(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092804
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】光導波路素子、光変調器、及び光送信装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/035 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
G02F1/035
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208979
(22)【出願日】2022-12-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度 国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技 術研究開発委託研究/Beyond5G 超高速・超大容量無線通信システムのためのヘテロジニアス光電子融合技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】速水 佑治
(72)【発明者】
【氏名】岡橋 宏佑
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA21
2K102BA03
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA18
2K102CA21
2K102DA05
2K102DB05
2K102DB08
2K102DC04
2K102DC08
2K102DD05
2K102EA03
2K102EA08
2K102EA09
2K102EA12
2K102EA16
2K102EA17
2K102EA21
2K102EB10
2K102EB11
2K102EB12
2K102EB16
2K102EB30
(57)【要約】
【課題】光導波路素子において、高い動作速度における低電圧駆動を実現することである。
【解決手段】光導波路素子は、光学基板の主面上に配された光導波路と、光導波路を伝搬する光波を制御する制御電極と、を有し、制御電極は、光学基板の主面上において光導波路を挟んで対向する第1制御電極と第2制御電極とを含み、第1制御電極および第2制御電極は、それぞれ、光導波路に沿って延在する共通電極と、共通電極よりも光導波路に近接して配された、光導波路の延在方向に沿って分割された複数のセグメント電極と、複数のセグメント電極のそれぞれを共通電極に接続する複数の接続電極と、を含み、共通電極と光学基板との間に、比誘電率が前記光学基板の比誘電率より低い低誘電体層が配されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学基板の主面上に配された光導波路と、前記光導波路を伝搬する光波を制御する制御電極と、を有する光導波路素子であって、
前記制御電極は、前記光学基板の主面上において前記光導波路を挟んで対向する第1制御電極と第2制御電極とを含み、
前記第1制御電極および前記第2制御電極は、それぞれ、前記光導波路に沿って延在する共通電極と、前記共通電極よりも前記光導波路に近接して配された、前記光導波路の延在方向に沿って分割された複数のセグメント電極と、前記複数のセグメント電極のそれぞれを前記共通電極に接続する複数の接続電極と、を含み、
前記共通電極と前記光学基板との間に、比誘電率が前記光学基板の比誘電率より低い低誘電体層が配されている、
光導波路素子。
【請求項2】
前記低誘電体層は、前記接続電極および前記セグメント電極の下部まで延在する、
請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項3】
前記光導波路は、2つの並行導波路を備えるマッハツェンダ型光導波路を含み、
前記制御電極は、
前記2つの並行導波路の間に配された1つの前記第1制御電極と、
前記2つの並行導波路のそれぞれを挟んで前記第1制御電極と対向する、2つの前記第2制御電極と、
を含む、
請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項4】
前記セグメント電極は、少なくとも、前記光導波路に隣接する面の下部が、前記低誘電体層を介さずに前記光学基板上に形成されている、
請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項5】
前記低誘電体層は、前記光導波路の延在方向と直交する断面において、前記光導波路に隣接する辺と、前記光学基板から遠い側の辺である上辺と、の角部が曲線で構成されている、
請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項6】
前記光学基板の、前記光導波路が配された主面に対向する他の主面は、比誘電率が1以上10以下の低誘電体材料から成る低誘電体基板と接している、
請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項7】
前記セグメント電極と前記光学基板との間にバッファ層を有する、
請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項8】
前記低誘電体層は、前記低誘電体層の厚さ方向に延在する一つ又は複数の貫通穴を有し、
前記制御電極は、前記貫通穴の内部を通って前記光学基板まで延在する、
請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項9】
光変調素子である請求項1ないし8のいずれか一項に記載の光導波路素子と、
前記光導波路素子を収容する筐体と、
前記光導波路素子に光を入力する光ファイバと、
前記光導波路素子が出力する光を前記筐体の外部へ導く光ファイバと、
を備える光変調器。
【請求項10】
請求項9に記載の光変調器と、
前記光導波路素子に光変調動作を行わせるための電気信号を生成する電子回路と、
を備える光送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路素子、光変調器、及び光送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速/大容量光ファイバ通信システムにおいては、基板上に形成された光導波路と、光導波路を伝搬する光波を制御する制御電極と、で構成される光導波路素子としての光変調素子を組み込んだ光変調器が多く用いられている。光変調動作を行う光導波路素子としては、InP基板等の半導体基板を用いた半導体光変調素子、およびLiNbO3(以下、LNともいう)を基板に用いたLN光変調素子が実用化されている。
【0003】
近年、光通信用の光変調器では、変調速度として100GBaud以上のシンボルレートが求められている。このため、光変調素子の周波数特性を広帯域化する観点から、電気―光の速度整合(すなわち、光導波路を伝搬する光の速度と、制御電極を伝搬する高周波信号の伝搬速度との整合)、及びインピーダンス整合(すなわち、制御電極のインピーダンスと制御電極に高周波信号を出力する駆動回路の出力インピーダンスとの整合)が重要となる。
【0004】
従来、上記インピーダンス整合を図る手段として、インピーダンス調整の自由度が高い容量装荷型進行波電極構造の制御電極が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この制御電極では、基板上に形成された誘電体層の上に高周波信号を伝搬するRF電極が配され、基板上には、光導波路の延在方向に分割された複数のセグメント電極が配されている。各セグメント電極は、誘電体層を貫通する導体により上記RF電極と接続されて、光導波路に高周波電界を印加する。これにより、上記従来の制御電極では、RF電極部分の高周波信号の伝搬速度を高めて、光-電気速度整合が図られる。
【0005】
しかし、上記従来の制御電極では、昨今の小型化、広帯域化、低駆動電圧化の要求に伴って、基板上において光導波路を挟むセグメント電極間の距離を短くするために、誘電体層上のRF電極と接地電極との距離を小さくすると、RF電極における高周波信号の伝搬速度を低下させることとなり得る。その結果、光-電気速度整合が困難となり、高い変調速度における低電圧駆動が困難となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記背景より、本発明の目的は、光導波路素子において、高い動作速度における低電圧駆動を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の態様は、光学基板の主面上に配された光導波路と、前記光導波路を伝搬する光波を制御する制御電極と、を有する光導波路素子であって、前記制御電極は、前記光学基板の主面上において前記光導波路を挟んで対向する第1制御電極と第2制御電極とを含み、前記第1制御電極および前記第2制御電極は、それぞれ、前記光導波路に沿って延在する共通電極と、前記共通電極よりも前記光導波路に近接して配された、前記光導波路の延在方向に沿って分割された複数のセグメント電極と、前記複数のセグメント電極のそれぞれを前記共通電極に接続する複数の接続電極と、を含み、前記共通電極と前記光学基板との間に、比誘電率が前記光学基板の比誘電率より低い低誘電体層が配されている、光導波路素子である。
本発明の他の態様によると、前記低誘電体層は、前記接続電極および前記セグメント電極の下部まで延在する。
本発明の他の態様によると、前記光導波路は、2つの並行導波路を備えるマッハツェンダ型光導波路を含み、前記制御電極は、前記2つの並行導波路の間に配された1つの前記第1制御電極と、前記2つの並行導波路のそれぞれを挟んで前記第1制御電極と対向する、2つの前記第2制御電極と、を含む。
本発明の他の態様によると、前記セグメント電極は、少なくとも、前記光導波路に隣接する面の下部が、前記低誘電体層を介さずに前記光学基板上に形成されている。
本発明の他の態様によると、前記低誘電体層は、前記光導波路の延在方向と直交する断面において、前記光導波路に隣接する辺と、前記光学基板から遠い側の辺である上辺と、の角部が曲線で構成されている。
本発明の他の態様によると、前記光学基板の、前記光導波路が配された主面に対向する他の主面は、比誘電率が1以上10以下の低誘電体材料から成る低誘電体基板と接している。
本発明の他の態様によると、前記セグメント電極と前記光学基板との間にバッファ層を有する。
本発明の他の態様によると、前記低誘電体層は、前記低誘電体層の厚さ方向に延在する一つ又は複数の貫通穴を有し、前記制御電極は、前記貫通穴の内部を通って前記光学基板まで延在する。
本発明の他の態様は、光変調素子である上記いずれかの光導波路素子と、前記光導波路素子を収容する筐体と、前記光導波路素子に光を入力する光ファイバと、前記光導波路素子が出力する光を前記筐体の外部へ導く光ファイバと、を備える光変調器である。
本発明の他の態様は、上記いずれかの光変調器と、前記光導波路素子に光変調動作を行わせるための電気信号を生成する電子回路と、を備える光送信装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光導波路素子において、高い動作速度における低電圧駆動を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る光変調器の構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す光変調器に用いられる光変調素子の構成を示す図である。
【
図3】
図2に示すRF電極部のA部の部分詳細図である。
【
図4】
図3に示すRF電極部のB部の部分詳細図である。
【
図7】第1の変形例に係る光変調素子の構成を示す図である。
【
図8】第1の変形例に係る光変調素子の構成を示す図である。
【
図9】第2の変形例に係る光変調素子の構成を示す図である。
【
図10】第2の変形例に係る光変調素子の構成を示す図である。
【
図11】第3の変形例に係る光変調素子の構成を示す図である。
【
図12】第3の変形例に係る光変調素子の構成を示す図である。
【
図13】第4の変形例に係る光変調素子の構成を示す図である。
【
図14】第4の変形例に係る光変調素子の構成を示す図である。
【
図15】第5の変形例に係る光変調素子の構成を示す図である。
【
図16】第6の変形例に係る光変調素子の構成を示す図である。
【
図17】第7の変形例に係る光変調素子の構成を示す図である。
【
図21】本発明の第2の実施形態に係る光送信装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
[1.第1実施形態]
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る、光導波路素子である光変調素子を用いた光変調器1の構成を示す図である。
光変調器1は、筐体2と、筐体2内に収容された進行波動作により光変調信号を生成する光変調素子3と、を有する。光変調素子3は、例えば、偏波合成変調方式に対応したネスト型マッハツェンダ型のコヒーレント通信用変調器構成で、DP-QPSKやQAM変調などの多値変調フォーマットに対応する。筐体2は、例えば、業界規格であるHB-CDM規格(“Implementation Agreement for the High Bandwidth Coherent Driver Modulator (HB-CDM) OIF-HB-CDM-02.0”(July 15、2021、OIF発行))に準拠する。なお、筐体2は、最終的にはその開口部に板体であるカバー(不図示)が固定されて、その内部が気密封止される。
【0012】
筐体2には、後述する中継基板14に搭載された駆動回路17に光変調素子3の変調に用いる高周波電気信号を入力するための信号ピン4が設けられている。また、筐体2には、光変調素子3の動作点の調整等に用いる電気信号の入力、駆動回路17の動作のための電源の入力、及び、駆動回路17を動作させるために必要な制御信号の入出力を行うための、信号ピン5が設けられている。
【0013】
光変調器1は、また、筐体2内に光を入力するための入力光ファイバ6と、光変調素子3により変調された光を筐体2の外部へ導く出力光ファイバ7と、を筐体2の同一面に有する。また、光変調器1は、ビームシフト機能と偏波合成機能とを合わせ持つビームシフタ12を有する。
【0014】
入力光ファイバ6及び出力光ファイバ7は、固定部材であるサポート8及び9を介して筐体2にそれぞれ固定されている。入力光ファイバ6から入力された光は、サポート8内に配されたレンズ11aによりコリメートされた後、ビームシフタ12を通過し、レンズ10aを介して光変調素子3へ入力される。ただし、これは一例であって、光変調素子3への光の入力は、従来技術に従い、例えば、入力光ファイバ6を、サポート8を介して筐体2内に導入し、当該導入した入力光ファイバ6の端面を光変調素子3の光学基板30(後述)の端面に接続することで行うものとすることもできる。
【0015】
光変調素子3から出力される2つの変調された光は、それぞれレンズ10bおよび10cによりコリメートされたのち、ビームシフタ12の偏波合成機能により、一つのビームに合成される。上記合成されたビームは、サポート9内に配されたレンズ11bにより集光されて出力光ファイバ7へ結合される。
【0016】
光変調器1の筐体2内には、また、中継基板14と、所定のインピーダンスを有する4つの終端抵抗15a、15b、15c、15dを備える終端器16が配されている。以下、終端抵抗15a、15b、15c、15dを総称して終端抵抗15ともいうものとする。光変調素子3と終端器16の終端抵抗15との電気的接続は、例えばワイヤボンディング等により行われる。
【0017】
中継基板14は、駆動回路17を備える。駆動回路17は、信号ピン4から入力される高周波電気信号を増幅して、光変調素子3に変調動作を行わせるための高周波電気信号である駆動信号を出力する。また、中継基板14は、信号ピン5から入力される動作点調整用等の電気信号、電源、及び制御信号を、光変調素子3へ中継する。中継基板14の導体パターンは、例えばワイヤボンディング等により、光変調素子3の電極の一端を構成するパッド(不図示)にそれぞれ接続される。なお、中継基板14は、
図1では1枚の基板として図示されているが、必要に応じて複数の基板に分割されて構成されていても良い。また、駆動回路17は、
図1のように中継基板14上に搭載されていても良いし、中継基板14と光変調素子3との間に配置されていても良い。また、信号ピン4に代えて、高周波電気信号の入力に用いるインタフェースは、筐体2の外部に配されたFPC(フレキシブル基板)であっても良い。
【0018】
図2は、DP-QPSK変調器等である光変調素子3の構成の一例を示す図である。
光変調素子3は、光学基板30の一方の主面(
図2に示す面)に形成された光導波路31(図示太線点線の全体)で構成され、例えば100GBaudを超えるようなコヒーレント多値変調を行う。光学基板30は、例えば、20μm以下(例えば2μm)の厚さに加工され薄膜化された、電気光学効果を有するXカットのLN基板である。また、光導波路31は、薄膜化された光学基板30の表面に形成された、帯状に延在する凸部で構成された凸状光導波路(例えば、リブ型光導波路又はリッジ型光導波路)である。
【0019】
光学基板30は、例えば矩形であり、図示上下方向に延在して対向する図示左右の2つの辺32a、32b、および図示左右方向に延在して対向する図示上下の辺32c、32dを有する。
【0020】
光導波路31は、光学基板30の図示右方の辺32bの図示上側において入力光ファイバ6からの入力光(図示右方を向く矢印)を受ける入力導波路33と、入力された光を同じ光量を有する2つの光に分岐する分岐導波路34と、を含む。また、光導波路31は、分岐導波路34により分岐されたそれぞれの光を変調する2つの変調部である、いわゆるネスト型マッハツェンダ型光導波路35a、35bを含む。
【0021】
ネスト型マッハツェンダ型光導波路35aおよび35bは、光学基板30の図示左部分の折返し領域38において光の伝搬方向が180度折り返され、出力導波路36aおよび36bにより光学基板30の辺32bから図示右方へ光を出力する。
【0022】
ネスト型マッハツェンダ型光導波路35a、35bは、それぞれ、一対の並行導波路を成す2つの導波路部分に設けられたそれぞれ2つのマッハツェンダ型光導波路37a、37b、および37c、37dを含む。以下、マッハツェンダ型光導波路37a、37b、37c、37dを総称してマッハツェンダ型光導波路37ともいうものとする。従来技術に従い、マッハツェンダ型光導波路37は、それぞれ、2本の並行導波路を含む。
【0023】
光学基板30上の図示左部分の折返し領域38で折り返されたネスト型マッハツェンダ型光導波路35a、35bの図示上部分のバイアス電極部40には、例えば従来技術に従い、ネスト型マッハツェンダ型光導波路35a、35bの4つのマッハツェンダ型光導波路37a、37b、37c、37dのそれぞれの、動作点を調整するためのバイアス電極19が設けられている。また、光学基板30上には、ネスト型マッハツェンダ型光導波路35a、35bの動作点を調整するためのバイアス電極51が形成されている。
【0024】
また、折返し領域38で折り返されたネスト型マッハツェンダ型光導波路35a、35bの図示下部分のRF電極部41には、ネスト型マッハツェンダ型光導波路35a、35bを構成する合計4つのマッハツェンダ型光導波路37a、37b、37c、37dのそれぞれに変調動作を行わせるための、高周波電気信号が伝搬される4つの中心電極18が、それぞれ、対応するマッハツェンダ型光導波路37の2本の並行導波路の間に配されている。
【0025】
図2において、中心電極18のそれぞれは、従来技術に従い、光学基板30の主面上においてこれらの中心電極18を一定距離離れた位置から挟むように形成された2つのグランド電極(不図示)と共に、所定のインピーダンスを有する分布定数線路を構成している。
【0026】
これにより、駆動回路17から出力される4つの駆動信号は、それぞれ、
図2の図示左方から、対応する中心電極18に入力され、進行波となって中心電極18のそれぞれを図示右方へ伝搬し、RF電極部41において、対応するマッハツェンダ型光導波路37を伝搬する光波を変調した後、対応する終端抵抗15により終端される。
【0027】
図3は、
図2におけるA部の部分詳細図であり、RF電極部41におけるマッハツェンダ型光導波路37cの電極構成を示す図である。RF電極部41における他のマッハツェンダ型光導波路37a、37b、及び37dの電極構成も、
図3に示すマッハツェンダ型光導波路37cの電極構成と同様である。
図3において、光は、図示左側から入射して図示右側へ出射する。
【0028】
光導波路素子である光変調素子3は、RF電極部41において、マッハツェンダ型光導波路37cを伝搬する光波を制御する制御電極42を有する。制御電極42は、一つの第1制御電極43と、二つの第2制御電極44とを含む。ここで、第1制御電極43は、上述した中心電極18の一部であり、実際には図示左右に延在して中心電極18の他の部分と接続されている。また、二つの第2制御電極は、中心電極18を一定距離離れた位置からそれぞれ挟む接地電極であり、従来技術に従い、光学基板30の主面上に延在する導体パターン(不図示)を介して接地電位に接続されている。
【0029】
光学基板30の主面上において、中心電極18の一部である第1制御電極43は、光導波路31の一部であるマッハツェンダ型光導波路37cの並行導波路39aと39bとの間に配されている。接地電極である二つの第2制御電極44は、それぞれ、並行導波路39a及び39bを挟んで第1制御電極43と対向する位置に配されている。第1制御電極43および第2制御電極44は、例えば金(Au)で構成され、光学基板30との密着性向上のため、クロム(Cr)を下地金属として用いてもよい。
以下、並行導波路39a、39bを総称して並行導波路39ともいうものとする。
【0030】
図4は、
図3に示すRF電極部41のB部の部分詳細図である。また、
図5及び
図6は、
図4に示すB部の、V-V断面矢視図およびVI-VI断面矢視図である。
図4に示すB部には、マッハツェンダ型光導波路37cの一方の並行導波路39bを挟んで対向する一方の第2制御電極44と第1制御電極43とが示されている。なお、
図2において他方の並行導波路39aを挟んで対向する他方の第2制御電極44と第1制御電極43も、
図4に示す構成と同様に構成される。
【0031】
図4に示すように、第1制御電極43は、並行導波路39bに沿って延在して高周波信号を伝搬させる共通電極43aと、共通電極43aよりも並行導波路39bに近接して配された、並行導波路39bの延在方向に沿って分割された複数のセグメント電極43cと、を含む。また、第1制御電極43は、複数のセグメント電極43cのそれぞれを共通電極43aに接続する複数の接続電極43bを含む。
【0032】
同様に、第2制御電極44は、並行導波路39bに沿って延在して高周波信号を伝搬させる共通電極44aと、共通電極44aよりも並行導波路39bに近接して配された、並行導波路39bの延在方向に沿って分割された複数のセグメント電極44cと、を含む。また、第2制御電極44は、複数のセグメント電極44cのそれぞれを共通電極44aに接続する複数の接続電極44bを含む。
【0033】
そして、
図5及び
図6に示すように、共通電極43aおよび44aのそれぞれの下部と光学基板30との間には、光学基板よりも比誘電率が低い低誘電体層45が配置されている。低誘電体層45の比誘電率は、好ましくは、1以上10以下である。低誘電体層45は、
図4及び
図6に示すように、接続電極43b、44bの一部にまで延在していてもよい。低誘電体層45は、例えば、SiO
2、または、BCB(ベンゾシクロブテン)等の低誘電体樹脂、あるいは窒化シリコン等で構成され得る。
【0034】
上記の構成を有する光変調素子3では、並行導波路39に近接して設けられたセグメント電極43c、44cにより当該並行導波路39に電界を印加することで光変調動作を行うので、低電圧駆動を実現することができる。また、光変調素子3では、高周波信号が伝搬する共通電極43a、44aと光学基板30との間に低誘電体層45を有するので、共通電極43aおよび44aにおける高周波信号の伝搬速度(以下、信号伝搬速度ともいう)を高速化して、並行導波路39bを伝搬する光波の伝搬速度(以下、導波速度ともいう)と信号伝搬速度との整合性(一致の程度)を向上することができる。これにより、光変調素子3では、高い変調速度における低電圧駆動を実現することができる。
【0035】
なお、低誘電体層45は、
図3、
図4、
図5、及び
図6に示す例では、接続電極43b、44bの途中まで延在するように構成されているが、接続電極43b、44bの全体まで延在するように構成されていてもよい。
【0036】
低誘電体層45は、高速変調と低電圧駆動を実現する観点から、光速度整合に適切な0.1μm以上20μm以下の厚みで構成されることが好ましい。
また、第1制御電極43および第2制御電極44の好ましいサイズとして、本実施形態では、共通電極43a及び44aから、それぞれセグメント電極43c、44cに至るまでの、接続電極43bおよび44bの長さa(
図4参照)は、1以上50μm以下である。また、並行導波路39bの延在方向に測った接続電極43b、44bの幅W2は、1μm以上10μm以下である。また、並行導波路39bの延在方向と直交する方向に測ったセグメント電極43c、44cの幅W1は、1μm以上10μm以下である。
【0037】
また、並行導波路39bの延在方向に測ったセグメント電極43c同士およびセグメント電極44c同士のピッチL1は、20μm以上500μm以下である。また、並行導波路39bの延在方向に測ったセグメント電極43c、44cの長さL2は、L1/2以上(L1-1μm)以下である。
【0038】
本実施形態では、更に好ましい構成として、光学基板30の、光導波路31が配された主面に対向する他の主面が、光学基板より比誘電率が低い材料、好ましくは、比誘電率が1以上10以下の低誘電体材料で構成された低誘電体基板46と接するように、当該低誘電体基板46と接合されている(
図5、
図6参照)。これにより、制御電極42における高周波信号の伝搬速度の高速化が更に容易となり、制御電極42の設計自由度が向上する。なお、低誘電体基板46を構成する上記低誘電体材料は、動作温度の変動に伴って発生し得る光学基板30と低誘電体基板46との境界における応力を低減する観点から、線膨張係数が0.5×10
-6以上であって10×10
-6以下であることが好ましい。そのような低誘電体材料は、例えば、SiO
2であり得る。低誘電体基板46の厚みは、例えば、0.1μm以上1000μm以下が好ましい。
【0039】
なお、厚みが300μm以下の低誘電体基板46を用いる場合には、低誘電体基板46の裏面(すなわち、光学基板30と接合される面に対向する面)に、保持基板(不図示)を貼り合わせて、光変調素子3の機械強度を補強してもよい。そのような保持基板は、例えば、Si又ガラス等で構成され得る。
【0040】
次に、光導波路素子である光変調素子3の変形例について説明する。
[第1変形例]
光変調素子3の第1の変形例として、低誘電体層45は、接続電極43b、44bおよびセグメント電極43c、44cの下部まで延在するものとすることができる。
【0041】
図7及び
図8は、そのような第1変形例に係る光変調素子3の制御電極42の構成を示す図である。ここで、
図7及び
図8は、それぞれ、
図5に示すV-V断面図及び
図6に示すVI-VI断面図に相当する図である。
図7及び
図8に示す例では、低誘電体層45は、共通電極43a及び44aの下部から、それぞれ、セグメント電極43c及び44cの下部まで延在している。並行導波路39aを挟む第1制御電極43及び第2制御電極44の部分も、
図7及び
図8に示す構成と同様に構成される。
【0042】
これにより、第1変形例に係る光変調素子3では、第1制御電極の全体、及びセグメント電極44cを含む第2制御電極44全体における、マイクロ波(電気信号)の伝搬速度の高速化および光と電気信号の速度整合が容易となる。
【0043】
なお、
図7及び
図8の例では、低誘電体層45は、共通電極43a及び44aの下部から、それぞれ、セグメント電極43c及び44cの下部の途中まで延在するものとしたが、セグメント電極43c及び44cの下部の全体に延在するものとしてもよい。
【0044】
ただし、
図7及び
図8に示すように、セグメント電極43c、44cのそれぞれの、少なくとも並行導波路39bに隣接する面の下部が、低誘電体層45を介さずに光学基板30上に形成されるように構成することで、セグメント電極43c、44cが並行導波路39bに与える電界の強度を高めて、光変調動作における電界効率(すなわち、制御電極42が発生する電界のうち、光変調動作に用いられる電界の比率)を向上し、光変調素子3の動作に必要な駆動電圧を低減することができる。
【0045】
一般に、金等の電極を形成する際に電極下地膜として用いられるニッケルやチタン等の金属材料は、これらの金属材料と弾性係数が同等以上であって且つ親水性の高いLN等の光学基板30の表面に対する密着性が、樹脂等で構成される低誘電体層45の表面に対する密着性に比べて高い。このため、上記のように構成することで低誘電体層45を介さずに光学基板30上に形成されるセグメント電極43c及び44cの部分は、光学基板30との密着性が向上する。その結果、光変調素子3としての信頼性をより向上することができる。
【0046】
[第2変形例]
光変調素子3の第2の変形例として、低誘電体層45は、並行導波路39の延在方向と直交する断面において、前記光導波路に隣接する辺と、前記基板から遠い側の辺である上辺と、の角部が曲線で構成されていることが好ましい。
【0047】
図9及び
図10は、そのような第2変形例に係る光変調素子3の制御電極42の構成を示す図である。ここで、
図9及び
図10は、それぞれ、
図5に示すV-V断面図及び
図6に示すVI-VI断面図に相当する図である。
図9及び
図10に示すように、共通電極43aおよび44aの下部において延在する低誘電体層45は、それぞれ、並行導波路39bの延在方向と直交する断面において(すなわち、
図9および
図10に示す断面において)、並行導波路39bに隣接する辺と、光学基板30から遠い側の辺である上辺と、の角部に、曲線で構成されたR部49(
図9及び
図10に示す図示一点鎖線の円内に示す部分)を有している。並行導波路39aを挟む第1制御電極43及び第2制御電極44の部分も、
図9及び
図10に示す構成と同様に構成される。
【0048】
これにより、第2変形例に係る光変調素子3では、制御電極42のうち低誘電体層45の上部に形成された導体部分から、低誘電体層45を介さずに光学基板30上に形成された導体部分に至る遷移部分の導体の厚みが連続的に変化するので、当該遷移部分を伝搬する高周波信号の損失(例えば放射損失等)を低減することができる。また、特に、線幅の細い接続電極43b、44bの下部にR部49を有する角部が配される場合、当該角部が屈曲形状である場合に比べて、上記角部において発生し得る接続電極43b、44bの応力を低減して、光変調素子3の信頼性をより向上することができる。
【0049】
[第3変形例]
光変調素子3の第3の変形例として、セグメント電極43c、44cと光学基板30との間に、バッファ層を有してもよい。
図11及び
図12は、そのような第3変形例に係る、光変調素子3の制御電極42の構成を示す図である。ここで、
図11及び
図12は、それぞれ、
図5に示すV-V断面図及び
図6に示すVI-VI断面図に相当する図である。図示の例では、並行導波路39bを覆い、且つセグメント電極43c、44cの下部まで延在するように、バッファ層47が配されている。並行導波路39aを挟む第1制御電極43及び第2制御電極44の部分も、
図11及び
図12に示す構成と同様に、バッファ層47が配され得る。バッファ層47は、並行導波路39の長さ方向(
図11及び
図12の紙面法線方向)に沿って延在する。
【0050】
これにより、並行導波路39に近接して配されたセグメント電極43c、44cを構成する金属(例えばAu、Cr等)により、並行導波路39を伝搬する光波の損失(いわゆる、光吸収損失)が発生するのを防止することができる。
【0051】
一般に、光変調素子3における出力光のオン/オフ動作におけるオフ光の光量は、光学基板30内を伝搬する迷光等により定まり、上記光吸収損失にはあまり依存しない。一方、上記オンオフ動作におけるオン光の光量は、上記光吸収損失と駆動電圧の大きさに依存する。このため、上記光吸収損失が大きい場合には、同じ駆動電圧であってもオン光の光量は低下し、光変調素子3から出力される変調光の消光比が劣化する。
【0052】
これに対し、上記ようなバッファ層を有する構成では、光吸収損失が低減されて高い消光比を確保し得るので、所定の消光比を得るのに必要な駆動電圧を低減することができる。
【0053】
なお、バッファ層47は、
図10および
図11に示す例では、低誘電体層45の下部には形成されていないが、低誘電体層45の下部を含む光学基板30の全体に形成されていてもよい。
【0054】
[第4変形例]
光変調素子3の第4の変形例として、低誘電体層45は、低誘電体層45の厚さ方向に延在する一つ又は複数の貫通穴を有し、制御電極42は、上記貫通穴を通って光学基板の主面まで延在するよう構成される。
【0055】
図13及び
図14は、そのような第4の変形例に係る、光変調素子3の制御電極42の構成を示す図である。ここで、
図13は、マッハツェンダ型光導波路37cにおけるRF電極部41の構成を示す
図3に相当する図である。また、
図14は、
図13におけるXVI-XVI断面図である。
図13に示す例では、第1制御電極43及び第2制御電極44の下部に配された低誘電体層45に、平面視が円形の複数の貫通穴48(図示点線の円形)がマトリクス状に配されている。そして、
図14に示すように、例えば、第2制御電極44の共通電極44aが、貫通穴48(図示点線矩形)の内部を通って光学基板30の主面まで延在している。なお、
図13では、一例として一つの貫通穴48にのみ符号を付しているが、図示点線の複数の円形は、すべて貫通穴48を示している。
【0056】
これにより、制御電極42は、貫通穴48の内部を通って光学基板30と直接に密着するので、上述した
図7及び
図8の構成と同様に、例えば低誘電体層45を樹脂で構成する場合でも、制御電極42と光学基板30との密着性を高めて、光変調素子3の信頼性を向上することができる。
【0057】
なお、貫通穴48は、制御電極42と光学基板30との密着性を確保する観点から、例えば、直径r(
図13参照)が1μm以上25μm以下であることが好ましい。また、同様の観点から、並行導波路39の延在方向およびこれに直交する方向における、貫通穴48の配置間隔d1およびd2は、50μm以上500μm以下であることが好ましい。
【0058】
なお、貫通穴48は、円形に限らず、任意の平面視形状を有するものとすることができる。この場合、貫通穴48は、光学基板30側におけるその開口面積が、上記直径1μm以上25μm以下の平面視円形の貫通穴と同程度となるように構成されることが望ましい。また、貫通穴48は、マトリクス状に限らず、任意の規則的なパターン又は不規則なパターンで配置されてもよい。この場合にも、貫通穴48同士の配置間隔は、50μm以上500μm以下であることが好ましい。
【0059】
[第5変形例]
光変調素子3の第5の変形例として、上述の第4変形例に示した貫通穴48は、
図15に示すように、第2制御電極44にのみ形成され第1制御電極43に形成されていなくてもよい。
【0060】
[第6変形例]
光変調素子3の第6の変形例として、上述の第4変形例に示した貫通穴48は、
図16に示すように、平面視が円形でなく、並行導波路39a、39bの延在方向に延びた長円形であってもよい。
【0061】
これにより、貫通穴48の面積を拡大して制御電極42と光学基板30との密着性を向上しつつ、制御電極42における高周波信号の伝搬が貫通穴48により阻害されてしまうのを抑制することができる。
【0062】
図16において、長円形の貫通穴48は、長さr2が幅r1の2倍以上10倍以下であることが好ましい。また、隣接する貫通穴48の配置間隔は、貫通穴48の長さ方向における配置間隔d2が、幅方向における配置間隔d1の2倍以上10倍以下であることが好ましい。
【0063】
[第7変形例]
光変調素子3の第7の変形例として、凸状光導波路である光導波路31は、それぞれの部分が、光学基板30の主面に所定の離間距離をもって延在する2つの溝部で挟まれた帯状の凸部で形成されていてもよい。
【0064】
【0065】
図17に示すように、本変形例では、光導波路31の各部は、光学基板30の主面上に所定の離間距離をもって延在する溝部50a、50b、50cのいずれか2つの溝部で挟まれた帯状の凸部で形成されている。具体的には、並行導波路39aは、2つの溝部50a及び50bに挟まれた凸部で構成されており、並行導波路39bは、2つの溝部50a及び50cに挟まれた凸部で構成されている。
【0066】
図18、
図19、
図20は、並行導波路39bの近傍部分の平面図及び断面図であり、並行導波路39bは、上述のように、2つの溝部50a及び50cに挟まれた凸部で構成されている。
これにより、凸状導波路である光導波路31を、光学基板30の主面上に容易に形成することができる。
なお、セグメント電極43c及び44cは、
図19及び
図20に示すように、それぞれ溝部50a及び50cの底面上に形成されるものとすることができる。
【0067】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態又はその変形例に係る光変調器1を搭載した光送信装置60である。
図21は、本実施形態に係る光送信装置60の構成を示す図である。この光送信装置60は、光変調器1と、光源61と、変調信号生成部62と、を有する。変調信号生成部62は、光変調器1に変調動作を行わせるための高周波信号(変調信号)を生成する電子回路である。変調信号生成部62は、例えば、外部から与えられる送信データに基づき、光変調器1が備える光変調素子3に入力するための4つの変調信号を生成して、光変調器1の信号ピン4に入力する。これにより、光変調器1は、入力光ファイバ6から入射される光源61からの光を変調し、出力光ファイバ7を介して変調光を出力する。
【0068】
上記構成の光送信装置60では、上述した光変調器1を用いているので、高い変調速度における低電圧駆動を可能として、消費電力の低減とサイズの小型化を図ることができる。
【0069】
[他の実施形態]
【0070】
上述した第1の実施形態における種々の変形例は、任意に組み合わされて一つの光導波路素子(例えば、光変調素子3)を構成するものとすることができる。例えば、第2変形例における低誘電体層45のR部49(
図9等参照)、及び又は第4変形例における低誘電体層45の貫通穴48(
図13等参照)は、他の全ての変形例において組み合わせて適用することができる。
【0071】
また、本開示における光導波路素子は、ネスト型マッハツェンダ型光導波路を用いて光変調動作を行う光変調素子3に限らず、任意のパターンで形成された光導波路を用いて任意の機能を実現する種々の光導波路素子であり得る。例えば、光導波路素子は、マッハツェンダ型光導波路のほか、方向性結合器型導波路、及び又はY分岐導波路等を含んで構成される、光スイッチング等の機能を実現するものであってもよい。
【0072】
なお、本発明は上記実施形態の構成およびその代替構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0073】
[上記実施形態によりサポートされる構成]
上記の実施形態および変形例は、以下の構成をサポートする。
【0074】
(構成1)光学基板の主面上に配された光導波路と、前記光導波路を伝搬する光波を制御する制御電極と、を有する光導波路素子であって、前記制御電極は、前記光学基板の主面上において前記光導波路を挟んで対向する第1制御電極と第2制御電極とを含み、前記第1制御電極および前記第2制御電極は、それぞれ、前記光導波路に沿って延在する共通電極と、前記共通電極よりも前記光導波路に近接して配された、前記光導波路の延在方向に沿って分割された複数のセグメント電極と、前記複数のセグメント電極のそれぞれを前記共通電極に接続する複数の接続電極と、を含み、前記共通電極と前記光学基板との間に、比誘電率が前記光学基板の比誘電率より低い低誘電体層が配されている、光導波路素子。
構成1の光導波路素子によれば、共通電極における高周波信号の伝搬速度を高速化しつつ、光導波路に近接して配されたセグメント電極により当該光導波路に電界を印加することができるので、高い動作速度における低電圧駆動を実現することができる。
【0075】
(構成2)前記低誘電体層は、前記接続電極および前記セグメント電極の下部まで延在する、構成1に記載の光導波路素子。
構成2の光導波路素子によれば、制御電極における高周波信号の導波損失を低減して、光変調動作に必要な電力を低減することができる。
【0076】
(構成3) 前記光導波路は、2つの並行導波路を備えるマッハツェンダ型光導波路を含み、前記制御電極は、前記2つの並行導波路の間に配された1つの前記第1制御電極と、前記2つの並行導波路のそれぞれを挟んで前記第1制御電極と対向する、2つの前記第2制御電極と、を含む、構成1又は2に記載の光導波路素子。
構成3の光導波路素子によれば、マッハツェンダ型光導波路を含む光導波路において、高い動作速度における低電圧駆動で実現することができる。
【0077】
(構成4)前記セグメント電極は、少なくとも、前記光導波路に隣接する面の下部が、前記低誘電体層を介さずに前記光学基板上に形成されている、構成1ないし3のいずれかに記載の光導波路素子。
構成4の光導波路素子によれば、セグメント電極の下部に低誘電体層を配置しつつ、セグメント電極のうち光導波路に隣接する部分を、光学基板上に且つ光導波路に近接して配置することができる。このため、構成3の光導波路素子では、セグメント電極と光学基板との密着性を高めて信頼性を向上しつつ、駆動電圧を低減することができる。
【0078】
(構成5)前記低誘電体層は、前記光導波路の延在方向と直交する断面において、前記光導波路に隣接する辺と、前記光学基板から遠い側の辺である上辺と、の角部が曲線で構成されている、構成1ないし4のいずれかに記載の光導波路素子。
構成5の光導波路素子によれば、低誘電体層の角部が曲線で構成されているので、制御電極のうち、低誘電体層上に形成された導体部分から光学基板上に直接形成された導体部分に至る遷移部分の導体厚みが上記曲線により連続的に変化することになる。このため、構成4の光変調素子では、上記角部が屈曲形状である場合に比べて、上記遷移部分を伝搬する高周波信号の損失(例えば放射損失等)を低減することができると共に、当該角部の上部に形成される制御電極に発生し得る応力を低減して、光導波路素子の信頼性をより向上することができる。
【0079】
(構成6)前記光学基板の、前記光導波路が配された主面に対向する他の主面は、比誘電率が1以上10以下の低誘電体材料から成る低誘電体基板と接している、構成1ないし5のいずれかに記載の光導波路素子。
構成6の光導波路素子によれば、制御電極における高周波信号の伝搬速度の高速化が容易となり、制御電極の設計自由度が向上する。
【0080】
(構成7)前記セグメント電極と前記光学基板との間にバッファ層を有する、構成1ないし6のいずれかに記載の光導波路素子。
構成7の光導波路素子によれば、光導波路に近接して配されたセグメント電極を構成する金属により光導波路を伝搬する光波の光吸収損失が発生するのを防止することができる。
【0081】
(構成8)前記低誘電体層は、前記低誘電体層の厚さ方向に延在する一つ又は複数の貫通穴を有し、前記制御電極は、前記貫通穴の内部を通って前記光学基板でまで延在する、構成1ないし7のいずれかに記載の光導波路素子。
構成8の光導波路素子によれば、制御電極は、貫通穴の内部を通って光学基板と直接に密着する部分を有するので、例えば低誘電体層を樹脂で構成する場合でも、制御電極と光学基板との密着性を高めて、光導波路素子の信頼性を向上することができる。
【0082】
(構成9)光変調素子である構成1ないし8のいずれかに記載の光導波路素子と、前記光導波路素子を収容する筐体と、前記光導波路素子に光を入力する光ファイバと、前記光導波路素子が出力する光を前記筐体の外部へ導く光ファイバと、を備える光変調器。
構成9の光変調器によれば、高い変調速度における低電圧駆動が可能な光変調動作を実現することができる。
【0083】
(構成10)構成9に記載の光変調器と、前記光導波路素子に光変調動作を行わせるための電気信号を生成する電子回路と、を備える光送信装置。
構成10の光送信装置によれば、高い変調速度における低電圧駆動を可能として、消費電力の低減とサイズの小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0084】
1…光変調器、2…筐体、3…光変調素子、4、5…信号ピン、6…入力光ファイバ、7…出力光ファイバ、8、9…サポート、10a、10b、10c、11a、11b…レンズ、12…ビームシフタ、14…中継基板、15、15a、15b、15c、15d…終端抵抗、16…終端器、17…駆動回路、18…中心電極、19、51…バイアス電極、30…光学基板、31…光導波路、32a、32b、32c、32d…辺、33…入力導波路、34…分岐導波路、35、35a、35b…ネスト型マッハツェンダ型光導波路、36a、36b…出力導波路、37a、37b、37c、37d…マッハツェンダ型光導波路、38…折返し領域、39a、39b…並行導波路、40、40a、40b…バイアス電極部、41…RF電極部、42…制御電極、43…第1制御電極、44…第2制御電極、43a、44a…共通電極、43b、44b…接続電極、43c、44c…セグメント電極、45…低誘電体層、46…低誘電体基板、47…バッファ層、48…貫通穴、49…R部、50a、50b、50c…溝部、60…光送信装置、61…光源、62…変調信号生成部。