(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092787
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】積層体および積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/34 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
B32B27/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208941
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100172605
【弁理士】
【氏名又は名称】岩木 郁子
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 佳久
(72)【発明者】
【氏名】池内 淳一
(72)【発明者】
【氏名】大松 一喜
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA01C
4F100AG00A
4F100AH06B
4F100AK17B
4F100AK17C
4F100AK49B
4F100AK49C
4F100AK50B
4F100AK50C
4F100AL05B
4F100AL05C
4F100AT00A
4F100BA03
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4F100BA10A
4F100BA10C
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EJ42B
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4F100EJ67B
4F100GB41
4F100JK06
4F100JK17
4F100JN01
4F100JN18
4F100JN30
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】ガラスなどの基材に対して高い密着性を有する樹脂層を含む積層体であって、表示装置などに組み込んだ際の視認性が高い積層体を提供することを課題とする。
【解決手段】基材層と、該基材層に直接積層された第1ポリイミド系樹脂層と、該第1ポリイミド系樹脂層の該基材層に接する面とは反対側の面に直接積層された第2ポリイミド系樹脂層とを含む積層体であって、
前記第1ポリイミド系樹脂層は、ポリイミド系樹脂(a1)と、シランカップリング剤(b1)とを含む樹脂組成物(1)から形成されてなり、
前記第2ポリイミド系樹脂層は、ポリイミド系樹脂(a2)を含む樹脂組成物(2)から形成されてなる、
積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、該基材層に直接積層された第1ポリイミド系樹脂層と、該第1ポリイミド系樹脂層の該基材層に接する面とは反対側の面に直接積層された第2ポリイミド系樹脂層とを含む積層体であって、
前記第1ポリイミド系樹脂層は、ポリイミド系樹脂(a1)と、シランカップリング剤(b1)とを含む樹脂組成物(1)から形成されてなり、
前記第2ポリイミド系樹脂層は、ポリイミド系樹脂(a2)を含む樹脂組成物(2)から形成されてなる、
積層体。
【請求項2】
シランカップリング剤(b1)は、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基およびジカルボン酸無水物基の少なくとも何れかを有する、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
シランカップリング剤(b1)は、アミノ基を有するシランカップリング剤を含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
シランカップリング剤(b1)は、エポキシ基を有するシランカップリング剤をさらに含む、請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
樹脂組成物(1)に含まれるシランカップリング剤(b1)の量は、ポリイミド系樹脂(a1)100質量部に対して0.1質量部以上8質量部以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
ポリイミド系樹脂(a1)およびポリイミド系樹脂(a2)はフッ素原子を含有する、請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
YIが2.0以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
第2ポリイミド系樹脂層は無機粒子をさらに含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項9】
基材層はガラス層である、請求項1に記載の積層体。
【請求項10】
フレキシブル表示装置の前面板用の積層体である、請求項1に記載の積層体。
【請求項11】
(a)ポリイミド系樹脂(a1)とシランカップリング剤(b1)とを含む樹脂組成物(1)を基材に塗布して第1塗膜を形成する工程、
(b)第1塗膜を加熱する工程、
(c)加熱後の第1塗膜の層上に、ポリイミド系樹脂(a2)を含む樹脂組成物(2)を塗布して第2塗膜を形成する工程、および
(d)第2塗膜を加熱して、積層体を得る工程
を少なくとも含む、請求項1~10のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体および積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子表示装置などの装置において、無機ガラスや透明樹脂フィルムなどの基材が使用されている。このような基材は、光学特性の向上や、機械特性の強化、補強などの種々の目的で、該基材に樹脂フィルムを積層させた積層体として使用される場合がある。
【0003】
例えば、無機ガラスとも称されるガラス基材も電子表示装置などに使用されているが、ガラス基材は硬く割れやすい性質を有するため、ガラス基材に樹脂フィルムを積層させ、ガラス基材の耐衝撃性と割れたときの飛散防止機能を持たせることが行われている。このような目的で基材と組み合わせて使用される樹脂フィルムとして、種々のものが使用され提案されている。
【0004】
例えば特許文献1には、溶液塗工により薄板ガラス上に樹脂層を形成して透明基板を得る方法、および、接着層を介して薄板ガラス上に樹脂フィルムを貼着することにより樹脂層を形成して透明基板を得る方法が記載されている。特許文献2には、末端に水酸基を有する熱可塑性樹脂とエポキシ基末端カップリング剤を含むキャスティング溶液を無機ガラスの上に塗布することにより、ガラス上に熱可塑性樹脂層を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-88789号公報
【特許文献2】国際公開第2010/053092号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子表示装置において使用される基材、特にガラス基材に、樹脂層を積層させて使用する場合、樹脂層と基材とが強く密着していることが求められる。さらに、表示装置に組み込まれた際の高い視認性が求められる。
【0007】
したがって、本発明は、ガラスなどの基材に対して高い密着性を有する樹脂層を含む積層体であって、表示装置などに組み込んだ際の視認性が高い積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定のポリイミド系樹脂層を有する積層体によって、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明には、以下の態様が含まれる。
【0009】
〔1〕基材層と、該基材層に直接積層された第1ポリイミド系樹脂層と、該第1ポリイミド系樹脂層の該基材層に接する面とは反対側の面に直接積層された第2ポリイミド系樹脂層とを含む積層体であって、
前記第1ポリイミド系樹脂層は、ポリイミド系樹脂(a1)と、シランカップリング剤(b1)とを含む樹脂組成物(1)から形成されてなり、
前記第2ポリイミド系樹脂層は、ポリイミド系樹脂(a2)を含む樹脂組成物(2)から形成されてなる、
積層体。
〔2〕シランカップリング剤(b1)は、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基およびジカルボン酸無水物基の少なくとも何れかを有する、〔1〕に記載の積層体。
〔3〕シランカップリング剤(b1)は、アミノ基を有するシランカップリング剤を含む、〔1〕または〔2〕に記載の積層体。
〔4〕シランカップリング剤(b1)は、エポキシ基を有するシランカップリング剤をさらに含む、〔3〕に記載の積層体。
〔5〕樹脂組成物(1)に含まれるシランカップリング剤(b1)の量は、ポリイミド系樹脂(a1)100質量部に対して0.1質量部以上8質量部以下である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の積層体。
〔6〕ポリイミド系樹脂(a1)およびポリイミド系樹脂(a2)はフッ素原子を含有する、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の積層体。
〔7〕YIが2.0以下である、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の積層体。
〔8〕第2ポリイミド系樹脂層は無機粒子をさらに含む、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の積層体。
〔9〕基材層はガラス層である、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の積層体。
〔10〕フレキシブル表示装置の前面板用の積層体である、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の積層体。
〔11〕(a)ポリイミド系樹脂(a1)とシランカップリング剤(b1)とを含む樹脂組成物(1)を基材に塗布して第1塗膜を形成する工程、
(b)第1塗膜を加熱する工程、
(c)加熱後の第1塗膜の層上に、ポリイミド系樹脂(a2)を含む樹脂組成物(2)を塗布して第2塗膜を形成する工程、および
(d)第2塗膜を加熱して、積層体を得る工程
を少なくとも含む、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガラス層などの基材に対して高い密着性を有する、樹脂層を含む積層体であって、基材と組み合わせた際にも視認性が十分に高い積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】樹脂層とガラス層との間の剥離強度の測定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更をすることができる。また、特定のパラメータについて複数の上限値および下限値が記載されている場合、これらの上限値および下限値のうち任意の上限値と下限値とを組合せて好適な数値範囲とすることができる。
【0013】
本発明の積層体は、基材層と、該基材層に直接積層された第1ポリイミド系樹脂層と、該第1ポリイミド系樹脂層の該基材層に接する面とは反対側の面に直接積層された第2ポリイミド系樹脂層とを含む積層体であって、
前記第1ポリイミド系樹脂層は、ポリイミド系樹脂(a1)と、シランカップリング剤(b1)とを含む樹脂組成物(1)から形成されてなり、
前記第2ポリイミド系樹脂層は、ポリイミド系樹脂(a2)を含む樹脂組成物(2)から形成されてなる、
積層体である。
【0014】
第1ポリイミド系樹脂層は、ポリイミド系樹脂(a1)と、シランカップリング剤(b1)とを含む樹脂組成物(1)から形成されてなり、第2ポリイミド系樹脂層は、ポリイミド系樹脂(a2)を含む樹脂組成物(2)から形成されてなる。樹脂組成物(1)に含まれるポリイミド系樹脂(a1)と樹脂組成物(2)に含まれるポリイミド系樹脂(a2)とは、互いに同一のポリイミド系樹脂であってもよいし、異なるポリイミド系樹脂であってもよい。樹脂組成物(1)は、1種類のポリイミド系樹脂(a1)を含有してもよいし、2種以上のポリイミド系樹脂(a1)を含有してもよい。また、樹脂組成物(1)は、1種類のシランカップリング剤(b1)を含有してもよいし、2種以上のシランカップリング剤(b1)を含有してもよい。樹脂組成物(2)は、1種類のポリイミド系樹脂(a2)を含有してもよいし、2種以上のポリイミド系樹脂(a2)を含有してもよい。
【0015】
樹脂組成物(1)と樹脂組成物(2)とは、互いに同一の樹脂組成物であっても、異なる樹脂組成物であってもよいが、好ましくは樹脂組成物(1)と樹脂組成物(2)とは異なる組成の組成物である。より好ましい一態様において、樹脂組成物(1)は、ポリイミド系樹脂(a1)と、シランカップリング剤(b1)とを含む組成物であり、樹脂組成物(2)は、ポリイミド系樹脂(a2)を含む組成物であり、シランカップリング剤を含まないか、または、シランカップリング剤を樹脂組成物(1)におけるシランカップリング剤(b1)の含有量よりも少ない量で含有する組成物である。
【0016】
(ポリイミド系樹脂)
樹脂組成物(1)はポリイミド系樹脂(a1)を含み、樹脂組成物(2)はポリイミド系樹脂(a2)を含む。本明細書において、ポリイミド系樹脂(a1)およびポリイミド系樹脂(a2)をあわせて単に「ポリイミド系樹脂」とも称する。ポリイミド系樹脂とは、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂またはポリイミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸樹脂である。ポリイミド系樹脂は、第1ポリイミド系樹脂層と基材層との密着性、透明性、耐屈曲性の向上や樹脂層の黄変抑制の観点から、好ましくはポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂であり、より好ましくはポリアミドイミド樹脂である。ポリイミド系樹脂(a1)とポリイミド系樹脂(a2)は、互いに同一のポリイミド系樹脂であってもよいし、異なるポリイミド系樹脂であってもよい。
【0017】
ポリイミド系樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量は、積層体における基材層保護効果の向上、経時的な黄変抑制、耐屈曲性の向上の観点からは、好ましくは100,000以上、より好ましくは130,000以上、さらに好ましくは150,000以上、さらにより好ましくは180,000以上である。また、ポリイミド系樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量は、ワニスの製造しやすさや、高分子材料を製造する際の成膜性の観点からは、好ましくは800,000以下、より好ましくは600,000以下、さらに好ましくは500,000以下、さらにより好ましくは450,000以下である。上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により測定される。測定条件としては、実施例に記載する条件を使用してよい。
【0018】
本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂(ポリイミド系樹脂(a1)および/またはポリイミド系樹脂(a2))は、式(1):
【化1】
[式(1)中、Xは2価の有機基を表し、Yは4価の有機基を表し、*は結合手を表す]
で表される構成単位を含むポリイミド樹脂であるか、または、式(1)で表される構成単位および式(2):
【化2】
[式(2)中、XおよびZは、互いに独立に、2価の有機基を表し、*は結合手を表す]
で表される構成単位を含むポリアミドイミド樹脂であることが好ましい。ポリイミド系樹脂は、第1ポリイミド系樹脂層と基材層との密着性、第1ポリイミド系樹脂層と第2ポリイミド系樹脂層との密着性、積層体の透明性および耐屈曲性の向上、積層体の黄変抑制の観点から、式(1)で表される構成単位を少なくとも有することが好ましく、式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位を有するポリアミドイミド樹脂であることがより好ましい。以下において式(1)および式(2)について説明するが、式(1)についての説明は、ポリイミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂の両方に関し、式(2)についての説明は、ポリアミドイミド樹脂に関する。
【0019】
式(1)で表される構成単位は、テトラカルボン酸化合物とジアミン化合物とが反応して形成される構成単位であり、式(2)で表される構成単位は、ジカルボン酸化合物とジアミン化合物とが反応して形成される構成単位である。
【0020】
ポリイミド系樹脂が、式(1)で表される構成単位を有するポリイミド樹脂であるか、または、式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位を有するポリアミドイミド樹脂である本発明の一態様において、式(1)中のYは、互いに独立に、4価の有機基を表し、好ましくは炭素数4~40の4価の有機基を表す。前記有機基は、有機基中の水素原子が炭化水素基またはフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基であり、その場合、炭化水素基およびフッ素置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1~8である。本発明の一実施態様である上記ポリイミド系樹脂は、式(1)で表される複数の構成単位を含み得、これらの構成単位中のYは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。Yとしては、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)または式(29)で表される基;それらの式(20)~式(29)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基またはトリフルオロメチル基で置換された基;並びに4価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。
【0021】
【0022】
[式(20)~式(29)中、*は結合手を表し、
W1は、単結合、-O-、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-Ar-、-SO2-、-CO-、-O-Ar-O-、-Ar-O-Ar-、-Ar-CH2-Ar-、-Ar-C(CH3)2-Ar-、-Ar-SO2-Ar-または-CO-O-Ar-O-CO-を表す。Arは、水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数6~20のアリーレン基を表し、具体例としてはフェニレン基またはビフェニレン基が挙げられる。]
【0023】
式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)および式(29)で表される基の中でも、積層体の透明性および耐屈曲性の向上、ならびに、積層体の黄変抑制の観点から、式(20)~式(27)で表される基が好ましく、式(26)で表される基がより好ましい。また、W1は、積層体の透明性および耐屈曲性の向上、ならびに、積層体の黄変抑制の観点から、互いに独立に、単結合、-O-、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-または-C(CF3)2-であることが好ましく、単結合、-O-、-CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-または-C(CF3)2-であることがより好ましく、単結合、-O-、-C(CH3)2-または-C(CF3)2-であることがさらに好ましく、-O-または-C(CF3)2-であることがことさら好ましい。
【0024】
上記態様において、式(1)で表される複数の構成単位におけるYの少なくとも一部は、式(5)で表される構成単位であることが好ましい。式(1)で表される複数の構成単位におけるYの少なくとも一部が式(5)で表される基であると、積層体の透明性を高めやすい。また、高い屈曲性骨格に由来して、該ポリイミド系樹脂の溶媒への溶解性を向上し、ポリイミド系樹脂を含む樹脂組成物(1)および/または樹脂組成物(2)の粘度を低く抑制することができ、積層体の製造を容易にすることができると共に、得られる積層体の光学特性を向上させやすい。
【化4】
[式(5)中、R
18~R
25は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表し、R
18~R
25に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
*は結合手を表す。]
【0025】
式(5)において、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表し、好ましくは水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表す。炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基および炭素数6~12のアリール基としては、式(3)における炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基または炭素数6~12のアリール基として後述するものが挙げられる。ここで、R18~R25に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい。R18~R25は、積層体の透明性および耐屈曲性の向上、ならびに、積層体の黄変抑制の観点から、互いに独立に、さらに好ましくは水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基またはトリフルオロメチル基であり、特に好ましくは水素原子またはトリフルオロメチル基である。
【0026】
本発明の好適な実施態様においては、式(5)で表される構成単位は、式(5’)で表される基であり、すなわち、Yの少なくとも一部は、式(5’)で表される構成単位である。この場合、該ポリイミド系樹脂を含む樹脂組成物から形成されてなる樹脂層を含む積層体は、高い透明性を有することができる。
【化5】
[式(5’)中、*は結合手を表す]
【0027】
本発明の好適な実施態様において、上記ポリイミド系樹脂中のYの、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上が式(5)、特に式(5’)で表される。上記ポリイミド系樹脂における上記範囲内のYが式(5)、特に式(5’)で表されると、該ポリイミド系樹脂を含んでなるフィルムは高い透明性を有することができ、さらにフッ素元素を含有する骨格により該ポリイミド系樹脂の溶媒への溶解性を向上し、ポリイミド系樹脂を含むワニスの粘度を低く抑制することができ、またフィルムの製造が容易である。なお、好ましくは、上記ポリイミド系樹脂中のYの100モル%以下が式(5)、特に式(5’)で表される。上記ポリイミド系樹脂中のYは式(5)、特に式(5’)であってもよい。上記ポリイミド系樹脂中のYの式(5)で表される構成単位の含有率は、例えば1H-NMRを用いて測定することができ、または原料の仕込み比から算出することもできる。
【0028】
ポリイミド系樹脂が式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位を有するポリアミドイミド樹脂である本発明の一態様において、式(2)中のZは、互いに独立に、2価の有機基を表し、好ましくは、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数6~12のアリール基、(これらの基における水素原子はハロゲン原子、好ましくはフッ素原子で置換されていてもよい)で置換されていてもよい、炭素数4~40の2価の有機基を表し、さらに好ましくは炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数6~12のアリール基(これらの基における水素原子はハロゲン原子、好ましくはフッ素原子で置換されていてもよい)で置換されていてもよい、環状構造を有する炭素数4~40の2価の有機基を表す。なお、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数6~12のアリール基の例としては、後述する式(3)中のR1~R8に関する例示が同様にあてはまる。環状構造としては、脂環、芳香環、ヘテロ環構造が挙げられる。本発明の一実施形態において、ポリアミドイミド樹脂は、複数種のZを含み得、複数種のZは、互いに同一であっても異なっていてもよい。前記2価の有機基は、好ましくは炭素数4~40の2価の有機基を表す。前記有機基は、炭化水素基またはフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよく、その場合、炭化水素基およびフッ素置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1~8である。Zの有機基としては、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)または式(29)で表される基の結合手のうち、隣接しない2つが水素原子に置き換わった基並びに炭素数6以下の2価の鎖式炭化水素基が例示される。フィルムの光学特性を向上、例えばYI値を低減しやすい観点から、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)または式(29)で表される基の結合手のうち、隣接しない2つが水素原子に置き換わった基で表される基が好ましい。本発明の一実施形態において、ポリアミドイミド樹脂は、Zとして1種類の有機基を含んでいてもよいし、2種類以上の有機基を含んでいてもよい。
【0029】
Zの有機基としては、式(20’)、式(21’)、式(22’)、式(23’)、式(24’)、式(25’)、式(26’)、式(27’)、式(28’)および式(29’):
【化6】
[式(20’)~式(29’)中、W
1および*は、式(20)~式(29)において定義する通りである]
で表される2価の有機基がより好ましい。なお、式(20)~式(29)および式(20’)~式(29’)における環上の水素原子は、炭素数1~8の炭化水素基、フッ素置換された炭素数1~8の炭化水素基、炭素数1~6のアルコキシ基、フッ素置換された炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数6~12のアリール基(これらの基における水素原子はハロゲン原子、好ましくはフッ素原子で置換されていてもよい)で置換されていてもよい。
【0030】
ポリアミドイミド樹脂が、式(2)中のZが上記の式(20’)~式(29’)のいずれかで表される構成単位を有する場合、ポリアミドイミド樹脂は、該構成単位に加えて、次の式(d1):
【化7】
[式(d1)中、R
24は、互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基または炭素数6~12のアリール基を表し、R
25は、R
24または-C(=O)-*を表し、*は結合手を表す]
で表されるカルボン酸由来の構成単位をさらに有することが、樹脂組成物の粘度を低くしやすく、樹脂組成物の成膜性を高めやすく、得られる樹脂層の均一性を高めやすい観点から好ましい。
【0031】
R24において、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基および炭素数6~12のアリール基としては、それぞれ、後述する式(3)中のR1~R8に関して例示のものが挙げられる。構成単位(d1)としては、具体的には、R24およびR25がいずれも水素原子である構成単位(ジカルボン酸化合物に由来する構成単位)、R24がいずれも水素原子であり、R25が-C(=O)-*を表す構成単位(トリカルボン酸化合物に由来する構成単位)等が挙げられる。
【0032】
本発明の一実施形態において、ポリアミドイミド樹脂は、複数種のZを含み得、複数種のZは、互いに同一であっても異なっていてもよい。特に、得られる積層体の透明性および耐屈曲性を向上しやすい観点から、Zの少なくとも一部が、式(3a):
【化8】
[式(3a)中、R
gおよびR
hは、互いに独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、または炭素数6~12のアリール基を表し、R
gおよびR
hに含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、A、mおよび*は式(3)中のA、mおよび*と同じであり、tおよびuは互いに独立に0~4の整数である]
で表されることが好ましく、式(3):
【化9】
[式(3)中、R
1~R
8は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、または炭素数6~12のアリール基を表し、R
1~R
8に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
Aは、互いに独立に、単結合、-O-、-CH
2-、-CH
2-CH
2-、-CH(CH
3)-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-SO
2-、-S-、-CO-または-N(R
9)-を表し、R
9は水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表し、
mは0~4の整数であり、
*は結合手を表す]
で表されることがより好ましい。
【0033】
式(3)および式(3a)において、Aは、互いに独立に、単結合、-O-、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-SO2-、-S-、-CO-または-N(R9)-を表し、得られる積層体におけるガラスがフレキシブルガラスである場合に、該積層体の耐屈曲性を高めやすい観点から、好ましくは-O-または-S-を表し、より好ましくは-O-を表す。
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、または炭素数6~12のアリール基を表す。RgおよびRhは、互いに独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、または炭素数6~12のアリール基を表す。炭素数1~6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-メチル-ブチル基、3-メチルブチル基、2-エチル-プロピル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。炭素数1~6のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。炭素数6~12のアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。樹脂組成物から得られる樹脂層の表面硬度および積層体の柔軟性の観点から、R1~R8は、互いに独立に、好ましくは水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、さらに好ましくは水素原子を表す。ここで、R1~R8、RgおよびRhに含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
R9は水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表す。炭素数1~12の1価の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-メチル-ブチル基、3-メチルブチル基、2-エチル-プロピル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられ、これらはハロゲン原子で置換されていてもよい。前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。ポリイミド系樹脂は、複数種のAを含み得、複数種のAは、互いに同一でよく、異なっていてもよい。
【0034】
式(3a)中のtおよびuは、互いに独立に、0~4の整数であり、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0または1、さらにより好ましくは0である。
【0035】
式(3)および式(3a)において、mは、0~4の範囲の整数であり、mがこの範囲内であると、樹脂組成物の安定性、および、樹脂層を含む積層体の耐屈曲性や弾性率が良好になりやすい。また、式(3)および式(3a)において、mは、好ましくは0~3の範囲の整数、より好ましくは0~2の範囲の整数、さらに好ましくは0または1、さらにより好ましくは0である。mがこの範囲内であると、積層体の耐屈曲性や弾性率を向上させやすい。また、Zは、式(3)または式(3a)で表される構成単位を1種または2種類以上含んでいてもよく、樹脂層の弾性率、積層体の耐屈曲性の向上、YI値低減の観点、積層体の黄変抑制の観点から、特にmの値が異なる2種類以上の構成単位、好ましくはmの値の異なる2種類または3種類の構成単位を含んでいてもよい。その場合、樹脂組成物から形成されてなる樹脂層の高い弾性率、積層体の高い耐屈曲性および低いYI値を発現しやすい観点から、樹脂がZにおいて、mが0である式(3)または式(3a)で表される構成単位を含有することが好ましく、該構成単位に加えてmが1である式(3)または式(3a)で表される構成単位をさらに含有することがより好ましい。また、mが0である式(3)で表されるZを有する式(2)で表される構成単位に加えて、上記の式(d1)で表される構成単位をさらに有することも好ましい。
【0036】
本発明の好ましい一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、式(3)で表される構成単位として、m=0であり、かつR5~R8が、互いに独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基である構成単位を有する。
本発明のより好ましい一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、式(3)で表される構成単位として、mが0であり、かつR5~R8が、互いに独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基である構成単位を有する。この場合、樹脂層の表面硬度を高めやすい。
【0037】
本発明の別の好ましい一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、式(3)で表される構成単位として、m=0であり、かつR
5~R
8が水素原子である構成単位に加えて、式(3’):
【化10】
で表される構成単位を有していてもよい。この場合、樹脂層の表面硬度および耐屈曲性を向上させやすく、また、積層体のYI値を低減しやすい。
【0038】
本発明の好ましい一実施形態において、ポリイミド系樹脂がポリアミドイミド樹脂である場合に、式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位の合計を100モル%としたときに、式(3)または式(3a)で表される構成単位の割合は、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上、さらにより好ましくは50モル%以上、とりわけ好ましくは60モル%以上であり、好ましくは90モル%以下、より好ましくは85モル%以下、さらに好ましくは80モル%以下、さらにより好ましくは75モル%以下である。式(3)または式(3a)で表される構成単位の割合が上記の下限以上であると、第1ポリイミド系樹脂層と基材層との密着性、第1ポリイミド系樹脂層と第2ポリイミド系樹脂層との密着性、ならびに積層体の透明性や耐屈曲性を高めやすい。式(3)または式(3a)で表される構成単位の割合が上記の上限以下であると、式(3)または式(3a)由来のアミド結合間水素結合による樹脂組成物の粘度上昇を抑制し、樹脂組成物の加工性を向上しやすい。
【0039】
また、ポリイミド系樹脂がポリアミドイミド樹脂であって、ポリアミドイミド樹脂がm=1~4である式(3)または式(3a)の構成単位を有する場合、ポリアミドイミド樹脂の式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位の合計を100モル%としたときに、mが1~4である式(3)または式(3a)の構成単位の割合は、好ましくは2モル%以上、より好ましくは4モル%以上、さらに好ましくは6モル%以上、さらにより好ましくは8モル%以上であり、好ましくは70モル%以下、より好ましくは50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下、さらにより好ましくは15モル%以下、ことさら好ましくは12モル%以下である。mが1~4である式(3)または式(3a)の構成単位の割合が上記の下限以上であると、第1ポリイミド系樹脂層と基材層との密着性、第1ポリイミド系樹脂層と第2ポリイミド系樹脂層との密着性、積層体の透明性や耐屈曲性を高めやすい。mが1~4である式(3)または式(3a)の構成単位の割合が上記の上限以下であると、式(3)または式(3a)由来のアミド結合間水素結合による樹脂組成物の粘度上昇を抑制し、積層体を製造しやすい。なお、式(1)、式(2)、式(3)または式(3a)で表される構成単位の含有量は、例えば1H-NMRを用いて測定することができ、または原料の仕込み比から算出することもできる。
【0040】
本発明の好ましい一実施形態において、上記ポリアミドイミド樹脂中のZの、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、さらに好ましくは45モル%以上、さらにより好ましくは50モル%以上、とりわけ好ましくは70モル%以上が、mが0~4である式(3)または式(3a)で表される構成単位である。Zの上記の下限以上が、mが0~4である式(3)または式(3a)で表される構成単位であると、第1ポリイミド系樹脂層と基材層との密着性、第1ポリイミド系樹脂層と第2ポリイミド系樹脂層との密着性、積層体の透明性や耐屈曲性を向上しやすいと共に、樹脂層の黄変を抑制しやすい。また、ポリアミドイミド樹脂中のZの100モル%以下が、mが0~4である式(3)または式(3a)で表される構成単位であればよい。なお、樹脂中の、mが0~4である式(3)または式(3a)で表される構成単位の割合は、例えば1H-NMRを用いて測定することができ、または原料の仕込み比から算出することもできる。
【0041】
本発明の好ましい一実施形態において、上記ポリアミドイミド樹脂中のZの、好ましくは5モル%以上、より好ましくは8モル%以上、さらに好ましくは10モル%以上、さらにより好ましくは12モル%以上が、mが1~4である式(3)または式(3a)で表される。ポリアミドイミド樹脂のZの上記の下限以上が、mが1~4である式(3)または式(3a)で表されると、第1ポリイミド系樹脂層と基材層との密着性、第1ポリイミド系樹脂層と第2ポリイミド系樹脂層との密着性、積層体の透明性や耐屈曲性を向上しやすい。また、Zの、好ましくは90モル%以下、より好ましくは70モル%以下、さらに好ましくは50モル%以下、さらにより好ましくは30モル%以下が、mが1~4である式(3)または式(3a)で表されることが好ましい。Zの上記の上限以下が、mが1~4である式(3)または式(3a)で表されると、mが1~4である式(3)または式(3a)由来のアミド結合間水素結合による樹脂組成物の粘度上昇を抑制し、積層体の加工性を向上しやすい。なお樹脂中のmが1~4である式(3)または式(3a)で表される構成単位の割合は、例えば1H-NMRを用いて測定することができ、または原料の仕込み比から算出することもできる。
【0042】
式(1)および式(2)において、Xは、互いに独立に、2価の有機基を表し、好ましくは炭素数4~40の2価の有機基、より好ましくは環状構造を有する炭素数4~40の2価の有機基を表す。環状構造としては、脂環、芳香環、ヘテロ環構造が挙げられる。前記有機基は、有機基中の水素原子が炭化水素基またはフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよく、その場合、炭化水素基およびフッ素置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1~8である。本発明の一実施形態において、ポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂は、複数種のXを含み得、複数種のXは、互いに同一であっても異なっていてもよい。Xとしては、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)および式(18)で表される基;それらの式(10)~式(18)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基またはトリフルオロメチル基で置換された基;並びに炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。
【0043】
【0044】
式(10)~式(18)中、*は結合手を表し、
V1、V2およびV3は、互いに独立に、単結合、-O-、-S-、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-SO2-、-CO-または-N(Q)-を表す。ここで、Qはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表す。炭素数1~12の1価の炭化水素基としては、R9について上記に述べた基が挙げられる。
1つの例は、V1およびV3が単結合、-O-または-S-であり、かつ、V2が-CH2-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-または-SO2-である。V1とV2との各環に対する結合位置、および、V2とV3との各環に対する結合位置は、互いに独立に、好ましくは各環に対してメタ位またはパラ位であり、より好ましくはパラ位である。
【0045】
式(10)~式(18)で表される基の中でも、樹脂層とガラス層との密着性、透明性や耐屈曲性を向上しやすい観点から、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)および式(17)で表される基が好ましく、式(14)、式(15)および式(16)で表される基がより好ましい。また、V1、V2およびV3は、第1ポリイミド系樹脂層と基材層との密着性、第1ポリイミド系樹脂層と第2ポリイミド系樹脂層との密着性、積層体の透明性や耐屈曲性を向上しやすい観点から、互いに独立に、好ましくは単結合、-O-または-S-、より好ましくは単結合または-O-である。
【0046】
本発明の好ましい一実施形態において、式(1)および式(2)で表される複数の構成単位におけるXの少なくとも一部は、式(4):
【化12】
[式(4)中、R
10~R
17は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基または炭素数6~12のアリール基を表し、R
10~R
17に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、*は結合手を表す]
で表される構成単位である。式(1)および式(2)で表される複数の構成単位におけるXの少なくとも一部が式(4)で表される基であると、樹脂層とガラス層との密着性、透明性や耐屈曲性を高めやすい。
【0047】
式(4)において、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16およびR17は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基または炭素数6~12のアリール基を表す。炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基または炭素数6~12のアリール基としては、式(3)における炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基または炭素数6~12のアリール基として例示のものが挙げられる。R10~R17は、互いに独立に、好ましくは水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、ここで、R10~R17に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。R10~R17は、互いに独立に、フィルムの表面硬度、透明性および耐屈曲性の観点から、さらに好ましくは水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基またはトリフルオロメチル基を表し、さらにより好ましくはR10、R12、R13、R14、R15およびR16が水素原子、R11およびR17が水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基またはトリフルオロメチル基を表し、とりわけ好ましくはR11およびR17がメチル基またはトリフルオロメチル基を表す。
【0048】
本発明の好ましい一実施形態において、式(4)で表される構成単位は式(4’):
【化13】
で表される構成単位であり、すなわち、式(1)および式(2)で表される複数の構成単位におけるXの少なくとも一部は、式(4’)で表される構成単位である。この場合、フッ素元素を含有する骨格によりポリイミド系樹脂の溶媒への溶解性を高めやすい。また、樹脂組成物の粘度を低減しやすく、積層体の加工性を向上しやすい。また、フッ素元素を含有する骨格により、樹脂組成物から形成されてなる樹脂層を含む積層体の光学特性を向上しやすい。
【0049】
本発明の好ましい一実施形態において、上記ポリイミド系樹脂中のXの、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上が式(4)、とりわけ式(4’)で表される。ポリイミド系樹脂における上記範囲内のXが式(4)、とりわけ式(4’)で表されると、フッ素元素を含有する骨格によりポリイミド系樹脂の溶媒への溶解性を向上させやすい。また、樹脂組成物の粘度を低減しやすく、樹脂組成物から得られる積層体の加工性を向上しやすい。さらに、フッ素元素を含有する骨格により、樹脂組成物から得られる積層体の光学特性も向上しやすい。なお、好ましくは、上記ポリイミド系樹脂中のXの100モル%以下が式(4)、とりわけ式(4’)で表される。上記ポリアミドイミド樹脂中のXは式(4)、とりわけ式(4’)であってもよい。上記樹脂中のXの式(4)で表される構成単位の割合は、例えば1H-NMRを用いて測定することができ、または原料の仕込み比から算出することもできる。
【0050】
ポリイミド系樹脂は、式(30)で表される構成単位および/または式(31)で表される構成単位を含むことができ、式(1)および式(2)で表される構成単位に、式(30)で表される構成単位および/または式(31)で表される構成単位を含むものであってもよい。
【化14】
【0051】
式(30)において、Y1は、互いに独立に、4価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基またはフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。Y1としては、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)および式(29)で表される基、それらの式(20)~式(29)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基またはトリフルオロメチル基で置換された基、並びに4価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、複数種のY1を含み得、複数種のY1は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0052】
式(31)において、Y2は3価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基またはフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。Y2としては、上記の式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)および式(29)で表される基の結合手のいずれか1つが水素原子に置き換わった基、および3価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、複数種のY2を含み得、複数種のY2は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0053】
式(30)および式(31)において、X1およびX2は、互いに独立に、2価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基またはフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。X1およびX2としては、上記の式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)および式(18)で表される基;それら式(10)~式(18)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基またはトリフルオロメチル基で置換された基;並びに炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。
【0054】
本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、式(1)および/または式(2)で表される構成単位、並びに場合により式(30)および/または式(31)で表される構成単位からなる。また、ワニスから得られるフィルムの光学特性、表面硬度および耐屈曲性の観点から、上記ポリイミド系樹脂において、式(1)および式(2)で表される構成単位は、式(1)および式(2)、並びに場合により式(30)および式(31)で表される全構成単位に基づいて、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。なお、ポリイミド系樹脂において、式(1)および式(2)で表される構成単位は、式(1)および式(2)、並びに場合により式(30)および/または式(31)で表される全構成単位に基づいて、通常100%以下である。なお、上記割合は、例えば、1H-NMRを用いて測定することができ、または原料の仕込み比から算出することもできる。同様の観点から、ポリイミド系樹脂がポリイミド樹脂の場合、式(1)で表される構成単位は、ポリイミド樹脂に含まれる全構成単位に基づいて、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。また、ポリイミド系樹脂がポリアミドイミド樹脂の場合、式(1)および式(2)で表される構成単位は、ポリイミド樹脂に含まれる全構成単位に基づいて、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。
【0055】
ポリイミド系樹脂がポリアミドイミド樹脂である場合、ポリアミドイミド樹脂において、式(2)で表される構成単位の含有量は、式(1)で表される構成単位1モルに対して、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.5モル以上、さらに好ましくは1.0モル以上、さらにより好ましくは1.5モル以上であり、好ましくは6.0モル以下、より好ましくは5.0モル以下、さらに好ましくは4.5モル以下である。式(2)で表される構成単位の含有量が上記の下限以上であると、基材層との密着性を高めやすいと共に、樹脂層の表面硬度を高めやすく、基材層の保護効果を高めやすい。また、式(2)で表される構成単位の含有量が上記の上限以下であると、式(2)中のアミド結合間の水素結合による増粘を抑制し、積層体を製造する際の加工性を向上させやすい。
【0056】
ポリイミド系樹脂は、好ましくはフッ素原子を含む。含フッ素置換基の具体例としては、フルオロ基およびトリフルオロメチル基が挙げられる。ポリイミド系樹脂がフッ素原子を含む場合、積層体のYIを低減させやすく、透明性を高めやすく、さらに積層体の柔軟性および耐屈曲性を両立させやすい。本発明の積層体のYIの低減、吸水率の低減、および耐屈曲性の向上の観点からは、ポリイミド系樹脂は、フッ素原子含有ジアミンおよび/またはフッ素原子含有テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位を少なくとも有することがより好ましい。ここで、ポリイミド系樹脂がフッ素原子を含む場合、上記のような利点がある一方で、ガラス層などの基材層にフッ素原子を含有するポリイミド系樹脂層を直接積層する際には、基材層に対するポリイミド系樹脂層の密着性が低下しやすい。本発明によれば、上記のような樹脂組成物から形成されてなるポリイミド系樹脂層を、基材に直接積層することによって、積層体のYIを低減させやすく、透明性を高めやすく、さらに積層体の柔軟性および耐屈曲性を両立させやすいと共に、基材層と樹脂層との密着性も十分に高めることができる。
【0057】
ポリイミド系樹脂がフッ素原子を含有する場合、フッ素原子の含有量は、黄色度の低減、透明性の向上、吸水率の低減、および積層体における樹脂層の変形抑制等の観点から、ポリイミド系樹脂の質量に基づいて、好ましくは3~40質量%、より好ましくは5~35質量%、さらに好ましくは10~32質量%である。
【0058】
ポリイミド系樹脂のイミド化率は、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは96%以上である。積層体のYIを低下しやすく、かつ、透明性を高めやすい観点から、イミド化率が上記の下限以上であることが好ましい。また、イミド化率が上記の下限以上であると、基材層としてフレキシブルガラスを使用する場合に耐屈曲性の低下を抑制しやすい。また、イミド化率の上限は100%以下である。イミド化率は、ポリイミド系樹脂中のテトラカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量の2倍の値に対する、ポリイミド系樹脂中のイミド結合のモル量の割合を示す。なお、ポリイミド系樹脂がトリカルボン酸化合物を含む場合には、ポリイミド系樹脂中のテトラカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量の2倍の値と、トリカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量との合計に対する、ポリイミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂中のイミド結合のモル量の割合を示す。イミド化率は、IR法、NMR法などにより求めることができ、例えば、NMR法においては、実施例に記載の方法により測定できる。
【0059】
ポリイミド系樹脂として、市販品を使用してもよい。ポリイミド樹脂の市販品としては、例えば河村産業(株)製KPI-MX300F等が挙げられる。
【0060】
(ポリイミド系樹脂の製造方法)
ポリイミド系樹脂は、例えば、テトラカルボン酸化合物およびジアミン化合物を主な原料として製造でき、ポリアミドイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸化合物、ジカルボン酸化合物およびジアミン化合物を主な原料として製造できる。
【0061】
樹脂の製造に使用されるジアミン化合物としては、例えば、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミンおよびこれらの混合物が挙げられる。なお、本実施形態において「芳香族ジアミン」とは、アミノ基が芳香環に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に脂肪族基またはその他の置換基を含んでいてもよい。この芳香環は単環でも縮合環でもよく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環およびフルオレン環等が例示されるが、これらに限定されるわけではない。これらの中でも、好ましくはベンゼン環である。また「脂肪族ジアミン」とは、アミノ基が脂肪族基に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に芳香環やその他の置換基を含んでいてもよい。
【0062】
脂肪族ジアミンとしては、例えば、ヘキサメチレンジアミン等の非環式脂肪族ジアミン、並びに1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジアミンおよび4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン等の環式脂肪族ジアミン等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
【0063】
芳香族ジアミンとしては、例えばp-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-トルエンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン等の、芳香環を1つ有する芳香族ジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ジメチルベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニル(TFMBと記載することがある)、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-クロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-フルオロフェニル)フルオレン等の、芳香環を2つ以上有する芳香族ジアミンが挙げられる。これらは単独または2種以上を組合せて使用できる。
【0064】
芳香族ジアミンは、好ましくは4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ジメチルベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニル(TFMB)、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニルであり、より好ましくは4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ジメチルベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニル(TFMB)、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニルである。これらは単独または2種以上を組合せて使用できる。
【0065】
上記ジアミン化合物の中でも、樹脂層の高表面硬度、高透明性、高柔軟性、高屈曲耐性や低着色性の観点からは、ビフェニル構造を有する芳香族ジアミンからなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。2,2’-ジメチルベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニルおよび4,4’-ジアミノジフェニルエーテルからなる群から選ばれる1種以上を用いることがより好ましく、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニル(TFMB)を用いることがよりさらに好ましい。
【0066】
樹脂の製造に用いられるテトラカルボン酸化合物としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸化合物;および脂肪族テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸化合物等が挙げられる。テトラカルボン酸化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。テトラカルボン酸化合物は、二無水物の他、酸クロリド化合物等のテトラカルボン酸化合物類縁体であってもよい。
【0067】
芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、非縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物、単環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物および縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。非縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDAと記載することがある)、1,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’-(p-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4’-(m-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられる。また、単環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物が挙げられ、縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0068】
これらの中でも、好ましくは4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDAと記載することがある)、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDAと記載することがある)、1,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’-(p-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物および4,4’-(m-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられ、より好ましくは4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物および4,4’-(p-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられる。これらは単独または2種以上を組合せて使用できる。
【0069】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、環式または非環式の脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物とは、脂環式炭化水素構造を有するテトラカルボン酸二無水物であり、その具体例としては、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等のシクロアルカンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物およびこれらの位置異性体が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、および1,2,3,4-ペンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。また、環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物および非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物を組合せて用いてもよい。
【0070】
上記テトラカルボン酸二無水物の中でも、樹脂層の高表面硬度、高透明性、高柔軟性、高屈曲耐性や低着色性の観点から、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、並びにこれらの混合物が好ましく、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物および4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、並びにこれらの混合物がより好ましく、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)がさらに好ましい。
【0071】
樹脂の製造に用いられるジカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸およびそれらの類縁の酸クロリド化合物、酸無水物等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。具体例としては、テレフタル酸;2,5-ビス(トリフルオロメチル)テレフタル酸;イソフタル酸;2,5-ジメチルテレフタル酸;2,5-ジメトキシテレフタル酸;ナフタレンジカルボン酸;4,4’-ビフェニルジカルボン酸;3,3’-ビフェニルジカルボン酸;2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ビフェニルジカルボン酸;炭素数8以下である鎖式炭化水素のジカルボン酸化合物および2つの安息香酸が単結合、-CH2-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-SO2-またはフェニレン基で連結された化合物並びに、それらの酸クロリド化合物が挙げられる。これらのジカルボン酸化合物の中でも、樹脂層の高表面硬度や高透明性の観点から、4,4’-オキシビス安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2-メトキシテレフタル酸クロリド、2,5-ジメチルテレフタル酸、2,5-ジメトキシテレフタル酸、2,5-ビス(トリフルオロメチル)テレフタル酸、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ビフェニルジカルボン酸およびそれらの酸クロリドが好ましく、2-メトキシテレフタル酸クロリド(以下、OMTPCと記載することがある)、4,4’-オキシビス(ベンゾイルクロリド)(以下、OBBCと記載することがある)、2,5-ジメチルテレフタル酸クロリド、2,5-ジメトキシテレフタル酸クロリド、2,5-ビス(トリフルオロメチル)テレフタル酸クロリド、テレフタル酸ジクロリド(以下、TPCと記載することがある)、イソフタル酸ジクロリド(以下、IPCと記載することがある)がより好ましく、OBBC、TPC、IPC、2-メトキシテレフタル酸クロリド、2,5-ジメチルテレフタル酸クロリド、2,5-ジメトキシテレフタル酸クロリドがさらに好ましい。
【0072】
ポリイミド樹脂がポリアミドイミド樹脂である場合には、ジカルボン酸化合物は少なくとも式(3”)で表される化合物を含むことが好ましい。
【化15】
[式(3”)中、R
1~R
8は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、または炭素数6~12のアリール基を表し、R
1~R
8に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
Aは、単結合、-O-、-CH
2-、-CH
2-CH
2-、-CH(CH
3)-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-SO
2-、-S-、-CO-または-N(R
9)-を表し、
R
9は水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表し、
mは0~4の整数であり、
R
31およびR
32は、互いに独立に、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基または塩素原子を表す。]
【0073】
なお、ポリイミド系樹脂の製造にジカルボン酸化合物を使用する場合、未反応のジカルボン酸化合物がポリイミド系樹脂に含まれないように、ポリイミド系樹脂を十分に精製することが望ましい。純度の高いポリイミド系樹脂を使用することによって、該ポリイミド系樹脂を含むワニスにおけるジカルボン酸の含有量を10ppm以下に調整しやすくなる。
【0074】
本発明の好ましい一実施形態において、ジカルボン酸化合物は、mが0である、式(3”)で表される化合物である。ジカルボン酸化合物として、mが0である式(3”)で表される化合物に加えて、Aが酸素原子である式(3”)で表される化合物を使用してもよい。また、別の好ましい一実施形態においては、ジカルボン酸化合物は、R31およびR32が塩素原子である、式(3”)で表される化合物である。また、ジアミン化合物に代えて、ジイソシアネート化合物を用いてもよい。
【0075】
なお、上記ポリイミド系樹脂は、フィルムの各種物性を損なわない範囲で、上記テトラカルボン酸化合物に加えて、テトラカルボン酸およびトリカルボン酸並びにそれらの無水物および誘導体をさらに反応させたものであってもよい。
【0076】
テトラカルボン酸としては、上記テトラカルボン酸化合物の無水物の水付加体が挙げられる。
【0077】
トリカルボン酸化合物としては、芳香族トリカルボン酸、脂肪族トリカルボン酸およびそれらの類縁の酸クロリド化合物、酸無水物等が挙げられ、2種以上を組合せて用いてもよい。具体例としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸の無水物;1,3,5-ベンゼントリカルボン酸の酸クロリド化合物;2,3,6-ナフタレントリカルボン酸-2,3-無水物;フタル酸無水物と安息香酸とが単結合、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-SO2-若しくはフェニレン基で連結された化合物が挙げられる。
【0078】
樹脂の製造において、ジアミン化合物、テトラカルボン酸化合物および/またはジカルボン酸化合物の使用量は、所望とするポリイミド系樹脂の各構成単位の比率に応じて適宜選択できる。
【0079】
樹脂の製造において、ジアミン化合物、テトラカルボン酸化合物およびジカルボン酸化合物の反応温度は、特に限定されないが、例えば5~350℃、好ましくは20~200℃、より好ましくは25~100℃である。反応時間も特に限定されないが、例えば30分~10時間程度である。必要に応じて、不活性雰囲気または減圧の条件下において反応を行ってよい。好ましい態様では、反応は、常圧および/または不活性ガス雰囲気下、撹拌しながら行う。また、反応は、反応に不活性な溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、反応に影響を与えない限り特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、2-ブトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、GBL、γ-バレロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;テトラヒドロフランおよびジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;クロロホルムおよびクロロベンゼン等の塩素含有溶媒;DMAc、DMF等のアミド系溶媒;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;およびそれらの組合せなどが挙げられる。これらの中でも、溶解性の観点から、アミド系溶媒を好適に使用できる。
【0080】
上記のような、テトラカルボン酸化合物、ジアミン化合物および場合によりジカルボン酸化合物を反応させることにより、本発明の積層体におけるポリイミド系樹脂層に含まれるポリイミド系樹脂を製造してもよいし、さらに、得られた反応物をイミド化することによってポリイミド系樹脂を製造してもよい。
【0081】
ポリイミド系樹脂の製造におけるイミド化工程では、イミド化触媒の存在下で、イミド化することができる。イミド化触媒としては、例えばトリプロピルアミン、ジブチルプロピルアミン、エチルジブチルアミン等の脂肪族アミン;N-エチルピペリジン、N-プロピルピペリジン、N-ブチルピロリジン、N-ブチルピペリジン、およびN-プロピルヘキサヒドロアゼピン等の脂環式アミン(単環式);アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、アザビシクロ[3.2.1]オクタン、アザビシクロ[2.2.2]オクタン、およびアザビシクロ[3.2.2]ノナン等の脂環式アミン(多環式);並びにピリジン、2-メチルピリジン(2-ピコリン)、3-メチルピリジン(3-ピコリン)、4-メチルピリジン(4-ピコリン)、2-エチルピリジン、3-エチルピリジン、4-エチルピリジン、2,4-ジメチルピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、3,4-シクロペンテノピリジン、5,6,7,8-テトラヒドロイソキノリン、およびイソキノリン等の芳香族アミンが挙げられる。また、イミド化反応を促進しやすい観点から、イミド化触媒とともに、酸無水物を用いることが好ましい。酸無水物は、イミド化反応に用いられる慣用の酸無水物等が挙げられ、その具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等の脂肪族酸無水物、フタル酸等の芳香族酸無水物などが挙げられる。
【0082】
ポリイミド系樹脂は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組合せた分離手段により単離(分離精製)してもよく、好ましい態様では、透明イミド系樹脂を含む反応液に、多量のメタノール等のアルコールを加え、樹脂を析出させ、濃縮、濾過、乾燥等を行うことにより単離することができる。
【0083】
(シランカップリング剤)
本発明の積層体における第1ポリイミド系樹脂層は、ポリイミド系樹脂(a1)と、シランカップリング剤(b1)とを含む樹脂組成物(1)から形成されてなる層である。樹脂組成物(1)に含まれるシランカップリング剤としては、例えば、アミノ基、イソシアネート基、ウレイド基、イソシアヌレート基、エポキシ基(グリシジル基)、ビニル基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、カルボキシル基、及びジカルボン酸無水物基の少なくとも何れかを有する、シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤は、樹脂層と基材層(特にガラス層)との密着性の向上、積層体の透明性の向上、積層体の黄変抑制、および場合により耐屈曲性の向上の観点から、好ましくはアミノ基、カルボキシル基、エポキシ基およびジカルボン酸無水物基の少なくとも何れかを有するシランカップリング剤であり、より好ましくはアミノ基を有するシランカップリング剤である。樹脂組成物(1)に含まれるシランカップリング剤の例として、式(b1-1)、(b1-2)または(b1-3):
【化16】
[式中、
R
b1およびR
b2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、またはフェニル基を表し
R
b3は、単結合または炭素数1~8のアルキレン基を表し、
R
b4は、炭素数1~3のアルキレン基を表し、
R
b5は、水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、
R
b6は、炭素数1~6のアルキル基を表し、
rは1または2であり、
sは0~3のいずれかであり、
tは0または1である]
で表されるシランカップリング剤が挙げられる。
【0084】
式(b1-1)~(b1-3)中のRb1およびRb2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、またはフェニル基を表す。炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。Rb1およびRb2は、それぞれ独立に、好ましくはエチル基である。
【0085】
式(b1-1)~(b1-3)中のRb3は、単結合または炭素数1~8のアルキレン基を表す。炭素数1~8のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基および、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基等が挙げられる。Rb3は、好ましくはエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、より好ましくはエチレン基である。
【0086】
式(b1-1)~(b1-3)中のRb4は、炭素数1~3のアルキレン基を表す。炭素数1~3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。Rb4は、好ましくはエチレン基である。
【0087】
式(b1-1)~(b1-3)中のRb5は、水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表す。炭素数1~3のアルキル基としては、Rb1およびRb2に関して上記に記載した基が挙げられる。Rb5は、好ましくはメチル基、エチル基、より好ましくはエチル基である。
【0088】
式(b1-1)~(b1-3)中のRb6は、炭素数1~6のアルキル基を表す。炭素数1~6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、t-ペンチル基、2-メチル-ブチル基、3-メチルブチル基、2-エチル-プロピル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。Rb6は、好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、より好ましくはメチル基、エチル基である。
【0089】
式(b1-2)中のrは1または2であり、好ましくは1である。式(b1-1)~(b1-3)中のsは0~3のいずれかであり、好ましくは0~2であり、より好ましくは0または1である。式(b1-1)~(b1-3)中のtは0または1であり、好ましくは0である。
【0090】
本発明における樹脂組成物(1)は、別の好ましい一態様において、ポリイミド系樹脂(a1)と、上記の式(b1-1)、(b1-2)および/または(b1-3)で表されるシランカップリング剤(第1のシランカップリング剤とも称する)と、式(b1-4):
【化17】
[式(b1-4)中、
R
b7は、単結合または炭素数1~8のアルキレン基を表し、
R
b8は、水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、
R
b9は、炭素数1~6のアルキル基を表し、
uは0または1である]
で表されるシランカップリング剤(第2のシランカップリング剤とも称する)とを含む。
【0091】
式(b1-4)中のRb7は、単結合または炭素数1~8のアルキレン基を表す。炭素数1~8のアルキレン基としては、式(b1-1)~(b1-3)中のRb3について上記に記載した基が挙げられる。Rb7は、好ましくはエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、より好ましくはエチレン基である。
【0092】
式(b1-4)中のRb8は、水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、炭素数1~3のアルキレン基としては、Rb1およびRb2に関して上記に記載した基が挙げられる。Rb8は、好ましくはメチル基またはエチル基、より好ましくはメチル基である。
【0093】
式(b1-4)中のRb9は、炭素数1~6のアルキル基を表す。炭素数1~6のアルキル基としては、式(b1-1)~(b1-3)中のRb6について上記に記載した基が挙げられる。Rb9は、好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、より好ましくはメチル基、エチル基である。
【0094】
式(b1-4)中のuは0または1であり、好ましくは0である。
【0095】
本発明のさらなる好ましい一態様において、本発明における樹脂組成物(1)は、シランカップリング剤として、アミノ基を有するシランカップリング剤(好ましくは式(b1-1)で表されるシランカップリング剤)と、エポキシ基を有するシランカップリング剤(好ましくは式(b1-4)で表されるシランカップリング剤)とを含む。
【0096】
シランカップリング剤として具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するシランカップリング剤;3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリル基を有するシランカップリング剤、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリメトキシシラン、〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基を有するシランカップリング剤(グリシジル基を有するシランカップリング剤を含む);3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプト基を有するシランカップリング剤;3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基を有するシランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有するシランカップリング剤;トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート基を有するシランカップリング剤;4-(トリメトキシシリル)ブタン酸、4-(トリエトキシシリル)ブタン酸、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、N-t-ブチル-3-(3-トリメトキシシリルプロピル)コハク酸イミド等のカルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を有するシランカップリング剤が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
シランカップリング剤は、好ましくは、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、4-(トリメトキシシリル)ブタン酸、4-(トリエトキシシリル)ブタン酸、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、及びN-t-ブチル-3-(3-トリメトキシシリルプロピル)コハク酸イミドからなる群から選択され、より好ましくは、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、及びN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランからなる群から選択され、さらに好ましくは、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン及び3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミンからなる群から選択される。
【0098】
本発明の好ましい一態様において、シランカップリング剤として2種類以上のシランカップリング剤を使用することが好ましい。この場合、第1のシランカップリング剤は、好ましくはアミノ基を有するシランカップリング剤から選択され、より好ましくは式(b1-1)で表されるシランカップリング剤から選択され、さらに好ましくは3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、4-(トリメトキシシリル)ブタン酸、4-(トリエトキシシリル)ブタン酸、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、及びN-t-ブチル-3-(3-トリメトキシシリルプロピル)コハク酸イミドからなる群から選択され、さらにより好ましくは、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、及びN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランからなる群から選択され、とりわけ好ましくは、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン及び3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミンからなる群から選択される。第2のシランカップリング剤は、好ましくはエポキシ基を有するシランカップリング剤(グリシジル基を有するシランカップリング剤を含む)からなる群から選択され、より好ましくは式(b1-4)で表されるシランカップリング剤から選択され、さらにより好ましくは2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリメトキシシラン、〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリエトキシシランからなる群から選択され、とりわけ好ましくは3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランからなる群から選択される。
【0099】
(樹脂組成物(1))
本発明の積層体における第1ポリイミド系樹脂層は、樹脂組成物(1)から形成されてなる層であり、例えば、樹脂組成物(1)を基材層に直接積層させ、加熱することによって形成することができる。樹脂組成物(1)は、上記の通り、ポリイミド系樹脂(a1)と、シランカップリング剤(b1)とを含む組成物であり、1種類のポリイミド系樹脂(a1)を含有してもよいし、2種以上のポリイミド系樹脂(a1)を含有してもよい。また、樹脂組成物(1)は、1種類のよびシランカップリング剤(b1)を含有してもよいし、2種以上のよびシランカップリング剤(b1)を含有してもよい。ポリイミド系樹脂(a1)およびシランカップリング剤(b1)の例は上記に述べた通りである。
【0100】
本発明の一実施形態において、樹脂組成物(1)に含まれるポリイミド系樹脂(a1)の含有量は、樹脂組成物(1)の固形分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上であり、好ましくは99.5質量部以下、より好ましくは95質量部以下である。ポリイミド系樹脂(a1)の含有量が上記範囲内であると、樹脂層と基材層との密着性、透明性、耐屈曲性を向上しやすく、樹脂層の黄変を抑制しやすい。
【0101】
本発明の一実施形態において、樹脂組成物(1)に含まれるシランカップリング剤(b1)の含有量は、樹脂層と基材層との密着性を向上させやすく、基材層の保護効果を高めやすい観点から、樹脂組成物(1)の固形分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上である。また、樹脂組成物の安定性の観点から、樹脂組成物(1)の固形分100質量部に対して、好ましくは8質量部以下、より好ましくは7質量部以下、さらに好ましくは6質量部以下である。
【0102】
本発明の一実施形態において、樹脂組成物(1)に含まれるシランカップリング剤(b1)の含有量は、樹脂層と基材層との密着性を向上させやすく、基材層の保護効果を高めやすい観点から、樹脂組成物(1)に含まれるポリイミド系樹脂(a1)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上、さらにより好ましくは0.7質量部以上である。また、樹脂組成物の安定性の観点から、樹脂組成物(1)に含まれるポリイミド系樹脂(a1)100質量部に対して、好ましくは8質量部以下、より好ましくは7質量部以下、さらに好ましくは6質量部以下である。
【0103】
本発明の一実施形態において、樹脂組成物(1)が、式(b1-1)、(b1-2)または(b1-3)で表される第1のシランカップリング剤と、式(b1-4)で表される第2のシランカップリング剤とを含有する場合、第1のシランカップリング剤100質量部に対する第2のシランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、樹脂層と基材層との密着性を向上させやすく、基材層の保護効果を高めやすい観点から、好ましくは50質量部以上、より好ましくは70質量部以上、さらに好ましくは100質量部以上である。また、樹脂組成物の安定性、得られる積層体の光学特性の観点から、好ましくは1000質量部以下、より好ましくは500質量部以下、さらに好ましくは300質量部以下である。
【0104】
本発明の一実施形態において、樹脂組成物(1)が、アミノ基を有するシランカップリング剤(好ましくは式(b1-1)で表されるシランカップリング剤)を第1のシランカップリング剤として含有し、エポキシ基を有するシランカップリング剤(好ましくは式(b1-4)で表されるシランカップリング剤)を第2のシランカップリング剤として含有する場合、第1のシランカップリング剤の100質量部に対する第2のシランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、樹脂層と基材層との密着性を向上させやすく、基材層の保護効果を高めやすい観点から、好ましくは50質量部以上、より好ましくは70質量部以上、さらに好ましくは100質量部以上である。また、樹脂組成物(1)の安定性、得られる積層体の光学特性の観点から、好ましくは1000質量部以下、より好ましくは500質量部以下、さらに好ましくは300質量部以下である。
【0105】
(樹脂組成物(2))
本発明の積層体における第2ポリイミド系樹脂層は、樹脂組成物(2)から形成されてなる層であり、例えば、樹脂組成物(2)を基材層に直接積層された第1ポリイミド系樹脂層上に直接積層させ、加熱することによって形成することができる。樹脂組成物(2)は、上記の通り、ポリイミド系樹脂(a2)を含む組成物であり、1種類のポリイミド系樹脂(a2)を含有してもよいし、2種以上のポリイミド系樹脂(a2)を含有してもよい。ポリイミド系樹脂(a2)の例は上記に述べた通りである。
【0106】
本発明の好ましい一態様において、樹脂組成物(2)は、ポリイミド系樹脂(a2)を含むがシランカップリング剤を含まない組成物であるか、または、ポリイミド系樹脂(a2)およびシランカップリング剤を含み、但し、該シランカップリング剤の含有量が、樹脂組成物(1)におけるシランカップリング剤(b1)の含有量よりも少ない量である組成物である。
【0107】
本発明の一実施形態において、樹脂組成物(2)に含まれるポリイミド系樹脂(a2)の含有量は、樹脂組成物(2)の固形分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上であり、好ましくは99.5質量部以下、より好ましくは95質量部以下である。ポリイミド系樹脂(a2)の含有量が上記範囲内であると、樹脂層と基材層との密着性、透明性、耐屈曲性を向上しやすく、樹脂層の黄変を抑制しやすい。
【0108】
本発明の一実施形態において、樹脂組成物(2)におけるシランカップリング剤の含有量(特にシランカップリング剤(b1)の含有量)は、樹脂組成物(2)の固形分100質量部に対して、好ましくは0~1質量部、より好ましくは0~0.5質量部、さらに好ましくは0~0.2質量部以上、さらにより好ましくは0~0.1質量部である。
【0109】
(溶媒)
樹脂組成物(1)および/または樹脂組成物(2)は、さらなる他の成分を含んでいてよく、例えば溶媒をさらに含んでいてよい。溶媒は、前記ポリイミド系樹脂を溶解可能であれば特に限定されない。かかる溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド系溶媒;GBL、γ-バレロラクトン等のラクトン系溶媒;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;およびそれらの組合せなどの有機溶媒が挙げられる。これらの中でも、アミド系溶媒またはラクトン系溶媒が好ましい。ポリイミド系樹脂の溶解性、塗布性及び乾燥性等の観点からは、該有機溶媒の沸点は、好ましくは120~300℃、より好ましくは120~270℃、さらに好ましくは120~250℃、とりわけ好ましくは120~230℃である。ポリイミド系樹脂に対する溶解性に優れることから、DMAc(沸点:165℃)、GBL(沸点:204℃)、N-メチルピロリドン(沸点:202℃)、酢酸ブチル(沸点:126℃)、シクロペンタノン(沸点:131℃)及び酢酸アミル(沸点:149℃)からなる群から選択される溶媒が好ましい。溶媒は単独または二種以上組合せて使用できる。なお、2種以上の溶媒を用いる場合には、用いる溶媒の中で最も沸点の高い溶媒の沸点が上記範囲に入るよう溶媒の種類を選択することが好ましい。また、樹脂組成物(1)および/または樹脂組成物(2)には水、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、非環状エステル系溶媒、エーテル系溶媒などが含まれてもよい。樹脂組成物(1)の固形分濃度は、好ましくは1~25質量%、より好ましくは5~20質量%、さらに好ましくは5~15質量%である。樹脂組成物(2)の固形分濃度は、好ましくは1~25質量%、より好ましくは5~20質量%、さらに好ましくは5~15質量%である。
【0110】
(フィラー)
樹脂組成物(1)および/または樹脂組成物(2)は、さらにフィラーを含んでいてよい。フィラーとしては、例えば有機粒子、無機粒子などが挙げられ、好ましくは無機粒子が挙げられる。無機粒子としては、シリカ、ジルコニア、アルミナ、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、ITOとも称されるインジウムスズ酸化物、酸化アンチモン、酸化セリウム等の金属酸化物粒子、フッ化マグネシウム、フッ化ナトリウム等の金属フッ化物粒子などが挙げられ、これらの中でも、好ましくはシリカ粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子が挙げられ、より好ましくはシリカ粒子が挙げられる。これらのフィラーは単独または2種以上を組合せて使用できる。
【0111】
フィラー、好ましくはシリカ粒子の平均一次粒子径は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは15nm以上、とりわけ好ましくは20nm以上であり、好ましくは100nm以下、より好ましくは90nm以下、さらに好ましくは80nm以下、さらにより好ましくは70nm以下、とりわけ好ましくは60nm以下、とりわけより好ましくは50nm以下、とりわけさらに好ましくは40nm以下である。フィラー、好ましくはシリカ粒子の平均一次粒子径が上記範囲内であると、フィラー、好ましくはシリカ粒子の凝集を抑制し、得られる積層体の光学特性を向上しやすい。フィラーの平均一次粒子径は、BET法により測定できる。なお、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡の画像解析により、平均一次粒子径を測定してもよい。
【0112】
樹脂組成物(1)および/または樹脂組成物(2)がフィラー、好ましくはシリカ粒子を含有する場合、フィラー、好ましくはシリカ粒子の含有量は、樹脂組成物(1)および/または樹脂組成物(2)の固形分量に対して、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、さらにより好ましくは20質量%以上、とりわけ好ましくは30質量%以上であり、好ましくは60質量%以下である。フィラーの含有量が上記の下限以上であると、得られる積層体における樹脂層の弾性率を向上しやすい。また、フィラーの含有量が上記の上限以下であると、該樹脂組成物の保管安定性が向上され、得られるフィルムの光学特性を向上しやすい。
【0113】
本発明の好ましい一態様において、樹脂組成物(1)におけるフィラー、好ましくはシリカ粒子の含有量は、樹脂組成物(1)の固形分量に対して、好ましくは0~40質量%、より好ましくは0~20質量%である。樹脂組成物(1)におけるフィラーの含有量が上記の範囲内である場合、樹脂層と基材の密着性を高めやすく、積層体の透明性を維持しやすい。
【0114】
また、本発明の好ましい一態様において、樹脂組成物(2)におけるフィラー、好ましくはシリカ粒子の含有量は、樹脂組成物(2)の固形分量に対して、好ましくは0~50質量%、より好ましくは20~40質量%である。樹脂組成物(2)におけるフィラーの含有量が上記の範囲内である場合、樹脂層の弾性率や表面硬度を高めやすく、積層体の透明性を維持しやすい。
【0115】
(紫外線吸収剤)
樹脂組成物(1)および/または樹脂組成物(2)は、さらに紫外線吸収剤を含んでいてよい。紫外線吸収剤は、樹脂材料の分野で紫外線吸収剤として通常用いられているものから、適宜選択することができる。紫外線吸収剤は、400nm以下の波長の光を吸収する化合物を含んでいてもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、およびトリアジン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。本発明の樹脂組成物が紫外線吸収剤を含有することにより、得られる樹脂層においてポリイミド系樹脂の劣化が抑制されるため、フィルムの視認性を高めることができる。
なお、本明細書において、「系化合物」とは、当該「系化合物」が付される化合物の誘導体を指す。例えば、「ベンゾフェノン系化合物」とは、母体骨格としてのベンゾフェノンと、ベンゾフェノンに結合している置換基とを有する化合物を指す。
【0116】
本発明の樹脂組成物が紫外線吸収剤を含有する場合、紫外線吸収剤の含有率は、樹脂組成物(1)および/または樹脂組成物(2)の固形分量に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下である。好適な含有率は用いる紫外線吸収剤により異なるが、400nmの光線透過率が20~60%程度になるように紫外線吸収剤の含有率を調節すると、積層体の耐光性が高められるとともに、透明性の高い積層体を得ることができる。
【0117】
(他の添加剤)
本発明の樹脂組成物(1)および/または樹脂組成物(2)は、溶媒、フィラー、紫外線吸収剤以外の他の添加剤をさらに含有していてもよい。他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、離型剤、安定剤、ブルーイング剤、難燃剤、pH調整剤、シリカ分散剤、滑剤、増粘剤、およびレベリング剤等が挙げられる。他の添加剤を含有する場合、その含有量は、樹脂組成物(1)および/または樹脂組成物(2)の固形分量に対して、好ましくは0.001~20質量部、より好ましくは0.01~15質量部、さらに好ましくは0.1~10質量部であってよい。
【0118】
(基材層)
本発明の積層体に含まれる基材層としては、ガラス層、透明樹脂フィルム等が挙げられる。基材層は、好ましくはガラス層であり、より好ましくは無機ガラス層、特にフレキシブル性を有する化学強化ガラスである。
【0119】
基材層がガラス層である本発明の好ましい一態様において、ガラス層は、無機ガラスの層であれば特に限定されない。ガラスの組成としては、例えば、下記に例示する金属および半金属酸化物基準のモル%で表示した組成で、SiO2を50~80モル%、Al2O3を0.1~25モル%、Li2OとNa2OとK2Oとの合計を3~30モル%、MgOを0~25モル%、CaOを0~25モル%およびZrO2を0~5モル%含むガラスが挙げられる。より具体的には、以下のガラスの組成が挙げられる。なお、例えば、「MgOを0~25モル%含む」とは、MgOは必須ではないが25モル%まで含んでもよいことを意味する。以下に示す(i)のガラスはソーダライムシリケートガラスに含まれ、(ii)、(iii)および(iv)のガラスはアルミノシリケートガラスに含まれる。
(i)酸化物基準のモル%で表示した組成で、SiO2を63~73モル%、Al2O3を0.1~5.2モル%、Na2Oを10~16モル%、K2Oを0~1.5モル%、Li2Oを0~5モル%、MgOを5~13モル%およびCaOを4~10モル%を含むガラス。
(ii)酸化物基準のモル%で表示した組成で、SiO2を50~74モル%、Al2O3を1~10モル%、Na2Oを6~14モル%、K2Oを3~11モル%、Li2Oを0~5モル%、MgOを2~15モル%、CaOを0~6モル%、およびZrO2を0~5モル%含有し、SiO2およびAl2O3の含有量の合計が75モル%以下であり、Na2OおよびK2Oの含有量の合計が12~25モル%であり、MgOおよびCaOの含有量の合計が7~15モル%であるガラス。
(iii)酸化物基準のモル%で表示した組成で、SiO2を68~80モル%、Al2O3を4~10モル%、Na2Oを5~15モル%、K2Oを0~1モル%、Li2Oを0~5モル%、MgOを4~15モル%およびZrO2を0~1モル%含有するガラス。
(iv)酸化物基準のモル%で表示した組成で、SiO2を67~75モル%、Al2O3を0~4モル%、Na2Oを7~15モル%、K2Oを1~9モル%、Li2Oを0~5モル%、MgOを6~14モル%、およびZrO2を0~1.5モル%含有し、SiO2およびAl2O3の含有量の合計が71~75モル%であり、Na2OおよびK2Oの含有量の合計が12~20モル%であり、CaOを含有する場合その含有量が1モル%未満であるガラス。
【0120】
ガラス層を構成するガラスの製造方法は、特に限定されず、例えば以下に記載するような工程を適切に選択すればよく、典型的には従来公知の工程を適用できる。例えば、まず、各成分の原料を後述する組成となるように調合し、ガラス溶融窯で加熱溶融する。バブリング、撹拌、清澄剤の添加等によりガラスを均質化し、従来公知の成形法により所定の厚さのガラス板に成形し、徐冷する。
【0121】
ガラスの成形法としては、例えば、フロート法、プレス法、フュージョン法、ダウンドロー法およびロールアウト法が挙げられ、大量生産に適することから好ましくはフロート法が挙げられる。また、フロート法以外の連続成形法である、フュージョン法やダウンドロー法も好適である。成形したガラスを、必要に応じて、研削や研磨などの処理を行ってから化学強化処理し、洗浄および乾燥する。その後、切断、研磨などの加工を施してよい。
【0122】
ガラスの洗浄方法としては、溶剤による洗浄、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理など、ガラス表面を親水化させる処理が挙げられ、好ましくはコロナ放電処理が挙げられる。コロナ放電処理とは、電極間にガラスを設置し、電極間に高電圧をかけて放電し、ガラス表面を活性化する処理である。コロナ放電処理の条件は、電極の形状、電極間隔、放電量、湿度などによっても異なるが、例えば、電極の形状としては、ワイヤ状電極、セグメント電極等が挙げられ、電極間隔を1~5mm、放電量として10~200W・分/m2、コロナ放電処理速度を3~20m/分程度に設定するのが好ましい。また、コロナ放電処理部の絶対湿度は、好ましくは10~30g/m3である。絶対湿度が前記の範囲にあると、スパークが発生することなく安定して放電がされる。
【0123】
ガラス層として、市販のガラスを使用してもよい。市販のガラスとしては、例えば、S9213(松浪硝子工業(株))やG-Leaf(日本電気硝子(株))等が挙げられる。また、屈曲性を有するフレキシブルガラスを用いることにより、本発明の積層体をフレキシブル表示装置の前面板として、用いることができる。
【0124】
ガラス層の厚さは、積層体の強度を高めやすい観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上である。また、ガラス層の厚さは、積層体の視認性を高めやすい観点から、例えば2,000μm以下、1,500μm以下、1,000μm以下等であってよいが、画像表示装置において使用しやすい観点およびフレキシブル性を付与しやすい観点からは、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。
【0125】
本発明の好ましい一実施形態において、ガラス層はフレキシブルガラスの層である。フレキシブルガラスは、湾曲できるほど薄くした、フレキシブル性を有するガラスである。フレキシブルガラスは、好ましくは後述する化学強化ガラスである。ガラス層としてフレキシブルガラスを使用する場合、該ガラス層の厚さは、積層体の強度および耐屈曲性の観点から、好ましくは10~200μm、より好ましくは20~150μmである。フレキシブルガラスは、理由は明らかではないが、高温での加熱処理、例えば250℃以上、300℃以上といった温度での加熱処理によって、そのフレキシブル性が低下する場合がある。そのため、フレキシブルガラス層と、該ガラス層に直接積層されたポリイミド系樹脂を含む樹脂組成物から形成されてなる樹脂層とを含む積層体を比較的低温で製造しようとすると、加熱温度が低いために密着性を十分に高めることができず、加熱温度を高くすると、フレキシブルガラス層のフレキシブル性が低下すると共に、YIも低くしにくい場合があった。本発明の積層体によれば、例えば250℃以下、好ましくは230℃以下などの比較的低温の加熱条件で積層体を製造しても、ガラス層と樹脂層との密着性を十分に高めることができるため、密着性と、低いYI値と、フレキシブル性とを兼ね備えた積層体を提供することが可能となる。
【0126】
本発明の好ましい一実施形態において、ガラス層は化学強化ガラスの層であってよい。無機ガラスを化学強化処理すると、表面に圧縮応力層が形成され、無機ガラスの強度および耐擦傷性が高められる。化学強化処理は、無機ガラスの主面に存在するイオン半径が小さいアルカリ金属イオンをイオン半径が大きいアルカリ金属イオンに交換することによって行われ、具体的には、無機ガラスと、融点が450℃弱である溶融塩とを接触させて、無機ガラス中のLiイオンまたはNaイオンを、溶融塩中のイオン半径のより大きいアルカリイオン、典型的にはLiイオンに対してはNaイオンまたはKイオン、Naイオンに対してはKイオンに、それぞれ、交換することによって行われる。化学強化処理は従来公知の方法によって実施でき、一般的には硝酸カリウム溶融塩に無機ガラスを浸漬する。この溶融塩に、炭酸カリウムを溶融塩に対して、10質量%程度入れて使用してもよい。これにより無機ガラスの表層のクラックなどを除去でき高強度の無機ガラスが得られる。また、化学強化処理は1回に限らず、例えば異なる条件で2回以上実施してもよい。
【0127】
ガラス層が化学強化ガラスの層である場合、該ガラス層は優れた耐衝撃性および耐屈曲性を有するため、ガラス層の厚さを薄くすることができる。また、ガラス層にフレキシブル性を付与することができる。ガラス層が化学強化ガラスの層である場合、ガラス層の厚さは、積層体の強度および耐屈曲性の観点から、好ましくは10~200μm、より好ましくは20~150μmである。ガラス層が化学強化ガラスの層であることは、例えば、表面に圧縮応力層が形成されているか否かを判断することで確認でき、具体的には、ガラスの表面から厚さ方向へのNaイオン、Kイオン等の濃度分布を測定することによって、これらの交換されたイオンがより高い濃度で表面に存在しているかどうかを判断することによって、確認することができる。このような化学強化ガラス層にポリイミド系樹脂を含む樹脂組成物から形成されてなる樹脂層を直接積層して積層体を製造する場合にも、加熱温度が低いと密着性を十分に高めることができず、加熱温度が高いと、化学強化ガラス層の耐衝撃性および耐屈曲性が低下すると共に、YIも低くしにくい場合があった。本発明の積層体によれば、例えば250℃以下、好ましくは230℃以下などの比較的低温の加熱条件で製造しても、ガラス層と樹脂層との密着性を十分に高めることができるため、密着性と、低いYI値と、フレキシブル性とを兼ね備えた積層体を提供することが可能となる。
【0128】
(積層体)
本発明の積層体は、基材層と、該基材層に直接積層された第1ポリイミド系樹脂層と、該第1ポリイミド系樹脂層の該基材層に接する面とは反対側の面に直接積層された第2ポリイミド系樹脂層とからなる積層体であってもよいし、これらの層と、他の層とを有する積層体であってもよい。
【0129】
本発明の積層体における第1ポリイミド系樹脂層の厚さは、基材層の保護効果、基材層との密着性を高めやすい観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、積層体の視認性、および積層体の耐屈曲性を向上しやすい観点からは、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。樹脂層の厚さは、接触式のデジマチックインジケーター、断面SEM等により測定される。
【0130】
本発明の積層体における第2ポリイミド系樹脂層の厚さは、基材層の保護効果、基材層との密着性を高めやすい観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは25μm以上であり、積層体の視認性、および積層体の耐屈曲性を向上しやすい観点からは、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。樹脂層の厚さは、接触式のデジマチックインジケーター、断面SEM等により測定される。
【0131】
本発明の積層体における基材層の厚さは、積層体の用いられる用途や基材の種類に応じて適宜変更してよく、特に限定されない。例えば、基材層がガラス層である本発明の一実施形態においては、ガラス層の厚さは、積層体の強度を高めやすい観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上である。また、ガラス層の厚さは、積層体の視認性を高めやすい観点から、例えば2,000μm以下、1,500μm以下、1,000μm以下等であってよいが、画像表示装置において使用しやすい観点およびフレキシブル性を付与しやすい観点からは、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。基材層の厚さは、接触式のデジマチックインジケーター、断面SEM等により測定される。
【0132】
本発明の積層体は、基材層と、該基材層に直接積層された第1ポリイミド系樹脂層と、該第1ポリイミド系樹脂層の該基材層に接する面とは反対側の面に直接積層された第2ポリイミド系樹脂層とを少なくとも含み、さらに他の層を有する積層体であってもよい。他の層としては、例えば機能層が挙げられ、具体的には、紫外線吸収層、ハードコート層、プライマー層、ガスバリア層、粘着層、色相調整層、屈折率調整層などが挙げられる。機能層は単独または二種以上を組合せて使用できる。
【0133】
紫外線吸収層は、紫外線吸収の機能を有する層であり、例えば、紫外線硬化型の透明樹脂、電子線硬化型の透明樹脂、および熱硬化型の透明樹脂から選ばれる主材と、この主材に分散した紫外線吸収剤とから構成される。
【0134】
本発明の積層体の少なくとも一方の面、好ましくは樹脂層側の面には、ハードコート層が設けられていてもよい。ハードコート層の厚さは特に限定されず、例えば、2~100μmであってもよい。前記ハードコート層の厚さが前記の範囲にあると、耐衝撃性を高めやすい。ハードコート層は、活性エネルギー線照射、或いは熱エネルギー付与により架橋構造を形成し得る反応性材料を含むハードコート組成物を硬化させて形成することができ、活性エネルギー線照射によるものが好ましい。活性エネルギー線は、活性種を発生する化合物を分解して活性種を発生させることができるエネルギー線と定義され、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線および電子線などが挙げられ、好ましくは紫外線が挙げられる。前記ハードコート組成物は、ラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有する。
【0135】
前記ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性基を有する化合物である。前記ラジカル重合性化合物が有するラジカル重合性基としては、ラジカル重合反応を生じ得る官能基であればよく、炭素-炭素不飽和二重結合を含む基などが挙げられ、具体的には、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。なお、前記ラジカル重合性化合物が2個以上のラジカル重合性基を有する場合、これらのラジカル重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。前記ラジカル重合性化合物が1分子中に有するラジカル重合性基の数は、ハードコート層の硬度を向上する点から、好ましくは2以上である。前記ラジカル重合性化合物としては、反応性の高さの点から、好ましくは(メタ)アクリロイル基を有する化合物が挙げられ、具体的には1分子中に2~6個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレートモノマーと称される化合物やエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートと称される分子内に数個の(メタ)アクリロイル基を有する分子量が数百から数千のオリゴマーが挙げられ、好ましくはエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートおよびポリエステル(メタ)アクリレートから選択された1種以上が挙げられる。
【0136】
前記カチオン重合性化合物は、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル結合を有する基等のカチオン重合性基を有する化合物である。前記カチオン重合性化合物が1分子中に有するカチオン重合性基の数は、ハードコート層の硬度を向上する点から、好ましくは2以上であり、より好ましくは3以上である。
また、前記カチオン重合性化合物としては、中でも、カチオン重合性基としてエポキシ基およびオキセタニル基の少なくとも1種を有する化合物が好ましい。エポキシ基、オキセタニル基等の環状のエーテル結合を有する基は、重合反応に伴う収縮が小さいという点から好ましい。また、環状のエーテル結合を有する基のうちエポキシ基を有する化合物は多様な構造の化合物が入手し易く、得られたハードコート層の耐久性に悪影響を与えず、ラジカル重合性化合物との相溶性もコントロールし易いという利点がある。また、環状のエーテル結合を有する基のうちオキセタニル基は、エポキシ基と比較して重合度が高くなりやすく、低毒性であり、得られたハードコート層のカチオン重合性化合物から得られるネットワーク形成速度を早め、ラジカル重合性化合物と混在する領域でも未反応のモノマーを膜中に残さずに独立したネットワークを形成する等の利点がある。
エポキシ基を有するカチオン重合性化合物としては、例えば、脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテルまたは、シクロヘキセン環、シクロペンテン環含有化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化する事によって得られる脂環族エポキシ樹脂;脂肪族多価アルコール、またはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジル(メタ)アクリレートのホモポリマー、コポリマーなどの脂肪族エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールFや水添ビスフェノールA等のビスフェノール類、またはそれらのアルキレンオキサイド付加体、カプロラクトン付加体等の誘導体と、エピクロルヒドリンとの反応によって製造されるグリシジルエーテル、およびノボラックエポキシ樹脂等でありビスフェノール類から誘導されるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0137】
前記ハードコート組成物は重合開始剤をさらに含むことができる。重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、ラジカルおよびカチオン重合開始剤等が挙げられ、適宜選択して用いられる。これらの重合開始剤は、活性エネルギー線照射および加熱の少なくとも一種により分解されて、ラジカルまたはカチオンを発生してラジカル重合とカチオン重合を進行させるものである。
ラジカル重合開始剤は、活性エネルギー線照射および加熱の少なくともいずれかによりラジカル重合を開始させる物質を放出することが可能であればよい。例えば、熱ラジカル重合開始剤としては、過酸化水素、過安息香酸等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等があげられる。
活性エネルギー線ラジカル重合開始剤としては、分子の分解でラジカルが生成されるType1型ラジカル重合開始剤と、3級アミンと共存して水素引き抜き型反応でラジカルを生成するType2型ラジカル重合開始剤があり、それらは単独でまたは併用して使用される。
カチオン重合開始剤は、活性エネルギー線照射および加熱の少なくともいずれかによりカチオン重合を開始させる物質を放出することが可能であればよい。カチオン重合開始剤としては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、シクロペンタジエニル鉄(II)錯体等が使用できる。これらは、構造の違いによって活性エネルギー線照射または加熱のいずれかあるいはいずれでもカチオン重合を開始することができる。
【0138】
前記重合開始剤は、前記ハードコート組成物全体100質量%に対して好ましくは0.1~10質量%を含むことができる。前記重合開始剤の含量が前記の範囲にあると、硬化を十分に進行させることができ、最終的に得られる塗膜の機械的物性や密着力を良好な範囲とすることができ、また、硬化収縮による接着力不良や割れ現象およびカール現象が発生し難くなる傾向がある。
【0139】
前記ハードコート組成物は、溶剤および添加剤からなる群から選択される一つ以上をさらに含むことができる。
前記溶剤は、前記重合性化合物および重合開始剤を溶解または分散させることができるもので、本技術分野のハードコート組成物の溶剤として知られている溶剤であれば、本発明の効果を阻害しない範囲で、使用することができる。
前記添加剤は、無機粒子、レベリング剤、安定剤、界面活性剤、帯電防止剤、潤滑剤、防汚剤などをさらに含むことができる。
【0140】
粘着層は、粘着性の機能を有する層であり、本発明の積層体を他の部材に接着させる機能を有する。粘着層の形成材料としては、通常知られたものを用いることができる。例えば、熱硬化性樹脂組成物または光硬化性樹脂組成物を用いることができる。この場合、事後的にエネルギーを供給することで樹脂組成物を高分子化し硬化させることができる。
【0141】
粘着層は、感圧型接着剤(Pressure Sensitive Adhesive、PSA)と呼ばれる、押圧により対象物に貼着される層であってもよい。感圧型接着剤は、「常温で粘着性を有し、軽い圧力で被着材に接着する物質」(JIS K6800)である粘着剤であってもよく、「特定成分を保護被膜(マイクロカプセル)に内容し、適当な手段(圧力、熱等)によって被膜を破壊するまでは安定性を保持できる接着剤」(JIS K6800)であるカプセル型接着剤であってもよい。
【0142】
色相調整層は、色相調整の機能を有する層であり、本発明の積層体を目的の色相に調整することができる層である。色相調整層は、例えば、樹脂および着色剤を含有する層である。この着色剤としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、弁柄、チタニウムオキサイド系焼成顔料、群青、アルミン酸コバルト、およびカーボンブラック等の無機顔料;アゾ系化合物、キナクリドン系化合物、アンスラキノン系化合物、ペリレン系化合物、イソインドリノン系化合物、フタロシアニン系化合物、キノフタロン系化合物、スレン系化合物、およびジケトピロロピロール系化合物等の有機顔料;硫酸バリウム、および炭酸カルシウム等の体質顔料;並びに塩基性染料、酸性染料、および媒染染料等の染料を挙げることができる。
【0143】
屈折率調整層は、屈折率調整の機能を有する層であり、例えば本発明の積層体に含まれる樹脂層およびガラス層とは異なる屈折率を有し、積層体に所定の屈折率を付与することができる層である。屈折率調整層は、例えば、適宜選択された樹脂、および場合によりさらに顔料を含有する樹脂層であってもよいし、金属の薄膜であってもよい。屈折率を調整する顔料としては、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化錫、酸化チタン、酸化ジルコニウムおよび酸化タンタルが挙げられる。該顔料の平均一次粒子径は、0.1μm以下であってもよい。顔料の平均一次粒子径を0.1μm以下とすることにより、屈折率調整層を透過する光の乱反射を防止し、透明度の低下を防止することができる。屈折率調整層に用いられる金属としては、例えば、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ケイ素、酸化インジウム、酸窒化チタン、窒化チタン、酸窒化ケイ素、窒化ケイ素等の金属酸化物または金属窒化物が挙げられる。
【0144】
本発明の積層体の黄色度YIは、該積層体を表示装置等に組み込んだ際の視認性を高めやすい観点から、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.8以下、さらに好ましくは1.6以下、さらにより好ましくは1.5以下、とりわけ好ましくは1.4以下、とりわけより好ましくは1.3以下である。積層体のYIが上記範囲内であると透明性を向上させやすく、例えば表示装置の前面板に使用した場合に視認性を高めやすい。YIは、通常-5以上、好ましくは-2以上より好ましくは0以上、さらに好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.5以上、特に好ましくは0.7以上である。YIは、JIS K 7373:2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計を用いて300~800nmの光に対する透過率測定を行い、3刺激値(X、Y、Z)を求め、YI=100×(1.2769X-1.0592Z)/Yの式に基づいて算出できる。
【0145】
本発明の積層体の全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは91%以上である。全光線透過率が上記の下限以上であると、積層体を表示装置に組み込んだ際に視認性を高めやすい。本発明の積層体は、通常、高い全光線透過率を示すので、例えば、全光線透過率の低い積層体を用いた場合と比べて、一定の明るさを得るため必要な表示素子等の発光強度を抑えることが可能となる。このため、消費電力を削減することができる。例えば、本発明の積層体を表示装置に組みこむ場合、バックライトの光量を減らしても明るい表示を得られる傾向があり、エネルギーの節約に貢献できる。全光線透過率の上限は、通常100%以下である。なお、全光線透過率は、例えばJIS K7361-1:1997に準拠してヘイズコンピュータを用いて測定できる。全光線透過率は、後述する積層体の厚さの範囲における全光線透過率であってよい。
【0146】
本発明の積層体のヘイズは、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下、特に好ましくは0.3%以下である。積層体のヘイズが上記の上限以下であると透明性が良好となり、例えば画像表示装置の前面板に使用した場合に、画像の視認性を高めやすい。またヘイズの下限は通常0.01%以上である。なお、ヘイズは、JIS K7136:2000に準拠してヘイズコンピュータを用いて測定できる。
【0147】
本発明の積層体の厚さは、用途に応じて適宜調整してよいが、好ましくは25μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは50μm以上であり、好ましくは600μm以下、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは400μm以下である。積層体の厚さは、フレキシブル性を有する積層体を提供する観点からは、好ましくは300μm以下、より好ましくは280μm以下、さらに好ましくは250μm以下、さらにより好ましくは230μm以下である。積層体の厚さは、膜厚計などで測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
【0148】
本発明の積層体において、樹脂層とガラス層との間の剥離強度は、これらの層の十分な密着性を得やすい観点から、好ましくは4.0N/inch以上、より好ましくは4.5N/inch以上、さらに好ましくは5.0N/inch以上である。また、該剥離強度は、好ましくは50N/inch以下、より好ましくは30N/inch以下、さらに好ましくは20N/inch以下である。樹脂層とガラス層との間の剥離強度は、例えば、精密万能試験機オートグラフシリーズ(株式会社島津製作所製)を用いて測定される、ガラス層から樹脂層を、50mm/分の剥離速度で180°剥離する際の剥離強度であり、例えば25mm幅の樹脂層を備える測定サンプルを用い、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0149】
本発明の積層体の面内位相差値R0は、積層体を使用した場合の表示材料の視野角の確保の観点から、好ましくは300nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下、さらにより好ましくは30nm以下である。面内位相差値R0は、位相差測定装置を用いて波長589.6nmのリタデーションを測定することにより測定できる。
【0150】
本発明の好ましい一態様において、本発明の積層体は優れた耐屈曲性を有し、具体的には、屈曲半径2mmでの耐屈曲性試験における耐屈曲回数が、好ましくは10万回以上、より好ましくは13万回以上、さらに好ましくは15万回以上である。積層体の耐屈曲回数は、例えば面状態無負荷U字伸縮試験機(ユアサシステム機器(株)製「DMLHB-FS」(商品名))で求めることができる。
【0151】
〔積層体の製造方法〕
本発明の積層体の製造方法は、基材層と、該基材層に直接積層された第1ポリイミド系樹脂層と、該第1ポリイミド系樹脂層の該基材層に接する面とは反対側の面に直接積層された第2ポリイミド系樹脂層とを含む積層体が得られる限り特に限定されないが、例えば以下の工程:
(a)ポリイミド系樹脂(a1)とシランカップリング剤(b1)とを含む樹脂組成物(1)を基材に塗布して第1塗膜を形成する工程、
(b)第1塗膜を加熱する工程、
(c)加熱後の第1塗膜の層上に、ポリイミド系樹脂(a2)を含む樹脂組成物(2)を塗布して第2塗膜を形成する工程、および
(d)第2塗膜を加熱して、積層体を得る工程
を少なくとも含む製造方法であってよい。
【0152】
工程(a)において使用する、樹脂組成物(1)は、ポリイミド系樹脂(a1)を溶媒に溶解させ、シランカップリング剤(b1)と、必要に応じて、前記フィラー、紫外線吸収剤等の添加剤を添加して撹拌混合することにより調製する。なお、フィラーとしてシリカ粒子を用いる場合、シリカ粒子を含むシリカゾルの分散液を、前記樹脂が溶解可能な溶媒で置換したシリカゾルを樹脂に添加してもよい。樹脂組成物に含まれ得る溶媒は、上記に述べた通りである。
【0153】
樹脂組成物(1)を、公知の塗布方法により、基材に直接塗布して塗膜を形成する。公知の塗布方法としては、例えばワイヤーバーコーティング法、リバースコーティング法、グラビアコーティング法等のロールコーティング法、ダイコート法、カンマコート法、リップコート法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法、流涎成形法等が挙げられる。
【0154】
次いで、工程(b)において第1塗膜を加熱することにより乾燥させる。第1塗膜の加熱は、YI値を低くしやすい観点、および、基材層の特性の低下(例えば、薄膜ガラス層の場合には耐屈曲性の低下など)を抑制しやすい観点からは、250℃以下、好ましくは50~250℃の温度にて行うことが好ましい。必要に応じて、不活性雰囲気または減圧の条件下において塗膜の加熱を行ってよい。なお、得られる樹脂層には、樹脂層に含まれていた溶媒以外の成分が含まれるため、樹脂層に含まれる各成分の含有量は、樹脂組成物に含まれる各成分の、樹脂組成物の固形分濃度に基づく含有量に等しい。また、樹脂層には、溶媒の一部がわずかに残存していてもよい。樹脂層に含まれる溶媒の量は、樹脂層の質量に対して、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1.2%以下、さらに好ましくは1.1%以下、さらにより好ましくは1.0%以下である。溶媒の量の下限は、好ましくは0%以上、より好ましくは0.02%以上、さらに好ましくは0.1%以上、さらにより好ましくは0.3%以上である。
【0155】
工程(b)において第1塗膜を加熱する工程は、予備乾燥を行った後、本乾燥を行うことで実施してもよい。予備乾燥温度は、樹脂層表面の品質保持の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下である。予備乾燥時間は、樹脂組成物に含まれる溶媒の種類、予備乾燥温度等に応じて適宜選択すればよく、好ましくは5~150分間、より好ましくは10~120分間、さらに好ましくは20~60分間である。予備乾燥は、必要に応じて、不活性雰囲気下または減圧条件下で行ってよい。
【0156】
本乾燥温度は、樹脂層中の溶媒除去の観点および樹脂層とガラス層との密着性を高める観点から、好ましくは150℃以上、より好ましくは180℃以上、さらに好ましくは200℃以上であり、YI値を低くしやすい観点、および、基材層の特性低下を抑制しやすい観点、例えば、基材層としてフレキシブルガラス層および/または化学強化ガラス層を用いる場合に、これらのガラス層の特性、好ましくは耐屈曲性の低下を抑制しやすい観点からは、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下、さらに好ましくは230℃以下、さらにより好ましくは220℃以下である。本乾燥温度は、予備乾燥温度より高い温度であり、予備乾燥温度よりも好ましくは30℃以上高い温度、より好ましくは40℃以上高い温度、さらに好ましくは50℃以上高い温度である。本乾燥時間は、予備乾燥後の樹脂塗膜の固形分濃度等に応じて適宜選択すればよく、好ましくは1~120分間、より好ましくは5~80分間、さらに好ましくは10~40分間である。本乾燥は、必要に応じて、不活性雰囲気下または減圧条件下で行ってよい。
【0157】
次に、工程(c)において、加熱後の第1塗膜の層上に、ポリイミド系樹脂(a2)を含む樹脂組成物(2)を塗布して第2塗膜を形成する。工程(c)で使用する樹脂組成物(2)は、ポリイミド系樹脂(a2)を溶媒に溶解させ、必要に応じて、フィラー、紫外線吸収剤等の添加剤を添加して撹拌混合することにより調製する。なお、フィラーとしてシリカ粒子を用いる場合、シリカ粒子を含むシリカゾルの分散液を、前記樹脂が溶解可能な溶媒で置換したシリカゾルを樹脂に添加してもよい。樹脂組成物に含まれ得る溶媒は、上記に述べた通りである。
【0158】
樹脂組成物(2)を、公知の塗布方法により、第1塗膜上に直接塗布して塗膜を形成する。公知の塗布方法としては、樹脂組成物(1)の塗布方法と同様の方法を用いてよい。
【0159】
次いで、工程(d)において第2塗膜を加熱することにより乾燥させて、本発明の積層体を得る。第2塗膜の加熱条件については、第1塗膜の加熱条件と同様の条件が挙げられ、好ましい態様も同様に当てはまる。
【0160】
本発明の一実施形態において、本発明の積層体は、少なくとも一方の面(片面または両面)に剥離性の保護フィルムを有していてもよい。例えば本発明のフィルムの片面に機能層を有する本発明の積層体の場合、保護フィルムは、本発明の積層体の樹脂層側の表面またはガラス層側の表面に積層されていてもよく、本発明の積層体の両方の表面に積層されていてもよい。保護フィルムは、本発明の積層体の表面を一時的に保護するためのフィルムであり、積層体の表面を保護できる剥離可能なフィルムである限り特に限定されない。保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂フィルム;ポリエチレン、ポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィン系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム等が挙げられ、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムおよびアクリル系樹脂フィルムからなる群から選択されることが好ましい。本発明の積層体が保護フィルムを2つ有する場合、各保護フィルムは同一または異なっていてもよい。
【0161】
保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、通常、10~120μm、好ましくは15~110μm、より好ましくは20~100μmである。本発明の積層体が保護フィルムを2つ有する場合、各保護フィルムの厚さは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0162】
本発明の積層体は、表示装置、中でもフレキシブル表示装置の前面板、特にローラブルディスプレイやフォルダブルディスプレイの前面板として好適に使用できる。すなわち、本発明の積層体は、好ましくは光学積層体であり、より好ましくは表示装置の前面板用の積層体であり、さらに好ましくはフレキシブル表示装置の前面板用の積層体である。本発明は、フレキシブル表示装置の前面板用の積層体である本発明の積層体、および、本発明の積層体を備えるフレキシブル表示装置の前面板も提供する。該前面板は、フレキシブル表示装置の表示素子を保護する機能を有する。なお、フレキシブル表示装置とは、画像表示装置を繰り返し折り曲げる、繰り返し巻く等の操作を伴い使用される表示装置である。このような繰り返しの折り曲げ操作等を伴い使用されるフレキシブル表示装置の前面板には高い耐屈曲性、特に高い耐折性が求められる。また、前面板には、高い視認性も求められる。画像表示装置の内部で使用される画像表示装置の基板用のフィルムと比較して、画像表示装置の前面板、特にフレキシブル表示装置の前面板用の積層体には、高い視認性が求められると共に、高い耐屈曲性が求められる。例えば、本発明の積層体は、フレキシブル表示装置の前面板用に用いる場合の視認性を高めやすい観点から、上記に記載したようなYIを有することが好ましく、さらに、好ましくは上記に記載したような全光線透過率、および/またはヘーズを有することがより好ましい。また、フレキシブル表示装置の前面板として用いる場合の耐屈曲性、特に耐折性を高めやすい観点から、上記に記載したような耐屈曲回数を満たすことが好ましい。表示装置としては、テレビ、スマートフォン、携帯電話、カーナビゲーション、タブレットPC、携帯ゲーム機、電子ペーパー、インジケーター、掲示板、時計、およびスマートウォッチ等のウェアラブルデバイス等が挙げられる。フレキシブルディスプレイとしては、フレキシブル特性を有する表示装置、例えばテレビ、スマートフォン、携帯電話、スマートウォッチ等が挙げられる。フレキシブル表示装置としては、フレキシブル特性を有する全ての画像表示装置が挙げられ、例えば上記のようなローラブルディスプレイやフォルダブルディスプレイが挙げられる。ローラブルディスプレイとは、前面板を含む画像表示部分がロール状に巻き取られており、該画像表示部分を引き出して平面または曲面にした状態で使用される画像表示装置であり、ロール状に巻き取る等の操作が使用の度に行われるような画像表示装置である。また、フォルダブルディスプレイとは、前面板を含む画像表示部分が折り曲げられており、該画像表示部分を開いて平面または曲面にした状態で使用される画像表示装置であり、折り曲げ等の操作が使用の度に行われるような画像表示装置である。このような巻き取り、折り曲げ等の操作が繰り返し行われる画像表示装置をフレキシブル画像表示装置と称する。
【0163】
〔フレキシブル表示装置〕
本発明の積層体をフレキシブル表示装置において使用してもよい。本発明の積層体は、好ましくはフレキシブル表示装置において前面板として用いられ、該前面板はウインドウフィルムと称されることがある。該フレキシブル表示装置は、フレキシブル表示装置用積層体と、有機EL表示パネルとからなり、有機EL表示パネルに対して視認側にフレキシブル表示装置用積層体が配置され、折り曲げ可能に構成されている。フレキシブル表示装置用積層体としては、さらに偏光板、タッチセンサを含有していてもよく、それらの積層順は任意であるが、視認側からウインドウフィルム、偏光板、タッチセンサまたはウインドウフィルム、タッチセンサ、偏光板の順に積層されていることが好ましい。タッチセンサよりも視認側に偏光板が存在すると、タッチセンサのパターンが視認されにくくなり表示画像の視認性が良くなるので好ましい。それぞれの部材は接着剤、粘着剤等を用いて積層することができる。また、前記ウインドウフィルム、偏光板、タッチセンサのいずれかの層の少なくとも一面に形成された遮光パターンを具備することができる。
【0164】
<偏光板>
本発明の積層体を備えるフレキシブル表示装置は、上記の通り、偏光板、中でも円偏光板をさらに備えることが好ましい。円偏光板は、直線偏光板にλ/4位相差板を積層することにより右円偏光成分または左円偏光成分のみを透過させる機能を有する機能層である。例えば外光を右円偏光に変換して有機ELパネルで反射されて左円偏光となった外光を遮断し、有機ELの発光成分のみを透過させることで反射光の影響を抑制して画像を見やすくするために用いられる。円偏光機能を達成するためには、直線偏光板の吸収軸とλ/4位相差板の遅相軸は理論上45°である必要があるが、実用的には45±10°である。直線偏光板とλ/4位相差板は必ずしも隣接して積層される必要はなく、吸収軸と遅相軸の関係が前述の範囲を満足していればよい。全波長において完全な円偏光を達成することが好ましいが実用上は必ずしもその必要はないので本発明における円偏光板は楕円偏光板をも包含する。直線偏光板の視認側にさらにλ/4位相差フィルムを積層して、出射光を円偏光とすることで偏光サングラスをかけた状態での視認性を向上させることも好ましい。
【0165】
〔タッチセンサ〕
本発明の積層体を備えるフレキシブル表示装置は、上記の通り、タッチセンサをさらに備えることが好ましい。タッチセンサは入力手段として用いられる。タッチセンサとしては、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式等様々な様式が挙げられ、好ましくは静電容量方式が挙げられる。
静電容量方式タッチセンサは活性領域および前記活性領域の外郭部に位置する非活性領域に区分される。活性領域は表示パネルで画面が表示される領域(表示部)に対応する領域であって、使用者のタッチが感知される領域であり、非活性領域は表示装置で画面が表示されない領域(非表示部)に対応する領域である。タッチセンサはフレキシブルな特性を有する基板と、前記基板の活性領域に形成された感知パターンと、前記基板の非活性領域に形成され、前記感知パターンとパッド部を介して外部の駆動回路と接続するための各センシングラインを含むことができる。フレキシブルな特性を有する基板としては、前記ウインドウフィルムの透明基板と同様の材料が使用できる。
【0166】
〔接着層〕
前記フレキシブル表示装置用積層体を形成する各層(ウインドウフィルム、円偏光板、タッチセンサ)並びに各層を構成するフィルム部材(直線偏光板、λ/4位相差板等)は接着剤によって接合することができる。該接着剤としては、水系接着剤、有機溶剤系、無溶剤系接着剤、固体接着剤、溶剤揮散型接着剤、水系溶剤揮散型接着剤、湿気硬化型接着剤、加熱硬化型接着剤、嫌気硬化型、活性エネルギー線硬化型接着剤、硬化剤混合型接着剤、熱溶融型接着剤、感圧型接着剤(粘着剤)、再湿型接着剤等、通常使用されている接着剤等が使用でき、好ましくは水系溶剤揮散型接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤、粘着剤を使用できる。接着剤層の厚さは、求められる接着力等に応じて適宜調節することができ、好ましくは0.01~500μm、より好ましくは0.1~300μmである。前記フレキシブル表示装置用積層体には、複数の接着層が存在するが、それぞれの厚さや種類は、同じであっても異なっていてもよい。
【実施例0167】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、かかる実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の「%」および「部」はそれぞれ、特記しない限り、「質量%」および「質量部」である。
【0168】
<重量平均分子量の測定>
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定
・前処理方法
ポリアミドイミド樹脂に下記DMF溶離液をポリアミドイミド樹脂濃度が1.0mg/mLとなるように加え、得られた溶液を80℃にて60分間攪拌しながら加熱し、さらに冷却した後、0.2μmメンブランフィルターでろ過したものを測定溶液とした。
・測定条件
GPC装置 : 東ソー HLC-8220GPC
検出器 : RI
GPCカラム :TSKgel α-M×2、α-2500×1(7.8mm I.D.×300mm)
溶離液 :DMF(30mM臭化リチウム、10mMリン酸含有)
流量 :1.0mL/min.
測定温度 :40℃
注入量 :100μL
分子量標準 :標準ポリスチレン
【0169】
<イミド化率の測定>
イミド化率は、1H-NMR測定により以下のようにして求めた。
(1)前処理方法
ポリイミド系樹脂を重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)に溶解させて、ポリイミド系樹脂濃度2質量%の溶液としたものを測定試料とした。
(2)測定条件
測定装置:JEOL製 400MHz NMR装置 JNM-ECZ400S/L1
標準物質:DMSO-d6(2.5ppm)
試料温度:室温
積算回数:256回
緩和時間:5秒
(3)イミド化率解析方法
(ポリイミド樹脂のイミド化率)
ポリイミド樹脂を含む測定試料で得られた1H-NMRスペクトルにおいて、観測されたベンゼンプロトンのうちイミド化前後で変化しない構造に由来するベンゼンプロトンAの積分値をIntAとした。また、観測されたポリイミド樹脂中に残存するアミック酸構造に由来するアミドプロトンの積分値をIntBとした。これらの積分値から以下の式に基づいてポリイミド樹脂のイミド化率を求めた。
イミド化率(%)=100×(1-IntB/IntA)
(ポリアミドイミド樹脂のイミド化率)
ポリアミドイミド樹脂を含む測定試料で得られた1H-NMRスペクトルにおいて、観測されたベンゼンプロトンのうちイミド化前後で変化しない構造に由来し、ポリアミドイミド樹脂中に残存するアミック酸構造に由来する構造に影響を受けないベンゼンプロトンCの積分値をIntCとした。また、観測されたベンゼンプロトンのうちイミド化前後で変化しない構造に由来し、ポリアミドイミド樹脂中に残存するアミック酸構造に由来する構造に影響を受けるベンゼンプロトンDの積分値をIntDとした。得られたIntCおよびIntDから以下の式によりβ値を求めた。
β=IntD/IntC
次に、複数のポリアミドイミド樹脂について上記式のβ値および上記式のポリイミド樹脂のイミド化率を求め、これらの結果から以下の相関式を得た。
イミド化率(%)=k×β+100
上記相関式中、kは定数である。
βを相関式に代入してポリアミドイミド樹脂のイミド化率(%)を得た。
【0170】
<厚さの測定>
積層体、樹脂層および基材層の厚さは、接触式のデジマチックインジケーター((株)ミツトヨ製、「ID-C112BS」)により測定した。
【0171】
<製造例1:ポリアミドイミド樹脂(1)の合成>
窒素ガス雰囲気下、撹拌翼を備えた1Lセパラブルフラスコに、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニル(TFMB)45g(140.52mmol)及びN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)770.40gを加え、室温で撹拌しながらTFMBをDMAcに溶解させた。次に、フラスコに4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)19.01g(42.80mmol)を添加し、室温で3時間撹拌した。その後、4,4’-オキシビス(ベンゾイルクロリド)(OBBC)4.21g(14.27mmol)、次いでテレフタロイルクロリド(TPC)17.38g(85.60mmol)をフラスコに加え、室温で1時間撹拌した。次いで、フラスコに4-メチルピリジン4.65g(49.93mmol)と無水酢酸13.11g(128.39mmol)とを加え、室温で30分間撹拌後、オイルバスを用いて70℃に昇温し、さらに3時間撹拌し、反応液を室温まで冷却した。次に反応液中を攪拌しながらメタノールを投入し、析出した沈殿物を取り出した。沈殿物をメタノールで12時間浸漬後、大量のメタノールで洗浄し、次に、100℃にて沈殿物の減圧乾燥を行い、ポリアミドイミド樹脂を得た。ポリアミドイミド樹脂(1)の重量平均分子量Mwは210,000、イミド化率は99.7%であった。
【0172】
<製造例2:シリカゾルの製造>
1,000mlのフラスコにメタノール分散シリカゾル(平均一次粒子径27nm、シリカ粒子固形分30.0%)395.1g及びガンマブチロラクトン(GBL)601.9gを入れ、真空エバポレータで45℃の湯浴下、400hPaで1時間、続いて250hPaで1時間、メタノールを蒸発させた。さらに250hPa下で70℃まで昇温して30分間加熱し、GBL分散シリカゾル(2)を得た。得られたGBL分散シリカゾル(2)の固形分濃度は30.5%であった。
【0173】
<製造例3:樹脂組成物(1-1)の製造>
GBLに、ポリアミドイミド樹脂(1)を濃度が8.5%になるように加え、十分に溶解させた。その後、アミノ基含有シランカップリング剤(商品名:KBE-903、信越シリコーン製)をポリアミドイミド樹脂(1)に対して1部、アミノ基含有シランカップリング剤(商品名:KBM-403、信越シリコーン製)をポリアミドイミド樹脂(1)に対して5部、上記ポリアミドイミド樹脂(1)の溶液に加えて1時間混合し、樹脂組成物(1-1)を製造した。
【0174】
<製造例4:樹脂組成物(1-2)の製造>
GBLに、ポリアミドイミド樹脂(1)を濃度が8.5%になるように加え、十分に溶解させた。その後、アミノ基含有シランカップリング剤(商品名:KBE-903(信越シリコーン製))をポリアミドイミド樹脂(1)に対して1部、上記ポリアミドイミド樹脂(1)の溶液に加えて1時間混合し、樹脂組成物(1-2)を製造した。
【0175】
<製造例5:樹脂組成物(2-1)の製造>
GBLに、ポリアミドイミド樹脂(1)と、GBL分散シリカゾル(2)とを加え、十分に溶解させて樹脂組成物(2-1)を作製した。樹脂組成物(2-1)中、固形分濃度(ポリアミドイミド樹脂(1)とシリカ粒子の合計濃度)は11.7質量%であり、ポリアミドイミド樹脂とシリカ粒子の混合質量比が(60:40)であった。
【0176】
<製造例6:樹脂組成物(2-2)の製造>
GBLに、ポリアミドイミド樹脂(1)を加え、十分に溶解させて樹脂組成物(2-2)を作製した。樹脂組成物(2-2)中、ポリアミドイミド樹脂(1)の濃度は10.5質量%であった。
【0177】
<実施例1>
樹脂組成物(1-1)を、イーグルガラス(厚み0.5mm)にアプリケーターを用いて塗工し、140℃で30分間乾燥した。さらに220℃で40分間乾燥し、厚さ5μmの第1ポリイミド系樹脂層を形成させた。
次いで、樹脂組成物(2-1)を得られた第1ポリイミド系樹脂層の上にアプリケーターを用いて塗工し、140℃で30分間乾燥した。さらに220℃で40分間乾燥し、厚さ30μmの第2ポリイミド系樹脂層を形成させ、第2ポリイミド系樹脂層、第1ポリイミド系樹脂層とガラスの積層体を得た。
【0178】
<実施例2>
樹脂組成物(1-1)を樹脂組成物(1-2)に変えた以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0179】
<実施例3>
樹脂組成物(2-1)を樹脂組成物(2-2)に変えた以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0180】
<比較例1>
樹脂組成物(2-1)を、イーグルガラス(厚み0.5mm)にアプリケーターを用いて塗工し、140℃で30分間乾燥した。さらに220℃で40分間乾燥し、厚さ30μmのポリイミド系樹脂層を作製し、ポリイミド系フィルムとガラスの積層体を得た。
【0181】
上記の実施例および比較例で得た積層体について、次の方法に従い光学物性評価および密着性の評価(180°剥離試験)を行った。得られた結果を表1に示す。
【0182】
<光学物性評価>
作製した積層体について、以下の手順で光学特性・面内位相差値の評価を行った。
(1)全光線透過率
実施例および比較例で得られた積層体を30mm×30mmの大きさにカットし、ヘイズコンピュータ(スガ試験機(株)製、「HGM-2DP」)を用いて、全光線透過率(%)を測定した。
【0183】
(2)黄色度(YI値)
実施例および比較例で得られた積層体のそれぞれの黄色度(Yellow Index:YI値)を、日本分光社製の紫外可視近赤外分光光度計V-670によって測定した。サンプルがない状態でバックグランド測定を行った後、積層体をサンプルホルダーにセットして、300~800nmの光に対する透過率測定を行い、3刺激値(X、Y、Z)を求めた。YI値を、下記の式に基づいて算出した。
YI=100×(1.2769X-1.0592Z)/Y
【0184】
(3)ヘイズ(Haze)
実施例および比較例で得られた積層体を30mm×30mmの大きさにカットし、ヘイズコンピュータ(スガ試験機(株)製、「HGM-2DP」)を用いてヘイズ(%)を測定した。
【0185】
(4)面内位相差値R0
積層体を4cm×4cmで切り出し、位相差測定装置(王子計測機器(株)製、「KOBRA-WPR」)を用いて波長589.6nmのリタデーションを測定した。この時の入射角0°における測定値を面内位相差値R0とした。測定に用いたサンプルについて、積層体の幅方向中央部を切り出し、製膜時の積層体の塗工方向を遅相軸とした。
【0186】
<180°剥離試験>
180°剥離試験に使用した測定サンプルの概略図を
図1に示す。実施例および比較例で得られた積層体を用いて、ガラス上のポリイミド系樹脂層に25mm幅で切り込みを入れ、幅25mmを有する部分以外の樹脂層を取り除き、
図1に示すようなガラス層2と、幅25mmの樹脂層1とを有する測定サンプルを作製した。該25mm幅の短冊状の樹脂層の末端を少し剥離して、剥離試験機のチャックに挟むためのテープ4を取り付けた。なお、テープ4の長さ方向の一方の端から10mmの長さの範囲を取付け端部とした。また、ガラス層の樹脂層と反対側の表面にも、ガラスの割れを防止するためにテープ3を取り付けた。該測定サンプルを用いて、剥離用テープのうち積層体の取付け端部とは反対側の把持側端部を剥離装置のチャックで把持し、積層体の面方向に対する角度(剥離角度)を180°として、以下の測定条件で樹脂層1を剥離方向5の方向に剥離し、180°剥離強度を測定した。
装置 : Autograph AGS-X (島津製作所製)
サンプル幅:25mm
剥離速度:50mm/min
【0187】
【0188】
<実施例4:積層体の調製>
イーグルガラスに代えて、フレキシブル性を有する化学強化ガラス(厚み50μm)を用いること以外は実施例1と同様にして積層体を得る。該積層体は、実施例1で得た積層体と同程度の180°剥離強度、全光線透過率、YI、HazeおよびR0を示す。また、後述する耐屈曲試験にて測定される、屈曲半径2mmでの耐屈曲性試験において、耐屈曲回数が10万回以上である。
【0189】
<実施例5:積層体の調製>
樹脂組成物(1-1)に代えて、樹脂組成物(1-2)を用いること以外は実施例4と同様にして積層体を得る。該積層体は、実施例2で得た積層体と同程度の180°剥離強度、全光線透過率、YI、HazeおよびR0を示す。また、後述する耐屈曲試験にて測定される、屈曲半径2mmでの耐屈曲性試験において、耐屈曲回数が10万回以上である。
【0190】
<耐屈曲試験>
屈曲性試験は温度25℃において行った。実施例および比較例で得られた光学積層体を、樹脂層を内側にして曲げられるように面状態無負荷U字伸縮試験機(ユアサシステム機器(株)製「DMLHB-FS」(商品名))の治具にセットして、対向する前面板間の距離が4.0mmとなるように(屈曲半径2mm)、毎分30回の速度で、180°屈曲させては伸ばす操作を繰り返し行い、光学積層体が破断したときの屈曲回数を評価する。
【0191】
基材層と、該基材層に直接積層された特定の樹脂組成物(1)から形成されてなる第1ポリイミド系樹脂層と、該第1ポリイミド系樹脂層の該基材層に接する面とは反対側の面に直接積層された特定の樹脂組成物(2)から形成されてなる第2ポリイミド系樹脂層とを含む、本発明の積層体は、基材層と樹脂層との間の密着性が良好であると共に、YIが小さく、視認性が十分に高いものであった。これに対し、比較例の積層体は、基材層と樹脂層との密着性が十分とはいえないものであった。