伝子を挙げることができる。また、発光レポーター遺伝子としては、例えば、ルシフェラーゼ遺伝子を挙げることができる。蛍光レポーター遺伝子または発光レポーター遺伝子であれば、容易に、かつ、細胞を生かしたままで、蛍光(または発光)レポーター遺伝子に由来するマーカー(蛍光または発光)の発現を経時的に観察することができる。
【0032】
その他のレポーター遺伝子とは、例えば、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)遺伝子、および、β-グルクロニダーゼ遺伝子を挙げることができる。これらのレポーター遺伝子は、蛍光レポーター遺伝子および発光レポーター遺伝子のように蛍光や発光する能力を有さないレポーター遺伝子である。しかしながら、例えば、これらのレポーター遺伝子と蛍光プローブとの併用により発現を経時的に観察することができる。また、経時的に固定処理した固定細胞を用いた染色等により発現を経時的に観察することができる。
【0033】
前記プラスミドは、プロモーター配列を含み得る、当該プロモーター配列としては、限定されず、発現ベクター等に利用可能な公知のプロモーター配列を用いることができる。プロモーター配列としては、例えば、CMVプロモーター配列、SV40プロモーター配列、CAGプロモーター配列、EF1aプロモーター配列、および、RSVプロモーター配列を挙げることができる。
【0034】
本発明の一実施形態に用いられるプラスミドは、市販のレポーター遺伝子発現プラスミド(例えば、NFKBのGFPレポータープラスミド)を使用し、必要に応じて、公知の手法にしたがって当該レポーター遺伝子発現プラスミドを加工することによって、作製することもできる。本発明の一実施形態に用いられるプラスミドは、動物細胞内で所望の遺伝子を発現することが可能な公知のプラスミドを用いて、作製することができる。
【0035】
〔1-2.接触工程〕
本発明において、接触工程とは、免疫応答制御エレメント、および当該免疫応答制御エレメントの制御下に発現可能に連結されたレポーター遺伝子を含むプラスミドが導入された真核細胞と、前記免疫応答制御エレメントを作動させる免疫応答誘導剤と、を接触させる工程である。
【0036】
(真核細胞)
本発明の一実施形態において用いられる細胞は、真核細胞であり得る。当該真核細胞としては、免疫応答性を有する真核細胞であり得る。当該免疫応答性を有する真核細胞としては、例えば、免疫応答性を有する動物細胞、免疫応答性を有する植物細胞が挙げられるが、免疫応答性を有する動物細胞であることが好ましい。当該免疫応答性を有する動物細胞としては、特に限定されず、例えば、心筋細胞、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、肝細胞、膵細胞、腎細胞、副腎細胞、歯根膜細胞、歯肉細胞、骨膜細胞、皮膚細胞、滑膜細胞、軟骨細胞、幹細胞等が挙げられるが、外部刺激に応答して免疫制御を行う皮膚細胞であることが好ましい。当該皮膚細胞は、皮膚角化細胞であり得る。当該皮膚角化細胞は、例えば、生体から採取された野生型の細胞、生体から採取された細胞を株化した細胞、これらの形質転換細胞、および、これらの細胞の癌細胞株(腫瘍由来の細胞株、初代培養癌細胞株等)であってもよい。
【0037】
本発明の一実施形態において用いられる真核細胞、例えば皮膚角化細胞の由来としては、哺乳動物であれば特に限定されず、例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ウマ等が挙げられるが、ヒトであることが好ましい。生体から採取された皮膚角化細胞を株化した細胞としては、HaCaT細胞(ヒト表皮角化細胞株)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT; Human Telomerase Reverse Transcriptase)等により不死化された表皮角化細胞が好ましい。
【0038】
真核細胞の培養に用いる培地は、細胞の種類に応じて適宜選択することができる。前記培地としては、前記真核細胞が生育するのに適した成分(例えば、グルコース、アミノ酸、ペプトン、ビタミン、細胞増殖促進因子(例えば、細胞成長因子、ホルモン、結合タンパク質、細胞接着因子、脂質)、血清(例えば、FBS、FCS等)、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等)を含む培地を用いることができる。真核細胞がHaCaT細胞である場合、10%ウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum(FBS))、および、1%のantibiotics-antimicotics(Thermo Fisher Scientific社製、15240062)が添加された、高グルコース含有、およびグルタミン含有の培地(DMEM培地:Dulbecco's modified Eagle medium)培地等が用いられ得る。
【0039】
真核細胞の培養条件(例えば、培養温度、二酸化炭素濃度、細胞の数等)は、用いられる真核細胞に応じて適宜設定され得、限定されない。
【0040】
(真核細胞へのプラスミドの導入)
本発明の一実施形態において、真核細胞への、前記免疫応答制御エレメント、および当該免疫応答制御エレメントの制御下に発現可能に連結されたレポーター遺伝子を含むプラスミドの導入は、例えば、市販のトランスフェクション試薬を用いる手法、ウイルス(例えば、レンチウイルス、アデノウイルス等)を用いる手法によって行い得る。
【0041】
市販のトランスフェクション試薬としては、例えば、ポリエチレンイミン、リポフェクタミン(Thermo Fisher Scientific社製)、FuGENE(Promega社製)等が挙げられる。ウイルスを用いた市販のトランスフェクションキットとしては、third-generation packaging system mix(Applied Biological Materials社製、LV053)、Lentiviral High Titer Packaging Mix(タカラバイオ社製、6194)、CTS LV-MAXトランスフェクションキット(Thermo Fisher Scientific社製、A4132602)、等が挙げられる。
【0042】
前記免疫応答制御エレメント、および当該免疫応答制御エレメントの制御下に発現可能に連結されたレポーター遺伝子を含むプラスミドが導入された細胞は、選別、クローン化、細胞株の樹立、および/または、保存した後に使用されてもよい。
【0043】
(免疫応答制御エレメントを作動させる免疫応答誘導剤と真核細胞とを接触させる接触工程)
本発明の一実施形態において、免疫応答制御エレメント、および当該免疫応答制御エレメントの制御下に発現可能に連結されたレポーター遺伝子を含むプラスミドが導入された真核細胞と、前記免疫応答制御エレメントを作動させる免疫応答誘導剤と、を接触させる接触工程は、前記プラスミドが導入された真核細胞を細胞培養プレート、シャーレ、またはチャンバー等に播種した後、免疫応答制御エレメントを作動させる免疫応答誘導剤を、細胞培養プレート、シャーレ、またはチャンバー内の真核細胞および/または培地に添加(例えば、局所的に添加)することで実施されてよい。
【0044】
細胞培養プレート、シャーレ、またはチャンバー内の真核細胞および/または培地に免疫応答制御エレメントを作動させる免疫応答誘導剤を添加する方法としては、特に限定されず、注射針、マイクロニードル、ピペットチップ、インジェクター等であってよい。当該構成によれば、免疫応答誘導剤を局所的に添加することができ、その結果、マーカーの発現または消失が開始される領域を狭い領域に限定することができる。
【0045】
真核細胞に接触させる免疫応答誘導剤は、免疫応答制御エレメント、および、細胞の種類等に応じて、適宜選択することができる。
【0046】
免疫応答誘導剤としては、例えば、炎症性サイトカイン、微生物及びその構成成分を挙げることができる。免疫応答誘導剤としては、より具体的に、TNF-α(tumor necrosis factor-α)、リポポリサッカライド、IL-1(Interleukin-1)等を挙げることができる。
【0047】
〔1-2.観察工程〕
本発明の一実施形態において、前記レポーター遺伝子に由来するマーカーの発現を経時的に観察する観察工程としては、限定されず、マーカーの種類に応じて、適宜、観察工程を構成することができる。
【0048】
例えば、マーカーが蛍光である場合、観察工程は、(i)蛍光顕微鏡を用いたライブイメージング観察および撮像、および、(ii)撮像した画像を、画像解析ソフトウェア等を用いて解析すること、などによって構成され得る。画像解析ソフトウェアとしては、市販のImageJ等が挙げられる。
【0049】
前記観察工程では、前記マーカーの発現データに対して、キモグラフによる解析を行ってもよい。
【0050】
本明細書において、キモグラフ(カイモグラフ)解析とは、「任意の線上におけるマーカーの発現状態を時系列にとらえ、横軸にマーカーが発現する場所・位置、縦軸にマーカーが発現する時間をとって、そのマーカーの発現様式の移動状態(変化状態)を表示する解析」をいう。例えば、キモグラフ解析を用いる場合、細胞内で発現したGFP(GFP顆粒もしくは細胞質全体のGFP発現)の輝点が、経時的にどのように移動するか(例えば、移動時間、移動距離、移動速度、移動方向)を解析することが可能である。
【0051】
具体的には、任意の線上において、最初にGFPを発現した細胞の位置(P1)と時間(T1)とを第1点(反応開始箇所)とし、次にGFPを発現した細胞の位置(P2)と時間(T2)とを第2点とし、以降同様に、第n番目にGFPを発現した細胞の位置(Pn)と時間(Tn)とを第n点とする。例えば、(P1からP2までの距離)を(T1からT2までの時間)で割れば、第1点から第2点へ到達する免疫応答の伝播速度を算出することができる。第n点についても、同様の方法によって、第1点から第n点へ到達する免疫応答の伝播速度を算出することができる。
【0052】
〔2.抗炎症物質のスクリーニング方法〕
以下に、本発明の一実施形態の抗炎症物質のスクリーニング方法について説明する。なお、前記〔1.免疫応答の細胞間伝播の観察方法〕にて既に説明した構成については、ここでは、その説明を省略する。
【0053】
本発明の一実施形態において、抗炎症物質のスクリーニング方法は、免疫応答制御エレメント、および当該免疫応答制御エレメントの制御下に発現可能に連結されたレポーター遺伝子を含むプラスミドが導入された真核細胞と、前記免疫応答制御エレメントを作動させる免疫応答誘導剤と、を接触させて、炎症状態を準備する炎症誘導工程、および、前記炎症誘導工程において得られた炎症状態の前記真核細胞と、候補物質と、を接触させる接触工程、および、前記接触工程後の、前記レポーター遺伝子に由来するマーカーの発現を経時的に観察する観察工程、を含むものであってよい(抗炎症物質のスクリーニング方法の例1)。ここで、候補物質とは、抗炎症物質として作用する候補物質である被験物質をいう。
【0054】
例えば、前記炎症誘導工程において、細胞胞培養プレート、シャーレ、またはチャンバー等に真核細胞を播種しておき、細胞胞培養プレート、シャーレ、またはチャンバー内に免疫応答制御エレメントを作動させる免疫応答誘導剤を添加し、炎症状態の真核細胞を誘導する。その後、前記接触工程において、例えば、細胞胞培養プレート、シャーレ、またはチャンバー内に候補物質を添加することで、炎症状態の前記真核細胞と、前記候補物質とを接触させる。その後、前記観察工程において、前記レポーター遺伝子に由来するマーカーの発現を経時的に観察・解析する。
【0055】
観察工程において、マーカーの発現(例えば、発現の伝播(例えば、発現の伝播速度、発現の伝播距離))に変化が見られれば、候補物質は抗炎症物質であると判定することができる。例えば、免疫応答制御エレメントとしてエンハンサーを用いる場合、観察工程においてマーカーの発現の減少が見られれば、候補物質は抗炎症物質であると判定することができる。一方、免疫応答制御エレメントとしてサイレンサーを用いる場合、観察工程においてマーカーの発現の増加が見られれば、候補物質は抗炎症物質であると判定することができる。
【0056】
本発明の一実施形態において、抗炎症物質のスクリーニング方法は、免疫応答制御エレメント、および当該免疫応答制御エレメントの制御下に発現可能に連結されたレポーター遺伝子を含むプラスミドが導入された真核細胞と、前記免疫応答制御エレメントを作動させる免疫応答誘導剤と、候補物質と、を接触させる接触工程、および、前記接触工程後の、前記レポーター遺伝子に由来するマーカーの発現を経時的に観察する観察工程、を含むものであってよい(抗炎症物質のスクリーニング方法の例2)。ここで、候補物質とは、抗炎症物質として作用する候補物質である被験物質をいう。
【0057】
例えば、前記接触工程において、細胞胞培養プレート、シャーレ、またはチャンバー等に真核細胞を播種しておき、細胞胞培養プレート、シャーレ、またはチャンバー内に免疫応答制御エレメントを作動させる免疫応答誘導剤、および、候補物質を添加することで、真核細胞と免疫応答誘導剤と候補物質とを接触させる。このとき、候補物質が抗炎症物質ではない場合には、炎症状態の真核細胞が誘導される。一方、候補物質が抗炎症物質である場合には、炎症状態の真核細胞が誘導されない。その後、前記観察工程において、前記接触工程後の真核細胞における、前記レポーター遺伝子に由来するマーカーの発現を経時的に観察・解析する。
【0058】
観察工程において、マーカーの発現(例えば、発現の伝播)の有無に基づいて、候補物質は抗炎症物質であると判定することができる。例えば、免疫応答制御エレメントとしてエンハンサーを用いる場合、観察工程においてマーカーの発現が観察されなければ、候補物質は抗炎症物質であると判定することができる。一方、免疫応答制御エレメントとしてサイレンサーを用いる場合、観察工程においてマーカーの発現が観察されれば、候補物質は抗炎症物質であると判定することができる。
【0059】
本発明の一実施形態において、抗炎症物質のスクリーニング方法は、免疫応答制御エレメント、および当該免疫応答制御エレメントの制御下に発現可能に連結されたレポーター遺伝子を含むプラスミドが導入された真核細胞と、候補物質と、を接触させる候補物質接触工程、および、前記候補物質接触工程にて前記候補物質と接触した前記真核細胞と、前記免疫応答制御エレメントを作動させる免疫応答誘導剤と、を接触させて、炎症状態を準備する炎症誘導工程、および、前記炎症誘導工程後の、前記レポーター遺伝子に由来するマーカーの発現を経時的に観察する観察工程、を含むものであってよい(抗炎症物質のスクリーニング方法例3)。ここで、候補物質とは、抗炎症物質として作用する候補物質である被験物質をいう。
【0060】
例えば、前記候補物質接触工程において、細胞胞培養プレート、シャーレ、またはチャンバー等に真核細胞を播種しておき、細胞胞培養プレート、シャーレ、またはチャンバー内に候補物質を添加することで、前記真核細胞と前記候補物質とを接触させる。その後、炎症誘導工程において、細胞胞培養プレート、シャーレ、またはチャンバー内に、免疫応答制御エレメントを作動させる免疫応答誘導剤を添加し、炎症を誘導する。このとき、候補物質が抗炎症物質ではない場合には、炎症状態の真核細胞が誘導される。一方、候補物質が抗炎症物質である場合には、炎症状態の真核細胞が誘導されない。その後、前記観察工程において、前記炎症誘導工程後の真核細胞における、前記レポーター遺伝子に由来するマーカーの発現を経時的に観察・解析する。
【0061】
観察工程において、マーカーの発現(例えば、発現の伝播)の有無に基づいて、候補物質は抗炎症物質であると判定することができる。例えば、免疫応答制御エレメントとしてエンハンサーを用いる場合、観察工程においてマーカーの発現が観察されなければ、候補物質は抗炎症物質であると判定することができる。一方、免疫応答制御エレメントとしてサイレンサーを用いる場合、観察工程においてマーカーの発現が観察されれば、候補物質は抗炎症物質であると判定することができる。
【0062】
前記レポーター遺伝子は、蛍光レポーター遺伝子であってもよい。また、前記観察工程では、前記マーカーの発現データに対して、キモグラフによる解析を行ってもよい。レポーター遺伝子、および、キモグラフ解析については、前記〔1.免疫応答の細胞間伝播の観察方法〕にて既に説明した構成については、ここでは、その説明を省略する。
【0063】
本発明の抗炎症物質のスクリーニング方法では、例えば、既知の抗炎症物質を添加したときの真核細胞におけるレポーター遺伝子に由来するマーカーの発現の挙動(発現の強度の比較、および発現の強度、伝達距離、伝達速度の経時的変化等)と、候補物質を添加したときの真核細胞におけるレポーター遺伝子に由来するマーカーの発現の挙動とを比較することによって、候補物質が抗炎症物質であるか否か判定してもよい。
【0064】
本発明の抗炎症物質のスクリーニング方法では、例えば、候補物質の存在下における真核細胞におけるレポーター遺伝子に由来するマーカーの発現の挙動(発現の強度の比較、および発現の強度、伝達距離、伝達速度の経時的変化等)と、候補物質の非存在下における真核細胞におけるレポーター遺伝子に由来するマーカーの発現の挙動とを比較することによって、候補物質が抗炎症物質であるか否か判定してもよい。
【実施例0065】
本発明の実施例について、以下に説明する。
【0066】
〔1:免疫応答制御エレメント、および当該免疫応答制御エレメントの制御下に発現可能に連結されたレポーター遺伝子を含むプラスミドが導入された真核細胞の作製〕
<細胞培養>
HEK293T細胞(ヒト胚性腎臓細胞株)およびHaCaT細胞(ヒト表皮角化細胞株)を播種し、10%ウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum(FBS)、Thermo Fisher Scientific社製、10270-106)および1%のantibiotic-antimycotic(Thermo Fisher Scientific社製、15240062)を含むDMEM培地(Merck社製、D4629)中で、37℃、5%CO2条件下にて培養した。2~3日ごとに新鮮な培地に交換し、各細胞が90%コンフルエントになった時点で継代した。
【0067】
<HaCaT-NF-κB-GFP細胞株の樹立>
5×104個のHEK293T細胞を24ウェルプレートに播種した。(i)抗生物質を含まない、無血清のOpti MEM培地(Thermo Fisher Scientific社製、51985034)1mL、(ii)10μgのpGreenFire 2.0 NFκB Reporter Lentivector(pGF2-NFκB-rFluc-T2A-GFP-mPGK-Puro, TR412PA-P, System Biosciences, LLC, Palo Alto, CA)、(iii)10μgのthird-generation packaging system mix(Applied Biological Materials社製、LV053)、および、(iv)40μgのポリエチレンイミン(PEI, 24765-2, Polysciences, PA)を用いて、トランスフェクションを行った。
【0068】
なお、pGreenFire 2.0 NFκB Reporter Lentivectorは、免疫応答制御エレメントとしてNF-κB TREを有し、レポーター遺伝子としてGFP遺伝子(データベースGenBankのアクセッション番号:L29345を参照)を有し、プロモーターとしてCMVプロモーターを有している。
【0069】
トランスフェクションミックスを翌日に除去し、新鮮な培地に交換した。レンチウイルスを含有している培地を、トランスフェクション後48時間および72時間の2回採取した。回収した培地は、0.45μm孔のPVDF膜(Merck社製、SLHVR33RB)で濾過した。
【0070】
HaCaT細胞に8μg/mLのpolybrene(Santa Cruz Biotechnology社製、sc-134220)を添加したウイルス含有培地を加え、感染倍率(MOI)=5となるようにしてウイルスを感染させた。
【0071】
ウイルス(ウイルスベクター)が導入された細胞の薬物選択を行うため、1μg/mLのpuromycinを含有する培地にて、細胞を4日間処理した。選択した細胞をサブカルチャーした後、当該細胞を0.25%トリプシンを含む10mM EDTA溶液で処理して回収した後、BD FACSAria(商標)II(Becton Dickinson社製)を用いて、GFP蛍光強度が高い細胞をソーティングした。
【0072】
限界希釈クローニング(LDC)によって単細胞のクローニングを行い、安定な細胞株の樹立を行った。
【0073】
以上の工程により、HaCaT-NF-κB-GFP細胞株(クローンF3)を樹立し、以下の解析に使用した。
【0074】
<導入細胞のライブイメージング>
GFP顆粒の発現レベルが高いHaCaT細胞のクローンF3細胞株、またはGFP顆粒の発現レベルが低いD4細胞株をμ-Slide 18 Well(Ibidi社製、ib81816)または96 well plate(Corning社製、353072)に播種した。細胞撮影直前に100ng/mLのTNF-α(Peprotech社製、AF-300-01A)をμ-Slide 18 Wellまたは96 well plateに添加し、撮影を開始した。
【0075】
共焦点タイムラプス画像はBZ-X800(キーエンス社製)またはCell Voyager 8000(横河電機社製)により取得した。2次元画像は、Z次元の最大輝度投影から作成し、時間次元でアラインメントした。Time-lapse Module(キーエンス社製)またはCellPathfinder(横河電機社製)により、タイムラプス動画を作成した(
図1参照)。
【0076】
<キモグラフを用いたGFP顆粒の拡大解析>
TNF-α刺激に応じたNFκBのシグナル応答によりGFP顆粒を発現するHaCaT-NF-κB-GFP細胞株のクローンF3における、GFP顆粒を有する領域の拡大を解析するために、ImageJソフトウェアを用いて、キモグラフによる動画解析を行った。
【0077】
まず、GFP顆粒をより明確に識別するために、動画をグレースケールに変換した。次に、GFP顆粒が存在している領域が拡大してゆく方向に向かって線を引き(
図2-1を参照)、その線上のGFPの輝度を時間の関数として画像化した。キモグラフ動画解析の結果の像では、検知されたGFP顆粒が縦の線として示された。GFP顆粒が存在している領域が拡大してゆく方向に沿った10種類のライン(表1のサンプルNo.1~10を参照)上のGFP顆粒の明るさを表すキモグラフ像を作成した。最後に、検知されたGFP顆粒の各々を表す縦線の始点(換言すれば、GFPの輝度値が規定値以上となった時点)を結ぶ線の傾きから、GFP顆粒の領域が拡大する速度を測定した(
図2-2を参照)。GFP顆粒の領域が拡大する速度の測定結果を表1に示した。なお、
図2-1に示す線に対応するデータは、表1のサンプルNo.1である。
【0078】
【0079】
上述した試験結果から、本発明によれば免疫応答の細胞間伝播の速度の観察(測定)が可能であり、当該速度は、観察している領域内の様々な位置において一定であることが明らかになった。
本発明は、免疫応答の評価の分野、より具体的に、インビトロにおける免疫応答性のヘテロジェナイティ、細胞間のインタラクション解析に利用することができる。さらには抗炎症化粧品や抗炎症薬剤の評価に利用することができる。